JP5569833B2 - ルシフェラーゼを含む発光系及びそれを用いたイメージング方法 - Google Patents
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項1 以下:
(1)細胞の表面を特異的に認識する物質の標識として、ルシフェラーゼを含む発光系を個体に導入する工程;
(2)ルシフェリンを個体に導入して前記ルシフェラーゼと反応させる工程;及び
(3)400nm〜550nmの波長の光を透過しないフィルターを介して、前記発光系からの光を検出する工程;
を含む、個体における前記物質によって認識される細胞又は細胞群をイメージングする方法。
項2 ルシフェラーゼに有機蛍光色素とビオチンとが結合した、ルシフェラーゼ誘導体。
項3 有機蛍光色素がインドシアニングリーン、クマリン、ローダミン、キサンテン、ヘマトポルフィリン、及びフルオレスカミンから成る群から選択される少なくとも一種である、項2に記載の誘導体。
項4 ルシフェラーゼがウミホタルルシフェラーゼである、項2又は3に記載の誘導体。
項5 有機蛍光色素が糖鎖を介してルシフェラーゼに結合している、項2〜4のいずれかに記載のルシフェラーゼ誘導体。
項6 項2〜5のいずれかに記載のルシフェラーゼ誘導体が、ビオチン−アビジン物質複合体を介して細胞の表面を特異的に認識する物質と結合した、標識化物質。
項7 有機蛍光色素が糖鎖を介してルシフェラーゼに結合したルシフェラーゼ誘導体が、糖鎖を介して細胞の表面を特異的に認識する物質に結合している、標識化物質。
項8 細胞の表面を特異的に認識する物質が、抗体、ホルモン、糖鎖、並びに受容体及びイオンチャンネルのリガンドからなる群から選択される少なくとも1種である、項6又は7に記載の標識化物質。
項9 以下:
(1)請求項6〜8のいずれかに記載の標識化物質を個体に導入する工程;
(2)ルシフェリンを個体に導入する工程;及び
(3)400nm〜550nmの波長の光を透過しないフィルターを介して光を検出する工程;
を含む、個体における前記物質によって認識される細胞又は細胞群をイメージングする方法。
本発明において使用されるルシフェラーゼは、ルシフェリンと反応して発光する性質を有する酵素である。本発明のイメージング方法に使用可能なルシフェラーゼとしては、例えば、ウミホタルルシフェラーゼ、ホタルルシフェラーゼ、鉄道虫ルシフェラーゼ、ヒカリコメツキルシフェラーゼ、イリオモテボタルルシフェラーゼ、及びウミシイタケルシフェラーゼ等を挙げることが出来る。
本発明においてルシフェリンとは、ルシフェラーゼの発光性基質となる物質である。ルシフェリンは、ルシフェラーゼと反応して光エネルギーを発するものであれば特に制限なく使用することができる。具体的には、ウミホタルルシフェリン、ヒカリコメツキルシフェリン、ホタルルシフェリン、ウミシイタケルシフェリン、鉄道虫ルシフェリン、イリオモテボタルルシフェリン等を挙げることができる。また、天然由来のルシフェリンだけでなく、合成された代替ルシフェリン又はルシフェリンの前駆体を使用することもできる。
本発明に関して、ルシフェラーゼを含む近赤外発光系とは、上記のルシフェラーゼとルシフェリンとの反応で生じるエネルギーを、有機蛍光色素が吸収し、励起されることで650nm〜750nmの波長の近赤外光を放出する系である。
本発明において使用される有機蛍光色素とは、一定の波長のエネルギーを吸収し、近赤外光を放出する有機物質である。これは、放出した光が生体に存在するヘモグロビン及び水によって吸収されることを避けるためである。好ましい有機蛍光色素は、650nm〜800nmの範囲に含まれる波長の光を放出するものであり、より好ましくは、650nm〜750nmに発光波長を有する有機蛍光色素である。
本発明において使用される、細胞の表面を特異的に認識する物質(以下、当該物質とも称する。)とは、特定の細胞の表面に提示されているタンパク質、脂質、糖鎖、及び/又は核酸等を特異的に認識する物質である。具体的には、特定の細胞の表面に提示されるタンパク質、脂質、糖鎖及び/又は核酸を特異的に認識する抗体、ホルモン、糖鎖、並びに受容体及びイオンチャンネルのリガンドが挙げられる。
