本発明は、デバイスに曝露される物理現象または化学現象に対する応答として情報を通知するデバイスに関する。さらに詳しくは本発明は、それらの現象の表出に対し応答を生成することにより反応するマイクロ流体デバイス、表出に基づきその情報を通知するインジケータデバイス、さらにこのような現象を検出し、その情報を通知する方法に関する。
背景技術
製品偽造は数十億ドルのビジネスであり、ブランドオーナーは1年間に偽造製品によって莫大な金額の損失を被っているので、包装のセキュリティは重要である。例えば、米国だけで、12億ドル超のDVDが毎年販売される。包装分野では、殆どの一般的なセキュリティソリューションはホログラムであるが、ホログラムは偽造が比較的容易である。ホログラムの通常の用途範囲は、例えば非改ざん証明、ブランド保護、及び認証である。
製品自体のセキュリティのモニタリングは、傷みやすい物品に関しても重要である。これは、医薬品、食品、食品添加物、化粧品、化学薬品、または他のこのような製品の安全性に関して特に重要であり、EU臨床試験指令(European Union directive)は、製造業者に、製品使用の有効期限を、すなわち傷みやすい製品の有用寿命が経過する時期を、製品を包装する際に通告することを要求している。傷みやすい製品が実際に、特定の限界値よりも高い/低い有害な刺激に晒され、この刺激が、機械現象、放射現象、または他の環境現象を含む物理現象または化学現象により引き起こされる場合、製品は、計算上の有効期限の前に劣化する、または使用不能になる可能性がある。例えば、製品のコールドチェーン管理では、サプライチェーンを通過するときに有害な刺激に晒されたことを実際にリアルタイムに検出して、製品が使用可能かどうかを通知する必要がある。
食品及び医薬品包装用途の表面センサインジケータは、1970〜80年代以降、市場に投入されている。時間インジケータ、及び時間−温度インジケータは、化学反応メカニズム、拡散メカニズム、及び毛細管作用流体浸潤メカニズムにより、例えば流体またはゲルが芯を介して運ばれることにより動作して、時間が経過したこと、または熱に晒されたことを通知することが知られている。材料が微細構造化基材の流路を流れることにより動作する公知の時間インジケータ、及び時間−温度インジケータもある。
製品の安全及び品質をモニタリングするために、液体を利用する時間インジケータが用いられる。製品に貼り付けられるラベルは液体色素を含み、この液体色素は、励起されると、ラベルを通って一定速度で移動する。これらの液体色素は、スタートボタンを押し込むことにより励起され、このスタートボタンによって液体を移動させて液体が多孔質膜に直接触れるようにし、この多孔質膜を通って、液体が拡散する。ラベルは、異なる周期に調整することができる。しかしながら、液体を利用する時間インジケータは、時間のみをモニタリングして、製品の経過時間を直接検出しない。時間−温度インジケータは、化学反応メカニズム、拡散メカニズム、または毛細管作用流体浸潤メカニズムにより動作することができる。時間−温度インジケータを含むラベルは、温度変化に反応し、製品が臨界温度を超える温度に晒されていた時間に反応する。時間−温度インジケータでは、2種類の試薬を希釈し、2つの隣接する流動床に導入し、これらの流動床では、2種類の溶液が非流動化される。臨界温度(溶液が凍結する温度)を超えると、溶液を非流動化する構造が破損し、所定の温度に、適切な時間(溶液を溶解する時間)に亘って晒されると、これらの溶液は非流動化されなくなり、混ざり合って、視認できる反応を引き起こす。しかしながら、時間−温度インジケータは、貯留状態における温度及び時間の変化にしか反応しない。
温度測定プローブ及びマイクロコントローラを用いて、該当する温度を超える時点の検出、及びこの温度を超えていた時間の長さの検出の両方を可能にする電子素子を利用しようとする試みも為されている。結果を通知する場合、無線送信機、または光送信機、例えばRFID素子またはLED素子が更に必要になる。しかしながら、このような電子素子は、温度をモニタリングしたいと考えられる対象の製品アイテム群の全てに体系的に用いるためには高価であることが判明している。センサプローブ、マイクロコントローラ、及び送信機のような電子回路に、使い捨て製品ラベルに実装するには高価であり、かつ実装するのが困難なバッテリから給電する必要があることも不利になる。
図1を参照すると、この図には、国際特許第WO 2008/107871 A1号に開示されている先行技術による電子時間インジケータが描かれている。この電子インジケータは、ユーザに所定の情報を提供する販売促進デバイスだけでなく、時間依存製品モニタリングデバイスとして使用することができる。ディスプレイ18付き基板層12の上には、バッテリ14と制御チップ17と導電接続部材19とが配置されている。ディスプレイ18は、例えば有機発光ダイオード(OLED)とすることができ、この有機発光ダイオードは、例えばインクジェット印刷により製造することができる。バッテリ14は、例えば印刷紙電池または薄型ボタンセルバッテリとすることができる。印刷紙電池は、印刷法、スタンピング法、またはスパッタリング法により堆積させたカソード、及び印刷法及びスタンピング法により堆積させたアノードと、ゲル状の電解液、及びプラスチックバリア材料で封止されて、水分が失われるのを防止するポリマーとを使用して構成することができる。導電接続部材19は、電気信号及び電力をバッテリ14及び制御チップ17からディスプレイ18へ供給する。このような導電接続部材19は、基板層12の上に、インクジェット印刷法、回転スクリーン印刷法、エッチング法、及びこの技術分野で公知の他の方法により形成することができる。制御チップ17は、導電接続部材19の上に、色素接着及びフリップチップ法を利用して直接載置され、この制御チップ17は、バッテリ14からディスプレイ18への給電を選択的に切り替える。最上層11には、スイッチ15とディスプレイ18を観察するための透明窓16が配置されている。スイッチ15は、メンブレンスイッチ、粘着スイッチ、折りたたみ式スイッチ、及びこの技術分野で公知の取り外し可能な絶縁体スイッチとすることができる。基板層12は、紙、PVC、及びPETのような積層可能材料により形成され、最上層11は、PP、PVC、及びPETのような積層可能材料により形成される。電子時間インジケータデバイスは、スイッチ15を押すことにより作動し、このスイッチ15は、バッテリ14とチップ17との間の接点13を閉じて、電気がバッテリ14とチップ17との間を流れるようにすることができる。作動すると、チップ17内のカウンタがカウントを開始する。カウントが、予め記録されているカウント定数に等しくなると、チップ17が内部の電気的なゲートウェイを開いて、電荷がバッテリ14からディスプレイ18のうちの1つのディスプレイ18に流れることができるようになるので、ディスプレイ18の光学特性に視認可能な変化が生じる。異なるカウントを、ディスプレイ18の各ディスプレイ18に対応して予め登録しておくことができる。しかしながら、この種の電子インジケータは、手動で作動させる必要があり、この電子インジケータは、カウントされる時間にしか基づかないので、この電子インジケータが物理現象、化学現象、または他の環境現象による有害な刺激に実際に晒されたときには応答しない。更にこの電子インジケータは、使い捨て製品ラベルに実装するには高価であり、かつ実装するのが困難なバッテリを必要とする。
