JP5593037B2 - 細菌測定用プライマーおよび細菌測定方法 - Google Patents

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Description

本発明は、細菌測定用プライマーおよび細菌測定方法に関する。
食品の微生物学的汚染指標として、細菌数、特に一般細菌数(aerobic plate count)は重要である(非特許文献1)。一般に食品製造業者においては、標準寒天平板培地で35℃48時間の培養によって一般細菌数を算出している。
細菌数測定に当たっては、各種変更を加えた平板培養法(塩化ナトリウムの添加、培養温度の変更、培養時間の延長など)が、より多くの細菌群を計数に含めるために適しているとされている(非特許文献2、非特許文献3、非特許文献4)。このような変法は魚介類および魚介類を原料とした食品を製造するメーカーにおいて特に重要である。すなわち、魚介類においては低温細菌(増殖温度帯が低く、また、時として培養に長時間が必要)および好塩性細菌(増殖に塩化ナトリウムを要求するため、標準寒天培地での発育が悪い)が多く存在し、標準的な一般細菌数の測定法では過少評価となる場合があるためである(非特許文献2、非特許文献3、非特許文献4)。
以上のような細菌数の測定法は、いずれにしても2日〜5日の培養を必要とするため、製品の消費期限に間に合わない事例がある。そのため、従来からの細菌数測定法は標準測定法としての重要性は変わらないものの、先んじて結果を得られる迅速な測定法が自主衛生管理に必要とされている。
そこで、各種の迅速法が開発されてきた。培養法と原理を同じくするフィルム状乾燥培地法(非特許文献5)、スパイラルプレート法(非特許文献7)などは、従来法と同等の精度を有するため、よく用いられている。しかしこれらは培養を必要とするため、時間の短縮効果は限定的である。そこで一方、培養を必要としないあるいは短縮した迅速法が発表されている(ATP 測定法(非特許文献8)、溶存酸素測定法(非特許文献9)、 ルミノール化学発光法(非特許文献10)など)。これらの方法は充分に検証され、迅速(30分〜6時間以内)ではあるものの、培養によるコロニー計数とは異なる物理量を測定指標とするため、サンプルによっては寒天平板法と比較した場合の結果に差異が生じやすい。すなわち、現在細菌数測定法において精度と迅速性はトレード・オフの関係にあり、両方をバランス良く達成した方法というのは非常に少ないと言える。
一方、分子生物学的手法が近年、食品微生物分野で用いられている。各種病原微生物の検出および定量、16S rDNA を用いた細菌間の系統解析、菌叢解析などPCR法を応用したものが多い。PCR法を用いることの最大の利点は、その特異性と迅速性にある。そのため上述のような応用法が食品微生物分野で利用されてきた。しかしながら、PCR法を用いて食品中の細菌数を測定した報告はほとんど無い。その理由の1つは、細菌数の測定には幅広い菌群を数える必要があるが、そのためのユニバーサルプライマーの設計および反応条件の構築が非常に難しいことがあげられよう。そこでリー(Lee)らは、16S rDNAを対象としたユニバーサルプライマーを用い、細菌数測定に利用している(非特許文献11)。しかし16S rDNA は菌種間でその細胞あたりのコピー数が異なる(非特許文献12)ため、そのPCR結果は必ずしも一様とはならない(非特許文献13)。また測定試料には複数種類の菌が付着しており、その様相は非常に異なっていることが普通であるため、16S rDNAを対象とした方法で異なるサンプル間の測定結果を比較することについては慎重に考える必要がある。一方、高橋らはrpoB 遺伝子を対象としたユニバーサルプライマーを用い、生鮮野菜および果実類の菌数測定を報告している(非特許文献14)。rpoB 遺伝子は1細胞1コピーであるとされるため、定量結果はサンプル間で比較可能なクリアなものである。しかし、生鮮野菜および果実類においては実用可能であったものの、鮮魚をサンプルとした場合は完全には利用可能ではない。
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本発明は、細菌を測定するためのプライマーおよびそれを用いた細菌測定方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するための本発明は、
細菌由来の核酸を増幅するプライマーセットであって、前記プライマーセットは、フォワードプライマーとリバースプライマーからなり、
前記フォワードプライマーが、配列番号41で示される配列、配列番号42で示される配列および配列番号43で示される配列からなるポリヌクレオチド並びにその相補鎖からなる群より少なくとも1選択され、且つその配列の連続する15塩基から24塩基からなるポリヌクレオチドであり、
前記リバースプライマーが、配列番号46で示される配列および配列番号47で示される配列からなるポリヌクレオチド並びにその相補鎖からなる群より少なくとも1選択され、且つその配列の連続する15塩基から24塩基からなるポリヌクレオチドである
プライマーセット
である。
本発明により、細菌を測定するためのプライマーおよびそれを用いた細菌測定方法を提供される。
純培養菌体におけるtufリアルタイムPCR法のCt値を示すグラフ。 TSA-ASW寒天培地による細菌数とリアルタイムPCR法によるCt値の比較するグラフ(相関係数 0.935)。 魚介類においてTSA-ASW寒天培地による細菌数とリアルタイムPCR法による推定菌数の相関を示す図(相関係数0.94)。 リアルタイムPCRによる種々の細菌の増幅結果を示す図。 畜肉類においてトリプチケースソイ寒天培地による細菌数とリアルタイムPCR法による推定菌数の相関を示す図(相関係数0.80)。 生鮮野菜類においてトリプチケースソイ寒天培地による細菌数とリアルタイムPCR法による推定菌数の相関を示す図(相関係数0.85)。
