JP5447716B1 - バイオセンサ及び分子識別部材 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】体液中に含まれる対象物質を測定するためのバイオセンサ100において、体液を浸透可能であり、浸透した体液中に含まれる対象物質と相互作用可能な分子識別素子113を有する分子識別部材110と、分子識別部材110と接続可能であり、分子識別素子113と対象物質との相互作用の結果生じる変化を検出する検出素子120と、を設けた。
【選択図】図1
Description
前記バイオセンサにおいて、前記分子識別部材が、更に可撓性を有することが好ましい。
前記バイオセンサにおいて、前記分子識別部材が、前記検出素子に着脱自在に接続されることが好ましい。
前記バイオセンサにおいて、前記分子識別素子が、前記対象物質と反応して前記分子識別部材における電荷密度とキャパシタンスの少なくともいずれか一方を変化させる物質であり、前記検出素子が、前記分子識別部材における電荷密度とキャパシタンスの少なくともいずれか一方の変化を電位の変化として検出し、前記検出素子により検出された電位の変化に基づき、前記対象物質を定量するようにしてもよい。
前記バイオセンサにおいて、前記対象物質が、グルコースであってもよい。
この場合に、前記分子識別素子が、フェニルボロン酸、グルコース結合蛋白質(GBP)又はそれらの誘導体であってもよい。
前記バイオセンサにおいて、前記体液が、涙、汗、唾液又は鼻水であってもよい。
前記バイオセンサにおいて、前記絶縁体が、前記半導体基板の前記第1の電極と前記第2の電極とに挟まれた部分の表面に設けられた絶縁膜であってもよい。
前記バイオセンサが、前記絶縁膜上に金属電極と、前記金属電極と前記分子識別部材とを接続する金属線と、を更に備え、前記分子識別部材が、前記金属電極と前記金属線を介して前記絶縁膜に接続されていてもよい。
前記バイオセンサが、前記絶縁膜上に導電性部材を更に備え、前記分子識別部材が、前記導電性部材を介して前記絶縁膜に接続されていてもよい。
前記バイオセンサにおいて、前記分子識別部材が、前記絶縁膜上に積層されていてもよい。
また、本発明は、体液を浸透可能な基材と、前記基材に固定化され、前記基材に浸透した前記体液中に含まれる対象物質と相互作用可能な分子識別素子と、を備え、且つ、前記相互作用の結果生じる変化を検出する検出素子と接続するための分子識別部材であり、前記分子識別素子が、前記基材に分散担持された貴金属と結合することで前記基材に固定化されており、前記検出素子が、第1の電極及び第2の電極が設けられた半導体基板と、前記半導体基板の前記第1の電極と前記第2の電極とに挟まれた部分の表面に設けられた絶縁体と、を有し、前記絶縁体を介して前記半導体基板に着脱自在に接続可能な分子識別部材である。
前記分子識別部材が、更に可撓性を有することが好ましい。
前記分子識別部材において、前記分子識別素子が、前記対象物質と反応して前記分子識別部材における電荷密度とキャパシタンスの少なくともいずれか一方を変化させる物質であってもよい。
前記分子識別部材において、前記対象物質が、グルコースであってもよい。
この場合に、前記分子識別素子が、フェニルボロン酸、グルコース結合蛋白質(GBP)又はそれらの誘導体であってもよい。
前記分子識別部材において、前記体液が、涙、汗、唾液又は鼻水であってもよい。
前記分子識別部材が、前記体液中に含まれる前記対象物質を測定するためのバイオセンサに用いられてもよい。
1 バイオセンサの構成
2 バイオセンサの製造方法
3 バイオセンサの用途・使用方法
4 変更例
初めに、図1を参照しながら、本実施形態に係るバイオセンサの一例として、測定対象物質がグルコースであるグルコースセンサを挙げ、その構成について説明する。図1は、本実施形態に係るバイオセンサの一例としてのグルコースセンサ100の概略的な構成を示す模式図である。なお、以下の説明では、測定の対象物質をグルコースとし、検出素子として所謂拡張ゲート(Extended−gate)型のFETを使用した場合を例に挙げて説明するが、本発明に係るバイオセンサは、このような例に限定されるものではない。例えば、検出素子として、絶縁膜上に測定対象を固定化する通常のFETを用いてもよい。
