JP5518393B2 - マグロの養殖方法と養殖用生け簀 - Google Patents

マグロの養殖方法と養殖用生け簀 Download PDF

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Description

本発明は、従来と同様の形状の生け簀を用いて、稚魚が生育段階において死亡することを減らして成魚までの生存率を高くするマグロの養殖方法と養殖用生け簀に関する。
回遊を行う魚類は、マグロ、カツオ、ブリ、ヒラマサ、カンパチ、カジキ、スズキ、クロダイ、シマイサギ、サバなどであり、これらの魚は一般に高い遊泳能力を備え、餌の発生、水温の変化、繁殖期などに応じて回遊を繰り返し、従来から漁業における主たる捕獲対象である。旧来の漁業は、自然環境の再生産に負うところが大きく、その漁撈活動では生産性が低く、魚類の再生産の限度を下回っていた。一方、現在の漁業は、漁具の改良と開発、流通網の整備、冷凍保存技術の発達などに伴って生産量が急増し、その漁場も地球規模に拡大した反面、魚類などの天然資源の乱獲が問題となり、生物資源の枯渇とともに乱獲防止によって水産資源の価格も急上昇している。
生物資源の安定供給および価格安定化の要請から、魚類の養殖および魚放流による栽培漁業が盛んになってきた。養殖とは、狭義には魚介類などの水棲生物を人工的に育てることを意味し、魚類に関しては卵または稚魚から育てることが多い。魚類について、成魚から卵を採り、人工孵化の後に成魚にして、さらに成長した大魚から卵を採って人工孵化させることを完全養殖と称する。完全養殖は親がどのように子を誕生させ、孵化させるのかという部分まで研究を行う必要があり、従来不可能であったウナギやマグロなどでも完全養殖の実験が成功しているが、成魚の形態、個体の生存率、生産コスト、全生育時間の点から稚魚から養殖する方が依然として経済的に有利である。
稚魚からの養殖について、稚魚(juvenile)とは、魚類の成長過程中での初期の段階であり、生物学上は仔魚(larva)と稚魚は明確な定義で区別され、仔魚の次の段階が稚魚である。一般に、魚類は、後期仔魚以降に鰭条数や脊椎骨数が定数に達し、稚魚においてほぼその種の特徴を示すまで成長しても、体の斑紋や色彩などはなお成魚と異なっている。稚魚からの養殖は、殆どの魚類において可能であっても、生産コストと販売コストとの兼ね合いからクロマグロ、マダイ、トラフグのような高級魚の養殖が大半であり、その養殖に用いる生け簀として特許文献1や特許文献2などが開示されている。また、回遊魚であるマグロやカツオなどの養殖用の生け簀は、その提案自体が多くなく、例えば、特許文献3および特許文献4が存在する程度である。
特開平6−284838号公報 特開平8−228634号公報 実開平4−55270号公報 特開2007−151476号公報
マグロやカツオなどの回遊魚の稚魚を特許文献1や特許文献2に開示の生け簀で養殖すると、その生け簀をどんなに大型化しても、約半年から数年を要する成魚までの生育期間内に、稚魚が生け簀の網面に衝突して頭部損傷で斃死に至る個体数が非常に多くなり、成魚までの生存率は高くても60%程度にしかならない。一方、完全養殖の場合には、同じ回遊魚であっても稚魚まで成長すると、その後から成魚までの生存率は、稚魚からの養殖と比べて遙かに高い数値になっている。
稚魚が生け簀の網面に衝突する問題について、特許文献3では、マグロやカツオなどの大型回遊魚が網面に衝突しないように、生け簀の網面に沿って魚類が認識できるような突状物を形成している。また、特許文献4では、養殖マグロの遊泳領域として、半径が5m以上の内側仕切り網の外側に外側仕切り網を設け、内外の仕切り網を円形環状に配置することにより、環状網内を養殖マグロが環状に高速で遊泳することができ、高速遊泳時に網面に衝突することを回避させる。
