JP5434375B2 - 加工性に優れる高強度溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法 - Google Patents

加工性に優れる高強度溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP5434375B2
JP5434375B2 JP2009196177A JP2009196177A JP5434375B2 JP 5434375 B2 JP5434375 B2 JP 5434375B2 JP 2009196177 A JP2009196177 A JP 2009196177A JP 2009196177 A JP2009196177 A JP 2009196177A JP 5434375 B2 JP5434375 B2 JP 5434375B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
hot
workability
strength
temperature
steel sheet
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2009196177A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2011046999A (ja
Inventor
英尚 川邉
一洋 瀬戸
靖 田中
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
JFE Steel Corp
Original Assignee
JFE Steel Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by JFE Steel Corp filed Critical JFE Steel Corp
Priority to JP2009196177A priority Critical patent/JP5434375B2/ja
Publication of JP2011046999A publication Critical patent/JP2011046999A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5434375B2 publication Critical patent/JP5434375B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Coating With Molten Metal (AREA)
  • Heat Treatment Of Sheet Steel (AREA)

Description

本発明は、厳しい形状にプレス成形されることが要求される自動車部品などに好適に用いられる、引張強度590MPa以上の加工性に優れる高強度溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法に関する。
自動車車体の軽量化による燃費向上、衝突特性の向上の観点から高強度鋼板の適用が拡大している。しかしながら、鋼板の高強度化に伴い加工性は低下する傾向にあり、高強度鋼板適用の一番の課題としてプレス成形時の割れがある。特に、伸び自体の低下、またフランジ部における成形性の指標の一つである伸びフランジ性の低下が、高強度鋼板適用拡大の際の課題となっている。
例えば、特許文献1〜4では、鋼成分や組織の限定、熱延条件、焼鈍条件の最適化により、高い伸びフランジ性を有する高強度鋼板を得る方法が開示されている。
特開平9−41040号公報 特開平10−60593号公報 特開2004−211126号公報 特開2008−63604号公報
特許文献1〜4に記載の鋼板は伸びフランジ性について記載がなされているが、本発明に記載の鋼板とは成分系、または金属組織が異なるものである。特許文献1には伸びフランジ性についての記載はあるが、伸びの確保について示唆するところがなく、Siの含有量が高く、Crを含有するためめっき性等の表面処理性に懸念がある。Siは溶融亜鉛めっき鋼板の製造に際しては、めっき品質の確保の点からその添加を極力避けることが望まれており、また、Cr等の合金元素の添加も製造コストの点からは好ましくない。特許文献2に記載の鋼板は強度−伸びレベルが低い。特許文献3に記載の技術は強度−伸びバランス、強度−伸びフランジ性バランスともに優れる鋼板を得ることができるが、フェライトの平均結晶粒径を3.5μm以下とするため、厳密な成分調整が必要であるという問題があった。特許文献4に記載の鋼板は第2相が硬質なマルテンサイト相であり、強度−伸びフランジ性レベルが低い。
