JP5481619B2 - デノボ癌を自然発症するモデル動物及びその用途 - Google Patents

デノボ癌を自然発症するモデル動物及びその用途 Download PDF

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本発明は遺伝子改変動物に関する。詳しくは、デノボ癌を自然発症する齧歯類遺伝子改変動物及びその用途(デノボ癌の予防・治療に有効な薬剤のスクリーニング法など)に関する。
大腸癌、グリオブラストーマ(神経膠芽腫)及びメラノーマ(悪性黒色腫)等において多段階発癌タイプとデノボ癌タイプが存在することが知られている多段階発癌タイプの癌は良性腫瘍と前癌腫瘍を経て多段階に発癌が進む癌である。一方、デノボ癌タイプでは良性腫瘍や前癌腫瘍を経ず、正常細胞が突然悪性化すると考えられている(非特許文献1)。
大腸癌においては2つの発癌説が報告されている。すなわち、アデノーマを経て大腸癌が発症するタイプ(アデノーマ、カルシノーマ シークエンス)と、突然大腸癌が生じるデノボタイプである(非特許文献2、3)。多段階発癌タイプの大腸癌では、APC (adenomatous polyposis coli)とp53の不活性化や、K-ras遺伝子の変異が報告されている。一方デノボ癌タイプの大腸癌はDNA複製エラーによって生じると考えられている。脳腫瘍の中で最も悪性度の高いグリオブラストーマ(非特許文献3)は、アストロサイトーマ(星細胞膠腫)という形態を経て悪性腫瘍に転化し、P53の変異とPDGF/PDGFαシグナリングの増強が同時に生じていることが報告されている(非特許文献4)。一方、デノボタイプのグリオブラストーマは、EGFR遺伝子変異によるEGFRの活性化によって生じると考えられている。メラノーマにおいては、デノボ癌タイプのメラノーマ(以下、「デノボメラノーマ」とも呼ぶ)と多段階発癌タイプである母斑関連メラノーマ(以下、「多段階発癌メラノーマ」とも呼ぶ)の発症の分子メカニズムの相違点、類似点について不明な点が多い(非特許文献1)。
メラノーマの占める割合は皮膚癌の5%程度でしかないが、転移性が高く、皮膚癌の死者数の80%をも占める点でメラノーマは皮膚癌の中でも最も悪性度の高い癌の一つである(非特許文献5)。メラノーマ患者の予後は、多くの薬剤や治療法が開発されているにも関わらず、5年生存率も今なお20%を下回っている。その理由の一つは、メラノーマの大部分が、発症機序の不明なデノボ癌だからである。組織病理学的解析から、メラノーマの一部は、正常メラノサイトから良性腫瘍(母斑)が生じ、それが段階を踏んで悪性化したものであり、それ以外は、正常細胞が良性腫瘍を経ず突然悪性化したデノボ癌であることが報告されているが、発症の分子メカニズムの違いについては不明である。ヒトのメラノーマのうちの大多数(75〜80%)はデノボメラノーマであり、残りの20〜25%が母斑から生じた多段階発癌メラノーマであることが報告されている(非特許文献6、7)。デノボメラノーマの発症時期は多段階発癌メラノーマよりも遅いが、転移性が高いため、患者の予後は非常に悪い。このようなヒトメラノーマの現状から、これらの2つのメラノーマのタイプに相当するメラノーマモデルマウスの樹立とカテゴリー化を行うことは、それぞれのタイプのメラノーマ発症の分子メカニズムの違いを理解する上で非常に重要である。
エンドセリンレセプターB(Ednrb)は、Gタンパク質結合受容体ファミリーに属し、リガンドであるエンドセリンが結合することで様々な作用を及ぼす(非特許文献8〜10)。メラノサイトの発生においては、EdnrBシグナリングは、その生存と増殖を促進するため、Ednrb遺伝子が欠損するとメラノサイトが大幅に欠損し、白斑が生じる(非特許文献10)。一方、メラノーマ形成におけるEdnrbシグナリングの作用については、多くの矛盾した報告、すなわちメラノーマにおいてEDNRB発現量が増加しているという報告(非特許文献11、12)と、減少しているという報告(非特許文献13)の両方が存在する。また、最近の研究で、EDNRBの機能が低下した場合、メラノーマのリスクが増加することが報告されている(非特許文献14)。逆にEDNRBのリガンドであるエンドセリン-1(ET-1)やエンドセリン-3(ET-3)は、メラノーマの浸潤能を促進し、EDNRBの拮抗剤を与えることでメラノーマ細胞の増殖を抑制し、細胞死を引き起こすという報告もある。これらの報告から、EdnrBシグナリングのメラノーマ発症における機能は未だ明らかではないと言える。
特開2008−267958号公報
加藤昌志、熊坂真由子、重田和美、大野晴美、高橋由美子、横地貴子、田嶋志づ香.中部大学生命健康科学研究所紀要 5, 34-36, 2009 Kaiser, A., Jurowich, C., Schonekas, H., Gebhardt, C. and Wunsch, P.H. (2002) The adenoma-carcinoma sequence applies to epithelial tumours of the papilla of Vater. Z Gastroenterol, 40, 913-920. Olschwang, S., et al. (1997) Alternative genetic pathways in colorectal carcinogenesis. Proc Natl Acad Sci U S A, 94, 12122-12127. Hede, S.M., et al. (2008) GFAP promoter driven transgenic expression of PDGFB in the mouse brain leads to glioblastoma in a Trp53 null background. Glia, 57, 1143-1153. Chen, Y.T., et al. (1996) Malignant melanoma risk factors by anatomic site: a case-control study and polychotomous logistic regression analysis. Int J Cancer, 67, 636-643. Kaddu, S., Smolle, J., Zenahlik, P., Hofmann-Wellenhof, R. and Kerl, H. (2002) Melanoma with benign melanocytic naevus components: reappraisal of clinicopathological features and prognosis. Melanoma Res, 12, 271-278. Friedman, R.J., et al. (1983) Favorable prognosis for malignant melanomas associated with acquired melanocytic nevi. Arch Dermatol, 119, 455-462. Bagnato, A., Spinella, F. and Rosano, L. (2005) Emerging role of the endothelin axis in ovarian tumor progression. Endocr Relat Cancer, 12, 761-772. Lahav, R., et al. (1998) Endothelin 3 selectively promotes survival and proliferation of neural crest-derived glial and melanocytic precursors in vitro. Proc Natl Acad Sci U S A, 95, 14214-14219. Hosoda, K., et al. (1994) Targeted and natural (piebald-lethal) mutations of endothelin-B receptor gene produce megacolon associated with spotted coat color in mice. Cell, 79, 1267-1276. Demunter, A., De Wolf-Peeters, C., Degreef, H., Stas, M. and van den Oord, J.J. (2001) Expression of the endothelin-B receptor in pigment cell lesions of the skin. Evidence for its role as tumor progression marker in malignant melanoma. Virchows Arch, 438, 485-491. Bittner, M., et al. (2000) Molecular classification of cutaneous malignant melanoma by gene expression profiling. Nature, 406, 536-540. Smith, S.L., et al. (2002) Decreased endothelin receptor B expression in large primary uveal melanomas is associated with early clinical metastasis and short survival. Br J Cancer, 87, 1308-1313. Soufir, N., et al. (2005) Association between endothelin receptor B nonsynonymous variants and melanoma risk. J Natl Cancer Inst, 97, 1297-1301. Kato, M., et al. (2004) c-Kit-targeting immunotherapy for hereditary melanoma in a mouse model. Cancer Res, 64, 801-806.; Kato, M., et al. (1998) Transgenic mouse model for skin malignant melanoma. Oncogene, 17, 1885-1888. Iwamoto, T., et al. (1991) Aberrant melanogenesis and melanocytic tumour development in transgenic mice that carry a metallothionein/ret fusion gene. Embo J, 10, 3167-3175.
