(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態1における、行動判定システム、行動判定装置、行動判定方法及びプログラムについて、図1〜図6を参照しながら説明する。最初に、図1を用いて、本実施の形態1における行動判定システム5及び行動判定装置3の構成について説明する。図1は、本発明の実施の形態1における行動判定システム及び行動判定装置の構成を示すブロック図である。
図1に示すように、本実施の形態1における行動判定システムは、対象の行動に応じて時系列データを出力するセンサ1と、対象の行動が予め想定された複数の行動のいずれに該当するかを判定する行動判定装置3とを備えている。本実施の形態1では、対象は、人である。また、予め、「止まる」、「歩く」、「走る」の3つの行動が予め想定されている。なお、対象は、人の他、イヌ、ネコ等のペットであっても良い。予め想定された行動(以下「想定行動」という。)は、上記3つ以外の行動であっても良い。
また、行動判定装置3は、時間窓切出部31と、特徴量算出部33と、個別行動評価部34と、全体行動評価部36とを備えている。このうち、時間窓切出部31は、想定行動毎に予め設定された時間窓を用いて、センサ1が出力した時系列データから、想定行動毎に、設定された時間窓でのデータの切出しを実行する。
特徴量算出部33は、想定行動毎に、時間窓切出部31によって切出されたデータ(以下、上述したように「時間窓データ」とする。)に基づいて、行動評価の指標となる特徴量を算出する。特徴量の具体例については後述する。
また、個別行動評価部34は、特徴量算出部33によって算出された特徴量に基づいて、想定行動毎に、対象の行動に該当する可能性を示す評価値を算出する。このとき、個別行動評価部34は、各想定行動が対象(人)の行動に該当する可能性と特徴量との関係を用いて、評価値を算出する。更に、この関係は、予め規定されており、具体例については後述する。全体行動評価部36は、個別行動評価部34が算出した評価値に基づいて、対象(人)の行動が想定行動のいずれに該当するかを判定する。
このように、行動判定装置3では、想定行動毎に、時系列データを切出すための時間窓が用意されている。そして、想定行動毎に、用意された時間窓を用いて、時系列データの切出し、特徴量の算出が行われる。つまり、行動判定装置3では、一つの時系列データから、時間窓の大きさを変えて、複数の特徴量が求められる。このため、行動判定装置3によれば、各特徴量から、想定行動毎に、当該行動が対象の行動にどの程度近いかを評価でき、高精度な行動判定を行うことが可能になる。
ここで、本実施の形態1における行動判定システム5及び行動判定装置3の構成について、図1に加えて、図2〜図6を用いて更に具体的に説明する。本実施の形態1では、図1に示
すように、センサ1は、計測装置6に備えられている。また、計測装置6は、センサ1に加えてデータ取得部2を備えている。
本実施の形態1において、センサ1は、例えば、「歩く」、「走る」等の人の行動(人物行動)に関する情報を計測するためのセンサである。センサ1は、人物行動に関する情報を計測すると、得られた情報を連続的に又は定期的に時系列データとして出力する。また、センサ1は、人が携帯可能であるのが好ましく、具体的には、加速度センサ、角速度センサ等が挙げられる。以降の説明では、センサ1として加速度センサが用いられているとする。
データ取得部2は、センサ1から出力された時系列データを取得し、取得した時系列データを行動判定装置3に送信する。データ取得部2は、行動判定装置3と通信する機能を備えている。また、このようなセンサ1及びデータ取得部2を備える計測装置6の具体例としては、加速度センサを内蔵した携帯電話、PDA、携帯型ゲーム装置等の端末装置が挙げられる。以降の説明では、計測装置6として携帯電話が用いられているとする。
また、データ取得部2から行動判定装置3への時系列データの送信の態様は特に限定されるものではない。例えば、データ取得部2は、センサ1から与えられた時系列データを、即時的に行動判定装置3へと送信しても良いし、一定時間分の時系列データを一時的に記憶し、記憶した時系列データを行動判定装置3に送信しても良い。後者の場合、データ取得部2は、メモリ等の記憶装置を備えており、記憶されている時系列データは、送信と同時に消去される。更に、データ取得部2は、記録装置を備えている場合、センサ1から与えられた時系列データを全て記憶しても良い。全て記憶する場合は、データ取得部2は、個別行動評価部34及び全体行動評価部36によって処理が行われる場合にのみ、時系列データを行動判定装置3に送信することができる。
本実施の形態1において、行動判定装置3は、時間窓切出部31、特徴量算出部33、個別行動評価部34、及び全体行動評価部36に加えて、時間窓切出ルール記憶部32と、個別行動評価ルール記憶部35とを更に備えている。行動判定装置3は、例えば、サーバコンピュータ等のコンピュータによって実現される。この場合、コンピュータ上で、後述する本実施の形態1におけるプログラムが実行される。
時間窓切出部31は、本実施の形態1では、予め作成されているルールを用いて、データ取得部2が送信した時系列データから、設定された時間窓での時間窓データの切出しを行っている。ルール(以下「時間窓切出ルール」とする。)は、想定行動毎の適切な長さの時間窓を規定している。時間窓切出ルール記憶部32には、時間窓切出ルールが記憶されている。
また、本実施の形態1において、時間窓の長さは、想定行動毎に、事前に実験を実施し、その結果に基づいて設定される。図2には、記憶されている、行動毎の時間窓長さの例が示されている。図2は、実施の形態1において用いられる、想定行動毎に設定された時間窓の一例を示す図である。
更に、本実施の形態1において、時間窓切出部31による時間窓データの切出し方は特に限定されるものではない。ここで、時間窓切出部31が、ある特定の時刻において時間窓データを切出すときに、例えば、時間窓を長さ1秒に設定して切出す場合を考える。この場合、時間窓切出部31は、ある時刻を中心として、前後0.5秒ずつのデータを切出して、長さ1秒の時間窓データを切出しても良いし、ある時刻を時間窓の終端として、過去1秒分のデータを切出して、長さ1秒の時間窓を切出しても良い。このような時間窓データの切出し方は、後述する他の実施の形態についても同様である。
また、時間窓切出部31は、想定行動毎に時間窓データを切り出すと、切出した時間窓データを、各想定行動の種類に関する情報と共に、時間窓データのセットとして、特徴量算出部33に出力する。
特徴量算出部33は、上述したように、想定行動毎に、時間窓切出し部31から出力される時間窓データを用いて、行動評価の指標となる特徴量を算出する。特徴量としては、センサ1が加速度センサであり、想定行動が「止まる」、「歩く」、「走る」であれば、例えば、平均値及び分散値といった統計量、その他、FFTパワースペクトル等が挙げられる。特徴量算出部33は、想定行動毎に特徴量を算出すると、算出した特徴量を、各想定行動の種類に関する情報と共に、これらをデータセットとして、個別行動評価部34に出力する。
個別行動評価部34は、特徴量算出部33から出力された特徴量を用いて、各想定行動が、実際の人物行動にどの程度近いかを評価する。例えば、判定対象となっている行動が、「止まる」、「歩く」、「走る」の3つであったとき、各想定行動が実際の人物行動にどの程度近いかが、与えられた特徴量を用いて評価される。
具体的には、個別行動評価部34は、各特徴量を、予め作成されているルールに当てはめて、想定行動毎に、上述した評価値を算出する。また、個別行動評価部34は、想定行動毎に算出された評価値を、各想定行動の種類に関する情報と共に、全体行動評価部36に出力する。
ルール(以下「個別行動評価ルール」とする。)は、上述した各想定行動が対象の行動(人物行動)に該当する可能性と特徴量との関係を規定している。このルールから、特徴量がどの程度であるときに、当該行動が人物行動に該当する可能性がどの程度であるのかが、即ち、各想定行動が、実際の人物行動にどの程度近いのかが把握可能となる。また、個別行動評価ルールは、個別行動評価ルール記憶部35に記憶されている。