本発明は、かかる事情に鑑み、高価な合金元素である、Nb、V、Cr、Mo、Ni、B等を含有しない成分系で、加工性(伸び、伸びフランジ性)に優れ引張強度590MPa以上の、加工性に優れる高強度溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の課題を解決すべく、鋭意研究した。その結果、加工性の観点からTiを活用することで、高価な合金元素を含有しない成分系を用いて、硬質な低温変態相が少ないフェライト単相に近い組織であっても鋼板の高強度化が可能であり、伸びおよび伸びフランジ性に優れる引張強度590MPa以上の高強度溶融亜鉛めっき鋼板が得られることを見出し、下記の本発明を完成した。
(1)mass%で、C:0.06〜0.10%、Si:0.03%以下、Mn:1.6〜2.0%、P:0.020%以下、S:0.0030%以下、Al:0.005〜0.1%、N:0.01%以下、およびTi:0.060〜0.180%を含有し、
([%Ti]/48)/([%C]/12)=0.10〜0.50を満足し、
残部がFe及び不可避不純物からなる成分組成を有し、
体積分率が90%以上かつ平均結晶粒径が3μm〜10μmのフェライト相と、体積分率が1〜5%かつ平均結晶粒径が1μm〜4μmのマルテンサイト相と、体積分率が1〜5%のセメンタイトとから構成される組織を有することを特徴とする引張強度が590MPa以上の加工性に優れる高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
ただし、[%Ti]、[%C]は各元素のmass%での含有量を示す。
(2)(1)に記載の成分組成を有する鋼スラブを、スラブ加熱温度:1150〜1300℃、熱間仕上げ圧延温度:850〜950℃で熱間圧延を終了後、650〜750℃の温度域に3〜30秒滞留し、巻取り温度:550〜650℃としてコイルに巻取り、次いで、酸洗、冷間圧延した後、焼鈍温度:800〜900℃まで加熱し、焼鈍後、平均冷却速度:0.1〜5℃/秒で650〜750℃まで冷却し、引き続き少なくとも550℃まで、平均冷却速度:10〜50℃/秒で冷却し、次いで、溶融亜鉛めっき処理を施すことを特徴とする引張強度が590MPa以上の加工性に優れる高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
(3)溶融亜鉛めっき処理後、さらに、合金化処理を施すことを特徴とする(2)に記載の引張強度が590MPa以上の加工性に優れる高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
本発明によれば、引張強度が590MPa以上の、加工性に優れる高強度溶融亜鉛めっき鋼板を製造することができる。そして、本発明により得られる高強度溶融亜鉛めっき鋼板は、自動車部品として要求される強度および伸びフランジ性を中心に全ての特性を満足しており、厳しい形状にプレス成形される自動車部品として好適に使用することができる。
本発明者らは、高強度冷延鋼板の加工性(伸び、伸びフランジ性)向上に関し、鋭意検討した結果、体積分率が90%以上かつ平均結晶粒径が3μm〜10μmのフェライト相と、体積分率が1〜5%、かつ平均結晶粒径が1μm〜4μmのマルテンサイト相、体積分率が1〜5%のセメンタイトを含有し、Tiを活用し、([%Ti]/48)/([%C]/12)=0.10〜0.50を満足する成分とすることにより、加工性の向上が顕著となることを見出した。以下、加工性に優れる引張強度が590MPa以上の高強度鋼板を得るための鋼の化学成分と、組織の限定範囲および限定理由を詳細に説明する。なお、本発明において伸びに優れるとは引張強度(TS)と伸び(El)との関係がTS×El≧17000MPa・%、伸びフランジ性に優れるとは引張強度(TS)と穴拡げ率(λ)との関係がTS×λ≧50000MPa・%を満足することであり、高強度とは、引張強度(TS)が590MPa以上であることである。
まず、本発明における鋼の化学成分(組成)の限定範囲および限定理由について説明する。なお、以下の説明において、成分元素の含有量%は全てmass%を意味するものである。
C:0.06〜0.10%、
Cは鋼中で炭化物を形成し、フェライト中に析出することでフェライト相を硬質化、およびマルテンサイトの強化により鋼板強度に寄与する。C量が0.06%未満では強度確保が困難となる。一方、C量が0.10%を超えると過度に硬質化し加工性が低下する。より好ましくは、0.07〜0.09%とする。
