以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
[1.冷却ロールの構成]
まず、図1〜図3を参照して、本発明の第1の実施形態に係る冷却装置である冷却ロール1の構成について詳述する。図1は、本実施形態に係る冷却ロール1を示す側面図である。図2は、該冷却ロール1のロール周面2を示す正面図(a)及び部分拡大図(b)である。図3は、該冷却ロール1のロール周面2と被冷却材10との接触部における冷媒3の流通状態を示す部分拡大断面図である。
[1.1.冷却ロールの全体構成]
図1〜図3に示すように、冷却ロール1は、被冷却材10を通板しながら冷却するための冷却装置として機能する。冷却ロール1は、被冷却材10の種類やサイズに応じたロール幅及びロール径を有するロール体からなり、冷却用途や被冷却材10の種類に応じて、駆動式でも無駆動式であってもよい。被冷却材10は、板状又は帯状の金属材、例えば、熱延さえた薄板(熱延鋼板)、熱延された厚板、各種熱処理装置で処理された薄板(冷延鋼板)などであるが、詳細は後述する(図6〜図8参照。)。
なお、図1の例では、比較的厚い平板状の被冷却材10(厚板等)が、冷却ロール1のロール周面2に対して狭い範囲で接触する例を図示しているが、比較的薄い帯状の被冷却材が冷却ロール1のロール周面2に対して所定の巻き付き角で巻き付くように接触する場合であってもよい。
図1に示すように、冷却ロール1の内部には、該ロール内部からロール周面2に冷媒3を供給するための冷媒供給路4と、ロール周面2からロール内部に冷媒3を排出するための冷媒排出路5が形成されている。
冷媒供給路4は、1つの中央流路41と、複数の分岐流路42から構成される。中央流路41は、冷却ロール1内部の中心に、ロール軸方向に延設された直線状の流路である。この中央流路41は、径方向に延設される複数の分岐流路42に分岐している。該複数の分岐流路42は、中央流路41からロール周面2に向かって放射状に延び、各々の分岐流路42は、ロール周面2に形成された噴出孔31にそれぞれ連通している。
一方、冷媒排出路5は、複数の中央流路51と、複数の分岐流路52と、環状流路53とから構成される。中央流路51は、上記冷媒供給路4の中央流路41の周囲に、ロール軸方向に延設された直線状の流路であり、周方向に等間隔で設けられる。中央流路51も、径方向に延設される複数の分岐流路52に分岐している。該複数の分岐流路52は、各中央流路51からロール周面2に向かって放射状に延び、各々の分岐流路52は、該ロール周面2に形成された排出孔32にそれぞれ連通している。また、上記複数の中央流路51は、ロール軸方向に適宜の間隔で配置される環状流路53により相互に連通している。
また、冷媒供給路4の分岐流路42と、冷媒排出路5の分岐流路52は、冷却ロール1の周方向に交互に等間隔で配置されている。これにより、分岐流路42を通じてロール周面2全体に対して冷媒3を均一に供給できるとともに、分岐流路52を通じてロール周面2全体から冷媒3を均一に回収及び排出できる。なお、図1の例では、冷却ロール1のある縦断面において、周方向に10本の分岐流路42、52が形成されているが、分岐流路42、52の数は、冷却ロール1のロール径や冷媒3の噴出量等に応じて、適宜変更してもよい。
かかる冷却ロール1は、通板方向に移動する被冷却材10に従動して回転しながら、ロール周面2を被冷却材10に部分的に接触させる。これにより、冷却ロール1は、接触抜熱による間接冷却機能のみならず、冷媒3による直接冷却機能を発揮する。つまり、ロール周面2と被冷却材10との接触部において、被冷却材10から冷却ロール1に抜熱されることにより、被冷却材10が間接的に冷却されるとともに、ロール周面2と被冷却材10との接触部周辺8を流通する冷媒3により、被冷却材10が直接的に冷却される。また、上記冷媒供給路4及び冷媒排出路5は、冷却ロール1自体を冷却する内部冷却機構としても機能し、該冷媒供給路4及び冷媒排出路5内を冷媒3が流通することで、冷却ロール1自体が冷却される。
[1.2.ロール周面の構成]
ここで、図2を参照して、冷却ロール1のロール周面2の構成について詳述する。図2に示すように、ロール周面2には、径方向外側に向かって突出した複数の凸部30と、ロール周面2上に冷媒3を噴出する複数の噴出孔31と、ロール周面2上から冷媒3を排出する複数の排出孔32とが形成されている。噴出孔31は、上記冷媒供給路4の分岐流路42と連通しており、冷媒供給路4を通じて供給された冷媒3を、ロール周面2上の複数の凸部30間の空隙33(凸部30間の凹部)に噴出する。一方、排出孔32は、上記冷媒排出路5の分岐流路52と連通しており、ロール周面2上の複数の凸部30間の空隙33に存在する余剰の冷媒3、及び、被冷却材10の熱により気化した冷媒3の蒸気を、冷媒排出路5に排出する。