従って、モニタリング対象製品及び/又は包装に、容易にかつ高信頼度で取り付け可能なインジケータ構造が必要である。また、容易であり、かつ信頼性の高いセキュリティソリューションを提供して、製品偽造を防止するインジケータ構造が必要である。更に、エネルギー供給を必要とする電子回路及び/又は他の回路に給電する複雑かつ高価な機構を必要としない電子回路及び/又は他の回路を備えるインジケータ構造が必要である。更に、製造が容易であり、かつ製造コスト効率が高いインジケータ構造が必要である。更に、非改ざん証明、認証、安全モニタリング、販売促進などの目的に多機能的に使用されるインジケータ構造が必要である。
発明の概要
本発明の1つの目的は、物理現象、化学現象、または他のこのような環境現象により生じる刺激に晒されていることを、高信頼度で、かつ低コストで効率的に検出し、これらの現象に晒されているときの応答として、すなわち曝露の応答として電子情報を供給することにある。
本発明は、独立請求項に記載の内容を特徴としている。
本発明の1つの態様によれば、マイクロ流体デバイスが提供され、このマイクロ流体デバイスは、少なくとも1種類の物質で充填されるマイクロ流路と、このマイクロ流路との交差領域を形成する導体とを含み、このマイクロ流路に、またはこのマイクロ流路内の物質に対する物理現象または化学現象への曝露の結果、マイクロ流体デバイスが交差領域内の前記導体の電磁特性を制御するように動作する。
1つの実施形態によれば前記の物質は、交差領域内の2つの導体の間で作用するようになる。
1つの実施形態によれば導体が開放されると、2つの導体端部が交差領域内に形成されるようになり、物質が交差領域内の2つの導体端部の間で作用するようになる。
1つの実施形態によれば、インジケータデバイスが提供され、このインジケータデバイスにおいてマイクロ流体デバイスは、物理現象または化学現象に曝露されていることを、視覚、音声、嗅覚による通知及び/又は電磁的な通知を出力することにより通知する通知手段に接続される。
1つの実施形態によれば通知手段は、マイクロ流体デバイス内で生成される電気エネルギーで給電される。
本発明の別の態様によれば、以下のような方法が提供される。すなわちこの方法は、マイクロ流路との交差領域を形成する導体を含むマイクロ流体デバイスを、このマイクロ流路が少なくとも1種類の物質で少なくとも部分的に充填されるように設けるステップと、マイクロ流路または前記マイクロ流路内の物質が曝露される現象を検出するステップとを有しており、マイクロ流路またはマイクロ流路内の物質に対する現象の曝露の結果、マイクロ流体デバイスが交差領域内の導体の電磁特性を制御するように動作する。
1つの実施形態によればこの方法は、現象に曝露されていることを、視覚、音声、嗅覚による通知及び/又は電磁的通知を出力することにより通知するステップを含む。
従属請求項にはさらに別の実施形態が示されている。
本発明、及び本発明の有利な実施形態は、公知の時間インジケータ、「非改ざん証明」インジケータ、温度/時間インジケータ、及び温度インジケータ、及び販売促進デバイスの限界に関連して生じる多数の要求に対する新規の汎用性のある解決策を提示している。本発明の実施形態を活用することにより、物理現象、化学現象、または他の環境現象に曝露されるときに物体に対する多種多様な刺激に対する高信頼度の応答、及び実環境下での応答が可能になる。本発明の実施形態を更に活用することにより、電気的な応答または電子的な応答が可能になり、このような応答を利用して、有害な刺激が生じていることを効果的に通知することができる。本発明の実施形態を更に活用することにより、通知状態の変化を、光のような光媒体、音声のような音響媒体、及び/又は電界のような電気媒体により通知することができる。本発明の実施形態を更に活用することにより、現象自体が検出されると、電源供給を開始することができる、例えばバッテリ電解液を電極に接触させて電源を、例えば通知手段を含む付随する電子回路及び/又は光回路に供給することができる。本発明の実施形態を更に活用することにより、ブランド販売促進目的の有用性が保証される。本発明の実施形態を更に活用することにより、製造コストの低減が可能になるので、大量生産に適合することができ、かつ消費財包装に適用することができる。
本発明の種々の実施形態は、付随の目的及び利点とともに、特定の実施形態に関する以下の説明から、添付の図面を参照しながら一読することにより最も良く理解することができる。
本発明の種々の別の実施形態について以下に詳細に、かつ例示としてのみ、添付の図面を参照しながら説明する。
本出願において提示される本発明の実施形態は、添付の請求項の適用範囲に限定を加えるものとして解釈されてはならない。"comprise"という動詞、または当該動詞の他の全ての変形は、本文書では、オープンな限定として使用され、このオープンな限定は、列挙されていない特徴が更に存在する状況を排除しない。従属請求項において列挙されるこれらの特徴は、特にそうではないことが明示的に示されない限り、相互に自由に組み合わせることができる。本明細書において使用される"a", "an" 及び"at least one"という用語は、"one"(1つの)または"more than one"(1つよりも多くの)として定義される。本明細書において使用される"plurality"(複数の)という用語は、"two"(2つの)または"more than two"(2つよりも多くの)として定義される。本明細書において使用される"including"及び"having"という用語は、"comprising"として定義される。本明細書において使用される"another"(別の)という用語は、"at least a second or more"(少なくとも2番目以降)として定義される。"or"(または)という用語は、本文において明確にそれとは異なることを述べていない限り、"and/or"(及び/又は)を含む当該用語の意味として広く用いられる。用語が上述のように定義される場合、これらの定義は、異なる定義が請求項において与えられていない限り、または異なる定義が本記載/本明細書の他の箇所において与えられていない限り、適用されるものとする。
図1についての説明は、背景技術の説明に際して既に行っている。
図2には、少なくとも1つのマイクロ流路22と少なくとも1つの導体29とを備えたマイクロ流体デバイス20が示されており、これらのマイクロ流路22各々は、これらの導体29のうちの少なくとも1つの導体29と交差している。"intersect"(交差する)という動詞は本明細書においては、マイクロ流路22または導体29に対して何れかの角度で互いに交差する状態を指し、マイクロ流路22または導体29が互いに平行である(ゼロの角度をなす)状態を含む。これらの導体29のうちの少なくとも1つの導体29は、これらのマイクロ流路22のうちの少なくとも1つのマイクロ流路22との交差領域23a〜23dを、これらの交差領域23a〜23d内に形成する。導体29は、例えば1つの電子部品IC1の内部接続部材のような、何れかの電子手段(図示せず)の一部とすることができる、または1つの電子部品IC2を別の電子部品IC3に接続することができる。別の例では、導体29は、電源供給手段のような何らかの電気的な手段(図示せず)の一部とすることができる。
