JP5443179B2 - 伝送線路、放送システム - Google Patents

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Description

本発明は、無線局免許が不要な微弱な電波を用いた無線サービスを行うために用いられる伝送線路と、この微弱な電波による放送を行う放送システムとに関する。
電波法第4条(電波法施行規則第6条)によれば、無線局免許を取得することなく電波を利用する場合には、322MHz〜10GHzの周波数帯域を用いる場合であれば、輻射体から3m離れた地点において電界強度を35μV/m(31dBμV/m)以下とする必要がある。このため、法律に抵触することなく、広範囲にわたって微弱電波を利用することを前提とした無線サービスを提供しようとするならば、誘導線や漏洩同軸ケーブル等を輻射体として用い、漏洩同軸ケーブル等を長く張り巡らすことにより、サービスが可能な空間を広げる必要がある。
尚、このような無線サービスとしては、例えば、地上デジタルテレビ放送を受信し、電波が届かない屋内等のエリアに向けてワンセグ放送のみを再放送するといったサービスが考えられる。特許文献1や特許文献2には、ワンセグ放送の再放送を行うための装置について記載されている。
特開2005−341195号公報 特開2008−131352号公報
ところで、漏洩同軸ケーブル等を長く張り巡らした場合には、輻射や線路損失により電源からの距離と共に指数関数的に伝送電力が減衰する。その結果、漏洩同軸ケーブル等から輻射される電波の電界強度も指数関数的に低下し、電源から遠ざかるにつれ漏洩同軸ケーブル等から輻射される電波の受信可能な空間が狭められてしまう。
本願発明はこのような問題に鑑みてなされたものであり、電源からの距離に関らず、輻射される電波の受信可能なサービス空間を均一にすることができる伝送線路を提供することを目的とする。
上記課題を解決するためになされた請求項1に記載の伝送線路は、始端から終端に向かって同一平面上に並んで配置された2本の電線により構成された伝送線路であって、始端からの距離がxであるX地点における2本の電線の間隔hxと、該X地点において当該伝送線路を流れる信号の電流Ixとの積hx・Ixが一定或いは略一定となるよう、始端から終端にかけて間隔hxが徐々に広くなるように2本の電線が配置されている。
こうすることにより、2本の電線が並ぶ平面に沿って伝送線路の両側に輻射される電波の電界強度を、電源に接続される始端からの距離に関らず一定或いは略一定とすることが可能となる(詳細については後述する)。したがって、電源からの距離に関らず、輻射される電波の受信可能なサービス空間を均一にすることができる。
具体的には、伝送線路は、次のように構成すれば良い。
すなわち、請求項2に記載されているように、式(1)に従いX地点における伝送線路の間隔hxを設定しても良い。
Figure 0005443179
但し、kは式(2)により設定される。
Figure 0005443179
尚、aは電線の半径、αは伝送線路の減衰定数、h0は始端における間隔hxである。
こうすることにより、積hx・Ixが一定となるよう、始端から終端にかけて間隔hxが徐々に広くなるように2本の電線を配置することができる。したがって、電源に接続される始端からの距離に関らず、伝送線路から輻射される電波の電界強度を一定とすることが可能となり、電源からの距離に関らず、伝送線路から輻射される電波の受信可能なサービス空間を均一にすることができる。
また、伝送線路は、次のように構成されていても良い。
すなわち、請求項3に記載されているように、当該伝送線路の始点における積hx・Ixと、始端以外のいずれかの地点における積hx・Ixが等しくなるように式(3)のmを設定し、式(3)に従い始端からの距離がxであるX地点における間隔hxが設定されていても良い。
Figure 0005443179
尚、aは電線の半径、αは伝送線路の減衰定数、h0は始端における間隔hxである。
こうすることにより、積hx・Ixが略一定となるので、始端から終端にかけて間隔hxが徐々に広くなる2本の電線を容易に設定することができる。したがって、電源に接続される始端からの距離に関らず、伝送線路から輻射される電波の電界強度を略一定とすることが可能となり、電源からの距離に関らず、伝送線路から輻射される電波を受信可能なサービス空間を均一にすることができる。
