JP5454901B2 - 超音波診断装置 - Google Patents

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Description

本発明は、超音波造影剤を用いて行う造影エコー法において、毛細血管レベルの微小血流環流と毛細血管より比較的速い血管血流の微細構造を、診断情報として提示することが可能な超音波診断装置、画像処理装置及び超音波画像撮影方法に関する。
超音波診断は、超音波プローブを体表から当てるだけの簡単な操作で心臓の拍動や胎児の動きの様子がリアルタイム表示で得られ、かつ安全性が高いため繰り返して検査が行えるほか、システムの規模がX線、CT、MRIなど他の診断機器に比べて小さく、ベッドサイドへ移動していっての検査も容易に行えるなど簡便である。
また、超音波診断装置は、それが具備する機能の種類によって様々に異なるが、小型なものは片手で持ち運べる程度のものが開発されており、超音波診断はX線などのように被曝の影響がなく、産科や在宅医療等においても使用することができる。
近年、静脈投与型の超音波造影剤が製品化され、造影エコー法が行われるようになってきている。この手法は、例えば、心臓および肝臓などの検査で静脈から超音波造影剤を注入して血流信号を増強し、血流動態の評価を行うことを目的としている。造影剤の多くは微小気泡(マイクロバブル)が反射源として機能するものである。気泡というデリケートな基材の性質上、通常の診断レベルの超音波照射であっても、その機械的作用によって気泡は壊れ、結果的にスキャン面からの信号強度は低下してしまう。従って、環流の動的な様子をリアルタイムに観察するためには、低音圧の超音波送信によって画像化する等、スキャンによる気泡の崩壊を比較的低減させることが必要となってくる。この様な低音圧の超音波送信による画像化は信号/ノイズ比(S/N比)も低下してしまうため、それを補うための種々の信号処理法も考案されている。
また、上記のように造影剤気泡が崩壊するという特徴を生かし、以下のような手法が考案されている。すなわち、(a)低音圧照射下でスキャン断面に充満していく気泡の動態を観察し、(b)照射音圧を高音圧に切り替えて、断面内(厳密には照射体積内)の気泡を崩壊させ、(c)再び断面内に流入していく気泡の様子を観察する、という手法である。この手法はreplenishment(再環流)法と呼ばれている(例えば、特許文献1参照)。
ところで、一般的に、生体臓器内に構築される血管は、比較的太いものであればその構造の把握は容易であるが、造影エコーによってより細かい分枝まで描出された場合には、血管は複雑に絡み合う像が描出される。現在の造影剤は侵襲性の低い静脈投与型であるため、全身をめぐるものとなる。このため、超音波診断においては、カテーテルを用いたX線における血管の選択的造影のような画像は得られないと考えられている。
特開平11−155858号公報
しかしながら、上述したバブルの性質を利用すれば、選択的にバブルを消失させることは可能であると考えられる。また、このような手法を確立し、超音波画像診断においてX線造影のような診断画像を提供可能とすることは、臨床的に大変有意義であると言える。
本発明は、上記事情を鑑みてなされたもので、微細な血管分枝レベルの診断情報を、選択的に描出することができる超音波診断装置を提供することである。
本発明は、上記目的を達成するため、次のような手段を講じている。
請求項1に記載の発明は、造影剤バブルが投与された被検体の所定領域を超音波で走査し超音波画像を取得する超音波診断装置において、前記被検体に対し超音波を送信し、当該被検体からのエコー信号を受信する超音波プローブと、前記超音波プローブを駆動するための駆動信号発生手段と、造影剤バブルによって血管が描出された血管画像における入力操作に基づいて、前記所定領域内における高音圧照射領域を設定する設定手段と、前記高音圧照射領域に対して前記造影剤バブルを破壊する程度の音圧を有する超音波と、前記所定領域のうち前記高音圧照射領域と異なる領域に対して造影剤バブルを実質的に壊さない程度の音圧を有し所定領域に関する血流の環流画像を取得するための超音波と、から一フレーム分の超音波が構成される第1の送信を連続して複数回送信するように、前記駆動信号発生手段を制御する制御手段と、を具備し、前記制御手段は、前記複数回の第1の送信と、造影剤バブルを崩壊させる程度の高音圧を有する超音波を前記所定領域に対して送信する第2の送信と、造影剤バブルを実質的に崩壊させない程度の低音圧を有する超音波を前記所定領域に対して送信する第3の送信と、所定のタイミングで切り替えて実行されるように、前記駆動信号発生手段を制御することを特徴とする超音波診断装置である。