これら凸部30、噴出孔31及び排出孔32はそれぞれ、ロール周面2上で縦横に所定間隔で均等に配置されている。凸部30の分布密度は、噴出孔31及び排出孔32の分布密度よりも高い(例えば、図示の例では凸部30の分布密度が約36倍)。これにより、冷媒3は、ロール周面2上で噴出孔31から排出孔32に至るまでの間に、様々な方向にランダムに流動するようになる。
また、噴出孔31の分布密度と排出孔32の分布密度は略同一である。ある1つの噴出孔31に隣接する4つの排出孔32を頂点とする正方形の中心に、該噴出孔31が配置されており、同様に、ある1つの排出孔32に隣接する4つの噴出孔31を頂点とする正方形の中心に、該排出孔32が配置されている。このように複数の噴出孔31及び排出孔32を等間隔で交互に千鳥配置することで、ロール周面2上で冷媒3を均等に流通させることができる。なお、噴出孔31と排出孔32を異なる分布密度にすることも可能である。
[1.3.凸部の構成]
ここで、ロール周面2に形成される凸部30について詳述する。ロール周面2に、一つ一つが独立した複数の凸部30を設けることにより、被冷却材10の表面11と複数の凸部30とで囲まれた空隙33を流路として、ロール周面2上で冷媒3を流通させることが可能となる。
図2に示すように凸部30は、冷却ロール1のロール周面2に所定の間隔で設けられた円柱状の突起で構成される。この凸部30の水平断面形状は、例えば円状、楕円状、多角形状又は星型形状の何れかであることが好ましく、垂直断面形状は、例えば長方形又は台形であることが好ましい。また、凸部30は半球状であってもよい。また、複数の凸部30間の空隙33に冷媒3をランダムに流通させるためには、凸部30の水平断面の形状が、上下左右に対称な形状、例えば円、正方形、楕円等であることが好ましい。また、凸部30は、ロール周面2の全面に設けられることが好ましいが、ロール周面2の一部にのみ設けてもよい。
また、凸部30の高さは、例えば0.025〜10mmであることが好ましい。凸部30の高さが0.025mmよりも低いと、ロール周面2と被冷却材10の表面11との隙間が小さすぎるため、凸部30間の空隙33に冷媒3を円滑に流通させることが困難となる。一方、凸部30の高さが10mmよりも大きいと、ロール周面2と被冷却材10の表面11との隙間が大きくなりすぎて、冷媒3の供給量を多くする必要があり、不経済である。
また、ロール周面2上における凸部30の面積率は、例えば20〜90%であることが好ましい。凸部30の面積率が20%よりも小さいと、ロール周面2の凸部30の形状が被冷却材10に転写し易くなる。一方、凸部30の面積率が、90%よりも大きい場合は、凸部30間の空隙33が狭く、圧力損失が大きくなり、冷媒3が充填又は流動できないため、冷却効率が若干低下する。
凸部30の水平断面形状が円状である場合には、凸部30の直径(水平断面の形状が多角形状又は星型形状である場合には、凸部の外接円の直径)は、例えば0.05〜50mmであることが好ましい。これは、凸部30の直径が0.05mmよりも小さい場合は、凸部30の摩耗が大きく、長期間に渡り効果を得られず、50mmよりも大きい場合、均一な冷却ができないためである。
なお、所定形状に成形された別部材を平坦なロール周面2に装着することで、凸部30を設けてもよいが、凸部30の成形条件によっては、凸部30の痕が被冷却材10に転写されることがある。これを防止するために、ロール周面2における凸部30を設ける部位の周囲を、凸部30の高さと同等の深さ分だけ除去することで、凸部30を設けるようにしてもよい。
また、ロール周面2の凸部30は、例えば、機械的切削加工、電解加工、化学エッチング、放電加工、又はめっき法により形成することができる。
このうち、例えば化学エッチングは、以下のようにして行うことができる。まず、可視光硬化型感光性樹脂を冷却ロール1のロール周面2に塗布、乾燥した後、可視光を遮断するマスクで被覆して可視光を照射し、照射部を硬化させる。次に、硬化部以外の樹脂を有機溶剤により除去する。例えば、塩化第2鉄等のエッチング液に、冷却ロール1のロール周面2を1〜30分程度浸漬し、エッチングすればよい。凸部30の直径又はピッチは、可視光を遮断するマスクの形状によって適宜選択することが可能であり、凸部30の高さはエッチング時間によって適宜調整することができる。
放電ダル加工は、目的とする凸部形状を反転させた凹部を表面パターンとして有する銅電極を、冷却ロール1のロール周面2に対向して設置し、加工電流条件を冷却ロール1の材質、及び所望の凸部形状に応じて、適宜調整すればよい。
めっき法の場合、半球状凸部30の直径を10μm以上とするため、めっきの厚みを10μm以上とすることが好ましく、剥離を防止するため、めっきの厚みの上限は800μm以下とすることが好ましい。めっき層は、アルカリ脱脂し、めっき液中で金型を陽極として電解処理する電解エッチングを行った後、所定の浴温、電流密度で形成することができる。なお、半球状凸形状を有するめっき層を形成するには、例えば、電流密度を段階的に増加させた後、一定電流密度でめっきすればよい。