Si:0.03%以下、
Siは、めっき性を阻害する表層でのSi系酸化物を形成するため、含有量は少ないほうが好ましい。特にSi量が0.03%を超えるとSi系酸化物の形成が特に顕著となるため、Si量は0.03%以下とする。好ましくは0.02%以下とする。
Mn:1.6〜2.0%、
Mnは、強度に寄与し、このような作用は1.6%以上を含有することで認められる。一方、2.0%を超えて過度に含有すると、過度に焼入れ性が高まり、所望のフェライト相量の確保が困難となり、加工性が低下する。以上より、Mnは1.6%以上2.0%以下、好ましくは1.7%以上1.9%以下とする。
P:0.020%以下、
本発明において、Pは不純物であり、含有量は少ないほうが好ましい。特にP量が0.020%を超えるとPの粒界偏析による脆性劣化の問題が顕著となるため、P量は0.020%以下とする。好ましくは0.015%以下とする。なお、P量を0.001%未満とするには製鋼工程における製造コストの大きな増加を伴うため、その下限は0.001%程度とすることが好ましい。
S:0.0030%以下、
本発明中において、Sは不純物であり、含有量は少ないほうが好ましい。Sは介在物MnSを形成し、冷間圧延後に板状の介在物として存在することにより、特に材料の極限変形能を低下させ、伸びフランジ性など成形性を低下させるが、Sの含有量が0.0030%まではこの問題は顕著化しない。よって、Sは0.0030%以下とする。より好ましくは0.0010%以下である。一方、0.0001%未満とする過度の低減は製鋼工程における脱硫コストの大きな増加を伴うため、その下限は0.0001%程度とすることが好ましい。
Al:0.005〜0.1%、
Alは製鋼工程において脱酸剤として有効であり、また、局部延性を低下させる非金属介在物をスラグ中に分離する点でも有用な元素である。さらに、Alは、焼鈍時に、めっき性を阻害する表層でのMn、Si系の酸化物の形成を抑制する効果がある。このような効果を得るには0.005%以上の添加が必要である。一方、0.1%を超えて添加すると、鋼成分コスト増を生じる。以上より、Alは0.005%%以上0.1%以下、好ましくは0.02%以上0.06%以下とする。
N:0.01%以下、
本発明中では、Nは不純物であり低いほうが好ましい。特にN量が0.01%を超えると連続鋳造過程において、スラブ割れや内部欠陥などの問題が顕著となるため、Nは0.01%以下とする。好ましくは0.0050%以下である。なお、N量を0.0001%未満とするには製鋼工程における製造コストの大きな増加を伴うため、その下限は0.0001%程度とすることが好ましい。
Ti:0.060〜0.180%、かつ([%Ti]/48)/([%C]/12)=0.10〜0.50
Tiは鋼中で炭化物を形成し、フェライト中に析出することでフェライト相を硬質化することにより強度に寄与する。また、鋼中の固溶Cを減少させ、低温変態相の生成、硬質化を抑制する。この効果を得るためには、Ti量は0.060%以上の添加を必要とする。Ti量が0.180%を超えると効果は飽和し、さらに過度に含有すると、熱延板が硬化し、熱間圧延、冷間圧延での圧延荷重が増大する。したがって、Ti量は0.060%以上0.180%以下の範囲とする。また、([%Ti]/48)/([%C]/12)が0.10未満の場合、炭化物の生成が少なく、フェライト相の強度が低下し、強度の確保が困難となる。一方、([%Ti]/48)/([%C]/12)が0.50を超える場合、過度に鋼中の固溶Cが析出固定されるため、硬質化し、加工性の確保が困難となる。したがって、([%Ti]/48)/([%C]/12)=0.10〜0.50の範囲とする。なお、[%Ti]、[%C]はTi、Cの各元素のmass%での含有量を示す。
残部はFeおよび不可避不純物である。
次に、本発明にとって重要な要件の一つである鋼の組織の限定範囲および限定理由について詳細に説明する。
フェライト相の体積分率:90%以上、
フェライト相は軟質相であり、鋼板の伸びや極限変形能に寄与するため、本発明の鋼板では、フェライト相を体積分率で90%以上含有させる必要がある。好ましくは95%以上とする。
フェライト相の平均結晶粒径:3μm〜10μm、
フェライト相の平均結晶粒径が3μmより小さい場合、変形を阻害する結晶粒界が増加、また、フェライト相の結晶粒界の3重点などに多く存在する硬質なマルテンサイト相の間隔が接近し、加工時の変形能はマルテンサイト相が支配的となるため加工性は低下する。一方、フェライト相の平均結晶粒径が10μmを超えて過度に粗大化するとマルテンサイト相が粗に点在し、加工時の変形が不均一となり伸び、および伸びフランジ性が低下する。以上よりフェライト相の平均結晶粒径は3μm〜10μmとする。
