JP5469283B1 - 消火剤 - Google Patents
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Abstract
Description
(a)リン酸塩無機化合物系消火剤
通常、主成分としてリン酸アンモニウムを含む。リン酸塩無機化合物系消火剤を含む消火用水が火災域に散布されると、加熱によりリン酸アンモニウムが分解されて、その際の吸熱作用により周囲の熱を奪う。また、不燃性のガスを発生して周囲にガス層を形成することで酸素を遮断し、さらに高温になると、溶融ガラス状に変化して燃焼面を被覆して酸素を遮断する。
また、長期保管されたリン酸塩無機化合物は成分が析出して塊になるため、使用時にはこれを粉砕する装置が必要となる。リン酸塩無機化合物が水に溶けにくいことは、資機材の洗浄作業に手間がかかるという問題も生じさせる。さらに、リン酸アンモニウムは、肥料に使われる成分と類似しているため、散布された土壌に富栄養化現象をもたらすという環境面に対する問題点も指摘されている。
合成界面活性剤を主成分とするため、合成界面活性剤系消火剤を含む消火用水は表面張力が低く、燃焼物や可燃物等の消火対象に浸透しやすい。また、衝突した衝撃等により形成した泡が燃焼物や可燃物を覆って酸素を遮断することで、消火・再燃防止・延焼抑制の効果が向上する。界面活性剤系消火剤の水への添加濃度は低く、また、該消火剤のみを水に添加することで消火用水を調製できるので、消火用水の調製を比較的迅速に行うことができる。
また、合成界面活性剤系消火剤は目的とした消火作用を得るために泡の形成を必要とするため、泡を形成する濃度にまで水への添加量を上げる必要があり、このような濃度の場合には水生生物に対する毒性が懸念される。
吸水性ポリマーを主成分とし、水を十分に吸水した吸水性ポリマーを、燃焼物や可燃物に接触させることにより、消火・再燃防止・延焼抑止効果を発揮する。
加えて、吸水性ポリマーは生分解しにくく、環境中に蓄積して生態系に悪影響を及ぼすことが指摘されている。
消火用水に増粘性を付与して消火性能の高めることも報告されている(例えば、特許文献1〜3)。特許文献1及び2では、消火用水に増粘作用を付与すると共に、さらにでんぷんなどの炭化成分を含有させることで消火用水の消火・延焼防止性能を高めている。また、特許文献3では、消火用水に増粘剤と共に金属イオン架橋剤を含有させている。
また、本発明は、上記消火剤を用いて消火用水を調製し、これを用いて火災を消火する方法の提供を課題とする。
ここで、シュードプラスチック(pseudo plastic)性とは、粘度のせん断速度依存性を示すパラメーターの一つを指し、せん断速度が大きくなるにつれて粘度が下がる性質のことである。擬塑性、シェアーシニング(shear thinning)性などともいう。
<1>クルードグァーガムを含有し、さらに、クルードグァーガムの分散助剤として、単糖類及び少糖類から選ばれる少なくとも1種を含有する消火剤であって、クルードグァーガム100質量部に対し、単糖類及び少糖類を総量で30〜400質量部含有する、消火剤。
<2>クルードグァーガムの分散助剤として、さらに、無機ナトリウム塩、無機カリウム塩、アンモニウム塩及び発泡剤からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する、<1>に記載の消火剤。
<3>クルードグァーガム100質量部に対し、無機ナトリウム塩、無機カリウム塩、アンモニウム塩及び発泡剤を総量で50〜200質量部含有する、<2>に記載の消火剤。
<4>前記発泡剤が、炭酸水素ナトリウムと、クエン酸、フマル酸、コハク酸及びリンゴ酸からなる群から選ばれる少なくとも1種の有機酸とを組み合わせてなる発泡剤、炭酸水素アンモニウムと、クエン酸、フマル酸、コハク酸及びリンゴ酸からなる群から選ばれる少なくとも1種の有機酸とを組み合わせてなる発泡剤、並びに、亜硝酸ナトリウムと塩化アンモニウムとを組み合わせてなる発泡剤からなる群から選ばれる少なくとも1種の発泡剤である、<2>又は<3>に記載の消火剤。
<5>クルードグァーガムの分散助剤として、スクロース及び上白糖から選ばれる少なくとも1種を含有する、<1>〜<4>のいずれか1項に記載の消火剤。