[1.4.噴出孔及び排出孔の構成]
次に、ロール周面2に形成される噴出孔31、排出孔32について詳述する。噴出孔31、排出孔32の形状が円形である場合、それらの直径が0.1mm未満では、目詰まりが起きやすいため、噴出孔31、排出孔32の直径の下限を0.1mm以上とすることが好ましい。一方、噴出孔31、排出孔32の直径が100mmよりも大きいと、被冷却材10に形状が転写するため、直径の上限を100mm以下とすることが好ましい。なお、噴出孔31、排出孔32の形状が矩形、楕円形である場合、多孔質金属の孔のような不定形である場合には、流路面積が直径0.1〜100mmの円と同等であればよい。
また、噴出孔31、排出孔32のピッチ(即ち、隣接する噴出孔31同士の若しくは排出孔32同士の距離)が、0.1mmよりも小さい場合、孔の数が増加して冷却ロール1の製造コストが高くなる。一方、噴出孔31、排出孔32のピッチが1000mmよりも大きい場合は、冷却能力が不足することがある。従って、噴出孔31、排出孔32のピッチは、0.1〜1000mmであることが好ましい。
なお、上記の噴出孔31、排出孔32、冷媒供給路4及び冷媒排出路5等は、冷却ロール1に対するドリルによる機械的な穿孔、又は、放電加工による穿孔によって設けることができる。また、冷媒3の噴出孔31及び排出孔32を冷却ロール1に穿孔する代わりに、内部から外表面に貫通する気孔を有する多孔質金属に、冷媒3の供給配管及び排出配管を接続して、冷却ロール1を構成してもよい。この場合、肉厚方向に貫通する直径、ピッチの孔を複数有する多孔質金属を使用することが好ましい。このような多孔質金属は、粉末を成形後に焼結するか、又は金属を溶融させた後、温度制御により凝固組織の方向を一定にする一方向凝固によって製造することができる。
また、冷媒3は、難燃性、腐食性の観点から、水、多価アルコール類、多価アルコール類水溶液、ポリグリコール、引火点120℃以上の鉱物油、合成エステル、シリコンオイル、フッ素オイル、滴点120℃以上のグリース、鉱物油、合成エステルに界面活性剤を配合した水エマルションの何れでもよく、これらの混合物を用いてもよい。また、冷媒3は、流体であれば、常温にて液体でも気体であってもよいが、本実施形態では、冷媒3として、例えば液体の冷却水を用いる。
上記のように、冷却ロール1のロール周面2に複数の凸部30、噴出孔31及び排出孔32を設けることにより、ロール周面2と被冷却材10の接触部周辺8において、被冷却材10の表面11と複数の凸部30で囲まれた空隙33を冷媒3が流通する。これにより、冷媒3を用いて被冷却材10を直接冷却できるので、被冷却材10の冷却効率を高めることができる。
[1.5.冷媒流路]
次に、図3を参照して、冷却ロール1のロール周面2上における冷媒3の流路について説明する。上述した複数の凸部30間の空隙33は、ロール周面2上における冷媒3の流路として機能する。つまり、ロール周面2上に複数の凸部30を形成することで、当該複数の凸部30の間隙に凹部(即ち、空隙33)が形成され、この複数の凸部30間の空隙33はロール周面2全体に渡って連通している。
そして、図3に示すように、冷却ロール1のロール周面2の一側を被冷却材10に接触させたときには、ロール周面2のうち一部の円弧部が被冷却材10の表面11に接触する。例えば、冷却ロール1のロール径が400mmである場合には、巻き付き角が約3°に相当するロール周面2の円弧部が被冷却材10の表面11に接触する。なお、被冷却材10が板厚の薄い鋼帯であり、当該鋼帯を冷却ロール1に巻き付ける場合(例えば、巻き付き角が180°、270°)、冷却ロール1と鋼帯が広い範囲で接触する(図8参照。)。
かかる接触により、ロール周面2の一部の凸部30の先端部が被冷却材10に当接するため、被冷却材10の表面11と冷却ロール1のロール周面2との間には、少なくとも凸部30の高さ以上の空隙33が生じる。このとき、該空隙33は、被冷却材10と複数の凸部30とロール周面2とで囲まれて、被冷却材10と冷却ロール1との接触部周辺8における冷媒3の流路として機能する。
かかるロール周面2の構造により、図3に示すように、冷媒供給路4の分岐流路42から供給される冷媒3は、ロール周面2の噴出孔31から噴出して、ロール周面2と被冷却材10との間に供給された後に、複数の凸部30間の空隙33を縫うように流動して、排出孔32から冷媒排出路5の分岐流路52に排出される。このとき、空隙33を流れる冷媒3は、高温の被冷却材10と接触することで、その一部又は全部が気化するので、この気化潜熱により被冷却材10を冷却する。このように、被冷却材10と複数の凸部30の間の空隙33内で、冷媒3を流通及び気化させることで、冷媒3の気化潜熱により、被冷却材10を直接冷却することができる。