マイクロ流体デバイス20内のマイクロ流路22及び導体29の個数は限定されることがなく、かつ目指す機能によってのみ異なる。例えば、マイクロ流路22及び導体29は、互いに対して上方の位置で「挟まれる」ようにして、少なくとも1つのマイクロ流路22が各個別の導体29の間に多次元に配置されるようにすることもできる。マイクロ流路22及び導体29は更に、個別の「グループ」になるように配置して、1つのグループに属するマイクロ流路22及び導体29が互いに隣接するようにすることもできる。第1グループ及び第2グループに属するマイクロ流路22及び導体29は、第1グループのマイクロ流路22、及び第2グループに属するマイクロ流路22が、互いに隣接することがないように配置することができる(例えば、図2における第1グループに属する左側のマイクロ流路22、及び第2グループに属する右側のマイクロ流路22)。しかしながら、導体29及び/又はマイクロ流路22のうちの幾つかが、幾つかのグループまたは全てのグループに属するようにしてもよい。直線構造の他に、マイクロ流体デバイス20内のマイクロ流路22及び/又は導体29を、分岐させたり、屈曲させたり、曲がりくねらせたり、サンドイッチ状にしたりすることができ、または流路及び導体に関して公知の他の何れかの代表的な構造を有するようにすることができる。2つ以上の交差マイクロ流路22は、2つの導体29の間に挟まれるようにして用いることもできる。
1つのマイクロ流路22には、少なくとも1種類の物質が少なくとも部分的に充填される。マイクロ流路22は、少なくとも1種類の物質を収容するように構成される。例えば、マイクロ流路22、好適にはマイクロ流路22の内側表面を、少なくとも1種類の物質から成る層で少なくとも部分的に被覆することができる。マイクロ流路22は更に、少なくとも1つの隔室27a〜27eを備えることができ、これらの隔室27a〜27eは、少なくとも1種類の物質を収容するように構成される。これらの物質の各々は、個別の隔室27a〜27eに、マイクロ流路22の製造プロセス中に配置され、物質のこの配置は、物質の初期配置及び形態(初期状態)に対応する。物質の初期配置(初期状態)では、これらの物質は、特定の品質を有する何れかの固体物質、ゲル状物質、または流体物質とすることができる。流体(fluid)とは、本明細書においては、空気及び水分を含む何れかの液体またはガス、或いは何れかの流動可能物質であると理解される。物質初期状態にある物質は、一括混合されている異なる材料または成分を含むことができる。
幾つかの実施形態では、マイクロ流路材料自体、またはマイクロ流路の少なくとも一部を形成する材料は、「物質(substance)」という単語が、本出願全体を通じて使用されていることから、或る種類の物質である。例えば、マイクロ流路22自体は、特定の材料(第1の物質)により形成され、マイクロ流路22には、空気(第2の物質)が充填される。別の例では、マイクロ流路22の隔室壁は、ポリマー(第1の物質)により形成され、隔室27a〜27eには、空気(第2の物質)が充填される。別の例では、2種類の物質を互いから分離するように構成されるマイクロ流路22の第1隔室27aと第2隔室27bとの間の壁は、特定の材料(第1の物質)により形成され、第1隔室27aには、空気(第2の物質)が充填され、第2隔室27bには、特定の流体(第3の物質)が充填される。
1つの例によれば、物質は単独で、特定の条件が満たされる場合に反応することができるので、最終物質はその物質の状態(変化状態)を、その物質の初期状態に対して変化させる。1つの例によれば、物質は、特定の条件が満たされる場合に別の物質と反応することができるので、最終物質はその物質の状態を、物質の一方または両方の初期状態に対して変化させる(変化状態)。1つの例によれば、マイクロ流路22自体は、前に説明したように、特定の条件が満たされる場合にマイクロ流路22内の物質と反応することができる材料により形成することができる。1つの例によれば、マイクロ流路22はまた、特定の条件が満たされる場合に、上述のマイクロ流路22に隣接する別のマイクロ流路22内の物質と反応することができる材料により形成することができる。最後の事例では、これらのマイクロ流路22は、交差領域23a〜23d内で互いに接触することが好ましい。物質への影響にのみ起因する、または物質の間の相互作用に起因する反応(または作用)は、これらの物質のうちの少なくとも1種類の物質に起こる何れかの物理反応または化学反応、或いは他のこのような反応の結果である。これらの反応(または作用)の例について、後で更に詳細に説明する。物質の最終配置(変化状態)では、この物質は、特定の品質を有する何れかの固体物質、ゲル状物質、または流体物質とすることができる。この物質は、1種類以上の他の物質を少なくとも部分的に化学結合させる、吸収する、濾過する、輸送する、または伝達することができる多孔質材料とすることもできる。
マイクロ流体デバイス20は、マイクロ流路22に、またはマイクロ流路22内の物質に対する物理現象または化学現象、或いは他の環境現象に曝露される可能性がある。このような現象への曝露が、特定の閾値により定義される特定の条件を満たす場合、この物質は、その形態または状態を初期状態(曝露前の状態)から変化状態(すなわち、曝露後の時点における状態)に変化させることができる。この物質の形態または状態の変化をどのようにして検出し通知することができるかについて、後で説明することとする。この物質の閾値は、特定の事前設定限界値に対する現象への曝露量の大きさに基づいて、すなわち現象によって引き起こされる実際の刺激が、事前設定限界値よりも大きいか、小さいか、または事前設定限界値に等しいか、或いは事前設定限界値の間にあるかどうかに基づいて設定することができる。別の構成として、この物質の閾値は、現象への曝露量に対する物質の元の特徴量に基づいて設定することができ、限界値に関する事前設定値の決定が、必須であるという訳では全くない。この物質の閾値はまた、この物質の人工的な作用、プログラムされた作用、または他のこのような作用、及び/又は特徴に基づいて設定することができる。本出願の観点では、物理現象及び/又は化学現象として、例えば時間、温度、圧力、衝撃、機械的衝撃、傾斜、放射、電気現象、光現象、漏れ、流体注入、または他のこのような環境現象または外部現象を挙げることができる。物理現象及び/又は化学現象として更に、これらの現象の何れかの組み合わせを挙げることができる。
マイクロ流路22が、またはマイクロ流路22内の物質が物理現象または化学現象に曝露されると、物質は、曝露量に対する特定の閾値が満たされる場合に作用するようになる。しかしながら、限界値を定義する必要は全くなく、この場合、曝露によって、曝露が生じている間は、作用がずっと引き起こされる。このような作用の結果、物質は、特定の現象に特定の閾値に収まる曝露量で曝露されるときに、または曝露中ずっと、この特定の物質に関して代表的な状態変化または形態変化を起こす。曝露時のこのような状態変化または形態変化とは、物質が、固体から流体に、固体からゲルに、ゲルから流体に、またはこれらの変化とは逆の方向に変化することである。この場合、流体は、何れかの液体、ガス、または他のこのような流動可能な物質であり、例えば、空気、水分、アルコール、及び有機溶剤が、本出願における流体である。このような状態変化または形態変化はまた、ほんの少しの例を挙げると、物質の膨張または収縮、別の物質による物質の吸収(漏れ、滲出、滲み込み、濡れなどを含む)、粘度の変化、別の物質との混ざり合い、物質の分解、物質の劣化または破断(例えば、マイクロ流路からのガスの流出)などとすることもできる。