マグロの養殖では、特許文献3または特許文献4に開示の生け簀を使用しても、約半年から数年に至る長い育成期間において養殖魚の習性が稚魚の時から変化するので、生存率は良化しても数%であると予測できる。しかも特許文献3について、マグロは高速遊泳であるので生け簀のサイズが必然的に大きくなり、該生け簀の網面全体に魚類が認識できる突状物を形成することは、製造コストの点で実用性を欠いている。この点は、特許文献4もほぼ同様であり、大型の環状生け簀では製造コストが総体的に高くなる。
本発明者は、養殖用生け簀においてマグロが育成期間内に斃死する問題を種々検討し、その検討に従って数年に亘って研究を重ねた結果、非常に簡単な生け簀の構造で稚魚斃死の問題を解決するに至った。したがって、本発明は、マグロの稚魚から成魚までの生存率を数十%高める養殖方法を提供することを目的としている。本発明の他の目的は、内径が30m以上の大型の生け簀を用い、マグロの稚魚が餌魚の小魚を追いかけて網面に衝突することがない養殖用生け簀を提供することである。
本発明に係る養殖方法では、海中の生け簀内でマグロを稚魚から養殖する際に、所定数の稚魚を海中の生け簀内に放流する。その稚魚が餌魚の小魚を追いかける習性を残している場合において、その稚魚の生育段階が進んで未成魚期または幼魚期に達して小魚の追いかけ習性が消失するまで、生け簀の少なくとも周辺網部には、餌魚の小魚が通過できないほど小さい目合いの網を用い、生け簀内に小魚が侵入することを未然に防止する。本発明の養殖方法において、養殖マグロがクロマグロであり、クロマグロの稚魚が生け簀の周辺網部に衝突して負傷することを回避させると好ましい。
本発明に係る養殖用生け簀は、浮力が保たれた環状の枠体で海面を区画し、該枠体から網部を海中に設置した内径数十mに達する大型である。本発明の養殖用生け簀は、合成繊維網である周辺網部と、合成繊維網であって該周辺網部の下周辺に連結する底網部と、枠体内に取り付けて鳥などの侵入を防止する天井網部または海面網部とを備えて海中の一部を囲い込んでいる。この養殖用生け簀において、周辺網部の目合いは稚魚の養殖魚が逃散できず且つ餌魚の小魚が生け簀内に侵入しないような大きさであり、底網部の目合いは稚魚の養殖魚が逃散できない大きさである。
本発明に係る他の養殖用生け簀は、合成繊維網である周辺網部と、合成繊維網であって該周辺網部の下周辺に連結する底網部と、生け簀の組み立て後に周辺網部の内周に取り付けて周辺網部全体を取り囲む内側網部と、枠体内に取り付けて鳥などの侵入を防止する天井網部または海面網部とを備えて海中の一部を囲い込んでいる。この養殖用生け簀において、内側網部は周辺網部より目合いが小さく、該内側網部の目合いは稚魚の養殖魚が逃散できず且つ餌魚の小魚が生け簀内に侵入しないような大きさであり、周辺網部および底網部の目合いは稚魚の養殖魚が逃散できない大きさである。
本発明に係る別の養殖用生け簀は、合成繊維網である周辺網部と、合成繊維網であって該周辺網部の下周辺に連結する底網部と、周辺網部の内周に設置した1層または2層の重合網部と、枠体内に取り付けて鳥などの侵入を防止する天井網部または海面網部とを備えて海中の一部を囲い込んでいる。この養殖用生け簀において、1層、2層または3層の重合網部は周辺網部より目合いが小さく、最内側の重合網部の目合いは稚魚の養殖魚が逃散できず且つ餌魚の小魚が生け簀内に侵入しないような大きさであり、周辺網部および底網部の目合いは稚魚の養殖魚が逃散できない大きさである。
本発明に係る養殖用生け簀において、環状の垣網部を海面上に枠体から立ち上げ、該垣網部の上周辺を天井網部の周辺と密に連結することが好ましい。
本発明に係る養殖用生け簀において、周辺網部、内側網部または最内側の重合網部の目合いが3〜10mmの大きさであり、好ましくは23〜26節(4〜8mm)の大きさである。環状の周辺網部の深さは、5〜15mであると好ましく、さらに好ましくは7〜9mである。また、海面から網底までの距離は8〜15mであると好ましく、さらに好ましくは10〜15mである。目合いとは、網目の大きさであり、結節(結び目)の数で表す方法であると5寸(約15.1cm)の中にある結節の数で網目の大きさを表し、一方、1目の長さを寸で表す寸目方法であれば1目の大きさは1寸(約3cm)になり、寸目で表す場合には、数値が大きくなるほど目合は大きくなる。
