JP5492477B2 - 細胞の膜電位測定用の培養液、及びそれを用いた培養方法、膜電位測定方法 - Google Patents
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そして、細胞の膜に存在する電位依存性のイオンチャンネル(細胞表面に存在する膜貫通タンパク質で、特定のイオンを選択的に通過させるもの)は、生理的に重要な機能を有しており、薬物開発の効能や毒性についての評価の標的となる。
例えば、イオンチャンネルに作用することで患者に重篤な不整脈を引き起こす疾患として薬物誘発性(後天性)QT延長症候群がある。薬物誘発性QT延長症候群は、薬物の投与後に心電図上のQT間隔の延長が起こり、TdP(Torsades de pointes、トルサード・ド・ポアンツ=非持続性多形性心室頻拍)から、しばしば心室細動が起こり、失神、突然死をきたす重篤な疾患である。この薬物誘発性QT延長症候群の誘発原因としては、薬物が心筋細胞のイオンチャネルに作用することで、調和のとれた心臓の拍動を阻害し、QT間隔の延長を引き起こすことが知られている(非特許文献1)。
ここで、蛍光膜電位測定法は、蛍光カルシウムプローブ、Bis−oxonolのような膜透過性で陰イオン性の蛍光色素がイオンの移動に応じて細胞膜内外に移動することにより、この蛍光色素の蛍光を測定することで細胞の膜電位を計測する方法である。蛍光膜電位測定法は、非常に高いスループット性を有するという特徴がある。
蛍光膜電位測定法は、上述の細胞に被検化合物である薬物を与えたときに、蛍光を測定することで、薬物誘発性QT延長症候群の薬効評価として利用することができる。具体的には、毒性ある薬物によりhERGチャンネルの活動が阻害されると、所定の波長の電磁波を照射したときの蛍光光度が変化するため、これを検出することで膜電位の変化が検出できる。これにより、被検化合物である薬物が薬物誘発性QT延長症候群を引き起こすかについて検査できる。
本発明の細胞の膜電位測定用の培養液は、前記セレンは亜セレン酸ナトリウムの濃度0.001〜0.1μMで供給され、並びに/又は前記硝酸イオン及び鉄イオンは硝酸鉄(III)の濃度0.1〜9μMで供給されることを特徴とする。
本発明の細胞の膜電位測定用の培養液は、前記細胞は、ヒトiPS細胞由来の心筋細胞であることを特徴とする。
本発明の細胞の培養方法は、本発明の培養液を用いることを特徴とする。
本発明の細胞の膜電位測定方法は、本発明の培養液を用いることを特徴とする。
ここで当業者にとっては、細胞の膜電位測定用培養液として、細胞が正常に拍動を維持するために種々イオン、糖、必須アミノ酸、アルブミン等のタンパク質が常識的に必要と考えられており、これらの物質について最適濃度の調整を図ることで培養液の改良が図られてきた。
これに対して、本発明の発明者は、アミノ酸やタンパク質を除いて蛍光や相互作用や吸着に係る物質を除去した状態でも、セレン並びに/又は硝酸イオン及び鉄イオンを添加することで、細胞を拍動したまま培養し、相互作用や吸着を抑えて蛍光観察を行うことができる顕著な効果が得られることを見いだし、本実施形態で例示した本発明に係る培養液を発明するに至った。
図1を示して、本発明の実施の形態に係る培養液の組成について説明する。
図1に示すように、本発明の実施の形態に係る培養液の成分は、主にナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム等の各イオン、糖、緩衝液、pH調整試薬から構成される。図1に示された各物質の濃度は、最終濃度を示す。以下、具体的に説明する。
なお、緩衝液としては、最適なpHを得るために任意の緩衝剤を用いることができ、例えば、PBS等を用いることもできる。
このアミノ酸、タンパク質、ビタミン類、酵母エキス等の物質を含む培養液では、培養液自身が蛍光を有するようになり、高感度蛍光検出機器を使用する細胞の膜電位の正確な測定をすることが困難である。また、蛍光膜電位測定に用いる蛍光物質や薬効を評価する被検化合物が、これらの物質に相互作用や吸着するため、正確な測定結果が担保されない。
これに対して、本発明の実施の形態に係る培養液では、このアミノ酸、タンパク質、ビタミン類、酵母エキス等の物質といった培養液自身の蛍光に関与したり、被検化合物と相互作用や吸着するような物質を除いているため、従来の培養液が有していた正確な測定結果が担保されないといった不利益が克服される。
好ましくは、セレンは、Na2SeO3(亜セレン酸ナトリウム)によって提供する。さらに好ましくは、Na2SeO3の濃度は、0.001〜0.1μMで変動させることができる。
好ましくは、硝酸イオン及び鉄イオンは、Fe(NO3)3・9H2O(硝酸鉄(III)水和物)によって提供する。さらに好ましくは、Fe(NO3)3・9H2Oの濃度は、0.1〜9μMで変動させることができる。
なお、図1で示した培養液の組成及び濃度は、あくまで各物質の濃度を最適化した一例であって、各物質の濃度は電位測定の最適化を図る上で適宜変更できる。例えば、使用する細胞の由来や細胞の種類等によって、培養液の組成を調整することが可能である。例えば、性質の異なる心筋細胞等では、培養液の組成について適宜調整することが必要である。
なお、培養液の組成が好ましく無い場合には、細胞の拍動停止、ひいては死滅が誘導される。拍動停止や死滅した細胞は、もはや観察に適切ではない。このため、本発明の実施の形態に係る培養液のように、拍動細胞の培養液をアミノ酸やタンパク質等を除いた状態で実現することは、困難であった。
