好適と考える本発明の実施形態を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
対向する第一半体1と第二半体2との先端部、即ち挟持部若しくは切断部となる開閉作業部4間に対象物3を配置し、対向する第一半体1と第二半体2との基端部、即ち開閉操作部5に、例えばこの開閉操作部5を握持操作若しくは指先で摘まみ操作することによって内方の閉じ方向に押圧させる閉力を加えると、第一半体1と第二半体2の交差枢着部9を支点に前記開閉作業部4が閉動して対象物3を挟持若しくは切断することができる。
また、本発明においては、対象物3を開閉作業部4で挟持した状態で更に開閉操作部5に閉力を増大させながら加えてゆくと、対象物3に対して挟持力若しくは切断力が作用すると同時に開閉操作部5が内方へ撓み始める。
この際、例えば開閉操作部5を作業者が手で握持したり指先で摘まんだりしてこの開閉操作部5に閉力を加えた場合には、この撓んだ開閉操作部5の復帰弾性が手若しくは指で感取できるので、この復帰弾性を感取することによって作業者は対象物3を挟持若しくは切断し続けていることを認識できる。
この撓み始めた開閉操作部5に閉力を増大させながら加えてゆくと、開閉操作部5は更に内方に撓んでゆき、この開閉操作部5の撓みにより当接部7と受部6とが当接し、当接部7が受部6に当接してからも引き続き開閉操作部5に閉力を増大させながら加えてゆくと、開閉操作部5を更に内方へと可動若しくは撓み可動させて閉動操作可能であるが、この増大させた閉力を挟持力若しくは切断力として前記開閉作業部4に伝達する伝達比は、当接部7が受部6に当接する前の挟持力若しくは切断力の伝達比に比して減じるように変化することになる。
尚、この閉力の開閉作業部4への伝達比の変化は、当接部7と受部6とが当接した時点を境に、前記閉力を増大させても当接部7が受部6に当接する前の力の伝わり方より低い伝達比で挟持力若しくは切断力が増大してゆくような変化、即ち言い換えると、当接部7が受部6に当接する前の力の伝わり方に比べて挟持力若しくは切断力が緩やかに増大してゆくような変化や、当接部7と受部6とが当接した時点の挟持力若しくは切断力のまま一定の挟持力若しくは切断力が維持されてゆくような変化や、当接部7と受部6とが当接した時点の挟持力若しくは切断力が最大挟持力若しくは最大切断力であって、当接部7と受部6とが当接した時点を境に開閉作業部4の挟持力若しくは切断力が減少してゆくような変化を言い、これらいずれの変化を伴う構成でも良い。
従って、当接部7が受部6に当接した状態では、前記閉力をいくら増大させても開閉作業部4の挟持力若しくは切断力が所定値以上とはならず、対象物3は、従来までの開閉作業工具や当接部7が受部6に当接する前の力の伝わり方のような開閉操作部5に加えられた閉力に応じた通常の開閉作業部4の挟持力若しくは切断力ではなく、この通常の挟持力若しくは切断力よりも減少した挟持力若しくは切断力で挟持若しくは切断されることになる。
また、本発明によれば、対象物3の大きさや硬さに応じて当接部7と受部6との当接タイミングや開閉操作部5の撓み弾性度の設定を適宜変更することにより、例えば開閉操作部5の挟持操作により対象物3を潰したり壊したり或いは表面にキズを付けたりしない程度の挟持力しか発揮されないような開閉作業部4の挟持力設定や、開閉操作部5の挟持操作により必要以上の切断力が発揮されずに、対象物3をデリケートに切断したり対象物3表面の柔らかい部分だけを切断可能となる程度の切断力しか発揮されないような開閉作業部4の切断力設定が容易に可能である。
よって、本発明によれば、デリケートな構造の対象物3を、単に対向する開閉操作部5を内方の閉じ方向に押圧させる閉力を増大させながら加える操作、即ち例えば手でぎゅっと握持したり指先で摘まんだりする極めて簡易な操作をするだけで、潰したり破損させたり或いは表面にキズを付けたりすることなく簡単に且つスピーディーに挟持することができるような開閉挟持具や、デリケートな切断加工を要する対象物3や表面の柔らかい部分だけを切断したい対象物3を、上記同様の簡単且つスピーディーな操作でデリケートに或いは部分的に切断することができるような開閉切断具を容易に設計実現可能となる。
本発明の具体的な実施例1について図1〜図11に基づいて説明する。