マルテンサイト相の体積分率:1〜5%、
オーステナイトからの低温変態相であるマルテンサイト相を体積分率1%以上5%以下の範囲内で含有する組織とすることで、強度と加工性の良好な材質バランスが得られる。1%未満の場合、引張強度(TS)590MPa確保が困難となり、5%超の場合、過度に硬質化し、加工性、特に伸びフランジ性の確保が困難となる。1〜5%と非常に少ない体積分率ではあるが、C濃度が高く、マルテンサイト相自体の強度が高いため強度に寄与している。
マルテンサイト相の平均結晶粒径:1μm〜4μm、
マルテンサイト相の平均結晶粒径は小さく微細なほうが好ましいが、1μmより小さくしてもその効果は変わらない。フェライト相の体積分率が非常に多く、単相組織に限りなく近い場合、フェライト相が成形時の加工性を支配しているため、硬質なマルテンサイト相がフェライト母相中に微細分散しても、加工性に悪影響を及ぼすことは少ない。一方で、マルテンサイト相の平均結晶粒径が4μmを超えて粗大化すると、成形時の変形能へのマルテンサイト相の寄与が大きくなり、鋼板全体の成形能が低下する。以上より、加工性の劣化を抑制するため、粒径は1〜4μm以下とする。
セメンタイトの体積分率:1〜5%、
セメンタイトの割合を1〜5%の範囲内で含有する組織とすることで、強度と加工性の良好な材質バランスが得られる。5%超の場合、成形時のフェライト相の変形を阻害するため、加工性が低下する。一方、セメンタイトの体積分率は少なければ少ないほど、加工性は向上するが、1%未満としてもその効果は変わらない。以上よりセメンタイトの割合は1〜5%とする。
次に本発明の高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法について説明する。
まず、上記の成分組成に調整された溶鋼から、連続鋳造または造塊でスラブを溶製する。次いで、得られたスラブを、スラブ加熱温度:1150〜1300℃、熱間仕上げ圧延温度:850〜950℃として熱間圧延を終了後、650〜750℃の温度域に3〜30秒滞留し、巻取り温度を550〜650℃としてコイルに巻取り、次いで、酸洗、冷間圧延した後、焼鈍を行ない、焼鈍温度:800〜900℃まで加熱後、平均冷却速度:0.1〜5℃/秒で650〜750℃まで冷却、引き続き平均冷却速度10〜50℃/秒で550℃まで冷却、溶融亜鉛めっきを施すことで、本発明の目的とする高強度溶融亜鉛めっき鋼板が得られるが、鋼板にスキンパス圧延を施しても良い。溶融亜鉛めっき後に、更に合金化処理を施してもよい。
以下、製造条件の限定範囲および限定理由を詳細に説明する。
スラブ加熱温度:1150〜1300℃、
鋳造された鋼片スラブに存在しているTi析出物を再溶解させ、その後の熱延工程で均一に再析出させ、均質な薄鋼板とすることにより、優れた加工性を確保可能となる。一方で1300℃を超えて加熱すると、スラブ加熱中に過度にオーステナイト粒が粗大化し、最終製品の結晶粒径が粗大化し、焼鈍、冷却時のフェライト生成が抑制され、加工性、特に伸びフランジ性を低下させる。一方で、1150℃未満で加熱すると、含有成分の拡散が不十分となり、最終的に不均一な組織となり、伸びフランジ性に不利となる。また、熱間圧延終了温度の確保が困難となる。以上より、スラブ加熱温度は1150℃以上1300℃以下の範囲とする。
熱間仕上げ圧延温度:850〜950℃、
仕上げ圧延温度を850℃以上とすることにより加工性(伸び、伸びフランジ性)を著しく向上することができる。仕上げ圧延温度が850℃未満の場合、熱間圧延後に、結晶が展伸された加工組織となる。また、未再結晶オーステナイトから再結晶フェライトが生成する場合、微細なフェライト相組織と粗大なフェライトから構成される混粒組織となる。このように、不均一な組織となると加工時の材料の均一な変形を阻害し、優れた加工性を有することが困難となる。また、仕上げ圧延温度が950℃を超えると結晶粒径が過度に粗大となり、焼鈍、冷却後のフェライト生成が抑制され、加工性、特に伸びフランジ性を低下させる。また、加工時にプレス品表面荒れを生じる場合がある。よって、仕上げ圧延温度は850〜950℃とする。好ましくは880〜930℃である。
熱間圧延後の滞留温度域および滞留時間:650〜750℃の温度域に3〜30秒滞留、
