JP5429331B2 - 製造安定性に優れた高強度冷延鋼板およびその製造方法 - Google Patents

製造安定性に優れた高強度冷延鋼板およびその製造方法 Download PDF

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本発明は、自動車骨格部材や補強部材などに好適な、引張強さが980MPa以上の製造安定性に優れた高強度冷延鋼板およびその製造方法に関するものである。
近年、地球環境保全という観点から、自動車の燃費改善が要求されている。また、車両衝突時に乗員を保護する観点からは、自動車車体の安全性向上も要求されている。このため、燃費改善と安全性向上の両方を満足させるべく、自動車車体の軽量化と強化の双方を図る検討が積極的に進められている。自動車車体の軽量化と強化を同時に満足させるには、部品素材を高強度化かつ薄肉化することが効果的であり、最近では引張強さ980MPa以上の高張力薄鋼板が自動車骨格部材や自動車シート骨格部材などに使用され始めている。
自動車骨格部材などの部材はプレス加工により成形されるため、その材料には高い伸びフランジ性が要求される。鋼板を引張強さ980MPa以上の高強度とするためには、高硬度であるマルテンサイト相の活用が有効であるが、軟質なフェライト相と硬質なマルテンサイト相からなるDP鋼では、2相の加工性の違いから2相界面に歪が集中して伸びフランジ性が劣化する。高い伸びフランジ性を得るためには、硬度差のある2相組織を避け、単相組織とすることが効果的であり、例えば、特許文献1ではマルテンサイト単相組織とすることで、優れた穴拡げ性を達成している。
特許第3729108号公報
しかしながら、特許文献1の方法では、鋼板の引張強さが焼鈍過程における加熱後の冷却速度により大きく変化する(強度の冷却速度依存性が大きい)ため、製造安定性に問題があった。
したがって本発明の目的は、上記従来技術の課題を解決し、伸びフランジ性などの優れたプレス成形性を有するとともに、強度の冷却速度依存性が小さく、優れた製造安定性を有する高強度冷延鋼板およびその製造方法を提供することにある。
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究し、以下のような知見を得た。通常、マルテンサイト単相組織鋼の強度低下は、冷却中のマルテンサイト変態までの間のフェライト相またはベイナイト相の生成が原因と考えられ、その生成を抑制する手段としては、Mn,Cr,Mo,Bなどのようなフェライト、ベイナイト変態を遅延させる元素を添加することが効果的であることが知られている。しかしながら、フェライトなどの生成が認められない場合においても、強度の冷却速度依存性が認められ、詳細な組織観察の結果、強度低下した鋼のマルテンサイト中に鉄炭化物が析出していることを見出した。さらに、鉄炭化物析出の抑制にはMn,Cr,Mo,Bなどの添加は効果が無いが、Siを0.1mass%以上添加することで、マルテンサイト変態後室温まで冷却する間の鉄炭化物の析出を抑制することにより、連続焼鈍における加熱保持後の200℃までの平均冷却速度が300℃/秒以上の範囲において、冷却速度にかかわりなく安定して強度を確保することが可能であることを見出した。このように、Si添加により強度低下を抑制する効果が得られる理由として、Siは鉄炭化物にほとんど固溶しないため、鉄炭化物が生成・成長するためにはSiの拡散が必要となるが、マルテンサイト変態点(約450℃)以下の低温ではSiはほとんど拡散することができないため、鉄炭化物の析出が抑制されたものと考えられる。さらに、200℃までの平均冷却速度が300℃/秒以上となる、比較的冷却速度の速い製造方法においては、マルテンサイト変態点から200℃までに要する時間は1秒未満であり、その間の鉄炭化物析出抑制には、0.1mass%程度の少量のSi添加で十分であることを知見した。