本実施例は、一対の第一半体1と第二半体2とを途中で重合交差させて枢着し、この対向する第一半体1と第二半体2との先端部(先端側部)を、挟持部若しくは切断部とする開閉作業部4とし、前記対向する第一半体1と前記第二半体2の基端部(基端側部)を、互いに内方の閉じ方向に押圧させる閉力を加えることで前記先端部の開閉作業部4が閉動して対象物3を挟持若しくは切断する開閉操作部5としたペンチやニッパーなどの開閉作業具において、前記開閉操作部5に閉力を加えた際に、この閉力を挟持力若しくは切断力として前記開閉作業部4に伝達する伝達比が、従来までの剛性強度の高い開閉作業具や、当接部7が受部6に当接する前の力の伝わり方による挟持力若しくは切断力の伝達比に比して減じるように変化する構成としたものである。
具体的には、前記開閉作業部4で前記対象物3を挟持した状態で、更に前記開閉操作部5に前記閉力を加えると、この閉力の増大に応じて前記開閉操作部5が内方へ撓むように構成し、この開閉操作部5の撓みにより当接する当接部7と受部6とを対向状態に備え、この当接部7が受部6に当接した状態で前記閉力を増大させると、更に開閉操作部5を内方へ可動若しくは撓み可動させて閉動操作可能であるが、この開閉操作部5に加える前記閉力を更に増大させ続けても、開閉作業部4の挟持力若しくは切断力が所定値以上とはならず、対象物3は、従来までの開閉作業工具や当接部7が受部6に当接する前の力の伝わり方のような開閉操作部5に加えられた閉力に応じた通常の開閉作業部4の挟持力若しくは切断力ではなく、この通常の挟持力若しくは切断力よりも減少した挟持力若しくは切断力で挟持若しくは切断されることになるように構成している。
また、前記対象物3を挟持した状態で前記開閉操作部5に加える前記閉力を増大させた際に前記開閉操作部5を内方に撓ませる撓み可動因部8と、この開閉操作部5の内方への撓みによって可動する前記当接部7とこの当接部7が当接する受部6とを備えると共にこの当接部7と受部6との当接点が前記開閉操作部5の閉動時の第二支点10となるように構成した力伝達比変動機構12を具備し、前記当接部7が前記受部6に当接した状態で前記閉力を増大させると、前記開閉操作部5の閉動支点が前記第一半体1と前記第二半体2の交差枢着部9から前記第二支点10に変動し、この閉動支点の変動により前記増大させた閉力を挟持力若しくは切断力として前記開閉作業部4に伝達する伝達比が変化するように構成している。
また、本実施例では、後述するように開閉操作部5に円形に湾曲する撓み可動因部8を設け、この撓み可動因部8により撓み可動する撓み部11を開閉操作部5に設け、この撓み部11に前記当接部7を設けて、前記対象物3を前記開閉作業部4で挟持した状態で前記閉力を増大させると、前記撓み可動因部8を介して前記撓み部11が内方に撓み可動し、撓み可動因部8が撓み部11の内方への撓み可動に伴って回転して当接部7と受部6との当接点が変動し、これによって増大させた閉力を挟持力若しくは切断力として前記開閉作業部4に伝達する伝達比が変化するように構成している。
また、撓み可動因部8は、帯板で構成し、この帯板状の撓み可動因部8の板面が当接部7及び受部6として機能することにより、当接部7と受部6とが当接した際の当接面積が広くなり、これによって開閉作業部4への力の伝達比が当接部7と受部6が当接する前の伝達比のように比例的に増大せずに、これよりやや減少する方向に伝達比が変動する構成としている。
尚、本実施例で言う、当接部7が受部6に当接した状態での閉力の開閉作業部4への伝達比の変化とは、当接部7と受部6とが当接した時点を境に、前記閉力を増大させても当接部7が受部6に当接する前の力の伝わり方より低い伝達比で挟持力若しくは切断力が増大してゆくような変化、即ち言い換えると、当接部7と受部6とが当接してからも前記閉力を一定の割合で増大させ続けた場合に当接部7が受部6に当接する前の力の伝わり方に比べて挟持力若しくは切断力が緩やかに増大してゆくような変化や、当接部7と受部6とが当接した時点の挟持力若しくは切断力のまま一定の挟持力若しくは切断力が維持されてゆくような変化や、当接部7と受部6とが当接した時点の挟持力若しくは切断力がピーク値となる最大挟持力若しくは最大切断力であって、当接部7と受部6とが当接した時点を境に開閉作業部4の挟持力若しくは切断力が減少してゆくような変化を意味するものであり、これらのいずれの変化を伴う構成でも良い。
即ち、当接部7が受部6に当接した状態では、前記閉力をいくら増大させても開閉作業部4の挟持力若しくは切断力が所定値以上とはならず、対象物3は、従来までの開閉作業工具や当接部7が受部6に当接する前の力の伝わり方のような開閉操作部5に加えられた閉力に応じた通常の開閉作業部4の挟持力若しくは切断力ではなく、この通常の挟持力若しくは切断力よりも減少した挟持力若しくは切断力で挟持若しくは切断されることになる構成としている。