本発明に係る養殖方法では、マグロの餌魚である回遊性のイワシ、アジなどの小魚を生け簀の中に侵入させないことにより、稚魚の養殖魚が小魚類を追いかけて周辺網部に突進衝突することを回避させる。マグロの餌魚である回遊性の小魚は、生け簀の周辺網部を通過できないならば生け簀内に入り込むことがなく、マグロの稚魚が餌魚である小魚を追いかける習性を残していても、生け簀内の小魚を補食するために高速で突進することがなく、その稚魚が周辺網部に衝突して斃死することもない。この結果、本発明の養殖方法を利用すると、全養殖期間において養殖魚の生存率が著しく増大し、高価なマグロの成魚を無駄なく出荷することができる。
本発明に係る養殖用生け簀は、内径数十mに達する大型であっても、合成繊維網である周辺網部の目合いを小さくするだけであり、底網部の目合いは従来のままでよいから、製造コストの上昇は比較的小さい。本発明の養殖用生け簀では、その上方に天井網部と垣網部を設置しているので、海面を遊泳する小動物や魚が水平に飛翔して生け簀内に入り込んだり、海鳥やトビウオが生け簀1内に入り込むことを防ぎ、高価な養殖魚が鳥インフルエンザなどに罹病することを未然に防止できる。
この養殖用生け簀を用いてマグロを稚魚から養殖すると、マグロの育成段階においてマグロが生け簀網に衝突することが激減し、魚体の外皮およびそれを包む粘膜が生け簀網との接触で取れることが殆ど起こらない。このため、マグロの魚体表面の抵抗力が損なわれず、ワクチンなどを投与しなくても、過密養殖時に発生しやすいウイルスや細菌による感染症に掛かりにくくなる。
本発明に係る養殖用生け簀を示す概略斜視図である。 養殖用生け簀の概略平面図であり、枠体の周囲にフロートを取り付けている。 養殖用生け簀の変形例の要部を示す概略部分断面図である。 周辺網部の内周に取り付ける内側網部を展開して示す概略側面図である。 養殖用生け簀の別の変形例を示す図3と同様の部分断面図である。
本発明に係る養殖用生け簀1は、スズキ目・サバ科・マグロ属(Thunnus)に分類されるマグロを養殖するために使用し、このマグロとして、クロマグロ、メバチ、ミナミマグロ、ビンナガ、キハダ、コシナガ、タイセイヨウクロマグロ、タイセイヨウマグロが例示でき、上位分類のマグロ族であるカツオ、ソウダガツオ、スマを含んだり、名称だけが類似するカジキマグロやイソマグロでも可能である。生け簀1は、多数尾のマグロを養殖するために内径が数十mに達する大型であり、通常、生け簀1の内径は30〜80mである。
生け簀1は、マグロだけでなく、他の大型高級魚の養殖に使用することも可能であり、主として海中に設置し、急流でないならば大河川や湖沼に設置することも可能である。生け簀1の環状枠体2は、八角形平面の鋼管枠またはプラスチック枠であり、図1のように枠体自体に浮力があればフロートは不要であり、該枠体に浮力がなければ図2のように複数個のフロート3を取り付けることによって海面に浮いている。
環状枠体2について、鋼管枠は、最も一般的で設計上の自由度も高く、円形、正四角形、六角形や八角形などの多角形のように平面形状も多様である。鋼管枠では、腐蝕を軽減するために、錆止め塗料の塗装や亜鉛メッキ加工などの処理を施している。環状枠体2は、高密度ポリエチレンなどを素材としたプラスチック枠でもよい。例えば、高密度ポリエチレン製枠であると、それ自体に浮力があるのでフロートは不要であり、金属類を全く使用していないので耐用年数は半永久的である。この環状枠体は、高強度ゴムパイプ式の枠、フレームを使用しない連結フロート式の枠または半割フロートを用いたフロート支持枠などでもよい。