本発明はこのような知見に基づきなされたもので、以下を要旨とするものである。
[1]C:0.03〜0.12mass%、Si:0.1〜0.6mass%、Mn:1.6〜3.0mass%、P:0.10mass%以下、S:0.005mass%以下、Al:0.01〜0.1mass%、N:0.005mass%以下、B:0.0005〜0.005mass%を含有し、さらに、Ti:0.005〜0.05mass%、Nb:0.005〜0.05mass%の1種または2種を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、鋼板組織(但し、鋼板表面から深さ20μmまでの領域の組織を除く)が焼戻しマルテンサイト単相組織であり、引張強さが980MPa以上であることを特徴とする製造安定性に優れた高強度冷延鋼板。
[2]上記[1]に記載の成分組成を有するスラブに、熱間圧延、冷間圧延、連続焼鈍を順次施す冷延鋼板の製造方法であって、前記連続焼鈍では、鋼板をAe変態点以上900℃以下の温度域に加熱保持した後、300℃/秒以上の平均冷却速度で200℃以下まで急冷し、次いで200℃以下で焼戻すことを特徴とする製造安定性に優れた高強度冷延鋼板の製造方法。
なお、本発明において、「製造安定性に優れた」とは、連続焼鈍工程においてAe変態点以上900℃以下の温度域に加熱保持した後の、200℃までの平均冷却速度が300℃/秒で製造した場合と1000℃/秒で製造した場合の強度差が、50MPa以下であることを意味する。
本発明の高強度冷延鋼板は、980MPa以上の引張強さを有するととともに、伸びフランジ性などのプレス成形性に優れ、しかも、引張強さが焼鈍過程の冷却速度により大きく変化せず、製造安定性に優れている。このため良好なプレス成形性の求められる自動車骨格部材や補強部材の素材として特に好適であり、その他、高い強度と高い伸びフランジ性が必要とされる自動車部品、家電製品、建築部材などの素材としても好適である。また、本発明の製造方法によれば、上記のような性能を有する高強度冷延鋼板を安定して製造することができる。
本発明の冷延鋼板は、C:0.03〜0.12mass%、Si:0.1〜0.6mass%、Mn:1.5〜3.0mass%、P:0.10mass%以下、S:0.01mass%以下、Al:0.01〜0.1mass%、N:0.005mass%以下を含有し、必要に応じて、B:0.0005〜0.005mass%を含有し、或いはさらに、Ti:0.005〜0.05mass%およびNb:0.005〜0.05mass%の1種または2種を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、鋼板組織(但し、鋼板表面から深さ20μmまでの領域の組織を除く)が焼戻しマルテンサイト単相組織であり、引張強さが980MPa以上であることを特徴とする。
まず、鋼板の成分組成の限定理由は以下の通りである。
C:0.03〜0.12mass%
Cは、強度確保のために重要な元素の一つであり、本発明では引張り強さを980MPa以上とするために、0.03mass%以上の含有を必要とする。一方、0.12mass%を超える含有は、溶接性を著しく劣化させる。このためCは0.03〜0.12mass%、好ましくは0.04〜0.10mass%とする。
Si:0.1〜0.6mass%
Siは、本発明で最も重要な元素であり、連続焼鈍においてマルテンサイト変態後室温まで冷却する間の鉄炭化物の析出を抑制し、強度の冷却速度依存性を低減する効果を有する。このような効果は0.1mass%以上の添加で得ることができ、200℃までの平均冷却速度が300℃/秒以上の範囲において、300℃/秒で製造した場合と1000℃/秒で製造した場合の強度差を50MPa以下とすることができる。一方、0.6mass%を超えるSiの添加は、鋼板の化成処理性を劣化させるだけでなく、冷却中のフェライト変態が促進されて、焼戻しマルテンサイト単相組織を得ることが困難となり、Mn,Cr,Moなどのフェライト変態を遅延する元素を多量に添加する必要が生じる。このためSiは0.1〜0.6mass%、好ましくは0.2〜0.5mass%とする。