従って、マイクロ流路22が、またはマイクロ流路22内の物質が物理現象または化学現象に曝露されると必ず、物質が状態変化または形態変化を起こすことによって、特定の反応がマイクロ流体デバイス20内で生じることになる。以下の記述では、これらの反応の幾つかの例が与えられるが、これらの反応は、これらの例には限定されない。これらの反応として、マイクロ流路22に沿った物質の移動、例えばマイクロ流路22に沿った物質の毛細管作用による流れ、またはマイクロ流路22a,22bの何れかの部分を通過する、またはマイクロ流路22の隔室27a〜27eの間の壁を通過する物質の毛細管作用による流れを挙げることができる。種々ある反応の中でもとりわけ、これらの反応として更に、圧力差、疎水性、親水性、液体注入、破断、電磁界、電位、光刺激、温度、時間、膨張、収縮、漏れなどによる移動を挙げることができる。これらの反応では更に、マイクロ流路22内の物質が状態変化または形態変化して、物質がマイクロ流路22に沿って移動する必要がなくなる。従って、物質は、物質の初期配置にある物質の状態または形態を曝露時に変化させることができる。当業者には自明であるが、曝露に対する物質の作用は、マイクロ流路22の特徴、例えばマイクロ流路22の寸法、構造、及び材料によっても異なる。例えば、2つの交差するマイクロ流路22が、異なる深さを有する場合、この技術分野で公知のように、交差部をブリッジにより接続する特定の構造を使用することができる。
図2に例示したように、左側のマイクロ流路22は、物質を収容する3つの隔室27a〜27cを備え、第1、第2、及び第3隔室には、第1、第2、及び第3の物質がそれぞれ充填される。物質の初期配置では、第2隔室27bの第2の物質は、第1交差領域23aに配置され、第3隔室27cの第3の物質は、第2交差領域23bに配置される。物質の初期位置では、第1隔室27aの第1の物質は、何れの交差領域23a〜23dにも配置されていない。マイクロ流路22の何れかの部分に対する、またはマイクロ流路22の隔室27a〜27cの第1、第2、または第3の物質のうちの何れか1種類の物質に対する物理現象または化学現象によって、マイクロ流体デバイス20は、曝露状態の物質に関して、マイクロ流路22の特徴、例えばマイクロ流路22の隔室27a〜27cの寸法、構造、及び材料に関して典型的な特定の態様で作用する。例えば、隔室27aの第1の物質が現象に曝露される場合、曝露時に、第1の物質が、この物質の状態を変化させ、この物質の変化状態において、第1の物質から隔室27bの第2の物質に力が作用して、第2の物質が第3隔室27cに移動する、例えば毛細管作用により流れ、この場合、第2の物質が、例えば第3の物質と混ざり合う。このような作用の結果、この時点で第1交差領域23aに配置されている物質だけでなく、この時点で第2交差領域23bに配置されている物質は、初期配置にある第2及び第3の物質のそれぞれとは異なる物理及び/又は化学特性を持つようになる。図2には示していないが、マイクロ流路22には更に、3種類よりも多くの物質を充填することができ、この場合、各物質は、マイクロ流路22の異なる隔室27a〜27eに配置される。
図2に示す別の例によれば、右側のマイクロ流路22は、物質を収容する2つの隔室27d〜27eを備え、第1及び第2隔室には、第1及び第2の物質がそれぞれ充填される。物質の初期配置では、第1隔室27dの第1の物質は、第1交差領域23cに配置され、第2隔室27eの第2の物質は、第2交差領域23dに配置される。マイクロ流路22の何れかの部分に対する、またはマイクロ流路22の隔室27d〜27eの第1または第2の物質に対する物理現象または化学現象によって、マイクロ流体デバイス20は、特定の態様で作用する。例えば、隔室27dの第1の物質が現象に曝露される場合、曝露時に、第1の物質がこの物質の状態を変化させ、物質の変化状態において、第1の物質から隔室27eの第2の物質に力が作用して、第2の物質が第1隔室27dに移動し、例えば毛細管作用により第1隔室27dに流れる。このような作用の結果、この時点で第1交差領域23cに配置されている物質だけでなく、この時点で第2交差領域23dに配置されている物質は、これらの物質の初期配置にある第1及び第2の物質のそれぞれとは異なる物理及び/又は化学特性を持つようになる。
図2には示していないが、マイクロ流路22には更に、1種類の物質だけを完全に充填することができ、この場合、マイクロ流路22自体が、隔室27a〜27eも形成する。物理現象または化学現象に曝露されると、物質はその状態を変化させるので、この物質の物理及び/又は化学特性が変化する。この現象に曝露されると、物質は物質状態を変化させるので、物質初期状態にある元の物質は、少なくとも部分的に、別の物質に置き換えられるということも可能である。例えば、曝露時に、液体(初期状態)がマイクロ流路22から流出し、空気(変化状態)が液体に置き換わる、または圧縮空気(初期状態)がマイクロ流路22から流出し、新鮮空気(変化状態)が圧縮空気に置き換わる。
交差領域23では、物理現象または化学現象に曝露される前に、少なくとも1種類の物質で少なくとも部分的に充填されているマイクロ流路22を、図2及び3(a)〜(f)に示すように、少なくとも1つの導体29に少なくとも部分的に接触するように構成する。マイクロ流路22内の物質はまた、例えばマイクロ流路22及び導体29を、物質を導体29に接続することができるように当接させると、導体29に少なくとも部分的に接触することができる。例えば、最初の段階において、マイクロ流路22及び導体29が当接すると、2つの導体29または2つの導体端部39a,39bの間のスペースに、マイクロ流路22内の物質を充填することが可能になり、マイクロ流路22自体を、2つの導体29または2つの導体端部39a,39bに接触するように構成することが可能になる。上記説明によれば、物理現象または化学現象に曝露される前に、マイクロ流路22は、またはマイクロ流路22及びマイクロ流路22内の物質初期状態にある物質は、少なくとも1つの導体29に、同じ平面で交差する、または互いに隣接して交差することにより、マイクロ流路22が、またはマイクロ流路22及びマイクロ流路22内の物質が、導体29に少なくとも部分的に、交差領域23で接触するように構成される。物理現象または化学現象に曝露されると、物質変化状態にある物質は、少なくとも1つの導体29に、交差領域23で接触するように構成される。これは、本出願において前に説明したように、物質変化状態にある物質としてのマイクロ流路22にも当てはまる。
