JP5491666B1 - 太陽電池特性測定装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】太陽電池が比較的大きな容量成分を有している場合でも装置破壊を防止することができ、小型化、軽量化も可能な太陽電池特性測定装置を提供する。
【解決手段】正極側入力端子1及び負極側入力端子2は、測定対象の太陽電池110の正極側出力端子111及び負極側出力端子112にそれぞれ接続される。第1のスイッチ素子8は、正極側入力端子1と負極側入力端子2との間を短絡する第1の電路6を開閉する。可変負荷4は、正極側入力端子1と負極側入力端子2との間で、第1のスイッチ素子8と並列に接続される。第2のスイッチ素子8は、正極側入力端子1、負極側入力端子2及び可変負荷4を含む第2の電路を開閉する。立ち上がり遅延回路10は、第1のスイッチ素子8をオン状態にするために第1のスイッチ素子8の制御端子に入力される制御信号の立ち上がり時間を遅延させる。
【選択図】図2
【解決手段】正極側入力端子1及び負極側入力端子2は、測定対象の太陽電池110の正極側出力端子111及び負極側出力端子112にそれぞれ接続される。第1のスイッチ素子8は、正極側入力端子1と負極側入力端子2との間を短絡する第1の電路6を開閉する。可変負荷4は、正極側入力端子1と負極側入力端子2との間で、第1のスイッチ素子8と並列に接続される。第2のスイッチ素子8は、正極側入力端子1、負極側入力端子2及び可変負荷4を含む第2の電路を開閉する。立ち上がり遅延回路10は、第1のスイッチ素子8をオン状態にするために第1のスイッチ素子8の制御端子に入力される制御信号の立ち上がり時間を遅延させる。
【選択図】図2
Description
本発明は、太陽電池特性測定装置に関し、特に、大きな容量成分を有する太陽電池の測定に好適な太陽電池特性測定装置に関する。
近年、地球環境問題や省エネルギーの観点から太陽光発電が注目され、一般家庭においても広く使用されている。太陽電池セル、太陽電池セルをモジュール化した太陽電池モジュール、複数の太陽電池モジュールを接続した太陽電池アレイ等(以下、太陽電池という。)の性能を評価する指標として最大電力点Pmax、最適動作電圧Vpm、最適動作電流Ipm等が使用されている。これらの指標を取得するために、太陽電池に太陽光や疑似太陽光等の光を照射した状態で電流電圧出力特性(I−V特性、以下、出力特性という。)が取得される。出力特性は、太陽電池に接続した負荷を開放状態と短絡状態との間で変動させた状態での電流値及び電圧値として取得される。
以上のような太陽電池は、太陽電池セル自体のPN接合容量の他、構造的な要因による寄生容量成分を有している。このような容量成分は出力特性の測定時に問題を生じることが知られており、この対策として種々の技術が提案されている。
例えば、後掲の特許文献1、2は、容量成分に起因して出力特定の測定値に誤差が発生するという課題を解決するため、改善した出力特性測定方法を採用した太陽電池特性評価装置を開示している。この構成により、大きな容量成分を有する太陽電池に対しても、容量成分に起因する測定誤差の小さい出力特性を取得できるとしている。
また、後掲の特許文献3は、容量成分に起因する突入電流により電子負荷が破壊されるという課題を解決するため、可変負荷をPCTサーミスタにより構成した電流電圧特性測定装置を開示している。この構成により、可変負荷の破損を抑制できるとともに、制御回路及び冷却構造の削減に起因する小型化を実現できるとしている。
出力特性測定に使用される可変負荷として、コンデンサ負荷や電子負荷がある。電子負荷は、電界効果トランジスタ等の能動素子により構成される制御素子と、当該制御素子を駆動する制御回路とにより構成される。電子負荷を採用する太陽電池特性測定装置では、太陽電池の出力端子間に電子負荷を介在させ、電子負荷の抵抗値を変化させることで出力端子間の負荷を変動させる。そして、負荷が変動する過程において、太陽電池の各動作点における電流値及び電圧値が取得される。
一方、コンデンサ負荷は、電解コンデンサ等のコンデンサと、当該コンデンサを太陽電池の出力端子間に適宜接続するためのスイッチとにより構成される。また、上述のような、太陽電池の容量成分に蓄積された電荷を開放するため、太陽電池の出力端子間を短絡する電路と、当該短絡電路を開閉するスイッチを備えている。このようなコンデンサ負荷方
式は、制御回路を設ける必要がないため、電子負荷方式に比べて小型化や低コスト化が比較的容易であるという特徴を有している。