Mn:1.5〜3.0mass%
Mnは、オーステナイトを安定化し、フェライト変態を遅延させる元素であり、Mnを適量添加することで、連続焼鈍後の冷却時のフェライト生成を抑制し、焼戻しマルテンサイト単相組織を安定して得ることができる。このような効果を得るためには1.5mass%以上の添加が必要である。一方、3.0mass%を超えるMnの添加は加工性を劣化させる。このためMnは1.5〜3.0mass%、好ましくは1.6〜2.5mass%とする。
P:0.10mass%以下
Pは、鋼を強化する作用があり、鋼板の強度レベルに応じて添加してもよいが、0.10mass%を超えて添加すると溶接性が劣化する。このためPは0.10mass%以下とする。また、より優れた溶接性が要求される場合には、0.05mass%以下とすることが好ましい。
S:0.01mass%以下
Sは、鋼板中で介在物として存在し、伸びフランジ性を劣化させる。そのため、Sはできるだけ低減するのが好ましく、伸びフランジ性への悪影響を排除するためには、0.01mass%以下とする必要がある。また、より優れた伸びフランジ性が要求される場合には、0.005mass%以下とすることが好ましい。
Al:0.01〜0.1mass%
Alは、鋼の脱酸元素として添加され、鋼の清浄度を向上させるのに有用な元素であり、鋼の組織微細化のためにも添加が望ましい元素である。また、適正範囲のAlを添加したアルミキルド鋼の方が、Alを添加しない従来のリムド鋼に比して、機械的性質が優れている。このためAlの下限は0.01mass%とする。一方、Al含有量が多くなると表面性状の悪化につながるため、上限は0.1mass%とする。
N:0.005mass%以下
Nは、本発明では不純物として取り扱う。Nが0.005mass%を超えると強度バラツキの原因となるため、0.005mass%以下とする。
本発明の鋼板は、上記の成分組成で目的とする特性が得られるが、所望の特性に応じて以下の元素を含有することができる。
B:0.0005〜0.005mass%
Bは、フェライト変態を遅延させる元素であり、Bを適量添加することで、連続焼鈍の冷却時のフェライト生成を抑制し、焼戻しマルテンサイト単相組織を安定して得ることができる。このような効果を得るためには0.0005mass%以上の添加が必要である。一方、0.005mass%を超えるBの添加は上記した効果が飽和するだけでなく、熱間圧延の変形抵抗が大きくなり、製造が困難となる。このためBは0.0005〜0.005mass%とする。
Ti:0.005〜0.05mass%、Nb:0.005〜0.05mass%の1種または2種
Bを添加する場合には、Ti,Nbを適量添加することが好ましい。Bが上記効果を発揮するためには、固溶状態である必要があり、BがNと結合してBNとなると、その効果は減少してしまう。その際、Ti,Nbを添加することで、NはTi,Nbと優先的に結合し、BNの形成を抑制することができる。このような効果は、Ti,Nbをそれぞれ0.005mass%以上添加することで得ることができるが、0.05mass%を超える添加は加工性の劣化をもたらす。よって、Ti,Nbはそれぞれ、0.005〜0.05mass%とする。
上記以外の残部はFe及び不可避的不純物とする。不可避的不純物としては、例えば、Sb、Sn、Zn、Coなどが挙げられ、これらの含有量の許容範囲としては、Sb:0.01mass%以下、Sn:0.1mass%以下、Zn:0.01mass%以下、Co:0.1mass%以下の範囲である。また、本発明では、Cr、Mo、V、Ni、Cu、Mg、Ca、Zr、REMを通常の鋼組成の範囲内で含有しても、その効果は失われない。