デノボ癌は突然発症するため、ヒトにおいて発症の過程を解析することは事実上不可能である。故に適切なモデル動物を作製してデノボ癌の発症機構を調べることが重要である。しかしながら、現在までに作製された癌モデル動物は多段階で癌を発症するものであり(多段階癌モデル動物)、本発明者らの知る限り、デノボ癌の自然発症が明確に認められるモデル動物は報告されていない。そこで本発明は、デノボ癌を自然発症するモデル動物を提供することを課題とする。また、当該モデル動物の用途を提供することも課題とする。
上記課題の下で本発明者らは、メラノーマ形成におけるEdnrb遺伝子の機能をRETトランスジェニックマウス(RETマウス)においてEdnrB遺伝子をヘテロ型に欠損させることによって解析した。RETマウスは、メタロチオネインプロモーターIによって発現が調節されるRFP-RET(受容体型チロシンキナーゼをコードするc-RET遺伝子とRFP遺伝子のハイブリットによって生じた癌遺伝子)を有するトランスジェニックマウスである。このマウスではメラノサイト系良性腫瘍は、前癌状態を経てメラノーマに悪性転化する(非特許文献15、16)。また、このマウスでは良性腫瘍と悪性腫瘍の中間にある前癌期を定義可能であることを報告したが(特許文献1)、再度その表現型を詳細に検討することにした。その結果、RETマウスで形成されるメラノーマは、良性腫瘍、前癌腫瘍を経てメラノーマに悪性転化することが確認され、母斑関連メラノーマモデルマウスとしてRETマウスが有用であることが示された。一方、RETマウスに生じたメラノーマにおいて、Ednrb遺伝子の発現量が良性腫瘍の半量程度にまで減少していることを見出した。この点に着目し、EdnrB遺伝子をヘテロ型に欠損させたマウス(Ednrb(+/-);RETマウス)を樹立することにした。樹立に成功したEdnrb(+/-),RETマウスを用いて検討を進めたところ、当該マウスで形成されたほとんどの腫瘍は、組織病理学的にも生化学的にも悪性であった。また、腫瘍の悪性度の判定に利用される遺伝子であるE-カドヘリン遺伝子の発現レベルが低い一方でN-カドヘリン遺伝子の発現レベルが高かった。このことは、Ednrb(+/-);RETマウスに生じた腫瘍が生化学的に悪性であることを示唆している。更なる検討の結果、腫瘍を有するEdnrb(+/-);RETマウスでは、RETマウスと比較して、肺転移の割合が非常に高く且つ腫瘍形成後の生存時間が短く、病態学的にも悪性腫瘍であることを示唆した。以上の結果から、Ednrb(+/-);RETマウスのメラノサイト系腫瘍は、ヒトのデノボメラノーマ(de novo melanoma)に類似しており、RETマウスの腫瘍はヒトの母斑関連メラノーマ(nevus-associated melanoma)に類似していることが示唆された。
上記の通り、本発明者らはデノボメラノーマを形成するモデル動物の樹立に成功した。前述の通り、デノボ癌を発症するモデル動物は皆無であることから、本モデル動物の樹立に成功したことの意義は図りしれない。本モデル動物は、ヒトのメラノーマの75〜80%を占めるデノボメラノーマに有効な薬剤の開発に有用である。本モデル動物では皮膚に腫瘍が発症する。従って、本モデル動物を用いた場合、デノボ癌の発症を肉眼で検出可能となり、検出・評価が容易である。例えば、腫瘍の大きさや組織学的検査、生物化学的検査を通して、動物を生かしたまま効果を調べることができる。また、本モデル動物によれば、従来は不可能であったデノボメラノーマの発症を予知できるバイオマーカーの探索が可能になる。デノボ癌は突然発症し、死に至る疾患であることから、将来のデノボ癌の発症を予知できれば、その医学的貢献は極めて大きい。一方、本モデル動物と多段階発癌メラノーマのモデル動物(RETマウス)を併用すれば、多段階発癌ではなく、デノボメラノーマ又はデノボ癌に特異的に有効な予知マーカーを個体レベルで選別することが可能となる。また、デノボメラノーマに特に効果のある薬物をスクリーニングしたり、これとは逆に多段階発癌メラノーマに特に効果のある薬物をスクリーニングしたりすることも可能となる。さらには、デノボメラノーマの発症機構と多段階発癌メラノーマの発症機構を分子生物学的手法や形態学的手法等を用いて比較解析することが可能となる。このように研究用ツールとしても本モデル動物は有用である。
以下に列挙する本発明は以上の成果に基づく。
[1]活性化RET遺伝子がヘテロ型に遺伝子導入されているとともに、エンドセリンレセプターB遺伝子がヘテロ型に欠損しており、デノボメラノーマを自然発症する齧歯類遺伝子改変動物。
[2]活性化RET遺伝子が、c-RET遺伝子とRFP遺伝子のハイブリットによって生じた癌遺伝子RFP-RET遺伝子である、[1]に記載の遺伝子改変動物。
[3]活性化RET遺伝子がメタロチオネインIプロモーターに連結している、[1]又は[2]に記載の遺伝子改変動物。
[4]齧歯類がマウスである、[1]〜[3]のいずれか一項に記載の遺伝子改変動物。
[5][1]〜[4]のいずれか一項に記載の遺伝子改変動物を用いることを特徴とする、デノボ癌の予防又は治療に有効な物質のスクリーニング法。
[6]以下のステップ(1)及び(2)を含んでなる、[5]に記載のスクリーニング法:
(1)[1]〜[4]のいずれか一項に記載の遺伝子改変動物に被験物質を取り込ませるステップ;
(2)前記遺伝子改変動物が発症するデノボメラノーマに対して被験物質が予防又は治療効果を示すか否かを評価し、評価結果に基づき被験物質の有効性を判定するステップ。
[7]ステップ(2)における評価が、腫瘍の発生の有無、腫瘍が発生するまでの時間、生じる腫瘍の数、腫瘍の数の増減、生じる腫瘍の大きさ、腫瘍の大きさの増減、腫瘍の悪性度、腫瘍の悪性度の変化、体重の増減、既知の腫瘍マーカーの発現や活性の増減、既知のメラノーマ関連分子の発現量や活性の増減、寿命の長短、転移の有無、転移臓器の分布や割合、腫瘍の浸潤度からなる群より選択される一以上の項目についての評価である、[6]に記載のスクリーニング法。
[8]腫瘍の形成を認めた後にステップ(1)を実施し、
ステップ(2)における評価が、腫瘍の数の増減、腫瘍の大きさの増減、腫瘍の悪性度の変化、体重の増減、既知の腫瘍マーカーの発現や活性の増減、既知のメラノーマ関連分子の発現量や活性の増減、寿命の長短、転移の有無、転移臓器の分布や割合、腫瘍の浸潤度からなる群より選択される一以上の項目についての評価である、[6]に記載のスクリーニング法。
[9]以下のステップを更に含む、[6]〜[8]のいずれか一項に記載のスクリーニング法:
(3)活性化RET遺伝子がヘテロ型に遺伝子導入されており、多段階発癌メラノーマを発症する齧歯類遺伝子改変動物に被験物質を取り込ませるステップ;
(4)前記遺伝子改変動物が発症する多段階発癌メラノーマに対して被験物質が予防又は治療効果を示すか否かを評価し、評価結果に基づき被験物質の有効性を判定するステップ;
(5)ステップ(2)の判定結果とステップ(4)の判定結果を総合し、デノボ癌又は多段階発癌の癌のいずれに対して被験物質が特異的であるか、或いは両方に有効であるかを判定するステップ。
[10]デノボ癌がデノボメラノーマである、[5]〜[9]のいずれか一項に記載のスクリーニング法。
[11]多段階発癌の癌が多段階発癌メラノーマである、[9]に記載のスクリーニング法。
[12][1]〜[4]のいずれか一項に記載の遺伝子改変動物が形成した腫瘍組織を試料として用いることを特徴とする、デノボ癌の発症又は進展機構の解析法。
[13]以下のステップ(1)及び(2)を含んでなる、[12]に記載の解析法:
(1)[1]〜[4]のいずれか一項に記載の遺伝子改変動物が形成した腫瘍組織を採取するステップ;
(2)採取した腫瘍組織を試料として、遺伝子発現・活性解析、形態学的解析、生化学的解析、分子生物学的解析、細胞生物学的解析、生理学的解析、精神・神経学的解析からなる群より選択される一以上の解析を行うステップ。
[14]デノボ癌がデノボメラノーマである、[12]又は[13]に記載の解析法。
[15]以下のステップを更に含む、[12]〜[14]のいずれか一項に記載の解析法:
(3)活性化RET遺伝子がヘテロ型に遺伝子導入されており、多段階発癌メラノーマを発症する齧歯類遺伝子改変動物が形成した腫瘍組織を採取するステップ;
(4)採取した腫瘍組織を試料として、遺伝子発現・活性解析、形態学的解析、生化学的解析、分子生物学的解析、細胞生物学的解析、生理学的解析、精神・神経学的解析からなる群より選択される一以上の解析を行うステップ;
(5)ステップ(2)の解析結果とステップ(4)の解析結果を比較するステップ。
304/B6系RETトランスジェニックマウスの腫瘍発生過程。(A)RETマウスの腫瘍の大きさとステージ(腫瘍なし;斜線、良性腫瘍;白、前癌腫瘍;灰色、悪性腫瘍;黒)の時間的変化。顕微鏡レベル(B-D, HE染色)で観察したRETマウスの良性腫瘍(B)、前癌腫瘍(C)、悪性腫瘍(D)。図Dの白矢じりは、有糸分裂細胞を示す。Ki-67免疫染色を行った良性腫瘍(E)、前癌腫瘍(F)、悪性腫瘍(G)。図F-Gの白矢じりはKi-67陽性細胞を示す。スケールバーは20μm。核の大きさ(平均値±標準誤差)(H)、核-細胞質比(N/C比; 平均値±標準誤差)(I)、Ki-67インデックス(平均値±標準誤差)(J)、(良性腫瘍;白、前癌腫瘍;灰色、悪性腫瘍;黒)。(H)と(I)に関しては、ステージごとに異なる6サンプルから90個の細胞の解析を行った。(J)に関しては、ステージごとに異なる6サンプルから5,000個の細胞の解析を行った。Bは良性腫瘍、Pは前癌腫瘍、Mは悪性腫瘍を示す。*は、Kruskal-Wallisテストにより、有意差があったことを示す(P<0.05)。 RETトランスジェニックマウスにおける生化学的特徴づけ。RETマウスの良性腫瘍(白)、前癌腫瘍(灰色)、悪性腫瘍(黒)における、MCAM(A)、E-カドヘリン(B)、N-カドヘリン(C)、MT1-MMP(D)、Ednrb(E, F, G, I, J)の転写産物レベル(A-E)とタンパク質レベル(F, G, I, J)での発現量をリアルタイムPCR法と免疫染色法を用いて調べた。発現レベルの違いは、良性腫瘍を1として比較した(平均値±標準誤差)。*は、Kruskal-Wallisテストにより、有意差があったことを示す(P<0.05)。それぞれの腫瘍ステージについて10サンプル以上の解析を行った。Bは良性腫瘍、Pは前癌腫瘍、Mは悪性腫瘍を示す。RETマウスの良性腫瘍(F、G)悪性腫瘍(H-I)におけるEdnrbの免疫染色(F、H)とHE染色(G、I)の結果。スケールバーは50μm。原図ではEdnrbの発現量は紫色、核は緑色で示される。 組織病理学的、生化学的解析によって示されたEdnrb(+/-);RETマウス腫瘍の悪性度。本実験では、1,000 mm3未満の腫瘍を用いて解析を行った。RETマウスの腫瘍(A-C)、Ednrb(+/-);RETマウスの腫瘍(D-F)の顕微鏡レベル(A、D, HE染色)、Ki-67染色(B、E)、Ednrbの免疫染色(C、F)の解析結果。(A-F)のスケールバーは250μm。原図ではEdnrbの発現は紫色、核は緑色で示される。(C)と(F)のスケールバーは50μm。原図ではEdnrbの発現は紫色、核は緑色で示される。(E)の白矢じりはKi-67陽性細胞。核の大きさ(平均値±標準誤差)(G)、核-細胞質比(N/C比; 平均値±標準誤差)(H)、Ki-67インデックス(平均値±標準誤差)(I)[RETマウスの腫瘍(白)、Ednrb(+/-);RETマウスの腫瘍(黒)]。(G)と(H)に関しては、ステージごとに異なる6サンプルから90個の細胞の解析を行った。(I)に関しては、ステージごとに異なる6サンプルから5,000個の細胞の解析を行った。RETマウスの腫瘍(白)、Ednrb(+/-);RETマウスの腫瘍(黒)における、MCAM(J)、E-カドヘリン(K)、N-カドヘリン(L)、MT1-MMP(M)、Ednrb(N)の転写産物レベル(J-N)とタンパク質レベル(O, P, R, S)での発現量をリアルタイムPCR法と免疫染色法を用いて調べた。発現レベルの違いは、RETマウスの腫瘍を1として比較した(平均値±標準誤差)。*は、Mann-Whitneyテストにより、有意差があったことを示す(P<0.05)。それぞれの腫瘍について10サンプル以上の解析を行った。 Ednrb(+/-);RETマウスとRETマウスの腫瘍の病態の比較。腫瘍の大きさとステージ(A)。Bは良性腫瘍(白)、Pは前癌腫瘍(灰色)、Mは悪性腫瘍(黒)を、○はRETマウスの腫瘍、△はEdnrb(+/-);RETマウスの腫瘍示す。N.D.は検出できなかったことを示す。腫瘍発症時期(B)、腫瘍発症後のKaplan-Meier生存曲線(C)、肺転移率と腫瘍サイズ(D)。*は、log-rankテストにより、有意差があったことを示す(P<0.05)N.D.は検出できなかったことを示す。 Ednrb(+/-)RETマウスの腫瘍がメラノサイト系腫瘍であることの証明。Ednrb(+/-)RETマウスの腫瘍(<1,000 mm3)におけるHE染色(A)、Dct(B)とS100(C)に対する免疫染色(B, C)。Dctはメラノサイト系細胞のマーカー、S100はメラノサイト系腫瘍のマーカー。原図ではDct、S100の発現は紫色、核は緑色で示される。 Ednrb(+/-)RETマウスで観察されたメラノーマ肺転移。メラノーマの肺転移(A)。肺に転移したメラノーマにおけるHE染色(B)、Dct(C)とS100(D)に対する免疫染色。腫瘍はDct、S100ともに陽性。原図ではDct、S100の発現は紫色、核は緑色で示される。
(遺伝子改変動物)
本発明の第1の局面はデノボメラノーマを自然発症する齧歯類遺伝子改変動物に関する。本発明の齧歯類遺伝子改変動物はデノボ癌のモデルとして有用である。「デノボ癌」とは、正常細胞から直接に悪性腫瘍(癌)を発症する癌のタイプであり、正常細胞が良性腫瘍や前癌状態を経て少しずつ悪性腫瘍になっていく多段階発癌と呼ばれるタイプと対照をなす。メラノーマにおいてもこれら二つのタイプがあり、本明細書では前者のタイプのメラノーマを「デノボメラノーマ」と称し、後者のタイプのメラノーマを「多段階発癌メラノーマまたは母斑関連メラノーマ」と称して区別する。
本発明の遺伝子改変動物は第1の特徴として、デノボメラノーマを自然発症する。「自然発症する」とは、発癌を促すための特別の処理をすることなく発症することを意味する。
齧歯類は特に限定されず、マウス、ラット、モルモット、ハムスター及びウサギを含む。好ましくはマウスである。
本発明の遺伝子改変動物の第2の特徴は、活性化RET遺伝子がヘテロ型に遺伝子導入されていることである。活性化型RET遺伝子の種類は限定されないが、好ましい一例として、RFP遺伝子と活性化型RET遺伝子のハイブリッドであるRFP-RETを挙げることができる。活性化型RET遺伝子は、例えばメタロチオネインIプロモーター等の適宜なプロモーターの下流に連結されて遺伝子導入されている。活性化型RET遺伝子の具体例(塩基配列)を配列表の配列番号1に示す。