グルコースセンサ100は、上述のように、測定対象物質をグルコースとしているが、本実施形態に係るバイオセンサの対象物質としては、グルコースに限定されず、非侵襲的に採取可能な体液中の成分であればグルコースには限られず、アミノ酸、生物化学的酸素要求量(BOD:Biochemical Oxygen Demand)、抗原、DNA、細胞からの代謝産物でもよい。
分子識別部材110は、体液を浸透可能な部材であり、浸透した体液中に含まれる対象物質(グルコースセンサ100の測定対象物質)と相互作用可能な分子識別素子113を有する。また、本実施形態では、分子識別部材110は、検出素子120と接続可能である。より具体的には、分子識別部材110は、後述する絶縁膜127を介して半導体基板125に接続され、FETにおけるゲート電極としての役割も有している。この分子識別素子110は、例えば、基材111と、当該基材111に付加される分子識別素子113とを有する。
基材111は、分子識別素子113を固定化するための部材である。この基材111は、体液を浸透可能な材質で形成される。対象物質を含む体液を微量しか採取できないような場合であっても、基材111が体液を浸透可能な材質で形成されることで、微量の体液試料を採取することが容易となる。本実施形態における「基材111が体液を浸透可能」とは、基材111がその内部に体液を吸収及び吸収した体液の少なくとも一部を保持することが可能な性質を有することを意味する。基材111の体液の保持能については特に制限されるものではないが、基材111が、バイオセンサ(本実施形態では、グルコースセンサ100)の測定に必要な体液試料の量(例えば、0.1μL〜1μL程度)以上の微量の体液を保持できることが好ましい。
ここでいう親水性ポリマーとは、親水性の官能基(水酸基、カルボキシル基等)を有するポリマーであり、紙、ハイドロゲル、高吸水性ポリマー(SAP:Superabsorbent Polymer)等が例示される。
また、ここでいう吸液性を有する材料とは、液を吸収する性能を有する材料であって、上記の親水性ポリマーには属さないものであり、シリカゲル、吸水性ゴム、吸水性発泡プラスチック、綿、不織布、織布、繊維等が例示される。
また、上述した各種の材料のうち、可撓性と生体適合性の少なくともいずれか一方を有するものが、基材111の材料として好ましく用いられ、可撓性と生体適合性の両方を有するものが、基材111の材料としてより好ましく用いられる。以上のような材料を基材111の材料として使用することにより、分子識別部材110全体として可撓性や生体適合性を持たせることが可能となる。
なお、後述する分子識別素子113自体が高分子であり、且つ、体液を浸透可能な材質である場合には、必ずしも基材111を設ける必要は無い。この場合は、分子識別素子113が、上述した基材111の性質も兼ね備えたものとなる。
分子識別素子113は、分子識別部材110の一方の面(例えば、後述する半導体基板125と接続される側と反対側の面)に固定化されており、体液中に含まれる対象物質を識別する機能を有する。ここでいう「識別」とは、分子識別素子113が対象物質と相互作用することで、熱、質量、電荷、光の屈折率等の物理的変化や、対象物質の分解、物質の生成等の化学的変化を起こすことをいう。また、「相互作用」としては、グルコース等の対象物質と反応して電荷が誘導されるような反応様式等が挙げられ、具体的には、例えば、ジオール同士の結合、配位結合、DNAハイブリダイゼーション、抗原・抗体反応、物理吸着等がある。本実施形態に係るグルコースセンサ100は、分子識別素子113の一例として、体液試料中の対象物質と反応して電荷を発生して分子識別部材110表面の電荷密度とキャパシタンスの少なくともいずれか一方を変化させる物質を用いている。このような物質としては、例えば、フェニルボロン酸及びその誘導体(例えば、ビニル基を有するフェニルボロン酸等)、グルコース結合蛋白質(GBP)及びその誘導体等が挙げられる。これら以外にも、分子識別素子113としては、対象物質と相互作用可能なものであれば特に制限はされず、例えば、対象物質と相互作用して分子識別部材110表面の光の屈折率又は質量を変化させる物質等であってもよい。