また、閉空間である空隙33内で冷媒3が気化すると、空隙33内の圧力が増大して、冷媒3の蒸気膜が形成され、冷媒3の流通を阻害する。そこで、空隙33内に存在する余剰の冷媒3(液体)と、気化した冷媒3の蒸気を、ロール周面2上の排出孔32から冷媒排出路5の分岐流路52に排出する。不図示の真空ポンプ等の吸引手段を用いて冷媒排出路5の内圧を負圧にすれば、該冷媒排出路5に連通する排出孔32から、上記空隙33内の余剰の冷媒3及び該冷媒3の蒸気を吸引し、該冷媒排出路5を通じて排出することができる。このように排出孔32から冷媒3を排出することで、被冷却材10との接触により空隙33内に発生した冷媒3の蒸気による圧力上昇を防ぎ、空隙33内の圧力を減圧できる。従って、空隙33内における冷媒3の流通を円滑化及び促進できるので、ロール周面2上で流通する冷媒3を用いた冷却効率が大幅に向上する。
また、間接冷却としては、ロール周面2の複数の凸部30が被冷却材10の表面11に接触するので、被冷却材10の熱を、凸部30を介して冷却ロール1に抜熱することができる。上述したように冷媒供給路4及び冷媒排出路5は、冷却ロール1自体を冷却する内部冷却機構として機能し、冷却ロール1の内部の冷媒供給路4及び冷媒排出路5に冷媒3を循環させることで、冷却ロール1自体を冷却できる。特に、冷却ロール1のロール周面2側に、複数の分岐流路42、52を形成することで、ロール周面2付近の冷却を促進できる。このように内部冷却機構により冷却された冷却ロール1のロール周面2を被冷却材10に接触させることで、被冷却材10の熱を冷却ロール1に抜熱して、被冷却材10を好適に間接冷却することができる。
[1.6.冷媒供給範囲の制御機構]
次に、図4及び図5を参照して、本実施形態に係る冷却ロール1の変更例について説明する。以下に示す変更例は、被冷却材10と冷却ロール1との接触部周辺8のみに冷媒3を供給する冷媒供給制御手段を具備している。
図4に示すように、被冷却材10に対して冷媒3を供給する範囲と冷媒を供給しない範囲とを区切るためのカバー6を、ロール周面2に隣接して設けてもよい。図4の例では、冷却ロール1と被冷却材10との接触部周辺8の両側に、一対のカバー6、6が設けられている。該カバー6は、ロール周面2に沿って湾曲した円弧板であり、冷却ロール1の回転を妨げないように、ロール周面2から所定距離だけ離隔した状態で、ロール周面2に沿って配設されている。
これにより、ロール周面2のうちカバー6で覆われていない部分(つまり、接触部周辺8)のみにおいて、被冷却材10に冷媒3が供給され、カバー6で覆われた部分では、被冷却材10に冷媒3が供給されない。従って、当該カバー6により、ロール周面2と被冷却材10との接触部周辺8のみに冷媒3を作用させ、それ以外の部分に対する冷媒3の接触を抑制できる。よって、当該接触部周辺8以外の部分での想定外の冷却を阻止できるので、冷媒3による冷却の均一性を向上できる。
また、図5に示すように、冷却ロール1のロール周面2のうち被冷却材10に接触部周辺8だけに冷媒3が供給されるように、冷媒供給系統を制御する制御機構を設けてもよい。図示の例では、冷媒供給路4の各分岐流路42に電磁弁7をそれぞれ設け、冷却ロール1の回転角度に応じて、制御部(図示せず。)から各電磁弁7に開閉信号を送り、該各電磁弁7を開閉させるようになっている。
かかる電磁弁7により、ロール周面2のうち被冷却材10との接触部周辺8に対応する一部の分岐流路42のみを開放し、その他の分岐流路42を閉塞できる。かかる制御機構によっても、ロール周面2と被冷却材10との接触部周辺8のみに冷媒3を作用させ、それ以外の部分に対する冷媒3の接触を抑制できる。よって、当該接触部周辺8以外の部分での想定外の冷却を阻止できるので、冷媒3による冷却の均一性を向上できる。なお、図5の例の制御機構では、冷却ロール1内に電磁弁7を設けることで、冷媒供給を制御したが、制御弁の設置位置はこの例に限定されず、冷媒供給系統の他の箇所であってもよい。
[2.冷却ロールを用いた冷却方法]
次に、本実施形態に係る冷却ロール1を用いた冷却方法について説明する。本実施形態に係る冷却ロール1を用いることで、板状又は帯状の被冷却材10を通板しながら冷却することができる。
図3に示したように、高温の被冷却材10の通板中に、冷却ロール1内に冷媒3を流通させながら、該冷却ロール1のロール周面2を被冷却材10に接触させる。これにより、冷却ロール1のロール周面2が、通板方向に移動する被冷却材10に接触しながら、冷却ロール1が被冷却材10に追従して回転する。この結果、ロール周面2の複数の凸部30が被冷却材10に対して連続的に接触するため、被冷却材10の熱が冷却ロール1に抜熱されて、被冷却材10が間接冷却されるとともに、接触部周辺8のロール周面2上で流動する冷媒3によって、被冷却材10が直接冷却される。