本発明の遺伝子改変動物の第3の特徴は、エンドセリンレセプターB遺伝子(Ednrb遺伝子)がヘテロ型に欠損していることである。Ednrb遺伝子は、マウスでは14番目の染色体に位置し、巨大結腸症の発症や色素細胞の発生・分化・増殖に関与している。Ednrb遺伝子の塩基配列を配列表の配列番号2に示す。
本発明のモデル動物は例えば交配によって作製することができる。当該作製法では、非ヒト哺乳動物に活性化型RET遺伝子がヘテロ型に遺伝子導入されたRETトランスジェニック動物と、同種の動物であってEdnrb遺伝子がヘテロ型に欠損している遺伝子改変動物(例えばノックアウト動物又はノックイン動物)とを用意し、これらを交配させれば良い。RETトランスジェニック動物として、c-RET遺伝子とRFP遺伝子のハイブリットによって生じた癌遺伝子RFP-RET遺伝子を活性化RET遺伝子として保有するものを用いることが好ましい。また、活性化RET遺伝子がメタロチオネインIプロモーター(MT)に連結していることが好ましい。RETトランスジェニック動物の具体例は、304系のMT/RETトランスジェニックマウスに対してC57BL/6マウスを交配して得られた302/B6系RETトランスジェニックマウスである(参考文献17を参照)。尚、RETマウスの凍結受精卵及び凍結精子は国立大学法人熊本大学の生命資源研究・支援センター(CARD)に保存されている。
Ednrb遺伝子がヘテロ型に欠損している遺伝子改変動物は例えばジーンターゲティングを利用して作製できる。ジーンターゲティングは遺伝子の相同組換えを利用してゲノムに改変を加える技術である。ジーンターゲティングを利用すれば、特定の遺伝子が欠損した遺伝子改変動物(ノックアウト動物)、特定の遺伝子が導入された遺伝子改変動物(ノックイン動物)等を作製することができる。ジーンターゲティングを利用した遺伝子改変動物(ノックアウト動物、ノックイン動物)の作製法は、マウスの場合を例にとれば、大別して(a)ターゲティングベクターの構築、(b)ES細胞へのターゲティングベクターの導入及び相同組換え体の同定、(c)ブラストシストへの相同組み換え体の注入、(d)仮親の子宮内への胚移植及び出産(キメラ仔マウス)、(e)キメラ仔マウスと野生型マウスの交配(F1世代であるヘテロ接合体マウスの産出)、及び(f)F1世代同士の交配(F2世代であるホモ接合体マウスの産出)からなる。ラットなど、他の齧歯類を用いた場合も同様の手順で遺伝子改変動物を得ることができる。尚、ジーンターゲティングによる遺伝子改変動物の作製法については例えばJoyner, A. L.:Gene Targeting (IRL press)、Capeccchi, M. R., Science, 244, 1288-1292 (1989)、Hua Gu, et al., Science, 265, 103-106 (1994)、McHugh, T. J. et al., Cell, 87, 1339-1349 (1996)、Shibata, H. et al., Science, 278, 120-123 (1997)等が参考になる。尚、Ednrb遺伝子がヘテロ型に欠損している遺伝子改変動物の具体例は、マウスES細胞を利用した遺伝子ターゲティングによって得られたマウスである(参考文献21を参照)。Ednrbノックアウトマウスの凍結受精卵及び凍結精子は国立大学法人熊本大学の生命資源研究・支援センター(CARD)に保存されている。
(遺伝子改変動物の用途)
本発明の第2の局面は上述の遺伝子改変動物の用途に関する。第1の用途としてデノボ癌の予防又は治療に有効な物質のスクリーニング法が提供される。尚、本発明のスクリーニング法に使用する遺伝子改変動物はデノボ癌の一つである「デノボメラノーマ」を発症するものであり、本発明では「デノボメラノーマ」に対する効果を指標として被験物質の有効性を判定することになるが、異なる癌腫であってもその発症機構や表現型に高い類似性が認められることが多いという事実や、経験上、ある癌腫に対して有効な物質が他の癌腫に対しても同様に有効性を示すことがあるという事実に鑑みれば、メラノーマのみならず、他の癌腫に対しても本発明が有効であるといえる。即ち本発明は、デノボ癌に対して有効な物質をスクリーニングする汎用的な方法となり得る。但し、好ましい一態様ではデノボメラノーマに対して有効な物質をスクリーニングする手段として本発明は利用される。
本発明のスクリーニング法は以下のステップ(1)及び(2)を含む。
(1)本発明の遺伝子改変動物に被験物質を取り込ませるステップ
(2)前記遺伝子改変動物が発症するデノボメラノーマに対して被験物質が予防又は治療効果を示すか否かを評価し、評価結果に基づき被験物質の有効性を判定するステップ
ステップ(1)では、本発明の遺伝子改変動物を用意し、当該動物に被験物質を取り込ませる。被験物質の取り込ませ方は特に限定されない。例えば被験物質を含む餌又は飲料水を用意し、これを摂取させる。或いは、被験物質又は被験物質を含む溶液を用意し、これを投与する。投与方法として経口投与、経鼻投与、経気管投与、静脈内、動脈内、皮下、筋肉内又は腹腔内注射、組織又は器官への注入、腫瘍への直接注射又は塗布を例示することができる。被験物質を複数回投与することにしてもよい。その場合には各回の投与量は同一であっても異なっていても良い。
被験物質としては様々な分子サイズの有機化合物又は無機化合物を用いることができる。有機化合物の例として、核酸、ペプチド(ダイペプチド、トリペプチド等のオリゴペプチドやポリペプチド)、タンパク質、脂質(単純脂質、複合脂質(ホスホグリセリド、スフィンゴ脂質、グリコシルグリセリド、セレブロシド等)、プロスタグランジン、イソプレノイド、テルペン、ステロイド、ポリフェノール、カテキン、ビタミン(B1、B2、B3、B5、B6、B7、B9、B12、C、A、D、E等)を例示できる。被験物質は天然物由来であっても、或いは合成によるものであってもよい。後者の場合には例えばコンビナトリアル合成の手法を利用して効率的なスクリーニング系を構築することができる。尚、細胞抽出液、培養上清などを試験物質として用いてもよい。また、既存の薬剤を被験物質としてもよい。
試験群及び対照群に含まれる個体数は特に限定されない。一般に使用する個体数が多くなるほど信頼性の高い結果が得られるが、多数の個体を同時に取り扱うことは使用する個体の確保や操作(飼育を含む)の面で困難を伴う。そこで例えば各群に含まれる個体数を1〜50、好ましくは2〜30、さらに好ましくは3〜20とする。
本発明のスクリーニング方法によって選択された物質が十分な薬効を有する場合には、当該物質をそのまま医薬の有効成分として使用することができる。一方で十分な薬効を有しない場合には化学的修飾などの改変を施してその薬効を高めた上で、医薬の有効成分として使用することができる。勿論、十分な薬効を有する場合であっても、更なる薬効の増大を目的として同様の改変を施してもよい。