(1)分子識別部材113が、分子識別部材110のマトリックスとなる材料(例えば、本実施形態では基材111を構成する材料)の骨格自体に組み込まれている場合
この場合の例としては、上述した図4に示す例のように、マトリックスとなる材料がpoly−HEMA等のポリマーであって、このポリマーを構成するHEMA等のモノマーとp−ビニルフェニルボロン酸等の分子識別素子113とが共重合しているような場合が挙げられる。
(2)分子識別部材113が、分子識別部材110のマトリックスとなる材料と共有結合している場合(ただし、(1)の場合を除く。)
この場合の例としては、上述した図2に示す例のように、マトリックスとなる材料がセルロース等のポリマーであって、このポリマーが有する官能基(セルロースの場合は水酸基)と、分子識別素子113が有する官能基とが共有結合しているような場合が挙げられる。
(3)分子識別部材113が、分子識別部材110のマトリックスとなる材料とは化学結合せず、当該材料中に混合されている場合
検出素子120は、上述した分子識別部材110と接続可能であり、上記の対象物質と分子識別素子113との相互作用の結果生じる変化を検出する素子であり、このような素子として、FET等の半導体素子、フォトダイオードや光電子倍増管等の受光素子、サーミスタ、QCM(Quartz Crystal Microbalance:水晶振動子マイクロバランス)、表面プラズモン共鳴を利用した素子等を使用することもできる。
図1に示した例では、検出素子120としてFETを用いており、具体的には、第1の電極(例えば、ソース電極121)及び第2の電極(例えば、ドレイン電極123)が設けられた半導体基板125と、本実施形態に係る絶縁体の一例としての絶縁膜127と、を主に有する。
半導体基板125は、例えば、p型半導体であり、その一部(例えば2箇所)が局所的にドーピングされて形成されたn型半導体部分にソース電極121及びドレイン電極123が設けられる。すなわち、グルコースセンサ100で使用されるFETは、所謂nチャネル型MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)である。なお、本実施形態に係るバイオセンサで使用するFETは、上記のnチャネル型MOSFET(n−MOS)に限られず、pチャネル型MOSFET(p−MOS)、nチャネル接合型FET、pチャネル接合型FETであってもよい。
絶縁膜127は、半導体基板125の第1の電極(例えば、ソース電極121)と第2の電極(例えば、ドレイン電極123)とに挟まれた部分(図1に示すグルコースセンサ100では、p型半導体部分)の表面に設けられており、SiO2、Si3N4(SiNx)、Ta2O5、Al2O3等の酸化物又は窒化物等からなる膜である。
次に、本実施形態に係る検出素子120としてFETを用いた場合のグルコースセンサ100の測定原理について説明する。分子識別部材110は分子識別素子113を有しており、検出素子120としてのFETが、測定対象物質(例えば、グルコース)が分子識別素子113と相互作用することにより生じた分子識別部材110における電位の変化を検出する。より詳細には、測定対象物質(例えば、グルコース)が分子識別素子113(例えば、フェニルボロン酸)と反応することで、分子識別部材110における電荷密度とキャパシタンスの少なくともいずれか一方が変化し、これをFETが電位の変化として検出することで、対象物質の濃度を測定することができる。