以下に図面を用いて本発明に係る実施の形態につき詳細に説明する。以下では、保護ステントとして、Ni−Ti合金の細線を編み上げて一様な編目としたステントを説明するが、細線の材質が形状記憶材料であり、編み上げた長さが塞栓狭窄患部の長さより長く設定され、編み上げた外径が塞栓狭窄拡張後の血管内径よりも大きく設定され、編み上げたダイヤモンド状の編目隙間が塞栓狭窄拡張の際の塞栓物質屑を捕集できる細かさに設定されたものであれば、寸法等は臨床用途に応じて適宜変更可能である。
また、以下では、保護ステントシステムとして、保護ステントとガイドワイヤ部とを備えるものとし、保護ステント用マイクロカテーテル部を用いて保護ステントがガイドワイヤ部の保護ステント保持部に軸方向に伸長して保護ステント用マイクロカテーテル内部に収納されて保持され、あるいは保護ステント用マイクロカテーテル部の外部に引き出されて形状記憶している元の形状に拡張するものとして説明するが、ここでマイクロカテーテル部は、保護ステントとガイドワイヤ部とを内部に収容できるものであればよい。
また、以下で説明する材料、形状、寸法等は例示であって、適用が想定される塞栓狭窄患部の大きさ等に応じ、これらの内容を適宜変更できる。臨床に用いられる例として、脳血管における塞栓狭窄患部を説明するが、脳血管以外における塞栓狭窄患部であってもよい。塞栓狭窄患部の大きさ等は説明のための1例である。
なお、以下において、マイクロカテーテル部を生体の体内に挿入するときに、その進行方向側である先端の方を末端側、生体の体外であって手元側で操作する側を基部端側と呼ぶことにする。末端側は、一般的にディスタル側と呼ばれ、基部端側は一般的にプロキシマル側と呼ばれるものである。
以下では、全ての図面において同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、本文中の説明においては、必要に応じそれ以前に述べた符号を用いるものとする。
ここで、保護ステントと、保護ステントシステムと、保護ステントカテーテルシステムと、保護ステントデリバリシステムの相違について説明する。
上記のように、保護ステントシステムは、保護ステントとガイドワイヤ部とを備えるものである。ここで、保護ステントは、後に詳述するように形状記憶して超弾性が付されたものであるので、その外形を拘束することで細長く引き延ばし、拘束を外すことで元の形状記憶された形状に拡張することができる。ここで、保護ステントシステムだけでは、この保護ステントの形状を規定できない。
そこで、臨床においては、保護ステントシステムを内部に軸方向に移動可能に収容できる保護ステント用マイクロカテーテル部が用いられる。つまり、患者の体内に保護ステントシステムを挿入するときは、保護ステント用マイクロカテーテル部の内径で保護ステントの外形を規制して軸方向に細長く引き延ばした形態でガイドワイヤ部に保持させる。そして、所望の部位で保護ステント用マイクロカテーテル部とガイドワイヤ部とを相対的に軸方向に移動させて、保護ステントを保護ステントマイクロカテーテル部の外側に引き出して外形の拘束を外し、形状記憶している元の形状に拡張させる。このように、臨床では、保護ステントシステムと、保護ステント用マイクロカテーテル部とが一組になって用いられるので、これを保護ステントカテーテルシステムと呼ぶことができる。
このように臨床では、保護ステント用マイクロカテーテル部と保護ステントシステムとが組み合わされて用いられるが、臨床に用いられる前でも、保護ステントシステムを運搬等で独立的に取り扱えるようにすることが望ましい。そのために、保護ステントシステムにおけるガイドワイヤ部の末端側のステントが搭載される部分を収容するものとして、シースイントロデューサが用いられる。シースイントロデューサは、保護ステント用マイクロカテーテル部の先端部分に相当するもので、マイクロカテーテル部の内径と同じ内径を有する。このように、臨床に用いられる前段階では、保護ステントシステムとシースイントロデューサを組み合わせることで、これを独立の部品として扱うことができるので、これを、保護ステントデリバリシステムと呼ぶことができる。
上記のように、保護ステントシステムは、保護ステントとガイドワイヤ部とを含むものであり、保護ステントカテーテルシステムは、保護ステントシステムと保護ステント用マイクロカテーテル部とを組み合わせて臨床に用いられるものであり、保護ステントデリバリシステムは、保護ステントシステムとシースイントロデューサとを組み合わせて臨床以外の場面で独立の部品として取り扱えるようにしたものである。
ここで、保護ステントシステムの外径に適合するものであれば、保護ステント用マイクロカテーテル部は様々な種類のものを用いることができる。換言すれば、標準的なマイクロカテーテル部の内径に合わせて保護ステントシステムの外径等を設定することで、汎用的な保護ステントシステムとできる。また、このようにすることで、標準的なマイクロカテーテル部の内径に合わせられた標準的なシースイントロデューサを用いることも可能となる。
図1は、保護ステントカテーテルシステム10が臨床において用いられる様子を示す図である。ここで、上記のように、保護ステントカテーテルシステム10は、保護ステント40とガイドワイヤ部20とを備える保護ステントシステムと、保護ステント用マイクロカテーテル部12を含んで構成されるものである。