以上本発明によれば、微細な血管分枝レベルの診断情報を、選択的に描出することができる超音波診断装置を実現することができる。
図1は、本実施形態に係る超音波診断装置10のブロック構成を示した図である。 図2は、画像生成回路24の構成を示した図である。 図3(a)乃至図3(c)は、第3の送信の対象となる領域、及びその領域の表示例を示した図である。 図4は、第1の実施形態に係るスキャンシーケンスに従って本超音波診断装置10が実行する各処理の流れを示したフローチャートである。 図5(a)乃至図5(d)は、第1の実施形態に係るスキャンシーケンスに従う超音波送受信によって得られる画像を模式的に示した図である。 図6は、第2の実施形態に係るスキャンシーケンスに従って本超音波診断装置10が実行する各処理の流れを示したフローチャートである。 図7(a)乃至図7(c)は、第2の実施形態に係るスキャンシーケンスに従う超音波送受信によって得られる画像を模式的に示した図である。 図8(a)は、画像メモリ内に時系列的に記録されている画像を概念的に示した図である。図8(b)は、画像メモリ内に時系列的に記録されている画像に基づいて、2分割表示された超音波画像を示した図である。 図9(a)、(b)、(c)は、第2の実施形態に係るスキャンシーケンスに従って本超音波診断装置が取得した超音波画像の写真である。 図10は、豊富な造影剤が流入する血管を表した画像の模式図を示している。 図11は、従来の手法にて、造影剤の流れが少ない微細血管を描出した複数の画像の模式図を示している。 図12は、従来の手法にて、微小血流までを描出した血流画像の模式図を示している。 図13は、第3の実施形態に係る手法にて得られる血流画像の模式図を示している。
以下、本発明の第1及び第2の実施形態を図面に従って説明する。なお、以下の説明において、略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行う。
(第1実施形態)
図1は、本実施形態に係る超音波診断装置10のブロック構成を示した図である。同図に示すように、本超音波診断装置10は、超音波プローブ12、入力装置13、モニター14、送受信ユニット21、Bモード処理ユニット22、ドプラ処理ユニット23、画像生成回路24、制御プロセッサ25、内部記憶装置26、画像メモリ27、インタフェース部29、画像メモリ30a及びソフトウェア格納部30bを有する記憶部30を具備している。装置本体11に内蔵される超音波送受信ユニット21等は、集積回路などのハードウェアで構成されることもあるが、ソフトウェア的にモジュール化されたソフトウェアプログラムである場合もある。以下、個々の構成要素の機能について説明する。
超音波プローブ12は、超音波送受信ユニット21からの駆動信号に基づき超音波を発生し、被検体からの反射波を電気信号に変換する複数の圧電振動子、当該圧電振動子に設けられる整合層、当該圧電振動子から後方への超音波の伝播を防止するバッキング材等を有している。当該超音波プローブ12から被検体Pに超音波が送信されると、当該送信超音波は、体内組織の音響インピーダンスの不連続面で次々と反射され、エコー信号として超音波プローブ12に受信される。このエコー信号の振幅は、反射することになった反射することになった不連続面における音響インピーダンスの差に依存する。また、送信された超音波パルスが、移動している血流や心臓壁等の表面で反射された場合のエコーは、ドプラ効果により移動体の超音波送信方向の速度成分を依存して、周波数偏移を受ける。
入力装置13は、装置本体11に接続され、オペレータからの各種指示、条件、関心領域(ROI)の設定指示、種々の画質条件設定指示等を装置本体11にとりこむためのトラックボール13a、各種スイッチ13b、ボタン13c、マウス13d、キーボード13e等を有している。
モニター14は、画像生成回路24からのビデオ信号に基づいて、生体内の形態学的情報や、血流情報を画像として表示する。