図3(a)〜(f)は、少なくとも1つの導体29が、少なくとも1つのマイクロ流路との交差領域を、マイクロ流体デバイス20の幾つかの実施形態に従って形成する様子を示す例示的な構造の断面図を表わしている。マイクロ流体デバイス20では、導体29及びマイクロ流路22は、基材31の上に、例えば印刷プロセスを使用して作製される。図3(a)では、物質が充填されているマイクロ流路22は、2つの導体29に接触するように構成される。この事例では、曝露前に、交差領域23は、これらの導体29及びマイクロ流路22の共通界面に、またはこれらの導体29及びマイクロ流路22内の物質の共通界面に当接し、曝露時に、これらの導体29及び物質の共通界面に当接する(マイクロ流路22が物質として構成される場合においてもこれがあてはまる)。
図3(b)では、物質が充填されているマイクロ流路22は、導体29の2つの導体端部39a,39bに接触するように構成される。この事例では、曝露前に、交差領域23は、導体端部39a,39b及びマイクロ流路22の共通界面に、または導体端部39a,39b及びマイクロ流路22内の物質の共通界面に当接し、曝露時に、導体端部39a,39b及び物質の共通界面に当接する(マイクロ流路22が物質として構成される場合においてもあてはまる)。
図3(c)では、物質が充填されているマイクロ流路22aは、導体29の2つの導体端部39bのうちの一方の導体端部39bに接触するように構成され、別の導体29はマイクロ流路22aに隣接している。この事例では、曝露前に、交差領域23は、これらの導体端部39bのうちの一方の導体端部39b、及び別の導体29、及びマイクロ流路22aの共通界面に当接する、またはこれらの導体端部39bのうちの一方の導体端部39b、及び別の導体29、及びマイクロ流路22a内の物質の共通界面に当接し、曝露時に、これらの導体端部39bのうちの一方の導体端部39b、及び物質(マイクロ流路22が物質として構成される場合においても)の共通界面に当接する。しかしながら、図3(c)では、図3(a)の例も、または図3(b)の例も、単独で、または併せて適用できるので、交差領域23は、マイクロ流路22bに、または隣接するマイクロ流路22a、22bの組み合わせに当接する。後者の事例では、隣接するマイクロ流路22a、22bの内部の物質は、例えば曝露時に混合する、または混ざり合う。例えば、導電性物質がマイクロ流路22a内にあり、非導電性物質がマイクロ流路22b内にある場合、導体端部39b及び別の導体29は電気的に接続される。或いは、別の例では、マイクロ流路22a、22bの両方の内部の物質が導電性である場合、2つの導体端部39a、39b、及び別の導体29は互いに電気的に接続される。
図3(d)では、別の物質が充填されている2つの隣接するマイクロ流路22a、22bは、導体29の2つの導体端部39a、39bに接触するように構成される。この事例では、曝露前に、3つの異なる可能性が存在する:交差領域23が(i)導体端部39a、39b、及びマイクロ流路22a(または、マイクロ流路22a内の物質)の共通界面に当接する、または(ii)導体端部39a、39b、及びマイクロ流路22b(または、マイクロ流路22b内の物質)の共通界面に当接する、または(iii)導体端部39a、39b、及び隣接するマイクロ流路22a、22bの組み合わせの共通界面に当接する。曝露時、交差領域23は、導体端部39a、39b、及び物質の共通界面に、可能性(i)〜(iii)に従って当接する(マイクロ流路22a、22bが物質として構成される場合においてもあてはまる)。図3(e)では、別の物質が充填されている3つの隣接するマイクロ流路22a、22bは、導体29の2つの導体端部39a、39bに接触するように構成され、この場合、マイクロ流路22cは、基材31内に埋め込まれる。この事例では、曝露前に、6つの異なる可能性が存在する:交差領域23が上述の如く、(i)〜(iii)に従って当接する、または(iv)導体端部39a、39b、及び基材31内に埋め込まれるマイクロ流路22c(または、マイクロ流路22c内の物質)の共通界面に当接する、または(v)2つの導体端部39a、39b、及び2つの導体端部39a、39bを有する導体29に隣接するマイクロ流路22a、22cの組み合わせの共通界面に当接する、または(vi)導体端部39a、39b、及び3つの隣接するマイクロ流路22a、22b、22cの組み合わせの共通界面に当接する。
曝露時、交差領域23は、導体端部39a、39b、及び物質の共通界面に、可能性(i)〜(vi)に従って当接する(マイクロ流路22a、22b、22cのうちの何れかのマイクロ流路が物質として構成される場合においても)。図3(f)では、マイクロ流路22は、基材31内に部分的に埋め込まれ、曝露前に、マイクロ流路22の埋込み部分には、第1の物質が充填され、マイクロ流路22の他の部分には、第2の物質が充填される。マイクロ流路22は、導体29の2つの導体端部39a、39bに接触するように構成される。曝露時、第1の物質が、例えば膨張して、または膨らんで、第1の物質が、2つの導体端部39a、39bの間のスペースの少なくとも或る部分を充填するようになる(図示せず)。この事例では、交差領域23は、導体端部39a、39b、及び物質変化状態にある第1の物質の共通界面に当接する、または導体端部39a、39b、及び第1及び第2の物質の組み合わせの共通界面に当接する。
マイクロ流路22またはマイクロ流路内の物質に向かう物理現象または化学現象に曝露される結果として、マイクロ流体デバイス20は、図2に示すように、交差領域23a〜23dの導体29の電磁特性を制御するように構成される。「電磁特性electromagnetic characteristics」という用語は、電気、磁気、及び光放射、及びこれらの要素の相互依存性を含むものとして定義される。この用語はまた、電子軌道群の間の相互作用により生じる全ての形態の化学現象を含む。例えば、物質が物質変化状態にある場合、その物質が電界を透過させる性質、すなわち誘電率は通常、物質初期状態にある物質と比べて異なる。誘電率は、電界に応じた物質の誘電性及び誘電分極、例えば容量に関連する。コンデンサは通常、高誘電率の誘電材料により形成される。別の例として、物質変化状態にある物質は、物質初期状態にある物質とは異なる態様で磁界に応答することができる、すなわちその物質の透磁率が変化する。別の例として、物質が物質変化状態にある場合、その物質が電流を流すことができる性質、すなわち導電率及び抵抗率は、物質初期状態にある物質と比べて異なる。物質の導電率、誘電率、及び透磁率はまた、その物質に印加される電界または磁界の周波数及び強度に依存する。物質の導電率、誘電率、及び透磁率はまた、温度及び湿度のような環境パラメータに依存する。
マイクロ流体デバイス20では、物質は、導体29の電磁特性を制御するように作用するようになる。別の構成として、マイクロ流路22は、またはマイクロ流路22及び物質は、導体29の電磁特性を制御するように作用するようになる。この事例では、マイクロ流路22は、特定の条件が満たされる場合に、それ自体で反応する、または別の物質と反応することができる材料により形成される。曝露時、物質変化状態にある物質は、物質初期状態にある物質とは異なる導電特性、抵抗特性、または誘電特性を有することにより、導体の導電率は、この物質が導体29に接触すると変化する。
