以下では、本発明を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。各図面において、同一要素には同一の符号を付し、説明の明確化のため、必要に応じて重複説明は省略する。
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態のマルチバンド無線通信装置の構成を示したブロック図である。図1において、マルチバンド無線通信装置は、受信アンプ101と、周波数変換器102と、可変周波数生成器103と、可変サンプリング周波数A/D変換器(ADC)104と、制御装置105とを含む。
マルチバンド無線通信装置は、予め定められた複数の通信チャネルを用いて、自セル内の無線局と通信可能な無線装置である。以下、複数の通信チャネルのそれぞれを対象通信チャネルと称する。
対象通信チャネルは、マルチバンド無線通信装置にて通信可能な通信チャネルであり、例えば、第2世代、第3世代、第3.5世代および3.9世代などの携帯通信方式や、WiFi(登録商標)(Wireless Fidelity)通信方式、Bluetooth(登録商標)通信方式およびUWB(Ultra Wide Band)通信方式などの無線LAN方式で使用される通信チャネルである。なお、対象通信チャネルは、マルチバンド無線通信装置にて本来通信可能な通信チャネルの中から、ユーザにて選択された通信チャネルでもよい。
受信アンプ101は、受信手段と呼ばれることもある。受信アンプ101は、マルチバンド無線通信装置の自セル内の無線局から、電波信号を対象通信チャネルで受信する。ここで、電波信号は、アナログ信号である。
受信アンプ101は、その受信した電波信号である受信信号を増幅して周波数変換器102に入力する。
周波数変換器102は、周波数変換手段と呼ばれることもある。周波数変換器102は、受信アンプ101から入力された受信信号に、可変周波数生成器103から入力されたローカル信号を乗算して、その受信信号の周波数を変換する。
可変周波数生成器103は、生成手段と呼ばれることもある。可変周波数生成器103は、ローカル信号を生成し、そのローカル信号を周波数変換器102に入力する。
以上により、周波数変換器102は、受信アンプ101が受信した受信信号に、可変周波数生成器103が生成したローカル信号を乗算して、そのアナログ信号の周波数を変換することになる。
より具体的には、周波数変換器102は2つの変換部を有し、その変換部のそれぞれに受信信号が入力される。可変周波数生成器103は、変換部のそれぞれに、周波数は同じであるが位相が互いに90度ずれているローカル信号を入力する。これにより、I信号およびQ信号からなる受信信号が生成される。
可変サンプリング周波数A/D変換器104は、A/D変換手段と呼ばれることもある。また、以下では、可変サンプリング周波数A/D変換器104を、単にA/D変換器104と称する。
A/D変換器104は、周波数変換器102にて周波数が変換された受信信号をサンプリングしてデジタル信号に変換する。より具体的には、A/D変換器104は、2つのA/D変換部を有し、そのA/D変換部のそれぞれが受信信号内のI信号およびQ信号のそれぞれをデジタル信号に変換する。
制御装置105は、第1の受信モードと第2の受信モードとを切り替えて、未だ検出されていない無線局である未検出局と、既に検出されている無線局である既検出局との通信とを行う。
第1の受信モードでは、制御装置105は、可変周波数生成器103にて生成されたローカル信号の周波数であるローカル周波数(LO周波数)を、対象通信チャネルの最高周波数および最低周波数の中央値(平均値)である第1のローカル周波数に設定する。また、制御装置105は、A/D変換器104のサンプリング周波数を、その最高周波数からその最低周波数を減算した値以上の周波数である第1のサンプリング周波数に設定する。
また、第2の受信モードでは、制御装置105は、ローカル周波数を、対象通信チャネル内の特定通信チャネルの最高周波数および最低周波数の中央値である第2のローカル周波数に設定する。また、制御装置105は、サンプリング周波数を、第1のサンプリング周波数より低い周波数である第2のサンプリング周波数に設定する。
なお、第2の受信モードにて受信する受信信号の周波数帯域は、第1の受信モードにて受信する受信信号の周波数帯域より狭くなる。よって、第1の受信モードによる受信信号の受信が広帯域受信となり、第2の受信モードによる受信信号の受信が狭帯域受信となる。また、特定通信チャネルは、1つでもよいし、複数あってもよい。特定通信チャネルが複数ある場合、制御装置105は、ローカル周波数を、複数の特定通信チャネルの最高周波数および最低周波数の中央値を順番に設定していく。
ここで、第1のローカル周波数および第2のローカル周波数における中央値とは、最高周波数および最低周波数の正確な中央値でなくてもよい。中央値は、周波数変換器102にて変換された対象通信チャネルの周波数帯域がA/D変換器104などによって決定される受信信号のベースバンド帯域に含まれる値であればよい。
例えば、最高周波数が2.6GHzであり、最低周波数が600MHzである場合、A/D変換器104などによって決定されるベースバンド帯域が0.6GHz〜2.6GHzまでの2GZであると、中央値は、正確な中央値である1.6GHzにする必要がある。一方、ベースバンド帯域が0.1GHz〜3.1GHzの3GHzであると、中央値は、正確な中央値から0.5GHzずれてもよい。
また、第2の受信モードにおいて対象となる特定通信チャネルは、未検出局の検出によって検出された無線局のうち、通信要求を送信していた無線局の通信チャネルであるとする。
次に、制御装置105の動作を説明する。
図2Aは、制御装置105の動作例を説明するためのフローチャートである。
先ず、制御装置105は、第1のローカル周波数を示す生成器制御信号を可変周波数生成器103に入力して、ローカル周波数を第1のローカル周波数に設定する(工程201)。
続いて、制御装置105は、第1のサンプリング周波数を示す変換器制御信号をA/D変換器104に入力して、サンプリング周波数を第1のサンプリング周波数に設定する(工程202)。
その後、制御装置105は、第2のローカル周波数を示す生成器制御信号を可変周波数生成器103に入力して、ローカル周波数を第2のローカル周波数に設定する(工程203)。
そして、制御装置105は、第2のサンプリング周波数を示す変換器制御信号をA/D変換器104に入力して、サンプリング周波数を第2のサンプリング周波数に設定する(工程204)。
これにより、工程201および202で第1の受信モードが設定され、工程203および204で第2の受信モードが設定される。
第1の受信モードでは、第2の受信モードより、受信信号を高速に処理することが可能になり、第2の受信モードでは、第1の受信モードより、受信信号のC/N比を向上させ、通信のスループットを向上させることが可能になる。
なお、狭帯域受信が広帯域受信よりC/N比を向上できる第1の理由は、狭帯域受信の方が広帯域受信より、ノイズNの一要素である受信信号に対する干渉を軽減することができるためである。また、その第2の理由は、狭帯域受信では、広帯域受信と比べて、A/D変換器104のサンプリング周波数を低くすることができるので、A/D変換器104の分解能を向上させることができるためである。これは、分解能をM[bit]とすると、A/D変換器104の消費電力は、サンプリング周波数×2Mに比例するので、消費電力が一定の場合、サンプリング周波数が低くなると、分解能が向上するためである。
よって、制御装置105は、第1の受信モードにおいて、未検出局の検出を行い、第2の受信モードにおいて、既検出局との通信を行うことが望ましい。この場合、第1の受信モードにおいて、高速に未検出局の検出を行うことが可能になると共に、第2の受信モードにおいて、受信信号のC/N比を向上させ、通信のスループットを向上させることが可能になる。なお、第1の受信モードにおいて、受信信号のC/N比などが既検出局との通信に問題のない値である場合、制御装置105は、第1の受信モードにおいて、未検出局の検出と、既検出局との通信との両方を行ってもよい。
図2Bは、第1の受信モードにおいて、未検出局の検出を行い、第2の受信モードにおいて、既検出局との通信を行う制御装置105の動作を説明するためのフローチャートである。
制御装置105は、工程202を終了すると、制御装置105は、未検出局の検出を行う(工程205)。その後、工程203および204が実行される。制御装置105は、工程204を終了すると、既検出局との通信を行う(工程206)。
次に、第1の受信モードと第2の受信モードとの切り替えについてより詳細に説明する。
制御装置105は、通常、第1の受信モードで動作する。なお、制御装置105は、第1の受信モードにおいて、検出局の検出と、既検出局との通信との両方を交互に行う。
第1の受信モードでは、制御装置105は、受信信号の電力を測定し、その電力に基づいて第1の受信モードから第2の受信モードに切り替える。
より具体的には、第1の受信モードにおいて、制御装置105は、A/D変換器104にてデジタル信号に変換された受信信号の中の、予め定められた干渉周波数帯域内の各周波数成分の電力に、所定電力P1以上の電力があると、広帯域受信が限界であると判断して、第2の受信モードに切り替える。
