JP5572846B2 - エネルギーガス製造方法及びエネルギーガス貯蔵材料 - Google Patents

エネルギーガス製造方法及びエネルギーガス貯蔵材料 Download PDF

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Description

本発明は、エネルギーガス製造方法及びエネルギーガス貯蔵材料に関し、さらに詳しくは、バイオマス、プラスチック廃材などの炭素水素酸素含有化合物から水素、メタン、一酸化炭素などのエネルギーガスを製造する方法、及び、エネルギーガスを容易に放出することが可能なエネルギーガス貯蔵材料に関する。
バイオマスとは、再生可能な生物由来の有機性資源で、化石資源を除いたものをいう。また、バイオ燃料とは、バイオマスの持つエネルギーを利用した燃料(例えば、エタノール、メタノール、ブタノール、ジエチルエーテル、水素ガス、メタンガス、合成ガスなど)をいう。バイオ燃料の原料は、トウモロコシ、サトウキビ、食用油、木材、糞尿、おがくず、トウモロコシの茎など多岐にわたり、食料や飼料に用いることができない有機廃棄物も利用することができる。
バイオ燃料の内、アルコール状態にあるものは、ディーゼルエンジンの燃料に利用することができ、一部の国々では一般的に使用されている。また、バイオ燃料と石油燃料の合成油は、バイオマス利用燃料と呼ばれ、ガソリンの代替燃料として米国を中心にその利用が検討されている。
バイオマスからガス燃料又は固体燃料を得る方法については、以下のような方法が知られている。
(1)セルロースにCa(OH)2及びNi(OH)2を加えて混合粉砕し、混合粉砕物を加熱し、水素を発生させる方法(非特許文献1)。
(2)セルロースと鉄粉との混合物をミリング処理する水素の製造方法(特許文献1)。
(3)ヒノキ材と水酸化マグネシウムをすり鉢で混合し、混合物を窒素気流下、290℃まで加熱し、290℃で1時間保持する固体燃料の製造方法(特許文献2)。
(4)米松と水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム又は水酸化バリウムとの混合物を乳鉢で混合し、混合物を空気中で加熱し、固体燃料を得る方法(特許文献3)。
(5)杉材、Ca(OH)2、及び水をオートクレーブに導入し、650℃、3〜25気圧で10分間保持する水素の製造方法(特許文献4)。
(6)セルロース、水、ニッケル金属触媒を加圧反応容器に入れ、容器内を350℃に加熱し(水の飽和蒸気圧:170気圧以上)、60分間保持する水素の製造方法(特許文献5)。
(7)バイオマスと酸化鉄から水素を製造する方法(特許文献6)。
特開2006−312690号公報 特開2007−217467号公報 特開2008−037931号公報 特開2005−041733号公報 特開平8−059202号公報 特開2008−137864号公報
張 其武 他、"メカノケミカル処理と加熱法を組み合わせたセルロースからの水素発生"、化学工学会第39回秋季大会講演予稿集
2030年頃に石油の採掘のピークを迎え、発展途上国の経済発展により、世界的規模で石油依存のエネルギーが不足することが予測されている。そのため、数十年後には、化石資源以外からのエネルギー源の確保やその安定貯蔵が重要な課題になると考えられる。その候補の1つとして、水素をベースにしたエネルギーの積極的な利用がある。水素エネルギーは、化石資源以外からも作ることが可能であるため、その期待が大きい。
特許文献4、5に開示されているように、微粉化したバイオマス原料に水蒸気や酸素を添加し、高温高圧下で反応させると、原料がガス化し、比較的純度の高い水素ガスを得ることができる。
しかしながら、この方法は、高温高圧下で反応させる必要があるため、大規模な装置や排ガス浄化装置が必要となる。また、原料の一部を燃焼させて必要な熱を得ているので、プロセス全体の効率が低いという問題がある。さらに、反応条件によっては、タールを発生させる場合もある。
これに対し、非特許文献1に開示されているように、バイオマス原料にCa(OH)2、Ni(OH)2などの添加物を加えてメカノケミカル処理する方法は、大規模な装置を用いることなく、常圧下において比較的純度の高い水素を製造することができる。
しかしながら、相対的に多量の水素を得るには、Ni系触媒をナノレベルで高分散させるための高加速度MG処理や、多量のアルカリ土類水酸化物の添加が必要である。また、Ni系触媒は、一般に高価である。さらに、Ni系触媒は、繰り返し使用すると粒子の粗大化などが生じ、多数回の再利用が難しいという問題がある。
本発明が解決しようとする課題は、原料の混合処理に必要なエネルギー投入量が相対的に少なく、相対的に低温での加熱によりエネルギーガスが得られ、しかも、資源的にも十分な添加剤を用いることが可能なエネルギーガス製造方法を提供することにある。
また、本発明が解決しようとする他の課題は、添加剤の多数回の再利用が容易なエネルギーガスの製造方法を提供することにある。
さらに、本発明が解決しようとする他の課題は、相対的に低温での加熱によりエネルギーガスを発生させることが可能なエネルギーガス貯蔵材料を提供することにある。
上記課題を解決するために本発明に係るエネルギーガス製造方法は、以下の構成を備えていることを要旨とする。
(1)前記エネルギーガス製造方法は、
セルロースにギ酸Fe系添加物又はその水溶液を添加し、これらを混合する混合工程と、
前記混合工程で得られた混合物を不活性雰囲気下で加熱し、エネルギーガスを発生させる加熱工程と