本発明において、有機蛍光色素はルシフェラーゼからの光エネルギーを吸収して650nm〜750nmの波長の光を放出する。よって、有機蛍光色素はルシフェラーゼの近傍に位置していることが好ましく、より好ましくはルシフェラーゼと結合している。ルシフェラーゼと有機蛍光色素とは、当該技術分野において公知の方法を用いて結合させることができる。これらを結合させることによって本発明のルシフェラーゼ誘導体を得ることができる。当該結合は、シフェラーゼの酵素活性及び安定性、並びに有機蛍光色素の発光特性に影響を与えないことが好ましい。また、当該結合は、ルシフェラーゼから有機蛍光色素への光エネルギー移動を妨げないことが好ましい。これらの点を考慮して好ましい結合は、有機蛍光色素とルシフェラーゼとをルシフェラーゼ糖鎖(好ましくは、ルシフェラーゼ由来の糖鎖)を介して結合することである。
上記細胞の表面を特異的に認識する物質とルシフェラーゼとは、当該技術分野に公知の任意の方法によって直接的に又は各種のリンカーを介して結合させることができる。ルシフェラーゼの酵素活性及び前記物質の特異的な認識(結合)に影響を及ぼさないように結合することが好ましい。
本発明の好ましい実施形態において、細胞の表面を特異的に認識する物質は、ビオチン−アビジン物質複合体を介してルシフェラーゼに結合している。本実施形態において、ビオチンはルシフェラーゼのアミノ基(N末端またはLys由来のアミノ基)、グアニジノ基(Arg)、チオール基(Cys)のいずれを介してルシフェラーゼに結合させてもよい。好ましくは、アミノ基を介した結合である。
−(CH2CH2O)n−
(式中、nは2〜500、好ましくは2〜100、より好ましくは2〜50、さらに好ましくは4〜10の整数を示す。)
上記のポリアルキレングリコールは、エステル結合、アミド結合またはチオエーテル結合を介して、好ましくはアミド結合を介してビオチンおよびウミホタルルシフェラーゼと各々結合する。
X1−Y−(CH2)m1−(OCH2CH2)m2−NH−(ビオチニル)、
(式中、X1はスルホコハク酸イミドオキシカルボニル基、コハク酸イミドオキシカルボニル基、テトラフルオロフェノキシカルボニル基、シアノメチルオキシカルボニル基、p−ニトロフェニルオキシカルボニル基、I、Br、及びClなどのアミノ基と反応してアミド(NHCO)又はアミノアルキル基を形成可能な活性エステル残基、ハロゲン原子あるいはマレイミド基を表す。YはCH2CONH、CH2CH2CONHなどの任意の連結基あるいは単結合を示す。m1は2、3又は4を表し、m2は2〜500、好ましくは2〜100、より好ましくは2〜50、さらに好ましくは4〜10の整数を示す。)
ポリアルキレングリコール基を導入可能なビオチン標識試薬としては、たとえばPierce社製のEZ-Link NHS-PEO4 Biotinylation kitやEZ-Link TFP-PEO Biotinylation kitなどの各種ビオチン標識試薬を使用することもできる。
上記アミノ基をビオチン化する方法以外に、タグ(ペプチド)を利用する方法が知られている。この方法は、ルシフェラーゼのC末端又はN末端に、タグを付加し、そのタグに含まれるリジンをビオチンリガーゼにより、特異的にビオチン化する。この方法に使用することができるタグは、例えば、genecopoeia社製Avi-tagTM(LERAPGGLNDIFEAQKIEWHE又はGLNDIFEAQKIEWHE)及びInvitrogen社製のBioEase TagTM(肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)オキサロ酢酸脱炭酸酵素のαサブユニットのC末端配列の一部である72残基(アミノ酸残基524-595)のペプチド)を挙げることができる。
ルシフェラーゼのビオチン化は、ルシフェラーゼが有する糖鎖を介して行うことも可能である。この方法では、上記のルシフェラーゼと有機蛍光色素との結合の項で説明したように、糖鎖にNaIO4などの過ヨウ素酸塩を反応させて、糖鎖中のジオール基を酸化し、アルデヒド基を形成する。次いで、このアルデヒド基と選択的に反応する基(例えば、ヒドラジド基(CONHNH2))を有するビオチン化試薬とを反応させることにより、ウミホタルルシフェラーゼのLysの側鎖アミノ基とは反応せずに、糖鎖に選択的にビオチンを導入することができる。アルデヒド基はビオチン化試薬のアミノ基と反応させてイミンとし、これをNaBH3CNで還元して、ビオチンを結合することもできる。この方法は、ウミホタルルシフェラーゼの活性を保持しつつビオチン化できるので好ましい。前記過ヨウ素酸塩としては、過ヨウ素酸ナトリウム、過ヨウ素酸カリウム、過ヨウ素酸リチウムなどが挙げられる。