生け簀1は、環状枠体2に加えて、海上の海中の天井網部5および垣網部7と、海中の周辺網部8および底網部10とで構成し、所望に応じてフロート3、綱、沈子、錨、目印となる浮き樽などを用いる。網部5,7,8,10の材料繊維には、麻糸、綿糸、絹糸、苧糸、藁、葛糸、蚕糸を含む植物繊維や動物繊維などの天然繊維、合成繊維または金網があり、現今では殆ど合成繊維網が用いられている。天然繊維単独の場合には、通常、網に付着する有機物や温湿度の変化、夏季には付着するプランクトンなどによって、繊維が腐敗する速度が速く、その使用や保存にあたって細心の注意を払う必要がある。一方、合成繊維網の利点は、海中や水中で腐敗せず且つ過酷な環境に耐えうる網強度を有し、さらに人為的な操作を潤滑にするためにさまざまな網表面加工などを施すことが可能である。
用いる合成繊維網には、多くの種類があり、用途に応じて最適な繊維素材を選択する必要がある。この繊維素材として、ナイロンなどのポリアミド系、テトロンなどのポリエステル系、ハイゼックスなどのポリエチレン系、綿糸を含むこれらの混紡糸が例示できる。養殖魚が接触する蓋然性がある周辺網部8および底網部10には、例えば、比較的柔軟なクレモナ糸(商標名、クラレが生産するビニロンとポリエステルの混紡糸)またはスパン糸(綿糸とポリアミド糸との混紡糸)が好ましい。一方、天井網部5および垣網部7は、保形性が高いことが望ましく、一部または全部に金網を使用することも可能である。
網部5,7,8,10における網構造は、一般的な有結節網であり、このほかに無結節網や亀甲網であってもよい。有結節網は、一般に3本撚りの糸を使うごく一般的な網であり、糸を結んで網とするもので結び目の形で種類が分かれ、例えば、蛙又網、二重蛙又網、 蛙又の結びを二重巻きにしたもの、テグスのように滑りやすい糸の編網などがある。無結節網は、糸を結ぶのでなく、一般に2子糸を使って繊維を撚り込むことで網を形成し、有結節網との違いについて、結び目がないので連接部が平面的であって重量が軽く嵩張らない。無結節網は、目合いが正確で落目がなく、見た目が良くて水中での抵抗や摩擦が少ない反面、網が破れた場合に破網部がほつれやすくて網地の修理に時間が掛かり、製網する場合に編網能力が有結節網と比べてやや劣っている。
環状枠体2から垂下する周辺網部8は、図1において環状枠体2と同様の八角形平面であり、この平面形状は環状枠体2が正八角形であるためである。この周辺網部は、環状枠体が他の平面形状で海面を区画するならば、その枠体の区画形状に合致させればよい。周辺網部8は、通常、回遊性の魚が周辺網部下辺を容易に通過できない程度の深さを有し、その深さは通常5〜15mであり、好ましくは7〜9mである。周辺網部8には、比較的柔軟で高強度のクレモナまたはスパン製の有結節網であれば望ましい。
周辺網部8の目合いは、稚魚の養殖魚が逃散できず且つ餌魚の小魚が生け簀内に侵入しないような大きさであることを要し、マグロの餌魚である回遊性のイワシ、アジなどの1年魚が通過できない目合いに定めると、その目合いは通常3〜10mmの大きさであり、好ましくは23〜26節(4〜8mm)である。周辺網部8の目合いは、周囲の環境や養殖開始時期などに応じて適宜調整してもよい。
この周辺網部に関して、既存の生け簀において周辺網部の目合いが餌魚の小魚が通過できるほどの大きさならば、その生け簀の組み立て後において、別の内側網部14(図4)を通常の網に細かい目の網を周囲に取り付けてもよい(図3参照)。内側網部14として、細長いシート状の網で周辺網部に巻き付けてから固定しても、筒状の網を周辺網部に嵌め込んで固定してもよい。養殖魚が適度に成長すれば、内側網部14を除去してもよい。
この周辺網部は、図5に示すように2〜3層に重合してから全体を組み立てることも可能である。この周辺網部の目合いは、餌魚の小魚が通過できるほどの大きさであり、この小魚はより細かい目合いである最内側の重合網部20を通過できない。中間の重合網部18は、周辺網部16と重合網部20との間の目合いを有する。養殖魚の成長が進んで小魚を追いかける習性が消滅すればまず最内側の重合網部20を取り外し、さらに成長が進んで成魚に近づけば内側の重合網部18を取り外せばよい。