ここで、無線局免許を取得することなく地上デジタル放送のワンセグ放送を行う場合について考える。無線局免許を取得することなくワンセグ放送を行う場合、電波法第4条の規制により、輻射体から3m離れた地点における電界強度を31dBμV/m以下とする必要がある。また、ワンセグ放送を受信するためには、受信機に約40dBμV/m以上の信号を受信させる必要があるが、輻射体から3m離れた地点の電界強度が31dBμV/mとなるよう電波を輻射した場合、電界強度は輻射体から1m離れた地点で約40dBμV/mとなる。したがって、無線局免許を取得することなくワンセグ放送を行う場合には、輻射体から略1m以内の限られた小空間のみを対象としてサービスすることができる。
そこで、請求項4に記載の放送システムは、1チャンネルの伝送帯域が複数のセグメントから構成されているデジタル放送の信号を受信する受信手段と、受信手段が受信したデジタル放送信号から、いずれかのチャンネルにおける部分受信用のワンセグメントに対応する信号を抽出し、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の伝送線路を介して送出する送出手段と、を備える。
さらに、請求項5では、送出手段は、抽出した信号を、該信号に係るチャンネル以外の他のチャンネルにおける部分受信用のワンセグメントに対応する信号に変換し、変換後の信号を、上記伝送線路を介して送出する。
また、請求項6に記載には、1チャンネルの伝送帯域が複数のセグメントから構成されているデジタル放送信号を送出する放送システムであって、いずれかのチャンネルに対応する部分受信用のデジタル放送信号を生成する生成手段と、生成手段により生成されたデジタル放送信号を、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の伝送線路を介して送出する送出手段と、を備える放送システムが記載されている。
請求項4〜6に記載の放送システムによれば、本願発明の伝送線路を長く張り巡らすことにより、無線局免許を取得することなくワンセグ放送を行うことが可能な空間を広げることができる。また、ワンセグ放送が可能な空間は輻射体から略1m以内の小空間であるが、本願発明の伝送線路を輻射体として用いた場合には、始端からの距離に関らず受信可能なサービス空間を均一にすることができる。このため、輻射体から略1m以内の小空間を余すところ無く利用してワンセグ放送を行うことができる。
つまり、無線局免許を取得することなくワンセグ放送を行う場合のように、限られた空間における受信のみが許可されている無線サービスを行う場合に輻射体として本願発明の伝送線路を用いると、この限られた空間を余すところ無く利用して、微弱電波を利用することを前提とした無線サービスを行うことが可能となるのである。
漏洩同軸ケーブル等から輻射される電波の電界強度についての説明図である。 平行2線式伝送線路から輻射される電波の電界強度についての説明図である。 各種グラフである。 hx・Ix等の距離特性を表すグラフや、ワンセグ放送システムについてのブロック図である。
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。尚、本発明の実施形態は、下記の実施形態に何ら限定されることなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態を採りうる。
[伝送線路について]
(1)概要について
まず、本実施形態における伝送線路について説明する。一般的な漏洩同軸ケーブル等を用いて電波を輻射する場合、図1(a)に記載されているように、電源から遠ざかるにつれ、輻射や線路損失により伝送電力が低下し、輻射される電波の電界強度が徐々に低下してしまう。このため、漏洩同軸ケーブル等から輻射される電波を受信可能な空間が徐々に狭くなってしまう。これに対し、本実施形態の伝送線路は、太さが2aである2本の電線を同一平面上に並んで配置することにより構成されており、これらの電線は、ある地点における電線同士の間隔hと、該地点を流れる電流Iとの積h・Iが一定或いは略一定となるよう、始端から終端にかけて間隔が徐々に広くなるように配置されている(図1(b)参照)。そして、これにより、2本の電線が並ぶ平面に沿って伝送線路の両側に輻射される電波の電界強度が、始端からの距離に関らず一定或いは略一定となり、この伝送線路から輻射される電波の受信可能なサービス空間を均一にすることが可能となっている。尚、本実施形態における伝送線路を、定輻射型伝送線路と称する。
(2)電界強度を一定にすることができる理由について
