JP5608869B2 - 有機物汚染土壌における微生物分解容量の評価方法、及び汚染土壌修復速度の予測方法 - Google Patents

有機物汚染土壌における微生物分解容量の評価方法、及び汚染土壌修復速度の予測方法 Download PDF

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本発明は、例えば石油系有機物等の炭化水素で汚染された土壌における微生物分解容量の評価方法及び汚染土壌修復速度の予測方法に関する。
更に詳しくは本発明は、第1に、有機物汚染土壌における、実サイトの汚染源での汚染有機物の微生物分解容量を正確に評価できる簡易な評価方法に関する。第2に、この微生物分解容量の評価結果を新規な微生物分解モデルと組み合わせて、汚染土壌の修復速度あるいは修復期間を高い精度で予測する簡易な方法に関する。
石油系有機物等で汚染された土壌の修復に関して、汚染有機物の物理的な手段による分離技術や汚染有機物の分解技術が多様に提案されている。しかし、土壌自体が持つ修復能力、即ち土壌微生物による汚染有機物分解能力に基づき、汚染を原位置で自然に低減させる方法が最も低コストである。
このような微生物分解法においては、汚染有機物の分解に関与する土壌微生物のバイオマスが汚染有機物分解能力を大きく規定する。又、実際の汚染サイトでは、汚染サイトごとに特有の様々な環境条件が微生物増殖の制約となっており、その結果、個々の汚染サイトごとに特有の微生物分解能力を有する。即ち、汚染源(汚染の原位置)におけるバイオマスの挙動が土壌修復期間と費用を大きく左右する。このため、バイオマスのデータやその分解能力のデータを、汚染源の環境条件下において得る必要がある。
更に、石油系有機物等の炭化水素を分解する土着微生物は多様な土壌に遍在し、土壌中の炭化水素を炭素源及びエネルギー源として利用しながら増殖することが知られている。実際、土壌中に炭化水素が存在すると、特定の炭化水素分解性の微生物群が増殖することが報告されている。しかし、これらの微生物群を把握できたとしても、汚染サイトにおける炭化水素の微生物分解を定性的に理解できるだけであって、汚染土壌の修復速度あるいは修復時期を提示するために不可欠な定量的な微生物分解のレートは分からない。
従来、実験室に持ち帰って培養した汚染土壌から炭化水素の微生物分解のレートを評価する試みが多くなされている。しかし、そのような方法は期間と費用を要し、負担が大きい。しかも、汚染源の環境条件下とは異なる実験室的培養条件下でデータが得られるため、評価結果が不確実で信頼性に欠ける。
Monod, J.1949. The growth of bacterial cultures. Annu. Rev. Microbiol., 3, 371-394. 上記の非特許文献1はMonodの古典的な微生物反応モデルに関するものであって、微生物増殖速度は炭素源となる物質の濃度制約を受けることを示した。この古典的な微生物反応モデルの合理性はその後の酵素反応原理によって説明された。現在のほとんどの微生物モデルはMonodのモデルをベースにして拡張、あるいは改良されたものである。
Song, D., and Katayama, A.;Monitoring microbial community in asubsurface soil contaminated with hydrocarbons by quinine profile. Chemosphere,2005, 59, 305-314 上記の非特許文献2には、土壌微生物の呼吸系(呼吸鎖)に由来するキノン化合物が、有機物汚染土壌における有機物分解性の微生物の非常に優れたバイオマーカーとなること、土壌中のキノン化合物の分析によって得られるキノンプロファイルが土壌微生物バイオマスの指標になることを報告している。
