以下に、本発明の実施形態に係る分散型電源システムの構成例を、図面を参照しながら以下の順で説明する。ただし、本発明は以下の例に限定されるものではない。
1.第1の実施形態:基本構成例
2.第2の実施形態:電圧制御開始電圧を複数設定する構成例
3.第3の実施形態:複数の分散型電源間で情報の送受信を行う構成例
4.分散型電源システムの評価例
<1.第1の実施形態>
[配電網システム及び分散型電源システムの構成]
図1に、本発明の第1の実施形態に係る分散型電源システムを用いた配電網システムの一構成例を示す。なお、本実施形態では、インバータ容量が互いに異なる太陽光発電装置及び燃料電池装置からなる分散型電源システムについて説明する。
本実施形態の配電網システム100は、主に、柱上変圧器101と、柱上変圧器101に接続された低圧配電線102(電力系統)と、低圧配電線102に設けられた複数の引き込み点103(以下、ノードという)にそれぞれに接続された複数の住宅群104とで構成される。なお、各住宅群104は、配電線L2を介して対応するノード103に接続される。
図1に示す例では、低圧配電線102に10個のノード103(ノードn1〜ノードn10)を設ける例を示し、互いに隣り合うノード103間の配電線L1の長さは一定とする。また、図1中に示す低圧配電線102と、低圧配電線102及び各住宅群104間を繋ぐ配電線L2とは、線種が異なり、インピーダンスも互いに異なる。また、図1に示す配電網システム100の例では、各住宅群104が2戸の住宅で構成されている例を示す。
なお、低圧配電線102に設けられるノード数や各住宅群104内の住宅数などの配電網システム100の構成は、図1に示す例に限定されず、例えばシステムの設置地域等に応じて適宜変更可能である。
本実施形態の配電網システム100では、太陽光発電装置1(第1分散型電源)と、燃料電池装置2(第2分散型電源)と、負荷3とを備える分散型電源システム10が、各住宅に設置される。なお、太陽光発電装置1、燃料電池装置2及び負荷3は、分電盤105(以下、連系点という)105で接続されており、この連系点105が配電線L2により低圧配電線102の対応するノード103に接続される。ただし、図1に示す例では、太陽光発電装置1、燃料電池装置2及び負荷3が連系点105で直接接続されているが、実際には、これらは、連系点(分電盤)105内部において、互いに若干の距離だけ離れて並列接続される。また、本実施形態では、各住宅の分散型電源システム10は全て同じ構成とする。また、本実施形態の分散型電源システム10では、太陽光発電装置1のインバータ容量が燃料電池装置2のそれより大きい場合を説明する。
ただし、各住宅の分散型電源システム10の構成は、この例に限定されない。例えば、インバータ容量が互いに異なる複数の太陽光発電装置1で分散型電源システム10を構成してもよいし、インバータ容量が互いに異なる複数の燃料電池装置2で分散型電源システム10を構成してもよい。また、例えば、分散型電源システム10を、太陽光発電装置1及び燃料電池装置2以外の分散型電源装置、例えば、ガスエンジン、ガスタービン、蓄電池等を用いて構成してもよい。
さらに、分散型電源システム10を構成する分散型電源の数は、図1の例(2個)に限定されず、例えば各住宅での電力消費量等に応じて適宜設定できる。また、分散型電源システム10の電源構成が、住宅毎に異なっていてもよい。
本実施形態の配電網システム100では、6600Vの高電圧を柱上変圧器101で100/200Vの低電圧に変換し、その変換された低電圧の電力は、低圧配電線102及び配電線L2を介して住宅群104内の各住宅に供給される。また、本実施形態の配電網システム100では、各住宅の分散型電源システム10で発電された余剰電力は、配電線L2を介して低圧配電線102に供給される。
また、本実施形態では、インバータ容量のより大きい太陽光発電装置1の電圧制御開始電圧VPV(第1電圧制御開始電圧)を、燃料電池装置2の電圧制御開始電圧VFC(第2電圧制御開始電圧)より小さくする。これにより、連系点105における電圧V(t)の上昇抑制制御は、太陽光発電装置1及び燃料電池装置2の順、すなわち、インバータ容量の大きい順で行われる。
上述のように、連系点105(インバータ12の出力端)における電圧V(t)の上昇抑制制御をインバータ容量の大きい方の分散型電源から優先して行うことにより、各住宅の分散型電源システム10全体の発電量をできるかぎり抑制せずに、連系点105における電圧V(t)の上昇を抑制することが可能になる。この原理については、後で詳述する。なお、太陽光発電装置1の電圧制御開始電圧VPV及び燃料電池装置2の電圧制御開始電圧VFCは、例えば各分散型電源の製造メーカや機種等に応じて適宜設定される。
[太陽光発電装置の構成]
次に、本実施形態の分散型電源システム10で用いる太陽光発電装置1の構成を、図2を参照しながら説明する。なお、図2は、太陽光発電装置1の概略構成図である。ただし、図2には、説明の都合上、負荷3及び配電系統(柱上変圧器101、低圧配電線102及びノード103)と、太陽光発電装置1との接続関係も示す。
太陽光発電装置1は、太陽光発電セル11と、インバータ12(第1インバータ)と、発電出力制御部13(第1制御部)とを備える。
太陽光発電セル11は、半導体素子を含み、その素子で吸収した光エネルギーを直流電力に変換する。そして、太陽光発電セル11は、変換した直流電力をインバータ12に出力する。
インバータ12は、太陽光発電セル11から入力された直流電力を交流電力に変換する。そして、インバータ12は、変換した交流電力を負荷3及び/又は低圧配電線102に出力する。
発電出力制御部13は、ある時刻tにおける連系点105の電圧V(t)及び電流I(t)を計測して、インバータ12の出力端での時刻tにおける有効電力の発電量PPV(t)[kW](以下、発電出力PPV(t)という)及び無効電力の発生量QPV(t)[kvar](以下、単に無効電力QPV(t)という)を算出する。また、発電出力制御部13は、計測した電圧V(t)に基づいて、インバータ12の出力(発電出力PPV(t)及び/または無効電力QPV(t))を調整するためのインバータ出力電流指令信号を生成する。そして、発電出力制御部13は、生成したインバータ出力電流指令信号をインバータ12に出力する。
ここで、発電出力制御部13のより詳細な構成を、図3を参照しながら説明する。なお、図3は、図2に示す太陽光発電装置1の構成図において、発電出力制御部13の構成をより詳細に示した図である。ただし、発電出力制御部13の構成は、図3に示す例に限定されず、後述する発電出力制御部13の動作と同様の動作を行う構成であれば任意に構成することができる。
発電出力制御部13は、検出器131と、有効電力調整器132と、無効電力調整器133と、電流演算器134と、インバータ出力電流調整器135と、増幅器136と、信号変換部137とを有する。
検出器131は、演算機能(不図示)を有し、計測した連系点105における電圧V(t)及び電流I(t)から、時刻tにおける発電出力PPV(t)及び無効電力QPV(t)を算出する。また、検出器131は、太陽光発電セル11から入力される時刻tの直流電圧Vdc(t)及び直流電流Idc(t)を用いて、時刻tにおいて発電可能な理想電力PiPV(t)を算出する。なお、理想電力PiPV(t)は日射量に比例した出力となる。
そして、検出器131は、算出した発電出力PPV(t)、無効電力QPV(t)及び理想電力PiPV(t)、並びに、検出した連系点105における電圧V(t)を有効電力調整器132及び無効電力調整器133に出力する。
有効電力調整器132は、記憶部(不図示)を有し、その記憶部には、予め設定された電圧制御開始電圧VPV、太陽光発電装置1のインバータ容量SPV、及び、入力される時刻tにおける理想電力PiPV(t)が記憶される。
なお、電圧制御開始電圧VPVは、太陽光発電装置1による電圧V(t)の上昇抑制制御を開始するためのパラメータであり、連系点105における電圧V(t)が適正範囲(管理範囲)の上限を逸脱することを防止するために設定するパラメータである。本実施形態では、電圧制御開始電圧VPVをその適正範囲内の所定電圧に設定する。具体的には、100[V]系のシステムでは、電圧制御開始電圧VPVを101±6[V]の範囲内の所定電圧に設定し、200[V]系のシステムでは、電圧制御開始電圧VPVを202±20[V]の範囲内の所定電圧に設定する。