また、当接部7が受部6に当接して開閉作業部4に閉力が減少して伝達される状態になった後も、作業者は開閉操作部5を更に握持する若しくは指先で摘まむことでこの開閉操作部5を撓ませて、この撓みによる復帰弾性を開閉操作部5を握っている手若しくは摘まんでいる指で感じ取ることができるので、作業者は開閉操作部5に閉力をどの程度加えているかもおおよそ把握することができるし、開閉作業部4で対象物3を挟持し続けていることを確信し安心して作業することができ、更に、例えば装置やロボットなどを用いて人の手以外でこの開閉操作部5に閉力を加える場合でも、開閉操作部5の撓み量を目視することで、作業者が手や指で閉力の増大を感じ取るのと同様にこの開閉操作部5に閉力を増大させながら加えていることが容易に把握できると共に、開閉作業部4が対象物3を挟持し続けていることを把握できるように構成している。
また、このように構成した本実施例の開閉作業具は、対象物3の大きさや硬さに応じて当接部7と受部6との当接タイミングや開閉操作部5の撓み弾性度の設定を適宜変更することにより、例えば開閉操作部5の挟持操作により対象物3を潰したり壊したり或いは表面にキズを付けたりしない程度の挟持力しか発揮されないような開閉作業部4の挟持力設定や、開閉操作部5の挟持操作により必要以上の切断力が発揮されずに、対象物3をデリケートに切断したり対象物3表面の柔らかい部分だけを切断可能となる程度の切断力しか発揮されないような開閉作業部4の切断力設定が容易に可能である。
従って、本実施例は、デリケートな構造の対象物3を、単に対向する開閉操作部5を内方の閉じ方向に押圧させる閉力を増大させながら加える操作、即ち例えば手でぎゅっと握持したり指先で摘まんだりする極めて簡易な操作をするだけで、潰したり破損させたり或いは表面にキズを付けたりすることなく簡単に且つスピーディーに挟持することができるような開閉挟持具や、デリケートな切断加工を要する対象物3や表面の柔らかい部分だけを切断したい対象物3を、上記同様の簡単且つスピーディーな操作でデリケートに或いは部分的に切断することができるような開閉切断具を容易に設計実現可能となる構成としたものである。
よって、例えば本実施例を手術の際に血管を挟持する手術用器具に適用すると共に、予め血管を潰してしまう或いはキズをつけてしまう挟持力を把握しておいて、この挟持力を当接部7と受部6とが当接してからの開閉作業部4に伝達される挟持力の最大値(ピーク値)よりも小さい値となるように設定構成すれば、開閉作業部4にはピーク値以上の挟持力が作用しないので、作業者が血管を挟持する際にこの血管を万一潰してしまったりキズ付けてしまったらというプレッシャーから開放される優れた手術用器具となり、しかも、血管のような潰したくないもの、キズを付けたくないものを対象物3として挟持する際にも、この対象物3を掴んでいることが開閉操作部5の撓み加減を手や指先で感じ取ることで容易に把握することができ、十分な挟持力で対象物3を挟持しているかどうか分からない不安感を抱くこともなく、気楽に、そして容易に血管を挟持することができる実用性に優れた画期的な手術用器具(開閉作業具)を実現できることとなる。
以下、本実施例を更に詳しく説明する。
第一半体1及び第二半体2は、適宜な材質、例えば、金属又は合成樹脂からなる部材を細長い帯板状に形成して構成したものとし、夫々の先端側部を対象物3を挟持する挟持部としての開閉作業部4とし、夫々の基端側部を前記開閉作業部4を開閉操作する開閉操作部5とし、この第一半体1と第二半体2の先端側部と基端側部との境界位置を交差重合して枢着することにより、前記開閉作業部4を構成する第一半体1と第二半体2の先端側部が対向状態に配設すると共に、前記開閉操作部5を構成する第一半体1と第二半体2の基端側部が対向状態に配設する形態とし、この対向状態に配設した開閉操作部5を、手で握持する若しくは指先で挟持し内方へ押圧する(開閉操作部5の互いの対向間隔が狭まるように)閉力を加えることで、第一半体1と第二半体2が前記交差枢着部9を支点に開閉回動して対向状態に配設した前記開閉作業部4の対向間隔が狭まる閉動動作をなして対象物3を挟持する構成としている。
即ち、本実施例は、開閉挟持具に適用した場合を示している。尚、第一半体1と第二半体2の先端側部に切断刃を設けることで前記開閉作業部4を構成した開閉切断具に構成しても良い。
