JP5522365B2 - 代謝物の異常度の取得方法、代謝異常の判定方法、及びそのプログラム、並びに、代謝物の異常度の取得装置、及び代謝異常の判定に基づく診断プログラム - Google Patents

代謝物の異常度の取得方法、代謝異常の判定方法、及びそのプログラム、並びに、代謝物の異常度の取得装置、及び代謝異常の判定に基づく診断プログラム Download PDF

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本発明は、代謝全体像(以下、「メタボローム」と称呼する。)から得られる情報の解析(以下、「メタボローム解析」と称呼する。)や、有機酸を含む化合物群からの情報の取得等において、代謝物の濃度変動を異常度として取得する方法、その異常度に基づく代謝異常の判定方法、並びにそれらを実現するためのプログラム及び装置に関する。また、上記代謝異常の判定に基づく診断プログラムに関する。
近年、メタボローム解析によれば、代謝経路から生成される代謝物が解析されることによって、代謝経路の探索、生態の生理的変化を指標する化合物を見出すこと等が可能となってきている。このようなメタボロームの網羅的な解析であるメタボロミクスは、ゲノミクス、プロテオミクスと同様、診断や創薬に有効であると考えられている。
しかしながら、メタボロミクスは、その対象となる化合物が非常に多岐に亘るため、実用化が困難な状況にある。例えば、ゲノミクスの対象である遺伝子は、高分子であるものの、それを構成する核酸塩基の種類はたった4種類である。また、プロテオミクスの対象である蛋白質も、高分子であるものの、それを構成するアミノ酸の種類は20種類である。
このように、遺伝子・蛋白質は、多種多様な情報・機能を有するもののその組成につき大きな単純性を有している。一方、メタボロミクスの対象である代謝物は、その種類が数千種類である。このことは、メタボロミクスにおけるダイナミックレンジが、ゲノミクスにおけるものに比して10程度となることを意味している。即ち、メタボロミクスにおいては、信頼できる情報の取得が困難である。このため、メタボロミクスは、生命科学のツールの観点から、包括的で迅速、安価、実用性が高いというポテンシャルを有しているにもかかわらず、有用な生命情報を高精度、迅速、安価に提供することが困難であるという問題があった。
上記を鑑み、問題解決への種々のアプローチがなされている。例えば、下記特許文献に示すように、メタボローム解析においては、分離技術と質量分析(MS)を組み合わせた計測手法が提案されている。分離技術としては、例えば、ガスクロマトグラフィー(GC)、キャピラリ・電気泳動(CE)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)等が挙げられる。以下、分離技術毎における特徴について説明する。
CE/MS、及びHPLC/MSは、GC/MSに比して、同定精度と検出感度の点で劣る。CE/MS及びHPLC/MSの両者で得られる物質の構造情報量が、GC/MSで得られるものに比して少なく、同両者での物質量を示すシグナル強度も、GC/MSによるものに比して小さいからである。同定精度の向上に際し、更にMSを追加する手法も考えられるが、現状では装置コストとデータ解析時間が増大するという課題がある。
加えて、CE/MS、及びHPLC/MSにおける計測値は、一般的に互換性が小さく固有の装置に頼ることが多い。これは、クロマト保持時間の変動が比較的大きく、変動補正が困難であることに起因している。これに対し、GC/MSでの計測は互換性が大きい。これによれば、異なるメーカーの装置で取得したデータのやりとり等が可能である。例えば、海外でGC/MSにて計測し、その計測データを国内に転送する。転送されたデータが国内にて処理されて、国内データと比較される、といったことも可能である。また、GC/MS装置の価格やその維持費も、CE/MS、及びHPLC/MSに比して1/3程度である。
一方、CE/MS、及びHPLC/MSにて計測できる代謝物のうち、GC/MSでは計測できないものがある。即ち、GC/MSは、上述したようにデータ解析時間や互換性等の点で優位であるが、代謝物の種類によっては計測ができないというデメリットも有する。
他方、分析・計測に要する時間に関しても、分離技術毎に特徴がある。GC/MSでは、1000種を超える成分について、1種類のカラムを用いて分析・測定ができる。その所要時間は、0.5〜1時間程度である。これに対し、LC/MSでは、1000種を超える成分については、数種類のカラムを要し、分析・測定の所要時間は数時間となる。CE/MSでは、網羅的な分析のため、陽イオンと陰イオンの分析毎にそれぞれ対応するモードを変更して計測がなされ、中性分子についてはLC/MSが用いられて計測がなされる。即ち、計3回の計測がなされ、その所要時間は2時間以上となる。以上がメタボロミクスにおける分離技術の特徴である。
このように、メタボロミクスでは分析の網羅性が強調されるため、しばしば網羅性の高い機器が評価される傾向にある。おもうに、各機器の優位性を生かしつつ、必要があれば他の機器により補完する手法が望ましい。
特開2009−503480号公報
ところで、メタボロームは化合物の集合であって、それらの濃度の相違が大きい。一般に、数百種をこえる、濃度の相違が大きい化合物の同定は困難である。従って、現行のメタボローム解析では、ノンターゲット手法での多変量解析が用いられる場合が多い。多変量解析のうち最も一般的に用いられるPCA解析では、多数の変量(ここでは代謝物)を含むサンプル間の相関性を判断するために、変量の数だけ存在する次元を、人が視覚的に理解できる2次元にまで圧縮する。この際、サンプル間の分散を最大に保つように2次元にまで圧縮するが、サンプルの持つ全ての情報を2次元上に投影することは不可能である。また、解析の性格上、変動の大きな変量に結果が左右されやすく、細かな変動を検出するのは難しい。
このような解析過程をもつ多変量解析では、機器分析データが通常に有するような計測誤差でも解析結果に大きな影響を与える。従って、解析前に実施する計測誤差の補正等に多大な時間を要する。他方、その補正等を省略すると誤った結果が生じる可能性が大きい。このようなことから、多変量解析は、解析者のスキルによって結果が左右される場合が多く、多量のサンプルを安定的に解析するような場合には不向きと言える。更に、バイオマーカー検索に成功しても、その成分の同定ができず実用性に欠ける場合もある。このため、メタボローム解析を用いた安定的な診断支援に際し、上記解析の結果は、診断の根拠となり得るほどの信頼性を有していない場合が多い。
メタボロミクスの実用性担保の観点から、同定及び定量に加え、供試サンプル中の各代謝物の対照サンプルに対する量的な異常の度合い(以下、「異常度」と称呼する。)をも取得することが望まれている。また、上記異常度の取得にあたり、ハイスループットな取得方法が望まれる。
以上を鑑み、本発明の目的は、代謝物を含むサンプルの計測で得られた保持時間情報、m/z、及び検出強度からなる情報取得に続いて、評価の代謝物を含むサンプルの計測にあたり計測対象となる代謝物の異常度を取得する方法であって、ハイスループットな取得方法となり得る方法を提供することにある。
本発明にかかる代謝物の異常度の取得方法の特徴は、代謝物を含むサンプルの中から、計測対象(即ち、評価対象と等価)となる所定の代謝物(analyte)を予め設定する代謝物設定工程と、予め設定された代謝物の物質量に基づく値の基準値からの乖離度合を、異常度として取得する異常度取得工程と、を備えたことにある。