かかる冷媒3による直接冷却では、冷却ロール1内部の冷媒供給路4を介して供給される冷媒3を、噴出孔31からロール周面2上に噴出しながら、当該ロール周面2上の冷媒3を排出孔32から冷媒排出路5に排出する。これにより、噴出孔31から噴出された冷媒3は、ロール周面2と被冷却材10との接触部周辺8において、被冷却材10の表面11と複数の凸部30とで囲まれた空隙33に供給される。該冷媒3は、当該空隙33内を排出孔32に向けてランダムに流通しつつ、その一部が高温の被冷却材10に接触して気化し、この気化潜熱により被冷却材10が冷却される。さらに、空隙33内の余剰の冷媒3と、上記気化した冷媒3の蒸気は、吸引口である排出孔32から冷媒排出路5を介して外部に排出される。
以上説明したように、冷却ロール1を用いた冷却方法により、ロール周面2上の空隙33内を流通する冷媒3の気化潜熱を用いた直接冷却作用と、被冷却材10と冷却ロール1との接触による接触抜熱を用いた間接冷却作用の双方によって、被冷却材10を効率的に冷却できる。従って、被冷却材10の冷却効率を大幅に向上できるので、被冷却材10の通板速度を高速にしても、急速冷却が可能となる。よって、冷却ロール1が適用される各種設備により製造される製品(薄板、厚板、めっき鋼板等)の生産性を向上できる。
また、冷却ロール1のロール周面2に形成される複数の凸部30は、十分に小さく、かつ、ロール周面2上において、冷媒3の流通方向に指向性を持たせないような形状及び配置で設けられている。また、複数の凸部30と、噴出孔31及び排出孔32との相対位置関係も、冷媒3の流通方向に指向性を持たせないように調整されている。さらに、被冷却材10に接触する個々の凸部30の面積サイズが小さく、かつ、冷媒3の流路である空隙33、噴出孔31及び排出孔32が、ロール周面2の軸方向及び周方向に細かく分散配置されている。
従って、冷媒3は、ロール周面2上を噴出孔31から排出孔32に至るまでの間に、上記複数の凸部30間の空隙33をランダムな方向に均等に流通して、被冷却材10の表面11全体に対して均一に作用する。このため、被冷却材10と冷却ロール1との接触状態がある程度悪くても、被冷却材10全体を冷却ムラ無く、均一に冷却することができるので、被冷却材10の品質を向上できる。
さらに、冷却ロール1を無駆動式とした場合、冷却ロール1は、被冷却材10に追従して自動的に回転するので、別途の回転駆動機構が不要である。従って、比較的簡易な装置構成で、上記冷却方法を実現できる。また、既存の設備に設置されている各種ロール(例えば、ブライドルロール、デフレクタロール、ステアリングロール、搬送ロール、ピンチロール、サポートロール等)を冷却ロール1に交換するだけで、上記冷却方法を実現できるので、追加設備コストやランニングコストを抑制できる。
[3.冷却ロールの適用例]
次に、上述した冷却ロール1を、鉄鋼業で用いられる各種設備の冷却装置として適用する例について説明する。
[3.1.冷却ロールの第1適用例]
まず、図6を参照して、上述した冷却ロール1を、連続熱延設備60における薄板12の冷却装置として適用する例について説明する。図6は、本実施形態に係る冷却ロール1が適用された連続熱延設備60を示す模式図である。この適用例では、上記被冷却材10は、連続熱延設備60により熱延された後にコイル状に巻き取られる前の薄板12(熱延鋼板)に相当する。
図6に示すように、連続熱延設備60は、スラブ(板厚約250mm)を加熱した状態で連続的に圧延し、帯状の薄板12を連続的に製造する設備であり、加熱炉(図示せず。)、複数の圧延機61、冷却装置62、ピンチロール63、巻き取り装置64等を備える。この連続熱延設備60で製造される薄板12は、例えば板厚1.2mm〜25.4mmの帯状の熱延鋼板(ストリップ)である。
かかる連続熱延設備60では、加熱炉により1000℃以上の高温に加熱されたスラブは、粗圧延機、仕上圧延機等の複数の圧延機61により連続的に熱間圧延されて薄板12となる。該薄板12は、冷却装置62により冷却された後に、最終的には巻き取り装置64によりコイル状に巻き取られる。このとき、冷却装置62の後段に設けられた一対のピンチロール63により薄板12が搬送される。
従来では、上記連続熱延設備60における薄板12の冷却工程では、スプレー式の冷却水噴射装置を用いることが一般的であり、通板方向に走行する薄板12に対して多量の高圧水を噴射して冷却する方法が一般的であった。しかし、スプレー式の冷却方法では、冷却効率を上げるためには、大量の冷却水を消費したり、通板速度を低下させたりする必要があるだけでなく、冷却の均一性の制御が困難であった。