を備えている。
(2)前記ギ酸Fe系添加物は、ギ酸とFe基添加物との混合物、前記ギ酸と前記Fe基添加物との反応物、及び、ギ酸Feから選ばれるいずれか1以上である。
(3)前記エネルギーガスは、H 2 、CH 4 、又はCOを含むガスである。
また、本発明に係るエネルギーガス貯蔵材料は、本発明に係るエネルギーガス製造方法の混合工程により得られるものからなる。
炭素水素酸素含有化合物とギ酸Fe系添加物との混合物を加熱すると、単一又は複数のエネルギーガスを取り出すことができる。しかも、その際に水蒸気改質を用いる必要が無く、タールの発生を伴うこともない。また、多量のエネルギーガスを取り出すためには、MG処理のような強混合や400℃を超える高温加熱を必ずしも必要としない。さらに、ギ酸Fe系添加物は、資源的にも十分であり、多数回の再利用も容易である。
図1(a)は、セルロースのTPD(Temperature Programmed Desorption:昇温脱離)マススペクトルである。図1(b)は、ギ酸のTPDマススペクトルである。図1(c)は、セルロース+ギ酸混合物のTPDマススペクトルである。図1(d)は、セルロース+ギ酸の3hMG処理物のTPDマススペクトルである。 上図は、MG処理時間の異なるセルロース+ギ酸MG処理物の外観の模式図である。左下図は、セルロース+ギ酸MG処理物のMG時間とガス発生量との関係を示す図である。右下図は、セルロース+ギ酸の3hMG処理物のTPDマススペクトルである。 セルロース、セルロース+ギ酸混合物、セルロース+ギ酸1hMG処理物、及び、セルロース+ギ酸3hMG処理物のX線回折パターンである。 図4(a)は、セルロース+ギ酸水溶液(ギ酸濃度88%)の3hMG処理物のTPDマススペクトルである。図4(b)は、セルロース+ギ酸水溶液(ギ酸濃度44%)の3hMG処理物のTPDマススペクトルである。図4(c)は、セルロース+ギ酸水溶液(ギ酸濃度5%)の3hMG処理物のTPDマススペクトルである。図4(d)は、セルロース+ギ酸水溶液の3hMG処理物の水素のTPDマススペクトルに及ぼすギ酸濃度の影響を示す図である。
セルロース+ギ酸水溶液の3hMG処理物のギ酸濃度と試料1g中に生成した鉄との関係を示す図である。 図6(a)は、セルロースのTPDマススペクトルである。図6(b)は、ギ酸の3hMG処理物のTPDマススペクトルである。図6(c)は、セルロース+ギ酸の3hMG処理物のTPDマススペクトルである。右下図は、セルロース+ギ酸のMG処理物の模式図である。 図7(a)は、セルロース+ギ酸の3hMG処理物のTPDマススペクトルである。図7(b)は、セルロース+Fe+ギ酸の3hMG処理物のTPDマススペクトルである。図7(c)は、セルロース+Feの3hMG処理物のTPDマススペクトルである。図7(d)は、セルロース+Fe+ギ酸の3hMG処理物の水素のTPDマススペクトルに及ぼすFe添加量の影響を示す図である。図7(e)は、セルロース+ギ酸+Feの混合自然乾燥物のTPDマススペクトルである。 図8(a)は、セルロース+Feの3hMG処理物及び3hMG処理物を500℃×1h加熱後の残渣のX線回折パターンである。図8(b)は、セルロース+ギ酸の3hMG処理物及び3hMG処理物を500℃×1h加熱後の残渣のX線回折パターンである。図8(c)は、セルロース+Fe+ギ酸の3hMG処理物及び3hMG処理物を500℃×1h加熱後の残渣のX線回折パターンである。
図9(a)は、ギ酸+Fe34混合物のTPDマススペクトルである。図9(b)は、セルロース+Fe34+ギ酸混合物のマススペクトルである。図9(c)は、セルロース+Fe34+ギ酸のMG処理物のTPDマススペクトルである。図9(d)は、ギ酸Fe(ギ酸+Fe混合乾燥)のTPDマススペクトルである。図9(e)は、セルロース+ギ酸+Fe混合自然乾燥物のTPDマススペクトルである。図9(f)は、セルロース+Fe+ギ酸の3hMG処理物のTPDマススペクトルである。 図10(a)は、セルロースのTPDマススペクトルである。図10(b)は、ギ酸Fe(ギ酸+Fe混合乾燥)のTPDマススペクトルである。図10(c)は、セルロース+ギ酸Fe混合物のTPDマススペクトルである。 セルロース、セルロース+ギ酸の3hMG処理物、セルロース+Fe+ギ酸のMG処理物、セルロース+Fe+ギ酸の混合物、及び、Fe+ギ酸混合物のガス発生量及びガス組成を示す図である。
以下、本発明の一実施の形態について、詳細に説明する。
[1. エネルギーガス製造方法]
本発明に係るエネルギーガス製造方法は、混合工程と、加熱工程とを備えている。
[1.1. 混合工程]
混合工程は、炭素水素酸素含有化合物にギ酸Fe系添加物又はその水溶液を添加し、これらを混合する工程である。
[1.1.1. 炭素水素酸素含有化合物]
炭素水素酸素含有化合物(以下、「CHO化合物」という)とは、C、H及び/又はOで構成されるすべての有機化合物をいう。すなわち、CHO化合物には、再生可能な生物由来の有機資源(いわゆる、バイオマス)だけでなく、一般的にはバイオマスに分類されない有機化合物やその廃棄物なども含まれる。また、CHO化合物には、天然物やその廃棄物だけでなく、人工的に合成、抽出又は精製された有機化合物、化石燃料に由来する有機化合物やその廃棄物なども含まれる。
CHO化合物としては、具体的には、