送受信ユニット21は、図示しないトリガ発生回路、遅延回路およびパルサ回路等を有している。パルサ回路では、所定のレート周波数fr Hz(周期;1/fr秒)で、送信超音波を形成するためのレートパルスが繰り返し発生される。また、遅延回路では、チャンネル毎に超音波をビーム状に集束し且つ送信指向性を決定するのに必要な遅延時間が、各レートパルスに与えられる。トリガ発生回路は、このレートパルスに基づくタイミングで、プローブ12に駆動パルスを印加する。
なお、送受信ユニット21は、制御プロセッサ25の指示に従って後述するスキャンシーケンスを実行するために、送信周波数、送信駆動電圧等を瞬時に変更可能な機能を有している。特に送信駆動電圧の変更については、瞬間にその値を切り替え可能なリニアアンプ型の発信回路、又は複数の電源ユニットを電気的に切り替える機構によって実現される。
また、送受信ユニット21は、図示していないアンプ回路、A/D変換器、加算器等を有している。アンプ回路では、プローブ12を介して取り込まれたエコー信号をチャンネル毎に増幅する。A/D変換器では、増幅されたエコー信号に対し受信指向性を決定するのに必要な遅延時間を与え、その後加算器において加算処理を行う。この加算により、エコー信号の受信指向性に応じた方向からの反射成分が強調され、受信指向性と送信指向性とにより超音波送受信の総合的なビームが形成される。
Bモード処理ユニット22は、送受信ユニット21からエコー信号を受け取り、対数増幅、包絡線検波処理などを施し、信号強度が輝度の明るさで表現されるデータを生成する。このデータは、画像生成回路24に送信され、反射波の強度を輝度にて表したBモード画像としてモニター14に表示される。
ドプラ処理ユニット23は、送受信ユニット21から受け取ったエコー信号から速度情報を周波数解析し、ドプラ効果による血流や組織、造影剤エコー成分を抽出し、平均速度、分散、パワー等の血流情報を多点について求める。得られた血流情報は画像生成回路24に送られ、平均速度画像、分散画像、パワー画像、これらの組み合わせ画像としてモニター14にカラー表示される。
画像生成回路24は、超音波スキャンの走査線信号列を、テレビなどに代表される一般的なビデオフォーマットの走査線信号列に変換し、表示画像としての超音波診断画像を生成する。画像生成回路24は、画像データを格納する記憶メモリを搭載しており、例えば診断の後に操作者が検査中に記録された画像を呼び出すことが可能となっている。なお、当該画像生成回路24に入る以前のデータは、「生データ」と呼ばれることがある。
画像生成回路24の詳細を図2に示す。まず、信号処理回路24aは超音波スキャンの走査線信号列のレベルで画質を決定するようなフィルタリングを行う。信号処理回路24aの出力はスキャンコンバータ24bに送られると同時に、画像メモリ30aに保存される。スキャンコンバータ24bは、超音波スキャンの走査線信号列から、テレビなどに代表される一般的なビデオフォーマットの走査線信号列に変換する。この出力は画像処理回路24cへ送られ、ここでは、輝度やコントラストの調整や、空間フィルタなどの画像処理、もしくは種々の設定パラメータの文字情報や目盛などと共に合成され、ビデオ信号としてモニター14に出力する。かくして被検体組織形状を表す断層像が表示される。
制御プロセッサ(CPU)25は、情報処理装置(計算機)としての機能を持ち、本超音波診断装置本体の動作を制御する制御手段である。制御プロセッサ25は、内部記憶装置26から後述する超音波送受信・画像生成・表示等を実行するための制御プログラムを読み出してソフトウェア格納部30b上に展開し、各種処理に関する演算・制御等を実行する。
内部記憶装置26は、後述のスキャンシーケンス、画像生成、表示処理を実行するための制御プログラムや、診断情報(患者ID、医師の所見等)、診断プロトコル、送受信条件、その他のデータ群を格納してい。特に、内部記憶装置26は、後述する超音波送受信を行うためのスキャンシーケンス、差分画像生成処理、輝度値保持演算処理、重畳表示、第3の送信対象領域表示等を実行するための制御プログラムを保管している。また、必要に応じて、画像メモリ30a中の画像の保管などにも使用される。内部記憶装置26のデータは、インタフェース回路30を経由して外部周辺装置へ転送することも可能となっている。
