JP5484050B2 - 心血管事象診断のためのsPLA2活性の使用 - Google Patents

心血管事象診断のためのsPLA2活性の使用 Download PDF

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Description

本発明は、心血管事象診断のためのsPLA2活性の使用に関する。
心血管障害は、先進諸国における罹患および死亡の主要な原因であり、これらの疾患の予防は公共衛生の大きな関心事となっている。
炎症は、脆弱プラーク、その結果である冠血管事象の生理病理学において重要な役割を果たしている。炎症の循環マーカーの測定には、この10年間、かなり大きな関心が寄せられている。それらの中でも、C反応性タンパク質(CRP)は、明らかに健康な個体におけるアテローム性血栓事象を予測するための、およびフラミンガム(Framingham)スコアに基づいたリスクの全てのレベルにおける予測値を付加するための、今までに同定された最強の「新規」バイオマーカーであることが判明している(Ridker P.M.ら、N.Engl.J.Med.(2002);347:15557〜1565頁)。その結果、CRP測定により、患者が冠動脈疾患(CAD)の中等度リスクにあるとみなすことが、最近の指針で推薦されている(Pearson T.A.ら、Circulation(2003);107:499〜511頁)。しかしながら、伝統的なリスク要因と組み合わせたCRP測定がリスク予測改善における主要な要素ではあるものの、いまだに改善の余地がかなりある。一般集団における絶対的CADリスクの予測を改善するために、炎症マーカーの可能性のある関連性の影響を評価することに対して、現在、関心が寄せられるようになった(Ridker P.M.ら、Circulation(2004);109:IV6〜19)。
ホスホリパーゼA2 (PLA2)酵素は、sn-2の位置でリン脂質を加水分解して、リソリン脂質および脂肪酸を生成し(Dennis J Biol Chem.(1994)、269:13057-13060頁)、アテローム性動脈硬化症の病因および合併症に関連した種々の免疫-炎症過程の活性化に至る(Hurt-Camejo E.ら、Circ.Res.(2001);89:298〜304頁)。最も広範に研究されたPLA2の1つは、正常な動脈およびアテローム性動脈硬化症プラークに発現すること(Elinderら、Arterioscler Thromb Vasc Biol.(1997)、17:2257〜63頁)、および動物におけるアテローム発生度の増大に関連していること(Ivandic B.ら、Castellani L.W.Arterioscler Thromb Vasc Biol.(1999)、19:2257〜63頁)が分かっている低分子量(14kDa)IIa群分泌PLA2 (sPLA2)である。sPLA2 IIA型のsPLA2血漿中濃度の血漿中濃度増加は、安定な患者における冠血管事象のリスクに関連している(Kugiyama K.ら、Circulation、(1999)、100:1280〜1284頁)。アテローム性動脈硬化症におけるsPLA2の他の型の役割についての理解は乏しい。いくつかの型のsPLA2を包含する循環sPLA2酵素活性の直接的で正確な測定は、特定のsPLA2集団レベルの測定よりも、これらの酵素の可能な前アテローム発生特性の良好な指標であることが、最近示されている(Mallatら、欧州特許第04 291 825.0号)。この特許はまた、血漿sPLA2活性が、急性冠血管症候群を有する患者における死亡、ならびに新たな、または再発性の心筋梗塞の独立した予測因子であり、sPLA2 IIA型の濃度またはCRPレベルの測定よりも良好な予測値を提供することを示した。しかし、sPLA2活性とCRPレベルとの関連性は乏しい(r=0.47、P<0.0001;欧州特許第04 291 825.0号)。
アテローム性動脈硬化症は、酸化脂質と感染性物質の双方が可能な寄与物質と考えられる慢性の免疫-炎症性疾患である。最近の研究(Mayr M.ら、J.Am.Coll.Cardiol.(2006)、47:2436〜43頁)において、銅-酸化-LDLならびにマロンジアルデヒド-LDL(OxLDL-AB)、IgGおよびIgMアポリポタンパク質B-100-免疫複合体(ApoB-IC)に対する免疫グロブリン(Ig)GおよびIgM自己抗体力価が測定され、心血管リスク要因、慢性感染症、および発生/進行性頚動脈アテローム性動脈硬化症とそれらとの関連性が評価された。この研究は、ヒトoxLDLマーカーと慢性感染症との間の関連に対する証拠を提供する。しかし、OxLDL自己抗体およびアポB-ICは多変数分析において、頚動脈アテローム性動脈硬化症の独立したリスク予測要因として示されなかった。
Mallatら、欧州特許第04 291 825.0号
Ridker P.M.ら、N.Engl.J.Med.(2002);347:15557〜1565頁 Pearson T.A.ら、Circulation(2003);107:499〜511頁 Ridker P.M.ら、Circulation(2004);109:IV6〜19 Dennis J Biol Chem.(1994)、269:13057-13060頁 Hurt-Camejo E.ら、Circ.Res.(2001);89:298〜304頁 Elinderら、Arterioscler Thromb Vasc Biol.(1997)、17:2257〜63頁 Ivandic B.ら、Castellani L.W.Arterioscler Thromb Vasc Biol.(1999)、19:2257〜63頁 Kugiyama K.ら、Circulation、(1999)、100:1280〜1284頁 Mayr M.ら、J.Am.Coll.Cardiol.(2006)、47:2436〜43頁 Pernasら、Biochem.Biophys.Res.Commun.(1991)、178:1298〜1305頁 Radvanyiら(1989)、Anal Biochem.177:103〜109頁 Bruinsら、Circulation、1997年、96:3542〜3548頁 Tsimikasら、Circulation、2004年、110:1406〜1412頁 Tsimikasら、J.Am.Coll.Cardiol.、2003年、41、360〜370頁 Binderら、Nat.Med.2002年、8、1218〜1226頁 Day N.ら、Br.J.Cancer、1999年:80 Suppl.1:95〜103頁 Boekholdt,S.M.、Circulation、2004年;110:1418〜1423頁 Friedewald W.T.ら、Clin Chem.1972年;18:499〜502頁 Biophys Res Commun.1991年;178:1298〜1305頁 Mallat Z.ら、J.Am.Coll Cardiol.2005年;46:1249〜1257頁 Wilson P.W.ら、Circulation、1998年;97:1837〜1847頁
本発明の目的の1つは、先行技術のマーカーよりも信頼できる、心血管障害の予測および診断のために使用すべき新規な組合せマーカーを提供し、1つのバイオマーカー単独よりも良好な情報を提供することである。
本発明の他の目的は、明らかに健常な人または冠動脈障害を有する患者に対して有意味となる心血管疾患の新規な予測法および/または診断法を提供することである。
本発明の他の目的は、心臓事象および/または血管事象の診断を意図したキットを提供することである。
本発明のさらに他の目的は、心血管事象を予防および/または治療するための有効な治療手段のスクリーニングを可能にすることである。
本発明のさらなる目的は、分泌性ホスホリパーゼA2 (sPLA2)活性測定のための新規な方法を提供することである。
したがって、本発明は、以下のことを含む、患者における死亡率の、または心臓事象および/または血管事象のリスク増大を判定するための方法に関する:
- 第1のリスクマーカーとして患者のsPLA2活性の値を判定し、この値をsPLA活性範囲の予め決定された1セットの区間のうちの1区間に位置決めする工程、
- 前記患者のCRPレベル、アポB100のIgM ICレベルまたはIgM MDA-LDLレベルの中から選択された少なくとも1つの第2のリスクマーカーの値を判定し、この値をCRPレベル、アポB100のIgM ICまたはIgM MDA-LDLレベルの範囲の予め決定された1セットの区間のうちの1区間に位置決めする工程、
- 第3のリスクマーカーとして、前記患者の少なくとも2つの上記区間によって得られた組合せ区間を評価し、前記組合せ区間に対応するオッズ比を評価し、前記オッズ比の値を、sPLA2活性範囲およびCRPレベル範囲、アポB100のIgM ICまたはIgM MDA-LDLレベル範囲の区間によって予め決定されたオッズ比と比較する工程(前記予め決定されたオッズ比は、患者における死亡率の、または心臓事象および/または血管事象のリスク増大を予測する)。
アポB100のIgM ICという用語は、B100型のアポリポタンパク質に特異的な抗体(IgM型)免疫複合体のことである。
リポタンパク質は、血液を介して脂質(主に、トリグリセリドおよびコレステロール)を輸送する分子の大型複合体である。アポリポタンパク質は、特定の酵素に結合するか、または細胞膜上にタンパク質を輸送するリポタンパク質複合体の表面上のタンパク質である。
IgM MDA-LDLという用語は、マロンジアルデヒド低密度リポタンパク質に特異的な抗体(IgM型)のことである。
「リスクの増大」とは、組合せ区間から得られたオッズ比が予め決定されたオッズ比よりも高い患者は、組合せ区間から得られたオッズ比が前記予め決定されたオッズ比よりも低い個体より心臓事象および/または血管事象によって死亡または罹患し易いことを意味する。
本発明によれば、以下の事象が特に心臓事象および/または血管事象であるとみなされる:心筋梗塞(MI)、脳血管事象、心臓疾患および/または血管疾患による入院、および血管再生操作。
sPLA2活性の測定は、Pernasらによって修正された(Pernasら、Biochem.Biophys.Res.Commun.(1991)、178:1298〜1305頁)Radvanyiら(1989)、Anal Biochem.177:103〜109頁に従って、蛍光定量アッセイによって実施することができる。
本発明の他の態様において、sPLA2活性の測定は、少容量のサンプル、修正された基質/酵素比(50nmol/Uの替わりに、10nmol/U)、および30℃に規定されたサーモスタットにより、自動的蛍光定量測定を用いた改善された定量的アッセイによって実施することもでき、先行方法(バッチ内変動係数(CV)<10%、バッチ間CV<10%)より高い精度および感度(2.7%≦バッチ内CV、バッチ間CV=5.7%)ならびにアッセイ完了までのより短い時間が提供される。
特に、以下のアッセイが自動測定に用いられる。sPLA2に対する基質として、1-ヘキサデカノイル-2-(1-ピレンデカノイル)-sn-グリセロ-3-ホスホメタノールのナトリウム塩(Interchim、フランス国、Montlucon)が使用される。sPLA2によるこの基質の加水分解により、1-ピレンデカン酸が生じ、これが405nmにおいて蛍光を放射する。手短に述べると、緩衝液基質(10mMのトリス-HCL、pH 8.7、0.1%のアルブミン、10mMのCaCl2)の0.2ml中、1nmolの蛍光基質を、Black Maxisorpマイクロタイトレーションプレート(96ウェル)に自動分配した。該基質の自己消光性のため、先ず低蛍光が、攪拌装置および30℃に規定されたサーモスタットを備えたFluostar Optima蛍光計に記録される(Fmin)。30μl(100U/mL)のハチ毒PLA2 (Sigma Chemical社、フランス国)の添加により、全ての基質の迅速な加水分解に至り(100%の加水分解)、蛍光が最大値(Fmax)まで増大する。未知の血液サンプル中のsPLA2活性を判定するために、30μlの血清(E)を自動分配し、基質混合物に加えた。1分で蛍光を記録し(F)、したがって、1分間で1nmolの基質を加水分解できるsPLA2の活性(Vmax)に相当する。2ポイント手法を用いて、各サンプルの補正された蛍光強度を測定し、酵素活性(nmol/分/mlで表されている)を比較した。全てのサンプルを二重に試験した。