ここにおいて、「物質量に基づく値」とは、例えば、物質量そのものであってもよいし、物質量に対応する質量分析のアウトプット(例えば、検出強度等)であってもよい。また、「物質量に基づく値」とは、濃度(例えば、サンプル中全物質量に対する対象の物質量の割合等)そのものであってもよいし、濃度の対数値であってもよく、これらに限定されない。例えば、サンプルが尿である場合には、濃度は、同一尿のクレアチニン濃度、あるいはクレアチニンとクレアチンの濃度の和で補正した値(除した値)、あるいはさらに、試料に添加した内標準物質(IS)の強度に対する相対値をさらにクレアチニン、あるいはクレアチニンとクレアチンの和で除した値、あるいは安定同位体希釈法などで得た定量値をクレアチニン、あるいはクレアチニンとクレアチンの値の和で除した値、あるいは血漿や血清では試料に添加した内標準物質の強度に対する相対値を単位容積(例えば1ml等)あたりで示したもの、あるいはその試料に含まれる蛋白量で補正したものなどである。また、「基準値からの乖離度合」とは、例えば、基準値と物質量そのものとの偏差であってもよいし、基準値と物質量に対応する質量分析のアウトプットとの比較であってもよい。また、「基準値からの乖離度合」とは、濃度そのものの偏差であってもよいし、基準値と濃度の対数値の偏差であってもよく、これらに限定されない。
上記構成によれば、例えば、予想される症状や、予想される代謝の態様、予想される代謝経路、予想される酵素反応等に応じて分析・評価すべき代謝物を予め設定することができる。即ち、代謝物(化合物)が予めターゲットとして登録され、この登録されたもののみが限定して定量・検索され得る。また、同定できる最大種類のanalyteを登録し、包括的な代謝異常の一斉スクリーニング、或いは見逃しのない化学診断を実行できる。他方、未知物質も定義のうえ登録して、未知のバイオマーカーの高感度探索、或いは新しい代謝疾患の発見にも活用できる。
また、例えば、基準値を正常なサンプルにおける濃度等に設定しておくことで、異常度が異常度合を表す指標となり得る。このため、容易に異常判定がなされ得る。以上により、ハイスループットな異常度の取得がなされ得る。
上記本発明にかかる代謝物の異常度の取得方法においては、異常度取得工程は、代謝物を含むサンプルである対照サンプルについての質量分析を利用して得られる代謝物の物質量に関する情報の中から、代謝物設定工程により予め設定された代謝物に対応する情報を抽出・参照し、参照される情報に基づいて代謝物の物質量に基づく値の基準値を取得する第1工程と、計測対象となる代謝物を含むサンプルである供試サンプルについての質量分析を利用して得られる代謝物の物質量に関する情報の中から、代謝物設定工程により予め設定された代謝物に対応する情報を抽出・参照し、参照される情報に基づいて代謝物の物質量に基づく値を取得する第2工程と、第1工程にて取得された基準値と、第2工程にて取得された物質量に基づく値とに基づいて、乖離度合を異常度として取得する第3工程と、を備えると好適である。
ここにおいて、質量分析を利用した計測と代謝物の評価とは、例えば、代謝物(1〜1500種類)が計測されている生データベース(計測データ)を用い、代謝物を評価すべきターゲットとして量的乖離度を取得するものである。ここで、ターゲットの代謝物の種類は1、100、500、或いは1000種類であってもよい。また、量的乖離度は、健常、対照集団、或いは対照からの量的乖離度である。これらの評価値の集合、或いは評価値の全体から、被検サンプルの特徴、ひいてはそこにおいて障害されている反応を特定できる。
上記構成によれば、代謝物を含むサンプルの質量分析によって、化合物が定性的かつ定量的に分析され得る。このため、物質量に基づく値が容易かつ精度良く取得され得る。また、この物質量に基づく値に基づいて異常度が取得されるので、異常度も容易かつ精度良く取得され得る。
上記本発明にかかる代謝物の異常度の取得方法においては、第1工程が、対照サンプル中の複数の代謝物を化合物毎に分離するとともに、分離された代謝物毎の質量分析により分離された代謝物毎のマススペクトルを取得する工程を複数回実行し、複数回の実行毎に取得されたマススペクトルに基づく濃度の対数値の平均値を、基準値として取得するように構成され、第2工程が、供試サンプル中の複数の代謝物を化合物毎に分離するとともに、分離された代謝物毎の質量分析により分離された代謝物毎のマススペクトルを取得し、取得されたマススペクトルに基づいて濃度を取得するように構成され、第3工程が、第1工程にて取得された平均値と、第2工程にて取得された濃度の対数値とに基づいて、乖離度合を異常度として取得するように構成されると好適である。
また、第1工程、及び第2工程においては、サンプル中の複数の代謝物を化合物毎に分離するに際し、クロマトグラフが利用されてもよい。クロマトグラフィーとしては、例えば、ガスクロマトグラフィー(GC)、液体クロマトグラフィー(LC)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)が用いられてもよい。また、分離に際して、キャピラリ・電気泳動(CE)が利用されてもよい。
上記構成によれば、分離操作により、サンプル中の化合物毎に質量分析がなされ得る。このためサンプル中に複数の化合物が含有されている場合であっても、より精度良く濃度が取得され得る。また、基準値として濃度の対数値の平均値が用いられるため、基準値が容易な計算で一意に決定され得る。
ここにおいて、「乖離度合」としては、平均値と濃度の対数値とに基づく値であればよく、例えば、平均値と濃度の対数値との偏差等であり、これに限定されない。
上記本発明にかかる代謝物の異常度の取得方法においては、第1工程が、基準値としての平均値に加え、複数回の実行毎に取得された各濃度の対数値の標準偏差をも取得するように構成され、第3工程が、乖離度合として、第1工程にて取得された平均値と、第2工程にて取得された濃度の対数値との偏差を、第1工程にて取得された標準偏差で除して得られた値を用いるように構成されると好適である。
上記構成により取得される異常度は、平均値からの濃度の乖離が大きいほど大きい値となる。即ち、異常度(の絶対値)が大きいほど、代謝異常の度合いが大きいと判定することができる。ここで、取得される異常度は、標準偏差にも基づいているため、統計学的に信頼性の高い値となり得る。以上のことから、上記構成によれば、異常度の大きさを、信頼性の高い判定指標とすることができる。ここで、評価値としては、減少(又は増加)しているか否か、或いは減少(又は、増加)の度合いが極端であるか否か、という指標が、代謝障害部位の推定や決定に重要な場合も多い。従って、減少の異常度もマイナスの記号を付して、可能な限り正確に取得されることが好ましい。
上記本発明にかかる代謝物の異常度の取得方法においては、第1工程、及び第2工程が、濃度の取得に際し、代謝物の質量分析により得られる代謝物の質量スペクトルであって、m/zと検出強度との関係を表す質量スペクトルにおけるピークを選択し、選択されたピークの大きさに基づいて代謝物の濃度を取得するように構成されると好適である。
この場合、例えば、連続的に低質量から高質量までのイオン強度を表わす複数のピークを逐次選択していき、生データとして記憶しておいてもよい。これに基づいて、濃度や異常度の取得がなされてもよい。
一方、連続的に低質量から高質量までピークを逐次選択するのに代えて、例えば、第2工程が、質量スペクトルのピークの選択に際し、1種の代謝物についての3つの異なるm/zに対応する3つのピークをそれぞれ選択し、濃度の取得に際し、選択された各ピークの大きさに基づいて1種の代謝物についての3つの異なる濃度をそれぞれ取得するように構成され、第3工程が、第1工程にて取得された平均値と、第2工程にて取得された3つの異なる濃度の対数値とに基づいて、1種の代謝物についての3つの乖離度合を3つの異常度として取得するように構成されてもよい。また、ピーク選択数が3であるのに代えて、化合物に応じて1〜3であってもよい。
通常、分離が完全に達成されることは少なく、物質の溶出時間(RT)のマススペクトルには通常2、3の成分が混在している場合が多い。そのため、マススペクトル中の特徴的なm/zを3つ、又は2つ設定しておくことが好ましい。上記構成はかかる知見に基づくものである。なお、イオンがひとつしかない場合は、1つの質量が設定されるか、或いはそのイオンとその同位体イオンの1、2種からなる、2、3種類の質量が設定されてもよい。
上記構成によれば、より正確に代謝物の濃度を取得することができる。従って、正確な濃度を用いて異常度が取得され得る。