底網部10は、周辺網部8の下周辺に密に連結され、該周辺網部とともに袋状網を形成する。底網部10は、マグロ稚魚の逃散を防止するとともに、養殖中に斃死したり罹病したマグロ稚魚を確認し、養殖マグロの生存率を常時捕捉するために用いる。回遊性の小魚は、深い海中の底網部10を通過して生け簀1内に侵入することはないので、底網部10の目合いを必要以上に小さくすることを要しない。
底網部10は、周辺網部8と比べて荒目のクレモナまたはスパン製の有結節網であると好ましく、体長20cm程度のマグロ稚魚の頭部の8割程度の目合いに定めればよい。底網部10の深さは、周辺網部8の深さとともに放流する魚の個体数に応じて定められ、通常、海面から網底までの距離が8〜15m、好ましくは10〜15mに定める。
環状枠体2には、その角部からそれぞれ支柱6を立設し、各支柱によって高さ1.5mの垣網部7を環状に枠体2から立ち上げる。所定の平面形状である天井網部5は、環状の垣網部7の上周辺に密に張り付け、該海面網は水平であって海面と隣接する。この天井網部を皿状またはドーム状に成形して環状枠体2に直接設置するならば、周囲の垣網部を省略することができる。天井網部5は、垣網部7とともに海面から飛翔する小動物や魚または海鳥やトビウオが生け簀1内に入り込むことを防止する。
生け簀1は、通常、アンカーを使用しないので海底に係留されていない。生け簀の係留方法には、振らせ式、沈下式、浮沈式などがあり、生け簀1の形状を適宜変更し、係留によって位置定めすることも可能である。この生け簀は、振らせ式によって一点で係留し、強風や潮流から受ける抵抗を軽減させて係留してもよい。また、一般的な係留では、堅固なアンカーと側張りとを使用し、該アンカーにはコンクリートブロックを用い、ロープとフロートで側枠を張り出し、該側枠に生け簀を係留する。
この生け簀は、沈下式において側枠を一定の水深まで沈下させ、該側枠に生け簀を係留してもよい。また、浮沈式では、エアー制御によって生け簀を自由に沈下、浮上させることができる。浮沈式の生け簀は、波浪の影響を緩和する係留方法であり、この生け簀ならば、季節風や台風時に時間と労力をかけて生け簀を曳航する必要がなく、さらに盗難予防や寄生虫予防などにおいても効果がある。
次に、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。図1は本発明に係る養殖用生け簀1を示す。生け簀1の環状枠体2は、一辺が12〜20mである八角形平面の鋼管枠またはプラスチック枠であり、該枠の内部に空気が充填されて浮力が保たれている。環状枠体2自体に浮力がない場合には、図2に例示するように、枠体周囲に取り付けた複数個のフロート3によって海面に浮上させる。
環状枠体2には、その角部からそれぞれ支柱6を立設し、各支柱によって垣網部7を環状に枠体2から立ち上げ、その高さは1.5mである。垣網部7には、目合いが約10節(1〜1.6cm)である有結節網または金網を用いる。垣網部7は、海面を遊泳する小動物や魚が水平に飛翔して生け簀1内に入り込むことを防ぐために設置する。
環状枠体2において、環状の垣網部7の上周辺に八角形平面の天井網部5を密に張り付け、該海面網は水平であって海面と隣接する。天井網部5は、目合いが4〜6節(4〜6cm)である有結節網または金網である。天井網部5は、垣網部7とともに海鳥やトビウオが生け簀1内に入り込むことを防ぎ、養殖魚が鳥インフルエンザなどに罹病することを未然に防止する。
周辺網部8は、環状枠体2と同様の八角形平面の筒形であり、該枠体から垂下されて海中に配置され、通常、垣網部7と連続している。周辺網部8は、その深さが7〜9mであって、目合いが23〜26節(4〜8mm)であるクレモナまたはスパン製の有結節網である。周辺網部8は、マグロの餌魚である回遊性のイワシ、アジなどの1年魚が通過できない目合いに定めることが肝要である。