<6>クルードグァーガム100質量部に対し、クルードグァーガムに由来するグァーガム以外の水溶性高分子多糖類を5〜75質量部含有する、<1>〜<5>のいずれか1項に記載の消火剤。
<7>クルードグァーガムに由来するグァーガム以外の水溶性高分子多糖類が、タマリンドシードガム、アルギン酸エステル、キサンタンガム及びプルランからなる群から選ばれる少なくとも1種である、<6>に記載の消火剤。
<8>クルードグァーガムに由来するグァーガム以外の水溶性高分子多糖類が界面活性剤でコーティングされている、<6>又は<7>に記載の消火剤。
<9>クルードグァーガムが界面活性剤でコーティングされている、<1>〜<8>のいずれか1項に記載の消火剤。
<10>アニオン性界面活性剤及びノニオン性界面活性剤からなる群から選ばれる少なくとも1種の界面活性剤を含有する、<1>〜<9>のいずれか1項に記載の消火剤。
<11>アニオン性界面活性剤が、α−オレフィンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩及びN−アシルタウリン塩からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、ノニオン性界面活性剤が、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ショ糖脂肪酸エステル及びグリセリン脂肪酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも1種である、<10>に記載の消火剤。
<12>着色剤、不凍液、酸化防止剤、腐食防止剤及び防カビ剤からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する、<1>〜<11>のいずれか1項に記載の消火剤。
<13>顆粒状又はタブレット状である、<1>〜<12>のいずれか1項に記載の消火剤。
<14>澱粉を含有しない、<1>〜<13>のいずれか1項に記載の消火剤。
<15><1>〜<14>のいずれか1項に記載の消火剤を水に分散・溶解する工程を含む、消火用水の調製方法。
<16><15>に記載の消火用水の調製方法により調製した消火用水を火災現場に放水する工程を含む、火災の消火方法。
本発明の消火剤は、増粘作用を持つクルードグァーガムと、このクルードグァーガムの水への分散を促進する分散助剤とを少なくとも含有する。
本発明の消火剤は、水に分散させて消火用水を調製する目的に使用されるものである。
本発明の消火剤に用いるクルードグァーガムは、豆科植物であるグァーの胚乳部を粉砕して得られる粉末製剤、又はその部分精製物であり、多糖類以外にもグァー豆由来のたんぱく質、脂質などを含む。本発明において「クルードグァーガム」とは、その乾物中の多糖類の含有量が95質量%未満のグァーガムをいう。
クルードグァーガム乾物の質量は、クルードグァーガムの含水量を測定し、この含水量をクルードグァーガムの質量から差し引いた値である。また、クルードグァーガムの含水量は、カールフィッシャー法水分計(電量滴定又は容量滴定)により測定することができる。当該水分計は、例えば、三菱化学アナリテック社から入手可能である。
また、本明細書において、クルードグァーガム中の多糖類の量は、日本食品標準成分表 分析マニュアルの解説(中央法規出版社)の記載に従い、水分を減圧乾燥法、たんぱく質をケルダール法、脂質をソックスレー抽出法、食物繊維を酵素重量法、灰分を直接灰化法によりそれぞれ測定し、これらの総量をクルードグァーガム全量から差し引いて求められる量である。
本発明に用いるクルードグァーガム乾物中の多糖類の含有量は40質量%以上95質量%未満であることが好ましく、70質量%以上95質量%未満であることがより好ましく、80質量%以上95質量%未満であることがさらに好ましい。このようなクルードグァーガムとしては、例えば、RG1000(商品名、エムアールシーポリサッカライド社製)が挙げられる。
(a)クルードグァーガムは、精製グァーガム(クルードグァーガムを精製し、多糖類の含有量を95質量%以上に高めた製剤)に比べて、水に添加した際に継粉を形成しにくく、分散性がより高い。すなわち、精製グァーガムは水に添加しても粒子が沈降せず、精製グァーガムの粒子が水面に停滞した状態となって継粉が形成されていくのに対し、クルードグァーガムは、水に添加するとより速やかに沈降し、水中に分散していく。この傾向は後述する分散助剤の存在下でより顕著となる。このように、クルードグァーガムと精製グァーガムは水への分散性において大きな相違がある。