なお、干渉周波数帯域は、例えば、対象通信チャネルに対応する周波数帯域(ベースバンド周波数帯)以外の周波数帯域である。この場合、干渉周波数帯域内の各周波数成分の電力は、対象通信チャネルに対する干渉波の干渉電力に相当する。干渉電力がある程度以上になると、既検出局と通信が行えなくなるため、所定電力P1は、既検出局と通信可能な許容範囲の最大値またはそれより少し小さな値に設定されることが望ましい。
図2Cは、受信信号の電力に基づいて受信モードを切り替える制御装置105の動作の一例を示したフローチャートである。
制御装置105は、工程205を終了すると、干渉周波数帯域内の各周波数成分の電力を干渉電力として測定し、それらの干渉電力に、所定電力P1以上の干渉電力があるか否かを判断する(工程207)。制御装置105は、所定電力P1以上の干渉電力があると、工程203を実行し、所定電力P1以上の干渉電力がないと、工程206を実行する。この場合、工程206では、第1の受信モードで既検出局との通信が行われる。
以上により、干渉電力が低い場合、広帯域受信を用いて未検出局の検出と既検出局との通信とを行うことができる。また、干渉電力が既検出局と通信可能な許容範囲を超えた場合、第2の受信モードに切り替えることができる。
この電力測定による未検出局の検出は復調処理を行わなくてもよいため、未検出局の検出を簡単に行うことができる。つまり、未検出局の検出を、高速かつ低電力で行うことができる。
また、制御装置105は、受信信号の電力の代わりに、受信信号の回線品質に基づいて第1の受信モードから第2の受信モードに切り替えてもよい。
この場合、第1の受信モードにおいて、制御装置105は、A/D変換器104にてデジタル信号に変換された受信信号の中の、予め定められた所望周波数帯域の信号の回線品質(LQI:Link Quality Indicator)が所定回線品質C/N1未満であると、広帯域受信が限界であると判断して、第2の受信モードに切り替える。なお、所望周波数帯域は、対象通信チャネルに対応する周波数帯域である。また、所定回線品質C/N1は、例えば、既検出局と通信可能な許容範囲の最小値である。
例えば、制御装置105は、受信信号を復調し、その復調信号のコンスタレーションを測定する。そして、制御装置105は、そのコンスタレーションに基づいて、エラーベクトル強度(EVM)などを測定することで、回線品質を求めることができる。
回線品質が所定回線品質以下になったことは、干渉波が存在することだけでなく、量子誤差の増大や位相ノイズの悪化なども表す。また、回線品質による広帯域受信の限界の把握は、復調を行って回線品質を測定するため、電力測定による広帯域受信の限界の把握より正確である。さらに、通常、誤り訂正などによるプロセスゲインにより、信号成分C<ノイズ成分Nの状況でも広帯域受信が行える条件があり、回線品質による広帯域受信の限界の把握は、この条件を含めた把握となる。
図2Cは、受信信号の回線品質に基づいて受信モードを切り替える制御装置105の動作の一例を示したフローチャートである。
制御装置105は、工程205を終了すると、所望周波数帯域の信号の回線品質を測定し、その回線品質が所定回線品質C/N1未満か否かを判断する(工程208)。制御装置105は、回線品質が所定回線品質C/N1未満であると、工程203を実行し、回線品質が所定回線品質C/N1以上であると、工程206を実行する。
次に、制御装置105のより詳細な構成について説明する。
図3Aは、制御装置105の構成例を示したブロック図である。図3Aにおいて、制御装置105は、高速フーリエ変換装置(FFT)301と、電力測定装置302と、判断装置303とを含む。
高速フーリエ変換装置301は、高速フーリエ変換手段と呼ばれることもある。高速フーリエ変換装置301は、A/D変換器104から出力された受信信号に対して高速フーリエ変換を行い、その受信信号を複数の周波数成分に分解する。
電力測定装置302は、測定手段と呼ばれることもある。電力測定装置302は、高速フーリエ変換装置301にて分解された周波数成分のうち、干渉周波数帯域に含まれる各周波数成分の電力を測定する。
判断装置303は、管理手段と呼ばれることもある。第1の受信モードにおいて、判断装置303は、電力測定装置302にて測定された電力の中に、所定電力P1以上の電力があると、第2の受信モードに切り替える。また、第2の受信モードにおいて、判断装置303は、電力測定装置302にて測定された電力の中に、所定電力P1以上の電力がなくなると、第1の受信モードに切り替える。
次に、図3Aで示した制御装置105の動作を説明する。
ここでは、3G(第3世代携帯電話)、LTE(第3.9世代携帯電話)、BWA(広帯域移動無線アクセス方式)およびWiFi(無線LAN)の通信チャネルがマルチバンド無線通信装置の周辺から送出されているものとする。なお、3Gでは、800MHz帯、1.7GHz帯および2GHz帯の通信チャネルが使用されている。また、LTEでは、日本国内においては、1.5GHz帯および1.7GHz帯(実際には1844.9MHz〜1854.9MHz)が使用される予定であり、日本国外においては、さらに700MHz帯も使用される可能性がある。また、BWAは、WiMAXと次世代PHSに適用され、2.5GHz帯を使用している。そして、WiFiでは、2.4GHz帯が使用されている。なお、図3Bには、これらの通信チャネルの周波数帯域と、A/D変換器104のナイキスト周波数範囲が示されている。
また、マルチバンド無線通信装置は、WiFiの通信チャネル以外の3G、LTEおよびBWAの通信チャネルを対象通信チャネルとするフェムトセル基地局であるとする。このため、WiFiの通信チャネルの周波数帯域は、干渉周波数帯域となる。なお、WiFiは、通常、インターネット回線に接続されるが、3G、LTEおよびBWAは、電話事業者のコアネットワークに接続される。
また、フェムトセル基地局は、半径10m程度のフェムトセルを自セルとして有する基地局であり、家庭、オフィスおよび店舗などで用いられる。特に、LTEでは、基地局としてセルの小さなフェムトセル基地局を用いて、空間の有効利用性やスループットの向上を図ることが、最大伝送レートに近づけるために必要となっている。
従来のフェムトセル基地局では、一つの電話事業者が自らの登録ユーザに対してサービスを提供するために、一つの無線方式しか扱うことができない。このため、電話事業者がそれぞれ異なる端末(無線局)の全てと通信を可能にするためには、電話事業者ごとに異なるフェムトセル基地局が設置される必要がある。このため、コストの増加だけでなく、電波干渉が引き起こされる可能性があった。なお、上記の状況は、特に、オフィスや店舗において発生する可能性が高いが、一般の家庭内においても発生することがある。
本マルチバンド無線通信装置をフェムトセル基地局として利用した場合、電話事業者が異なる複数の無線方式に対応する無線局と一つの装置で通信することができる。このため、このため、コストの増加や電波干渉を軽減することが可能になり、さらには、既検出局からの通信要求に対して、スループットの低減を最小限にすると共に、未検出局がセル内に入ってきたことを速やかに検出することができる。
第1の受信モードにおける未検出局の検出では、先ず、判断装置303は、A/D変換器104のサンプリング周波数を、例えば、2.6GHz(GS/s)程度の高い値に設定する。サンプリング周波数(2.6GHz)の半分の帯域(1.3GHz)が受信信号のベースバンド帯域となる。このとき、判断装置303は、可変周波数生成器103に生成器制御信号を入力して、ローカル周波数を1.7GHz当たりに設定する。なお、ローカル周波数を中心とした、ベースバンド帯域の2倍の周波数範囲が、A/D変換器104にてサンプリングできる周波数範囲になる。つまり、マルチバンド無線通信装置は、1.7GHzを中心とした±1.3GHzの範囲である、0.4Hzから3.0GHzまで周波数範囲内の信号を受信できる。
その後、高速フーリエ変換装置301は、A/D変換器104から受信信号を受信し、その受信信号のベースバンド帯域に対して高速フーリエ変換を行い、受信信号を周波数成分に分解する。より具体的には、高速フーリエ変換装置301は、受信信号を周波数成分に分解することで、その受信信号を、予め定められたポイント数分の周波数成分からなる周波数系列の信号に変換する。以下、ポイント数は、128ポイントとする。
高速フーリエ変換装置301は、その周波数系列の信号を電力測定装置302に入力する。
電力測定装置302は、その入力された周波数系列の信号の中から、対象通信チャネルの周波数帯域である所望周波数帯域に対応する、周波数系列の信号内の周波数成分のそれぞれの電力を測定する。
なお、ベースバンドの2倍の周波数「2.6GHz」を、ポイント数「128」で割った値が、周波数分解能(1ポイント当たりの周波数範囲)となり、ここでは、約20.3MHzとなる。周波数分解能が粗すぎる場合、ポイント数を増やすことで、その周波数分解能の粗さを解消することができる。しかしながら、ポイント数を増やすと、消費電力およびチップ面積も増える。つまり、ポイント数と、消費電力およびチップ面積とがトレードオフの関係にあるので、ポイント数は最小限にすることが好ましい。また、未検出局の検出の際には、周波数分解能はそれほど高くなくてもよいことが多い。