また、有効電力調整器132は、演算機能(不図示)を有し、発電出力PPV(t)、無効電力QPV(t)及びインバータ容量SPVに基づいて、時刻tにおいて、インバータ12の容量に空きがあるか否か判定する。具体的には、時刻tにおける無効電力の出力可能量QpPV(t)(=[SPV 2−PPV 2(t)]1/2)を算出し、その無効電力の出力可能量QpPV(t)が、時刻tに太陽光発電装置1から実際に出力されている無効電力QPV(t)より大きいか否かを判断して、インバータ12の容量に空きがあるか否か判定する。
そして、有効電力調整器132は、連系点105における電圧V(t)、電圧制御開始電圧VPV、及び、インバータ12の容量の空き状態に基づいて、有効電力の発電量の増減制御、すなわち、発電出力PPV(t)の増減制御を行う。
具体的には、連系点105における電圧V(t)が電圧制御開始電圧VPVより高く、且つ、インバータ12の容量に空きがない場合、有効電力調整器132は、発電出力PPV(t)を減少させる。また、連系点105における電圧V(t)が電圧制御開始電圧VPV以下であり、且つ、発電出力PPV(t)が理想電力PiPV(t)より小さい場合には、有効電力調整器132は、発電出力PPV(t)を増加させる。
そして、有効電力調整器132は、上述のようにして調整された発電出力PPV(t)を電流演算器134に出力する。
無効電力調整器133は、記憶部(不図示)を有し、その記憶部には、予め設定された電圧制御開始電圧VPV、太陽光発電装置1のインバータ容量SPV、及び、入力される時刻tにおける理想電力PiPV(t)が記憶される。
また、無効電力調整器133は、演算機能(不図示)を有し、発電出力PPV(t)、無効電力QPV(t)及びインバータ容量SPVに基づいて、時刻tにおいて、インバータ12の容量に空きがあるか否か判定する。具体的には、有効電力調整器132と同様に、時刻tにおける無効電力の出力可能量QpPV(t)(=[SPV 2−PPV 2(t)]1/2)を算出し、その無効電力の出力可能量QpPV(t)が、時刻tに太陽光発電装置1から実際に出力されている無効電力QPV(t)より大きいか否かを判断して、インバータ12の容量に空きがあるか否か判定する。
そして、無効電力調整器133は、連系点105における電圧V(t)、電圧制御開始電圧VPV、及び、インバータ12の容量の空き状態に基づいて、無効電力QPV(t)の増減制御を行う。
具体的には、連系点105における電圧V(t)が電圧制御開始電圧VPVより高く、且つ、インバータ12の容量に空きがある場合、無効電力調整器133は、電圧V(t)が下がる方向(柱上変圧器101から見て遅相となる方向)に無効電力QPV(t)を増加させる。また、電圧V(t)が電圧制御開始電圧VPV以下であり、且つ、無効電力QPV(t)が0でない場合には、無効電力調整器133は、無効電力QPV(t)を減少させる。
そして、無効電力調整器133は、上述のようにして調整された無効電力QPV(t)を電流演算器134に出力する。
電流演算器134は、有効電力調整器132及び無効電力調整器133からそれぞれ入力された発電出力PPV(t)及び無効電力の発生量QPV(t)に基づいて、インバータ12を制御するためのインバータ出力電流指令信号(交流電流信号)を生成する。そして、電流演算器134は、生成したインバータ出力電流指令信号をインバータ出力電流調整器135に出力する。
インバータ出力電流調整器135は、インバータ12の容量を超えない範囲でインバータ12から電流が出力されるように、入力されたインバータ出力電流指令信号を調整する。そして、インバータ出力電流調整器135は、調整されたインバータ出力電流指令信号を増幅器136に出力する。
増幅器136は、インバータ出力電流調整器135から出力されたインバータ出力電流指令信号を搬送波に重畳する。そして、重畳された信号を信号変換部137に出力する。
信号変換部137は、増幅器136から出力された信号をインバータ12に適合した信号に変換する。そして、信号変換部137は、変換した信号をインバータ12に出力する。
[燃料電池装置の構成]
次に、本実施形態の分散型電源システム10で用いる燃料電池装置2の構成を、図4を参照しながら説明する。なお、図4は、燃料電池装置2の概略ブロック構成図である。ただし、図4には、説明の都合上、負荷3及び配電系統(柱上変圧器101、低圧配電線102及びノード103)と、燃料電池装置2との接続関係も示す。
なお、本実施形態では、後述する燃料電池セル内で、酸素と、化石燃料を改質して抽出された水素とを化学反応させて電力を生成するタイプの燃料電池装置2について説明するが、本発明はこれに限定されず、任意のタイプの燃料電池装置を用いることができる。
燃料電池装置2は、水素改質器21と、燃料電池セル22と、インバータ23(第2インバータ)と、排熱回収部24と、発電出力制御部25(第2制御部)とを備える。
水素改質器21は、例えば都市ガスやLPガス等の化石燃料を改質して水素を抽出する。そして、水素改質器21は、抽出した水素を燃料電池セル22に供給する。
燃料電池セル22は、その内部で、酸素と水素改質器21から供給される水素とを化学反応させて直流電力を生成する。そして、燃料電池セル22は、生成した直流電力をインバータ23に出力する。
インバータ23は、燃料電池セル22で生成された直流電力を交流電力に変換する。そして、インバータ23は、変換した交流電力を負荷3及び/又は低圧配電線102に出力する。なお、本実施形態では、燃料電池装置2のインバータ容量SFCは、太陽光発電装置1のインバータ容量SPVより小さい。
排熱回収部24は、水素改質器21や燃料電池セル22で生じた熱を回収して温水を生成する。
発電出力制御部25は、ある時刻tにおける連系点105の電圧V(t)及び電流I(t)を計測して、インバータ23の出力端での時刻tにおける発電出力PFC(t)[kW]及び無効電力QFC(t)[kvar]を算出する。また、発電出力制御部25は、計測した電圧V(t)に基づいて、インバータ23の出力(発電出力PFC(t)及び/または無効電力QFC(t))を調整するためのインバータ出力電流指令信号を生成する。そして、発電出力制御部25は、生成したインバータ出力電流指令信号をインバータ23に出力する。
ここで、発電出力制御部25のより詳細な構成を、図5を参照しながら説明する。なお、図5は、図4に示す燃料電池装置2の構成図において、発電出力制御部25の構成をより詳細に示した図である。ただし、発電出力制御部25の構成は、図5に示す例に限定されず、後述する発電出力制御部25の動作と同様の動作を行う構成であれば任意に構成することができる。
発電出力制御部25は、検出器251と、有効電力調整器252と、無効電力調整器253と、電流演算器254と、インバータ出力電流調整器255と、増幅器256と、信号変換部257とを有する。
検出器251は、演算機能(不図示)を有し、計測した連系点105における電圧V(t)及び電流I(t)から、時刻tにおける発電出力PFC(t)及び無効電力QFC(t)を算出する。
また、検出器251は、連系点105における電圧V(t)及び電流I(t)、並びに、燃料電池セル22の運用状態から、負荷3の電力負荷PL(t)を算出する。具体的には、燃料電池セル22が停止中の場合には、電力負荷PL(t)を下記式で算出する。
PL(t)=V(t)×I(t)×cosθ
一方、燃料電池セル22が運用中の場合には、電力負荷PLを下記式で算出する。
PL(t)=V(t)×I(t)×cosθ+PFC(t)
なお、上記式中のθは、連系点105における電圧V(t)及び電流I(t)間の位相差である。
そして、検出器251は、算出した発電出力PFC(t)、無効電力QFC(t)及び電力負荷PL(t)、並びに、検出した連系点105における電圧V(t)を有効電力調整器252及び無効電力調整器253に出力する。
有効電力調整器252は、記憶部(不図示)を有し、その記憶部には、予め設定された電圧制御開始電圧VFC、燃料電池装置2のインバータ容量SFC及び定格出力、燃料電池セル22の最低発電可能電力PdFC(以下、「ターンダウン電力」という)、並びに、入力される負荷3の電力負荷PL(t)が記憶される。
