目次
1.序文
1.1.時変複素包絡線入力信号の生成の実施例
1.2.定包絡線信号からの時変複素包絡線信号の生成の実施例
1.3.ベクトル電力増幅(Vector Power Amplification)概観
2.全体の数学的概観
2.1.フェーザ信号表現
2.2.時変複素包絡線信号
2.3.時変包絡線信号の定包絡線分解
3.ベクトル電力増幅(VPA)方法およびシステム
3.1.デカルト4分岐(Cartesian 4−Branch)ベクトル電力増幅器
3.2.デカルトポーラデカルトポーラ(Cartesian−Polar−Cartesian−Polar)(CPCP)2分岐ベクトル電力増幅器
3.3.直接デカルト(Direct Cartesian)2分岐ベクトル電力増幅器
3.4.IおよびQデータ−ベクトル変調器伝達関数
3.4.1.デカルト4分岐VPA伝達関数
3.4.2.CPCP2分岐VPA伝達関数
3.4.3.直接デカルト2分岐VPA伝達関数
3.4.4.大きさ−位相シフト変換
3.4.4.1.正弦波信号のための大きさ−位相シフト変換
3.4.4.2.方形波信号のための大きさ−位相シフト変換
3.4.5.波形歪み補償
3.5.出力ステージ
3.5.1.出力ステージの実施形態
3.5.2.出力ステージ電流整形
3.5.3.出力ステージ保護
3.6.高調波制御(Harmonic Control)
3.7.電力制御
3.8.例示的ベクトル電力増幅器の実施形態
4.追加の例示的実施形態および実装
4.1.概観
4.1.1.出力電力および電力効率の制御
4.1.2.誤差補償および/または訂正
4.1.3.マルチバンドマルチモード動作
4.2.デジタル制御モジュール
4.3.VPAアナログコア
4.3.1.VPAアナログコア実装A
4.3.2.VPAアナログコア実装B
4.3.3.VPAアナログコア実装C
5.VPA出力ステージのリアルタイム増幅器クラス制御
6.概要
7.結論
序文
ベクトル結合電力増幅のための方法、装置およびシステムが、本明細書で開示される。
ベクトル結合電力増幅は、線形性および電力効率を同時に最適化するための手法である。一般的に言えば、また、図50の流れ図502を参照すると、ステップ504で、変化する振幅および位相を有する時変複素包絡線入力信号が、定包絡線成分信号に分解される。ステップ506で、定包絡線成分信号が増幅され、次いでステップ508で加算されて、入力複素包絡線信号の増幅されたバージョンが生成される。ほぼ一定の包絡線信号は、最小限の非線形歪みの懸念で増幅される可能性があるので、定包絡線信号を加算した結果は、最小の非線形歪みを受ける一方で、最適な効率をもたらす。
したがって、ベクトル結合電力増幅は、最小の非線形歪みレベルを維持しながら、複素信号を効率的に増幅するために、非線形電力増幅器を使用することを可能にする。
便宜上、限定ではなく、本発明の方法およびシステムは時として、本明細書で、ベクトル電力増幅(VPA)方法およびシステムと呼ばれる。
本発明の実施形態によるVPA方法およびシステムの概要を、これから提供する。明確にするために、ある用語を最初に以下で定義する。このセクションで説明するこれらの定義は便宜上でのみ提供され、限定するものではない。これらの用語の意味は、本明細書で提供される教示の全体に基づいて、当業者には明らかになるであろう。これらの用語を、明細書全体でさらに詳細に論じる場合がある。
信号包絡線という用語は、本明細書で使用されるとき、信号が時間領域において変動するときに、信号がその中に含まれる振幅境界を指す。直交変調信号を、r(t)=i(t)・cos(ωc・t)+q(t)・sin(ωc・t)によって記述することができ、ただし、i(t)およびq(t)は同相および直交信号を表し、信号包絡線e(t)は
に等しく、r(t)に関連付けられた位相角は逆正接(q(t)/i(t)に関係する。
定包絡線信号という用語は、本明細書で使用されるとき、同相および直交信号を指し、ただし、
であり、e(t)は相対的にあるいはほぼ一定の値を有する。
時変包絡線信号という用語は、本明細書で使用されるとき、時変信号包絡線を有する信号を指す。時変包絡線信号を、同相および直交信号に関して、
と記述することができ、e(t)は時変値を有する。
位相シフトという用語は、本明細書で使用されるとき、基準位相に対して時変または定包絡線信号の位相成分を後退あるいは前進させることを指す。
1.1)複素包絡線時変入力信号の生成の実施例
図1Aおよび1Bは、時変包絡線および位相複素入力信号の生成を例示する実施例である。図1Aで、時変包絡線キャリア信号104および106は、位相制御器110に入力される。位相制御器110は、信号104および106の位相成分を操作する。すなわち、位相制御器110は、信号104および106を位相シフトしてもよい。結果として生じる信号108および112を、したがって、信号104および106に対して位相シフトしてもよい。図1Aの実施例では、位相制御器110は、信号108および112を見ると分かるように、時刻t0で、信号104および106において位相の反転(180度位相シフト)を引き起こす。信号108および112は、時変複素キャリア信号を表す。信号108および112は、時変包絡線および位相成分を共に有する。加算されるとき、信号108および112は信号114の結果となる。信号114もまた、時変複素信号を表す。信号114は、本発明のVPAの実施形態に対する一実施例の入力信号であってもよい(例えば、図50のステップ504への一実施例の入力)。
時変複素信号をまた、図1Bに例示するように生成してもよい。図1Bで、信号116および118はベースバンド信号を表す。例えば、信号116および118は、信号の同相(I)および直交(Q)ベースバンド成分である場合がある。図1Bの実施例では、信号116および118は、+1から−1へ移行するときにゼロ交差を受ける。信号116および118は、信号120、または、90度位相シフトされた信号120で乗算される。信号116は、信号120の0度シフトされたバージョンで乗算される。信号118は、信号120の90度シフトされたバージョンで乗算される。結果として生じる信号122および124は、時変複素キャリア信号を表す。信号122および124は、信号116および118の時変振幅に従って変化する包絡線を有することに留意されたい。さらに、信号122および124は共に、信号116および118のゼロ交差で位相の反転を受ける。信号122および124は加算されて、信号126の結果となる。信号126は時変複素信号を表す。信号126は、本発明のVPAの実施形態に対する一実施例の入力信号を表す場合がある。加えて、信号116および118は、本発明のVPAの実施形態に対する実施例の入力信号を表す場合がある。
1.2)定包絡線信号からの時変複素包絡線信号の生成の実施例
このセクションの説明は、全体的に図50のステップ508の動作に関係する。図1Cは、2つ以上のほぼ一定の包絡線信号の和からの時変複素信号の生成についての3つの実施例を例示する。しかし、本明細書で提供された教示に基づいて、図1Cの実施例において例示された概念を2つ以上の定包絡線信号の場合に同様に拡張することができることは、当業者には理解されよう。
図1Cの実施例1では、定包絡線信号132および134が位相制御器130に入力される。位相制御器130は、信号132および134の位相成分を操作して、信号136および138をそれぞれ生成する。信号136および138は、ほぼ一定の包絡線信号を表し、加算されて、信号140が生成される。実施例1に関連付けられた図1Cのフェーザ表現は、信号136および138をそれぞれフェーザP136およびP138として例示する。信号140は、フェーザP140として例示される。実施例1では、P136およびP138は、フェーザ表現の実軸に整合されると仮定される基準信号に対して角度Φ1だけ対称的に位相シフトされる。対応して、時間領域信号136および138は、同量であるが、基準信号に対して逆方向に位相シフトされる。したがって、P136およびP138の和であるP140は、基準信号と同相である。
図1Cの実施例2では、ほぼ一定の包絡線信号132および134が位相制御器130に入力される。位相制御器130は、信号132および134の位相成分を操作して、信号142および144をそれぞれ生成する。信号142および144は、ほぼ一定の包絡線信号であり、加算されて信号150が生成される。実施例2に関連付けられたフェーザ表現は、信号142および144をそれぞれフェーザP142およびP144として例示する。信号150は、フェーザP150として例示される。実施例2では、P142およびP144は、基準信号に対して対称的に位相シフトされる。したがって、P140と同様に、P150もまた基準信号と同相である。P142およびP144は、しかし、基準信号に対して、それによりΦ2≠Φ1となる角度だけ位相シフトされる。P150は、結果として、実施例1のP140とは異なる大きさを有する。時間領域表現では、信号140および150は同相であるが、互いに対して異なる振幅を有することに留意されたい。
図1Cの実施例3では、ほぼ一定の包絡線信号132および134が位相制御器130に入力される。位相制御器130は、信号132および134の位相成分を操作して、信号146および148をそれぞれ生成する。信号146および148は、ほぼ一定の包絡線信号であり、加算されて信号160が生成される。実施例3に関連付けられたフェーザ表現は、信号146および148をそれぞれフェーザP146およびP148として例示する。信号160は、フェーザP160として例示される。実施例3では、P146は、基準信号に対して角度Φ3だけ位相シフトされる。P148は、基準信号に対して角度Φ4だけ位相シフトされる。Φ3およびΦ4は、等しくても等しくなくてもよい。したがって、P146およびP148の和であるP160は、もはや基準信号と同相ではない。P160は、基準信号に対して角度Θだけ位相シフトされる。同様に、P160は、実施例1および2のP140およびP150に対してΘだけ位相シフトされる。P160はまた、実施例3で例示するように、P140に対して振幅において変化する場合もある。
要約すると、図1Cの実施例は、時変振幅信号を、2つ以上のほぼ一定の包絡線信号の和によって得ることができることを実証する(実施例1)。さらに、時変信号は、2つ以上のほぼ一定の包絡線信号を逆方向に等しくシフトすることによって、振幅変化を有することができるが、それに与えられた位相変化を有することはできない(実施例2)。信号の2つ以上の定包絡線成分を同じ方向に等しくシフトすると、時変信号に位相変化を与えることはできるが、振幅変化を与えることはできない。いかなる時変振幅および位相信号も、2つ以上のほぼ一定の包絡線信号を使用して生成することができる(実施例3)。
図1Cの実施例における信号は、例示のためにのみ正弦波形として図示されることに留意されたい。本明細書の教示に基づいて、他のタイプの波形もまた使用されている場合があることは、当業者には理解されよう。また、図1Cの実施例は、例示のためにのみ本明細書で提供され、本発明の特定の実施形態に対応する場合も対応しない場合もあることにも留意されたい。
1.3)ベクトル電力増幅概観
ベクトル電力増幅の大まかな概観をこれから提供する。図1Dは、例示的時変複素入力信号172の電力増幅を例示する。図1Aおよび1Bに例示するような信号114および126は、信号172の実施例である場合がある。さらに、信号172は、104および106(図1A)、108および112(図1A)、116および118(図1B)、ならびに、122および124(図1B)など、2つ以上の成分信号によって生成されるか、あるいはこれらからなる場合がある。
図1Dの実施例では、VPA170は、本発明によるVPAシステムの実施形態を表す。VPA170は、信号172を増幅して、増幅された出力信号178を生成する。出力信号178は、最小の歪みを有して効率的に増幅される。
図1Dの実施例では、信号172および178は、電圧信号Vin(t)およびVout(t)をそれぞれ表す。いかなる時刻でも、図1Dの実施例では、Vin(t)およびVout(t)はVout(t)=KeVin(tat’)となるように関係し、ただし、Kは倍率であり、t’は、VPAシステムにおいて存在する場合のある時間遅延を表す。電力の意味合いでは、
であり、ただし、出力信号178は、入力信号172の電力増幅されたバージョンである。
図1Dに例示するような、時変複素信号の線形(または、ほぼ線形)の電力増幅は、図1Eに示すような現在の実施形態によって達成される。
図1Eは、本発明の実施形態によるベクトル電力増幅の実施形態を概念的に例示する、一実施例のブロック図である。図1Eでは、入力信号172は時変複素信号を表す。例えば、入力信号172は、図1Aおよび1Bに例示するように生成されてもよい。実施形態では、信号172は、デジタル信号であってもアナログ信号であってもよい。さらに、信号172は、ベースバンド信号であってもキャリアベースの信号であってもよい。
図1Eを参照すると、本発明の実施形態によれば、入力信号172またはその均等物がVPA182に入力される。図1Eの実施形態では、VPA182は、状態マシン184およびアナログ回路186を含む。状態マシン184は、デジタルおよび/またはアナログコンポーネントを含む場合がある。アナログ回路186は、アナログコンポーネントを含む。VPA182は、入力信号172を処理して、図1Eに例示するように、2つ以上の信号188−{1,...,n}を生成する。図1Cにおける信号136、138、142、144および146、148に関して記載したように、信号188−{1,...,n}は、異なる期間にわたって互いに対して位相シフトされてもそうでなくてもよい。さらに、VPA182は、信号188−{1,...,n}の和が、ある実施形態では、信号172の増幅されたバージョンである可能性のある信号194の結果となるように、信号188−{1,...,n}を生成する。
なお、図1Eを参照すると、信号188−{1,...,n}は、ほぼ一定の包絡線信号である。したがって、前の段落の説明は、図50のステップ504に対応する。
全体的に図50のステップ506に対応する図1Eの実施例では、定包絡線信号188−{1,...,n}はそれぞれ、対応する電力増幅器(PA)190−{1,...,n}によって独立して増幅されて、増幅された信号192−{1,...,n}が生成される。実施形態では、PA190−{1,...,n}は、各定包絡線信号188−{1,...,n}をほぼ等しく増幅する。増幅された信号192−{1,...,n}は、ほぼ一定の包絡線信号であり、ステップ508で加算されて、出力信号194が生成される。出力信号194は、入力信号172の線形的に(あるいは、ほぼ線形的に)増幅されたバージョンである可能性があることに留意されたい。出力信号194はまた、本明細書に記載するように、入力信号172の周波数アップコンバートされたバージョンである場合もある。
全体の数学的概観
2.1)フェーザ信号表現
図1は、信号r(t)のフェーザ表現信号
102を例示する。信号のフェーザ表現は、信号の包絡線の大きさ、および、基準信号に対する信号の位相シフトを明示的に表す。本書では、便宜上、限定ではなく、基準信号は、フェーザ表現の直交空間の実(Re)軸に整合されるものとして定義される。本発明は、しかし、この実施形態に限定されない。信号の周波数情報は、この表現において暗示的であり、基準信号の周波数によって与えられる。例えば、図1を参照すると、また、実軸がcos(ωt)基準信号に対応すると仮定すると、フェーザ
は、関数r(t)=R(t)cos(ωt+Φ(t))に変換されるようになり、ただし、Rは、
の大きさである。
なお、図1を参照すると、フェーザ
を、実部フェーザ
および虚部フェーザ
に分解することができることに留意されたい。
および
は、基準信号に対して
の同相および直交フェーザ成分であると言われる。さらに、
および
に対応する信号は、それぞれ、I(t)=R(t)・cos(Φ(t))およびQ(t)=R(t)・sin(Φ(t))として、r(t)に関係することに留意されたい。時間領域では、信号r(t)をまた、その同相および直交成分に関して、以下のように書くこともできる。
r(t)=I(t)・cos(ωt)+Q(t)・sin(ωt)=
R(t)・cos(Φ(t))・cos(ωt)+R(t)・sin(Φ(t))・sin(ωt) (1)
図1の実施例では、R(t)が特定の時刻で例示されることに留意されたい。
2.2)時変複素包絡線信号
図2は、2つの異なる時刻t1およびt2での信号r(t)のフェーザ表現を例示する。信号の包絡線の大きさを表す、フェーザの大きさ、ならびにその相対的な位相シフトは、共に時間t1からt2へと変化することに留意されたい。図2では、これは、フェーザ
および
の変化する大きさ、および、それらの対応する位相シフト角φ1およびφ2によって例示される。信号r(t)は、したがって、時変複素包絡線信号である。
さらに、図2から、信号r(t)の実および虚フェーザ成分もまた、振幅において時変であることに留意されたい。したがって、それらの対応する時間領域信号もまた、時変包絡線を有する。
図3A〜3Cは、時変複素包絡線信号を生成するための一実施例の変調を例示する。図3Aは、信号m(t)の図を例示する。図3Bは、キャリア信号c(t)の一部の図を例示する。図3Cは、信号m(t)およびc(t)の乗算の結果生じる信号r(t)を例示する。
図3Aの実施例では、信号m(t)は、時変の大きさの信号である。m(t)はさらに、ゼロ交差を受ける。キャリア信号c(t)は、図3Bの実施例では、典型的には信号m(t)のものよりも高い、あるキャリア周波数で振動する。
図3Cから、結果として生じる信号r(t)は時変包絡線を有することに留意されたい。さらに、図3Cから、r(t)は、変調信号m(t)がゼロに交差する瞬間に、位相の反転を受けることに留意されたい。一定でない包絡線および位相を共に有するので、r(t)は時変複素包絡線信号であると言われる。
2.3)時変包絡線信号の定包絡線分解
時変の大きさおよび位相のいかなるフェーザも、基準フェーザに対して適切に指定された位相シフトを有する2つ以上の一定の大きさのフェーザの和によって得ることができる。
図3Dは、一実施例の時変包絡線および位相信号S(t)の図を例示する。例示を容易にするため、信号S(t)を、最大の包絡線の大きさAを有する正弦波信号であると仮定する。図3Dはさらに、いずれかの時刻に、2つの定包絡線信号S1(t)およびS2(t)の和によって、どのように信号S(t)を得ることができるかの一実施例を示す。一般に、S1(t)=A1sin(ωt+Φ1(t))およびS1(t)=A2sin(ωt+Φ2(t))である。
例示のため、図3Dにおいて、S(t)に対して信号S1(t)およびS2(t)を適切に位相整合することによって、どのように信号S1(t)およびS2(t)を加算して、S(t)=K(S1(t)+S2(t))、ただしKは定数となるようにすることができるかを例示する、3つの図が提供される。すなわち、信号S(t)を、いかなる時刻にも2つ以上の信号に分解することができる。図3Dから、期間T1に渡って、S1(t)およびS2(t)は共に信号S(t)に対して同相であり、よって、和は信号S(t)の最大の包絡線の大きさAとなる。しかし、期間T3に渡って、信号S1(t)およびS2(t)は、互いに対して180度異相であり、よって、和は信号S(t)の最小の包絡線の大きさとなる。
図3Dの実施例は、正弦波信号の場合を例示する。しかし、フーリエ級数またはフーリエ変換によって表すことができるキャリア信号を変調する、いかなる時変包絡線も、2つ以上のほぼ一定の包絡線信号に同様に分解することができることは、当業者には理解されよう。よって、複数のほぼ一定の包絡線信号の位相を制御することによって、いかなる時変複素包絡線信号を生成することもできる。
ベクトル電力増幅方法およびシステム
本発明の実施形態によるベクトル電力増幅方法およびシステムは、いかなる時変包絡線信号をも2つ以上のほぼ一定の包絡線成分信号に分解するため、または、このような成分信号を受信あるいは生成し、それらの成分信号を増幅し、次いで、増幅された信号を加算して、時変複素包絡線信号の増幅されたバージョンを生成するための、能力に依拠する。
セクション3.1〜3.3では、本発明のベクトル電力増幅(VPA)の実施形態が提供され、4分岐および2分岐の実施形態が含まれる。この説明では、各VPAの実施形態が最初に、実施形態の基本的概念の数学的導出を用いて概念的に提示される。VPAの実施形態の動作の方法の一実施形態が次いで提示され、その後に、VPAの実施形態の様々なシステムレベルの実施形態が続く。
セクション3.4は、本発明の実施形態による制御モジュールの様々な実施形態を提示する。本発明の実施形態による制御モジュールは、本発明のあるVPAの実施形態を可能にするために使用される場合がある。いくつかの実施形態では、制御モジュールは、VPAの実施形態の入力ステージとVPAの実施形態の後続のベクトル変調ステージの間の中間物である。
セクション3.5は、本発明の実施形態によるVPA出力ステージの実施形態を説明する。出力ステージの実施形態は、VPAの実施形態の出力信号を生成することを対象とする。
セクション3.6は、本発明の実施形態による高調波制御を対象とする。本発明のある実施形態で高調波制御を実装して、VPAの実施形態の高調波における実および虚電力を操作し、よって、出力での基本周波数において存在する電力を増大させてもよい。
セクション3.7は、本発明の実施形態による電力制御を対象とする。本発明のVPAの実施形態が採用される場合のある応用例の電力レベル要件を満たすために、本発明のある実施形態で電力制御を実装してもよい。
3.1)デカルト4分岐ベクトル電力増幅器
本明細書で、例示を容易にするため、限定ではなく、デカルト4分岐VPAの実施形態と呼ばれる本発明の一実施形態によれば、時変複素包絡線信号は、4つのほぼ一定の包絡線成分信号に分解される。これらの成分信号は、等しくあるいはほぼ等しく、個別に増幅され、次いで加算されて、元の時変複素包絡線信号の増幅されたバージョンが構成される。
この実施形態では、例示のため、限定ではなく、4つの分岐が採用されることに留意されたい。本発明の範囲は、他の数の分岐の使用を包含し、このような変形形態の実装は、本明細書に含まれた教示に基づいて、当業者には明らかになるであろう。
一実施形態では、時変複素包絡線信号は最初に、その同相および直交ベクトル成分に分解される。フェーザ表現では、同相および直交ベクトル成分は、信号の実部および虚部フェーザにそれぞれに対応する。
上述のように、信号の同相および直交ベクトル成分の大きさは、信号の大きさに比例して変化し、よって、信号が時変包絡線信号であるとき、定包絡線ではない。したがって、4分岐VPAの実施形態はさらに、信号の同相および直交ベクトル成分の各々を4つのほぼ一定の包絡線成分に分解し、2つは同相信号成分、2つは直交信号成分である。この概念を、フェーザ信号表現を用いて図4に例示する。
図4の実施例では、フェーザ
および
は、2つの時刻t1およびt2での例示的時変複素包絡線信号の実部フェーザにそれぞれ対応する。フェーザ
および
は、異なる大きさを有することに留意されたい。
なお、図4を参照すると、瞬時t1で、フェーザ
を、上側および下側フェーザ
および
の和によって得ることができる。同様に瞬時t2で、フェーザ
を、上側および下側フェーザ
および
の和によって得ることができる。フェーザ
および
は、等しいかあるいはほぼ等しい大きさを有することに留意されたい。同様に、フェーザ
および
は、ほぼ等しい大きさを有する。したがって、時変包絡線信号の実部フェーザを、いずれかの時刻に、少なくとも2つのほぼ一定の包絡線成分の和によって得ることができる。
フェーザ
および
の、
に対する位相シフト、ならびに、フェーザ
および
の、
に対する位相シフトはそれぞれ、フェーザ
および
の所望の大きさに従って設定される。ある場合には、上側および下側フェーザが等しい大きさを有するように選択されるとき、上側および下側フェーザは、そのフェーザに対して位相において対称的にシフトされる。これは図4の実施例において例示され、すべて等しい大きさを有する、
および
に対応する。第2の場合、上側および下側フェーザの位相シフトは、そのフェーザに対して位相においてほぼ対称的にシフトされる。本明細書の説明に基づいて、上側および下側フェーザの大きさおよび位相シフトの値は全く等しいものである必要はないことは、当業者には理解されよう。
一実施例として、さらに、図4に例示した場合では、図4の
および
として例示された相対位相シフトは、以下のように、正規化されたフェーザ
の大きさに関係することを検証することができる。
ただし、I1およびI2はそれぞれ、フェーザ
の正規化された大きさを表し、I1およびI2の領域は、方程式(2)および(3)が有効である領域に従って適切に制限される。方程式(2)および(3)は、相対位相シフトを正規化された大きさに関係付けるための1つの表現であることに留意されたい。また、方程式(2)および(3)の他の、解法、等価表現および/または簡約表現を採用してもよい。また、相対位相シフトを正規化された大きさに関係付けるルックアップテーブルを使用してもよい。
上述の概念を、図4に例示するように、信号r(t)の虚フェーザまたは直交成分部に同様に適用することができる。したがって、いずれかの時刻tで、信号r(t)の虚フェーザ部
を、ほぼ等しくかつ一定の大きさの上側および下側フェーザ成分
および
を加算することによって、得ることができる。この実施例では、
および
に対して、時間tでの
の大きさに従って設定された角度だけ、位相において対称的にシフトされる。
および
の、所望のフェーザ
に対する関係は、Q1およびQ2をそれぞれI1およびI2の代わりに用いることによって、方程式2および3に定義されたように関係付けられる。
上記の考察から、フェーザ表現では、可変の大きさおよび位相のいずれかのフェーザ
を、4つのほぼ一定の大きさのフェーザ成分の和によって構成することができるということになる。
ただし、IU、IL、QUおよびQLはそれぞれ、フェーザ
および
の大きさを表す。
対応して、時間領域では、時変複素包絡線正弦波信号r(t)=R(t)cos(ωt+Φ)は、以下のように、4つの定包絡線信号の和によって構成される。
ただし、
であり、
が正の実軸と同相であるか、180度異相であるかによって決まる。同様に、
が虚軸と同相であるか、180度異相であるかによって決まる。
は、実軸に対する
の位相シフトに対応する。同様に、
は、虚軸に対する
および
の位相シフトに対応する。
および
を、(2)および(3)で与えられた方程式を用いて計算することができる。
方程式(5)を、さらに以下のように簡約することができる。
ただし、
方程式(5)および(6)における時間領域表現は正弦波形の場合について提供されたが、等価表現を非正弦波形について、適切な基底関数を用いて展開することができることは、当業者には理解できよう。さらに、当業者には本明細書の教示に基づいて理解されるように、ほぼ一定の包絡線信号への上述の2次元分解を、適切に多次元分解に拡張することができる。
図5は、デカルト4分岐VPAの実施形態の一実施例のブロック図である。所望の電力レベルおよび周波数特性の出力信号r(t)578は、デカルト4分岐VPAの実施形態によるベースバンド同相および直交成分から生成される。
図5の実施例では、合成器510など、周波数発生器は、出力信号r(t)578と同じ周波数を有する基準信号A*cos(ωt)511を生成する。基準信号の選択が所望の出力信号に従って行われることは、当業者には理解できよう。例えば、所望の出力信号の所望の周波数が2.4GHzである場合、基準信号の周波数は2.4GHzに設定される。このように、本発明の実施形態は、周波数アップコンバージョンを達成する。
図5を参照すると、1つまたは複数の分相器が、信号521、531、541および551を基準信号511に基づいて生成するために使用される。図5の実施例では、これは、分相器512、514および516を使用して、0度位相シフトを分相器の各々で適用することによって行われる。しかし、基準信号511の信号521、531、541および551を生成するために、様々な技術を使用してもよいことは、当業者には理解されよう。例えば、1:4分相器を、単一のステップで、あるいは図5の実施例の実施形態において、4つのレプリカ521、531、541および551を生成するために使用してもよく、信号511を、信号521、531、541、551に直結することができる。実施形態に応じて、様々な位相シフトを適用して、所望の信号521、531、541および551の結果となるようにしてもよい。
なお、図5を参照すると、信号521、531、541および551がそれぞれ、対応するベクトル変調器520、530、540および550に、それぞれ提供される。ベクトル変調器520、530、540および550は、それらの適切な入力信号と共に、(6)で提供された方程式に従って、信号r(t)の4つの定包絡線成分を生成する。図5の実施例の実施形態では、ベクトル変調器520および530は、信号r(t)のIU(t)およびIL(t)成分をそれぞれ生成する。同様に、ベクトル変調器540および550は、信号r(t)のQU(t)およびQL(t)成分をそれぞれ生成する。
ベクトル変調器520、530、540および550の各々の実際の実装は、変わる場合がある。例えば、(6)における方程式に従って定包絡線成分を生成するために様々な技術が存在することは、当業者には理解されよう。
図5の実施例の実施形態では、ベクトル変調器520、530、540、550の各々は、信号522、531、541、551を位相整合するための入力分相器(input phase splitter)522、532、542、552を含む。したがって、入力分相器522、532、542、552は、同相および直交成分またはそれらの各入力信号を生成するために使用される。
各ベクトル変調器520、530、540、550では、同相および直交成分が振幅情報で乗算される。図5では、例えば、乗算器524は、信号521の直交成分をIU(t)の直交振幅情報IUYで乗算する。並行して、乗算器526は、同相レプリカ信号をIU(t)の同相振幅情報sgn(I)×IUXで乗算する。
IU(t)を生成するために、定包絡線成分信号525および527が、分相器528または代替加算技術を用いて加算される。結果として生じる信号529は、信号r(t)のIU(t)成分に対応する。
上述と類似の方法で、ベクトル変調器530、540および550は、信号r(t)のIL(t)、QU(t)およびQL(t)成分をそれぞれ生成する。IL(t)、QU(t)およびQL(t)は、図5の信号539、549および559にそれぞれ対応する。
さらに、上述のように、信号529、539、549および559は、ほぼ等しくかつ一定の大きさの包絡線を有することによって特性化される。したがって、信号529、539、549および559が対応する電力増幅器(PA)562、564、566および568に入力されるとき、対応する増幅された信号563、565、567および569は、ほぼ一定の包絡線信号である。
電力増幅器562、564、566および568は、信号529、539、549、559の各々をそれぞれ増幅する。一実施形態では、ほぼ等しい電力増幅が信号529、539、549および559の各々に適用される。一実施形態では、PA562、564、566および568の電力増幅レベルは、出力信号r(t)の所望の電力レベルに従って設定される。
なお、図5を参照すると、増幅された信号563および565が、加算器572を使用して加算されて、信号r(t)の同相成分
の増幅されたバージョン573が生成される。同様に、増幅された信号567および569が、加算器574を使用して加算されて、信号r(t)の直交成分
の増幅されたバージョン575が生成される。
信号573および575が、図5に示すように、加算器576を使用して加算され、結果として生じる信号は所望の出力信号r(t)に対応する。
図5の実施例では、加算器572、574および576は例示のためにのみ使用されていることに留意されたい。様々な技術を、増幅された信号563、565、567および569を加算するために使用してもよい。例えば、増幅された信号563、565、567および569をすべて1つのステップで加算して、信号578の結果としてもよい。実際には、本発明の様々なVPAの実施形態によれば、加算が増幅後に行われれば、十分である。本発明のあるVPAの実施形態は、以下でさらに説明するように、ワイヤを介した直結など、損失が最低限の加算技術を使用する。別法として、あるVPAの実施形態は、従来の電力結合技術を使用する。他の実施形態では、以下でさらに説明するように、電力増幅器562、564、566および568を、多入力1出力の電力増幅器として実装することができる。
デカルト4分岐VPAの実施形態の動作を、図6のプロセス流れ図を参照してこれからさらに説明するものとする。このプロセスは、所望の出力信号のベースバンド表現を受信することを含む、ステップ610で開始する。一実施形態では、これは、所望の出力信号の同相(I)および直交(Q)成分を受信することを含む。別の実施形態では、これは、所望の出力信号の大きさおよび位相を受信することを含む。デカルト4分岐VPAの実施形態の一実施形態では、IおよびQはベースバンド成分である。別の実施形態では、IおよびQはRF成分であり、ベースバンドへダウンコンバートされる。
ステップ620は、所望の出力信号の所望の出力信号周波数に従って設定されたクロック信号を受信することを含む。図5の実施例では、ステップ620は、基準信号511を受信することによって達成される。
ステップ630は、I成分を処理して、出力信号周波数を有する第1および第2の信号を生成することを含む。第1および第2の信号は、ほぼ一定かつ等しい大きさの包絡線、および、I成分に等しい和を有する。第1および第2の信号は、上述のIU(t)およびIL(t)定包絡線成分に対応する。図5の実施例では、ステップ630は、ベクトル変調器520および530によって、それらの適切な入力信号と共に、達成される。
ステップ640は、Q成分を処理して、出力信号周波数を有する第3および第4の信号を生成することを含む。第3および第4の信号は、ほぼ一定かつ等しい大きさの包絡線、および、Q成分に等しい和を有する。第3および第4の信号は、上述のQU(t)およびQL(t)定包絡線成分に対応する。図5の実施例では、ステップ630は、ベクトル変調器540および550によって、それらの適切な入力信号と共に、達成される。
ステップ650は、第1、第2、第3および第4の信号の各々を個別に増幅し、増幅された信号を加算して、所望の出力信号を生成することを含む。一実施形態では、第1、第2、第3および第4の信号の増幅はほぼ等しく、所望の出力信号の所望の電力レベルによるものである。図5の実施例では、ステップ650は、電力増幅器562、564、566および568が各信号529、539、549および559を増幅することによって、かつ、加算器572、574および576が、増幅された信号563、565、567および569を加算して、出力信号578を生成することによって達成される。
図7Aは、図6のプロセス流れ図600を実装するベクトル電力増幅器700の例示的実施形態を例示するブロック図である。図7Aの実施例では、任意選択のコンポーネントが破線で例示される。他の実施形態では、追加のコンポーネントが任意選択であってもよい。
ベクトル電力増幅器700は、同相(I)分岐703および直交(Q)分岐705を含む。IおよびQ分岐の各々はさらに、第1の分岐および第2の分岐を備える。
同相(I)情報信号702は、Iデータ伝達関数モジュール710によって受信される。一実施形態では、I情報信号702は、デジタルベースバンド信号を含む。一実施形態では、Iデータ伝達関数モジュール710は、I情報信号702をサンプルクロック706に従ってサンプルする。別の実施形態では、I情報信号702はアナログベースバンド信号を含み、これがIデータ伝達関数モジュール710に入力される前に、アナログ−デジタル変換器(ADC)(図7Aに図示せず)を使用してデジタルに変換される。別の実施形態では、I情報信号702は、Iデータ伝達関数モジュール710にアナログ形式で入力するアナログベースバンド信号を含み、Iデータ伝達関数モジュール710もまたアナログ回路を含む。別の実施形態では、I情報信号702は、上述の実施形態のいずれかを使用して、Iデータ伝達関数モジュール710に入力される前にベースバンドにダウンコンバートされる、RF信号を含む。
Iデータ伝達関数モジュール710は、I情報信号702を処理し、I情報信号702の少なくとも2つの定包絡線成分信号の同相および直交振幅情報を決定する。図5を参照して上述したように、同相および直交ベクトル変調器入力振幅情報は、sgn(I)×IUXおよびIUYにそれぞれ対応する。Iデータ伝達関数モジュール710の動作を、さらに以下でセクション3.4において説明する。
Iデータ伝達関数モジュール710は、ベクトル変調器760および762の同相および直交振幅成分を制御するために使用される、情報信号702および724を出力する。一実施形態では、信号722および724はデジタル信号である。したがって、信号722および724の各々は、対応するデジタル−アナログ変換器(DAC)730および732にそれぞれ供給される。DAC730および732の分解能およびサンプルレートが、出力信号782の所望のI成分を達成するために選択される。DAC730および732は、DACクロック信号723および725によってそれぞれ制御される。DACクロック信号723および725は、同じクロック信号から導出されてもよいし、独立であってもよい。
別の実施形態では、信号722および724はアナログ信号であり、DAC730および732は必要とされない。
図7Aの例示的実施形態では、DAC730および732は、デジタル情報信号722および724を対応するアナログ信号に変換し、これらのアナログ信号を任意選択の補間フィルタ731および733にそれぞれ入力する。アンチエイリアスフィルタとしての機能も果たす補間フィルタ731および733は、DAC出力を整形して、所望の出力波形を生成する。補間フィルタ731および733は、信号740および742をそれぞれ生成する。信号741は、信号740の逆を表す。信号740〜742は、ベクトル変調器760および762に入力される。