本発明は、本発明者らの鋭意研究の結果、タンパク質伸長因子Tu(tuf)遺伝子をターゲットとすることにより、頻繁に食品において検出される多様な微生物を網羅的にかつ偏り無く検出することが可能であることを明らかにしたことにより達成された。
本発明は、食品において広く検出される菌類の細菌数を測定するためのプライマーおよびそれを用いた食品の細菌数の測定方法を提供する。
本発明のプライマーは、食品において頻繁に見られる微生物のtuf遺伝子の塩基配列情報から設計した。当該プライマーは、フォワードプライマーとリバースプライマーからなるプライマーセットである。当該フォワードプライマーは、当該tuf遺伝子の遺伝子産物の翻訳開始部位を1位として、769位周辺の塩基配列についての情報から設計した。当該リバースプライマーは、当該tuf遺伝子の遺伝子産物の翻訳開始部位を1位として、1068位周辺の塩基配列についての情報から設計した。
Figure 0005593037
当該プライマーセットをユニバーサルプライマーとして使用し、細菌の遺伝子を増幅することにより、幅広い細菌種のtuf遺伝子を同等かつ良好な効率で増幅することができる。
当該増幅をリアルタイムPCRで行った結果と、従来の平板法による細菌数を計測した結果は、非常に良好な相関を有する(y=-2.753x+37.599、相関係数0.94 y,PCRの結果;x,平板法による菌数の常用対数値)。
当該プライマーは、フォワードプライマーとリバースプライマーからなる。当該フォワードプライマーは、配列番号1で示される配列、配列番号2で示される配列、配列番号3で示される配列、配列番号4で示される配列、配列番号5で示される配列、配列番号6で示される配列、配列番号7で示される配列、配列番号8で示される配列、配列番号9で示される配列、配列番号10で示される配列、配列番号11で示される配列、配列番号12で示される配列、配列番号13で示される配列、配列番号14で示される配列、配列番号15で示される配列、配列番号16で示される配列、配列番号17で示される配列、配列番号18で示される配列、配列番号19で示される配列、配列番号20で示される配列、配列番号21で示される配列、配列番号22で示される配列およびその相補配列、並びに数個の塩基が置換、欠失、付加された配列を含むポリヌクレオチドから少なくとも1選択されてよい。
当該リバースプライマーは、配列番号23で示される配列、配列番号24で示される配列、配列番号25で示される配列、配列番号26で示される配列、配列番号27で示される配列、配列番号28で示される配列、配列番号29で示される配列、配列番号30で示される配列、配列番号31で示される配列、配列番号32で示される配列、配列番号33で示される配列、配列番号34で示される配列、配列番号35で示される配列および配列番号36で示される配列、並びにその相補配列、並びに数個の塩基が置換、欠失、付加された配列を含むポリヌクレオチドからなる群より少なくとも1選択されてよい。
また、当該フォワードプライマーは、配列番号37で示されるアミノ酸配列、配列番号38で示されるアミノ酸配列、配列番号39で示されるアミノ酸配列および配列番号40で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列並びにその相補配列で示されるポリヌクレオチドからなる群より少なくとも1選択されるポリヌクレオチドであってもよく、例えば、配列番号41、配列番号42、配列番号43またはその相補配列であってもよく、これらの配列の一部分の断片であって、プライマーとして機能するだけの長さを有する断片をプライマーとして使用してもよい。そのような長さは、例えば、約10塩基から約24塩基、好ましくは約15塩基から約24塩基、好ましくは約19塩基、約20塩基、約21塩基または約22塩基である。
当該リバースプライマーは、配列番号44で示されるアミノ酸配列で示されるアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドおよび配列番号45で示されるアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド並びにその相補配列からなる群より少なくとも1選択されるポリヌクレオチドであってもよい。そのようなポリヌクレオチドは、例えば、配列番号46で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列若しくは配列番号47で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列またはその相補配列で示されるポリヌクレオチドあってもよい。また、これらの配列の一部分の断片であって、プライマーとして機能するだけの長さを有する断片をプライマーとして使用してもよい。そのような長さは、例えば、約10塩基から約24塩基、好ましくは約15塩基から約24塩基、好ましくは約19塩基、約20塩基、約21塩基または約22塩基である。