次に、電線の間隔hと電流Iとの積h・Iを一定或いは略一定とすることにより、伝送線路から輻射される電波の電界強度が一定或いは略一定となることについて説明する。図2(a)の説明図に記載されているように、電線1上の微小区間2から輻射される電波の、点Aにおける電界強度Ex_θは、Maxwellの電磁方程式を解くことにより、式(4)により表される。
Figure 0005443179
尚、微小区間1の間隔をdx、点Aと微小区間2を結ぶ線と電線1との角度をθ、点Aと微小区間2との距離をr、微小区間2を流れる電流をI、電線1を伝達する信号の波長をλ、空間の固有インピーダンスをη、電線1の位相定数をβとしている。
また、図2(b)の説明図には、平行2線式の伝送線路10から輻射される電波の指向性を示す説明図が記載されている。図2(b)の5a,5bは、平行2線式の伝送線路10の微小区間3から輻射される電波の指向性を示している。この微小区間3から輻射される電波の、点Bにおける電界強度は、式(4)に基づき式(5)として表される。
Figure 0005443179
ここで、φは、以下の式で与えられる。
Figure 0005443179
このため、
Figure 0005443179
となる。
尚、微小区間3の間隔をdx、点Bと微小区間3とを結ぶ線と伝送線路10との角度をθ、点Bと微小区間3との距離をr、点Bと微小区間3とを結ぶ線と、伝送線路10を構成する2本の電線1a,1bを含む平面との角度をψ、微小区間3を流れる電流をI、微小区間3における2本の電線1a,1bの間隔をh、伝送線路10を伝達する信号の波長をλ、空間の固有インピーダンスをη、伝送線路10の位相定数をβとしている。また、ηの値は、自由空間における固有インピーダンスで120πとなる。
また、式(6)によれば、電界強度E2p_θは、ψ=0,θ=π/2となる地点で最大となり、そのときの電界強度|E2p_π/2|は、次式により表される。
Figure 0005443179
ここで、始端からの距離がxであるX地点を流れる電流をIx、該地点における2本の電線の間隔をhxとし、該地点における電界強度|E2p_π/2|をE0として求めると、次式が得られる
Figure 0005443179
ここで、βhx/2≪1であるので、次式のごとく近似される。
Figure 0005443179
式(8)より、平行2線式の伝送線路におけるX地点において、伝送線路からの距離がrである地点の電界強度E0は、積hx・Ixにおよそ比例した値となることがわかる。このことから、本実施形態における定輻射型伝送線路のように始端から終端にかけて2本の電線の間隔が徐々に広くなるように配置された伝送線路に関しても、これと同様に、始端からの距離がxであるX地点における電界強度E0は、積hx・Ixにおよそ比例した値となると考えられる。尚、前述の説明は、往復線路の微小区間3からの輻射によって生じる同一平面内の点Cにおける電界強度が積hx・Ixに略比例することを述べたものである。点Cにおける電界強度は、微小区間3からの輻射を線路の全区間にわたって積分したものとなるが、積hx・Ixに略比例するという関係は変わらない。
ここで、平行2線式の伝送線路を信号が伝達する場合には電波の輻射を伴うが、始端から遠ざかるにつれ線路損失等により伝送電力が減衰し、輻射される電波の電界強度が徐々に弱くなる。また、式(8)より、平行2線式の伝送線路上のある地点から輻射される電波の電界強度Eは、2本の電線の間隔hxが大きくなるに従い強くなる。このため、平行2線式の伝送線路から輻射される電波の電界強度を始点からの距離に関係なく一定或いは略一定とするためには、線路損失等による伝送電力の損失に見合う分、始端から遠ざかるにつれ電線の間隔hxを徐々に大きくすれば良いと考えられる(図1(b)参照)。
尚、平行2線式の伝送線路の電線の間隔hを大きくすることにより、特性インピーダンスZ0が増加し、これにより該伝送線路を流れる信号の電流Iが低下してしまうため、輻射される電波の電界強度Eが低下してしまう。しかしながら、特性インピーダンスZ0の増加による電界強度Eの低下分を補って電線の間隔hを大きくすることにより、電界強度Eを一定にすることが可能である。
また、平行2線式の伝送線路の電線の間隔hを徐々に広げることにより、該伝送線路上の各地点における特性インピーダンスが変化し、これにより、該伝送線路を信号が伝達する際に反射が生じてしまうと考えられる。しかしながら、該伝送線路の単位長さ辺りのインダクタンスLとキャパシタンスCと信号の周波数に基づき決まる一定の範囲内であれば、反射による影響を無視することができる。