本発明にかかる代謝異常の判定方法の特徴は、上述した代謝物の異常度の取得方法により取得された異常度と、異常度と代謝異常の有無との関係、及び/又は、異常度と代謝異常発生の可能性の有無との関係を規定するデータと、に基づいて代謝異常の有無、及び/又は、代謝異常発生の可能性の有無を判定する工程を備えたことにある。
上記構成によれば、代謝異常の判定に際し、ハイスループットに取得され得る異常度が用いられる。従って、容易、且つ、精度良く代謝異常の有無、及び/又は、代謝異常発生の可能性の有無を判定することができる。
上記本発明にかかる代謝異常の判定方法においては、代謝物設定工程にて設定された代謝物の種類が所定の数よりも小さい場合、異常度取得工程が、予め設定された代謝物の物質量に基づく値を取得するように構成され、代謝異常の有無、及び/又は、代謝異常発生の可能性の有無を判定するに際し、異常度と、データとに基づいて判定するのに代えて、異常度取得工程にて取得された代謝物の物質量に基づく値と、所定の値との比較に基づいて代謝異常の有無、及び/又は、代謝異常発生の可能性の有無を判定する工程を備えることが好適である。ここにおいて、「物質量に基づく値」とは、上述したのと同様の意味を表わす。
上記構成によれば、設定される代謝物の物質量或いは濃度が少ない(又は、低い)、或いは無い(不検出)である場合には、異常度を取得するまでもなく、代謝異常の判定に際し物質量に基づく値が利用される。従って、設定され得る代謝物の数に応じて、計算負荷が軽減され得る。
また、本発明にかかるプログラムの特徴は、上述した代謝物の異常度の取得方法、又は、上述した代謝異常の判定方法をコンピュータに実行させる、コンピュータで読み取り可能に構成されたことにある。
また、本発明にかかる異常度の取得装置の特徴は、代謝物を含むサンプルの中から、所定の代謝物を予め設定する代謝物設定手段と、予め設定された代謝物の物質量に基づく値の基準値からの乖離度合を、異常度として取得する異常度取得手段とを備え、異常度取得手段が、代謝物を含むサンプルである対照サンプルについての質量分析を利用して得られる代謝物の物質量に関する情報の中から、代謝物設定工程により予め設定された代謝物に対応する情報を抽出・参照し、参照される情報に基づいて代謝物の物質量に基づく値の基準値を取得する第1手段と、代謝物を含むサンプルである供試サンプルについての質量分析を利用して得られる代謝物の物質量に関する情報の中から、代謝物設定工程により予め設定された代謝物に対応する情報を抽出・参照し、参照される情報に基づいて代謝物の物質量に基づく値を取得する第2手段と、第1手段にて取得された基準値と、第2手段にて取得された物質量に基づく値とに基づいて、乖離度合を異常度として取得する第3手段と、を備えたことにある。
また、本発明にかかるプログラムの特徴は、代謝物を含むサンプルの中から、計測対象となる所定の代謝物を予め設定する代謝物設定工程と、予め設定された代謝物の物質量に基づく値の基準値からの乖離度合を、異常度として取得する異常度取得工程とを備え、異常度取得工程が、代謝物を含むサンプルである対照サンプルについての質量分析を利用して得られる代謝物の物質量に関する情報の中から、代謝物設定工程により予め設定された代謝物に対応する情報を抽出・参照し、参照される情報に基づいて代謝物の物質量に基づく値の基準値を取得する第1工程と、計測対象となる代謝物を含むサンプルである供試サンプルについての質量分析を利用して得られる代謝物の物質量に関する情報の中から、代謝物設定工程により予め設定された代謝物に対応する情報を抽出・参照し、参照される情報に基づいて代謝物の物質量に基づく値を取得する第2工程と、第1工程にて取得された基準値と、第2工程にて取得された物質量に基づく値とに基づいて、乖離度合を異常度として取得する第3工程とを備え、第3工程にて取得された異常度と、異常度と代謝異常の有無との関係、及び/又は、異常度と代謝異常発生の可能性の有無との関係を規定するデータとに基づいて代謝異常の有無、及び/又は、代謝異常発生の可能性の有無を判定する第4工程と、第4工程の判定結果に基づいて診断を行う第5工程とをコンピュータに実行させる、コンピュータで読み取り可能に構成されたことにある。
本発明によれば、例えば、予想される症状や、予想される代謝の態様、予想される酵素反応、代謝障害の部位(経路或いは反応)等に応じて分析・評価すべき代謝物を予め設定することができる。即ち、代謝物(化合物)が予めターゲットとして登録され、この登録されたもののみが定量・検索され得る。また、同定できる最大種類のanalyteの登録、あるいは、未知物質も定義のうえの登録により、包括的な代謝異常の判定、見逃しのない化学診断、或いは一斉スクリーニングが実施され得る。また、新しい代謝疾患の発見、未知のバイオマーカーの高感度探索、或いは内因性・外因性による代謝障害の部位(経路或いは反応)特定にも活用できる。
また、例えば、基準値を正常なサンプルにおける濃度等に設定しておくことで、異常度が異常度合を表す指標となり得る。このため、容易に異常判定がなされ得る。以上により、ハイスループットな異常度の取得がなされ得る。
本発明の実施形態にかかる、異常度の取得ならびに代謝異常の判定の工程を示すフローチャートである。 本発明の実施形態にかかる、代謝物の濃度対数値の平均値と、代謝物の濃度対数値の標準偏差の取得工程を示すフローチャートである。 マススペクトルにおけるピーク選択を説明するための図である。 本発明の実施形態にかかる、メタボローム解析を利用して代謝異常の有無を判定するためのシステムを表わす図である。 4つの供試サンプルにおける16種類の代謝物毎の異常度をまとめた図である。 プロピオン酸血症における介入の実例を説明するための図である。 生体肝移植前後の尿代謝物の解析の実例を説明するための図である。
40 異常度の取得装置
41 インターフェイス
42 バス
43 ROM
44 RAM
45 CPU
以下、本発明による代謝物の異常度の取得の方法、代謝異常の判定方法、及びそれを実現するための装置の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
(異常度取得ならびに代謝異常の判定の概要)
先ず、異常度取得ならびに代謝異常の判定の概要について説明する。図1は、異常度の取得ならびに代謝異常の判定の工程を示すフローチャートである。図2は、対照サンプルにおける、平均値及び標準偏差の取得の工程を示すフローチャートである。なお、ここにおいて、対照サンプルとは、代謝が正常である場合のサンプルである。また、平均値、及び標準偏差とは、対照サンプル中の代謝物毎の濃度の対数値の平均値、及び標準偏差である。
メタボローム解析としてサンプル中の代謝物濃度を取得し、代謝異常の判定を実行する場合、図1のステップ105の工程からスタートする。即ち、ステップ105にて、供試サンプルの分析前処理が実施される。なお、サンプルが尿である場合については、その前処理工程を後に詳述する。
次に、ステップ110に進み、ターゲットの設定・登録が実施される。即ち、代謝物の種類が設定・登録される。具体的には、上記供試サンプル中の全代謝物のうち、異常判定に必要と思われる代謝物の種類が設定・登録される。例えば、予想される病因に応じて代謝物の種類を設定・登録してもよい。或いはそれらを含むより多くの代謝物をターゲットとして設定してもよい。いずれにしても、代謝物が計測装置を利用して、下記の方法で計測される生データベース(計測データ)が使用され、ついで解析される。
次いで、ステップ115に進んで、GC/MSが利用されて代謝物のマススペクトルが取得・保存される。ここにおいて、GC/MSは、ガスクロマトグラフと質量分析との組合せを意味している。ここでは、先ず、供試サンプルがGC装置に所定量注入される。そして、代謝物は、その成分毎に分離された後、順次MS装置に導入される。そして、MS装置が利用されて、低質量から高質量までのイオンの質量m/zとそのイオン量、クロマト保持時間情報、とのデータセットからなるデータが取得されデータベース(後述するRAM44に相当)に保存されるようになっている。なお、このGC/MS計測において、予め選択されたm/zのイオン量が計測されてもよい。