そこで、本適用例では、従来のスプレー式の冷却装置に代えて、上記冷却ロール1を連続熱延設備60の冷却装置62に適用する。図6に示すように、連続熱延設備60の圧延機61の後段で巻き取り装置64の前段に、薄板12の通板方向に沿って複数対の冷却ロール1を設ける。この複数対の冷却ロール1は、薄板12を板厚方向の両側から挟むようにして通板方向の両側(上下)に設けられ、通板方向に移動する薄板12を両側から冷却する。このとき、複数対の冷却ロール1は、圧延機61及びピンチロール63により通板される薄板12に伴って回転しながら、ロール周面2を薄板12の上面及び下面に連続的に接触させることで、該薄板12を冷却する。
かかる冷却ロール1を用いることで、上記図3で説明した間接冷却機能と直接冷却機能の双方を発揮できるので、従来のスプレー式の冷却装置よりも、高い冷却効率で、かつ、均一に薄板12を急冷できる。また、冷却ロール1による冷却効率が高いので、薄板12を高速で通板可能である。このように冷却ロール1を用いて薄板12を圧下せずに均一に急冷することで、薄板12の組織を制御(例えば、熱延鋼板の強度、靭性を改善)できる。また、上記冷却ロール1により薄板12を均一かつ高精度に冷却制御することで、各種の熱処理プロセスにおける制御精度を向上でき、例えば、100℃未満の温度ばらつきにすることができる。
また、図6に示したように、薄板12の上側と下側で、冷却ロール1の軸心を通板方向にずらし、薄板12の上下で千鳥状に配置することが好ましい(レベラーロール配置)。これにより、薄板12に対して個々の冷却ロール1を板厚方向に押し付けて、ある程度の巻き付け角度を得ることができるので、薄板12の表面に対するロール周面2の接触面積を増加させることができる。従って、冷却ロール1による冷却作用時間を増加させて、冷却効率を更に高めることができる。よって、短時間で薄板12を急冷できるとともに、通板速度を上昇できる。
なお、上記連続熱延設備60の冷却装置62としての冷却ロール1は、薄板12を冷却する機能だけを有し、ロール圧下による薄板12の形状矯正等の機能は有さない。よって、薄板12は、複数対の冷却ロール1を通過する際に、熱収縮以外には板厚が減少しない。
[3.2.冷却ロールの第2適用例]
次に、図7を参照して、上述した冷却ロール1を、厚板熱延設備70における薄板12の冷却装置として適用する例について説明する。図7は、本実施形態に係る冷却ロール1が適用された厚板熱延設備70を示す模式図である。この適用例では、上記被冷却材10は、厚板熱延設備70により熱延された後に制御冷却又は形状矯正される厚板13に相当する。
図7に示すように、厚板熱延設備70は、スラブを加熱した状態で連続的に圧延し、所望の板厚の厚板13を製造する設備であり、加熱炉(図示せず。)、複数の圧延機71、熱間矯正機72、制御冷却機73等を備える。この厚板熱延設備70で製造される厚板13は、例えば板厚6mm〜200mmの板状の熱延鋼板である。
図7に示す例の厚板熱延設備70は、CLCプロセス(Continuous on Line Control Process)により高張力鋼板を製造する。CLCプロセスは、圧延機71及び熱間矯正機72による制御圧延と、制御冷却機73による制御冷却との組み合わせを基本とした厚板製造プロセスである。このCLCプロセスと極低炭素当量化の活用により、厚板13の強度及び靭性を向上させ、溶接性に優れた鋼張力鋼板を製造できる。
上記厚板熱延設備70では、加熱炉により1000℃以上の高温に加熱されたスラブは、粗圧延機、仕上圧延機等の複数の圧延機71により熱間圧延され、さらに、熱間矯正機72により形状矯正される(制御圧延)。さらに、該制御圧延後の厚板13は、制御冷却機73により制御冷却されて、厚板製品となる。
さらに、圧延後〜熱間矯正の間における厚板13の冷却の不均一は、板内温度のむらを生じさせ、変態のタイミングにばらつきを起こし、鋼板の変形(形状悪化)をおこすため、後に再矯正をしなければならなくなる場合がある。そのため、よりむらのない均一な冷却が必要である。この制御冷却処理は、温度のばらつきを目標温度の±10℃以内にすることが望ましい。
従来では、制御冷却機73における冷却装置として、スプレー式の冷却装置を用いることが一般的であったが、厚板13を急冷するためには、大量の冷却水を消費する問題や、通板速度を低下させるといった問題があった。また、冷却装置用の設置スペースが必要となるという問題もあった。
そこで、本適用例では、制御冷却機73内に厚板13の通板方向に沿って設けられる複数対の制御冷却用ロール75の全部又は一部を、上記冷却ロール1で構成する。この複数対の冷却ロール1(制御冷却用ロール75)は、厚板13を両側から挟むようにして通板方向の両側(上下)に設けられ、通板方向に移動する厚板13を両側から冷却しつつ、制御冷却する。