式は、制御回路を設ける必要がないため、電子負荷方式に比べて小型化や低コスト化が比較的容易であるという特徴を有している。
コンデンサ負荷を採用する太陽電池特性測定装置では、太陽電池の出力端子間にコンデンサ負荷を接続する。出力特性測定に際し、短絡電路に介在されたスイッチをオン状態にすると太陽電池の容量成分に蓄積した電荷が放電される。その後、コンデンサ負荷を太陽電池の出力端子間に接続し、短絡電路に介在されたスイッチをオフ状態にすると、太陽電池から出力される電流はコンデンサ負荷を充電する。当該充電に伴い出力端子間の負荷が短絡状態と開放状態との間で変動する。そして、負荷が変動する過程において、太陽電池の各動作点における電流値及び電圧値が取得される。
太陽電池の出力特性は、太陽電池の基本性能を把握する目的では、工場等の屋内で測定される。一方、実使用状態における性能を把握する目的では、太陽電池の出力特性は、地上や建物の屋根等に設置された状態で測定されることも多い。実使用状態の太陽電池を測定する場合、太陽電池モジュールを測定したり、複数の太陽電池モジュールが直列接続されたストリングを測定したり、複数のストリングを並列接続した太陽電池アレイ等、種々の状態の太陽電池を測定することが想定される。測定対象の太陽電池が多くの太陽電池モジュールを含む場合、測定対象の太陽電池が有する容量成分は必然的に大きくなる。また、各ストリングの太陽電池モジュールの接続数が異なる場合は、各ストリングの出力電圧を合わせるためにストリングコンバータが配置されていることもある。このようなストリングコンバータは大きな容量成分を有している。
このように測定対象の太陽電池が大きな容量成分を有している場合、出力端子に特性測定装置を接続して電路を閉じたときに、容量成分に蓄積していた電荷が特性測定装置にインラッシュ電流として流入してしまう。コンデンサ負荷方式を採用する太陽電池特性測定装置では、特性測定装置に流入する電荷の量(インラッシュ電流の大きさ)を制御することはできず、例えば、短絡電路に配置されたスイッチをオン状態にしたときに、短絡電路に大きなインラッシュ電流が流れてしまう。そして、容量成分が大きい場合には、短絡電路に配置されたスイッチが瞬時に焼損する事態が発生するという問題があった。
電子負荷方式を採用する太陽電池特性測定装置では、電子負荷の大きさを調整することにより、特性測定装置に流入するインラッシュ電流の大きさを制御して、容量成分に蓄積していた電荷を放電させることも可能である。しかしながら、電子負荷方式の太陽電池特性測定装置では設置状態の太陽電池の測定に特に好適な、小型化、軽量化が困難である。
例えば、コンデンサ負荷方式の太陽電池特性測定装置の定格として大きな容量成分を有する太陽電池の測定には使用できないとすることも考えられる。しかしながら、太陽電池の容量成分は、同一の出力であっても種類によって大きく異なり、また、ストリングコンバータの有無によっても大きく異なるため、有効な対策とはいえない。
本発明は、このような従来技術の課題を鑑みてなされたものであって、太陽電池が比較的大きな容量成分を有している場合でも装置破壊を防止することができ、小型化、軽量化も可能な太陽電池特性測定装置を提供することを目的とする。
上述の目的を達成するために、本発明は以下の技術的手段を採用している。まず、本発明は、太陽電池に接続され、当該太陽電池の出力特性を測定する太陽電池特性測定装置を前提としている。そして、本発明に係る太陽電池特性測定装置は、正極側入力端子、負極側入力端子、第1のスイッチ素子、可変負荷、第2のスイッチ素子及び立ち上がり遅延回路を備える。
正極側入力端子は、測定対象の太陽電池の正極側出力端子と接続される。負極側入力端子は、測定対象の太陽電池の負極側出力端子と接続される。第1のスイッチ素子は、正極側入力端子と負極側入力端子との間を短絡する第1の電路を開閉する。可変負荷は、正極側入力端子と負極側入力端子との間で、第1のスイッチ素子と並列に接続される。第2のスイッチ素子は、正極側入力端子、負極側入力端子及び可変負荷を含む第2の電路を開閉する。立ち上がり遅延回路は、第1のスイッチ素子をオン状態にするために第1のスイッチ素子の制御端子に入力される制御信号の立ち上がり時間を遅延させる。
この太陽電池特性測定装置では、第1のスイッチ素子をオン状態にするために第1のスイッチ素子の制御端子に入力される制御信号の立ち上がり時間が遅延される。そのため、第1のスイッチ素子は、遅延された立ち上がり時間に応じて緩やかにオフ状態からオン状態に変化することになる。したがって、測定対象の太陽電池が有する容量成分に起因して特性測定装置にインラッシュ電流が流入する場合であっても、瞬時に過大なインラッシュ電流が第1のスイッチ素子に流入することがなく、第1のスイッチ素子の破損を防止することができる。