配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号46および配列番号47で示されるポリヌクレオチドをプライマーとして使用する場合には、各配列に存在する「n」、「k」、「h」、「y」、「r」について、対応する全ての塩基配列をミックスプライマーとして含ませて使用することが好ましい。ここで、各塩基の一文字表記は当業者に周知である通りである。「n」は、全ての塩基、即ち、アデニン、グアニン、シトシンおよびチミンを示す。「k」は、グアニンおよびチミンを示す。「h」は、アデニン、シトシンまたはチミンを示す。「y」は、チミンまたはシトシンを示す。「r」は、グアニンとシトシンを示す。
より網羅的な測定を行うために最も好ましくは、前記フォワードプライマーが、配列番号1で示される配列、配列番号2で示される配列、配列番号3で示される配列、配列番号4で示される配列、配列番号5で示される配列、配列番号6で示される配列、配列番号7で示される配列、配列番号8で示される配列、配列番号9で示される配列、配列番号10で示される配列、配列番号11で示される配列、配列番号12で示される配列、配列番号13で示される配列、配列番号14で示される配列、配列番号15で示される配列、配列番号16で示される配列、配列番号17で示される配列、配列番号18で示される配列、配列番号19で示される配列、配列番号20で示される配列、配列番号21で示される配列および配列番号22で示される配列、またはそれらの相補配列からなるフォワードプライマーセットであり、当該リバースプライマーが配列番号23で示される配列、配列番号24で示される配列、配列番号25で示される配列、配列番号26で示される配列、配列番号27で示される配列、配列番号28で示される配列、配列番号29で示される配列、配列番号30で示される配列、配列番号31で示される配列、配列番号32で示される配列、配列番号33で示される配列、配列番号34で示される配列、配列番号35で示される配列および配列番号36で示される配列、またはそれらの相補配列からなるリバースプライマーセットであり、これらのフォワードプライマーセットとリバースプライマーセットを一緒に使用することが好ましい。これらのフォワードプライマーを「769fプライマー」とも称する。これらのフォワードプライマーは、tuf遺伝子の遺伝子産物の翻訳開始部位を1位として、769位から788位の20塩基の塩基配列からなるポリヌクレオチドである。これらのリバースプライマーを「1068rプライマー」とも称する。これらのリバースプライマーは、tuf遺伝子の翻訳開始部位を1位として、1068位から1048位の21塩基の塩基配列からなるポリヌクレオチドである。
これらの配列を表2および表3に示した。表2では、好ましく検出される属と併記した。
Figure 0005593037
Figure 0005593037
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当該プライマーは、それ自身公知の化学的合成方法および生物学的合成方法により製造することが可能である。
当該プライマーは、微生物学的汚染指標となる菌類を検出することが可能である。当該プライマーで検出される菌類は、食品において広く検出される細菌である。
そのような細菌は、例えば、生鮮食品、例えば、畜肉、野菜、果実および鮮魚において検出される細菌であればよい。
例えば、Firmicutes(ファーミキュート)、例えば、バチルスなど、Actinobacteria(アクチノバクテリア)、例えば、コクリアおよびミクロコッカスなど、Bacteroidetes (バクテロイデテス)、例えば、クリセオバクテリウムおよびフラボバクテリウム、Proteobacteria (プロテオバクテリア)、例えば、プロテオバクテリアα、例えば、スフィンゴモナスなど、プロテオバクテリアβ、例えば、アルカリゲネスなど、プロテオバクテリアγ、例えば、大腸菌などであってよい。
また、例えば、次のような菌属に分類される細菌であってもよい;アシネトバクター、エロモナス、アルテロモナス、バチルス、ブラキバクテリウム、ブロコトリクス、バルクホルデリア、クリセオバクテリウム、サイトロバクター、コルウェリア、エンテロバクター、エルウィニア、フラボバクテリウム、ジャニバクター、クレブシエラ、コクリア、ラクトバチルス、ラクトコッカス、リステリア、ミクロバクテリウム、ミクロコッカス、モルガネラ、パラコッカス、フォトバクテリウム、プラノマイクロビウム、シュードアルテロモナス、シュードモナス、サイクロバクター、サイクロモナス、ラハネラ、ロージア、サリニバクテリウム、サルモネラ、シネリア、セジョンジア、セラチア、シュワネラ、スフィンゴバクテリウム、スフィンゴモナス、スタフィロコッカス、ビブリオ、ザントモナス、エルシニア。
本発明に従う細菌測定方法は、当該プライマーセットを使用して、測定対象となる試料核酸を増幅することを具備する。更に、当該方法は、前記増幅により得られた増幅産物を基に当該細菌を検出することを具備してもよく、および/または前記増幅により得られた増幅産物を基に当該細菌数を算出することを具備してもよい。
ここで、「試料核酸」とは、野菜、果実および鮮魚など、試料となる食品および付着微生物に由来する核酸であればよい。試料核酸の調製は、それ自身公知の何れかの手段により、そのような手段は、例えば、ミンス、ホモジネート、濾過作業、遠心分離操作、加熱処理、抽出および精製などの工程を具備してよい。
試料核酸の増幅は、それ自身公知の増幅反応により行ってよく、例えば、PCR、リアルタイムPCRなどにより行うことが可能である。また、増幅条件は、それ自身公知の増幅条件より実施者が任意に選択することが可能である。
また、当該増幅反応としてリアルタイムPCR法を用いると、細菌数を迅速に、即ち、約2時間で、測定することが可能である。