判断装置303は、電力測定装置302にて求められた電力の中に、電力判定値以上の電力があるか否かを判断して、未検出局を検出する。なお、電力による未検出局の検出を有意に行うためには、電力判定値をノイズ電力の3dB以上にすることが好ましい。信号電力=ノイズ電力となると、周波数成分の電力がノイズフロアから3dB以上大きくなるためである。したがって、予めバックグラウンドノイズの電力を測定しておき、その電力に3dB以上の値を加えたものを電力判定値として用いることが好ましい。
例えば、1.5GHzの通信チャネルの未検出局である端末がフェムトセルに入ってきたとする。この場合、通信チャネル1.5GHzは、ローカル周波数1.7GHzより200MHz低く、200MHzを周波数分解能20.3MHzで割った値が約10になる。したがって、端末の通信チャネルの周波数系列上の位置は、ローカル周波数に対応するポイントより10ポイント低い位置になる。このため、判断装置303は、その位置の信号の電力が電力判定値以上となったと判断することになり、1.5GHz帯の通信チャネルの端末を検出することになる。
一方、第2の受信モードへの切り替えの判断では、電力測定装置302は、その入力された周波数系列の信号の中から干渉周波数帯域に対応する周波数成分のそれぞれの電力を測定する。判断装置303は、電力測定装置302にて求められた電力の中に、所定電力P1以上の電力があるか否かを判断して、第2の受信モードに切り替えるか否かを判断する。
例えば、2.4GHz帯の通信チャネルのWiFi端末がフェムトセルに入ってきたとする。この場合、通信チャネル2.4GHzは、ローカル周波数1.7GHzより700MHz高く、700MHzを周波数分解能20.3MHzで割った値が約34になる。したがって、WiFi端末の通信チャネルの周波数系列上の位置は、ローカル周波数に対応するポイントより34ポイント高い位置になる。このため、判断装置303は、その位置の信号の電力が所定電力P1以上となったと判断することになり、第2の受信モードに切り替える。
次に、制御装置105の他の構成を説明する。
図3Cは、高速フーリエ変換装置301を用いずに干渉電力を測定する制御装置105の構成例を示したブロック図である。図3Cにおいて、制御装置105は、判断装置303と、デジタルバンドパスフィルタ(Dig.BPF)304と、電力測定装置305とを有する。
デジタルバンドパスフィルタ304は、単にバンドパスフィルタと呼ばれることもある。また、デジタルバンドパスフィルタ304は、複数ある。
デジタルバンドパスフィルタ304のそれぞれには、周波数帯域がそれぞれ異なる通過帯域が設定されている。デジタルバンドパスフィルタ304は、A/D変換器104から出力された受信信号のうち、自己に設定されている通過帯域の信号だけを通過させることで、周波数帯域がそれぞれ異なる複数の周波数帯域信号を抽出する。
電力測定装置305は、測定手段と呼ばれることもある。また、電力測定装置305は、複数ある。電力測定装置305のそれぞれは、デジタルバンドパスフィルタ304のいずれか一つと接続されている。電力測定装置305のそれぞれは、自己と接続されているデジタルバンドパスフィルタ304にて抽出された周波数帯域信号の電力を測定する。
なお、図3Cでは、デジタルバンドパスフィルタ304に接続されていない電力測定装置305が一つあるが、それについては後述する。
判断装置303は、電力測定装置305にて測定された電力に基づいて、未検出局の検出と、第1の受信モードおよび第2の受信モードとの切り替えとを行う。
次に、図3Cで示した制御装置105の動作を説明する。
なお、図3Aで示した制御装置105の場合と同様に、無線通信装置周辺から出力されている通信チャネルおよびA/D変換器104のナイキスト周波数範囲は、図3Bで示されたものを用いる。
未検出局の検出では、判断装置303は、対象通信チャネルのそれぞれに応じたフィルタ特性をデジタルバンドパスフィルタ304に設定する。
例えば、1.5GHz帯の通信チャネルの未検出局を検出する場合、判断装置303は、デジタルバンドパスフィルタ304の一つに、1.5GHzを中心とし、1.5GHz帯の通信チャネルの帯域幅を有する通過帯域を設定する。例えば、LTEの場合、帯域幅は、約20MHzとなる。
これにより、その設定されたデジタルバンドパスフィルタ304を通過した受信信号は、1.5GHz帯の信号となり、そのデジタルバンドパスフィルタ304と接続された電力測定装置305にてその信号の電力が測定される。
判断装置303は、その電力測定装置305にて測定された電力が電力判定値以上か否かを判断することで、未検出局の検出を行う。
一方、第2の受信モードへの切り替えの判断では、判断装置303は、1以上のデジタルバンドパスフィルタ304に、予め想定される干渉波の中心周波数を中心とし、その干渉波の帯域幅を有する通過帯域を設定する。なお、判断装置303は、デジタルバンドパスフィルタ304のそれぞれに異なる干渉波に対応する異なる通過帯域を設定する。
これにより、デジタルバンドパスフィルタ304は、受信信号から、周波数帯域が干渉周波数帯域に含まれ、かつ、周波数帯域がそれぞれ異なる複数の周波数帯域信号を抽出することになる。
この場合、判断装置303は、その通過帯域の設定したデジタルバンドパスフィルタ304と接続された電力測定装置305にて測定された電力の中に、所定電力P1以上の電力があるか否かを判断する。判断装置303は、所定電力P1以上の電力があると、第2の受信モードに切り替える。
また、図3Cにおいて、デジタルバンドパスフィルタ304と接続されていない電力測定装置305が存在するが、これを用いることで任意の周波数帯域の干渉波の電力を測定することができる。
デジタルバンドパスフィルタ304と接続されていない電力測定装置305にて測定される電力は、A/D変換器104から出力される受信信号の全ての電力を表す。このため、例えば、所望周波数帯域が1.5GHz帯だけの場合、その受信信号の全ての電力から1.5GHz帯の信号の電力の値を引いた値が、干渉周波数帯域の信号の電力となる。この干渉周波数帯域の信号には、干渉波とバックグランドノイズが含まれる。このため、
干渉周波数帯域の信号の電力から予め測定したノイズ電力を減算することで、干渉電力の総和を測定することができる。
したがって、判断装置303は、デジタルバンドパスフィルタ304と接続されていない電力測定装置305にて測定される電力から、所望周波数帯域の信号の電力およびノイズ電力を減算して干渉電力を求め、その干渉電力が所定電力P1以上か否かを判断する。
この場合、干渉波が存在する周波数帯域を特定しなくてもよい場合に有効である。なお、干渉波が存在する周波数帯域を把握することができないため、干渉波の周波数帯域を特定する場合には、図3Aを用いた構成、または、デジタルバンドパスフィルタ304と接続された電力測定装置305にて測定された電力を用いる必要がある。
次に、制御装置105の他の構成例について説明する。
図3Dは、制御装置105の他の構成例として、回線品質に基づいて受信モードを切り替えることが可能な制御装置105の構成を示したブロック図である。
図3Dにおいて、制御装置105は、高速フーリエ変換装置301と、電力測定装置302と、判断装置303と、デジタル周波数変換器306と、復調装置307と、回線品質計算装置308と、通信装置309とを有する。
デジタル周波数変換器306は、ダウンコンバータと呼ばれることもある。デジタル周波数変換器306は、A/D変換器104から出力されたデジタル信号の受信信号をDC付近にダウンコンバートする。
高速フーリエ変換装置301は、デジタル周波数変換器306にてダウンコンバートされた受信信号に対して高速フーリエ変換を行い、その受信信号を周波数成分に分解する。
復調装置307は、高速フーリエ変換装置301にて分解された周波数成分に基づいて、所望周波数帯域の信号(つまり、対象通信チャネルに対応する受信信号)を復調する。
回線品質計算装置308は、復調装置307にて復調された受信信号の回線品質を求める。
判断装置303は、回線品質計算装置308にて求められた回線品質が所定回線品質C/N1未満であると、第2の受信モードに切り替える。
通信装置309は、復調装置307にて復調された受信信号に基づいて、無線局との通信を行う。
なお、判断装置303が回線品質および干渉電力のどちらを用いて受信モードの切り替えを行うかをユーザが選択できるようにしてもよい。干渉電力が用いられる場合、電力測定装置302が高速フーリエ変換装置301にて分解された周波数成分のうち、干渉周波数帯域に含まれる各周波数成分の電力を測定し、判断装置303が、電力測定装置302にて測定された電力の中に、所定電力P1以上の電力があると、第2の受信モードに切り替える。
次に、図3Dで示した制御装置105の動作を説明する。
なお、図3Aで示した制御装置105の場合と同様に、無線通信装置周辺から出力されている通信チャネルおよびA/D変換器104のナイキスト周波数範囲は、図3Bで示されたものを用いる。また、A/D変換器104は、前述したように、例えば2.6GHz程度の広帯域のA/D変換を行い、受信信号をデジタル信号に変換する。そのデジタル信号である受信信号はデジタル周波数変換器306に入力される。
デジタル周波数変換器306は、イメージ除去ミキサ(I/Qミキサ)を構成しており、第2のローカル信号として、第2のローカル周波数が−200MHzの信号が入力され、その受信信号内の200MHzの信号をDC付近にダウンコンバートして、周波数領域の信号に変換する。