熱間圧延後巻取りまでの間の650〜750℃の温度域での滞留時間を3〜30秒とする。滞留温度域が650℃より低い場合、TiCの析出が不十分となり、均一な熱延板を得ることができない。またフェライト相の生成量も少なく、低温変態相の多い不均一な組織となる。不均一な熱延鋼板を素材とし、焼鈍した場合、最終的に得られる組織も、もともと均一な熱延鋼板と比較すると、不均一な組織となり、加工性が低下する。一方で、滞留温度域が750℃より高い場合、TiCの析出が不十分であることに加え、フェライト相の生成も不十分となり、低温変態相の多い不均一な組織となり、また硬質な熱延鋼板となるため冷間圧延時の負荷が増大する。滞留時間が3秒より短い場合もTiCの析出が不十分、フェライトの生成も不十分となり、均一な熱延板を得ることができず、冷延焼鈍後の材質も硬質化する。一方、滞留時間が30秒を超えても差し支えないが、その効果は飽和する傾向にある。よって650〜750℃の温度域に3〜30秒滞留する。
巻取り温度:550〜650℃、
巻取り温度については、650℃を超えると、フェライト相とパーライト相から構成される組織となり、焼鈍熱処理時に元々パーライト相であった部位が最終的に硬質な低温変態相となりマルテンサイト相の体積分率が過剰となる。一方、550℃未満では熱延板強度が上昇し、冷間圧延における圧延負荷が増大し、生産性が低下する傾向にある。よって、巻取り温度は550〜650℃の範囲とする。
酸洗は、通常公知の条件に準じて行なうことができる。酸の種類は特に限定はしないが、塩酸が一般的に好ましい。
冷間圧延条件は、通常公知の条件でよく、特に限定しない。しかし、組織の均一性を確保する観点から、30%以上の冷間圧延率が好ましい。また、圧延負荷が増大しすぎると生産性が低下するため、冷間圧率の上限は60%程度とするのが好ましい。
焼鈍温度:800〜900℃、
酸洗、冷間圧延後の焼鈍温度が800℃より低い場合、再結晶が完了しておらず、また加熱中にオーステナイト相にC濃化が促進し、冷却後に低温変態相の生成量が多くなり、伸び、伸びフランジ性など加工性が劣化する傾向にある。900℃を超えて加熱すると、オーステナイト粒径が過度に粗大化し、その後の冷却過程で生成するフェライト相の量が減少し伸びが低下する。また、フェライト相や低温変態相の所望の結晶粒径を確保することが困難となり、伸びフランジ性が劣化する。よって焼鈍温度は800〜900℃の範囲とする。
平均冷却速度(その1):0.1〜5℃/秒で650〜750℃まで冷却、
焼鈍後の冷却過程は組織制御の観点から重要である。焼鈍後、まず650〜750℃まで冷却するが、平均冷却速度が0.1℃/秒より遅いと、フェライト相の生成量が多くなりすぎるため、引張強度590MPa確保が困難となり、また焼鈍温度近傍に滞留する時間が長くなるため、焼鈍中にオーステナイト粒径が粗大化し、最終的に得られるフェライト相、マルテンサイト相の結晶粒径も粗大化し、加工性が低下する。平均冷却速度が5℃/秒より速くなると、冷却過程に生成するフェライト相の生成が抑制されマルテンサイト相の量が多くなり硬質化し、伸び、伸びフランジ性が低下する。平均冷却速度を上記範囲に制御することで、所望の組織を達成することにより、加工時の変形におよぼすフェライト相の寄与を高めることが可能となり、優れた伸び、伸びフランジ性を得ることが可能となる。したがって、平均冷却速度は0.1〜5℃/秒以下とする。冷却する温度範囲は750℃より高いとフェライト相の生成量が少なく加工性が低下、650℃より低いとフェライト相の生成量が多くなり、引張強度確保が困難となる。したがって冷却する温度範囲は650〜750℃とする。
平均冷却速度(その2):10〜50℃/秒で550℃まで冷却、
550℃までの冷却速度は軟質なフェライト相と硬質なマルテンサイト相の存在比率を制御し、引張強度590MPa級以上の強度と加工性を確保するのに重要な役割を担っている。すなわち、平均冷却速度が50℃/秒を超えると、冷却中のフェライト生成が抑制され、過度に低温変態相であるマルテンサイト相が生成するため引張強度590MPa級確保は容易であるが、加工性が劣化する。一方、10℃/秒より遅いと冷却過程中に生成するフェライト相の量が多くなりすぎ、引張強度の低下を招く傾向にある。なお、この場合の冷却は、ガス冷却が好ましいが、炉冷、ミスト冷却、ロール冷却、水冷などを用いて組み合わせて行なうことが可能である。したがって、少なくとも550℃までの平均冷却速度は10〜50℃/秒とする。
また、上記冷却速度で少なくとも550℃まで冷却した鋼板に、次いで溶融亜鉛めっきあるいはさらに合金化処理を行う。
溶融亜鉛めっき処理は、浴温:420〜520℃程度の溶融亜鉛めっき浴に上記冷却後の鋼板を浸漬し、浸漬した鋼板を引き上げた後、ガスワイピング等により亜鉛目付け量(亜鉛付着量)を調整する。この後、さらに合金化処理を行ってもよい。