(1)農業、畜産業、水産業又は林業で生産される生産物及びその廃棄物(例えば、小麦、トウモロコシ、ジャガイモ、サツマイモなどの農産物及び食料用途や家畜の飼料として用いられる部分以外の植物の部分、家畜排泄物、木材及びその廃材、おがくず、落ち葉など)
(2)食品加工業、厨房などから排出される食品廃棄物(例えば、コーヒー出し殻など)、
(3)古紙、
(4)油類、脂肪類、天然高分子、合成高分子などの有機物及びその廃棄物(例えば、ポリエチレン(PE)、ポリ塩化ビニル(PVC)など)、
(5)下水汚泥、
などがある。
CHO化合物は、湿潤状態にあるものでも良く、あるいは、乾燥状態にあるものでも良い。CHO化合物が湿潤状態にある場合において、乾式で混合を行うときには、予めCHO化合物の乾燥を行う。
[1.1.2. ギ酸Fe系添加物又はその水溶液]
本発明において、「ギ酸Fe系添加物」とは、以下のものをいう。
(a)ギ酸とFe基添加物の混合物。
(b)ギ酸とFe基添加物との反応物。
(c)ギ酸Fe。
ギ酸Fe系添加物は、これらのいずれか1種からなるものでも良く、あるいは、2種以上の混合物であっても良い。
「ギ酸とFe基添加物との反応物」とは、反応生成物のみからなる場合に限らず、反応生成物と未反応物の混合物からなる場合も含まれる。
ギ酸Fe系添加物は、CHO化合物に対して粉末状態で添加しても良く、あるいは、水溶液の状態で添加しても良い。「水溶液」には、ギ酸Fe系添加剤が水に完全に溶解している状態だけではなく、微粒子が水に分散している状態(分散液)も含まれる。
本発明において、「Fe基添加物」とは、Feを含み、かつ、ギ酸又はギ酸イオンを含まない金属、合金又は化合物をいう。Fe基添加物は、Feを主成分とするものであれば良く、Fe、ギ酸及びギ酸イオン以外の元素やイオンが含まれていても良い。
Fe基添加物としては、具体的には以下のようなものがある。
(1)Fe、ステンレス鋼、クロムモリブデン鋼、ニッケルクロムモリブデン鋼、クロム鋼、クロムモリブデン鋼、鉄に僅かなクロムやモリブデン等を添加した低合金、これらを焼入れしたもの、これらを冷間圧造したものなどのFeを含む金属又は合金。
(2)Fe23、Fe34、FeO、α−Fe23−α酸化鉄(赤鉄鋼:ヘマタイト)、γ−Fe23−γ酸化鉄(磁赤鉄鋼:マグヘマタイト)などのFeを含む酸化物。
(3)Fe(OH)2、Fe(OH)3などの水酸化物。
(4)α−FeOOH、βFeOOH、γ−FeOOHなどのオキシ水酸化物。
Fe基添加物は、予め製造されたもの、あるいは、市販されているものをそのまま用いても良い。
一方、混合容器及び/又は混合メディアがFe基合金からなる混合機を用いて原料の強混合(MG処理)を行う場合、混合条件によっては、混合容器及び/又は混合メディアの摩耗によりFe基合金又はその化合物からなる微粒子が原料中に混入する場合がある。このような微粒子をそのまま、Fe基添加物として使用しても良い。
あるいは、摩耗により生じた微粒子に加えて、別個に調製されたFe基添加物をさらに添加しても良い。
ギ酸Fe系添加物が固体である場合、これをそのままCHO化合物に添加しても良い。あるいは、ギ酸Fe系添加物の水溶液をCHO化合物に添加しても良い。すなわち、混合は、乾式で行っても良く、あるいは、湿式で行っても良い。
特に、ギ酸Fe系添加物として適度な濃度のギ酸を含むギ酸水溶液を用いると、混合時にCHO化合物がギ酸水溶液に十分にぬれる。そのため、CHO化合物の分解が促進され、多量のエネルギーガスを発生させることができる。
添加物としてギ酸水溶液を用いる場合、ギ酸水溶液中のギ酸濃度は、エネルギーガスの発生量に影響を与える。
一般に、ギ酸濃度が低くなるほど、エネルギーガスの発生量が低下する(但し、約800℃までの昇温を想定した場合)。多量のエネルギーガスを発生させるためには、ギ酸濃度は、5wt%以上が好ましい。ギ酸濃度は、さらに好ましくは10wt%以上、さらに好ましくは20wt%以上、さらに好ましくは30wt%以上である。
一方、ギ酸濃度が過剰になると、かえってCHO化合物の分解に由来するエネルギーガス発生量が低下する。これは、CHO化合物に十分ぬれるギ酸の最適濃度が存在するためと考えられる。図4(d)に示すように、特に300〜400℃での低温度での熱分解には、ギ酸濃度44%が最も高いガス発生量を示した。従って、低温度(300〜400℃)でのエネルギーガス発生の観点からは、ギ酸濃度44%近傍が好ましい。
[1.1.3. ギ酸Fe系添加物の組成]
ギ酸Fe系添加物としてギ酸とFe基添加物の混合物を用いる場合、CHO化合物との混合時又は混合物の加熱時に、一旦、ギ酸Feが生成すると考えられる。また、ギ酸とFe基添加物とを混合すると、これらの全部又は一部が反応する場合がある。このような反応物をギ酸Fe系添加物として用いる場合において、反応物中に未反応のギ酸及びFe基添加物が含まれているときには、CHO化合物との混合時又は混合物の加熱時に、一旦、未反応物からギ酸Feが生成すると考えられる。
ギ酸Feは、自ら分解して水素を発生させる水素発生機能と、CHO化合物を分解してエネルギーガスの発生を促進させる触媒的機能とを備えていると考えられている。
ギ酸Fe系添加物として、ギ酸とFe基添加物の混合物又は未反応原料を含む反応物を用いる場合において、Fe原子:ギ酸イオンのモル比が1:2(以下、これを「化学量論比」という)であるときには、理想的にはすべてのFe原子及びギ酸イオンからギ酸Feが生成する。しかしながら、ギ酸Fe系添加物中のFe基添加物及びギ酸は、必ずしも化学量論比である必要はなく、いずれか一方が過剰に含まれていても良い。