デジタル周波数変換器306は、例えば、ハートレーの方法を用いて構成することができる。この場合、デジタル周波数変換器306には、第2のローカル信号として200MHzの信号が入力される。また、デジタル周波数変換器306のI側のミキサの出力端子には、入力信号の位相を90°ずらす90°位相器が接続される。デジタル周波数変換器306は、90°位相器の出力信号とQ側のミキサの出力信号を合成して出力する。この合成時において、デジタル周波数変換器306は、例えば、それらの出力信号を加算して合成すれば、プラス側周波数のダウンコンバートを行い、それらの出力信号を減算して合成すれば、マイナス側周波数のダウンコンバートを行うように構成することができる。なお、第2のローカル周波数「−200MHz」のマイナス符号の意味は、減算して合成すことを示す。
これによって、周波数変換器102のローカル信号のローカル周波数1.7GHzの200MHz下に位置する1.5GHz帯のLTEの信号を、DC付近にダウンコンバートすることができる。なお、LTEの帯域の上限は20MHz程度であるため、消費電力を低減するために、適宜ダウンサンプリングを行い必要最小限のサンプリング周波数にまで下げておくことが好ましい。
高速フーリエ変換装置301は、デジタル周波数変換器306にてDC付近にダウンコンバートされた受信信号に対して高速フーリエ変換を行い、その受信信号を周波数成分に分解する。
例えば、高速フーリエ変換装置301は、例えば、LTEに必要な20MS/sのサンプリング周波数で、1200ポイントの高速フーリエ変換を行う。LTEのアップリンクとダウンリンクのそれぞれで、変調方式が異なり、アップリンクに対しては、SC−FDMAが使用され、ダウンリンクに対してはOFDMが使用される。なお、従来のフェムトセル基地局では、アップリンクの変調方式をSC−FDMAとすることが適例であるが、本ルチバンド無線通信装置をフェムトセル基地局とした場合には、アップリンクの変調方式は、SC−FDMAに限らず、適宜変更可能となる。
所望周波数帯域内の受信信号が一つの通信チャネルを表す場合、電力測定装置302は、その一つの通信チャネルの電力を測定する。また、所望周波数帯域内の受信信号が複数の通信チャネルを表す場合、電力測定装置302は、その複数の通信チャネルのそれぞれの電力を測定する。なお、電力測定装置302は、周波数系列のあるポイントから別のポイントまで周波数領域内の周波数成分の電力を加算することで、そのポイント間の信号電力を測定することができる。したがって、通信チャネルに応じた周波数成分の電力を加算することで、複数の通信チャネルのそれぞれの電力を測定することができる。また、LTEでは、1.5GHz帯に複数の電話事業者が存在することが考えられ、その複数の電話事業者の通信チャネルの電力のそれぞれを測定できるように、高速フーリエ変換装置301にて高速フーリエ変換を行う周波数領域を設定することもできる。
復調装置307は、高速フーリエ変換装置301にて分解された周波数成分に基づいて、所望周波数帯域の受信信号を復調信号として復調する。なお、復調する通信方式は、前述のように、FDMA信号でもよいし、OFDM信号でもよいし、CDMA信号でもよい。
回線品質計算装置308は、復調装置307にて生成された復調信号の回線品質を測定する。回線品質は、例えば、復調信号がQPSK信号であれば、コンスタレーション上の4つの理想ポイントからの位相方向のずれおよび振幅方向のずれを測定することで測定することができる。なお、通常、エラーベクトル強度(EVM)で表される測定方法が、この測定に適用できる。これによって、所望波の電力と非所望波(ノイズや干渉)の電力との比を算出することができる。
判断装置303は、回線品質計算装置308にて求められた回線品質に基づいて、未検出局の検出や受信モードの切り替えを行うことができる。
通信装置309は、復調装置307にて生成された復調信号に基づいて、既検出局との通信を行う。なお、既検出局との通信には、復調信号の誤り訂正や、復調信号からのヘッダ情報の抽出、チャネル推定信号を用いたなど価処理などが含まれる。
なお、制御装置105は、上記の構成を複数有していてもよい。この場合、複数の通信チャネルの信号を同時に処理することができる。例えば、マルチバンド無線通信装置が、上述の1.5GHz帯とは別に、1.7GHz帯のLTE信号を受信する場合、制御装置は、デジタル周波数変換器306の第2のローカル信号の周波数として、150MHzを設定すればよい。
以下、1.5GHz帯のLTEを所望波とし、2.4GHz帯のWiFiなどの干渉波が出現した場合の狭帯域受信について説明する。
この場合、可変周波数生成器103は、1.5GHz帯LTEの中心周波数である1.5GHzあたりのローカル周波数を有するローカル信号を生成する。なお、所望波が一つの通信チャネルであれば、可変周波数生成器103におけるローカル周波数を、その一つの通信チャネルの中心周波数、つまり、(上限周波数−下限周波数)÷2の周波数にする。
周波数変換器102は、可変周波数生成器103が出力するローカル信号に基づいて、不図示のアンテナから受信アンプ101を経由して入力された1.5GHz帯のLTE受信信号をDC付近にダウンコンバートする。
ダウンコンバートされた受信信号(ベースバンド信号)は、A/D変換器104に入力される。A/D変換器104は、サンプリング周波数をLTE信号処理に必要な値(例えば、20〜100MS/s)にして、受信信号のサンプリングを行い、受信信号のデジタル信号に変換する。
これにより、広帯域受信に比べて低いサンプリング周波数で受信信号をデジタル信号に変換することができ、さらに、A/D変換器104の分解能を広帯域受信に比べて向上させることができる。例えば、A/D変換器104は、サンプリング周波数が2.6GS/sにおいて6bitの分解能を有する場合、約50mW程度の電力を消費する。サンプリング周波数がその約1/20である100MS/sに低減されることで、同一消費電力における分解能は、約20倍(約24.3)になり、分解能を約4ビット高めた10bitの分解能を得ることができる。
このようにサンプリング周波数および分解能を変化させることが可能なA/D変換器104は、例えば、パイプライン型A/D変換器のパイプライン段数を、6段と10段との間で変化させたり、サブサンプリング型A/D変換器の後段の変換処理をオンオフさせたりすることで構成することができる。
A/D変換器104の分解能を高分解能に設定すると、信号ダイナミックレンジが拡がるので、干渉波がある程度存在しても所望波のC/N比が劣化することが少なくなる。また、後述するように、A/D変換器104の前のロウパスフィルタを広帯域受信時より狭帯域にすることができるため、それによる干渉波の低減効果も大きい。
デジタル周波数変換器306は、狭帯域受信では、全ての受信信号を通過させる。例えば、デジタル周波数変換器306をバイパスさせてもよいし、デジタル周波数変換器306の第2のローカル周波数としてDC成分用いることで受信信号をそのまま通過させてもよい。
高速フーリエ変換装置301は、広帯域受信と同様に、LTE信号の復調に必要なサンプリング周波数とポイント数に設定する。例えば、サンプリング周波数を20MS/sとし、ポイント数を1200とする。以後の信号処理は、広帯域受信と同様に行うことができる。
本実施形態によれば、可周波数変換器102は、受信アンプ101が受信した受信信号に、可変周波数生成器103にて生成されたローカル信号を乗算して、受信信号の周波数を変換する。A/D変換器104は、可変周波数生成器103にて周波数が変換された受信信号をサンプリングしてデジタル信号に変換する。制御装置105は、ローカル周波数を、複数の対象通信チャネルの最高周波数および最低周波数の中央値に設定し、かつ、A/D変換器104のサンプリング周波数を、その最高周波数から最低周波数を減算した値以上の周波数に設定する第1の受信モードと、ローカル周波数を、特定通信チャネルの最高周波数および最低周波数の中央値に設定し、かつ、サンプリング周波数を第1の受信モードのサンプリング周波数より低い周波数に設定する第2の受信モードとを切り替えて、未検出局の検出と、既検出局との通信とを行う。
この場合、ローカル周波数およびサンプリング周波数を設定する第1の受信モードおよび第2の受信モードが切り替えられることで、未検出局の検出と、既検出局との通信とが行われる。したがって、未検出局の検出と、既検出局との通信とを同じ構成で行うことが可能になるので、装置規模が増大を抑制しながら、未検出局の検出と検出局との通信とを両立させることが可能になる。
また、本実施形態では、制御装置105は、第1の受信モードにおいて、未検出局の検出を行い、第2の受信モードにおいて、既検出局との通信を行う。この場合、第1の受信モードによる広帯域受信によって、未検出局が検出され、第2の受信モードによる狭帯域受信によって、既検出局との通信が行われる。これにより、高速に未検出局の検出が可能になると共に、既検出局と狭帯域で受信していくことが可能となる。狭帯域通信は、外来雑音が多い環境下においても相対的に高いC/Nを得ることが可能なので、シャノン則に基づいて高い伝送レートを得ることが可能となる。つまり、既検出局と高い伝送レートで通信を行うことが可能になる。
また、本実施形態では、制御装置105は、第1の受信モードにおいて、既検出局との通信をさらに行い、A/D変換器104にて変換された受信信号の中の、予め定められた干渉周波数帯域内の信号の電力が所定電力P1以上の場合、第2の受信モードに切り替える。