なお、燃料電池装置2の電圧制御開始電圧VFCは、燃料電池装置2による電圧V(t)の上昇抑制制御を開始するためのパラメータであり、連系点105における電圧V(t)が適正範囲(管理範囲)の上限を逸脱することを防止するために設定されるパラメータである。本実施形態では、電圧制御開始電圧VFCをその適正範囲内の所定電圧に設定する。具体的には、100[V]系のシステムでは、電圧制御開始電圧VFCを101±6[V]の範囲内の所定電圧に設定し、200[V]系のシステムでは、電圧制御開始電圧VFCを202±20[V]の範囲内の所定電圧に設定する。
ただし、本実施形態では、燃料電池装置2の電圧制御開始電圧VFCを、太陽光発電装置1の電圧制御開始電圧VPVより高い値に設定する。これにより、連系点105の電圧V(t)の上昇を抑制するための処理動作は、太陽光発電装置1及び燃料電池装置2の順で行われる。すなわち、電圧V(t)の上昇抑制制御は、インバータ容量の大きな分散型電源から優先して行われる。
また、有効電力調整器252は、演算機能(不図示)を有し、入力された発電出力PFC(t)及び無効電力QFC(t)、並びに、記憶されたインバータ容量SFCに基づいて、時刻tにおいて、インバータ23の容量に空きがあるか否か判定する。具体的には、時刻tにおける無効電力の出力可能量QpFC(t)(=[SFC 2−PFC 2(t)]1/2)を算出し、その無効電力の出力可能量QpFC(t)が、時刻tに燃料電池装置2から実際に出力されている無効電力QFC(t)より大きいか否かを判断して、インバータ23の容量に空きがあるか否か判定する。
そして、有効電力調整器252は、連系点105における電圧V(t)、電圧制御開始電圧VFC、及び、インバータ23の容量の空き状態に基づいて、発電出力PFC(t)の増減制御を行う。
具体的には、連系点105における電圧V(t)が電圧制御開始電圧VFCより高く、且つ、インバータ23の容量に空きがない場合、有効電力調整器252は、発電出力PFC(t)を減少させる。また、連系点105における電圧V(t)が電圧制御開始電圧VFC以下であり、且つ、発電出力PFC(t)が時刻tにおける理想出力PiFC(t)より小さい場合には、有効電力調整器252は、発電出力PFC(t)を増加させる。なお、時刻tにおける理想出力PiFC(t)は、有効電力調整器252に入力された電力負荷PL(t)と、定格出力とのうち、小さい方の値とする。
そして、有効電力調整器252は、上述のようにして調整された発電出力PFC(t)を電流演算器254に出力する。
無効電力調整器253は、記憶部(不図示)を有し、その記憶部には、予め設定された電圧制御開始電圧VFC、燃料電池装置2のインバータ容量SFC、及び、入力される負荷3の電力負荷PL(t)が記憶される。
また、無効電力調整器253は、演算機能(不図示)を有し、入力された発電出力PFC(t)及び無効電力QFC(t)、並びに、記憶されたインバータ容量SFCに基づいて、時刻tにおいて、インバータ23の容量に空きがあるか否か判定する。具体的には、時刻tにおける無効電力の出力可能量QpFC(t)(=[SFC 2−PFC 2(t)]1/2)を算出し、その無効電力の出力可能量QpFC(t)が、時刻tに燃料電池装置2から実際に出力されている無効電力QFC(t)より大きいか否かを判断して、インバータ23の容量に空きがあるか否か判定する。
そして、無効電力調整器253は、連系点105における電圧V(t)、電圧制御開始電圧VFC、及び、インバータ23の容量の空き状態に基づいて、無効電力QFC(t)の増減制御を行う。
具体的には、連系点105における電圧V(t)が電圧制御開始電圧VFCより高く、且つ、インバータ23の容量に空きがある場合、無効電力調整器253は、電圧V(t)が下がる方向(柱上変圧器101から見て遅相となる方向)に無効電力QFC(t)を増加させる。また、電圧V(t)が電圧制御開始電圧VFC以下であり、且つ、無効電力QFC(t)が0でない場合には、無効電力調整器253は、無効電力QFC(t)を減少させる。
そして、無効電力調整器253は、上述のようにして調整された無効電力QFC(t)を電流演算器254に出力する。
電流演算器254、インバータ出力電流調整器255、増幅器256及び信号変換部257は、太陽光発電装置1内の電流演算器134、インバータ出力電流調整器135、増幅器136及び信号変換部137(図3)とそれぞれ同じ構成であり、同様の動作を行う。それゆえ、ここでは、これらの構成の説明は省略する。
[電圧V(t)の上昇抑制制御の動作原理]
次に、本実施形態の分散型電源システム10において、連系点105における電圧V(t)の上昇抑制制御の動作原理について説明する。
図1に示す配電網システム100において、連系点105における電圧V(t)の変化量ΔVは、ΔV≒[rΔP+xΔQ]/Vで表される。なお、この式中の「r」及び「x」は、それぞれ、連系点105から電力供給側を見た際の配電網の抵抗及びリアクタンスであり、ΔP及びΔQは、連系点105に供給される有効電力Pの変化量及び無効電力Qの変化量である。それゆえ、連系点105における電圧V(t)の変化量ΔVは、各住宅側から連系点105に供給する無効電力Q及び有効電力Pを変化させることにより調整することができる。
本実施形態の分散型電源システム10における電圧上昇時の制御では、一方の分散型電源においてインバータの容量に空きがある場合には、まず、無効電力Qを連系点105に出力して電圧V(t)を下げる制御(以下、無効電力制御という)を行う。次いで、無効電力制御により電圧V(t)が所定範囲内に収まらない場合には、連系点105に出力される発電出力を低減して電圧V(t)を下げる制御(以下、出力抑制制御という)を行う。また、一方の分散型電源においてインバータの容量に空きがない場合には、出力抑制制御のみを行う。そして、一方の分散型電源による上述の電圧制御で電圧V(t)が所定範囲内に収まらない場合には、他方の分散型電源により、無効電力制御及び/または出力抑制制御を行う。
ただし、上記電圧制御を行う際、各住宅の分散型電源システム10全体の発電量(発電出力)をできるかぎり抑制せずに(ΔPを大きくせずに)、連系点105おける電圧V(t)を調整することが望ましい。また、その際、電圧V(t)の調整幅(変化量ΔV)をできる限り大きくすることが好ましい。これらのことを実現するためには、複数の分散型電源のうち無効電力の変化量ΔQをより大きくすることができる分散型電源による電圧制御を優先して行うことが望ましい。
ここで、例えば、太陽光発電装置1のインバータ容量SPVが3.0[kVA](定格出力3.0[kW])であり、燃料電池装置2のインバータ容量SFCが1.0[kVA](定格出力1.0[kW])である場合を考える。
このようなシステムにおいて、電圧制御時に、例えば、太陽光発電装置1の発電出力PPV(t)が2.9[kW]である場合、すなわち、定格出力に対して0.1[kW]の差に相当する容量の空きが太陽光発電装置1のインバータ12にある場合、太陽光発電装置1の無効電力の出力可能量QpPV(t)=約0.77[kvar]となる。一方、例えば、燃料電池装置2の発電出力PFC(t)が0.9[kW]である場合、すなわち、定格出力に対して0.1[kW]の差に相当する容量の空きが燃料電池装置2のインバータ23にある場合、燃料電池装置2の無効電力の出力可能量QpFC(t)=約0.44[kvar]となる。
このように両方の分散型電源のインバータに、定格出力に対して0.1[kW]の差に相当する容量の空きがある場合、インバータ容量の大きい方の分散型電源の方が、無効電力の変化量ΔQをより大きくすることができ、制御できる電圧V(t)の変化量ΔVも大きくすることができる。
また、電圧制御時に、例えば、上述したインバータ容量を有する太陽光発電装置1及び燃料電池装置2において、いずれのインバータの容量にも空きがない場合には、各分散型電源の発電出力Pを減少させる。ここで、例えば、太陽光発電装置1及び燃料電池装置2の発電出力Pをともに0.1[kW]を減少させる場合(ΔP=0.1[kW])を考える。この場合、発電出力Pの減少に伴い発生する太陽光発電装置1及び燃料電池装置2の無効電力の出力可能量Qは、それぞれ約0.77[kvar]及び0.44[kvar]となる。