但し、化学量論比からのずれが著しくなると、ギ酸Fe系添加物から生成するギ酸Feの総量が減少し、十分な触媒的機能が得られない。十分な触媒的機能を得るためには、Fe原子:ギ酸イオン比は、1:3以上1:1以下が好ましい。
[1.1.4. ギ酸Fe系添加物の添加量]
一般に、ギ酸Fe系添加物の添加量が少なすぎると、水素発生機能及び触媒的機能の双方が不十分となり、エネルギーガスの発生量が低下する。ギ酸Fe系添加物の添加量は、具体的にはギ酸Feに換算して3wt%以上が好ましい。ギ酸Fe系添加物の添加量(ギ酸Fe換算)は、さらに好ましくは10wt%以上、さらに好ましくは20wt%以上、さらに好ましくは30wt%以上である。
一方、ギ酸Fe系添加物を必要以上に添加しても、触媒的機能が飽和するので実益がない。また、ギ酸Fe系添加物の過剰添加は、原料全体に占めるCHO化合物の割合を減少させ、エネルギーガスの総発生量を低下させる。従って、ギ酸Fe系添加物の添加量は、ギ酸Feに換算して50wt%以下が好ましい。
ここで、「ギ酸Fe換算のギ酸Fe系添加物の添加量(X)」とは、(1)式で表される値を言う。
X=WFe(HCOO)2×100/(WFe(HCOO)2+WCHO) ・・・(1)
但し、
Fe(HCOO)2は、1モルのFeと2モルのギ酸から1モルのギ酸Feが生成すると仮定したときの、ギ酸Fe系添加物に含まれるギ酸Feの総重量。
CHOは、CHO化合物の重量。
[1.1.5. 混合方法]
原料の混合方法には、以下の方法がある。
(1)原料をMG処理する方法(強攪拌する方法)。例えば、CHO化合物にギ酸のみを添加して、Fe基添加物は摩耗微粒子を利用する方法。
(2)原料を混合攪拌する方法(弱攪拌する方法)。例えば、CHO化合物にギ酸とFe基添加物を添加して、混合攪拌する方法。
本発明においては、いずれの方法を用いても良い。
CHO化合物を分解させるための添加剤としてギ酸Fe系添加物を用いると、混合時の投入エネルギーが少ない場合であってもCHO化合物を分解することができる。
さらに、混合は、湿式で行っても良く、あるいは、乾式で行っても良い。また、ギ酸以外の原料を乾式処理した後にギ酸を添加しても良い。湿式で混合を行った場合、加熱を行う前に、混合物の乾燥を行うのが好ましい。
[1.1.5.1. MG処理]
MG処理とは、CHO化合物と各種添加剤との混合物を機械的に混合粉砕(Mechanical Grinding)することをいう。混合粉砕方法は、特に限定されるものではなく、各種の固体原料を粉体にする粉砕方法を用いることができる。
混合粉砕方法としては、具体的には、遊星ボールミル、振動ボールミル、回転ボールミルなどの各種粉砕機を用いて原料を混合粉砕する方法がある。また、二軸押出成形機などを用いて、混練によりメカノケミカル反応を生じさせるような形態でも良い。
混合容器及び/又は混合メディアがFe基合金からなる混合機を用いて原料のMG処理を行う場合、混合条件によっては、混合容器及び/又は混合メディアの摩耗によりFe基合金又はその化合物からなる微粒子が原料中に混入する場合がある。そのため、MG処理条件を最適化すると、別個に調製されたFe基添加物を添加しなくても、ギ酸を添加するだけでCHO化合物からエネルギーガスを発生させることができる。
MG処理条件は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な条件を選択する。一般に、MG処理時に原料に加えられるエネルギー(例えば、加速度、粉砕時間など)が大きくなるほど、原料が微細に粉砕され、原料の混合も均一化する。その結果、メカノケミカル反応が進行しやすくなる。
例えば、遊星ボールミルを用いてMG処理を行う場合、加速度は、3G以上が好ましい。加速度は、さらに好ましくは、5G以上である。
また、回転数は、200rpm以上が好ましい。回転数は、さらに好ましくは、400rpm以上である。
さらに、粉砕時間は、0.5hr以上が好ましい。粉砕時間は、さらに好ましくは、1hr以上である。
[1.1.5.2. 混合攪拌]
混合攪拌(又は、単に「混合」ともいう)とは、CHO化合物と各種添加剤との混合物を相対的に小さなエネルギーで混合することをいう。混合攪拌は、原料の粉砕を必ずしも伴わなくても良い。
混合攪拌方法としては、具体的には、
(1)乾式又は湿式下において、原料を乳鉢で混合する方法、
(2)乾式又は湿式下において、粉砕を伴わない程度の低加速度及び/又は低回転数でプロペラミル混合(例えば、スターラーなど)する方法、
(3)各種添加剤を溶解又は分散させた溶液をCHO化合物に振りかけ、あるいは、各種添加剤を溶解又は分散させた溶液にCHO化合物を溶解又は分散させる方法(攪拌操作なし)、
などがある。
[1.2 加熱工程]
加熱工程は、混合工程で得られた混合物を不活性雰囲気下で加熱する工程である。
加熱は、混合物に含まれる可燃性ガスを容易に取り出しやすくする(高効率にガスを収集する)ために、不活性雰囲気下(例えば、Ar中、N2中など)で行う。
加熱温度は、混合物の組成や混合条件に応じて最適な温度を選択する。
例えば、COxを主成分とするガスを発生させる場合、加熱温度は、150℃以上300℃未満が好ましい。
また、COxとH2の混合ガスを発生させる場合、加熱温度は、300℃以上400℃以下が好ましい。
さらに、加熱は、異なる温度で段階的に行っても良い。例えば、まず混合物を150℃以上300℃未満で加熱し、次いで混合物を300℃以上400℃以下で加熱しても良い。このような方法により、低温域ではCOxガスを発生させ、高温域ではCOxとH2の混合ガスを発生させることができる。