Saitou, K., Nagasaki,K., Yamakawa, H., Hu, H.Y., Fujie, K., Katayama, A.; Linear Relation between the amount ofrespiratory quinones and the microbial biomass in soil, Soil Sci. Plant Nuyr.1999, 45, 775-778 上記の非特許文献3では、土壌微生物の呼吸系に由来するキノン化合物量と土壌微生物のバイオマス量との間にリニアな相関が認められることを報告し、キノン量とバイオマス量の変換係数fについて述べている。
宋徳君;Study on the biodegradation process in source zone of petroleumhydrocarbon-contaminated aquifer, 名古屋大学博士論文,2005. 上記の非特許文献4においては、本発明と関連する概念として、微生物増殖の自己制約係数としての係数kslや、特定環境条件下の微生物増殖上限の概念等を提案しているが、汚染サイトの微生物分解容量との関係を述べていない。又、室内実験結果によってμeを推定している記載がある。
以上の従来技術の状況に鑑みて、本発明は、実サイトの汚染源の環境条件下での土壌微生物による汚染有機物分解能力を正確に評価できる簡易な方法を提供することを、解決すべき第1の技術的課題とする。
更に、本発明は、この微生物分解能力の評価結果を新規な微生物分解モデルと組み合わせることにより、汚染土壌の微生物修復速度を正確に予測する簡易な方法を提供することを、解決すべき第2の技術的課題とする。
(第1発明の構成)
上記課題を解決するための第1発明の構成は、以下(1)〜(4)のプロセスにより、有機物汚染サイトの微生物分解容量Zm(mg/kg DS)を評価する、微生物分解容量の評価方法である。
(1)汚染サイトの中の重度汚染域から採取した複数の汚染土壌サンプルと、汚染サイトの重度汚染域以外から採取した未汚染土壌サンプルについて、土壌微生物の種類及び増殖量の指標である呼吸系キノン化合物の土壌中濃度を測定してキノンプロファイルを作成し、
(2)上記汚染土壌サンプルと未汚染土壌サンプルとのキノンプロファイル測定値を対比して有意の濃度差を示すキノン種を検出し、これらのキノン種の土壌中濃度の合計値を求め、
(3)前記複数の汚染土壌サンプル中から上記(2)の合計値がピーク値を示すものを選び、このピーク値を当該汚染サイトで観測された最大キノン量XQ,m(μmol/kg DS)とし、
(4)前記最大キノン量XQ,mに対して、キノン濃度とバイオマス量の変換係数f(μmol/mg)を用いた演算により、当該汚染サイトでの微生物分解容量Zmを求める。
以上の第1発明において、「微生物分解容量Zm」とは、当該汚染源で汚染有機物分解に機能している土壌微生物量の最大値、換言すれば、有機物汚染サイトに固有の環境条件下での汚染有機物の微生物分解能力の最大値を意味する。Zmの単位である「mg/kg DS」において、「DS」とは「Dry Soil:乾燥土壌」を意味する(以下同様である)。
なお、第1発明の(2)において、「汚染土壌サンプル」としては、重度汚染土壌サンプルが好ましい。又、キノンプロファイル測定値の「有意の濃度差」の具体的基準は必ずしも一律には限定されないが、例えば、それぞれのキノン種について汚染土壌サンプルと未汚染土壌サンプルとの間に有意水準0.05以上の濃度差があること、より好ましくは有意水準0.01以上の濃度差があることを基準とすることができる。
第1発明の(4)に記載した変換係数fは前記非特許文献3等によって公知の概念であり、以下の関係式(1)で表されるものであって、具体的にはf=0.019(μmol/mg)の値をとる。
m=XQ,m/f・・・(1)
(第1発明の作用・効果)
以上の第1発明によれば、以下の(a)〜(d)の作用・効果を期待することができる。
(a)石油系有機物等で汚染された土壌における実サイトの汚染源の環境条件下での微生物分解容量Zmを正確に評価することができる。この微生物分解容量Zmは、汚染源における汚染有機物分解性の微生物バイオマス量の最大値であり、換言すれば汚染有機物の微生物分解能力を示す指標であって、汚染土壌を微生物分解法により修復させるに当たり、修復速度や修復期間を高い精度で予測するために不可欠な指標である。