(b)クルードグァーガムの粒子の多くは短い紐状であり、分散助剤等の他の物質と混合した場合に物理的に絡み合う。したがって、クルードグァーガムを含む混合物からなる消火剤を用いて調製される消火用水は、振とうするなどしても層分離しにくく、その成分組成の均質性ないし分散性に優れる。したがって、調製される消火用水の性能、品質のばらつきがより抑えられる。
(c)クルードグァーガムは海水等の高硬度の水に対しても分散性が低下せず、増粘性を付与することができる。したがって、火災現場にしばしば存在する海水等を用いた場合であっても、通常の水を用いた場合と同様の性能の消火用水を調製することができ、実用性に優れる。
(d)精製グァーガムに比べて水溶液にした場合の透明度が低いため、消火用水を着色した場合の着色効果がより高まる。したがって、消火用水が到達した部分を識別するための着色消火用水の調製にも好適である。
本発明の消火剤は、クルードグァーガムの分散助剤として、単糖類及び少糖類から選ばれる少なくとも1種を含有する。
上記単糖類としては、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース等から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。
上記少糖類としては、ラクトース、スクロース、マルトース等の二糖類、ニゲロトリオース、マルトトリオース、メレジトース、マルトトリウロース、ラフィノース、ケストース等の三糖類、二ストース、ニゲロテトラオース、スタキオース等の四糖類等から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。
単糖類及び少糖類の含有量が多すぎると、消火用水の調製に用いる消火剤の量をより多くしなければならず、消火剤の使い勝手や経済性が低下する。このことは、後述する無機ナトリウム塩、無機カリウム塩、アンモニウム塩及び発泡剤についても同様である。
なお、本明細書において、「単糖類及び少糖類の総量」との用語は、単糖類及び少糖類の双方が含まれる形態のみならず、単糖類を含まずに少糖類のみが含まれる形態、又は、少糖類を含まず単糖類のみが含まれる形態に対しても用いられる。すなわち、単糖類を含まない形態において「単糖類及び少糖類の総量」とは少糖類の量を意味し、少糖類を含まない形態において「単糖類及び少糖類の総量」とは単糖類の量を意味する。
上白糖は、スクロースに転化糖を加えてなる顆粒状の砂糖であり、より具体的には、スクロースを主成分とし、スクロースの結晶表面に、転化糖(グルコースとフルクトースの混合糖)と水分とからなる転化糖液をまぶして製造される顆粒状の砂糖である。分散助剤として用いうる上白糖中の転化糖の割合は好ましくは0.1〜5.0質量%であり、より好ましくは0.2〜3.0質量%、さらに好ましくは0.5〜2.0質量%である。また、分散助剤として用いうる上白糖中の水分の割合は、好ましくは0.1〜5.0質量%であり、より好ましくは0.2〜2.0質量%、さらに好ましくは0.5〜1.5質量%である。上白糖は、転化糖液により結晶表面に湿り気があるため、クルードグァーガムと混合すると、クルードグァーガムを適度に吸着して顆粒状となる。これにより、本発明の消火剤を水に投入した際に、クルードグァーガムがより沈降しやすくなり、水面に浮かんだまま継粉になったり溶け残ってしまうことをより確実に防ぐことができる。
本明細書において、消火剤中の成分として単に「スクロース」というときは、上白糖に含まれるスクロースを包含しない意味に用いる。また、本明細書において「上白糖」は、「単糖類及び少糖類から選ばれる少なくとも1種」に包含される。
なお、本発明の消火剤において、高分子多糖類は、クルードグァーガムの分散助剤としては機能しにくい。後述の実施例では、単糖類や少糖類に代えて澱粉を添加した場合に、クルードグァーガムの分散性が向上しないことが示されている。本発明の消火剤は、澱粉を含有しないことが好ましい。