このとき、複数対の冷却ロール1は、厚板13の通板に伴って回転しながら、ロール周面2を厚板13の上面及び下面に連続的に接触させることで、該厚板13を急冷する。このように、制御冷却機73のロール75として冷却ロール1を用いることで、上記図3で説明した間接冷却機能と直接冷却機能の双方を発揮できるので、従来のスプレー式の冷却装置よりも、高い冷却効率で、かつ、均一に厚板13を急冷できる。さたに、冷却ロール1による冷却効率が高いので、厚板13を高速通板可能である。
また、図7に示したように、厚板13の上側と下側で、制御冷却用ロール75(冷却ロール1)の軸心を通板方向にずらし、厚板13の上下で千鳥状に配置することが好ましい(レベラーロール配置)。これにより、上述した薄板12の場合と同様、厚板13の表面に対するロール周面2の接触面積の増加により、冷却ロール1による冷却効率を更に高めることができるので、厚板13の急冷と通板速度の上昇を実現できる。
なお、上記では、厚板熱延設備70において、冷却ロール1を制御冷却機73のロール75に適用する例について説明したが、厚板13を制御冷却しない場合には、冷却ロール1を熱間矯正機72のレベラーロール74に適用することも可能である。これにより、熱間矯正機72において、レベラーロール74(冷却ロール1)を用いて、熱延後の厚板13の形状を矯正(例えば歪み矯正)すると同時に、当該厚板13を急冷することができる。このように冷却ロール1を熱間矯正に適用する場合と、上記制御冷却に適用する場合とでは、冷却ロール1にかかる荷重の大小が相違する。
[3.3.冷却ロールの第3適用例]
次に、図8を参照して、上述した冷却ロール1を、連続焼鈍設備又は連続溶融金属めっき設備における各種ロールに適用する例について説明する。図8は、本実施形態に係る冷却ロール1が適用された連続焼鈍設備又は連続溶融金属めっき設備の加熱炉80を示す模式図である。この適用例では、上記被冷却材10は、不図示の連続冷延設備により冷延された薄板14(冷延鋼板)に相当する。
連続焼鈍設備は、冷延工程で製造された薄板14を目標の硬さに調整するために、該薄板14を連続的に焼鈍する設備である。連続溶融金属めっき設備は、冷延工程で製造された薄板14の表面を、亜鉛などの溶融金属で連続的にコーティング処理するための設備である。これら連続焼鈍設備や連続溶融金属めっき設備で用いられる薄板14は、例えば板厚0.14mm〜3.2mmの帯状の冷延鋼板(ストリップ)である。
図8に示すように、上記連続焼鈍設備や連続溶融金属めっき設備は、処理対象の薄板14を高温(例えば800℃)に加熱する加熱炉80を備えている。加熱炉80の内部には、複数のデフレクタロール82が設けられており、加熱炉80の出側には、一対のサポートロール83が設けられている。また、加熱炉80の後段には、複数のブライドルロール84が設けられている。
デフレクタロール82は、薄板14の通板方向を変更するためのロールである。加熱炉80内に複数のデフレクタロール82を設けて、通板する薄板14を往復移動させることで、加熱炉80内で薄板14が目標温度(例えば800℃)まで加熱される。
ブライドルロール84は、薄板14の形状を矯正するためのロールであり、例えば図8のように4つのデフレクタロール82を配置することで、連続ストレッチャーレベラーが構成される。連続ストレッチャーレベラーでは、入側と出側のデフレクタロール82に回転速度差をつけることで、これらデフレクタロール82、82間を通板する薄板14に張力を生じさせ、薄板14の歪みを連続的に矯正する。
かかる構成により、上記デフレクタロール82及びブライドルロール84に張架された帯状の薄板14を通板しながら、加熱炉80内で該薄板14を加熱し、加熱炉80の後段で該薄板14の歪みを連続的に矯正できる。
ところで、焼鈍プロセスによっては、加熱炉、均熱炉、1次冷却炉、過時効炉、2次冷却炉といった複数の炉に、薄板14を連続的に通過させ、所定の熱サイクルを薄板14に与える場合がある。前述の1次冷却炉や2次冷却炉では、薄板14を冷却する方法として、冷却水槽内にシンクロールを設置し、上記薄板14を冷却水中に浸漬する方法や、薄板14に冷却水をスプレーする方法などがある。しかし、これらの冷却方法はいずれも、冷却効率が低いために、薄板14の通板速度を遅くしなければならず、また、当該冷却装置を別途追加設置するためのコストやスペースが必要となる問題がある。
そこで、本適用例では、加熱炉80の後段に設けられる複数のブライドルロール84(またはデフレクターロール)の全部又は一部を、上記冷却ロール1で構成する。このように冷却ロール1が適用されたブライドルロール84は、そのロール周面2に巻き付けられた薄板14の通板に伴って回転しながら、該薄板14を一側から冷却しつつ通板する。