次いで、ステップ120に進み、予めターゲットとして設定・登録された代謝物(analyte)の濃度を取得する。なお、濃度の取得に代えて、物質量、相対値等の取得であってもよい。続いて、ステップ121に進み、データベース(後述するROM43に相当)に保存されているマススペクトルを引き出して、自動ライブラリの一致度合が取得・表示される。これにより、一致度合によるだけでなく、操作者の目視により化合物を確認することも出来る。以下、濃度の取得プロセスについて説明する。
図3は、所定の代謝物のマススペクトルを示す図である。本例では、マススペクトルにおける3つの検出強度ピークが選択される。即ち、3つのm/zに対応するピークが選択される。ここにおいて、ピークの選択としては、例えば、検出強度が大きい順に3つ選択されてもよい。そして、既知の濃度におけるピーク値と、上記選択されたピーク値との比較により、濃度が算出・取得される。濃度の算出としては、例えば、既知の濃度のピーク面積と、上記選択されたピーク面積との比であってもよいし、既知の濃度のピーク値(高さ)と、上記選択されたピーク値(高さ)との比であってもよい。これにより、1つの代謝物につき、3つのm/zに対応する3通りの濃度が取得されることになる。なお、ひとつの化合物、或いはanalyteに設定されるイオンについては、イオンの量そのものであってもよい。また、標準のマススペクトルにおける全イオン量に対する当該イオンの強度即ち、Σ%で補正したイオン量であってもよい。後者では複数のイオン間の相対強度の違いが補正される。以上が濃度の取得プロセスの説明である。なお、本システムにおいては、ターゲット、ターゲットに対応するm/zと保持時間、及び保持時間の窓巾が設定される。また、ライブラリのマススペクトルに対しては保持時間、及び保持時間の窓巾が設定されるようになっている。
続いて、ステップ125に進み、ステップ110にて設定された代謝物のターゲットの設定・登録数が所定の数よりも大きいか否かが判定される。この判定に用いられる所定の数は、逐次変更されてもよい。ここにおいて、所定の数は、本例では、後述する第1ターゲット群Pの数と第2ターゲット群Qの数との和である。
ステップ125にて「Yes」と判定された場合、ステップ130に進み、上記ターゲットとして予め設定・登録された代謝物の濃度から、異常度nが取得される。具体的には、下記(1)式に基づいて異常度nが算出される。
n=(Conc−Mean)/SD ・・・(1)
上記(1)式において、上記Mean、及び上記SDは、上記図2のフローチャートを経て取得・記憶される値であって、対照サンプルに含まれる代謝物濃度の対数変換値の平均値、及び標準偏差である。上記Concは、上記ステップ120にて取得された濃度の対数変換値である。これにより、代謝物毎(あるいは代謝物の設定イオン毎)に、異常度nが算出・取得されるようになっている。
そして、ステップ135に進んで、上記ステップ130にて取得された異常度nに基づき、供試サンプルの提供元における代謝異常の有無が判定される。具体的には、予めデータベース等に記憶されている代謝物毎の異常度が検索・読み出しが実行され、上記ステップ130にて取得された異常度nと比較された後ルーチンがいったん終了する。上記異常度の読み出しに際し、より具体的には、下記データベースが利用される。即ち、代謝異常あるいは代謝経路の障害と、異常度nとの関連データベースが予め用意され、参照されるようになっている。このデータベースには5、40、130・・種類の代謝異常或いは代謝障害部位と化合物の関連ファイルが様々な形で様々な目的で多種類保存されている。ここにおいて、代謝異常あるいは代謝経路の障害がある場合においては、化合物が増加或いは減少する。このため、この増加或いは減少の度合が異常度nに相当する。従って、上記データベースは、代謝異常あるいは代謝経路の障害と、化合物の増加或いは減少(又は、化合物の増加度合い或いは減少度合い)との関連を表わすものと等価である。
他方、上記ステップ125にて「No」と判定された場合、ステップ140に進み、上記ターゲットとして予め設定・登録された代謝物の濃度(又は物質量)に基づき、代謝異常であるか否かの判定がなされる。この場合、濃度が所定の値よりも大きい場合に、代謝異常であると判定され、ルーチンがいったん終了する。即ち、この場合、異常度nが取得されることなく、また、異常度nに基づく代謝異常の判定がなされない。
対照サンプルにおける、平均値及び標準偏差の取得を実行する場合、図2のステップ205の工程からスタートする。即ち、ステップ205にて、対照サンプルの分析前処理が実施される。前処理は、図1のステップ105におけるものと同様である。
次に、ステップ210に進み、ターゲットの設定・登録が実施される。本工程は、上記ステップ110と同様のものである。
次いで、ステップ215に進んで、上記図1のステップ115と同様、GC/MSが利用されて代謝物のマススペクトルが取得・保存される。即ち、低質量から高質量までのイオンの強度、クロマト保持時間情報、質量m/zと検出強度とのデータセットからなるデータが取得されデータベース(後述するRAM44に相当)に保存されるようになっている。例えば、m/z=50〜800のフルスペクトルを計測しRAM44に保存しておき、この生データを用いるようにしてもよい。この場合、混在成分のイオンがあるとはいえ、保存されているマススペクトルを引き出して、自動ライブラリの一致度合によるだけでなく、操作者の目視により化合物を確認することも出来る。
続いて、ステップ220に進んで、サンプルの計測回数がN回(「N」は2以上の自然数)に到達したか否かが判定される。ステップ220にて「No」と判定された場合、ステップ215に再び進み、上記設定・登録された代謝物毎の生データが取得される。即ち、サンプルのデータ取得回数がN回に到達するまで、ステップ215、220の工程が繰り返し実行されるようになっている。
そして、ステップ220にて「Yes」と判定されると、ステップ225に進んで、ステップ210にて設定・登録されたターゲットが、上記Mean、及び上記SDの両方の取得が可能な第1ターゲット群P、上記Mean、及び上記SDの両方の取得が不能な第2ターゲット群Qとに区別される。加えて、第1ターゲット群Pにおいては上記Mean、及び上記SDが取得され、第2ターゲット群Qにおいてはrange、或いは上記Meanのみが取得される。区別方法としては、任意のターゲットにおける正規分布算出が不適と判定される場合(ゼロである場合も含む)、そのターゲットは第2ターゲット群Qに振り分けられる。一方、任意のターゲットにおける正規分布算出が妥当である場合は、第1ターゲット群Pに振り分けられる。ここにおいて、Meanは、第1ターゲット群Pに含まれるanalyteにおける、上述した繰り返し処理により取得されたマススペクトルから求められる濃度をそれぞれ対数変換した値の平均値(算術平均)である。SDは、第1ターゲット群Pに含まれるanalyteにおける、上述した繰り返し処理により取得されたマススペクトルから求められる濃度をそれぞれ対数変換した値の標準偏差である。即ち、このMean、及びSDは、上記設定・登録されたターゲットのうち、第1ターゲット群Pに含まれるanalyte毎に対応して算出・取得されるようになっている。
次に、ステップ230に進み、上記ステップ225にて取得された上記Mean及び上記SDが、メモリ等に記憶された後、ルーチンがいったん終了する。ここで記憶されている上記Mean、及び上記SDは、図1のステップ125における異常度nの算出に使用されるようになっている。本手法によれば、ある代謝異常があるか否かの特定や、異常の有無のスクリーニングが迅速化され得る。また、可能性のある(又は、可能性のない)代謝異常の範囲を示すことで、その範囲内(又は、範囲外)の異常の特定を迅速化することができる。