サンプルの活性(A)(nmol/ ml /分で表されている)は、以下の式で与えられる:
Figure 0005484050
血清の非存在下での基質の加水分解を陰性対照として用い、PLA2活性から推定した。全てのサンプルを二重に試験した。
別に記述しない限り、血清sPLA2活性に関して本明細書に提供された数値は全て、自動測定に関して上記に規定したアッセイに従って測定する。
該アッセイの実施に使用できるホスホリパーゼは、分泌性ホスホリパーゼまたは既知の活性を有するホスホリパーゼであり、好ましくは、ハチ毒ホスホリパーゼである。
CRPレベルは、文献(Bruinsら、Circulation、1997年、96:3542〜3548頁)に記載の方法に従ってサンドイッチ型のELISAにより測定した。
アポB100のIgMレベルおよびIgM MDA-LDLレベルは、文献(Tsimikasら、Circulation、2004年、110:1406〜1412頁;Tsimikasら、J.Am.Coll.Cardiol.、2003年、41、360〜370頁)中の既知の方法に従って測定した。
所与のマーカーに関する用語「オッズ比」は、以下の式によって与えられる:
Figure 0005484050
合計人数は、各区間において同じでなければならない。
所与の個体集団は、等しい部分(区間の)に分けることができ、各々は同数の個体を含む。それは例えば、2つ、3つ、4つまたは5つの部分に分けることができ、該区間はそれぞれ、中央位、三分位、四分位または五分位と称される。したがって、本明細書に用いられる区間という用語は、中央位、三分位、四分位または五分位を意味する。
それを4つの部分に分ける場合、第1の区間または四分位は、最低のsPLA2活性またはCRPレベルを有するが、最高のアポB100のIgM ICレベルまたはIgM MDA-LDLレベルを有する所与の集団の部分に対応し、最後の四分位は、最高のsPLA2活性またはCRPレベルを有するが、最低のアポB100 IgMのIgM ICレベルまたはMDA-LDLレベルを有する所与の集団の部分に対応し、第2および第3の四分位は、該集団の残りに対応する。
これらの区間または四分位から、統計的処理によって、各マーカーに関するオッズ比を決定することができる。
上記の区間から、比
Figure 0005484050
によって、2つまたは3つの組合せ区間値(例えば、sPLA2およびCRP)間の組合せオッズ比を決定することができ、式中、
A=各マーカーに関する所与の区間における事象数の合計
B=これら所与の区間における個体の総数
C=各マーカーに関する第1の区間における事象数の合計
D=これら第1の区間における個体の総数
である。
語句「予め決定されたオッズ比」とは、それ以上の血漿または血清のsPLA2活性およびCRPレベル、アポB100のIgM ICレベルまたはIgM MDA-LDLレベルの中から選択された少なくとも第2のマーカーの血漿または血清のレベルが、心臓および/または血管に関連した事象または病態を有する患者の現在または将来の罹患に有意であると考えられる閾値のことを言う。
上記に規定された方法の特定の実施形態によれば、第2のリスクマーカーはCRPレベルである。
上記に規定された方法の具体的な実施形態によると、該患者は、特に、アテローム性動脈硬化症、心臓および/または血管関連疾患に関して実質的に健常であると診断されている。
「実質的に健常」とは、該患者が、疾患、特に、アテローム性動脈硬化症、心臓および/または血管関連疾患罹患の症状を呈していないことを意味する。このような疾患としては、特に、冠状動脈疾患(CAD)、頚動脈アテローム性動脈硬化症、大動脈アテローム性動脈硬化症、腸骨または大腿アテローム性動脈硬化症、血管動脈瘤、血管石灰化、高血圧、心不全、および糖尿病が挙げられる。
上記に規定された方法の他の特定の実施形態によると、該患者は、以下の冠動脈障害のうちの1つを呈していると診断されている:
- 無症状の虚血または虚血なしの無症候性冠動脈疾患、
- 安定性または労作性の狭心症などの心筋壊死のない慢性虚血障害、
- 不安定性狭心症などの心筋壊死のない急性虚血障害、
- STセグメント上昇心筋梗塞または非STセグメント上昇心筋梗塞などの心筋壊死を有する虚血障害。
組織虚血は、しばしば相対的用語で定義され、酸素の需要が組織に対する酸素送達を超えている場合に生じる。組織(例えば心筋)の酸素需要と酸素供給との間に不均衡が存在する。この酸素欠乏状態は、還流減少の結果として起こる代謝物の不十分な除去を伴い得る。心筋虚血は、局所壁運動障害を分析することにより、または心電図(STセグメントの典型的な変異、上方または下方STセグメント偏差、T波反転または急峻対称または高振幅陽性T波などのT波における典型的な変化)の使用により、シンチグラフィーを用いて、臨床的に(例えば胸痛)、生物学的に(例えばミエロペルオキシダーゼ活性の増加)、代謝的に、診断することができる。無症状虚血は一般に、シンチグラフィーまたは24時間心電図記録を用いて診断される。
安定性および労作性の狭心症は一般に、運動時の胸痛により明示され、安静にすると徐々に回復する。これは通常、運動時の組織虚血を反映する。
不安定性狭心症は、安定性狭心症の頻度および/または重症度の最近の増加、または狭心症の最初のエピソード、または安静時の狭心症のいずれかである。
心筋壊死は一般に、循環血液における心筋酵素(例えば、トロポニンI、トロポニンT、CPK)の増加によって診断される。
上記に規定された方法のさらに特定の実施形態によると、該患者は、以下の冠動脈障害の医学的疑いを有する:
- 無症状の虚血または虚血なしの無症候性冠動脈疾患、
- 安定性または労作性の狭心症などの心筋壊死のない慢性虚血障害、
- 不安定性狭心症などの心筋壊死のない急性虚血障害、
- STセグメント上昇心筋梗塞または非STセグメント上昇心筋梗塞などの心筋壊死を有する虚血障害。
上記に規定された方法の別の特定の実施形態によると、該患者において、虚血症状の発症は診断されていない。
心筋虚血は、局所壁運動障害を分析することにより、または心電図(STセグメントの典型的な変異、上方または下方STセグメント偏差、T波反転または急峻対称または高振幅陽性T波などのT波における典型的な変化)の使用により、シンチグラフィーを用いて、臨床的に(例えば胸痛)、生物学的に(例えばミエロペルオキシダーゼ活性の増加)、代謝的に、診断することができる。
上記に規定された方法のさらに他の特定の実施形態によると、該患者において、虚血症状の発症が診断されている。
上記に規定された方法の他の好ましい実施形態において、患者の血漿サンプルに関して測定されたsPLA2活性は、Pernasらによって修正されたRadvanyiら(1989)、Anal Biochem.177:103〜9頁による蛍光定量的アッセイによって判定した際に、約1.8nmol/ml/分より高く、特に約2nmol/ml/分より高く、さらに特に約2.5nmol/ml/分より高く、好ましくは、約2.9nmol/ml/分より高く、より好ましくは、3.3より高く、および/または該患者の血清サンプルから測定されたsPLA2活性は、上記に規定された自動蛍光定量測定によって判定した際に、3.74nmol/ml/分より高く、好ましくは、4.29nmol/ml/分より高く、好ましくは、4.95nmol/ml/分より高い。上記に規定された方法の好ましい実施形態において、患者におけるsPLA2活性は、前記患者から採取した前記sPLA2を含有する生物学的サンプルを、1nMから15nMの濃度における基質に接触させることを含む蛍光定量アッセイに基づいた方法によって判定され、前記血清サンプルの容量は、5μlから50μlであり、基質の容量は、100μlから300μlであり、温度範囲は、約15℃から約40℃であり、好ましくは、30℃である。
使用されるホスホリパーゼは、ハチ毒またはコブラ毒などのヘビ毒、好ましくはハチ毒由来のホスホリパーゼであり得る。それは、任意の種からの組換えホスホリパーゼでもよい。
該アッセイは実施例2に記載されている。
この方法の利点は、使用される基質のサンプル容量が少なく、また自動温度調節がなされることであり、より高い精度および感度が提供される。
あるいは、該サンプル中の他の因子による蛍光強度の非特異的増加から生じ、したがって、sPLA2活性の測定を妨害し得る不正確性を減少させることを可能にする上記に規定された自動蛍光定量測定の変型を用いることができる。この方法は、sPLA2活性の判定に以下の式が用いられることだけが、上記に規定された自動蛍光定量測定法と異なっている:
A=F.s/[(Fmax-Fmin).V]
式中、
・Aは、nmol/分/mlで表されたsPLA2活性を表し;
・sは、nmolで表された基質の量(通常、使用液の容量200μl中、1nmol)を表し;
・Vは、mlで表されたサンプル容量(通常、0.30mlから0.50ml)を表し;
・(Fmax-Fmin)は、ハチ毒からのPLA2存在下、反応終末における最大蛍光シグナルと陰性対照との間の差を表し;
・Fは、分-1で表された、時間の関数としての蛍光放射を表す曲線の線形範囲内の最初の勾配を表す。
この変型は、下記の実施例4に詳述してある。
この変型を用いて、健常成人集団の血漿サンプル中のsPLA2活性に関する以下の四分位範囲を判定し得る:四分位1は、最低のsPLA2活性(1.22nmol/分/ml未満)を有する集団の部分に対応し、四分位2は、1.22から1.54nmol/分/mlの範囲の値に対応し、四分位3は、1.54から1.93nmol/分/mlの範囲の値に対応し、四分位4は、より高いsPLA2活性(1.93nmol/分/ml超)を有する集団の部分に対応する。
したがって、上記に規定された方法の特に好ましい実施形態において、患者の血漿サンプルに関して測定されたsPLA2活性は、上記に規定された自動蛍光定量測定の変型によって判定された際に、1.22nmol/ml/分より高く、好ましくは、1.54nmol/ml/分より高く、より好ましくは、1.93nmol/ml/分より高い。
上記に規定された方法の別の好ましい実施形態において、患者の血清中のCRPレベルは、0.70mg/lより高く、特に約1.45mg/lより高く、さらに特に約2.5mg/lより高く、より好ましくは、約3.1mg/lより高い。
上記に規定された方法の好ましい実施形態において、前記予め決定されたオッズ比の値は、sPLA2活性範囲の最も高い3つの四分位に含まれるsPLA2活性の区間と最も高い3つの四分位に含まれるCRPレベル範囲の区間、好ましくは、CRPレベル範囲の高い方の半分に含まれる区間との間、特に、sPLA2活性範囲の高い方の半分に含まれる区間とCRPレベル範囲の高い方の半分に含まれる区間との間、さらに特に、前記sPLA2範囲の最高の四分位に含まれる区間と前記CRPレベル範囲の最高の四分位に含まれる区間との間の関係から得られた比に対応する。
上記で意図されたように、所与の集団は4つの部分または区間(四分位)に分けられ、各々は同数の個体を含み、最初の区間(四分位)は、最低のsPLA2活性またはCRPレベルを有する所与の集団の部分に対応し、最後の区間(四分位)は、最高のsPLA2活性またはCRPレベルを有する所与の集団の部分に対応し、第2および第3の区間(四分位)は、最初の区間と最後の区間との間の残りの集団に対応する。
上記に規定された方法の別の好ましい実施形態において、患者のsPLA2活性の区間と前記患者のCRPレベルの区間との間の関係から得られたオッズ比は、約1.37以上であり、特に、約1.39以上であり、さらに特に1.57以上であり、好ましくは、約2.89以上である。
上記に規定された方法の好ましい実施形態において、患者のsPLA2活性の区間と前記患者のCRPレベルの区間との間の関係から得られたオッズ比は、約1.37以上であり、特に約1.39以上であり、さらに特に1.57以上であり、さらに特に約1.63以上であり、さらに特に約1.94以上であり、好ましくは、約2.21以上であり、より好ましくは、約2.25以上であり、より好ましくは、約2.51以上であり、より好ましくは、約2.89以上である。
