JP5565759B2 - 固体電解質型燃料電池 - Google Patents

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Description

本発明は、固体電解質型燃料電池に係わり、特に、燃料ガスと酸化剤ガスを電気化学的に反応させることにより発電する固体電解質型燃料電池に関する。
固体電解質型燃料電池(Solid Oxide Fuel Cell:以下「SOFC」とも言う)は、電解質として酸化物イオン導電性固体電解質を用い、その両側に電極を取り付け、一方の側に燃料ガスを供給し、他方の側に酸化剤(空気、酸素等)を供給して、比較的高温で動作する燃料電池である。
このSOFCにおいては、酸化物イオン導電性固体電解質を通過した酸素イオンと燃料との反応によって水蒸気又は二酸化炭素を生成し、電気エネルギー及び熱エネルギーが発生する。電気エネルギーは、SOFC外部に取り出されて、各種電気的用途に使用される。一方、熱エネルギーは、燃料、SOFC及び酸化剤等に伝達され、これらの温度上昇に使用される。
従来のSOFCにおいては、運転中に燃料ガスの供給系統のマイコンメータが異常を検知したり、地震等に伴う異常が発生した際、或いは補機類のメンテナンスなどを行う際には、運転を一時的に停止させる必要がある。そして、これらの異常などの一時的な要因が解消した後、或いは、メンテナンスが終了した後には、安定した発電に向けて、できるだけ短い時間での迅速な運転の再起動が要求される。
そこで、燃料電池システムにおける運転の再起動の迅速化を図るために、従来のSOFCにおいては、例えば、特許文献1に記載されているように、燃料電池システムの所定の制御処理中に再起動要求がなされた場合には、燃料電池システムの停止処理ルーチンをすべて実行した後に最初の起動処理ルーチンから起動処理を実行するのではなく、起動処理を再起動要求がなされた時点の制御処理と同条件の時点に移行して実行するようにしたものが提案されている。
一方、例えば、特許文献2に記載されている従来のSOFCでは、燃料電池セルスタックを収容している収容容器内に配置することによって熱効率を高めると共に、余剰ガスを収容容器内で燃焼させることによって従来よりも高温の燃焼ガスで加熱でき、低負荷運転時にも水蒸気改質に必要な熱量を得ることができるものが提案されている。この従来のSOFCにおいては、迅速な起動を行うために、起動時に燃料改質器の温度が部分酸化反応開始温度未満の場合には燃焼ガスによる燃焼熱によって燃料改質器を加熱する加熱運転を行い、燃料改質器の温度が部分酸化反応開始温度以上で水蒸気改質可能温度未満の温度帯域内の温度まで上昇すると、部分酸化反応の反応熱と燃焼ガスによる燃焼熱によって燃料改質器を加熱して部分酸化改質反応(以下「POX」と呼ぶ)を行うようになっている。さらに、燃料改質器の温度が水蒸気改質可能温度以上で定常温度未満の温度帯域まで上昇すると、部分酸化反応の反応熱と燃焼ガスによる燃焼熱と水蒸気改質反応の吸熱を制御して燃料改質器を加熱し、部分酸化改質と水蒸気改質とを併用したオートサーマル改質反応(以下「ATR」と呼ぶ)を行い、燃料改質器の温度が定常状態になると、燃焼ガスによる燃焼熱により燃料改質器を加熱し、水蒸気改質反応(以下「SR」と呼ぶ)を行うようになっている。すなわち、このような従来のSOFCにおいては、起動時の燃料改質器の温度上昇に伴ってPOX、ATR、SRという順序を踏まえて燃料の改質を行いながら起動を実行するため、安定した迅速な起動ができるようになっている。
特開2006−269196号公報 特開2004−319420号公報
しかしながら、上述した特許文献1及び特許文献2のSOFCにおいては、運転の再起動時には、停止中の燃料電池セルやスタックに残存している余熱も考慮すると燃料電池セルやスタックの一部が高温状態になっていることが少なくない。
これに関し、本発明者らは、このような燃料電池セルやスタックが高温状態にあるときに、特にPOXによって再起動を行うとセルに大きな負担を与えてしまうという重要な新たな課題を見出した。
より具体的には、制御上の改質器温度はPOX運転が可能な状態に見えても、停止運転制御中からの再起動では燃料電池セルやスタックの一部が高温状態となっていることがあるため、燃料改質器の温度が部分酸化反応開始温度以上で水蒸気改質可能温度未満の温度帯域内にあるとしてPOXを行ってしまうと、POXは空気を投入して部分酸化を伴う発熱反応であるため、セルに酸化影響を与えたり、異常な高温状態になることがあり、これがセル自身の耐久性や発電能力を除々に低下させてしまうという重要な課題を見出した。この課題を解決し、さらに再起動に要する時間をも大幅に短縮させることをも実現すべくなされたものである。
一方、上述した特許文献1及び特許文献2においては、再起動の更なる迅速化を図るために通常起動時であればATRの運転を行う温度帯域であるとしてもATRをスキップしてSRを実行するという思想について何ら開示も示唆もされておらず、上述した新たな課題を解決するものではない。
そこで、本発明は、上述した新たな課題を解決するためになされたものであり、高温からの温度低下を伴った停止時にあっては、通常起動時のATRをスキップさせる代わりに、SRによる再起動を実行することにより、安定した温度回復ならびに起動時間の短縮を図ることができる固体電解質型燃料電池(SOFC)を提供することを目的としている。
上記の目的を達成するために、本発明は、燃料ガスと酸化剤ガスとを電気化学的に反応させることにより発電する固体電解質型燃料電池であって、燃料電池モジュール内に配置された固体電解質型の燃料電池セルと、燃料ガスを水素に改質して上記燃料電池セルに供給する改質器であって、燃料ガスと水蒸気を化学反応させることにより燃料ガスを水蒸気改質する改質反応であるSR、及び、所定の温度帯域に応じて燃料ガスと酸化剤ガスを化学反応させることにより燃料ガスを部分酸化改質する改質反応であるPOXと上記SRとを併用させることにより燃料ガスをオートサーマル改質する改質反応であるATRによって燃料ガスを改質する上記改質器と、上記改質器による改質状態を変更するための改質状態温度を検出するための、上記改質器と上記燃料電池セルの温度を検出する改質状態温度検出手段と、上記燃料電池モジュールの運転の起動を制御する起動制御手段と、上記燃料電池モジュールの運転の停止を制御する停止制御手段と、を備えた制御手段と、を有し、上記起動制御手段は、上記改質状態温度が所定の定常温度未満のATR温度帯域内にある場合には、上記改質器を昇温させるために通常起動時のATRを実行し、上記改質状態温度が上記所定の定常温度以上である場合には、上記改質器を昇温させるために通常起動時のSRを実行し、上記起動制御手段は、更に、上記燃料電池モジュールが高温状態からの停止に伴って上記停止制御手段による停止処理が実行され、上記ATR温度帯域内で運転の再起動が実行された場合には、上記改質状態温度が上記通常起動時のATR温度帯域内の所定温度未満である場合にはATRによる再起動制御を実行し、上記ATR温度帯域内の所定温度以上である場合には、通常起動時のATRをスキップして上記SRによる再起動制御を実行することを特徴としている。
このように構成された本発明においては、停止制御手段によって燃料電池モジュールの運転の停止が実行されている状態でATR温度帯域内で運転の再起動が行われた際には、通常起動時のSRをスキップして燃料電池セルや改質器に残存している余熱を積極的に利用したSRの実行による再起動を行うように構成されている。この結果、通常起動時のATRを行わないことによって、見かけ上の温度が低くても大きな余熱を持つことに起因して発生する燃料電池セルに酸化の影響を与えることを防止でき、セルの耐久性を向上させることができる。また、燃料電池セルや改質器に残存している余熱を積極的に利用した再起動制御を実行するように工夫したことにより、起動時間を大幅に短縮することができる。また、燃料電池セルや改質器に残存している余熱を積極的に利用した再起動制御を実行するように工夫したことにより、起動時間を大幅に短縮することができる。さらに、起動からの失火に基づいて再起動を行った場合には、改質状態温度が通常起動時のATR温度帯域内にあっても、セルや改質器の余熱を利用できる可能性が低いため、通常起動時のATRとは異なる再起動制御を禁止することにより燃料電池セルへのダメージを抑制することができる。また、ATR温度帯域内の所定温度未満では比較的温度が低いためATRを実行することで、外気等が低い条件下では、多くの水の供給及び吸熱反応だけとなるSRを実行することで急激な温度低下を招いてしまうことが生じるがこれを確実に防止して最適な状態で安定した温度の回復を図ることができる。
また、本発明は、燃料ガスと酸化剤ガスとを電気化学的に反応させることにより発電する固体電解質型燃料電池であって、燃料電池モジュール内に配置された固体電解質型の燃料電池セルと、燃料ガスを水素に改質して上記燃料電池セルに供給する改質器であって、燃料ガスと水蒸気を化学反応させることにより燃料ガスを水蒸気改質する改質反応であるSR、及び、所定の温度帯域に応じて燃料ガスと酸化剤ガスを化学反応させることにより燃料ガスを部分酸化改質する改質反応であるPOXと上記SRとを併用させることにより燃料ガスをオートサーマル改質する改質反応であるATRによって燃料ガスを改質する上記改質器と、上記改質器による改質状態を変更するための改質状態温度を検出するための、上記改質器と上記燃料電池セルの温度を検出する改質状態温度検出手段と、上記燃料電池モジュールの運転の起動を制御する起動制御手段と、上記燃料電池モジュールの運転の停止を制御する停止制御手段と、を備えた制御手段と、を有し、上記起動制御手段は、上記改質状態温度が所定の定常温度未満のATR温度帯域内にある場合には、上記改質器を昇温させるために通常起動時のATRを実行し、上記改質状態温度が上記所定の定常温度以上である場合には、上記改質器を昇温させるために通常起動時のSRを実行し、上記起動制御手段は、更に、上記燃料電池モジュールが高温状態からの停止に伴って上記停止制御手段による停止処理が実行され、上記ATR温度帯域内で運転の再起動が実行された場合には、上記改質器の温度をTrとし上記燃料電池セルの温度をTsとしたとき、200℃≦Tr<600℃で、かつTs<500℃である場合にはATRによる再起動制御を実行し、600℃≦Tr<650℃で、かつ500℃≦Ts<600℃である場合には、通常起動時のATRをスキップして上記SRによる再起動制御を実行することを特徴としている。
このように構成された本発明においては、停止制御手段によって燃料電池モジュールの運転の停止が実行されている状態でATR温度帯域内で運転の再起動が行われた際には、通常起動時のSRをスキップして燃料電池セルや改質器に残存している余熱を積極的に利用したSRの実行による再起動を行うように構成されている。この結果、通常起動時のATRを行わないことによって、見かけ上の温度が低くても大きな余熱を持つことに起因して発生する燃料電池セルに酸化の影響を与えることを防止でき、セルの耐久性を向上させることができる。また、燃料電池セルや改質器に残存している余熱を積極的に利用した再起動制御を実行するように工夫したことにより、起動時間を大幅に短縮することができる。また、燃料電池セルや改質器に残存している余熱を積極的に利用した再起動制御を実行するように工夫したことにより、起動時間を大幅に短縮することができる。さらに、起動からの失火に基づいて再起動を行った場合には、改質状態温度が通常起動時のATR温度帯域内にあっても、セルや改質器の余熱を利用できる可能性が低いため、通常起動時のATRとは異なる再起動制御を禁止することにより燃料電池セルへのダメージを抑制することができる。また、ATR温度帯域内の所定温度未満では比較的温度が低いためATRを実行することで、外気等が低い条件下では、多くの水の供給及び吸熱反応だけとなるSRを実行することで急激な温度低下を招いてしまうことが生じるがこれを確実に防止して最適な状態で安定した温度の回復を図ることができる。
本発明において、好ましくは、上記再起動制御で行われるSRは、上記通常起動時のSRよりも燃料ガスの供給量を多くするように構成されている。