すなわち、電圧制御時に各分散型電源のインバータの容量に空きがなく、発電出力を減少させる場合、発電出力Pの変化量ΔPに対する無効電力Qの変化量ΔQの割合ΔQ/ΔP(以下、無効電力出力感度という)は、インバータ容量の大きい方の分散型電源の方がより大きくなり、制御できる電圧V(t)の変化量ΔVも大きくなる。
上述のように、インバータ容量が互いに異なる複数の分散型電源からなる分散型電源システムでは、各分散型電源のインバータの容量に空きがある場合及び無い場合のいずれであっても、インバータ容量の大きな方の分散型電源の方から順に電圧制御を行った方が、電圧V(t)の変化量ΔV(電圧制御量)を大きくすることができる。
それゆえ、本実施形態では、太陽光発電装置1の電圧制御開始電圧VPVを、燃料電池装置2の電圧制御開始電圧VFCより小さくして、連系点105における電圧V(t)の上昇抑制制御(無効電力制御及び/または出力抑制制御)を、燃料電池装置2より太陽光発電装置1の方を優先して行う。これにより、分散型電源システム10の発電量(発電出力)をできるかぎり抑制せずに(ΔPを大きくせずに)、連系点105おける電圧V(t)の上昇を抑制することができる。
[電圧制御の処理]
次に、本実施形態の分散型電源システム10における電圧制御の処理動作の一例(処理例1)を、図6及び図7を参照しながら説明する。なお、図6は、太陽光発電装置1による電圧制御の処理手順を示すフローチャートであり、図7は、燃料電池装置2による電圧制御の処理手順を示すフローチャートである。
本実施形態では、上述したように、まず、太陽光発電装置1による電圧制御(無効電力制御及び/または出力抑制制御)を燃料電池装置2より優先して行う。そして、太陽光発電装置1の電圧制御により、連系点105における電圧V(t)が太陽光発電装置1の電圧制御開始電圧VPV以下にならない場合には、燃料電池装置2による電圧制御(無効電力制御及び/または出力抑制制御)を行う。
(1)太陽光発電装置による電圧制御
最初に、図6を参照しながら、太陽光発電装置1による電圧制御の処理手順を説明する。まず、発電出力制御部13は、電圧制御開始電圧VPV(例えば105[V])及び太陽光発電装置1のインバータ容量SPVを記憶する(ステップS1)。これにより、太陽光発電装置1の電圧制御開始電圧VPV及びインバータ容量SPVが発電出力制御部13に設定される。
次いで、発電出力制御部13は、時刻tにおける連系点105(インバータ12の出力端)の電圧V(t)及びI(t)、並びに、太陽光発電セル11から出力される直流電圧Vdc(t)及び直流電流Idc(t)を計測する。そして、発電出力制御部13は、計測した連系点105における電圧V(t)及び電流I(t)から、時刻tにおける太陽光発電装置1の発電出力PPV(t)及び無効電力QPV(t)を算出する(ステップS2)。
また、ステップS2において、発電出力制御部13は、計測した直流電圧Vdc(t)及び直流電流Idc(t)から時刻tにおける太陽光発電装置1の理想出力PiPV(t)を算出する。ただし、電圧制御前であれば、発電出力PPV(t)と理想出力PiPV(t)とは同じ値になる(無効電力QPV(t)=0)。
なお、時刻tにおける発電出力PPV(t)及び無効電力QPV(t)の算出手法は、上述した例に限定されない。例えば、発電出力制御部13が、その内部の有効電力調整器132及び無効電力調整器133の出力をそれぞれ常時モニターしておき、それらの出力値から時刻tにおける発電出力PPV(t)及び無効電力QPV(t)を得るようにしてもよい。
次いで、発電出力制御部13は、時刻tにおける連系点105の電圧V(t)が、電圧制御開始電圧VPVより高いか否かを判定する(ステップS3)。
ここで、電圧V(t)が電圧制御開始電圧VPVより高い場合、ステップS3はYES判定となる。この場合、発電出力制御部13は、インバータ12の容量に空きがあるか否か判定する(ステップS4)。具体的には、発電出力制御部13は、インバータ容量SPVと発電出力PPV(t)とから時刻tにおける無効電力の出力可能量QpPV(t)(=[SPV 2−PPV(t)2]1/2)を算出する。そして、発電出力制御部13は算出した無効電力の出力可能量QpPV(t)が、時刻tにおける無効電力QPV(t)より大きいか否かを判定する。
ステップS4で、インバータ12の容量に空きがある場合(QpPV(t)>QPV(t))、ステップS4はYES判定となる。この場合、発電出力制御部13は、無効電力QPV(t)を所定量、発生(増加)させて電圧V(t)を下げる(ステップS5)。その後、上述したステップS2の処理に戻る。
一方、ステップS4で、インバータ12の容量に空きがない場合(QpPV(t)=QPV(t))、ステップS4はNO判定となる。この場合、発電出力制御部13は、発電出力PPV(t)を所定量、減少させて電圧V(t)を下げる(ステップS6)。その後、上述したステップS2の処理に戻る。
なお、ステップS5における無効電力QPV(t)の増加量及びステップS6における発電出力PPV(t)の減少量はそれぞれ、予め設定された一定量としてもよいし、電圧V(t)の電圧制御開始電圧VPVに対する超過量(V(t)−VPV)に比例して大きくなるようにしてもよい。
また、上記ステップS4〜S6の電圧制御処理は、電圧V(t)が電圧制御開始電圧VPV以下になるまで繰り返し行う。ただし、発電出力PPV(t)が最低値(例えば0)に達するまで上記ステップS4〜S6を繰り返し行っても、電圧V(t)が電圧制御開始電圧VPV(例えば105[V])以下にならない場合、すなわち、太陽光発電装置1での電圧制御量が飽和した場合には、電圧V(t)が燃料電池装置2の電圧制御開始電圧VFC(例えば106[V])を超えた時点で、自動的に、後述する燃料電池装置2の電圧制御処理に移行する。
ここで、再度、ステップS3に戻って、時刻tにおける連系点105の電圧V(t)が電圧制御開始電圧VPV以下である場合、すなわち、電圧V(t)の上昇抑制制御を行う必要のない場合の動作を説明する。
まず、上述したステップS4〜S6の電圧制御処理を行う前の処理について説明する。この場合、発電出力制御部13は、無効電力QPV(t)が0であるか否か判定する(ステップS7)。
上述したステップS4〜S6の電圧制御処理を行う前、無効電力QPV(t)は0であるので、ステップS7はYES判定となる。この場合、発電出力制御部13は、発電出力PPV(t)が理想出力PiPV(t)より小さいか否かを判定する(ステップS9)。ただし、上述のように、ステップS4〜S6の電圧制御処理を行う前、発電出力PPV(t)は理想出力PiPV(t)と同じ値であるので、ステップS9はNO判定となる。その後は、ステップS2の処理に戻る。
次に、上述したステップS4〜S6の電圧制御処理を行った後(電圧制御により電圧V(t)が電圧制御開始電圧VPV以下になった場合)のステップS7以降の処理を説明する。この場合、ステップS7以降の処理では、電圧制御処理で発生した無効電力QPV(t)の増大及び/又は発電出力PPV(t)の減少を解消する処理、すなわち、電圧制御量を減少させる処理を行う。
この場合、まず、発電出力制御部13は、無効電力QPV(t)が0であるか否か判定する(ステップS7)。ここで、無効電力QPV(t)が0である場合(上記ステップS5の処理を行わなかった場合)、ステップS7はYES判定となり、ステップS9の処理に移行する。
一方、ステップS7で、無効電力QPV(t)が0でない場合(上記ステップS5の処理を行った場合)、ステップS7はNO判定となる。この場合、発電出力制御部13は、無効電力QPV(t)を所定量、減少させる(ステップS8)。その後は、ステップS9の処理に移行する。
次いで、発電出力制御部13は、発電出力PPV(t)が理想出力PiPV(t)より小さいか否かを判定する(ステップS9)。ここで、発電出力PPV(t)が理想出力PiPV(t)と同じである場合(上記ステップS6の処理を行わなかった場合)、ステップS9はNO判定となり、ステップS2の処理に戻る。
一方、ステップS9で、発電出力PPV(t)が理想出力PiPV(t)より小さい場合(上記ステップS6の処理を行った場合)、ステップS9はYES判定となる。この場合、発電出力制御部13は、発電出力PPV(t)を所定量、増加させる(ステップS10)。その後は、ステップS2の処理に戻る。