なお、代謝異常、或いは代謝経路上の障害部位が特定され、その特定に基づいて、その異常、或いはその異常により起きる不都合を軽減するための介入がなされることがある。本手法によれば、その介入を評価或いはモニターすることができる。また、介入の度合いを是正したり、調整することができる。例えば、介入のあり方を是正する手法としては、以下の実例が挙げられる。即ち、発症前の新生児期にmethylcitrateを指標に安定同位体希釈法で定量し、この異常度取得法で発見されたプロピオン酸血症の児が数例いた。特殊ミルクなどの治療が開始されたが、その後のモニタリングにおいて、methylcitrateの異常度取得(メチルマロン酸血症では、methylmalonateも追加)に加え、propionyl−CoAの前駆体であり、必須アミノ酸であるVal、Ile、Met、Thrなどを含むアミノ酸を安定同位体希釈法で定量し、これらの異常度が取得されるとよい。
また、本発明は症状などの出現以前に、代謝物が変動する多くの代謝異常の検出に用いることができる。具体的には、出生前診断、発症前診断、或いは無症状であるが、その異常を知ることが有益である代謝異常の検出に用いられる。以上が、異常度取得ならびに代謝異常の判定の概要の説明である。
(異常度の取得装置の説明)
次に、上記説明した方法を実現するための装置について説明する。図4は、メタボローム解析を利用して代謝異常の有無を判定するためのシステムを表わす図である。本システムは、分離部と、質量分析部と、異常度の取得装置40とを備えたものであり、このシステムにて代謝物或いはメタボロームの解析がなされるようになっている。
上記装置40は、インターフェイス41と、バス42と、ROM43と、RAM44と、CPU45と、を備えている周知のコンピュータである。インターフェイス41及びバス42は、電気的に互いに接続されている。ROM43、RAM44、CPU45、表示部46、及び入力部47は、バス42を介して互いに電気的に接続されている。また、上記質量分析部は、インターフェイス41を介してバス42と電気的に接続されることで、上記質量分析部から送出される信号が、上記判定装置40にて処理され得るようになっている。更に、上記GC/MSは、代謝物を含むサンプルを分離部へ注入可能に構成されている。
ROM43には、上述した図1のステップ110〜135の処理を実行するためのプログラム、及び図2のステップ210〜230の処理を実行するためのプログラムが格納されている。また、ROM43には、予め病因あるいは代謝障害部位と、代謝物の種類及びその異常度nとの関係を規定するデータベースが記憶されている。上述した図1のステップ130では、取得された異常度nと、このデータベースとに基づき、代謝異常の有無が判定されるようになっている。
RAM44には、図1、及び図2にて設定されるターゲットとしての代謝物が、一時的に登録(記憶)されるようになっている(図1のステップ110、及び図2のステップ210を参照)。更に、RAM44には、図2にて取得されるMean、及びSDが一時的に記憶されるようになっている(図2のステップ230を参照)。
CPU45は、ROM43に格納されている上記プログラムにおける処理を実行するようになっている。また、本システムが備える表示部(図示しない)にて、GC/MSにおけるマススペクトルや、取得された異常度等、判定に必要な情報が可視化されるようになっている。さらに、本システムが備える入力部(図示しない)にてターゲットとしての代謝物を設定・登録するための情報を入力可能に構成されている。以上が、メタボローム解析を利用して代謝異常の有無を判定するためのシステムの説明である。
(実際の作動)
次に、上述のように構成された装置40の実際の作動について説明する。本例では、供試サンプルとして新生児の尿を用い、先天代謝異常を特定する場合について説明する。この場合、高アンモニア血症であるという情報は有用であるが必須ではない。
<Mean及びSDの取得における装置の作動>
Mean及びSDの取得は、対照サンプルを用いて実行される。これは、供試サンプルにおける化合物の異常度nの取得の前に実行される。ここにおける対照サンプルは、新生児が被検者の場合には新生児の尿であり、健常で、代謝異常がないことが確認された新生児尿のサンプルである。このように、被験者の年齢と対照者の年齢を近しいものとすることが好ましく、このような対照をAge−matched controlと称呼する。ここにおいて、対照サンプル数は、例えば100とすることができ、大きいほどより真値に近い平均値Mean,標準偏差SDを得るのに寄与し得る。
先ず、対照サンプルとしての尿を前処理する(図2のステップ205を参照)。この前処理は、後述する供試サンプルの前処理と同じ処理である。
そして、対照サンプルをGC/MSの導入口に導入することで、GC/MSによる分析・測定が開始される。他方で、上記CPU45は、ROM43に格納されている上記プログラムにおける処理を実行する。即ち、上述した図2のステップ210〜230の処理が順に実行されていく。即ち、サンプル数100(N=100)に応じて濃度が100回取得されていくようになっている。次に、ターゲットとしての代謝物の種類を選定し、その情報を入力部47に入力する。
これにより、代謝物毎の濃度の対数値の平均値Mean、及び代謝物毎の濃度の対数値の標準偏差SDがそれぞれ取得される(上述した図2のステップ225を参照)。そして、取得されたMean、及びSDは、RAM44に一時的に記憶される(上述した図2のステップ230を参照)。この記憶されたMean、及びSDは、異常度nの代謝物の種類毎における取得の際に、同代謝物の種類に応じて読み出されて使用されるようになっている。以上が、Mean及びSDの取得における装置の作動の説明である。
<異常度の取得と、代謝異常の判定における装置の作動>
先ず、供試サンプルとしての尿を前処理する(図1のステップ105を参照)。即ち、37℃のもと上記尿をウレアーゼと10分間インキュベートする。次いで、アルコールにて除蛋白を行い、凝縮乾固させた後、トリメチルシリル化を実施する。この前処理により、GC/MSにて、有機酸、アミノ酸、クレアチニン、糖、糖アルコール、糖酸、ピリミジン、プリン、ヌクレオシド等を一斉に分析可能となる。
そして、供試サンプルをGC/MSの導入口に導入することで、GC/MSによる分析・測定が開始される。他方で、上記CPU45は、ROM43に格納されている上記プログラムにおける処理を実行する。即ち、上述した図1のステップ110〜130の処理が順に実行されていく。
これにより、代謝物毎の異常度nがそれぞれ取得されていくようになっている(上述した図1の125ステップを参照)。なお、異常度nの取得に際しては、RAM44に記憶されているMean及びSDの値が用いられる。
例えば、130種類の代謝障害の判定のためには、予めターゲットとして200の代謝物が選定される。他方、より狭い範囲の代謝障害の判定では、例えば、高アンモニア血症を伴う先天代謝異常の場合には、略40種類の病因が存在するので、この40種類の代謝障害の判定のために、予めターゲットとして数十の代謝物を選定しておいてもよいし、より多くを選定してもよい。そして、その情報を入力部47に入力する。
以下、高アンモニア血症を認める4名の新生児に対して、メタボローム解析を行った実例を示す。尿メタボローム解析の結果、原発性高アンモニア血症と呼ばれる代謝異常群のひとつであるカルバミルリン酸合成酵素欠損症(CPSD)が疑われ、CPSDとの、代謝物レベルの、いわゆる化学診断がなされた。次いで、この化学診断によれば、カルバミルリン酸合成酵素(CPS)の責任遺伝子の解析を行えば、1塩基変異によるミスセンス変異などを含む何らかの塩基配列異常が確認される可能性が極めて高いと予測された。そこで、染色体上の位置が分かっているCPSの責任遺伝子の解析を、解析の同意が得られた3名すべてに行った。その結果、新規遺伝子変異をふくむ変異が確認された。つまり、代謝物に基づいて、反応の障害部位が明らかにされ、CPS遺伝子の異常が、結果的に酵素触媒下の化学反応の明らかな障害をきたすものはすべて検索される。これが、メタボローム手法が包括的、実際的と評価される所以である。