ステップ(2)では、遺伝子改変動物が発症するデノボメラノーマに対して被験物質が予防又は治療効果を示すか否かを評価し、評価結果に基づき被験物質の有効性を判定する。有効性が認められた複数の被験化合物を用いて再度ステップ(1)及び(2)を行い、有効性の高い物質の絞り込みを行うことにしてもよい。ここでの評価は、被験物質の予防又は治療効果の指標になる項目に関するものである。採用可能な評価項目として、腫瘍の発生の有無、腫瘍が発生するまでの時間、生じる腫瘍の数、腫瘍の数の増減、生じる腫瘍の大きさ、腫瘍の大きさの増減、腫瘍の悪性度、腫瘍の悪性度の変化、体重の増減、既知の腫瘍マーカーの発現や活性の増減、既知のメラノーマ関連分子の発現量や活性の増減、寿命の長短、転移の有無、転移臓器の分布や割合、腫瘍の浸潤度を挙げることができる。既知の腫瘍マーカーとしてAFP(α-フェトプロテイン)、CEA(癌胎児性抗原)、CA15-3、CA19-9、CA50、CA125、CA130、CA602、CSLEX(シアリルLex抗原)、STN(シアリルTn抗原)、SLX(シアリルLex-i抗原)、DUPAN-2(膵癌関連糖蛋白抗原)、CYFRA(サイトケラチン19フラグメント)、KMO-1、NCC-ST-439、SPan-1、SCC抗原(扁平上皮癌関連抗原)、TPA(組織ポリペプチド抗原)、IAP(免疫抑制酸性蛋白)、ICTP(I型コラーゲンC-テロペプチド)、CTx(I型コラーゲン架橋C-テロペプチド)、尿中BTA(膀胱腫瘍抗原)、尿中NMP22(核マトリックスプロテイン22)、PSA(前立腺特異抗原)、ALP(アルカリフォスファターゼ)、フェリチン、エステラーゼIを例示することができる。また、既知のメラノーマ関連分子としてMART1、gp100、TYR(チロシナーゼ)、TRP1、TRP2、MAGE1、MAGE2、MAGE3、MAGE6、NY-ESO-1、MUM1、S100、HMB-45を例示することができる。
評価の正確性や信頼度を高めるため、二つ以上の評価項目を併用することが好ましい。例えば、「腫瘍が発生するまでの時間」と「生じる腫瘍の数」に基づき評価を下すことができる。尚、腫瘍の発生の有無、腫瘍が発生するまでの時間、生じる腫瘍の数、生じる腫瘍の大きさ、腫瘍の悪性度、既知の腫瘍マーカーの発現や活性の増減、既知のメラノーマ関連分子の発現量や活性の増減等の評価項目は被験物質の予防効果を評価する上で特に有用であり、腫瘍の数の増減、腫瘍の大きさの増減、腫瘍の悪性度の変化、寿命の長短、転移の有無、転移臓器の分布や割合、腫瘍の浸潤度、体重の増減等の評価項目は被験物質の治療効果を評価する上で特に有用である。
被験物質の取り込みによって予防又は治療効果を認めた場合、被験物質が有効であると判定されることになる。例えば、評価項目として「腫瘍の発生の有無」を採用した場合、対照群では腫瘍の発生が認められるのに対して試験群では腫瘍の発生が認められないのであれば、被験物質が腫瘍の発生を抑制ないし阻害したと評価でき、被験物質の有効性(特に予防効果に関する有効性)を推認する。同様に、評価項目として「腫瘍が発生するまでの時間」を採用した場合にあっては、腫瘍が発生するまでの時間が対照群に比較して試験群で長いようであれば、被験物質が腫瘍の発生を抑制ないし阻害したと評価でき、被験物質の有効性(特に予防効果に関する有効性)を推認する。別の例として、「腫瘍の大きさの増減」に基づき評価・判定する場合には、被験物質を取り込ませた後に腫瘍の大きさの低減が認められたときに被験物質が有効であると判定する(好ましくは、試験群と対照群を用い、「腫瘍の大きさの増減」について両者を比較する)。
一態様では、腫瘍の形成を認めた後にステップ(1)を実施する。即ち、腫瘍の形成を認めた後に被験物質の取り込みを行わせる。この場合にはステップ(2)において、形成された腫瘍の変化に関する項目、即ち、腫瘍の数の増減、腫瘍の大きさの増減、腫瘍の悪性度の変化、腫瘍の悪性度の変化、体重の増減、既知の腫瘍マーカーの発現や活性の増減、既知のメラノーマ関連分子の発現量や活性の増減、寿命の長短、転移の有無、転移臓器の分布や割合、腫瘍の浸潤度等を評価項目として採用し、被験物質の有効性を判定する。この態様においても二つ以上の評価項目を併用することが好ましい。尚、この態様のスクリーニング法は、デノボ癌に対して治療効果を示す物質の探索において特に有用である。
別の一態様では、上記のステップ(1)及び(2)に加えて、以下のステップ(3)〜(5)を実施する。この態様によれば、デノボ癌(好ましくはデノボメラノーマ)に特に効果のある物質、或いは多段階発癌の癌(好ましくは多段階発癌メラノーマ)に特に効果のある物質を見出すことが可能となる。尚、ステップ(1)及び(2)に先行して或いは並行してステップ(3)及び(4)を実施することにしてもよい。ステップ(5)は、その内容から明らかな通り、ステップ(1)〜(4)の後に実施される。また、ステップ(3)及び(4)はそれぞれステップ(1)及び(2)に準じて実施することができ、以下で特に言及しない事項についてはこれら対応するステップ(1)及び(2)における説明が援用される。
(3)活性化RET遺伝子がヘテロ型に遺伝子導入されており、多段階発癌メラノーマを発症する齧歯類遺伝子改変動物に被験物質を取り込ませるステップ
(4)前記遺伝子改変動物が発症する多段階発癌メラノーマに対して被験物質が予防又は治療効果を示すか否かを評価し、評価結果に基づき被験物質の有効性を判定するステップ
(5)ステップ(2)の判定結果とステップ(4)の判定結果を総合し、デノボ癌又は多段階発癌の癌のいずれに対して被験物質が特異的であるか、或いは両方に有効であるかを判定するステップ
ステップ(3)では、多段階発癌のモデルとして、活性化RET遺伝子がヘテロ型に遺伝子導入されており、多段階発癌のメラノーマを発症する齧歯類遺伝子改変動物を用意し、これにステップ(1)と同様の要領で被験物質を取り込ませる。ここでの遺伝子改変動物には、本発明の遺伝子改変動物(第1の局面)の作製に利用可能な、非ヒト哺乳動物に活性化型RET遺伝子がヘテロ型に遺伝子導入されたRETトランスジェニック動物を好適に用いることができる。
続くステップ(4)では、遺伝子改変動物が発症する多段階発癌メラノーマに対して予防又は治療効果を示すか否かを評価し、評価結果に基づき被験物質の有効性を判定する。有効性が認められた複数の被験化合物を用いて再度ステップ(3)及び(4)を行い、有効性の高い物質の絞り込みを行うことにしてもよい。評価項目はステップ(1)に準ずる。また、ステップ(1)と同様、ステップ(4)においても二つ以上の評価項目を併用することが好ましい。
ステップ(5)は、先行するステップ(2)及び(4)の判定結果に基づき、デノボ癌又は多段階発癌のいずれに対して被験物質が特異的であるか、即ち被験物質がいずれのタイプの癌に対して特に有効であるか、それとも両方に有効であるかを判定するステップである。ステップ(2)において有効であると判定された一方でステップ(4)では有効でないと判定された場合、被験物質はデノボ癌に対して特異的に有効であるとの最終判定を下すことができる。対照的に、ステップ(2)では有効でないと判定されたもののステップ(4)において有効性を認めた場合、被験物質は多段階発癌の癌に対して特異的に有効であると判定される。ステップ(2)及び(4)の両方において有効性を認めた被験物質についてはデノボ癌と多段階発癌の癌の両方に対して有効であると判定することができる。
本発明は、上述の遺伝子改変動物の第2の用途として、デノボ癌の発症又は進展機構の解析法を提供する。本発明の解析法は特にデノボメラノーマの発症又は進展機構を解析するための研究ツールとして有用である。本発明の解析法では本発明の遺伝子改変動物(第1の局面)を利用する。具体的には本発明の遺伝子改変動物が形成した腫瘍の病理組織や腫瘍関連分子の発現量、活性を解析することによってデノボ癌の発症又は進展機構に関して有益な情報を得る。典型的には以下のステップ(1)及び(2)を実施する。
(1)本発明の遺伝子改変動物が形成した腫瘍組織を採取するステップ
(2)採取した腫瘍組織を試料として、遺伝子発現・活性解析、形態学的解析、生化学的解析、分子生物学的解析、細胞生物学的解析、生理学的解析、精神・神経学的解析からなる群より選択される一以上の解析を行うステップ。