(b)非特許文献2に関して前記したように、土壌微生物の呼吸系に由来する特徴的なキノン化合物が微生物の優れたバイオマーカーとなること、土壌中のキノン化合物の分析によって得られるキノンプロファイルが有機物分解性の土壌微生物バイオマスの指標となることが公知である。従って、第1発明のように、汚染土壌のキノンプロファイル測定値に基づいて最大キノン量XQ,mを求め、次いで微生物分解容量Zmを求めることにより、微生物分解容量の評価を簡易かつ正確に行うことができる。
(c)第1発明においては、キノンプロファイル測定値を利用するに当たり、汚染土壌サンプルと、その近傍の(同一環境条件下の)未汚染土壌サンプル(コントロール)とのキノンプロファイル測定値の対比に基づいて有意の濃度差を示すキノン種を検出し、それらのキノン種の土壌中濃度の合計値から前記の最大キノン量XQ,mを求める。コントロールとしての未汚染土壌サンプルとのキノンプロファイル測定値の対比において有意の濃度差を示すキノン化合物の種類と濃度は、汚染サイトの環境条件下において実際に増殖した有機物分解性の土壌微生物の種類と増殖量を反映している。従って、第1発明によれば、当該汚染源の条件下における信頼性ある微生物分解容量Zmを評価することができる。
(d)第1発明においては、複数の汚染土壌サンプルについて、コントロールのキノンプロファイル測定値に対して有意の濃度差を示すキノン種の土壌中濃度の合計値を求め、その中のピーク値である最大キノン量XQ,mを、汚染有機物分解性微生物のバイオマス量の最大値に相当するキノン濃度と認定する。従って、微生物分解容量Zmとして、当該汚染源の条件下での有機物分解微生物のバイオマス量の最大値が与えられる。
(第2発明の構成)
上記課題を解決するための第2発明の構成は、以下(1)〜(4)のプロセスにより、有機物汚染土壌における微生物分解に伴う汚染有機物の分解速度を予測する、汚染土壌修復速度の予測方法である。
(1)第1発明に記載の微生物分解容量Zmと、有効最大比増殖係数μe(day-1)とから、下記の「数1」及び「数2」の式によってサイト分解容量定数ksl(day-1)を求める。
(上記「数1」式において、μm(day-1)は微生物の比増殖速度の最大値を示す最大比増殖係数であり、kd(day-1)は微生物の死滅係数である。)
(2)当該汚染土壌における汚染有機物の濃度が大きい(例えば、土壌中の汚染有機物濃度が1000mg/kg DS以上である)場合、微生物バイオマスの経時的な動態(dX/dt)を下記の「数3」の式によって予測する。
(上記「数3」式において、X(mg/kg DS)は微生物バイオマス量を表す。)
(3)当該有機物汚染土壌における微生物分解に伴う汚染有機物の分解速度〔−(dC)/(dt)〕を下記の「数4」の式によって予測する。
(上記「数4」式において、Y(mg/mg)は増殖収率である)
(4)上記の微生物バイオマスの経時的な動態と、微生物分解に伴う汚染有機物の分解速度は、次の(A)〜(C)の手順によって計算する。
(A)第1発明の(2)に規定した複数の汚染土壌サンプルについてのキノン種の土壌中濃度の合計値の内、最低値を示すものをバイオマス濃度の初期値X0とし、この初期値X0から前記「数3」式を時間差分によって離散化し、順次的に微生物バイオマスXの経時的増大X(t)を予測する(実施例における図5参照)。
(B)上記のバイオマスXの経時的増大X (t)の計算結果と、時間差分によって離散化された前記「数4」式を用いて、汚染有機物の分解速度〔−(dC)/(dt)〕を予測する。
(C)上記の汚染有機物質の分解速度〔−(dC)/(dt)〕に照らし、汚染物質濃度C(t)の初期値からの経時的減少を順次的に予測し、その濃度が修復目標値(例えば0mg/kg DS)になるのに要する日数を計算する(実施例における図6参照)。