このように構成された本発明においては、通常起動時のSRよりも燃料ガスの供給量を多くしたSRによる再起動制御を実行することにより、燃焼温度を高く保ったSRの実行によって比較的低い温度帯域での吸熱反応だけのSRであっても改質器等の温度降下を抑制し、迅速な温度回復を図ることができる。
本発明において、好ましくは、上記再起動制御で行われるSRは、上記通常起動時のSRより水の供給量を少なくするように構成されている。
このように構成された本発明においては、通常起動時のSRよりも水の供給量を少なくしたSRによる再起動制御を実行することにより、改質器の急激な温度低下及び、急激な吸熱反応による更なる温度低下という悪いスパイラル状態に一気に落ち込むことを抑制することができ、迅速で安定した昇温を図ることができる。
本発明において、好ましくは、上記再起動制御で行われるSRは、上記改質状態温度が予め決定された所定温度以上上昇した時点で通常起動時のSRに変更される。
このように構成された本発明においては、再起動制御で行われるSRにおいて、改質状態温度の期待された温度上昇が図れた時点で通常起動時のSRに変更され、積極的なSRを実行するため、改質器温度の急低下を抑えつつ、安定した昇温を図ることができる。
本発明において、好ましくは、上記再起動制御は、予め決定された燃料ガスの供給量及び水の供給量を変更させることなく一定量を維持してSRによる再起動を実行する。
このように構成された本発明においては、予め決定された燃料ガスの量、及び、水の供給量を変更させることなく一定量を維持したSRによる再起動を実行することにより、SR運転には温度が低い不安定な温度帯域中であっても、改質状態を変化させる要因を防止するようにしたことで改質器等の温度回復を迅速で安定的に行うことができる。
本発明において、好ましくは、更に、純水を生成して上記改質器に供給する水供給手段を有し、この水供給手段は、上記改質器に水を導入する水配管と、この水配管を保温する保温手段と、を備えている。
このように構成された本発明においては、水供給手段の保温手段が水配管を保温することにより、再起動時に水供給手段の水配管から改質器に供給される水の温度を高く維持することができるため、再起動時のSRにおける水の供給に伴う改質器やセルの温度低下を抑制することができる。
本発明において、好ましくは、更に、複数の燃料電池セルを備えたセル集合体の下部を支持すると共に燃料ガスと酸化剤ガスとの燃焼によって生成された排気ガスが排出される排気ガス室を形成するセル集合体支持手段を有し、上記保温手段は、上記水配管を上記排気ガス室内に経由させるように配置することにより、改質器に供給される水の温度低下を抑制するように構成されている。
このように構成された本発明においては、セル集合体支持手段の排気ガス室内における排気ガスの熱を利用し、再起動時に水供給手段の水配管から改質器に供給される水の温度を高く維持することができるため、再起動時のSRにおける水の供給に伴う改質器やセルの温度低下を抑制することができ、比較的低い温度帯域でもSRによる再起動を確実に行うことが可能となる。
本発明において、好ましくは、更に、上記セル集合体を収容するハウジング部材を備え、このハウジング部材を形成する対向する一対の側面には上記排気ガス室に連通する排気ガス通路が配置され、他の側面には、上記水配管の通路が配置されている。
このように構成された本発明においては、水配管をハウジングに対して排気ガス通路と分離させたためハウジングからの熱交換を他の側面では水のみとできるため、再起動時に水供給手段の水配管から改質器に供給される水の温度を高く維持することができる。よって、再起動時のSRにおける水の供給に伴う改質器等の温度低下を抑制することができる。
本発明の固体電解質型燃料電池(SOFC)によれば、高温状態からの停止時における再起動時にあっては、通常起動時のATRをスキップさせる代わりに、SRによる再起動を実行することにより、再起動時に余熱を積極的に利用した運転の実行により再起動時の起動時間を大幅に短縮することができる。
本発明の一実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)を示す全体構成図である。 本発明の一実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)の燃料電池モジュールを示す正面断面図である。 図2のIII-III線に沿った断面図である。 本発明の一実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)の燃料電池セルユニットを示す部分断面図である。 本発明の一実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)の燃料電池セルスタックを示す斜視図である。 本発明の一実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)を示すブロック図である。 本発明の一実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)の起動時の動作を示すタイムチャートである。 本発明の一実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)の運転停止時の動作を示すタイムチャートである。 本発明の一実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)の通常起動時と再起動時の動作の各運転状態における燃料流量、改質用空気流量、発電用空気流量、水流量、及び、改質器及びスタックの移行温度条件を示すデータテーブルである。 本発明の一実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)の通常起動時と再起動時の動作の各運転状態における燃料流量、改質用空気流量、発電用空気流量、水流量、及び、改質器及びスタックの移行温度条件を示すデータテーブルである。 本発明の一実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)において再起動を行うための再起動制御フローの第1例を示すフローチャートである。 図10に示す本発明の一実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)の再起動制御フローの第1例に基づいて再起動を実行した場合の動作を示すタイムチャートについて、通常起動時の動作を示すタイムチャートと比較した図である。 本発明の一実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)において再起動を行うための再起動制御フローの第2例を示すフローチャートである。 図12に示す本発明の一実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)の再起動制御フローの第2例に基づいて再起動を実行した場合の動作を示すタイムチャートについて、通常起動時の動作を示すタイムチャートと比較した図である。 本発明の他の実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)の燃料電池モジュールを示す正面断面図である。 図14のXV-XV線に沿った断面図である。 本発明の他の実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)の燃料電池モジュールのセル集合体支持ユニットを斜め上方から見た斜視図である。
次に、添付図面を参照して、本発明の実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)を説明する。
図1は、本発明の一実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)を示す全体構成図である。この図1に示すように、本発明の一実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)1は、燃料電池モジュール2と、補機ユニット4を備えている。
燃料電池モジュール2は、ハウジング6を備え、このハウジング6内部には、断熱材(図示せず但し断熱材は必須の構成ではなく、なくても良いものである。)を介して密封空間8が形成されている。なお、断熱材は設けないようにしても良い。この密閉空間8の下方部分である発電室10には、燃料ガスと酸化剤(空気)とにより発電反応を行う燃料電池セル集合体12が配置されている。この燃料電池セル集合体12は、10個の燃料電池セルスタック14(図5参照)を備え、この燃料電池セルスタック14は、16本の燃料電池セルユニット16(図4参照)から構成されている。このように、燃料電池セル集合体12は、160本の燃料電池セルユニット16を有し、これらの燃料電池セルユニット16の全てが直列接続されている。
燃料電池モジュール2の密封空間8の上述した発電室10の上方には、燃焼室18が形成され、この燃焼室18で、発電反応に使用されなかった残余の燃料ガスと残余の酸化剤(空気)とが燃焼し、排気ガスを生成するようになっている。
また、この燃焼室18の上方には、燃料ガスを改質する改質器20が配置され、前記残余ガスの燃焼熱によって改質器20を改質反応が可能な温度となるように加熱している。さらに、この改質器20の上方には、燃焼熱を受けて空気を加熱するための空気用熱交換器22が配置されている。
次に、補機ユニット4は、水道等の水供給源24からの水を貯水してフィルターにより純水とする純水タンク26と、この貯水タンクから供給される水の流量を調整する水流量調整ユニット28(モータで駆動される「水ポンプ」等)を備えている。また、補機ユニット4は、都市ガス等の燃料供給源30から供給された燃料ガスを遮断するガス遮断弁32と、燃料ガスから硫黄を除去するための脱硫器36と、燃料ガスの流量を調整する燃料流量調整ユニット38(モータで駆動される「燃料ポンプ」等)を備えている。さらに、補機ユニット4は、空気供給源40から供給される酸化剤である空気を遮断する電磁弁42と、空気の流量を調整する改質用空気流量調整ユニット44及び発電用空気流量調整ユニット45(モータで駆動される「空気ブロア」等)と、改質器20に供給される改質用空気を加熱する第1ヒータ46と、発電室に供給される発電用空気を加熱する第2ヒータ48とを備えている。これらの第1ヒータ46と第2ヒータ48は、起動時の昇温を効率よく行うために設けられているが、省略しても良い。
次に、燃料電池モジュール2には、排気ガスが供給される温水製造装置50が接続されている。この温水製造装置50には、水供給源24から水道水が供給され、この水道水が排気ガスの熱により温水となり、図示しない外部の給湯器の貯湯タンクへ供給されるようになっている。
また、燃料電池モジュール2には、燃料ガスの供給量等を制御するための制御ボックス52が取り付けられている。
さらに、燃料電池モジュール2には、燃料電池モジュールにより発電された電力を外部に供給するための電力取出部(電力変換部)であるインバータ54が接続されている。
次に、図2及び図3により、本発明の実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)の燃料電池モジュールの内部構造を説明する。図2は、本発明の一実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)の燃料電池モジュールを示す側面断面図であり、図3は、図2のIII-III線に沿って断面図である。
図2及び図3に示すように、燃料電池モジュール2のハウジング6内の密閉空間8には、上述したように、下方から順に、燃料電池セル集合体12、改質器20、空気用熱交換器22が配置されている。
改質器20は、その上流端側に純水を導入するための純水導入管60と改質される燃料ガスと改質用空気を導入するための被改質ガス導入管62が取り付けられ、また、改質器20の内部には、上流側から順に、蒸発部20aと改質部20bを形成され、改質部20bには改質触媒が充填されている。この改質器20に導入された水蒸気(純水)が混合された燃料ガス及び空気は、改質器20内に充填された改質触媒により改質される。改質触媒としては、アルミナの球体表面にニッケルを付与したものや、アルミナの球体表面にルテニウムを付与したものが適宜用いられる。