合金化処理を行なう場合は、溶融亜鉛めっき処理を施した後、450〜550℃の範囲で行なうのが好ましい。450℃未満では合金化が進行せず、550℃超えでは過度に合金化が進行しプレス時にめっき層が剥離する恐れがある。その他のめっき条件は通常公知の条件に準じて行なうことができる。
連続焼鈍後、最終的に得られた溶融亜鉛めっき鋼板に、形状矯正や表面粗度調整の目的から調質圧延を行って差し支えないが、過度にスキンパス圧延をすると歪が導入され結晶粒が展伸され圧延加工組織となり、伸びが低下するため、スキンパス圧延を行なう際の圧下率は0.1〜1.5%とすることが好ましい。
なお、焼鈍および溶融亜鉛めっき処理、合金化処理は、連続溶融亜鉛めっきラインにて行なうことが好ましい。
以上のようにして製造した本発明の高強度溶融亜鉛めっき鋼板は、自動車部品以外にも、建築および家電分野など厳しい寸法精度、加工性が必要とされる用途にも好適に使用できる。
表1に示す成分組成を有する鋼(鋼種A〜J)を溶製してスラブとし、表2に示すスラブ加熱温度、熱間仕上げ圧延温度、650〜750℃の温度域の滞留時間、巻取り温度、焼鈍温度、平均冷却速度(その1)、冷却停止温度、平均冷却速度(その2)の条件で熱間圧延、巻取り、塩酸にて酸洗、圧下率50%の冷間圧延、焼鈍、冷却を行ない、連続溶融亜鉛めっきラインにて溶融亜鉛めっき処理あるいは合金化溶融亜鉛めっき焼鈍処理を行ない、スキンパス圧延を行ない、No.1〜18の板厚1.4mmの溶融亜鉛めっき鋼板あるいは合金化溶融亜鉛めっき鋼板を製造した。なお、溶融亜鉛めっき浴温460℃、合金化処理温度520℃とした。また、溶融亜鉛めっき鋼板の付着量は50g/m2、合金化度は11%とした。なお、表1においてTi/Cは([%Ti]/48)/([%C]/12)の値を示す。
Figure 0005434375
Figure 0005434375
得られた溶融亜鉛めっき鋼板および合金化溶融亜鉛めっき鋼板について、鋼板の組織、及び下記に示す材料試験により材料特性(引張特性、穴拡げ率)を調査した。得られた結果を表3に示す。
Figure 0005434375
鋼板の組織は、圧延方向断面、板厚1/4面位置をナイタールエッチングし、光学顕微鏡または走査型電子顕微鏡(SEM)で観察することにより調査した。観察は5視野(N=5)で実施した。フェライト相の結晶粒径は、JISG0552(1998)に規定の方法(切断法)に準拠して結晶粒度を測定し、平均結晶粒径に換算した。フェライト相体積分率は倍率1000倍の断面組織写真を用いて、画像解析により任意に設定した100mm×100mm四方の正方形領域内に存在するフェライト相の占有面積を求め、これをフェライト相の体積分率とした。
マルテンサイト相の結晶粒径も同様にJISG0552(1998)に規定の方法に準拠して結晶粒度を測定し、平均結晶粒径に換算した。低温変態相の区別は倍率3000倍の断面組織写真を用いて、フェライト相以外の低温変態相において炭化物の観察されない平滑な表面として観察された場合マルテンサイトと判定した。
引張特性は、圧延方向と90°の方向を長手方向(引張方向)とするJISZ2201に記載の5号試験片を用い、JISZ2241準拠した引張試験を行ない評価した。なお、引張特性(伸び)の評価基準はTS×Elが17000MPa・%以上(TS×El≧17000MPa・%)を良好とした。
穴拡げ率は、日本鉄鋼連盟規格JFST1001に基づき測定した。初期直径do=10mmの穴を打抜き、60°の円錐ポンチを上昇させ穴を拡げた際に、亀裂が板厚貫通したところでポンチ上昇を止め、亀裂貫通後の打抜き穴径dを測定し、穴拡げ率(%)=((d-do)/do)×100として算出した。同一番号の鋼板について3回試験を実施し、穴拡げ率の平均値(λ)を求めた。なお、伸びフランジ性の評価基準はTS×λが50000MPa・%以上(TS×λ≧50000MPa・%)を良好とした。
表3によれば、本発明例の鋼板では、引張強度(TS)590MPa以上、TS×El≧17000MPa・%以上、TS×λ≧50000MPa・%を満足する加工性に優れる高強度溶融亜鉛めっき鋼板が得られていることがわかる。
一方、鋼成分が本発明範囲外である鋼種Hを用いたNo.8は、TSが低く、加工性に劣る。鋼成分が本発明範囲外である鋼種I、Jを用いたNo.9、10、スラブ加熱温度が高いNo.11、熱延仕上げ温度の高いNo.12、滞留時間の短いNo.13、熱延巻取り温度の高いNo.14、熱延巻取り温度が低く、焼鈍温度の低いNo.15、冷却速度(その1)の速いNo.16は、マルテンサイト相の体積分率が多く、TSが高く、加工性に劣る。冷却停止温度が低いNo.17、冷却速度(その2)の遅いNo.18はフェライト相の体積分率が多く、TS590MPaに満たない。