また、開閉操作部5を構成する第一半体1と第二半体2の基端側部は、夫々の全体的な形状を外方に凸となる対称な湾曲形状に形成し、その夫々の基端に指を挿入し摘まみ操作する指挿入部14を設け、この指挿入部14に指を挿入し閉力を加える点を力点部13としている。
また、指挿入部14は、指先を挿入し得る直径を有する円形リングを一体成形して成り、この円形リング状の指挿入部14に指先を挿入して開閉操作部5を操作することで、内方に閉力を加える閉じ操作だけでなく、この開閉操作部5を外方に広げる操作も指二本で操作できるように構成している。
また、本実施例では、この開閉作業部4と開閉操作部5(後述する撓み部11を含む)とを一体成形した構成としている。尚、この第一半体1及び第二半体2は、開閉作業部4を構成する先端側部と、開閉操作部5を構成する基端側部とを別部品として着脱分離自在な構成としても良い。
また、本実施例では、前記開閉操作部5の前記交差枢着部9寄り位置に、撓み可動因部8を設け、この撓み可動因部8により撓み可動する撓み部11を前記開閉操作部5に設けている。
具体的には、第一半体1と第二半体2の夫々の基端側部の前記交差枢着部9寄り位置に、撓み可動因部8を設けた構成としており、前記指挿入部14に指を挿入し前記力点部13に閉力を加えることで開閉作業部4が閉動して対象物3を挟持し、この開閉作業部4が対象物3を挟持した際の反作用(対象物3の挟持抵抗)によって撓み可動因部8が撓み変形して開閉操作部5が対向内側へ撓む若しくは可動する構成とし、この撓み可動因部8の撓み変形によって内側へ撓む若しくは可動する開閉操作部5(撓み可動因部8を含む第一半体1と第二半体2の基端側)を前記撓み部11としている。尚、指挿入部14を設けずに開閉操作部5を直接手で握持操作するように構成しても良いし、人の手や指先で操作するのではなく、機械、装置、ロボットなどで操作できる開閉操作部5を構成しても良く、その形状、構成は適宜変更可能なものとする。
また、前記撓み可動因部8は、前記第一半体1並びに前記第二半体2を構成する金属板材(例えば弾性を有するアルミ板材若しくはSUS板材)を湾曲させることにより夫々の基端側部の前記交差枢着部9側を略S字形状に形成して構成し、第一半体1と第二半体2とを重合枢着した際に、これら第一半体1の撓み可動因部8と第二半体2の撓み可動因部8とが対向状態且つ対称形状となるように第一半体1と第二半体2とに夫々設けた構成としている。
この撓み可動因部8について更に具体的に説明すると、前記第一半体1と前記第二半体2の基端側部の前記交差枢着部9寄り位置から基端側外方へと突出した後内方に向かって略円形に湾曲する形状の先端側湾曲部8bと、この先端側湾曲部8bの基端部から一体に連設し外方に向かって略円形に湾曲する形状の基端側湾曲部8aとから成る構成としている。
また、この撓み可動因部8は、図7に示すように開閉操作部5を構成する第一半体1と第二半体2の基端側部の他の部位より厚みを薄くして撓み変形し易くしている。更に、図7(a)のように薄くしたり、図7(b)のように稍厚くしたりして厚みを異ならせることにより、撓み可動因部8の撓み変形する度合いを変化させることができる構成としている。
尚、この撓み可動因部8は、上述した材質・形状に限定するものではなく、例えば棒材でも良く、また所望の撓みが生じるように適宜厚みや直径を設定したり、孔を形成して撓みを調整したり、或いは材質を変更(例えば合成樹脂など)するなどしても良く、本実施例の特性を発揮するものであれば適宜採用し得るものである。
本実施例では、対向する前記撓み可動因部8の一方の基端側湾曲部8aに前記当接部7を設け、他方の基端側湾曲部8aに前記受部6を設けた構成としている。
具体的には、開閉操作部5に閉力を増大させながら加えてゆき、これによって対向状態に設けた撓み部11(撓み可動因部8)が内方に接近してゆき、開閉操作部5に加えられる閉力が所定値になった際に当接する接点の一方を前記当接部7、他方を前記受部6としており、図面では、第一半体1側の接点を当接部7とし、第二半体2側の接点を受部6とし、これらは夫々の基端側湾曲部8aの最も内方に突出した位置(点)付近となるように構成している。
本実施例では、開閉操作部5の内方への撓みによって可動する前記当接部7とこの当接部7が当接する受部6との当接点が前記開閉操作部5の閉動時の第二支点10となるように構成し、この当接部7が受部6に当接した状態で前記閉力を増大させると、前記開閉操作部5の閉動支点が前記第一半体1と前記第二半体2の交差枢着部9から前記第二支点10に変動し、この閉動支点の変動により前記増大させた閉力を挟持力若しくは切断力として前記開閉作業部4に伝達する伝達比が変化する前記力伝達比変動機構12を構成している。