以上の第2発明において、「数1」式の左側の式はZm、μe及びkslの関係を示す式である。「有効最大比増殖係数μe」とは土壌中の微生物の有効な比増殖速度の最大値を意味し、「数1」式の右側の式で示されるように「μem−kd」で与えられる。又、μeは室内実験によって求めることも可能で、前記非特許文献4における推定結果では、石油系汚染物質の場合μe =0.1〜0.25day-1程度である。又、「サイト分解容量定数ksl」とは、汚染サイトにおいて微生物増殖を制約あるいは規定する因子の定数である。「数2」式は、第1発明に関して前記したZmの関係式(1)を上記の「数1」式に代入して得られる式である。「数4」式中の「増殖収率Y」は、基質である汚染有機物の消費量当たりの微生物増殖量を意味し、その値は文献によって既知であって、Y=0.5mg/mgとすることができる。
(第2発明の作用・効果)
以上の第2発明によれば、第1発明に記載したような汚染サイトでの観測結果に基づき、(1)のプロセスによってサイト分解容量定数(ksl)を推定することのみを前提として、微生物バイオマスの経時的な動態(dX/dt)と、汚染有機物の分解速度〔−(dC)/(dt)〕を計算できるので、汚染土壌の微生物修復速度を簡易にかつ正確に予測することができる。
従来、Monodの微生物反応モデルの拡張式を使用し下記「数5」式及び「数6」式を用いた微生物反応モデル (プログラムSEAM3DとRT3Dで使用)が提案されている。
しかし、詳細な説明は避けるが、前者においては前記した非特許文献1に係るMonodの微生物反応モデルの拡張式を使用するため、電子受容体、栄養素、汚染物質に関する10個以上のパラメータが必要となり、パラメータ過多のために実用的ではなく、更に主として地下水中の水溶性汚染物質の微生物分解を対象とするもので、高汚染濃度の汚染源での利用ができない。又、微生物分解以外の原因による影響が大きい汚染サイトでは推定パラメータの偏差が大きく、予測精度が大幅に低下するという問題がある。
本願の第1発明によれば、従来の室内培養実験に要する期間と費用を省くと共に、汚染源の環境条件下での土壌微生物による汚染有機物分解能力を正確に評価できる簡易な方法が提供される。又、この微生物分解能力の評価結果を本願の第2発明に係る新規な微生物分解モデルと組み合わせることにより、汚染土壌の微生物修復速度を正確に予測する簡易な方法が提供される。
以上の方法により得られた結果は、汚染土壌の微生物修復手法の適用性判定、修復過程の検証のためのモニタリング及び汚染原位置での微生物分解容量を高めるための設計条件の修正等に利用することができる。
従来の手法と本発明の予測方法とをフローチャートによって対比して示す図である。 石油系有機物による汚染土壌の状態を簡略化して模式的に示す図である。 同一の石油系有機物汚染サイトにおける重度及び軽度の汚染土壌と未汚染土壌とのキノンプロファイル測定値を対比して示す図である。 汚染サイトから採取した複数の土壌サンプルのキノン量合計値の実測結果を示す図である。 汚染サイト1及び汚染サイト2での土壌中バイオマス量の動態予測の結果を示すグラフである。 汚染サイト1及び汚染サイト2での土壌中汚染成分の分解速度予測の結果を示すグラフである。
次に、本発明の実施形態に関して、幾つかの点を説明する。
〔評価方法の対比〕
図1に示すフローチャートに基づき、本発明に係る評価方法(図1で「本予測方法」と表記)と従来の評価方法(図1で「従来調査」と表記)とを対比して説明する。
汚染サイトの修復方法を策定するためには、汚染濃度、汚染範囲を確定するための地質調査が不可欠である。従来の評価方法においては、図1に示すように、土壌サンプルを採取し、汚染成分を分析して汚染濃度、汚染範囲を推定する。次いで土壌サンプルを実験室に持ち帰って培養する室内試験により汚染土壌の微生物分解を評価し、その評価結果に基づいて対策を設計する。
しかし「背景技術」の項で述べたようにこのような従来法は期間と費用を要し、負担が大きい。しかも汚染源の環境条件下と異なる実験室的培養条件下でデータが得られるため、評価結果が不確実で信頼性に欠ける。