なお、本発明において「エネルギーガス」とは、H2、CH4、COなどのC、H又はOを含む可燃性ガスをいう。
[2. エネルギーガス貯蔵材料]
本発明に係るエネルギーガス貯蔵材料は、上述した混合工程により得られるものからなる。すなわち、本発明に係るエネルギーガス貯蔵材料は、炭素水素酸素含有化合物にギ酸Fe系添加物又はその水溶液を添加し、これらを混合することにより得られるものからなる。
「CHO化合物」、「ギ酸Fe系添加物又はその水溶液」、及び、「混合」については、上述した通りであるので、説明を省略する。
[3. エネルギーガス製造方法及びエネルギーガス貯蔵材料の作用]
CHO化合物とギ酸Fe系添加物との混合物を加熱すると、単一又は複数のエネルギーガスを取り出すことができる。しかも、その際に水蒸気改質を用いる必要が無く、タールの発生を伴うこともない。また、多量のエネルギーガスを取り出すためには、MG処理のような強混合や400℃を超える高温加熱を必ずしも必要としない。
これは、ギ酸Fe系添加物がCHO化合物を分解し、エネルギーガスを発生させるための触媒的機能を有するためと考えられる。
さらに、添加剤の種類及び添加量を最適化し、あるいは、加熱温度を最適化すると、エネルギーガス(特に、水素ガス)の発生温度を低温下させ、あるいは、複数のエネルギーガスを選択的に取り出すことができる。
ギ酸を約100℃で直接分解させると、H2が発生する。しかし、この場合のH2の発生量は、相対的に少ない。これに対し、ギ酸Feは、触媒的機能を有するだけでなく、自ら分解して相対的に多量の水素を発生させる機能を持つ。
さらに、CHO化合物にギ酸Feを添加し、これを不活性雰囲気下で加熱すると、最終的にはFeが得られる。このFeをギ酸水溶液とともにCHO化合物に再度添加し、これらを混合すると、混合時にギ酸Feが再生する。そのため、ギ酸Fe系添加物は、資源的に十分であるだけでなく、多数回の再利用も容易である。
(実施例1〜4、比較例1〜3)
[1. 試料の作製]
[1.1. 実施例1]
ギ酸源には、ギ酸を水で希釈した質量濃度88〜90wt%(試薬)のギ酸水溶液を用いた。セルロース(試薬)2gに対して、ギ酸水溶液20ccを加え、遊星ボールミルでMG処理した。遊星ボールミルの容器及びボールには、それぞれ、Fe合金製容器及びFe合金製ボールを用いた。MG処理は、フリッチェ製遊星ボールミル装置P5を用いて行った。回転数は200rpmとし、MG時間は、15分(実施例1)、30分(実施例2)、1時間(実施例3)、又は、3時間(実施例4)とした。
[1.2. 比較例1〜3]
セルロース(試薬)及びギ酸水溶液(質量濃度88〜90%)をそのまま試験に供した(比較例1、2)。また、セルロースとギ酸水溶液の混合を乳鉢で行った以外は、実施例1と同様にして混合物を得た(比較例3)
[2. 試験方法]
[2.1. 昇温脱離質量分析(TPD−MS)]
昇温脱離質量分析装置を用いてMG処理物を加熱し、発生ガスの定性分析を行った。質量分析は、(株)大倉理研製の自動昇温脱離分析装置(TP−5000、RG−102P)を用いて、MS計測条件と自動シーケンス条件を設定し、自動測定により行った。
[2.2 XRD]
加熱前後の混合物のXRD(X線回折)を行った。
[3. 結果]
図1に、セルロース(試薬)、ギ酸(試薬)、セルロース+ギ酸の混合物、及び、セルロース+ギ酸の3hMG処理物のTPDマススペクトルを示す。
図1より、以下のことがわかる。
(1)セルロースのみを加熱すると、熱分解によりH2O、CO、CO2及びCH4が発生するが、H2はほとんど発生しない(図1(a))。
(2)ギ酸のみを加熱すると、熱分解によりH2O、CO、CO2及びH2が発生するが、CH4はほとんど発生しない(図1(b))。
(3)セルロース+ギ酸の混合物を加熱すると、熱分解によりH2O、CO、CO2及びCH4が発生するが、H2はほとんど発生しない(図1(c))。
(4)セルロース+ギ酸の混合物をFe合金製容器及びFe合金製ボールを用いてMG処理すると、熱分解によりH2O、CO、CO2及びCH4だけでなく、多量のH2も発生する(図1(d))。
図2上図に、MG時間の異なるセルロース+ギ酸MG処理物の外観の模式図を示す。図2左下図に、セルロース+ギ酸MG処理物のMG時間とガス発生量との関係を示す。図2右下図に、セルロース+ギ酸の3hMG処理物のTPDマススペクトルを示す。
MG時間が15分を超えると、混合物は均一なコロイド状(エマルジョン)になった。また、MG処理時間が長くなるほど、コロイドの色がより濃い灰色となり、ガス発生量も増大した。さらに3hMG処理物を乾燥(空気中に1日放置)させると固体が得られ、半乾燥(空気中に数時間放置)させると粘土状物質が得られた。ギ酸水溶液の乾燥度合いにより、MG処理物は、液体状態からゲル状態、さらには固体状態に可変可能であり、エネルギー貯蔵物の形態を任意に選択できる。
これは、
(1)MG処理中に容器又はボールから原料中に混入したFeと、原料中のギ酸とが反応してギ酸Feが生成し、ギ酸Feがセルロース中に高分散(コロイド分散体:親水コロイド)したため、及び、
(2)生成したギ酸Feがセルロースの分解を促進したため、
と考えられる。
図3に、セルロース、セルロース+ギ酸の混合物、セルロース+ギ酸の1hMG処理物、及び、セルロース+ギ酸の3hMG処理物のX線回折パターンを示す。