したがって、本実施形態の定輻射型伝送線路のように、伝送線路上のある地点における電線の間隔hと、該地点を流れる電流Iとの積h・Iを一定或いは略一定となるよう、始端から終端にかけて、その間隔が徐々に広くなるように2本の電線を配置することにより、始端からの距離に関らず当該伝送線路から輻射される電波の電界強度を一定或いは略一定とすることができるのである。
(3)間隔hxの算出について
次に、本実施形態の定輻射型伝送線路における電線の間隔の具体的な算出方法について説明する。定輻射型伝送線路では、線路損失による伝送電力の減衰が支配的となる。したがって、減数定数をα、始端における伝送電力をP0とすると、始点からの距離がxであるX地点における伝送電力Pxは、以下のように表される。
Figure 0005443179
また、電力Pと電流Iと特性インピーダンスZは、P=(I^2)・Zという関係を有しているので、X地点における特性インピーダンスをZxとすると、該地点における電流Ixは、次のようになる。
Figure 0005443179
一方、平行2線式の伝送線路の特性インピーダンスは電線の太さである2aと2本の電線の間隔とにより決まる。これに基づき、始端からの距離に応じて間隔が広がる本実施形態の定輻射型伝送線路のX地点における特性インピーダンスZxは、以下のように表される。
Figure 0005443179
次に、X地点における電線の間隔hxをどのように設定するかは、電流Ixと間隔hxが一定であるという式(12)の元、以下の手順により求めることができる。
Figure 0005443179
尚、I0、h0は始端(x=0)におけるIx、hxの値である。
ここで、式(10),式(12)より、
Figure 0005443179
となる。そして、式(13)に式(9)、(11)を代入し、
Figure 0005443179
を得る。さらに、式(14)の両辺を2乗して整理すると、
Figure 0005443179
が得られる。
尚、kの値を、
Figure 0005443179
としている。さらに、式(10)、式(11)より、式(16)に基づき
Figure 0005443179
が得られる。
式(15)に式(17)を代入すると、X地点における始端からの距離xと電線の間隔hxを関係付ける式として、以下の式が得られる。
Figure 0005443179
図3(a)には、定輻射型伝送線路の減衰定数αを0.012或いは0.023とし、a=3(mm)とした場合の、式(18)に基づくxとhxとの関係を示すグラフが記載されている。
式(18)に従い始端から終端にかけてのhxを設定することにより、電線の間隔hxと電流Ixとの積hx・Ixを一定にしつつ、始端から終端にかけて電線の間隔が徐々に広くなるように配置することができる。そして、このように配置することにより、始端から終端にかけて、伝送線路から輻射される電波の電界強度が一定となる。
(4)輻射される電波の電界強度を略一定とする場合について
(3)では、始端から終端にかけて伝送線路から輻射される電波の電界強度を一定とする方法について説明したが、ここでは、より簡略的に、伝送線路から輻射される電波の電界強度を略一定とする方法について説明する。
(4−1)計算の概要について
式(10)より、定輻射型伝送線路の始端を流れる電流I0は、始端における特性インピーダンスをZ0とすると、次のように表すことができる。
Figure 0005443179
また、式(11)より、Z0は次のように表すことができる。
Figure 0005443179
そして、X地点における電流Ixは、式(9)〜(11)に基づき、以下のように算出される。
Figure 0005443179
ここで、積hx・Ixを一定とするためには、hxは、Ixの減衰特性に対してちょうど逆となるような増大特性を有していれば良い。すなわち、hxが次式に従い増大すれば、積hx・Ixを常に一定とすることができる。
Figure 0005443179
ただし、式(22)では、両辺にhxが含まれているため、初等数学で解くことはできない。しかしながら、式(22)の右辺におけるルートの項は、緩やかな増大曲線を描くため、仮にこのルートの項をe^(δαx)なる増大曲線で近似できるならば、hxを次のように表すことができる。
Figure 0005443179
尚、m=δ+1である。
このようにhxを表すと、定輻射型伝送線路を設計するうえで、非常に好都合となる。もちろん、式(22)におけるルートの項とe^(δαx)とは異質の曲線であるが、xがある一定の範囲であれば、ルートの項をe^(δαx)に近似できるということは、容易に推察することができる。