マイクロ流体デバイス20の1つの実施形態によれば、2つの導体29は、マイクロ流路22との交差領域23a〜23dを形成することにより、マイクロ流路22が、これらの導体29の間に、マイクロ流路22が初期状態にあるときに位置するようになる。曝露時に、物質が、2つの導体29の間で交差領域23a〜23dにおいて作用するように配置され、かつこの物質が2つの導体の間のスペースを充填する場合、問題の物質の特性によって異なる特定の電磁現象が2つの導体の間に生じる。この電磁現象は、2つの導体29の導電率を交差領域23a〜23dにおいて制御し、これらの交差領域23a〜23dでは、2つの導体、及びこれらの導体の間の物質が、例えば電気回路の一部を形成する。
マイクロ流体デバイス20の1つの実施形態によれば、導体29は更に、マイクロ流路22との交差領域23a〜23dを形成することにより、導体29を開放して、2つの導体端部39a、39bを交差領域23a〜23d内に形成することにより、マイクロ流路22が、導体29の2つの導体端部39a、39bと同じ平面で互いに交差するようになる。導体は、スペース(間隔)を交差領域23a〜23d内の導体端部39a、39bの間に設ける場合に開放され、導体29は、絶縁物質、例えば空気をこのスペースに充填する場合に導体ではなくなる。次に、曝露時、物質は、2つの導体端部39a、39bの間で作用するように配置され、この物質は、交差領域23a〜23d内の導体端部39a、39bの間のスペースを充填することにより、特定の電磁現象を2つの導体端部39a、39bの間で生じさせる。この電磁現象は、交差領域23a〜23d内の導体29の2つの導体端部39a、39bの導電率を制御し、これらの交差領域23a〜23dでは、2つの導体端部39a、39b、及びこれらの導体端部の間の物質が、例えば電気回路の一部を形成する。
2つの導体の間の、または2つの導体端部39a、39bの間の別の電磁現象(接続部の導電率)は、物質の導電特性、誘電特性、誘電率特性、及び/又は透磁率特性により制御することができる。従って、曝露時、抵抗性接続、容量性接続、誘導性接続、または磁性接続を、例えば電気回路の一部を形成する2つの導体29の間に、または2つの導体端部39a、39bの間に形成することができる。
マイクロ流体デバイス20の1つの実施形態では、曝露に起因する作用は、2つの導体29の間の、または導体29の導体端部39a、39bの間の交差領域23a〜23d内の物質の電気特性及び誘電特性の変化として検出されるので、これらの導体29の導電率を制御することができる。物理現象または化学現象に曝露されると、交差領域23a〜23d内の物質は、この物質の状態を変化させるので、物質変化状態において、交差領域23a〜23d内の物質が、物質初期状態にある物質とは異なる電気特性及び誘電特性を持つようになる。例えば、物質初期状態では、交差領域23a〜23d内の物質は、良好な絶縁体とすることができ、物質変化状態では、交差領域23a〜23d内の物質は、極めて良好な導体とすることができる、または初期状態の物質、及び変化状態の物質は共に、良好な絶縁体と極めて良好な導体との間の何れかの物質となり得る。物質初期状態にある物質、及び物質変化状態にある物質は、互いに必ず依存する必要があるということは全くないが、その理由は、1番目の物質が2番目の物質とは全く異なる材料により構成することができるからである、および/または1番目の物質が2番目の物質とは全く異なる状態(固体、流体、ゲル)となり得るからである。しかしながら、物質初期状態にある物質、及び物質変化状態にある物質は、同じ材料により構成することができる、および/または同じ状態となり得るのであり、物質変化状態にある物質は、物質初期状態にある物質を含むことができる。例えば、物質初期状態にある物質、及び物質変化状態にある物質は、混ぜ合わせることができる、または互いに混合することができる、または物質変化状態にある物質だけが、この物質の状態(固体、流体、ゲルの中から選択される状態)を、物質初期状態にある物質の状態から変化させることができる、或いは物質変化状態にある物質だけが、この物質の形状またはサイズ(例えば、膨張する、または収縮する)を、物質初期状態にある物質の形状またはサイズから変化させることができる。
マイクロ流体デバイス20の1つの実施形態では、曝露時、物質は、交差領域23a〜23d内の導体29を電気的に接続する、または遮断する。曝露時に、2つの導体29の間の、または2つの導体端部39a、39bの間の物質が、純粋な絶縁体であり、この絶縁体が、2つの導体29の間の、または導体29の2つの導体端部39a、39bの間のスペースを充填している場合、2つの導体29の間の、または導体29の2つの導体端部39a、39bの間の電気接続が行なわれることはない。曝露時に、2つの導体29の間の、または2つの導体端部39a、39bの間の物質が導電材料であり、この導電材料がこのスペースを充填している場合、2つの導体29の間の、または導体29の2つの導体端部39a、39bの間の電気接続が行なわれる。後者の事例では、2つの導体29の間の、または2つの導体端部39a、39bの間の電気接続(接続の導電率)は、物質の導電特性及び/又は誘電特性によって制御することができる。このように、マイクロ流体デバイス20によって、マイクロ流体スイッチング素子としての動作が可能になる。
マイクロ流体デバイス20の1つの実施形態では、曝露時、物質が導体29に接触しているときに、物質が、導体29に接続される電解液を形成するようになる。物質変化状態では、物質は、それが可動イオンを含む場合に電気分解に適する。曝露時に、2つの導体29の間の、または2つの導体端部39a、39bの間の物質が電解液であり、この電解液が、2つの導体29の間の、または導体29の2つの導体端部39a、39bの間のスペースを充填している場合、電気分解、すなわちイオン性物質が移動することによる電流の流れが、2つの導体29、または導体29の2つの導体端部39a、39bにより形成される2つの電極の間で生じる。物質変化状態にあり、かつ電解液として作用するために適する材料により形成される物質を使用する場合、2つの導体29、及び2つの導体の間の物質、または2つの導体端部39a、39b、及び2つの導体端部39a、39bの間の物質は、電気エネルギーを供給することができる。例えば、この電気エネルギーは、物質が電解液として作用するために適する場合に、バッテリ動作または燃料電池動作から生じ得る。このように、物理現象または化学現象に曝露される結果として、マイクロ流体デバイス20が、電源動作を、例えばバッテリ電解液を電極群、すなわち2つの導体29、または導体29の2つの導体端部39a、39bに接触させることにより開始するようになる。電気エネルギーは、2つの導体29を通って、または2つの導体端部39a、39bを有する導体29を通って電気回路に流すことができる。2つの導体29、及び2つの導体29の間の物質は、または2つの導体端部39a、39b、及び2つの導体端部39a、39bの間の物質は、例えば電気回路の一部を形成することができる、またはこの電気回路に接続される。