CRPの最後の区間(四分位)のオッズ比は、1.61に等しく、sPLA2活性の最後の区間(四分位)のオッズ比は、1.70に等しい。
CRPレベル範囲の予め決定された区間の最後の区間(四分位)に含まれるCRPレベル値を有する患者は、最初の区間に比較して、死亡率または心臓事象および/または血管事象のリスクが61%増加する。
sPLA2活性範囲の予め決定された区間の最後の区間(四分位)に含まれるsPLA2活性値を有するこの同じ患者は、最初の区間に比較して、死亡率または心臓事象および/または血管事象のリスクが70%増加する。
2つの上記区間によって判定した同じ患者に関するオッズ比を、sPLA2活性範囲の区間とCRPレベル(2.89に等しい)の区間によって予め決定されたオッズ比と比較すると、彼/彼女の死亡率または心臓事象および/または血管事象のリスクが189%増加することが示され、いずれかのバイオマーカー単独よりも、絶対的CADリスクの予測に関してきわめて良好な情報が提供される(表3および4)。
この改善された情報は、各マーカー単独で得られた判定または知見からは全く明瞭ではなかった。
上記に規定された方法の他の特に好ましい実施形態において、sPLA2活性は、生体サンプル、特に血清サンプルまたは血漿サンプル、さらに特に血清サンプルにおいて測定される。
本発明はまた、以下を含む、患者における心臓疾患および/または血管疾患を診断するためのインビトロまたはエクスビボの方法に関する:
- 第1のリスクマーカーとして、前記患者のsPLA2活性の値を判定し、この値をsPLA2活性範囲の予め決定された1セットの区間のうちの1区間に位置決めする工程、
- 第2のリスクマーカーとして、前記患者のCRPレベルの値を判定し、この値をCRPレベル範囲の予め決定された1セットの区間のうちの1区間に位置決めする工程、
- 第3のリスクマーカーとして、前記患者の少なくとも2つの上記区間によって得られた組合せ区間を評価し、前記組合せ区間に対する対応するオッズ比を評価し、前記オッズ比の値を、sPLA2活性範囲およびCRPレベル範囲の区間により予め決定されたオッズ比と比較する工程(前記予め決定されたオッズ比により、患者における死亡率または心臓事象および/または血管事象のリスク増大が予測される)。
心臓疾患および/または血管疾患とは、冠動脈疾患(CAD)、高血圧、アテローム性動脈硬化症、腸骨または大腿アテローム性動脈硬化症、血管動脈瘤、血管石灰化、高血圧、心不全、および糖尿病などの罹患を意味する。
上記に規定されたインビトロまたはエクスビボの方法の特定の実施形態において、予め決定されたオッズ比と比較した際の患者のより高いオッズ比は、患者が、前記患者のsPLA2活性値およびCRPレベル値の判定がなされた時点で、前記患者が心臓疾患および/または血管疾患を罹患していることを示しているか、または、前記患者のsPLA2活性値およびCRPレベル値それぞれの判定がなされてから特に72時間を超えた後に、前記患者が心臓疾患および/または血管疾患を将来罹患することを示している。
「将来の罹患」とは、前記患者のオッズ比の判定がなされた時点後に発症が起きる罹患を意味する。
上記に規定されたインビトロまたはエクスビボの方法の他の特定の実施形態において、該患者のsPLA2活性値と前記患者のCRPレベル値との間のオッズ比は、約1.37以上であり、特に約1.39以上であり、さらに特に1.57以上であり、好ましくは、約2.89以上である。
上記に規定されたインビトロまたはエクスビボの方法の好ましい実施形態において、該患者のsPLA2活性値と前記患者のCRPレベル値との間のオッズ比は、約1.37以上であり、特に約1.39以上であり、さらに特に1.57以上であり、さらに特に約1.63以上であり、さらに特に約1.94以上であり、好ましくは、約2.21以上であり、より好ましくは、約2.25以上であり、より好ましくは、約2.51以上であり、より好ましくは、約2.89以上である。
上記に規定されたインビトロまたはエクスビボの方法の他の特定の実施形態において、sPLA2活性およびCRPレベルは生体サンプル、特に、血清サンプルまたは血漿サンプル、さらに特に血清サンプルにおいて測定される。
本発明はまた、死亡率または心臓事象および/または血管事象のリスク増大の判定を目的としたキットの製造のための、sPLA2活性およびCRPレベルの測定用手段の使用に関する。
本発明はまた、心臓疾患および/または血管疾患の診断を目的としたキットの製造のための、sPLA2活性およびCRPレベルの測定用手段の使用に関する。
上記に規定された使用の好ましい実施形態に従うと、sPLA2活性を測定するための手段は、sPLA2によって加水分解され易い化合物を含み、その加水分解産物を直接的または間接的に定量化することができ、また、CRPレベルを測定するための手段は、CRPに特異的なモノクローナル抗体、CRPに特異的な酵素結合抗体、および該酵素に対する基質を含み、該媒体の変色により、CRPレベルは直接的または間接的に定量化され易い。
sPLA2によって加水分解され易い化合物は、該酵素の天然または非天然基質である。該加水分解産物がそれ自体で定量化できない場合、これらの産物と反応でき、定量化できる化合物を生じる化合物を用いることができるが、このような方法は間接的定量化である。
CRPレベルを測定する手段は当業者に知られているもの、例えば、CRPに特異的なポリクローナルまたはモノクローナル抗体、CRPに特異的な酵素結合抗体、特にセイヨウワサビペルオキシダーゼ、および該酵素に対する基質、特にセイヨウワサビペルオキシダーゼに対する基質を含む高感度CRPであり、該媒体の変色により、CRPレベルは直接的または間接的に定量化され易い。
さらに特に、上記に規定された使用において、sPLA2によって加水分解され易い化合物は、蛍光発生的または色素生成的な部分を含むリン脂質またはリン脂質類縁体である。
好ましい実施形態において、リン脂質は、蛍光アシルによって2位が置換されているグリセロリン脂質であり、このようなグリセロリン脂質は、例えば1-ヘキサデカノイル-2-(1-ピレンデカノイル)-sn-グリセロ-3-ホスホメタノール、および蛍光アシル1-ピレンデカノイルであり、セイヨウワサビペルオキシダーゼに対する基質は、3,3',5,5'テトラメチル-ベンジジン(TMB)である。
本発明により使用できる他のリン脂質は、sPLA2によって加水分解され易いリン脂質を含み、このようなリン脂質は、当業者によく知られている。
本発明に使用し易い蛍光アシルは、例えば、ピレンまたはフルオレセインなどの、当業者によく知られた蛍光基によって置換されたアシル類を特に含む。
あるいは、上記に規定された方法には、放射性アシル類によって2位が置換されたグリセロリン脂質などの放射性グリセロリン脂質、または放射性ホスファチジルエタノールアミンが使用できる。
本発明はまた、以下の要素を含む、死亡率または心臓事象および/または血管事象のリスク増大を判定することを目的としたキットに関し:
- sPLA2緩衝液、
- 1-ピレンデカノイルなどの、sPLA2によって加水分解され易く、その加水分解産物が直接的または間接的に定量化できる化合物、
- sPLA2活性対照サンプル、
および
- CRP緩衝液、
- CRPに特異的なモノクローナル抗体、
- CRPに特異的な酵素結合抗体、
- CRPレベル対照サンプル、
sPLA2ならびにCRPにそれぞれ対応している各要素は、別個のまたは共通の単位とする。
sPLA2活性範囲およびCRPレベルの区間に従って予め決定されたオッズ比に対する前記患者の少なくとも2つの区間によって得られたオッズ比の値の比較により、患者における死亡率または心臓事象および/または血管事象のリスク増大が予測される。
本明細書に用いられる用語「sPLA2活性対照サンプル」または「CRPレベル対照サンプル」とは、既知の活性を有するサンプルのことである。
本発明はまた、以下の要素を含む、心臓疾患および/または血管疾患の診断を目的としたキットに関し:
- sPLA2緩衝液、
- 1-ピレンデカノイルなどの、sPLA2によって加水分解され易く、その加水分解産物が直接的または間接的に定量化できる化合物、
- sPLA2活性対照サンプル、
および
- CRP緩衝液、
- CRPに特異的なモノクローナル抗体、
- CRPに特異的な酵素結合抗体、
- CRPレベル対照サンプル、
sPLA2ならびにCRPにそれぞれ対応している各要素は、別個のまたは共通の単位とする。
sPLA2活性範囲およびCRPレベルの区間に従って予め決定されたオッズ比に対する前記患者の少なくとも2つの組合せ区間によって得られたオッズ比の値の比較により、患者における死亡率または心臓事象および/または血管事象のリスク増大が予測される。
本発明はさらに、以下を含む、心血管疾患の治療のために個体に投与される薬剤の有効性を判定するための方法に関する:
i)前記薬剤の投与前に、前記個体のsPLA2活性の値を判定し、この値をsPLA2活性範囲の予め決定された1セットの区間のうちの1区間に位置決めする工程、
ii)前記薬剤の投与前に、前記個体のCRPレベルの値を判定し、この値をCRPレベル範囲の予め決定された1セットの区間のうちの1区間に位置決めする工程、
iii)前記薬剤の投与前に、前記個体の上記2つの区間から得られたオッズ比の値を評価する工程(前記オッズ比は、予め決定されたオッズ比よりも高い場合の参照オッズ比であり、該疾患の予め決定された段階を表す)、
iv)薬剤投与後のオッズ比を得るために、該薬剤が投与された前記個体のsPLA2活性およびCRPレベルを判定する工程、
v)投与後に得られたオッズ比を前記参照オッズ比と比較して、投与後に得られたオッズ比と該参照オッズ比との違いによって心血管疾患の発生を示し、したがって、該薬剤の有効性の程度判定を可能にする工程。
上記に規定された方法の他の特定の実施形態によると、第2のリスクマーカーは、アポB100のIgM ICレベルまたはIgM MDA-LDLである。
アポB100のIgM ICに関して下記に記載のものは全て、IgM MDA-LDLに関して有用であるが、値は異なる。
上記に規定された方法の特定の実施形態によると、該患者は、実質的に健常、特にアテローム性動脈硬化症、心臓および/または血管に関連した疾患に関して健常であると診断されている。
「実質的に健常」とは、該患者が、疾患、特にアテローム性動脈硬化症、心臓および/または血管に関連した疾患による罹患の症状を呈していないことを意味する。このような疾患としては、特に、冠動脈疾患(CAD)、頚動脈アテローム性動脈硬化症、大動脈アテローム性動脈硬化症、腸骨または大腿アテローム性動脈硬化症、血管動脈瘤、血管石灰化、高血圧、心不全、および糖尿病が挙げられる。
上記に規定された方法の他の特定の実施形態によると、該患者は、以下の冠動脈障害のうちの1つを呈していると診断されている:
- 無症状の虚血または虚血なしの無症候性冠動脈疾患、
- 安定性または労作性の狭心症などの心筋壊死のない慢性虚血障害、
- 不安定性狭心症などの心筋壊死のない急性虚血障害、
- STセグメント上昇心筋梗塞または非STセグメント上昇心筋梗塞などの心筋壊死を有する虚血障害。
組織虚血は、しばしば相対的用語で定義され、酸素の需要が組織に対する酸素送達を超えている場合に生じる。組織(例えば心筋)の酸素需要と酸素供給との間に不均衡が存在する。この酸素欠乏状態は、還流減少の結果として起こる代謝物の不十分な除去を伴い得る。心筋虚血は、局所壁運動障害を分析することにより、または心電図(STセグメントの典型的な変異、上方または下方STセグメント偏差、T波反転または急峻対称または高振幅陽性T波などのT波における典型的な変化)の使用により、シンチグラフィーを用いて、臨床的に(例えば胸痛)、生物学的に(例えばミエロペルオキシダーゼ活性の増加)、代謝的に、診断することができる。無症状虚血は一般に、シンチグラフィーまたは24時間心電図記録を用いて診断される。
安定性および労作性の狭心症は一般に、運動時の胸痛により明示され、安静にすると徐々に回復する。これは通常、運動時の組織虚血を反映する。
不安定性狭心症は、安定性狭心症の頻度および/または重症度の最近の増加、または狭心症の最初のエピソード、または安静時の狭心症のいずれかである。
心筋壊死は一般に、循環血液における心筋酵素(例えば、トロポニンI、トロポニンT、CPK)の増加によって診断される。