そこで、以下では、式(23)が成り立つと仮定して、これを満足するxとδとの関係、すなわち、hx・Ix=h0・I0より、式(21)に基づくIxと、式(23)に基づくhxとの積がh0・I0となるxとδとの関係を導く。
(4−2)計算方法について
まず、積hx・Ixが略一定であるとは、始端からの距離がx1であるX1地点においてhx1・Ix1=h0・I0=Aとなり、始端からの距離が0より大きくx1未満である地点では、hx・Ix≒Aとなる条件であると定義する。
そして、ここでは、定輻射型伝送線路の全長が概ねx1で与えられた場合において、積hx1・Ix1を略一定とするδを、x1の関数として求める(つまり、δ=f(x1)という形で求める)。
さて、式(21),(23)と、hx1・Ix1=h0・I0とに基づき、次式が得られる。
Figure 0005443179
このため、式(24)におけるルートの項と、e^(m−1)αx1との積が1となるx1とmとの関係を求めればよい。
Figure 0005443179
そして、両辺を2乗し、次式を得る。
Figure 0005443179
ここで、hx/2a≫1であるため、逆双曲線関数をテイラー展開することにより、次の近似式を得ることができる(尚、hx/2aは1よりも十分大きいため、非常に精度良く近似を行うことができる)。
Figure 0005443179
したがって、式(25)から次式が得られる。
Figure 0005443179
式(26)を解き、δ=f(x1)を得ればよい。ここで、さらに、式(26)のe^(2δαx1)をテイラー展開すると、以下の式が得られる。
Figure 0005443179
ただし、s=ln(h0/a)とおいた。
式(27)の右辺におけるxの4次以上の項は非常に小さい値となるので、次式のように、三次の項までにより近似をすることができる。
Figure 0005443179
式(28)を整理すると、以下のように、δの三次方程式を得ることができる。
Figure 0005443179
そして、式(29)より、さらに次式を得る。
Figure 0005443179
ここに、k1=(3/2)αx1、k2=(3(2s−1))/(4s(αx1)^2)、k3=−3/(4s(αx1)^2)とおいた。
そして、式(30)を解くことにより三つの根が得られるが、これらの根のうち、実根をδの値とすれば良い。δの値は、以下のようになる。
Figure 0005443179
ただし、Q,R,S,Tの値を以下のようにおいた。
Figure 0005443179
(4−3)δとx1との関係について
式(31)に基づき算出されたx1とδとの関係を、図3(b)のグラフに示す。尚、δ1〜δ3は、それぞれ、a=1mm,a=2mm,a=3mmとした場合のδである。また、h0=20mm,α=0.01(単位はNp。尚、0.01Npは0.9dB/10mに相当する。)となっている。
また、図4(a)には、一例として、a=3mm,x1=170m,α=0.01Npとして式(31)よりδ=0.22を算出し、δ=0.22として式(23)によりhxを設定し、積hx・Ixを算出した結果を示すグラフが記載されている。尚、ここでは、h0=20mm,I0=70mAとしている。
(5)減衰定数αについて
以上、定輻射型伝送線路における2本の電線の間隔hの算出方法について説明したが、これまでの説明は、定輻射型伝送線路の減衰定数αが一定であることを前提としている。しかし、厳密に言えば、電線の間隔hを始端からの距離と共に広げていくと、伝送線路上の任意の点における減衰定数αは、始端からの距離と共に変化する。ここでは、線路の間隔hを広げても減衰定数αの変化は微々たるものであり、減衰定数αが一定であることを前提としても問題は無いということについて説明する。
定輻射型伝送線路の伝送定数γは、次のように表される。
Figure 0005443179
そして、式(32)より、次式が導かれる。
Figure 0005443179
また、式(33),(34)より、α,βの値は、次のようになる。
Figure 0005443179
尚、Rは、定輻射型伝送線路の単位長さ当たりの抵抗値であり、Gは、定輻射型伝送線路の単位長さ当たりにおける一方の電線から他方の電線への漏れコンダクタンスであり、Lは、定輻射型伝送線路の単位長さ当たりのインダクタンスであり、Cは、定輻射型伝送線路の単位長さ当たりの静電容量である。ここに、LとCは次のように表される。
Figure 0005443179