ステップ(2)では、遺伝子発現・活性解析、形態学的解析、生化学的解析、分子生物学的解析、細胞生物学的解析、生理学的解析、精神・神経学的解析等が行われる。各解析には常法を用いることができる。例えば遺伝子発現解析であれば、ノーザンブロット法、in situハイブリダイゼーション法、RT-PCR法、CATアッセイ、ルシフェラーゼアッセイ、ゲルシフトアッセイ等を利用できる。遺伝子発現解析として、複数の遺伝子の発現状態を網羅的に解析する遺伝子発現プロファイル解析を実施することにしてもよい。一方、組織化学的解析の具体例は免疫組織化学的染色による解析である。免疫組織化学的染色法については様々な文献及び成書を参照することができる(例えば、「酵素抗体法、改訂第3版」、渡辺慶一、中根一穂編集、学際企画)。
腫瘍組織を採取することなく解析に供することも可能である。即ち、遺伝子改変動物が形成した腫瘍組織を直接解析することにしてもよい。写真やビデオによる肉眼的形態と行動、サーカディアンリズム等に及ぼす影響の解析もよい。
一態様では、ステップ(1)〜(3)に加えて以下のステップ(3)及び(4)も実施し、デノボ癌と多段階発癌の癌を比較解析する。当該態様は例えば、デノボ癌と多段階発癌の比較研究に有用である。特に、デノボメラノーマと多段階発癌メラノーマの比較研究に有用である。尚、ステップ(1)及び(2)に先行して或いは並行してステップ(3)及び(4)を実施することにしてもよい。ステップ(5)は、その内容から明らかな通り、ステップ(1)〜(4)の後に実施される。また、ステップ(3)及び(4)はそれぞれステップ(1)及び(2)に準じて実施することができる。
(3)活性化RET遺伝子がヘテロ型に遺伝子導入されており、多段階発癌メラノーマを発症する齧歯類遺伝子改変動物が形成した腫瘍組織を採取するステップ
(4)採取した腫瘍組織を試料として、遺伝子発現・活性解析、形態学的解析、生化学的解析、分子生物学的解析、細胞生物学的解析、生理学的解析、精神・神経学的解析からなる群より選択される一以上の解析を行うステップ
(5)ステップ(2)の解析結果とステップ(4)の解析結果を比較するステップ
本明細書で特に言及しない事項(条件、操作方法など)については常法に従えばよく、例えばMolecular Cloning(Third Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York)、Current protocols in molecular biology(edited by Frederick M. Ausubel et al., 1987)、Current protocols in Immunology, John Wiley& Sons Inc等を参考にすることができる。
以下に示す通り、本発明者らはデノボメラノーマを形成するメラノーマモデルマウスを新規に樹立するとともに、ヒトのデノボメラノーマ、母斑関連メラノーマに相当するカテゴリー化を行った。
1.材料及び方法
(1)マウス
メタロチオネインI/RFP-RETトランスジェニックマウス(304/B6系統のRETマウス)(参考文献17)とエンドセリンレセプターB(Ednrb)ヘテロ欠損マウス(参考文献21)を交配し、Ednrbの発現量が半減するRETマウス(Ednrb(+/-);RETマウス)を作製した。中部大学の動物実験委員会(受理番号18001)及び組換えDNA実験安全委員会(受理番号06-01)の承認の下、本研究を行った。
(2)リアルタイムPCR
High Pure RNA Isolation Kit(ロッシュ・ダイアグノスティクス)を用いて全RNAを調製した。操作方法は添付のプロトコールに従った。SupercriptTMIII reverse transcriptase(インビトロジェン。RT enzyme mix、RT reaction mixを含む)を用いて全RNAを逆転写し、cDNAを得た。操作方法は添付のプロトコール通りとした。Platinum SYBR Green PCR master mix(アプライド・バイオシステムズを用い、ABI Prism7500 sequence detection system(アプライド・バイオシステムズ)内でリアルタイム定量RT-PCRを行った(参考文献32)。PCRには以下のプライマーセットを使用した。
MCAM用プライマー:フォワードプライマー 5’- AGGGAGGTTGCTACCTGTGT-3’(配列番号3); リバースプライマー 5’-AGCCACTGGACTCGACAATC-3’(配列番号4)
E-カドヘリン用プライマー:フォワードプライマー 5’-CAAAGTGACGCTGAAGTCCA-3’(配列番号5); リバースプライマー 5’-TACACGCTGGGAAACATGAG-3’(配列番号6)
N-カドヘリン用プライマー:フォワードプライマー 5’-GCTGAAAATAGACCCCGTGA-3’(配列番号7); リバースプライマー 5’-TTCCTGTCCCACTCATAGGC-3’(配列番号8)
MT1-MMP用プライマー:フォワードプライマー 5’-GACTGTCCAAAATGAGGATC-3’(配列番号9); リバースプライマー 5’-TCTTTGTGGGTGACCCTGAC-3’(配列番号10)
Ednrb用プライマー:フォワードプライマー 5’-GCTTAATCCCTTTCAGAAAACAGCC-3’(配列番号11); リバースプライマー 5’-GGCAAGCAGAAGTAGAAACTGAAC-3’(配列番号12)
HPRT(内部標準)用プライマー:フォワードプライマー 5’-CTTTGCTGACCTGCTGGATT-3’(配列番号13); リバースプライマー 5’- TATGTCCCCCGTTGACTGAT-3’(配列番号14)
(3)免疫組織化学
5μm厚のパラフィン切片を用意した。切片を脱パラフィン後、0.25%過マンガン酸カリウムで50分間処理し、更に5%シュウ酸で5分間、処理した後(脱メラニン処理)、免疫組織化学に使用した。免疫組織化学にはVECTASTAIN(登録商標) ABC Kit (VECTOR)及びVECTOR VIP (VECTOR)を使用した。操作方法は添付のプロトコールに従った。1次抗体として抗Ki-67ウサギポリクローナルIgG抗体(Novocastra、1:1000希釈)と抗EdnrBウサギポリクローナルIgG抗体(CHEMICON、1:500希釈)を使用した。対比染色にはメチルグリーン(VECTOR)を用いた。
(4)核及び細胞質のサイズの測定
5μm厚のパラフィン切片をマイヤーのヘマトキシリン・エオシン(Muto Pure Chemicals)染色に供した。ImageJ64ソフトウエアを用いて核及び細胞質のサイズを測定した。
2.結果
(1)RETマウスに生じたメラノサイト系腫瘍の組織病理学的解析による腫瘍ステージの定義化