本発明のイメージング方法に使用することができるフィルターは、個体内に存在する活性酸素やBSAとルシフェリンとが反応することによって生じる光等の非特異的な光を透過しない性質を有するフィルターであれば、特に限定されず、公知のフィルター及び今後開発されるフィルターを適宜選択して使用することができる。好ましくは、400nm〜550nmの波長を有する光を透過しないフィルターが使用され、より好ましくは350nm〜550nmの波長を有する光を透過しないフィルターが使用される。さらに好ましくは、400nm〜570nmの波長を有する光を透過しないフィルターが使用される。よりさらに好ましくは、350nm〜570nmの波長を有する光を透過しないフィルターが使用される。最も好ましくは、650nm〜750nmの波長の光のみを選択的に透過するフィルターが使用される。このようなフィルターとして、具体的には570nmロングパスフィルターを使用することができる。
本発明のイメージング方法は、例えば、(1)上記に説明した何れかの方法によって作製した有機蛍光色素−ルシフェラーゼ−細胞の表面を特異的に認識する物質の複合体(即ち、標識化物質)を個体に導入し、(2)個体における標的の細胞の表面に前記複合体を集積させ、(3)ルシフェリンを個体に導入し、ルシフェラーゼと反応させ(4)蛍光色素が発する光を350nm〜550nmの波長の光を透過しないフィルターを介して検出し、(5)解析装置を用いてイメージング化することによって行うことができる。前記標識化物質の個体への導入は、当該技術分野に公知の任意の方法で行うことができる。例えば、陰茎背静脈及び尾静脈から注入することができる。
ビオチン化ウミホタルルシフェラーゼの作成
pcDNA-CLuc(Nakajima Y, et al., Biosci. Biotechnol. Biochem, Vol. 68, 565-70, 2004)をテンプレートとし、KOD-plus-Mutagenesis kit(東洋紡)を用いて、インバースPCR反応により、ウミホタルルシフェラーゼのC末端にAvi-tag(Avidity社製)を挿入したベクター(配列番号3)を調製した。その後、片倉工業のカイコとバキュロウイルスを用いたタンパク質生産サービスで前記ベクターに挿入したウミホタルルシフェラーゼを発現させた。得られたルシフェラーゼについて、Avidity社により添付されたマニュアルに従って、ビオチンリガーゼを用いて、ルシフェラーゼのビオチン化反応を行った。
ビオチン化ウミホタルルシフェラーゼの糖鎖への蛍光色素の導入及び発光特性の評価
0.1mgのビオチンルシフェラーゼを0.05mlの0.1M アセテートバッファー(pH5.2)で溶解し、0.1Mのアセテートバッファー(pH5.2)にNaIO4を20mMの濃度で溶解した溶液0.05mlと混合し、4℃で0.5時間ゆっくり攪拌した。反応液をGE Health社PD-10カラムに載せ、100mMのリン酸ナトリウム溶液及び150mMのNaCl溶液で溶出し、活性分画のみ(約2mL)を回収した。ミリポア社のBiomax(登録商標)100kで2mL液を約0.02mlまでに濃縮した。1mgのHilyte fluor 647(NH2NH-インドシアニングリーン誘導体;Anaspec社製)を0.1Mのアセテートバッファー(pH5.2)0.1mlで溶かした。これを、前記の濃縮したルシフェラーゼ液0.02mlと同量で混合し、室温で2時間反応させた。反応液をGE Health社製のPD-10カラムに載せ、100mMのリン酸ナトリウム溶液、及び150mMのNaCl溶液を用いて溶出し、活性分画(約2mL)のみを回収した。回収したウミホタルルシフェラーゼ−有機蛍光色素複合体1μlをヘモグロビン溶液(150mg/ml)溶液に加え、45μMのウミホタルルシフェリンを1μl加え、1秒間積算の発光スペクトルを測定した。その結果、460nmを最大とする短波長側の光はヘモグロビンに吸収されるが、ルシフェラーゼからインドシアニングリーンへのエネルギーの移動によって生まれた約650nm〜750nmの波長を有する近赤外光が観察された(図1)。これにより、有機蛍光色素−ビオチン化ルシフェラーゼ複合体から生体透過性の高い光放出されることが確認できた。