本発明の鋼板の金属組織(但し、鋼板表面から深さ20μmまでの組織を除く。これについては後述する。)は、焼戻しマルテンサイト単相組織とする。このようにフェライトなどの軟質相が含まれない焼戻しマルテンサイト単相組織とすることで、優れた伸びフランジ性が得られる。
ここで、焼戻しマルテンサイトとは、マルテンサイトを200℃以下の低温で焼戻した組織であり、ラス状フェライトとラス内およびラス境界に析出した微細板状鉄炭化物からなる。同じくラス状フェライトと微細板状鉄炭化物からなる組織として下部ベイナイトが知られるが、下部ベイナイトに生成する鉄炭化物は、同一ラス内において長手が一方向に揃っているという特徴があり、ランダムである焼戻しマルテンサイトとは、透過電子顕微鏡で観察することで区別できる。また、焼戻しマルテンサイト単相とは、走査電子顕微鏡、透過電子顕微鏡、X線回折法で組織を定量測定し、フェライト、ベイナイト、残留オーステナイトが合計で1%以上含まれないことを意味する。
また、脱炭などにより鋼板表面から深さ20μm以内の最表層にフェライトが生成することがあるが、このようなフェライトは伸びフランジ性に影響を及ぼさず、むしろ曲げ性を向上させることから、鋼板表面から深さ20μm以内にはフェライトが含まれていてもよい。このため本発明では、鋼板表面から深さ20μmまでの領域については鋼板組織を限定しない。
本発明の鋼板は、高い引張強さが要求される自動車骨格部材、補強部材、および自動車シート骨格部材などへの適用を意図しているので、このような用途を考慮して引張強さを980MPa以上とする。
次に、本発明の冷延鋼板の製造方法について説明する。
この製造方法では、上述した成分組成に調整された溶鋼からスラブを製造し、このスラブに対して、熱間圧延、冷間圧延、連続焼鈍を順次施し、冷延鋼板を製造する。
使用するスラブは、成分のマクロ偏析が少ないなどの面では連続鋳造法で製造されたものが好ましいが、造塊−分塊圧延法や薄スラブ鋳造法で製造されたものでもよい。
熱間圧延の方式としては、鋳造されたスラブを一旦常温まで冷却し、その後加熱炉にて再加熱して圧延する方式のほか、鋳造されたスラブを常温まで冷却することなく、温片のままで加熱炉にて再加熱した後、圧延する方式、鋳造されたスラブを保熱した後に直ちに圧延する方式、鋳造されたスラブをそのまま圧延する直送圧延・直接圧延方式、などいずれの方式でもよい。
鋳造後常温まで冷却されたスラブを再加熱する場合、スラブ加熱温度は1000℃以上とするのが好ましい。上限は特に限定されないが、1300℃を超えると酸化重量の増加に伴うスケールロスが増大することなどから、1300℃以下とすることが好ましい。また、常温まで冷却することなく、温片のままで加熱炉にて再加熱する場合も、スラブ加熱温度は1000℃以上とするのが好ましい。
熱間圧延では、必要に応じて粗圧延を行った後、好ましくは仕上圧延温度:800℃以上で仕上圧延を行う。仕上圧延温度が800℃を下回ると、鋼板の組織が不均一になり、加工性が劣化する。仕上圧延温度の上限は特に限定されないが、過度に高い温度で圧延するとスケール疵などの原因となるので、1000℃以下とすることが好ましい。その後、平均冷却速度:30℃/秒以上で700℃以下まで冷却し、650℃以下で巻き取ることが好ましい。平均冷却速度が30℃/秒未満ではフェライト粒径が粗大となるため、冷間圧延後の焼鈍時にオーステナイト粒径が粗大となり、加工性に悪影響を及ぼすおそれがある。また、巻取温度が650℃を超えると、巻取後のスケールロスが増大する。
この熱間圧延では、圧延荷重を低減するために仕上圧延の一部または全部を潤滑圧延としてもよい。潤滑圧延を行うことは、鋼板形状の均一化、材質の均一化の観点からも有効である。なお、潤滑圧延の際の摩擦係数は0.10〜0.25の範囲とすることが好ましい。また、相前後するシートバー同士を接合し、連続的に仕上圧延する連続圧延プロセスとすることが好ましい。連続圧延プロセスを適用することは、熱間圧延の操業安定性の観点からも望ましい。