また、この当接部7と受部6とは、開閉作業部4に対象物3を挟持していない状態で単に閉じ状態にしただけでは当接しない構成としている。言い換えると、この開閉作業部4が完全に閉動した状態、即ち、第一半体1の先端側部と第二半体2の先端側部とが接した状態において、当接部7と受部6との間に所定の間隔を設けた構成とし、この当接部7と受部6とは、前記撓み可動因部8が撓んで開閉操作部5が内方へ可動することによって当接するように構成している。
また、この当接部7と受部6との間隔は、図8(a)に示すように間隔を狭く構成しても良いし、図8(b)に示すように間隔を広く構成しても良く、このように当接部7と受部6との間隔を変えることで、この撓み可動因部8が撓み変形し始めてから当接部7と受部6とが当接するまでに開閉操作部5に加える閉力が変わるので、開閉作業部4に伝達される挟持力を変えることができる。
即ち、対象物3を挟持する挟持力を小さくしたい場合は、当接部7と受部6との間隔を狭く設定し早く当接部7と受部6とを当接させて開閉作業部4に開閉操作部5の閉力が伝達されないように構成し、逆に大きな挟持力で挟持させたい場合は、当接部7と受部6との間隔を広くした構成とすると良く、挟持する対象物3に適切に対応した挟持力となるよう当接部7と受部6との間隔は適宜設定変更可能なものとする。
上述のように構成した本実施例の作用・効果について以下に説明する。
図3は、開閉作業部4で対象物3を挟持した状態を示している。この開閉作業部4で対象物3を挟持している状態で指挿入部14の力点部13に閉力を増大させながら加えてゆくと、図4に示すように撓み可動因部8が撓み変形することで開閉操作部5(撓み部11)が閉動し、撓み可動因部8の基端側湾曲部8aに設けた当接部7と受部6とが接近し始める。
更に力点部13に閉力を増大させながら加えてゆくと、撓み可動因部8がより撓み変形し、この閉力が所定値に達すると、図5に示すように当接部7と受部6とが当接する。
この図3〜図5の状態では、開閉操作部5(指挿入部14の力点部13)に加えた閉力が開閉作業部4に伝達され、開閉作業部4にはてこの原理で開閉操作部5に加えた閉力に応じた挟持力が生じ、この加えた閉力に応じた挟持力で対象物3を挟持することとなる。
この当接部7と受部6とが当接した状態となっても、更に開閉操作部5に閉力を増大させながら加えてゆくと、図6に示すように、撓み可動因部8の変形によって開閉操作部5(撓み部11)がより一層内方に閉動するが、当接部7と受部6とが当接することでこの当接部7と受部6との当接点(第二支点10)より先端側は閉動動作しようとする動作が伝わらず、従って、開閉作業部4には開閉操作部5に増大させながら加えた閉力に応じた挟持力は生じず、開閉作業部4の挟持力は当接部7と受部6とが当接した時点の挟持力のまま、若しくは減少する。
具体的には、撓み可動因部8を内方に凸となる基端側湾曲部8aと外方に凸となる先端側湾曲部8bとが連設する略S字形状に形成した構成としたため、開閉操作部5に閉力を増大させながら加えてゆくと、当接部7と受部6とが当接するまでは、基端側湾曲部8aと先端側湾曲部8bのいずれも撓み変形するが、当接部7と受部6とが当接した後で更に開閉操作部5に閉力が加えられると、この開閉操作部5(撓み部11)の、基端側湾曲部8aの当接部7(受部6)より基端側がより一層内方に撓み可動し(開閉操作部5がより一層内方へ閉動可動し)、これによりこの基端側湾曲部8aの当接部7(受部6)よりも先端側を外方に押圧する力が作用することになる。
この基端側湾曲部8aの先端側が外方に押圧されることで先端側湾曲部8bが外方の開き方向に押圧される力が作用し、よって、開閉作業部4が開き方向に動作し対象物3を挟持する挟持力が減少することになる構成としている。
図9〜図11は、本実施例における、開閉操作部5に加える閉力と、この閉力を加えた際の開閉操作部5の撓み移動量(撓み部11の撓み可動量)と、開閉作業部4に伝達される挟持力との関係を示したグラフである。
このグラフからわかるように、開閉作業部4に対象物3を挟持した状態で開閉操作部5に閉力を増大させながら加えてゆくと、始めは撓み可動因部8が撓み変形することで開閉操作部5(撓み部11)は内方に撓み移動してゆき、開閉作業部4には増大してゆく閉力に応じて挟持力が増大してゆく。