上記太陽電池特性測定装置は、制御部、電流検知用素子及び電路遮断部をさらに備えてもよい。制御部は、第1のスイッチ素子のオン状態とオフ状態とを切り替えるために第1のスイッチ素子の制御端子に入力される制御信号を出力する。電流検知用素子は、第1の電路に配置され、第1の電路を流れる電流の検知に使用される。電路遮断部は、第1のスイッチ素子に入力される制御信号を搬送する信号線に接続され、電流検知用素子を流れる電流が予め指定された電流条件を満足するときに、信号線の電位を第1のスイッチ素子がオフ状態になる電位に変更する。例えば、電路遮断部は、第3のスイッチ素子及びオペアンプを備える構成を採用することができる。ここで、第3のスイッチ素子は、信号線と、当該信号線に第1のスイッチ素子がオフ状態になる電位を供給する電位供給源との間を接続する電路を開閉する。オペアンプは、電流検知用素子を流れる電流が予め指定された電流条件を満足するときに、第3のスイッチ素子をオン状態にする制御信号を第3のスイッチ素子の制御端子に入力する。
この構成によれば、例えば、第1のスイッチ素子の温度依存性等により、第1の電路を流れるインラッシュ電流が大きくなった場合でも、第1のスイッチ素子を強制的にオフ状態にすることができる。そのため、過大なインラッシュ電流が第1のスイッチ素子に流入することがなく、第1のスイッチ素子の破損を防止することができる。
なお、上記制御部は、電流検知用素子を流れる電流が予め指定された電流条件を満足すると、第1のスイッチ素子をオフ状態にする制御信号を出力する構成とすることが好ましい。この場合、電路遮断部が自身に指定された電流条件を満足するとの判定に要する時間を、制御部が自身に指定された電流条件を満足するとの判定に要する時間よりも短い構成を採用することができる。
この構成により、第1のスイッチ素子において、オフ状態とオン状態との切り替えが無制限に繰り返されることを防止できる。また、制御部の応答速度が低速である場合でも、電路遮断部により第1のスイッチ素子への過大なインラッシュ電流の流入が防止されるため、制御部を安価に構成することができる。
以上の太陽電池特性測定装置において、立ち上がり遅延回路は、例えば、第1のスイッチ素子の制御端子に直列接続された定電流ダイオードと、制御端子に並列接続されたコンデンサとにより構成することができる。
本発明によれば、太陽電池が比較的大きな容量成分を有している場合でも装置破壊を防止することができる。また、コンデンサ負荷方式を採用した場合には、小型化、軽量化も可能である。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながらより詳細に説明する。以下では、可変負荷としてコンデンサを採用した太陽電池特性測定装置の事例により本発明を具体化している。
まず、コンデンサ負荷方式を採用する太陽電池特性測定装置による、出力特性の測定方法について簡単に説明する。
図1は、コンデンサ負荷方式を採用する太陽電池特性測定装置による、出力特性の測定方法を示す概略図である。図1に示すように、太陽電池特性測定装置120は、太陽電池110の正極側出力端子111に接続される正極側入力端子121と、太陽電池110の負極側出力端子112に接続される負極側入力端子122を備える。正極側入力端子121と負極側入力端子122の間には、トランジスタやサイリスタ等からなる測定用スイッチ素子123と、電解コンデンサ等からなるコンデンサ124と、電流検出部125とが直列に接続されている。また、短絡電路126及び電圧検出部127が、正極側入力端子121と負極側入力端子122との間で、測定用スイッチ素子123及びコンデンサ124と並列に接続されている。また、短絡電路126は、正極側入力端子121と負極側入力端子122との間を短絡する電路であり、当該短絡電路126にはトランジスタやサイリスタ等からなる短絡用スイッチ素子128が介設されている。測定用スイッチ素子123及び短絡用スイッチ素子128は、制御部129が出力する制御信号によりオフ状態(非導通状態)とオン状態(導通状態)とが切り替わる。
太陽電池110の出力特性を測定する場合、太陽電池110の正極側出力端子111及び負極側出力端子112に、太陽電池特性測定装置120の正極側入力端子121及び負極側入力端子122がそれぞれ接続される。このとき、測定用スイッチ素子123及び短絡用スイッチ素子128はともにオフ状態である。