ベクトル変調器760および762は、信号740〜742を、適切に位相整合されたクロック信号で乗算して、I情報信号702の定包絡線成分を生成する。これらのクロック信号は、所望の出力信号周波数によるレートを有するチャネルクロック信号708から導出される。例えば、750および752など、複数の分相器、および、ベクトル変調器乗算器に関連付けられたフェーザを、適切に位相整合されたクロック信号を生成するために使用してもよい。
図7Aの実施形態では、例えば、ベクトル変調器760は、直交振幅情報信号740により、90度シフトされたチャネルクロック信号を変調する。並行して、ベクトル変調器760は、同相振幅情報信号742により、同相チャネルクロック信号を変調する。ベクトル変調器760は、2つの変調された信号を結合して、I情報信号702の第1の変調された定包絡線成分761を生成する。同様に、ベクトル変調器762は、I情報信号702の第2の変調された定包絡線成分763を、信号741および742を使用して生成する。信号761および763はそれぞれ、図5を参照して説明したIU(t)およびIL(t)定包絡線成分に対応する。
並行して、かつ類似の方法で、ベクトル電力増幅器700のQ分岐は、直交(Q)情報信号704の少なくとも2つの定包絡線成分信号を生成する。
図7Aの実施形態では、例えば、ベクトル変調器764は、Q情報信号704の第1の定包絡線成分765を、信号744および746を使用して生成する。同様に、ベクトル変調器766は、Q情報信号704の第2の定包絡線成分767を、信号745および746を使用して生成する。
図5に関して上述したように、成分信号761、763、765および767は、ほぼ等しくかつ一定の大きさの包絡線を有する。図7Aの例示的実施形態では、信号761、763、765および767は、対応する電力増幅器(PA)770、772、774および776にそれぞれ入力される。PA770、772、774および776を、線形または非線形電力増幅器にすることができる。一実施形態では、PA770、772、774および776はスイッチング電力増幅器を含む。
回路714および716(本明細書で、参照を容易にするため、限定ではなく「自己バイアス回路」と称する)、および、この実施形態では、PA770、772、774および776のバイアスを、IおよびQ情報信号702および704に従って制御する。図7Aの実施形態では、自己バイアス回路714および716は、バイアス信号715および717をそれぞれPA770、772およびPA774、776に提供する。自己バイアス回路714および716を、さらに以下でセクション3.5において説明する。PA770、772、774および776の実施形態もまた、以下でセクション3.5において論じる。
一実施形態では、PA770、772、774および776は、ほぼ等しい電力増幅をそれぞれのほぼ一定の包絡線信号761、763、765および767に適用する。他の実施形態では、PAドライバが追加で採用されて、追加の電力増幅が提供される。図7Aの実施形態では、PAドライバ794、795、796および797が、ベクトル電力増幅器700の各分岐において、各ベクトル変調器760、762、764、766と各PA770、772、774および776の間に、任意選択で追加される。
PA770、772、774および776の出力が共に結合されて、ベクトル電力増幅器700の出力信号782が生成される。一実施形態では、ワイヤを使用して、PA770、772、774および776の出力が共に直結される。このような直結は、PA770、772、774および776の出力の間に抵抗性、誘導性または容量性の最小の絶縁があるか、あるいはないことを意味する。すなわち、PA770、772、774および776の出力は、介在するコンポーネントなしに共に結合される。別法として、一実施形態では、PA770、772、774および776の出力は、低または最小インピーダンス接続の結果となるインダクタンスおよび/またはキャパシタンス、および/または、最小の絶縁および最小の電力損失の結果となる接続を通じて、間接的に共に結合される。別法として、PA770、772、774および776の出力は、ウィルキンソン、ハイブリッド、変圧器、または既知のアクティブ結合器など、周知の結合技術を使用して結合される。一実施形態では、PA770、772、774および776は、統合された増幅および電力結合を単一の動作において提供する。一実施形態では、本明細書に記載した電力増幅器および/またはドライバの1つまたは複数は、多入力1出力の電力増幅技術を使用して実装され、その実施例を図7Bおよび51A〜Hに図示する。
出力信号782は、IおよびQ情報信号702および704のIおよびQ特性を含む。さらに、出力信号782は、その成分と同じ周波数、および、よって所望のアップコンバートされた出力周波数のものである。ベクトル電力増幅器700の実施形態では、プルアップインピーダンス(pull−up impedance)780が、ベクトル増幅器700の出力と電源の間に結合される。本発明の電力増幅方法およびシステムによる出力ステージの実施形態を、さらに以下でセクション3.5において説明する。
ベクトル電力増幅器700の他の実施形態では、プロセス検出器が採用されて、増幅器の回路におけるいかなるプロセス変動もが補償される。図7Aの実施形態では、例えば、プロセス検出器791〜793が任意選択で追加されて、PAドライバ794〜797および分相器750における変動が監視される。さらなる実施形態では、周波数補償回路799を採用して、周波数変動を補償してもよい。
図7Bは、ベクトル電力増幅器700の別の例示的実施形態を例示するブロック図である。任意選択のコンポーネントが破線で例示されるが、他の実施形態は、より多くのあるいはより少ない任意選択のコンポーネントを有してもよい。
この実施形態は、図7Aの増幅器の多入力1出力(MISO)実装を例示する。図7Bの実施形態では、ベクトル変調器760、762、764および766から出力された、定包絡線信号761、763、765および767が、MISO PA784および786に入力される。MISO PA784および786は、2入力1出力の電力増幅器である。一実施形態では、MISO PA784および786は、図7Aの実施形態に示すような素子770、772、774、776、794〜797、またはその機能的均等物を含む。別の実施形態では、MISO PA784および786は、任意選択のプレドライバおよび任意選択のプロセス検出回路など、他の素子を含んでもよい。さらに、MISO PA784および786は、図7Bに示すような2入力PAであることに限定されない。他の実施形態では、以下で図51A〜Hを参照してさらに説明するように、PA784および786は、いかなる数の入力および出力を有することもできる。
図8Aは、図6に示したデカルト4分岐VPA方法によるベクトル電力増幅器の別の例示的実施形態800Aを例示するブロック図である。任意選択のコンポーネントが破線で例示されるが、他の実施形態は、より多くのあるいはより少ない任意選択のコンポーネントを有してもよい。
図8Aの実施形態では、十分な分解能およびサンプルレートのDAC830が、図7Aの実施形態のDAC730、732、734および736に取って代わる。DAC830のサンプルレートは、DACクロック信号826によって制御される。
DAC830は、同相および直交情報信号810および820を、Iデータ伝達関数モジュール710およびQデータ伝達関数モジュール712からそれぞれ上述のように受信する。一実施形態では、入力セレクタ822は、信号810および820がDAC830に入力される順序を選択する。
DAC830は、一度に単一のアナログ信号を出力してもよい。一実施形態では、図8Aに示すように、サンプルホールドアーキテクチャを使用して、増幅器の4つの分岐に対する適切な信号タイミングを保証してもよい。
DAC830は、アナログ信号832、834、836、838を、第1のセットのサンプルホールド回路842、844、846および848へ、順次出力する。一実施形態では、DAC830は、図7Aの実施形態のDAC730、732、734および736の動作をエミュレートするために、十分なレートでクロックされる。出力セレクタ824は、出力信号832、834、836および838のうち、どれが出力のために選択されるべきであるかを決定する。
DAC830のDACクロック信号826、出力セレクタ信号824、入力セレクタ822、および、サンプルホールドクロック840A〜Dおよび850は、独立にするか、あるいは伝達関数モジュール710および/または712に統合することができる、制御モジュールによって制御される。
一実施形態では、サンプルホールド回路(S/H)842、844、846および848は、クロック信号840A〜Dに従って、DAC830から、受信されたアナログ値をサンプルホールドする。サンプルホールド回路852、854、856および858は、サンプルホールド回路842、844、846および848からのアナログ値を、それぞれサンプルホールドする。同様に、サンプルホールド回路852、854、856および858は、受信されたアナログ値をホールドし、同時にこれらの値をベクトル変調器760、762、764および766へ、共通クロック信号850に従ってリリースする。別の実施形態では、サンプルホールド回路852、854、856および858は、これらの値を、同じくアンチエイリアスフィルタである任意選択の補間フィルタ731、733、735および737へリリースする。一実施形態では、共通クロック信号850は、S/H852、854、856および858の出力が時間的に整合されることを保証するために使用される。
ベクトル電力増幅器800Aの他の態様は、実質的には、ベクトル電力増幅器700に関して上述したものに対応する。
図8Bは、図6に示したデカルト4分岐VPA方法によるベクトル電力増幅器の別の例示的実施形態800Bを例示するブロック図である。任意選択のコンポーネントが破線で例示されるが、他の実施形態は、より多くのあるいはより少ない任意選択のコンポーネントを有してもよい。
実施形態800Bは、ベクトル電力増幅器の別の単一DAC実装を例示する。しかし、図8Aの実施形態とは対照的に、サンプルホールドアーキテクチャは単一のセットのサンプルホールド(S/H)回路を含む。図8Bに示すように、S/H842、844、846および848は、信号832、834、836および838として例示した、DAC830からのアナログ値を受信する。S/H回路842、844、846および848の各々は、図示のように異なるクロック840A〜Dに従って、その受信された値をリリースする。信号740、741、742、744、745および746を生成するために使用されるアナログサンプルの間の時間差を、伝達関数710および712において補償することができる。図8Bの実施形態によれば、図8Aの実施形態と比較してS/H回路の1レベルを除去し、それにより、増幅器のサイズおよび複雑性を低減することができる。
ベクトル電力増幅器800Bの他の態様は、実質的には、ベクトル電力増幅器700および800Aに関して上述したものに対応する。
図8Cは、ベクトル電力増幅器700の別の例示的実施形態800Cを例示するブロック図である。任意選択のコンポーネントが破線で例示されるが、他の実施形態は、より多くのあるいはより少ない任意選択のコンポーネントを有してもよい。図8Cの実施形態は、図8Aの増幅器の多入力1出力(MISO)実装を例示する。図8Cの実施形態では、ベクトル変調器760、762、764および766から出力された、定包絡線信号761、763、765および767が、MISO PA860および862に入力される。MISO PA860および862は、2入力1出力の電力増幅器である。一実施形態では、MISO PA860および862は、図7Aの実施形態に示すような素子770、772、774、776、794〜797、またはその機能的均等物を含む。別の実施形態では、MISO PA860および862は、任意選択のプレドライバおよび任意選択のプロセス検出回路など、他の素子を含んでもよい。別の実施形態では、MISO PA860および862は、図7Aの実施形態に図示されない、プレドライバなど、他の素子を含んでもよい。さらに、MISO PA860および862は、図8Cに示すような2入力PAであることに限定されない。他の実施形態では、以下で図51A〜Hを参照してさらに説明するように、PA860および862は、いかなる数の入力および出力を有することもできる。
ベクトル電力増幅器800Cの他の態様は、実質的には、ベクトル電力増幅器700および800Aに関して上述したものに対応する。
図8Dは、ベクトル電力増幅器700の別の例示的実施形態800Dを例示するブロック図である。任意選択のコンポーネントが破線で例示されるが、他の実施形態は、より多くのあるいはより少ない任意選択のコンポーネントを有してもよい。図8Dの実施形態は、図8Bの増幅器の多入力1出力(MISO)実装を例示する。図8Dの実施形態では、ベクトル変調器760、762、764および766から出力された、定包絡線信号761、763、765および767が、MISO PA870および872に入力される。MISO PA870および872は、2入力1出力の電力増幅器である。一実施形態では、MISO PA870および872は、図7Aの実施形態に示すような素子770、772、774、776、794〜797、またはその機能的均等物を含む。別の実施形態では、MISO PA870および872は、任意選択のプレドライバおよび任意選択のプロセス検出回路など、他の素子を含んでもよい。別の実施形態では、MISO PA870および872は、図7Aの実施形態に図示されない、プレドライバなど、他の素子を含んでもよい。さらに、MISO PA870および872は、図8Dに示すような2入力PAであることに限定されない。他の実施形態では、以下で図51A〜Hを参照してさらに説明するように、PA870および872は、いかなる数の入力および出力を有することもできる。
ベクトル電力増幅器800Dの他の態様は、実質的には、ベクトル電力増幅器700および800Bに関して上述したものに対応する。
3.2)デカルトポーラデカルトポーラ2分岐ベクトル電力増幅器
デカルトポーラデカルトポーラ(CPCP)2分岐VPAの実施形態をこれから説明するものとする(この実施形態の名称は、参照を容易にするために提供され、限定していない)。
デカルトポーラデカルトポーラ(CPCP)2分岐VPA方法によれば、時変複素包絡線信号は、2つのほぼ一定の包絡線成分信号に分解される。これらの成分信号は個別に増幅され、次いで加算されて、元の時変複素包絡線信号の増幅されたバージョンが構成される。加えて、時変複素包絡線信号の位相角が決定され、結果として生じる成分信号の加算が、適切な角度だけ位相シフトされる。
CPCP2分岐VPA方法の一実施形態では、時変複素包絡線信号の大きさおよび位相角が、信号の同相および直交成分から計算される。大きさ情報が与えられると、2つのほぼ一定の包絡線成分が、所望の時変包絡線信号の正規化されたバージョンから計算され、この正規化は、実装特有の位相および/または振幅の操作を含む。2つのほぼ一定の包絡線成分は次いで、所望の時変包絡線信号の位相シフトに関係する適切な角度だけ位相シフトされる。ほぼ一定の包絡線成分は次いで、個別にほぼ等しく増幅され、加算されて、元の所望の時変包絡線信号の増幅されたバージョンが生成される。
図9Aおよび9Bは、フェーザ信号表現を使用したCPCP2分岐VPAの実施形態を概念的に例示する。図9Aでは、フェーザ
は、時変複素包絡線入力信号r(t)を表す。いずれかの時刻に
は、信号r(t)の大きさおよび位相シフト角を反映する。図9Aに示す実施例では、
は、大きさRおよび位相シフト角θによって特性化される。上述のように、位相シフト角は基準信号に対して測定される。
図9Aを参照すると、
は、
および
によって生成された
の相対振幅成分を表す。
なお、図9Aを参照すると、いずれかの時刻に、
を、上側フェーザ
および下側フェーザ
の和によって得ることができることに留意されたい。さらに、
を、ほぼ一定の大きさを有するように維持することができる。フェーザ
は、したがって、2つのほぼ一定の包絡線信号を表す。r’(t)を、よって、いずれかの時刻に、フェーザ
に対応する2つのほぼ一定の包絡線信号の和によって得ることができる。
に対するフェーザ
および
の位相シフトは、
の所望の大きさRに従って設定される。最も簡単な場合、上側および下側フェーザ
および
が等しい大きさを有するように選択されるとき、上側および下側フェーザ
および
に対して、位相においてほぼ対称的にシフトされる。これは図9Aの実施例に例示される。それに限定されないが、「上側および下側」など、向きを指示あるいは示唆する用語および句は、参照を容易にするため、本明細書で使用され、機能的あるいは構造的に限定しないことに留意されたい。
図9Aに例示した場合では、
に対する
の位相シフトは、図9Aでは角度
として例示され、以下のように
の大きさに関係することを検証することができる。
ただし、Rは、フェーザ
の正規化された大きさを表す。
方程式(7)を、さらに以下に約分することができる。
ただし、Rは、フェーザ
の正規化された大きさを表す。
別法として、いかなるほぼ等価な数学的方程式、または、ルックアップテーブルなど、他のほぼ等価な数学的技術も使用することができる。
上記の考察から、フェーザ表現では、可変の大きさおよび位相のいかなるフェーザ
も、2つの一定の大きさのフェーザ成分の和によって構成することができるということになる。
対応して、時間領域では、時変包絡線正弦波信号r’(t)=R(t)×cos(ωt)は、以下のように、2つの定包絡線信号の和によって構成される。
ただし、Aは定数であり、
は方程式(7)に示す通りである。
図9Aから、さらに、方程式(9)を以下のように書き換えることができることを検証することができる。
r’(t)=U’(t)+L’(t)、
U’(t)=Ccos(ωt)+αsin(ωt)、 (10)
L’(t)=Ccos(ωt)−βsin(ωt)、
ただし、Cは、フェーザ
の実部成分を示し、
に等しい。Cは、
および
の共通成分であることに留意されたい。αおよびβは、フェーザ
および
の虚部成分をそれぞれ示す。
である。したがって、方程式(12)から、
である。当業者には本明細書の教示に基づいて理解されるように、量A、BおよびCの上記表現の他の等価および/または簡約表現もまた使用してもよく、これには、例えば、ルックアップテーブルが含まれる。
は、
に対してθ度だけシフトされることに留意されたい。したがって、方程式(8)を使用して、以下を推論することができる。
方程式(11)は、
の表現を、θ度だけシフトされた上記のフェーザ
を加算することによって、得ることができることを示唆する。さらに、
の増幅された出力バージョン
を、フェーザ
のθ度シフトされたバージョンの各々を別々にほぼ等しく増幅すること、および、それらを加算することによって、得ることができる。図9Bは、この概念を例示する。図9Bでは、フェーザ
は、フェーザ
の、θ度シフトされ、増幅されたバージョンを表す。
および
は一定の大きさのフェーザであるため、
および
もまた一定の大きさのフェーザであることに留意されたい。フェーザ
および
の和は、図9Bに示すように、フェーザ
となり、これは、入力信号
の電力増幅されたバージョンである。
等価的に、時間領域では、以下であることが分かる。
rout(t)=U(t)+L(t)、
U(t)=K[Ccos(ωt+θ)+αsin(ωt+θ)]、 (12)
L(t)=K[Ccos(ωt+θ)−βsin(ωt+θ)]。
ただし、rout(t)は、フェーザ
によって表現された時間領域信号に対応し、U(t)およびL(t)は、フェーザ
および
によって表現された時間領域信号に対応し、Kは電力増幅係数である。
方程式(9)および(10)における時間領域表現は正弦波形の場合について提供されたが、等価表現を非正弦波形について、適切な基底関数を用いて展開することができることは、当業者には理解されよう。
図10は、CPCP2分岐VPAの実施形態の例示的実施形態1000を概念的に例示するブロック図である。所望の電力レベルおよび周波数特性の出力信号r(t)は、CPCP2分岐VPAの実施形態によれば、同相および直交成分から生成される。
図10の実施例では、クロック信号1010は、出力信号r(t)を生成するための基準信号を表す。クロック信号1010は、所望の出力信号r(t)と同じ周波数のものである。
図10を参照すると、Iclk_phase信号1012およびQclk_phase信号1014は、Clk信号1010の同相および直交成分によって乗算され、ベースバンドIおよびQ信号から計算される、振幅アナログ値を表す。
なお、図10を参照すると、クロック信号1010はIclk_phase信号1012で乗算される。並行して、クロック信号1010の90度シフトされたバージョンは、Qclk_phase信号1014で乗算される。この2つの乗算された信号が結合されて、Rclk信号1016が生成される。Rclk信号1016は、クロック信号1010と同じ周波数のものである。さらに、Rclk信号1016は、Q(t)およびI(t)の比による位相シフト角によって特性化される。Rclk信号1016の大きさは、R2clk=I2clk_phase+Q2clk_phaseのようになる。したがって、Rclk信号1016は、所望の出力信号r(t)の位相特性を有するほぼ一定の包絡線信号を表す。
なお、図10を参照すると、Rclk信号1016は並行して、2つのベクトル変調器1060および1062に入力される。ベクトル変調器1060および1062は、(12)に記載したように、所望の出力信号のr(t)の、U(t)およびL(t)ほぼ一定の包絡線成分をそれぞれ生成する。ベクトル変調器1060では、共通信号1028で乗算された同相Rclk信号1020は、第1の信号1026で乗算されたRclk信号の90度シフトされたバージョン1018と結合される。並行して、ベクトル変調器1062では、共通信号1028で乗算された同相Rclk信号1022は、第2の信号1030で乗算されたRclk信号の90度シフトされたバージョン1024と結合される。共通信号1028、第1の信号1026および第2の信号1030は、方程式(12)に記載された実部C、ならびに虚部αおよびβにそれぞれ対応する。
各ベクトル変調器1060および1062の出力信号1040および1042は、入力信号r(t)のU(t)およびL(t)定包絡線成分にそれぞれ対応する。
上述のように、信号1040および1042は、ほぼ等しくかつ一定の大きさの包絡線を有することによって特性化される。したがって、信号1040および1042が対応する電力増幅器(PA)1044および1046に入力されるとき、対応する増幅された信号1048および1050は、ほぼ一定の包絡線信号である。
電力増幅器1044および1046は、ほぼ等しい電力増幅を信号1040および1042にそれぞれ適用する。一実施形態では、PA1044および1046の電力増幅レベルは、出力信号r(t)の所望の電力レベルに従って設定される。さらに、増幅された信号1048および1050は、互いに対して同相である。したがって、共に加算されるとき、図10に示すように、結果として生じる信号1052は、所望の出力信号r(t)に対応する。
図10Aは、CPCP2分岐VPAの実施形態の別の例示的実施形態1000Aである。実施形態1000Aは、図10の実施形態1000の多入力1出力(MISO)実装を表す。
実施形態1000Aでは、ベクトル変調器1060および1062から出力された、定包絡線信号1040および1042は、MISO PA1054に入力される。MISO PA1054は、2入力1出力の電力増幅器である。一実施形態では、MISO PA1054は、例えば、プレドライバ、ドライバ、電力増幅器およびプロセス検出器(図10Aに図示せず)など、様々な素子を含んでよい。さらに、MISO PA1054は、図10Aに示すように、2入力PAであることに限定されない。他の実施形態では、以下で図51A〜Hを参照してさらに説明するように、PA1054は、いかなる数の入力を有することもできる。
CPCP2分岐VPAの実施形態の動作を、図11のプロセス流れ図1100に示す。
このプロセスは、所望の出力信号のベースバンド表現を受信することを含む、ステップ1110で開始する。一実施形態では、これは、所望の出力信号の同相(I)および直交(Q)成分を受信することを含む。別の実施形態では、これは、所望の出力信号の大きさおよび位相を受信することを含む。
ステップ1120は、所望の出力信号の所望の出力信号周波数に従って設定されたクロック信号を受信することを含む。図10の実施例では、ステップ1120は、クロック信号1010を受信することによって達成される。
ステップ1130は、クロック信号を処理して、受信されたIおよびQ成分による位相シフト角を有する正規化されたクロック信号を生成することを含む。一実施形態では、正規化されたクロック信号は、IおよびQ成分の比による位相シフト角を有する定包絡線信号である。正規化されたクロックの位相シフト角は、元のクロック信号と相対的である。図10の実施例では、ステップ1130は、クロック信号1010の同相および直交成分をIclk_phase1012およびQclk_phase1014信号で乗算し、次いで、乗算された信号を加算して、Rclk信号1016を生成することによって達成される。
ステップ1140は、IおよびQ成分を処理して、第1および第2のほぼ一定の包絡線成分信号を生成するために必要とされる振幅情報を生成することを含む。
ステップ1150は、ステップ1140の振幅情報および正規化されたクロック信号Rclkを処理して、所望の出力信号の第1および第2の定包絡線成分を生成することを含む。一実施形態では、ステップ1150は、所望の出力信号の第1および第2の定包絡線成分を、正規化されたクロック信号の位相シフト角だけ位相シフトすることを含む。図10の実施例では、ステップ1150は、ベクトル変調器1060および1062がRclk信号1016を第1の信号1026、第2の信号1030および共通信号1028で変調して、信号1040および1042を生成することによって達成される。
ステップ1160は、第1および第2の定包絡線成分を個別に増幅し、増幅された信号を加算して、所望の出力信号を生成することを含む。一実施形態では、第1および第2の定包絡線成分の増幅はほぼ等しく、所望の出力信号の所望の電力レベルによるものである。図10の実施例では、ステップ1160は、PA1044および1046が信号1040および1042を増幅して、増幅された信号1048および1050を生成することによって達成される。
図12は、プロセス流れ図1100を実装するベクトル電力増幅器1200の例示的実施形態を例示するブロック図である。任意選択のコンポーネントが破線で例示されるが、他の実施形態では、より多くのあるいはより少ないコンポーネントが任意選択であってもよい。
図12を参照すると、同相(I)および直交(Q)情報信号1210は、IおよびQデータ伝達関数モジュール1216によって受信される。一実施形態では、IおよびQデータ伝達関数1216は、信号1210をサンプルクロック1212に従ってサンプルする。IおよびQ情報信号1210は、所望の出力信号r(t)のベースバンドIおよびQ情報を含む。
一実施形態では、IおよびQデータ伝達関数モジュール1216は、情報信号1210を処理して、情報信号1220、1222、1224および1226を生成する。IおよびQデータ伝達関数モジュール1216の動作を、さらに以下でセクション3.4において説明する。
図12を参照すると、情報信号1220は、所望の出力信号r(t)のベースバンドバージョンの第1および第2の定包絡線成分の直交振幅情報を含む。図9Aを参照すると、例えば、情報信号1220は、αおよびβ直交成分を含む。再度、図12を参照すると、情報信号1226は、信号r(t)のベースバンドバージョンの第1および第2の定包絡線成分の同相振幅情報を含む。図9Aを参照すると、例えば、情報信号1226は、共通C同相成分を含む。
なお、図12を参照すると、情報信号1222および1224は、正規化された同相Iclk_phaseおよび直交Qclk_phase信号をそれぞれ含む。Iclk_phaseおよびQclk_phaseは、信号1210に含まれたIおよびQ情報信号の正規化されたバージョンである。一実施形態では、Iclk_phaseおよびQclk_phaseは、(I2clk_phase+Q2clk_phase=定数)であるように正規化される。信号1250の位相は、所望の出力信号の位相に対応し、Iclk_phaseおよびQclk_phaseから作成されることに留意されたい。図9Bを参照すると、Iclk_phaseおよびQclk_phaseは、以下のようにIおよびQに関係する。
ただし、θは、所望の出力信号の位相を表し、図9Bにおいてbフェーザ
を表した。ベースバンドIおよびQ情報の符号情報は、4つの象限すべてについてのθを計算するために考慮されなければならない。
図12の例示的実施形態では、情報信号1220、1222、1224および1226はデジタル信号である。したがって、信号1220、1222、1224および1226の各々は、対応するデジタル−アナログ変換器(DAC)1230、1232、1234および1236に供給される。DAC1230、1232、1234および1236の分解能およびサンプルレートは、特定の信号方式に従って選択される。DAC1230、1232、1234および1236は、DACクロック信号1221、1223、1225および1227によって、それぞれ制御される。DACクロック信号1221、1223、1225および1227は、同じクロック信号から導出されてもよいし、独立であってもよい。
他の実施形態では、情報信号1220、1222、1224および1226はアナログ形式で生成され、DACは必要とされない。
図12を参照すると、DAC1230、1232、1234および1236は、デジタル情報信号1220、1222、1224および1226を対応するアナログ信号に変換し、これらのアナログ信号を任意選択の補間フィルタ1231、1233、1235および1237にそれぞれ入力する。アンチエイリアスフィルタとしての機能も果たす補間フィルタ1231、1233、1235および1237は、DAC出力信号を整形して、所望の出力波形を生成する。補間フィルタ1231、1233、1235および1237は、信号1240、1244、1246および1248をそれぞれ生成する。信号1242は、信号1240の逆を表す。
なお、図12を参照すると、Iclk_phaseおよびQclk_phase情報を含む、信号1244および1246は、ベクトル変調器1238に入力される。ベクトル変調器1238は、信号1244をチャネルクロック信号1214で乗算する。チャネルクロック信号1214は、所望の出力信号周波数に従って選択される。並行して、ベクトル変調器1238は、信号1246を、チャネルクロック信号1214の90度シフトされたバージョンで乗算する。すなわち、ベクトル変調器1238は、Iclk_phaseの振幅を有する同相成分、および、Qclk_phaseの振幅を有する直交成分を生成する。
ベクトル変調器1238は、2つの変調された信号を結合して、Rclk信号1250を生成する。Rclk信号1250は、所望の出力周波数、および、信号1210に含まれたIおよびQデータによる位相シフト角を有する、ほぼ一定の包絡線信号である。
なお、図12を参照すると、信号1240、1242および1248は、信号r(t)の複素包絡線のU、Lおよび共通C振幅成分をそれぞれ含む。信号1240、1242および1248は、Rclk信号1250と共に、ベクトル変調器1260および1262に入力される。
ベクトル変調器1260は、Rclk信号1250の90度シフトされたバージョンで乗算された信号1240、および、Rclk信号1250の0度シフトされたバージョンで乗算された信号1248を結合して、出力信号1264を生成する。並行して、ベクトル変調器1262は、Rclk信号1250の90度シフトされたバージョンで乗算された信号1242、および、Rclk信号1250の0度シフトされたバージョンで変調された信号1248を結合して、出力信号1266を生成する。
出力信号1264および1266は、ほぼ一定の包絡線信号を表す。さらに、Rclk信号1250に対する出力信号1264および1266の位相シフトは、α/Cおよびβ/Cの比にそれぞれ関連付けられた角度関係によって決定される。一実施形態では、α=−βであり、したがって、出力信号1264および1266は、Rclk信号1250に対して対称的に位相整合される。図9Bを参照すると、例えば、出力信号1264および1266は、一定の大きさのフェーザ
および
にそれぞれ対応する。
出力信号1264および1266の和は、ベースバンド信号r(t)のIおよびQ特性を有する、チャネルクロック変調された信号の結果となる。ベクトル電力増幅器1200の出力で所望の電力レベルを達成するために、しかし、信号1264および1266が増幅されて、増幅された出力信号が生成される。図12の実施形態では、信号1264および1266はそれぞれ電力増幅器(PA)1270および1272に入力され、増幅される。一実施形態では、PA1270および1272はスイッチング電力増幅器を含む。自己バイアス回路1218は、以下でセクション3.5.2においてさらに説明するように、PA1270および1272のバイアスを制御する。図12の実施形態では、例えば、自己バイアス回路1218は、バイアス電圧1228をPA1270および1272へ提供する。
一実施形態では、PA1270および1272は、ほぼ等しい電力増幅を各定包絡線信号1264〜1266に適用する。一実施形態では、この電力増幅は、所望の出力電力レベルに従って設定される。ベクトル電力増幅器1200の他の実施形態では、PAドライバおよび/またはプレドライバが追加で採用されて、追加の電力増幅能力が増幅器に提供される。図12の実施形態では、例えば、PAドライバ1284および1286がそれぞれ、ベクトル変調器1260および1262と後続のPA1270および1272の間に、任意選択で追加される。
PA1270および1272の各出力信号1274および1276は、ほぼ一定の包絡線信号である。さらに、出力信号1274および1276が加算されるとき、結果として生じる信号は最小の非線形歪みを有する。図12の実施形態では、出力信号1274および1276が共に結合されて、ベクトル電力増幅器1200の出力信号1280が生成される。一実施形態では、PA1270および1272の出力の結合において絶縁が使用されない。したがって、結合によって最小の電力損失を受ける。一実施形態では、ワイヤを使用して、PA1270および1272の出力が共に直結される。このような直結は、PA1270および1272の出力の間に抵抗性、誘導性または容量性の最小の絶縁があるか、あるいはないことを意味する。すなわち、PA1270および1272の出力は、介在するコンポーネントなしに共に結合される。別法として、一実施形態では、PA1270および1272の出力は、低または最小インピーダンス接続の結果となるインダクタンスおよび/またはキャパシタンス、および/または、最小の絶縁および最小の電力損失の結果となる接続を通じて、間接的に共に結合される。別法として、PA1270および1272の出力は、ウィルキンソン、ハイブリッド結合器、変圧器、または既知のアクティブ結合器など、周知の結合技術を使用して結合される。一実施形態では、PA1270および1272は、統合された増幅および電力結合を単一の動作において提供する。一実施形態では、本明細書に記載した電力増幅器および/またはドライバの1つまたは複数は、多入力1出力の電力増幅技術を使用して実装され、その実施例を図12A、12Bおよび51A〜Hに図示する。
出力信号1280は、ベースバンド信号r(t)のIおよびQ特性、ならびに、所望の出力電力レベルおよび周波数を有する信号を表す。ベクトル電力増幅器1200の実施形態では、プルアップインピーダンス1288が、ベクトル電力増幅器1200の出力と電源の間に結合される。他の実施形態では、インピーダンス整合ネットワーク1290が、ベクトル電力増幅器1200の出力で結合される。本発明の電力増幅方法およびシステムによる出力ステージの実施形態を、さらに以下でセクション3.5において説明する。
ベクトル電力増幅器1200の他の実施形態では、プロセス検出器が採用されて、増幅器の回路におけるいかなるプロセス変動もが補償される。図12の例示的実施形態では、例えば、プロセス検出器1282が任意選択で追加されて、PAドライバ1284および1286における変動が監視される。
図12Aは、プロセス流れ図1100を実装するベクトル電力増幅器1200Aの別の例示的実施形態を例示するブロック図である。任意選択のコンポーネントが破線で例示されるが、他の実施形態では、より多くのあるいはより少ないコンポーネントが任意選択であってもよい。
実施形態1200Aは、実施形態1200の多入力1出力(MISO)実装を例示する。実施形態1200Aでは、ベクトル変調器1260および1262から出力された、定包絡線信号1261および1263が、MISO PA1292に入力される。MISO PA1292は、2入力1出力の電力増幅器である。一実施形態では、MISO PA1292は、図12の実施形態に示すような素子1270、1272、1282、1284および1286を含む。別の実施形態では、MISO PA1292は、図12の実施形態に図示されない、プレドライバなど、他の素子を含んでもよい。さらに、MISO PA1292は、図12Aに示すような2入力PAであることに限定されない。他の実施形態では、以下で図51A〜Hを参照してさらに説明するように、PA1292は、いかなる数の入力および出力を有することもできる。