周辺網部8には、ほぼ逆円錐台形状の底網部10が密に連結されている。底網部10は、周辺網部8と比べて荒目のクレモナまたはスパン製の有結節網であり、体長10〜40cm程度のマグロ稚魚の頭部の8割程度の目合いに定めればよい。底網部10は、マグロ稚魚の逃散を防止するとともに、養殖マグロの生存率を常時捕捉するために取り付ける。底網部10は、周辺網部8とともに海面から10〜15mの深さである。
生け簀1は、通常、海流の流れが比較的少ない係留場所を選定することにより、アンカーを使用することなく海底に係留されていない。この生け簀は、振らせ式によって一点で係留し、強風や潮流から受ける抵抗を軽減させるならば係留可能である。
養殖対象のクロマグロは、日本近海を含む西太平洋の温暖な海域に生息し、春から夏にかけて産卵する。受精卵は直径約1mmの球形であり、約32時間で全長約3mmの仔魚が孵化する。この仔魚は孵化後22日で約3cmに成長し、約70〜74日で全長約20〜25cmの稚魚に達し、この稚魚の形態は成魚とほぼ変わらない。
生け簀1の中に、別の海域で捕獲したクロマグロの稚魚を放流して養殖を開始する。このマグロ稚魚は、自然界に生息していたので、イワシやアジなどの餌魚を追いかける習性を残しているが、生け簀1内にはイワシやアジの小魚が入り込まないので殆ど存在せず、このためにマグロ稚魚が小魚を追いかけて周辺網部8に突進衝突して斃死することが約1年の養殖期間中に激減した。1年目以降では、学習によって衝突しなくなる。クロマグロの養殖期間2年において、マグロ成魚の生存率は90%を超え、従来よりも20%以上上昇した。
マグロは、約1年間の育成段階において生け簀網に衝突しないので、魚体の外皮およびそれを包む粘膜を傷つけることがなく、イリドなどの感染症に掛かりにくくなる。このため、マグロの生存率がいっそう上昇する。
図3は本発明の変形例の要部を示し、周辺網部12を有する生け簀の全体は図示していないけれども、該生け簀の全体形状は従来とほぼ同様である。この生け簀において、周辺網部12の目合いは底網部(図示しない)のそれとほぼ同じであり、該周辺網部をマグロ稚魚は通過できないけれども、餌魚の小魚は周辺網部12を通過して生け簀内に侵入することができる。この生け簀は、周辺網部12を用いて組み立てられている。
このような生け簀に対して、別の内側網部14を縫い付けなどで周辺網部12の内周に取り付ける。内側網部14は、図4に示すような細長い形状であり、その横幅は周辺網部12の深さにほぼ等しく、その長さは周辺網部12の内周面の距離にほぼ等しい。内側網部14の目合いは、実施例1の周辺網部8と同様に、23〜26節(4〜8mm)であればよい。内側網部14は、生け簀の組み立て後に、周辺網部12の内周に巻き付けて重合固定すればよい。
この生け簀の中に、クロマグロの稚魚を放流して養殖すると、該生け簀内にはイワシやアジの小魚は内側網部14を通過できないので殆ど存在せず、このためにマグロ稚魚が小魚を追いかけて周辺網部12に突進衝突して斃死することが激減する。マグロ稚魚について、成長が進んで小魚を追いかける習性が消滅すれば内側網部14を取り外せばよい。内側網部14を除去して目合いの大きい周辺網部12だけにすると、該周辺網部を海流が通過しやすくなって、食い残しの飼料などの滞留が減少し、生け簀内部が汚染されにくくなる。
図5は本発明の別の変形例の要部を示し、周辺網部16および内側の重合網部18,20を有する生け簀の全体は図示していないけれども、該生け簀の全体形状は従来とほぼ同様である。この生け簀は、周辺網部16および重合網部18,20を重ねて配列してから全体を組み立てられる。
この生け簀において、周辺網部16の目合いは底網部(図示しない)のそれとほぼ同様であり、該周辺網部をマグロ稚魚は通過できないけれども、餌魚の小魚は周辺網部16を通過できる。最内側の重合網部20の目合いは、実施例1の周辺網部8と同様に、23〜26節(4〜8mm)である。他方の重合網部18の目合いは、周辺網部16のそれよりも大きく、重合網部20のそれよりも小さくなるように定める。