なお、ステップS8における無効電力QPV(t)の低減量及びステップS10における発電出力PPV(t)の増加量はそれぞれ、予め設定された一定量としてもよいし、電圧V(t)と電圧制御開始電圧VPVとの差に応じて変化するようにしてもよい。
上述したステップS2及びS3からステップS7〜S10に繋がる電圧制御量を減少させる処理は、無効電力QPV(t)が0になり、且つ、発電出力PPV(t)が理想出力PiPV(t)になるまで繰り返し行う。本実施形態では、上述のようにして、太陽光発電装置1により連系点105の電圧V(t)を調整する。
(2)燃料電池装置による電圧制御
次に、図7を参照しながら、燃料電池装置2による電圧制御の処理手順を説明する。なお、燃料電池装置2における電圧制御は、上述したように、太陽光発電装置1による電圧制御で連系点105における電圧V(t)が電圧制御開始電圧VPV(例えば105[V])以下にならず、且つ、電圧V(t)が燃料電池装置2の電圧制御開始電圧VFC(例えば106[V])を超えた場合に行う。
まず、発電出力制御部25は、電圧制御開始電圧VFC、並びに、燃料電池装置2のインバータ容量SFC及び定格出力を記憶する(ステップS11)。これにより、電圧制御開始電圧VFC、並びに、燃料電池装置2のインバータ容量SFC及び定格出力が発電出力制御部25に設定される。
次いで、発電出力制御部25は、時刻tにおける連系点105(インバータ23の出力端)の電圧V(t)及び電流I(t)を計測する。そして、発電出力制御部25は、計測した電圧V(t)及び電流I(t)から、時刻tにおける燃料電池装置2の発電出力PFC(t)、無効電力QFC(t)及び理想出力PiFC(t)を算出する(ステップS12)。なお、この際、発電出力制御部25は、燃料電池装置2の定格出力と、電圧V(t)及び電流I(t)から算出される電力負荷PL(t)とのうち小さい方の値を、時刻tにおける理想出力PiFC(t)として選択する。ただし、電圧制御前であれば、発電出力PFC(t)と理想出力PiFC(t)とは同じ値である(無効電力QFC(t)=0)。
なお、時刻tにおける発電出力PFC(t)及び無効電力QFC(t)の算出手法は、上述した例に限定されない。例えば、発電出力制御部25が、その内部の有効電力調整器252及び無効電力調整器253の出力をそれぞれ常時モニターしておき、それらの出力値から時刻tにおける発電出力PFC(t)及び無効電力QFC(t)を得るようにしてもよい。
次いで、発電出力制御部25は、時刻tにおける連系点105の電圧V(t)が、電圧制御開始電圧VFCより高いか否かを判定する(ステップS13)。
ここで、電圧V(t)が電圧制御開始電圧VFCより高い場合、ステップS13はYES判定となる。この場合、発電出力制御部25は、インバータ23の容量に空きがあるか否か判定する(ステップS14)。具体的には、発電出力制御部25は、インバータ容量SFCと発電出力PFC(t)とから時刻tにおける無効電力の出力可能量QpFC(t)(=[SFC 2−PFC(t)2]1/2)を算出する。そして、発電出力制御部25は、算出した無効電力の出力可能量QpFC(t)が、時刻tにおける無効電力QFC(t)より大きいか否かを判定する。
ステップS14で、インバータ23の容量に空きがある場合(QpFC(t)>QFC(t))、ステップS14はYES判定となる。この場合、発電出力制御部25は、無効電力QFC(t)を所定量、発生(増加)させて電圧V(t)を下げる(ステップS15)。その後、上述したステップS12の処理に戻る。
一方、ステップS14で、インバータ23の容量に空きがない場合(QpFC(t)=QFC(t))、ステップS14はNO判定となる。この場合、発電出力制御部25は、発電出力PFC(t)を所定量、減少させて電圧V(t)を下げる(ステップS16)。その後、上述したステップS12の処理に戻る。
なお、ステップS15における無効電力QFC(t)の増加量及びステップS16における発電出力PFC(t)の減少量はそれぞれ、予め設定された一定量としてもよいし、電圧V(t)の電圧制御開始電圧VFCに対する超過量(V(t)−VFC)に比例して大きくなるようにしてもよい。
また、上記ステップS14〜S16の電圧制御処理は、電圧V(t)が電圧制御開始電圧VFC以下になるまで繰り返し行う。ただし、上記ステップS14〜S16の電圧制御処理は、発電出力PFC(t)が最低値(ターンダウン電力PdFC)に達するまで可能とする。
ここで、再度、ステップS13に戻って、時刻tにおける連系点105の電圧V(t)が電圧制御開始電圧VFC以下である場合、すなわち、電圧V(t)の上昇抑制制御を行う必要のない場合の動作を説明する。
まず、上述したステップS14〜S16の電圧制御処理を行う前の処理について説明する。この場合、発電出力制御部25は、無効電力QFC(t)が0であるか否か判定する(ステップS17)。
上述したステップS14〜S16の電圧制御処理を行う前、無効電力QFC(t)は0であるので、ステップS17はYES判定となる。この場合、発電出力制御部25は、発電出力PFC(t)が理想出力PiFC(t)より小さいか否かを判定する(ステップS19)。ただし、上述のように、ステップS14〜S16の電圧制御処理を行う前、発電出力PFC(t)は理想出力PiFC(t)と同じ値であるので、ステップS19はNO判定となる。その後は、ステップS12の処理に戻る。
次に、上述したステップS14〜S16の電圧制御処理を行った後のステップS17以降の処理を説明する。この場合、ステップS17以降の処理では、電圧制御処理で発生した無効電力QFC(t)の増大及び/又は発電出力PFC(t)の減少を解消する処理、すなわち、電圧制御量を減少させる処理を行う。
この場合、まず、発電出力制御部25は、無効電力QFC(t)が0であるか否か判定する(ステップS17)。ここで、無効電力QFC(t)が0である場合(上記ステップS15の処理を行わなかった場合)、ステップS17はYES判定となり、ステップS19の処理に移行する。
一方、ステップS17で、無効電力QFC(t)が0でない場合(上記ステップS15の処理を行った場合)、ステップS17はNO判定となる。この場合、発電出力制御部25は、無効電力QFC(t)を所定量、減少させる(ステップS18)。その後は、ステップS19の処理に移行する。
次いで、発電出力制御部25は、発電出力PFC(t)が理想出力PiFC(t)より小さいか否かを判定する(ステップS19)。ここで、発電出力PFC(t)が理想出力PiFC(t)と同じである場合(上記ステップS16の処理を行わなかった場合)、ステップS19はNO判定となり、ステップS12の処理に戻る。
一方、ステップS19で、発電出力PFC(t)が理想出力PiFC(t)より小さい場合(上記ステップS16の処理を行った場合)、ステップS19はYES判定となる。この場合、発電出力制御部25は、発電出力PFC(t)を所定量、増加させる(ステップS20)。その後は、ステップS12の処理に戻る。
なお、ステップS18における無効電力QFC(t)の低減量及びステップS20における発電出力PFC(t)の増加量はそれぞれ、予め設定された一定量としてもよいし、電圧V(t)と電圧制御開始電圧VFCとの差に応じて変化するようにしてもよい。
上述したステップS12及びS13からステップS17〜S20に繋がる電圧制御量を減少させる処理は、無効電力QFC(t)が0になり、且つ、発電出力PFC(t)が理想出力PiFC(t)となるまで繰り返し行う。本実施形態では、上述のようにして、燃料電池装置2により連系点105の電圧V(t)を調整する。
以上説明したように、本実施形態では、各住宅が接続される低圧配電線102の連系点105における電圧V(t)の上昇抑制制御を行う際には、インバータ容量のより大きい太陽光発電装置1による電圧制御(無効電力制御及び/または出力抑制制御)を燃料電池装置2より優先して行う。それゆえ、本実施形態では、分散型電源システム10の発電量(発電出力)をできるかぎり抑制せずに、連系点105の電圧V(t)を調整することができる。また、この結果、本実施形態の分散型電源システム10では、各住宅の余剰電力販売量が増大し(余剰電力販売機会損失が抑制され)、需要家の経済的価値を高めることができる。