マイクロ流路22に2種類の異なる物質が充填されている構成のマイクロ流体デバイス20の1つの実施形態では、複数の導体29は、マイクロ流路22と交差して、マイクロ流路22及び複数の導体29が複数の交差領域23a〜23dを形成している。図4には一例として、現象感応型2種流体スイッチング素子(phenomenon sensitive bi-fluidic switching device)とも呼ばれるマイクロ流体デバイス20が示されている。これらの導体29の各々は、電気回路または電子回路IC1〜IC4に電気的に接続されて、複数の回路IC1〜IC4が、マイクロ流体デバイス20内の複数の導体29に接続されるようになる。マイクロ流路22内の2種類の物質の各物質は、またはマイクロ流路22自体は、時間、温度、圧力、衝撃、機械的衝撃、傾斜、放射、電気現象、光現象、漏れ、流体注入、または他のこのような環境現象または外部現象のような特定の物理現象または化学現象を検出する。例えば、マイクロ流路22内の物質、マイクロ流路22自体、または物質及びマイクロ流路22の両方は、熱感応性ポリマー、電界感応型ポリマー、または多数の異なるスマートポリマーにより形成することができる。また、幾つかの選択肢、及び組み合わせを用いることができる。曝露前、例えばこれらの物質のうちの一方の物質が導電性物質であり、他方の物質が非導電性物質であり、更にマイクロ流路22には、導電性物質が、非導電性物質などが充填されている他の2つの隔室27a、27cの間の隔室内に収容されるように充填することができる。曝露時、複数の電気回路または電子回路IC1〜IC4は、マイクロ流路22に沿った交差領域23a〜23d内の非導電性物質及び導電性物質の移動によって異なるが、このような現象がマイクロ流路22内の2種類の物質、またはマイクロ流路22自体によって感知されることに起因して、スイッチオンまたはスイッチオフされる。容器44をマイクロ流路22の両端に設けて、物質を格納する、または収容する。異なる現象に起因して、異なる電気回路または電子回路IC1〜IC4が接続されるか、または接続されないかの何れかになることによって、電気動作が回路IC1〜IC4により行なわれる電気動作に切り替わる、または内容が回路IC1〜IC4で実行される内容(例えば、メモリチップ、カウンタ、プロセッサなど)に切り替わる。
マイクロ流体デバイス20の1つの実施形態では、物理現象または化学現象への曝露に起因する作用は、導体29の電磁特性により制御される電子現象または電気現象として検出される。外部への通知は、検出される電子現象または電気現象を利用して行なうことができることにより、マイクロ流体デバイス20に電気的に接続される通知手段40との接続を制御することができる。
例えば、図4のマイクロ流体デバイス20では、通知は、通知手段40をマイクロ流体デバイス20に接続することにより行なうことができる。この例では、曝露時、外部への通知は、異なる電気または電子回路IC1〜IC4により行なわれる電気動作への切り替わり、及び/又は電子回路IC1〜IC4で実行される内容への切り替わりに基づいて行なわれ、これらの切り替わりは、通知手段40によって検出され、ついで通知される。
図5には、基材31に組み付けられる、例えば印刷されるインジケータデバイス45の一例が描かれている。インジケータデバイス45は、これまでに説明してきたように、1つの実施形態によるマイクロ流体デバイス20を備え、このマイクロ流体デバイス20は通知手段40に電気的に接続することができるので、物理現象または化学現象への曝露を、外部に通知することができる。通知手段40は、視覚通知、音声通知、発香通知、及び/又は電磁的通知を曝露時に行うように構成される。インジケータデバイス45は更に、電気回路または電子回路IC1、IC2のような他の電気手段を備えることができる。
図5は、シールとして使用することにより改ざんを防止することができるインジケータデバイス45の一例を示している。マイクロ流路22及び交差導体29は基材31上に印刷することができ、例えばラベル材料を対象物体、例えば小包またはDVD収納ボックスに貼り付けることができる。基材31の突出部分42は、マイクロ流路22の一部を含み、突出部分42は、保護対象の物体のシール部分に覆い被さっている。更に、インジケータデバイス45は、マイクロ流体デバイス20内の導体29に電気的に接続されるRFアンテナ40、好ましくはRFIDアンテナを備える。電子回路IC1、IC2、例えばメモリチップが更に、マイクロ流体デバイス20の導体29に接続されて、1つの実施形態によるマイクロ流体デバイス20を用いて、電子回路IC1、IC2とRFアンテナ40との間の導体29の電磁特性を制御することができるようになっている。2つの交差領域23a、23bがこの例において、形成される。曝露前、マイクロ流路22は少なくとも、非導電性物質を交差領域23aの隔室27b内に含み、導電性物質を交差領域23bの隔室27c内に含み、これらの前記物質は、マイクロ流路22の端部27a,27dに位置するエアロックを利用して維持される。従って、初期段階では、チップIC1がRFIDアンテナ40に接続され、チップIC2は、図6(a)に示すように、RFIDアンテナには接続されず、従って、RFIDアンテナは、チップIC2で実行される内容を有している(曝露前)。RFIDデバイス(タグ)は、RFIDアンテナと、IDコードを格納するメモリを有するマイクロチップと、を含む。曝露時、例えば突出部分42を破断することにより、突出部分42の端部27dのエアロックが開放され、圧力差によって、導電性物質がマイクロ流路22に沿って、例えば隔室27cから隔室27bに移動して、導電性物質が図6(b)に示すように、交差領域23aに配置される。同時に、隔室27b内の非導電性物質が、交差領域23aから端部27aに向かって移動し、隔室27cが大気で満たされて、マイクロ流路22が、交差領域23bにおいて「空に」なる。大気は非導電性物質である。マイクロ流体デバイス20はこの場合、スイッチング素子として機能し、このスイッチング素子は、チップIC2に電気的に接続されているRFIDアンテナ40をスイッチオフし、チップIC1に電気的に接続されているRFIDアンテナ40をスイッチオンする(曝露時)。従って、RFIDアンテナ40で実行される内容の切り替え、例えばアンテナ特性の切り替えが行なわれており、マイクロ流路22、またはマイクロ流体デバイス20のマイクロ流路22内の物質に対する物理現象または化学現象の曝露の結果として、新規の内容が外部に通知される。この例によれば、インジケータデバイス45は、通知を電磁無線周波数信号に基づいて出力し、この信号は、例えばRFIDリーダ装置またはRFID受信機を有する何れかのモバイル端末機器によって検出することができる。無線周波数識別(RFID)の他に、例えばRFIDを利用する近距離無線通信(NFC)による識別を適用して、通知をそれぞれ行なうことができる。
別の例によれば、インジケータデバイス45において、通知手段40は、有機発光ダイオード(OLED)を備えることができ、この有機発光ダイオードの電界発光層は、膜または有機化合物により構成される。OLEDは、印刷プロセスによって、基材31を形成する平坦キャリアに印刷で形成することができる。OLEDで実行される内容は、マイクロ流体デバイス20によって、RFIDアンテナに関連して説明した原理と同じ原理で制御することができる。この例によれば、インジケータデバイス45が視覚通知を出力し、この視覚通知を更に視覚的に検出することができる。
別の例によれば、インジケータデバイス45において、通知手段40は、音声スピーカまたはブザーを備えることができ、音声スピーカまたはブザーの出力内容は、マイクロ流体デバイス20によって、RFIDアンテナに関連して説明した原理と同じ原理で制御することができる。この例によれば、インジケータデバイス45が音声通知を出力し、この音声通知は、知覚することによって検出することができる。