この場合に、分子識別部材110が対象物質を含む体液を浸透可能な材質で形成されていることから、対象物質を含む体液を微量しか採取できなかった場合や、採取した体液中の対象物質の濃度が低い場合であっても、高精度に測定するために必要な量の対象物質を分子識別素子113と反応させることができる。従って、グルコースセンサ100によれば、微量の体液試料を用いた高感度の測定を行うことができる。また、微量しか採取することができない体液(例えば、涙等)を試料として用いる場合であっても、グルコースセンサ100によれば、分子識別部材110が対象物質を含む体液を浸透可能な材質で形成されていることから、微量の体液試料を採取することが容易となる。
また、グルコースセンサ100においては、検出素子として、上述したように拡張ゲート型のFETを使用している。具体的には、グルコースセンサ100は、絶縁膜127上に金属電極150を更に備えており、分子識別部材110が、金属電極150と金属線151等を介して絶縁膜127と電気的に接続されている。このように、拡張ゲート型のFETを用いたグルコースセンサ100では、分子識別部材110がFET本体(ソース電極121及びドレイン電極123が設けられた半導体基板125)から分離しており、分子識別部材110を半導体基板125から着脱自在に接続することが容易である。そのため、分子識別部材110を容易に交換することができる。これを利用して、多様な糖類や相補的にDNAに特異吸着する分子、またDNAをそれぞれ分子識別部材110に固定化することで、分子識別部材110を交換するだけで様々な対象物質についての測定が可能となる。また、分子識別部材110は、FET本体から分離させることができるため、分子識別部材110に微細な加工を容易に施すことができる。さらに、それぞれの測定対象物質に対してそれに応じた分子識別部材110を用意するだけで済むので低コストでの測定が可能となる。加えて、本実施形態では、ゲート電極の役割を有する分子識別部材110として体液を浸透可能な材質のものを用いることから、分子識別部材110がFET本体と接触した状態であると、分子識別部材110を透過した体液がFET本体まで到達し、FET本体が継続的な測定に使用できない状態となる恐れもある。これに対して、拡張ゲート型のFETを用いたグルコースセンサ100によれば、分子識別部材110がFET本体(すなわち、検出素子120)から分離しているため、分子識別部材110のみを交換することで、FET本体を継続的に測定に使用することができる。
なお、本実施形態に係るバイオセンサ(例えば、グルコースセンサ100)は、図1に示すように、必要に応じて参照電極160を設けてもよい。参照電極160は、分子識別部材110と電気的に接続され、ソース電極121及びドレイン電極123とともに閉回路を形成し、FETにおける電圧測定の基準電位となる電極であり、アースされることもある。実用上は、FETにおける電圧測定の際に必要となるが、他の方法により対象物質の測定が可能であれば参照電極160を設けなくてもよい。
以上、本実施形態に係るバイオセンサの構成について詳細に説明したが、続いて、このような構成を有するバイオセンサの製造方法について説明する。以下では、上述したグルコースセンサ100を例に挙げて説明するが、他のバイオセンサについても、以下に説明する方法に適宜公知の技術を適用することで製造することができる。
次に、分子識別部材110の製造方法について説明する。ここでは、固定化物質を用いずに分子識別素子113を基材111に付加する場合と、固定化物質を用いて分子識別素子113を基材111に付加する場合を例に挙げて説明する。
固定化物質を用いない場合には、例えば、本実施形態に係るグルコースセンサ100における分子識別部材110は、ハイドロゲル等の親水性ポリマーからなる基材111と、分子識別素子113(例えば、フェニルボロン酸基)を有するポリマーとの混合体または共重合体からなり、公知の方法によって製造することができる。