なお、本実施形態では、インバータ容量が互いに異なる2つの分散型電源からなる分散型電源システム10を各住宅に設置する例を説明したが、本発明はこれに限定されず、インバータ容量が互いに異なる3つ以上の分散型電源からなる分散型電源システムに対しても本発明は同様に適用可能である。そのようなシステムにおいても、インバータ容量の大きい方から電圧制御開始電圧を順次小さくすることにより、インバータ容量の大きな分散型電源から順に上述した電圧制御を行うことができる。
<2.第2の実施形態>
上記第1の実施形態では、各分散型電源において、1つの電圧制御開始電圧を設定する例を説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、各分散型電源において、複数の電圧制御開始電圧を設定してもよい。第2の実施形態では、その一例を説明する。なお、本実施形態の分散型電源システムは、上記第1の実施形態の分散型電源システム(図1〜5)と同様にして構成することができる。それゆえ、ここでは、分散型電源システムの構成の説明は省略する。
[電圧制御開始電圧の設定及び電圧制御の動作原理]
まず、本実施形態における複数の電圧制御開始電圧の設定手法及び電圧V(t)の上昇抑制制御の動作原理について説明する。なお、本実施形態では、太陽光発電装置1及び燃料電池装置2のそれぞれにおいて、2つの電圧制御開始電圧を設定する例を説明する。また、以下に説明する例では、太陽光発電装置1のインバータ容量SPV及び定格出力をそれぞれ3.0[kVA]及び3.0[kW]とし、燃料電池装置2のインバータ容量SFC及び定格出力をそれぞれ1.0[kVA]及び1.0[kW]とする。
本実施形態では、例えば、太陽光発電装置1の発電出力PPV(t)が2.0〜3.0[kW](第1発電出力範囲)であるときの電圧制御開始電圧をVPV1=105.0[V]とし、発電出力PPV(t)が0〜1.99[kW](第2発電出力範囲)であるときの電圧制御開始電圧をVPV2=106.0[V]とする。一方、燃料電池装置2の発電出力PFC(t)が0.7〜1.0[kW](第3発電出力範囲)であるときの電圧制御開始電圧をVFC1=105.5[V]とし、発電出力PFC(t)が0.3(ターンダウン電力)〜0.69[kW](第4発電出力範囲)であるときの電圧制御開始電圧をVFC2=106.5[V]とする。
すなわち、本実施形態では、各分散型電源の発電出力に応じて設定された4つの電圧制御開始電圧(VPV1、VPV2、VFC1及びVFC2)の間に、
VPV1<VFC1<VPV2<VFC2
という関係が成立するように、各電圧制御開始電圧を設定する。
本実施形態において、4つの電圧制御開始電圧(VPV1、VPV2、VFC1及びVFC2)の間に、VPV1<VFC1<VPV2<VFC2の大小関係を持たせる理由は次の通りである。上記第1の実施形態で説明したように、電圧制御時に発電出力Pを減少させる場合、発電出力Pの変化量ΔPに対する無効電力Q(出力可能量)の変化量ΔQの割合ΔQ/ΔP(無効電力出力感度)は、定格出力付近ではインバータ容量の大きい方の分散型電源の方がより大きくなる。ここで、分散型電源のインバータ容量が3.0[kVA](定格出力3.0[kW])及び1.0[kVA](定格出力1.0[kW])である場合の、有効電力(発電出力)Pの変化に対する無効電力の出力可能量Q及び無効電力の変化量ΔQの変化を下記表1及び2にそれぞれ示す。
なお、上記表において、例えば表1中の発電出力P=2.8[kW]の行に記載の無効電力の変化量ΔQ=0.308918は、発電出力P=2.9[kW]時の無効電力の出力可能量Qと、発電出力P=2.8[kW]時の無効電力の出力可能量Qとの差である。
表1及び2から明らかなように、無効電力Qの変化量ΔQは、定格出力付近で最大となり、発電出力Pの低下とともに小さくなる。すなわち、発電出力Pの低くなるほど、無効電力出力感度ΔQ/ΔPが小さくなる。また、定格出力付近での無効電力出力感度ΔQ/ΔPはインバータ容量の大きな分散型電源の方が大きくなる。
上述のように、分散型電源システム10の発電出力をできるかぎり抑制せずに連系点105における電圧V(t)の制御を行うためには、無効電力の変化量ΔQ(無効電力出力感度ΔQ/ΔP)をより大きくすることのできる分散型電源による電圧制御を優先して行うことが好ましい。それゆえ、各分散型電源を定格出力付近で運用している場合には、無効電力出力感度ΔQ/ΔPのより大きな分散型電源、すなわち、インバータ容量の大きな方の分散型電源による電圧制御を優先して行うことが望ましい。
そこで、本実施形態のように、4つの電圧制御開始電圧(VPV1、VPV2、VFC1及びVFC2)の間に、VPV1<VFC1<VPV2<VFC2の大小関係を持たせると、次の動作(a)〜(d)の優先順で、電圧制御が行われる。
(a)太陽光発電装置1の発電出力PPV(t)が2.0〜3.0[kW]の範囲(第1発電出力範囲)内であり、且つ、連系点105における電圧V(t)が太陽光発電装置1の電圧制御開始電圧VPV1より大きい場合には太陽光発電装置1により電圧制御を行う。
(b)燃料電池装置2の発電出力PFC(t)が0.7〜1.0[kW]の範囲(第3発電出力範囲)内であり、且つ、連系点105における電圧V(t)が燃料電池装置2の電圧制御開始電圧VFC1より大きい場合には燃料電池装置2により電圧制御を行う。
(c)太陽光発電装置1の発電出力PPV(t)が0〜1.99[kW]の範囲(第2発電出力範囲)内であり、且つ、連系点105における電圧V(t)が太陽光発電装置1の電圧制御開始電圧VPV2より大きい場合には太陽光発電装置1により電圧制御を行う。
(d)燃料電池装置2の発電出力PFC(t)が0.3〜0.69[kW]の範囲(第4発電出力範囲)内であり、且つ、連系点105における電圧V(t)が燃料電池装置2の電圧制御開始電圧VFC2より大きい場合には燃料電池装置2により電圧制御を行う。
ここで、例えば、2つの分散型電源がともに定格出力付近で運用されている場合(インバータの容量に空きが無い場合)を考える。この場合、まず、インバータ容量の大きい太陽光発電装置1での電圧制御(出力抑制制御)が最優先で行われる(上記動作(a))。なお、動作(a)では、出力抑制制御の処理毎に発電出力が低下するので、処理毎に無効電力出力感度ΔQ/ΔPが低下して出力抑制制御による電圧抑制効果が小さくなる。
そして、上記動作(a)の電圧制御により電圧V(t)が所定値以下にならない場合には、定格出力付近で運用されている燃料電池装置2の無効電力出力感度ΔQ/ΔPの方が太陽光発電装置1のそれより大きくなるので、電圧制御(出力抑制制御)を燃料電池装置2による制御に切り替える(上記動作(b))。また、動作(b)においても、出力抑制制御の処理毎に発電出力が低下するので、処理毎に無効電力出力感度ΔQ/ΔPが低下して出力抑制制御による電圧抑制効果が小さくなる。
次いで、上記動作(b)の電圧制御により電圧V(t)が所定値以下にならない場合には、インバータ容量の大きい太陽光発電装置1による電圧制御に再度切替えて、無効電力出力感度ΔQ/ΔPの値をある程度の大きさに維持する(上記動作(c))。すなわち、上記動作(c)では、インバータ容量の大きい太陽光発電装置1による電圧制御に切替えて、出力抑制制御による電圧抑制効果の大きさをある程度維持する。そして、太陽光発電装置1による電圧制御量が飽和すれば、燃料電池装置2による電圧制御に切り替える(上記動作(d))。
すなわち、本実施形態の電圧制御では、4つの電圧制御開始電圧(VPV1、VPV2、VFC1及びVFC2)の間に、VPV1<VFC1<VPV2<VFC2の大小関係を持たせることにより、発電出力に応じて無効電力出力感度ΔQ/ΔPが高くなる分散型電源を適宜選択しながら電圧制御を行うことができる。それゆえ、本実施形態では、出力抑制制御による電圧抑制効果を効率よく発生させながら電圧制御を行うことができるので、発電出力を一層抑制せずに、連系点105における電圧V(t)を調整することができる。
[電圧制御の処理]
次に、本実施形態の分散型電源システム10における電圧制御の一処理例(処理例2)を、図8及び図9を参照しながら説明する。なお、図8は、太陽光発電装置1による電圧制御の処理手順を示すフローチャートであり、図9は、燃料電池装置2による電圧制御の処理手順を示すフローチャートである。なお、図8及び図9中に示す(a)〜(d)の処理は、それぞれ、上述した動作(a)〜(d)の処理に対応する。