接続が完了すると、まず、制御部129は短絡用スイッチ素子128をオン状態にした後、測定用スイッチ素子123をオン状態にする。次いで、制御部129は短絡用スイッチ素子128をオフ状態にする。これにより、太陽電池110からコンデンサ124に電荷が流入し、コンデンサ124が充電される。その充電の過程で、コンデンサ124からなる負荷は短絡状態から開放状態に変動することになる。この負荷変動の過程で、電流検出部125及び電圧検出部127により太陽電池110の出力電流I及び出力電圧Vを測定することで出力特性が取得される。なお、当該測定は、太陽電池110に光を入射させた状態で行われる。
以上のような出力特性測定において、太陽電池110が容量成分を有していると、太陽電池110と特性測定装置120とを接続して短絡用スイッチ素子128をオン状態にしたときに、容量成分に蓄積されていた電荷が瞬時に短絡電路126に流入する。太陽電池110の容量成分が大きい場合には、短絡電路126に流入するインラッシュ電流は大きなものとなり、短絡用スイッチ素子128を瞬時に焼損してしまう。
このような焼損を回避するため、本実施形態の太陽電池特性測定装置100は、以下の構成を採用している。図2は、本実施形態における太陽電池特性測定装置100の全体構成の一例を示す概略構成図である。
図2に示すように、本実施形態の太陽電池特性測定装置100は、太陽電池110の正極側出力端子111に接続される正極側入力端子1と、太陽電池110の負極側出力端子112に接続される負極側入力端子2を備える。正極側入力端子1と負極側入力端子2の間には、測定用スイッチ素子(第2のスイッチ素子)3と、コンデンサ(可変負荷)4と、電流検知用素子5とが直列に接続されている。測定用スイッチ素子3は、正極側入力端子1、負極側入力端子2及びコンデンサ4を含む負荷電路(第2の電路)14を開閉する。
測定用スイッチ素子3は、例えば、トランジスタやサイリスタ等により構成することができる。特に限定されないが、本実施形態では、測定用スイッチ素子3は、エンハンスメント型のNチャネルMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)により構成されている。また、コンデンサ4は電解コンデンサ等により構成される。電流検知用素子5は、特に限定されないが、電流検知抵抗を使用することができる。なお、電流検知用素子5には電流検知用素子5を流れる電流を計測する電流検出部15が接続されている。
また、短絡電路(第1の電路)6及び電圧検出部7が、正極側入力端子1と負極側入力端子2との間で、測定用スイッチ素子3及びコンデンサ4と並列に接続されている。短絡電路6は、正極側入力端子1と負極側入力端子2との間を短絡する電路であり、短絡電路6には、短絡用スイッチ素子(第1のスイッチ素子)8が介設されている。短絡用スイッチ素子8は、例えば、トランジスタ等により構成することができる。特に限定されないが、本実施形態では、短絡用スイッチ素子8は、エンハンスメント型のNチャネルMOSFETにより構成されている。
さて、本実施形態の太陽電池特性測定装置100では、短絡用スイッチ素子8のオン状態とオフ状態とを切り替えるための制御信号を出力する制御部(CPU)9と、短絡用スイッチ素子8の制御端子(ここでは、ゲート端子)とを接続する信号線16に、立ち上がり遅延回路10が設けられている。立ち上がり遅延回路10は、短絡用スイッチ素子8の制御端子に入力される制御信号の立ち上がり時間を遅延させる。
図3は、本実施形態の太陽電池特性測定装置100の要部を示す概略構成図である。図3では、測定用スイッチ素子3、コンデンサ4、電圧検出部7及び電流検出部15の記載を省略している。図3に示すように、本実施形態では、立ち上がり遅延回路10は、短絡用スイッチ素子8の制御端子81に直列接続された定電流ダイオード11と、制御端子81に並列接続された(ここでは、定電流ダイオード11のカソードと、短絡用スイッチ素子8のソースとの間に接続された)遅延用コンデンサ12とにより構成されている。なお、一般的なMOSFETスイッチ回路と同様に、立ち上がり遅延回路10と制御端子81との間に抵抗31が接続され、短絡用スイッチ素子8のゲート・ソース間に抵抗32が接続されている。