インタフェース部29は、入力装置13、ネットワーク、新たな外部記憶装置(図示せず)に関するインタフェースである。当該装置によって得られた超音波画像等のデータや解析結果等は、インタフェース部29よって、ネットワークを介して他の装置に転送可能である。
画像メモリ30aは、信号処理回路24aから受信した画像データを格納する記憶メモリから成る。この画像データは、例えば診断の後に操作者が呼び出すことが可能となっており、静止画的に、あるいは複数枚を使って動画的に再生することが可能でなる。また、画像メモリ30aは、超音波送受信ユニット21直後の出力信号(radio frequency(RF)信号と呼ばれる)、送受信ユニット21通過後の画像輝度信号、その他の生データ、ネットワークを介して取得した画像データ等を必要に応じて記憶する。
(各超音波送信の特性)
本超音波診断装置10は、制御プロセッサ25の制御のもと、第1の送信、第2の送信、第3の送信といった三種の超音波送信を実行する。以下、個々の超音波送信の性質について説明する。
第2の送信は、造影剤を利用したコントラストエコーにおいて、走査面内の造影剤バブルを崩壊させる程度の高音圧を有する超音波の送信である。第3の送信は、走査面内のバブルをなるべく崩壊させないで診断画像を取得できる程度の低音圧を有する超音波の送信である。第1の送信は、走査面内の少なくとも一部においてバブルの崩壊を目的として行われる送信であり、例えば走査面内のバブルをなるべく崩壊させないで診断画像を取得できる程度の低音圧を有する超音波と、走査面内の造影剤バブルを崩壊させる程度の高音圧を有する超音波と、から一フレーム分の超音波を構成する送信である。第1の送信において、造影剤バブルを崩壊させる程度の高音圧を有する超音波の照射対象となる領域は、円形などの領域であっても良いし、一走査線といった領域でもよい。
上記第1の送信が実行される領域は、所定の形態にてモニター14に表示される。図3(a)乃至図3(c)は、第1の送信での高音圧超音波の照射対象となる領域(第1の送信での高圧超音波照射領域)、及びその領域の表示例を示した図である。図3(a)は、照射方向をラインで、収束超音波音場の最高音圧の領域を円で示している。図3(b)は、従来のパルスドプラのごとく、照射方向と、最高音圧の領域を、共にラインで表示している。
ところで超音波パルスは、限られた大きさのプローブ振動子面から照射されるため、厳密には、非常に小さい領域にのみ高音圧を与えることは困難である。そこで、実際的には簡単に、図3(c)のごとく、高音圧照射を行う走査線をラインで示すのみ、という方法もある。
(スキャンシーケンス)
次に、本超音波診断装置10が実行する基本的なスキャンシーケンスについて説明する。なお、本シーケンスに従う撮影に使用するのに好適な造影剤は、低音圧の超音波を送信しても破壊されずにハーモニック信号を放出し、長時間の映像化が可能な所謂「次世代造影剤」と呼ばれるものである。また持続注入ポンプなどを使用して、造影剤を微量かつ一定量に投与すれば、体内の造影剤濃度を比較的長時間一定に保つことができ、本実施形態に係る手法に好適である。
図4は、本スキャンシーケンスに従って本超音波診断装置10が実行する各処理の流れを示したフローチャートである。
まず、操作者によって本診断シーケンスの実行に必要なパラメータ設定が実行され、シーケンスが開始される(ステップS1)。本診断シーケンスに必要なパラメータとは、例えば、第1の送信での高圧超音波照射領域、第1の送信の送信時間(第1の送信時間)、第2の送信の送信時間(第2の送信時間)、第3の送信の送信時間(第3の送信時間)等である。ここでは、第1の送信時間を5秒、第2の送信時間を0.5秒、第3の送信時間を5秒第1の送信での高圧超音波照射領域を所定の血管の基幹部に設定するものとする。
なお、第1の送信での高圧超音波照射領域を設定する際には、既に造影剤による血管描出は既に実行されている。従って、図5(a)に示すように、描出された血管画像上のひとつの血管に着目し、所定の入力装置にて当該画像上の血管の基幹部に照射領域を設定することが可能である。
次に、造影剤バブルを崩壊させる程度の高音圧超音波による第1の送信に切り替わり(ステップS2)、ステップS1において設定された送信時間に従って、第2の送信が0.5秒間実行される(ステップS3)。