図3〜図5を用いて、例えば、「止まる」、「歩く」、及び「走る」が行動として想定されている場合における、これらの行動を評価するための個別行動評価ルールの例を説明する。図3は、「止まる」を評価するための個別行動評価ルールの一例を示す図である。図4は、「歩く」を評価するための個別行動評価ルールの一例を示す図である。図5は、「走る」を評価するための個別行動評価ルールの一例を示す図である。
図3、図4及び図5の例では、各個別行動評価ルールは、時間窓毎に得られた特徴量の値を用いて、各想定行動と、実際の人物行動とが、どの程度近いかを、0から1までの値で評価する関数(評価関数)で表している。また、各評価関数では、特徴量の値(横軸の値)に対応する、行動の近さを表す値(縦軸の値)が、1に近い程、当該行動が人物行動に該当する可能性が高くなり、0に近い程、当該行動が人物行動に該当する可能性が低くなる。更に、図3、図4及び図5の例では、特徴量は、加速度分散値である。
ここで、図3、図4及び図5を用いて、特徴量からの評価値の算出について説明する。例えば、いま「歩く」についての時間窓から得られた加速度分散値の値が約20000[mG2]であったとする。図4に示された評価関数を用いると、実際の人物行動と「歩く」との近さを表す評価値は、約0.90程度となる。個別行動評価部34は、このようにして行動毎に算出した評価値を、各想定行動の種類に関する情報と共に、全体行動評価部36に出力する。
全体行動評価部36は、個別行動評価部34から出力された、各想定行動についての評価結果を用いて、上述したように、実際の人物行動がいずれであるかを判定する。本実施の形態1では、全体行動評価部36は、評価値を、各想定行動間で比較して、対象の行動が想定
行動のいずれに該当するかを判定する。
例えば、個別行動評価部34から出力された評価結果が、図3、図4及び図5に示された個別行動評価ルールに基づいて得られた、0から1の間の評価値であったとする。この場合、全体行動評価部36は、各想定行動について得られた評価値の大小関係を比較して、評価値の大きい想定行動を判定結果とするルールを採用して評価を行う。具体的には、個別行動評価部34から与えられた評価値が、それぞれ、「止まる」0.1、「歩く」0.9、「走る」0.4であったとする。この場合、全体行動評価部36は、評価値が最も高い「歩く」が、実際の人物行動であると判定し、判定結果を、外部の出力装置4に出力する。
出力装置4は、全体行動評価部36が出力した判定結果を、表示画面等に出力する装置である。出力装置4の具体例としては、文字又は画像によって判定結果を表示可能な装置、例えば、ディスプレイ装置が挙げられる。また、ディスプレイ装置は、計測装置6に備えられていても良く、例えば、計測装置6が、人物によって携帯される携帯電話等の端末装置である場合は、出力装置4は、この携帯端末のディスプレイ装置であっても良い。また、出力装置4は、有線又は無線によって、外部のコンピュータ又は記憶装置といった機器に、判定結果を送信する装置であっても良い。
次に、本実施の形態1を実現するための物理的な構成について説明する。本実施の形態1では、上述したように、センサ1とデータ取得部2とを備える計測装置6は、人物が携帯する携帯電話によって実現できる。また、行動判定装置3は、携帯電話と通信して行動判定を実行するサーバコンピュータによって実現できる。そして、このような場合、出力装置4としては、計測装置6を実現する携帯電話のディスプレイ装置を用いることができ、携帯電話の表示画面に、人物の行動判定の結果が表示される。
その他の物理的構成としては、例えば、センサ1、データ取得部2、行動判定装置3、及び出力装置4が、全て携帯電話等の端末装置に備えられている構成が挙げられる。また、センサ1、データ取得部2、行動判定装置3、及び出力装置4を全て備える装置は、携帯電話等の端末装置に限定されず、例えば、人物の行動を取得又は監視するために特定の場所に設置されたセンサ装置(監視装置)であっても良い。
更に、センサ装置が、行動判定装置3以外の、センサ1、及びデータ取得部2を備え、行動判定装置3はセンサ装置から離れた場所に設置された態様であっても良い。この態様では、データ取得部2は、有線又は無線による通信機能を備え、取得した時系列データを、外部の行動判定装置3に送信する。
また、他に考えられる物理的構成としては、例えば、計測装置6が、人物によって携帯可能に形成され、センサ1と、記憶装置(図示せず)とを備え、そして、行動判定装置3がデータ取得部2を備えた構成も挙げられる。この物理的構成では、センサ1が出力した時系列データは、全て記憶装置に記憶される。そして、行動判定装置3は、例えば、パーソナルコンピュータで実現でき、計測装置6と接続されると、記憶装置に記憶されている時系列データを取得する。また、行動判定装置3を実現するパーソナルコンピュータは、ディスプレイ装置(出力装置4)の表示画面に、判定結果等を表示する。なお、上述した全ての物理的構成は、後述する本発明の他の実施の形態についても適用できる。
次に、本発明の実施の形態1における行動判定装置3の動作について図6を用いて説明する。図6は、本発明の実施の形態1における行動判定装置の動作を示す流れ図である。以下の説明においては、適宜図1〜図5を参酌する。また、本実施の形態1では、行動判定装置3を動作させることによって、行動判定方法が実施される。よって、本実施の形態1における行動判定方法の説明は、以下の行動判定装置3の動作説明に代える。
また、以降の動作の説明においても、上述したように、人物行動に関する情報を取得するためのセンサ1として、加速度センサが用いられ、更に、センサ1は、携帯電話に備えられているとする。また、この携帯電話を所持する人物の行動を判定する行動判定装置3は、サーバコンピュータによって実現されているとする。
先ず、行動判定装置3での処理が開始される前に、センサ1が、人物行動に関する情報に応じた時系列データを、データ取得部2に出力する。データ取得部2は、時系列データを取得し、これを行動判定装置3に送信する。上述したように、センサ1は加速度センサであり、携帯電話に備えられているため、加速度を示す時系列データ(加速度時系列データ)が、携帯電話の通信機能によって、行動判定装置3であるサーバコンピュータへと送信される。これにより、行動判定装置3は、加速度時系列データを受信する(ステップA1)。
次に、時間窓切出部31は、時間窓切出ルールを用いて、ステップA1で受信された加速度時系列データから、「止まる」、「歩く」、及び「走る」といった想定行動毎に、それぞれについて設定された時間窓でのデータの切出しを実行する(ステップA2)。ステップA2によって得られた、想定行動毎の時間窓データは、各想定行動の種類に関する情報と共に、時間窓データのセットとして、特徴量算出部33に出力される。
また、本実施の形態1では、既に図2〜図5を用いて示したように、「止まる」、「歩く」、「走る」の3つの行動が予め想定され、時間窓切出ルールは図2に示す時間窓を規定している。従って、ステップA2では、時間窓切出部31は、例えば図2に示したように、「止まる」についての時間窓を2秒、「歩く」についての時間窓を1秒、「走る」についての時間窓を0.3秒として、時間窓データの切出しを実行している。なお、これらの時間窓は、事前に実行された実験等の結果に基づいて、適切な長さに設定される。
次に、特徴量算出部33は、時間窓切出部31から出力された想定行動毎の時間窓データを用いて、想定行動毎に、行動評価の指標となる特徴量を算出する(ステップA3)。ステップA3における特徴量としては、上述したように、例えば、平均値及び分散値といった統計量、その他、FFTパワースペクトル等が挙げられる。
ここで、ステップA3において、特徴量算出部33が、特徴量として分散値を算出するとする。この場合、例えば、「止まる」についての時間窓データから算出された分散値が16592[mG2]となり、「歩く」についての時間窓データから算出された分散値が19719[mG2]となり、「走る」についての時間窓データから算出された分散値が118[mG2]となる。また、ステップA3において、想定行動毎に算出された特徴量は、各想定行動の種類に関する情報と共に、データセットとして、個別行動評価部34に出力される。
次に、個別行動評価部34は、個別行動評価ルール記憶部35にアクセスして、個別行動評価ルールを取得し、ステップA3で算出された特徴量を、個別行動評価ルールに当てはめて、想定行動毎の評価値を算出する(ステップA4)。ステップA4で用いられる個別行動評価ルールとしては、上述の図3〜図5に示したルールが挙げられる。