この改質器20の下流端側には、燃料ガス供給管64が接続され、この燃料ガス供給管64は、下方に延び、さらに、燃料電池セル集合体12の下方に形成されたマニホールド66内で水平に延びている。燃料ガス供給管64の水平部64aの下方面には、複数の燃料供給孔64bが形成されており、この燃料供給孔64bから、改質された燃料ガスがマニホールド66内に供給される。
このマニホールド66の上方には、上述した燃料電池セルスタック14を支持するための貫通孔を備えた下支持板68が取り付けられており、マニホールド66内の燃料ガスが、燃料電池セルユニット16内に供給される。
次に、改質器20の上方には、空気用熱交換器22が設けられている。この空気用熱交換器22は、上流側に空気集約室70、下流側に2つの空気分配室72を備え、これらの空気集約室70と空気分配室72は、6個の空気流路管74により接続されている。ここで、図3に示すように、3個の空気流路管74が一組(74a,74b,74c,74d,74e,74f)となっており、空気集約室70内の空気が各組の空気流路管74からそれぞれの空気分配室72へ流入する。
空気用熱交換器22の6個の空気流路管74内を流れる空気は、燃焼室18で燃焼して上昇する排気ガスにより予熱される。
空気分配室72のそれぞれには、空気導入管76が接続され、この空気導入管76は、下方に延び、その下端側が、発電室10の下方空間に連通し、発電室10に余熱された空気を導入する。
次に、マニホールド66の下方には、排気ガス室78が形成されている。また、図3に示すように、ハウジング6の長手方向に沿った面である前面6aと後面6bの内側には、上下方向に延びる排気ガス通路80が形成され、この排気ガス通路80の上端側は、空気用熱交換器22が配置された空間と連通し、下端側は、排気ガス室78と連通している。また、排気ガス室78の下面のほぼ中央には、排気ガス排出管82が接続され、この排気ガス排出管82の下流端は、図1に示す上述した温水製造装置50に接続されている。
図2に示すように、燃料ガスと空気との燃焼を開始するための点火装置83が、燃焼室18に設けられている。
次に図4により燃料電池セルユニット16について説明する。図4は、本発明の一実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)の燃料電池セルユニットを示す部分断面図である。
図4に示すように、燃料電池セルユニット16は、燃料電池セル84と、この燃料電池セル84の上下方向端部にそれぞれ接続された内側電極端子86とを備えている。
燃料電池セル84は、上下方向に延びる管状構造体であり、内部に燃料ガス流路88を形成する円筒形の内側電極層90と、円筒形の外側電極層92と、内側電極層90と外側電極層92との間にある電解質層94とを備えている。この内側電極層90は、燃料ガスが通過する燃料極であり、(−)極となり、一方、外側電極層92は、空気と接触する空気極であり、(+)極となっている。
燃料電池セル16の上端側と下端側に取り付けられた内側電極端子86は、同一構造であるため、ここでは、上端側に取り付けられた内側電極端子86について具体的に説明する。内側電極層90の上部90aは、電解質層94と外側電極層92に対して露出された外周面90bと上端面90cとを備えている。内側電極端子86は、導電性のシール材96を介して内側電極層90の外周面90bと接続され、さらに、内側電極層90の上端面90cとは直接接触することにより、内側電極層90と電気的に接続されている。内側電極端子86の中心部には、内側電極層90の燃料ガス流路88と連通する燃料ガス流路98が形成されている。
内側電極層90は、例えば、Niと、CaやY、Sc等の希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたジルコニアとの混合体、Niと、希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたセリアとの混合体、Niと、Sr、Mg、Co、Fe、Cuから選ばれる少なくとも一種をドープしたランタンガレードとの混合体、の少なくとも一種から形成される。
電解質層94は、例えば、Y、Sc等の希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたジルコニア、希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたセリア、Sr、Mgから選ばれる少なくとも一種をドープしたランタンガレート、の少なくとも一種から形成される。
外側電極層92は、例えば、Sr、Caから選ばれた少なくとも一種をドープしたランタンマンガナイト、Sr、Co、Ni、Cuから選ばれた少なくとも一種をドープしたランタンフェライト、Sr、Fe、Ni、Cuから選ばれた少なくとも一種をドープしたランタンコバルタイト、銀、などの少なくとも一種から形成される。
次に図5により燃料電池セルスタック14について説明する。図5は、本発明の一実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)の燃料電池セルスタックを示す斜視図である。
図5に示すように、燃料電池セルスタック14は、16本の燃料電池セルユニット16を備え、これらの燃料電池セルユニット16の下端側及び上端側が、それぞれ、セラミック製の下支持板68及び上支持板100により支持されている。これらの下支持板68及び上支持板100には、内側電極端子86が貫通可能な貫通穴68a及び100aがそれぞれ形成されている。
さらに、燃料電池セルユニット16には、集電体102及び外部端子104が取り付けられている。この集電体102は、燃料極である内側電極層90に取り付けられた内側電極端子86と電気的に接続される燃料極用接続部102aと、空気極である外側電極層92の外周面全体と電気的に接続される空気極用接続部102bとにより一体的に形成されている。空気極用接続部102bは、外側電極層92の表面を上下方向に延びる鉛直部102cと、この鉛直部102cから外側電極層92の表面に沿って水平方向に延びる多数の水平部102dとから形成されている。また、燃料極用接続部102aは、空気極用接続部102bの鉛直部102cから燃料電池セルユニット16の上下方向に位置する内側電極端子86に向って斜め上方又は斜め下方に向って直線的に延びている。
さらに、燃料電池セルスタック14の端(図5では左端の奥側及び手前側)に位置する2個の燃料電池セルユニット16の上側端及び下側端の内側電極端子86には、それぞれ外部端子104が接続されている。これらの外部端子104は、隣接する燃料電池セルスタック14の端にある燃料電池セルユニット16の外部端子104(図示せず)に接続され、上述したように、160本の燃料電池セルユニット16の全てが直列接続されるようになっている。
次に図6により本実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)に取り付けられたセンサ類等について説明する。図6は、本発明の一実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)を示すブロック図である。
図6に示すように、固体電解質型燃料電池1は、制御部110を備え、この制御部110には、使用者が操作するための「ON」や「OFF」等の操作ボタンを備えた操作装置112、発電出力値(ワット数)等の種々のデータを表示するための表示装置114、及び、異常状態のとき等に警報(ワーニング)を発する報知装置116が接続されている。なお、この報知装置116は、遠隔地にある管理センタに接続され、この管理センタに異常状態を通知するようなものであっても良い。
次に、制御部110には、以下に説明する種々のセンサからの信号が入力されるようになっている。
先ず、可燃ガス検出センサ120は、ガス漏れを検知するためのもので、燃料電池モジュール2及び補機ユニット4に取り付けられている。
CO検出センサ122は、本来排気ガス通路80等を経て外部に排出される排気ガス中のCOが、燃料電池モジュール2及び補機ユニット4を覆う外部ハウジング(図示せず)へ漏れたかどうかを検知するためのものである。
貯湯状態検出センサ124は、図示しない給湯器におけるお湯の温度や水量を検知するためのものである。
電力状態検出センサ126は、インバータ54及び分電盤(図示せず)の電流及び電圧等を検知するためのものである。
発電用空気流量検出センサ128は、発電室10に供給される発電用空気の流量を検出するためのものである。
改質用空気流量センサ130は、改質器20に供給される改質用空気の流量を検出するためのものである。
燃料流量センサ132は、改質器20に供給される燃料ガスの流量を検出するためのものである。
水流量センサ134は、改質器20に供給される純水(水蒸気)の流量を検出するためのものである。
水位センサ136は、純水タンク26の水位を検出するためのものである。
圧力センサ138は、改質器20の外部の上流側の圧力を検出するためのものである。
排気温度センサ140は、温水製造装置50に流入する排気ガスの温度を検出するためのものである。
発電室温度センサ142は、図3に示すように、燃料電池セル集合体12の近傍の前面側と背面側に設けられ、燃料電池セルスタック14の近傍の温度を検出して、燃料電池セルスタック14(即ち燃料電池セル84自体)の温度を推定するためのものである。
燃焼室温度センサ144は、燃焼室18の温度を検出するためのものである。
排気ガス室温度センサ146は、排気ガス室78の排気ガスの温度を検出するためのものである。
改質器温度センサ148は、改質器20の温度を検出するためのものであり、改質器20の入口温度と出口温度から改質器20の温度を算出する。
外気温度センサ150は、固体電解質型燃料電池(SOFC)が屋外に配置された場合、外気の温度を検出するためのものである。また、外気の湿度等を測定するセンサを設けるようにしても良い。
これらのセンサ類からの信号は、制御部110に送られ、制御部110は、これらの信号によるデータに基づき、水流量調整ユニット28、燃料流量調整ユニット38、改質用空気流量調整ユニット44、発電用空気流量調整ユニット45に、制御信号を送り、これらのユニットにおける各流量を制御するようになっている。
また、制御ユニット110は、インバータ54に、制御信号を送り、電力供給量を制御するようになっている。
次に図7により本実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)による起動時の動作を説明する。図7は、本発明の一実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)の起動時の動作を示すタイムチャートである。
最初は、燃料電池モジュール2を温めるために、無負荷状態で、即ち、燃料電池モジュール2を含む回路を開いた状態で、運転を開始する。このとき、回路に電流が流れないので、燃料電池モジュール2は発電を行わない。
先ず、改質用空気流量調整ユニット44から改質用空気を第1ヒータ46を経由して燃料電池モジュール2の改質器20へ供給する。また、同時に、発電用空気流量調整ユニット45から発電用空気を第2ヒータ48を経由して燃料電池モジュール2の空気用熱交換器22へ供給し、この発電用空気が、発電室10及び燃焼室18に到達する。
この直ぐ後、燃料流量調整ユニット38からも燃料ガスが供給され、改質用空気が混合された燃料ガスが、改質器20及び燃料電池セルスタック14、燃料電池セルユニット16を通過して、燃焼室18に到達する。
次に、点火装置83により着火して、燃焼室18にある燃料ガスと空気(改質用空気及び発電用空気)とを燃焼させる。この燃料ガスと空気との燃焼により排気ガスが生じ、この排気ガスにより、発電室10が暖められ、また、排気ガスが燃料電池モジュール2の密封空間8内を上昇する際、改質器20内の改質用空気を含む燃料ガスを暖めると共に、空気熱交換器22内の発電用空気も暖める。