図1では、脳の血管60内に塞栓狭窄患部62を有する患者に対し、バルーンカテーテルシステムと自己拡張ステントカテーテルシステムを用いて塞栓狭窄を拡張する処置を行う場合に、その処置に先立って塞栓狭窄患部62に保護ステント40が留置される様子が示されている。
保護ステント40の留置、バルーンカテーテルシステムの適用、自己拡張ステントの留置には、最初に、患者8の大腿部等の動脈から、ガイディングカテーテル100が頚動脈6の近辺まで挿入される。
ガイディングカテーテル100は親カテーテルとも呼ばれるもので、保護ステント40の留置に用いられる保護ステント用マイクロカテーテル部12、バルーンカテーテルシステムに用いられるバルーン用マイクロカテーテル部、自己拡張ステントの留置に用いられる自己拡張ステント用マイクロカテーテル部の外径のいずれよりも大きい内径を有するカテーテルで、大動脈中を進んで挿入できるものである。ガイディングカテーテル100の大動脈中の誘導には、ガイドワイヤが用いられる。この誘導用ガイドワイヤとしては、まだ保護ステント40が搭載されていないガイドワイヤ部20を用いることができる。
頚動脈6は、一般に数mmの径寸法であるので、ガイディングカテーテル100はその手前で挿入が止められる。このガイディングカテーテル100に、保護ステント用マイクロカテーテル部12が挿入され、頚動脈6から先は、この保護ステント用マイクロカテーテル部12のみが塞栓狭窄患部62の部位を目指して進められる。
保護ステント用マイクロカテーテル部12が塞栓狭窄患部62の部位の近傍まで進められると、それに前後して、保護ステント用マイクロカテーテル部12に、保護ステントシステムが挿入される。具体的には、末端部に保護ステント40が保持されたガイドワイヤ部20が挿入される。ここでは、上記のように、シースイントロデューサを含む保護ステントデリバリシステムが準備される。そして、シースイントロデューサの末端側開口部が保護ステント用マイクロカテーテル部12の基部端側開口に宛がわれ、既に長く引き延ばされている保護ステント41を末端側に保持するガイドワイヤ部20が、このシースイントロデューサから出て保護ステント用マイクロカテーテル部12に挿入される。
そして、保護ステント40を末端側に保持するガイドワイヤ部20が保護ステント用マイクロカテーテル部12の中を進んで塞栓狭窄患部62の部位まで来ると、ガイドワイヤ部20が保護ステント用マイクロカテーテル部12に対し、末端側に向かって相対的に移動するように操作が行われる。これにより、保護ステント用マイクロカテーテル部12の内部で細長く軸方向に引き延ばされていた保護ステントが保護ステント用マイクロカテーテル部12の外側に引き出されて、形状記憶していた元の形状に拡張する。図1には、塞栓狭窄患部62の部位において拡張された保護ステント40の様子が示されている。
図2は、保護ステントカテーテルシステム10の構成と作用を説明する図である。図2において、(a)は、細長く引き延ばされた保護ステント41が保護ステント用マイクロカテーテル部12の内部に収納されているときの断面図、(b)は、保護ステントが保護ステント用マイクロカテーテル部12の外部に引き出されて拡張された保護ステント40となるときの断面図、(c)は、拡張された保護ステント40をそのままとして、ガイドワイヤ部20と保護ステント用マイクロカテーテル部12が回収されるときの断面図である。
図2(a)から(c)に示されるように、保護ステントカテーテルシステム10は、保護ステント用マイクロカテーテル部12とガイドワイヤ部20の相対的移動によって、保護ステントを軸方向に引き延ばして保護ステント用マイクロカテーテル部12の内部に収容し、あるいは保護ステントを保護ステント用マイクロカテーテル部12の外側に引き出して形状記憶している元の形状に拡張させ、さらに、保護ステント40をガイドワイヤ部20から分離する作用を有する。
上記のように、保護ステントカテーテルシステム10は、保護ステント用マイクロカテーテル部12と、保護ステント用マイクロカテーテル部12の内部に挿通されるガイドワイヤ部20と、ガイドワイヤ部20の末端側に設けられる保護ステント保持部31に保持される保護ステントとを含んで構成される。ここで、保護ステントシステムは、保護ステントと、ガイドワイヤ部20とを備える部分である。
なお、保護ステントは、後述するように、保護ステント用マイクロカテーテル部12の内にあるときと外にあるときとでその長さと外径を変化させるので、図2では、保護ステント用マイクロカテーテル部12の外にある保護ステント40と、保護ステント用マイクロカテーテル部12の内にある保護ステント41とで、符号を変えている。
保護ステント用マイクロカテーテル部12は、ガイドワイヤ部20を軸方向にスライド可能として内部に収容するスライド通路を有する可撓性のチューブである。かかる保護ステント用マイクロカテーテル部12としては、医学用として選ばれたもので、ウレタンチューブ、ナイロンチューブ等のプラスチックチューブを用いることができる。強度確保のため、ステンレス網目を埋め込んだものを用いることもできる。寸法の一例をあげると、外径が0.90mm、内径が0.52mm、チューブの管肉厚は、0.19mm、全長が約1600mmのものを用いることができる。