当該細菌の測定方法において、細菌の存在の有無を検出することが可能である。そのような方法は、当該プライマーセットを使用することにより試料核酸を増幅し、得られた増幅産物について分析を行って得た情報を基に当該細菌の存在を確認すればよい。増幅産物についての分析は、菌の存在を確認できるそれ自身公知の何れかの手段を用いればよい。例えば、電気泳動、および/または増幅産物とプローブとのハイブリダイゼーションの有無の検出などにより行ってよい。同様に、増幅産物を分析することにより、試験系に存在する細菌の種類に関する情報を得てもよい。
また、当該細菌の測定方法において、細菌数を算出することも可能である。当該細菌数の算出は、当該プライマーセットにより増幅を行った後に、回帰分析をすることにより行うことが可能である。例えば、その増幅産物についての検出サイクル数と平板菌数との相関から換算すればよい。当該換算は、当該測定方法の実施毎におこなってもよく、平板菌数と標準的な増幅反応の結果から予め相関関数を求め、その相関関数をその後に行う当該測定に用いてもよい。予め相関関数を求めておくことにより、当該測定方法の実施毎に相関関数を求める必要がなくなるので有利である。
ここで「検出サイクル数」とは、増幅産物量について予め定めておいた閾値に達するまでに行われた増幅サイクル数をいい、ここでは、「Ct」とも記する。
特に、本発明に従うプライマーセットに含まれるプライマーは、ユニバーサルプライマーとして利用するために有利である。即ち、当該プライマーセットは、試験系に含まれる複数種類の細菌を、1増幅反応で、偏ることなく均一に増幅することが可能である。これにより食品に付着している多種多様な菌を偏ることなく、均一に1増幅反応で増幅し、これらを検出すること、およびこれらの細菌数を求めることが可能となる。
従来の方法では食品に同時に付着している様々な菌群を2時間程度の迅速性で、且つ網羅的に、且つ同時に偏りなく計数することは困難である。しかしながら、本発明に従うと、迅速に且つ網羅的に、且つ同時に偏りなく細菌数を計数することが可能である。
2.例1
2.1. 使用した微生物株と培養条件
実験に用いた計63の菌株(26の鮮魚分離株および37の標準菌株)については表4に示した。
Figure 0005593037
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全ての標準菌株は分譲機関からの指示通りに培養し、鮮魚分離菌株はtripticase soy agar (Becton Dickinson, Sparks, MD, USA) を 50% のartificial sea waterで調製した寒天培地 (TSA-ASW)および、marine broth 2216 (Becton Dickinson) もしくは tripticase soy broth (Becton Dickinson)にて培養した。 100% artificial sea water の組成は以下の通りである; 23.5g of NaCl, 0.66g of KCl, 3.9 g of Na2SO4, 10.6g of MgCl2-6H2O, and 1.5 g of CaCl2-2H2O per 1 liter of distilled water (Okuzumi et al., 1981)。
2.2. 細菌数測定および菌叢解析
サバ6検体、カレイ3検体、アジ3検体の鮮魚サンプルは東京都内の市場より購入し、氷上で実験室まで輸送した。表皮10 cmを含む10 gを無菌的に採取し、生理的食塩水90mLにホモジナイズ後、適切な希釈液を作成しその100 μl をTSA-ASW平板に塗抹した。20℃で5日間の培養後、コロニー数を計数し、ランダムに選択した20コロニーを 純粋分離し、菌叢解析に供した。 菌株の同定は 16S rDNA の塩基配列解析によって行った (50〜500 bpあるいは50〜1400 bp)。
2.3. tuf遺伝子配列解析とプライマーの設計
Murray and Thompson (1980)の方法に従って調製した各菌株のDNAを試料とし、tuf遺伝子の約880bpの部分断片をParadisら(2005)のプライマーによって増幅した。増幅産物はpT7 blue T-vector (Novagen, Madison, WI)にクローニングし、複数個のクローンを塩基配列解析した(primers; T7 and M13-M4, Takara)。塩基配列解析はBigDye terminator ready reaction kit V 3.1 (Applied Biosystems, Foster city, CA, USA) および ABI3130 genetic analyzer (Applied Biosystems)を用いて行った。得られた配列はGENETYX 7.0 software (Software development Co., Ltd, Tokyo, Japan)を用いて解析した。得られた配列を整列し(multiple alignment)、良好と思われた部位にプライマーtuf-769f および tuf-1068rを設計した。
2.4. リアルタイムPCR
PCR反応は以下の条件で行った; 12.5 μl SYBR Premix Ex Taq II (Takara Bio, Shiga, Japan), 0.5 μl 6-carboxy-X-rhodamine (ROX) reference dye (Takara Bio), 720 nmol/l の769f プライマー、560 nmol/lの 1068r プライマー、2 μlの測定対象溶液. 温度条件は95℃15秒→(95℃10秒-60℃1分)×35回→72℃5分。機器はABI 7900HT sequence detector (Applied Biosystems)を使用した。測定した蛍光値(Rn)をROXリファレンスの蛍光強度で補正し(Rn)、ΔRn(Rn-Rn, Rn=サイクル3〜15の蛍光値の平均)を算出した。検出サイクル数(Ct)はΔRnが閾値(Rn算出時に用いた3〜15サイクルにおけるベースラインの標準偏差×10倍の蛍光値)に達したサイクル数とした。