このとき、燃料流量調整ユニット38及び改質用空気流量調整ユニット44により、改質用空気が混合された燃料ガスが改質器20に供給されているので、改質器20において、式(1)に示す部分酸化改質反応POXが進行する。この部分酸化改質反応POXは、発熱反応であるので、起動性が良好となる。また、この昇温した燃料ガスが燃料ガス供給管64により燃料電池セルスタック14の下方に供給され、これにより、燃料電池セルスタック14が下方から加熱され、また、燃焼室18も燃料ガスと空気が燃焼して昇温されているので、燃料電池セルスタック14は、上方からも加熱され、この結果、燃料電池セルスタック14は、上下方向において、ほぼ均等に昇温可能となっている。この部分酸化改質反応POXが進行しても、燃焼室18では継続して燃料ガスと空気との燃焼反応が持続される。
mn+xO2 → aCO2+bCO+cH2 (1)
部分酸化改質反応POXの開始後、改質器温度センサ148により改質器20が所定温度(例えば、600℃)になったことを検知したとき、水流量調整ユニット28、燃料流量調整ユニット38及び改質用空気流量調整ユニット44により、燃料ガスと改質用空気と水蒸気とを予め混合したガスを改質器20に供給する。このとき、改質器20においては、上述した部分酸化改質反応POXと後述する水蒸気改質反応SRとが併用されたオートサーマル改質反応ATRが進行する。このオートサーマル改質反応ATRは、熱的に内部バランスが取れるので、改質器20内では熱的に自立した状態で反応が進行する。即ち、酸素(空気)が多い場合には部分酸化改質反応POXによる発熱が支配的となり、水蒸気が多い場合には水蒸気改質反応SRによる吸熱反応が支配的となる。この段階では、既に起動の初期段階は過ぎており、発電室10内がある程度の温度まで昇温されているので、吸熱反応が支配的であっても大幅な温度低下を引き起こすことはない。また、オートサーマル改質反応ATRが進行中も、燃焼室18では燃焼反応が継続して行われている。
式(2)に示すオートサーマル改質反応ATRの開始後、改質器温度センサ146により改質器20が所定温度(例えば、700℃)になったことを検知したとき、改質用空気流量調整ユニット44による改質用空気の供給を停止すると共に、水流量調整ユニット28による水蒸気の供給を増加させる。これにより、改質器20には、空気を含まず燃料ガスと水蒸気のみを含むガスが供給され、改質器20において、式(3)の水蒸気改質反応SRが進行する。
mn+xO2+yH2O → aCO2+bCO+cH2 (2)
mn+xH2O → aCO2+bCO+cH2 (3)
この水蒸気改質反応SRは吸熱反応であるので、燃焼室18からの燃焼熱と熱バランスをとりながら反応が進行する。この段階では、燃料電池モジュール2の起動の最終段階であるため、発電室10内が十分高温に昇温されているので、吸熱反応が進行しても、発電室10が大幅な温度低下を招くこともない。また、水蒸気改質反応SRが進行しても、燃焼室18では継続して燃焼反応が進行する。
このようにして、燃料電池モジュール2は、点火装置83により点火した後、部分酸化改質反応POX、オートサーマル改質反応ATR、水蒸気改質反応SRが、順次進行することにより、発電室10内の温度が徐々に上昇する。次に、発電室10内及び燃料電池セル84の温度が燃料電池モジュール2を安定的に作動させる定格温度よりも低い所定の発電温度に達したら、燃料電池モジュール2を含む回路を閉じ、燃料電池モジュール2による発電を開始し、それにより、回路に電流が流れる。燃料電池モジュール2の発電により、燃料電池セル84自体も発熱し、燃料電池セル84の温度も上昇する。この結果、燃料電池モジュール2を作動させる定格温度、例えば、600℃〜800℃になる。
この後、定格温度を維持するために、燃料電池セル84で消費される燃料ガス及び空気の量よりも多い燃料ガス及び空気を供給し、燃焼室18での燃焼を継続させる。なお、発電中は、改質効率の高い水蒸気改質反応SRで発電が進行する。
次に、図8により本実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)の運転停止時の動作を説明する。図8は、本実施形態により固体電解質型燃料電池(SOFC)の運転停止時の動作を示すタイムチャートである。
図8に示すように、燃料電池モジュール2の運転停止を行う場合には、先ず、燃料流量調整ユニット38及び水流量調整ユニット28を操作して、燃料ガス及び水蒸気の改質器20への供給量を減少させる。
また、燃料電池モジュール2の運転停止を行う場合には、燃料ガス及び水蒸気の改質器20への供給量を減少させると同時に、改質用空気流量調整ユニット44による発電用空気の燃料電池モジュール2内への供給量を増大させて、燃料電池セル集合体12及び改質器20を空気により冷却し、これらの温度を低下させる。その後、発電室の温度が所定温度、例えば、400℃まで低下したとき、燃料ガス及び水蒸気の改質器20への供給を停止し、改質器20の水蒸気改質反応SRを終了する。この発電用空気の供給は、改質器20の温度が所定温度、例えば、200℃まで低下するまで、継続し、この所定温度となったとき、発電用空気流量調整ユニット45からの発電用空気の供給を停止する。
このように、本実施形態においては、燃料電池モジュール2の運転停止を行うとき、改質器20による水蒸気改質反応SRと発電用空気による冷却とを併用しているので、比較的短時間に、燃料電池モジュールの運転を停止させることができる。
次に、図9〜図13を参照して、本実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)による再起動時の動作を説明する。図9(A)及び図9(B)は、本実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)の通常起動時と再起動時の動作の各運転状態における燃料流量、改質用空気流量、発電用空気流量、水流量、及び、改質器及びスタックの移行温度条件を示すデータテーブルである。
まず、図9(A)及び図9(B)に示すように、本実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)は、上述した図7に示す本実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)の起動時の動作と同一の動作を運転の通常起動時の動作として実行する制御モード(以下「通常起動モード1」)と(図9(A)参照)、この通常起動モード1とは異なる通常起動モードに基づいて運転の通常起動を実行する変形例「通常起動モード2」(図9(B)参照)を開示している。
また、本実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)は、図8に示す本実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)の停止動作が実行されている状態で運転の起動(いわゆる「再起動」)が要求された場合にこの運転の再起動を実行する例として2つの実施形態からなる再起動制御モード(以下「再起動モード1」及び「再起動モード2」)を開示し、これらの「再起動モード1」及び「再起動モード2」のそれぞれは、対応する再起動制御フローの第1例及び第2例(詳細は後述する)のそれぞれに基づいて実行されるようになっている。
なお、図9(A)及び図9(B)における各通常起動モード及び各再起動モードの詳細については後述する。
つぎに、図10により、本実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)の再起動制御フローの第1例を具体的に説明する。図10は、本発明の一実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)において再起動を行うための再起動制御フローの第1例(再起動制御フロー1)を示すフローチャートである。図10において、Sは各ステップを示している。
まず、S1において、燃料電池モジュール2が停止運転中か否かを判定し、停止運転中である場合には、S2に進み、再起動を要求するか否かを判定する。
S2において、再起動を要求すると判定した場合には、S3に進み、改質器20による改質状態を変更するための改質状態温度を検出する改質状態温度検出手段の一部である改質器温度センサ148により改質器20の温度(以下「改質器温度Tr」)を測定した後、S4に進み、改質器20による改質状態を変更するための改質状態温度を検出する改質状態温度検出手段の一部である発電室温度センサ142により、燃料電池セルスタック14(即ち燃料電池セル84自体)の近傍の温度、或いは発電室10の温度であるスタック温度Tsを測定する。
つぎに、S5に進み、改質器温度Trが600℃以上であるか否かを判定する。
S5において、改質器温度Trが600℃以上でないと判定した場合には、S6に進み、改質器温度Trが200℃未満であるか否かを判定する。
S6において、改質器温度Trが200℃未満でない、すなわち、改質器温度Trが200℃以上600℃未満であると判定した場合には、S7に進み、図9(A)に示すデータテーブル中の「再起動モード1」による「通常起動ATR」を実行する。
一方、S5において、改質器温度Trが600℃以上であると判定した場合には、S8に進み、改質器温度Trが650℃以上であるか否かを判定する。
S8において、改質器温度Trが650℃以上でない、すなわち、改質器温度Trが600℃以上650℃未満であると判定した場合には、S9に進み、図9(A)に示すデータテーブル中の「再起動モード1」による「再起動SR」を実行する。
一方、S8において、改質器温度Trが650℃以上であると判定した場合には、S10に進み、発電室温度センサ142により測定されたスタック温度Tsが600℃以上であるか否かを判定する。
S10において、スタック温度Tsが600℃以上であると判定した場合には、S11に進み、図9(A)に示すデータテーブル中の「再起動モード1」による「通常起動SR」を実行する。一方、S10において、スタック温度Tsが600℃以上でない、すなわち、改質器温度Trが600℃以上であるにもかかわらず、スタック温度Tsが600℃未満であると判定した場合には、S9に進み、図9(A)に示すデータテーブル中の「再起動モード1」による「再起動SR」を実行する。
つぎに、S1において、燃料電池モジュール2が停止運転中か否かを判定し、停止運転中でない場合には、S12に進み、起動中における失火に基づく再起動要求があるか否かを判定する。
S12において、起動中における失火に基づく再起動であると判定した場合、及び、S6において、改質器温度Trが200℃未満であると判定した場合には、温度センサーの値は見かけ上高くても燃料電池モジュール全てが長時間高温状態になっているわけではないので満遍なく蓄熱されている状況にないことから余熱に基く再起動制御が実行できる状況にはないのでS13に進み、図9(A)に示すデータテーブル中の「通常起動モード1」に基いて再起動を実行する。
つぎに、図9〜図11を参照しながら、図10に示す本実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)の再起動制御フローの第1例に基づいて再起動を実行した場合の動作をより具体的に説明する。
図11は、図10に示す本実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)の再起動制御フローの第1例に基づいて再起動を実行した場合の動作を示すタイムチャートについて、通常起動時の動作を示すタイムチャートと比較した図である。
なお、図11の上段のタイムチャートは、図9(A)に示すデータテーブル中の「通常起動モード1」を実行した場合における固体電解質型燃料電池(SOFC)の通常起動の動作を示すタイムチャートであり、図11の下段のタイムチャートは、図9(A)に示すデータテーブル中の「再起動モード1」を実行した場合における固体電解質型燃料電池(SOFC)の再起動の動作を示すタイムチャートである。
また、以下の本実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)の再起動制御フローの第1例(再起動フロー1)に基づく再起動の動作の説明については、図9(A)に示す「通常起動モード1」と「再起動モード1」に関するデータテーブルのみを参照すると共に、図11に示す本実施形態の固体電解質型燃料電池(SOFC)の「再起動モード1」による再起動時の動作について、「通常起動モード1」による通常起動時の動作と比較しながら説明する。
まず、図9(A)に示す「通常起動モード1」のデータテーブルの見方について説明する。