例えば、特徴量としての加速度分散値が、ステップA3で述べた値であるとする。この場合、「止まる」について算出された加速度分散値からは、図3に示す個別行動評価ルールを用いて、評価値は0.00と算出される。また、「歩く」について算出された加速度分散値からは、図4に示す個別行動評価ルールを用いて、評価値は0.89と算出される。更に、「走る」について算出された加速度分散値からは、図5に示す個別行動評価ルールを用いて、評価値は0.00と算出される。算出された評価値は、各想定行動の種類に関する情報と共に、データセットとして、全体行動評価部36に出力される。
なお、ステップA2〜A4それぞれでは、想定行動毎の処理が並行して行われ、ステップA4の実行後は、全ての想定行動の評価値が算出済みとなるが、本実施の形態1はこの態様には限定されない。本実施の形態1は、例えば、想定行動毎に、ステップA2〜A4が実行され、その後、全ての想定行動について評価値が算出されているかどうかが判定される態様であっても良い。
次に、全体行動評価部36は、個別行動評価部34から出力された評価値を用いて、判定対象となる人物の行動を判定する(ステップA5)。ここで、本実施の形態1においては、全体行動評価部36は、想定行動毎の評価値のうち、最も評価値の値が大きい想定行動を判定結果として選択する、というルールを採用しているとする。例えば、上記のステップA4の具体例で示したように、「止まる」の評価値が0.00、「歩く」の評価値が0.89、「走る」の評価値が0.00であった場合、全体行動評価部36は実際の人物行動として「歩く」を選択し、これを判定結果とする。また、全体行動評価部36は、判定結果を、出力装置4に出力する。
次に、出力装置4は、全体行動評価部36から出力された判定結果を受け取り、これを、外部に出力する(ステップA6)。例えば、出力装置4が、計測装置6を構成する携帯電話のディスプレイ装置である場合は、判定結果を、文字情報又は画像情報によって表示画面に表示する。また、出力装置4が通信機能を備えた装置である場合は、外部のコンピュータ又は記憶装置といった機器に、判定結果を送信する。ステップA6の実行後、行動判定装置3における処理は終了する。
本実施の形態1において、上述のステップA1〜A6は、例えば、1秒間に1回といったように、決められた間隔で繰り返し実行される。そして、実行の度に、新しく得られた判定結果が、携帯電話のディスプレイ装置等に逐次表示される。このとき、同時に、過去の履歴等が表示されても良い。
また、本実施の形態1におけるプログラムは、コンピュータに、図6に示すステップA1〜A6を実行させるプログラムであれば良い。このプログラムをコンピュータにインストールし、実行することによって、本実施の形態1における行動判定装置3と行動判定方法とを実現することができる。この場合、コンピュータのCPU(Central Processing Unit)は、時間窓切出部31、特徴量算出部33、個別行動評価部34、及び全体行動評価部36として機能し、処理を行なう。
また、本実施の形態1では、時間窓切出ルール記憶部32、及び個別行動評価ルール記憶部35は、ハードディスク等の記憶装置に、これらを構成するデータファイルを格納することによって実現できる。更に、記憶装置は、本実施の形態1におけるプログラムがインストールされたコンピュータに備えられた記憶装置であっても良いし、ネットワーク等によって接続された別のコンピュータに備えられた記憶装置であっても良い。
ここで、上述した本実施の形態1による効果について説明する。通常、判定対象となる人物行動の周期に対して不適切に短い時間窓が用いられると、一般に人物行動の判定精度は低くなる。逆に、あまりに長い幅の時間窓が用いられると、時間窓内で実際の人物行動が変化した場合、変化前の行動と変化後の行動との両方のデータを含む時間窓を用いて判定が行われることとなり、誤判定となる可能性が高くなる。従って、想定行動毎に、1周期以上の行動データが含まれ、かつ不必要に長い時間窓とならない程度の、適切な長さの時間窓を設定する必要がある。
よって、判定対象となる人物行動の周期に対して適切な時間窓を特定すべく、本実施の
形態1では、複数の想定行動それぞれ毎に、各想定行動の周期性が考慮された適切な長さの時間窓が設定される。そして、各時間窓によって、時系列データが切出され、更に、切出された時系列データそれぞれが用いられて、人物行動に最も近い想定行動が判定される。また、この判定では、言いかえると、各想定行動に対して設定された時間窓のうち、人物行動の周期に対して適切となる時間窓がいずれであるかが判定されている。このため、本実施の形態1によれば、ある行動を判定するのに用いる時間窓の長さが不適切に長すぎたり短すぎたりする影響で、判定精度が低下するのを防ぐことができる。
また、上述の本実施の形態1では、例として、全ての特徴量に分散値が用いられた態様が示されているが、本実施の形態1は、これに限定されるものではない。例えば、本実施の形態1では、想定行動毎に算出される特徴量の種類が変更されても良いし、一つの想定行動に対して、複数種類の異なる特徴量が算出されても良い。
(実施の形態2)
次に本発明の実施の形態2における、行動判定システム、行動判定装置、行動判定方法及びプログラムについて、図7〜図9を参照しながら説明する。最初に、図7及び図8を用いて、本実施の形態2における行動判定システム10及び行動判定装置11の構成について説明する。図7は、本発明の実施の形態2における行動判定システム及び行動判定装置の構成を示すブロック図である。図8は、実施の形態2において用いられる、想定される行動毎に設定された時間窓の一例を示す図である。
図7に示すように、本実施の形態2においては、行動判定装置11は、図1に示した実施の形態1における行動判定装置3と異なり、時間窓切出部31の代わりに、時間窓切出部311を備えている。これ以外については、行動判定装置11は、行動判定装置3と同様に構成されている。また、本実施の形態2における行動判定システム10は、行動判定装置3の代わりに、行動判定装置11を備えている点を除き、実施の形態1における行動判定システム1と同様に構成されえいる。
上述したように、実施の形態1では、時間窓切出部31は、想定行動毎に1つずつ設定された時間窓を用いて、時系列データの切出しを行っている。これに対して、本実施の形態2においては、複数の想定行動のうち全部又は一部について、複数の時間窓が設定されている。そして、時間窓切出部311は、複数の時間窓が設定されている想定行動については、複数の時間窓それぞれ毎に、時系列データの切出しを実行する。つまり、本実施の形態2においては、一つの想定行動について、時間窓の大きさが異なる複数の時間窓データが生成される。なお、以降の説明及び図7においては、時間窓切出部311と時間窓切出部31とを区別するため、時間窓切出部311を「複数時間窓切出部311」と称する。
ここで、各想定行動が、実施の形態1と同様に、例えば、「止まる」、「歩く」、「走る」の3つであったとする。このとき、本実施の形態2においては、想定行動毎の時間幅を規定する時間窓切出ルールとしては、図8に示すルールが挙げられる。本実施の形態2においても、時間窓切出ルールは、時間窓切出ルール記憶部32に、記憶されている。図8は、実施の形態2において用いられる、想定される行動毎に設定された時間窓の一例を示す図である。
図8に示すように、本実施の形態2では、例えば「止まる」に対して3つの時間窓が設定されている。具体的には、「止まる」について、各時間窓の長さは、それぞれ1秒、2秒、5秒に設定されている。また、これらの時間窓も、実施の形態1と同様に、事前に実験を実施し、その結果に基づいて設定されている。更に、「歩く」及び「走る」それぞれに対しても同様に3つの時間窓が設定されている。具体的には、「歩く」について、各時間窓の長さは、それぞれ0.5秒、1秒、2秒に設定されている。「走る」について、各時間窓の長
さは、それぞれ0.3秒、0.5秒、1秒に設定されている。
次に、本発明の実施の形態2における行動判定装置11の動作について図9を用いて説明する。図9は、本発明の実施の形態2における行動判定装置の動作を示す流れ図である。以下の説明においては、適宜図7及び図8を参酌する。また、本実施の形態2でも、行動判定装置11を動作させることによって、行動判定方法が実施される。よって、本実施の形態2における行動判定方法の説明は、以下の行動判定装置11の動作説明に代える。