固定化物質を用いる場合には、例えば、本実施形態に係るグルコースセンサ100における分子識別部材110は、紙等の基材111に固定化物質を担持させた後に、固定化物質に分子識別素子113を付加させることにより製造することができる。
次に、上述した本実施形態に係るバイオセンサの用途及び使用方法について順に説明する。
本実施形態に係るバイオセンサは、上述したように、体液中のグルコース濃度を測定するグルコースセンサの他、体液(汗等)中のNa+及びCl−の濃度を測定するセンサ(アルツハイマーの診断に用いる)、体液(唾液等)中の臭い成分を測定するセンサ(口臭の診断に用いる)、体液(鼻水、唾液等)中のウイルス(例えば、インフルエンザウイルスやノロウイルス等)を測定するセンサ(インフルエンザやウイルス性胃腸炎等の診断に用いる)等の用途に用いることができる。
次に、再び図1、図3及び図5を参照しながら、本実施形態のバイオセンサの使用方法を、上述したグルコースセンサ100を例に挙げて説明する。図5は、本実施形態に係る分子識別素子113と体液中の対象物質との反応機構を示す図である。
初めに、測定対象物質(ここではグルコース)を含む試料である体液を採取する。グルコースセンサ100において使用可能な体液としては、特に限定されない。ここで、例えば、糖尿病患者は日常生活において血糖値のコントロールを行うため、血糖値を自己測定しインスリン注入のタイミングを管理する必要がある。現状では、血糖値の測定にはグルコースオキシダーゼを利用した酵素電極法が広く用いられているが、この酵素電極法による測定では、試料(体液)として血液が用いられており、血液の採取が必要となる。この血液採取は糖尿病患者にとって肉体的にも精神的にも大きな負担となっており、患者に負担を強いることのない、血液以外の体液での非侵襲的な診断が望まれている。このような非侵襲的に採取可能な体液としては、尿、汗、涙、唾液等が考えられるが、本発明者らが検討したところによると、各体液には、以下のような特徴がある。
以上のような非侵襲的に採取した体液が分子識別部材110に浸透すると、分子識別部材110に付加された分子識別素子113(例えば、フェニルボロン酸)が、体液中の測定対象物質(例えば、グルコース)と反応して、図1及び図3に示すように負電荷を発生する。この反応機構は、図5に示す通り、フェニルボロン酸(i)のホウ素に水酸化物イオン(OH−)が配位したアニオン型(ii)となる。このアニオン型(ii)に隣接する2個の水酸基を有するグルコースが反応することで、負電荷を発生する。ここで、フェニルボロン酸がグルコースと結合し、ボロン酸ジエステルの状態になるとpKaが大きく低下するため、適切なpHで結合させると、アニオン型のボロン酸ジエステルの割合が大きくなり、全体としてアニオン型の状態の数が増加する。
以上のようにして、分子識別素子113(例えば、フェニルボロン酸)が対象物質(例えば、グルコース)と反応することにより、例えば負電荷が発生し、分子識別部材110の表面の電荷密度が変化すると、電位差が発生する。その結果、半導体基板125に実質的に与えられる電位(ゲート電圧)の値が変わるため、半導体基板125の電気伝導度が変化する。従って、ドレイン電流の値を一定にした場合にゲート電圧のシフトが計測でき、そのゲート電圧の変化から分子識別部材110上の電荷密度が測定でき、この電荷密度から対象物質の量(例えば、グルコース濃度)を算出することができる。すなわち、本実施形態に係るバイオセンサ(例えば、グルコースセンサ100)は、FETが、分子識別部材110表面の電荷密度の変化を電圧の変化として検出することで、対象物質の量を測定するものである。
次に、上述した本実施形態に係るグルコースセンサ100の変更例について説明する。
上述したグルコースセンサ100は、下記表2に示すように、分子識別素子110としてフェニルボロン酸(PBA)やグルコース結合蛋白質(GBP)等を使用し、検出素子120としてFETを使用したものである。ここで、分子識別素子110としてPBAを使用した場合には、分子識別素子と対象物質との反応による変化として電荷密度又はキャパシタンスの変化が起こり、この変化を検出素子120が電位の変化として検出する。また、分子識別素子110としてGBPを使用した場合には、分子識別素子と対象物質との反応による変化としてキャパシタンスの変化が起こり、この変化を検出素子120が電位の変化として検出する。