上記無機ナトリウム塩としては、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、硝酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム等から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。
上記無機カリウム塩としては、塩化カリウム、硫酸カリウム、硝酸カリウム、リン酸カリウム、ピロリン酸カリウム、ポリリン酸カリウム、メタリン酸カリウム等から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。
上記アンモニウム塩としては、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム等から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。
上記発泡剤は水中で発泡して水を撹拌し、クルードグァーガム等の分散性を向上させる。
本発明において、発泡剤を構成する各成分は、それぞれ独立に消火剤中に存在していてもよい。すなわち、複数成分からなる発泡剤を消火剤に配合するに際し、各成分を別々に配合してなる消火剤も、本発明における発泡剤を含む消火剤に包含される。
なお、本明細書において、「無機ナトリウム塩、無機カリウム塩、アンモニウム塩、及び発泡剤の総量」との用語は、無機ナトリウム塩、無機カリウム塩、アンモニウム塩、及び発泡剤のすべてが含まれる形態の他、無機ナトリウム塩、無機カリウム塩、アンモニウム塩、及び発泡剤の少なくとも1種が含まれる形態に対しても用いる。例えば、無機ナトリウム塩を含み、無機カリウム塩、アンモニウム塩、及び発泡剤を含まない形態において「無機ナトリウム塩、無機カリウム塩、アンモニウム塩、及び発泡剤の総量」とは無機ナトリウム塩の量を意味する。
本発明の消火剤は、上記クルードグァーガムに由来するグァーガム以外の、水溶性高分子多糖類を含んでもよい。当該水溶性高分子多糖類に特に制限はないが、タマリンドシードガム、アルギン酸エステル、キサンタンガム及びプルランからなる群から選ばれる1種又は2種以上を好適に用いることができる。なかでもキサンタンガムを用いることが好ましい。当該キサンタンガムとしては、ソアキサンXG−350(商品名、エムアールシーポリサッカライド社製)を好適に用いることができる。本発明において「水溶性高分子多糖類」は、30℃の水に溶解するものであることが好ましく、25℃以下の水に溶解するものであることがさらに好ましい。
本発明の消火剤に水溶性高分子多糖類を含有させることにより、クルードグァーガムの増粘作用を適宜に補強することができ、これにより、調製した消火用水の付着性、当該消火用水の保存安定性や熱安定性を向上させることができる。
本発明の消火剤は、アニオン性界面活性剤もしくはノニオン性界面活性剤又はこれらの組み合わせを含有することができる。
上記アニオン性界面活性剤としては、例えば、カルボン酸型、硫酸エステル型、スルホン酸型、リン酸エステル型の界面活性剤の1種又は2種以上が挙げられ、その具体例としては、α−オレフィンスルホン酸塩(AOS)、アルキル硫酸塩(AS)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩(AES)、N-アシルタウリン塩等が挙げられる。
上記ノニオン性界面活性剤としては、例えば、脂肪酸エステル、エーテル型、エーテル・エステル型、多価アルコール型、多価アルコール・エステル型の界面活性剤の1種又は2種以上が挙げられ、その具体例としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル(モノグリセリド、ジグリセリド)等が挙げられる。
また、上記ノニオン性界面活性剤を消火剤に含有させれば、増粘作用・粘度上昇速度を阻害することなく消火用水に界面活性を付与できる。
さらに、上記いずれの界面活性剤も、その添加量に応じて微生物の増殖を抑制することができると同時に、長時間にわたって消火用水のシュードプラスチック性を持続させることにも寄与する。
また、界面活性剤としてアミノ化合物を用いれば、消火用水への界面活性を付与するだけでなく、火災現場の高温下において還元糖とのメイラード反応が進行し、炭化物を形成することができ、消火作用を補強することができる。