ガイドワイヤ部20は、保護ステント用カテーテルシステム10を生体の管部に挿入するときの誘導をする機能と、保護ステント40を保持する機能とを有する細い柔軟性を有するワイヤ線である。ガイドワイヤ部20の材質は、ステンレス鋼等の医学用に適した金属等が用いられる。寸法の一例をあげると、基部端側の外径が0.34mm、全長が約1800mmのものを用いることができる。なお、外径は、末端側において、次第に先細りとすることができる。
保護ステント40は、形状記憶材料から構成された複数本の細線を相互に交差させ、ダイヤモンド状の編目隙間を形成しながら長手方向に編んで両端が開口するホース状体とし、編み上げた長さが塞栓狭窄患部の長さより長く設定され、編み上げた外径が塞栓狭窄拡張後の血管内径よりも大きく設定され、編み上げたダイヤモンド状の編目隙間が塞栓狭窄拡張の際の塞栓物質屑を捕集できる細かさに設定され、編み上げた外径と長さについて形状記憶して超弾性が付与されたものである。
保護ステント40をホース状体として編み上げるには、形状記憶・超弾性特性を有するNiTi合金の細線を偶数本用い、この偶数本を2つに分けて、1本おきの半分が左巻きらせん状に、残りの半分72本が右巻きらせん巻き状に、円筒周面を有する金型上に巻きつけ、左巻きの細線と右巻きの細線とが平織状に斜面交差するように、円筒周面を有する金型を軸方向に一定速度で引き上げて行われる。編み上げられたホース状体は、その円筒周面を有する金型と共に超弾性付与の時効処理が行われ、その後常温に戻すことで、超弾性付与時の形状、すなわち、円筒周面を有する金型上に編み上げられた形状が記憶される。
したがって、保護ステント40の軸方向に沿った編み上げ長さは、円筒周面を有する金型上で編み始めから編み終わりまでの長さで設定できる。また、保護ステント40の編み上げた外径は、円筒周面を有する金型の外径と細線の直径で設定できる。さらに、保護ステント40の編み上げたダイヤモンド状の編目隙間のうち、その径方向あるいは周方向に沿った編目隙間は、円筒周面を有する金型の外周長さと細線の本数と細線の直径で設定でき、長手方向である軸方向に沿った編目隙間は、円筒周面を有する金型の周りを複数の細線が巻きつけられる1周期あたりの金型の引き上げ速度で定まる編み上げピッチで設定できる。
一例として、細線の直径を50μm=0.05mm、円筒周面を有する金型の外径を5mm、細線の数を100本とする。この場合、保護ステント40の周方向に沿った編目隙間は、{(π×5mm)/50}−0.05mm=0.314mm−0.05mm=0.264mmとなる。細線の本数を200本とすれば、この編目隙間は、0.157mm−0.05mm=0.107mmとなる。このように、細線の本数によって、保護ステント40の周方向に沿った編目隙間を設定できる。
軸方向に沿った編目隙間は、周方向に沿った編目隙間とほぼ同じとすることが塞栓物質屑の捕集の偏りを少なくするために好ましい。例えば、周方向に沿った編目隙間が約100μm=0.1mmと設定されると、円筒周面を有する金型の周りを複数の細線が巻きつけられる1周期当りの軸方向の編み上げ速度である編み上げピッチを100μm+(細線の直径である50μm)=150μm=0.15mmとすればよい。このように、軸方向の編み上げピッチによって、保護ステント40の軸方向に沿った編目隙間を設定できる。
保護ステント40のダイヤモンド状の編目隙間の大きさは、塞栓狭窄拡張の際の塞栓物質屑を捕集できる細かさに設定されるので、例えば、50μmから150μmの編目隙間とすることがよい。
例えば、塞栓狭窄患部の血管の軸方向に沿った長さを約10mm、塞栓狭窄の最も狭い内径が約1.5mm、塞栓狭窄が生じていない血管の内径を約4mmとすると、保護ステント40は、編み上げたときの全長を約15mm、編み上げたときの外径を約5mm、編み上げたときの編目隙間を50μmから150μm程度とすることが好ましい。すなわち、保護ステント40の編み上げたときの全長は、塞栓狭窄患部の全部を十分覆える程度の長さとし、編み上げたときの外径は、塞栓狭窄が生じていない血管の内径よりも大きめとすることがよい。
図2の説明に戻り、保護ステント41は、保護ステント用マイクロカテーテル部12の内部に収容されているときは、図2(a)に示されるように、保護ステント用マイクロカテーテル部12の内径でその外径が拘束されて、軸方向に細長く引き延ばされた形態をとる。上記の例では、保護ステント41の外径は、保護ステント用マイクロカテーテル部12の内径である0.52mmに拘束され、その分、長手方向に引き延ばされ、約100mmの軸方向長さとなる。
図2におけるストッパ30,32は、ガイドワイヤ部20の長手方向に沿って予め定めた間隔をあけて、それぞれガイドワイヤ部20に固定される環状部材である。基部端側のストッパ30と末端側のストッパ32との間の部分が、保護ステント40を保持する保護ステント保持部31に相当する。ストッパ30,32とガイドワイヤ部20との間の固定は、適当な接着剤を用いて行うことができる。かかるストッパ30,32としては、長さが1.0mm、外径が0.4mm、内径がガイドワイヤ部20の外径よりやや大きめの寸法を有するステンレスパイプを用いることができる。