ヒトの癌においては、良性腫瘍と悪性腫瘍の中間段階に相当する前癌腫瘍が存在することが組織病理学的観点から報告されている。本研究で我々は、RETマウスにおけるメラノサイト系良性腫瘍とメラノーマをより詳しく解析を行うことで、良性腫瘍とメラノーマの中間の性質を持つ前癌腫瘍を定義することに成功した。RETマウスに生じた良性腫瘍(腫瘍サイズ<1,000 mm3)は、核のサイズが均一であり、分裂している細胞が確認されないことから、組織病理学的にヒトのメラノサイト系良性腫瘍に類似している(図1B)。一方、悪性腫瘍(腫瘍サイズ>8,000 mm3)は、不均一な核の大きさを持つ非対称細胞で構成され、分裂活性が高い(図1D)。また、Ki-67陽性細胞数(=分裂細胞数)も良性腫瘍と比べて非常に多い(図1E,F)。これらの特徴は、これまでに報告されたヒトのメラノーマと類似している(参考文献17)。RETマウス由来の、1,000-8,000 mm3の腫瘍は、組織病理学的に良性と悪性の中間の特徴を示し、前癌腫瘍に相当すると考えられる(図1A,C,F)。RETマウスの前癌腫瘍は、核の大きさが均一な細胞集団と、非対称細胞集団が混在している(図1C)。また、前癌腫瘍の核のサイズ(図1H)、核-細胞質面積比(N/C比)(図1I)、Ki-67陽性細胞数比(Ki-67 インデックス)(図1J)は、統計学的に良性腫瘍と悪性腫瘍の中間の特徴を示した。良性腫瘍を発症したマウスでは肺転移が見られず(n>100)、前癌腫瘍を持つマウスでは0%(n=18)、悪性腫瘍を持つマウスでは43.8%のマウスで肺転移が観察された。腫瘍サイズとステージの関係を調べると、1,000 mm3未満の腫瘍の80%(18/22)が良性腫瘍、1,000-8,000 mm3の腫瘍の80%が前癌腫瘍(11/13)、8,000 mm3より大きい腫瘍のすべてが(13/13)悪性腫瘍であった(図4A)。これらの結果より、RETマウスにおけるメラノーマ形成は、腫瘍未形成、良性腫瘍、前癌腫瘍、悪性腫瘍と段階的に進み、ヒトの多段階発癌メラノーマ形成に類似性が高いことが示された。
(2)RETマウスの様々な腫瘍段階における生化学的特徴
RETマウスの3つの腫瘍段階を生化学的に特徴づけるために、RETマウスの3つの腫瘍段階において、メラノーママーカー遺伝子[MCAM (melanoma cell adhesion molecule), E-カドヘリン、N-カドヘリン、MT1-MMP(メンブレンタイプ-I マトリックスメタロプロテイナーゼ)]の発現量を定量PCR法を用いて調べた。これら4つの遺伝子は、メラノーマの増殖、接着、浸潤、血管新生、転移に関わっていると報告されている(参考文献27〜30)。MCAM、N-カドヘリン、MT1-MMPの遺伝子発現レベルは、良性腫瘍では低く、悪性腫瘍では高く、E-カドヘリンの遺伝子発現レベルは、逆に良性腫瘍で高く(図2A、C, D)、悪性腫瘍では低かった(図2B)。これら4つの遺伝子発現の変化は、過去のヒト腫瘍における報告と一致する(参考文献29)。前癌腫瘍におけるMCAM、N-カドヘリン、MT1-MMPの遺伝子発現レベルは良性腫瘍と同じであったが(図2A、C, D)、E-カドヘリンの遺伝子発現レベルは悪性腫瘍と同じであった(図2B)。これらの結果より、組織病理学的解析から前癌腫瘍と判断されるRETマウス由来の腫瘍は、分子レベルにおいても良性腫瘍と悪性腫瘍の中間に相当し、前癌腫瘍であると新しく定義できる。メラノーマ形成過程における、Ednrb遺伝子の効果を知るために、RETマウス由来の腫瘍でEdnrbの発現量を調べたところ、悪性腫瘍では、良性腫瘍や前癌腫瘍と比較して転写レベルでも(図2E)、タンパク質レベルでも(図2F,H)減少していた。この結果より、RETマウスではメラノーマの進行に伴ってEdnrbの発現量が減少することが示唆された。
(3)Ednrb(+/-)RETマウスの腫瘍における病理組織学的、生化学的解析
メラノーマ形成過程におけるEdnrb遺伝子発現量減少の効果を調べるために、Ednrb(+/-);RETマウスを作製した。Ednrb(+/-);RETマウスの腫瘍はメラノサイトマーカー(Dct)、メラノーママーカー(S100)とも陽性であることから、これらの腫瘍がメラノサイト系腫瘍であることを確認した(図5A〜C)。また、RETマウスの1,000 mm3未満の腫瘍とEdnrb(+/-);RETマウス由来の腫瘍の間でEdnrb遺伝子の発現量を比較したところ、Ednrb(+/-);RETマウス由来の腫瘍ではEdnrbの発現量の減少が確認できた(図3C,F,N)。次に、Ednrb(+/-);RETマウスとRETマウスの1,000 mm3未満の腫瘍について病理組織学的解析を行った。核の大きさ(図3G)、N/C比(図3H)、Ki-67インデックス(図3I)を調べるRETマウスの悪性腫瘍と類似していた。RETマウス由来の腫瘍では、82.6%(19/23)が良性、17.4%(4/23)が前癌腫瘍であったのに対し、Ednrb(+/-);RETマウス由来の腫瘍は、病理組織解析によると68.8%(11/16)が悪性、31.2%(5/16)が前癌腫瘍であった。加えて、生化学的解析によると、Ednrb(+/-);RETマウスの腫瘍では、RETマウスの同様のサイズの腫瘍と比較して、MCAM遺伝子(図3J)、N-カドヘリン遺伝子 (図3L)、MT1-MMP遺伝子(図3M)の発現レベルが高く、E-カドヘリン遺伝子(図3K)の発現レベルは低かった。これらの結果は、Ednrb(+/-);RETマウス由来の1,000 mm3未満の腫瘍は悪性であることを示唆している。
一方、RETマウスとEdnrb(+/-);RETマウス腫瘍の病態について統計学的解析を行った。まず、腫瘍サイズと組織病理学的方法を用いて決定した腫瘍のサイズとステージの関連を調べた。RETマウスでは1,000 mm3未満の腫瘍は良性腫瘍、1,000-8,000 mm3の腫瘍は前癌腫瘍、8,000 mm3より大きい腫瘍は悪性腫瘍と判断され、サイズに伴って悪性度が増すのに対し、Ednrb(+/-);RETマウスの腫瘍では1,000 mm3未満の小さい腫瘍であってもほとんどの腫瘍(21/26=80.8%)が悪性であり、19.2%(5/26)が前癌腫瘍であった(図4A)。また、肺転移を調べたところ、良性腫瘍(<1,000mm3)又は前癌腫瘍 (1,000〜8,000 mm3)の形成されたRETマウスでは肺への転移が検出されなかったが、Ednrb(+/-);RETマウスでは、腫瘍発症時期はRETマウスよりも非常に遅かったが(p<0.05)(図4B)、腫瘍形成後の生存期間はより短かった(p<0.05)(図4C)。この原因は肺転移が生じやすいことにあると考えられる(p<0.05)(図4D)。尚、肺に転移した腫瘍は、Dct陽性、S100陽性であることからメラノーマであることが確認された(図6)。
3.考察
RETマウスの腫瘍が、腫瘍サイズ依存的に進行する多段階発癌メラノーマであることが確認された。また、RETマウスの悪性腫瘍では、良性腫瘍と比較してEdnrb遺伝子の発現量が減少していることを見出した。一方、メラノーマ形成過程におけるEdnrb遺伝子の機能を明らかにするためにEdnrb(+/-);RETマウスを作製し、その腫瘍を組織病理学的方法、生化学的方法を用いて解析した。臨床病態的、組織病理学的解析から、ヒトのメラノーマは、多段階発癌とデノボ癌に分けられている(参考文献10〜12)。これまでの研究から、メラノーマの20〜25%はメラノサイト系良性腫瘍が次第に悪性に進行する多段階発癌のプロセスを踏み(多段階発癌メラノーマ)、75〜80%は良性段階なしで突然発生する(デノボメラノーマ)ことが判明している。多段階発癌の生じる時期は、デノボメラノーマよりも早い。これらの疫学的な特徴に加えて、多段階発癌メラノーマとデノボメラノーマについて臨床病態的、組織病理学的な違いも報告されている。多段階発癌タイプのメラノーマを持つ患者の転移率はデノボメラノーマ患者よりも低い。このことから、デノボメラノーマの予防法や治療法の開発は多段階発癌タイプのメラノーマよりも重要であると言える。