次いで、上記により得られた熱延鋼板に冷間圧延を施し、冷延鋼板とする。冷間圧延条件は、所望の寸法形状の冷延鋼板とすることができればよく、特に限定されないが、表面の平坦度や組織の均一性の観点から、圧下率を20%以上とすることが好ましい。なお、冷間圧延前には、常法に準じた酸洗を施せばよいが、熱延鋼板表面のスケールが極めて薄い場合には直接冷間圧延を施してもよい。
次いで、得られた冷延鋼板に連続焼鈍を施す。この連続焼鈍工程では、鋼板をAe点以上900℃以下の温度域に加熱保持する。加熱保持温度がAe点未満では、オーステナイト単相組織とならず、冷却−焼戻し後に焼戻しマルテンサイト単相組織を得ることができない。一方、加熱保持温度が900℃を超えると、オーステナイト粒が粗大化するため、鋼板の曲げ性、靭性が劣化してしまう。なお、保持時間は、鋼板の均一性の観点からAe点以上となる時間が60秒以上であることが好ましい。さらに好ましくは120秒以上である。
次いで、平均冷却速度300℃/秒以上で200℃以下まで急冷する。本発明では、平均冷却速度が300℃/秒以上の場合に、Siを0.1mass%以上添加することで、200℃までの平均冷却速度が300℃/秒で製造した場合と1000℃/秒で製造した場合の強度差を、50MPa以下とすることができる。300℃/秒未満の冷却速度ではマルテンサイト変態後室温まで冷却する間の鉄炭化物の析出を抑制するために、0.6mass%を超える多量のSi添加が必要となり、化成処理性などに悪影響を及ぼす。よって、本発明では、平均冷却速度を300℃/秒以上、好ましくは400℃/秒以上とする。なお、鋼板温度が200℃未満まで冷却すると、数秒以内の短時間での炭化物の析出は、その後の200℃以下での焼戻し時の炭化物の析出に比べて無視できるレベルとなるため、200℃から室温までの冷却速度は特に規定されないが、生産性の観点から、50℃/秒以上であることが好ましい。また、加熱保持後直ちに急速冷却しても、また、製造プロセス上一定温度まで徐冷後、急速冷却しても構わないが、徐冷する際は急冷開始温度をAr点以上とする必要がある。
次いで、靭性を向上させるため、200℃以下で焼戻しを行う。焼戻し温度が200℃を超えると、粗大な炭化物が析出し、強度低下が著しくなるため、添加元素に見合う強度が得られず、非経済的である。なお、焼戻し温度の下限は特に規定しないが、100℃以上であることが好ましい。また、焼戻しの保持時間は3〜30分であることが好ましい。
なお、連続焼鈍後、形状矯正、表面粗度などの調整のために、伸び率5%以下の調質圧延を施してもよい。
また、本発明の高強度冷延鋼板には、焼鈍後、酸洗処理やNiなどの成分を5〜500mg/m程度付着する処理などを施して、化成処理性、溶接性、耐食性、耐かじり性などの改善を行ってもよい。
表1に示す化学組成の鋼スラブを連続鋳造により製造し、1250℃に再加熱後、仕上圧延温度:約850℃、巻取温度:約600℃、板厚3.0mmまで熱間圧延を行った。酸洗後、冷間圧延を施して、板厚1.2mmの冷延鋼板とし、次いで、連続焼鈍ラインにて表2に示す条件で焼鈍・焼戻しを施した。得られた冷延鋼板に、伸び率:0.5%の調質圧延を施した後に試験片を採取し、組織観察および材質調査を実施した。各試験方法の詳細は以下の通りである。
・組織観察
得られた冷延鋼板から試験片を採取し、圧延方向に平行な断面について、光学顕微鏡、走査型電子顕微鏡、透過電子顕微鏡を用いて微細組織を観察し、組織の種類の同定を行い、焼戻しマルテンサイト相の体積率を求めた。ここで、鋼板表面から深さ20μmまでの領域は鋼板特性(強度、穴拡げ率)への影響が小さいことから、鋼板表面から深さ20μmまでの領域を除いた部分について、組織の同定を行った(なお、鋼板表面から深さ20μmまでの領域は、いずれの鋼も焼戻しマルテンサイト相の体積率が20〜100%であり、残部がフェライト相からなる組織であった)。構成相の種類、焼戻しマルテンサイト体積率を表2に示す。