ここで、保護ステント40は、ストッパ30,32の間に保持されることになるが、保護ステント40は、ストッパ30,32のいずれに対しても固定されず自由状態である。すなわち、保護ステント40は、ホース状体の両端の開口のいずれからもガイドワイヤ部20を自由に挿入でき、また引き出すことができる。
すなわち、保護ステント40は、保護ステント用マイクロカテーテル部12の内部に収納されるときにおいて、末端側のストッパ32と基部端側のストッパ30のいずれからも自由状態として、保護ステント保持部31の範囲で細長く引き延ばされる。また、保護ステント40は、保護ステント用マイクロカテーテル部12の外部に引き出されるときにおいて、末端側のストッパ32と基部端側のストッパ30のいずれからも自由状態として、軸方向に元の形状に縮小し、径方向に元の形状に拡張して、拡張されたホース状体の両端の開口から末端側のストッパ32と基部端側のストッパ30を含めてガイドワイヤ部20が軸方向に自由に移動可能である。
図2におけるコイル34は、ストッパ32よりもガイドワイヤ部20の末端側に設けられ、ガイドワイヤ部20の最先端の尖った部分を保護する機能を有する部材である。また、コイル34は、Pt等のX線不透過性材料を用いることで、ガイドワイヤ部20の末端側の位置を示す末端側マーカとしての機能を持たせることができる。コイル34は、ストッパ32とガイドワイヤ部20の末端側と接着剤で固定される。
かかるコイル34としては、例えばPt製の細線をらせん状に巻いて成形したものを用いることができる。らせんコイル寸法の一例としては、外径が0.34mm、内径が0.20mm、長さが32mm程度とすることができる。
図2の(a)は、保護ステント40が軸方向に細長く引き延ばされて、保護ステント用マイクロカテーテル部12の内に収納された状態を示す図である。ここでは、少なくとも保護ステント保持部31が保護ステント用マイクロカテーテル部12の内部に位置するように、ガイドワイヤ部20が保護ステント用マイクロカテーテル部12に対し、基部端側に引かれている。
図2(b)は、保護ステント40が、保護ステント用マイクロカテーテル部12の内径による拘束がなくなって、形状記憶されていた編み上げられたときの外径と長さに戻った状態を示す図である。ここでは、少なくとも保護ステント保持部31が保護ステント用マイクロカテーテル部12の外側に位置するように、ガイドワイヤ部20が保護ステント用マイクロカテーテル部12に対し、末端側に突き出されている。
図2(c)は、保護ステント40が、ガイドワイヤ部20の保護ステント保持部31の位置から分離し、単独の位置を占めるときの状態を示す図である。臨床においては、保護ステント40が塞栓狭窄患部のところに留置されたまま、ガイドワイヤ部20が保護ステント用マイクロカテーテル部12と共にガイディングカテーテル100に沿って体外に回収される状態に相当する。ここでは、ガイドワイヤ部20も、保護ステント用マイクロカテーテル部12も、保護ステント40よりも基部端側に引かれている。
上記構成の保護ステントシステムあるいは保護ステントカテーテルシステム10の作用効果は、臨床における用いられ方の説明によってさらに明らかになる。以下では、脳の血管60内の塞栓狭窄患部62の塞栓狭窄を拡張する例を用いて、保護ステントカテーテルシステム10の用いられ方を説明し、さらにその後にバルーンカテーテルシステムと自己拡張ステントカテーテルシステムが用いられる様子を説明する。
図3は、保護ステントカテーテルシステム10が臨床において用いられるときの手順を示すフローチャートで、図4から図6は、保護ステントカテーテルシステム10が臨床において適用される様子を説明する図である。
脳の血管60内の塞栓狭窄患部62の塞栓狭窄を拡張するには、まず、ガイディングカテーテル100を患者の体内に挿入する(S10)。具体的には、図1で説明したように、患者8の大腿部等の動脈から、ガイディングカテーテル100が頚動脈6の近辺まで挿入される。
次に、保護ステント用マイクロカテーテル部12がガイディングカテーテル100に沿って挿入される(S12)。具体的には、図1で説明したように、ガイディングカテーテル100に、保護ステント用マイクロカテーテル部12が挿入され、頚動脈6から先は、この保護ステント用マイクロカテーテル部12のみが塞栓狭窄患部62の部位を目指して進められる。
図4は、脳の血管60内の塞栓狭窄患部62の様子を示す図である。血管60は、正常な部位では、その内径がDAであるが、塞栓狭窄患部62では、最も狭いところで、その内径がDN1となり、血液の流れが悪くなる。塞栓狭窄患部62は、血栓物質であるアテローマ63と呼ばれる粥腫、粉瘤物質が血管内壁に堆積すること等で生じる。以下では、その寸法の例として、血管60の正常な内径DAを4mm、塞栓狭窄患部62の長さLN=10mm、最も狭い内径DN1=1.5mmとして説明を進める。この寸法は、保護ステント40の寸法との関係を説明するための一例であって、勿論、これ以外のものであってもよい。
図3に戻り、保護ステント用マイクロカテーテル部12に、細長く引き延ばされた保護ステント41が末端側に搭載されたガイドワイヤ部20が挿入される(S14)。保護ステント41が末端側に搭載されたガイドワイヤ部20は、保護ステントシステムそのものであり、保護ステントシステムと保護ステント用マイクロカテーテル部12を組み合わせたものは、保護ステントカテーテルシステム10である。