なお、図12Aを参照すると、実施形態1200Aは、自己バイアス信号をMISO PA1292へ送達するための一実装を例示する。図12Aの実施形態では、自己バイアス回路1218によって生成された自己バイアス信号1228は、MISO PA1292の異なるステージをバイアスするために、そこから送達された1つまたは複数の信号を有する。図12Aの実施例に示すように、3つのバイアス制御信号、バイアスA、バイアスBおよびバイアスCが自己バイアス信号1228から導出され、次いで、MISO PA1292の異なるステージに入力される。例えば、バイアスCは、MISO PA1292のプレドライバステージへのバイアス信号であってもよい。同様に、バイアスBおよびバイアスAは、MISO PA1292のドライバおよびPAステージへのバイアス信号であってもよい。
図12Bの実施形態1200Bに示す別の実装では、自己バイアス回路1218は、バイアスA、バイアスBおよびバイアスCにそれぞれ対応する、別々の自己バイアス信号1295、1296および1297を生成する。信号1295、1296および1297は、自己バイアス回路1218内で別々に生成されてもそうでなくてもよいが、図示のように別々に出力される。さらに、信号1295、1296および1297は、MISO PA1292の異なるステージのバイアシングによって決定されるように関係付けられてもそうでなくてもよい。
ベクトル電力増幅器1200Aおよび1200Bの他の態様は、実質的には、ベクトル電力増幅器1200に関して上述したものに対応する。
図13は、CPCP2分岐VPAの実施形態によるベクトル電力増幅器の別の例示的実施形態1300を例示するブロック図である。任意選択のコンポーネントが破線で例示されるが、他の実施形態では、より多くのあるいはより少ないコンポーネントが任意選択であってもよい。
図13の例示的実施形態では、十分な分解能およびサンプルレートのDAC1320が、図12の実施形態のDAC1230、1232、1234および1236に取って代わる。DAC1320は、DACクロック1324によって制御される。
DAC1320は、情報信号1310をIおよびQデータ伝達関数モジュール1216から受信する。情報信号1310は、図12の実施形態における信号1220、1222、1224および1226と等しい情報内容を含む。
DAC1320は、一度に単一のアナログ信号を出力してもよい。したがって、図13に示すように、サンプルホールドアーキテクチャを使用してもよい。
DAC1320は、アナログ信号1332、1334、1336、1338を、第1のセットのサンプルホールド回路1342、1344、1346および1348へ、順次出力する。一実施形態では、DAC1320は、図12の実施形態のDAC1230、1232、1234および1236に取って代わるために、十分なレートでクロックされる。出力セレクタ1322は、出力信号1332、1334、1336および1338のうち、どれが出力のために選択されるべきであるかを決定する。
DAC1320のDACクロック信号1324、出力セレクタ信号1322、およびサンプルホールドクロック1340A〜Dおよび1350は、独立にするか、あるいは伝達関数モジュール1216に統合することができる、制御モジュールによって制御される。
一実施形態では、サンプルホールド回路(S/H)1342、1344、1346および1348は、受信されたアナログ値をホールドし、クロック信号1340A〜Dに従って、これらの値を第2のセットのサンプルホールド回路1352、1354、1356および1358へリリースする。例えば、S/H1342はその値をS/H1352へ、受信されたクロック信号1340Aに従ってリリースする。同様に、サンプルホールド回路1352、1354、1356および1358は、受信されたアナログ値をホールドし、同時にこれらの値を補間フィルタ1231、1233、1235および1237へ、共通クロック信号1350に従ってリリースする。共通クロック信号1350は、S/H1352、1354、1356および1358の出力が時間的に整合されることを保証するために使用される。
別の実施形態では、S/H1342、1344、1346および1348を含む、単層のS/H回路を採用することができる。したがって、S/H回路1342、1344、1346および1348は、アナログ値をDAC1320から受信し、それぞれがその受信された値を、他のものから独立したクロックに従ってリリースする。例えば、S/H1342は、クロック1340Aによって制御され、クロック1340Aは、S/H1344を制御するクロック1340Bと同期化されていなくてもよい。S/H回路1342、1344、1346および1348の出力が時間的に整合されることを保証するために、クロック1340A〜Dの間の遅延が、増幅器の以前のステージにおいて事前補償される。例えば、クロック1340A〜Dの間の時間差を補償するために、DAC1320は、信号1332、1334、1336および1338を、適切に選択された遅延を有して、S/H回路1342、1344、1346および1348へ出力する。
ベクトル電力増幅器1300の他の態様は、実質的には、ベクトル電力増幅器1200に関して上述したものに相当する。
図13Aは、CPCP2分岐VPAの実施形態によるベクトル電力増幅器の別の例示的実施形態1300Aを例示するブロック図である。任意選択のコンポーネントが破線で例示されるが、他の実施形態では、より多くのあるいはより少ないコンポーネントが任意選択であってもよい。実施形態1300Aは、図13の実施形態1300のMISO実装である。
図13Aの実施形態では、ベクトル変調器1260および1262から出力された、定包絡線信号1261および1263が、MISO PA1360に入力される。MISO PA1360は、2入力1出力の電力増幅器である。一実施形態では、MISO PA1360は、図13の実施形態に示すような素子1270、1272、1282、1284および1286を含む。別の実施形態では、MISO PA1360は、図13の実施形態において図示されない、プレドライバなど、他の素子、またはその機能的均等物を含んでもよい。さらに、MISO PA1360は、図13Aに示すような2入力PAであることに限定されない。他の実施形態では、以下で図51A〜Hを参照してさらに説明するように、PA1360はいかなる数の入力を有することもできる。
図13Aの実施形態はさらに、図示のような単一または2つのレベルのS/H回路を有する、2つの異なるサンプルホールドアーキテクチャを例示する。この2つの実装は、図13に関して上述したものである。
実施形態1300Aはまた、任意選択のバイアス制御回路1218、および、関連付けられたバイアス制御信号1325、1326および1327をも例示する。信号1325、1326および1327を、ある実施形態においてMISO PA1360の異なるステージをバイアスするために使用してもよい。
ベクトル電力増幅器1300Aの他の態様は、ベクトル電力増幅器1200および1300に関して上述したものに相当する。
3.3)直接デカルト2分岐ベクトル電力増幅器
直接デカルト2分岐VPAの実施形態を、これから説明するものとする。この名称は参照のために本明細書で使用され、機能的あるいは構造的に限定しない。
直接デカルト2分岐VPAの実施形態によれば、時変包絡線信号は2つの定包絡線成分信号に分解される。これらの成分信号は、個別に等しくあるいはほぼ等しく増幅され、次いで加算されて、元の時変包絡線信号の増幅されたバージョンが構成される。
直接デカルト2分岐VPAの実施形態の一実施形態では、時変包絡線信号の大きさおよび位相角は、入力信号の同相および直交成分から計算される。大きさおよび位相情報を使用して、同相および直交振幅成分が、時変包絡線信号の2つの定包絡線成分について計算される。2つの定包絡線成分が次いで生成され、等しくあるいはほぼ等しく増幅され、加算されて、元の時変包絡線信号Rinの増幅されたバージョンが生成される。
直接デカルト2分岐VPAの概念を、これから図9Aおよび14を参照して説明する。
図9Aに関して上記で説明し、検証したように、フェーザ
を、
を生成するために適切に位相整合された上側フェーザ
および下側フェーザ
の和によって、得ることができる。
は、大きさRinに比例するように計算される。さらに、
および
を、ほぼ一定の大きさを有するように維持することができる。時間領域では、
および
は、2つのほぼ一定の包絡線信号を表す。
の時間領域等価物r’(t)を、よって、いずれかの時刻に、2つのほぼ一定の包絡線信号の和によって得ることができる。
図9Aに例示した場合では、
および
の位相シフトは、図9Aにおいて角度
として例示され、以下のように
の大きさに関係する。
ただし、Rは、フェーザ
の正規化された大きさを表す。
時間領域では、時変包絡線信号、例えば、r’(t)=R(t)cos(ωt)を、2つの定包絡線信号の和によって、以下のように構成することができることが分かる。
r’(t)=U’(t)+L’(t)、
U’(t)=C×cos(ωt)+α×sin(ωt)、 (14)
L’(t)=C×cos(ωt)−β×sin(ωt)。
ただし、Cは、フェーザ
および
の同相振幅成分を示し、
に等しいかあるいはほぼ等しい(Aは定数である)。αおよびβは、フェーザ
および
の直交振幅成分をそれぞれ示す。
である。基底関数を正弦から所望の関数に変更することによって、方程式(14)を非正弦波信号について修正することができることに留意されたい。
図14は、フェーザ
、ならびに、その2つの一定の大きさの成分フェーザ
および
を例示する。
は、図9Aにおける
に対してθ度だけシフトされる。したがって、以下であることを検証することができる。
方程式(15)から、さらに以下であることが分かる。
同様に、以下であることが分かる。
方程式(16)および(17)を、以下のように書き換えることができる。
等価的に、時間領域では、以下の通りである。
U(t)=Uxφ1(t)+Uyφ2(t)、
L(t)=Lxφ1(t)+Lyφ2(t)、 (19)
ただし、φ1(t)およびφ2(t)は、適切に選択された直交基底関数を表す。
方程式(18)および(19)から、時変包絡線信号r(t)の2つの定包絡線成分を決定するために、α、β、C、ならびにsin(Θ)およびcos(Θ)の値を計算することは十分であることに留意されたい。さらに、α、βおよびCを、信号r(t)の大きさおよび位相情報、等価的にはIおよびQ成分から、完全に決定することができる。
図15は、直接デカルト2分岐VPAの実施形態の例示的実施形態1500を概念的に例示するブロック図である。所望の電力レベルおよび周波数特性の出力信号r(t)は、直接デカルト2分岐VPAの実施形態によれば、同相および直交成分から生成される。
図15の実施例では、クロック信号1510は、出力信号r(t)を生成するための基準信号を表す。クロック信号1510は、所望の出力信号r(t)と同じ周波数のものである。
図15を参照すると、例示的実施形態1500は、第1の分岐1572および第2の分岐1574を含む。第1の分岐1572は、ベクトル変調器1520および電力増幅器(PA)1550を含む。同様に、第2の分岐1574は、ベクトル変調器1530および電力増幅器(PA)1560を含む。
なお、図15を参照すると、クロック信号1510は、並行して、ベクトル変調器1520および1530に入力される。ベクトル変調器1520では、Ux信号1526で乗算されたクロック信号1510の同相バージョン1522が、Uy信号1528で乗算されたクロック信号1510の90度シフトされたバージョン1524と加算される。並行して、ベクトル変調器1530では、Lx信号1536で乗算されたクロック信号1510の同相バージョン1532が、Ly信号1538で乗算されたクロック信号1510の90度シフトされたバージョン1534と加算される。Ux信号1526およびUy信号1528はそれぞれ、方程式(19)で提供された信号r(t)のU(t)定包絡線成分の同相および直交振幅成分に対応する。同様に、Lx信号1536およびLy信号1538はそれぞれ、方程式(19)で提供された信号r(t)のL(t)定包絡線成分の同相および直交振幅成分に対応する。
したがって、ベクトル変調器1520および1530の各出力信号1540および1542はそれぞれ、方程式(19)で上述したように、信号r(t)のU(t)およびL(t)定包絡線成分に対応する。上述のように、信号1540および1542は、等しくかつ一定の、あるいは、ほぼ等しくかつ一定の、大きさの包絡線を有することによって、特性化される。
図15を参照すると、出力信号r(t)の所望の電力レベルを生成するため、信号1540および1542が対応する電力増幅器1550および1560に入力される。
一実施形態では、電力増幅器1550および1560は、等しいかあるいはほぼ等しい電力増幅を、信号1540および1542にそれぞれ適用する。一実施形態では、PA1550および1560の電力増幅レベルは、出力信号r(t)の所望の電力レベルに従って設定される。
増幅された出力信号1562および1564は、ほぼ一定の包絡線信号である。したがって、共に加算されるとき、図15に示すように、結果として生じる信号1070は、所望の出力信号r(t)に対応する。
図15Aは、直接デカルト2分岐VPAの実施形態の別の例示的実施形態1500Aである。実施形態1500Aは、図15の実施形態1500の多入力単一出力(MISO)実装を表す。
実施形態1500Aでは、ベクトル変調器1520および1530から出力された、定包絡線信号1540および1542は、MISO PA1580に入力される。MISO PA1580は、2入力1出力の電力増幅器である。一実施形態では、MISO PA1580は、例えば、プレドライバ、ドライバ、電力増幅器およびプロセス検出器(図15Aに図示せず)など、様々な素子を含んでよい。さらに、MISO PA1580は、図15Aに示すように、2入力PAであることに限定されない。他の実施形態では、以下で図51A〜Hを参照してさらに説明するように、PA1580はいかなる数の入力を有することもできる。
直接デカルト2分岐VPAの実施形態の動作を、図16のプロセス流れ図1600に示す。このプロセスは、所望の出力信号のベースバンド表現を受信することを含む、ステップ1610で開始する。一実施形態では、このベースバンド表現はIおよびQ成分を含む。別の実施形態では、IおよびQ成分は、ベースバンドにダウンコンバートされるRF成分である。
ステップ1620は、所望の出力信号の所望の出力信号周波数に従って設定されたクロック信号を受信することを含む。図15の実施例では、ステップ1620は、クロック信号1510を受信することによって達成される。
ステップ1630は、IおよびQ成分を処理して、所望の出力信号の第1および第2の定包絡線成分信号の同相および直交振幅情報を生成することを含む。図15の実施例では、同相および直交振幅情報は、Ux、Uy、LxおよびLyによって例示される。
ステップ1640は、振幅情報およびクロック信号を処理して、所望の出力信号の第1および第2の定包絡線成分信号を生成することを含む。一実施形態では、第1および第2の定包絡線成分信号は、所望の出力信号周波数によって変調される。図15の実施例では、ステップ1640は、ベクトル変調器1520および1530、クロック信号1510、および、振幅情報信号1526、1528、1536および1538によって、信号1540および1542を生成するために達成される。
ステップ1650は、第1および第2の定包絡線成分を増幅し、増幅された信号を加算して、所望の出力信号を生成することを含む。一実施形態では、第1および第2の定包絡線成分の増幅は、所望の出力信号の所望の電力レベルによるものである。図15の実施例では、ステップ1650は、PA1550および1560が各信号1540および1542を増幅することによって、続いて、増幅された信号1562および1564を加算して、出力信号1070を生成することによって達成される。
図17は、プロセス流れ図1600を実装するベクトル電力増幅器1700の例示的実施形態を例示するブロック図である。任意選択のコンポーネントが破線で例示されるが、他の実施形態は、より多くのあるいはより少ない任意選択のコンポーネントを有してもよい。
図17を参照すると、同相(I)および直交(Q)情報信号1710は、IおよびQデータ伝達関数モジュール1716によって受信される。一実施形態では、IおよびQデータ伝達関数モジュール1716は、信号1710をサンプルクロック1712に従ってサンプルする。IおよびQ情報信号1710は、ベースバンドIおよびQ情報を含む。
一実施形態では、IおよびQデータ伝達関数モジュール1716は、情報信号1710を処理して、情報信号1720、1722、1724および1726を生成する。IおよびQデータ伝達関数モジュール1716の動作を、さらに以下でセクション3.4において説明する。
図17を参照すると、情報信号1720は、信号1740を生成するために、DAC1730を通じて処理される、ベクトル変調器1750直交振幅情報を含む。情報信号1722は、信号1742を生成するために、DAC1732を通じて処理される、ベクトル変調器1750同相振幅情報を含む。信号1740および1742が計算されて、ほぼ一定の包絡線信号1754が生成される。図17を参照すると、例えば、情報信号1720および1722はそれぞれ、上側直交および同相成分UyおよびUxを含む。
なお、図17を参照すると、情報信号1726は、信号1746を生成するために、DAC1736を通じて処理される、ベクトル変調器1752直交振幅情報を含む。情報信号1724は、信号1744を生成するために、DAC1734を通じて処理される、ベクトル変調器1752同相振幅情報を含む。信号1744および1746が計算されて、ほぼ一定の包絡線信号1756が生成される。図17を参照すると、例えば、情報信号1724および1726はそれぞれ、下側同相および直交成分LxおよびLyを含む。
図17の例示的実施形態では、情報信号1720、1722、1724および1726はデジタル信号である。したがって、信号1720、1722、1724および1726の各々は、対応するデジタル−アナログ変換器(DAC)1730、1732、1734および1736に供給される。DAC1730、1732、1734および1736の分解能およびサンプルレートは、特定の所望の信号方式に従って選択される。DAC1730、1732、1734および1736は、DACクロック信号1721、1723、1725および1727によって、それぞれ制御される。DACクロック信号1721、1723、1725および1727は、同じクロックから導出されてもよいし、互いから独立していてもよい。
他の実施形態では、情報信号1720、1722、1724および1726はアナログ形式で生成され、DACは必要とされない。
図17を参照すると、DAC1730、1732、1734および1736は、デジタル情報信号1720、1722、1724および1726を対応するアナログ信号に変換し、これらのアナログ信号を任意選択の補間フィルタ1731、1733、1735および1737にそれぞれ入力する。アンチエイリアスフィルタとしての機能も果たす補間フィルタ1731、1733、1735および1737は、DAC出力信号を整形して、所望の出力波形を生成する。補間フィルタ1731、1733、1735および1737は、信号1740、1742、1744および1746をそれぞれ生成する。
なお、図17を参照すると、信号1740、1742、1744および1746は、ベクトル変調器1750および1752に入力される。ベクトル変調器1750および1752は、第1および第2の定包絡線成分を生成する。図17の実施形態では、チャネルクロック1714が所望の出力信号周波数に従って設定され、それにより出力信号1770の周波数が確立される。
図17を参照すると、ベクトル変調器1750は、チャネルクロック信号1714の90度シフトされたバージョンで乗算された信号1740、および、チャネルクロック信号1714の0度シフトされたバージョンで乗算された信号1742を結合して、出力信号1754を生成する。並行して、ベクトル変調器1752は、チャネルクロック信号1714の90度シフトされたバージョンで乗算された信号1746、および、チャネルクロック信号1714の0度シフトされたバージョンで乗算された信号1744を結合して、出力信号1756を生成する。
出力信号1754および1756は、定包絡線信号を表す。出力信号1754および1756の和は、元のベースバンド信号のIおよびQ特性を有するキャリア信号の結果となる。実施形態では、ベクトル電力増幅器1700の出力で所望の電力レベルを生成するために、信号1754および1756が増幅され、次いで加算される。図17の実施形態では、例えば、信号1754および1756は、それぞれ対応する電力増幅器(PA)1760および1762に入力される。一実施形態では、PA1760および1762はスイッチング電力増幅器を含む。自己バイアス回路1718は、PA1760および1762のバイアスを制御する。図17の実施形態では、例えば、自己バイアス回路1718は、バイアス電圧1728をPA1760および1762へ提供する。
一実施形態では、PA1760および1762は、等しいかあるいはほぼ等しい電力増幅を各定包絡線信号1754および1756に適用する。一実施形態では、この電力増幅は、所望の出力電力レベルに従って設定される。ベクトル電力増幅器1700の他の実施形態では、PAドライバが追加で採用されて、追加の電力増幅能力が増幅器に提供される。図17の実施形態では、例えば、PAドライバ1774および1776がそれぞれ、ベクトル変調器1750および1752と後続のPA1760および1762の間に、任意選択で追加される。
PA1760および1762の各出力信号1764および1766は、ほぼ一定の包絡線信号である。図17の実施形態では、出力信号1764および1766が共に結合されて、ベクトル電力増幅器1700の出力信号1770が生成される。実施形態では、PA1760および1762の出力が直結されることに留意されたい。このような直結は、PA1760および1762の出力の間に抵抗性、誘導性または容量性の最小の絶縁があるか、あるいはないことを意味する。すなわち、PA1760および1762の出力は、介在するコンポーネントなしに共に結合される。別法として、一実施形態では、PA1760および1762の出力は、低または最小インピーダンス接続の結果となるインダクタンスおよび/またはキャパシタンス、および/または、最小の絶縁および最小の電力損失の結果となる接続を通じて、間接的に共に結合される。別法として、PA1760および1762の出力は、ウィルキンソン、ハイブリッド結合器、変圧器、または既知のアクティブ結合器など、周知の結合技術を使用して結合される。一実施形態では、PA1760および1762は、統合された増幅および電力結合を単一の動作において提供する。一実施形態では、本明細書に記載した電力増幅器および/またはドライバの1つまたは複数は、多入力1出力(MISO)電力増幅技術を使用して実装され、その実施例を図17A、17Bおよび51A〜Hに図示する。
出力信号1770は、ベースバンド信号の所望のIおよびQ特性、ならびに、所望の出力電力レベルおよび周波数を有する信号を表す。ベクトル電力増幅器1700の実施形態では、プルアップインピーダンス1778が、ベクトル電力増幅器1700の出力と電源の間に結合される。他の実施形態では、インピーダンス整合ネットワーク1780が、ベクトル電力増幅器1700の出力で結合される。本発明の電力増幅方法およびシステムによる出力ステージの実施形態を、さらに以下でセクション3.5において説明する。
ベクトル電力増幅器1700の他の実施形態では、プロセス検出器が採用されて、増幅器の回路におけるいかなるプロセスおよび/または温度変動もが補償される。図17の例示的実施形態では、例えば、プロセス検出器1772が任意選択により追加されて、PAドライバ1774および1776における変動が監視される。
図17Aは、プロセス流れ図1600を実装するベクトル電力増幅器の別の例示的実施形態1700Aを例示するブロック図である。任意選択のコンポーネントが破線で例示されるが、他の実施形態は、より多くのあるいはより少ない任意選択のコンポーネントを有してもよい。実施形態1700Aは、図17の増幅器の多入力1出力(MISO)実装を例示する。図17Aの実施形態では、ベクトル変調器1750および1752から出力された、定包絡線信号1754および1756が、MISO PA1790に入力される。MISO PA1790は、2入力1出力の電力増幅器である。一実施形態では、MISO PA1790は、図17の実施形態に示すような素子1760、1762、1772、1774および1776、またはその機能的均等物を含む。別の実施形態では、MISO PA1790は、図17の実施形態に図示されない、プレドライバなど、他の素子を含んでもよい。さらに、MISO PA1790は、図17Aに示すような2入力PAであることに限定されない。他の実施形態では、以下で図51A〜Hを参照してさらに説明するように、PA1790はいかなる数の入力を有することもできる。
図17Bの実施形態1700Bとして示す、実施形態1700の別の実施形態では、任意選択の自己バイアス回路1718は、バイアスA、バイアスBおよびバイアスCにそれぞれ対応する、別々のバイアス制御信号1715、1717および1719を生成する。信号1715、1717および1719は、自己バイアス回路1718内で別々に生成されてもそうでなくてもよいが、図示のように別々に出力される。さらに、信号1715、1717および1719は、MISO PA1790の異なるステージのために必要とされたバイアシングによって決定されるように関係付けられてもそうでなくてもよい。
図18は、図17の直接デカルト2分岐VPAの実施形態によるベクトル電力増幅器の別の例示的実施形態1800を例示するブロック図である。任意選択のコンポーネントが破線で例示されるが、他の実施形態は、より多くのあるいはより少ない任意選択のコンポーネントを有してもよい。
図18の例示的実施形態では、十分な分解能およびサンプルレートのDAC1820が、図17の実施形態のDAC1730、1732、1734および1736に取って代わる。DAC1820は、DACクロック1814によって制御される。
DAC1820は、情報信号1810をIおよびQデータ伝達関数モジュール1716から受信する。情報信号1810は、図17の実施形態における信号1720、1722、1724および1726と等しい情報内容を含む。
DAC1820は、一度に単一のアナログ信号を出力してもよい。したがって、図18に示すように、サンプルホールドアーキテクチャを使用してもよい。
図18の実施形態では、DAC1820は、アナログ信号1822、1824、1826および1828を、それぞれサンプルホールド回路1832、1834、1836および1838へ順次出力する。一実施形態では、DAC1820は、図17の実施形態のDAC1730、1732、1734および1736に取って代わるために、十分な分解能およびサンプルレートのものである。出力セレクタ1812は、出力信号1822、1824、1826および1828のうち、どれが出力のために選択されるかを決定する。
DAC1820のDACクロック信号1814、出力セレクタ信号1812、およびサンプルホールドクロック1830A〜Dおよび1840は、独立にするか、あるいは伝達関数モジュール1716に統合することができる、制御モジュールによって制御される。
一実施形態では、サンプルホールド回路1832、1834、1836および1838は、それらの各値をサンプルホールドし、クロック信号1830A〜Dに従って、これらの値を第2のセットのサンプルホールド回路1842、1844、1846および1848へリリースする。例えば、S/H1832はその値をS/H1842へ、受信されたクロック信号1830Aに従ってリリースする。同様に、サンプルホールド回路1842、1844、1846および1848は、受信されたアナログ値をホールドし、同時にこれらの値を補間フィルタ1852、1854、1856および1858へ、共通クロック信号1840に従ってリリースする。
別の実施形態では、S/H1832、1834、1836および1838を含む、単一のセットのS/H回路を採用することができる。したがって、S/H回路1832、1834、1836および1838は、アナログ値をDAC1820から受信し、それぞれがその受信された値を、独立したクロック1830A〜Dに従ってサンプルホールドする。例えば、S/H1832は、クロック1830Aによって制御され、クロック1830Aは、S/H1834を制御するクロック1830Bと同期化されていなくてもよい。例えば、クロック1830A〜Dの間の時間差を補償するために、DAC1820は、信号1822、1824、1826および1828を、伝達関数モジュール1716によって計算された、適切に選択されたアナログ値と共に、S/H回路1832、1834、1836および1838へ出力する。
ベクトル電力増幅器1800の他の態様は、実質的には、ベクトル電力増幅器1700に関して上述したものに対応する。
図18Aは、直接デカルト2分岐VPAの実施形態によるベクトル電力増幅器の別の例示的実施形態1800Aを例示するブロック図である。任意選択のコンポーネントが破線で例示されるが、他の実施形態では、より多くのあるいはより少ないコンポーネントが任意選択であってもよい。実施形態1800Aは、図18の実施形態1800の多入力1出力(MISO)実装である。
図18Aの実施形態では、ベクトル変調器1750および1752から出力された、定包絡線信号1754および1756が、MISO PA1860に入力される。MISO PA1860は、2入力1出力の電力増幅器である。一実施形態では、MISO PA1860は、図18の実施形態に示すような素子1744、1746、1760、1762および1772、またはその機能的均等物を含む。別の実施形態では、MISO PA1860は、図18の実施形態において図示されない、プレドライバなど、他の素子を含んでもよい。さらに、MISO PA1860は、図18Aに示すような2入力PAであることに限定されない。他の実施形態では、以下で図51A〜Hを参照してさらに説明するように、PA1860はいかなる数の入力を有することもできる。
図18Aの実施形態はさらに、図示のような単一または2つのレベルのS/H回路を有する、2つの異なるサンプルホールドアーキテクチャを例示する。この2つの実装は、図18に関して上述したものである。
ベクトル電力増幅器1800Aの他の態様は、実質的には、ベクトル電力増幅器1700および1800に関して上述したものに相当する。
3.4)IおよびQデータ−ベクトル変調器伝達関数
上述の実施形態のいくつかでは、IおよびQデータ伝達関数が提供されて、受信されたIおよびQデータが、ベクトル変調および増幅の後続のステージのための振幅情報入力に変換される。例えば、図17の実施形態では、IおよびQデータ伝達関数モジュール1716は、IおよびQ情報信号1710を処理して、信号r(t)の第1および第2の定包絡線成分1754および1756の同相および直交振幅情報信号1720、1722、1724および1726を生成する。続いて、ベクトル変調器1750および1752は、生成された振幅情報信号1720、1722、1724および1726を利用して、第1および第2の定包絡線成分信号1754および1756を作成する。他の実施例は、図7、8、12および13におけるモジュール710、712および1216を含む。これらのモジュールは、Iおよび/またはQデータを、ベクトル変調および増幅の後続のステージのための振幅情報入力に変換するために、伝達関数を実装する。
本発明によれば、IおよびQデータ伝達関数モジュールを、デジタル回路、アナログ回路、ソフトウェア、ファームウェア、またはそれらのいかなる組み合わせを使用して実装してもよい。
いくつかの要因は、本発明による伝達関数の実際の実装に影響を及ぼし、実施形態によって異なる。一態様では、選択されたVPAの実施形態は、伝達関数および関連モジュールの振幅情報出力を左右する。例えば、CPCP2分岐VPAの実施形態1200のIおよびQデータ伝達関数モジュール1216は、直接デカルト2分岐VPAの実施形態1700のIおよびQデータ伝達関数モジュール1716とは、出力が異なることは明らかである。
別の態様では、伝達関数の複雑性は、VPA実装によってサポートされる必要のある所望の変調方式によって異なる。例えば、サンプルクロック、DACサンプルレートおよびDAC分解能は、所望の出力波形を構成するために、適切な伝達関数に従って選択される。
本発明によれば、伝達関数の実施形態を、サポートされた実施形態の間で望むようにスイッチする能力により、1つまたは複数のVPAの実施形態をサポートするように設計してもよい。さらに、伝達関数の実施形態および関連モジュールを、複数の変調方式に対応するように設計することができる。例えば、本発明の実施形態を、複数の変調方式を(個別に、あるいは組み合わせて)サポートするように設計してもよく、これには、それに限定されないが、BPSK、QPSK、OQPSK、DPSK、CDMA、WCDMA、W−CDMA、GSM、EDGE、MPSK、MQAM、MSK、CPSK、PM、FM、OFDMおよびマルチトーン信号が含まれることは、当業者には理解されよう。一実施形態では、変調方式は、伝達関数モジュールを介して構成可能および/またはプログラマブルであってもよい。
3.4.1)デカルト4分岐VPA伝達関数
図19は、デカルト4分岐VPAの実施形態による一実施例のIおよびQ伝達関数の実施形態を例示するプロセス流れ図1900である。このプロセスは、同相データ成分および直交データ成分を受信することを含む、ステップ1910で開始する。図7Aのデカルト4分岐VPAの実施形態では、例えば、これは、Iデータ伝達関数モジュール710がI情報信号702を受信すること、および、Qデータ伝達関数モジュール712がQ情報信号704を受信することによって例示される。図7Aの実施形態では、IおよびQデータ伝達関数モジュール710および712は別々のコンポーネントとして例示されることに留意されたい。実装では、しかし、IおよびQデータ伝達関数モジュール710および712は、別々であっても、単一のモジュールに結合されてもよい。
ステップ1920は、I成分の第1および第2のほぼ等しくかつ一定の包絡線成分の間の位相シフト角を計算することを含む。並行して、ステップ1920はまた、Q成分の第1および第2のほぼ等しくかつ一定の包絡線成分の間の位相シフト角を計算することをも含む。上述のように、I成分の第1および第2の定包絡線成分は、I成分に対して適切に位相整合される。同様に、Q成分の第1および第2の定包絡線成分は、Q成分に対して適切に位相整合される。図7Aの実施形態では、例えば、ステップ1920は、IおよびQデータ伝達関数モジュール710および712によって行われる。
ステップ1930は、I成分の第1および第2の定包絡線成分に関連付けられた同相および直交振幅情報を計算することを含む。並行して、ステップ1930は、Q成分の第1および第2の定包絡線成分に関連付けられた同相および直交振幅情報を計算することを含む。図7Aの実施形態では、例えば、ステップ1930は、IおよびQデータ伝達関数モジュール710および712によって行われる。
ステップ1940は、計算された振幅情報を後続のベクトル変調ステージへ出力することを含む。図7Aの実施形態では、例えば、IおよびQ伝達関数モジュール710および712は、振幅情報信号722、724、726および728を、ベクトル変調器760、762、764および766へ、DAC730、732、734および736を通じて出力する。
図20は、プロセス流れ図1900を実装する、図7Aの伝達関数モジュール710および712など、伝達関数モジュールの例示的実施形態2000を例示するブロック図である。図20の実施例では、伝達関数モジュール2000は、IおよびQデータ信号2010および2012を受信する。一実施形態では、IおよびQデータ信号2010および2012は、図7Aにおける信号702および704など、ベースバンド信号のIおよびQデータ成分を表す。
図20を参照すると、一実施形態では、伝達関数モジュール2000は、サンプリングクロック2014に従って、IおよびQデータ信号2010および2012をサンプルする。サンプルされたIおよびQデータ信号は、伝達関数モジュール2000のコンポーネント2020および2022によって、それぞれ受信される。コンポーネント2020および2022は、サンプルされたIおよびQデータ信号の大きさをそれぞれ測定する。一実施形態では、コンポーネント2020および2022は大きさ検出器である。
コンポーネント2020および2022は、測定されたIおよびQ大きさ情報を、伝達関数モジュール2000のコンポーネント2030および2032へ、それぞれ出力する。一実施形態では、測定されたIおよびQ大きさ情報は、デジタル信号の形式である。I大きさ情報に基づいて、コンポーネント2030は、サンプルされたI信号の第1および第2の等しくかつ一定、あるいは、ほぼ等しくかつ一定の包絡線成分の間の位相シフト角φIを計算する。同様に、Q大きさ情報に基づいて、コンポーネント2032は、サンプルされたQ信号の第1および第2の等しくかつ一定、あるいは、ほぼ等しくかつ一定の包絡線成分の間の位相シフト角φQを計算する。この動作を、これからさらに説明するものとする。
図20の実施形態では、φIおよびφQは、IおよびQ大きさ信号の関数
および
として例示される。実施形態では、関数
および
は、それぞれベースバンドIおよびQ信号の相対的大きさに従って設定される。本発明の実施形態による
および
を、以下でさらにセクション3.4.4において説明する。