図9(A)に示す「通常起動モード1」の「状態」という欄は、上段から下段に向かって時系列順に通常起動時の各運転状態をそれぞれ表したものであり、各運転状態について、「着火時」、「燃焼運転」、「通常起動POX」、「通常起動ATR」、「通常起動SR」と略記して区別している。
ちなみに、図11における「通常起動モード1」のタイムチャートの横軸である時間tについては、「着火時」の時間をt1とし、順次「通常起動POX」、「通常起動ATR」、及び、「通常起動SR」へと移行するときの時間をそれぞれt2、t3、及び、t4とし、時間tにおいて改質器温度センサ148が検出した改質器20の温度をTr(t)とし、時間tにおいて発電室温度センサ142により測定されたスタック温度をTs(t)とする。
図9(A)に示す「通常起動モード1」の「着火時」という運転状態は、点火装置83を点火し、燃料ガスが着火して燃焼を開始した状態であり、この着火時(t=t1)に改質器温度センサ148が検出した改質器20の温度を「着火時温度Tr(t1)」とすると、この着火時温度Tr(t1)は、POXが開始するとき(t=t2)の改質器20の温度(以下「POX開始温度Tr(t2)」)(=300℃)よりも低くなっている。
つぎに、「通常起動モード1」の「燃焼運転」という運転状態は、燃料ガスの着火後に燃焼を開始してから、この燃料ガスの燃焼熱によって改質器20を加熱して燃焼運転を実行する制御帯域(以下「燃焼運転制御帯域B1」)で起動を制御しており、改質器温度センサ148が検出した改質器20の温度が着火時温度Tr(t1)からPOX開始温度Tr(t2)(=300℃)未満までの温度帯域W1で実行されるものである。
つぎに、「通常起動モード1」の「通常起動POX」という運転状態は、改質器温度センサ148が検出した改質器20の温度Tr(t)がPOX開始温度Tr(t2)(=300℃)以上であり且つSRが可能なSR可能温度(以下「SR可能温度Tr(t3)」)(=600℃)未満までの温度帯域(以下「通常起動POX温度帯域W2」)内にあるとき(300℃≦Tr(t)<600℃)、POXによる反応熱と燃料ガスの燃焼熱によって改質器20を加熱してPOXを実行する制御帯域(以下「通常起動モードPOX制御帯域B2」)で起動を制御している。
つぎに、「通常起動モード1」の「通常起動ATR」という運転状態は、改質器温度センサ148が検出した改質器温度TrがSR可能温度Tr(t3)(=600℃)以上であり且つ所定の定常温度Tr(t4)(=650℃)未満までの温度帯域(600℃≦Tr(t)<650℃)にあり、且つ、発電室温度センサ142により測定されたスタック温度Tsが250℃以上600℃未満までの温度帯域(250℃≦Ts<600℃)にある温度帯域(以下「通常起動ATR温度帯域W3」)において、POXによる反応熱と燃料ガスの燃焼熱とSRによる吸熱を制御して改質器20を加熱し、ATRを実行する制御帯域(以下「通常起動モードATR制御帯域B3」)で起動を制御している。
つぎに、「通常起動モード1」の「通常起動SR」という運転状態は、改質器温度センサ148が検出した改質器20の温度Tr(t)が650℃以上の所定の定常温度Tr(t4)であり、且つ、発電室温度センサ142により測定されたスタック温度Tsが600℃以上にあるときにSRを実行する制御帯域(以下「通常起動モードSR制御帯域B4」)で起動を制御している。
なお、図9(A)及び図9(B)に示す「燃料流量」という欄は、補機ユニット4の燃料ガス供給手段である燃料流量調整ユニット38から改質器20に供給される燃料ガスの流量[L/min]を示している。
また、図9(A)及び図9(B)に示す「改質用空気流量」という欄は、各運転状態において、補機ユニット4の酸化剤ガス供給手段である改質用空気流量調整ユニット44から、酸化剤ガス加熱手段である第1ヒータ46を経て改質器20に供給される酸化剤ガス(改質用空気)の流量[L/min]を示している。
さらに、図9(A)及び図9(B)に示す「発電用空気流量」という欄は、各運転状態において、補機ユニット4の発電用空気流量調整ユニット45から第2ヒータ48を経て発電室10に供給される発電用空気の流量[L/min]を示している。
また、図9(A)及び図9(B)に示す「水流量」という欄は、各運転状態において、補機ユニット4の純水を生成して改質器20に供給する水供給手段である水流量調整ユニット28から改質器20に供給される純水の流量[cc/min]を示している。
さらに、図9(A)及び図9(B)に示す「移行温度条件」の「改質器温度」及び「スタック温度」という欄については、運転状態が次の運転状態に移行する際の改質器20の温度Tr及び燃料電池セルスタック14の温度Tsを示している。
より具体的に説明すると、例えば、「通常起動モード1」の「燃焼運転」の状態欄における「移行温度条件」の「改質器温度」は「300℃以上」と示されているが、このことは、改質器温度センサ148が検出した改質器20の温度Tr(t)が300℃以上になると、「燃焼運転」の運転状態が「通常起動POX」の運転状態へ移行されることを意味している。
同様に、「通常起動モード1」の「通常起動POX」の状態欄における「移行温度条件」の「改質器温度」は「600℃以上」と示されており、「スタック温度」は「250℃以上」と示されているが、このことは、改質器温度センサ148が検出した改質器20の温度Tr(t)が600℃以上になり、発電室温度センサ142により測定されたスタック温度Tsが250℃以上になると、「通常起動POX」の運転状態から「通常起動ATR」の運転状態へ移行されることを意味している。
つぎに、図9(A)に示す「再起動モード1」のデータテーブルの見方について説明するが、上述した「通常起動モード1」のデータテーブルの見方と基本的には同様であるため、「通常起動モード1」のデータテーブルとの相違点や特徴的な点に着目して説明する。
まず、図9(A)に示す「再起動モード1」の「状態」という欄は、上段から下段に向かって時系列順に再起動時の各運転状態をそれぞれ表したものであり、各運転状態について、「着火時」、「通常起動ATR」、「再起動SR」、「通常起動SR」と略記している。
ちなみに、図11における「再起動モード1」のタイムチャートの横軸である時間tについては、「着火時」の時間をt11とし、順次「通常起動ATR」、「再起動SR」、及び、「通常起動SR」へと移行するときの時間をそれぞれt13、t14a、及び、t14bとする。
つぎに、図9(A)に示す「再起動モード1」の「着火時」という運転状態は、燃料電池モジュール2の停止運転中に再起動が要求された場合に、改質器温度センサ148が検出した改質器20の温度Tr(t)が、上述した「通常起動モード1」の通常起動モードPOX制御帯域B2のPOX開始温度Tr(t2)(=300℃)よりも低い所定温度Tr(t11)(=200℃)未満である場合には、「通常起動モード1」に基づく通常起動が「通常起動モード1」の着火後の「燃焼運転」から実行されるようになっている(図10のS6及びS13参照)。
一方、改質器20の温度Tr(t11)が所定温度(=200℃)以上である場合には、点火装置83を点火し、燃料ガスの着火後、直ちに「再起動モード1」の「通常起動ATR」の運転状態に移行される(図10のS6及びS7参照)。
つぎに、図9(A)及び図10のS7に示す「再起動モード1」の「通常起動ATR」という運転状態は、改質器温度センサ148が検出した改質器20の温度Tr(t11)が所定温度(=200℃)以上である場合に、点火装置83を点火し、燃料ガスの着火後、直ちに移行してATRを実行する制御帯域(以下「再起動モードATR制御帯域B13」)で再起動を制御している。
この「再起動モード1」の再起動モードATR制御帯域B13で実行される「通常起動ATR」の運転状態は、「通常起動モード1」の通常起動モードATR制御帯域B3で実行される「通常起動ATR」の運転状態とは、改質器温度Tr及びスタック温度Tsの温度帯域のみが異なり、「燃料流量」、「改質用空気流量」、「発電用空気流量」、及び、「水流量」が同一となっている。
より具体的に説明すると、「再起動モード1」の再起動モードATR制御帯域B13で「通常起動ATR」が実行される改質器温度Tr及びスタック温度Tsの温度帯域(以下「通常起動ATR温度帯域W13」)は、「通常起動モード1」の通常起動モードPOX制御帯域B2で「通常起動POX」が実行される通常起動POX温度帯域W2(300℃≦Tr(t)<600℃、Ts<250℃)と改質器温度Trの温度帯域が一部重複する温度帯域(200℃≦Tr(t)<600℃、Ts<500℃)となっているが、「通常起動モード1」の通常起動モードATR制御帯域B3で「通常起動ATR」が実行される通常起動ATR温度帯域W3(600℃≦Tr(t)<650℃、250℃≦Ts<600℃)とはスタック温度Tsのみが一部重複している。
つぎに、図9(A)及び図10のS9に示す「再起動モード1」の「再起動SR」という運転状態は、「通常起動モード1」の「通常起動SR」とは異なるSRを実行する制御帯域(以下「再起動モードSR制御帯域B14a」)で再起動を制御している。
より具体的に説明すると、「再起動モード1」の再起動モードSR制御帯域B14aで「再起動SR」が実行される改質器温度Tr及びスタック温度Tsの温度帯域(以下「再起動SR温度帯域W14a」)は、「通常起動モード1」の通常起動モードATR制御帯域B3で「通常起動ATR」が実行される通常起動ATR温度帯域W3(600℃≦Tr(t)<650℃、250℃≦Ts<600℃)と一部重複する温度帯域(600℃≦Tr(t)<650℃、500℃≦Ts<600℃)となっている。
また、「再起動モード1」の再起動モードSR制御帯域B14aにおいては、特に、「再起動モード1」の「再起動SR」が実行される再起動ATR温度帯域W14a(600℃≦Tr(t)<650℃、500℃≦Ts<600℃)について「通常起動モード1」の「通常起動SR」が実行される通常起動ATR温度帯域W3(600℃≦Tr(t)<650℃、250℃≦Ts<600℃)と一部重複している部分があるにもかかわらず、「通常起動モード1」の「通常起動ATR」は実行されない。
さらに、図9(A)に示すように、「再起動モード1」の「再起動SR」の運転状態における「燃料流量」は3.5[L/min]であり、「通常起動モード1」の「通常起動ATR」の運転状態における「燃料流量」(4.0[L/min])よりは少なく、「通常起動モード1」の「通常起動SR」の運転状態における「燃料流量」(3.0[L/min])よりは多くなっている。
また、図9(A)に示すように、「再起動モード1」の「再起動SR」の運転状態における「水流量」は6.0[cc/min]であり、「通常起動モード1」の「通常起動ATR」の運転状態における「水流量」(3.0[cc/min])よりは多く、「通常起動モード1」の「通常起動SR」の運転状態における「水流量」(8.0[cc/min])よりは少なくなっている。
つぎに、図9(A)及び図10のS11に示す「再起動モード1」の「通常起動SR」という運転状態は、改質器温度Tr及びスタック温度Tsの温度帯域(以下「通常起動SR温度帯域W14b」)が「通常起動モード1」の通常起動SR温度帯域W4(650℃≦Tr(t)、600℃≦Ts)と同一となっており、「通常起動モード1」の「通常起動SR」と同一のSRを実行する制御帯域(以下「再起動モードATR制御帯域B14b」)で再起動を制御している。
つぎに、特に、上述した「再起動モード1」による「通常起動ATR」から「再起動SR」を経て「通常起動SR」を実行する制御帯域(以下「「再起動モード1」の再起動モード制御帯域」)に着目し、この再起動モード制御帯域による再起動を「通常起動モード1」による通常起動と比較する。
「再起動モード1」の再起動モード制御帯域においては、燃料電池モジュール2の運転の停止により、改質器温度Tr及びスタック温度Tsが「通常起動モード1」の通常起動ATR温度帯域W3(600℃≦Tr(t)<650℃、250℃≦Ts<600℃)に相当する温度帯域の高温側から低下してこの通常起動ATR温度帯域W3内にあるときには、燃料電池セルスタック14や改質器20に残存している余熱を積極的に利用することにより、たとえ改質器温度Tr及びスタック温度Tsが通常起動ATR温度帯域W3(600℃≦Tr(t)<650℃、250℃≦Ts<600℃)内にあっても、「通常起動モード1」による通常起動モードATR制御帯域B3の「通常起動ATR」の実行をスキップする。