また、本実施の形態2においても、実施の形態1と同様に、以降の動作の説明において、人物行動に関する情報を取得するためのセンサ1として、加速度センサが用いられ、更に、センサ1は、携帯電話に備えられているとする。また、この携帯電話を所持する人物の行動を判定する行動判定装置11は、サーバコンピュータによって実現されているとする。
先ず、行動判定装置11での処理が開始される前に、センサ1が時系列データを出力し、データ取得部2が時系列データを取得して、これを行動判定装置3に送信する。これにより、行動判定装置11は、時系列データを受信する(ステップB1)。ステップB1は、図6に示したステップA1と同様のステップである。
次に、複数時間窓切出部311は、時間窓切出ルールを用いて、ステップB1で受信された加速度時系列データから、「止まる」、「歩く」、及び「走る」といった各想定行動について、それぞれについて設定された複数の時間窓での時系列データの切出しを実行する(ステップB2)。ステップB2によって得られた、想定行動毎の複数の時間窓データは、各想定行動の種類に関する情報と共に、時間窓データのセットとして、特徴量算出部33に出力される。
具体的には、上述したように、本実施の形態2においては、図8に示したように、3つの想定行動それぞれに対して3つの時間窓が設定されているので、ステップB2では、合計9つの時間窓データが生成される。
次に、特徴量算出部33は、複数時間窓切出部311から出力された各時間窓データを用いて、想定行動毎及び時間窓毎に、行動評価の指標となる特徴量を算出し、その結果を行動評価部34に出力する(ステップB3)。ステップB3における特徴量としても、実施の形態1と同様に、例えば、平均値及び分散値といった統計量、その他、FFTパワースペクトル等が挙げられる。
ここで、ステップB3において、特徴量算出部33が、特徴量として加速度分散値を算出するとする。この場合、例えば、「止まる」について設定された3つの時間窓データ(図8参照)から、加速度分散値として、19719[mG2]、16593[mG2]、及び12291[mG2]が算出されたとする。
同様に、「歩く」について設定された3つの時間窓データ(図8参照)から、加速度分散値として、12836[mG2]、19719[mG2]、及び16592[mG2]が算出されたとする。更に、「走る」について設定された3つの時間窓データ(図8参照)から、加速度分散値として、118[mG2]、12836[mG2]、及び19719[mG2]が算出されたとする。算出された各特徴量は、各想定行動の種類に関する情報と共に、データセットとして、個別行動評価部34に出力される。
次に、個別行動評価部34は、個別行動評価ルール記憶部35にアクセスして、個別行動評価ルールを取得し、ステップB3で算出された特徴量を、個別行動評価ルールに当てはめて、想定行動毎及び時間窓毎に評価値を算出する(ステップB4)。ステップB4で用いられる個別行動評価ルールとしては、本実施の形態2においても、実施の形態1において図3〜図5
に示したルールが挙げられる。
ここで、特徴量算出部33から出力された加速度分散値の値が、ステップB3で述べた値であるとする。この場合、「止まる」について算出された各加速度分散値からは、図3に示す個別行動評価ルールを用いて、評価値は、それぞれ0.00、0.00、0.00と算出される。同様に「歩く」について算出された各加速度分散値からは、図4に示す個別行動評価ルールを用いて、評価値は、それぞれ0.97、0.89、0.92と算出される。更に、「走る」について算出された各加速度分散値からは、図5に示す個別行動評価ルールを用いて、評価値は、それぞれ0.00、0.12、0.19と算出される。算出された評価値は、各想定行動の種類に関する情報と共に、データセットとして、全体行動評価部36に出力される。
なお、本実施の形態2においても、実施の形態1と同様に、ステップB2〜B4それぞれでは、想定行動毎の処理が並行して行われ、ステップB4の実行後は、全ての想定行動の評価値が算出済みとなるが、本実施の形態2も、この態様には限定されない。本実施の形態2は、例えば、想定行動毎に、ステップB2〜B4が実行され、その後、全ての想定行動について全評価値が算出されているかどうかが判定される態様であっても良い。
次に、全体行動評価部36は、個別行動評価部34から出力された評価値を用いて、判定対象となる人物の行動を判定する(ステップB5)。ここで、本実施の形態2においては、全体行動評価部36は、想定行動毎に各評価値の和を求めたときに、和の値が最も大きくなる想定行動を判定結果として選択する、というルールを採用しているとする。
例えば、各評価値の値が上記のステップB4の具体例で示した通りであったとすると、「止まる」についての評価値の和は、0.00(= 0.00+0.00+0.00)と算出される。同様に、「歩く」についての評価値の和は、2.78(= 0.97+0.89+0.92)と算出され、「走る」についての評価値の和は、0.31(= 0.00+0.12+0.19)=0.31と算出される。このうち、最も大きい値を示しているのは「歩く」についての評価値なので、全体行動評価部36は、実際の人物行動として「歩く」を選択し、これを判定結果とする。また、全体行動評価部36は、判定結果を、出力装置4に出力する。
その後、出力装置4は、全体行動評価部36から出力された判定結果を受け取り、これを、外部に出力する(ステップB6)。なお、ステップB6は、実施の形態1において図6に示したステップA6と同様に実行される。ステップB6の実行後、行動判定装置11における処理は終了する。また、本実施の形態2においても、上述のステップB1〜B6は、実施の形態1の場合と同様に、決められた間隔で繰り返し実行される。
また、本実施の形態2におけるプログラムは、コンピュータに、図9に示すステップB1〜B6を実行させるプログラムであれば良い。このプログラムをコンピュータにインストールし、実行することによって、本実施の形態2における行動判定装置11と行動判定方法とを実現することができる。この場合、コンピュータのCPU(Central Processing Unit)は、複数時間窓切出部311、特徴量算出部33、個別行動評価部34、及び全体行動評価部36として機能し、処理を行なう。
また、本実施の形態2でも、時間窓切出ルール記憶部32、及び個別行動評価ルール記憶部35は、ハードディスク等の記憶装置に、これらを構成するデータファイルを格納することによって実現できる。更に、記憶装置は、本実施の形態2におけるプログラムがインストールされたコンピュータに備えられた記憶装置であっても良いし、ネットワーク等によって接続された別のコンピュータに備えられた記憶装置であっても良い。
ここで、上述した本実施の形態2による効果について説明する。実施の形態1においては
、想定行動毎に、それぞれの行動の周期性を考慮した長さの時間窓は、1つずつ設定されている。これに対して、本実施の形態2においては、想定行動毎に、複数の異なる長さの時間窓が設定されており、より多くの時間窓を用いて、実際の人物行動がどの想定行動に近いかが評価される。このため、実施の形態2によれば、判定対象となる人物行動が、行動の周期性からみて、適切な時間窓長さを一意的に決定できない行動である場合、又は行動の周期性に揺らぎが存在する場合であっても、判定精度が低下することを防ぐことができる。
また、上述した本実施の形態2では、「止まる」、「歩く」、「走る」それぞれに対して、時間窓が3つ設定されている例が挙げられているが、本実施の形態2は、これに限定されるものではない。つまり、本実施の形態2においては、各想定行動に対して設定される時間窓の数は3に限定されず、更に、全て同じである必要はなく、それぞれ異なっていても良い。
また、想定行動毎に設定される時間窓の数が異なる場合は、全体行動評価部36は、例えば、時間窓毎に算出された評価値の和に対して、用いられた時間窓の数で除算等を行い、正規化を行うのが良い。これにより、全体行動評価部36は、想定行動毎に設定されている時間窓の数が異なっても、想定行動間の比較を容易に行うことができるようになる。