2.5. リアルタイムPCRの反応性試験
Murray and Thompson (1980)の方法に従って調製した各菌株のDNAを試料とし、一定濃度(5 ng /μl)のDNA溶液を得た(濃度は吸光度より算出、Sambrook et al., 1989)。10倍段階希釈によって得た各濃度のDNA溶液の2 μlをPCRに供した。PCR増幅は3.0 % アガロースゲル電気泳動(NuSieve 3:1 agarose gel 、FMC Bioproducts, Rockland, ME, USA)により確認した。異なる菌株間のPCR増幅効率の比較は、DNA量とCt値をプロットした散布図の回帰直線の式を比較することで行った。具体的には、回帰直線の傾き(s)を用い、増幅効率(e)=101/s−1 により増幅効率を求めた。増幅効率eはX = X × (1+e) (X:標的DNA のサイクルnにおける濃度=コピー数、X:標的DNAの初期量、n:サイクル数)。すなわち、eの値は0〜1.0であり、増幅効率が100%であればeの値は1.0を取る。
2.6. リアルタイムPCRの純菌株への適用
エロモナス モラスコラム FI56、 シュワネラ フリギディマリナ FI20、およびスタフィロコッカス パステウリ FI64 のそれぞれの一夜培養液をトリプチケースソイ培地 (TSB,
Becton Dickinson)にて10倍段階希釈し、それぞれの1mlからDNAを抽出し、リアルタイムPCRに供した。DNA抽出はMag extractor DNA isolation kit (Toyobo, Co., Ltd, Tokyo, Japan)を用いた。この方法はブーム法 (Boom et al., 1990)を元にした方法である。要約すると、850 μl の溶解液(グアニジン塩酸塩を含む)で細菌細胞を溶解させ、40 μl のシリカコート磁性粒子を添加、10min攪拌を行った。この間にDNAはシリカへ吸着される。その後磁性粒子を3000 gの遠心で集め、洗浄液で2回、70%エタノールで2回の洗浄を行った。風乾した磁性粒子から50μlの滅菌蒸留水10min 攪拌によりDNAを溶出し、遠心上清をDNAサンプルとして使用した。溶出液は全て−20℃で保管した。
並行して、一夜培養液の生細胞数をTSA-ASW平板により計数した。
2.7. 魚サンプルの細菌数とリアルタイムPCRの結果の相関性
サバ30サンプル、アジ11サンプルおよびイワシ12サンプルを異なる日時に購入した。様々な菌数のサンプルを得るために、一部のサンプルは購入後すぐに5℃、10℃、もしくは20℃にて18時間、保管した。それぞれ10gのサンプルを90mlの生理食塩水でホモジナイズし、TSA-ASW寒天培地に塗抹して細菌数を求めると共に、ホモジナイズ液1mlから上述のMag-extractor DNA抽出キットでDNAを抽出した。抽出液2μlを上述のリアルタイムPCRに供し、得られたCt 値とTSA-ASW寒天培地による細菌数(対数に変換)を散布図にプロットした。回帰分析はMicrosoft Excel 2003 (Microsoft Corp., Co., Ltd., Redmond, WA, USA)により行った。
2.8. リアルタイムPCRによる菌数推計値と平板培地法による菌数との比較
計47検体の鮮魚(23検体のアジ、8検体のサバ、9検体のイワシ、3検体のサンマ、2検体のカレイおよび2検体のカツオ)をあらたに市場より購入した。一部のサンプルは5 ℃, 10 ℃, または 20 ℃ で 18 h保管し、様々な菌数のサンプルを得た。細菌数測定とリアルタイムPCRは上述の通り行った。リアルタイムPCRのCt値から菌数を推計する際には以下の数式により行った;PCR法による細菌数推計値(対数値)= (37.599-Ct) × 2.75−1。 得られた平板菌数およびPCRによる推計菌数は常用対数値に変換し、散布図にプロットした。なお、一部のサンプルは菌叢把握のためTSA-ASW寒天よりコロニーを単離し、菌叢解析に供した。
2.9. 塩基配列情報
ここにおいて決定および/または使用したtuf遺伝子の塩基配列情報は国際データベースに登録し、その番号は表4に表記した。
3.結果
3.1. 鮮魚の菌叢
細菌数としてカウントされる数を形成する菌群、すなわち平板上に現れるコロニーについて、その構成を分析した。計12サンプルの鮮魚から分析した結果を表5に示す。
Figure 0005593037
今回のサンプルからは、サイクロバクター属が最も頻繁に分離された(12サンプル中10サンプル;6サンプルすべてのサバ、2サンプルのアジ、3サンプル全てのカレイより分離された)。また、そのうち3検体では優占種であった(2007年4月,2008年1月のサバ、2007年2月のアジ)。シュワネラ属、およびシュードアルテロモナス属もまた、よく分離された(それぞれ8 および 5検体より)。バクテロイデスグループに属するグラム陰性菌、クリセオバクテリウム属やフラボバクテリウム属がそれぞれ 3 と 6 サンプルから分離された(10 %,12検体由来の260 の総分離株のうちバクテロイデス群分離株は26株)。高G+C含量のグラム陽性菌である放線菌群からはコクリア属、ミクロコッカス属、ロージア属が分離された(4.2 %, 11/260)。