これに対して、本発明に係る評価方法は上記従来法における土壌サンプルをそのまま流用することが可能で、別途に特殊な地質調査を必要としない。土壌サンプルは500g程度で足り、これを冷凍保存し、キノン分析等に基づき微生物分解容量を評価する(第1発明)。次に、第2発明として提案した計算モデルによって汚染土壌の修復速度を評価・予測する。その結果は、汚染土壌の微生物修復手法の適用性判定、浄化目標の設定や浄化対策の設計、あるいは栄養添加等の浄化促進対策の効果の評価にも利用でき、これらの浄化過程の検証のためのモニタリングに利用することができる。
〔汚染源での土壌サンプルの採取〕
汚染源での微生物分解容量Zmの評価に関し、有機物汚染サイトの状況と、この汚染サイトでの土壌サンプルの採取について、図2に基づいて説明する。
図2は、石油系有機物による土壌汚染サイトの状態を縦断面図によって示す。土壌1の一部が、石油等の有機物を収容した地下タンク2からの有機物の漏出により高い濃度で汚染され、重度汚染土ゾーン3になっている。地下水面4に達した汚染有機物は地下水の流れ方向(矢印5として示す)に乗っていわゆるプリューム状に拡散し、そのプリューム状の汚染地下水ゾーン6が人家7の近傍に設置した飲料水等の採取用の井戸8に接近している。
図2に示す汚染サイトの状況は、予め判明している訳ではなく、多数の土壌サンプルを採取して汚染成分を分析することで判明するものである。従って、(1)まず汚染源と推定されるエリア内の複数の地点で土壌のボーリング採取を行い、(2)併せて、汚染が及んでいないと推定される近傍の(同一環境下の)地点でも土壌のボーリング採取を行ったもとで、ボーリング採取した土壌を地中深度に応じて分別し、これらの各土壌サンプルの汚染成分の分析により汚染濃度、汚染範囲を推定して、図2のような汚染サイトの状況が判明するのである。
以上のプロセスにより、微生物分解容量Zmの評価の基礎となる汚染土壌サンプルと未汚染土壌サンプルが得られる。汚染土壌サンプルについては、汚染成分の分析値に基づき、重度の汚染土や軽度の汚染土等に区別しておくことが好ましい。
〔キノンプロファイルの測定〕
土壌サンプルについてのキノンプロファイル測定は、特に汚染土壌サンプルについては、なるべく多数のサンプルについて実施する。より好ましくは採取した全てのサンプルについて行う。それによって後述の最大キノン量XQ,mやバイオマス濃度の初期値X0の信頼性が向上するからである。
第1発明で前記した「汚染土壌サンプルと未汚染土壌サンプルとのキノンプロファイル測定値を対比して有意の濃度差を示すキノン種を検出する」というプロセスに関し、「汚染土壌サンプル」としては重度汚染土壌サンプルを選択し、その対比対象は、同一の深度と土質の未汚染土壌サンプルとすることが好ましい。
この対比にあたり、個々の未汚染土壌サンプルにおいて互いに一致したキノンプロファイル測定値が得られない場合には、これらの平均値を未汚染土壌サンプルのキノンプロファイル測定値とする。汚染土壌サンプルについても、個々の汚染土壌サンプルにおいて互いに一致したキノンプロファイル測定値が得られない場合には、これらの平均値を汚染土壌サンプルのキノンプロファイル測定値とする。
〔呼吸系キノン種と土壌の有機物分解性微生物の対応〕
前記したように、土壌微生物の呼吸系(呼吸鎖)に由来するキノン化合物の種類が、有機物汚染土壌における有機物分解性の微生物の優れたバイオマーカーとなり、従ってまた、土壌中のキノン化合物の分析によって得られるキノンプロファイルが土壌微生物バイオマスの指標になるが、具体的な幾つかの例を以下の表1に述べる。
〔バイオマスの経時的動態と汚染有機物分解速度の予測〕
前記第2発明の(4)のプロセスにおける手順(A)においては「初期値X0から「数3」式を時間差分によって離散化」するとし、又、手順(B)においては「バイオマスXの経時的増大X (t)の計算結果と、時間差分によって離散化された前記「数4」式を用いて」としている。