次に、0.5秒間の第2の送信を実行後、第1の送信に切り替わる(ステップS4)。なお、当該第2の送信により、走査面内の造影剤バブルはほとんど破壊されることになる。従って、この送信の切替直後においては、図5(b)に示すごとく、造影剤バブルの流入はほとんど見られず、造影剤バブルが一掃され血管等が染影されていない画像がモニター14に表示されることになる。
次に、第1の送信が5秒間(操作者によるステップS1における設定値)実行され、これによって得られる診断画像がリアルタイム表示される(ステップS5)。この段階では、第1の送信における高圧超音波が収束する領域(第1の送信での高圧超音波照射領域)では造影剤バブルの供給が停止する。従って、表示される診断画像は、図5(c)のごとく、第1の送信での高圧超音波照射領域外に存在する血流情報が描出されたものとなる。
次に、バブルをなるべく崩壊させないで診断画像を取得できる程度の低音圧超音波による第3の送信のみに切り替わり(ステップS6)、当該第3の送信が5秒間(操作者によるステップS1における設定値)実行され、これによって得られる診断画像がリアルタイム表示される(ステップS7)。この段階の診断画像は、図5(d)に示すように、断層面全域にわたり血流情報が描出されたものとなる。
なお、ステップS5、S7の時間間隔は、事前に設定することなく、操作者が切り替えボタンを入力することで、任意のタイミングで切り替わることも可能である。
次に、操作者は、必要に応じて所定の操作等を行うことで、ステップS2(分岐B1)若しくはステップS4(分岐B2)からの処理を繰り返すことで、一連のシーケンスを終了する。
以上述べたシーケンスでは、ステップS7において、それ以前にバブル供給が停止されていた血管からの信号が増大することになる。従って、図5(c)から(d)に至る動画像により、この信号の増大による血管の描出を選択的に観察することができ、注目する血管からの血流が、どのような血行動態を呈してしいのかを容易に知ることが可能である。
また、必要に応じて第1の送信を繰り返すことで、画像中の注目する血管のみを選択的に消去することができ、その後第3の送信に切り替えることで、再び注目する血管に関する血行動態を任意のタイミングで確認することができる。
さらに、必要に応じて第2の送信を行うことで、画像内に存在する血管像を任意のタイミングで消去することができ、その後第1の送信、又は第3の送信に切り替えることで、所望の血管に関する血行動態を任意のタイミングで確認することができる。
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。第2の実施形態は、所定の画像処理を行うことで、注目する血管に関する画像のみを取り出すものである。
図6は、本実施形態に係るスキャンシーケンスに従って本超音波診断装置10が実行する各処理の流れを示したフローチャートである。
まず、図6に示すように、操作者によって本診断シーケンスの実行に必要なパラメータ設定が実行され、シーケンスが開始される(ステップS11)。本診断シーケンスに必要なパラメータは、例えば、、第1の送信時間、第1の送信での高圧超音波照射領域、第3の送信時間等である。ここでは、第3の送信時間を5秒、第1の送信時間を5秒、第1の送信での高圧超音波照射領域を図6(a)に示すように所定の血管の基幹部に設定するものとする。
次に、第3の送信が5秒間(操作者によるステップS11における設定値)実行され、これによって得られる診断画像がリアルタイム表示される(ステップS12)。
次に、第1の送信に切り替わり(ステップS13)5秒間(操作者によるステップS1における設定値)の超音波照射が実行され、これによって得られる診断画像がリアルタイム表示される(ステップS14)。この段階での診断画像は、第1の送信での高圧超音波照射領域では造影剤バブルの供給が停止する。従って、表示される診断画像は、図6(b)のごとく、当該照射領域以外に存在する血流情報が描出されたものとなる。
なお、ステップS14の処理が終了した段階で、操作者は、必要に応じて分岐B11のようにステップS11に戻り、再び第3の送信の画像を取得することができる。
以上の様に第3の送信による診断画像、および第1の送信による診断画像が取得されると、操作者は例えば「スキャンフリーズボタン」などを入力して走査を停止する(ステップS15)。