図20を参照すると、コンポーネント2030および2032は、計算された位相シフト情報をコンポーネント2040および2042にそれぞれ出力する。位相シフト角φIに基づいて、コンポーネント2040は、サンプルされたI信号の第1および第2の定包絡線成分の同相および直交振幅情報を計算する。同様に、位相シフト角φQに基づいて、コンポーネント2042は、サンプルされたQ信号の第1および第2の定包絡線成分の同相および直交振幅情報を計算する。対称性のため、本発明の実施形態では、計算は4つの値のみのために必要とされる。図20の実施例では、これらの値は、図5において提供されたように、sgn(I)×IUX、IUY、QUX、および、sgn(Q)×QUYとして例示される。
コンポーネント2040および2042は、計算された振幅情報を、ベクトル電力増幅器の後続のステージへ出力する。実施形態では、4つの計算された値の各々が、デジタル−アナログ変換器へ別々に出力される。図7Aの実施形態に示すように、例えば、信号722、724、726および728は、それぞれDAC730、732、734および736へ別々に出力される。他の実施形態では、図8Aおよび8Bに示すように、信号722、724、726および728は、単一のDACへ出力される。
3.4.2)CPCP2分岐VPA伝達関数
図21は、CPCP2分岐VPAの実施形態による一実施例のIおよびQ伝達関数の実施形態を例示するプロセス流れ図2100である。このプロセスは、ベースバンド信号の同相(I)および直交(Q)データ成分を受信することを含む、ステップ2110で開始する。図12のCPCP2分岐VPAの実施形態では、例えば、これは、IおよびQデータ伝達関数モジュール1216がIおよびQ情報信号1210を受信することによって例示される。
ステップ2120は、受信されたIおよびQデータ成分の大きさ|I|および|Q|を決定することを含む。
ステップ2130は、測定された|I|および|Q|大きさに基づいて、ベースバンド信号の大きさ|R|を計算することを含む。一実施形態では、|R|は、|R|2=|I|2+|Q|2となる。図12の実施形態では、例えば、ステップ2120および2130は、受信された情報信号1210に基づいて、IおよびQデータ伝達関数モジュール1216によって行われる。
ステップ2140は、測定された|I|および|Q|大きさを正規化することを含む。一実施形態では、|I|および|Q|が正規化されて、(図10に示すような)Iclk_phaseおよびQclk_phase信号が、|Iclk_phase|2+|Qclk_phase|2=定数となるように生成される。図12の実施形態では、例えば、ステップ2140は、受信された情報信号1210に基づいて、IおよびQデータ伝達関数モジュール1216によって行われる。
ステップ2150は、第1および第2の定包絡線成分に関連付けられた同相および直交振幅情報を計算することを含む。図12の実施形態では、例えば、ステップ2150は、包絡線の大きさ|R|に基づいて、IおよびQデータ伝達関数モジュール1216によって行われる。
ステップ2160は、生成されたIclk_phaseおよびQclk_phaseを(ステップ2140から)、かつ、計算された振幅情報を(ステップ2150から)、適切なベクトル変調器へ出力することを含む。図12の実施形態では、例えば、IおよびQデータ伝達関数モジュール1216は、情報信号1220、1222、1224および1226を、ベクトル変調器1238、1260および1262へ、DAC1230、1232、1234および1236を通じて出力する。
図22は、プロセス流れ図2100を実装する、伝達関数モジュール(図12のモジュール1216など)の例示的実施形態2200を例示するブロック図である。図22の実施例では、伝達関数モジュール2200は、IおよびQデータ信号2210を受信する。一実施形態では、IおよびQデータ信号2210は、例えば、図12の実施形態における信号1210など、ベースバンド信号のIおよびQ成分を含む。
一実施形態では、伝達関数モジュール2200は、サンプリングクロック2212に従って、IおよびQデータ信号2210をサンプルする。サンプルされたIおよびQデータ信号は、伝達関数モジュール2200のコンポーネント2220によって受信される。コンポーネント2220は、サンプルされたIおよびQデータ信号の大きさ
および
を測定する。
測定された
および
大きさに基づいて、コンポーネント2230は、ベースバンド信号の大きさ|R|を計算する。一実施形態では、
は、
となる。
並行して、コンポーネント2240は、測定された
および
大きさを正規化する。一実施形態では、
および
が正規化されて、Iclk_phaseおよびQclk_phase信号が、|Iclk_phase|2+|Qclk_phase|2=定数となるように生成され、ただし、|Iclk_phase|および|Qclk_phase|は、
および
の正規化された大きさを表す。典型的には、定数が値Aを有するならば、測定された
および
大きさは共に量
によって除算される。
コンポーネント2250は、計算された
大きさをコンポーネント2230から受信し、それに基づいて、第1および第2の定包絡線成分の間の位相シフト角Φを計算する。計算された位相シフト角Φを使用して、コンポーネント2250は次いで、第1および第2の定包絡線成分に関連付けられた同相および直交振幅情報を計算する。
図22の実施形態では、位相シフト角φは、計算された大きさ
の関数
として例示される。
図22を参照すると、コンポーネント2240および2250は、正規化された|Iclk_phase|および|Qclk_phase|大きさ情報、および、計算された振幅情報を、適切なベクトル変調器への入力のために、DACへ出力する。実施形態では、出力値は別々にデジタル−アナログ変換器へ出力される。図12の実施形態に示すように、例えば、信号1220、1222、1224および1226は別々に、DAC1230、1232、1234および1236へそれぞれ出力される。他の実施形態では、図13および13Aに示すように、信号1220、1222、1224および1226は単一のDACへ出力される。
3.4.3)直接デカルト2分岐伝達関数
図23は、直接デカルト2分岐VPAの実施形態による一実施例のIおよびQ伝達関数の実施形態を例示するプロセス流れ図2300である。このプロセスは、ベースバンド信号の同相(I)および直交(Q)データ成分を受信することを含む、ステップ2310で開始する。図17の直接デカルト2分岐VPAの実施形態では、例えば、これは、IおよびQデータ伝達関数モジュール1716がIおよびQ情報信号1710を受信することによって例示される。
ステップ2320は、受信されたIおよびQデータ成分の大きさ|I|および|Q|を決定することを含む。
ステップ2330は、測定された|I|および|Q|大きさに基づいて、ベースバンド信号の大きさ|R|を計算することを含む。一実施形態では、|R|は、|R|2=|I|2+|Q|2となる。図17の実施形態では、例えば、ステップ2320および2330は、受信された情報信号1710に基づいて、IおよびQデータ伝達関数モジュール1716によって行われる。
ステップ2340は、測定された|I|および|Q|大きさに基づいて、ベースバンド信号の位相シフト角θを計算することを含む。一実施形態では、θは、
となり、IおよびQの符号がθの象限を決定する。図17の実施形態では、例えば、ステップ2340は、情報信号1710において受信されたIおよびQデータ成分に基づいて、IおよびQデータ伝達関数モジュール1716によって行われる。
ステップ2350は、ベースバンド信号の第1および第2の定包絡線成分に関連付けられた同相および直交振幅情報を計算することを含む。図17の実施形態では、例えば、ステップ2350は、以前に計算された大きさ|R|および位相シフト角θに基づいて、IおよびQデータ伝達関数モジュール1716によって行われる。
ステップ2360は、計算された振幅情報を、適切なベクトル変調器への入力のために、DACへ出力することを含む。図17の実施形態では、例えば、IおよびQデータ伝達関数モジュール1716は、情報信号1720、1722、1724および1726を、ベクトル変調器1750および1752へ、DAC1730、1732、1734および1736を通じて出力する。他の実施形態では、信号1720、1722、1724および1726は、図18および18Aに示すように、単一のDACへ出力される。
図24は、プロセス流れ図2300を実装する伝達関数モジュールの例示的実施形態2400を例示するブロック図である。図24の実施例では、伝達関数モジュール2400(伝達関数モジュール1716など)は、図17における信号1710など、IおよびQデータ信号2410を受信する。一実施形態では、IおよびQデータ信号2410は、ベースバンド信号のIおよびQデータ成分を含む。
一実施形態では、伝達関数モジュール2400は、サンプリングクロック2412に従って、IおよびQデータ信号2410をサンプルする。サンプルされたIおよびQデータ信号は、伝達関数モジュール2400のコンポーネント2420によって受信される。コンポーネント2420は、サンプルされたIおよびQデータ信号の大きさ
および
を測定する。
測定された
および
大きさに基づいて、コンポーネント2430は、大きさ
を計算する。一実施形態では、
は、
となる。
並行して、コンポーネント2440は、ベースバンド信号の位相シフト角θを計算する。一実施形態では、θは、
となり、ただし、IおよびQの符号がθの象限を決定する。
コンポーネント2450は、計算された
大きさをコンポーネント2430から受信し、それに基づいて、第1および第2の定包絡線成分信号の間の位相シフト角Φを計算する。図24の実施形態では、位相シフト角φは、計算された大きさ
の関数
として例示される。これを、さらにセクション3.4.4において説明する。
並行して、コンポーネント2450は、計算された位相シフト角θをコンポーネント2440から受信する。Φおよびθの関数として、コンポーネント2450は次いで、第1および第2の定包絡線成分を生成するベクトル変調器入力について、同相および直交振幅情報を計算する。一実施形態では、ベクトル変調器に供給された同相および直交振幅情報は、(18)において提供された方程式によるものである。
コンポーネント2450は、計算された振幅情報を、ベクトル電力増幅器の後続のステージへ出力する。実施形態では、これらの出力値は、デジタル−アナログ変換器へ別々に出力される。図17の実施形態に示すように、例えば、信号1720、1722、1724および1726は、それぞれDAC1730、1732、1734および1736へ、別々に出力される。他の実施形態では、図18および18Aに示すように、信号1720、1722、1724および1726は単一のDACへ出力される。
3.4.4)大きさ−位相シフト変換
図20のf(|I|)、f(|Q|)、ならびに、図22および24のf(|R|)の実施形態を、これからさらに説明するものとする。
本発明によれば、フーリエ級数およびフーリエ変換によって表すことができるいかなる周期波形も、2つ以上の定包絡線信号に分解することができる。
以下に、正弦および方形波形についての2つの実施例が提供される。
3.4.4.1)正弦波信号のための大きさ−位相シフト変換
時変複素包絡線正弦波信号r(t)を考察する。時間領域では、これを以下のように表すことができる。
r(t)=R(t)sin(ωt+δ(t)) (20)
ただし、R(t)は、時間tでの信号の包絡線の大きさを表し、δ(t)は、時間tでの信号の位相シフト角を表し、ωは、ラジアン/秒による信号の周波数を表す。
いずれかの時刻tに、信号r(t)を、2つの適切に位相整合された、等しくかつ一定、あるいは、ほぼ等しくかつ一定の包絡線信号の和によって得ることができることを検証することができる。すなわち、2つの定包絡線信号の間で適切に選択された位相シフト角Φ(t)について、以下であることが分かる。
R(t)sin(ωt+δ(t))=Asin(ωt)+Asin(ωt+φ(t)) (21)
位相シフト角Φ(t)は、以下の説明において、R(t)の関数として導出される。これは、正弦波信号のための大きさ−位相シフト変換に相当する。
正弦三角恒等式(sine trigonometric identity)を用いて、方程式(21)を、以下のように書き換えることができる。
R(t)sin(ωt+δ(t))=Asin(ωt)+Asin(ωt)cosφ(t)+Asin(φ(t))cosωt、 (22)
⇒R(t)sin(ωt+δ(t))=Asin(φ(t))cosωt+A(1+cosφ(t))sinωt。
方程式(22)から、信号r(t)が同相成分および直交成分の和として書かれることに留意されたい。したがって、包絡線の大きさR(t)を以下のように書くことができる。
方程式(23)は、信号r(t)の包絡線の大きさR(t)を、信号r(t)の2つの定包絡線成分の間の位相シフト角Φ(t)に関係付ける。これらの定包絡線成分は、等しいかあるいはほぼ等しい包絡線の大きさAを有し、これは典型的には1に正規化される。
逆に、方程式(23)から、位相シフト角Φ(t)をR(t)の関数として以下のように書くことができる。
方程式(24)は、正弦波信号の場合の大きさ−位相シフト変換を表し、図26に例示される。
3.4.4.2)方形波信号のための大きさ−位相シフト変換
図28は、本発明の実施形態による2つの定包絡線方形波信号の結合を例示する。図28では、信号2810および2820は、周期T、デューティサイクルγT(0<γ<1)、および、包絡線の大きさA1およびA2をそれぞれ有する、定包絡線信号である。
信号2830は、信号2810および2820を結合した結果、生じる。本発明の実施形態によれば、信号2830は、信号2810および2820の積に等しいかあるいはほぼ等しい大きさを有するようになる。すなわち、信号2830は、信号2810または2820のいずれかがゼロの大きさを有するときは常にゼロの大きさを有するようになり、信号2810および2820の両方がゼロでない大きさを有するとき、ゼロでない大きさを有するようになる。
さらに、信号2830は、パルス幅変調された信号を表す。すなわち、信号2830の包絡線の大きさは、信号の1周期の間の信号2830のパルス幅によって決定される。より具体的には、信号2830の包絡線の大きさは、信号2830の曲線の下の領域に等しいかあるいは実質的にそうである。
図28を参照すると、信号2810および2820は、互いに対して時間シフトt’だけ時間シフトされるように図示される。等価的には、信号2810および2820は、互いに対して位相シフト角
ラジアンだけ位相シフトされる。
なお、図28を参照すると、図28における信号2830の包絡線の大きさRは、以下によって与えられることに留意されたい。
R=A1×A2×(γT−t’) (25)
したがって、以下によって、ΦがRに関係付けられることを推論することができる。
方程式(26)から、Φ=0であるとき、RはγA1A2という最大値であることに留意されたい。すなわち、2つの定包絡線信号が互いに同相であるとき、包絡線の大きさは最大である。
典型的な実装では、信号2810および2820は正規化され、等しいかあるいはほぼ等しい包絡線の大きさ1を有する。さらに、信号2810および2820は典型的には、0.5のデューティサイクルを有する。したがって、方程式(26)は以下のように約分される。
方程式(27)は、正規化され、等しいかあるいはほぼ等しい包絡線の大きさの方形波信号の場合の大きさ−位相シフト変換を例示する。方程式(27)を図26に例示する。
3.4.5)波形歪み補償
ある実施形態では、大きさ−位相シフト変換は、理論的あるいは実際的に望むように厳密に実装されない場合がある。実際に、導出された大きさを、最適(または、少なくとも改善された)動作のための位相シフト変換に合わせて調整あるいは調節することを必要とする、いくつかの要因が存在する場合がある。実際のところ、位相および振幅誤差がベクトル変調回路において存在する場合があり、ゲインおよび位相アンバランスがベクトル電力増幅器分岐において起こる可能性があり、歪みがMISO増幅器自体において存在する場合があり、これには、それに限定されないが、本明細書に記載したMISO増幅器内の単一回路ノードでトランジスタ出力を直結することによって導入された誤差が含まれる。これらの要因の各々は、単独で、あるいは組み合わせで、所望の出力信号r(t)からの偏差の結果となる出力波形歪みの一因となる。出力波形歪みがシステム設計要件を超えるとき、波形歪み補償が必要となる場合がある。
図25は、フェーザ信号表現を用いて、信号への波形歪みの影響を例示する。図25では、
は、所望の信号r(t)のフェーザ表現を表す。図25の実施例では、波形歪みは、実際の出力フェーザを、r(t)からフェーザ誤差領域内のいかなるところにも変化させる可能性がある。例示的フェーザ誤差領域を図25に例示し、これは最大誤差ベクトルの大きさに等しいかあるいはほぼ等しい。フェーザ
および
は、所望のr(t)から偏差する潜在的出力フェーザの例を表す。
本発明の実施形態によれば、波形歪みを、システムの製造中、および/または、リアルタイムまたは非リアルタイムの動作において、測定、計算あるいは推定することができる。図54Aおよび図55は、フェーザ誤差測定および訂正のために使用することができる方法の実施例である。これらの波形歪みを、システムにおける様々なポイントで補償あるいは低減することができる。例えば、分岐増幅器の間の位相誤差を、伝達関数内で、アナログ電圧オフセットをベクトル変調回路に印加すること、および/または、図58、59および60に例示した実施例のシステムに図示するような、リアルタイムまたは非リアルタイムのフィードバック技術を使用することによって、調整することができる。同様に、分岐増幅アンバランスを、伝達関数内で、アナログ電圧オフセットをベクトル変調回路に印加すること、および/または、図58、59および60に図示したような、リアルタイムまたは非リアルタイムのフィードバック技術を使用することによって、調整することができる。図58、59および60に例示したシステムでは、例えば、波形歪み調整は、図60に例示するように、差動分岐振幅測定回路6024および差動分岐位相測定回路6026を使用して行われ、これらは、差動分岐振幅信号5950および差動分岐位相信号5948をそれぞれ提供する。これらの信号はA/D変換器5732へ、入力信号セレクタ5946によって入力され、A/D変換器5732によって生成された値は、デジタル制御モジュール5600に入力される。デジタル制御モジュール5602は、A/D変換器5732によって生成された値を使用し、調整あるいはオフセットされた値を計算して、位相調整のための制御電圧をベクトル変調回路5922、5924、5926および5928へ、かつ、振幅調整のための制御電圧をゲインバランス制御回路6016へ提供する。図58では、これらの制御電圧は、ゲインバランス制御信号5749および位相バランス制御信号5751を使用して例示される。上述のフィードバック手法はまた、システム振幅および位相誤差が指定された許容度内にとどまることを保証することによって、プロセス変動、温度変動、ICパッケージの変動、および回路基板の変動を補償する。追加の実施例のフィードバックおよびフィードフォワード誤差測定および補償技術を、さらにセクション4.1.2において説明する。
他の実施形態では、測定、計算、あるいは推定された波形歪みは、電力増幅器の伝達関数ステージで補償される。この手法では、伝達関数が、測定、計算、かつ/または推定された波形歪みを考慮に入れ、訂正するように設計される。図78は、VPAの分岐における振幅および位相誤差の存在下の大きさ−位相シフト変換の数学的導出を例示する。図78の方程式(28)は、例示的実施形態において位相および振幅誤差の両方を考慮に入れる。図78の
は、例えば、図25の
または
のいずれかを表すことができることに留意されたい。方程式(28)は、VPA分岐の振幅A1およびA2が異なる可能性があること、および、各分岐が各位相誤差φe1(t)およびφe2(t)を含む可能性があることを仮定する。参照のため、論理的に完全なシステムでは、A1=A2かつφe1(t)=φe2(t)=0である。δ(t)は、入力ベクトルI(t)およびQ(t)の符号値に基づいて、象限によって調整される。したがって、振幅または位相誤差がなければ、
に対応するフェーザは、図25の所望のフェーザ
に整合される。
いくつかの実施形態では、実際のところは、
に対応するフェーザの振幅および位相成分が、所望のフェーザ
と比較されて、システム振幅および位相誤差偏差が生成される。所望のフェーザ
からのこれらの振幅および位相誤差偏差を、図25に示すように、システム伝達関数において補償することができる。一実施形態では、A1およびA2を実質的に等しくすることができ、ベクトル変調回路への制御入力を適切に調整することによって、φe1(t)およびφe2(t)を最小にすることができる。一実施形態では、図57に例示するように、これはデジタル制御モジュールによって行われ、デジタル制御モジュールは、デジタル−アナログ変換器DAC_01、DAC_02、DAC_03およびDAC_04を使用して、制御入力をベクトル変調回路に提供する。
したがって、方程式(28)など、方程式を使用して、いずれかの時刻に、A1およびA2ならびにφe1(t)およびφe2(t)の値に基づいて、結果として生じるフェーザを計算することができるという事実を踏まえると、伝達関数修正を行って、システム誤差を補償することができ、このような伝達関数修正は、本明細書に含まれた教示に基づいて、当業者には明らかになるであろう。システム誤差を補償するために誤差テーブルおよび/または数学関数を生成するための例示的方法を、セクション4.1.2において説明する。これらの波形歪み訂正および補償技術を、デジタルまたはアナログ領域のいずれかにおいて実装することができることは、当業者には明らかになり、このような技術の実装は、本明細書に含まれた教示に基づいて、当業者には明らかになるであろう。
3.5)出力ステージ
本発明の実施形態の一態様は、ベクトル電力増幅器(VPA)の出力ステージでの成分信号の加算にある。これは例えば図7において示され、図7では、PA770、772、774および776の出力が加算される。これは同様に、例えば、図8、12、13、17および18において示される。VPAの出力を結合するための様々な実施形態を、本明細書で説明する。以下はVPAとの関連で説明されるが、以下の教示は一般にいかなる応用例におけるいかなるアクティブデバイスの出力の結合または加算にも適用されることを理解されたい。
図29は、本発明の一実施形態によるベクトル電力増幅器出力ステージの実施形態2900を例示する。出力ステージ2900は、複数のベクトル変調器信号2910−{1,...,n}が複数の対応する電力増幅器(PA)2920−{1,...,n}に入力されることを含む。上述のように、信号2910−{1,...,n}は、ベクトル電力増幅器の所望の出力信号の成分信号を表す。
図29の実施例では、PA2920−{1,...,n}は、入力信号2910−{1,...,n}を等しく増幅するか、あるいはほぼ等しく増幅して、増幅された出力信号2930−{1,...,n}を生成する。増幅された出力信号2930−{1,...,n}は、加算ノード2940で共に直結される。本発明のこの実施例の実施形態によれば、加算ノード2940は、例えば、電力結合器など、結合または絶縁素子を含まない。図29の実施形態では、加算ノード2940は、ゼロインピーダンス(または、ほぼゼロインピーダンス)の導線である。したがって、結合素子を採用する従来のシステムとは異なり、本発明のこの実施形態による出力信号の結合は、最小の電力損失を受ける。
別の態様では、本発明の出力ステージの実施形態を、多入力1出力(MISO)電力増幅器を使用して実装することができる。
別の態様では、所望の出力電力レベルに従って出力ステージ電流を制御することによって、増幅器の電力効率を増大させるように、本発明の出力ステージの実施形態を制御することができる。
以下においては、本発明のVPAの実施形態による様々な出力ステージの実施形態が、セクション3.5.1において提供される。セクション3.5.2では、本発明のあるVPAの実施形態の電力効率を増大させるための、出力ステージ電流整形関数の実施形態が提示される。セクション3.5.3では、本発明のある出力ステージの実施形態のために利用される場合のある、出力ステージ保護技術の実施形態を説明する。
3.5.1)出力ステージの実施形態
図30は、本発明の一実施形態による電力増幅器(PA)出力ステージの実施形態3000を例示するブロック図である。出力ステージの実施形態3000は、複数のPA分岐3005−{1,...,n}を含む。各ベクトル変調器から入ってくる信号3010−{1,...,n}は、出力ステージ3000のための入力を表す。本発明のこの実施形態によれば、信号3010−{1,...,n}は、電力増幅器の所望の出力信号の等しくかつ一定、あるいは、ほぼ等しくかつ一定の包絡線成分信号を表す。
PA分岐3005−{1,...,n}は、等しいかあるいはほぼ等しい電力増幅を各信号3010−{1,...,n}に適用する。一実施形態では、PA分岐3005−{1,...,n}を通じた電力増幅レベルは、所望の出力信号の電力レベル要件に従って設定される。
図30の実施形態では、PA分岐3005−{1,...,n}はそれぞれ、電力増幅器3040−{1,...,n}を含む。他の実施形態では、図30に例示するような、ドライバ3030−{1,...,n}およびプレドライバ3020−{1,...,n}もまた、PA分岐において電力増幅器素子より前に追加されてもよい。実施形態では、ドライバおよびプレドライバは、必要とされた出力電力レベルが単一の増幅ステージにおいて達成されない場合があるときは常に採用される。
所望の出力信号を生成するため、PA分岐3005−{1,...,n}の出力が加算ノード3050で直結される。加算ノード3050は、結合された出力の間に絶縁をわずかにもたらすか、あるいはもたらさない。さらに、加算ノード3050は、比較的無損失の加算ノードを表す。したがって、PA3040−{1,...,n}の出力の加算において、最小の電力損失を受ける。
出力信号3060は、出力ステージ3000の所望の出力信号を表す。図30の実施形態では、出力信号3060は、負荷インピーダンス3070を介して測定される。
図31は、本発明による別の電力増幅器(PA)出力ステージの実施形態3100を例示するブロック図である。図30の実施形態と同様に、出力ステージ3100は、複数のPA分岐3105−{1,...,n}を含む。PA分岐3105−{1,...,n}の各々は、プレドライバ3020−{1,...,n}、ドライバ3030−{1,...,n}、および電力増幅器3040−{1,...,n}によって表される、複数の電力増幅ステージを含む場合がある。出力ステージの実施形態3100はさらに、各電力増幅ステージの出力で結合されたプルアップインピーダンスを含んで、そのステージのバイアシングを提供する。例えば、プルアップインピーダンス3125−{1,...,n}および3135−{1,...,n}はそれぞれ、プレドライバおよびドライバステージ出力を、電源または独立したバイアス電源に結合する。同様に、プルアップインピーダンス3145は、PAステージ出力を電源または独立したバイアス電源に結合する。本発明のこの実施形態によれば、プルアップインピーダンスは、この出力ステージの実施形態の効率には影響を及ぼす場合があるが、動作には必ずしも影響を及ぼすとは限らない場合のある、任意選択のコンポーネントを表す。
図32は、本発明による別の電力増幅器(PA)出力ステージの実施形態3200を例示するブロック図である。図30の実施形態と同様に、出力ステージ3200は、複数のPA分岐3205−{1,...,n}を含む。PA分岐3205−{1,...,n}の各々は、プレドライバ3020−{1,...,n}、ドライバ3030−{1,...,n}、および電力増幅器3040−{1,...,n}によって表される、複数の電力増幅ステージを含む場合がある。出力ステージの実施形態3200はまた、各電力増幅ステージの出力で結合されたプルアップインピーダンスを含んで、そのステージの適切なバイアシングを達成する。さらに、出力ステージの実施形態3200は、各電力増幅ステージの出力で結合された整合インピーダンスを含んで、そのステージからの電力伝達を最大にする。例えば、整合インピーダンス3210−{1,...,n}および3220−{1,...,n}はそれぞれ、プレドライバおよびドライバステージ出力に結合される。同様に、整合インピーダンス3240は、PAステージ出力で結合される。整合インピーダンス3240は、加算ノード3250の後に続くPA出力ステージに結合されることに留意されたい。
図30〜32の上述の実施形態では、PAステージ出力は加算ノードでの直結によって結合される。例えば、図30の実施形態では、PA分岐3005−{1,...,n}の出力は、加算ノード3050で共に結合される。加算ノード3050は、結合された出力の間に最小の絶縁をもたらす、ほぼゼロインピーダンスの導線である。類似の出力ステージ結合を、図31および32に示す。本発明のある実施形態では、図30〜32の実施形態、または、後に以下で説明する実施形態に示すような出力結合は、ある出力ステージ保護手段を利用する場合があることに留意されたい。これらの保護手段を、PA分岐の異なるステージで実装してもよい。さらに、必要とされる保護手段のタイプは、PA実装特有のものであってもよい。本発明の一実施形態による出力ステージ保護のさらなる考察を、セクション3.5.3において提供する。
図33は、本発明による別の電力増幅器(PA)出力ステージの実施形態3300を例示するブロック図である。図30の実施形態と同様に、出力ステージ3300は、複数のPA分岐3305−{1,...,n}を含む。PA分岐3305−{1,...,n}の各々は、プレドライバ3020−{1,...,n}、ドライバ3030−{1,...,n}、および電力増幅器3040−{1,...,n}によって表される、複数の電力増幅ステージを含む場合がある。出力ステージの実施形態3300はまた、各電力増幅ステージの出力で結合されたプルアップインピーダンス3125−{1,...,n}、3135−{1,...,n}、および3145を含んで、そのステージの適切なバイアシングを達成してもよい。加えて、出力ステージの実施形態3300は、各電力増幅ステージの出力で結合された整合インピーダンス3210−{1,...,n}、3220−{1,...,n}、および3240を含んで、そのステージからの電力伝達を最大にしてもよい。さらに、出力ステージの実施形態3300は、自己バイアス信号3310を、各PA分岐3305−{1,...,n}のPAステージ入力で結合された、自己バイアスモジュール3340から受信する。自己バイアスモジュール3310は、PA3040−{1,...,n}のバイアスを制御する。一実施形態では、自己バイアス信号3340は、所望の出力電力レベルおよび出力波形の信号包絡線に従って、PAステージを通じて、電流フローの量を制御する。自己バイアス信号の動作および自己バイアスモジュールのさらなる説明を、以下でセクション3.5.2において提供する。
図34は、本発明による別の電力増幅器(PA)出力ステージの実施形態3400を例示するブロック図である。図30の実施形態と同様に、出力ステージ3400は、複数のPA分岐3405−{1,...,n}を含む。PA分岐3405−{1,...,n}の各々は、プレドライバ3020−{1,...,n}、ドライバ3030−{1,...,n}、および電力増幅器3040−{1,...,n}によって表される、複数の電力増幅ステージを含む場合がある。出力ステージの実施形態3400はまた、各電力増幅ステージの出力で結合されたプルインピーダンス3125−{1,...,n}、3135−{1,...,n}、および3145を含んで、そのステージの所望のバイアシングを達成してもよい。加えて、出力ステージの実施形態3400は、各電力増幅ステージの出力で結合された整合インピーダンス3210−{1,...,n}、3220−{1,...,n}、および3240を含んで、そのステージからの電力伝達を最大にしてもよい。さらに、出力ステージの実施形態3400は、各PA分岐{1,...,n}のPAステージ入力で結合された複数の高調波制御回路ネットワーク3410−{1,...,n}を含む。高調波制御回路ネットワーク3410−{1,...,n}は、直列または並列で結合された、複数の抵抗、キャパシタンス、および/または誘導素子、および/またはアクティブデバイスを含む場合がある。本発明の一実施形態によれば、高調波制御回路ネットワーク3410−{1,...,n}は、電力増幅器の出力周波数スペクトルを制御するための高調波制御機能を提供する。一実施形態では、高調波制御回路ネットワーク3410−{1,...,n}は、加算された出力スペクトルにおける基本波へのエネルギー伝達が増大されるが、出力波形の高調波部分(harmonic content)が低減されるように、選択される。本発明の実施形態による高調波制御のさらなる説明を、以下でセクション3.6において提供する。
図35は、本発明による別の電力増幅器(PA)出力ステージの実施形態3500を例示するブロック図である。出力ステージの実施形態3500は、図32の出力ステージの実施形態3200に相当する差動出力を表す。実施形態3500では、PAステージ出力3510−{1,...,n}は連続的に結合されて、2つの集合信号(aggregate signals)の結果となる。この2つの集合信号は次いで、負荷インピーダンスを介して結合され、それにより、電力増幅器の出力に、2つの集合信号の間の差を表すようにさせる。図35を参照すると、集合信号3510および3520は負荷インピーダンス3530を介して結合される。電力増幅器の出力は、負荷インピーダンス3530を介して、ノード3540および3550の間の電圧差として測定される。実施形態3500によれば、2つの集合信号が互いに対して180度異相であるとき、電力増幅器の最大出力が得られる。逆に、2つの集合信号が互いに対して同相であるとき、最小出力電力の結果となる。
図36は、本発明による別の出力ステージの実施形態3600を例示するブロック図である。図30の実施形態と同様に、出力ステージ3600は、複数のPA分岐3605−{1,...,n}を含む。PA分岐{1,...,n}の各々は、プレドライバ3020−{1,...,n}、ドライバ3030−{1,...,n}、および電力増幅器(PA)3620−{1,...,n}によって表される、複数の電力増幅ステージを含む場合がある。
実施形態3600によれば、PA3620−{1,..,n}はスイッチング電力増幅器を含む。図36の実施例では、電力増幅器3620−{1,...,n}は、npnバイポーラ接合トランジスタ(BJT)素子Q1、...、Qnを含む。BJT素子Q1、...、Qnは、共通のコレクタノードを有する。図36を参照すると、BJT素子Q1、...、Qnのコレクタ端子が共に結合されて、加算ノード3640が提供される。BJT素子Q1、...、Qnのエミッタ端子は接地ノードに結合されるが、BJT素子Q1、...、Qnのベース端子は、PAステージへの入力端子を提供する。
図37は、方形波入力信号に応答した、実施形態3600のPAステージの出力信号を例示する(図36に関係する)一実施例である。例示を容易にするため、2分岐PAステージを考察する。図37の実施例では、方形波信号3730および3740がそれぞれBJT素子3710および3720に入力される。BJT素子3710または3720のいずれかがオンになるとき、加算ノード3750が接地に短絡されることに留意されたい。したがって、入力信号3730または3740のいずれかが高いとき、出力信号3780はゼロとなる。さらに、出力信号3780は、入力信号3730および3740の両方がゼロであるときにのみ、高くなる。この配置によれば、PAステージ3700はパルス幅変調を行い、それにより、出力信号の大きさは、入力信号の間の位相シフト角の関数である。
実施形態は、本明細書に記載するようなnpn BJT実装に限定されない。例えば、本発明の実施形態を、pnp BJT、CMOS、NMOS、PMOSまたは他のタイプのトランジスタを使用して実装してもよいことは、当業者には理解されよう。さらに、所望のトランジスタスイッチング速度を、考察すべき要因として、GaAsおよび/またはSiGeトランジスタを使用して、実施形態を実装することができる。
図36に戻って参照すると、PA3620−{1,...,n}はそれぞれ単一のBJT表記を使用して例示されるが、各PA3620−{1,...,n}は複数の直列結合されたトランジスタを含んでもよいことに留意されたい。実施形態では、各PA内に含まれるトランジスタの数は、電力増幅器の必要とされた最大出力電力レベルに従って設定される。他の実施形態では、PAにおけるトランジスタの数は、プレドライバ、ドライバおよびPAステージにおけるトランジスタの数が等比数列(geometric progression)に適合するようになる。
図38は、本発明の一実施形態による例示的PAの実施形態3800を例示する。PAの実施形態3800は、BJT素子3870、LCネットワーク3860、およびバイアスインピーダンス3850を含む。BJT素子3870は、直列に結合された複数のBJTトランジスタQ1、...、Q8を含む。図38に例示するように、BJTトランジスタQ1、...、Q8は、それらのベース、コレクタおよびエミッタ端子で共に結合される。BJT素子3870のコレクタ端子3880は、PA3800のための出力端子を提供する。BJT素子3870のエミッタ端子3890は、基板に結合されても、先行する増幅器ステージのエミッタ端子に結合されてもよい。例えば、エミッタ端子3890は、先行するドライバステージのエミッタ端子に結合される。
図38を参照すると、LCネットワーク3860は、PA入力端子3810と、BJT素子3870の入力端子3820の間に結合される。LCネットワーク3860は、複数の容量性および誘導素子を含む。任意選択により、高調波制御回路ネットワーク3830もまた、BJT素子3870の入力端子3820で結合される。上述のように、HCCネットワーク3830は、電力増幅器の出力周波数スペクトルを制御するための高調波制御機能を提供する。