Claims (3)

  1. mass%で、C:0.06〜0.10%、Si:0.03%以下、Mn:1.6〜2.0%、P:0.020%以下、S:0.0030%以下、Al:0.005〜0.1%、N:0.01%以下、およびTi:0.060〜0.180%を含有し、
    ([%Ti]/48)/([%C]/12)=0.10〜0.50を満足し、
    残部がFe及び不可避不純物からなる成分組成を有し、
    体積分率が90%以上かつ平均結晶粒径が3μm〜10μmのフェライト相と、体積分率が1〜5%かつ平均結晶粒径が1μm〜4μmのマルテンサイト相と、体積分率が1〜5%のセメンタイトとから構成される組織を有することを特徴とする引張強度が590MPa以上の加工性に優れる高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
    ただし、[%Ti]、[%C]は各元素のmass%での含有量を示す。
  2. 請求項1に記載の成分組成を有する鋼スラブを、スラブ加熱温度:1150〜1300℃、熱間仕上げ圧延温度:850〜950℃で熱間圧延を終了後、650〜750℃の温度域に3〜30秒滞留し、巻取り温度:550〜650℃としてコイルに巻取り、次いで、酸洗、冷間圧延した後、焼鈍温度:800〜900℃まで加熱し、焼鈍後、平均冷却速度:0.1〜5℃/秒で650〜750℃まで冷却し、引き続き少なくとも550℃まで、平均冷却速度:10〜50℃/秒で冷却し、次いで、溶融亜鉛めっき処理を施すことを特徴とする引張強度が590MPa以上の加工性に優れる高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
  3. 溶融亜鉛めっき処理後、さらに、合金化処理を施すことを特徴とする請求項2に記載の引張強度が590MPa以上の加工性に優れる高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
JP2009196177A 2009-08-27 2009-08-27 加工性に優れる高強度溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法 Active JP5434375B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2009196177A JP5434375B2 (ja) 2009-08-27 2009-08-27 加工性に優れる高強度溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2009196177A JP5434375B2 (ja) 2009-08-27 2009-08-27 加工性に優れる高強度溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2011046999A JP2011046999A (ja) 2011-03-10
JP5434375B2 true JP5434375B2 (ja) 2014-03-05