3.2. リアルタイムPCR用プライマーの設計
決定したtuf遺伝子の部分配列を多重整列した(表6)。その中で保存性の高いと思われた300bpの領域について詳細に見ると、DNAレベルで58.6 %(クリセオバクテリウム フォルムセンス FI55 対 ブラキバクテリウム チロファーメンタンス FI38) から 99.3% (スタフィロコッカス オーレウス 対 リステリア モノサイトゲネス)の相同性を保っていた。そこでこの領域の両端、塩基位置として769〜788bpおよび1048〜1068bpにユニバーサルプライマーを設計した(塩基位置の表記は大腸菌 K-12 MG1655株の配列に従う:登録番号AE000410)(表7)。プライマー設計に当たっては3’末端から10塩基内にミスマッチを含まないように縮重を考慮してデザインした (表8)。
Figure 0005593037
Figure 0005593037
Figure 0005593037
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Figure 0005593037
Figure 0005593037
設計したプライマーによる増幅を全菌株について試験したところ、良好な増幅および特異的な増幅を確認した(図4)。
3.3. リアルタイムPCRプライマーの反応性試験
各菌株から抽出精製した10ng の染色体DNAを鋳型とした場合のtuf遺伝子を標的としたリアルタイムPCRの結果(Ct値)を表9に掲出した。
Figure 0005593037
Figure 0005593037
いくつかの放線菌群、コクリア属、ジャニバクター属、ミクロバクテリウム属、およびミクロコッカス属は比較的遅れたCt値(25.4 ± 2.5)を示した(11のバチリー綱は平均17.2 ± 1.8 42のグラム陰性菌は平均16.2 ± 1.6であった)。
バチリー綱 11菌株に対する増幅効率の平均値は0.99 ± 0.03(0.93 〜 1.05)と良好であった。いくつかの放線菌群では効率が悪いため増幅効率を算出することができなかったが、ロージア属とサリニバクテリウム アムルスキエンスにおいては0.91〜0.98 と、充分許容できる値を示した。またプロテオバクテリア門のグラム陰性菌については、試験した38の菌株の平均で1.01 ± 0.07 (0.79, バルクホルデリア カレドニカ 〜1.09)と良好であった。ただしバクテロイデテス門(4 株)については、0.93 ± 0.06(0.85, セジョンジア アンタラクティカ〜0.99、クリセオバクテリウム フォルモセンス)とやや低い値を示した。
3.4. 純菌株におけるCt値と菌数の比較
スタフィロコッカス オーレウス FI64、 エロモナス モラスコラム FI56、およびシュワネラ frigidimarina FI20 株の培養液からそれぞれ抽出したDNA溶液のCt値と、それぞれの細菌数は良好な相関を示した(図1)。回帰式はy = −3.29x+ 41.2, 相関係数は0.98 となった。グラフ中、白三角は、シュワネラ フリギディマリナ FI20、白四角は、スタフィロコッカス パステウリ FI64、黒丸は、エロモナス モラスコラム FI56である。
3.5. リアルタイムPCRのCt値と魚サンプルの細菌数の相関関係
30検体のサバと11検体のアジ、12検体のイワシについてリアルタイムPCRのCt値と細菌数を散布図上にプロットした(図2)。回帰直線はy= −2.753x + 37.628(サバ) y = −2.8611x + 38.207 (アジ)および y=−2.937x + 37.833 (イワシ)となり、それぞれ相関係数は0.936、0.939、および0.937であった。これら3種類のプロットをまとめて1つの回帰直線とすると、y = −2.753x + 37.599 となり、魚種別の回帰直線とほぼ同一であった。そのため、この式よりリアルタイムPCRのCt値から細菌数への推計式を導いた; 当該PCR法による菌数推計値(対数値)/g =(37.599-Ct) /2.753。
3.6. リアルタイムPCR推計細菌数と平板菌数の比較
リアルタイムPCRより推計した細菌数と平板菌数について、23検体のアジ、8検体のサバ、9検体のイワシ、2検体のカレイ、3検体のサンマ、2検体のカツオを試料として比較した。試料の細菌数はおよそ2.5〜9.0 log CFU/gの範囲であり、それぞれ平板菌数とリアルタイムPCR推計細菌数をプロットしたものが図3である。このプロットの回帰直線はy = 1.00x + 0.21 (相関係数0.94)であり、傾きの95 % 信頼区間は0.92 〜 1.08 、y切片の95%信頼区間は−0.27 〜 0.68となった。これより傾き、切片いずれも1および0と有意に異ならないことが示された(2手法が同等である場合、傾きは1、切片は0となる)。
供試サンプルのうち6検体については、平板からコロニーを単離し、菌叢を調べた(表10)。
Figure 0005593037
菌叢は表5での結果とさほど異ならず、ビブリオ spp., サイクロバクター spp., シュワネラ spp., アシネトバクター spp. などを優占菌群とした各種の海産物関連細菌が検出される結果となった。
4. 考察