図3より、MG処理により原料中にギ酸Feが生成していることがわかる。
(実施例5〜7、比較例4)
[1. 試料の作製]
[1.1. 実施例5〜7]
ギ酸源には、ギ酸を水で希釈した質量濃度88〜90wt%のギ酸水溶液(試薬)を用いた。セルロース(試薬)2gに対して、ギ酸水溶液20ccを加え、遊星ボールミルでMG処理した。遊星ボールミルの容器及びボールには、それぞれ、Fe合金製容器及びFe合金製ボールを用いた。MG処理は、フリッチェ製遊星ボールミル装置P5を用いて行った。回転数は200rpmとし、MG時間は、3時間(実施例5)とした。
また、ギ酸水溶液の濃度を44wt%(実施例6)又は5wt%(実施例7)とした以外は、実施例5と同様にして、MG処理を行った。
[1.2. 比較例4]
容器内に濃度88wt%のギ酸水溶液のみを入れた以外は、実施例5と同様にして、MG処理を行った。
[2. 試験方法]
[2.1. 昇温脱離質量分析(TPD−MS)]
実施例1と同様にして、発生ガスの定性分析を行った。
[2.2 生成カーボン量及び生成鉄量]
ガス発生後の試料を希塩酸中に分散させた後、ろ過した。この操作を3回繰り返し、カーボンと塩化鉄を分離し、100℃×3h、空気中乾燥をした。分離したカーボンの重量及び塩化鉄の重量から、試料1g当たりの生成カーボン量及び生成鉄量を算出した。
[3. 結果]
図4(a)〜図4(c)に、ギ酸濃度の異なるセルロース+ギ酸の3hMG処理物のTPDマススペクトルを示す。また、図4(d)に、セルロース+ギ酸の3hMG処理物のH2のTPDマススペクトルに及ぼすギ酸濃度の影響を示す。
図4より、ギ酸濃度が低すぎる場合及び高すぎる場合のいずれも、水素発生量が低下することがわかる。
図5に、ギ酸濃度と試料1g中に生成した鉄量との関係を示す。また、表1に、試料の処理条件、500℃でのガス発生量、ガス発生後の試料重量、生成カーボン量、及び、生成鉄量を示す。
図5及び表1より、ギ酸濃度が高くなるほど、生成カーボン量及び生成鉄量が減少することがわかる。
ギ酸濃度が高いものほど、原料中の水の量が少ない。セルロースは、一般に親水性材料であるため、水が過剰にある場合の方が十分にぬれる可能性がある。少量の水を含む高濃度なギ酸水溶液の添加と、多量の水を含む低濃度なギ酸水溶液の添加とは、ガス発生量が同じである。このことから、ギ酸濃度が高い場合は、セルロース表面を優先的に分解し、ガスが発生したと考えられる。また、その濃度が低い場合は、水の親水作用によりセルロース内部までギ酸による分解が生じ、ガスが生じたと考えられる。
また、ギ酸濃度が低い場合の方が、生成Feが多く、触媒的作用も大きい。セルロース内部は、還元されやすい雰囲気のため、ギ酸Feが生成しやすい。そのため、ギ酸濃度が低い場合の方が、セルロース内部までギ酸が浸透し、ギ酸Feが多く生成すると考えられる。
Figure 0005572846
図6(a)に、セルロース(比較例1)のTPDマススペクトルを示す。図6(b)に、ギ酸のみの3hMG処理物(比較例4)のTPDマススペクトルを示す。図6(c)に、セルロース+ギ酸の3hMG処理物(実施例5)のTPDマススペクトルを示す。図6右下図に、セルロース+ギ酸の3hMG処理物(実施例5)の模式図を示す。
セルロースを熱分解させると、図6(a)に示すように、H2はほとんど発生しない。また、300〜400℃の温度域で発生するガスは、主としてCO及びCO2である。同様に、ギ酸を100℃以下で熱分解させると、H2は僅かに発生するが、100℃以上で熱分解させると、H2はほとんど発生しない(図1(b)参照)。
これに対し、ギ酸の3hMG処理物を熱分解させると、図6(b)に示すように、多量のH2が発生する。また、350〜375℃の温度域で発生するガスは、CO、CO2及びH2の混合ガスであった。
さらに、セルロース+ギ酸の3hMG処理物を熱分解させると、図6(c)に示すように、多量のH2が発生した。また、ガス発生後の試料にはFeが含まれていた。
これは、
(1)MG処理時に容器又はボールから原料中にFeが混入し、混入したFeとギ酸とでギ酸Feを生成(キレート化)するため、及び、
(2)生成したギ酸Feがセルロースとともに混合粉砕され、メカノケミカル反応によりコロイド状物質が生成するため(図6右下図)、
と考えられる。
(実施例8〜10、比較例5)
[1. 試料の作製]
[1.1. 実施例8]
実施例5と同一条件下で、MG処理物を作製した(実施例8)。
[1.2. 実施例9]
ギ酸(試薬、質量濃度88%)を水で希釈し、質量濃度44wt%のギ酸水溶液を作製した。セルロース/Feの重量比が2g/0.3gとなるように、セルロース(試薬)に対してFe粉末を添加した。セルロース+Fe混合粉末2gに対して、ギ酸水溶液20ccを加え、遊星ボールミルでMG処理した。遊星ボールミルの容器及びボールには、それぞれ、Fe合金製容器及びFe合金製ボールを用いた。MG処理は、フリッチェ製遊星ボールミル装置P5を用いて行った。回転数は200rpmとし、MG時間は、3時間(実施例9)とした。
[1.3. 実施例10]
混合物を乳鉢で混合し、自然乾燥させた以外は、実施例9と同様にして混合物を得た。
[1.4. 比較例5]
ギ酸水溶液を添加しなかった以外は、実施例9と同様にして、MG処理物を得た。
[2. 試験方法]
[2.1. 昇温脱離質量分析(TPD−MS)]
実施例1と同様にして、発生ガスの定性分析を行った。
[2.2 XRD]
加熱前後の混合物のXRD(X線回折)を行った。
[3. 結果]