そして、このスキップした「通常起動モード1」の「通常起動ATR」の代わりに、「再起動モード1」の再起動SR温度帯域W14a(600℃≦Tr(t)<650℃、500℃≦Ts<600℃)において、「燃料流量」が「通常起動モード1」の「通常起動ATR」よりも少なく且つ「通常起動モード1」の「通常起動SR」よりも多く、且つ、「水流量」が「通常起動モード1」の「通常起動ATR」よりは多く且つ「通常起動モード1」の「通常起動SR」よりは少ない「再起動モード1」の「再起動SR」を実行する。
しかしながら、「再起動モード1」の一連の再起動モード制御帯域においては、ATRを完全に禁止するわけではなく、改質器温度Tr及びスタック温度Tsが「通常起動モード1」の再起動SR温度帯域W14a(600℃≦Tr(t)<650℃、500℃≦Ts<600℃)よりも低温側の「再起動モード1」の通常起動ATR温度帯域W13(200℃≦Tr(t)<600℃、Ts<500℃)内にあるときには、「再起動モード1」の「通常起動ATR」を実行する。
一方、「再起動モード1」の一連の再起動モード制御帯域においては、例えば、起動時の失火に基づいて再起動を行った場合に、改質器温度Tr及びスタック温度Tsが「再起動モード1」の再起動ATR温度帯域W14aの低温側から上昇してこの再起動ATR温度帯域W14a又はW14b内にあったとしても、燃料電池セルスタック14や改質器20に残存している余熱を利用できる可能性が低いため、「再起動モード1」の再起動モード制御帯域における「再起動SR」及び「通常起動SR」を禁止して、「通常起動モード1」の着火後の「燃焼運転」から実行する(図10のS12及びS13参照)。
また、図11に示すように、「再起動モード1」の「通常起動ATR」から「再起動SR」に移行するときの時間t14aは、「通常起動モード1」の「通常起動ATR」から「通常起動SR」に移行するときの時間t4よりも少ない時間となっており、再起動による起動時間が通常起動による起動時間に比べて短くなっている。
上述した本実施形態の固体電解質型燃料電池(SOFC)における再起動制御フローの第1例による再起動制御によれば、改質器温度Tr及びスタック温度Tsが「通常起動モード1」の通常起動ATR温度帯域W3(600℃≦Tr(t)<650℃、250℃≦Ts<600℃)と重複する「再起動モード1」の「再起動SR」の再起動SR温度帯域W14a(600℃≦Tr(t)<650℃、500℃≦Ts<600℃)の高温側から低下してこの再起動SR温度帯域W14a内にあるときには、燃料電池セルスタック14や改質器20に残存している余熱を積極的に利用することにより、たとえ改質器温度Tr及びスタック温度Tsが通常起動ATR温度帯域W3(600℃≦Tr(t)<650℃、250℃≦Ts<600℃)内にあっても、「通常起動モード1」による通常起動モードATR制御帯域B2の「通常起動ATR」の実行をスキップすることができる。
そして、このスキップした「通常起動モード1」の「通常ATR」の代わりに、「再起動モード1」の再起動ATR温度帯域W14aにおいて、「燃料流量」が「通常起動モード1」の「通常起動ATR」よりも少なく且つ「通常起動モード1」の「通常起動SR」よりも多く、且つ、「水流量」が「通常起動モード1」の「通常起動ATR」よりは多く且つ「通常起動モード1」の「通常起動SR」よりは少ない「再起動モード1」の「再起動SR」を実行することができる。
この結果、再起動時に「通常起動モード1」による通常起動モードATR制御帯域B3の通常起動ATRの実行をスキップすることなくそのまま通常起動ATRを実行した場合に比べて、燃料電池セル84の酸化や異常高温による燃料電池セル84への負担を軽減することができ、燃料電池セル84の耐久性を向上させることができる。
また、燃料電池セルスタック14や改質器20に残存している余熱を積極的に利用することにより、「通常起動モード1」の「燃焼運転」、「通常起動POX」、「通常起動ATR」をスキップし、「再起動モード1」の「着火時」から「通常起動ATR」、「再起動SR」、及び、「通常起動SR」を順次実行することにより、着火時からATR、SRへの移行を早めることができる。この結果、再起動時に仮に「通常起動モード1」の通常起動ATR温度帯域W3に相当する温度領域内で「通常起動モード1」の「通常起動ATR」を実行した場合に比べて、再起動に要する起動時間を大幅に短縮させることができる。
一方、例えば、起動時の失火に基づいて再起動を行った場合には、「再起動モード1」の再起動モード制御帯域における「再起動ATR」及び「通常起動SR」を禁止することができるため、燃料電池セルユニット16のダメージを抑制することができる。
さらに、本実施形態の固体電解質型燃料電池(SOFC)における再起動制御フローの第1例による再起動制御によれば、再起動時には「再起動モード1」の「着火時」から改質器温度Tr及びスタック温度Tsの上昇に伴って「通常起動ATR」、「再起動SR」、及び、「通常起動SR」を順次実行することにより、燃料電池セルユニット16の温度降下を招くことなく最適な状態で安定した温度の回復を図ることができる。
さらに、本実施形態の固体電解質型燃料電池(SOFC)における再起動制御フローの第1例による再起動制御によれば、「再起動モード1」の再起動モードATR制御帯域B13の通常起動ATR温度帯域W13(200℃≦Tr(t)<600℃、Ts<500℃)において「再起動モード1」の「通常起動ATR」を実行し、「再起動モード1」の再起動モードSR制御帯域B14aの再起動SR温度帯域W14a(650℃≦Tr(t)<650℃、500℃≦Ts<600℃)において、「再起動モード1」の「再起動SR」を実行するため、多くの水の供給及び吸熱反応だけとなるSRを実行することによる燃料電池セルスタック14の急激な温度降下を招くことなく最適な状態で安定した温度の回復を図ることができる。
また、本実施形態の固体電解質型燃料電池(SOFC)における再起動制御フローの第1例による再起動制御によれば、再起動時に燃料電池セルスタック14や改質器20に残存している余熱を積極的に利用することにより、「通常起動モード1」の通常起動モードATR制御帯域B3の「通常起動ATR」の少なくとも一部をスキップする代わりに、「通常起動モード1」の「通常起動SR」と異なる「再起動モード1」による「再起動SR」を実行するため、多くの水供給に伴って改質器20の温度降下を招くことを抑制でき、温度回復を一層適切に行うことができる。
さらに、本実施形態の固体電解質型燃料電池(SOFC)における再起動制御フローの第1例による再起動制御によれば、「通常起動モード1」の「通常起動ATR」をスキップする代わりに、「再起動モード1」の再起動モードSR制御帯域B14aにおいて、「通常起動モード1」の「通常起動SR」よりも「燃料流量」が多い「再起動モード1」の「再起動SR」を実行することにより、燃焼温度を高く保ったSRの実行によって比較的低い温度帯域での吸熱反応だけのSRであっても改質器20及び燃料電池セルスタック14の温度降下を抑制し、迅速な温度回復を図ることができる。
さらに、本実施形態の固体電解質型燃料電池(SOFC)における再起動制御フローの第1例による再起動制御によれば、「通常起動モード1」の「通常起動ATR」をスキップする代わりに、「通常起動モード1」の「通常起動SR」よりも「水流量」が少ない「再起動モード1」の「再起動SR」を実行することにより、改質器20の急激な温度低下及び、急激な吸熱反応による更なる温度低下という悪いスパイラル状態に一気に落ち込むことを抑制することができ、迅速で安定した昇温を図ることができる。
つぎに、図12により、本実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)の再起動制御フローの第2例を具体的に説明する。図12は、本発明の一実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)において再起動を行うための再起動制御フローの第2例(再起動制御フロー2)を示すフローチャートである。図12において、Sは各ステップを示している。
まず、S101において、燃料電池モジュール2が停止運転中か否かを判定し、停止運転中である場合には、S102に進み、再起動を要求するか否かを判定する。
S102において、再起動を要求すると判定した場合には、S103に進み、改質器温度センサ148により改質器20の温度Trを測定した後、S104に進み、発電室温度センサ142により燃料電池セルスタック14(即ち燃料電池セル84自体)の近傍の温度であるスタック温度Tsを測定する。
つぎに、S105に進み、改質器温度Trが400℃以上であるか否かを判定する。
S105において、改質器温度Trが400℃以上でないと判定した場合には、S106に進み、改質器温度Trが200℃未満であるか否かを判定する。
S106において、改質器温度Trが200℃未満でない、すなわち、改質器温度Trが200℃以上400℃未満であると判定した場合には、S107に進み、図9(B)に示すデータテーブル中の「再起動モード2」による「通常起動ATR1」を実行する。
また、S105において、改質器温度Trが400℃以上であると判定した場合には、S108に進み、改質器温度Trが600℃以上であるか否かを判定する。
S108において、改質器温度Trが600℃以上でない、すなわち、改質器温度Trが400℃以上600℃未満であると判定した場合には、S109に進み、図9(B)に示すデータテーブル中の「再起動モード2」による「通常起動ATR2」を実行する。
一方、S108において、改質器温度Trが600℃以上であると判定した場合には、S110に進み、発電室温度センサ142により測定されたスタック温度Tsが600℃以上であるか否かを判定する。
S110において、スタック温度Tsが600℃以上であると判定した場合には、S111に進み、図9(B)に示すデータテーブル中の「再起動モード2」による「通常起動SR」を実行する。
一方、S110において、スタック温度Tsが600℃以上でない、すなわち、改質器温度Trが600℃以上であるにもかかわらず、スタック温度Tsが600℃未満であると判定した場合には、S112に進み、スタック温度Tsが500℃以上600℃未満の範囲内で50℃昇温したか否かを判定する。
また、S112において、スタック温度Tsが500℃以上600℃未満の範囲内で50℃昇温したと判定した場合には、S111に進み、図9(B)に示すデータテーブル中の「再起動モード2」による「通常起動SR」を実行する。
一方、S112において、スタック温度Tsが500℃以上600℃未満の範囲内で50℃昇温していないと判定した場合には、S113に進み、図9(B)に示すデータテーブル中の「再起動モード2」による「再起動SR」を実行する。
つぎに、S101において、燃料電池モジュール2が停止運転中か否かを判定し、停止運転中でない場合には、S114に進み、起動時における失火に基づく再起動の要求があるか否かを判定する。
S114において、失火に基づく再起動の要求があと判定した場合、及び、S106において、改質器温度Trが200℃未満であると判定した場合には、S115に進み、図9(B)に示す通常起動データテーブル中の「通常起動モード2」に従って再起動を実行する。
つぎに、図9(B)、図12及び図13を参照しながら、図12に示す本実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)の再起動制御フローの第2例に基づいて再起動を実行した場合の動作をより具体的に説明する。
図13は、図14に示す本実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)の再起動制御フローの第3例に基づいて再起動を実行した場合の動作を示すタイムチャートについて、通常起動時の動作を示すタイムチャートと比較した図である。
なお、図13の上段のタイムチャートは、図9(B)に示すデータテーブル中の「通常起動モード2」を実行した場合における固体電解質型燃料電池(SOFC)の通常起動の動作を示すタイムチャートであり、図13の下段のタイムチャートは、図9(B)に示すデータテーブル中の「再起動モード2」を実行した場合における固体電解質型燃料電池(SOFC)の再起動の動作を示すタイムチャートである。