この「時間差分によって離散化」とは、より具体的には次のような処理をいう。「数3」式を時間差分によって離散化し、初期時刻から次の時間ステップのXを求める。このX1を「数4」の差分式に代入し、初期時刻から次の時間ステップのC1を求める。以後、X0をX1に、C0をC1に置き換え、予定時間までに順次に計算する。
次に本願発明の実施例を説明する。本発明の技術的範囲は以下の実施例によって限定されない。
(実施例1)
実施形態の項で述べた要領で、特定の有機物汚染サイト(Site 1)から複数の土壌サンプルを採取し、それらの土壌サンプルについて呼吸系キノン化合物の土壌中濃度を測定して、各汚染土壌サンプルごとに、図3に示すような形態の多くのキノンプロファイル測定値グラフを得た。
これらの多くのグラフの内、図3の上段は汚染土と未汚染土のキノン量を対比し、統計的有意性を求める例で、下段に示すキノンプロファイル測定値のグラフは、上段グラフに使用した母集団のデータの一例を示したもののグラフである。
(1)図3上段の各キノン種を示す棒グラフにおいて、黒塗りの棒グラフは汚染土壌サンプルのキノンプロファイル測定値であり、白抜きの棒グラフは汚染土の近傍から採取した未汚染土壌サンプルのキノンプロファイル測定値である。又、左側の(A)における黒塗りの棒グラフは重度汚染土(汚染物質濃度1000mg/kgDS以上)のキノンプロファイル測定値であり、右側の(B)における黒塗りの棒グラフは軽度汚染土(汚染物質濃度10mg/kgDS以下)のキノンプロファイル測定値である。なお、AとBは同一サイトで違う時期に採取したサンプルである。
(2)図3下段の各キノン種を示す棒グラフにおいて、(A’)は上段(A)の重度汚染土の中の一つの試料で最大のキノンプロファイル測定値のものとそれに対応する未汚染土の結果で、(B’)は上段(B)の軽度汚染土の中の一つの試料で最大のキノンプロファイル測定値のものとそれに対応する未汚染土の結果である。
重度汚染土に関する(A)のグラフから、未汚染土壌サンプルのキノンプロファイル測定値との対比により有意の濃度差を示すキノン種を検出した。(A)のグラフ中、「★」マークを付したものが、該当するキノン種である。これらのキノン種の土壌中濃度の合計値として図3の下段(A’)の黒塗りの棒グラフに示す最大約0.66μmol/kgDSという値が得られた。この合計値は、図4中において「Site 1」として示したグラフ(□のプロット)から分かるように、複数の汚染土壌サンプルから同様に得られたキノン種土壌中濃度合計値の内のピーク値(約0.66μmol/kgDS)であったので、これをSite 1における最大キノン量XQ,mとした。
上記の最大キノン量XQ,mに対して、キノン濃度とバイオマス量の変換係数f=0.019(μmol/mg)を用いた下記(1)の式の演算により、この汚染サイトでの微生物分解容量Zmを求めた。
m=XQ,m/f・・・(1)
具体的には、微生物分解容量Zm=34.74mg/kg DSであった。
(実施例2)
Site 1とは別の第2の汚染サイト(Site 2)から複数の土壌サンプルを採取し、上記実施例1と同様のプロセスを経てSite 2における最大キノン量XQ,mを求めたところ、図4中に「Site 2」として示したグラフ(▲のプロット)から分かるように約0.21μmol/kgDSという値が得られた。又、Site 2においては、微生物分解容量Zmは、Zm=11.05mg/kg DSであった。Site 2においても、その重度汚染土における汚染物質濃度は1000mg/kg DS以上であった。
(実施例3)
Site 1及びSite 2に関し、微生物分解容量Zmと有効最大比増殖係数μe(過去の推定結果の平均値「0.2」とした)から前記「数1」及び「数2」の式によりサイト分解容量定数ksl(day-1)を求めた。次いで前記「数3」の式によって、Site 1及びSite 2における微生物バイオマスの経時的な動態(dX/dt)を予測したところ、図5の結果が得られた。
更に、Site 1及びSite 2における微生物分解に伴う汚染有機物の分解速度〔−(dC)/(dt)〕を前記「数4」の式によって予測したところ、図6の結果が得られた。