本発明の実施の形態に係る培養液を用いた膜電位測定方法の実際について、以下のプロトコルの例を示しながら説明する。なお、具体的な膜電位測定方法については、非特許文献2の記載を参照されたい。
測定対象の細胞としては、神経細胞、肝細胞、心筋細胞等の任意の細胞を用いることができる。また、これらの細胞は、単一で又は複数用いることができる。また、複数の細胞は、細胞塊(コロニー)であってもよい。より具体的な測定対象の細胞としては、幹細胞由来あるいは初代培養細胞拍動心筋塊があげられる。
培養液中に移動された細胞は、自重により培養液中を測定容器の底面まで沈降する。また、遠心機を用いて遠心力を加えて測定容器の底面に沈降させてもよい。
ここで、膜電位測定を行う測定容器は、任意の形状であってもよい。例えば、培養皿の中心に複数個の電極を高密度に集積させて備える多電極シングルディッシュや、容器の底がすり鉢状になっていて自然に沈降した細胞が測定電極上で確実に接着する細胞測定容器(PCT/JP2009/059359参照)等を用いて行うことができる。
ここでいう接着とは、電位を測定するのに適当な距離をもって固定されることをいう。このような作業を、細胞の配置及び培養液の置換の各作業毎に行う。
この際に、細胞が本発明の実施の形態に係る培養液に適応するまで、1日程度、そのまま培養することが可能である。また、この培養の際に、本発明の実施の形態に係る培養液を、通常の接着細胞の培養方法のように取り換えることも可能である。このように、本発明の実施の形態に係る培養液を用いると、長期の培養を行っても、拍動状態を保つことができる。
被検化合物等がある場合には、本発明の培養液に化合物を溶解して添加する。必要に応じて、被検化合物を供給した後に振動させる等して、培養液中に被検化合物を拡散させることもできる。細胞の接着後にこの作業を行うことにより、振動等の影響で電極等から細胞が剥がれるのを防止することができる。被検化合物が供給されると、細胞の膜電位の計測値が変化するので、被検化合物の供給前後での計測値の変化の状態から、各化合物が細胞に与える影響を評価することにより、薬効評価を行う。この薬効評価には多電極システムを用いることができる。
本発明の実施の形態に係る培養液を用いて、測定対象の細胞として拍動を行うヒトiPS細胞由来で、公知の方法にて分化させた心筋細胞を蛍光膜電位測定法を用いて膜電位測定を行った実施例を示す。
これらの実験結果から、本発明の実施の形態に係る培養液では、心筋細胞から継続的に規則正しく拍動が観察されるが、一般的な緩衝液では、心筋細胞からの拍動は断続的になり規則正しくなく安定しない拍動が観察される。
このように本発明の実施の形態に係る培養液では、より正確な拍動が観察される膜電位測定をすることができることが示される。
これらの実験結果から、本発明の実施の形態に係る培養液を用いた場合には、明確な鋭いNa+ピーク(Na+カレントピーク:QRS波様波形)と共に、矢印で示したようにK+ピーク(K+カレントピーク:T波様波形)と考えられる波形が確認できる。また、本発明の実施の形態に係る培養液を用いることによってノイズが少なくなるため、薬効評価の詳細パラメータの観察も容易な膜電位波形の測定ができる。それに対して、従来の培養液では、ノイズが多い波形となり、Na+ピークとNa+ピークの間隔は不規則であり、電位波形の振幅も不均一であった。また、本発明の実施の形態に係る培養液で確認されたようなK+ピーク様の波形は確認できなかった。
このように本発明の実施の形態に係る培養液では、よりノイズの少ない正確な細胞の膜電位測定をすることができるため、K+ピーク様の波形も検出することが可能であり、被検化合物の薬効評価に供することができる培養液であることが示される。
これらの実験結果から、図4Bに示すように、アステミゾールを用いてQT間隔を測定した場合には、濃度に依存してQT間隔が延長していることが分かる。また、図4C、図4D、図4Eに示すように、アステミゾールを添加した場合には、無添加、添加低濃度領域、高濃度領域までNa+ピーク及びK+ピークが検出されて良好に測定が可能であることが分かる。
これらの実験結果から、図5Aに示すように、アスピリンを用いてQT間隔を測定した場合には、試験濃度域においてQT間隔が変化していないことが分かる。また、図5Bに示すように、アスピリンを用いてQT間隔を測定した場合には、試験濃度域においてQT間隔が変化していないことが分かる。また、図5Cに示すように、アスピリンを添加した場合には無添加、添加低濃度領域から高濃度領域までNa+ピーク及びK+ピークが検出され良好に測定が可能であることが分かる。
この実験結果から、図6に示すように、本発明の実施の形態に係る培地を用いてQT間隔を測定した場合には、濃度に依存してQT間隔は変化しないことが分かる。
Claims (5)
- 細胞由来でないアミノ酸及びタンパク質を添加せずに、セレン並びに/又は硝酸イオン及び鉄イオンを含むことを特徴とする細胞の膜電位測定用の培養液。
- 前記セレンは亜セレン酸ナトリウムの濃度0.001〜0.1μMで供給され、並びに/又は前記硝酸イオン及び鉄イオンは硝酸鉄(III)の濃度0.1〜9μMで供給されることを特徴とする請求項1に記載の培養液。
- 前記細胞は、ヒトiPS細胞由来の心筋細胞であることを特徴とする請求項1又は2に記載の培養液。
- 請求項1から3のいずれか1項に記載の培養液を用いた細胞の培養方法。
- 請求項1から3のいずれか1項に記載の培養液を用いた細胞の膜電位測定方法。
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