上記に規定された方法のさらに特定の実施形態によると、該患者は、以下の冠動脈障害の医学的疑いがある:
- 無症状の虚血または虚血なしの無症候性冠動脈疾患、
- 安定性または労作性の狭心症などの心筋壊死のない慢性虚血障害、
- 不安定性狭心症などの心筋壊死のない急性虚血障害、
- STセグメント上昇心筋梗塞または非STセグメント上昇心筋梗塞などの心筋壊死を有する虚血障害。
上記に規定された方法の別の特定の実施形態によると、該患者において、虚血症状の発症は診断されていない。
心筋虚血は、局所壁運動障害を分析することにより、または心電図(STセグメントの典型的な変異、上方または下方STセグメント偏差、T波反転または急峻対称または高振幅陽性T波などのT波における典型的な変化)の使用により、シンチグラフィーを用いて、臨床的に(例えば胸痛)、生物学的に(例えばミエロペルオキシダーゼ活性の増加)、代謝的に、診断することができる。
上記に規定された方法のさらに他の特定の実施形態によると、該患者において、虚血症状の発症が診断されている。
上記に規定された方法の他の好ましい実施形態において、患者のsPLA2活性は、Pernasらによって修正されたRadvanyiら(1989)、Anal Biochem.177:103〜9頁による蛍光定量的アッセイによって判定した際に、約1.8nmol/ml/分より高く、特に約2nmol/ml/分より高く、さらに特に約2.5nmol/ml/分より高く、好ましくは、約2.9nmol/ml/分より高く、より好ましくは、3.3より高く、および/または該患者の血清サンプルから測定されたsPLA2活性は、自動蛍光定量測定によって判定した際に、3.74nmol/ml/分より高く、好ましくは、4.29nmol/ml/分より高く、好ましくは、4.95nmol/ml/分より高い。
上記に規定された方法の好ましい実施形態において、患者におけるsPLA2活性は、前記患者から採取した前記sPLA2を含有する生体サンプルを、1nMから15nMの濃度における基質に接触させることを含む蛍光定量アッセイに基づいた方法によって判定され、前記血清サンプルの容量は、5μlから50μlであり、基質の容量は、100μlから300μlであり、温度範囲は、約15℃から約40℃であり、好ましくは、30℃である。
したがって、上記に規定された方法の特に好ましい実施形態において、患者の血漿サンプルに関して測定されたsPLA2活性は、上記に規定された自動蛍光定量測定の変型によって判定された際に、1.22nmol/ml/分より高く、好ましくは、1.54nmol/ml/分より高く、より好ましくは、1.93nmol/ml/分より高い。
上記に規定された方法の他の好ましい実施形態において、患者の血漿中のアポB100のIgMレベルは、2922 RLU未満であり、特に、約2543 RLU未満であり、さらに特に、約1548 RLU未満であり、より好ましくは、約1373 RLU未満である(表5)。
略号RLUは、アポB100のIgM ICのレベルを測定するために用いられるラジオルミネセンス(Radio Luminescence(またはライト(Light))ユニット(Unit)を意味する(Tsimikasら、Circulation、2004年、110:1406〜1412頁;Tsimikasら、J.Am.Coll.Cardiol.、2003年、41、360〜370頁)(実施例3を参照)。
アポB100のIgM ICまたはMDA-LDLのIgM ICなどの抗酸化LDL抗体が、ヒトにおいて発見されており、証拠の蓄積により、抗酸化LDL抗体は、アテローム発生に対して防止的役割を有するという考えが支持されるようである(Binderら、Nat.Med.2002年、8、1218〜1226頁)。したがって、sPLA2活性およびCRPレベルと反対に、アポB100の低IgM ICレベルは、心血管事象のより高いリスクに対応する。
該アッセイは、実施例3に記載されている。
上記に規定された方法の好ましい実施形態において、前記予め決定されたオッズ比の値は、sPLA2活性範囲の最も高い3つの四分位に含まれるsPLA2活性の区間とアポB100のIgM ICレベル範囲の最も低い3つの四分位に含まれるアポB100のIgM ICレベルの区間との間、特に、sPLA2活性範囲の高い方の半分に含まれる区間とアポB100のIgM ICレベルの低い方の半分に含まれる区間、さらに特に、前記sPLA2範囲の最高四分位に含まれる区間と前記アポB100のIgM IC範囲の最低四分位に含まれる区間との間の関係から得られた比に対応する。
上記に規定された方法の他の好ましい実施形態において、患者のsPLA2活性の少なくとも2つの組合せ区間によって得られたオッズ比および前記患者のアポB100のIgM ICレベルの区間は、約1.37より高く、好ましくは、2.70より高く、より好ましくは、3.15より高く、より好ましくは、4.99より高い。
アポB100のIgM ICのより低い中央値とsPLA2の最高三分位との間から得られたオッズ比は、表6に示されている。
上記に規定された方法の他の特に好ましい実施形態において、sPLA2活性およびアポB100のIgM ICレベルは、生体サンプル、特に血清サンプルまたは血漿サンプル、さらに特に血漿サンプルにおいて測定される。
本発明はまた、以下を含む、患者における心臓疾患および/または血管疾患を診断するためのインビトロまたはエクスビボの方法に関する:
- 第1のリスクマーカーとして、前記患者のsPLA2活性の値を判定し、この値をsPLA2活性範囲の予め決定された1セットの区間のうちの1区間に位置決めする工程、
- 第2のリスクマーカーとして、前記患者のアポB100のIgM ICの値を判定し、この値をアポB100のIgM IC範囲の予め決定された1セットの区間のうちの1区間に位置決めする工程、
- 第3のリスクマーカーとして、前記患者の少なくとも2つの上記区間によって得られたオッズ比の値を評価し、前記オッズ比の値を、sPLA2活性範囲およびアポB100のIgM ICの区間により予め決定されたオッズ比の値と比較する工程(前記予め決定されたオッズ比により、患者における死亡率または心臓事象および/または血管事象のリスク増大が予測される)。
心臓疾患および/または血管疾患とは、冠動脈疾患(CAD)、高血圧、アテローム性動脈硬化症、腸骨または大腿アテローム性動脈硬化症、血管動脈瘤、血管石灰化、高血圧、心不全、および糖尿病などの罹患を意味する。
上記に規定されたインビトロまたはエクスビボの方法の特定の実施形態において、予め決定されたオッズ比と比較した際の患者の組合せ区間のより高いオッズ比は、前記患者のsPLA2活性値およびアポB100のIgM ICレベル値の判定がなされた時点で、前記患者が心臓疾患および/または血管疾患を罹患していることを示しているか、または、前記患者のsPLA2活性値およびアポB100のIgM ICレベル値それぞれの判定がなされてから後の将来、特に72時間を超えた後に、前記患者が心臓疾患および/または血管疾患を罹患することを示している。
「将来の罹患」とは、前記患者のsPLA2活性の判定がなされた時点後に発症が起きる罹患を意味する。
上記に規定されたインビトロまたはエクスビボの方法の他の特定の実施形態において、該患者のsPLA2活性値と前記患者のアポB100のIgM ICレベル値との少なくとも2つの組合せ区間によって得られたオッズ比の値は、約1.37より高く、好ましくは、2.70より高く、より好ましくは、3.15より高く、より好ましくは、4.99より高い。
上記に規定されたインビトロまたはエクスビボの方法の他の特定の実施形態において、sPLA2活性およびアポB100のIgM ICレベルは、生体サンプル、特に血清サンプルまたは血漿サンプル、さらに特に血漿サンプルにおいて測定される。
本発明はまた、死亡率または心臓事象および/または血管事象のリスク増大の判定を目的としたキットの製造のための、sPLA2活性およびアポB100のIgM ICレベルの測定用手段の使用に関する。
本発明はまた、心臓疾患および/または血管疾患の診断を目的としたキットの製造のための、sPLA2活性およびアポB100のIgM ICレベルの測定用手段の使用に関する。
上記に規定された使用の好ましい実施形態に従うと、sPLA2活性を測定するための手段は、sPLA2によって加水分解され易い化合物であって、その加水分解産物を直接的または間接的に定量化することができる化合物を含み、また、アポB100のIgM ICレベルを測定するための手段は、特異的なモノクローナル抗体、標識化抗ヒトIgMおよび化学発光試薬を含む。
sPLA2によって加水分解され易い化合物は、該酵素の天然または非天然基質である。該加水分解産物がそれ自体で定量化できない場合、これらの産物と反応でき、定量化できる化合物を生じる化合物を用いることができるが、このような方法は間接的定量化である。
さらに特に、上記に規定された使用において、sPLA2によって加水分解され易い化合物は、蛍光発生的または色素生成的な部分を含むリン脂質またはリン脂質類縁体である。
好ましい実施形態において、リン脂質は、蛍光アシルによって2位が置換されているグリセロリン脂質であり、このようなグリセロリン脂質は、例えば1-ヘキサデカノイル-2-(1-ピレンデカノイル)-sn-グリセロ-3-ホスホメタノール、および蛍光アシル1-ピレンデカノイルである。
本発明により使用できる他のリン脂質は、sPLA2によって加水分解され易いリン脂質を含み、このようなリン脂質は、当業者によく知られている。
本発明に使用すべき蛍光アシルは、例えば、ピレンまたはフルオレセインなどの、当業者によく知られた蛍光基によって置換されたアシル類を特に含む。
あるいは、上記に規定された方法には、放射性アシル類によって2位が置換されたグリセロリン脂質などの放射性グリセロリン脂質、または放射性ホスファチジルエタノールアミンが使用できる。
特異的なモノクローナル抗体は、例えばMB47である。
標識化抗ヒトIgMは、例えば、アルカリホスファターゼ標識したヤギ抗ヒトIgMである。
化学発光試薬、例えば、LumiPhos530(Lumigen社)は、アルカリホスファターゼの基質である。
本発明はまた、以下の要素:
- sPLA2緩衝液、
- 1-ピレンデカノイルなどの、sPLA2によって加水分解され易く、その加水分解産物が直接的または間接的に定量化できる化合物、
- sPLA2活性対照サンプル、
および
- アポB100のIgM緩衝液、
- ヒトアポB100に特異的なモノクローナル抗体、
- アルカリホスファターゼ標識抗ヒトIgM、
- アポB100のIgM ICレベル対照サンプル
を含む、死亡率または心臓事象および/または血管事象のリスク増大を判定することを目的としたキットであって、sPLA2ならびにアポB100のIgM ICにそれぞれ対応している各要素が、別個のまたは共通の単位とされているキットに関する。
化学発光試薬、例えばLumiPhos 530を加えて、化学発光計でプレートを読み取る。
本明細書で用いられる用語「sPLA2活性対照サンプル」または「アポB100のIgM ICレベル対照サンプル」とは、既知の活性を有するサンプルのことである。
sPLA2活性範囲およびアポB100のIgM IC範囲の区間に従って予め決定されたオッズ比に対する前記患者の少なくとも2つの組合せ区間によって得られたオッズ比の値の比較により、患者における死亡率または心臓事象および/または血管事象のリスク増大が予測される。
本発明はまた、以下の要素:
- sPLA2緩衝液、
- 1-ピレンデカノイルなどの、sPLA2によって加水分解され易く、その加水分解産物が直接的または間接的に定量化できる化合物、
- sPLA2活性対照サンプル、
および
- アポB100のIgM緩衝液、
- ヒトアポB100に特異的なモノクローナル抗体、
- アルカリホスファターゼ標識抗ヒトIgM、
- アポB100のIgM ICレベル対照サンプル
を含む、心臓疾患および/または血管疾患の診断を目的としたキットであって、sPLA2ならびにアポB100のIgM ICにそれぞれ対応している各要素が、別個のまたは共通の単位とされているキットに関する。
化学発光試薬、例えばLumiPhos 530を加えて、化学発光計でプレートを読み取る。