この生け簀の中に、クロマグロの稚魚を放流して養殖すると、該生け簀内にはイワシやアジの小魚は最内側の重合網部20を通過できないので殆ど存在せず、このためにマグロ稚魚が小魚を追いかけて周辺網部16に突進衝突して斃死することが激減する。マグロ稚魚について、成長が進んで小魚を追いかける習性が消滅すればまず最内側の重合網部20を取り外し、さらに成長が進んで成魚に近づけば内側の重合網部18を取り外す。3層の網部16,18,20をマグロの成長に応じて外側から順に除くので、マグロ稚魚の斃死が少なくなるとともに、該周辺網部を海流が順次通過しやすくなり、生け簀内部がいっそう汚染されにくくなる。
1 養殖用生け簀
2 環状枠体
3 フロート
5 天井網部
7 垣網部
8 周辺網部
10 底網部

Claims (7)

  1. 海中の生け簀内でマグロを稚魚から養殖する際に、その稚魚が餌魚の小魚を追いかける習性を残している場合において、所定数の稚魚を海中の生け簀内に放流し、その稚魚の生育段階が進んで未成魚期または幼魚期に達して小魚の追いかけ習性が消失するまで、生け簀の少なくとも周辺網部には、餌魚の小魚が通過できない大きさ3〜10mmの目合いの網を用い、生け簀内に小魚が侵入することを未然に防止するマグロの養殖方法。
  2. 養殖マグロがクロマグロであり、クロマグロの稚魚が生け簀の周辺網部に衝突して負傷することを回避させる請求項1記載の養殖方法。
  3. 浮力が保たれた環状の枠体で海面を区画し、該枠体から網部を海中に設置した内径数十mに達する大型の生け簀において、合成繊維網である周辺網部と、合成繊維網であって該周辺網部の下周辺に連結する底網部と、枠体内に取り付けて鳥などの侵入を防止する天井網部または海面網部とを備えて海中の一部を囲い込み、周辺網部の目合いは稚魚の養殖魚が逃散できず且つ餌魚の小魚が生け簀内に侵入しない3〜10mmの大きさであり、底網部の目合いは稚魚の養殖魚が逃散できない大きさである養殖用生け簀。
  4. 浮力が保たれた環状の枠体で海面を区画し、該枠体から網部を海中に設置した内径数十mに達する大型の生け簀において、合成繊維網である周辺網部と、合成繊維網であって該周辺網部の下周辺に連結する底網部と、生け簀の組み立て後に周辺網部の内周に取り付けて周辺網部全体を取り囲む内側網部と、枠体内に取り付けて鳥などの侵入を防止する天井網部または海面網部とを備えて海中の一部を囲い込み、内側網部は周辺網部より目合いが小さく、該内側網部の目合いは稚魚の養殖魚が逃散できず且つ餌魚の小魚が生け簀内に侵入しない3〜10mmの大きさであり、周辺網部および底網部の目合いは稚魚の養殖魚が逃散できない大きさである養殖用生け簀。
  5. 浮力が保たれた環状の枠体で海面を区画し、該枠体から網部を海中に設置した内径数十mに達する大型の生け簀において、合成繊維網である周辺網部と、合成繊維網であって該周辺網部の下周辺に連結する底網部と、周辺網部の内周に設置した1層、2層または3層の重合網部と、枠体内に取り付けて鳥などの侵入を防止する天井網部または海面網部とを備えて海中の一部を囲い込み、1層または2層の重合網部は周辺網部より目合いが小さく、最内側の重合網部の目合いは稚魚の養殖魚が逃散できず且つ餌魚の小魚が生け簀内に侵入しない3〜10mmの大きさであり、周辺網部および底網部の目合いは稚魚の養殖魚が逃散できない大きさである養殖用生け簀。
  6. 環状の垣網部を環状枠体から立ち上げ、該垣網部の上周辺を天井網部の周辺と密に連結する請求項3、4または5記載の養殖用生け簀。
  7. 周辺網部、内側網部または最外側の重合網部の目合いが3〜10mmの大きさであり、環状の周辺網部の深さが5〜15mであり、さらに海面から網底までの距離が7〜17mである請求項3、4または5記載の養殖用生け簀。
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