図7(a)に、セルロース+ギ酸MG処理物(実施例8)のTPDマススペクトルを示す。図7(b)に、セルロース+Fe+ギ酸MG処理物(実施例9)のTPDマススペクトルを示す。図7(c)に、セルロース+FeMG処理物(比較例5)のTPDマススペクトルを示す。図7(d)に、セルロース+Fe+ギ酸MG処理物の水素のTPDマススペクトルに及ぼすFe添加量の影響を示す。図7(e)に、セルロース+ギ酸+Fe混合物(実施例10)のTPDマススペクトルを示す。
図8(a)に、セルロース+Feの3hMG処理物(比較例5)及びその3hMG処理物を500℃×1h加熱後の残渣のX線回折パターンを示す。図8(b)に、セルロース+ギ酸の3hMG処理物(実施例8)及びその3hMG処理物を500℃×1h加熱後の残渣のX線回折パターンを示す。図8(c)に、セルロース+Fe+ギ酸の3hMG処理物(実施例9)及びその3hMG処理物を500℃×1h加熱後の残渣のX線回折パターンを示す。
図7及び図8より、以下のことがわかる。
(1)セルロースにFe粉のみを添加してMG処理をしても、MG処理物中にはギ酸Feが生成しない(図8(a))。また、これを加熱しても、H2はほとんど発生しない(図7(c))。
(2)セルロースにギ酸のみを加えてMG処理した場合(図8(b))、及び、セルロースにFe粉及びギ酸の双方を加えてMG処理した場合(図8(c))のいずれも、MG処理物中にギ酸Feが生成する。
(3)セルロースにFe粉及びギ酸を加えてMG処理すると、ギ酸のみを加えてMG処理した場合に比べて、H2発生量が増大する(図7(a)、図7(b)、図7(d))。
(4)セルロースにFe粉及びギ酸の双方を添加すると、MG処理を行わなくても、多量のH2が発生する(図7(e))。
(実施例11〜14、比較例6〜7)
[1. 試料の作製]
[1.1. 比較例6]
ギ酸(試薬、質量濃度88%)を水で希釈し、濃度44wt%のギ酸水溶液を作製した。ギ酸水溶液20ccに対して、Fe34粉末を2g加え、これらをマグネチックスターラーで混合した。
[1.2. 実施例11]
比較例6と同様にして、ギ酸+Fe34混合物を作製した。セルロース/Feのモル比が1/0.3となるように、セルロース2gに対してギ酸+Fe34混合物を添加し、これらをマグネチックスターラーで混合した。
[1.3. 実施例12]
比較例6と同様にして、ギ酸+Fe34混合物を作製した。セルロース/Feのモル比が1/0.3となるように、セルロース2gに対してギ酸+Fe34混合物を添加し、遊星ボールミルでMG処理した。遊星ボールミルの容器及びボールには、それぞれ、Fe合金製容器及びFe合金製ボールを用いた。MG処理は、フリッチェ製遊星ボールミル装置P5を用いて行った。回転数は200rpmとし、MG時間は、3時間とした。
[1.4. 比較例7]
ギ酸(試薬、質量濃度88%)を水で希釈し、濃度44wt%のギ酸水溶液を作製した。ギ酸水溶液20ccに対して、Fe粉末を2g加え、混合乾燥させた。得られたギ酸Feをそのまま試験に供した。
[1.5. 実施例13]
比較例7と同様にして、ギ酸Feを作製した。セルロース/Feのモル比が1/0.3となるように、セルロース2gに対してギ酸Feを添加し、これらをマグネチックスターラーで混合した。混合後、混合物を自然乾燥させた。
[1.6. 実施例14]
比較例7と同様にして、ギ酸Feを作製した。セルロース/Feのモル比が1/0.3となるように、セルロース2gに対してギ酸Feを添加し、遊星ボールミルでMG処理した。遊星ボールミルの容器及びボールには、それぞれ、Fe合金製容器及びFe合金製ボールを用いた。MG処理は、フリッチェ製遊星ボールミル装置P5を用いて行った。回転数は200rpmとし、MG処理時間は、3時間とした。
[2. 試験方法]
実施例1と同様にして、発生ガスの定性分析を行った。
[3. 結果]
図9に、各試料のマススペクトルを示す。図9より、以下のことが分かる。
(1)ギ酸+Fe34混合物を加熱すると、約300℃において、CO、CO2及びH2が発生する(図9(a))。
(2)セルロースにギ酸+Fe34混合物を加えて混合すると、CO及びCO2の発生温度が低温側にシフトする(図9(b))。
(3)セルロースにギ酸+Fe34混合物を加えてMG処理すると、CO、CO2及びH2の発生温度が低温側にシフトすると同時に、これらのガス発生量が著しく増大する(図9(c))。
(4)ギ酸とFeとを混合乾燥させることにより得られるギ酸Feを加熱すると、約350℃において、CO、CO2及びH2が発生する(図9(d))。
(5)セルロースにギ酸Feを加えて混合すると、CO、CO2及びH2の発生温度が僅かに高温側にシフトする(図9(e))。
(6)セルロースにギ酸Feを加えてMG処理すると、CO、CO2及びH2の発生温度が低温側にシフトする(図9(f))。
(実施例15、比較例8〜9)
[1. 試料の作製]
[1.1. 実施例15]
セルロース/Feのモル比が1/0.5となるように、セルロース2gに対してギ酸Feを添加した以外は、実施例13と同様にして、混合物を得た。
[1.2. 比較例8]
セルロース(試薬)をそのまま試験に供した。
[1.3. 比較例9]
比較例7と同様にして、ギ酸Feを作製した。
[2. 試験方法]
実施例1と同様にして、発生ガスの定性分析を行った。
[3. 結果]
図10に、各試料のマススペクトルを示す。図10より、以下のことがわかる。
(1)セルロースにギ酸Feを添加すると、MG処理を行わなくても、多量のH2が発生する(図10(c))。