sPLA2活性範囲およびアポB100のIgM IC範囲の区間に従って予め決定されたオッズ比に対する前記患者の少なくとも2つの組合せ区間によって得られたオッズ比の値の比較により、患者における死亡率または心臓事象および/または血管事象のリスク増大が予測される。
本発明はさらに、以下を含む、心血管疾患の治療のために個体に投与される薬剤の有効性を判定するための方法に関する:
i)前記薬剤の投与前に、前記個体のsPLA2活性の値を判定し、この値をsPLA2活性範囲の予め決定された1セットの区間のうちの1区間に位置決めする工程、
ii)前記薬剤の投与前に、前記個体のアポB100のIgM ICレベルの値を判定し、この値をアポB100のIgM ICレベル範囲の予め決定された1セットの区間のうちの1区間に位置決めする工程、
iii)前記薬剤の投与前に、前記個体の上記2つの組合せ区間から得られたオッズ比の値を評価する工程(前記オッズ比は、予め決定されたオッズ比よりも高い場合の参照オッズ比であり、該疾患の予め決定された段階を表す)、
iv)薬剤投与後のオッズ比を得るために、該薬剤が投与された前記個体のsPLA2活性およびアポB100のIgM ICレベルを判定する工程、
v)投与後に得られたオッズ比を前記参照オッズ比と比較して、投与後に得られたオッズ比と該参照オッズ比との違いによって心血管疾患の発生を示し、したがって、該薬剤の有効性の程度判定を可能にする工程。
上記に規定された方法の特定の実施形態によると、第2のリスクマーカーは、CRPレベルおよびアポB100のIgM ICレベルまたはIgM MDA-LDLである。
上記に規定された方法の特定の実施形態によると、該患者は、実質的に健常、特にアテローム性動脈硬化症、心臓および/または血管に関連した疾患に関して健常であると診断されている。
「実質的に健常」とは、該患者が、疾患、特にアテローム性動脈硬化症、心臓および/または血管に関連した疾患による罹患の症状を呈していないことを意味する。このような疾患としては、特に、冠動脈疾患(CAD)、頚動脈アテローム性動脈硬化症、大動脈アテローム性動脈硬化症、腸骨または大腿アテローム性動脈硬化症、血管動脈瘤、血管石灰化、高血圧、心不全、および糖尿病が挙げられる。
上記に規定された方法の他の特定の実施形態によると、該患者は、以下の冠動脈障害のうちの1つを呈していると診断されている:
- 無症状の虚血または虚血なしの無症候性冠動脈疾患、
- 安定性または労作性の狭心症などの心筋壊死のない慢性虚血障害、
- 不安定性狭心症などの心筋壊死のない急性虚血障害、
- STセグメント上昇心筋梗塞または非STセグメント上昇心筋梗塞などの心筋壊死を有する虚血障害。
組織虚血は、しばしば相対的用語で定義され、酸素の需要が組織に対する酸素送達を超えている場合に生じる。組織(例えば心筋)の酸素需要と酸素供給との間に不均衡が存在する。この酸素欠乏状態は、還流減少の結果として起こる代謝物の不十分な除去を伴い得る。心筋虚血は、局所壁運動障害を分析することにより、または心電図(STセグメントの典型的な変異、上方または下方STセグメント偏差、T波反転または急峻対称または高振幅陽性T波などのT波における典型的な変化)の使用により、シンチグラフィーを用いて、臨床的に(例えば胸痛)、生物学的に(例えばミエロペルオキシダーゼ活性の増加)、代謝的に、診断することができる。無症状虚血は一般に、シンチグラフィーまたは24時間心電図記録を用いて診断される。
安定性および労作性の狭心症は一般に、運動時の胸痛により明示され、安静にすると徐々に回復する。これは通常、運動時の組織虚血を反映する。
不安定性狭心症は、安定性狭心症の頻度および/または重症度の最近の増加、または狭心症の最初のエピソード、または安静時の狭心症のいずれかである。
心筋壊死は一般に、循環血液における心筋酵素(例えば、トロポニンI、トロポニンT、CPK)の増加によって診断される。
上記に規定された方法のさらに特定の実施形態によると、該患者は、以下の冠動脈障害の医学的疑いがある:
- 無症状の虚血または虚血なしの無症候性冠動脈疾患、
- 安定性または労作性の狭心症などの心筋壊死のない慢性虚血障害、
- 不安定性狭心症などの心筋壊死のない急性虚血障害、
- STセグメント上昇心筋梗塞または非STセグメント上昇心筋梗塞などの心筋壊死を有する虚血障害。
上記に規定された方法の別の特定の実施形態によると、該患者において、虚血症状の発症は診断されていない。
心筋虚血は、局所壁運動障害を分析することにより、または心電図(STセグメントの典型的な変異、上方または下方STセグメント偏差、T波反転または急峻対称または高振幅陽性T波などのT波における典型的な変化)の使用により、シンチグラフィーを用いて、臨床的に(例えば胸痛)、生物学的に(例えばミエロペルオキシダーゼ活性の増加)、代謝的に、診断することができる。
上記に規定された方法のさらに他の特定の実施形態によると、該患者において、虚血症状の発症が診断されている。
上記に規定された方法の他の好ましい実施形態において、患者のsPLA2活性は、Pernasらによって修正されたRadvanyiら(1989)、Anal Biochem.177:103〜9頁による蛍光定量アッセイによって判定した際に、約1.8nmol/ml/分より高く、特に約2nmol/ml/分より高く、さらに特に約2.5nmol/ml/分より高く、好ましくは、約2.9nmol/ml/分より高く、より好ましくは、3.3より高く、および/または該患者の血清サンプルから測定されたsPLA2活性は、自動蛍光定量測定によって判定した際に、3.74nmol/ml/分より高く、好ましくは、4.29nmol/ml/分より高く、好ましくは、4.95nmol/ml/分より高い。
上記に規定された方法の好ましい実施形態において、患者におけるsPLA2活性は、前記患者から採取した前記sPLA2を含有する生体サンプルを、1nMから15nMの濃度における基質に接触させることを含む蛍光定量アッセイに基づいた方法によって判定され、前記血清サンプルの容量は、5μlから50μlであり、基質の容量は、100μlから300μlであり、温度範囲は、約15℃から約40℃であり、好ましくは、30℃である。
したがって、上記に規定された方法の特に好ましい実施形態において、患者の血漿サンプルに関して測定されたsPLA2活性は、上記に規定された自動蛍光定量測定の変型によって判定された際に、1.22nmol/ml/分より高く、好ましくは、1.54nmol/ml/分より高く、より好ましくは、1.93nmol/ml/分より高い。
上記に規定された方法の他の好ましい実施形態において、患者の血清中のCRPレベルは、0.70mg/lより高く、特に約1.45mg/lより高く、さらに特に、約2.5mg/lより高く、より好ましくは、約3.1mg/lより高い。
上記に規定された方法の他の好ましい実施形態において、患者の血漿中のアポB100のIgMレベルは、2922 RLU未満であり、特に、約2543 RLU未満であり、さらに特に、約1548 RLU未満であり、より好ましくは、約1373 RLU未満である。
上記で定義されたとおり、略号RLUは、アポB100のIgM ICのレベルを測定するために用いられるラジオルミネセンスユニット(Radio Luminescence Unit)を意味する(実施例3を参照)。
上記に規定された方法の好ましい実施形態において、予め決定されたオッズ比の値は、以下の間の関係から得られた比に対応し:
- sPLA2活性範囲の最も高い3つの四分位に含まれるsPLA2活性の区間、
- CRPレベル範囲の最も高い3つの四分位に含まれるCRPレベルの区間、および
- アポB100のIgM ICレベル範囲の最も低い3つの四分位に含まれるアポB100のIgM ICレベルの区間、
特に、sPLA2活性範囲の高い方の半分、CRPレベル範囲の高い方の半分とアポB100のIgM ICレベルの低い方の半分、さらに特に、前記sPLA2範囲の最高の四分位、前記CRPレベル範囲の最高の四分位、および前記アポB100のIgM IC範囲の最低の四分位に含まれる前記区間の間の関係から得られた比に対応する。
上記に規定された方法の他の特に好ましい実施形態において、sPLA2活性、CRPレベルおよびアポB100のIgM ICまたはIgM MDA-LDLは、生体サンプル、特に血清サンプルまたは血漿サンプル、さらに特に血漿サンプルにおいて測定される。
本発明はまた、以下を含む、患者における心臓疾患および/または血管疾患を診断するためのインビトロまたはエクスビボの方法に関する:
- 前記患者のsPLA2活性の値を判定し、この値をsPLA2活性範囲の予め決定された1セットの区間のうちの1区間に位置決めする工程、
- 前記患者のCRPレベルの値を判定し、この値をCRPレベル範囲の予め決定された1セットの区間のうちの1区間に位置決めする工程、
- 前記患者のアポB100のIgM ICの値を判定し、この値をアポB100のIgM IC範囲の予め決定された1セットの区間のうちの1区間に位置決めする工程、
- 前記患者の3つの上記区間によって得られた組合せ区間を評価し、前記組合せ区間に対応するオッズ比を評価し、前記オッズ比の値を、sPLA2活性範囲、CRPレベル範囲およびアポB100のIgM ICレベル範囲の区間により予め決定されたオッズ比の値と比較する工程(前記予め決定されたオッズ比により、患者における死亡率または心臓事象および/または血管事象のリスク増大が予測される)。
心臓疾患および/または血管疾患とは、冠動脈疾患(CAD)、高血圧、アテローム性動脈硬化症、腸骨または大腿アテローム性動脈硬化症、血管動脈瘤、血管石灰化、高血圧、心不全、および糖尿病などの罹患を意味する。
上記に規定されたインビトロまたはエクスビボの方法の特定の実施形態において、予め決定されたオッズ比と比較した際の患者のより高いオッズ比は、患者が、前記患者のsPLA2活性値、CRPレベル値、およびアポB100のIgM ICレベル値の判定がなされた時点で、前記患者が心臓疾患および/または血管疾患を罹患していることを示しているか、または前記患者のsPLA2活性値、CRPレベル値、およびアポB100のIgM ICレベル値それぞれの判定がなされた後の将来、特に72時間を超えた後に、前記患者が心臓疾患および/または血管疾患を罹患することを示している。
「将来の罹患」とは、前記患者のオッズ比の判定がなされた時点後に発症が起きる罹患を意味する。
上記に規定されたインビトロまたはエクスビボの方法の他の特定の実施形態において、sPLA2活性、CRPレベルおよびアポB100のIgM ICレベルは、生体サンプル、特に血清サンプルまたは血漿サンプル、さらに特に血清サンプルにおいて測定される。
本発明はまた、心臓疾患および/または血管疾患の診断を目的としたキットの製造のための、sPLA2活性、CRPレベルおよびアポB100のIgM ICレベルの測定用手段の使用に関する。
本発明はまた、心臓疾患および/または血管疾患の診断を目的としたキットの製造のための、sPLA2活性、CRPレベルおよびアポB100のIgM ICレベルの測定用手段の使用に関する。
上記に規定された使用の好ましい実施形態に従うと、sPLA2活性を測定するための手段は、sPLA2によって加水分解され易い化合物であって、その加水分解産物を直接的または間接的に定量化することができる化合物を含み、CRPレベルを測定するための手段は、CRPに特異的なモノクローナル抗体、CRPに特異的な酵素結合抗体、および該酵素に対する基質を含み、該媒体の色変化によって、CRPレベルが直接的または間接的に定量化されることになっており、アポB100のIgM ICレベルを測定するための手段は、特異的なモノクローナル抗体、標識化抗ヒトIgMおよび化学発光試薬を含む。
sPLA2によって加水分解され易い化合物は、該酵素の天然または非天然基質である。該加水分解産物がそれ自体で定量化できない場合、これらの産物と反応でき、定量化できる化合物を生じる化合物を用いることができるが、このような方法は間接的定量化である。
さらに特に、上記に規定された使用において、sPLA2によって加水分解され易い化合物は、蛍光発生的または色素生成的な部分を含むリン脂質またはリン脂質類縁体であり、該モノクローナル抗体は、ヒトアポB100に特異的であり、抗ヒトIgMは、アルカリホスファターゼ標識抗IgMである。