これより、電線の間隔hの増加に伴い、同様の距離特性によりLは漸増すると共にCは漸減することがわかる。このため、式(35)に基づき、電線の間隔hが増加することによりLやCが変化しても、αの値に殆ど影響を与えないことがわかる。
また、定輻射型伝送線路の任意の点における特性インピーダンスZは、式(37),(38)に基づき、次のように表される。
Figure 0005443179
また、一般的にはR≪ωL、G≪ωCであるので、式(35),(37)〜(39)に基づき、αとβは次のように近似される。
Figure 0005443179
ここで、Rは電線の間隔hの大きさによらず一定となり、Gは、hの増加と共にわずかに漸減する。また、式(39)より、Zは、hの増加によりわずかに漸増することがわかる。このため、式(40)に基づき、電線の間隔hが増加しても、定輻射型伝送線路の減衰定数αはほとんど変わらないことがわかる。
このため、減衰定数αが一定という前提の下で電線の間隔hの距離特性を設定したとしても、何ら問題はない。
また、一般に、アンテナ、漏洩ケーブル等、輻射体のごく近傍の電界強度を云々する場合は、以上に説明した距離に反比例する放射電磁界だけでなく、距離の3乗に反比例する静電界と、距離の2乗に反比例する誘導電磁界についても考慮する必要がある。
しかし、例えば、UHFの電波を利用する地上デジタルテレビジョン放送の場合、電波法に規制されているところの輻射体から3mの距離における放射電磁界は、静電界および誘導電磁界に比べて十分大きいため、実効的には本説明のとおり放射電界のみで十分である。
なぜなら、前記の3者は、距離λ/2πの地点で同一の強度となり、それより以遠では、距離に反比例して減衰する放射電界が支配的になるからである。
ちなみに、地上デジタルテレビジョン放送で最も波長の長い13ch(473MHz)の場合、λは約63cmであるから、3者の強度が等しくなるλ/2πの距離がおよそ10cmになり、それより十分遠い3mの距離においては、放射電界が十分支配的となる。
[本実施形態の伝送線路を利用したシステムについて]
続いて、一例として、定輻射型伝送線路を、無線局免許を取得することなく特定の空間を対象として行う地上デジタルテレビ放送におけるワンセグ放送に用いる場合について説明する。
無線局免許を取得することなく地上デジタルテレビ放送におけるワンセグ放送を行う場合、電波法第4条の規制により、輻射体から3m離れた地点における電界強度を31dBμV/m以下とする必要がある。また、ワンセグ放送を行うためには、受信機に約40dBμV/m以上の電界強度でワンセグ放送信号を受信させる必要がある。ここで、輻射体から3m離れた地点の電界強度が31dBμV/mとなるよう電波を輻射した場合、輻射体から1m離れた地点では、電界強度は約40dBμV/mとなる。したがって、定輻射型伝送線路を用いて無線局免許を取得することなくワンセグ放送を行う場合、特定の空間に該伝送線路に長く張り巡らし、該伝送線路から約1m以内の空間を対象としてワンセグ放送を行うことができる。そして、このようなワンセグ放送は、以下のような構成により実現することができる。
[構成について]
次に、上述したワンセグ放送を行うためのシステムの構成について、図4(b)に記載のブロック図を用いて説明する。
このワンセグ放送システム20は、ワンセグ放送される番組の映像データや音声データを編集し、MPEG2SystemsにおけるTS信号を生成する番組制作装置200と、地上デジタル放送を受信する受信アンテナ210と、番組制作装置200により生成されたTS信号に対しOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)変調を行い、所定のチャンネルに対応するワンセグ放送信号を生成するOFDM変調器220と、受信アンテナ210が受信した地上デジタル放送信号からワンセグ放送信号を抽出して定輻射型伝送線路100を介して送信すると共に、OFDM変調器220により生成されたワンセグ放送信号を、定輻射型伝送線路100を介して送信する放送装置230とを有している。
尚、放送装置230は、受信した地上デジタル放送信号から抽出したワンセグ放送信号を、例えば、当該ワンセグ放送システム20が設置された地域で使用されていないチャンネルに対応するよう周波数を変換して送信しても良い。また、このような変換を行うことなく、受信した地上デジタル放送信号に対応するチャンネルのワンセグ放送信号として送信しても良い。
また、定輻射型伝送線路100には終端抵抗240が設けられており、定輻射型伝送線路100と終端抵抗240との間には、インピーダンス整合がなされている。