tuf遺伝子にコードされているタンパク質伸長因子Tu(Ef-Tu)は、タンパク質合成の際にアミノアシル転移RNA(tRNA)をリボソームのA部位へ結合させるという重要な役割を担っている。このためその構造ひいては配列は生物間でよく保存されている。そのため細菌においては、tuf遺伝子はこれまで系統解析や種の識別などに利用されている。また、tuf 遺伝子は染色体上に 1もしくは2コピーである(Warren et al., 2001)。これらのことから、幅広い菌種を同一反応で定量するリアルタイムPCRに用いる遺伝子としてtuf遺伝子は優れていると考えられる。つまり、コピー数のバリエーションや配列のバリエーション等による定量結果への影響が少ないと期待されるためである。ここにおいて、我々は769〜1069bpの領域に保存性の高い領域を見出した。この領域は6つの β-シート 構造がβ-バレル構造の形成に関与しており、アミノアシルtRNAをEf-Tu/GTP複合体へ結合させる反応に関与している(Nissen et al., 1995)。すなわち機能上の重要性が高いため保存性が高いと考えられ、この領域にプライマーを設計した。
47サンプルについてリアルタイムPCRによる細菌数推計値と平板菌数を比較した結果、有意な相関関係が見られた(図3)。これよりここにおいて示した算式、当該PCR法による菌数推計値(対数値)=(37.599−Ct)×2.75−1(図1)は充分に利用可能であると言える。47サンプルの回帰直線の傾きと切片はそれぞれ1.00と0.21であり、1および0と有意に異なることがなかった。これより当該リアルタイムPCR法による推計値には偏りが無く、log3〜log9の間で補正などを必要とせず利用できることが示された。サンプルの菌叢の違いによる定量値への影響なども、表10の結果が充分バラエティに富んでいることからここにおいては観察されなかった(表10)。当該リアルタイムPCR法とTSA-ASW 寒天培地による計数(20℃培養)間の値の差異は、26サンプルは|0.5|log以下、21サンプルは|0.5|〜|1.0|の間であり(最大0.98log)、1.0logを超える差異は観察されなかった。これはカムデンガイドラインに示された、「菌数の常用対数値差が±1を超える検体数の比率が5%以内であれば、同等の性能であるとみなす」という条件にも適合する(Campden, 2001)。47サンプルを総合して、リアルタイムPCRによる菌数推計結果とTSA-ASW寒天平板の測定結果間の差異の平均は0.44 ± 0.28 S.Dであり、どの菌数レンジにおいても同程度であった。このスペックは微生物検査の実際上、充分に利用可能といえる。ただ、他の培養を基本とした迅速法に較べるとやや劣っている;例えばフィルム状寒天平板法 や 自動 MPN法においては、参照法と比較しても9割以上のデータポイントで <±0.5 log の差異に収まる。しかし、当該リアルタイムPCR法はこの結果を2時間で与えることができる(サンプル調製、リアルタイムPCR法実施それぞれ1 時間ずつ)。そのため当該リアルタイムPCR法は結果の実用的精度と迅速さをバランス良く達成したと言える。
多様な菌群からなる細菌数を、リアルタイムPCRで迅速に測定できることは食品製造過程においてメリットが大きい。当該リアルタイムPCR法はtuf遺伝子を対象として3〜6 log CFU/gのレンジで鮮魚の細菌数を2時間で推計することを可能にした。これまでの迅速測定法もまた、実用上有用であるが迅速性と精度を両立したものは少ない。これは、菌叢の差異や細胞状態の差異(損傷菌の存在など)および食品由来成分の違いなどがサンプル毎に影響してくることが一因である。一方、リアルタイムPCRを用いた細菌細胞の定量は特定(単一)の菌や菌群を対象としたものについて多く報告されている。リアルタイムPCRを用いた定量のメリットはいくつかある: (i) 他の生体分子と異なりDNA量はそれ自体が単細胞生物の細胞数と比例する、(ii) DNA分子の物理的・化学的特性から他の生体分子より抽出精製が容易である、(iii) リアルタイムPCRは測定対象の生化学反応(e.g.酵素反応)を利用せず、外部反応系を用いてDNA量を測定するだけであるので食品成分などの影響を受けにくい。当該リアルタイムPCR法はこのような利点を活かし、細菌数測定に適用したものである。
本例では、tuf 遺伝子をターゲットとしたリアルタイムPCR法により迅速に幅広い細菌由来の染色体DNAを定量的に増幅できることを記載した。tuf 遺伝子ユニバーサルプライマーは幅広く多くの種類の菌株から配列を決定して設計し、良好な増幅を可能にした。
例2
2.2.1 リアルタイムPCRによる畜肉菌数推計値と平板培地法による菌数との比較
計12検体の畜肉を都内小売店より購入した。細菌数測定はトリップチケースソイ寒天培地(ベクトンディッキンソン社)にて行い、リアルタイムPCRは上述の通り行った。リアルタイムPCRのCt値から菌数を推計する際には以下の数式により行った; 推定菌数(対数値)= (37.599-Ct) × 2.75−1。 得られた平板菌数およびPCRによる推計菌数は対数値に変換し、散布図にプロットした。
2.2.2. リアルタイムPCR推計細菌数と平板菌数の比較結果および考察
試料の細菌数はおよそ3.6〜8.0 log CFU/gの範囲であり、それぞれ平板菌数とリアルタイムPCR推計細菌数をプロットしたものが図5である。このプロットの回帰直線はy = 1.00x + 0.00(相関係数0.80)であり、良好な相関が示された。畜肉類に合わせてプロトコールを改良することでより良好な相関を確保できると見込まれる。
当該リアルタイムPCR法とトリプチケースソイ寒天培地による計数値間の差異は、全て±1常用対数値差以内に収まり、±1常用対数値差を超える差異は観察されなかった。これはカムデンガイドラインに示された、「菌数の常用対数値差が±1を超える検体数の比率が5%以内であれば、同等の性能であるとみなす」というガイドライン(Campden, 2001)に適合し、当該リアルタイムPCR法による細菌数測定法の妥当性を支持する。