好ましい実施形態において、リン脂質は、蛍光アシルによって2位が置換されているグリセロリン脂質であり、このようなグリセロリン脂質は、例えば1-ヘキサデカノイル-2-(1-ピレンデカノイル)-sn-グリセロ-3-ホスホメタノール、および蛍光アシル1-ピレンデカノイルであり、セイヨウワサビペロキシダーゼに対する基質は、3,3',5,5'テトラメチル-ベンジジン(TMB)である。
本発明により使用できる他のリン脂質は、sPLA2によって加水分解され易いリン脂質を含み、このようなリン脂質は、当業者によく知られている。
本発明に使用すべき蛍光アシルは、例えば、ピレンまたはフルオレセインなどの、当業者によく知られた蛍光基によって置換されたアシル類を特に含む。
あるいは、上記に規定された方法には、放射性アシル類によって2位が置換されたグリセロリン脂質などの放射性グリセロリン脂質、または放射性ホスファチジルエタノールアミンが使用できる。
本発明はまた、以下の要素を含む、死亡率または心臓事象および/または血管事象のリスク増大を判定することを目的としたキットに関し:
- sPLA2緩衝液、
- 1-ピレンデカノイルなどの、sPLA2によって加水分解され易く、その加水分解産物が直接的または間接的に定量化できる化合物、
- sPLA2活性対照サンプル、
および
- CRP緩衝液、
- CRPに特異的なモノクローナル抗体、
- CRPに特異的な酵素結合抗体、
- CRPレベル対照サンプル、
および
- アポB100のIgM緩衝液、
- 化学発光試薬、
- ヒトアポB100に特異的なモノクローナル抗体、
- アルカリホスファターゼ標識抗ヒトIgM
- アポB100のIgM ICレベル対照サンプル、
sPLA2、CRPおよびアポB100のIgM ICにそれぞれ対応している各要素は、別個のまたは共通の単位とされている。
sPLA2活性範囲、CRPレベルおよびアポB100のIgM IC範囲の区間に従って予め決定されたオッズ比に対する前記患者の3つの区間によって得られたオッズ比の値の比較により、患者における死亡率または心臓事象および/または血管事象のリスク増大が予測される。
本発明はさらに、以下を含む、心血管疾患の治療のために個体に投与される薬剤の有効性を判定するための方法に関する:
i)前記薬剤の投与前に、前記個体のsPLA2活性の値を判定し、この値をsPLA2活性範囲の予め決定された1セットの区間のうちの1区間に位置決めする工程、
ii)前記薬剤の投与前に、前記個体のCRPレベル値を判定し、この値をCRPレベル範囲の予め決定された1セットの区間のうちの1区間に位置決めする工程、
iii)前記薬剤の投与前に、前記個体のアポB100のIgM ICレベルの値を判定し、この値をアポB100のIgM ICレベル範囲の予め決定された1セットの区間のうちの1区間に位置決めする工程、
iv)前記薬剤の投与前に、前記個体の上記3つの区間から得られたオッズ比を評価する工程(前記オッズ比は、予め決定されたオッズ比よりも高い場合の参照オッズ比であり、該疾患の予め決定された段階を表す)、
v)薬剤投与後のオッズ比を得るために、該薬剤が投与された前記個体のsPLA2活性、
CRPレベルおよびアポB100のIgM ICレベルを判定する工程、
vi)投与後に得られたオッズ比を前記参照オッズ比と比較して、投与後に得られたオッズ比と該参照オッズ比との違いによって心血管疾患の発生を示し、したがって、該薬剤の有効性の程度判定を可能にする工程。
本発明はまた、前記患者から採取された、ホスホリパーゼ、好ましくはハチ毒から単離されたホスホリパーゼを含有する生体サンプルを1nMから15nMの濃度の基質に接触させることを含む蛍光定量アッセイに基づいた、患者におけるホスホリパーゼ活性を判定するための方法に関するものであり、該血清サンプルの容量は、5μlから50μlであり、基質の容量は、100μlから300μlであり、温度範囲は、約15℃から約40℃であり、好ましくは、30℃である。
該アッセイを実施するために使用できるホスホリパーゼは、分泌ホスホリパーゼまたはコブラ毒、好ましくは、ハチ毒などのハチ毒またはヘビ毒からの既知の活性を有するホスホリパーゼである。任意の種からの組換えホスホリパーゼでよい。
上記に規定された方法の好ましい実施形態によると、sPLA2活性が患者において判定される。
本発明はまた、以下を含む、患者における死亡率または心臓事象および/または血管事象のリスク増大を判定するための方法に関し:
- 前記患者のsPLA2活性を判定する工程、
- 前記活性を予め決定された値と比較する工程、
前記予め決定された値と比較した際の前記患者のより高いsPLA2活性は、死亡率または心臓事象および/または血管事象のリスク増大を示す。
「リスク増大」とは、sPLA2活性が予め決定された値よりも高い患者は、sPLA2活性が前記予め決定された値よりも低い個体よりも、心臓事象および/または血管事象により死亡または罹患し易いことを意味する。
本発明によると、以下の事象が特に心臓事象および/または血管事象であると考えられる:
心筋梗塞(MI)、脳血管傷害、心臓疾患および/または血管疾患による入院、および血管再生操作。
上記に規定された方法の特定の実施形態によると、該患者は、実質的に健常、特にアテローム性動脈硬化症、心臓および/または血管に関連した疾患に関して健常であると診断されている。
「実質的に健常」とは、該患者が、疾患、特にアテローム性動脈硬化症、心臓および/または血管に関連した疾患による罹患の症状を呈していないことを意味する。このような疾患としては、特に、冠動脈疾患(CAD)、頚動脈アテローム性動脈硬化症、大動脈アテローム性動脈硬化症、腸骨または大腿アテローム性動脈硬化症、血管動脈瘤、血管石灰化、高血圧、心不全、および糖尿病が挙げられる。
上記に規定された方法の他の特定の実施形態によると、該患者は、以下の冠状動脈障害のうちの1つを呈していると診断されている:
- 無症状の虚血または虚血なしの無症候性冠動脈疾患、
- 安定性または労作性の狭心症などの心筋壊死のない慢性虚血障害、
- 不安定性狭心症などの心筋壊死のない急性虚血障害、
- STセグメント上昇心筋梗塞または非STセグメント上昇心筋梗塞などの心筋壊死を有する虚血障害。
組織虚血は、しばしば相対的用語で定義され、酸素の需要が組織に対する酸素送達を超えている場合に生じる。組織(例えば心筋)の酸素需要と酸素供給との間に不均衡が存在する。この酸素欠乏状態は、還流減少の結果として起こる代謝物の不十分な除去を伴い得る。心筋虚血は、局所壁運動障害を分析することにより、または心電図(STセグメントの典型的な変異、上方または下方STセグメント偏差、T波反転または急峻対称または高振幅陽性T波などのT波における典型的な変化)の使用により、シンチグラフィーを用いて、臨床的に(例えば胸痛)、生物学的に(例えばミエロペルオキシダーゼ活性の増加)、代謝的に、診断することができる。無症状虚血は一般に、シンチグラフィーまたは24時間心電図記録を用いて診断される。
安定性および労作性の狭心症は一般に、運動時の胸痛により明示され、安静にすると徐々に回復する。これは通常、運動時の組織虚血を反映する。
不安定性狭心症は、安定性狭心症の頻度および/または重症度の最近の増加、または狭心症の最初のエピソード、または安静時の狭心症のいずれかである。
心筋壊死は一般に、循環血液における心筋酵素(例えば、トロポニンI、トロポニンT、CPK)の増加によって診断される。
上記に規定された方法のさらに特定の実施形態によると、該患者は、以下の冠動脈障害の医学的疑いがある:
- 無症状の虚血または虚血なしの無症候性冠動脈疾患、
- 安定性または労作性の狭心症などの心筋壊死のない慢性虚血障害、
- 不安定性狭心症などの心筋壊死のない急性虚血障害、
- STセグメント上昇心筋梗塞または非STセグメント上昇心筋梗塞などの心筋壊死を有する虚血障害。
上記に規定された方法の別の特定の実施形態によると、該患者において、虚血症状の発症は診断されていない。
心筋虚血は、局所壁運動障害を分析することにより、または心電図(STセグメントの典型的な変異、上方または下方STセグメント偏差、T波反転または急峻対称または高振幅陽性T波などのT波における典型的な変化)の使用により、シンチグラフィーを用いて、臨床的に(例えば胸痛)、生物学的に(例えばミエロペルオキシダーゼ活性の増加)、代謝的に、診断することができる。
上記に規定された方法のさらに他の特定の実施形態によると、該患者において、虚血症状の発症が診断されている。
上記に規定された方法の好ましい実施形態によると、予め決定された値は、実質的に健常な個体のsPLA2活性範囲の最も高い3つの四分位、特に高い方の半分、さらに特に前記範囲の最高の四分位に含まれるsPLA2活性に相当する。
上記で意図されたように、実質的に健常な個体の所与の集団は、4つの部分(四分位)に分けられ、各々は同数の個体を含み、第1の四分位は、最低のsPLA2活性を有する所与の集団の部分に相当し、最後の四分位は、最高のsPLA2活性を有する所与の集団の部分に相当し、第2および第3の四分位は、第1の四分位と最後の四分位との間の残りの集団に相当する。
上記に規定された方法の好ましい実施形態において、患者のsPLA2活性は、約3.74nmol/ml/分より高く、特に、約4.29nmol/ml/分より高く、さらに特に、約4.95nmol/ml/分より高い。
上記に規定された方法の別の特に好ましい実施形態において、sPLA2活性は、生体サンプル、特に血清サンプルにおいて測定される。
本発明はさらに、以下を特徴とする、心臓疾患および/または血管疾患の予防または治療を目的とする薬剤の製造に使用すべき薬剤をスクリーニングする方法に関する:
- 第1の工程において、実質的に健常な同種の動物に相対的に、より高いsPLA2活性を構成的に示し、スクリーンされる薬剤が投与された、試験動物のsPLA2活性をインビトロで測定する、
- 第2の工程において、スクリーンされる前記薬剤の投与の前に、測定された活性を前記試験動物のsPLA2活性と比較する、
- 第3の工程において、スクリーンされる前記薬剤の投与の前に、測定された活性が試験動物のsPLA2活性より低い場合に、スクリーンされた薬剤を選択する。
上記に規定されたスクリーニング法の好ましい実施形態において、試験動物はマウスまたはラットなどの非ヒト遺伝子導入動物である。
上記に規定されたスクリーニング法の別の好ましい実施形態において、sPLA2活性は、試験動物の血漿サンプルから測定される。
上記に規定されたスクリーニング法のさらに他の好ましい実施形態において、該動物は、sPLA2活性を測定した後に殺処置される。
1分間の蛍光の差(Fmax-Fmin)とハチ毒sPLA2の濃度との間の関係を示す。この図は、sPLA2の0U/mlと100U/mlとの間の測定方法の線形性を示している。 心筋梗塞なしの生存分布関数対日数のカプラン-マイヤー分析を示している。より低い中央値(<1909、表4を参照)に位置するアポB100 IgM ICレベル値および最高の三分位に位置するsPLA2活性(>2.9nmol/ml/分)を有する患者は、死亡のリスクが増大している。300日後、彼らの梗塞なしの生存分布関数は0.75より低い。これは、心筋梗塞なしで生存する個体が75%未満であることを意味している。
(実施例)
(実施例1):循環分泌性ホスホリパーゼA2活性と健常な男性および女性における冠動脈事象発生のリスク、Epic-Norfolk試験
方法
癌および栄養についての欧州予測調査(Epic-Norfolk)、追跡調査の詳述が以前発行されている(Day N.ら、Br.J.Cancer、1999年:80 Suppl.1:95〜103頁)。手短に述べると、ノアフォーク(Norfolk)における一般医の年齢-性別登録から集められた、45歳から79歳の25,663人の男性および女性のこの予測人口研究が、癌の食事および他の決定因子を調査するために設計された。参加者は、1993年から1997年の間のベースラインアンケート調査を完了し、通院し、2003年11月まで、平均約6年の追跡調査を受けた。全ての個体は、国立統計イギリス局における死亡証明に関してマークされ、全コホートに関して生存状態が確認されている。また、入院した参加者は、ノアフォーク居住者に関してイングランドおよびウェールズを通した全病院の交信を確認している東ノーフォーク保健庁のデータベースとのデータ連結により独特の国立保健庁番号を用いて確認された。この試験は、ノルウィッチ(Norwich)保健庁倫理委員会によって承認され、全ての参加者は、インフォームドコンセント文書を提出した。