図5は、本手法による異常度nの取得の例を示した図であって、4つの供試サンプルにおける上記16種類の化合物(analyte)毎の異常度nとAlanine/lactateでは異常度nの比を示している。Orotateは従来の有機溶媒抽出法による前処理とそれに続くGC/MS計測で、Uracil (Uracilはピリミジンの1種で、中性であるため回収される)と同様、分析できる。しかし、Orotateは極性の強い有機酸であるため、回収率が低く、従って、定量性にかける。一方、このような分画操作を経ない前処理ではOrotateの感度、定量性が優れる。Orotate、Uracilは、CPSD有無判定のための第1指標群である。そのため、両物質については、安定同位体希釈法、さらには同位体補正式も用いるなどして、より正確な計測・定量が行われる。両者は高アンモニア血症の有無にかかわらず、多くの代謝障害部位の判定にその増減が参照されるべき化合物であるので、このように定量され、さらに200のターゲットファイルにも含まれており、これらの異常度nは自動的に取得される。
また、プロリン (Pro)、グルタミン(Gln)、アスパラギン(Asn)、アラニン(Ala)、グリシン(Gly)、グルタミン酸(Glu)、アスパラギン酸(Asp)、リシン(Lys)、α−アミノアジピン酸(αAA)などのアミノ酸は、CPSDのための第2指標群を構成する。CPSDである場合、第2指標群の異常度nは高値であり、多くが3以上を示す。しかし、計測誤差或いは代謝変動の理由で2以下のものがあっても許容される。α−アミノ酪酸などの多くのアミノ酸もCPSDでは増加傾向を示す。
また、3−メチルグルタコン酸(3−Methylglutaconate(1))、3−メチルグルタコン酸(3−Methylglutaconate(2))、5−オキソプロリン(5OP)、N−acetylglutamate (NAGlu)、および、乳酸(Lactate)などの有機酸は、CPSDのための第3指標群を構成する。CPSDである場合、N−acetylglutamateを除き、その異常度nは著明に増加する。3−メチルグルタコン酸の増加は他の多くの代謝異常でも認められるので、有機酸のみの分析、或いは3−メチルグルタコン酸のみの増減から、代謝異常の有無、特定、鑑別はなされるべきではない。5−オキソプロリン(5OP)はCPSDでは著明に増加する(本疾患では増加しなければならない、実際、図5において、case 1では異常度は9.3ときわめて大きい。一方、この患児ではグルタミンが0である。グルタミンの誘導体の5−オキソプロリン(5OP)の有機酸が9.3と大きく、これはグルタミン増加と見なすことができる。つまり、グルタミンとしての見かけの増加がなくとも、CPSDは
除外しない。
このように、代謝物あるいはanalyteについて、その値、範囲、或いは異常度から、一義的に増加或いは減少、あるいは異常の有り無しに振り分けることはせず、異常度つきのターゲットのリストが作成され、これらn値を統合的に評価して判定される。そのためにこれらのn値が取得されていることが、重要である。空腹、感染などのストレス下にあっては、代謝系はそうでないときと大きく変わることがあるので、これらのリストから本質的な情報を抽出、選択することが必要である。
次に、Lactateも増加する。実際、CPSDでは誤って原発性高乳酸血症が疑われるほどにLactateが増加することがある。しかし、pyruvate がアミノ基転移を受けて生ずるAlanine(第2指標群) が増加しており、Ala/Lactateの異常度nの比をとると1を越えることが多い。従って、乳酸のみでなく、第1−第3指標群を総合し、その異常度や物質量などを統合的に捉えることで、判断がなされる。
また、図5において、第1指標群のOrotate、Uracilにおける異常度nは多くが「2」以下、あるいはどちらかといえばマイナスであって、図5の実際のデータでは負の異常度を示している。ここにおいて、第2指標群は多くが4以上のn値を示すが、計測誤差或いは代謝の変動で4以下のものがあっても許容される。第3指標群を構成する3−メチルグルタコン酸(1,2)の異常度nは著明に大きい。5−オキソプロリン(5OP)も大きいことが必須条件であり、これが大きいときGlnが増加していなくとも、CPSDを除外しない。
従来の有機酸あるいはアミノ酸分析(解析)ではCPSDを効果的にスクリーニングあるいは特定できず、代謝物解析はCPSDの診断支援に有用でないと考えられている。さらに、これらの代謝物の異常度を全て取得したり、そのリストが作成されることはなかった。しかし、Orotateを特に安定同位体希釈法で求め、第1指標としたこと、その異常度を取得したこと、3−メチルグルタコン酸、5−オキソプロリンなどの有機酸を重要な指標としたこと、同一試料のアミノ酸も同一計測で評価し、それらが全体として増加すべきであること、但し、Glnのような従来、重要かつ必須の指標とされていたものが、代謝変動、体内外での、或いは分析中の分解、分析誤差などで低値を示しても、このひとつだけで、除外してはいけないと考えること、などなど、第1−第3指標群を総合し、個々の代謝物の異常度(或いは物質量)を統合的に捉えることでCPSDと判定できる。
8種の原発性高アンモニア血症のうち、orotateが増加、或いは増加する傾向のある6種の代謝異常がある。これらにおいても、先の第1指標群が重要である。ただし、異常度nは逆に、多くの場合著しく大きい。Orotateに加え、orotidine、uridineなどのヌクレオシドや、β−ureidopropionateやβ−ureidosuccinateなどのウレイドが増加する。アミノ酸である第2群はおおむね同様の増加を示す。続発性高アンモニア血症には、methylcitrate、methylmalonateなどが増加する10種以上の代謝異常(有機酸血症と呼ばれる)が知られており、二次的に高アンモニア血症をきたすことがある。これらも、200の代謝物の設定で鑑別あるいは除外できる。
これらの指標物質は極性あるいは低極性有機酸、アミノ酸、核酸塩基、ヌクレオシド、ウレイドなど、多岐のクラスの化合物であり、従来、各クラス毎に化合物の計測を要した。各クラス毎の化合物群、複数のクラスの化合物群いずれでも、それらの異常度を含むリストが作成されることはなく、また、これらが統合的に評価されることはなかった。本方法によれば、1回の代謝物計測と、その解析を通して、代謝物あるいは指標物質の物質量、濃度、あるいは変動の度合いの自動一斉取得と、その結果を統合的に捉え、代謝異常についての判定が成される。このような一斉計測、一斉異常度取得、統合評価により、上記図5における4つの供試サンプルすべてが、CPSDであると判定される。以上が異常度の取得と、装置の作動の説明である。
なお、本例においては、異常度の取得装置40にて取得される異常度nに基づき、代謝異常の有無等の判定(即ち、診断)が人によりなされているが、これに代えて、装置40が、上記判定や診断のプログラムがROM43に組み込まれるように構成されてもよい。
以下、図6を参照しながら、プロピオン酸血症における介入の実例について説明する。新生児の尿の代謝物解析から、methylcitrateを第1指標にプロピオン酸血症と判定し、その判定をもとに責任遺伝子について、家族の同意を得て遺伝子解析がなされ、propionyl−CoA carboxylaseに対応する遺伝子の変異(1塩基変異の、しかも新規変異であって、その後、日本人に多い変異であることが分かった)が確認された児が数例いる。図6は、その1例に於いて、当該特殊ミルクなどの食餌療法による介入が、生後まもなく開始され、その間、継続しているモニタリングのデータである。
Methylcitrateと3−hydroxypropionateは当該疾患における指標(マーカー)と考えられているが、この表から、Methylcitrateが3−hydroxypropionateより、マーカーとしてはるかに優れることがわかる(有機溶媒抽出法では極性の強いMethylcitrateの回収率が悪く、定量性にかけるため、3−hydroxypropionateと等価な指標と考えられており、そのために、スクリーニングや化学診断において誤ることがあったり(偽陰性など)、診断が迅速になされないことがある。さらに、当該疾患の第1指標であるMethylcitrateが指標とさえ設定されないことがある)。Methylcitrateの回収率の高い前処理で、しかも、安定同位体希釈法で定量し、異常度を取得することによって、日本人に多い当該疾患の軽症型でも、あるいは発症前でも、あるいは寛解期に於いてさえ、化学診断がなされる。