そして、開閉操作部5に加えられる閉力が所定値となった際に当接部7と受部6とが当接することで開閉作業部4にはこれ以上増大する閉力に応じた挟持力が伝達されなくなるので、この当接部7と受部6とが当接する当接時の挟持力が最大挟持力、即ち、開閉作業部4の挟持力のピーク値となり、これを境にして、開閉操作部5に閉力を増大させながら加え続けることで、逆に開閉作業部4を開き方向に動作させるので開閉作業部4の挟持力は減少傾向を示すこととなる。
尚、図9は、本実施例の基本構成、即ち、撓み可動因部8の厚みが薄厚で且つ当接部7と受部6との間隔を狭く設定した場合の検証グラフであり、図10は、この基本構成において、当接部7と受部6との間隔は変えずに撓み可動因部8の厚みを厚く(2倍の厚み)設定した場合の検証グラフであり、図11は、上述の基本構成において、撓み可動因部8の厚みを変えずに当接部7と受部6との間隔を広く(2倍の間隔)設定した場合の検証グラフである。
また、本実施例は、てこの原理によって、開閉操作部5に加えられた閉力が開閉作業部4に伝達される際に、加えられた閉力の5倍の挟持力となるように設計している。
この開閉操作部5に加えられる閉力が所定値に達するまでは、この開閉操作部5に閉力を増大させながら加えてゆくと開閉操作部5(撓み部11)の撓み移動量は一定に増加してゆき、開閉作業部4が対象物3を挟持する挟持力は閉力の5倍の傾きで増大してゆく。
そして、開閉操作部5に加えられる閉力が所定値に達したところで、当接部7と受部6とが当接することで、開閉作業部4の挟持力はピーク値となり、これ以降、開閉操作部5に閉力を増大させていっても、挟持力は減少してゆく。
また、この当接部7と受部6との当接を境に、開閉操作部5に加えられる閉力によって開閉操作部5(撓み部11)が撓み移動する量が変化する。具体的には、開閉操作部5は撓み難くなるので、開閉操作部5の撓み移動量を一定状態で増大させるには、開閉操作部5に加える閉力をより大きな閉力にしなければならないこととなる。
また、例えば、この開閉操作部5に閉力を増大させながら加え続けてゆくことで、いずれ開閉作業部4が対象物3を挟持する挟持力がゼロになり、開閉作業部4は対象物3を挟持できなくなり、開閉作業部4から対象物3を開放する状態が発生する。
即ち、一般的な開閉作業具は、対象物3を開閉作業部4で挟持する場合は、開閉作業部4を閉動させるために開閉操作部5に閉じ方向の力を加え、対象物3を開閉作業部4から開放する場合は、開閉操作部5に開き方向の力を加える二種類の操作を行うが、本実施例は対象物3を挟持する場合も、開放する場合も開閉操作部5に閉じ方向の力を加える一操作のみ、即ち、ワンアクションで操作することもできる。
従って、本実施例の開閉作業具で挟持操作によって潰したくないもの、壊したくないもの、或いは表面にキズを付けたくないものなどデリケートな構造の対象物3を挟持する際、開閉作業部4に対象物3を潰さない、壊さない、或いは表面にキズを付けない挟持力で且つ十分に対象物3を挟持することが可能な挟持力が生じる所定の閉力を加えた際に当接部7と受部6とが当接するように構成することで、この対象物3を開閉作業部4で潰したり、破損させたり、或いはキズを付けたりしないように開閉操作部5の閉じ操作を微妙な閉力で調整しながら慎重に操作することなく、単に対向する開閉操作部5を互いに内方の閉じ方向に押圧させる閉力を増大させながら加える操作、例えば握持操作や指先での摘まみ操作といった極めて簡易な操作をするだけで上述したようなデリケートな構造の対象物3を潰したり、破損させたり、或いは表面にキズを付けたりすることなく簡単に挟持することができるので余計な気を使う必要がなくなり作業がし易くなり、更に、従来に比してスピーディーに操作できるので作業効率も格段に向上する実用性、作業性に優れた画期的な開閉作業具となる。
本発明の具体的な実施例2について図12に基づいて説明する。
本実施例は、前記実施例1において、前記撓み可動因部8の先端側湾曲部8bの形状を異ならせた場合である。
具体的には、先端側湾曲部8bの交差枢着部9側を、実施例1のそれに比して傾斜度が緩やかで長さのある形状に形成している。
他の構成は、前記実施例1と同様である。
本発明の具体的な実施例3について図13に基づいて説明する。
本実施例は、前記実施例1において、撓み可動因部8を第一半体1若しくは第二半体2のいずれか一方のみに設けた場合である。