[効果]
本実施形態のワンセグ放送システム20のように、輻射体として定輻射型伝送線路100を用いることにより、定輻射型伝送線路100を長く張り巡らすことが可能となり、無線局免許を取得することなく、微弱電波の利用を前提としたワンセグ放送を行うことが可能な空間を広げることができる。また、ワンセグ放送が可能な空間は輻射体から1m以内の小空間であるが、定輻射型伝送線路100を輻射体として用いることにより、始端からの距離に関らず電波の受信可能な空間を均一にすることができる。このため、輻射体から1m以内の小空間を余すところ無く利用して、微弱電波の利用を前提としたワンセグ放送を行うことができる。
[他の実施形態]
本実施形態では、定輻射型伝送線路100を輻射体として用いてワンセグ放送を行う場合について説明したが、言うまでも無く、定輻射型伝送線路100の用途はワンセグ放送に限定されるものではない。
[特許請求の範囲との対応]
上記実施形態の説明で用いた用語と、特許請求の範囲の記載に用いた用語との対応を示す。
本実施形態の定輻射型伝送線路が、請求項1に記載の伝送線路に相当する。
また、ワンセグ放送システム20の受信アンテナ210が受信手段に、番組制作装置200及びOFDM変調器220が生成手段に、放送装置230が送出手段に相当する。
1…電線、2…微小区間、3…微小区間、10…伝送線路、20…ワンセグ放送システム、100…定輻射型伝送線路、200…番組制作装置、210…受信アンテナ、220…OFDM変調器、230…放送装置、240…終端抵抗。

Claims (6)

  1. 始端から終端に向かって同一平面上に並んで配置された2本の電線により構成された伝送線路であって、
    始端からの距離がxであるX地点における前記2本の電線の間隔hxと、該X地点において当該伝送線路を流れる信号の電流Ixとの積hx・Ixが一定或いは略一定となるよう、始端から終端にかけて前記間隔hxが徐々に広くなるように前記2本の電線が配置されていること、
    を特徴とする前記伝送線路。
  2. 請求項1に記載の伝送線路であって、
    式(1)に従い前記X地点における前記間隔hxが設定されていること、
    を特徴とする前記伝送線路。
    Figure 0005443179
    但し、kは式(2)により設定される。
    Figure 0005443179
    尚、aは前記電線の半径、αは前記伝送線路の減衰定数、h0は始端における前記間隔hxである。
  3. 請求項1に記載の伝送線路であって、
    当該伝送線路の始端における前記積hx・Ixと、始端以外のいずれかの地点における前記積hx・Ixが等しくなるように式(3)のmを設定し、設定したmの値を代入した式(3)に従い前記X地点における前記間隔hxが設定されていること、
    を特徴とする前記伝送線路。
    Figure 0005443179
    尚、aは前記電線の半径、αは前記伝送線路の減衰定数、h0は始端における前記間隔hxである。
  4. 1チャンネルの伝送帯域が複数のセグメントから構成されているデジタル放送信号を受信する受信手段と、
    前記受信手段が受信した前記デジタル放送信号から、いずれかのチャンネルにおける部分受信用のセグメントに対応する信号を抽出し、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の伝送線路を介して送出する送出手段と、
    を備えることを特徴とする放送システム。
  5. 請求項4に記載の放送システムにおいて、
    前記送出手段は、抽出した信号を、該信号に係るチャンネル以外の他のチャンネルにおける部分受信用のセグメントに対応する信号に変換し、変換後の信号を、前記伝送線路を介して送出すること、
    を特徴とする放送システム。
  6. 1チャンネルの伝送帯域が複数のセグメントから構成されているデジタル放送信号を送出する放送システムであって、
    いずれかのチャンネルに対応する部分受信用の前記デジタル放送信号を生成する生成手段と、
    前記生成手段により生成された前記デジタル放送信号を、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の伝送線路を介して送出する送出手段と、
    を備えることを特徴とする放送システム。
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