また、本発明の消火剤の組成に含まれる界面活性剤は20.0質量%未満であることが好ましく、10.0質量%未満であることがより好ましく、7.0質量%未満であることがさらに好ましい。界面活性剤の含有量が多すぎると、水への溶解性が悪くなるおそれがあり、消火用水の粘度上昇速度が遅くなる可能性があると同時に、水生生物への毒性も懸念される。
本発明の消火剤が顆粒状である場合において、消火剤全体の80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは97〜100質量%が粒径0.1〜1.5mm、好ましくは0.2〜1.0mmの顆粒であることが好ましい。このような顆粒状の消火剤は、顆粒を所望のふるいにかけることで得ることができる。当該粒径は、一般的な顕微鏡、実体顕微鏡、もしくはマイクロスコープ(例えばキーエンスのVHシリーズ、VHXシリーズ)によって撮影した写真もしくは映像上での計測により測定することができる。
本発明の消火剤を水中に分散・溶解させることで消火用水を調製することができる。この消火用水を放水することで消火活動が行われる。消火用水の調製に用いる水に特に制限はなく、水道水、河川水、湖水、地下水等の真水であってもよいし、海水であってもよい。消火用水の調製に際しては、調製した消火用水が適度なシュードプラスチック性を示すように、消火用水中のクルードグァーガム(消火剤が高分子多糖類を含む場合にはクルードグァーガムと高分子多糖類の合計)の含有量が0.1〜5.0質量%、より好ましくは0.15〜3.0質量%、さらに好ましくは0.2〜1.0質量%となるように調製することが好ましい。また、消火用水の調製に際しては、消火剤は一度に全量を水に添加してもよいし、数回に分けて水に添加してもよい。本発明の消火剤は、水に添加するだけで良好な分散性を示すため、均質な性状の消火用水を簡便に調製することができる。
本発明の火災の消火方法は、上述した本発明の消火用水の調製方法により調製した消火用水を火災現場に放水する工程を含む。
下記表1〜5に示す配合組成(単位:質量部)の消火剤(本発明品1〜53、比較品1〜16)を調製した。
25℃±0.5℃の蒸留水(DW)をビーカーに200ml準備し、ここに調製例1の消火剤を、クルードグァーガム及びキサンタンガムの総含有量が0.20〜1.25質量%となるように分散・溶解し、消火用水を調製した。分散・溶解は攪拌回転数を1000rpmに設定し、5分間撹拌して行った。
調製例2において、蒸留水に代えて下記組成の人工海水を用いた以外は、調製例2と同様の方法で消火用水を調製した。
・塩化マグネシウム(MgCl2・6H2O) 1.10質量%
・塩化カルシウム(CaCl2・2H2O) 0.16質量%
・塩化ナトリウム(NaCl) 2.50質量%
・硫酸ナトリウム(Na2SO4) 0.40質量%
・水 95.84質量%
・クルードグァーガムRG1000:クルードグァーガム(エムアールシーポリサッカライド社製)
・グァーガムRG700:精製グァーガム(エムアールシーポリサッカライド社製)
・ソアキサンXG−350:キサンタンガム(エムアールシーポリサッカライド社製)
・上白糖:三井製糖社製
・スクロース:スクロース、和光純薬社製)
・D(+)−グルコース:ブドウ糖(和光純薬社製)
・キミロイドNLSK:アルギン酸エステル(キミカ社製)
・三和コーンアルファーY:澱粉(三和澱粉工業社)
・リポランPB−800:α−オレフィンスルホン酸Na(アニオン性界面活性剤、ライオン社製)
・リョートーシュガーエステルL−1695:ショ糖ラウリン酸エステル(ノニオン性界面活性剤、三菱化学フーズ社製)
・NIKKOLサルコシネートLN:N−アシルアミノ酸Na(アニオン性界面活性剤、日光ケミカルズ社製)
・デハイドロ酢酸S・台糖:デハイドロ酢酸Na(防腐剤、タイショーテクノス社製)
・ソルビン酸K・台糖“顆粒”:ソルビン酸K(防腐剤、タイショーテクノス社製)
・ブリリアントブルーFCF:2−[α−[4−(N−エチル−3−スルホベンジルイミニオ)−2,5−シクロヘキサジエニリデン]−4−(N−エチル−3−スルホベンジルアミノ)ベンジル]ベンゼンスルホナートのジナトリウム塩(青色着色料、保土谷化学社製)
・インジコカルミン:5,5’−インジコチンジスルホン酸のジナトリウム塩(青色着色料、保土谷化学社製)