当該代謝異常ではpropionyl−CoAの代謝(カルボキシル化)に関わる酵素の機能低下によって、その反応は障害され、その結果、propionyl−CoAが蓄積する。高濃度のpropionyl−CoAは生体に様々な影響を及ぼすとされている。一方、蓄積したpropionyl−CoAの副反応によりmethylcitrateが生成される。さて、食餌療法などによって、propionyl−CoAの前駆体であるアミノ酸を制限することにより、propionyl−CoAの蓄積が緩和され、生体への悪影響が軽減される。しかし、これらのアミノ酸は栄養学的に必須であるので、制限しすぎると、生体として大きな不都合をきたす。従って、過剰でなく、健常範囲であり、不足しないことが重要である。そのためには、これらの値をこの異常度として取得、評価することが、好適である。
ここにおいて、Val、Ile、Met、Leu、Glyは安定同位体希釈法で濃度を求めている。なお、GlyとLeuは参考に計測している。5才時、Val、Ileの異常度nが−2.6、−3.0と小さいが、このとき、Methylcitrateは未だ5.8と大きい。このことから、Methylcitrateのみをモニタリングの指標とせず、あるいは、たとえば、その値を4以下、あるいは3以下などに合わせることをせず、Val、Ile、Met、Thrを含むアミノ酸とともに、綜合的な評価が成されるとよい。その評価にも、異常度の一斉取得が好適である。
このような異常度取得、しかも、安定同位体標識化合物或いは極めて、構造類似の化合物を内標準物質として、物質量を測り、或いは定量値を求め、その異常度を取得することは、例えば、糖尿病のマーカーの異常度の一斉取得であれば、その発症前、治療中のモニタリング、或いは、その予後予測に好適である。
以上説明したように、本発明によれば、計測・取得された代謝物の中から、出来るだけ多くの代謝物についての信頼できる情報をうるために、出来るだけ多くの代謝物(化合物)が予めターゲットとして登録され、この登録されたもののみが限定して定量・検索され得る。また、対照サンプルにおける代謝物濃度の対数値の平均値Mean、及び標準偏差SDが利用されて異常度nが算出され得る。このため、異常度nが代謝の異常度合を表す指標となり得、容易に代謝異常の有無が判定され得る。以上のことから、ハイスループットな異常度nの取得、及びその異常度nを利用した代謝異常の有無の判定をすることができる。
この方法により、健常群と異なるある疾患のバイオマーカーの探索、例えば、ある種の心疾患、ある種のがんなどのマーカー検索、疾患の進展を左右するバイオマーカーの探索、医療現場で起きる可能性のある後天的代謝異常の検索など、代謝物が変動する全ての課題の問題把握から解決に用いることができる。たとえば、生体肝移植(LRLT)前後の血漿中指標物質の濃度の変動から、臓器移植の初期の変化を端的に迅速に捉えることが出来る。また、再生医療の評価にも同じく用いることができる。
以下、図7を参照しながら、上記LRLT前後の尿代謝物の解析の実例について説明する。図7(a)は、この異常度の一斉取得により、原発性高アンモニア血症のひとつであるornithine transcarbamylase(OTC)欠損症(OTCD)と化学診断された女児の、肝移植前後のorotateの異常度を示している。この図のように、2種類のイオンが選択されて、それぞれの異常度と、自動ライブラリ一致率が取得・表示されている。
図7(b)に、この移植に先立ち、母親のドナーとしての適正をみるために行われた、アロプリノール負荷試験成績を示した。ここにおいては、児と母親で条件をそろえて負荷試験がなされた。ここでもorotateの異常度のみ示している。orotateは変動が大きいが、負荷前も患者では、6近い異常度を示すことがあり、24時間平均では約4である。負荷後はどの時間帯でも高い。一方、母親においては、負荷前がほぼ1であり、負荷後も軽度の増加にすぎず、ドナーとしての適正ありと判定された。肝移植後、児ではorotateは著明に減少し、生活の質も見違えるほどに改善された。このように異常度取得により、直接的に、客観的評価ができる。
また、本解析法では、結石の成因となる先天代謝異常で、現在でも診断が遅れている高蓚酸結石I型、II型、或いはAdenine Phosphoribosyltransferase Deficiency等が、迅速かつ容易に化学診断され得る。実績として、これまで全例で遺伝子異常が確認されている。このように、確実な診断の根拠を迅速に提供することは、患者や家族、ひいては、国民や国家にとって有益となり得る。
上述の記述例は代謝異常であって、その原因が個体における遺伝子異常などの先天的要因、或いは遺伝子発現の異常であったが、代謝物解析では、後天的、或いは外因的要因、即ち化学物質や薬剤などの投与によって、直接或いは間接的に、ある経路或いは反応が障害される場合も、その異常をスクリーニング或いは、特定できる。例えば、化学物質の作用点が、ある代謝物そのものであったり、或いは酵素機能或いは物質の転送機能を担う蛋白質であったり、ある遺伝子であったりする。代謝物の変動と、異常度の一斉取得は、投与物質により、直接或いは間接的に障害されている反応系を明らかにし、化学物質の作用点あるいは作用機序解明に活用できる、あるいはその迅速化に寄与する。この場合、遺伝子への作用がなければ、遺伝子では難しい解析も、メタボローム解析では明らかに出来ることが多い。
また、本発明によれば、薬剤性肝障害の有無や、その肝障害が肝細胞障害型か、胆汁うっ滞型かなどの評価にも、代謝物質の異常度の一斉取得から、たとえば、チロシン症に近い異常度リストか、シトリン欠損症(胆汁うったいを伴う代謝異常)に近い異常度リストか、などによって、判定できる。あるいは、迅速な判定に寄与する。腎障害についても、尿と血漿或いは、尿と血清などでの異常度リストの統合から、評価される。
また、本発明は、遺伝子機能解明にも実際的な有用な手法となる。遺伝子改変したマウスの体液、肝臓などの臓器や細胞などのhomogenateにつき、対照サンプルとの比較で代謝経路のどこに関与する遺伝子かがわかることが多い。このように、多くの生物の生命科学における基礎研究から応用研究にいたる様々な課題解決のツールとして役立てることが出来る。
なお、本発明は、生物学的サンプルのメタボローム解析のみならず、人工サンプル、環境サンプル中の化合物を含む試料にも適用でき、更には、生体試料ではない酒やワインなどにおける酵素反応での熟成の有無にも応用できる。

Claims (8)

  1. 代謝物を含むサンプルの中から、計測対象となる所定の代謝物を予め設定する代謝物設定工程と、
    前記予め設定された代謝物の物質量に基づく値の基準値からの乖離度合を、異常度として取得する異常度取得工程と、
    を備えた代謝物の異常度の取得方法であって、
    前記異常度取得工程は、
    代謝物を含むサンプルである対照サンプルについての質量分析を利用して得られる前記代謝物の物質量に関する情報の中から、前記代謝物設定工程により予め設定された代謝物に対応する情報を抽出・参照し、前記参照される情報に基づいて前記代謝物の物質量に基づく値の基準値を取得する第1工程と、
    前記計測対象となる代謝物を含むサンプルである供試サンプルについての質量分析を利用して得られる前記代謝物の物質量に関する情報の中から、前記代謝物設定工程により予め設定された代謝物に対応する情報を抽出・参照し、前記参照される情報に基づいて前記代謝物の物質量に基づく値を取得する第2工程と、
    前記第1工程にて取得された基準値と、前記第2工程にて取得された物質量に基づく値とに基づいて、前記乖離度合を異常度として取得する第3工程と、
    を備え、
    前記第1工程は、