別の例によれば、インジケータデバイス45において、通知手段40は、香りを出すように構成される発香手段を備えることができ、この発香手段は、マイクロ流体デバイス20によって、上に説明した原理と同じ原理で制御することにより、発香手段の発香組成物の切り替えが行なわれる。この例によれば、インジケータデバイス45が嗅覚通知を出力し、この通知は、知覚することによって検出することができる。
上述の通知手段40の何れかの組み合わせを含むインジケータデバイス45を用いることができる。
インジケータデバイス45の1つの実施形態では、通知手段40、例えばOLEDまたはRFIDアンテナ/タグには、マイクロ流体デバイス20から給電することができる。また、電気または電子回路IC1〜IC4のうち、マイクロ流体デバイス20に接続される1つ以上の電気または電子回路には、マイクロ流体デバイス20から給電することができる。前に説明したように、マイクロ流体デバイス20は、電源供給動作を、例えばバッテリ電解液(物質変化状態にある物質)を2つの導体29、または導体の2つの導体端部39a、39b(電極)に接触させることにより、開始することができる。従って、通知手段40には、2つの導体29の間の、または電極を形成する2つの導体端部39a、39bの間の電解作用(例えば、バッテリ電解液、燃料電池電解液)により、この手段の電源電圧がマイクロ流体デバイス20から給電される。生成電源電圧は、2つの導体29を介して、または2つの導体端部39a、39bを有する導体29を介して電気または電子回路IC1〜IC4に、好ましくは通知手段40に流すことができる。この実施形態によるインジケータデバイス45は、他の電源を全く必要としない。
バッテリのような電源を備えるインジケータデバイス45の1つの実施形態では、通知手段40に、他の電気または電子回路IC1〜IC4にも、これらの手段及び回路の電源電圧を電源から給電することができる。電源は、インジケータデバイス45に搭載される電気回路IC1〜IC4のうちの1つの電気回路とすることができる。導電性物質が2つの導体29の間の、または2つの導体端部39a、39bの間のスペースを充填している場合、電源電圧は、導体線を経由して供給することができる。しかしながら、この場合、マイクロ流体デバイス20は、インジケータデバイス45内の電力消費量を、電源を本発明による現象への曝露により生じる作用に応じてスイッチオン及びオフすることにより制御することができる。
具体的な本発明は、通知手段40が、通知を特定の方法で出力するように構成される場合に、ブランド販売促進デバイスとして使用することもできる。例えば、通知手段40は、ロゴの形に並べたOLED、特定の呼び出し音を出力する音声スピーカ、特定の香りを発する発香手段など、またはこれらの要素の何れかの組み合わせとして実装することができる。
図7には、物理現象または化学現象への曝露の検出を行ない、その曝露に対する応答として情報を供給する1つの実施形態による方法のフローチャートが示されている。ステップ110において、物理現象または化学現象の検出がスタートする。従って、マイクロ流路との交差領域を形成する導体を備えるマイクロ流体デバイスが準備され、このマイクロ流路には、少なくとも1種類の物質が少なくとも部分的に充填されている。ステップ111では、マイクロ流路内の物質、または物質としてのマイクロ流路とすることができる物質が物理現象または化学現象に曝露され、ステップ112では、物質が曝露に対して、この物質の元来の、人工的な、プログラムされた、または他のこのような作用、及び/又は特徴に応じて反応する。物理現象または化学現象への曝露に対して反応することにより、物質はその状態を変化させ、導体とこの物質が反応することにより、特定の電磁効果が交差領域において発生する。従って、マイクロ流体デバイスは、交差領域内の導体の電磁特性が、物質が曝露されることに応じて制御されるように作用するようになる。従って、電磁特性は、物理現象または化学現象によってステップ113において調整される。次に、ステップ114において、物理現象または化学現象を電磁特性に基づいて検出し、ステップ115において、それらの物理現象または化学現象を電磁特性に基づいて通知する。物理現象または化学現象への曝露に対する所定の特定限界値を設定して、曝露の強度が限界値内に収まる場合には、その曝露を無視するようにする。ステップ116において、限界値内に収まらない場合にプロセスはステップ111から続けられ、限界値内に収まる場合にはステップ117において通知を停止する。別の構成としてステップ116において、曝露が続いている場合にはステップ111からプロセスが続けられ、曝露がなくなった場合にはステップ117において通知を停止する。
図8には、物理現象または化学現象への曝露の検出を行ない、その曝露に対する応答として情報を供給する1つの実施形態による方法のフローチャートが示されている。ステップ210〜213は、上に説明した図7のステップ110〜113と同様である。ステップ214では、電磁特性に基づく物理現象または化学現象の検出が、電源電圧がマイクロ流体デバイス内で生成される形態で行なわれる。ステップ215では、物理現象または化学現象への曝露の通知を、マイクロ流体デバイスに接続されているインジケータデバイスに電源電圧を供給することにより開始する。物理現象または化学現象への曝露に対する所定の特定限界値を設定して、曝露の強度が限界値内に収まる場合には、その曝露を無視するようにする。ステップ216では、限界値内に収まらない場合、ステップ211からプロセスが続けられる。ステップ216において限界値内に収まっている場合、ステップ217において電源電圧が生成されなくなり、電源電圧の供給が阻止される。従って、ステップ218において通知が停止される。別の構成としてステップ216において、曝露が続いている場合にはプロセスはステップ211から続けられ、曝露がなくなった場合にはステップ218において通知が停止される。
これまで説明してきたように本発明によれば、例えば発明の詳細な説明においてすでに個別に説明した機械的作用、化学的作用、及び流体作用を組み合わせることにより感度を調整可能なインジケータを開発する機会が提供される。本発明の実施形態は幾つかの選択肢及び組み合わせを有し、これらの選択肢及び組み合わせによれば、例えばマイクロ流路効果及び毛細管作用を、電場感応性ポリマー(ポリマーが上の現象において固体及び液体に変化するなど)を使用して熱感応性ポリマーにより生じさせることができる。一般に本発明によるマイクロ流体デバイスは、異なるスマートポリマー(物理的及び/又は化学的刺激応答性ポリマー)及びマイクロ流路の多数の組み合わせを含むことができる。
本開示は、本発明の原理、及び本発明を構成する材料の関連する機能的仕様の例示として捉えられるべきであり、本発明を例示の実施形態に限定するものではない。この技術分野の当業者であれば、この記載を参照することにより本発明の他の種々の実施形態を実現することができる。従って、添付の請求項は、これらの実施形態の全てのこのような変形を、これらの変形が本発明の真の範囲に包含されるものとして含むものであると考えられる。