図5は、保護ステントカテーテルシステム10が塞栓狭窄患部62に挿入されている様子を示す図である。上記の例で、保護ステント用マイクロカテーテル部12の外径は0.9mmであるので、塞栓狭窄患部62の最も狭い内径DN1=1.5mmよりも細い。したがって、この場合には、保護ステント用マイクロカテーテル部12を塞栓狭窄患部62に通し、その後に保護ステントを末端側に搭載するガイドワイヤ部20を保護ステント用マイクロカテーテル部12の内径に通すことができる。
なお、塞栓狭窄患部62の最も狭い内径DN1が、保護ステント用マイクロカテーテル部12の外径よりも細い場合には、後述するバルーンカテーテルシステムを用いて、塞栓狭窄患部62の内径を少し拡張し、保護ステント用マイクロカテーテル部12の外径よりも広くし、その後にS12,S14を実行するものとできる。
再び図3に戻り、塞栓狭窄患部62において保護ステントを拡張させる(S16)。具体的には、保護ステントカテーテルシステム10において、ガイドワイヤ部20を保護ステント用マイクロカテーテル部12に対し、末端側に突き出し、保護ステント保持部31を保護ステント用マイクロカテーテル部12の外側に来るようにする。この状態は図2(b)で説明した状態であるが、拡張するところには塞栓狭窄患部62がちょうど位置するので、保護ステントは、塞栓狭窄患部62を血管60の内部から壁面に向かって覆うように拡張することになる。後述する図6では、塞栓狭窄患部62の内壁面に追従して拡張した保護ステント42として示されている。
このように、保護ステント42が、塞栓狭窄患部62を血管60の内部から壁面に向かって覆うように拡張するには、コイル34のX線像を観察しながら、図5における保護ステント41の位置決めを行う必要がある。位置決めが若干ずれても、保護ステント42が塞栓狭窄患部62の長さLN=10mmを十分に覆うことができるように、保護ステント40の全長LSはLNよりも長めに設定される。上記では、保護ステントの全長LS=15mmに設定されている。
そして、塞栓狭窄患部62において保護ステント42が留置される(S18)。具体的には、保護ステントカテーテルシステム10において、既に保護ステント42よりも基部端側に移動している保護ステント用マイクロカテーテル部12の内部にガイドワイヤ部20が収納されるように、ガイドワイヤ部20が基部端側に引き込まれる。そして、保護ステント用マイクロカテーテル部12がガイドワイヤ部20と共に、ガイディングカテーテル100を通って体外に回収される(S20)。
その状態は、図2(c)で説明した状態であるが、保護ステント42は、既に塞栓狭窄患部62を血管60の内部から壁面に向かって覆うように拡張しており、また、保護ステント42はストッパ30,32に対し自由状態であるので、ガイドワイヤ部20が移動しても保護ステント42はその位置から移動しない。つまり、保護ステント42は、塞栓狭窄患部62の内壁に張り付いたままである。
その様子が図6に示される。図6には、血管60の中心軸に対し、上半分が保護ステント42の外観図、下半分が保護ステント42の断面図が示されている。このように、保護ステント42は、その弾性によって、塞栓狭窄患部62を血管60の内部から壁面に向かって覆うように張り付いている。すなわち、保護ステント42が形状記憶している外径は約5mmであるので、血管60の正常な部分の内径DAおよび塞栓狭窄患部62の最も狭い内径DN1よりも十分に外側に拡張できる弾性を有している。
このように、保護ステント42は、塞栓狭窄患部62を血管60の内部から壁面に向かってしっかりと押さえつけるように覆うことができる。そして、保護ステント42の編み上げられたダイヤモンド状の編目隙間は、上記のように50μmから150μmに設定されるので、塞栓狭窄患部62のアテローマ63がその後の塞栓狭窄拡張の際に剥落等して塞栓物質屑となり血管60の中に飛散することを防止できる。
つまり、保護ステント42は、血管60の中に飛散した塞栓物質屑を捕集するフィルタの機能ではなく、塞栓狭窄患部62が剥落等することを防止する防護壁材としての機能を有する。編目隙間は、保護ステント42の径方向の弾性確保のために必要であるが、また、塞栓狭窄患部62が剥落等してもそれらが血管60内に飛散することを防止することに機能する。
図7から図16は、このように保護ステント42が塞栓狭窄患部62に留置されて、その防護壁材として機能することを利用して、塞栓狭窄患部62を拡張する様子を説明する図である。ここで、図7から図11は、バルーンカテーテルシステム50を用いて塞栓狭窄患部62を拡張して次の自己拡張ステントカテーテルシステム80を通しやすくする様子を示す図である。図12から図16は、バルーンカテーテルシステム50によって拡張された塞栓狭窄患部に自己拡張ステント90を留置し、塞栓狭窄患部を十分に拡張した状態で血液の流れを良くする様子を示す図である。これらの処理において、保護ステントは、その弾性によって、常に塞栓狭窄患部を血管60の内部から壁面に向かって覆うように張り付いている。