この場合、既検出局との通信が、干渉電力が小さいときには広帯域受信で行われ、干渉電力が大きいときには狭帯域受信で行われる。したがって、広帯域受信が限界になった場合にだけ、狭帯域受信を行うことが可能になるため、伝送効率をさらに良くすることが可能になる。
また、本実施形態では、制御装置105は、第1の受信モードにおいて、既検出局との通信をさらに行い、A/D変換器104にて変換された受信信号の中の、所望周波数帯域の信号の回線品質が所定回線品質未満であると、第2の受信モードに切り替える。
この場合、既検出局との通信が、回線品質が高いときには広帯域受信で行われ、回線品質が小さいときには狭帯域受信で行われる。したがって、広帯域受信が限界になった場合にだけ、狭帯域受信を行うことが可能になるため、伝送効率をさらに良くすることが可能になる。
<第2の実施形態>
本実施形態では、第1の実施形態とは別の、広帯域受信と狭帯域受信との切り替えについて説明する。なお、本実施形態におけるマルチバンド無線通信装置は、図1で示した構成と同じ構成を有する。
図4は、本実施形態の制御装置105の動作を説明するためのフローチャートである。
制御装置105は、先ず、既検出局から送出される電波信号が時間的に重ならないように、自セル内の無線局による電波信号の送出タイミングを調整する(工程401)。続いて、制御装置105は、所定期間において、第1の受信モードによる広帯域受信を行い、未検出局の検出を行う(工程402)。そして、制御装置105は、電波信号のシンボル期間において、第2の受信モードによる狭帯域受信を行い、検出局との通信を行う(工程403)。
図5は、本動作のより詳細な説明を行うためのタイミング図である。図5では、対象通信チャネルは、3つであるとし、その対象通信チャネルのそれぞれに対応する無線システムを、システムA、BおよびCとする。ここで、システムA、BおよびCは、無線方式は同一であるが、電話事業者が異なる無線システムでもよいし、無線方式が異なる無線システムでもよい。なお、通常、3Gなどの無線システムでは、各電話事業者は、例えば、WCDMAのような同一の無線方式でその無線システムを運用していたとしても、基地局コアネットワークが互いに異なる。
工程401では、制御装置105は、既検出局から送出される電波信号が時間的に重ならないように、自セル内の既検出局による電波信号の送出タイミングを調整する。なお、各電波信号は、シンボル期間501とGI(Guard interval:ガードインターバル)期間502とを含む。このとき、制御装置105は、ある対象通信チャネルの電波信号の送出が終了したあとに、全ての既検出局が電波信号の送出を休止する静寂期間503が発生するように、既検出局による電波信号の送出タイミングを調整する。
例えば、制御装置105は、システムA、BおよびCのそれぞれのシンボル期間501が順番に現れ、かつ、静寂期間503が発生するように、電波信号の送出タイミングをスケジューリングする。制御装置105は、そのスケジューリングした送信タイミングを示すタイミング信号を、システムA、BおよびCのそれぞれに対応する通信チャネルを用いて自セル内に送信することで、電波信号の送出タイミングを調整する。なお、ここで重要なことは、制御装置105が異なる無線システム間の同期をとっていることである。
その後、制御装置105は、所定期間である静寂期間503では、第1の受信モードを設定して広帯域受信を行い、未検出局の検出を行う(工程402)。制御装置105は、電波信号のシンボル期間では、第2の受信モードを設定して狭帯域受信を行い、検出局との通信を行う(工程403)。
本実施形態のマルチバンド無線通信装置をフェムトセル基地局に適用すると、その優れた効果が特に明確になる。
上述のようにフェムトセル基地局においては、既検出局のスループットを低減させないようにしながら、新規にセル内に入ってきた未検出局を速やかに検出することが好ましい。また、フェムトセル基地局は、低コストに実現することが好ましので、無線システムごとにフェムトセル基地局を設けるのではなく、一つのフェムトセル基地局で複数の無線システムに対応させることが好ましい。また、LTEなどの無線システムでは、例えば、1.5GHz帯および1.7GHz帯などの複数の通信チャネルが点在することがある。この場合、一つのフェムトセル基地局でそれらの通信チャネルに対応させることが好ましい
上述したように、広帯域受信と狭帯域受信とを高速に切り替えることが可能であるので、既検出局のスループットの低下を最小限にして未検出局の検出ができる。また、複数の対象通信チャネルのそれぞれに対応する複数の電波信号が時間的に重ならないので、無線局からの無線信号を狭帯域受信で行うことができる。また、既検出局からの電波信号の送出が休止されているときに、広帯域受信による未検出局の検出が行われるので、未検出局からの微弱な電波信号に対する干渉を軽減することができるので、未検出局を正確に検出することができる。なお、高いサンプリングレートにおいて、分解能を上げることに物理的な限界があるため、非常に有効である。
また、制御装置105は、GI期間に、第1の受信モードおよび第2の受信モードを切り替えることが好ましい。
図6は、受信モード(ローカル周波数)の切り替え動作を説明するためのフローチャートである。なお、図6では、所定期間を静寂期間503としている。また、マルチバンド無線通信装置には第2の受信モードが設定され、ある特定通信チャネルの電波信号が送出されているとする。
先ず、制御装置105は、電波信号のGI期間に、ローカル周波数を特定通信チャネルの中央値から複数の対象通信チャネルの中央値に切り替えるとともに、サンプリング周波数を第1のサンプリング周波数に切り替えることで、第2の受信モードに切り替える(工程601)。その後、静寂期間において広帯域受信が行われる。なお、制御装置105は、電波信号の最後のGI期間に受信モードを切り替えることが望ましい。
静寂期間が終了すると、制御装置105は、次の特定通信チャネルの電波信号のGI期間において、ローカル周波数を対象通信チャネルの中央値から特定通信チャネルの中央値に切り替えるとともに、サンプリング周波数を第2のサンプリング周波数に切り替えることで、第2の受信モードに切り替える(工程602)。なお、制御装置105は、電波信号の最初のGI期間に受信モードを切り替えることが望ましい。
また、LTEのように同一の無線システムにおいて複数の通信チャネルが用いられる場合、その通信チャネルが変化するときのGI期間に、制御装置105は、ローカル周波数を、ある特定通信チャネルの中央値から、別の特定通信チャネルの中央値に切り替える(工程603)。
図7は、図6で説明した動作の具体例を説明するためのタイミング図である。なお、図7では、システムAおよびCが通信チャネルとして1.5GHz帯のLTEを使用しており、システムBが通信チャネルとして700MHz帯のLTEを使用しているもの場合を示している。
この場合、ローカル周波数は、工程601において、GI期間以内に、特定通信チャネルの中央から対象通信チャネルの中央に変化する。以下、同様に工程602、603により、図7に示した動作が可能となる。
なお、システムA、BおよびC全体のスループットを向上させるには、ローカル周波数を切り換える時間を最小にすることが好ましい。ローカル周波数を高速に切り換えることが可能な技術は、UWB無線などの高速周波数ホッピングを行う無線通信に多く用いられており、それらの技術を使用すれば、ローカル周波数を数nsで切り換えることが可能である。
また、未検出局の検出頻度を増やすためには、静寂期間を多く設けることも考えられる。しかしながら、静寂期間を多く設けると、システムA、BおよびC全体のスループットが低下する。このため、スループットの低下を最小限に抑えるために、多くの無線システムにおいて予め備わっているGI期間に広帯域受信を行うことが好ましい。この場合、GI期間も所定期間になる。
図8は、GI期間に広帯域受信を行う動作を説明するためのフローチャートである。
先ず、制御装置105は、あるGI期間が開始されると、そのGI期間において、ローカル周波数およびサンプリング周波数を切り替えて、第1の受信モードを設定する(工程801)。その後、制御装置105は、GI期間において広帯域受信を行う(工程802)。
そして、GI期間が終了する直前に、制御装置105は、ローカル周波数およびサンプリング周波数を切り替えて、第2の受信モードを設定する。そして、GI期間が終了し、シンボル期間が開始されると、制御装置105は、狭帯域受信を行う(工程803)。
図9は、図8で説明した動作の具体例を説明するためのタイミング図である。なお、図9では、図7と同様に、システムAおよびCが通信チャネルとして1.5GHz帯のLTEを使用しており、システムBが通信チャネルとして700MHz帯のLTEを使用しているもの場合を示している。
ローカル周波数をGI期間で高速に切り換える工程801によって、ローカル周波数がGI期間内で対象チャネル1の中央付近から複数チャネルの中央付近に高速に切り換え、そのGI期間内において広帯域受信を実行する。
以上の説明は、各無線システムの復調を狭帯域受信において実施する構成を示したが、A/D変換器の性能向上の進展によっては、各無線システムの復調を広帯域無線で処理することも可能である。その場合、制御装置105としては図3Dで示した構成を利用することができる。
本実施形態によれば、制御装置105は、既検出局の全てが電波信号の送出を休止する静寂期間が発生するように、既検出局による電波信号の送出タイミングを調整する。また、制御装置105は、静寂期間では、第1の受信モードを設定し、シンボル期間では、前記第2の受信モードを設定する。