(1)太陽光発電装置による電圧制御
最初に、図8を参照しながら、太陽光発電装置1による電圧制御の処理手順を説明する。まず、太陽光発電装置1の発電出力制御部13は、2つの電圧制御開始電圧VPV1(=105.0[V])及びVPV2(=106.0[V])、第1発電出力範囲の下限値PPV1(=2.0[kW])、第2発電出力範囲の下限値PPV2(=0[kW])、並びに、太陽光発電装置1のインバータ容量SPVを記憶する(ステップS31)。これにより、2つの電圧制御開始電圧VPV1及びVPV2、第1発電出力範囲の下限値PPV1、第2発電出力範囲の下限値PPV2、並びに、インバータ容量SPVが、発電出力制御部13に設定される。
次いで、発電出力制御部13は、時刻tにおける連系点105(インバータ12の出力端)の電圧V(t)及び電流I(t)、並びに、太陽光発電セル11から出力される直流電圧Vdc(t)及び直流電流Idc(t)を計測する。そして、発電出力制御部13は、計測した電圧V(t)及び電流I(t)から、時刻tにおける太陽光発電装置1の発電出力PPV(t)及び無効電力QPV(t)を算出する(ステップS32)。
また、ステップS32において、発電出力制御部13は、計測した直流電圧Vdc(t)及び直流電流Idc(t)から時刻tにおける太陽光発電装置1の理想出力PiPV(t)を算出する。ただし、電圧制御前であれば、発電出力PPV(t)と理想出力PiPV(t)とは同じ値になる(無効電力QPV(t)=0)。
なお、時刻tにおける発電出力PPV(t)及び無効電力QPV(t)の算出手法は、上述した例に限定されない。例えば、発電出力制御部13が、その内部の有効電力調整器132及び無効電力調整器133の出力をそれぞれ常時モニターしておき、それらの出力値から時刻tにおける発電出力PPV(t)及び無効電力QPV(t)を得るようにしてもよい。
次いで、発電出力制御部13は、時刻tにおける連系点105のV(t)が、電圧制御開始電圧VPV1より大きいか否かを判定する(ステップS33)。
ここで、電圧V(t)が電圧制御開始電圧VPV1より大きい場合、ステップS33はYES判定となる。この場合、発電出力制御部13は、インバータ12の容量に空きがあるか否か判定する(ステップS34)。具体的には、発電出力制御部13は、インバータ容量SPVと発電出力PPV(t)とから時刻tにおける無効電力の出力可能量QpPV(t)(=[SPV 2−PPV(t)2]1/2)を算出する。そして、発電出力制御部13は、算出した無効電力の出力可能量QpPV(t)が、時刻tにおける無効電力QPV(t)より大きいか否かを判定する。
ステップS34で、インバータ12の容量に空きがある場合(QpPV(t)>QPV(t))、ステップS34はYES判定となる。この場合、発電出力制御部13は、無効電力QPV(t)を所定量、発生(増加)させて電圧V(t)を下げる(ステップS35)。その後、上述したステップS32の処理に戻る。
一方、ステップS34で、インバータ12の容量に空きがない場合(QpPV(t)=QPV(t))、ステップS34はNO判定となる。この場合、発電出力制御部13は、発電出力PPV(t)が第1発電出力範囲の下限値PPV1より大きいか否かを判定する(ステップS36)。
ここで、発電出力PPV(t)が第1発電出力範囲の下限値PPV1より大きい場合、ステップS36はYES判定となる。この場合、発電出力制御部13は、発電出力PPV(t)を所定量、減少させて電圧V(t)を下げる(ステップS37)。その後、上述したステップS32の処理に戻る。なお、上記ステップS36及び37の処理は、電圧V(t)≦VPV1または発電出力PPV(t)≦PPV1となるまで繰り返される。
一方、ステップS36で、発電出力PPV(t)が第1発電出力範囲の下限値PPV1以下である場合、ステップS36はNO判定となる。この場合、発電出力制御部13は、電圧V(t)が、電圧制御開始電圧VPV2より大きいか否かを判定する(ステップS38)。
ここで、電圧V(t)が電圧制御開始電圧VPV2以下である場合、ステップS38はNO判定となる。この場合、発電出力制御部13は、発電出力PPV(t)の抑制は行わず、上述したステップS32の処理に戻る。なお、[太陽光発電装置1の電圧制御開始電圧VPV2]>[燃料電池装置2の電圧制御開始電圧VFC1]の関係があるので、ステップS38で電圧V(t)≦VPV2である期間(NO判定の間)は、燃料電池装置2で電圧制御が行われる。
一方、ステップS38で、電圧V(t)が電圧制御開始電圧VPV2より高い場合、ステップS38はYES判定となる。この場合、発電出力制御部13は、発電出力PPV(t)が第2発電出力範囲の下限値PPV2より大きいか否かを判定する(ステップS39)。
ここで、発電出力PPV(t)が第2発電出力範囲の下限値PPV2より大きい場合、ステップS39はYES判定となる。この場合、発電出力制御部13は、発電出力PPV(t)を所定量、減少させて電圧V(t)を下げる(ステップS40)。その後、上述したステップS32の処理に戻る。なお、上記ステップS40の処理は、発電出力PPV(t)=PPV2となるまで繰り返される。
一方、ステップS39で、発電出力PPV(t)が第2発電出力範囲の下限値PPV2以下である(同じ)場合、ステップS39はNO判定となる。この場合、上述したステップS32の処理に戻る。また、この際、電圧V(t)>[燃料電池装置2の電圧制御開始電圧VFC2]となれば、燃料電池装置2で電圧制御が開始される。
なお、ステップS35における無効電力QPV(t)の増加量並びにステップS37及びS40における発電出力PPV(t)の減少量はそれぞれ、予め設定された一定量としてもよいし、電圧V(t)の電圧制御開始電圧に対する超過量に比例して大きくなるようにしてもよい。
ここで、再度、ステップS33に戻って、時刻tにおける連系点105の電圧V(t)が電圧制御開始電圧VPV1以下である場合、すなわち、電圧V(t)の上昇抑制制御を行う必要のない場合の動作を説明する。
ステップS41以降の処理は、主に、太陽光発電装置1による電圧制御処理で発生した無効電力QPV(t)の発生及び/又は発電出力PPV(t)の抑制を解消する処理、すなわち、電圧制御量を減少させる処理である。本実施形態で行う図8中のステップS41〜S44の処理は、上記第1の実施形態(図6)で説明したステップS7〜S10の処理とそれぞれ同じである。それゆえ、ここでは、その説明を省略する。本実施形態では、上述のようにして、太陽光発電装置1により連系点105の電圧V(t)を調整する。
(2)燃料電池装置による電圧制御
次に、図9を参照しながら、燃料電池装置2による電圧制御の処理手順を説明する。まず、燃料電池装置2の発電出力制御部25は、2つの電圧制御開始電圧VFC1(=105.5[V])及びVFC2(=106.5[V])、第3発電出力範囲の下限値PFC1(=0.7[kW])、第4発電出力範囲の下限値PFC2(=0.3[kW])、並びに、燃料電池装置2のインバータ容量SFC及び定格出力を記憶する(ステップS51)。これにより、2つの電圧制御開始電圧VFC1及びVFC2、第3発電出力範囲の下限値PFC1、第4発電出力範囲の下限値PFC2、並びに、燃料電池装置2のインバータ容量SPC及び定格出力が、発電出力制御部25に設定される。
次いで、発電出力制御部25は、時刻tにおける連系点105(インバータ23の出力端)の電圧V(t)及び電流I(t)を計測する。そして、発電出力制御部25は、計測した電圧V(t)及び電流I(t)から時刻tにおける燃料電池装置2の発電出力PFC(t)、無効電力QFC(t)及び理想出力PiFC(t)を算出する(ステップS52)。なお、この際、発電出力制御部25は、燃料電池装置2の定格出力と、電圧V(t)及び電流I(t)から算出される電力負荷PL(t)とのうち小さい方の値を、時刻tにおける理想出力PiFC(t)として選択する。また、電圧制御前であれば、発電出力PFC(t)と理想出力PiFC(t)とは同じ値になる(無効電力QFC(t)=0)。