図4は、短絡用スイッチ素子8に使用したMOSFETのゲート・ソース間電圧Vgs−ドレイン電流Id特性を示す図である。図4において、横軸はゲート・ソース間電圧Vgsに対応し、縦軸はドレイン電流Idに対応する。図4に示すように、この短絡用スイッチ素子8では、デバイス温度が25℃、ドレイン・ソース間電圧Vdsが20Vである場合、ゲート・ソース間電圧Vgsが6Vのときにドレイン電流Idが20A程度流れる。また、ゲート・ソース間電圧Vgsが5.7Vのときにドレイン電流Idが10A程度流れる。すなわち、この領域では、ゲート・ソース間電圧Vgsが0.3V変化すると、ドレイン電流Idが10A変化することになる。また、デバイス温度が150℃、ドレイン・ソース間電圧Vdsが20Vである場合、ゲート・ソース間電圧Vgsが6Vであってもドレイン電流Idが50A程度流れることになる。
図5は、制御部9が出力する制御信号と、立ち上がり遅延回路10により立ち上がり時間が遅延された制御信号とを示す図である。図5において、横軸は時間に対応し、縦軸は信号レベル(電圧)に対応する。
本実施形態の立ち上がり遅延回路10では、定電流ダイオード11を採用しているため、例えば、図5(a)に示すように、制御部9が、Lowレベル(0V)からHighレベル(12V)にステップ状に変化する制御信号を制御端子81へ出力した場合、遅延用コンデンサ12は定電流ダイオード11により制限された一定の電流で充電される。そのため、抵抗とコンデンサとにより構成した遅延回路とは異なり、図5(b)に示すように、当該制御信号は一定の電圧上昇率となる状態で立ち上がり時間が遅延される。
上述のように、短絡用スイッチ素子8は、ゲート・ソース間電圧Vgsのわずかな変化でドレイン電流Idが大きく増加する。また、同一のゲート・ソース間電圧Vgsを印加した場合でも、デバイス温度の上昇によりドレイン電流Idが増加する。例えば、抵抗とコンデンサにより遅延回路を構成した場合、ステップ状の制御信号の立ち上がり部は、指数関数にしたがう状態で遅延される。すなわち、立ち上がり部には、急峻に立ち上がる領域(コンデンサ充電開始付近)と、緩やかに立ち上がる領域(コンデンサ充電完了付近)が生じることになる。そのため、制御信号が急峻に立ち上がる領域と、ゲート・ソース間電圧Vgsのわずかな変化でドレイン電流Idが大きく増加する領域とが重なることも想定される。この場合、ドレイン電流Idは極めて急峻に増加することになる。これに対し、立ち上がり遅延回路10のように、制御信号の立ち上がりを一定の電圧上昇率とする構成では、ゲート・ソース間電圧Vgsを常に一定の電圧上昇率で変化させることができるため、このようなドレイン電流Idの急峻な増加を避けることができる。
なお、特に限定されないが、本実施形態では、制御部9が出力した制御信号は、立ち上がり遅延回路10によって、1msあたり5Vの電圧上昇率となる状態に、立ち上がり遅延回路10の時定数が設定されている。このような時定数は、例えば、ピンチオフ電流が1mAの定電流ダイオード11と容量が0.2μFのコンデンサにより実現することができる。なお、電圧上昇率を小さくし過ぎると、短絡用スイッチ素子8において消費される電力(発生する熱)が増大し、デバイス温度上昇による電流増大、更なる消費電力の増大のポジティブフィードバック(いわゆる、熱暴走)が発生するため、短絡用スイッチ素子8が破壊する可能性がある。立ち上がり遅延回路10の時定数は、この点も勘案して定める必要がある。
この構成によれば、短絡用スイッチ素子8をオン状態にするために短絡用スイッチ素子8の制御端子81に入力される制御信号の立ち上がり時間が遅延される。そのため、短絡用スイッチ素子8は、遅延された立ち上がり時間に応じて緩やかにオフ状態からオン状態に切り替わることになる。したがって、測定対象の太陽電池が有する容量成分に起因して
太陽電池特性測定装置100にインラッシュ電流が流入する場合であっても、短絡用スイッチ素子8のゲート電位が緩やかに上昇するため、短絡電路6を流れるインラッシュ電流の大きさが制限される。すなわち、瞬時に過大なインラッシュ電流が短絡用スイッチ素子8に流入することがなく、短絡用スイッチ素子8の破損を防止することができる。
太陽電池特性測定装置100にインラッシュ電流が流入する場合であっても、短絡用スイッチ素子8のゲート電位が緩やかに上昇するため、短絡電路6を流れるインラッシュ電流の大きさが制限される。すなわち、瞬時に過大なインラッシュ電流が短絡用スイッチ素子8に流入することがなく、短絡用スイッチ素子8の破損を防止することができる。