この場合、既検出局からの電波信号のない期間において未検出局を検出することが可能になるので、未検出局からの微弱な電波を精度よく検出することが可能になる。
また、本実施形態では、制御装置105は、既検出局から送出される電波信号が時間的に重ならないように、既検出局による前記電波信号の送出タイミングを調整し、かつ、電波信号のGI期間に、第1の受信モードおよび第2の受信モードの切り替えを行う。
この場合、電波信号のシンボル期間に受信モードを切り替えなくてもよくなるため、受信モードの切り替えをスムーズに行うことが可能になる。
また、本実施形態では、制御装置105は、第2の受信モードにおいて、GI期間に、ローカル周波数を、複数の特定通信チャネルのいずれかの特定通信チャネルの最高周波数および最低周波数の中央値から、別の特定通信チャネルの最高周波数および最低周波数の中央値に切り替える。
この場合、電波信号のシンボル期間にローカル周波数を切り替えなくてもよくなるため、ローカル周波数の切り替えをスムーズに行うことが可能になる。
また、本実施形態では、制御装置105は、既検出局から送出される電波信号が時間的に重ならないように、既検出局による電波信号の送出タイミングを調整し、電波信号のGI期間では、第1の受信モードを設定し、電波信号のシンボル期間では、前記第2の受信モードを設定する。
この場合、既検出局からの電波信号のない期間において未検出局を検出することが可能になるので、未検出局からの微弱な電波を精度よく検出することが可能になる。また、GI期間は多くの無線システムで予め存在するため、静寂期間を用いるより、無線システム全体のスループットを向上させることが可能になる。
<発明の第3の実施形態>
図10は、本発明の第3の実施形態のマルチバンド無線通信装置の構成を示したブロック図である。図10において、マルチバンド無線通信装置は、図1で示した構成に加えて、可変ロウパスフィルタ1001をさらに有する。なお、可変ロウパスフィルタ1001は、周波数変換器102およびA/D変換器104に介在する。
可変ロウパスフィルタ1001は、周波数変換器102にて周波数が変換された受信信号からカットオフ周波数以上の周波数を除去する。A/D変換器104は、可変ロウパスフィルタ1001にてカットオフ周波数以上の周波数を除去された受信信号をサンプリングして、デジタル信号に変換する。
A/D変換器104のサンプリング周波数が低下するとき、つまり、制御装置105が第1の受信モードから第2の受信モードに切り替えるときに、可変ロウパスフィルタ1001の通過帯域が広帯域のままであると、A/D変換器104ナイキスト周波数以上の周波数がナイキスト周波数以内に折り返るエイリアスが発生する。
このため、第1の受信モードから第2の受信モードに切り替えられるときに、制御装置105は、カットオフ周波数を低くする。また、第2の受信モードから第1の受信モードに切り替えられるときには、制御装置105は、カットオフ周波数を高くする。
したがって、制御装置105は、第2の受信モードにおけるカットオフ周波数を、第1の受信モードにおけるカットオフ周波数より低くすることになる。
図11は、図10で示したマルチバンド無線通信装置の動作を説明するための図である 図11では、サンプリング周波数が2.6GHz程度の広帯域受信においては、ナイキスト周波数は1.3GHz程度となるので、可変ロウパスフィルタ1001のカットオフ周波数を1.3GHz以下に設定している。また、サンプリング周波数が100MHz程度の狭帯域受信においては、ナイキスト周波数は50MHz程度になるため、可変ロウパスフィルタ1001のカットオフ周波数を50MHzとしている。
次に、マルチバンド無線通信装置の他の構成例を説明する。
図12は、マルチバンド無線通信装置の他の構成例を示したブロック図である。図12において、マルチバンド無線通信装置は、図10で示した構成に加えて、可変ノッチフィルタ1201をさらに有する。なお、可変ノッチフィルタ1201は、周波数変換器102およびA/D変換器104に介在すれば、可変ロウパスフィルタ1001の前段でもよいし後段でもよい。図12では、可変ノッチフィルタ1201は、可変ロウパスフィルタ1001の前段にある。
可変ノッチフィルタ1201は、周波数変換器102にて周波数が変換された受信信号から阻止帯域を除去する。可変ロウパスフィルタ1001は、可変ノッチフィルタ1201にて阻止帯域が除去された受信信号からカットオフ周波数以上の周波数を除去する。
A/D変換器104は、可変ロウパスフィルタ1001にてカットオフ周波数以上の周波数を除去され、かつ、可変ノッチフィルタ1201にて阻止帯域が除去された受信信号をサンプリングして、デジタル信号に変換する。
阻止帯域は、干渉波の周波数帯であり、例えば、マルチバンド無線通信装置に適用されていない通信チャネルの周波数帯域である。
図13は、図12で示したマルチバンド無線通信装置の動作を説明するための説明図である。
図13では、2.4GHz帯のWiFiチャネルを干渉波と仮定している。この場合、制御装置105は、2.4GHzを中心とし、WiFiチャネルの帯域幅の周波数帯域を阻止帯域とする。なお、干渉波となる通信チャネルが複数存在する場合、その通信チャネルの数だけ可変ノッチフィルタが配置されればよい。この場合、制御装置105は、それらのノッチフィルタのそれぞれの阻止帯域を、干渉波となる通信チャネルのそれぞれの周波数帯域に設定する。これによって、広帯域受信であっても、干渉の影響を最小にすることができ、電力測定や復調動作の精度を上げることが可能になる。
なお、制御装置105は、第2の受信モードにおける狭帯域受信では、可変ノッチフィルタの機能を停止してもよい。
図14は、本実施形態のマルチバンド無線通信装置の他の構成例を示したブロック図である。図14において、マルチバンド無線通信装置は、図1で示した構成に加えて、フィルタバンク1401をさらに有する。また、フィルタバンク1401は、周波数変換器102およびA/D変換器104に介在する、可変通過域フィルタ1401a、1401bおよび1401cを有する。
可変通過域フィルタ1401a、1401bおよび1401cのそれぞれには、互いに異なる通過周波数帯域が設定される。通過周波数帯域は、例えば、対象通信チャネルの周波数帯域である。
可変通過域フィルタ1401a、1401bおよび1401cのそれぞれは、周波数変換器102にて周波数が変換された受信信号から、自己に設定された通過周波数帯域を抽出する。
なお、可変通過域フィルタの数は、図14では、3だけだが、実際には、対象通信チャネルの数に応じて適宜変更可能である。また、通過周波数帯域は、無線局から送出されている電波信号の通信チャネルに応じて制御装置105にて変更されてもよい。
A/D変換器104は、フィルタバンク1401にて抽出された通過周波数帯域の受信信号をデジタル信号に変換する。
図15Aは、第1の受信モードにおけるフィルタバンク1401の動作を説明するための説明図である。なお、ローカル周波数は、1.7GHzであるとする。
可変通過域フィルタ1401aは、700MHz帯のLTEの通信チャネルを抽出する。具体的には、可変通過域フィルタ1401aには、700MHzから1.7GHzを引いた−1GHzを中心とし、LTEの帯域幅である20MHzより大きい幅の通過周波数帯域が設定される。同様にして、可変通過域フィルタ1401bには、1.5GHzのLTEの通信チャネルが抽出されるように、−200MHzを中心とし、20MHzより大きい幅の通過周波数帯域が設定される。また、可変通過域フィルタ1401cには、1.7GHzのLTEの通信チャネルが抽出されるように、通過周波数帯域が設定される。なお、1.7GHzのLTEの通信チャネルは、実際には、1.85GHzあたりに中心周波数が存在するため、可変通過域フィルタ1401cには、約+150MHzを中心とし、20MHzより大きい幅の通過周波数帯域が設定される。
なお、フィルタバンク1401の各可変通過域フィルタは、マイナス周波数にも対応できるように、複素フィルタであることが好ましい。複素フィルタは、I/Q信号を利用したポリフェーズ構成などによって容易に構成することができる。また、可変通過域フィルタが対象通信チャネルの周波数帯域のみを抽出するように、通過周波数帯域を対象通信チャネルの周波数帯域になるべく近くすることが好ましいが、通過周波数帯域を小さくすると、フィルタ次数が増大するという問題がある。このため、通過周波数帯域は、主な干渉波を抑圧できる最小限の帯域に留めることが好ましい場合も多い。例えば、2.4GHz帯のWiFiを干渉波とする場合、干渉波の周波数は、700Mから1.7GHz帯のLTEの通信チャネルの周波数よりかなり離れているため、比較的広い通過周波数帯域でも干渉波を十分抑圧することができる。
また、高いC/Nが必要な場合には、第2の受信モードにおける狭帯域受信が行われることが望ましい。なお、第2の受信モードでは、フィルタバンク1401の各可変通過域フィルタのいずれか1つには、ロウパスフィルタフィルタ特性を持たせることが望ましい。以下では、可変通過域フィルタ1401aに、ロウパスフィルタフィルタ特性を持たせる。