また、上述の実施の形態2においても、例として、全ての特徴量に分散値が用いられた態様が示されているが、本実施の形態2も、実施の形態1と同様にこれに限定されるものではない。例えば、本実施の形態2でも、想定行動毎に算出される特徴量の種類が変更されても良いし、一つの想定行動に対して、複数の種類の異なる特徴量が算出されても良い。また、本実施の形態2では、想定行動について設定された時間窓1つにつき、複数の種類の異なる特徴量が算出されても良い。
更に、上述の実施の形態2では、個別行動評価ルールとして、図3、図4及び図5に示すルールが用いられる例、即ち、想定行動が同じである場合は、各時間窓から算出された特徴量全てに対して共通の個別行動評価ルールが適用される例が示されている。但し、本実施の形態2は、この例に限定されず、想定行動が同じであるにも関わらず、時間窓毎に異なる個別行動評価ルールが適用されている態様であっても良い。
(実施の形態3)
次に本発明の実施の形態3における、行動判定システム、行動判定装置、行動判定方法及びプログラムについて、図10〜図12を参照しながら説明する。最初に、図10を用いて、本実施の形態3における行動判定システム12及び行動判定装置13の構成について説明する。図10は、本発明の実施の形態3における行動判定システム及び行動判定装置の構成を示すブロック図である。
図10に示すように、本実施の形態3においては、行動判定装置13は、時間窓切出部31及び全体行動評価部36における処理の点で、図1に示した実施の形態1における行動判定装置3と異なっている。本実施の形態3では、時間窓切出部31は、全体行動評価部36からの情報のフィードバックを受けている。以下、各部について説明する。
時間窓切出部31は、実施の形態1では、全ての想定行動について、一度に時間窓データの切出しを行っている。これに対して、本実施の形態3では、時間窓切出部31は、先ず、複数の想定行動のうち、ある特定の1つの想定行動についてのみ時間窓データの切出しを行う。但し、本実施の形態3においても、時間窓の長さは、時間窓切出ルール(図2参照)によって規定されている。また、時間窓切出ルールは、時間窓切出ルール記憶部32に記憶されている。
具体的には、本実施の形態3においても、想定行動が、例えば、「止まる」、「歩く」、「走る」の3つであるとする。時間窓の長さは、想定行動毎に事前に行われた実験の結果等に基づいて、予め設定される。例えば、図2に示すように、「止まる」についての時間窓の長さは2秒、「歩く」についての時間窓の長さは1秒、「走る」についての時間窓の長さは0.3秒、といったように、想定行動毎に予め設定されている。
そして、時間窓切出部31が、データ取得部2から時系列データを受信したときに、複数の想定行動のうち、例えば「止まる」についてのみ時間窓データの切出しを行い、得られた時間窓データを、想定行動の種類に関する情報と共に、特徴量算出部33に送信したとする。この場合、対象となった想定行動について、特徴量算出部33による特徴量の算出が行われ、その後、この特徴量に基づいて、個別行動評価部34による評価値の算出が行われる。
特徴量算出部33は、実施の形態1と同様に、時間窓切出部31から出力された時間窓データを用いて、行動評価の指標となる特徴量を算出する。特徴量の具体例としても、実施の形態1と同様に、例えば、平均値及び分散値といった統計量、FFTパワースペクトル等が挙げられる。算出された特徴量は、各想定行動の種類に関する情報と共に、データセットとして、個別行動評価部34へと出力される。
個別行動評価部34も、実施の形態1と同様に、特徴量算出部33から出力された特徴量を用いて、時間窓データの切出しが行われた想定行動が、実際の人物行動にどの程度近いかを示す評価値を算出する。また、個別行動評価部34は、算出した評価値を全体行動評価部36に出力する。
具体的には、時間窓切出部31についての説明で述べたように、想定行動が、「止まる」、「歩く」、「走る」の3つであり、このうち「止まる」について時間窓データの切出し、特徴量の算出が行われていたとする。この場合、個別行動評価部34は、「止まる」についての特徴量を用いて、評価値を算出する。
ここで、個別行動評価部34に対して、特徴量として加速度分散値、例えば、12291[mG2]が出力されていると、個別行動評価部34は、「止まる」についての行動評価用ルール(図3参照)を用いて、評価値を算出する。算出結果は、0.00となる。算出された評価値は、各想定行動の種類に関する情報と共に、データセットとして、全体行動評価部36へと出力される。
全体行動評価部36は、処理の対象となった1つの想定行動の評価値に基づいて判定を行うか、又は他の想定行動について評価値が算出されるように、時間窓切出部31、特徴量算出部33、及び個別行動評価部34に処理を行わせるか、を判断する。前者と判断した場合は、全体行動評価部36は、そのまま判定を行う。一方、後者と判断した場合は、全体行動評価部36は、時間窓切出部31に指示を行う。これにより、時間窓切出部31、特徴量算出部33、及び個別行動評価部34において処理が行われる。本実施の形態3では、全体行動評価部36は、上記の判断を、後述する予め決められたルール(全体行動評価ルール)に基づいて実行する。全体行動評価ルールは、事前に実施された実験の結果等に基づいて作成される。
全体行動評価ルールによる判断処理の例として、図12に示す例が挙げられる。全体行動評価ルールが、図12に示す処理を実行させるルールである場合に、上述したように、「止まる」についての評価値が0.00であるならば、全体行動評価部36は、時間窓切出部31に、他の想定行動、例えば、「歩く」についての時間窓データの切り出しを指示する。一方、
「止まる」についての評価値の値が0.8以上であるならば、全体行動評価部36は、図12に示したルールに従い、人物行動は「止まる」に相当すると判定し、出力装置4に、「止まる」という判定結果を送信する。なお、図12に示す全体行動評価ルールの具体的内容については後述する。
次に、本発明の実施の形態3における行動判定装置13の動作について図11を用いて説明する。図11は、本発明の実施の形態3における行動判定装置の動作を示す流れ図である。以下の説明においては、適宜図10を参酌する。また、本実施の形態3でも、行動判定装置13を動作させることによって、行動判定方法が実施される。よって、本実施の形態3における行動判定方法の説明は、以下の行動判定装置13の動作説明に代える。
また、本実施の形態3においても、実施の形態1と同様に、以降の動作の説明において、人物行動に関する情報を取得するためのセンサ1として、加速度センサが用いられ、更に、センサ1は、携帯電話に備えられているとする。また、この携帯電話を所持する人物の行動を判定する行動判定装置13は、サーバコンピュータによって実現されているとする。
先ず、行動判定装置13での処理が開始される前に、センサ1が時系列データを出力し、データ取得部2が時系列データを取得して、これを行動判定装置13に送信する。これにより、行動判定装置13は、時系列データを受信する(ステップC1)。ステップC1は、図6に示したステップA1と同様のステップである。
次に、時間窓切出部31は、想定行動のうち、ある特定の1つの想定行動(以下、「特定の想定行動」という。)についてのみ時間窓データの切出しを行う(ステップC2)。ステップC2では、上述したように、想定行動が、「止まる」、「歩く」、「走る」の3つであるとすると、時間窓切出部31は、図2に示した時間窓切出ルールを用いる。そして、時間窓切出部31は、特定の想定行動が、例えば、「止まる」であるならば、「止まる」についての時間窓(2秒)に基づいて、時間窓データの切出しを行う。更に、時間窓切出部31は、切出した時間窓データを、これが「止まる」についての時間窓データであることを示す情報と共に、特徴量算出部33に出力する。
次いで、特徴量算出部33は、ステップC2で切出された時間窓データを用いて、特定の想定行動についての特徴量を算出する(ステップC3)。次いで、個別行動評価部34は、ステップC3で算出した特徴量を、個別行動評価ルールに当てはめ、特定の想定行動についての評価値を算出する(ステップC4)。また、個別行動評価部34は、算出した評価値を全体行動評価部36に出力する。これらステップC3〜C4は、特定の想定行動のみを処理対象とすることを除き、図6に示したステップA3〜A4に準じて実行される。