RETマウスのメラノサイト系腫瘍形成過程は、腫瘍未形成、良性腫瘍、前癌腫瘍、悪性腫瘍と進行し、ヒトの多段階発癌タイプのメラノーマ形成過程と類似性が非常に高いことから、RETマウスは多段階発癌タイプのメラノーマモデルマウスとなりうる。一方、Ednrb(+/-);RETマウスに生じた腫瘍では80%以上が悪性腫瘍であり、良性腫瘍は観察されなかった。さらに、腫瘍発症時期がRETマウスよりも遅く、転移の割合が高く、予後が悪かった。これらの特徴はヒトのデノボメラノーマの特徴と高い類似性を有する。このことからEdnrb(+/-);RETマウスはデノボメラノーマモデルマウスとして有用であるといえる。マウスにおいては、このような多段階発癌タイプのメラノーマとデノボタイプのメラノーマを比較しつつ明確にカテゴリー化した報告はない。ヒトにおいては今日まで、多段階発癌メラノーマとデノボメラノーマを科学的データに基づいて厳密に比較することは難しかった。なぜなら、このような比較・判断はメラノーマが発症した場所に母斑があったかどうかという患者の記憶をもとになされているからである。本研究で使用した多段階発癌モデル(RETマウス)とデノボ癌モデルマウス(Ednrb(+/-);RETマウス)は、それぞれのメラノーマ形成のメカニズムを明確にし、メラノーマの治療法の開発に役立つと期待できる。本研究では、RETマウスにおいてEdnrb遺伝子をヘテロ型に欠損させるだけで、多段階発癌メラノーマを発症するマウスからデノボメラノーマを発症するマウスへ変化することを示した。EDNRBが機能不全となったヒトではメラノーマリスクが上昇することが報告されている(参考文献31)。今回の実験結果からも、Ednrbの発現量が減少するとデノボメラノーマの発症リスクが上昇する可能性が示唆された。一方、RETマウスにおいてEdnrb 遺伝子が完全に欠損したマウス(Ednrb(-/-);RETマウス)では、良性腫瘍も悪性腫瘍も形成されない。これらの結果より、Ednrb遺伝子の発現量の違いによりメラノーマの発症過程がコントロールされていると考えられる。
まとめると、多段階発癌メラノーマモデルマウスであるRETマウスに加え、デノボメラノーマを発症する新規メラノーマモデルを樹立することに成功した。そして、これらのモデルを用いた実験によって、多段階発癌とデノボメラノーマ形成の制御にエンドセリンレセプターBが重要な役割を果たしていることが示唆された。
デノボメラノーマを自然発症する本発明の遺伝子改変動物はデノボ癌(特にデノボメラノーマ)に有効な薬剤の開発に有用である。また、デノボ癌の発症又は進展機構の研究用のツールとしても有用である。さらには、デノボ癌に有効な予知マーカーを個体レベルで選別することにも本発明の遺伝子改変動物を利用可能である。
この発明は、上記発明の実施の形態及び実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。
本明細書の中で明示した論文、公開特許公報、及び特許公報などの内容は、その全ての内容を援用によって引用することとする。
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配列番号3〜14:人工配列の説明:プライマー

Claims (15)

  1. 活性化RET遺伝子がヘテロ型に遺伝子導入されているとともに、エンドセリンレセプターB遺伝子がヘテロ型に欠損しており、デノボメラノーマを自然発症する齧歯類遺伝子改変動物。
  2. 活性化RET遺伝子が、c-RET遺伝子とRFP遺伝子のハイブリットによって生じた癌遺伝子RFP-RET遺伝子である、請求項1に記載の遺伝子改変動物。
  3. 活性化RET遺伝子がメタロチオネインIプロモーターに連結している、請求項1又は2に記載の遺伝子改変動物。
  4. 齧歯類がマウスである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の遺伝子改変動物。
  5. 請求項1〜4のいずれか一項に記載の遺伝子改変動物を用いることを特徴とする、デノボ癌の予防又は治療に有効な物質のスクリーニング法。
  6. 以下のステップ(1)及び(2)を含んでなる、請求項5に記載のスクリーニング法:
    (1)請求項1〜4のいずれか一項に記載の遺伝子改変動物に被験物質を取り込ませるステップ;
    (2)前記遺伝子改変動物が発症するデノボメラノーマに対して被験物質が予防又は治療効果を示すか否かを評価し、評価結果に基づき被験物質の有効性を判定するステップ。
  7. ステップ(2)における評価が、腫瘍の発生の有無、腫瘍が発生するまでの時間、生じる腫瘍の数、腫瘍の数の増減、生じる腫瘍の大きさ、腫瘍の大きさの増減、腫瘍の悪性度、腫瘍の悪性度の変化、体重の増減、既知の腫瘍マーカーの発現や活性の増減、既知のメラノーマ関連分子の発現量や活性の増減、寿命の長短、転移の有無、転移臓器の分布や割合、腫瘍の浸潤度からなる群より選択される一以上の項目についての評価である、請求項6に記載のスクリーニング法。
  8. 腫瘍の形成を認めた後にステップ(1)を実施し、
    ステップ(2)における評価が、腫瘍の数の増減、腫瘍の大きさの増減、腫瘍の悪性度の変化、腫瘍の悪性度の変化、体重の増減、既知の腫瘍マーカーの発現や活性の増減、既知のメラノーマ関連分子の発現量や活性の増減、寿命の長短、転移の有無、転移臓器の分布や割合、腫瘍の浸潤度 からなる群より選択される一以上の項目についての評価である、請求項6に記載のスクリーニング法。
  9. 以下のステップを更に含む、請求項6〜8のいずれか一項に記載のスクリーニング法:
    (3)活性化RET遺伝子がヘテロ型に遺伝子導入されており、多段階発癌メラノーマを発症する齧歯類遺伝子改変動物に被験物質を取り込ませるステップ;
    (4)前記遺伝子改変動物が発症する多段階発癌メラノーマに対して被験物質が予防又は治療効果を示すか否かを評価し、評価結果に基づき被験物質の有効性を判定するステップ;
    (5)ステップ(2)の判定結果とステップ(4)の判定結果を総合し、デノボ癌又は多段階発癌の癌のいずれに対して被験物質が特異的であるか、或いは両方に有効であるかを判定するステップ。
  10. デノボ癌がデノボメラノーマである、請求項5〜9のいずれか一項に記載のスクリーニング法。
  11. 多段階発癌の癌が多段階発癌メラノーマである、請求項9に記載のスクリーニング法。
  12. 請求項1〜4のいずれか一項に記載の遺伝子改変動物が形成した腫瘍組織を試料として用いることを特徴とする、デノボ癌の発症又は進展機構の解析法。
  13. 以下のステップ(1)及び(2)を含んでなる、請求項12に記載の解析法:
    (1)請求項1〜4のいずれか一項に記載の遺伝子改変動物が形成した腫瘍組織を採取するステップ;
    (2)採取した腫瘍組織を試料として、遺伝子発現・活性解析、形態学的解析、生化学的解析、分子生物学的解析、細胞生物学的解析、生理学的解析、精神・神経学的解析からなる群より選択される一以上の解析を行うステップ。
  14. デノボ癌がデノボメラノーマである、請求項12又は13に記載の解析法。
  15. 以下のステップを更に含む、請求項12〜14のいずれか一項に記載の解析法:
    (3)活性化RET遺伝子がヘテロ型に遺伝子導入されており、多段階発癌メラノーマを発症する齧歯類遺伝子改変動物が形成した腫瘍組織を採取するステップ;
    (4)採取した腫瘍組織を試料として、遺伝子発現・活性解析、形態学的解析、生化学的解析、分子生物学的解析、細胞生物学的解析、生理学的解析、精神・神経学的解析からなる群より選択される一以上の解析を行うステップ;
    (5)ステップ(2)の解析結果とステップ(4)の解析結果を比較するステップ。
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