また、以下の本実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)の再起動制御フローの第2例(再起動フロー2)に基づく再起動の動作の説明については、図9(B)に示す「通常起動モード2」と「再起動モード2」に関するデータテーブルのみを参照すると共に、図13に示す本実施形態の固体電解質型燃料電池(SOFC)の「再起動モード2」による再起動時の動作について、「通常起動モード2」による通常起動時の動作と比較しながら説明する。
まず、図9(B)に示すように、「通常起動モード2」による通常起動制御は、「着火時」から「燃焼運転」、「通常起動POX」、「通常起動ATR1」、「通常起動ATR2」、及び、「通常起動SR」を順次実行するものである。ここで、図13における「通常起動モード2」のタイムチャートの横軸である時間tについては、「着火時」の時間をt101とし、順次「燃焼運転」、「通常起動POX」、「通常起動ATR1」、「通常起動ATR2」、及び、「通常起動SR」へと移行するときの時間をそれぞれt102、t103、t104、及び、t105とする。
図9(B)に示す「通常起動モード2」の「着火時」という運転状態は、点火装置83を点火し、燃料ガスが着火して燃焼を開始した状態であり、この着火時(t=t101)に改質器温度センサ148が検出した改質器20の温度を「着火時温度Tr(t1)」とすると、この着火時温度Tr(t101)は、POXが開始するとき(t=t102)の改質器20の温度(以下「POX開始温度Tr(t102)」)(=300℃)よりも低くなっている。
つぎに、「通常起動モード2」の「燃焼運転」という運転状態は、燃料ガスの着火後に燃焼を開始してから、この燃料ガスの燃焼熱によって改質器20を加熱して燃焼運転を実行する制御帯域(以下「燃焼運転制御帯域B101」)で起動を制御しており、改質器温度センサ148が検出した改質器20の温度が着火時温度Tr(t101)からPOX開始温度Tr(t102)(=300℃)未満までの温度帯域W101で実行されるものである。
つぎに、「通常起動モード2」の「通常起動POX」という運転状態は、改質器温度センサ148が検出した改質器20の温度Tr(t)がPOX開始温度Tr(t102)(=300℃)以上であり且つSRが可能なSR可能温度(以下「SR可能温度Tr(t103)」)(=600℃)未満までの温度帯域(以下「通常起動POX温度帯域W102」)内にあるとき(300℃≦Tr(t)<600℃)、POXによる反応熱と燃料ガスの燃焼熱によって改質器20を加熱してPOXを実行する制御帯域(以下「通常起動モードPOX制御帯域B102」)で起動を制御している。
つぎに、「通常起動モード2」の「通常起動ATR1」という運転状態は、改質器温度センサ148が検出した改質器20の温度Tr(t)がSR可能温度Tr(t103)(=600℃)以上であり、且つ、発電室温度センサ142により測定されたスタック温度Tsが250℃以上400℃未満までの温度帯域(250℃≦Ts<400℃)(以下「通常起動ATR1温度帯域W103」)にあるとき、POXによる反応熱と燃料ガスの燃焼熱とSRによる吸熱を制御して改質器20を加熱し、ATRを実行する制御帯域(以下「通常起動モードATR1制御帯域B103」)で起動を制御している。
つぎに、「通常起動モード2」の「通常起動ATR2」という運転状態は、改質器温度センサ148が検出した改質器20の温度Tr(t)がSR可能温度Tr(t103)(=600℃)以上であり、且つ、発電室温度センサ142により測定されたスタック温度Tsが400℃以上600℃未満までの温度帯域(400℃≦Ts<600℃)にあるとき、POXによる反応熱と燃料ガスの燃焼熱とSRによる吸熱を制御して改質器20を加熱し、「通常起動モード2」の「通常起動ATR1」とは異なるATRを実行する制御帯域(以下「通常起動モードATR2制御帯域B104」)で起動を制御している。
ここで、「通常起動モード2」の「通常起動ATR1」と「通常起動ATR2」の相違点については、上述したようにスタック温度Tsの移行温度条件が互いに異なり、通常起動ATR1温度帯域W103が通常起動ATR2温度帯域W104よりも低温側にある点以外にも、「通常起動ATR1」の「燃料流量」及び「改質用空気流量」が「通常起動ATR2」の「燃料流量」及び「改質用空気流量」よりも多く設定されているのに対し、「通常起動ATR1」の「水流量」は「通常起動ATR2」の「水流量」よりも少なく設定されている点が特徴的な相違点である。
つぎに、「通常起動モード2」の「通常起動SR」という運転状態は、改質器温度センサ148が検出した改質器20の温度Tr(t)が所定の定常温度Tr(t105)であり、且つ、発電室温度センサ142により測定されたスタック温度Tsが600℃以上にある場合にSRを実行する制御帯域(以下「通常起動モードSR制御帯域B105」)で起動を制御している。
つぎに、図9(B)に示すように、「再起動モード2」による再起動制御は、「着火時」から「通常起動ATR1」、「通常起動ATR2」、「再起動SR」、及び、「通常起動SR」を順次実行するものである。ここで、図15における「再起動モード3」のタイムチャートの横軸である時間tについては、「着火時」の時間をt201とし、順次「通常起動ATR1」、「通常起動ATR2」、「再起動SR」、及び、「通常起動SR」へと移行するときの時間をそれぞれt203、t204、t205a、及び、t205bとする。
図9(B)に示す「再起動モード2」の「着火時」という運転状態は、燃料電池モジュール2の停止運転中に再起動が要求された場合に、改質器温度センサ148が検出した改質器20の温度Tr(t)が、上述した「通常起動モード2」の通常起動モードPOX制御帯域B102のPOX開始温度Tr(t102)(=300℃)よりも低い所定温度Tr(t201)(=200℃)未満である場合には、「通常起動モード2」に基づく通常起動が「通常起動モード2」の着火後の「燃焼運転」から実行されるようになっている(図12のS106及びS115参照)。
一方、改質器20の温度Tr(t201)が所定温度(=200℃)以上である場合には、点火装置83を点火し、燃料ガスの着火後、直ちに「再起動モード2」の「通常起動ATR1」の運転状態に移行される(図12のS107参照)。
この「再起動モード2」の再起動モードATR制御帯域B203で実行される「通常起動ATR1」の運転状態は、「通常起動モード2」の通常起動モードATR制御帯域B103で実行される「通常起動ATR1」の運転状態とは、改質器温度Tr及びスタック温度Tsの温度帯域のみが異なり、「燃料流量」、「改質用空気流量」、「発電用空気流量」、及び、「水流量」が同一となっている。
より具体的に説明すると、「再起動モード2」の再起動モードATR制御帯域B203で「通常起動ATR1」が実行される改質器温度Tr及びスタック温度Tsの温度帯域(200℃≦Tr<400℃、Ts<400℃)(以下「通常起動ATR温度帯域W203」)は、「通常起動モード1」の通常起動モードPOX制御帯域B102で「通常起動POX」が実行される通常起動POX温度帯域W2(300℃≦Tr(t)<600℃、Ts<250℃)と一部重複する温度帯域となっているが、「通常起動モード2」の通常起動モードATR制御帯域B103で「通常起動ATR1」が実行される通常起動ATR温度帯域W103(600℃≦Tr(t)<650℃、250℃≦Ts<600℃)とはスタック温度Tsのみが一部重複している。
つぎに、図9(B)及び図12のS107に示す「再起動モード2」の「通常起動ATR1」という運転状態は、「通常起動モード2」の「通常起動ATR1」とは異なるATRを実行する制御帯域(以下「再起動モードATR制御帯域B203」)で再起動を制御している。
より具体的に説明すると、「再起動モード2」の再起動モードATR制御帯域B203で「通常起動ATR1」が実行される改質器温度Tr及びスタック温度Tsの温度帯域(以下「通常起動ATR温度帯域W203」)は、「通常起動モード2」の通常起動モードPOX制御帯域B102で「通常起動POX」が実行される通常起動POX温度帯域W102(300℃≦Tr(t)<600℃、Ts<250℃)と一部重複する温度帯域(200℃≦Tr(t)<400℃、Ts<400℃)となっているが、「通常起動モード2」の通常起動モードATR制御帯域B103で「通常起動ATR1」が実行される通常起動ATR温度帯域W103(600℃≦Tr(t)<650℃、250℃≦Ts<400℃)とはスタック温度Tsのみが重複した温度帯域となっている。
つぎに、図9(B)及び図12のS109に示す「再起動モード2」の「通常起動ATR2」という運転状態は、「通常起動モード2」の「通常起動ATR2」及び「再起動モード2」の「通常起動ATR1」とは異なるATRを実行する制御帯域(以下「再起動モードATR制御帯域B204」)で再起動を制御している。
より具体的に説明すると、「再起動モード2」の再起動モードATR制御帯域B204で「通常起動ATR2」が実行される改質器温度Tr及びスタック温度Tsの温度帯域(400℃≦Tr(t)<600℃、400℃≦Ts<500℃)(以下「通常起動ATR温度帯域W204」)は、「通常起動モード2」の通常起動モードATR2制御帯域B104で「通常起動ATR2」が実行される通常起動ATR2温度帯域W104(600℃≦Tr(t)<650℃、400℃≦Ts<600℃)とスタック温度Tsのみが一部重複する温度帯域となっている。
つぎに、図9(B)及び図12のS113に示す「再起動モード2」の「再起動SR」という運転状態は、「通常起動モード2」の「通常起動SR」とは異なるSRを実行する制御帯域(以下「再起動モードSR制御帯域B205a」)で再起動を制御している。
より具体的に説明すると、「再起動モード2」の再起動モードSR制御帯域B205aで「再起動SR」が実行される改質器温度Tr及びスタック温度Tsの温度帯域(600℃≦Tr(t)<650℃、500℃≦Ts<600℃)(以下「再起動SR温度帯域W205a」)は、「通常起動モード2」の通常起動モードATR2制御帯域B104で「通常起動ATR2」が実行される通常起動ATR温度帯域W104(600℃≦Tr(t)<650℃、400℃≦Ts<600℃)と一部重複する温度帯域となっている。
しかしながら、「再起動モード2」の再起動モードSR制御帯域B205aにおいては、特に、「再起動モード2」の「再起動SR」が実行される再起動ATR温度帯域W205a(600℃≦Tr(t)<650℃、500℃≦Ts<600℃)について「通常起動モード2」の「通常起動ATR2」が実行される通常起動ATR2温度帯域W104(600℃≦Tr(t)<650℃、250℃≦Ts<600℃)と一部重複している部分があるにもかかわらず、「通常起動モード2」の「通常起動ATR2」は実行されない。 また、「再起動モード2」の再起動モードSR制御帯域B205aにおいては、スタック温度Tsが500℃以上600℃未満の範囲内で50℃昇温した時点で、「再起動モード2」による「通常起動SR」の実行に移行されるようになっている(図12のS112及びS111参照)。
さらに、図9(B)に示すように、「再起動モード2」の「再起動SR」の運転状態における「燃料流量」は3.5[L/min]であり、「通常起動モード2」の「通常起動ATR2」の運転状態における「燃料流量」(4.0[L/min])よりは少なく、「通常起動モード2」の「通常起動SR」の運転状態における「燃料流量」(3.0[L/min])よりは多くなっている。
また、図9(B)に示すように、「再起動モード2」の「再起動SR」の運転状態における「水流量」は6.0[cc/min]であり、「通常起動モード2」の「通常起動ATR2」の運転状態における「水流量」(3.0[cc/min])よりは多く、「通常起動モード2」の「通常起動SR」の運転状態における「水流量」(8.0[cc/min])よりは少なくなっている。
つぎに、図9(B)及び図12のS111に示す「再起動モード2」の「通常起動SR」という運転状態は、改質器温度Tr及びスタック温度Tsの温度帯域(以下「通常起動SR温度帯域W205b」)が「通常起動モード2」の通常起動SR温度帯域W105(650℃≦Tr(t)、600℃≦Ts)と同一となっており、「通常起動モード2」の「通常起動SR」と同一のSRを実行する制御帯域(以下「再起動モードSR制御帯域B205b」)で再起動を制御している。