以上の構成において、立ち上がり遅延回路10の作用により短絡用スイッチ素子8のゲート電圧が緩やかに上昇する状況下において短絡用スイッチ素子8にインラッシュ電流が流れると、短時間での熱暴走が発生することのない時定数の設定であっても短絡用スイッチ素子8において熱が発生し、短絡用スイッチ素子8の温度が上昇する。そして、当該温度上昇に伴って、同一のゲート電圧であっても短絡用スイッチ素子8を流れるインラッシュ電流が大きくなる。この場合、短絡用スイッチ素子8の温度はさらに上昇することになる。
以上のようなポジティブフードバックの対策として、本実施形態の太陽電池特性測定装置100は、図2に示すように、電路遮断部20をさらに備える。電路遮断部20は、短絡用スイッチ素子8に入力される制御信号を搬送する信号線16に接続され、電流検知用素子5を流れる電流が予め指定された電流条件を満足するときに、信号線16の電位を短絡用スイッチ素子8がオフ状態になる電位(ここでは、0V)に変更する。これにより、短絡用スイッチ素子8はオフ状態になる。
特に限定されないが、電路遮断部20は、図3に示すように、オフ信号印加用スイッチ素子21(第3のスイッチ素子)と過電流検知回路22とにより構成することがきる。オフ信号印加用スイッチ素子21は、例えば、トランジスタやサイリスタ等により構成することができ、過電流検知回路22は、例えば、オペアンプにより構成することができる。
図3の例では、オフ信号印加用スイッチ素子21は接合型FETにより構成され、当該接合型FETのドレインが定電流ダイオード11のカソード(信号線16)と接続されている。また、接合型FETのソースが短絡用スイッチ素子8であるMOSFETのソース(オフ電位供給源)と接続されている。この構成では、オフ信号印加用スイッチ素子21がオン状態になると短絡用スイッチ素子8がオフ状態になる。
過電流検知回路22であるオペアンプの出力は、オフ信号印加用スイッチ素子21である接合型FETのゲートに入力される。この例では、オペアンプの一方の入力端子に基準電位が入力され、他方の入力端子に電流検知用素子5の両端の電位差が入力される。基準電位は、例えば、電流検知用素子5を流れる電流が30Aである場合の電流検知用素子5の両端の電位差に対応する値が入力される。ここでは、オペアンプは、電流検知用素子5の両端の電位差と基準電位とを比較し、電流検知用素子5の両端の電位差が基準電位よりも大きい場合にHighレベル信号(オフ信号印加用スイッチ素子21がオン状態になる信号)を出力する。また、電流検知用素子5の両端の電位差が基準電位以下である場合にオペアンプはLowレベル信号(オフ信号印加用スイッチ素子21がオフ状態になる信号)を出力する。この場合、電流検知用素子5を流れる電流が30Aよりも大きいときは、オペアンプの出力はHighレベルになり、オフ信号印加用スイッチ素子21がオン状態になる。その結果、短絡用スイッチ素子8はオフ状態となり短絡電路6が遮断される。
この構成によれば、立ち上がり遅延回路10の作用により短絡用スイッチ素子8のゲート電圧が緩やかに上昇する状況下であっても、例えば、短絡用スイッチ素子8の温度依存性等に起因して、短絡電路6を流れるインラッシュ電流が大きくなる場合には、短絡用スイッチ素子8が強制的にオフ状態になる。すなわち、立ち上がり遅延回路10との相乗効果により、より確実に、短絡用スイッチ素子8に過大なインラッシュ電流が流入することを回避でき、短絡用スイッチ素子8の破損を防止することができる。
上述のように、本実施形態の太陽電池特性測定装置100では、電路遮断部20の作用により、短絡電路6に流入する電流が予め指定された電流条件を満足する場合、短絡用スイッチ素子8が強制的にオフ状態になる。このとき、電流検知用素子5を流れる電流はゼロになるため、電路遮断部20のオフ信号印加用スイッチ素子21がオフ状態になる。その結果、信号線16の電位は、制御部9の出力電圧まで上昇することになる。この場合も、上述のように、立ち上がり遅延回路10の作用により、制御信号の立ち上がり時間が遅延される。そして、短絡電路6に流入する電流が予め指定された電流条件を満足する場合、短絡用スイッチ素子8が強制的にオフ状態になる。したがって、短絡用スイッチ素子8では、オフ状態とオン状態との切り替えが繰り返されることになる。
そのため、本実施形態では、制御部9は、電流検知用素子5を流れる電流が予め指定された電流条件を満足すると、短絡用スイッチ素子8をオフ状態にする制御信号を出力する構成になっている。これにより、短絡用スイッチ素子8において、オフ状態とオン状態との切り替えが限りなく繰り返されることを防止できる。