図7は、保護ステント42が塞栓狭窄患部62に留置された後に、バルーンカテーテルシステム50によって塞栓狭窄患部62が拡張されるときの手順を説明する図である。ここでは、図3で説明したS20において、保護ステントカテーテルシステム10が体外に回収された後に、引き続いて、バルーンカテーテルシステム50が挿入される。具体的には、バルーン用マイクロカテーテル部52が挿入され、これに前後してガイドワイヤ部20が挿入される(S22)。
バルーンカテーテルシステム50の様子は図8に示される。図8(a)は折り畳まれたバルーン71の状態を示し、図8(b)は、折り畳まれたバルーン71の内部空間に拡張用流体58が供給されることで拡張したバルーン70となる状態を示す図である。図8に示されるように、バルーンカテーテルシステム50は、ガイドワイヤ部20と、ガイドワイヤ部20が内部に挿通されるバルーン用マイクロカテーテル部52とを備えて構成される。ガイドワイヤ部20は、図2で説明したものと同じものを用いることができる。
バルーン用マイクロカテーテル部52は、その末端側の外周に通常状態では折り畳まれたバルーン71が設けられるマイクロカテーテルである。折り畳まれたバルーン71は、プラスチックフィルム状の袋体で、その内部が密封状態となるように、バルーン用マイクロカテーテル部52の外周に取り付けられたものである。かかるプラスチックフィルムとしては、例えばナイロンエラストマー等を用いることができる。
バルーン用マイクロカテーテル部52には、ガイドワイヤ部20を挿通するための貫通孔とは別に、折り畳まれたバルーン71の内部空間に連通する拡張用流体通路56が軸方向に沿って設けられる。拡張用流体通路56の一方端は、折り畳まれたバルーン71の内部空間に向かって開口する接続口57に接続し、他方端は、バルーン用マイクロカテーテル部52の基部端側に設けられる拡張用流体供給口54に接続される。拡張用流体供給口54は、患者8の体外において露出され、これによって、患者8の体外から、拡張用流体58を拡張用流体供給口54、拡張用流体通路56を介して、折り畳まれたバルーン71の内部空間に供給することができる。拡張用流体58としては、例えば、生理食塩水と造影剤との混合流体を用いることができる。
折り畳まれたバルーン71は、プラスチックフィルムが予め癖付けされて形成され、その内部空間が減圧状態となるときは、あたかも傘をすぼめた状態のように折り畳まれて、外径が極めて小さくなる。その状態が図8(a)である。そして、その内部空間に拡張用流体58が供給されて加圧されることで、あたかも傘を広げた状態のようになって、拡張したバルーン70となる。その状態が図8(b)である。図8(b)から拡張用流体58が回収されて減圧されると、拡張したバルーン70は再び折り畳まれたバルーン71に戻る。
図8において、折り畳まれたバルーン71の外径は、例えば約1mmから約1.3mm程度とできる。また、拡張されたバルーン70の軸方向の長さをLBとし、拡張時の外径をDBとすると、LBは、塞栓狭窄患部62の長さLNと同程度で、したがって、保護ステント40の軸方向の全長LSよりも短い。DBは、拡張用流体58の供給圧によって加減できるが、最大値としては、血管60の正常部分の内径DAよりも大きめのことが望ましい。
上記のように、折り畳まれたバルーン71から拡張されたバルーン70への変化は、拡張用流体58の供給圧で加減されるので、供給圧に相当する拡張力を発生することができ、これによって、塞栓狭窄患部62を拡張させることも、図12以降で説明する自己拡張ステント90の自己拡張力を補助することもできる。
図9は、バルーンカテーテルシステム50が塞栓狭窄患部62のところに挿入された様子を示す図である。上記の例では、折り畳まれたバルーン71の外径は約1mmから約1.3mmであるので、塞栓狭窄患部62を通ることができる。塞栓狭窄患部62は既に保護ステント40によってしっかり覆われているので、折り畳まれたバルーン71が通過する際にその外周等で塞栓狭窄患部62と接触しても、塞栓物質屑が血管60内に飛散することが防止される。
再び図7に戻り、次に、塞栓狭窄患部62において、バルーンの拡張が行われる(S24)。具体的には、図8(b)に示されるように、拡張用流体58が折り畳まれたバルーン71の内部空間に供給され、これによって拡張されたバルーン70となる。その様子が図10に示される。ここでは、拡張用流体58の供給圧によって、塞栓狭窄患部62が拡張され(S26)、その最も狭い内径がDN2となった塞栓狭窄患部64が示されている。拡張された塞栓狭窄患部64の内径DN2は、図12以降で説明する自己拡張ステントカテーテルシステム80が挿入できる程度であり、例えば、約3mm程度とすることができる。
このように拡張された塞栓狭窄患部64が形成されると、図7に示されるように、次にバルーンの収縮処理が行われる(S28)。具体的には拡張用流体58が回収され、さらに減圧されて、拡張されたバルーン70の内部空間が小さくなって、折り畳まれたバルーン71の状態に戻される。
そして、バルーンカテーテルシステム50が回収される。具体的には、ガイドワイヤ部20と共に、バルーン用マイクロカテーテル部52がガイディングカテーテル100を通って、患者8の体外に回収される(S30)。