なお、このとき、画像メモリ30aに記録されている画像が、第3の送信による画像か、もしくは第1の送信による画像かの識別コードが、画像のヘッダ情報などに記されている。これによって、例えば図8(a)に示す模式図のように通常は時系列的に記録されている画像群に対して、表示部では図8(b)のごとく、2分割表示形態をとり、例えば第3の送信による画像群G1を画面左側に、第1の送信による画像群G2を画面右側に、選択的に表示することが可能となる。
次に、上記の表示形態などを利用して、G1, G2の画像群からそれぞれ適当な画像が選択されると、画像G1のピクセル輝度値から、空間的に対応する画像G2の輝度値が差分され、差分画像が生成される(ステップS16)。
すなわち図7(a)に示した画像を構成する各ピクセルの輝度値から、図7(b)に示した画像を構成する各ピクセルの輝度値が差分され、図7(c)に示した注目する血管に関する血行動態が描出された差分画像が生成される。得られた差分画像は、モニター14に表示される(ステップS17)。
なお、図9(a)、(b)、(c)(それぞれ図7(a)、(b)、(c)に対応する。)に、本実施形態に係るスキャンシーケンスに従って本超音波診断装置10が取得した超音波画像の写真を示す。
以上述べたシーケンスでは、第1の送信での高圧超音波照射領域を所望の位置に設定することで、当該領域に存在する血管に関する血行動態のみを抽出することができる。また、必要に応じて、第1の送信での高圧超音波照射領域以外に存在する血管等も抽出することができる。従って、観察者は、診断対象となる血管以外の情報を消去して観察することができ、注目する血管からの血流が、どのような血行動態を呈してしいのかを容易に知ることが可能である。
なお、上記の演算は一例として輝度の差分演算を取り上げたが、画像G1とG2の差を明示する手法であれば、差分に限定されない手法を採用できる。例えば、画像G1のグレースケール輝度値をRGB値で表すと (RGB)=(g1, g1, g1) と表現できる(ただしg1は 任意の値)。ここでこの画像G1を(RGB)=(g1, g1, 0) と色変更すると、グレースケールは黄色を基調とした輝度表示となる。同様にG1の初期輝度値(RGB)=(g2,g2,g2)に対し、(RGB) = (0, 0, g2)と色調変更すると、赤を基調とした輝度表示となる。その後、画像G1とG2は加算処理を行えば、 (RGB) = (g1, g1, g2) となり、G1による画像とG2による画像は色調により識別可能である。
(第3の実施形態)
前述のように、本発明の目的の一つは、ある比較的大きな血管が支配する領域の選択的映像化である。したがって、提示される超音波診断画像は、例えば図7(c)に示したように、血管の上流から下流へ、血流経路が連続的につながって描出されることが望ましい。
このことを実現するために、本実施形態では、第1又は第2の実施形態に係る手法によって得られる画像データを使用して、輝度保持演算を実行する。この手法を説明する前に、技術的背景について説明する。
次世代型造影剤を使用する場合、微細な血管分枝に造影剤気泡が流入していく情報を取得できる時間は、発明者の検討によれば、再環流開始より1秒から2秒程度である。これ以後になると、解像できない毛細血管レベルの信号が支配的となる。しかしながら、この再環流開始より1秒から2秒の間に従来の超音波画像を表示するだけでは、良好な微細血管分枝を描出することができない。この理由を、図10乃至図13に従って説明する。
図10は、豊富な造影剤が流入する血管を表した画像の模式図を示している。この様に豊富な造影剤が流入するのは、比較的太い血管であり、この様な血管の構造であれば、図10の様な画像だけで連続的な血流経路を把握することができる。すなわち、比較的太い血管については従来の手法により、連続的な血流経路を把握することができる。しかしながら、造影剤の流れが少ない微細血管については、次のような不具合が発生する。
図11は、従来の手法にて、造影剤の流れが少ない微細血管を描出した複数の画像の模式図を示している。図11に示すように、造影剤の流れが少ない微細血管の場合、ある瞬間の1枚の画像だけでは気泡がまばらに存在するだけであり、血管構造は把握できない。また時間的に連続した診断画像を眺めても、連続的な流れは観察できない場合が多い。
また、図12は従来の手法にて、微小血流までを描出した血流画像の模式図を示している。図12の様な画像は、前述のように、空間的解像度の限界で、血管分枝の描出にはならず、「領域」としての輝度上昇が確認されるのみとなり、微細な血管分枝を識別できない。