例3
2.3.1 リアルタイムPCRによる野菜菌数推計値と平板培地法による菌数との比較
計25検体の生鮮野菜、生野菜サラダなど生野菜類からなる食品を都内小売店より購入した。細菌数測定はトリップチケースソイ寒天培地(ベクトンディッキンソン社)にて行い、リアルタイムPCRは上述の通り行った。リアルタイムPCRのCt値から菌数を推計する際には以下の数式により行った; 推定菌数(対数値)= (37.599-Ct) × 2.75−1。得られた平板菌数およびPCRによる推計菌数は対数値に変換し、散布図にプロットした。
2.3.2. リアルタイムPCR推計細菌数と平板菌数の比較結果および考察
リアルタイムPCRより推計した細菌数と平板菌数について、25検体の生野菜類および生野菜類からなる食品を試料として比較した。試料の細菌数はおよそ2.6〜9.1 log CFU/gの範囲であり、それぞれ平板菌数とリアルタイムPCR推計細菌数をプロットしたものが図6である。このプロットの回帰直線はy = 0.98x + 0.13 (相関係数0.85)であり、非常に良好な相関が確認された。
当該リアルタイムPCR法とトリプチケースソイ寒天培地による計数値間の差異は、25検体中23検体は±1常用対数値差以内に収まり、±1常用対数値差を超える差異は1サンプルでのみ観察され、カムデンガイドラインに示された、「菌数の常用対数値差が±1を超える検体数の比率が5%以内であれば、同等の性能であるとみなす」というガイドライン(Campden, 2001)に適合し、当該リアルタイムPCR法による細菌数測定法の妥当性を支持する。
参考文献
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Warren, C., Lathe, III., and Bork, P., 2001. Evolution of tuf genes: ancient duplication, differential loss and gene conversion. FEBS Lett 502, 113-116.

Claims (8)

  1. 細菌由来の核酸を増幅するプライマーセットであって、前記プライマーセットは、フォワードプライマーとリバースプライマーからなり、
    前記フォワードプライマーが、配列番号1で示される配列、配列番号2で示される配列、配列番号3で示される配列、配列番号4で示される配列、配列番号5で示される配列、配列番号6で示される配列、配列番号7で示される配列、配列番号8で示される配列、配列番号9で示される配列、配列番号10で示される配列、配列番号11で示される配列、配列番号12で示される配列、配列番号13で示される配列、配列番号14で示される配列、配列番号15で示される配列、配列番号16で示される配列、配列番号17で示される配列、配列番号18で示される配列、配列番号19で示される配列、配列番号20で示される配列、配列番号21で示される配列および配列番号22で示される配列からなるフォワードプライマーセットであり、
    前記リバースプライマーが、配列番号23で示される配列、配列番号24で示される配列、配列番号25で示される配列、配列番号26で示される配列、配列番号27で示される配列、配列番号28で示される配列、配列番号29で示される配列、配列番号30で示される配列、配列番号31で示される配列、配列番号32で示される配列、配列番号33で示される配列、配列番号34で示される配列、配列番号35で示される配列および配列番号36で示される配列からなるリバースプライマーセットである
    プライマーセット。
  2. 請求項1に記載のプライマーセットであって、当該プライマーセットによる細菌の増幅が、複数種類の細菌に由来する核酸についての網羅的な増幅であるプライマーセット。
  3. 前記細菌が、ファーミキュート、アクチノバクテリア、バクテロイデテスおよびプロテオバクテリアからなる群より少なくとも1選択される請求項1または2に記載のプライマーセット。
  4. 前記細菌が、アシネトバクター、エロモナス、アルテロモナス、バチルス、ブラキバクテリウム、ブロコトリクス、バルクホルデリア、クリセオバクテリウム、サイトロバクター、コルウェリア、エンテロバクター、エルウィニア、フラボバクテリウム、ジャニバクター、クレブシエラ、コクリア、ラクトバチルス、ラクトコッカス、リステリア、ミクロバクテリウム、ミクロコッカス、モルガネラ、パラコッカス、フォトバクテリウム、プラノマイクロビウム、シュードアルテロモナス、シュードモナス、サイクロバクター、サイクロモナス、ラハネラ、ロージア、サリニバクテリウム、サルモネラ、シネリア、セジョンジア、セラチア、シュワネラ、スフィンゴバクテリウム、スフィンゴモナス、スタフィロコッカス、ビブリオ、ザントモナスおよびエルシニアからなる群より少なくとも1選択される請求項1または2に記載のプライマーセット。
  5. 細菌を測定する方法であって、請求項1〜の何れか1項に記載のプライマーセットで試料核酸を増幅すること、および増幅産物から当該細菌を検出することを具備する方法。
  6. 請求項に記載の方法であって、更に、当該細菌を検出結果から細菌数を決定することを具備する方法。
  7. 請求項に記載の方法であって、前記試料核酸が複数種類の細菌由来の核酸を含む方法。
  8. 請求項に記載の方法であって、前記複数種類の細菌由来の核酸が網羅的に増幅される方法。
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