ちなみに、「再起動モード2」の「再起動SR」が実行される再起動モードSR制御帯域B205aにおいて、スタック温度Tsが500℃以上600℃未満の範囲内で50℃昇温した後に「通常起動SR」に移行されてから「再起動モード2」の再起動モードSR制御帯域B205bにおいて「通常起動SR」が実行されるまでの昇温後の「再起動SR」について着目すると、「再起動モード2」の昇温後の「再起動SR」から「通常起動SR」までの実行については、「通常起動モード2」の「通常起動SR」が実行される通常起動モードSR制御帯域B205において予め定められた「通常起動モード2」の「通常起動SR」の「燃料流量」及び「水流量」を一定量に維持して「通常起動SR」を実行しているものといえる。
さらに、「再起動モード2」の「通常起動ATR2」から「再起動SR」に移行するときの時間t205aについても、「通常起動モード2」の「通常起動ATR2」から「通常起動SR」に移行するときの時間t105よりも少ない時間となっており、再起動による起動時間が通常起動による起動時間に比べて短くなっている。
上述した本実施形態の固体電解質型燃料電池(SOFC)における再起動制御フローの第2例による再起動制御によれば、「再起動モード2」の再起動モードSR制御帯域B205aにおいて、「通常起動モード2」の「通常起動SR」よりは「燃料流量」が多く且つ「水流量」が少ない「再起動モード2」の「再起動SR」が実行され、スタック温度Tsが500℃以上600℃未満の範囲内で50℃昇温した時点で「通常起動SR」に移行され、積極的なSRが実行されるため、改質器20の温度の急低下を抑えつつ、安定した昇温を図ることができる。
また、本実施形態の固体電解質型燃料電池(SOFC)における再起動制御フローの第2例による再起動制御によれば、「再起動モード2」の昇温後の「再起動SR」から「通常起動SR」までの実行については、「通常起動モード2」の「通常起動SR」が実行される通常起動モードSR制御帯域B205において予め定められた「通常起動モード2」の「通常起動SR」の「燃料流量」及び「水流量」を一定量に維持して「通常起動SR」が実行されるため、SR運転には温度が低い不安定な温度帯域中であっても、改質状態を変化させる要因を防止するようにしたことで「再起動モード2」の昇温後の「再起動SR」から「通常起動SR」までの移行が安定し、改質器20及び燃料電池セルスタック14の温度回復を迅速で安定的に行うことができる。
つぎに、本発明の他の実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)を説明する。
図20は本発明の他の実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)の燃料電池モジュールを示す正面断面図であり、図21は図20のXXI-XXI線に沿った断面図であり、図22は本発明の他の実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)の燃料電池モジュールにおけるマニホールド部分を斜め上方から見た斜視図である。
ここで、図20〜図22において、上述した本発明の一実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)の部分と同一の部分については同一の符号を付し、それらの説明は省略する。
図20〜図22に示すように、燃料電池モジュール200のハウジング202内には、改質器20の下方に配置された燃料電池セル集合体12の下部を支持するセル集合体支持ユニット204が設けられている。
このセル集合体支持ユニット204は、支持部材204aと仕切り板204bを備えている。
支持部材204aは、燃料電池モジュール200の基部であるベース部材206に固定され、仕切り板204bの長手方向の両側端部(図20の仕切り板204bの左側端部及び右側端部)をベース部材206から上方に所定間隔を置いて支持している。
また、セル集合体支持ユニット204は、ベース部材206との間に排気ガス室204cを形成している。
さらに、図21に示すように、ハウジング202の長手方向に沿った面である前面202aと後面202bの内側には、上下方向に延びる排気ガス通路208が形成され、この排気ガス通路208の下端側は、排気ガス室204cと連通している。
また、排気ガス室204cの下面には、排気ガス排出管210が接続され、この排気ガス排出管210の下流端は、図1に示す上述した温水製造装置50に接続されている。
さらに、排気ガス室204c内には、改質器20に純水を導入するための純水導入管212と、改質される燃料ガスと改質用空気を導入するための被改質ガス導入管214と、発電室10に余熱された空気を導入する空気導入管216と、これら純水導入管212と被改質ガス導入管214のそれぞれの下流端側が接続される混合室218が配置されている。
この混合室218内においては、純水導入管212から供給された水蒸気(純水)と被改質ガス導入管214から供給された改質される燃料ガスと改質用空気が混合されるようになっている。
また、これら純水導入管212と被改質ガス導入管214については、燃料電池モジュール200のベース部材206の下方側から排気ガス室204c内まで上方に延びた後、排気ガス室204c内で水平方向に延びて混合室218に接続されており、純水導入管212と被改質ガス導入管214を排気ガス室204c内に経由させることにより、排気ガス室204c内の排気ガスの熱を利用して改質器20に供給される前の水蒸気(純水)や改質用空気が保温され、温度低下を抑制することができるようになっている。
また、混合室218と改質器20の上流端側との間には、配管220が上下方向に延びるように接続されており、混合室218内で水蒸気(純水)が混合された燃料ガス及び空気は、配管220を経て改質器20内へ送られ、改質器20内に充填された改質触媒により改質されるようになっている。
さらに、配管220は、排気ガス通路208を形成するハウジング202の対向する一対の前面202a及び後面202bとは異なる側面202c(図20のハウジング202の左側側面)に隣接して配置されており、配管220内の水蒸気(純水)が保温されることにより、改質器20に供給される前の水蒸気(純水)や改質用空気の温度低下を抑制することができるようになっている。
また、改質器20の下流端側には、燃料ガス供給管64が接続され、この燃料ガス供給管64は、下方に延び、さらに、燃料電池セル集合体12の下方に形成されたマニホールド66内で水平に延びている。燃料ガス供給管64の水平部64aの下方面には、複数の燃料供給孔64bが形成されており、この燃料供給孔64bから、改質された燃料ガスがマニホールド66内に供給される。
上述した本発明の他の実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)によれば、再起動時に純水導入管212から配管220を経て改質器20に供給される水蒸気(純水)の温度について、排気ガス室204c内の排気ガスの熱を利用して高く維持することができるため、再起動時のATRにおける水蒸気(純水)の供給に伴う燃料電池セル84や改質器20の温度低下を抑制することができる。
また、本実施形態による固体電解質型燃料電池(SOFC)によれば、配管220をハウジング202に対して排気ガス通路208と分離させたためハウジング202からの熱交換を他の側面202cでは水のみとできるため、再起動時に配管220から改質器20に供給される水の温度を高く維持することができる。
1 固体電解質型燃料電池
2 燃料電池モジュール
4 補機ユニット
8 密封空間
10 発電室
12 燃料電池セル集合体
14 燃料電池セルスタック
16 燃料電池セルユニット
18 燃焼室
20 改質器
22 空気用熱交換器
24 水供給源
26 純水タンク
28 水流量調整ユニット
30 燃料供給源
38 燃料流量調整ユニット
40 空気供給源
44 改質用空気流量調整ユニット
45 発電用空気流量調整ユニット
46 第1ヒータ
48 第2ヒータ
50 温水製造装置
52 制御ボックス
54 インバータ
83 点火装置
84 燃料電池セル
110 制御部
112 操作装置
114 表示装置
116 警報装置
126 電力状態検出センサ
142 発電室温度センサ
150 外気温度センサ

Claims (8)

  1. 燃料ガスと酸化剤ガスとを電気化学的に反応させることにより発電する固体電解質型燃料電池であって、
    燃料電池モジュール内に配置された固体電解質型の燃料電池セルと、
    燃料ガスを水素に改質して上記燃料電池セルに供給する改質器であって、燃料ガスと水蒸気を化学反応させることにより燃料ガスを水蒸気改質する改質反応であるSR、及び、所定の温度帯域に応じて燃料ガスと酸化剤ガスを化学反応させることにより燃料ガスを部分酸化改質する改質反応であるPOXと上記SRとを併用させることにより燃料ガスをオートサーマル改質する改質反応であるATRによって燃料ガスを改質する、上記燃料電池モジュール内に配置された上記改質器と、
    上記燃料電池モジュール内の温度を検出する、上記燃料電池モジュール内に配置された温度検出手段と、
    上記燃料電池モジュールの運転の起動を制御する起動制御手段と、上記燃料電池モジュールの運転の停止を制御する停止制御手段と、を備えた制御手段と、を有し、
    上記起動制御手段は、上記温度検出手段により検出された温度が所定の定常温度未満のATR温度帯域内にある場合には、上記改質器を昇温させるために通常起動時のATRを実行し、上記温度検出手段により検出された温度が上記所定の定常温度以上である場合には、上記改質器を昇温させるために通常起動時のSRを実行し、
    上記起動制御手段は、更に、上記燃料電池モジュールが高温状態からの停止に伴って上記停止制御手段による停止処理が実行され、上記ATR温度帯域内で運転の再起動が実行された場合には、上記温度検出手段により検出された温度が上記通常起動時のATR温度帯域内の所定温度未満である場合にはATRによる再起動制御を実行し、上記ATR温度帯域内の所定温度以上である場合には、通常起動時のATRをスキップして上記SRによる再起動制御を実行することを特徴とする固体電解質型燃料電池。
  2. 上記再起動制御で行われるSRは、上記通常起動時のSRよりも燃料ガスの供給量を多くするように構成されている請求項1に記載の固体電解質型燃料電池。
  3. 上記再起動制御で行われるSRは、上記通常起動時のSRより水の供給量を少なくするように構成されている請求項1又は2に記載の固体電解質型燃料電池。
  4. 上記再起動制御で行われるSRは、上記温度検出手段により検出された温度が予め決定された所定温度以上上昇した時点で上記通常起動時のSRに移行される請求項2又は3に記載の固体電解質型燃料電池。
  5. 上記再起動制御は、予め決定された燃料ガスの供給量及び水の供給量を変更させることなく一定量を維持してSRによる再起動を実行する請求項1に記載の固体電解質型燃料電池。
  6. 更に、純水を生成して上記改質器に供給する水供給手段を有し、この水供給手段は、上記改質器に水を導入する水配管と、この水配管を保温する保温手段と、を備えている請求項1乃至5の何れか1項に記載の固体電解質型燃料電池。
  7. 更に、複数の燃料電池セルを備えたセル集合体の下部を支持すると共に燃料ガスと酸化剤ガスとの燃焼によって生成された排気ガスが排出される排気ガス室を形成するセル集合体支持手段を有し、上記保温手段は、上記水配管を上記排気ガス室内に経由させるように配置することにより、改質器に供給される水の温度低下を抑制するように構成されている請求項6記載の固体電解質型燃料電池。
  8. 更に、上記セル集合体を収容するハウジング部材を備え、このハウジング部材を形成する対向する一対の側面には上記排気ガス室に連通する排気ガス通路が配置され、他の側面には、上記水配管の通路が配置されている請求項記載の固体電解質型燃料電池。
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