本装置が実施する輝度保持演算は、これらの問題を解決するものであり、図13に象徴的に示すような、構造物(ここでは血管走行)の情報を好適に呈する画像を診断情報の一つとして提供することを可能にするものである。
(輝度保持演算処理)
本超音波診断装置10が有する輝度保持演算処理について説明する。この処理によって抽出される診断情報は、本スキャンシーケンスによって得られる血流画像(毛細血管レベルを含む)を含むものであり、特に再環流画像の描出等において実益がある。
輝度保持演算は、大きく最大値保持処理によるものと、重み付け更新処理にとるものとに分類できる。最初に、同一期間Tに含まれるフレームFからFまでのn枚の再環流画像に対して実行する最大値保持処理について説明する。
フレームFからFまでの画像に対する最大値保持処理とは、FからFまでの各フレームにおいて、空間的に対応する輝度値のうち最大値Pmax(x,y)を選択して新たな画像を生成する演算である。
すなわち、あるフレームF(iは1≦i≦nを満たす整数)の再環流画像は、空間的に配置された輝度値P(x,y)の集合、あるいは単に一次元の輝度値の配列データP(x)の集合からなる。P(x,y)又はP(x)の値は「輝度」の変わりに「信号強度」、「信号振幅」、「RFデータ等の生データ値」などであってもよいが、ここでは輝度値を採用するものとする。これらの各データ値は、一般的に数値が大きい方が、エコー信号レベルが高いことを意味するものである。この様な各データ値を利用して、フレームFからFに渡って空間的に対応する各フレームにおける各画素のうち、輝度値のうちの最大値を選択して新たな画像を生成する演算を行う。この演算は、次の式(1)によって表すことができる。
max(x,y)=max[P(x,y),・・・,P(x,y)] (1)
この最大値保持処理を再環流画像に利用する場合には、同じ低音圧期間Tに属する新たなフレームが収集される度に、式(1)の処理を実行し、得られた画像を再環流画像として表示すればよい。こうして得られる画像は、操作者(観察者)側からすれば、時間の経過と共に毛細血管が順次造影される様子として映し出されるように見える。
なお、最大値保持処理を実現するためのアルゴリズムは、上記内容に限定されない。例えば、次に述べるアルゴリズムによっても、同様の結果を得ることができる。
すなわち、現行断層画像フレームFの各座標のピクセル輝度をP(x,y)、一つ前の画像フレームピクセル輝度をPi−1(x,y)とし、相対的な2フレームについて、以下の式によって表される画像演算処理をi=2〜nまで逐次実行する。
If P(x,y)>Pi−1(x,y)
then P(x,y)=Pi−1(x,y)
Else P(x,y)=Pi−1(x,y)
当該アルゴリズムは、前段のフレームに関わる画像と比較して大きな輝度値を有する画素のみ、その値を更新するというものである。こうして得られる再環流画像等によっても、操作者は、時間の経過と共に毛細血管が順次造影される様子を観察することができる。
次に、重み付け更新処理について説明する。フレームFからFまでの画像に対する重み付け更新処理とは、同一期間Tに含まれるフレームFからFまでのn枚の再環流画像に対して重み付け更新処理を施すことによっても生成するものであり、次の式で表される演算である。
If P(x,y)>Pi−1(x,y)
then P(x,y)=A*P(x,y)+(1−A)*Pi−1(x,y)
Else P(x,y)=(A−1)*P(x,y)+A*Pi−1(x,y)
上記Aの値を1以下で1に近い値(例えば、0.99)などに設定すると、短時間(今の場合、前段フレームとの間)においては最大値保持が行われ、長時間においては前記保持された輝度は減衰するという作用が期待できる。このような手法によって得られる再環流画像等によっても、操作者は、時間の経過と共に毛細血管が順次造影される様子を観察することができる。
以上述べた構成によれば、第1の実施形態によって取得される選択的な血管表示画像データ、及び第2の実施形態によって取得される差分画像データについて輝度保持演算を施すことにより、各画像の微細血管を高分解能にて描出することができ、詳細な血管構造を容易かつ迅速に把握することができる。
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