なお、図38を参照すると、バイアスインピーダンス3850は、Iref信号3840をBJT素子3870の入力端子3820へ結合する。Iref信号3840は、所望の出力電力レベルおよび信号包絡線特性に従って、BJT素子3870のバイアスを制御する、自己バイアス信号を表す。
図38の実施形態では、BJT素子3870は8つのトランジスタを含むように例示されることに留意されたい。しかし、BJT素子3870が、電力増幅器の所望の出力電力レベルを達成するために必要とされるようないかなる数のトランジスタを含んでもよいことは、当業者には理解できよう。
別の態様では、出力ステージの実施形態を、多入力1出力(MISO)電力増幅器を使用して実装することができる。図51Aは、例示的MISO出力ステージの実施形態5100Aを例示するブロック図である。出力ステージの実施形態5100Aは、MISO電力増幅器(PA)5120に入力される複数のベクトル変調器信号5110−{1,...,n}を含む。上述のように、信号5110−{1,...,n}は、電力増幅器の出力信号5130の定包絡線成分を表す。MISO PA5120は、多入力1出力の電力増幅器である。MISO PA5120は、信号5110−{1,...,n}を受信かつ増幅し、出力信号5130を生成するために分散マルチ信号増幅プロセス(distributed multi signal amplification process)を提供する。
図51Aに示したものと同様のMISO実装は、上述の出力ステージの実施形態のいずれにも同様に拡張することができることに留意されたい。より具体的には、図29〜37の出力ステージの実施形態のいずれも、MISO手法を使用して実装することができる。追加のMISO実施形態を、これから図51B〜Iを参照して提供する。上述の実施形態のいずれも、これから提供されるMISO実施形態のいずれかを使用して実装することができることに留意されたい。
図51Aを参照すると、MISO PA5120は、複素包絡線入力信号のほぼ一定の包絡線分解によって必要とされるようないかなる数の入力をも有することができる。例えば、2次元分解では、2入力の電力増幅器を使用することができる。本発明の実施形態によれば、いかなる数の入力のためのMISO PAをも作成するための構成単位が提供される。図51Bは、本発明の一実施形態によるいくつかのMISO構成単位を例示する。MISO PA5110Bは、2入力1出力のPAブロックを表す。一実施形態では、MISO PA5110Bは、2つのPA分岐を含む。MISO PA5110BのPA分岐は、例えば、図29〜37を参照して上述したいずれかのPA分岐に相当する場合がある。MISO PA5120Bは、3入力1出力のPAブロックを表す。一実施形態では、MISO PA5120Bは、3つのPA分岐を含む。MISO PA5120BのPA分岐は、例えば、図29〜37を参照して上述したいずれかのPA分岐に相当する場合がある。
なお、図51Bを参照すると、MISO PA5110Bおよび5120Bは、本発明の実施形態によるいずれかの多入力1出力の電力増幅器のための基本構成単位を表す。例えば、MISO PA5130Bは、4入力1出力のPAであり、これは、例えば、MISO PA5110Bなど、2つの2入力1出力のPAブロックの出力を共に結合することによって作成することができる。これを図51Cに例示する。同様に、MISO PA5140B、n入力1出力のPAを、基本構成単位5110Bおよび5120Bから作成することができることを検証することができる。
図51Dは、本発明の実施形態による2入力1出力のPA構成単位の様々な実施形態を例示する。
実施形態5110Dは、2入力1出力のPA構成単位のnpn実装を表す。実施形態5110Dは、PAの出力を提供する共通コレクタノードを使用して共に結合された、2つのnpnトランジスタを含む。プルアップインピーダンス(図示せず)を、共通コレクタノードと供給ノード(図示せず)の間で結合することができる。
実施形態5130Dは、実施形態5110Dのpnp相当物を表す。実施形態5130Dは、PAの出力を提供する共通コレクタノードで結合された、2つのpnpトランジスタを含む。プルダウンインピーダンス(pull−down impedance)(図示せず)を、共通コレクタノードと接地ノード(図示せず)の間で結合することができる。
実施形態5140Dは、2入力1出力のPA構成単位の相補的npn/pnp実装を表す。実施形態5140Dは、PAの出力を提供する共通コレクタノードで結合された、npnトランジスタおよびpnpトランジスタを含む。
なお、図51Dを参照すると、実施形態5120Dは、2入力1出力のPA構成単位のNMOS実装を表す。実施形態5120Dは、PAの出力を提供する共通ドレインノードで結合された、2つのNMOSトランジスタを含む。
実施形態5160Dは、実施形態5120DのPMOS相当物を表す。実施形態5160Dは、PAの出力を提供する共通ドレインノードで結合された、2つのPMOSトランジスタを含む。
実施形態5150Dは、2入力1出力のPA構成単位の相補的MOS実装を表す。実施形態5150Dは、PAの出力を提供する共通ドレインノードで結合された、PMOSトランジスタおよびNMOSトランジスタを含む。
図51Dの2入力1出力の実施形態をさらに拡張して、多入力1出力のPAの実施形態を作成することができる。図51Eは、本発明の実施形態による多入力1出力のPAの様々な実施形態を例示する。
実施形態5150Eは、多入力1出力のPAのnpn実装を表す。実施形態5150Eは、PAの出力を提供する共通コレクタノードを使用して共に結合された、複数のnpnトランジスタを含む。プルアップインピーダンス(図示せず)を、共通コレクタノードと電源電圧(図示せず)の間で結合することができる。実施形態5150Eによるn入力1出力のPAを、追加のnpnトランジスタを2入力1出力のPA構成単位の実施形態5110Dに結合することによって、得ることができることに留意されたい。
実施形態5170Eは、実施形態5150Eのpnp相当物を表す。実施形態5170Eは、PAの出力を提供する共通コレクタノードを使用して共に結合された、複数のpnpトランジスタを含む。プルダウンインピーダンス(図示せず)を、共通コレクタノードと接地ノード(図示せず)の間で結合してもよい。実施形態5170Eによるn入力1出力のPAを、追加のpnpトランジスタを2入力1出力のPA構成単位の実施形態5130Dに結合することによって、得ることができることに留意されたい。
実施形態5110Eおよび5130Eは、多入力1出力のPAの相補的npn/pnp実装を表す。実施形態5110Eおよび5130Eは、PAの出力を提供する共通コレクタノードを使用して共に結合された、複数のnpnおよび/またはpnpトランジスタを含んでもよい。実施形態5110Eによるn入力1出力のPAを、追加のnpnおよび/またはpnpトランジスタを2入力1出力のPA構成単位の実施形態5140Dに結合することによって、得ることができることに留意されたい。同様に、実施形態5130Eによるn入力1出力のPAを、追加のnpnおよび/またはpnpトランジスタを2入力1出力のPA構成単位の実施形態5130Dに結合することによって、得ることができる。
実施形態5180Eは、多入力1出力のPAのPMOS実装を表す。実施形態5180Eは、PAの出力を提供する共通ドレインノードを使用して共に結合された、複数のPMOSトランジスタを含む。実施形態5180Eによるn入力1出力のPAを、追加のNMOSトランジスタを2入力1出力のPA構成単位の実施形態5160Dに結合することによって、得ることができることに留意されたい。
実施形態5160Eは、多入力1出力のPAのNMOS実装を表す。実施形態5160Eは、PAの出力を提供する共通ドレインノードを使用して共に結合された、複数のNMOSトランジスタを含む。実施形態5160Eによるn入力1出力のPAを、追加のPMOSトランジスタを2入力1出力のPA構成単位の実施形態5120Dに結合することによって、得ることができることに留意されたい。
実施形態5120Eおよび5140Eは、多入力1出力のPAの相補的MOS実装を表す。実施形態5120Eおよび5140Eは、PAの出力を提供する共通ドレインノードを使用して共に結合された、複数のnpnおよびpnpトランジスタを含む。実施形態5120Eによるn入力1出力のPAを、追加のNMOSおよび/またはPMOSトランジスタを2入力1出力のPA構成単位5150Dに結合することによって、得ることができることに留意されたい。同様に、実施形態5140Eによるn入力1出力のPAを、追加のNMOSおよび/またはPMOSトランジスタを2入力1出力のPA構成単位5160Dに結合することによって、得ることができる。
図51Fは、本発明の実施形態による、さらなる多入力1出力のPAの実施形態を例示する。実施形態5110Fは、多入力1出力のPAの相補的npn/pnp実装を表す。実施形態5110Fを、PA構成単位5140Dの実施形態を繰り返して共に結合することによって、得ることができる。同様に、実施形態5120Fは、多入力1出力のPAのNMOS/PMOS相補的実装に相当するものを表す。実施形態5120Fを、PA構成単位5150Dの実施形態を繰り返して共に結合することによって、得ることができる。
上述の多入力1出力の実施形態はそれぞれ、PAの単一または複数の分岐に対応する場合があることに留意されたい。例えば、図29を参照すると、多入力1出力の実施形態のいずれかを使用して、単一または複数のPA2920−{1,...,n}を置き換えてもよい。すなわち、PA2920−{1,...,n}の各々を、上述の多入力1出力のPAの実施形態のいずれかを使用して実装してもよいし、図29に示すような1入力1出力のPAにより実装してもよい。
さらに、図51D、51Eおよび51Fの実施形態に示したトランジスタをそれぞれ、例えば、図38の例示的実施形態に示すような一連のトランジスタを使用して実装してもよいことに留意されたい。
図51Gは、多入力1出力のPA構成単位のさらなる実施形態を例示する。実施形態5110Gは、2入力1出力のPA構成単位の一実施形態を例示する。実施形態5110Gは、上述のような1入力1出力または多入力1出力のPAの実施形態によってそれぞれ実装することができる、2つのPA分岐を含む。さらに、実施形態5110Gは、PAの実施形態の2つの分岐に結合される、任意選択のバイアス制御信号5112Gを例示する。バイアス制御信号5112Gは、PA分岐の特定の実装に基づいて、実施形態5110Gにおいて任意選択で採用される。ある実装では、バイアス制御がPAの適切な動作のために必要となる。他の実装では、バイアス制御はPAの適切な動作のために必要とされないが、改善されたPA電力効率、出力回路保護、または電源オン時の電流の保護をもたらす場合がある。
なお、図51Gを参照すると、実施形態5120Gは、3入力1出力のPA構成単位の一実施形態を例示する。実施形態5120Gは、上述のような1入力1出力または多入力1出力のPAの実施形態によってそれぞれ実装することができる、3つのPA分岐を含む。さらに、実施形態5120Gは、PAの実施形態の分岐に結合される、任意選択のバイアス制御信号5114Gを例示する。バイアス制御信号5114Gは、PA分岐の特定の実装に基づいて、実施形態5120Gにおいて任意選択で採用される。ある実装では、バイアス制御がPAの適切な動作のために必要となる。他の実装では、バイアス制御はPAの適切な動作のために必要とされないが、改善されたPA電力効率をもたらす場合がある。
図51Hは、2入力1出力のPA構成単位のさらなる例示的実施形態5100Hを例示する。実施形態5100Hは、上述のような1入力1出力または多入力1出力のPAの実施形態によってそれぞれ実装することができる、2つのPA分岐を含む。実施形態5100Hはさらに、実施形態5100Hの実施形態において追加で採用することができる、図51Hにおいて破線を用いて例示された任意選択の素子を含む。一実施形態では、PA構成単位5100Hは、図51Hに示すように、ドライバステージおよび/またはプレドライバステージをPA分岐の各々において含んでもよい。プロセス検出器をまた任意選択で採用して、PAのドライバおよび/またはプレドライバステージにおけるプロセスおよび温度変動を検出してもよい。さらに、任意選択のバイアス制御を、PAの実施形態の各分岐のプレドライバ、ドライバ、および/またはPAステージの各々に提供してもよい。バイアス制御を、1つまたは複数のステージに、そのステージの特定の実装に基づいて提供してもよい。さらに、バイアス制御はある実装のために必要とされる場合があるが、他のものにおいては任意選択で採用することができる。
図51Iは、多入力1出力のPAのさらなる例示的実施形態5100Iを例示する。実施形態5100Iは、上述のような1入力1出力または多入力1出力のPAの実施形態によってそれぞれ実装することができる、少なくとも2つのPA分岐を含む。実施形態5100Iはさらに、実施形態5100Iの実施形態において追加で採用することができる、任意選択の素子を含む。一実施形態では、PAは、図51Iに示すように、ドライバおよび/またはプレドライバステージをPA分岐の各々において含んでもよい。プロセス検出器をまた任意選択で採用して、PAのドライバおよび/またはプレドライバステージにおけるプロセスおよび温度変動を検出してもよい。さらに、任意選択のバイアス制御を、PAの実施形態の各分岐のプレドライバ、ドライバ、および/またはPAステージの各々に提供してもよい。バイアス制御を、1つまたは複数のステージに、そのステージの特定の実装に基づいて提供してもよい。さらに、バイアス制御はある実装のために必要とされる場合があるが、他のものにおいては任意選択で採用することができる。
3.5.2)出力ステージ電流制御−自己バイアスモジュール
本発明の実施形態による、出力ステージおよび任意選択のプレドライバおよびドライバステージのバイアスおよび電流制御技術の実施形態を、以下で説明する。ある実施形態では、出力ステージ電流制御関数が採用されて、ベクトル電力増幅器(VPA)の実施形態の出力ステージ効率が増大される。他の実施形態では、出力ステージ電流制御が使用されて、過剰電圧および電流からの出力ステージ保護が提供され、これをさらにセクション3.5.3で説明する。実施形態では、出力ステージ電流制御関数は、図33を参照して上述した自己バイアスモジュールを使用して行われる。これらの電流制御関数を行うことにおける自己バイアスモジュールの動作の説明もまた、以下で本発明の一実施形態によって提示される。
本発明の実施形態によれば、VPAの出力ステージ電流を、出力電力および出力波形の包絡線の関数として制御することによって、VPAの出力ステージの電力効率を増大させることができる。
図37は、入力信号S1およびS2を有する2つのNPNトランジスタからなる多入力1出力の増幅器の部分概略図を例示する。S1およびS2がほぼ類似の波形およびほぼ一定の包絡線信号となるように設計されるとき、S1およびS2の位相関係を変更することによって、いかなる時変複素包絡線出力信号も回路ノード3750で作成することができる。
図39は、一実施例の時変複素包絡線出力信号3910、および、その対応する包絡線信号3920を例示する。信号3910は、時刻t0で位相の反転を受けることに留意されたい。対応して、包絡線信号3920は、時間t0でゼロ交差を受ける。出力信号3910は、例えば、W−CDMA、QPSKおよびOFDMなど、典型的な無線信号方式による出力信号を例示する。
図40は、出力信号3910に応答した、実施例の図、図37の出力ステージ電流を例示する。Iout信号4010は、自己バイアス制御のない出力ステージ電流を表し、Iout信号4020は、自己バイアス制御のある出力ステージ電流を表す。自己バイアス制御がなければ、S1とS2の間の位相シフトが0から180度まで変化するので、出力電流Ioutが増大する。自己バイアス制御があれば、出力電流Ioutは低減され、図39のt0か、あるいはそれに近いとき、最小にすることができる。
Iout信号4020は、包絡線信号3920に応じて変化することに留意されたい。したがって、Iout信号4020は、最大出力電力が必要とされるとき、最大であるが、必要とされる出力電力が低下するにつれて、低減される。特に、Iout信号4020は、関連付けられた出力電力がゼロになるにつれて、ゼロに近付く。したがって、本発明の実施形態による出力ステージ電流制御は、大幅な節電の結果となり、電力増幅器の電力効率を増大させることは、当業者には理解されよう。
本発明の実施形態によれば、出力ステージ電流制御を様々な関数に従って実装してもよい。一実施形態では、出力ステージ電流を、増幅器の所望の出力電力に対応するように整形することができる。このような実施形態では、出力ステージ電流は、所望の出力信号の包絡線から導出される関数であり、電力効率は増大する。
図41は、本発明の実施形態による例示的自己バイアス出力ステージ電流制御関数4110および4120を例示する。関数4110は、上述のような出力電力および信号包絡線の関数を表す場合がある。一方、関数4120は、出力電力がしきい値より低いとき、所定の時間の量に渡って最小値になる、単純な整形関数を表す場合がある。したがって、関数4110および4120は、自己バイアス出力ステージ電流制御関数の2つの場合を表し、自己バイアス制御信号4110はIout応答4130の結果となり、自己バイアス制御信号4120はIout応答4140の結果となる。本発明は、しかし、これらの2つの例示的実施形態に限定されない。本発明の実施形態によれば、出力ステージ自己バイアス電流制御関数を、特定のベクトル電力増幅器設計の効率および電流消費要件に対応するように設計かつ実装してもよい。
実装では、出力ステージ電流制御を実行するためのいくつかの手法が存在する。いくつかの実施形態では、出力ステージ電流整形が、自己バイアスモジュールを使用して行われる。自己バイアスモジュールは、図7および8の実施形態において自己バイアス回路714および716として例示される。同様に、自己バイアスモジュールは、図12および13の実施形態において自己バイアス回路1218として、また、図17および18の実施形態において自己バイアス回路1718として例示される。
自己バイアスを使用した出力ステージ電流制御を、図48の実施形態のプロセス流れ図4800に示す。このプロセスは、ベクトル電力増幅器(VPA)の所望の出力信号の出力電力および出力信号包絡線情報を受信することを含む、ステップ4810で開始する。いくつかの実施形態では、自己バイアスを使用した出力ステージ電流制御の実装には、増幅器の所望の出力電力の先験的知識が必要となる。出力電力情報は、包絡線および位相情報の形式であってもよい。例えば、図7、8、12、13、17および18の実施形態では、出力電力情報は、VPAの実施形態によって受信されたIおよびQデータ成分に含まれる。他の実施形態では、出力電力情報を、他の手段を使用して受信あるいは計算してもよい。
ステップ4820は、出力電力および出力包絡線信号情報に従って信号を計算することを含む。実施形態では、自己バイアス信号は、所望の出力電力のある測度の関数として計算される。例えば、自己バイアス信号を、所望の出力信号の包絡線の大きさの関数として計算してもよい。図7、8、12、13、17および18の実施形態を参照すると、例えば、自己バイアス信号(図7および8における信号715および717、図12および13における信号1228、ならびに、図17および18における信号1728)は、所望の出力信号の受信されたIおよびQデータ成分に従って計算されることに留意されたい。図7、8、12、13、17および18において説明したものなど、ある実施形態では、自己バイアス信号は、自己バイアスモジュールが出力電力情報を提供されることによって計算される。他の実施形態では、自己バイアス信号は、VPAのIおよびQデータ伝達関数モジュールによって計算されてもよい。このような実施形態では、自己バイアスモジュールは実装において必要とされない場合がある。実施形態では、IおよびQデータ伝達関数モジュールは信号を計算し、その信号をDACに出力し、その出力信号は自己バイアス信号を表す。
ステップ4830は、計算された信号をVPAの出力ステージで適用し、それにより、所望の出力信号の出力電力に従って、出力ステージの電流を制御することを含む。実施形態では、ステップ4830は、VPAのPAステージ入力で自己バイアス信号を結合することを含む。これを、例えば、自己バイアス信号3310がVPAの実施形態のPAステージ入力で結合される、図33および42の実施形態に例示する。これらの実施形態では、自己バイアス信号3310は、VPAの実施形態の所望の出力信号の出力電力に従って、PAステージトランジスタのバイアスを制御する。例えば、自己バイアス信号3310は、所望の出力電力が最小またはほぼゼロであるとき、PAステージトランジスタを遮断状態で動作させ、それにより、出力ステージ電流をほとんどあるいは全く引き出さないようにしてもよい。同様に、最大出力電力が望まれるとき、自己バイアス信号3310は、クラスC、D、Eなど、スイッチングモードにおいて動作するために、PAステージトランジスタをバイアスしてもよい。自己バイアス信号3310はまた、所望の出力電力および信号包絡線特性に従って、PAステージトランジスタまたはFETを、順方向または逆方向バイアス状態において動作させてもよい。
他の実施形態では、ステップ4830は、プルアップインピーダンスを使用して、PAステージ入力、および、任意選択でVPAのドライバおよびプレドライバステージの入力で、自己バイアス信号を結合することを含む。図38および43は、このような実施形態を例示する。例えば、図38の実施形態では、バイアスインピーダンス3850は、自己バイアスIref信号3840を、BJT素子3870の入力端子3820に結合する。BJT素子3870は、例示的VPAの実施形態の1つのPA分岐のPAステージを表す。同様に、図43の実施形態では、自己バイアス信号4310は、トランジスタQ1、...、Q8に、対応するバイアスインピーダンスZ1、...、Z8を通じて結合される。トランジスタQ1、...、Q8は、例示的VPAの実施形態の1つの分岐のPAステージを表す。
上述の自己バイアス回路を実装するための実施形態を、これから提供する。図27は、自己バイアス回路を実装するための3つの実施形態2700A、2700Bおよび2700Cを例示する。これらの実施形態は例示のために提供され、限定するものではない。他の実施形態は、本明細書に含まれた教示に基づいて、当業者には明らかになるであろう。
実施形態2700Aでは、自己バイアス回路2700Aは、自己バイアス伝達関数モジュール2712、DAC2714、および任意選択の補間フィルタ2718を含む。自己バイアス回路2700Aは、IおよびQデータ信号2710を受信する。自己バイアス伝達関数モジュール2712は、受信されたIおよびQデータ信号2710を処理して、適切なバイアス信号2713を生成する。自己バイアス伝達関数モジュール2712は、バイアス信号2713をDAC2714へ出力する。DAC2714は、自己バイアス伝達モジュール2712において生成される場合のある、DACクロック2716によって制御される。DAC2714は、バイアス信号2713をアナログ信号に変換し、アナログ信号を補間フィルタ2718に出力する。アンチエイリアスフィルタとしての機能も果たす補間フィルタ2718は、DACの出力を整形して、実施形態5112GにおけるバイアスAとして例示された、自己バイアス信号2720を生成する。自己バイアス信号2720を使用して、増幅器のPAステージ、および/またはドライバステージ、および/またはプレドライバステージをバイアスしてもよい。一実施形態では、自己バイアス信号2720は、PAステージ内の異なるステージをバイアスするために、そこから導出されたいくつかの他の自己バイアス信号を有してもよい。これを、実施形態2700Aに含まれない追加の回路を使用して行うことができる。
対照的に、実施形態2700Bは、複数の自己バイアス信号が自己バイアス回路内で導出される、自己バイアス回路の実施形態を例示する。実施形態2700Bに示すように、実施形態2700Bにおいて回路ネットワークA、BおよびCとして例示された、回路ネットワーク2722、2726および2730は、自己バイアス信号2724および2728を自己バイアス信号2720から導出するために使用される。自己バイアス信号2720、2724および2728は、異なる増幅ステージをバイアスするために使用される。
実施形態2700Cは、複数の自己バイアス信号が自己バイアス伝達関数モジュール2712内で独立して生成される、別の自己バイアス回路の実施形態を例示する。実施形態2700Cでは、自己バイアス伝達関数モジュール2712は、複数のバイアス信号を、受信されたIおよびQデータ信号2710に従って生成する。これらのバイアス信号は、関係付けられても関係付けられなくてもよい。自己バイアス伝達関数モジュール2712は、生成されたバイアス信号を後続のDAC2732、2734および2736に出力する。DAC2732、2734および2736は、DACクロック信号2733、2735および2737によって、それぞれ制御される。DAC2732、2734および2736は、受信されたバイアス信号をアナログ信号に変換し、これらのアナログ信号を任意選択の補間フィルタ2742、2744および2746に出力する。アンチエイリアスフィルタとしての機能も果たす補間フィルタ2742、2744および2746は、DAC出力を整形して、自己バイアス信号2720、2724および2728を生成する。実施形態2700Bと同様に、自己バイアス信号2720、2724および2728が使用されて、プレドライバ、ドライバおよびPAなど、異なる増幅ステージがバイアスされる。
上述のように、本発明による自己バイアス回路の実施形態は、実施形態2700A、2700Bおよび2700Cで説明したものに限定されない。例えば、自己バイアス回路を拡張して、例えば、実施形態2700Bおよび2700Cに示すような3つのみでなく、増幅の様々なステージのバイアスを制御するために必要とされるような、いかなる数のバイアス制御信号を生成することもできることは、当業者には理解されよう。
3.5.3)出力ステージ保護
上述のように、本発明の実施形態による出力ステージの実施形態は、結合または絶縁素子を使用せずにPAステージで出力を直結することができる結果として、極めて電力効率がよい。ある状況および/または応用例におけるある出力ステージの実施形態では、しかし、このような直結手法に耐えるために、追加の特別な出力ステージ保護手段が必要となる場合がある。これは、例えば、図51Dおよび51Eに例示した5110D、5120D、5130D、5160D、5150E、5160E、5170Eおよび5180Eなど、出力ステージの実施形態についての場合である可能性がある。本明細書でこのセクションにおいて説明するように、一般に、図51Dおよび51Eの実施形態5140D、5150D、5110E、5120E、5130Eおよび5140Eなど、相補的な出力ステージの実施形態は、同じ出力ステージ保護手段を必要としない(が、任意選択で使用してもよい)ことに留意されたい。このような手段をサポートするための出力ステージ保護手段および実施形態を、これから提供する。
一態様では、PAステージの別個の分岐のトランジスタは、一般に、長期間にわたって同時に反対の動作状態になるべきではない。入力が最後のPAステージに供給されない再起動または電源オンの後、PA分岐内の過渡電流がこのモードを発生させ、PAステージトランジスタが潜在的に互いを、あるいは出力に接続された回路素子を損なう結果となる場合がある。したがって、本発明の実施形態はさらに、PAステージにおける出力電流を制限するために、自己バイアスモジュールを制約する。
別の態様では、自己バイアスモジュールが出力電圧をPAステージトランジスタの絶縁破壊電圧仕様より低く制限することを保証することが望ましい場合がある。したがって、例えば、図42に例示したものなど、本発明の実施形態では、フィードバック素子4210がPAステージの共通コレクタノードと自己バイアスモジュールの間に結合される。フィードバック素子4210は、コレクタを監視して、PAステージトランジスタの電圧の基礎を形成し、トランジスタおよび/または回路素子を保護するために、必要に応じて自己バイアス信号を制約してもよい。
他の出力ステージ保護技術もまた実装してもよいことは、当業者には理解されよう。さらに、出力ステージ保護技術は実装特有のものである場合がある。例えば、PAステージトランジスタのタイプ(npn、pnp、NMOS、PMOS、npn/pnp、NMOS/PMOS)に応じて、異なる保護機能が必要となる場合がある。
3.6)高調波制御
本発明の実施形態によれば、各分岐PAについての基本原理は、出力スペクトルの基本波への電力の伝達を最大にすることである。典型的には、各分岐PAは、高調波的に豊富な出力スペクトルを生じる、マルチステージである場合がある。一態様では、実電力の伝達は、基本波について最大化される。別の態様では、非基本波では、実電力伝達は最小化されるが、虚電力伝達は許容される場合がある。高調波制御は、本発明の実施形態によれば、様々な方法で行われる場合がある。
一実施形態では、基本波上への実電力伝達は、PAステージ入力信号の波形整形を用いて最大化される。実際のところは、いくつかの要因が、基本波上への最大実電力伝達の結果となる最適波形の決定における役割を果たす。上述の本発明の実施形態3400は、PAステージ入力信号の波形整形を採用する一実施形態を表す。実施形態3400では、複数の高調波制御回路(HCC)ネットワーク3410−{1,...,n}が、各PA分岐{1,...,n}のPAステージ入力で結合される。HCCネットワーク3410−{1,...,n}は、PAステージ入力を波形整形する効果を有し、典型的には、加算された出力スペクトルの基本波への実電力伝達を最大化するように選択される。本発明の実施形態によれば、波形整形を使用して、高調波的に多様な波形の変形物を生成することができる。他の実施形態では、当業者には明らかとなるように、波形整形をプレドライバおよび/またはドライバステージで行うことができる。
別の実施形態では、高調波制御は、PAステージ出力の波形整形を用いて達成される。図43は、本発明の例示的PAステージの実施形態4300を例示する。実施形態4300では、自己バイアス信号4310は、トランジスタQ1、...、Q8へ、対応するバイアスインピーダンスZ1、...、Z8を通じて結合される。インピーダンスZ1、...、Z8が異なる値を有するとき、トランジスタQ1、...、Q8は異なるバイアス点を有し、異なる時間にオンにすることができることに留意されたい。トランジスタQ1、...、Q8をバイアスするこの手法は、スタガードバイアス(staggered bias)と呼ばれる。スタガードバイアスを使用して、バイアスインピーダンスZ1、...、Z8に割り当てられた値に応じて、PA出力波形を様々な方法で整形することができることに留意されたい。
スタガードバイアスを使用した高調波制御を、図49の実施形態のプロセス流れ図4900に示す。このプロセスは、電力増幅器(PA)スイッチングステージの複数のトランジスタの第1のポートで入力信号を結合すること含む、ステップ4910で開始する。図43の実施例の実施形態では、例えば、ステップ4910は、複数のトランジスタQ1、...、Q8のベース端子でPA_IN信号4310を結合することに対応する。
ステップ4920は、複数のトランジスタの第1のポートとバイアス信号の間で複数のインピーダンスを結合することを含む。図43の実施例の実施形態では、例えば、ステップ4920は、各トランジスタQ1、...、Q8のベース端子とIref信号の間でインピーダンスZ1、...、Z8を結合することによって達成される。一実施形態では、複数のインピーダンスの値は、入力信号の時間スタガード(time−staggered)スイッチングを引き起こし、それにより、PAステージの出力信号を高調波的に整形するように、選択される。実施形態では、マルチステージスタガード出力(staggered output)は、複数のインピーダンスの複数の別個の値を選択することによって生成される場合がある。他の実施形態では、スイッチングは、等しいかあるいはほぼ等しい値を有するように複数のインピーダンスを選択することによって達成される。
図44は、2ステージスタガードバイアス手法を使用した、例示的波形整形PA出力を例示する。2ステージスタガードバイアス手法では、第1のセットのPAトランジスタが、第2のセットがオンにされる前に、最初にオンにされる。すなわち、バイアスインピーダンスは2つの異なる値を取る。波形4410は、PAステージへの入力波形を表す。波形4420は、2ステージスタガードバイアスによる波形整形PA出力を表す。出力波形4420は、それが1から0へ移行するにつれて二度傾斜し、これは、第1および第2のセットのトランジスタが連続的にオンになることに対応することに留意されたい。
本発明の実施形態によれば、様々なマルチステージスタガードバイアス手法を設計してもよい。バイアスインピーダンス値は固定でも可変でもよい。さらに、バイアスインピーダンス値は、等しいかあるいはほぼ等しく、別個であってもよく、様々な順列に従って設定されてもよい。例えば、図43の実施例を参照すると、1つの例示的順列は、2ステージスタガードバイアスの結果となる、Z1=Z2=Z3=Z4およびZ5=Z6=Z7=Z8を設定する場合がある。
3.7)電力制御
本発明のベクトル電力増幅の実施形態は本質的に、出力電力制御を行うための機構を提供する。
図45は、本発明の一実施形態による電力制御を行うための一手法を例示する。図45では、フェーザ
および
は、第1のフェーザ
の上側および下側成分を表す。
および
は一定の大きさであり、
に対して、位相シフト角
だけ、位相において対称的にシフトされる。フェーザ
および
は、第2のフェーザ
の上側および下側成分を表す。
および
は一定の大きさであり、
に対して、位相シフト角
だけ、位相において対称的にシフトされる。
図45から、
および
は、互いに対して同相であるが、大きさのみが異なることに留意されたい。さらに、
および
および
に対して、等しくあるいはほぼ等しく位相シフトされる。したがって、本発明によれば、その成分信号を等しくあるいはほぼ等しく対称的にシフトすることによって、その位相シフト角を変更することなく、信号の大きさを操作することができることを推測することができる。
上記の意見によれば、所望の出力信号の成分信号の位相シフト角に制約を課すことによって、出力電力制御を行うことができる。図45を参照すると、例えば、位相シフト角
が取ることができる値の範囲を制約することによって、大きさの制約をフェーザ
に課すことができる。
本発明の実施形態によれば、最小位相シフト角条件を課すことによって、最大出力電力レベルを達成することができる。例えば、図45を参照すると、
であるような条件を設定することによって、フェーザ
の大きさが、ある最大レベルを超えないように制約される。同様に、最大位相シフト角条件は、最小大きさレベル要件を課す。
電力制御の別の態様では、出力電力分解能は、最低電力増分または減分ステップサイズに関して定義される。本発明の一実施形態によれば、出力電力分解能を、最小位相シフト角ステップサイズを定義することによって実装してもよい。したがって、位相シフト角値は、所定のステップサイズを有する離散値範囲に従って設定される。図46は、例示的位相シフト角スペクトルを例示し、それにより、位相シフト角
は、最小ステップ
を有する所定の値範囲に従って設定される。
様々な電力制御方式を、上述の技術に類似の方法で実装してもよいことは、当業者には理解されよう。すなわち、本発明によれば、位相シフト角値において対応する制約を設定することによって、様々な電力制御アルゴリズムを設計することができる。データ伝達関数の上記の説明に基づいて、電力制御方式を当然、伝達関数実装に組み込むことができることも明らかである。
3.8)例示的ベクトル電力増幅器の実施形態
図47は、本発明によるベクトル電力増幅器の例示的実施形態4700を例示する。実施形態4700は、直接デカルト2分岐VPA方法に従って実装される。
図47を参照すると、信号4710および4712は、伝達関数ステージから入ってくる信号を表す。この伝達関数ステージは、図47に図示されない。ブロック4720は、本発明の一実施形態によって任意選択で実装されてもよい直交生成器を表す。直交生成器4720は、ベクトル変調器4740および4742によってそれぞれ使用されるクロック信号4730および4732を生成する。同様に、信号4710および4712は、ベクトル変調器4740および4742に入力される。上述のように、ベクトル変調器4740および4742は、続いてPAステージによって処理される定包絡線成分を生成する。実施形態4700では、PAステージはマルチステージであり、それにより、各PA分岐は、プレドライバステージ4750〜4752、ドライバステージ4760〜4762、および電力増幅器ステージ4770〜4772を含む。
図47にさらに例示されるものは、自己バイアス信号4774および4776、ならびに、高調波制御回路およびネットワークを結合するための端子4780および4782である。端子ノード4780は、ベクトル電力増幅器の出力端子を表し、2つのPA分岐の出力の直結によって得られる。
追加の例示的実施形態および実装
4.1)概観
本発明の実施形態による例示的VPA実装を、このセクションで提供する。これらのVPA実装の利点は、本明細書の教示に基づいて、当業者には明らかになるであろう。我々は、例示的VPA実装をより詳細に提示する前に、これらの利点のいくつかを以下に簡単に説明する。
4.1.1)出力電力および電力効率の制御