アビジン化腫瘍細胞認識抗体の調製
腫瘍細胞に特異的に結合するモノクローナル抗体である抗dlk抗体(WO2008/056833に準じて作成)(5mg/ml)の0.1Mリン酸緩衝液(pH7.4)1ml、に6 mgの2−メルカプトエタノールアミンを加え、37℃で1.5時間反応を行った。反応液をGE Healthcare社製のPD-10カラムに載せ、100mMのリン酸ナトリウム溶液及び10 mMのEDTA(pH 7.6)溶液で溶出し、紫外線吸収画分(3.5 ml)を回収した。これにPierce社のEZ-Link(登録商標)Maleimide Activated NeutrAvidinTM Protein(5mg)を添加し、1時間反応させた。その後、反応液をカラムクロマトグラフィー(Superdex 200 HR 10/30)で精製し、アビジンが結合した抗dlk抗体を得た。次に、このアビジン化坑dlk抗体(0.025mg/ml)と実施例1で作成した有機蛍光色素−ビオチン化ルシフェラーゼ複合体(0.025mg/ml)とを混合し、アビジン−ビオチン複合体を介して抗dlk抗体と有機蛍光色素−ルシフェラーゼ複合体とが結合した、インドシアニングリーン−ウミホタルルシフェラーゼ−抗dlk抗体の複合体を得た。
個体イメージング
Dlk導入腫瘍細胞(dlk遺伝子を導入したHuh-7細胞)を移植して作製した担癌マウス(BALB/cマウス6週齢)をエーテル麻酔後、実施例3で得たアビジン化抗dlk抗体と蛍光色素で修飾されたビオチン化ルシフェラーゼ0.02 mg(濃度25μg/ml)を陰茎背静脈から導入した。24時間後に再度エーテルで担癌マウスを麻酔した後に、陰茎背静脈よりウミホタルルシフェリン0.4mg(濃度2mg/ml)を注入した。570nmのロングパスフィルターを設置した発光イメージング装置(Photon Imager (Biospace lab社, France)でルシフェリン注入後5−20分の間に30秒間、撮影を行った。結果、腫瘍の部分において発光シグナルが観測された(図2)。この結果は、担癌マウスに導入した本発明の標識化物質である抗体が腫瘍細胞に集積し、ルシフェリン・ルシフェラーゼ反応に発せられたエネルギーによって有機蛍光色素が励起され、570nm以上の組織透過性の高い光を放出したことを示す。よって、本発明の標識化物質を使用することで、非侵襲的に標的の細胞群をイメージングすることができることが明らかとなった。前記ロングパスフィルターを使用しない場合のイメージング結果を比較対照として図3に示す。図3から明らかなように、非特異的な光を排除しない場合、マウスのあらゆる部位からの光を検出してしまうため、目的の腫瘍を的確に特定することは困難である。
Claims (5)
- ウミホタルルシフェラーゼにインドシアニングリーンとビオチンとが結合した、ルシフェラーゼ誘導体であり、
インドシアニングリーンは、ウミホタルルシフェラーゼの糖鎖を介してウミホタルルシフェラーゼに結合している、
ルシフェラーゼ誘導体。 - 配列番号1に示されるアミノ酸配列における180番目のリジン及び/又は203番目のリジンを介してビオチンがウミホタルルシフェラーゼに結合している、請求項1に記載のウミホタルルシフェラーゼ誘導体。
- 前記ルシフェラーゼ誘導体に、更にビオチン−アビジン物質複合体を介して、細胞の表面を特異的に認識する物質が結合している、請求項1又は2に記載のルシフェラーゼ誘導体。
- 細胞の表面を特異的に認識する物質が、抗体、ホルモン、糖鎖、並びに受容体及びイオンチャンネルのリガンドからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項3に記載のルシフェラーゼ誘導体。
- 以下:
(1)請求項3又は4に記載のルシフェラーゼ誘導体を個体(但し、ヒトを除く)に導入する工程;
(2)ウミホタルルシフェリンを個体に導入する工程;及び
(3)400nm〜550nmの波長の光を透過しないフィルターを介して650〜750nmの波長の光を検出する工程;
を含む、個体における前記物質によって認識される細胞又は細胞群をイメージングする方法。
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