以上本発明によれば、微細な血管分枝レベルの診断情報を、選択的に描出することができる超音波診断装置を実現することができる。
10…超音波診断装置、12…超音波プローブ、13…入力装置、14…モニター、21…送受信ユニット、22…Bモード処理ユニット、23…ドプラ処理ユニット、24…画像生成回路、24a…信号処理回路、24b…スキャンコンバータ、24c…画像処理回路、25…画像生成回路、26…画像メモリ、27…制御プロセッサ、28…ソフトウェア格納部、29…内部記憶装置、30…インタフェース部

Claims (10)

  1. 造影剤バブルが投与された被検体の所定領域を超音波で走査し超音波画像を取得する超音波診断装置において、
    前記被検体に対し超音波を送信し、当該被検体からのエコー信号を受信する超音波プローブと、
    前記超音波プローブを駆動するための駆動信号発生手段と、
    造影剤バブルによって血管が描出された血管画像における入力操作に基づいて、前記所定領域内における高音圧照射領域を設定する設定手段と、
    前記高音圧照射領域に対して前記造影剤バブルを破壊する程度の音圧を有する超音波と、前記所定領域のうち前記高音圧照射領域と異なる領域に対して造影剤バブルを実質的に壊さない程度の音圧を有し所定領域に関する血流の環流画像を取得するための超音波と、から一フレーム分の超音波が構成される第1の送信を連続して複数回送信するように、前記駆動信号発生手段を制御する制御手段と、を具備し、
    前記制御手段は、前記複数回の第1の送信と、造影剤バブルを崩壊させる程度の高音圧を有する超音波を前記所定領域に対して送信する第2の送信と、造影剤バブルを実質的に崩壊させない程度の低音圧を有する超音波を前記所定領域に対して送信する第3の送信と、所定のタイミングで切り替えて実行されるように、前記駆動信号発生手段を制御することを特徴とする超音波診断装置。
  2. 前記制御手段は、事前に設定された時間間隔で、或いは入力手段から入力される指示に応答して任意のタイミングで前記第1乃至第3の送信を切り替えることを特徴とする請求項記載の超音波診断装置。
  3. 前記第1の送信によって得られる第1のエコー信号を用いて第1の血管画像を生成し、前記第3の送信によって得られる第3のエコー信号を用いて第3の血管画像を生成する画像生成手段と、
    前記第1の血管画像と前記第3の血管画像とを並列表示する表示手段と、
    をさらに具備することを特徴とする請求項1又は2記載の超音波診断装置。
  4. 前記画像生成手段は、前記第1の血管画像と前記第3の血管画像との差分画像又は重畳画像を生成し、
    前記表示手段は、前記差分画像又は前記重畳画像を表示すること、
    を特徴とする請求項記載の超音波診断装置。
  5. 前記第1の超音波画像と前記第3の超音波画像とを、それぞれ識別可能な識別子を付帯させて記憶する記憶手段をさらに具備することを特徴とする請求項に記載の超音波診断装置。
  6. 前記第1の送信の後に実行される前記第3の送信によって得られる複数フレーム分のエコー信号を少なくとも用いて輝度値保持演算を逐次実行し、超音波画像を生成する画像生成手段をさらに具備することを特徴とする請求項1又は2に記載の超音波診断装置。
  7. 前記画像生成手段は、前記第2の送信が実行された場合には、前記輝度値保持演算を初期化することを特徴とする請求項に記載の超音波診断装置。
  8. 前記輝度値保持演算は、前記複数フレームにおいて空間的に対応する位置の前記エコー信号のうち最大値を選択して前記画像を生成する最大値保持演算であることを特徴とする請求項6又は7記載の超音波診断装置。
  9. 前記輝度値保持演算は、隣接するフレーム間において空間的に対応する位置の前記エコー信号に所定の重み付け係数を用いた加算処理により、逐次更新することで、前記画像を生成する演算であることを特徴とする請求項6又は7記載の超音波診断装置。
  10. 前記設定手段は、前記第1の送信を用いて得られる第1の血管画像又は前記第3の送信を用いて第3の血管画像に対して、前記高音圧照射領域を設定することを特徴とする請求項1乃至8のうちいずれか一項記載の超音波診断装置。
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