例示的VPAの実装は、VPA内の回路を使用して、電力制御を行うため、および/または電力効率を制御するための、数層の機能性を可能にする。図52は、MISO VPAの実施形態5200を使用して、この機能性を大まかに例示する。MISO VPAの実施形態5200は、任意選択のドライバおよびプレドライバステージをVPAの各分岐において有する、2入力1出力のVPAである。前述の実施形態のように、VPAの各増幅ステージ(例えば、プレドライバステージ、ドライバステージなど)への入力バイアス電圧または電流は、バイアス信号(他の実施形態では、自己バイアスとも呼ばれる)を使用して制御される。実施形態5200では、別々のバイアス信号であるバイアスC、バイアスBおよびバイアスAが、VPAのプレドライバ、ドライバおよびPAステージにそれぞれ結合される。加えて、VPAの実施形態5200は、VPAの各ステージに電力供給するために使用される、電源信号(プレドライバVSUPPLY、ドライバVSUPPLY、および出力ステージVSUPPLY)を含む。実施形態では、これらの電源信号は、電圧制御された電源を使用して生成され、さらに、それらの各増幅ステージをバイアスするために使用することができ、それにより、VPAの全体の電力効率を制御するため、および、電力制御を行うための追加の機能性、ならびにVPAの他の機能がもたらされる。例えば、独立して制御されるとき、電源信号およびバイアス信号を使用して、異なる電源電圧およびバイアス点で、VPAの異なる増幅ステージを操作し、VPAのための幅広い出力電力ダイナミックレンジを可能にすることができる。実施形態では、電圧制御された電源を、可変電圧源を適切な増幅ステージに提供する電圧制御されたスイッチング電源など、連続的に変化する電力源として実装することができる。他の実施形態では、電圧制御された電源を、スイッチを使用して異なる電源電圧を提供することによって実装することができる。例えば、VPA出力ステージ、および/または任意選択のドライバステージ、および/または任意選択のプレドライバステージ電源を、所望の動作パラメータに応じて、3.3V、1.8Vおよび0Vの間でスイッチすることができる。
4.1.2)誤差補償および/または訂正
例示的VPAの実装は、VPAにおける誤差を監視かつ/または補償するための異なる手法を提供する。これらの誤差は、他の要因の中でも特に、VPAにおけるプロセスおよび/または温度変動、ベクトル変調回路における位相および振幅誤差、VPAの分岐におけるゲインおよび位相アンバランス、ならびに、MISO増幅器における歪み(例えば、上記のセクション3.4.5を参照)による場合がある。前述のVPAの実施形態では、この機能性の一部は、プロセス検出器回路(例えば、図7Aのプロセス検出器792、図12のプロセス検出器1282、図17のプロセス検出器1772)において実施された。これらの手法を、フィードフォワード、フィードバック、および、ハイブリッドフィードフォワード/フィードバック技術として分類することができ、例示的VPA実装を説明する以下のセクションでさらに論じるように、様々な方法で実装することができる。これらの誤差監視および補償手法の概念的説明を、これから提供する。
図54Aおよび54Bは、VPAにおける誤差を補償するためのフィードフォワード技術を大まかに例示するブロック図である。フィードフォワード技術は、VPA内のこれらの誤差を事前補償するために、VPAにおける期待誤差の先験的知識に依拠する。よって、フィードフォワード技術は、誤差測定フェーズ(典型的には、テストおよび特性化プロセスで行われる)、および、誤差測定結果を使用した事前補償フェーズを含む。
図54Aは、VPAの出力でのIデータおよびQデータにおける期待誤差を記述する、誤差テーブルまたは関数を生成するためのプロセス5400Aを例示する(誤差測定フェーズ)。このような誤差は典型的には、VPAにおける不完全性によるものである。プロセス5400Aは典型的には、VPA設計を完成させるより前にテスト室において行われ、受信器の出力で、VPAの入力でのIおよびQ値の範囲に対応するIおよびQ値を測定することを含む。典型的には、入力IおよびQ値は、360度極空間(polar space)の代表的範囲を生成するように、選択される(例えば、IおよびQ値を、30度の均一の間隔で選択してもよい)。続いて、入力IおよびQ値と出力IおよびQ値の間の誤差の差が計算される。例えば、特定のセットのIおよびQ入力値について、IおよびQを受信器の出力で測定した後、比較回路は、IerrorおよびQerrorとして、入力IおよびQ値と受信器出力IおよびQ値の間のIデータおよびQデータにおける差を計算する。IerrorおよびQerrorは、特定のセットのIおよびQ入力値についての、VPAの出力でのIおよびQにおける期待誤差を表す。
一実施形態では、受信器はVPAに統合されるか、あるいは、外部の較正および/またはテストデバイスによって提供される。別法として、受信器は、VPAを採用するデバイスにおける受信器モジュール(例えば、携帯電話における受信器)である。この代替実施形態では、VPA誤差テーブルおよび/またはフィードバック情報を、デバイスにおけるこの受信器モジュールによって生成することができる。
計算されたIerrorおよびQerror値は、期待IおよびQ誤差を表す誤差テーブルまたは関数を様々なIおよびQ入力値について生成するために使用される。実施形態では、計算されたIerrorおよびQerror値がさらに補間されて、IおよびQ入力値の拡張範囲についての誤差値が生成され、それに基づいて誤差テーブルまたは関数が生成される。
図54Bは、本発明の一実施形態によるフィードフォワード誤差事前補償(事前補償フェーズ)を例示する。例示のように、IおよびQ入力値は、VPAによる増幅より前に、誤差テーブルまたは関数によって決定されるようないずれかの期待IerrorおよびQerror値に対して訂正される。IおよびQ誤差事前補償をVPA内で、異なるステージで、かつ/または異なる温度で、かつ/または異なる動作パラメータで行ってもよい。図54Bの実施形態では、誤差訂正はVPAの増幅ステージより前に起こる。例えば、IおよびQ誤差訂正を、例えば、図12および17の伝達関数モジュール1216および1716など、VPAの伝達関数モジュールによって行ってもよい。IおよびQ誤差訂正をVPAの伝達関数モジュールにおいて実装するためのいくつかの方法が存在し、これには、ルックアップテーブルおよび/またはデジタル論理を使用して誤差関数を実装することが含まれる。典型的には、フィードフォワード技術は、例えば、測定フェーズにおいて生成されたデータを格納するために、RAMまたはNVRAMなど、データストレージを必要とする。
フィードフォワード技術とは対照的に、フィードバック技術は誤差を事前補償しないが、リアルタイム測定をVPAの出力内または出力で行い、例えば、プロセスまたは温度変動によるいかなる誤差または偏差をも検出する。図55は、本発明の実施形態による例示的デカルトフィードバック誤差訂正技術を概念的に例示するブロック図である。以下でさらに説明するように、図55は、受信器ベースのフィードバック技術を例示し、これにおいて、VPAの出力は、VPAにフィードバックされる前に、受信器によって受信される。本発明の実施形態による他のフィードバック技術を、さらに以下で説明する。フィードバック技術は、VPA内の異なるステージで行われる場合のあるこれらのリアルタイム測定を行うために、追加の回路を必要とする場合があるが、最小のデータストレージを必要とするか、あるいはデータストレージを必要としない。以下の例示的VPA実装の説明においてさらに説明するように、フィードバック誤差訂正のためのいくつかの実装が存在する。
ハイブリッドフィードフォワード/フィードバック技術は、フィードフォワードおよびフィードバック誤差事前補償および/または訂正コンポーネントを共に含む。例えば、ハイブリッドフィードフォワード/フィードバック技術は、誤差を事前補償してもよいが、低レートの周期的フィードバック機構を使用して、フィードフォワード事前補償を補ってもよい。
4.1.3)マルチバンドマルチモードVPA動作
例示的VPAの実装は、データ伝送のための複数の周波数バンド(例えば、クワッドバンド)、および/または、複数の技術モード(例えば、トライモード)を同時にサポートするための、いくつかのVPAアーキテクチャを提供する。これらのVPAアーキテクチャの利点は、本明細書に提供される教示に基づいて、当業者には明らかになるであろう。実施形態では、VPAアーキテクチャは、TDD(時分割多重)およびFDD(周波数分割多重)ベースの規格を共にサポートするために、単一のPA分岐を使用することを可能にする。他の実施形態では、VPAアーキテクチャは、典型的にはFDDベースの規格のために必要とされる、出力ステージ(例えば、断路器)での費用のかかる、電力が不十分なコンポーネントの除去を可能にする。例示のため、限定ではなく、様々な通信規格のための、下側および上側スペクトルバンドにおける周波数バンド割り当てが、図53において提供される。DCS1800(デジタルセルラーシステム1800)およびPCS1900(パーソナル通信サービス1900)バンドは、GSM−1800およびGSM−1900としても知られる、異なるGSMベースの実装をサポートすることができることに留意されたい。3G TDDバンドは、例えば、UMTS TDD(ユニバーサル移動電話システム)およびTD−SCDMA(Time Division−Synchronous Code Division Multiple Access)(時分割同期符号分割多重アクセス)など、第三世代の時分割多重規格のために割り当てられる。3G FDDバンドは、例えば、WCDMA(広帯域CDMA)など、第三世代の周波数分割多重規格のために割り当てられる。
本明細書の教示に基づいて、当業者には明らかになるように、例示的VPA実装によって可能にされる利点は、上述のものに加えて、様々な態様において存在する。以下では、例示的VPA実装のより詳細な説明を提供する。これには、VPAのデジタル制御回路の異なる実装の説明と、その後に続くVPAのアナログコアの異なる実装の説明が含まれる。本発明の実施形態は、本明細書に記載した特定の実装に限定されない。本明細書の教示に基づいて、当業者には理解されるように、例示的VPA実装において提供された特徴を結びつけることによって、いくつかの他のVPA実装が得られる場合がある。したがって、以下で説明する例示的VPA実装は、本発明の実施形態によるVPA実装の網羅的なリストを表すものではなく、本明細書に含まれた教示に基づく他の実装もまた本発明の範囲内である。例えば、あるデジタル制御回路を、ベースバンドプロセッサと共に統合あるいは結合することができる。加えて、直交生成器およびベクトル変調器など、あるアナログ制御回路を、デジタル制御回路を使用して実装することができる。一実施形態では、VPAシステムを、デジタル回路を使用して全体として実装することができ、ベースバンドプロセッサと完全に統合することができる。
4.2)デジタル制御モジュール
VPAのデジタル制御モジュールは、他の機能の中でも特に、信号生成、性能監視およびVPA動作制御のために使用される、デジタル回路を含む。セクション3では、デジタル制御モジュールの信号生成機能(すなわち、定包絡線信号の生成)を、例えば、実施形態700、1200および1700において、デジタル制御モジュールの伝達関数モジュール(状態マシン)を参照して、詳細に説明した。デジタル制御モジュールの性能監視機能には、VPAの動作における誤差を監視かつ訂正するための機能、および/または、VPAの異なるステージのバイアスを制御するための機能が含まれる。デジタル制御モジュールのVPA動作制御機能には、VPAの動作に関係する様々な制御機能(例えば、VPAモジュールの電源投入またはプログラミング)が含まれる。ある実施形態では、これらの制御機能は任意選択であってもよい。他の実施形態では、これらの制御機能は、デジタル制御モジュールを通じて、VPAに接続された外部プロセッサにとってアクセス可能である。他の実施形態では、これらの機能はベースバンドプロセッサまたは他のデジタル回路に統合される。上述のものに加えて、他の機能もまた、デジタル制御モジュールによって行われる。デジタル制御モジュールの機能および実装を、これからより詳細に提供する。
図56は、本発明の一実施形態によるデジタル制御モジュールの実施形態5600の大まかな例示である。デジタル制御モジュールの実施形態5600は、入力インタフェース5602、出力インタフェース5604、状態マシン5606、RAM(ランダムアクセスメモリ)5608、およびNVRAM(不揮発性RAM)5610を含む。実施形態では、Ram5608および/またはNVRAM5610は任意選択であってもよい。
入力インタフェース5602は、信号をデジタル制御モジュール5600に入力するための複数のバスおよび/またはポートを提供する。これらのバスおよび/またはポートには、例えば、IおよびQデータ信号、外部プロセッサによって提供された制御信号、および/またはクロック信号を入力するためのバスおよび/またはポートが含まれる。一実施形態では、入力インタフェース5602はI/Oバスを含む。別の実施形態では、入力インタフェース5602は、フィードバック信号をVPAのアナログコアから受信するためのデータバスを含む。別の実施形態では、入力インタフェース5602は、デジタル制御モジュール5600から値を読み出すためのポートを含む。一実施形態では、デジタル制御モジュール5600に接続された外部プロセッサ(例えば、ベースバンドプロセッサ)によって、値がデジタル制御モジュール5600から読み出される。
出力インタフェース5604は、信号をデジタル制御モジュール5600から出力するための複数の出力バスおよび/またはポートを提供する。これらの出力バスおよび/またはポートには、例えば、振幅情報信号(定包絡線信号を生成するために使用される)、バイアス制御信号(自己バイアス信号)、電圧制御信号(電源信号)、および出力選択信号を出力するためのバスおよび/またはポートが含まれる。
状態マシン5606は、デジタル制御モジュール5600の信号生成および/または性能監視機能に関係する様々な機能を行う。一実施形態では、状態マシン5606は、信号生成機能を行うために、セクション3で述べたような伝達関数モジュールを含む。別の実施形態では、状態マシン5606は、他のタイプの信号の中でも特に、バイアス制御信号、電力制御信号、ゲイン制御信号および位相制御信号を生成するためのモジュールを含む。別の実施形態では、状態マシン5606は、フィードフォワード誤差訂正システムにおいて誤差事前補償を行うためのモジュールを含む。
RAM5608および/またはNVRAM5610は、デジタル制御モジュール5600の任意選択のコンポーネントである。実施形態では、RAM5608およびNVRAM5610は、デジタル制御モジュール5600の外部に存在し、例えば、入力インタフェース5602を介してデジタル制御モジュール5600に接続されたデータバスを通じて、デジタル制御モジュール5600にとってアクセス可能である場合がある。RAM5608および/またはNVRAM5610は、特定のVPA実装に応じて、必要とされる場合も必要とされない場合もある。例えば、誤差事前補償のためにフィードフォワード技術を採用するVPA実装は、誤差テーブルまたは関数を格納するために、RAM5608またはNVRAM5610を必要とする場合がある。一方、誤差訂正のためのフィードバック技術は、状態マシンにおけるデジタル論理モジュールにのみ依拠する場合があり、RAM5608またはNVRAM5610ストレージを必要としない場合がある。同様に、RAM5608およびNVRAM5610ストレージの量は、特定のVPA実装によって決まる場合がある。典型的には、使用されるとき、NVRAM5610は、リアルタイムで生成されない、かつ/または、電源がオフにされるときに保持されなければならない、データを格納するために使用される。これには、例えば、VPAシステムのテストおよび特性化フェーズにおいて生成されたスカラ値および角度値など、誤差テーブルおよび/または誤差値、および/または、伝達関数モジュールによって使用されたルックアップテーブルが含まれる。
図57は、本発明の一実施形態による例示的デジタル制御モジュール実装5700を例示する。デジタル制御モジュール実装5700は特に、例示的VPAデジタル制御モジュール5700の例示的入力インタフェース5602および例示的出力インタフェース5604を例示する。以下でさらに説明するように、VPAデジタル制御モジュール5700の入力および出力インタフェース5602および5604の信号は、VPAのアナログコアからの信号、および/または、VPAに接続された1つまたは複数の外部プロセッサ/制御器へ/からの信号と、直接相関する。上記のセクションで説明した実施例の実施形態では、VPAのアナログコアは、例えば、図1EにおいてPAステージ190−{1,...,n}と共にアナログ回路186によって表された。図57における入力および出力インタフェースのデータバスおよび/または信号のビット幅は、例示のためにのみ提供され、限定するものではないことに留意されたい。
例示的デジタル制御モジュール5700の入力インタフェース5602は、A/D INバス5702、デジタルI/Oバス5704、および複数の制御信号5706〜5730を含む。他のデジタル制御モジュール実装では、入力インタフェース5602は、より多くのあるいはより少ないデータバス、プログラミングバス、および/または制御信号を含んでもよい。
A/D INバス5702は、フィードバック情報をVPAのアナログコアからデジタル制御モジュール5700へ搬送する。フィードバック情報は、他の機能の中でも特に、VPAの出力電力、および/または、VPAの分岐における振幅および/または位相変動を監視するために使用することができる。図57に例示するように、A/D変換器5732は、VPAのアナログコアから受信されたフィードバック情報を、A/D INバス5702上でデジタル制御モジュール5700へ送信する前に、(A/D IN信号5736を使用して)アナログからデジタルへ変換する。一実施形態では、デジタル制御モジュール5700は、A/D変換器5732のクロック信号A/D CLK5734を制御する。別の実施形態では、デジタル制御モジュール5700は、A/D変換器5732への入力セレクタを制御して、A/D変換器5732の入力で複数のフィードバック信号の間で選択する。一実施形態では、これは、A/D入力セレクタ信号5738〜5746を使用して行われる。
デジタルI/Oバス5704は、デジタル制御モジュール5700へ、あるいはそこからのデータおよび制御信号を、VPAに接続される場合のある1つまたは複数のプロセッサまたは制御器から、あるいはそこへ搬送する。一実施形態では、制御信号5706〜5730のいくつかは、デジタル制御モジュール5700に、デジタルI/Oバス5704上で期待する(あるいは、その上で存在する)情報のタイプを通知するために使用される。例えば、PC/(I/Q)n信号5724は、デジタル制御モジュール5700に対して、デジタルI/Oバス5704を介して電力制御情報を送信中であるか、I/Qデータを送信中であるかを指示する。同様に、I/Qn信号5720は、デジタル制御モジュール5700に対して、デジタルI/Oバス5704を介してIデータを送信中であるか、Qデータを送信中であるかを指示する。
VPAデジタル制御モジュール5700の入力インタフェース5602の他の制御信号には、デジタルEnable/Disablen5706、PRGM/RUNn5708、READ/WRITEn5710、CLK OUT5712、CLK_IN×2 Enable/Disablen5714、CLK_IN×4 Enable/Disablen5716、CLK_IN5718、TX/RXn5726、SYNTH PRGM/SYNTH RUNn5728、および、出力SEL/LATCHn5730が含まれる。
デジタルEnable/Disablen信号5706は、VPAの電源投入、リセットおよびシャットダウンを制御する。VPAを電源投入、リセットまたはシャットダウンするための信号は典型的には、VPAに接続されたプロセッサから来る。例えば、携帯電話で使用されるとき、携帯電話のベースバンドプロセッサまたは制御器は、VPAを受信モードでシャットダウンし、送信モードで使用可能にしてもよい。
PRGM/RUNn信号5708は、デジタル制御モジュール5700に対して、それがプログラミング中であるか、実行モードであるかを指示する。プログラミングモードでは、デジタル制御モジュール5700を、VPAの所望の動作を使用可能にするようにプログラムすることができる。例えば、デジタル制御モジュール5700のメモリ(RAM5608、NVRAM5610)ビットを、通信用に使用されるべき規格(例えば、WCDMA、EDGE、GSMなど)を指示するように、プログラムすることができる。デジタル制御モジュール5700のプログラミングは、デジタルI/Oバス5704を使用して行われる。
一実施形態では、VPAは、VPAを採用する最終製品またはデバイスにインストール(あるいは統合)された後、(部分的に、あるいは完全に)プログラムかつ/または再プログラムされる。例えば、携帯電話で使用されるとき、携帯電話が製造された後、(1)サポートされた波形、(2)電力制御、(3)高められた効率、および/または(4)電源投入およびパワーダウンプロファイルに関係する特徴など、新しい、追加の、修正された、あるいは異なる特徴を携帯電話に提供するために、VPAをプログラムすることができる。VPAをまた、ネットワークプロバイダによって望まれるように、波形または他の特徴を除去するようにプログラムすることもできる。
VPAのプログラミングは、支払いに基づくものにしてもよい。例えば、VPAを、エンドユーザによって選択かつ購入された特徴および機能拡張を含むようにプログラムしてもよい。
一実施形態では、VPAは、デバイスが製造された後、いずれかの周知の方法または技術を使用してプログラムされ、これには、それに限定されないが、(1)VPAを採用するデバイスのプログラミングインタフェースを使用した、VPAのプログラミング、(2)デバイスによって可読なメモリカード(例えば、携帯電話の場合、SIMカード)上にプログラミングデータを格納することによる、VPAのプログラミング、および/または(3)ネットワークプロバイダまたは他のソースによって無線でプログラミングデータをVPAへ転送することによる、VPAのプログラミングが含まれる。
READ/WRITEn信号5710は、デジタル制御モジュール5700に対して、デジタルI/Oバス5704を介して、データがデジタル制御モジュールストレージ(RAM5608またはNVRAM5610)から読まれるか、そこに書き込まれるかを指示する。データがデジタル制御モジュール5700から読み出されているとき、CLK OUT信号5712は、デジタルI/Oバス5704から読み取るためのタイミング情報を指示する。
CLK_IN信号5718は、基準クロック信号をデジタル制御モジュール5700へ提供する。典型的には、基準クロック信号は、VPAによってサポートされた通信規格に従って選択される。例えば、デュアルモードWCDMA/GSMシステムでは、基準クロック信号がWCDMAチップレート(3.84MHz)およびGSMチャネルラスタ(channel raster)(200KHz)の倍数であることが望ましく、19.2MHzは両方の最小公倍数としてよく知られているレートである。さらに、CLK_IN信号5718を、基準クロック信号の倍数にすることができる。一実施形態では、CLK_IN×2 Enable/Disablen5714、CLK_IN×4 Enable/Disablen5716を使用して、VPAデジタル制御モジュール5700に対して、基準クロックの倍数が提供されていることを指示することができる。
TX/RXn信号5726は、デジタル制御モジュール5700に対して、VPAを採用するシステム(例えば、携帯電話)がいつ送信または受信モードになりつつあるかを指示する。一実施形態では、デジタル制御モジュール5700は、システムがVPAの電源を投入するために送信モードになる直前に、通知を受ける。別の実施形態では、デジタル制御モジュール5700は、システムがスリープモードに入るため、あるいはVPAをシャットダウンするために受信モードになりつつあるとき、通知を受ける。
SYNTH PRGM/SYNTH RUNn信号5728は、基準周波数をVPAに提供する合成器(図59に示す合成器5918および5920など)をプログラムするために使用される。SYNTH PRGM5728が高いとき、VPAデジタル制御モジュール5700は、デジタルI/Oバス5704上で、合成器をプログラムするためのデータを受信することを期待することができる。典型的には、合成器のプログラミングは、VPA伝送周波数を選択するとき、必要とされる。SYNTH RUN5728が高くなるとき、合成器は実行するように命令される。合成器はVPAシステムと統合されてもよいし、外部コンポーネントまたはサブシステムとして提供されてもよい。
出力SEL/LATCHn信号5730は、伝送のために使用されるVPA出力を選択するために使用される。これは、VPAの出力の数に応じて、必要とされる場合も必要とされない場合もある。出力SEL5730が高くなるとき、デジタル制御モジュール5700は、デジタルI/Oバス5704上で出力を選択するためのデータを受信することを期待する。LATCH5730が高くなるとき、デジタル制御モジュール5700は、伝送のために使用されたVPA出力が、現行の送信シーケンスの期間中に保持される(変更することができない)ことを保証する。
例示的デジタル制御モジュール5700の出力インタフェース5604は、複数のデータバス(5748、5750、5752、5754、5756、5758、5760、5762、5764および5766)、プログラミングバス5799、および、複数の制御信号(5768、5770、5772、5774、5776、5778、5780、5782、5784、5786、5788、5790、5792、5794、5796および5798)を含む。デジタル制御モジュール5700の他の実施形態では、出力インタフェース5604は、より多くのあるいはより少ないデータバス、プログラミングバス、および/または制御信号を有してもよい。
データバス5752、5754、5756および5758は、VPAのアナログコアにおいてほぼ一定の包絡線信号を生成するために使用される、デジタル制御モジュール5700からのデジタル情報を搬送する。例示的デジタル制御モジュール5700は、4分岐VPAの実施形態(セクション3.1を参照)または2分岐VPAの実施形態(セクション3.3を参照)において使用される場合があることに留意されたい。例えば、データバス5752、5754、5756および5758によって搬送されたデジタル情報は、図7Aの実施形態における信号722、724、726および728、または、図17の実施形態における信号1720、1722、1724および1726に対応し、デジタル制御モジュール5700によって、(4分岐VPAの実施形態では)方程式(5)および(2分岐VPAの実施形態では)(18)に従って、生成される場合がある。データバス5752、5754、5756および5758によって搬送されたデジタル情報は、各デジタル−アナログコンバータ(DAC01〜04)を使用してデジタルからアナログへ変換されて、アナログ信号5753、5755、5757および5759がそれぞれ生成される。アナログ信号5753、5755、5757および5759は、以下でVPAアナログコア実装を参照してさらに説明するように、VPAのアナログコアにおけるベクトル変調器に入力される。一実施形態では、DAC01〜04は、デジタル制御モジュールによって提供されたベクトルMOD DAC CLK信号5770によって、制御かつ同期化される。さらに、DAC01〜04には、同じ中央基準電圧VREF_D信号5743が提供される。
データバス5760および5762は、VPAのPA増幅ステージおよびドライバ増幅ステージ(VPAの異なる増幅ステージの例示については、図52を参照)のための、バイアス電圧信号を生成するために使用される、デジタル制御モジュール5700からのデジタル情報を搬送する。別の実施形態では、プレドライバステージバイアス制御など、追加の制御機能が使用される。データバス5760によって搬送されたデジタル情報は、DAC_05を使用してデジタルからアナログへ変換されて、出力ステージバイアス信号5761が生成される。同様に、データバス5762によって搬送されたデジタル情報は、DAC_06を使用してデジタルからアナログへ変換されて、ドライバステージバイアス信号5763が生成される。出力ステージバイアス信号5761およびドライバステージバイアス信号5763は、例えば、実施形態5100Hに例示されたバイアス信号AおよびBに対応する。一実施形態では、DAC05および06は、自己バイアスDAC CLK信号5772を使用して制御かつ同期化され、同じ中央基準電圧VREF_E信号5745が提供される。
データバス5764および5766は、VPAの出力ステージおよびドライバステージのための電圧制御信号を生成するために使用される、デジタル制御モジュール5700からのデジタル情報を搬送する。データバス5764によって搬送されたデジタル情報は、DAC_07を使用してデジタルからアナログへ変換されて、出力ステージ電圧制御信号5765が生成される。同様に、データバス5766によって搬送されたデジタル情報は、DAC_08を使用してデジタルからアナログへ変換されて、ドライバステージ電圧制御信号5767が生成される。出力ステージ電圧制御信号5765およびドライバステージ電圧制御5767は、出力ステージおよびドライバステージのための電源電圧を生成するために使用され、VPAの出力ステージおよびドライバステージの電圧を制御するためのさらなる方法を提供する。一実施形態では、DAC07および08は、電圧制御DAC CLK信号5774を使用して制御かつ同期化され、同じ中央基準電圧VREF_F信号5747が提供される。
データバス5748および5750は、ゲインおよび位相バランス制御信号を生成するために使用される、デジタル制御モジュール5700からのデジタル情報を搬送する。一実施形態では、ゲインおよび位相バランス制御信号は、A/D INバス5702上でVPAのアナログコアから受信されたフィードバックゲインおよび位相情報に応答して生成される。データバス5748によって搬送されたデジタル情報は、DAC_09を使用してデジタルからアナログへ変換されて、アナログゲインバランス制御信号5749が生成される。同様に、データバス5750によって搬送されたデジタル情報は、DAC_10を使用してデジタルからアナログへ変換されて、アナログ位相バランス制御5751が生成される。ゲインおよび位相バランス制御信号5749および5751は、VPAのアナログコアにおけるゲインおよび位相を調節するための1つの機構を提供する。一実施形態では、DAC09および10は、バランスDAC CLK信号5768を使用して制御かつ同期化され、同じ中央基準電圧VREF_B5739が提供される。
プログラミングバス5799は、VPAのアナログコアにおいて1つまたは複数の周波数合成器をプログラムするために使用される、デジタル制御モジュール5700からのデジタル命令を搬送する。一実施形態では、プログラミングバス5799によって搬送されるデジタル命令は、SYNTH PRGM信号5728が高いとき、デジタルI/Oバス5704上で受信されたデータに従って生成される。周波数合成器をプログラムするためのデジタル命令には、選択された通信規格に従って周波数を生成するために適切な合成器(高バンドまたは低バンド)を設定するための命令が含まれる。一実施形態では、プログラミングバス5799は、3ワイヤプログラミングバスである。
上述のデータおよびプログラミングバスに加えて、出力インタフェース5604は複数の制御信号を含む。
アナログVPAコアの周波数合成器をプログラムするために使用される、プログラミングバス5799と共に、高バンドEnable/Disablenおよび低バンドEnable/Disablen制御信号5796および5798が、アナログVPAコアの高バンド周波数合成器および低バンド周波数合成器のうちどちらが使用可能/使用不可にされるかを制御するために、生成される。
制御信号5738、5740、5742、5744および5746は、VPAのアナログコアからのフィードバック信号を、A/D変換器5732のA/D IN入力信号5736上へ多重化するための、入力セレクタを制御する。一実施形態では、制御信号5738、5740、5744および5746は、A/D IN信号5736上での電力出力フィードバック信号、差動分岐振幅フィードバック信号、および差動分岐位相フィードバック信号の多重化を制御する。他のフィードバック信号は、他の実施形態において使用可能である場合がある。一実施形態では、フィードバック信号は、所定の多重化サイクルに従って多重化される。別の実施形態では、あるフィードバック信号はA/D IN信号5736によって周期的に搬送されるが、他のものはデジタル制御モジュールによってオンデマンドで要求される。
出力選択制御信号5776、5778、5780、5782および5784は、特定のVPA実装が異なる周波数バンドおよび/または技術モードについて複数の出力をサポートするとき、VPA出力を選択するために、デジタル制御モジュール5700によって生成される。一実施形態では、出力選択制御信号5776、5778、5780、5782および5784は、デジタル制御モジュール入力信号5730に従って生成される。図57の実施例の実装では、デジタル制御モジュール5700は、5つの異なるVPA出力のうち1つを選択するための5つの出力選択制御信号を提供する。一実施形態では、出力選択制御信号5776、5778、5780、5782および5784は、選択されたVPA出力に対応する回路の電源を投入し、残された選択されていないVPA出力に対応する回路の電源をオフにするために、VPAのアナログコア内の回路を制御する。実施形態では、いかなるときにも、出力選択制御信号5776、5778、5780、5782および5784は、VPAが送信モードであるとき、単一のVPA出力に対応する回路の電源が投入されることを保証する。異なるデジタル制御モジュールの実施形態は、特定のアナログコア実装によってサポートされたVPA出力の特定の数に応じて、より多くのあるいはより少ない出力選択制御信号を有してもよい。
ベクトルMOD高バンド/ベクトルMOD低バンドn制御信号5786は、VPAのアナログコアにおいてベクトル変調器の高バンド周波数変調セットが使用されるか、低バンド周波数変調セットが使用されるかを指示するために、デジタル制御モジュール5700によって生成される。一実施形態では、高バンドおよび低バンドベクトル変調器は異なる特性を有し、各セットが変調周波数の範囲により適切になることが可能となる。制御信号5786は、VPAの選択された出力に従って生成される。一実施形態では、制御信号5786は、選択されたセットのベクトル変調器の電源が投入されること、および、他のセットのベクトル変調器の電源がオフにされることを保証するために、VPAのアナログコア内の回路を制御する。別の実施形態では、制御信号5786は、補間フィルタのセットを、選択されたセットのベクトル変調器に結合するために、VPAのアナログコア内の回路を制御する。
3G高バンド/標準n制御信号5788は、VPAが幅広い範囲の高周波数バンドをサポートすることを可能にするために、必要であれば使用される場合のある任意選択の制御信号である。一実施形態では、制御信号5788は、アナログコアの出力ステージ回路を通じてより多くの電流を強制すること、および/または、VPAの出力インピーダンス特性を修正することを行ってもよい。
フィルタ応答1/フィルタ応答2n制御信号5790は、VPAのアナログコアにおいて補間フィルタの応答を動的に変更するために使用される場合のある、任意選択の制御信号である。これは、補間フィルタが異なる通信規格について異なる最適応答を有するとき、必要となる場合がある。例えば、最適フィルタ応答は、WCDMAまたはEDGEでは約5MHzの3dBコーナー周波数を有するが、この周波数はGSMでは約400KHzである。したがって、制御信号5790は、使用された通信規格に従って補間フィルタを最適化することを可能にする。
減衰器制御信号5792および5794は、追加の出力電力制御の特徴および機能を提供するために、必要であれば使用される場合のある任意選択の制御信号である。例えば、減衰器制御信号5792および5794を、VPAの出力上でRF減衰器を使用可能/使用不可にするように構成することができる。これらの減衰器は、シリコン、GaAsまたはCMOSプロセスを使用して製造することができる、特定のVPA実装に基づいて必要とされる場合がある。
図58は、本発明の一実施形態による別の例示的デジタル制御モジュール5800を例示する。例示的デジタル制御モジュール5800は、多くの点でデジタル制御モジュール5700に類似している。特に、両実施形態5700、5800は、同じ入力インタフェース5602、および、出力インタフェースのかなりの部分を有する(図58の出力インタフェースには、参照番号5604’というラベルが付けられる)。例示的実施形態5700および5800の間の違いは、フィードバック情報のタイプがデジタル制御モジュールに提供されることに関係する。具体的には、これら2つの実施形態5700および5800は、誤差訂正のための極めて異なるフィードバック機構により動作するように設計される。これらの機構をさらに以下でセクション4.3において、例示的アナログコア実装を参照して説明する。
例示的実装5800は、例示的実装5700に比較して、異なる入力選択制御信号5808、5810および5812を含む。入力選択制御信号5810および5812は、フィードバック情報がVPAの高バンドアナログ回路から受信されるか、低バンドアナログ回路から受信されるかを、どのバンドが使用中であるかに応じて制御する。入力選択制御信号I/Qn5808は、VPAのアナログコアからのIおよびQフィードバックデータの多重化を制御する。一実施形態では、制御信号5812は、A/D IN信号5736においてIデータとQデータの間の順次スイッチングを可能にする。