・HPC−L:ヒドロキシプロピルセルロース(結合剤、日本曹達社製)
・DW:蒸留水
・ASW:人工海水
上記調製例1で調製した各消火剤を水に投入した際の分散性について評価した。具体的には、各消火剤を25℃±0.5℃の蒸留水200mlが入ったビーカーに投入し、攪拌回転数を400rpmに設定して30秒間分散・溶解させ、その分散性を目視観察し、下記評価基準に基づき評価した。実用化の目安は評価B以上である。結果を上記表1〜5に示す。
A:継粉を生成しない。
B:小さな継粉を生成する。
C:大きめの継粉を生成する。
D:より大きい継粉の生成や水面での凝集が見られる。
上記調製例2及び3で調製した各消火用水を25℃±0.5℃で静置して二週間にわたり様子を目視観察し、下記評価基準により分散安定性を評価した。実用化の目安は評価B以上である。結果を上記表1〜5に示す。なお、相分離が起こると、その多くの場合、静置している消火用水の下側が白濁して粘性が高まり、逆に上側は粘性が低下して透明な液体となる。
A:二週間にわたり分散状態に相分離が認められない。
B:24時間にわたり分散状態に相分離が認められない。
C:消火用水調整直後に速やかに相分離する。
上記調製例2及び3と同様の方法で消火用水を調製し、25℃±0.5℃で10分間、24時間静置した後の消火用水の粘度(単位:mPa・s)を、B型粘度計を用いてローターNo.3または2、回転数60rpmで測定した。結果を上記表1〜5に示す。10分間静置した後の粘度が150mPa・s以上で、かつ平衡粘度(24時間静置した後の粘度)が200mPa・s以上となれば、実用性に優れると判断できる。
消火用水が適度な粘度を有すれば、空中散布の際に、適度に拡散しながらも少ない消失量で火災現場に消火用水を送り込むことができる。粘度が低く水との粘度差が小さい場合は、水同様に広い範囲に飛散しやすく効果的な消火能力を得られず、粘度が高すぎると消火用水の投下域が集中しすぎて消火できる面積が限られてしまう。一般的にはおよそ150mPa・s以上の粘度があれば、水よりも効率的な消火ができるとされる。また、実用上は2000mPa・s程度までの粘度なら、効果的な消火が可能である。
断面形状5mm×5mm、長さ約250mmの木片(白樺材)を3本準備し、3本の木片が図1aに示すような位置関係になるように端部を治具で固定し、図1bに示すように45度の角度をつけて設置した。
消火用水の付着量は、端部を治具で固定した上記の3本の木片を、治具とは反対側の先端から垂直に150mmの高さまで消火用水に2秒間浸して引き上げ、浸す前の重量と引き上げてから5分後の重量との差(g)から木片1本当たりの消火用水付着量を算出し、後述する燃焼速度の検討結果に鑑み、下記評価基準により評価した。結果を上記表1〜5に示す。
−消火用水付着量の評価基準−
A:木片1本当たりの消火用水付着量が0.40g以上である。
B:木片1本当たりの消火用水付着量が0.30g以上0.40g未満である。
C:木片1本当たりの消火用水付着量が0.30g未満である。
上記で重量を測定した木片を、図1bの状態に設置し、ガスバーナーを用いて下端に30秒間着火し、下端から40mm〜140mmまでが燃焼するのに要する時間を測定した。途中で消火した場合は消火するまでの時間を測定した。得られた値から、燃焼速度(cm/秒)を算出した。
小型風洞φ600mmを用い、風速5.7m/s、消火用水散布量200g、消火用水の散布高さ590mmの条件で航空機による消火用水の散布飛行を模擬し、消火用水の散布密度と拡散の様子を観察した。
消火用水の散布密度と拡散量を判定するために、吸水性の不織布46mm角を消火用水の直下から[風下に向けて13枚]×[風向と垂直方向に向けて7枚]の計91枚を風洞内に並べて、不織布に吸水及び積載した消火用水の各質量を計測した。林野火災において消火出来る消火用水の散布密度は1.6L/m2以上と言われている。
上記本発明品3及び45の消火剤を用いて、消火用水中の消火剤の含有量が下記表6に記載の濃度(単位:質量%)になるようにした以外は、調製例2と同様に消火用水を調製し、この消火用水を試験に供した。
これに対し本発明品を用いた消火用水では、適度に拡散するため有効消火面積が大きくなり、かつ、消火用水の消失量もより少なかった。この結果から、本発明の消火剤が、消火性能の高い消火用水の調製に適することがわかった。本発明の消火剤は、特に、ヘリコプターや航空機などを使用して火災上空から消火ターゲットに対して空中放水(散布)を行う場合の消火用水の調製に好適に用いることができる。