次に、図6を参照しながら、分子識別部材の形態の変更例について説明する。図6は、本実施形態に係るバイオセンサの変更例の構成を示す模式図である。
分子識別部材210は、その材質や、分子識別素子(図示せず)を有する点については、上述した分子識別部材110と同様であるが、試料となる体液として涙を採取する場合に特に適した構造を有している。具体的には、分子識別部材210は、綿棒の綿部分と類似した形状(例えば、略球状又は略楕円球状)を有しており、また、可撓性及び生体適合性を有し、柔らかい材質(例えば、上述したハイドロゲル等)である。従って、分子識別部材210によれば、眼球やその周囲の皮膚を傷付けずに、微量の涙液を採取することができる。
半導体素子220は、本変更例に係る検出素子(の少なくとも一部)として機能するものであり、測定対象物質(例えば、グルコース)の体液(例えば、涙液)中の濃度に応じた電荷密度の変化を検出する。具体的には、この半導体素子220は、上述した検出素子120のうち、ソース電極121及びドレイン電極123が形成された半導体基板125と、絶縁膜127と、金属電極150とからなる構成に対応するものである。
金属線230は、分子識別部材210と半導体素子220とを電気的に接続する。これにより、分子識別部材210に存在する分子識別素子と測定対象物質との相互作用(例えば、化学反応)の結果、分子識別部材210に生じた電荷密度の変化(例えば、負電荷の発生)を、金属線230を通じて半導体素子220で検出することができる。
本実施例では、検出素子としてMOSFETを用い、拡張ゲート型のゲート電極部を以下のようにして作製した。まず、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA) 3.8gと、ビニルフェニルボロン酸 0.2gと、N,N’−メチレンビスアクリルアミド0.02gと、を10mlの超純水に溶解し、混合した後、重合開始剤としてペルオキソ二硫酸カリウム(和光純薬工業社製)5mg、テトラメチレンジアミン(東京化成社製)5μl加えることで重合を開始させた。重合条件は、窒素雰囲気下、室温にて24時間、HEMAとビニルフェニルボロン酸とを共重合させることで行った。重合反応終了後、共重合体を含む溶液を超純水に浸漬し、未反応分モノマーを除去することで、HEMAとビニルフェニルボロン酸とが共重合したゲル状の分子識別部材を得た。
上述したようにして作製したグルコースセンサを用いて、以下のようにして、グルコースの濃度応答性を評価した。まず、グルコースをPBS(Phosphate Buffered Saline)に溶解し、グルコース濃度が0.001mM、0.01mM、0.1mM、1mM、10mMのグルコース溶液をそれぞれ400μlずつ調製した。
以上の測定の結果を図7に示す。図7は、本発明の実施例に係るバイオセンサのグルコースの濃度応答性の評価結果を示すグラフである。図7の縦軸は、分子識別部材の表面電位の変化(mV)を示し、横軸は、グルコース濃度(mM)を示している。
110、210 分子識別部材
111 基材
113 分子識別素子
120 検出素子
121 ソース電極
123 ドレイン電極
125 半導体基板
127 絶縁膜
150 金属電極
151、230 金属線
160 参照電極
220 半導体素子
Claims (20)
- 体液中に含まれる対象物質を測定するためのバイオセンサであって、
前記体液を浸透可能な基材と、前記基材に固定化され、前記基材に浸透した前記体液中に含まれる前記対象物質と相互作用可能な分子識別素子と、を有する分子識別部材と、
前記分子識別部材と接続可能であり、前記相互作用の結果生じる変化を検出する検出素子と、