次に、全体行動評価部36は、ステップC4で算出された特定の想定行動の評価値から、全体行動の判定を行うべきかどうかの判断を行う(ステップC5)。具体的には、全体行動評価部36は、特定の想定行動が人物行動に該当するという判定結果を出力装置4に与えるべきか、又は、再度、別の想定行動について、時間窓データの切出しから、評価値の算出までが行われるように指示を出すべきか、を判断する。また、上述したように、ステップC5における判断は、全体行動評価ルールに基づいて行われる。全体行動評価ルールについては図12を用いて説明する。
ステップC5の判断の結果、全体行動の判定を行うべきでないと判断した場合は、全体行動評価部36は、別の想定行動について、時間窓データの切出しを行うように、時間窓切出部31に指示を行う。これにより、再度ステップC2〜C4が実行される。
一方、ステップC5の判断の結果、全体行動の判定を行うべきであると判断した場合は、
全体行動評価部36は、個別行動評価部34から出力された評価値を用いて、判定対象となる人物の行動を判定する(ステップC6)。その後、出力装置4は、全体行動評価部36から出力された判定結果を受け取り、これを、外部に出力する(ステップC7)。なお、ステップC6及びC7は、それぞれ、実施の形態1において図6に示したステップA5及びA6と同様のステップである。ステップA6の実行後、行動判定装置3における処理は終了する。
ここで、図12を用いて、図11に示したステップC5における処理を具体的に説明する。図12は、本発明の実施の形態3において、行動判定装置を構成する全体行動評価部で実行される判断処理を示すフロー図である。
先ず、全体行動評価部36は、ステップC4で算出された評価値が、「止まる」についての評価値であって0.8以上であるかどうかを判定する(ステップD1)。ステップD1の判定の結果、「止まる」についての評価値であって0.8以上である場合は、全体行動評価部36は、人物行動は「止まる」であると判断する(ステップD2)。これにより、図11に示したステップC5での処理は終了し、ステップC6及びC7が実行される。
一方、ステップD1の判定の結果、「止まる」についての評価値でない場合、又、「止まる」についての評価値あっても0.8以上でない場合は、全体行動評価部36は、ステップD3を実行する。
ステップD3では、全体行動評価部36は、ステップC4で算出された評価値が、「歩く」についての評価値であって0.8以上であるかどうかを判定する。ステップD3の判定の結果、「歩く」についての評価値であって0.8以上である場合は、全体行動評価部36は、人物行動は「歩く」であると判断する(ステップD4)。この場合も、図11に示したステップC5での処理は終了し、ステップC6及びC7が実行される。
一方、ステップD3の判定の結果、「歩く」についての評価値でない場合、又、「歩く」についての評価値であっても0.8以上でない場合は、全体行動評価部36は、ステップD5を実行する。
ステップD5では、全体行動評価部36は、ステップC4で算出された評価値が、「走る」についての評価値であって0.8以上であるかどうかを判定する。ステップD5の判定の結果、「走る」についての評価値であって0.8以上である場合は、全体行動評価部36は、人物行動は「走る」であると判断する(ステップD6)。この場合も、図11に示したステップC5での処理は終了し、ステップC6及びC7が実行される。
一方、ステップD5の判定の結果、「走る」についての評価値でない場合、又、「走る」についての評価値あっても0.8以上でない場合は、全体行動評価部36は、別の想定行動について、時間窓データの切出し等が必要であると判定する。そして、全体行動評価部36は、時間窓切出部31に対して、ステップC2の実行を指示する(ステップD7)。この後、図11に示したステップC5での処理は終了するが、再度ステップC2〜C4が実行される。
例えば、実際に「止まる」について設定された時間窓を用いて、時間窓データが得られているとする。そして、これについて、特徴量として利用される分散値を求めたところ、16592[mG2]であったとする。更に、この特徴量の値を、図3に示した個別行動評価ルールに当てはめたところ、得られた評価値は0.00であったとする。すると、全体行動評価部36は、図12に示したステップに従って処理を行い、結果的に、ステップD7を実行する。この結果、全体行動評価部36は、時間窓切出部31に対して、例えば、「歩く」についての時間窓データの切出しを行うよう、指示を与える。
全体行動評価部36から、「歩く」についての時間窓データの切出しの指示が与えられた時間窓切出部31は、「止まる」についての時間窓データの切出しを行ったステップC2と同様に、「歩く」についても時間窓データの切出しを行う。このように、ステップC2〜C5は、全体行動評価部36が判定結果を決定するまで、即ち、図12に示したステップD2、D4、又はD6が実行されるまで、繰り返し実行される。
また、本実施の形態3におけるプログラムは、コンピュータに、図11に示すステップC1〜C7を実行させるプログラムであれば良い。このプログラムをコンピュータにインストールし、実行することによって、本実施の形態3における行動判定装置13と行動判定方法とを実現することができる。この場合、コンピュータのCPU(Central Processing Unit)は、時間窓切出部31、特徴量算出部33、個別行動評価部34、及び全体行動評価部36として機能し、処理を行なう。
また、本実施の形態3でも、時間窓切出ルール記憶部32、及び個別行動評価ルール記憶部35は、ハードディスク等の記憶装置に、これらを構成するデータファイルを格納することによって実現できる。更に、記憶装置は、本実施の形態3におけるプログラムがインストールされたコンピュータに備えられた記憶装置であっても良いし、ネットワーク等によって接続された別のコンピュータに備えられた記憶装置であっても良い。
ここで、上述した本実施の形態3による効果について説明する。実施の形態1においては、全ての想定行動について、時間窓データの切出しから評価値の算出までが、実行されている。これに対して、本実施の形態3においては、複数の想定行動について、1つずつ、時間窓データの切出しから評価値の算出までが実行される。
このため、本実施の形態3によれば、明らかに実際の人物行動と異なる想定行動については、評価値を算出するための処理を省くことができ、より省資源で高速な行動判定を行うことが可能となる。本実施の形態3では、特に想定行動の種類が増える程、その効果が期待できる。
また、上述した本実施の形態3では、判定対象となる各想定行動について、1つの時間窓のみが設定された例が示されているが、本実施の形態3はこの例に限定されるものではない。本実施の形態3においても、例えば、実施の形態2と同様に、各想定行動について、複数の異なる長さの時間窓が設定されていてもよい。
また、上述の実施の形態3においても、例として、全ての特徴量に分散値が用いられた態様が示されているが、本実施の形態3も、実施の形態1と同様にこれに限定されるものではない。例えば、本実施の形態3でも、想定行動毎に算出される特徴量の種類が変更されても良いし、一つの想定行動に対して、複数の種類の異なる特徴量が算出されても良い。また、本実施の形態3では、想定行動について設定された時間窓1つにつき、複数の種類の異なる特徴量が算出されても良い。
次に、本発明における実施例1について詳細に説明する。本実施例1は、実施の形態1に対応する実施例である。以下の説明においては、実施の形態1において用いた図1〜図6を適宜参酌する。
本実施例1においては、判定対象となる人物の行動が、「止まる」、「歩く」、「走る」のいずれの行動であるかが判定される。また、センサ1としては3軸加速度センサが用いられ、計測装置6として携帯電話が用いられるとする。対象となる人物が、この3軸加速度センサ内蔵の携帯電話を身に着けて行動すると、3軸加速度センサから出力された時系列
データが、携帯電話を通じて、行動判定装置3として機能する外部のサーバコンピュータに送信される。サーバコンピュータは、携帯電話から送信された時系列データを用いて、この携帯電話を装着している人物の行動を判定し、その結果を携帯電話へ返す。判定結果は、携帯電話の表示画面に表示される。