2 木片を固定する治具
Claims (16)
- クルードグァーガムを含有し、さらに、クルードグァーガムの分散助剤として、単糖類及び少糖類から選ばれる少なくとも1種を含有する消火剤であって、
クルードグァーガムは、その乾物中の多糖類の含有量が70質量%以上95質量%未満であり、
クルードグァーガム100質量部に対し、単糖類及び少糖類を総量で30〜400質量部含有する、消火剤。 - クルードグァーガムの分散助剤として、さらに、無機ナトリウム塩、無機カリウム塩、アンモニウム塩及び発泡剤からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する、請求項1に記載の消火剤。
- クルードグァーガム100質量部に対し、無機ナトリウム塩、無機カリウム塩、アンモニウム塩及び発泡剤を総量で50〜200質量部含有する、請求項2に記載の消火剤。
- 前記発泡剤が、炭酸水素ナトリウムと、クエン酸、フマル酸、コハク酸及びリンゴ酸からなる群から選ばれる少なくとも1種の有機酸とを組み合わせてなる発泡剤、炭酸水素アンモニウムと、クエン酸、フマル酸、コハク酸及びリンゴ酸からなる群から選ばれる少なくとも1種の有機酸とを組み合わせてなる発泡剤、並びに、亜硝酸ナトリウムと塩化アンモニウムとを組み合わせてなる発泡剤からなる群から選ばれる少なくとも1種の発泡剤である、請求項2又は3に記載の消火剤。
- クルードグァーガムの分散助剤として、スクロース及び上白糖から選ばれる少なくとも1種を含有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の消火剤。
- クルードグァーガム100質量部に対し、クルードグァーガムに由来するグァーガム以外の水溶性高分子多糖類を5〜75質量部含有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の消火剤。
- クルードグァーガムに由来するグァーガム以外の水溶性高分子多糖類が、タマリンドシードガム、アルギン酸エステル、キサンタンガム及びプルランからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項6に記載の消火剤。
- クルードグァーガムに由来するグァーガム以外の水溶性高分子多糖類が界面活性剤でコーティングされている、請求項6又は7に記載の消火剤。
- クルードグァーガムが界面活性剤でコーティングされている、請求項1〜8のいずれか1項に記載の消火剤。
- アニオン性界面活性剤及びノニオン性界面活性剤からなる群から選ばれる少なくとも1種の界面活性剤を含有する、請求項1〜9のいずれか1項に記載の消火剤。
- アニオン性界面活性剤が、α−オレフィンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩及びN−アシルタウリン塩からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、ノニオン性界面活性剤が、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ショ糖脂肪酸エステル及びグリセリン脂肪酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項10に記載の消火剤。
- 着色剤、不凍液、酸化防止剤、腐食防止剤及び防カビ剤からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する、請求項1〜11のいずれか1項に記載の消火剤。
- 顆粒状又はタブレット状である、請求項1〜12のいずれか1項に記載の消火剤。
- 澱粉を含有しない、請求項1〜13のいずれか1項に記載の消火剤。
- 請求項1〜14のいずれか1項に記載の消火剤を水に分散・溶解する工程を含む、消火用水の調製方法。
- 請求項15に記載の消火用水の調製方法により調製した消火用水を火災現場に放水する工程を含む、火災の消火方法。
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