を備え、
前記分子識別素子が、前記基材に分散担持された貴金属と結合することで前記基材に固定化されており、
前記検出素子が、第1の電極及び第2の電極が設けられた半導体基板と、前記半導体基板の前記第1の電極と前記第2の電極とに挟まれた部分の表面に設けられた絶縁体と、を有し、
前記分子識別部材が、前記絶縁体を介して前記半導体基板に接続されている、バイオセンサ。 - 前記分子識別部材が、更に可撓性と生体適合性の少なくともいずれか一方を有する、請求項1に記載のバイオセンサ。
- 前記分子識別素子が、前記分子識別部材の内部に存在する、請求項1又は2に記載のバイオセンサ。
- 前記分子識別部材が、前記検出素子に着脱自在に接続される、請求項1〜3のいずれか一項に記載のバイオセンサ。
- 前記分子識別素子が、前記対象物質と反応して前記分子識別部材における電荷密度とキャパシタンスの少なくともいずれか一方を変化させる物質であり、
前記検出素子が、前記分子識別部材における電荷密度とキャパシタンスの少なくともいずれか一方の変化を電位の変化として検出し、
前記検出素子により検出された電位の変化に基づき、前記対象物質を定量する、請求項1〜4のいずれか一項に記載のバイオセンサ。 - 前記対象物質が、グルコースである、請求項1〜5のいずれか一項に記載のバイオセンサ。
- 前記分子識別素子が、フェニルボロン酸、グルコース結合蛋白質(GBP)又はそれらの誘導体である、請求項6に記載のバイオセンサ。
- 前記体液が、涙、汗、唾液又は鼻水である、請求項1〜7のいずれか一項に記載のバイオセンサ。
- 前記絶縁体が、前記半導体基板の前記第1の電極と前記第2の電極とに挟まれた部分の表面に設けられた絶縁膜である、請求項1〜8のいずれか一項に記載のバイオセンサ。
- 前記絶縁膜上に金属電極と、前記金属電極と前記分子識別部材とを接続する金属線と、を更に備え、
前記分子識別部材が、前記金属電極と前記金属線を介して前記絶縁膜に接続されている、請求項9に記載のバイオセンサ。 - 前記絶縁膜上に導電性部材を更に備え、
前記分子識別部材が、前記導電性部材を介して前記絶縁膜に接続されている、請求項9に記載のバイオセンサ。 - 前記分子識別部材が、前記絶縁膜上に積層されている、請求項9に記載のバイオセンサ。
- 体液を浸透可能な基材と、前記基材に固定化され、前記基材に浸透した前記体液中に含まれる対象物質と相互作用可能な分子識別素子と、を備え、且つ、前記相互作用の結果生じる変化を検出する検出素子と接続するための分子識別部材であり、
前記分子識別素子が、前記基材に分散担持された貴金属と結合することで前記基材に固定化されており、
前記検出素子が、第1の電極及び第2の電極が設けられた半導体基板と、前記半導体基板の前記第1の電極と前記第2の電極とに挟まれた部分の表面に設けられた絶縁体と、を有し、
前記絶縁体を介して前記半導体基板に着脱自在に接続可能な分子識別部材。 - 更に可撓性と生体適合性の少なくともいずれか一方を有する、請求項13に記載の分子識別部材。
- 前記分子識別素子が、前記分子識別部材の内部に存在する、請求項13又は14に記載の分子識別部材。
- 前記分子識別素子が、前記対象物質と反応して前記分子識別部材における電荷密度とキャパシタンスの少なくともいずれか一方を変化させる物質である、請求項13〜15のいずれか一項に記載の分子識別部材。
- 前記対象物質が、グルコースである、請求項13〜16のいずれか一項に記載の分子識別部材。
- 前記分子識別素子が、フェニルボロン酸、グルコース結合蛋白質(GBP)又はそれらの誘導体である、請求項17に記載の分子識別部材。
- 前記体液が、涙、汗、唾液又は鼻水である、請求項13〜18のいずれか一項に記載の分子識別部材。
- 前記体液中に含まれる前記対象物質を測定するためのバイオセンサに用いられる、請求項13〜19のいずれか一項に記載の分子識別部材。
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