図15Bは、第2の受信モードにおけるフィルタバンク1401の動作を説明するための説明図である。なお、図15Bでは、LTEの通信チャネルである700MHz帯、1.5GHz帯および1.7GHz帯のそれぞれの通信チャネルの受信信号を受信するために、制御装置105は、ローカル周波数を約700MHz、約1.5GHzおよび約1.7GHzに順次切り替えていく。これにより、それらの通信チャネルの受信信号は、全てDC付近の約20MHz(DCを中心として±約10MHz)のベースバンド信号に変換される。ロウパスフィルタフィルタ特性を有する可変通過域フィルタ1401aには、この約10MHzあたりにカットオフ周波数が設定されることが望ましい。
このようにフィルタバンク1401は、広帯域受信においては複数のバンドに対して同時に必要な周波数帯域だけを通過させるフィルタとして機能し、狭帯域受信においては一つのベースバンドを通過させるフィルタとして機能する。
マルチバンド無線通信装置が対象とする無線システムが、例えばLTEのみならず、3G無線やBWA無線を扱う場合もある。この場合、各無線システムに必要なロウパスフィルタ帯域が異なる場合があり、狭帯域受信時にフィルタバンク1401の各可変通過域フィルタに、別々のロウパスフィルタ特性(つまり、別々のカットオフ周波数)を持たせて同時に動作させることもできる。例えば、LTEの通信チャネルの帯域幅を20MHz、3Gの通信チャネルの帯域幅を5MHzとした場合、LTEの狭帯域受信においては、制御装置105は、帯域幅の半分である10MHzをロウパスフィルタ1401aのカットオフ周波数に設定し、3G無線の帯域幅5MHzの半分の5MHzをロウパスフィルタ1401bのカットオフ周波数に設定する。
図16は、本実施形態のマルチバンド無線通信装置の他の構成例を示したブロック図である。図16において、マルチバンド無線通信装置は、図1で示した構成に加えて、複数の可変通過域フィルタ1601を有する。また、周波数変換器102が複数ある。
図16では、可変通過域フィルタ1601および周波数変換器102は、3つずつある。以下、3つの可変通過域フィルタ1601のそれぞれを、可変通過域フィルタ1601a〜1601cとし、3つの周波数変換器102を、周波数変換器102a〜102cとする。
可変周波数生成器103は、周波数変換器102a〜102cのそれぞれに対応する複数のローカル信号を生成する。ここで、可変周波数生成器103は、ローカル周波数がそれぞれ異なる複数のローカル信号を生成することができる。
周波数変換器102a〜102cのそれぞれは、対象通信チャネルのいずれかと対応している。なお、周波数変換器102a〜102cのそれぞれに対応する通信チャネルの周波数帯域を、B1帯、B2帯およびB3帯とする。
周波数変換器102a〜102cのそれぞれは、受信信号に、可変周波数生成器103にて生成された複数のローカル信号の中の自変換器に対応するローカル信号を乗算する。なお、受信信号には自変換器に対応する通信チャネルの信号が含まれているので、周波数変換器102a〜102cのそれぞれは、自変換器に対応する通信チャネルの受信信号にローカル信号を乗算することになる。
可変通過域フィルタ1601a〜1601cは、周波数変換器102a〜102cのいずれか一つの1対1で対応し、その対応する可変通過域フィルタにて周波数が変更された受信信号から、その可変通過域フィルタに対応する対象通信チャネルの周波数帯域を通過周波数帯域として抽出する。
ここで、互いに対応する可変通過域フィルタおよび周波数変換器は、受信チェーンを構成する。
制御装置105は、第1の受信モードでは、周波数変換器102a〜102cのいずれか一つのローカル信号のローカル周波数を、その該周波数変換器に対応する通信チャネルの最高周波数および最低周波数の中央値に設定する。また、同時に、制御装置105は、他の周波数変換器に対応するローカル信号のローカル周波数を、周波数変換器102a〜102cのそれぞれにて変換された周波数が連続するような値に設定する。
図17は、図16で示したマルチバンド無線通信装置の制御装置105の動作を説明するための説明図である。
第1の受信モードにおける広帯域受信では、制御装置105は、例えば、3つの通信バンドがほぼ連続してA/D変換器104の帯域内に存在するように、可変周波数生成器103に3つのローカル信号を生成させる。
例えば700MHz帯の700MHz〜1GHzの信号が、周波数変換後のIF帯域内のー400〜―100MHzあたりに周波数変換されるように、可変周波数生成器103は、1.1GHzのローカル信号(LO1)を周波数変換器102aに供給する。同様にして1.5GHz帯のLTEを、IF帯域内のDC付近に変換するように、可変周波数生成器103は、1.5GHzのローカル信号(LO2)を周波数変換器102bに供給する。さらに、1.7GHz〜2.1GHzあたりのLTEや3G信号をIF帯域内の100〜500MHzあたりに変換されるように、可変周波数生成器103は、1.6GHzのローカル信号(LO3)を周波数変換器102cに供給する。
また、第2の受信モードにおける狭帯域受信では、制御装置105は、700MHz帯の信号を狭帯域受信するように、LO1のローカル周波数を約700MHzに設定し、1.5GHz帯の信号を狭帯域受信できるように、LO2のローカル周波数を約1.5GHzに設定し、1.7GHz帯のLTE(実際には1.85GHzあたり)を狭帯域受信できるように、LO3のローカル周波数を約1.85GHzに設定する。
また、制御装置105は、受信チェーンの各通過域フィルタの通過周波数帯域を、広帯域受信では、各中心チャネルのIF帯の周波数範囲であるー400〜―100MHz、DC付近の20MHzおよび100〜500MHzのそれぞれに設定し、狭帯域受信では、DC付近の20MHzに設定する。
これによって広帯域受信において、干渉電力の混入を最小限にすることができると共に、A/D変換器104の変換レートを最小限にすることができ、A/D変換器104の消費電力を低減することができる。
図18は、可変周波数生成器103にて生成されるローカル信号のローカル周波数の様子を示した説明図である。図18では、マルチバンド無線通信装置は、例えば700MHz帯、1.5GHz帯および1.7GHz帯の通信チャネルの電波信号を、静寂期間において広帯域受信し、静寂期間以外の期間で狭帯域受信するものとする。
この場合、可変周波数生成器103は、700MHz帯の電波信号の狭帯域受信では、LO1を生成し、1.5GHz帯の電波信号の狭帯域受信では、LO2を生成し、1.7GHz帯の電波信号の狭帯域受信では、LO3を生成する。また、可変周波数生成器103は、広帯域受信では、前述した広帯域受信に必要なLO1からLO3を同時に生成する。
なお、狭帯域受信においては、各受信チェーンが順次アクティブにすればよいため、受信チェーンの動作を休止することができる。図16の場合、3つの受信チェーンが存在し、アクティブになる1つ受信チェーンを除いた2つの受信チェーンを休止させることが可能になるので、消費電力を低減することができる。
図19および図20は、狭帯域受信における図17および図18で説明した動作と別の動作を説明するための説明図である。なお、広帯域動作は、図17と同じである。
狭帯域受信において、制御装置105は、B1帯、B2帯およびB3帯の受信チェーンのうち、B2帯の受信チェーンのみを動作させる。B2帯のローカル信号LO2は、図19および20のように、順次、各通信チャネルの中心周波数に切り替わる。これによって狭帯域受信では、B1帯およびB3帯のチェーンを完全に停止させることができるので、消費電力を低減することができる。
本実施形態によれば、可変ロウパスフィルタ1001は、周波数変換器102にて周波数が変換された受信信号からカットオフ周波数以上の周波数を除去する。A/D変換器104は、可変ロウパスフィルタ1001にてカットオフ周波数以上の周波数が除去された受信信号をデジタル信号に変換する。制御装置105は、第2の受信モードにおけるカットオフ周波数を、第1の受信モードにおけるカットオフ周波数より低くする。
この場合、エイリアスの発生を抑制することができる。
また、本実施形態では、可変ノッチフィルタ1201は、周波数変換器102にて周波数が変換された受信信号から阻止周波数帯域を除去する。A/D変換器104は、可変ノッチフィルタ1201にて阻止周波数帯域が除去された受信信号をデジタル信号に変換する。
この場合、広帯域受信であっても、干渉の影響を最小にすることができ、電力測定や復調動作の精度を上げることが可能になる。
また、本実施形態では、周波数変換器102a〜102cは、複数の通信チャネルのいずれかと対応し、その対応する通信チャネルの受信信号に、複数のローカル信号の中の自手段に対応するローカル信号を乗算する。可変通過域フィルタ1601a〜1601cは、周波数変換器102a〜102cのいずれか1つと対応し、その対応する周波数変換器にて周波数が変換された受信信号から、その波数変換器に対応する通信チャネルの周波数帯域を通過周波数帯域として抽出する。制御装置105は、第1の受信モードでは、各周波数変換器のいずれか1つに対応するローカル信号のローカル周波数を、その周波数変換器に対応する通信チャネルの最高周波数および最低周波数の中央値に設定する。さらに、制御装置105は、その他の周波数変換器に対応するローカル信号のローカル周波数を、各周波数変換器にて変換された周波数が連続するような値に設定する。
この場合、干渉電力の混入を最小限にすることができると共に、A/D変換器104の変換レートを最小限にすることができ、A/D変換器104の消費電力を低減することができる。
<第4の実施形態>