その様子が図11に示される。上記のように内径DN2に拡張された塞栓狭窄患部64が形成されるが、このときにも、保護ステント42は、その弾性によって、拡張された塞栓狭窄患部64に追従してさらに拡張し、拡張された塞栓狭窄患部64を血管60の内部から壁面に向かって覆うように押さえている。図11では、この状態が、さらに拡張した保護ステント43として図示されている。なお、図11には、図6と同様に、血管60の中心軸に対し、上半分が保護ステント43の外観図、下半分が保護ステント43の断面図が示されている。
図12は、拡張された塞栓狭窄患部64が形成された後に、自己拡張ステントカテーテルシステム80を用いて塞栓狭窄患部に自己拡張ステント90が留置されるときの手順を説明する図である。ここでは、図7で説明したS30において、バルーンカテーテルシステム50が体外に回収された後に、引き続いて、自己拡張ステントカテーテルシステム80が挿入される。具体的には、自己拡張ステント用マイクロカテーテル部82が挿入され、これに前後してガイドワイヤ部20が挿入される(S32)。
自己拡張ステントカテーテルシステム80の様子は図13に示される。図13において、(a)は、収縮している状態の自己拡張ステント91が自己拡張ステント用マイクロカテーテル部82の内部に収納されているときの断面図、(b)は、自己拡張ステントが自己拡張ステント用マイクロカテーテル部82の外部に引き出されて拡張された自己拡張ステント90となるときの断面図、(c)は、拡張された自己拡張ステント90をそのままとして、ガイドワイヤ部20と自己拡張ステント用マイクロカテーテル部82が回収されるときの断面図である。
図13(a)から(c)に示されるように、自己拡張ステントカテーテルシステム80は、自己拡張ステント用マイクロカテーテル部82を構成する外筒部84と、外筒部84の内側に配置され、形状記憶・超弾性処理がされた自己拡張ステントを保持する内筒部86との相対的移動によって、自己拡張ステントを径方向に圧縮して縮小させて外筒部84の内部に収容し、あるいは自己拡張ステントを外筒部84の外側に引き出して形状記憶している元の形状に拡張させ、さらに、拡張された自己拡張ステント90をガイドワイヤ部20から分離する作用を有する。
図13に示されるように、自己拡張ステントカテーテルシステム80は、外筒部84と内筒部86とを含む自己拡張ステント用マイクロカテーテル部82と、内筒部86の内部に挿通されるガイドワイヤ部20と、内筒部86の末端側に設けられる自己拡張ステント保持部89に保持される自己拡張ステントとを含んで構成される。ガイドワイヤ部20は、図2で説明したものと同じものを用いることができる。
なお、自己拡張ステントは、外筒部84の内にあるときと外にあるときとでその外径を変化させるので、図13では、外筒部84の外にある自己拡張ステント90と、外筒部84の内にある自己拡張ステント91とで、符号を変えている。
自己拡張ステント用マイクロカテーテル部82は、外筒部84と内筒部86が相互に軸方向に移動可能な2重構造の筒部である。外筒部84は、その内部に内筒部86を含み、特にその内径寸法によって、内筒部86に保持される自己拡張ステントの外径を規定する機能を有する筒部材である。かかる外筒部84は、医学用として選ばれたもので、ウレタンチューブ、ナイロンチューブ等のプラスチックチューブを用いることができる。強度確保のため、ステンレス網目を埋め込んだものを用いることもできる。寸法の一例をあげると、外径が約2mm、チューブの管肉厚が約0.2mm、全長が約1600mmのものを用いることができる。
内筒部86は、ガイドワイヤ部20を軸方向にスライド可能として内部に収容するスライド通路を内径として有し、外周部の末端側に自己拡張ステントを保持する自己拡張ステント保持部89を有する筒部材である。自己拡張ステント保持部89は、内筒部86の末端側の先端部である矢尻部88から軸方向に沿って外径を細くした部分として形成される。かかる内筒部86は、医学用として選ばれたもので、ウレタンチューブ、ナイロンチューブ等のプラスチックチューブを所定の形状に成形したものを用いることができる。
内筒部86の寸法の一例をあげると、ガイドワイヤ部20が挿入される内径が0.52mm、自己拡張ステント保持部89を除く部分の外径が約1.6mm、自己拡張ステント保持部89の外径が0.90mm、自己拡張ステント保持部89の軸方向長さLSESが約10mm、全長が約1600mmのものを用いることができる。
拡張された状態の自己拡張ステント90は、Ni−Ti合金等の形状記憶・超弾性を有する材料で構成され、外力が加えられることで径方向に収縮変形するが、外力が除去されると、元の形状記憶している外径に戻る特性を有するステントである。かかる自己拡張ステント90としては、Ni−Ti合金から構成される筒材にレーザ加工等で適当に複数の孔を設けて、形状記憶・超弾性処理を行ったものを用いることができる。複数の孔は、外力が加えられたときに、径方向に変形しやすくするために設けられるものである。