(2)セルロース/Feのモル比が1/0.5となるように、セルロースにギ酸Feを添加すると、CO及びCO2の発生ピークは、いずれも、約350℃及び約600℃の2箇所に現れる(図10(c))。
(実施例16〜18、比較例10〜11)
[1. 試料の作製]
[1.1. 比較例10]
セルロース(試薬)をそのまま試験に供した。
[1.2. 実施例16]
ギ酸(試薬、質量濃度88%)を水で希釈し、濃度44wt%のギ酸水溶液を作製した。セルロース(試薬)2gに対して、ギ酸水溶液20ccを加え、遊星ボールミルでMG処理した。遊星ボールミルの容器及びボールには、それぞれ、Fe合金製容器及びFe合金製ボールを用いた。MG処理は、フリッチェ製遊星ボールミル装置P5を用いて行った。回転数は200rpmとし、MG時間は、3時間とした。
[1.3. 実施例17]
ギ酸(試薬、質量濃度88%)を水で希釈し、濃度44wt%のギ酸水溶液を作製した。セルロース2gに対して、Fe粉末0.6g及びギ酸水溶液20ccを加え、これらを遊星ボールミルでMG処理した。遊星ボールミルの容器及びボールには、それぞれ、Fe合金製容器及びFe合金製ボールを用いた。MG処理は、フリッチェ製遊星ボールミル装置P5を用いて行った。回転数は200rpmとし、MG時間は、3時間とした。
[1.4. 実施例18]
ギ酸(試薬、質量濃度88%)を水で希釈し、濃度44wt%のギ酸水溶液を作製した。セルロース2gに対して、Fe粉末0.6g及びギ酸水溶液20ccを加え、これらを混合した。
[1.5. 比較例11]
ギ酸(試薬、質量濃度88%)を水で希釈し、濃度44wt%のギ酸水溶液を作製した。ギ酸水溶液20ccに対して、Fe粉末を0.6g加え、混合乾燥させた。得られたギ酸Feをそのまま試験に供した。
[2. 試験方法]
[2.1. ガス発生量及びガス成分分析]
各試料1gを500℃×1h加熱し、試料1g当たりのガス発生量を測定した。また、ガスクロマトグラフを用いて、各試料1gの発生ガスを30分間抽出した。その一部を、ヘリウムをキャリアガスにして活性炭入りのパックドカラムに通過させ、TCD(熱伝導型検出器)により測定し、ガスの成分分析を行った。
[2.2. ギ酸Fe量及びギ酸Feに由来する水素発生量]
ガス発生後の試料を希塩酸中に分散させた後、ろ過した。この操作を3回繰り返し、カーボンと塩化鉄を分離した。分離した塩化鉄の重量から、試料1g当たりのギ酸Fe量を算出した。さらに、試料1g当たりのギ酸Fe量から、ギ酸Feに由来する水素発生量を算出した。
[3. 結果]
図11に、各試料の試料1g当たりのガス発生量、及び、発生したガスの成分を示す。また、表2に、試料1g当たりのギ酸Feの重量及び試料中のギ酸Feに由来する水素発生量を示す。
図11及び表2より、以下のことがわかる。
(1)セルロースに対してFe及びギ酸を添加してMG処理すると、セルロース単独の場合に比べて、ガス発生量及びH2発生量が増大する。
(2)セルロースに対してFe及びギ酸を添加すると、MG処理の有無にかかわらず、セルロース単独の場合に比べて、ガス発生量及びH2発生量が増大する。
(3)セルロースに対してFe及びギ酸を添加すると、MG処理の有無にかかわらず、ギ酸Feの分解に由来するH2だけでなく、セルロースの分解に由来するH2も発生する。
(4)試料1g当たりのギ酸Feが0.03gであっても、セルロースの分解に由来するH2が多量に発生する。
Figure 0005572846
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。
本発明に係るエネルギーガス製造方法は、可燃性ガス、燃料電池に供給する燃料ガスなどの各種のエネルギーガスを製造する方法として使用することができる。
また、本発明に係るエネルギーガス貯蔵材料は、各種エネルギーガスを簡便な方法により取り出すための材料として用いることができる。

Claims (5)

  1. 以下の構成を備えたエネルギーガス製造方法。
    (1)前記エネルギーガス製造方法は、
    セルロースにギ酸Fe系添加物又はその水溶液を添加し、これらを混合する混合工程と、
    前記混合工程で得られた混合物を不活性雰囲気下で加熱し、エネルギーガスを発生させる加熱工程と
    を備えている。
    (2)前記ギ酸Fe系添加物は、ギ酸とFe基添加物との混合物、前記ギ酸と前記Fe基添加物との反応物、及び、ギ酸Feから選ばれるいずれか1以上である。
    (3)前記エネルギーガスは、H 2 、CH 4 、又はCOを含むガスである。
  2. 前記混合工程は、混合容器及び/又は混合メディアがFe基合金からなる混合機を用いてMG処理を行うものであり、
    前記Fe基添加物は、前記混合容器及び/又は混合メディアの摩耗により生じた微粒子を含む請求項1に記載のエネルギーガス製造方法。
  3. 前記ギ酸鉄系添加物の添加量は、ギ酸Feに換算して3wt%以上50wt%以下である請求項1又は2に記載のエネルギーガス製造方法。
  4. 前記加熱工程は、前記混合物を150℃以上300℃未満で加熱し、次いで、前記混合物をさらに300℃以上400℃以下で加熱するものである請求項1から3までのいずれかに記載のエネルギーガス製造方法。
  5. 請求項1から3までのいずれかに記載の混合工程により得られるエネルギーガス貯蔵材料。
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