携帯電話に内蔵されたセンサ1が取得した時系列データ(以下、「加速度時系列データ」とする。)の例を、図13に示す。図13は、実施例1においてセンサから出力された時系列データの一例を示す図である。具体的には、図13は、人物が加速度センサ内蔵の携帯電話を身につけて行動した時の、5秒間の実際の加速度時系列データを示している。図13において、縦軸は、センサ1の3軸それぞれの加速度の値の二乗和から求められる平方根の値を示し、横軸は、加速度時系列データが取得された際の経過時間を示している。図13から分かるように、この人物の実際の行動は、時刻1.5秒付近までは「止まる」、それ以降は「歩く」である。
ここで、実際に得られた加速度時系列データが、図13に示すデータであり、この加速度センサデータが、携帯電話の通信機能を通じて、行動判定装置3として機能する外部のサーバコンピュータに送信されたとする。そして、加速度時系列データを受信したサーバコンピュータが、図13に示した時系列データの時刻5秒の時点で、行動判定を行うとする。このときのサーバコンピュータ(行動判定装置3)によって行われる処理について以下に述べる。
先ず、時間窓切出部31は、想定行動である「止まる」、「歩く」、「走る」の3つの行動について、予め、事前に行った実験の結果等を基に設定された、適切な長さの時間窓を用いて、加速度時系列データを切出し、時間窓データを取得する。設定された時間窓は、想定行動毎に、時間窓切出ルール記憶部32に予め記憶されている。想定行動毎の時間窓の例は、実施の形態1で述べたように図2に示されている。
図2に示すように、「止まる」についての時間窓は2秒に、「歩く」についての時間窓は1秒に、「走る」についての時間窓は0.3秒に設定されている。時間窓切出部31は、受信した加速度センサデータから、時刻5秒の時点での人物行動を判定するため、時刻5秒以前の各時間窓分のデータを切出す。即ち、時間窓切出部31は、「止まる」について、時刻3秒から時刻5秒までの2秒間のデータを切り出し、「歩く」について、時刻4秒から時刻5秒までの1秒間のデータを切り出し、「走る」について、時刻4.7秒から時刻5秒までの0.3秒間のデータを切り出す。切出された各データが時間窓データとなる。切出された各時間窓データは、「止まる」についての時間窓データ、「歩く」についての時間窓データ、というように、行動の種類に関する情報とセットにされて、特徴量算出部33へ出力される。
特徴量算出部33は、時間窓切出部31から出力された時間窓データを用いて、行動評価の指標となる特徴量として、例えば、加速度分散値を算出する。いま、時間窓データを用いて算出された加速度分散値が、「止まる」については165923[mG2]、「歩く」については19719[mG2]、「走る」については118[mG2]であったとする。このようにして得られた、各時間窓データから算出された加速度分散値は、「止まる」についての加速度分散値(165923[mG2])、「歩く」についての加速度分散値(19719[mG2])、というように、行動の種類に関する情報とセットにされて、個別行動評価部34へ出力される。
個別行動評価部34は、特徴量算出部33から出力された加速度分散値を用いて、各想定行動と、実際の人物行動とが、どの程度近いかを示す評価値を算出する。評価値を算出するための個別行動評価ルールは、例えば、事前に行われた実験の結果等を基にして、予め、個別行動評価ルール記憶部35に記憶されている。
いま、個別行動評価ルールが、実施の形態1で述べたように、図3、図4及び図5に示す評価関数で表され、評価関数は、想定行動と人物行動との近さを表す値(評価値)が1に近いほど、その想定行動が人物行動である可能性が高いことを示しているとする。ここで、実際に図3、図4および図5に示す評価関数に沿って、特徴量算出部33が出力した分散値を算出する。その結果、「止まる」についての分散値からは、評価値は0.00と、「歩く」についての分散値からは、評価値は0.89と、「走る」についての分散値からは、評価値は0.00と算出される。このようにして得られた評価値は、「止まる」についての評価値(0.00)、「歩く」についての評価値(0.89)、というように、行動の種類に関する情報とセットにされて、全体行動評価部36へ出力される。
全体行動評価部36は、与えられた評価値を用いて、実際の人物行動がいずれの想定行動に該当するかを判定する。この判定を行うためのルールが、例えば、想定行動毎の評価値のうち、最も評価値が大きい想定行動を判定結果として選択する、というルールであったとする。上述したように、実際に個別行動評価部34が出力した評価結果は、0.00、0.89、0.00であるので、全体行動評価部36は、この人物の実際の行動として、「歩く」を選択し、判定結果を人物が持つ携帯電話へ返す。
外部のサーバコンピュータから行動判定結果を与えられた携帯電話は、人物の行動を表す「歩く」という文字列を、携帯電話の表示画面に表示させる。本実施例1では、以上の動作は、例えば1秒間に1回等の、決められた間隔で繰り返し実行される、また、携帯電話の表示画面には、新しく得られた判定結果が逐次表示されても良いし、新しく得られた判定結果と過去の履歴とが一緒に表示されても良い。
次に、本発明における実施例2について詳細に説明する。本実施例2は、実施の形態2に対応する実施例である。以下の説明においては、実施の形態2において用いた図7〜図9、実施例1で用いた図13を適宜参酌する。
本実施例2においても、実施例1と同様に、判定対象となる人物の行動が、「止まる」、「歩く」、「走る」のいずれの行動であるかが判定される。また、対象となる人物が、3軸加速度センサを内蔵した携帯電話を身につけて行動し、携帯電話から送信された加速度時系列データに基づいて、行動判定装置11として機能する外部のサーバコンピュータが、人物の行動が、「止まる」、「歩く」、「走る」の3つの行動のいずれに該当するかを判定する。
ここで、実施例1と同様に、実際に得られた加速度時系列データが、図13に示すデータであり、時刻5秒の時点で、行動判定が行われるとする。このときのサーバコンピュータ(行動判定装置11)によって行われる処理について以下に述べる。
本実施例2では、先ず、複数時間窓切出部311は、携帯電話(データ取得部2)から送信された加速度時系列データから、3つの想定行動それぞれ毎に、各想定行動ついて設定された複数の時間窓を用いて、複数の時間窓データの切出しを行う。時間窓切出ルール記憶部32には、実施の形態2において述べたように、想定行動毎に、事前に実行された実験の結果等から求められた複数の適切な長さの時間窓が、予め記憶されている。想定行動毎の時間窓の例は、実施の形態2で述べたように図8に示されている。
例えば、図8に示すように、「止まる」について、各時間窓の長さは、1秒、2秒、5秒に設定されている。「歩く」について、各時間窓の長さは、それぞれ0.5秒、1秒、2秒に設定されている。「走る」について、各時間窓の長さは、それぞれ0.3秒、0.5秒、1秒に設定されている。複数時間窓切出部311は、これらの時間窓を用いて、3つの想定行動毎に、
複数の時間窓データの切出しを行う。切出された各時間窓データは、「止まる」についての時間窓データ1〜3、「歩く」についての時間窓データ1〜3、「走る」についての時間窓データ1〜3、というように、各想定行動の種類に関する情報とセットにされて、特徴量算出部33に出力される。
特徴量算出部33は、複数時間窓切出部311から出力された各時間窓データを用いて、行動評価の指標となる特徴量、例えば、加速度分散値を算出し、算出した加速度分散値を行動評価部34に出力する。時間窓が、上述のように設定されているのであれば、加速度分散値は、「止まる」について3つ算出され、それぞれ、例えば、19719[mG2]、16593[mG2]、12291[mG2]となる。同様に、「歩く」については、加速度分散値は、それぞれ、12836[mG2]、19719[mG2]、16592[mG2]となる。また、「走る」については、加速度分散値は、それぞれ、118[mG2]、12836[mG2]、19719[mG2]となる。このようにして、想定行動毎に算出された複数の分散値は、「止まる」についての加速度分散値(19719[mG2]、16593[mG2]、12291[mG2])というように、各想定行動の種類に関する情報とセットにされて、個別行動評価部34へ出力される。
個別行動評価部34は、特徴量算出部33から出力された各加速度分散値を用いて、各想定行動と、実際の人物行動とが、どの程度近いかを示す評価値を算出する。評価値を算出するための個別行動評価ルールは、実施例1と同様に、例えば事前に行われた実験の結果等を基にして、予め、個別行動評価ルール記憶部35に記憶されている。