したがって、拡張された状態の自己拡張ステント90を内筒部86の自己拡張ステント保持部89の位置に配置し、適当な配置治具を用いて、その位置で外筒部84の内径によって自己拡張ステントの外径を規制するようにして、径方向に収縮変形させることで、外筒部84の内部に収縮した状態の自己拡張ステント91を収納することができる。そして、自己拡張ステント保持部89を外筒部84の外になるように、外筒部84を内筒部86に対し基部端側に移動させることで、収縮した状態の自己拡張ステント91を拡張された自己拡張ステント90の状態に戻すことができる。
かかる自己拡張ステントの寸法として、図13に示されるように、拡張された自己拡張ステント90の外径をDSESとし、その軸方向の長さをLSESとすると、DSESは、血管60の正常な内径DAよりも大きく、LSESは、保護ステント40の全長LSよりも短いことが好ましい。例えば、上記の例で、DSESを約5mm、LSESを約10mmとすることができる。
図14は、自己拡張ステントカテーテルシステム80が拡張された塞栓狭窄患部64のところに挿入された様子を示す図である。上記の例では、自己拡張ステント用マイクロカテーテル部82を構成する外筒部84の外径が約2mmであるので、拡張された塞栓狭窄患部64を通ることができる。拡張された塞栓狭窄患部64は既に保護ステント43によってしっかり覆われているので、自己拡張ステントカテーテルシステム80が通過する際にその外周等で塞栓狭窄患部64と接触しても、塞栓物質屑が血管60内に飛散することが防止される。
再び図12に戻り、次に、塞栓狭窄患部64において、自己拡張ステントの拡張が行われる(S34)。具体的には、自己拡張ステント保持部89を外筒部84の外になるように、外筒部84を内筒部86に対し基部端側に移動させることで、収縮した状態の自己拡張ステント91を、拡張された自己拡張ステントに戻す。このときに、自己拡張ステント自体の拡張力はあまり大きくないので、拡張された塞栓狭窄患部64をある程度さらに拡張できるが、正常な内径DAにまで完全に戻すことができないことが多い。
図15にはその様子が示されている。ここでは、拡張された自己拡張ステントの外径は、形状記憶されている外径まで戻っていないので、その弾性によって、血管60の内壁を押さえつけている状態である。図15では、図13の拡張された自己拡張ステント90と区別して、血管60に密着された自己拡張ステント93として示されている。このときに、保護ステント43は、拡張された塞栓狭窄患部64と、自己拡張ステント93との間に位置しているので、自己拡張ステント93がその弾性によって血管60の内壁を押さえつけても、塞栓物質屑が血管60内に飛散することが防止される。
このように保護ステント43を介して自己拡張ステント93が血管60に密着された状態とされると、図12に示されるように、次に自己拡張ステント93の留置処理が行われる(S36)。具体的には、内筒部86がガイドワイヤ部20と共に外筒部84の中に引き込まれる。
その状態は、図13(c)で説明した状態であるが、自己拡張ステント93は、既に塞栓狭窄患部64を血管60の内部から壁面に向かって押し付けるように拡張しており、また、自己拡張ステント93は内筒部86の自己拡張ステント保持部89に対し固定されていないので、内筒部86とガイドワイヤ部20とが移動しても自己拡張ステント93はその位置から移動しない。つまり、自己拡張ステント93は、保護ステント43を介して塞栓狭窄患部64の内壁を押し付けた状態である。
このようにして、自己拡張ステント93が保護ステント43を介して塞栓狭窄患部64の内壁を押し付けることで、血管60の塞栓狭窄患部64を安定して拡張した状態とでき、血液の流れを良くすることができる。
血液の流れから見て、塞栓狭窄患部64の拡張が不十分と考えられるときは、自己拡張ステントカテーテルシステム80を一旦回収し、再度バルーンカテーテルシステム50を用いて、さらに塞栓狭窄患部を拡張することができる。この場合でも、自己拡張ステントの形状記憶している外径は、血管60の正常な内径DAよりも大きく、また、保護ステントの形状記憶している外径は、血管60の正常な内径DAよりも大きいので、いずれも、さらに拡張された塞栓狭窄患部の形状に追従し、血管60の内壁をしっかりと保護し、また、押さえつけることができる。
このようにして、血液の流れが十分に改善された状態まで、塞栓狭窄患部が拡張され、その拡張された塞栓狭窄患部の内壁を、自己拡張ステントが保護ステントを介して押しつける状態とされると、自己拡張ステントカテーテルシステム80が回収される。具体的には、まず自己拡張ステント用マイクロカテーテル部82がガイディングカテーテル100を通って患者8の体外に回収され(S38)、これと前後してガイドワイヤ部20がガイディングカテーテル100を通って患者8の体外に回収される(S40)。
その途中の様子が図16に示されている。ここでは、最終的に塞栓狭窄患部が拡張され
た結果として、最も狭い内径がDN3として示されている。ここで、保護ステントも自己拡張ステントも、それぞれの弾性によって追従するが、その状態が、保護ステント45、自己拡張ステント95として示されている。なお、図16は、図6、図11と同様に、血管60の中心軸に対し、上半分が自己拡張ステント95の外観図、下半分が保護ステント45と自己拡張ステント95の断面図が示されている。
再び図12に戻り、ガイディングカテーテル100が患者8の体外に回収され(S42)、これによって、血管60における一連の塞栓狭窄患部に対する処置が終了する。