本発明により、実サイトの汚染源の環境条件下での土壌微生物による汚染有機物分解能力を正確に評価できる簡易な方法が提供され、かつ、この微生物分解能力の評価結果を新規な微生物分解モデルと組み合わせることにより、汚染土壌の微生物修復速度を正確に予測する簡易な方法が提供される。
1 土壌
2 地下タンク
3 重度汚染土壌ゾーン
4 地下水面
6 プリューム状の汚染地下水ゾーン
7 人家
8 井戸

Claims (2)

  1. 石油系有機物である炭化水素で汚染され、汚染物質濃度が1000mg/kgDS以上である有機物汚染サイトの微生物分解容量Z(mg/kgDS)を求める方法であって、
    キノン濃度とバイオマス量の変換係数f=0.019(μmol/mg)、及び予め得た有機物汚染サイトの最大キノン量XQ,m(μmol/kgDS)を用い、式「Z =X Q,m /f」より微生物分解容量Zを求める方法。
    (但し、上記有機物汚染サイトの最大キノン量X Q,m (μmol/kgDS)は下記(1)〜(3)より求めたものである。
    (1)上記有機物汚染サイトから採取した複数の汚染土壌サンプルと、上記有機物汚染サイト近傍から採取した未汚染土壌サンプルについて、Q−8,Q−9,Q−10,Q−10(H2),MK−6,MK−7,MK−7(H2),MK−7(H4),MK−8,MK−8(H2),MK−8(H4),MK−9,MK−8(H6),MK−9(H2),MK−9(H4),MK−10,MK−9(H6),MK−10(H2),MK−9(H8),MK−10(H4),MK−10(H6),MK−10(H8)から選ばれる1種以上のキノン種の土壌中濃度を測定してキノンプロファイルを作成し、
    (2)上記汚染土壌サンプルと未汚染土壌サンプルとのキノンプロファイル測定値を対比して統計的に有意の濃度差があるとされたキノン種について、これらのキノン種の土壌中濃度の合計値を求め、
    (3)前記複数の汚染土壌サンプル中から上記(2)の合計値がピーク値を示すものを選び、このピーク値が上記有機物汚染サイトで観測された最大キノン量XQ,m(μmol/kgDS)である。
  2. 以下(1)〜(4)のプロセスにより、石油系有機物である炭化水素で汚染され、汚染物質濃度が1000mg/kgDS以上である有機物汚染土壌における微生物分解に伴う汚染有機物の分解速度を予測することを特徴とする汚染土壌修復速度の予測方法。
    (1)キノン濃度とバイオマス量の変換係数f=0.019(μmol/mg)、並びに、予め得た請求項1に規定した最大キノン量X Q,m (μmol/kgDS)及び0.1〜0.25の範囲内である有効最大比増殖係数μ(day−1)とから、下記の「数8」の式よってサイト分解容量定数ksl(day−1)を求める。
    (2)更に、上記「数8」の式より求めたサイト分解容量定数k sl (day −1 )と、予め得たバイオマス濃度の初期値X を用い、この初期値Xから下記「数9」式を時間差分によって離散化し、順次的に微生物バイオマスXの経時的増大X(t)を計算する。
    (上記「数9」式において、X(mg/kgDS)は微生物バイオマス量を表す。
    上記バイオマス濃度の初期値Xは、請求項1の(2)に規定した複数の汚染土壌サンプルについてのキノン種の土壌中濃度の合計値の内、最低値を示すものである。)
    (3)更に、上記の微生物バイオマスXの経時的増大X(t)の計算結果と、増殖収率Y=0.5(mg/mg)と、時間差分によって離散化された下記「数10」式を用いて、汚染有機物の分解速度〔−(dC)/(dt)〕を予測する。
    (4)上記の汚染有機物の分解速度〔−(dC)/(dt)〕に照らし、汚染物質濃度C(t)の初期値からの経時的減少を順次的に予測し、その濃度が修復目標値になるのに要する日数を計算する。
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