・材質調査
得られた冷延鋼板から、圧延方向に直交する方向を引張方向としてJIS5号引張試験片を採取し、JIS−Z−2241の規定に準拠して引張試験を行った。また、鉄鋼連盟規格(JFST1001−1996)に準拠して、穴拡げ率を測定した。引張試験により得られた、降伏強度(YS/MPa)、引張強度(TS/MPa)、伸び(El/%)および200℃までの平均冷却速度が300℃/秒で製造した場合と1000℃/秒で製造した場合の強度差(ΔTS/MPa)、穴拡げ率(λ/%)などを表2に示す。
穴拡げ性については、λ≧70%で良好であり、製造安定性については、ΔTS:50MPa以下を良好(○)、ΔTS:50MPa超を不良(×)とした。
Figure 0005429331
Figure 0005429331
表2によれば、本発明例および参考例(No.3〜5、7〜9、13、15〜17、19〜22)は、いずれも焼戻しマルテンサイト単相組織を有し、引張強度は980MPa以上であり、また、ΔTSは50MPa以下であることから、製造安定性に優れていることが判る。一方、Si添加量およびMn添加量が本発明の下限未満であるNo.1の比較例は、焼鈍後の冷却中にフェライトが生成し、λが低い値となっているほか、ΔTSの値も大きくなっており、強度の冷却速度依存性が大きくなっている。さらに、Si添加量をNo.1と同じく本発明の下限未満とし、Mn添加量を増量し、Bを添加したNo.2の比較例は、フェライトの生成は抑制され、焼戻しマルテンサイト単相組織となっているが、ΔTSは依然として大きく、製造安定性に劣ることが判る。また、No.6の比較例は焼鈍温度がAe点未満であるため、焼戻しマルテンサイト単相組織を得ることができず、λが低い値となっている。No.10およびNo.11の各比較例は、連続焼鈍時の平均冷却速度が300℃/秒未満であるため、1000℃/秒で冷却したときとの引張強さの差が、それぞれ54MPa、72MPaと大きく、平均冷却速度が300℃/秒未満では製造安定性に劣ることが判る。No.12の比較例は焼戻し温度が高く、引張強さが980MPaに達していない。また、No.14の比較例はC量が本発明の下限未満であるため、引張強さが980MPaに達していない。さらに、No.18の比較例はMn添加量が本発明の下限未満であるため、焼鈍後の冷却中にフェライトが生成し、λが低い値となっている。

Claims (2)

  1. C:0.03〜0.12mass%、Si:0.1〜0.6mass%、Mn:1.6〜3.0mass%、P:0.10mass%以下、S:0.005mass%以下、Al:0.01〜0.1mass%、N:0.005mass%以下、B:0.0005〜0.005mass%を含有し、さらに、Ti:0.005〜0.05mass%、Nb:0.005〜0.05mass%の1種または2種を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、鋼板組織(但し、鋼板表面から深さ20μmまでの領域の組織を除く)が焼戻しマルテンサイト単相組織であり、引張強さが980MPa以上であることを特徴とする製造安定性に優れた高強度冷延鋼板。
  2. 請求項1に記載の成分組成を有するスラブに、熱間圧延、冷間圧延、連続焼鈍を順次施す冷延鋼板の製造方法であって、
    前記連続焼鈍では、鋼板をAe変態点以上900℃以下の温度域に加熱保持した後、300℃/秒以上の平均冷却速度で200℃以下まで急冷し、次いで200℃以下で焼戻すことを特徴とする製造安定性に優れた高強度冷延鋼板の製造方法。
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