具体的には、撓み可動因部8を第一半体1のみに設け、第二半体2は、前記開閉操作部5を構成する基端側部を短く形成して、第一半体1の撓み可動因部8と対向する位置に前記指挿入部14を一体成形した構成としている。
また、本実施例の撓み可動因部8は、前記実施例2と同様の形状に形成した場合を示している。
他の構成は、前記実施例1と同様である。
本発明の具体的な実施例4について図14に基づいて説明する。
本実施例は、前記実施例3において、第二半体2の指挿入部14より基端側に、開閉操作部5を構成する基端側部を第一半体1のそれと同等に長く形成した場合である。
また、本実施例の第一半体1には、前記指挿入部14を設けず、指を掛けた部位が力点部13となるようにした場合を示している。
また、本実施例の撓み可動因部8は、前記実施例1と同様の形状に形成した場合を示している。
他の構成は、前記実施例1と同様である。
本発明の具体的な実施例5について図15〜図20に基づいて説明する。
本実施例は、前記実施例1において、前記開閉作業部4で対象物3を挟持した状態での前記当接部7と前記受部6の対向間隔(離間間隔)を広狭調整可能な間隔調整機構15を備えて、この間隔調整機構15により前記開閉作業部4に伝達される挟持力を変更可能な構成とした場合である。
具体的には、前記交差枢着部9から、前記開閉操作部5の対向内側であって前記第一半体1と前記第二半体2の基端側に向かって帯板16を突設し、この帯板16の突出端部(第一半体1と第二半体2の基端側に存する端部)に螺子棒部17を突設している。
また、この螺子棒部17に、雌螺子部20を有する円筒状の調整用摘み19を螺着すると共に、この調整用摘み19より交差枢着部9側に、間隔調整用移動体18を帯板16に沿ってスライド移動自在に被嵌している。
また、この間隔調整用移動体18は、前記調整用摘み19に連結状態に設けて、この調整用摘み19の前記螺子棒部17に対する回動螺動に伴って前記帯板16に対し往復スライド移動自在に設けると共に、前記交差枢着部9側ほど先細る形状に形成している。
また、本実施例では、対向する前記撓み可動因部8の双方の基端側湾曲部8aに前記当接部7を設け、前記帯板16及び前記間隔調整用移動体18が前記受部6となる構成としている。
従って、間隔調整用移動体18を帯板16の突出端部側に位置させて当接部7が帯板16の板面(受部6)に当接可能となる状態とした際には、当接部7と受部6の対向間隔が最大(開閉作業部4の挟持力が最大)となり、調整用摘み19の回動操作により間隔調整用移動体18を交差枢着部9側に移動させると当接部7が間隔調整用移動体18(受部6)に当接可能な状態となって、当接部7と受部6の対向間隔が狭まる(開閉作業部4の挟持力が小さくなる)と共に、この間隔調整用移動体18を交差枢着部9側に移動させるほど、当接部7と受部6の対向間隔が狭まって開閉作業部4の挟持力が小さくなるように調整可能な前記間隔調整機構15を構成している。
また、本実施例の開閉操作部5は、指挿入部14を設けず、指を掛けた部位が力点部13となるようにした場合を示している。尚、この点は、後述する実施例6〜8についても同様である。
他の構成は、前記実施例1と同様である。
本発明の具体的な実施例6について図21〜図25に基づいて説明する。
本実施例は、前記実施例1において、撓み可動因部8を第一半体1若しくは第二半体2のいずれか一方のみに設け、この撓み可動因部8に設けた当接部7が当接する受部6を、第一半体1若しくは第二半体2のいずれか他方に設けた場合である。
具体的には、撓み可動因部8を第一半体1のみに設け、第二半体2には、前記開閉操作部5を構成する基端側部の対向内側面の前記交差枢着部9寄り位置から、湾曲帯板21を突設してこの湾曲帯板21を前記撓み可動因部8と対向状態に設け、この湾曲帯板21の、前記第一半体1の開閉操作部5を構成する基端側部と対向する板面を、前記撓み可動因部8に設けた前記当接部7が当接可能な受部6としている。
また、この受部6を具備する湾曲帯板21は、前記第二半体2と一体成形すると共に、弾性を有する構成としてこの受部6に前記当接部7が当接した際に、第二半体2の開閉操作部5側に撓み可動可能に設けている。
図25は、本実施例の、開閉操作部5に閉力を加えて対象物3を挟持した際の、第二半体2の開閉操作部5(撓み部11)の撓み変位量(閉力)、即ち撓み移動量と、開閉作業部4に伝達される挟持力との関係を示したグラフである。