このように、ブライドルロール84(もしくはデフレクタロール)と冷却ロール1を兼用することで、別途の冷却装置を追加設置することなく、加熱炉80で加熱された直後の薄板14を、ブライドルロール84(冷却ロール1)を用いて急冷することができる。また、冷却ロール1は、上記図3で説明した間接冷却機能と直接冷却機能の双方を発揮できるので、従来の冷却方法よりも、高い冷却効率で、かつ、均一に薄板14を急冷できる。さらに、冷却ロール1による冷却効率が高いので、薄板14を高速通板可能である。また、上記冷却ロール1により薄板14を急冷することで、各種の熱処理プロセスにおける制御精度を向上できる。例えば、連続焼鈍設備における高張力鋼の作り込み(焼鈍プロセス)の制御に有効である。また、溶融メッキののちの合金化の過程で急冷ロールを通過させることで、連続溶融金属めっき設備におけるめっき組織制御(非平衡組織)を効率よく実現できる。
なお、上記では、連続焼鈍設備や連続溶融金属めっき設備において、加熱炉80の後段に設けられたブライドルロール84に、冷却ロール1を適用する例について説明したが、かかる例に限定されない。例えば、上記デフレクタロール82、サポートロール、ステアリングロール、ピンチロール、テーブルロール、圧延ロールなど、鉄鋼業の各種設備において帯状又は板状の鋼板を搬送又は処理するために用いられる様々なロールに対して、冷却ロール1を適用することも可能である。
次に本発明の実施例について説明する。なお、以下の実施例は本発明の効果を説明するための一例に過ぎず、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
本実施例では、上記実施形態に係る冷却ロール1の冷却効果を検証するために、ストリップの冷却試験を行った。図9に示すように、一対のブライドルロール92、92と一対のブライドルロール94、94の間に一対の冷却ロール1、1を設置し、当該冷却ロール1、1のロール周面2、2を普通鋼のストリップ90(薄板)に接触させて、ストリップ90を冷却した。冷却ロール1、1の前段には、近赤外線を用いた加熱ランプ96を設け、冷却ロール1、1に導入されるストリップ90を400℃に加熱した(板幅方向の温度差±20℃)。各冷却ロール1はストリップ90に対して中心角60°で接触し、当該接触部以外の冷却ロール1の周囲には、冷却水等の飛散を防止するためのカバー98を設置した。本実施例に係る冷却試験の試験条件は以下の通りである。
冷却ロール1のロール径:φ400mm
冷却ロール1のロール長:500mm
冷媒 :20℃の水
噴出孔31、排出孔32の直径:φ1mm
噴出孔31、排出孔32の配置:50mmピッチの千鳥配置
冷媒の噴出圧 :0.2MPa
冷媒の吸引圧 :−0.001MPa(対大気圧)
ストリップ幅 :400mm
ストリップ厚 :2mm
ブライドルロール間の引張応力(ユニットテンション):2MPa
また、比較例として、従来のスプレーノズルを用いた冷却方法によりストリップ90を冷却する試験を行った。比較例に係る冷却試験の試験条件は以下の通りである。
ノズル仕様 :充円錐ノズル、平均粒径270μm
冷媒 :20℃の水
ノズルの配置 :ストリップ90の上面側に板幅方向に一列で5個設置(100mmピッチ)。ストリップ90の上面からノズル先端までの距離は200mm。
冷媒の噴水量 :1ノズル当たり0.5リットル/min
冷媒の噴出圧 :0.2MPa
噴霧角 :55°
以上の試験条件で本実施例及び比較例に係る冷却試験を行い、冷却ロール1又はスプレーノズルによる冷却後のストリップ90の温度x[℃](板幅方向の平均温度)と、ストリップ90の長手方向1m当たりの最大温度差y[℃]を、サーモビュア(放射温度計)により測定した。そして、x<100℃、かつy<25℃である場合に、冷却効果の評価を“○”とし、それ以外は評価を“×”とした。かかる試験結果を表1に示す。
表1に示すように、比較例に係るスプレーノズルを用いた場合には、x=100℃であり、ストリップ90を十分に冷却できておらず、冷却効率が悪い。また、比較例では、y=50℃であり、ストリップ90の長手方向に大きな冷却ムラが生じており、冷却の均一性も悪い。
これに対し、本実施例1に係る冷却ロール1を用いた場合には、x=40℃であり、比較例と比べて冷却効率が大幅に向上している。また、yも10℃以下であり、比較例と比べてストリップ90の長手方向の冷却ムラが大幅に改善されており、高い冷却均一性を実現できている。さらに実施例2では、ストリップ90の通板速度vを、上記比較例及び実施例1の2倍に上昇させているが、冷却効率の条件(x<100℃)及び冷却均一性の条件(y<25℃)の双方を満足している。
従って、以上の試験結果によれば、冷却ロール1を用いてストリップ90を冷却することで、冷却効率及び冷却均一性を大幅に向上でき、これにより通板速度vを上昇させて生産性の向上も実現できることが実証されたと言える。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。