試験集団
Epic-Norfolk試験における参加者の中で、入れ子型対照試験を実施した。症例の確認は、他所で詳述されている(Boekholdt,S.M.、Circulation、2004年;110:1418〜1423頁)。手短に述べると、症例は、追跡調査期間中に致命的または非致命的なCADを有すると確認された個体であった。CADは、疾病の国際分類改定第9版に従って、410〜414の記号で定義された。ベースライン通院時に、心臓発作または卒中の履歴を報告した個体は除外された。
追跡調査期間中にいずれの心血管疾患もないままであった試験参加者が対照であった。性別、年齢(5年以内)および登録時(3ヵ月以内)により、各事例に対して2つの対照を対合させた。
試験測定
血液サンプルは、ケンブリッジ大学、臨床生化学学部において、-80℃で保存された。総コレステロール、HDL-コレステロール(HDL-C)およびトリグリセリドの血清レベルは、RA 1000(Bayer Dianostics、Basingstoke、英国)によって新鮮なサンプルで測定し、LDL-コレステロール(LDL-C)レベルは、フリーデワルド(Friedewald)の式(Friedewald W.T.ら、Clin Chem.1972年;18:499〜502頁)によって算出した。CRPレベルは、先述したサンドイッチ型のELISAによって測定した(Bruins P.ら、Circulation、1997年;96:3542〜3548頁)。
血清sPLA2活性は、Pernasら(Biophys Res Commun.1991年;178:1298〜1305頁)により修正されたRadvanyiら(Anal Biochem.1989年;177:103〜109頁)の選択的蛍光定量アッセイによって測定した。sPLA2活性は、前述した(Mallat Z.ら、J.Am.Coll Cardiol.2005年;46:1249〜1257頁)蛍光基質、1-ヘキサデカノイル-2-(1-ピレンデカノイル)-sn-グリセロ-3ホスホメタノールナトリウム塩(Interchim、フランス国、Montlucon)を用いて測定した。ハチ毒(Sigma Chemical社、フランス国)からの0.1単位のPLA2を用いて、蛍光基質の100パーセントの加水分解を測定した。血漿非存在下での基質の加水分解を陰性対照として用い、PLA2活性から推定した。サンプルは全て二重に試験し、血漿の活性は、nmol/分/mlとして表した。検出可能な最小活性は、0.10nmol/分/mlであった。sPLA2活性蛍光定量アッセイの不正確度は、低い(1.25nmol/分/ml)および高い(9.5nmol/分/ml)sPLA2活性を有するサンプルの測定によって判定した。バッチ内CVsは、2.7%(低活性サンプル)から3.2%(高活性サンプル)の範囲であり、バッチ間CVは、5.7%であった。
体系的偏りを避けるために、サンプルは全てランダムな順序で分析した。研究者および実験者は、認識し得る情報に対しては盲検化され、番号のみでサンプルを認識できた。
統計解析
ベースラインの特徴は、症例と対合対照との間で、それらの対合を考慮して、比較した。連続変数に関しては、混合効果モデルを用い、カテゴリー変数に関しては、条件ロジスティック回帰を用いた。トリグリセリド、CRP、sPLA2抗原レベルおよびsPLA2活性は、非対称分布を有したため、値は統計解析における連続変数として用いる前に対数変換した;しかし、表には、非変換の中央値および対応する四分位間の範囲が示されている。血漿sPLA2活性と伝統的な心血管リスク因子との間の関連性を判定するために、sPLA2活性四分位当たりの平均リスク因子レベルを算出した。
四分位を対照の分布の基礎とした。性別特定解析には、性別特定四分位を用い、プール解析には、性別混成に基づいた四分位を用いた。
また、連続変数としてのsPLA2活性と他の連続的リスクバイオマーカーとの間の関連性を評価するために、ピヤソン相関係数を算出した。
CAD発生の相対的リスクの推定値として、オッズ比および対応する95%信頼区間(95% Cls)を、条件ロジスティック回帰分析を用いて算出した。最低sPLA2活性四分位を参照カテゴリーとして用いた。
以下の心血管リスク因子に関してオッズ比を調整した:体重指数、糖尿病、収縮期血圧、LDL-C、HDL-C、および喫煙(なし、以前、現在)。
また、sPLA2のIIA型濃度のCRPレベルおよび血清レベルに関してさらに調整した後のオッズ比も算出した。ロジスティック回帰モデルにおける四分位に関して単一の順位項を入れることにより、sPLA2活性およびCRPの四分位にわたる傾向を調べた。四分位指標を含有するモデルを、自由度(df)2を有する公算比試験における線形項を含有するものと比較することによって、線形性からの偏差を調べた。
さらに、他の変数を含有するモデルに対するsPLA2活性の四分位のさらなる予測的寄与も、公算比試験により調べた。フレーミンガムリスクスコア(Framingham Risk Score)に加えて、sPLA2活性レベルが予測的な値を有したかどうかを評価するために、sPLA2活性四分位当たりの将来のCADに関するオッズ比を算出し、同時に、連続変数としてのフレーミンガムリスクスコアに対して調整した。フレーミンガムリスクスコアは、年齢、性別、総コレステロール、HDL-C、収縮期および拡張期の血圧、喫煙および糖尿病の存在を考慮に入れる先に報告されたアルゴリズム(Wilson P.W.ら、Circulation、1998年;97:1837〜1847頁)を用いて算出した。
統計解析は、SPSSソフトウェア(12.0.1版、イリノイ州、シカゴ)を用いて実施した。p値<0.05は、統計的有意性を示していると考えられた。
結果
ベースライン特性(表1および表2)
事例および対照のベースライン特性を表1に示す。男性と女性の双方において、追跡調査期間中にCADを発現した患者は、該事象がないままであった患者よりも、糖尿病、高血圧、喫煙および異脂肪血症の前歴を有する傾向が高かった。より高い血圧、LDL-Cレベル、CRPレベル、sPLA2活性、およびより低いHDL-Cレベルが、対照よりも症例において見られた。sPLA2活性は、糖尿病を除いて、伝統的な心血管リスク因子に有意に関係していた(表2)。男性と女性で同様な結果が得られた(データは示していない)。
sPLA2活性と冠動脈疾患発生のリスク(表3)
多変数モデルに入れられた全変数の中で、糖尿病、喫煙状態、収縮期血圧、LDL-C、CRPおよびsPLA2活性の存在はCAD発生の独立した予測因子であり、一方、HDL-CはCADのリスク減少と関係していた。sPLA2活性の1nmol/分/mlの増加に関連したCAD発生のオッズ比は、1.10(1.02〜1.18、P=0.01)であった。sPLA2のIIA型濃度の1ng/mlの増加は、1.02(1.01〜1.03、P=0.003)のオッズ比と関連していた。1mg/mlのCRP増加に関連したCAD発生のオッズ比は、1.02(1.01〜1.03、P=0.02)であった。
表3は、ベースラインsPLA2活性またはベースラインCRPの四分位増加によるCAD発生の調整オッズ比を示す。全ての伝統的リスク因子、CRP、およびsPLA2 IIA型濃度に関して調整した後、sPLA2活性の第2、第3および第4の四分位におけるCAD発生のオッズ比は、最低四分位に比較して、1.41、1.33、および1.56(P=0.003)であった。男性と女性で同様な効果が見られた(データは示していない)。伝統的リスク因子、sPLA2 IIA型濃度およびsPLA2活性に関して調整した、CRPの四分位増加に関連した対応オッズ比は、0.93、1.19、および1.43(P=0.001)であった。sPLA2 IIA型濃度の四分位増加は、伝統的リスク因子、CRPおよびsPLA2活性に関して調整後、CAD発生リスクの緩和な増加に関連していた(1.02、1.12、および1.29、P=0.04)。
sPLA2活性およびフレーミンガムリスクスコア
フレーミンガムリスクスコアに加えて、sPLA2活性レベルが予測的な値を有したかどうかを評価するために、sPLA2活性四分位当たりのCAD発生のオッズ比を条件ロジスティック回帰を用いて算出し、フレーミンガムリスクスコアの成分に関して調整した。sPLA2活性の四分位増加は、将来のCADリスクに有意に関連したままであった、1.0(参照として選択)、1.4(1.1〜1.8)、1.3(1.0〜1.7)および1.6(1.3〜2.1)(P=0.001)。CRPの四分位増加の対応オッズ比は、1.0(参照として選択)、1.0(0.8〜1.3)、1.3(1.0〜1.6)、および1.8(1.4〜2.3)(P<0.001)。
CAD発生のリスクを評価するためのsPLA2活性およびCRPレベルの組合せ測定(表4)
sPLA2活性とCRPレベルの相関性が低かった(r=0.15)ことから、各々のバイオマーカーが異なる高リスク群を識別していることが示唆される。sPLA2活性に基づいたモデルが非事象から事象を識別する能力は、CRPレベルに基づいたモデルの能力と同様であった。公算比カイ二乗統計は、sPLA2活性に基づいたモデルでは、220であり、CRPに基づいたモデルでは、225であった(双方とも10df)。CRPに基づいたモデルにsPLA2活性を加えると、該モデルがCAD発生を予測する能力が有意に増加した(カイ二乗=14.4、1df;P<0.001)。CRPと、sPLA2のIIA型濃度ではなく、sPLA2活性との組合せ測定は、特に情報的であった。sPLA2活性の四分位増加は、CADのリスクが低いと考えられたであろうきわめて低いCRPレベル(<0.70mg/l)を有する人における将来のCADのリスクと関連したままであった(表4)。さらに、sPLA2活性の四分位増加はまた、最高のCRPレベル(≧3.10mg/l)を有する人においても、将来のCADのリスクに関連していた(表4)。対照的に、sPLA2のIIA型濃度の四分位増加は、高CRPレベルを有する人における将来のCADのリスク増加に関連していなかった(表5)。最も興味深いことに、sPLA2活性の最高の四分位(≧4.95nmol/分/ml)およびCRP(≧3.10mg/l)にある人(n=309)は、双方のマーカーの最低四分位にある人(n=176)に比較して、2.89の調整オッズ比(信頼区間95%、1.78〜4.68;P<0.001)を有した(表4)。
(実施例2):血清ホスホリパーゼA2活性の自動蛍光定量測定に関する微量法適応
実施例1において、以下の方法を、sPLA2活性の判定に用いた。
健常な血液ドナー(34人の男性および45人の女性;年齢範囲、21〜64歳)から、インフォームドコンセントの書類と共に、血清サンプル(n=79)を得た。急性冠動脈症候群を有する234人の患者において、虚血症状発症の平均30時間後に、ヒトELISAキットを用いて、sPLA2活性と免疫反応性sPLA2レベルとの間の関連性も判定した。直ちに1000g、4℃で10分間、遠心分離し、分析するまで-70℃で保存した血液サンプルから血清を得た。分析前に、解凍したサンプルを、1000gで60秒間、遠心分離した。
1-ヘキサデカノイル-2-(1-ピレデカノイル)-sn-グリセロ-3ホスホメタノールナトリウム塩(Interchim、フランス国、Montlucon)の自己消光特性を用いて、連続的蛍光定量アッセイにおいて、血清中に分泌されたPLA2活性を測定した。sPLA2によるこの基質の加水分解によって、405nm(λ励起355nm、λ発光405nm)における蛍光の増大に至る。この蛍光増大を用いて、該基質の最初の加水分解率を判定でき、その結果、未知のサンプル中のsPLA2活性を判定することができる。手短に述べると、200μlの緩衝液(10mMのトリス-HCl、pH 8.7、0.1%のアルブミン、10mMの塩化カルシウム)中、1nmolの蛍光基質をBlack Maxisorpマイクロタイトレーションプレート(96ウェル)に自動分配した。該基質の自己消光性のため、先ず低蛍光が、攪拌装置および30℃に規定されたサーモスタットを備えたFluoatar Optima 蛍光計に記録される(Fmin)。30μl(100U/mL)のハチ毒PLA2 (Sigma Chemical社、フランス国)の添加により、全ての基質の迅速な加水分解に至り(100%の加水分解)、蛍光が最大値(Fmax)まで増大する。蛍光の差(Fmax-Fmin)は、該緩衝液中の基質の濃度に線形に関連しており、全てのアッセイで一定に保たれた。最初の基質加水分解率は、加えられたハチ毒sPLA2の量に線形に関連していた(図1)。未知の血液サンプル中のsPLA2活性を判定するために、30μlの血清を自動分配し、基質混合物に加えた。1分での蛍光を記録し(F)、したがって、1分間で1nmolの基質を加水分解できるsPLA2の活性に相当する。2ポイント手法を用いて、各サンプルの補正された蛍光強度を測定し、酵素活性(nmol/分/mlで表された)を評価した。全てのサンプルを二重に試験した。