このグラフからわかるように、本実施例によれば、当接部7が受部6に当接する前は、閉力・挟持力ともに、比例的に増大してゆくが、当接部7が受部6に当接した時点を境に、いくら閉力を加えても挟持力は増大せずに略一定の値を示すことが確認された。このことは、当接部7が受部6に当接した際に、受部6が撓むことによってもたらせると推測される。
他の構成は、前記実施例1と同様である。
本発明の具体的な実施例7について図26〜図28に基づいて説明する。
本実施例は、前記実施例6において、前記開閉作業部4で対象物3を挟持した状態での前記当接部7と前記受部6の対向間隔(離間間隔)を広狭調整可能な第二間隔調整機構22を備えて、この第二間隔調整機構22により前記開閉作業部4に伝達される挟持力を変更可能な構成とした場合である。
具体的には、第二半体2の基端側部(開閉操作部5)の前記交差枢着部9寄り位置の対向内側面に、薄厚な弾性板23を介して前記湾曲帯板21を一体成形している。
また、この湾曲帯板21と対向状態にして取付部25を一体成形し、この取付部25に設けた雌螺子部26に調整螺子24を螺着して、この調整螺子24の回動螺動操作により調整螺子24先端が雌螺子部26から進退動して、この調整螺子24が前記湾曲帯板21の基端部を押動することにより前記受部6の前記当接部7に対する対向間隔が狭まるように調整可能な前記第二間隔調整機構22を構成している。
図28は、本実施例の、開閉操作部5に閉力を加えて対象物3を挟持した際の、第二半体2の開閉操作部5(撓み部11)の撓み変位量(閉力)、即ち撓み移動量と、開閉作業部4に伝達される挟持力との関係を示したグラフである。
このグラフから明らかなように、本実施例によれば、当接部7が受部6に当接する前は、閉力・挟持力ともに、比例的に増大していくが、当接部7が受部6に当接した時点を境に、閉力を2.3kg程度まで増大させても挟持力は増大せずに略一定の値を示し、これより更に閉力を増大させると、挟持力が徐々に減少していくことが確認された。
また、本実施例の第二半体2は、前記交差枢着部9と前記取付部25との間に、内方へ円形に湾曲する形状の撓み可動因部8を設けた場合を示している。
他の構成は、前記実施例6と同様である。
本発明の具体的な実施例8について図29〜図34に基づいて説明する。
本実施例は、前記実施例1において、前記開閉作業部4で対象物3を挟持した状態での前記当接部7と前記受部6との対向間隔(離間間隔)を、前記開閉作業部4に挟持する対象物3の大きさに応じて適当な間隔に自動調整する自動間隔調整機構27を設けた場合である。
具体的には、第一半体1の基端側湾曲部8aに、開閉操作部5の対向内側に向けて帯板状の受板29を一体成形により突設すると共に、この受板29の交差枢着部9側の板面をラック歯形状の受部6に形成して、この歯間に存する複数の凹所30に、後述する係止爪28が選択的に当接係止し得るように構成している。
また、本実施例の第二半体2は、その基端側部(開閉操作部5)の前記交差枢着部9寄り位置に内方へ円形に湾曲する形状の撓み可動因部8を設け、この撓み可動因部8より基端側に、弾性板31を介して前記開閉操作部5の対向内側に向けて係止爪28を一体成形により突設して、この係止爪28を前記当接部7としている。
本実施例の作用を説明すると、図30に示すように比較的小さい対象物3を挟持した場合には、開閉作業部4で挟持した対象物3の閉動抵抗(対象物3の硬度)により第二半体2の撓み可動因部8が撓むと(開閉操作部5(撓み部11)を構成する第二半体2の基端側が内方へ閉動(撓み可動)すると)係止爪28と受板29とが接近し、図31,図32に示すように係止爪28が受板29の突出基端側(図面において上から二段目)の前記凹所30に当接係止してこの当接点が前記第二支点10となり、前記力伝達比変動機構12が機能する。
一方、図33に示すように、比較的大きい対象物3を挟持した場合には、開閉作業部4で挟持した対象物3の閉動抵抗により小さい対象物3を挟持した場合よりも大きく第二半体2の撓み可動因部8が撓み、これにより図34に示すように係止爪28が受板29の突出先端側(図面において上から三段目)の前記凹所30に当接係止することになり、この当接点が前記第二支点10となり、前記力伝達比変動機構12が機能する。
このように本実施例においては、対象物3の大きさによって自動的に当接部7(係止爪28)が当接する受部6(凹所30)が決定される前記自動間隔調整機構27を構成している。
他の構成は、前記実施例1と同様である。
尚、本発明は、実施例1〜8に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。