    前記対照サンプル中の複数の代謝物を化合物毎に分離するとともに、前記分離された代謝物毎の前記質量分析により前記分離された代謝物毎のマススペクトルを取得する工程を複数回実行し、
    前記複数回の実行毎に取得されたマススペクトルに基づく濃度の対数値の平均値を、前記基準値として取得するように構成され、
    前記第2工程は、
    前記供試サンプル中の複数の代謝物を化合物毎に分離するとともに、前記分離された代謝物毎の前記質量分析により前記分離された代謝物毎のマススペクトルを取得し、
    前記取得されたマススペクトルに基づいて濃度を取得するように構成され、
    前記第3工程は、
    前記第1工程にて取得された前記平均値と、前記第2工程にて取得された前記濃度の対数値とに基づいて、前記乖離度合を異常度として取得するように構成された
    代謝物の異常度の取得方法。
  2. 請求項1に記載の代謝物の異常度の取得方法において、
    前記第1工程は、
    前記基準値としての前記平均値に加え、
    前記複数回の実行毎に取得された各濃度の対数値の標準偏差をも取得するように構成され、
    前記第3工程は、
    前記乖離度合として、
    前記第1工程にて取得された前記平均値と、前記第2工程にて取得された前記濃度の対数値との偏差を、前記第1工程にて取得された前記標準偏差で除して得られた値を用いるように構成された
    代謝物の異常度の取得方法。
  3. 請求項1又は請求項2に記載の代謝物の異常度の取得方法において、
    前記第1工程、及び前記第2工程は、
    前記対照サンプル及び前記供試サンプル中の複数の代謝物を化合物毎に分離するに際し、
    クロマトグラフを利用するように構成された
    代謝物の異常度の取得方法。
  4. 請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載の代謝物の異常度の取得方法において、
    前記第1工程、及び前記第2工程は、
    前記濃度の取得に際し、
    前記代謝物の質量分析により得られる前記代謝物の質量スペクトルであって、m/zと検出強度との関係を表す質量スペクトルにおけるピークを選択し、
    前記選択されたピークの大きさに基づいて前記代謝物の濃度を取得するように構成された
    代謝物の異常度の取得方法。
  5. 請求項4に記載の代謝物の異常度の取得方法において、
    前記第2工程は、
    前記質量スペクトルのピークの選択に際し、
    1種の前記代謝物についての3つの異なる前記m/zに対応する3つのピークをそれぞれ選択し、
    前記濃度の取得に際し、
    前記選択された各ピークの大きさに基づいて1種の前記代謝物についての3つの異なる濃度をそれぞれ取得するように構成され、
    前記第3工程は、
    前記第1工程にて取得された前記平均値と、前記第2工程にて取得された前記3つの異なる濃度の対数値とに基づいて、1種の前記代謝物についての3つの前記乖離度合を3つの異常度として取得するように構成された
    代謝物の異常度の取得方法。
  6. 請求項1乃至請求項5の何れか一項に記載の代謝物の異常度の取得方法、又は、代謝異常の判定方法をコンピュータに実行させる、コンピュータで読み取り可能なプログラム。
  7. 代謝物を含むサンプルの中から、計測対象となる所定の代謝物を予め設定する代謝物設定手段と、
    前記予め設定された代謝物の物質量に基づく値の基準値からの乖離度合を、異常度として取得する異常度取得手段と、
    を備えた代謝物の異常度の取得装置において、
    前記異常度取得手段は、
    代謝物を含むサンプルである対照サンプルについての質量分析を利用して得られる前記代謝物の物質量に関する情報の中から、前記代謝物設定工程により予め設定された代謝物に対応する情報を抽出・参照し、前記参照される情報に基づいて前記代謝物の物質量に基づく値の基準値を取得する第1手段と
    前記計測対象となる代謝物を含むサンプルである供試サンプルについての質量分析を利用して得られる前記代謝物の物質量に関する情報の中から、前記代謝物設定工程により予め設定された代謝物に対応する情報を抽出・参照し、前記参照される情報に基づいて前記代謝物の物質量に基づく値を取得する第2手段と、
    前記第1手段にて取得された基準値と、前記第2手段にて取得された物質量に基づく値とに基づいて、前記乖離度合を異常度として取得する第3手段と、
    を備え、
    前記第1手段は、
    前記対照サンプル中の複数の代謝物を化合物毎に分離するとともに、前記分離された代謝物毎の前記質量分析により前記分離された代謝物毎のマススペクトルを取得する工程を複数回実行し、
    前記複数回の実行毎に取得されたマススペクトルに基づく濃度の対数値の平均値を、前記基準値として取得するように構成され、
    前記第2手段は、
    前記供試サンプル中の複数の代謝物を化合物毎に分離するとともに、前記分離された代謝物毎の前記質量分析により前記分離された代謝物毎のマススペクトルを取得し、
    前記取得されたマススペクトルに基づいて濃度を取得するように構成され、
    前記第3手段は、
    前記第1手段にて取得された前記平均値と、前記第2手段にて取得された前記濃度の対数値とに基づいて、前記乖離度合を異常度として取得するように構成された
    代謝物の異常度の取得装置。
  8. 代謝物を含むサンプルの中から、計測対象となる所定の代謝物を予め設定する代謝物設定工程と、
    前記予め設定された代謝物の物質量に基づく値の基準値からの乖離度合を、異常度として取得する異常度取得工程と、
    を備え、
    前記異常度取得工程は、
    代謝物を含むサンプルである対照サンプルについての質量分析を利用して得られる前記代謝物の物質量に関する情報の中から、前記代謝物設定工程により予め設定された代謝物に対応する情報を抽出・参照し、前記参照される情報に基づいて前記代謝物の物質量に基づく値の基準値を取得する第1工程と、
    前記計測対象となる代謝物を含むサンプルである供試サンプルについての質量分析を利用して得られる前記代謝物の物質量に関する情報の中から、前記代謝物設定工程により予め設定された代謝物に対応する情報を抽出・参照し、前記参照される情報に基づいて前記代謝物の物質量に基づく値を取得する第2工程と、
    前記第1工程にて取得された基準値と、前記第2工程にて取得された物質量に基づく値とに基づいて、前記乖離度合を異常度として取得する第3工程と、
    を備え、
    前記第1工程は、
    前記対照サンプル中の複数の代謝物を化合物毎に分離するとともに、前記分離された代謝物毎の前記質量分析により前記分離された代謝物毎のマススペクトルを取得する工程を複数回実行し、
    前記複数回の実行毎に取得されたマススペクトルに基づく濃度の対数値の平均値を、前記基準値として取得するように構成され、
    前記第2工程は、
    前記供試サンプル中の複数の代謝物を化合物毎に分離するとともに、前記分離された代謝物毎の前記質量分析により前記分離された代謝物毎のマススペクトルを取得し、
    前記取得されたマススペクトルに基づいて濃度を取得するように構成され、
    前記第3工程は、
    前記第1工程にて取得された前記平均値と、前記第2工程にて取得された前記濃度の対数値とに基づいて、前記乖離度合を異常度として取得するように構成され、
    前記第3工程にて取得された前記異常度と、
    前記異常度と代謝異常の有無との関係、及び/又は、前記異常度と代謝異常発生の可能性の有無との関係を規定するデータと、
    に基づいて前記代謝異常の有無、及び/又は、前記代謝異常発生の可能性の有無を判定する第4工程と、
    前記第4工程の判定結果に基づいて診断を行う第5工程と、
    をコンピュータに実行させる、コンピュータで読み取り可能なプログラム。
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