このアッセイのダイナミックレンジは、蛍光測定の精度のみによって限定され、sPLA2活性蛍光定量アッセイの検出限界(平均+3SD)は、緩衝液の蛍光強度測定によって判定した際に0.15nmol/分/mlであった。このアッセイの上限は、基質の加水分解が50%を超えた時に評価された。この試験に含まれた異常サンプルで、50%を超える加水分解を示して希釈を必要とするものはなかった。
sPLA2活性蛍光定量アッセイの不正確さは、低(1.25nmol/分/ml)および高(9.5nmol/分/ml)sPLA2活性を有するサンプルの測定により判定した。バッチ内CVsは、2.7%(低活性サンプル、n=10)から3.2%(高活性サンプル、n=10)の範囲であり、バッチ間CVは、5.7%(n=10)であった。血清sPLA2活性は、-70℃で6カ月間の保存で影響を受けなかった。健常成人に関する平均(±SD)血清sPLA2は、3.25±0.58nmol/分/ml(1.69〜5.86nmol/分/mlの範囲)と推定された。
急性冠動脈症候群を有する患者の234のサンプルに関して、Cayman Chemical社から購入したヒトELISAキットを用いて、免疫反応性sPLA2レベルを測定した。これらのサンプルで測定された分泌性PLA2活性は、免疫反応性sPLA2測定によって判定されたものと相関していた(p<0.0138;r=0.44)。これら2つの方法によって評価されたsPLA2の平均値は、活性蛍光定量測定と免疫反応法のそれぞれに関して、5.57±1.88nmol/分/ml(0.9〜16.9nmol/分/ml)と587.7±1126.3 pg/ml(67.32〜10090 pg/ml)であった。
(実施例3):ヒトアポB100の免疫複合体
モノクローナル抗体、MB47(ヒトアポ100に特異的)を、PBS中、5μg/mlの濃度で、50μl/ウェルに4℃で一晩置く。該プレートをPBSで3回洗浄後、該プレートを、PBS中100μlの1% BSA、またはTBSにより、室温で45分間ブロックする。もう一度PBSで洗浄後、1%のBSAを含有するPBS中、1:50に希釈したヒト血漿を該ウェルに、室温で1時間、50μl/ウェルで加える。血漿は全て三重でウェルに加え平均値を用いる。再度洗浄後、1%のBSAプラスアクチベーターを含有するトリス緩衝生理食塩水で希釈したアルカリホスファターゼ標識ヤギ抗ヒトIgGまたはIgM(Sigma)を該ウェルに、室温で1時間、50μl/ウェルで加える。蒸留水で1:1希釈した化学発光試薬、Lumiphos 530(Lumigen社)を、各ウェルに、90分間加え、その後、該プレートを、化学発光計(Dynexルミノメーター)で読み取る。
アポB100の等量が捕捉されたことを確認するために、上記を設定するが、ただし第2の抗体、ビオチン標識ヤギ抗ヒトアポB100(BioDesign International)を加えた。室温で1時間後、該プレートを洗浄し、第3の抗体、アルカリホスファターゼ標識neutrAvidin(Pierce)を該ウェルに加える。次いで、上記の化学発光試薬を加える。
ここで用いられるアクチベーターは、20mMのMgCl2、20mMのZnCl2、0.4%のアジドの混合物であり、使用前に希釈される(TBS/1% BSA緩衝液中1:20)。
(実施例4):ヒト血漿または血清サンプル中の自動蛍光sPLA2アッセイ
sPLA2活性の測定に関して、実施例1に記載され用いられ、実施例2で詳述された方法の替わりに、sPLA2活性の検出を妨害し得る生体サンプル中の他の因子による蛍光強度の非特異的増大に依る可能性のある変動を考慮に入れて、以下の方法が開発された。
血漿または血清中に分泌されたPLA2活性(sPLA2)を、1-ヘキサデカノイル-2-(1-ピレデカノイル)-sn-グリセロ-3ホスホメタノールナトリウム塩(Interchim、フランス国、Montlucon)の自己消光特性を用いて、連続的蛍光定量アッセイにおいて測定した。sPLA2によるこの基質の加水分解により、1-ピランデカン酸が生じ、405nm(λ励起355nm、λ発光405nm)における蛍光の増大に至る。この蛍光増大を用いて、該基質の最初の加水分解率を判定でき、その結果、未知のサンプル中のsPLA2活性を判定することができる。96ウェルプレートの蛍光計(すなわち、我々の実験室内におけるBMG LabtechからのFluostar Optima)において、sPLA2アッセイを実施した。手短に述べると、200μlの基質使用液(10mMの塩化カルシウム、および0.1%最終濃度のウシ血清アルブミンを含有するトリス/HCl 10mM、pH 8.7の緩衝液中、最終濃度5μMの基質)をBlack Maxisorpマイクロタイトレーションプレート(96ウェル)に自動分配した。該基質の自己消光性のため、先ず低蛍光が、30℃で2分間記録され(プレート設定メニュー、軌道振とう様式:7、サイクル時間:5秒)、該反応のベースラインが与えられる(Fmin)。ハチ毒PLA2 (Sigma Chemical社、フランス国)のPLA2使用液(1000U/mL)の添加により、全ての基質の迅速な加水分解に至り(100%の加水分解)、蛍光が最大値(Fmax)まで増大する。蛍光計の増加分は、100%の加水分解に対して自動的に調整できる。蛍光の差(Fmax-Fmin)は、該緩衝液中の基質の濃度に線形に関連しており、全てのアッセイで一定に保たれた。未知の血液サンプル中のsPLA2活性を判定するために、30μl〜50μlの血漿または血清サンプルを自動分配し、該基質混合物に加えて反応を開始させる。1回に1列の12ウェルをアッセイし、全てのサンプルを二重に試験した。勾配に依り3分間から5分間、蛍光を記録し、1分当たりの勾配を判定した。1分当たりの勾配(F)を、nmol/分/mlで表されるsPLA2の活性(A)に変換するために、以下の式によって計算法が与えられる:
Figure 0005484050
・濃度5μMの使用基質液中に1nmolが含有される
・Vは、mlで表されたサンプル容量(0.30〜0.50ml)である
・(Fmax-Fmin)ハチ毒からのPLA2の存在下での反応終末時の最大蛍光シグナル
・Fは、1分当たりの算出勾配である
健常成人集団(n=2282)において測定された平均(±SD)血漿sPLA2活性を、1.63±0.62nmol/分/mlにおいて推定した。四分位は、該集団の分布に基づいており、確認されたsPLA2活性四分位分布は次のとおりである:四分位1は、最低のsPLA2活性(0.01〜1.22nmol/分/ml)を有する所与の集団の部分に対応し、四分位2は、1.22〜1.54nmol/分/mlの範囲の値に対応し、四分位3は、1.54〜1.93nmol/分/mlの範囲の値に対応し、四分位4は、より高いsPLA2活性(>1.93nmol/分/ml)を有する該集団の部分に対応する。
Figure 0005484050
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Claims (11)

  1. − 第1のリスクマーカーとして患者から採取した血清または血漿サンプルのsPLA2活性の値を測定し、この値を所与の個体集団から得られたsPLA2活性範囲の予め決定された区間の1セットのうちの1区間に位置決めする工程であって、前記予め決定された区間は、前記所与の個体集団のsPLA2活性範囲の中央位、三分位、四分位または五分位である、工程、
    − 第2のリスクマーカーとして前記患者から採取した血清または血漿サンプルのCRPレベルの値を測定し、この値を所与の個体集団から得られたCRPレベル範囲の予め決定された区間の1セットのうちの1区間に位置決めする工程であって、前記予め決定された区間は、前記所与の個体集団のCRPレベル範囲の中央位、三分位、四分位または五分位である、工程、
    − 前記患者の少なくとも2つの上記区間を組み合わせることによって得られた組合せ区間を評価する工程であって、前記組合せ区間は、患者における死亡率または心臓事象および/もしくは血管事象のリスク増大を予測する、工程を含む、
    前記患者における死亡率または心臓事象および/もしくは血管事象のリスク増大を判定するための方法。
  2. 前記患者から採取した血漿サンプルから測定されたsPLA2活性が1.22nmol/ml/分より高いか、または前記患者の血清サンプルから測定されたsPLA2活性が3.74nmol/ml/分より高い、請求項1に記載の方法。
  3. 前記患者から採取した血清サンプル中CRPレベルが、0.70mg/lより高い、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 前記組合せ区間が、
    sPLA2活性範囲の最も高い3つの四分位に含まれるsPLA2活性の区間と、
    CRPレベル範囲の最も高い3つの四分位に含まれるCRPレベル範囲の区間との組合せ
    に対応する、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
  5. 前記患者が、実質的に健常であると診断されている、請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
  6. 前記患者が、アテローム性動脈硬化症、心臓および/または血管に関連した疾患に関して実質的に健常であると診断されている、請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
  7. 前記患者が、以下の冠動脈障害:
    − 無症状の虚血または虚血のない無症候性冠動脈疾患、
    − 心筋壊死のない慢性虚血障害、安定性狭心症または労作性狭心症、
    − 心筋壊死のない急性虚血障害または不安定性狭心症、
    − 心筋壊死を伴う虚血障害、STセグメント上昇心筋梗塞または非STセグメント上昇心筋梗塞、
    のうちの1つを呈していると診断されている、請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
  8. 前記患者において、虚血症状の発症が診断されていない、請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
  9. 前記患者において、虚血症状の発症が診断されている、請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
  10. 請求項1に記載の方法において用いられる、患者におけるホスホリパーゼ活性を測定する方法であって、前記方法は、患者から採取したホスホリパーゼを含有する血清または血漿サンプルを、1nMから15nMの濃度の基質と接触させることを含む蛍光定量アッセイに基づき、前記血清サンプルの容量が、5μlから50μlであり、前記基質の容量が、100μlから300μlであり、温度範囲が、15℃から40℃である方法。
  11. 心血管障害のリスク増大を判定するための方法であって、
    ― 心血管障害のリスク増大を判定するために組み合わせマーカーを測定すること、
    ― 患者が心血管障害を発症するリスク増大を判定するために、前記測定を組み合わせること、を含み、
    ここで前記組み合わせマーカーは、患者から採取した血清または血漿サンプルのsPLA2活性および前記患者から採取した血清または血漿サンプルのCRPレベルである、方法。
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