また、本実施形態の構成では、電路遮断部20が存在するため、制御部9が自身に指定された電流条件を満足するとの判定に要する時間(電流検知に要する時間)が、電路遮断部20が自身に指定された電流条件を満足するとの判定に要する時間よりも長い場合でも、短絡用スイッチ素子8への過大なインラッシュ電流の流入することがない。したがって、応答速度が低速である制御部9の使用が可能であり、制御部9を安価に構成することができる。
なお、制御部9が電流検知に要する時間が、電路遮断部20が電流検知に要する時間よりも長い場合、短絡用スイッチ素子8において、オフ状態とオン状態との切り替えが繰り返し発生することになる。この場合、上述のように熱が発生し、短絡用スイッチ素子8の温度が上昇する。そのため、電路遮断部20が短絡用スイッチ素子8をオフ状態にするまでの時間は、オフ状態とオン状態との切り替えの繰り返しに伴って次第に短くなる。したがって、このような繰り返し回数は、当該繰り返しにより発生する熱によりドレイン電流が増大した場合であっても、当該増大したドレイン電流が短絡用スイッチ素子8であるMOSFETの安全動作領域内になるようにする必要がある。
本実施形態の太陽電池特性測定装置100を使用して太陽電池110の出力特性を測定する場合、太陽電池110の正極側出力端子111及び負極側出力端子112に、太陽電池特性測定装置100の正極側入力端子1及び負極側入力端子2がそれぞれ接続される。このとき、測定用スイッチ素子3及び短絡用スイッチ素子8はともにオフ状態である。
接続が完了すると、まず、制御部9は短絡用スイッチ素子8がオン状態にされた後、測定用スイッチ素子3がオン状態にされる。これにより、太陽電池110の容量成分に蓄積した電荷が放電される。太陽電池特性測定装置100では、このとき、短絡用スイッチ素子8が緩やかにオフ状態からオン状態に切り替わるため、短絡用スイッチ素子8に過大なインラッシュ電流が流れることがない。なお、短絡用スイッチ素子8をオン状態にしたときに制御部9が短絡用スイッチ素子8をオフ状態にしてしまう場合は、太陽電池110の容量成分に蓄積した電荷が十分に放電されない。この場合は、以上の手順を繰り返すことや、太陽電池110の容量成分に蓄積した電荷を他の手法(例えば、1MΩ程度の抵抗を介して接地する等)により除去した後で、太陽電池特性測定装置100を太陽電池110に接続し、短絡用スイッチ素子8をオン状態にすればよい。
以上の手順に次いで、制御部9は短絡用スイッチ素子8をオフ状態にする。これにより、太陽電池110からコンデンサ4に電荷が流入し、コンデンサ4が充電される。その充
電の過程で、コンデンサ4からなる負荷は短絡状態から開放状態に変動することになる。この負荷変動の過程で、電流検出部15及び電圧検出部7により太陽電池110の出力電流I及び出力電圧Vを測定することで出力特性が取得される。上述のように、当該測定は、太陽電池110に光を入射させた状態で行われる。
電の過程で、コンデンサ4からなる負荷は短絡状態から開放状態に変動することになる。この負荷変動の過程で、電流検出部15及び電圧検出部7により太陽電池110の出力電流I及び出力電圧Vを測定することで出力特性が取得される。上述のように、当該測定は、太陽電池110に光を入射させた状態で行われる。
以上説明したように、太陽電池特性測定装置100では、太陽電池が比較的大きな容量成分を有している場合でも装置破壊を防止することができる。また、コンデンサ負荷方式であるため、小型化、軽量化が可能である。
なお、上述した実施形態は本発明の技術的範囲を制限するものではなく、既に記載したもの以外でも、本発明の範囲内で種々の変形や応用が可能である。例えば、上記実施形態では、特に好ましい形態として、立ち上がり遅延回路、電路遮断部及び制御部が協働する構成としたが、少なくとも立ち上がり遅延回路を備える構成であれば、太陽電池が比較的大きな容量成分を有している場合でも装置破壊を防止することが可能である。また、立ち上がり遅延回路と制御部のみが協働する構成であっても同様の効果を得ることができる。なお、電路遮断部のみを備える構成は、インラッシュ電流に過敏に反応しすぎるため好ましくない。
また、上記実施形態では、可変負荷としてコンデンサを採用した構成について説明したが、電子負荷等の他の方式の負荷を可変負荷の採用を排除するものではない。例えば、可変負荷として電子負荷を採用した場合、上述のように、本願発明の構成を採用しない場合であっても太陽電池との接続時に電子負荷に対する制御を採用することで破壊を回避することは不可能ではない。しかしながら、本願発明の構成を採用することで、太陽電池と接続する際の電子負荷に対する制御が不要になるとともに、電子負荷に作用する電気的負荷を軽減することが可能になる。