さらに例示的実施形態5700と区別して、例示的実施形態5800は追加のデータバス5802を含み、これは、自動ゲイン制御信号5806を生成するために使用されるデジタル制御モジュール5800からのデジタル情報を搬送する。自動ゲイン制御信号5806は、VPAのアナログコアにおけるフィードバック機構において使用された増幅器回路のゲインを制御するために使用される。フィードバック機構のこのコンポーネントのさらなる説明を、以下で提供する。一実施形態では、データバス5802によって搬送されたデジタル情報は、DAC_11によってデジタルからアナログへ変換されて、アナログ信号5806が生成される。DAC_11は、デジタル制御モジュールによって提供されたクロック信号5804によって制御され、VREF B信号5739が中央基準電圧として提供される。
例示的デジタル制御モジュール5700および5800は、デジタル制御モジュール実装において使用される場合のある典型的な入力および出力デジタル制御モジュール信号のいくつかを例示することに留意されたい。本明細書の教示に基づいて、当業者には理解されるように、VPAが使用されているシステム、および/または、デジタル制御モジュールと共に使用される特定のVPAアナログコアに応じて、より多くのあるいはより少ない入力および出力信号を使用してもよい。一実施形態では、例示的デジタル制御モジュール実装5700および5800を、フィードバックのみ、フィードフォワードのみ、または、フィードバックおよびフィードフォワードの両方の誤差訂正を使用するVPAアナログコアと共に使用してもよい。フィードフォワードのみの手法で使用されるとき、フィードバック素子および/または信号(例えば、A/D IN5702、制御信号5738、5740、5742、5744、5746、ゲインおよび位相バランス制御信号5749および5751)を、使用不可にしても取り除いてもよい。したがって、例示的デジタル制御モジュール実装5700および5800の変形形態は、本発明の実施形態の範囲内である。
4.3)VPAアナログコア
このセクションでは、VPAアナログコアの様々な例示的実装を提供する。以下で説明するように、様々な例示的実装は、多数のコンポーネント、回路、および/または信号を共有し、主な違いは、出力ステージアーキテクチャ、採用された誤差訂正フィードバック機構、および/または、チップ製造において使用される実際の半導体素材に関係する。本明細書の教示に基づいて、当業者には理解されるように、以下で説明する様々な例示的実装の間で特徴を交換、追加、かつ/または除去することによって、他のVPAアナログコア実装もまた考えられる。したがって、本発明の実施形態は、本明細書に記載した例示的実装に限定されない。
4.3.1)VPAアナログコア実装A
図59は、本発明の一実施形態によるVPAアナログコア実装5900を例示する。一実施形態では、アナログコア5900の入力信号は、直接的あるいは間接的に(DACを通じて)、デジタル制御モジュール5600の出力インタフェース5604からの出力信号に接続する。同様に、アナログコア5900からのフィードバック信号は、直接的あるいは間接的に(DACを通じて)、デジタル制御モジュール5600の入力インタフェースに接続する。例示のため、アナログコア5900は、図57および図59の両方において同じ番号の信号によって示されるように、デジタル制御モジュール5700に接続されるものとして図59に図示される。
アナログコア実装5900は、2分岐VPAの実施形態である。この実装5900は、しかし、本明細書の教示に基づいて当業者には明らかになるように、4分岐またはCPCPのVPAの実施形態へと容易に修正することができる。
大まかには、アナログコア5900は、データ信号をデジタル制御モジュール5700から受信するための入力ステージ、ほぼ一定の包絡線信号を生成するためのベクトル変調ステージ、および、所望のVPA出力信号を増幅かつ出力するための増幅出力ステージを含む。加えて、アナログコア5900は、アナログコアの異なるステージへの電力を制御かつ送達するための電源回路、任意選択の出力ステージ保護回路、および、VPAのデジタル制御モジュールへのフィードバック情報を生成かつ提供するための任意選択の回路を含む。
VPAアナログコア5900の入力ステージは、任意選択の補間フィルタバンク(5910、5912、5914および5916)、および、複数のスイッチ5964、5966、5968および5970を含む。アンチエイリアスフィルタとしての機能も果たす場合のある補間フィルタ5910、5912、5914および5916は、DAC01〜04のアナログ出力5753、5755、5757および5759を整形して、所望の出力波形を生成する。一実施形態では、補間フィルタ5910、5912、5914および5916の応答は、デジタル制御モジュール5700からの制御信号5790を使用して、動的に変更される。デジタル制御モジュール信号5790は、例えば、補間フィルタ5910、5912、5914および5916内のスイッチを制御して、フィルタ5910、5912、5914および5916内のアクティブ回路において変化を引き起こす(RC回路を使用可能/使用不可にする)場合がある。これは、補間フィルタ5910、5912、5914および5916が異なる通信規格について異なる最適応答を有するとき、必要となる場合がある。補間フィルタ5910、5912、5914および5916を、FIRフィルタまたはプログラマブルFIRフィルタなど、デジタル回路を使用して実装することができることに留意されたい。デジタルで実装されるとき、これらのフィルタをVPAシステム内に含めるか、あるいは、ベースバンドプロセッサと統合することができる。
続いて、スイッチ5964、5966、5968および5970を使用して、補間フィルタ5910、5912、5914および5916の出力が、VPAアナログコア5900の上側バンドパス5964または下側バンドパス5966のいずれかに接続するようにスイッチされる。上側および下側バンドパスの間のこの決定は通常、デジタル制御モジュール5700によって、VPAによる伝送のために選択された周波数範囲に基づいて行われる。例えば、下側バンドパス5966はGSM−900用に使用されるが、上側バンドパス5964はWCDMA用に使用される。一実施形態では、スイッチ5964、5966、5968および5970は、デジタル制御モジュール5700によって提供された、ベクトルMOD高バンド/ベクトルMOD低バンドn信号5786によって制御される。信号5786は、スイッチ5964、5966、5968および5970の各々を各第1または第2の入力に結合することを制御し、それにより、補間フィルタ5910、5912、5914および5916の出力をVPAアナログコア5900の上側パス5964または下側パス5966のいずれかに結合することを制御する。
VPAアナログコア5900のベクトル変調ステージは、アナログコア5900の上側バンドパス5964と下側バンドパス5966の間で分割された、複数のベクトル変調器5922、5924、5926および5928を含む。選択された動作のバンドに基づいて、上側バンドパスベクトル変調器(5922、5924)または下側バンドパスベクトル変調器(5926、5928)のいずれかがアクティブである。
一実施形態では、ベクトル変調器5922、5924または5926、5928の動作は、例えば、図17の実施形態におけるベクトル変調器1750および1752の動作に類似している。ベクトル変調器5922および5924(または、5926および5928)は、入力信号5919、5921、5923および5925(5927、5929、5931および5933)を、任意選択の補間フィルタ5910、5912、5914および5916からそれぞれ受信する。入力信号5919、5921、5923および5925(または、5927、5929、5931および5933)は、ベクトル変調器によって定包絡線信号を生成するために使用される振幅情報を含む。さらに、ベクトル変調器5922および5924(または、5926および5928)は、高バンドRF_CLK信号5935(低バンドRF_CLK信号5937)を、高バンド周波数合成器5918(低バンド周波数合成器5920)から受信する。高バンド周波数合成器5918(低バンド周波数合成器5920)は、任意選択でVPAアナログコアの外部あるいは内部に位置する。一実施形態では、高バンド周波数合成器5918(低バンド周波数合成器5920)は、RF周波数を1.7〜1.98GHzの上側バンド範囲(824〜915MHzの下側バンド範囲)で生成する。別の実施形態では、高バンド周波数合成器5918および低バンド周波数合成器5920は、デジタル制御モジュール信号5796および5798によってそれぞれ制御される。信号5796および5798は、例えば、選択された伝送周波数バンドに従って適切な周波数合成器の電源を投入し、選択された合成器に、選択された伝送周波数に従ってRF周波数クロックを生成するように命令する。
ベクトル変調器5922および5924(または、5926および5928)は、入力信号5919、5921、5923および5925(5927、5929、5931および5933)を、高バンドRF_CLK信号5935(低バンドRF_CLK信号5937)により変調する。一実施形態では、ベクトル変調器5922および5924(または、5926および5928)は、入力信号を、適切に導出かつ/または位相シフトされたバージョンの高バンドRF_CLK信号5935(低バンドRF_CLK信号5937)により変調し、生成された変調信号を結合して、ほぼ一定の包絡線信号5939および5941(5943および5945)を生成する。
別の実施形態では、ベクトル変調器5922および5924(または、5926および5928)はさらに、位相バランス制御信号5751をVPAデジタル制御モジュールから受信する。位相バランス制御信号5751は、ベクトル変調器5922および5924(または、5926および5928)を制御して、アナログコアからの位相フィードバック情報に応答して、定包絡線信号5939および5941(または、5943および5945)における位相において変化を引き起こす。振幅および位相フィードバック機構を、さらに以下で論じる。任意選択により、上側バンドパスベクトル変調器5922および5924はまた、3G高バンド/標準n信号5788をもデジタル制御モジュールから受信する。信号5788を、必要であれば、ベクトル変調器を上側バンドの最高周波数で駆動することをさらにサポートするために、使用することができる。
VPAアナログコア5900の出力ステージは、アナログコア5900の上側バンドパス5964と下側バンドパス5966の間で分割された、複数のMISO増幅器5930および5932を含む。選択された動作のバンドに基づいて、上側バンドパスMISO増幅器5930または下側バンドパスMISO増幅器5932のいずれかがアクティブである。
一実施形態では、MISO増幅器5930(または、5932)は、ほぼ一定の包絡線信号5939および5941(または、5943および5945)を、ベクトル変調器5922および5924(または、5926および5928)から受信する。MISO増幅器5930(または、5932)は、信号5939および5941(または、5943および5945)を個別に増幅して、増幅された信号を生成し、増幅された信号を結合して、出力信号5947(または、5949)を生成する。一実施形態では、MISO増幅器5930(または、5932)は、本明細書に記載するように、増幅された信号を、直結を介して結合する。本発明の実施形態による、増幅された信号を結合する他のモードは、セクション3において上述したものである。
VPAアナログコア5900の出力ステージは、マルチバンドマルチモードVPA動作をサポートすることができる。図59に示すように、出力ステージは、それぞれ上側バンドおよび下側バンド動作のための2つのMISO増幅器5930および5932を含む。加えて、上側バンド5964および下側バンド5966の各々の出力はさらに、選択された伝送モード(例えば、GSM、WCDMAなど)に従って、1つまたは複数の出力パスの間でスイッチされる。典型的には、異なる伝送モードについて別々の出力パスが必要とされ、これは、FDDベースのモード(例えば、WCDMA)は出力でデュプレクサの存在を必要とするが、TDDベースのモード(例えば、GSM、EDGE)はT/Rスイッチされた出力を有するからである。
アナログコア5900では、MISO増幅器5930の出力5947を、3つの出力パス5954、5956および5958のうち1つに結合することができ、各出力パス5954、5956、5958は、特定の伝送のモードのために、アンテナ(図示せず)またはコネクタ(図示せず)に結合されるものである。同様に、MISO増幅器5932の出力5949を、2つの出力パス5960および5962のうち1つに結合することができる。一実施形態では、デジタル制御モジュールによって提供された出力選択信号5776、5778、5780、5782および5784は、選択された伝送モードに基づいて、スイッチ5942および5944を制御して、アクティブMISO増幅器の出力を適切な出力パスに結合する。より多くのあるいはより少ない出力パス5954、5956、5958、5960および5962を使用してもよいことに留意されたい。
したがって、2つのMISO増幅器5930および5932のみにより、アナログコア5900は複数の異なる伝送モードをサポートする。一実施形態では、アナログコア5900は、単一のMISO増幅器を使用して、GSM、EDGE、WCDMAおよびCDMA2000をサポートすることを可能にする。したがって、実装5900によるこの例示的VPAアナログコアの利点の1つが、サポートされた出力パスごとのPAの数の低減にあることは、明らかである。これは、VPAアナログコア5900のために必要とされるチップ面積の低減に直接対応する。
一実施形態では、アナログコア5900の出力ステージは、任意選択の出力ステージ自己バイアス信号5761、ドライバステージ自己バイアス信号5763、およびゲインバランス制御信号5749を、デジタル制御モジュールから受信する。出力ステージ自己バイアス信号5761およびドライバステージ自己バイアス信号5763は、実際のMISO実装において使用されたトランジスタの特定のタイプに従って、必要とされる場合も必要とされない場合もある。一実施形態では、出力ステージ自己バイアス信号5761およびドライバステージ自己バイアス信号5763は、MISO増幅ステージのバイアスを制御して、VPAの電力出力および/または電力効率において変化を引き起こす。同様に、ゲインバランス制御信号5749は、デジタル制御モジュールによってアナログコアから受信された電力出力フィードバック情報に応答して、異なるMISO増幅ステージのゲインレベルにおいて変化を引き起こす場合がある。これらの任意選択の出力ステージ入力信号のさらなる考察を、以下で提供する。
一実施形態では、アナログコア5900の出力ステージは、任意選択のフィードバック信号をVPAのデジタル制御モジュール5700に提供する。典型的には、これらのフィードバック信号は、デジタル制御モジュール5700によって、VPAの分岐における振幅および位相変動を訂正するため、かつ/または、VPAの出力電力を制御するために使用される。アナログコア5900の特定の実装では、差動フィードバック手法は、出力ステージによって提供された差動分岐振幅信号5950および差動分岐位相信号5948を使用して、振幅および位相変動を監視するために採用される。さらに、出力電力監視は、MISO増幅器5930および5932の出力電力をそれぞれ測定する、信号PWR検出A5938およびPWR検出B5940を使用して提供される。いかなるときにもMISO増幅器5930および5932のうち1つのみをアクティブにすることができるので、一実施形態では、加算器5952を使用して、PWR検出A5938およびPWR検出B5940が共に加算されて、VPAの出力電力に対応する信号が生成される。
一実施形態では、出力ステージからのフィードバック信号は、デジタル制御モジュール5700によって制御された入力セレクタ5946を使用して多重化される。別の実施形態では、デジタル制御モジュール5700は、A/D入力セレクタ信号5738、5740、5742、5744および5746を使用して、入力セレクタ5946を制御し、受信されるフィードバック信号を選択する。フィードバック信号の監視は、リアルタイムのレートで起こる必要はない場合があり、周期的に低レートで行われることのみが必要である場合があることに留意されたい。例えば、分岐振幅および位相誤差訂正のために、フィードバック監視が行われるレートは、デジタル制御モジュールにおいて行われているフィードフォワード訂正の度合い、温度によるプロセス変動、または、変化するバッテリまたは電源電圧などの動作変化など、いくつかの要因によって決まる。
上記で、フィードフォワードおよびフィードバック誤差補償および/または訂正技術の間のトレードオフを説明した。したがって、フィードバック監視が行われるレートを左右するパラメータは、典型的にはVPAの実際の設計者によって選択される、設計上の選択である。結果として、アナログコア実装5900を、デジタル制御モジュールにおけるいかなるフィードフォワード訂正をも使用不可にすることによる純粋なフィードバック実装として、フィードバック信号の監視を使用不可にすることによる純粋なフィードフォワード実装、あるいは、可変フィードフォワード/フィードバック利用を有するハイブリッドフィードフォワード/フィードバック実装として、動作するようにプログラムすることができる。
一実施形態では、アナログコア5900の出力ステージは、任意選択の出力ステージ保護回路を含む。図59では、これは、MISO増幅器5930および5932にそれぞれ結合された、VSWR(電圧定在波比)保護回路5934および5936を使用して例示される。VSWR保護回路5934、5936は、実際のMISO増幅器の実装に応じて、必要とされる場合も必要とされない場合もある。一実施形態では、VSWR保護回路5934および5936は、出力電圧レベルが出力ステージ絶縁破壊電圧を超えさせる可能性があるとき、出力ステージPA(例えば、図60のPA6030および6032を参照)を、熱シャットダウンまたはデバイス絶縁破壊になることから保護する。従来のシステムでは、これは、RF断路器をPAの出力で使用することによって達成され、費用もかかり、損失も多い(典型的には、約1.5dBの電力損失を引き起こす)。したがって、VSWR保護回路5934、5936は、出力ステージでの断路器の必要性をなくし、さらに、VPAのコスト、サイズおよび電力損失を低減する。一実施形態では、VSWR保護回路5934、5936は、WCDMAをサポート可能な、断路器なしの出力ステージを使用可能にする。VSWR保護回路5934および5936はまた、VPAを損なうことなく、VPAがいかなるVSWRレベルにも動作できるようにする。VSWR保護回路を、VPAの特定の実装の最大出力電力をいかなるVSWRレベルにも送達するように、設計することができる。
上述のように、アナログコア5900は、アナログコア5900の異なるステージへの電力を制御かつ送達するための電源回路を含む。一態様では、電源回路は、VPAアナログコア5900のアクティブ部分の電源を投入するための手段を提供する。別の態様では、電源回路は、VPAの電力効率および/または出力電力を制御するための手段を提供する。
アナログコア実装5900では、電源回路は、MA電源5902、ドライバステージ電源5904、出力ステージ電源5906、およびベクトルMods電源5908を含む。一実施形態では、電源回路は、デジタル制御モジュール5700によって提供された出力選択信号5776、5778、5780、5782および5784によって制御される。
MA電源5902は、VPAアナログコア5900のアクティブ部分の電源投入を制御するための回路を提供する。アナログコア5900では、MA電源5902は、2つの出力、MA1 VSUPPLY5903およびMA2 VSUPPLY5905を有する。いかなるときにも、MA1 VSUPPLY5903またはMA2 VSUPPLY5905のうち1つのみがアクティブであり、VPAアナログコア5900の上側バンド5964または下側バンド5966部分のみの電源が投入されることを保証する。一実施形態では、MA電源5902のアクティブ出力が、後述のような固有の電源信号を有する回路を除いて、VPAアナログコア5900のすべてのアクティブ回路に結合される。MA電源5902は、出力選択信号をデジタル制御モジュールから受信し、これは、出力信号MA1 VSUPPLY5903またはMA2 VSUPPLY5905の一方または他方を、VPAの選択された出力に基づいて使用可能にする。
ドライバステージ電源5904は、電力をMISO増幅器5930、5932のドライバステージ回路へ提供するための回路を含む。MA電源5902と同様に、ドライバステージ電源5904は、2つの出力、MA1ドライバVSUPPLY5907およびMA2ドライバVSUPPLY5909を有し、いかなるときにも2つの出力のうち1つのみがアクティブである。ドライバステージ電源5904もまた、VPAの選択された出力に従って、出力選択信号5776、5778、5780、5782および5784によって制御される。加えて、ドライバステージ電源5904は、ドライバステージ電圧制御信号5767をデジタル制御モジュール5700から受信する。一実施形態では、これらの出力、MA1ドライバVSUPPLY5907およびMA2ドライバVSUPPLY5909は、受信されたドライバステージ電圧制御信号5767に従って生成される。別の実施形態では、ドライバステージ電圧制御信号5767は、ドライバステージ電源5904に、MA1ドライバVSUPPLY5907またはMA2ドライバVSUPPLY5909を増減させて、ドライバステージ電力増幅レベルを制御する。別の実施形態では、ドライバステージ電圧制御信号5767は、デジタル制御モジュール5700によって使用されて、アクティブMISO増幅器5930または5932のドライバステージの電源電圧において、ドライバステージ電源5904を使用して、変化に影響を及ぼし、それによりVPAの電力効率を制御する。
出力ステージ電源5906は、電力をMISO増幅器5930、5932のPAステージ回路へ提供するための回路を含む。MA電源5902と同様に、出力ステージ電源5906は、2つの出力、MA1出力ステージVSUPPLY5911およびMA2出力ステージVSUPPLY5913を有し、いかなるときにも2つの出力のうち1つのみがアクティブである。出力ステージ電源5906もまた、VPAの選択された出力に従って、出力選択信号5776、5778、5780、5782および5784によって制御される。加えて、出力ステージ電源5906は、出力ステージ電圧制御信号5765をデジタル制御モジュール5700から受信する。一実施形態では、これらの出力、MA1出力ステージVSUPPLY5911およびMA2出力ステージVSUPPLY5913は、受信された出力ステージ電圧制御信号5765に従って生成される。別の実施形態では、出力ステージ電圧制御信号5765は、出力ステージ電源5906に、MA1出力ステージVSUPPLY5911またはMA2出力ステージVSUPPLY5913を増減させて、PAステージ電力増幅レベルを制御する。別の実施形態では、出力ステージ電圧制御信号5765は、デジタル制御モジュール5700によって使用されて、アクティブMISO増幅器5930または5932のPAステージの電源電圧において、出力ステージ電源5906を使用して、変化に影響を及ぼし、それによりVPAの電力効率を制御する。
ベクトルMods電源5908は、アナログコア5900のベクトル変調器5922、5924、5926および5928へ電力を提供するための回路を含む。アナログコア5900では、ベクトルMods電源5908は、上側バンドベクトル変調器5922および5924、ならびに、下側バンドベクトル変調器5926および5928の電源をそれぞれ投入するための、2つの出力5915および5917を有する。いかなるときにも、出力5915または5917のうち1つのみがアクティブであり、アナログコア5900の上側バンドまたは下側ベクトル変調器のみの電源が投入されることを保証する。ベクトルMods電源5908は、ベクトルmod選択信号5786をデジタル制御モジュール5700から受信し、これは、選択された伝送周波数要件に従って、その2つの出力5915および5917のうちどちらがアクティブであるかを制御する。
上述の電源回路に加えて、アナログコア5900は任意選択で電圧基準生成器回路を含んでもよい。電圧基準生成器回路は、VPAアナログコア5900の外部に存在しても内部に存在してもよい。電圧基準生成器回路は、VPA内の異なる回路のための基準電圧を生成する。一実施形態では、図57に例示するように、電圧基準生成器回路は基準電圧を、デジタル制御モジュールのデータ出力に結合されたDAC01〜10に提供する。別の実施形態では、図59に例示するように、電圧基準生成器回路は基準電圧を、VPAアナログコアにおける補間フィルタおよび/またはベクトル変調器に提供する。一実施形態では、VPAの同じ分岐の回路には、同じ基準電圧が提供される。例えば、VPA分岐またはデータパスを表す、DAC01および02、補間フィルタ5910および5912、ならびに、ベクトル変調器5922および5924はすべて、同じ基準電圧VREF_C5741を共有することに留意されたい。異なる実装およびシステム性能要件では、電圧基準信号を、単一の基準電圧または複数の基準電圧として提供することができる。
図60は、VPAアナログコア実装5900による出力ステージの実施形態6000を例示する。出力ステージの実施形態6000は、MISO増幅器ステージ6058、任意選択の出力スイッチングステージ(スイッチ6044によって実施される)、ならびに、任意選択の出力ステージ保護および電力検出回路を含む。
一実施形態では、MISO増幅器ステージ6058は、アナログコア5900におけるMISO増幅器5930に対応する。したがって、MA VSUPPLY信号6006、MAドライバVSUPPLY信号6004、およびMA出力ステージVSUPPLY信号6002は、図59の信号5903、5907および5911にそれぞれ対応する。同様に、MA IN1およびMA IN2入力信号6008および6010、ならびに、MA出力信号6046、6048および6050は、図59のMISO入力信号5939および5941、ならびに、出力信号5954、5956および5958にそれぞれ対応する。PWR検出信号6023は、図59のPWR検出A信号5938に対応する。(一般に、MISO増幅器5932の実装もまた、図60のMISO増幅器ステージ6058に基づくようにすることができる。)
実施形態6000におけるMISO増幅器ステージ6058は、プレドライバ6012および6014によって実施されたプレドライバ増幅ステージ、ドライバ6018および6020によって実施されたドライバ増幅ステージ、ならびに、出力ステージPA6030および6032によって実施されたPA増幅ステージを含む。一実施形態では、ほぼ一定の包絡線入力信号MA IN1 6008およびMA IN2 6010は、PAステージの出力で加算される前に、MISO増幅器6058の各ステージで増幅される。
一実施形態では、MISO増幅器ステージ6058は、電圧制御された電源回路によって提供された電源信号によって電力供給される。図59を参照して上述したように、電源信号は、VPAアナログコア5900の電源回路によって生成される。一実施形態では、電源信号は、MISO増幅器ステージ6058の異なる増幅ステージの電源電圧を制御し、それにより、様々な動作条件下でVPAの電力効率に影響を及ぼすために使用される。別の実施形態では、電源信号は、MISO増幅器ステージ6058の異なる増幅ステージの各々のゲインを制御し、それにより、電力制御機構を可能にするために使用される。さらに、電源信号を互いに独立して制御し、MISO増幅器ステージ6058の異なる増幅ステージの各々のための電力および/または効率の独立制御を可能にすることができる。この独立制御は、例えば、VPAの所望の出力電力に従って、MISO増幅器6058の1つまたは複数の増幅ステージを遮断することを可能にする。図60では、電源信号は、信号6002、6004および6006を使用して例示される。
一実施形態では、MISO増幅器ステージ6058はバイアス制御回路を含む。バイアス制御回路は、特定のMISO増幅器の実装によって、任意選択であってもよい。一実施形態では、バイアス制御回路は、MISO増幅器6058の各増幅ステージの効率および/または電力を制御するための機構を提供する。この機構は、電源信号を参照して上述した機構から独立している。さらに、この機構は、各増幅ステージを独立して、かつ個別に制御することを提供する。図60では、バイアス制御回路は、ゲインバランス制御回路6016、ドライバステージ自己バイアス回路6022、および出力ステージ自己バイアス回路6028を使用して例示される。
一実施形態では、ゲインバランス制御回路6016は、図60に例示するように、プレドライバ増幅ステージの入力に結合される。ゲインバランス制御回路6016は、ゲインバランス制御信号5749をデジタル制御モジュール5700から(DACを通じて)受信し、入力バイアス制御信号6013および6015を出力する。ドライバステージ自己バイアス回路6022は、図60に例示するように、ドライバ増幅ステージの入力に結合される。ドライバステージ自己バイアス回路6022は、ドライバステージ自己バイアス信号5763をデジタル制御モジュール5700から(DACを通じて)受信し、入力バイアス制御信号6017および6019を出力する。同様に、出力ステージ自己バイアス回路6028は、図60に例示するように、PA増幅ステージの入力に結合される。出力ステージ自己バイアス回路6028は、出力ステージ自己バイアス信号5761をデジタル制御モジュール5700から(DACを通じて)受信し、入力バイアス制御信号6029および6031を出力する。
一実施形態では、デジタル制御モジュール5700は、MISO増幅器6058のプレドライバステージ、ドライバステージおよびPAステージのバイアスを、ゲインバランス制御信号5749、ドライバステージ自己バイアス信号5763、および出力ステージ自己バイアス信号5761をそれぞれ使用して、独立制御する。別の実施形態では、デジタル制御モジュール5700は、ゲインバランス制御信号5749のみを使用して、MISO増幅器6058のプレドライバステージ、ドライバステージおよび/またはPAステージのバイアスにおける変化に影響を及ぼす場合がある。図60に例示するように、ゲインバランス制御回路6016は、ドライバステージ自己バイアス回路6022および出力ステージ自己バイアス回路6028に結合される。一実施形態では、VPAの全体のゲインにおける変化は、デジタル制御モジュール5700によって、最初にプレドライバステージでバイアスを制御することによって、影響を受ける。さらなるゲイン変化が必要とされる場合、バイアス制御はドライバステージで、続いてPAステージで行われる。
一実施形態では、MISO増幅器ステージ6058は、誤差訂正および/または補償フィードバック機構を可能にするための回路を含む。出力ステージの実施形態6000では、差動フィードバック機構が採用され、それにより、差動分岐振幅測定回路6024および差動分岐位相測定回路6026はそれぞれ、MISO増幅器6058の分岐の間の振幅および位相における差を測定する。一実施形態では、差動分岐振幅測定回路6024および差動分岐位相測定回路6026は、MISO増幅器6058のPAステージ(PA6030および6032)の入力で結合される。他の実施形態では、回路6024および6026は、MISO増幅器6058の以前のステージの入力で結合されてもよい。一実施形態では、差動分岐振幅測定回路6024および差動分岐位相測定回路6026は、差動分岐振幅信号5950および差動分岐位相信号5948をそれぞれ出力し、これらがデジタル制御モジュール5700へ(A/D変換器を通じて)フィードバックされる。デジタル制御モジュール5700は、いずれかの特定のときに、MISO増幅器6058の分岐の間の振幅および/または位相における正しい差を知っているので、差動分岐振幅信号5950および差動分岐位相信号5948に基づいて、振幅および/または位相におけるいかなる誤差をも決定することができる。
出力ステージの実施形態6000は、任意選択の出力ステージ保護回路を含む。出力ステージ保護回路は、特定のMISO増幅器の実装によって、必要とされる場合も必要とされない場合もある。図60では、出力ステージ保護回路は、VSWR保護回路6034を使用して例示される。一実施形態では、VSWR保護回路6034は、PAステージの出力を監視し、MISO増幅器6058のゲインを制御して、PA6030および6032を保護する。実施形態6000では、VSWR保護回路6034は信号6036を受信し、これはPAステージの出力へ、直接的あるいは間接的に結合される。一実施形態では、VSWR保護回路6034は、PAステージの出力での電圧レベルがあるレベルより低いままであることを保証して、PA6030および6032が熱シャットダウンになること、または、デバイス絶縁破壊を経験することを防止する。一実施形態では、VSWR保護回路6034は、PA6030および6032の絶縁破壊電圧が超えられないことを保証する。したがって、PA6030および6032の出力での電圧レベルが所定のしきい値より上であるかどうかにかかわらず、VSWR保護回路6034は、MISO増幅ステージのゲインの低減を引き起こす場合がある。一実施形態では、VSWR保護回路6034はバランスゲイン制御回路6016に結合され、これはドライバステージ自己バイアス回路6022および出力ステージ自己バイアス回路6028の両方に結合される。一実施形態では、VSWR保護回路6034は、最初にプレドライバステージで、次いでドライバステージで、最後にPAステージで、ゲインを低減することによって、出力ステージPAでの所定の電圧レベルに対応する。上述のように、VSWR保護回路6034は、特定のMISO増幅器の実装によって、必要とされる場合も必要とされない場合もある。例えば、GaAs(ガリウムヒ素)MISO増幅器の実装はVSWR保護回路を必要とせず、これは、GaAsトランジスタの典型的な絶縁破壊電圧が大きすぎて、多数のRFシナリオにおいて超えられないためである。
出力ステージの実施形態6000は、任意選択の電力検出回路を含む。一実施形態では、電力検出回路は、電力レベルフィードバックをデジタル制御モジュールへ提供するための手段としての機能を果たす。図60では、電力検出回路は、電力検出回路6038を使用して例示される。一実施形態では、電力検出回路6038は、MISO増幅器6058のPAステージの出力で結合される。電力検出回路6038は、図60において信号6040によって例示したように、PAステージの出力へ直接的に結合されても間接的に結合されもよい。一実施形態では、電力検出回路6038はPWR検出信号6023を出力する。PWR検出信号6023は、図59に示したPWR検出A信号5938またはPWR検出B信号5940に相当する場合があり、これらは(A/D変換器を通じて)VPAのデジタル制御モジュールにフィードバックされる。デジタル制御モジュールは、PWR検出信号6023を使用して、VPAの出力電力を望むように調節する。
出力ステージの実施形態6000の任意選択の出力スイッチングステージは、図60のスイッチ6044によって実施される。一実施形態では、スイッチ6044は、VPAの3つの出力6046、6048または6050のうち1つに結合される。前述のように、このスイッチは、デジタル制御モジュールによって提供された出力選択信号5776、5778および5780のセットによって制御される。スイッチ6044は、選択伝送モードおよび/または所望の出力周波数要件(例えば、GSM、WCDMAなど)に従って、適切な出力に結合される。
したがって、VPAの出力でのプルアップインピーダンス結合を、様々な方法で行うことができる。一実施形態では、図60に示すように、プルアップインピーダンス6052、6054および6056は、出力6046、6048および6050とMA出力ステージVSUPPLY6002の間に、それぞれ結合される。別の実施形態では、単一のプルアップインピーダンスが使用され、PAステージの出力6042とMA出力ステージVSUPPLY6002の間に結合される。第1の手法の利点は、プルアップインピーダンスをスイッチ6044の後に配置することによって、インピーダンス6052、6054および/または6056のための値を選択するとき、スイッチ6044のインピーダンス特性を考慮に入れることができ、VPA設計者がVPAの効率を増大させるためのさらなる態様を開発することが可能となることにある。一方、第2の手法は、より少数のプルアップインピーダンスを必要とする。
特定のMISO増幅器の実装によって、出力ステージの実施形態6000は、図60に例示されるものより多くのあるいはより少ない回路を含んでもよい。
本発明の実施形態によれば、MISO増幅器ステージ6058、任意選択の出力スイッチングステージ(スイッチ6044)、ならびに任意選択の出力保護および電力検出回路を含む、出力ステージの実施形態6000を、SiGe(シリコンゲルマニウム)材料を使用して製造してもよい。別の実施形態では、MISO増幅器ステージ6058は、SiGeを使用して製造され、出力スイッチングステージは、GaAsを使用して製造される。別の実施形態では、PAステージ(PA6030および6032)および出力スイッチングステージは、GaAsを使用して製造されるが、MISO増幅器ステージ6058の他の回路および出力ステージの任意選択の回路は、SiGeを使用して製造される。別の実施形態では、PAステージ、ドライバステージ、および出力スイッチングステージは、GaAsを使用して製造されるが、MISO増幅器ステージ6058の他の回路および出力ステージの任意選択の回路は、SiGeを使用して製造される。別の実施形態では、PAステージ、ドライバステージ、プレドライバステージ、および出力スイッチングステージは、GaAsを使用して製造される。別の実施形態では、VPAシステムは、SiGeまたはGaAs材料において実装することができる出力ステージ(6030または6032)を除いて、すべての回路について、CMOSを使用して実装されてもよい。別の実施形態では、VPAシステムは、全体としてCMOSにおいて実装されてもよい。当業者には理解できるように、出力ステージの回路のために使用される製造材料の他の変形形態および/または組み合わせも可能であり、したがって、これも本発明の実施形態の範囲内である。