第1〜第3の実施形態では、マルチバンド無線通信装置の受信部について説明したが、本実施形態では、マルチバンド無線通信装置の送信部について説明する。
図21は、本実施形態のマルチバンド無線通信装置の送信部の構成を示したブロック図である。図21において、マルチバンド無線通信装置の送信部は、送信アンプ2101と、周波数変換器2102と、可変周波数生成器2103と、可変サンプリングレートD/A変換器2104と、制御装置105とを含む。なお、制御装置105は、受信部と兼用されている。
可変サンプリング周波数D/A変換器(以下、単にD/A変換器と称する)2104は、D/A変換手段と呼ばれることもある。D/A変換器2104は、制御装置105からのデジタル信号である送信信号をアナログ信号に変換する。
可変周波数生成器2103は、送信用生成手段と呼ばれることもある。可変周波数生成器2103は、送信用ローカル信号を生成する。
周波数変換器2102は、送信用周波数変換手段と呼ばれることもある。周波数変換器2102は、D/A変換器2104にてアナログ信号に変換された送信信号に、可変周波数生成器2103にて生成された送信用ローカル信号を乗算して、その送信信号の周波数を変換する。
送信アンプ2101は、周波数変換器2102にて周波数が変換された送信信号を増幅して送信する。
制御装置105は、第1の受信モードと第2の受信モードとを切り替えて、未検出局への同期信号の送信と、既検出局との通信とを行う。
第1の送信モードでは、制御装置105は、送信用ローカル信号の周波数である送信用ローカル周波数を第1のローカル周波数に設定し、かつ、D/A変換器2104のサンプリング周波数を第1のサンプリング周波数に設定する。
また、第2の送信モードでは、制御装置105は、送信用ローカル周波数を第2のローカル周波数に設定し、かつ、D/A変換器2104のサンプリング周波数を第2のサンプリング周波数に設定する。
これにより、第1の送信モードによる送信信号の送信が広帯域送信となり、第2の送信モードによる送信信号の送信が狭帯域送信となる。
制御装置105は、例えば、第1の送信モードによる広帯域送信において、未検出局への同期信号の送信を行い、第2の送信モードによる狭帯域送信において、既検出局との通信とを行う。
図22は、図21で示したマルチバンド通信装置の制御装置105の動作の一例を説明するためのフローチャートである。
先ず、制御装置105は、第1のローカル周波数を示す生成器制御信号を可変周波数生成器2102に入力して、可変周波数生成器2102が生成するローカル信号の周波数を第1のローカル周波数に設定する(工程2201)。
続いて、制御装置105は、第1のサンプリング周波数を示す変換器制御信号をD/A変換器2104に入力して、D/A変換器2104のサンプリング周波数を第1のサンプリング周波数に設定する(工程2202)。
その後、制御装置105は、第2のローカル周波数を示す生成器制御信号を可変周波数生成器2102に入力して、可変周波数生成器2102が生成する送信用ローカル信号の周波数を第2のローカル周波数に設定する(工程2203)。
そして、制御装置105は、第2のサンプリング周波数を示す変換器制御信号をD/A変換器2104に入力して、D/A変換器2104のサンプリング周波数を第2のサンプリング周波数に設定する(工程2204)。
受信部と同様に、第1および第2の工程において、第1の送信モードとなる広帯域送信が行われ、第3および第4の工程において、第2の送信モードとなる狭帯域送信を行う。
広帯域送信では、複数の通信チャネルに対応する複数の送信信号を同時に送信することができる。このため、セルサーチなどを行うための同期信号を、例えば、前述したLTEの700MHz帯、1.5GHz帯および1.7GHz帯に対応する送信信号として同時に送信することができる。したがって、送信信号を順番に送信する場合より、送信にかかる時間を短縮することが可能になり、システム全体のスループットを向上させることが可能になる。
また、広帯域送信において問題となるのは、D/A変換器2104のダイナミックレンジである。通常、D/A変換器のダイナミックレンジは、分解能をNbitとすると、約6×N(dB)で表される。例えば、ダイナミックレンジは、分解能を10bitとすると、60dBとなる。この場合、所望波の送信電力を0dBmとすると、―60dBmのノイズ電力が送信されてしまう。したがって、広帯域送信では、ノイズ電力の出力が許される利用環境で利用する必要がある。
制御装置105は、このノイズ電力の送出や、所望波の出力EVMが広帯域送信において十分に得られない場合などに狭帯域送信に移行する。
図23は、広帯域送信と狭帯域送信の切り換えを説明するためのフローチャートである。
先ず、制御装置105は、図4の工程401と同様にして、既検出局から送出される電波信号が時間的に重ならないように、自セル内の無線局による電波信号の送出タイミングを調整する(工程2301)。続いて、制御装置105は、特定期間において、第1の送信モードによる広帯域送信を行う(工程2302)。そして、制御装置105は、特定期間以外において、第2の送信モードによる狭帯域送信を行う(工程2303)。
例えば、制御装置105は、特定期間において、ビーコンやプリアンブル信号などの同期信号を送信信号として送信することで、既検出局との同期や未検出局に対する新たな同期の機会を与え、特定期間以外において、ヘッダ信号、チャネル推定信号およびペイロード信号を送信信号として送信することで、既検出局との通信を行うことができる。
特定期間は、高いC/N比を必要としない期間であり、特定期間以外の期間は、高いC/N比を必要とする期間である。例えば、OFDM通信では、同期などを取るためのプリアンブル期間はBPSKなどの高いC/Nを必要としない期間であり、実際のOFDM期間は比較的高いC/Nを必要とする期間である。
次に送信部の他の構成例について説明する。
図24は、送信部の他の構成例を示したブロック図である。図24において、送信部は、図21で示した構成に加えて、フィルタ2401をさらに有する。フィルタ2401は、周波数変換器2102およびD/A変換器2104に介在する。
フィルタ2401は、D/A変換器2104にてアナログ信号に変換された送信信号から、D/A変換器2104のエイリアスを除去する。周波数変換器2102は、フィルタ2401にてエイリアスが除去された送信信号の周波数を変換する。
なお、D/A変換器2104のエイリアスはD/A変換器2104のサンプリング周波数に応じて変化するので、制御装置105は、そのサンプリングレートの切り替えに応じて、フィルタ2401のフィルタ特性を変化させる。
例えば、広帯域送信において、D/A変換器2104のサンプリングレートが2.6GS/sである場合、ナイキスト周波数は1.3GHzとなるため、フィルタ2401のフィルタ特性としてはロウパスフィルタ特性を持たせ、制御装置105は、そのナイキスト周波数以下の周波数をカットオフ周波数としてフィルタ2401に設定する。
また、狭帯域送信において、D/A変換器2104のサンプリングレートが100MS/sの場合、ナイキスト周波数は50MHzとなるため、フィルタ2401のフィルタ特性としてはロウパスフィルタ特性を持たせ、制御装置105は、そのナイキスト周波数以下の周波数をカットオフ周波数としてフィルタ2401に設定する。
図25は、送信部の他の構成例を示したブロック図である。図25において、送信部は、図24で示した構成のフィルタ2401の代わりに、フィルタバンク2501を有する。
図24で示した送信部では、図14で示した受信部と同様の考え方に基づいて、フィルタバンク2501は、広帯域送信において送信すべき所望波を通過させる、個別フィルタ2501a〜2501cを有する。図24では、個別フィルタの数は3だけだが、実際には、同時に送信したい送信チャネル数に応じて適宜変更することができる。
本実施形態によれば、D/A変換器2104は、無線局に送信するデジタル信号である送信信号をサンプリングしてアナログ信号に変換する。周波数変換器2102は、D/A変換器2104にてアナログ信号に変換された送信信号に、可変周波数生成器2102が生成した送信用ローカル信号を乗算して、送信信号の周波数を変換する。送信アンプ2101は、周波数変換器2102にて周波数が変換された送信信号を送信する。制御装置105は、送信用ローカル信号の周波数を、複数の対象通信チャネルの最高周波数および最低周波数の中央値に設定し、かつ、D/A変換器2104のサンプリング周波数を、第1のサンプリング周波数に設定する第1の送信モードと、送信用ローカル信号の周波数を、特定通信チャネルの最高周波数および最低周波数の中央値に設定し、かつ、D/A変換器2104のサンプリング周波数を、第2のサンプリング周波数に設定する第2の送信モードと、を切り替えて、未検出局への同期信号の送信と、既検出局との通信とを行う。
この場合、ローカル周波数およびサンプリング周波数を設定する第1の送信モードおよび第2の送信モードが切り替えられることで、未検出局への同期信号の送信と、既検出局との通信とが行われる。したがって、未検出局の検出と、既検出局との通信とを同じ構成で行うことが可能になるので、装置規模が増大を抑制しながら、未検出局の検出と検出局との通信とを両立させることが可能になる。
本発明は上述した実施の形態のみに限定されるものではなく、既に述べた本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることは勿論である。