さらに、立ち上がり遅延回路及び電路遮断部の回路構成は、特に好適な態様の例示であって、他の構成の採用を排除するものではない。各種設計値は本発明の効果を奏する範囲において任意に変更可能であり、同様の作用を奏する他の回路構成を採用することも可能である。
加えて、本発明は、太陽電池を短絡する電路を有する任意の太陽電池特性測定装置に適用可能である。
本発明によれば、太陽電池が比較的大きな容量成分を有している場合でも装置破壊を防止することができるとともに、小型化及び軽量化も可能であり、太陽電池特性測定装置として有用である。
1 正極側入力端子
2 負極側入力端子
3 測定用スイッチ素子(第2のスイッチ素子)
4 コンデンサ(可変負荷)
5 電流検知用素子
6 短絡電路(第1の電路)
8 短絡用スイッチ素子(第1のスイッチ素子)
9 制御部
10 立ち上がり遅延回路
11 定電流ダイオード
12 遅延用コンデンサ
14 負荷電路(第2の電路)
16 信号線
20 電路遮断部
21 オフ信号印加用スイッチ素子(第3のスイッチ素子)
22 過電流検知回路(オペアンプ)
100 太陽電池特性測定装置
110 太陽電池
2 負極側入力端子
3 測定用スイッチ素子(第2のスイッチ素子)
4 コンデンサ(可変負荷)
5 電流検知用素子
6 短絡電路(第1の電路)
8 短絡用スイッチ素子(第1のスイッチ素子)
9 制御部
10 立ち上がり遅延回路
11 定電流ダイオード
12 遅延用コンデンサ
14 負荷電路(第2の電路)
16 信号線
20 電路遮断部
21 オフ信号印加用スイッチ素子(第3のスイッチ素子)
22 過電流検知回路(オペアンプ)
100 太陽電池特性測定装置
110 太陽電池
Claims (4)
- 太陽電池に接続され、当該太陽電池の出力特性を測定する太陽電池特性測定装置であって、
前記太陽電池の正極側出力端子と接続される正極側入力端子と、
前記太陽電池の負極側出力端子と接続される負極側入力端子と、
前記正極側入力端子と前記負極側入力端子との間を短絡する第1の電路を開閉する第1のスイッチ素子と、
前記正極側入力端子と前記負極側入力端子との間で、前記第1のスイッチ素子と並列に接続される可変負荷と、
前記正極側入力端子、前記負極側入力端子及び前記可変負荷を含む第2の電路を開閉する第2のスイッチ素子と、
前記第1のスイッチ素子をオン状態にするために前記第1のスイッチ素子の制御端子に入力される制御信号の立ち上がり時間を遅延させる立ち上がり遅延回路と、
前記第1のスイッチ素子のオン状態とオフ状態とを切り替えるために前記第1のスイッチ素子の制御端子に入力される制御信号を出力する制御部と、
前記第1の電路に配置され、前記第1の電路を流れる電流の検知に使用される電流検知用素子と、
前記制御部から前記第1のスイッチ素子に入力される前記制御信号を搬送する信号線に接続され、前記電流検知用素子を流れる電流が予め指定された電流条件を満足するときに、前記信号線の電位を前記第1のスイッチ素子がオフ状態になる電位に変更する電路遮断部と、
を備える、太陽電池特性測定装置。 - 前記電路遮断部が、
前記信号線と、前記信号線に前記第1のスイッチ素子がオフ状態になる電位を供給する電位供給源との間を接続する電路を開閉する第3のスイッチ素子と、
前記電流検知用素子を流れる電流が予め指定された電流条件を満足するときに、前記第3のスイッチ素子をオン状態にする制御信号を前記第3のスイッチ素子の制御端子に入力するオペアンプと、
を備える、請求項1記載の太陽電池特性測定装置。 - 前記制御部は、前記電流検知用素子を流れる電流が予め指定された電流条件を満足すると、前記第1のスイッチ素子をオフ状態にする制御信号を出力し、前記電路遮断部が自身に指定された電流条件を満足するとの判定に要する時間が、前記制御部が自身に指定された電流条件を満足するとの判定に要する時間よりも短い、請求項1又は2に記載の太陽電池特性測定装置。
- 前記立ち上がり遅延回路が、
前記第1のスイッチ素子の制御端子に直列接続された定電流ダイオードと、前記制御端子に並列接続されたコンデンサとにより構成される、請求項1から3のいずれか1項に記載の太陽電池特性測定装置。
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