したがって、異なる半導体材料は異なるコストおよび性能を有するので、本発明の実施形態は、幅広い範囲のコストおよび性能オプションを包含する、様々なVPA設計を提供する。
4.3.2)VPAアナログコア実装B
図61は、本発明の一実施形態による代替VPAアナログコア実装6100を例示する。例示のため、VPAアナログコア6100を図61において、デジタル制御モジュール5700に接続されるものとして図示するが、別法として、他のデジタル制御モジュールを使用することができる。アナログコア6100とデジタル制御モジュール実装5700の間の物理的接続は、図57および61の両方において同じ番号の信号によって示されるように、図61に例示される。
アナログコア実装6100は、2分岐VPAの実施形態に対応する。この実装は、しかし、本明細書の教示に基づいて当業者には明らかになるように、4分岐またはCPCPのVPAの実施形態へと容易に修正することができる。
アナログコア実装6100は、上述のアナログコア実装5900と同じ入力ステージおよびベクトル変調ステージを有する。したがって、アナログコア実装5900と同様に、アナログコア6100は、VPAの上側バンドおよび下側バンド動作のための上側バンドパス5964および下側バンドパス5966をそれぞれ含む。
アナログコア5900とアナログコア6100の間の違いの1つは、VPAの出力ステージにある。2つのMISO増幅器5930および5932を含むアナログコア5900の出力ステージとは対照的に、アナログコア6100の出力ステージは、アナログコアの上側バンドパス5964と下側バンドパス5966の間で分割された、5つのMISO増幅器6126、6128、6130、6132および6134を含む。一実施形態では、出力ステージは、SiGeおよびGaAsのMISO増幅器の組み合わせを含む。一実施形態では、上側バンドパス5964は、3つのMISO増幅器6126、6128および6130を含み、下側バンドパス5966は、2つのMISO増幅器6132および6134を含む。選択された動作のバンドに基づいて、上側バンドパス5964または下側バンドパス5966のいずれかにおいて、単一のMISO増幅器がアクティブである。一実施形態では、MISO増幅器6126、6128、6130、6132および6134の各々を、VPAの単一の伝送モード(例えば、WCDMA、GSM、EDGEなど)専用にすることができる。これは、MISO増幅器5930および5932の各々が複数の伝送モードをサポートするアナログコア5900とは対照的である。各アーキテクチャの利点および欠点を、さらに以下で論じる。
パスごとの複数のMISO増幅器を有する結果として、アナログコア6100において、ベクトル変調ステージをMISO増幅器に結合するために、スイッチングステージが必要となる。図61では、これは、スイッチ6118、6120、6122および6124を使用して例示される。一実施形態では、選択された伝送モードに従って、スイッチ6118および6120は、ベクトル変調器5922および5924の出力5939および5941を、MISO増幅器6126、6128および6130のうち1つに結合する。同様に、スイッチ6122および6124は、選択された伝送モードおよび/または周波数要件に従って、出力5943および5945を、MISO増幅器6132および6134のうち1つに結合する。
一実施形態では、MISO増幅器6126(または、6128、6130、6132、6134)は、定包絡線信号6119および6121(または、6123および6125、6127および6129、6131および6133、6135および6137)を受信する。MISO増幅器6126(または、6128、6130、6132、6134)は、信号6119および6121(または、6123および6125、6127および6129、6131および6133、6135および6137)を個別に増幅して、増幅された信号を生成し、増幅された信号を結合して、出力信号6142(6144、6146、6148、6150)を生成する。一実施形態では、MISO増幅器6126(または、6128、6130、6132、6134)は、本明細書に記載するように、増幅された信号を、直結を介して結合する。本発明の実施形態による、増幅された信号を結合する他のモードは、セクション3において上述したものである。
VPAアナログコア6100の出力ステージは、マルチバンドマルチモードVPA動作をサポートすることができる。さらに、アナログコア6100の出力ステージは、サポートされた各伝送モード用の1つのMISO増幅器の専用となることができるので、出力スイッチングステージ(アナログコア5900においてスイッチ5942および5944によって実施された)を取り除くことができる。これは、より効率的な出力ステージ(スイッチングステージによる電力損失がない)の結果となるが、より大きいチップ面積を犠牲にする。これは、アナログコア5900のアーキテクチャとアナログコア6100のアーキテクチャの間の主なトレードオフを要約するものである。
一実施形態では、アナログコア6100の出力ステージは、任意選択のバイアス制御信号をデジタル制御モジュール5700から受信する。これらは、出力ステージ自己バイアス信号5761、ドライバステージ自己バイアス信号5763、およびゲインバランス制御信号5749であり、アナログコア5900を参照して上述したものである。
一実施形態では、アナログコア6100の出力ステージは、任意選択のフィードバック信号をVPAのデジタル制御モジュール5700に提供する。これらのフィードバック信号には、アナログコア5900を参照して上述した、差動分岐振幅信号5950および差動分岐位相信号5948が含まれて、差動フィードバック手法がVPAの分岐における振幅および位相変動を監視できるようにする。また、アナログコア5900と同様に、出力電力監視は、PWR検出信号6152、6154、6156、6158および6160を使用して提供され、その各々は、VPAの出力6142、6144、6146、6148および6150のうち1つを測定する。いかなるときにもVPA出力のうち1つのみをアクティブにすることができるので、一実施形態では、加算器5952を使用して、PWR検出信号6152、6154、6156、6158および6160が共に加算されて、VPAの現行出力電力に対応する信号が生成される。
アナログコア5900と同様に、出力ステージからのフィードバック信号は、デジタル制御モジュールによって制御された入力セレクタ5946を使用して多重化される。フィードバック信号の多重化の他の態様は、アナログコア5900を参照して上述されている。
アナログコア5900と同様に、アナログコア6100を、デジタル制御モジュールにおけるいかなるフィードフォワード訂正をも使用不可にすることによる純粋なフィードバック実装として、フィードバック信号の監視を使用不可にすることによる純粋なフィードフォワード実装、あるいは、可変フィードフォワード/フィードバック利用を有するハイブリッドフィードフォワード/フィードバック実装として、動作するように設計することができる。
一実施形態では、アナログコア6100の出力ステージは、任意選択の出力ステージ保護回路を含む。図61では、これは、MISO増幅器6128、6130および6134にそれぞれ結合された、VSWR(電圧定在波比)保護回路6136、6138および6140を使用して例示される。VSWR保護回路は、実際のMISO増幅器の実装に応じて、必要とされる場合も必要とされない場合もある。例えば、GaAs増幅器であるMISO増幅器6126および6132は、多数の応用例についてVSWR保護回路を必要としないことに留意されたい。本発明の実施形態によるVSWR保護回路の機能および利点は、アナログコア5900を参照して上述されている。
アナログコア6100は、そのアナログコアの異なるステージへの電力を制御かつ送達するための電源回路を含む。一態様では、電源回路は、VPAアナログコアのアクティブ部分の電源を投入するための手段を提供する。別の態様では、電源回路は、VPAの電力効率および/または出力電力を制御するための手段を提供する。
アナログコア6100の電源回路は、アナログコア5900の電源回路とほぼ類似であり、違いは、アナログコア5900では2つのであるのに対して、アナログコア6100は5つのMISO増幅器を含むことである。図61では、電源回路は、GMAおよびMA電源回路6102、ドライバステージ電源回路5904、出力ステージ電源回路5908およびベクトルMods電源回路5908において実施される。回路6102、5904および5906の各々は、5つの出力電源信号を有し、VPAのアクティブMISO増幅器によって、これらの5つの出力信号のうち単一のものがいかなるときにもアクティブである。アナログコア6100の電源回路の機能および動作は、上述のアナログコア5900の電源回路のものとほぼ類似である。
図62は、VPAアナログコア実装6100による出力ステージの実施形態6200を例示する。出力ステージの実施形態6200は、MISO増幅器ステージ6220、ならびに、任意選択の出力ステージ保護および電力検出回路を含む。
図61に示したMISO増幅器6126、6128、6130、6132および/または6134を、MISO増幅器ステージ6220など、増幅器を使用して実装することができる。
出力ステージの実施形態6200は、図60に例示した出力ステージの実施形態6000とほぼ類似であり、主な違いは、実施形態6200における出力スイッチングステージ(図60のスイッチ6044によって実施された)の除去にある。
実施形態6000と同様に、実施形態6200におけるMISO増幅器ステージ6220は、プレドライバ6206および6208によって実施されたプレドライバ増幅ステージ、ドライバ6210および6212によって実施されたドライバ増幅ステージ、ならびに、出力ステージPA6214および6216によって実施されたPA増幅ステージを含む。一実施形態では、ほぼ一定の包絡線入力信号MA IN1 6202およびMA IN2 6204は、PAステージの出力で加算される前に、MISO増幅器6220の各ステージで増幅される。入力信号MA IN1 6202およびMA IN 6204は、例えば、図61の信号6123および6125に対応する。
一実施形態では、出力ステージの実施形態6200のMISO増幅器ステージ6220は、電圧制御された電源回路によって提供された電源信号によって電力供給される。別の実施形態では、MISO増幅器ステージ6220は、デジタル制御モジュールによって制御可能な任意選択のバイアス制御回路を含む。別の実施形態では、MISO増幅器ステージ6220は、誤差訂正および/または補償フィードバック機構を可能にするための回路を含む。別の実施形態では、出力ステージの実施形態6200は、任意選択の出力ステージ保護回路および電力検出回路を含む。出力ステージの実施形態6200のこれらの態様(電源、バイアス制御、誤差訂正、出力保護および電力検出)は、出力ステージの実施形態6000に関して上述したものにほぼ類似である。
本発明の実施形態によれば、出力ステージの実施形態6200を、MISO増幅器ステージ6220、ならびに任意選択の出力保護および電力検出回路を含めて、SiGe(シリコンゲルマニウム)材料を使用して製造してもよい。別の実施形態では、MISO増幅器ステージ6220は、全体としてSiGeを使用して製造される。別の実施形態では、MISO増幅器ステージ6220のPAステージ(PA6214および6216)は、GaAsを使用して製造されるが、MISO増幅器ステージ6220の他の回路および出力ステージの任意選択の回路は、SiGeを使用して製造される。別の実施形態では、MISO増幅器ステージ6220のPAステージおよびドライバステージ(ドライバ6210および6212)は、GaAsを使用して製造されるが、MISO増幅器ステージ6220の他の回路および出力ステージの任意選択の回路は、SiGeを使用して製造される。別の実施形態では、PAステージ、ドライバステージ、プレドライバステージ(プレドライバ6206および6208)は、GaAsを使用して製造される。別の実施形態では、VPAシステムは、SiGeまたはGaAs材料において実装することができる出力ステージ(6214または6216)を除いて、すべての回路について、CMOSを使用して実装されてもよい。別の実施形態では、VPAシステムは、全体としてCMOSにおいて実装されてもよい。当業者には理解できるように、出力ステージの回路のために使用される製造材料の他の変形形態および/または組み合わせも可能であり、したがって、これも本発明の実施形態の範囲内である。さらに、例えば、MISO増幅器6128、6130および6134がSiGe増幅器であり、MISO増幅器6126および6132がGaAs増幅器である(それらの出力ステージの1つまたは複数のステージがGaAsである)、図61に例示するように、同じVPA内の出力ステージを、異なる材料を使用して製造してもよい。
4.3.3)VPAアナログコア実装C
図63は、本発明の一実施形態による別のVPAアナログコア実装6300を例示する。例示のため、実施例のアナログコア6300を図63において、デジタル制御モジュール5800に接続されるものとして図示するが、別法として、他のデジタル制御モジュールを使用することができる。アナログコア6300とデジタル制御モジュール5800の間の物理的接続は、図58および図63の両方において同じ番号の信号によって示される。
アナログコア実装6300は、2分岐VPAの実施形態に対応する。この実装は、しかし、本明細書の教示に基づいて当業者には明らかになるように、4分岐またはCPCPのVPAの実施形態へと容易に修正することができる。
アナログコア実装6300は、図59のアナログコア5900と同様の入力ステージ、ベクトル変調ステージおよび増幅出力ステージを含む。これらのステージの機能、動作および制御は、図59を参照して上述されている。
アナログコア5900と同様に、アナログコア6300は、フィードバック誤差訂正および/または補償機構を含む。しかし、アナログコア5900とは対照的に、アナログコア6300は、アナログコア5900における差動フィードバック機構とは対照的に、受信器ベースのフィードバック機構を採用する。受信器ベースのフィードバック機構は、VPAのアクティブ出力を受信し、受信された出力からIデータおよびQデータを生成し、生成されたIおよびQデータをデジタル制御モジュールへフィードバックする、受信器を有することに基づくものである。VPAの入力と出力の間の遅延を推定することによって、フィードバックIおよびQ信号を、それらの対応する入力IおよびQ信号に適切に整合することができる。別の実施形態では、受信器フィードバックは、デカルトIおよびQデータ信号ではなく、複素出力信号(大きさ、および、位相ポーラ(phase polar)情報)を含む。
一実施形態では、これは、受信器(図示せず)をVPAのアクティブ出力(5947または5949)で結合することによって行われる。図63では、信号6302および6304は、受信器への上側バンドおよび下側バンドRF入力をそれぞれ表す。アナログコア6300の上側バンドパス5964が使用されているか、下側バンドパス5966が使用されているかに応じて、いかなるときにも信号6302および6304のうち1つのみがアクティブであることが可能である。同様に、受信器ベースのフィードバック機構は、上側バンドパスおよび下側バンドパスを含む。一実施形態では、上側バンドおよび下側バンドフィードバックパスの各々は、自動ゲイン制御器(AGC)(6306および6308)、I/Qサンプルホールド(S/H)回路(6314、6316、および、6318、6320)、スイッチング回路(6322および6324)、および、任意選択の補間フィルタ(6326および6328)を含む。一実施形態では、デジタル制御モジュールによって、入力選択信号5810および5812を用いて制御されたスイッチ6330は、上側バンドまたは下側バンドフィードバックパスのいずれかをデジタル制御モジュールに結合する。さらに、結合されたフィードバックパスに基づいて、デジタル制御モジュールI/Qn選択信号5808は、スイッチング回路6322または6324を制御して、デジタル制御モジュールへのIデータおよびQデータの結合を交互に行う。本明細書の教示に基づいて当業者には理解できるように、他の実装もまた可能である。
一実施形態では、AGC回路は、受信器が有用なIおよびQ情報を、VPA出力電力のワイドダイナミックレンジを介してフィードバックすることを可能にするために、使用される。例えば、出力信号5954、5956、5958、5960および5962は、ある携帯電話の応用例において、+35dBmから−60dBmまで変化する可能性がある。IおよびQデータが正確なフィードバック情報を含むために、受信器のIおよびQ出力は、出力信号電力とは無関係に、A/Din信号5736の入力電圧範囲の大部分を利用するようにスケーリングされる必要がある。デジタル制御モジュール5800は、必要とされた出力電力までVPAを制御するように設計され、これにより、デジタル制御モジュール5800が、A/D5732を通じてデジタル化される適切なA/D入力電圧を達成するために適切な受信器ゲインを決定することが可能となる。
受信器ベースのフィードバック機構を有するVPAアナログコアを、純粋なフィードバック、フィードフォワード、またはハイブリッドフィードバック/フィードフォワードシステムとして実装することができる。上述のように、純粋なフィードバック実装は、デジタル制御モジュールにおいて最小量のメモリ(RAM5608、NVRAM5610)を必要とするか、あるいはメモリを必要としない。これは、アナログコアからの差動フィードバック測定回路の除去に加えて、アナログコア6300によるアナログコア実装の1つの利点を表す場合がある。それにもかかわらず、アナログコア6300を、デジタル制御モジュール5800におけるいかなるフィードフォワード訂正をも使用不可にすることによる純粋なフィードバック実装として、フィードバック信号の監視を使用不可にすることによる純粋なフィードフォワード実装、あるいは、可変フィードフォワード/フィードバック利用を有するハイブリッドフィードフォワード/フィードバック実装として、動作するようにプログラムすることができる。
一実施形態では、アナログコア6300の出力ステージは、任意選択の出力ステージ保護回路を含む。これは図63に図示されないが、アナログコア実装5900および6100を参照して上述されたものである。アナログコア6300の他の態様(バイアス制御、電源など)は、アナログコア5900とほぼ類似であり、図59を参照して上述されている。
図64は、VPAアナログコア実装6300による出力ステージの実施形態6400を例示する。出力ステージの実施形態6400は、MISO増幅器ステージ6434および出力スイッチングステージを含む。一実施形態では、MISO増幅器ステージ6434は、図63に示したMISO増幅器5930および/または5932に対応する(すなわち、MISO増幅器5930、5932のいずれかまたは両方を、MISO増幅器ステージ6434など、増幅器を使用して実装することができる)。
出力ステージの実施形態6400は、図60に例示した出力ステージの実施形態6000とほぼ類似であり、主な違いは、受信器ベースのフィードバック機構の使用による差動分岐測定回路(6024および6026)の除去にある。
実施形態6000と同様に、実施形態6400におけるMISO増幅器ステージ6434は、プレドライバ6406および6408によって実施されたプレドライバ増幅ステージ、ドライバ6410および6412によって実施されたドライバ増幅ステージ、ならびに、出力ステージPA6414および6416によって実施されたPA増幅ステージを含む。一実施形態では、定包絡線入力信号MA IN1 6402およびMA IN2 6404は、MISO増幅器ステージ6434のPAステージの出力で加算される前に、MISO増幅器ステージ6434の各ステージで増幅される。
一実施形態では、出力ステージの実施形態6400のMISO増幅器ステージ6434は、電圧制御された電源回路によって提供された電源信号によって電力供給される。別の実施形態では、MISO増幅器ステージ6434は、デジタル制御モジュールによって制御可能な任意選択のバイアス制御回路を含む。別の実施形態では、出力ステージの実施形態6400は、任意選択の出力ステージ保護回路(図64に図示せず)を含む。出力ステージの実施形態6400のこれらの態様(電源、バイアス制御、および出力保護)は、出力ステージの実施形態6000に関して上述したものにほぼ類似である。
本発明の実施形態によれば、出力ステージの実施形態6400を、MISO増幅器ステージ6434、出力スイッチングステージ6420、および任意選択の出力保護回路を含めて、SiGe(シリコンゲルマニウム)材料を使用して製造してもよい。別の実施形態では、MISO増幅器ステージ6434は、SiGeを使用して製造され、出力スイッチングステージ6420は、GaAsを使用して製造される。別の実施形態では、MISO増幅器ステージ6434のPAステージ(PA6414および6416)および出力スイッチングステージ6420は、GaAsを使用して製造されるが、MISO増幅器ステージ6434の他の回路および出力ステージの任意選択の回路は、SiGeを使用して製造される。別の実施形態では、PAステージ、ドライバステージ(ドライバ6410および6412)、および出力スイッチングステージ6420は、GaAsを使用して製造されるが、MISO増幅器ステージ6434の他の回路および出力ステージの任意選択の回路は、SiGeを使用して製造される。別の実施形態では、PAステージ、ドライバステージ、プレドライバステージ(プレドライバ6406および6408)、および出力スイッチングステージ6420は、GaAsを使用して製造される。別の実施形態では、VPAシステムは、SiGeまたはGaAs材料において実装することができる出力ステージ(6214または6216)を除いて、すべての回路について、CMOSを使用して実装されてもよい。別の実施形態では、VPAシステムは、全体としてCMOSにおいて実装されてもよい。当業者には理解できるように、出力ステージの回路のために使用される製造材料の他の変形形態および/または組み合わせも可能であり、したがって、これも本発明の実施形態の範囲内である。さらに、例えば、MISO増幅器6128、6130および6134がSiGe増幅器であり、MISO増幅器6126および6132がGaAs増幅器である(それらの出力ステージの1つまたは複数のステージがGaAsである)、図61に例示するように、同じVPA内の出力ステージを、異なる材料を使用して製造してもよい。
VPA出力ステージのリアルタイム増幅器クラス制御
本発明の実施形態によれば、VPA出力ステージを、その出力波形軌道における変化に従ってその増幅器動作クラスを変更するように、制御することができる。この概念を、図65において、例示的WCDMA波形を参照して例示する。図65におけるグラフは、VPA出力ステージの動作クラスに対するWCDMA出力波形包絡線のタイミング図を例示する。出力波形包絡線は、VPA出力ステージの出力電力に正比例することに留意されたい。
VPA出力ステージ増幅器クラスは、出力波形包絡線がその最大値からゼロに向かって低減するにつれて、クラスS増幅器からクラスA増幅器へトラバースすることに留意されたい。ゼロ交差で、VPA出力ステージは、出力波形包絡線が増大するにつれて、より高いクラスの増幅器動作へスイッチングする前に、クラスA増幅器として動作する。
VPA出力ステージ増幅器動作クラスを制御するためのこのリアルタイム能力によって克服される1つの重要な問題は、位相精度制御の問題である。図65に示した実施例に関して、位相精度制御の問題は、いずれかの所与の電力レベルで高品質の波形を生成するために、40dBの出力電力ダイナミックレンジが望ましいという事実にある。しかし、40dBの出力電力ダイナミックレンジ(約1.14度または1.5ピコ秒)を生成するために必要とされる位相精度は、高容量の応用例における実用的な回路の許容度をはるかに超える。理解されるように、この段落および本明細書の他の箇所で引用された特定の電力範囲は、例示のためにのみ提供され、限定するものではない。
本発明による実施形態は、複数の動作クラスを波形軌道に基づいて移行して、すべての波形について、実用的な制御精度に対する効率の最高のバランスを維持するようにすることによって、位相精度制御の問題を解決する。実施形態では、VPA出力ステージの出力電力ダイナミックレンジは90dBを超える。
一実施形態では、より高い瞬時信号電力レベルで、動作における増幅器クラス(クラスS)は効率が高く、位相精度は、位相制御を使用して容易に達成される。より低い瞬時信号電力レベルでは、しかし、位相制御は、必要とされた波形線形性を達成するために十分でない場合がある。これを図66に例示し、これは、VPAの分岐の間のVPA出力電力(dBm単位)対アウトフェージング角度のプロットを示す。高い電力レベルでは、アウトフェージング角度における変化が、より低い電力レベルよりも小さい出力電力変化の結果となることが分かる。したがって、位相制御は、より低い電力レベルよりも、より高い電力レベルで、より高い分解能の電力制御を提供する。
したがって、高分解能の電力制御をより低い電力レベルでサポートするため、位相制御に加えて、他の制御の機構が必要とされる。図67は、例示的QPSK波形を使用した、本発明の実施形態による例示的電力制御機構を例示する。QPSKコンステレーションが、cos(wt)およびsin(wt)によって定義された複素領域における単位円に課せられる。コンステレーション空間は、3つの同心および非交差領域、すなわち、最外の「位相制御のみ」の領域、中心の「位相制御、バイアス制御、および振幅制御」の領域、および、最内の「バイアス制御および振幅制御」の領域の間で分割される。本発明の実施形態によれば、最外、中心および最内領域は、出力波形の電力レベルに従って適用される電力制御のタイプを定義する。例えば、図67を参照すると、より低い電力レベル(最内領域に入る点)では、バイアス制御および振幅制御が、必要とされた波形線形性を提供するために使用される。一方、より高い電力レベル(最外領域に入る点)では、位相制御(アウトフェージング角度を制御することによる)のみで十分である。
当業者には理解できるように、図67に例示された制御領域は、例示のためにのみ提供され、限定するものではない。他の制御領域を、本発明の実施形態によって定義することができる。典型的には、排他的ではないが、制御領域の境界は、所望の出力波形の相補累積密度関数(CCDF)およびサイドバンド性能基準に基づくものである。したがって、制御領域の境界は、VPAの所望の出力波形に従って変化する。
実施形態では、異なる制御領域によって定義された電力制御機構は、異なるクラスの増幅器の間のVPA出力ステージの移行を可能にする。これを図68に示し、これは、出力波形包絡線に対する出力ステージ増幅器クラス動作、および、単位円に課せられた制御領域を、並べて例示する。図69はさらに、出力波形包絡線に応じた出力ステージ電流を示す。出力ステージ電流は、出力波形包絡線に密接に従うことに留意されたい。特に、出力波形包絡線がゼロ交差を受けるとき、出力ステージ電流は完全にゼロになることに留意されたい。
図70は、出力ステージ電流に対するVPA出力ステージ理論効率を例示する。図70の出力ステージ電流波形は、図69に示したものに対応することに留意されたい。一実施形態では、VPA出力ステージは、98%(以上)の時間に渡って100%の理論効率で動作する。図70から、出力ステージ電流における変化による、異なる増幅器動作クラスの間の出力ステージの移行にも留意されたい。
図71は、本発明の一実施形態による例示的VPAを例示する。例示のため、限定のためではなく、異なる増幅器動作クラスの間のVPA出力ステージ(図71においてMISO増幅器として例示された)の移行を引き起こすために使用することができる、様々な制御機構をさらに説明するために、図71の例示的実施形態を本明細書で使用する。
図71のVPAの実施形態は、伝達関数モジュール、周波数基準合成器によって制御された1対のベクトル変調器、および、MISO増幅器出力ステージを含む。伝達関数モジュールは、IおよびQデータを受信し、ベクトル変調器によって使用される振幅情報を生成して、ほぼ一定の包絡線信号を生成する。ほぼ一定の包絡線信号は、MISO増幅器出力ステージを使用して単一の動作において増幅かつ加算される。
本発明の実施形態によれば、MISO増幅器出力ステージを、出力波形軌道における変化に従って、異なる増幅器動作クラスの間でリアルタイムに移行させることができる。一実施形態では、これは、ベクトル変調器によって生成された定包絡線信号の位相を制御することによって達成される。別の実施形態では、MISO増幅器入力信号の振幅は、伝達関数を使用して制御される。別の実施形態では、MISO増幅器入力が、伝達関数を使用してバイアスされて(MISO入力のバイアシングを、MISO増幅器内のいずれかの増幅ステージで行うことができる)、MISO増幅器動作クラスが制御される。他の実施形態では、MISO増幅器ステージが異なる増幅器動作クラスの間で移行できるようにするために、これらの制御機構(位相、入力バイアスおよび/または入力振幅)の組み合わせが使用される。
図72は、本発明の一実施形態による、出力波形軌道における変化による、電力増幅器におけるリアルタイム増幅器クラス制御のための方法を例示するプロセス流れ図100である。プロセス流れ図100は、所望の出力波形の瞬時電力レベルを決定することを含む、ステップ110で開始する。一実施形態では、瞬時電力レベルは、所望の出力波形包絡線の関数として決定される。
決定された瞬時電力レベルに基づいて、プロセス流れ図100のステップ120は、所望の増幅器動作クラスを決定することを含み、前記増幅器動作クラスは、電力増幅器の電力効率および線形性を最適化する。一実施形態では、増幅器動作クラスを決定することは、所望の出力波形の特定のタイプ(例えば、CDMA、GSM、EDGE)によって決まる。
ステップ130は、電力増幅器を、決定された増幅器動作クラスに従って動作するように制御することを含む。一実施形態では、電力増幅器は、本明細書に記載するように、位相制御、バイアス制御、および/または振幅制御方法を使用して制御される。
プロセス流れ図100によれば、電力増幅器は、所望の出力波形の瞬時電力レベルに従って、異なる増幅器動作クラスの間で移行するように制御される。他の実施形態では、電力増幅器は、所望の出力波形の平均出力電力に従って、異なる増幅器動作クラスの間で移行するように制御される。さらなる実施形態では、電力増幅器は、所望の出力波形の瞬時電力レベルおよび平均出力電力の両方に従って、異なる増幅器動作クラスの間で移行するように制御される。
本発明の実施形態によれば、電力増幅器を、中間増幅器クラス(AB、B、CおよびD)を通過しながら、クラスA増幅器からクラスS増幅器まで移行するように制御することができる。
本発明の実施形態は、電力増幅器の、異なる増幅器クラスへの移行を、以下のように制御する。
クラスA増幅器を達成するため、電力増幅器の駆動レベルおよびバイアスは、出力電流導通角が360度に等しくなるように制御される。導通角は、出力電流が増幅器中を流れている駆動周期の角度部分として定義される。
クラスAB増幅器を達成するため、電力増幅器の駆動レベルおよびバイアスは、出力電流導通角が180度より大きく、360度より小さくなるように制御される。
クラスB増幅器を達成するため、電力増幅器の駆動レベルおよびバイアスは、出力電流導通角が180度にほぼ等しくなるように制御される。
クラスC増幅器を達成するため、電力増幅器の駆動レベルおよびバイアスは、出力電流導通角が180度より小さくなるように制御される。
クラスD増幅器を達成するため、電力増幅器の駆動レベルおよびバイアスは、増幅器がスイッチモード(オン/オフ)において動作されるように制御される。
クラスS増幅器を達成するため、増幅器は、パルス幅変調された(PWM)出力信号を生成するように制御される。
一実施形態では、上述のVPA出力ステージのリアルタイム増幅器クラス制御は、伝達関数における動的変化がVPAのデジタル制御モジュールにおいて実装されることを伴う。これをさらに以下で、図73〜77を参照して説明する。
図73は、2つの分岐を有するnpn実装による、一実施例のVPA出力ステージを例示する。VPA出力ステージの各分岐は、それぞれのほぼ一定の包絡線信号を受信する。ほぼ一定の包絡線信号は、図73においてIN1およびIN2として例示される。VPA出力ステージのトランジスタがそれらのエミッタノードによって共に結合されて、VPAの出力ノードが形成される。
VPA出力ステージがクラスS増幅器として動作するとき、これは、パルス幅変調(PWM)を、受信されたほぼ一定の包絡線信号IN1およびIN2上で達成する。この増幅器動作クラスにおけるVPA出力ステージの理論等価回路を、図74に例示する。VPA出力ステージのトランジスタは、この動作クラスにおけるスイッチング増幅器に相当することに留意されたい。ほぼ一定の包絡線信号IN1およびIN2の間のアウトフェージング角度θの関数としてのVPAの出力は、(IN1およびIN2がほぼ等しい振幅の値Aを有すると仮定して)
によって与えられる。大きさ−位相シフト変換として上述した、この関数のプロットを、図76に例示する。
一方、VPA出力ステージがクラスA増幅器として動作するとき、これは完全加算ノードをエミュレートする。この増幅器動作クラスにおけるVPA出力ステージの理論等価回路を、図75に例示する。VPA出力ステージのトランジスタは、この動作クラスにおける電流源に相当することに留意されたい。ほぼ一定の包絡線信号IN1およびIN2の間のアウトフェージング角度θの関数としてのVPAの出力は、(IN1およびIN2がほぼ等しい振幅の値Aを有すると仮定して)
によって与えられる。大きさ−位相シフト変換として上述した、この関数のプロットを、図76に例示する。
本発明の一実施形態によれば、増幅器動作クラスAおよびSは、VPA出力ステージの増幅器動作範囲の2つの両極端を表す。しかし、上述のように、VPA出力ステージは、例えば、クラスAB、B、CおよびDを含む、複数の他の増幅器動作クラスを移行してもよい。したがって、VPAのデジタル制御モジュールによって実装された伝達関数は、大きさ−位相シフト変換関数のスペクトル内で変化し、図76に例示した変換関数は、このスペクトルの境界を表す。これを図77に図示し、これは、VPA出力ステージの増幅器動作クラスの範囲に対応する、大きさ−位相シフト変換関数のスペクトルを例示する。図77は、A、AB、B、C、DおよびSの6つの増幅器動作クラスに対応する、6つの関数を例示する。一般に、しかし、無数の関数を、2つの極端な動作クラスAおよびSに対応する関数を使用して生成することができる。一実施形態では、これは、この2つの関数の加重和を使用して行われ、(1−K)×R(θ)+K×SQ(θ)によって与えられ、ただし、0≦K≦1である。
概要
電力増幅およびアップコンバージョンを提供するために信号を処理することに関係する、新しい概念のための数学的基礎が、本明細書で提供される。これらの新しい概念は、任意の波形が、実際にはほぼ一定の包絡線である波形の和から構成されることを可能にする。所望の出力信号および波形は、所望の出力信号の複素包絡線の知識から作成することができる、ほぼ一定の包絡線成分信号から構成されてもよい。成分信号は、市販されておらず、文献または関連技術において教示あるいは発見されていない、新しく、固有で新規の技術を使用して、加算される。さらに、本開示で提供された様々な技術および回路の混合は、現在提供されているものと比較するとき、優れた線形性、電力付加効率、モノリシックな実装および低コストを可能にする、本発明の固有の態様を提供する。加えて、本発明の実施形態は、本質的に、プロセスおよび温度変動にそれほど敏感ではない。ある実施形態は、本明細書に記載された多入力1出力増幅器の使用を含む。
本発明の実施形態を、ハードウェア、ソフトウェアおよびファームウェアの混合によって実装することができる。デジタル技術もアナログ技術も、マイクロプロセッサおよびDSPの有無にかかわらず、使用することができる。
本発明の実施形態を、一般に、通信システムおよびエレクトロニクスについて実装することができる。加えて、限定なしに、機械工、電気機械工、電気光学および流体機械工は、信号を効率的に増幅かつ変換するために同じ原理を使用することができる。
結論
本発明を、特定の機能およびそれらの関係の実行を例示する、機能的構成単位を用いて上述した。これらの機能的構成単位の境界は、本明細書で、説明の便宜上、任意に定義された。特定の機能およびそれらの関係が適切に行われる限り、代替境界を定義することができる。このようないかなる代替境界も、よって、特許請求の範囲に記載された発明の範囲および精神内のものである。これらの機能的構成単位を、個別のコンポーネント、特定用途向け集積回路、適切なソフトウェアなどを実行するプロセッサ、および、それらの組み合わせによって実装することができることは、当業者には理解されよう。
本発明の様々な実施形態を上述したが、これらは例としてのみ、限定ではなく、提示されたことを理解されたい。よって、本発明の幅および範囲は、上述の例示的実施形態のいずれによっても限定されるべきではないが、以下の特許請求の範囲およびそれらの均等物に従ってのみ、定義されるべきである。