いま、個別行動評価ルールが、実施例1と同様に、例えば図3、図4および図5に示す評価関数で表され、評価関数は、想定行動と人物行動との近さを表す値(評価値)が1に近いほど、その想定行動が人物行動である可能性が高いことを示しているとする。ここで、実際に図3、図4および図5に示す評価関数に従って、特徴量算出部33が出力した分散値を算出する。その結果、「止まる」についての各加速度分散値から、評価値として、それぞれ0.00、0.00、0.00が算出される。同様に「歩く」についての各加速度分散値から、評価値として、それぞれ0.97、0.89、0.92が算出される。また、「走る」についての各加速度分散値から、評価値として、それぞれ0.00、0.12、0.19が算出される。
このようにして得られた評価値は、「止まる」についての評価値(0.00、0.00、0.00)、「歩く」についての評価値(0.97、0.89、0.92)、「走る」についての評価値(0.00、0.12、0.19)、というように、各想定行動の種類に関する情報とセットにされて、全体行動評価部36へ出力される。
全体行動評価部36は、与えられた評価値を用いて、実際の人物行動がいずれの想定行動に該当するかを判定する。この判定を行うためのルールが、例えば、想定行動毎に、各想定行動の評価値の和を求め、想定行動毎の和が最も大きい値を示した想定行動を、判定結果として選択する、というルールであったとする。
実際に与えられた評価値の和は、「止まる」については、0.00(=0.00+0.00+0.00)となり、「歩く」については、2.78(=0.97+0.89+0.92)となり、「走る」については、0.31(=0.00+0.12+0.19)となる。このうち最も大きい値を示しているのは「歩く」についての和であるので、全体行動評価部35は、この人物の実際の行動として、「歩く」を選択し、判定結果を人物が持つ携帯電話へ返す。外部のサーバコンピュータから行動判定結果を与えられた携帯電話は、人物の行動を表す「歩く」という文字列を、携帯電話の表示画面に表示させる。
本実施例2においても、実施例1と同様に、以上の動作は、例えば1秒間に1回等の、決められた間隔で繰り返し実行される、また、携帯電話の表示画面には、新しく得られた判定
結果が逐次表示されても良いし、新しく得られた判定結果と過去の履歴とが一緒に表示されても良い。
次に、本発明における実施例3について詳細に説明する。本実施例3は、実施の形態3に対応する実施例である。以下の説明においては、実施の形態3において用いた図10〜図12、及び実施例1で用いた図13を参酌する。
本実施例3においても、実施例1と同様に、判定対象となる人物の行動が、「止まる」、「歩く」、「走る」のいずれの行動であるかが判定される。また、対象となる人物が、3軸加速度センサを内蔵した携帯電話を身につけて行動し、携帯電話から送信された加速度時系列データに基づいて、行動判定装置11として機能する外部のサーバコンピュータが、人物の行動が、「止まる」、「歩く」、「走る」の3つの行動のいずれに該当するかを判定する。
ここで、実施例1と同様に、実際に得られた加速度時系列データが、図13に示すデータであり、時刻5秒の時点で、行動判定が行われるとする。このときのサーバコンピュータ(行動判定装置13)によって行われる処理について以下に述べる。
本実施例3では、先ず、時間窓切出部31は、携帯電話(データ取得部2)から送信された加速度時系列データから、複数の想定行動のうち、ある特定の1つの想定行動(特定の想定行動)についてのみ、時間窓データの切出しを行う。時間窓切出ルール記憶部32には、「止まる」「歩く」「走る」の3つの想定行動それぞれについて設定された時間窓が記憶されている。実施例3においても、時間窓は、例えば、事前に行われた実験の結果等に基づいて設定されている。想定行動毎の時間窓の例は、実施例1と同様であり、図2に示されている。
また、本実施例3では、最初の特定の想定行動は「止まる」に設定されているとする。よって、時間窓切出部31は、ある時刻での人物行動を判定するときは、最初に評価を行う想定行動として、「止まる」を選択する。そして、時間窓切出部31は、時間窓切出ルール記憶部32に記憶されている時間窓を用いて、「止まる」についての時間窓データとして、時刻3秒から時刻5秒までの2秒分の加速度時系列データを切出し、これを特徴量算出部33へ出力する。
特徴量算出部33は、時間窓切出部31から出力された「止まる」についての時間窓データを用いて、行動評価の指標となる特徴量として、例えば、加速度分散値を算出する。いま、時間窓切出部31が出力した「止まる」についての時間窓データから算出された加速度分散値が、165923[mG2]であったとする。特徴量算出部33は、算出した加速度分散値を、個別行動評価部34へ出力する。
個別行動評価部34は、特徴量算出部33から出力された加速度分散値を用いて、各想定行動と、実際の行動とが、どの程度近いかを示す評価値を算出する。評価値を算出するための個別行動評価ルールは、例えば、事前に行われた実験の結果等を基にして、予め、個別行動評価ルール記憶部35に記憶されている。
いま、個別行動評価ルールが、実施例1と同様に、図3、図4及び図5に示す評価関数で表され、評価関数は、想定行動と人物行動との近さを表す値(評価値)が1に近いほど、その想定行動が人物行動である可能性が高いことを示しているとする。ここで、特徴量算出部33が出力した加速度分散値の値から、実際に図3に示す「止まる」についての評価関数を用いて算出を行うと、評価値は、0.00と算出される。個別行動評価部34は、算出した評
価値を、全体行動評価部36へ出力する。
全体行動評価部36は、図12に示した処理に従って、評価値の値から、判定結果を出力装置4に送信すべきか、再度、別の特定の想定行動について、時間窓の切出し、特徴量の算出、評価値の算出を行うべきか、どうかの判断を行う。具体的には、実際に与えられた評価値は、「止まる」についての0.00であるので、全体行動評価部36は、図12に示した処理に従い、時間窓切出部31に、他の想定行動、例えば、「歩く」について時間窓データの切出しを指示する。
そして、全体行動評価部36から、「歩く」についての時間窓データの切出しを指示された時間窓切出部31は、時間窓切出ルール記憶部32に記憶されている「歩く」についての時間窓を用いて、加速度時系列データの切出しを行う。本実施例では、この場合の時間窓は1秒であるので、1秒分の時間窓データが切出されることとなる。具体的には、時間窓切出部31は、加速度時系列データから、時刻5秒の時点での行動を判定するため、図13における時刻4秒から時刻5秒までの1秒分の時系列データを切出し、これを時間窓データとして特徴量算出部33に出力する。
特徴量算出部33は、上述の「止まる」についての場合と同様に、時間窓切出部31から出力された「歩く」についての時間窓データを用いて、加速度分散値を算出する。いま、時間窓切出部31が出力した「歩く」についての時間窓データを用いて算出された加速度分散値が、19719[mG2]であったとする。特徴量算出33は、算出した分加速度散値を、個別行動評価部34へ出力する。
個別行動評価部34は、上述の「止まる」についての場合と同様に、図4に示す「歩く」についての評価関数を用いて、特徴量算出部33が出力した加速度分散値から、評価値を算出する。算出の結果、評価値は、0.89と算出される。個別行動評価部34は、算出した評価値を、全体行動評価部36へ出力する。
全体行動評価部36は、再度、図12に示した処理に従って、上述した判断を行う。具体的には、実際に与えられた評価値は、「歩く」について0.89であるので、全体行動評価部36は、図12に示した処理に従い、人物行動を「歩く」と判定し、判定結果を人物が持つ携帯電話へ返す。
行動判定サーバから行動判定結果を与えられた携帯電話は、人物の行動を表す「歩く」という文字列を、携帯電話の表示画面に表示させる。本実施例3においても、実施例1と同様に、以上の動作は、例えば1秒間に1回等の、決められた間隔で繰り返し実行される、また、携帯電話の表示画面には、新しく得られた判定結果が逐次表示されても良いし、新しく得られた判定結果と過去の履歴とが一緒に表示されても良い。