Family

ID=43833620

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2009196177A Active JP5434375B2 (ja) 2009-08-27 2009-08-27 加工性に優れる高強度溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5434375B2 (ja)

Families Citing this family (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN108884532B (zh) * 2016-03-25 2021-06-15 杰富意钢铁株式会社 高强度热浸镀锌钢板及其制造方法
CN108884533B (zh) * 2016-03-31 2021-03-30 杰富意钢铁株式会社 薄钢板和镀覆钢板及其制造方法以及热轧钢板、冷轧全硬钢板、热处理板的制造方法
KR102303592B1 (ko) * 2017-01-25 2021-09-16 제이에프이 스틸 가부시키가이샤 도금 밀착성이 우수한 고강도 용융 도금 강판의 제조 방법

Family Cites Families (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP3539546B2 (ja) * 1999-01-19 2004-07-07 Jfeスチール株式会社 加工性に優れた高張力溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法
JP4085809B2 (ja) * 2002-12-27 2008-05-14 Jfeスチール株式会社 超微細粒組織を有し伸びフランジ性に優れる溶融亜鉛めっき冷延鋼板およびその製造方法
JP4384523B2 (ja) * 2004-03-09 2009-12-16 新日本製鐵株式会社 形状凍結性に極めて優れた低降伏比型高強度冷延鋼板およびその製造方法
JP4901617B2 (ja) * 2007-07-13 2012-03-21 新日本製鐵株式会社 引張強度が700MPa以上で耐食性、穴拡げ性および延性に優れた合金化溶融亜鉛めっき高強度鋼板及びその製造方法
JP5256690B2 (ja) * 2007-10-25 2013-08-07 Jfeスチール株式会社 加工性および耐衝撃特性に優れる高強度溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2011046999A (ja) 2011-03-10

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5983895B2 (ja) 高強度鋼板およびその製造方法、ならびに高強度亜鉛めっき鋼板の製造方法
JP5549414B2 (ja) 形状凍結性に優れた冷延薄鋼板およびその製造方法
KR101706485B1 (ko) 고강도 냉연 강판 및 그 제조 방법
JP5983896B2 (ja) 高強度鋼板およびその製造方法、ならびに高強度亜鉛めっき鋼板の製造方法
JP6123957B1 (ja) 高強度鋼板およびその製造方法
JP5126399B2 (ja) 伸びフランジ性に優れた高強度冷延鋼板およびその製造方法
JP5088023B2 (ja) 加工性に優れた高強度冷延鋼板及びその製造方法
JP5487984B2 (ja) 曲げ性に優れた高強度冷延鋼板およびその製造方法
JP2015224359A (ja) 高強度鋼板の製造方法
JP2010265545A (ja) 時効性および焼付け硬化性に優れた冷延鋼板およびその製造方法
JP4501699B2 (ja) 深絞り性と伸びフランジ性に優れた高強度鋼板およびその製造方法
JP5862591B2 (ja) 高強度鋼板およびその製造方法
JP5239562B2 (ja) 加工性に優れる高強度溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法
JP5315954B2 (ja) 高強度溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法
JP5862052B2 (ja) 伸びおよび伸びフランジ性に優れる高強度冷延鋼板ならびにその製造方法
WO2016024371A1 (ja) 高強度鋼板の製造方法
JP6123958B1 (ja) 高強度鋼板およびその製造方法
JP5434375B2 (ja) 加工性に優れる高強度溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法
JP2012219328A (ja) 合金化溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法
JP5310920B2 (ja) 耐時効性と焼付き硬化性に優れた高強度冷延鋼板
JP2004052071A (ja) 伸びフランジ性、強度−延性バランスおよび歪時効硬化特性に優れた複合組織型高張力冷延鋼板およびその製造方法
JP6628018B1 (ja) 熱延鋼板
JP4333356B2 (ja) 冷延鋼板の製造方法
JP5375001B2 (ja) 高強度冷延鋼板およびその製造方法
JP5582284B2 (ja) 高い比例限を有する薄鋼板およびその製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
RD03 Notification of appointment of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7423

Effective date: 20120321

RD04 Notification of resignation of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7424

Effective date: 20120327

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20120423

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20131024

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20131112

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20131125

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 5434375

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250