なお、時刻tにおける発電出力PFC(t)及び無効電力QFC(t)の算出手法は、上述した例に限定されない。例えば、発電出力制御部25が、その内部の有効電力調整器252及び無効電力調整器253の出力をそれぞれ常時モニターしておき、それらの出力値から時刻tにおける発電出力PFC(t)及び無効電力QFC(t)を得るようにしてもよい。
次いで、発電出力制御部25は、時刻tにおける電圧V(t)が、電圧制御開始電圧VFC1より高いか否かを判定する(ステップS53)。
ここで、電圧V(t)が電圧制御開始電圧VFC1より高い場合、ステップS53はYES判定となる。この場合、発電出力制御部25は、インバータ23の容量に空きがあるか否か判定する(ステップS54)。具体的には、発電出力制御部25は、インバータ容量SFCと発電出力PFC(t)とから時刻tにおける無効電力の出力可能量QpFC(t)(=[SFC 2−PFC(t)2]1/2)を算出する。そして、発電出力制御部25は、算出した無効電力の出力可能量QpFC(t)が、時刻tにおける無効電力QFC(t)より大きいか否かを判定する。
ステップS54で、インバータ23の容量に空きがある場合(QpFC(t)>QFC(t))、ステップS54はYES判定となる。この場合、発電出力制御部25は、無効電力QFC(t)を所定量、発生(増加)させて電圧V(t)を下げる(ステップS55)。その後、上述したステップS52の処理に戻る。
一方、ステップS54で、インバータ23の容量に空きがない場合(QpFC(t)=QFC(t))、ステップS54はNO判定となる。この場合、発電出力制御部25は、発電出力PFC(t)が第3発電出力範囲の下限値PFC1より大きいか否かを判定する(ステップS56)。
ここで、発電出力PFC(t)が第3発電出力範囲の下限値PFC1より大きい場合、ステップS56はYES判定となる。この場合、発電出力制御部25は、発電出力PFC(t)を所定量、減少させて電圧V(t)を下げる(ステップS57)。その後、上述したステップS52の処理に戻る。なお、上記ステップS56及び57の処理は、電圧V(t)≦VFC1または発電出力PFC(t)≦PFC1となるまで繰り返される。
一方、ステップS56で、発電出力PFC(t)が第3発電出力範囲の下限値PFC1以下である場合、ステップS56はNO判定となる。この場合、発電出力制御部25は、電圧V(t)が、電圧制御開始電圧VFC2より高いか否かを判定する(ステップS58)。
ここで、電圧V(t)が、電圧制御開始電圧VFC2以下である場合、ステップS58はNO判定となる。この場合、発電出力制御部25は、発電出力PFC(t)の抑制を行わず、上述したステップS52の処理に戻る。
一方、ステップS58で、電圧V(t)が、電圧制御開始電圧VFC2より高い場合、ステップS58はYES判定となる。この場合、発電出力制御部25は、発電出力PFC(t)が第4発電出力範囲の下限値PFC2より大きいか否かを判定する(ステップS59)。
ここで、発電出力PFC(t)が第4発電出力範囲の下限値PFC2より大きい場合、ステップS59はYES判定となる。この場合、発電出力制御部25は、発電出力PFC(t)を所定量、減少させて電圧V(t)を下げる(ステップS60)。その後、上述したステップS52の処理に戻る。なお、上記ステップS60の処理は、発電出力PFC(t)≦PFC2となるまで繰り返される。
一方、ステップS59で、発電出力PFC(t)が第4発電出力範囲の下限値PFC2以下である場合、ステップS59はNO判定となる。この場合、上述したステップS52の処理に戻る。
なお、ステップS55における無効電力の増加量並びにステップS57及びS60における発電出力の減少量はそれぞれ、予め設定された一定量としてもよいし、電圧V(t)の電圧制御開始電圧に対する超過量に比例して大きくなるようにしてもよい。
ここで、再度、ステップS53に戻って、時刻tにおける連系点105の電圧V(t)が電圧制御開始電圧VFC1以下である場合、すなわち、電圧V(t)の上昇抑制制御を行う必要のない場合の動作を説明する。
ステップS61以降の処理は、主に、燃料電池装置2による電圧制御処理で発生した無効電力QFC(t)の発生及び/又は発電出力PFC(t)の抑制を解消する処理、すなわち、電圧制御量を減少させる処理である。本実施形態で行う図9中のステップS61〜S64の処理は、上記第1の実施形態(図7)で説明したステップS17〜S20の処理とそれぞれ同じである。それゆえ、ここでは、その説明を省略する。本実施形態では、上述のようにして、燃料電池装置2により連系点105の電圧V(t)を調整する。
上述した本実施形態の電圧制御手法では、発電出力に応じて無効電力出力感度ΔQ/ΔPが高い分散型電源を適宜選択しながら電圧制御を行うことができる。それゆえ、本実施形態の分散型電源システムにおいても、発電出力をより一層抑制せずに電圧制御を行うことができる。この結果、本実施形態においても、各住宅の余剰電力販売量が増大し(余剰電力販売機会損失が抑制され)、需要家の経済的価値を高めることができる。
なお、本実施形態では、各分散型電源にそれぞれ、2つ電圧制御開始電圧を設定する例を説明したが、本発明はこれに限定されず、例えば分散型電源の容量、制御性能等に応じて、電圧制御開始電圧の数をさらに増やしてもよい。この場合、無効電力出力感度の優先順位の設定精度がより向上し、発電出力をより一層抑制せずに電圧調整を行うことができる。
<3.第3の実施形態>
上記第1及び第2の実施形態では、複数の分散型電源が互いに独立して電圧制御を行う例を説明したが、本発明はこれに限定されず、複数の分散型電源が、各自の運用状況に関する情報を共有して連動して電圧制御を行ってもよい。第3の実施形態では、その一構成例について説明する。
[分散型電源システムの構成]
図10に、第3の実施形態に係る分散型電源システムの概略構成を示す。なお、図10において、上記第1の実施形態の分散型電源システム(図2及び4)と同じ構成には同じ符号を付して示す。また、図10では、説明を簡略化するため、燃料電池装置2内の水素改質器21及び排熱回収部24は省略する。さらに、本実施形態では、上記第1及び第2の実施形態と同様に、太陽光発電装置1と燃料電池装置2とを併用した分散型電源システムが各住宅に設置されている例について説明する。
本実施形態の分散型電源システム30は、第1及び第2の実施形態と同様に、主に、太陽光発電装置1と、燃料電池装置2と、負荷3とで構成される。そして、太陽光発電装置1は、太陽光発電セル11、インバータ12及び発電出力制御部13を含み、燃料電池装置2は、燃料電池セル22、インバータ23及び発電出力制御部25を含む。
また、本実施形態では、太陽光発電装置1の発電出力制御部13と、燃料電池装置2の発電出力制御部25とを通信線31で接続する。そして、本実施形態では、太陽光発電装置1及び燃料電池装置2は、通信線31を介して、各自の運用状況に関する情報を交換する。
具体的には、例えば、太陽光発電装置1は、自身の、インバータ容量SPV、時刻tにおける発電出力PPV(t)、無効電力QPV(t)、理想出力PiPV(t)、及び、インバータ12の容量の空き状態等の情報を燃料電池装置2に送信する。そして、燃料電池装置2の発電出力制御部25は、太陽光発電装置1の運用状況に関するそれらの情報を記憶する。
一方、燃料電池装置2は、自身の、インバータ容量SFC、定格出力、時刻tにおける発電出力PFC(t)、無効電力QFC(t)、理想出力PiFC(t)、インバータ23の容量の空き状態、及び、ターンダウン電力等の情報を太陽光発電装置1に送信する。そして、太陽光発電装置1の発電出力制御部13は、燃料電池装置2の運用状況に関するそれらの情報を記憶する。
本実施形態では、太陽光発電装置1の発電出力制御部13と、燃料電池装置2の発電出力制御部25とを通信線31で接続し、各自の運用状況に関する情報を互いに共有すること以外は、上記第1の実施形態と同様の構成である。なお、本実施形態では、太陽光発電装置1及び燃料電池装置2間で運用状況に関する情報を共有(交換)して電圧制御を行うので、電圧制御開始電圧値は1つ(Vth)だけ用意すればよい。
[電圧制御の処理動作]
次に、本実施形態の分散型電源システム30における電圧制御の一処理例(処理例3)を、図11を参照しながら説明する。なお、図11は、本実施形態の分散型電源システム30における電圧制御の処理手順を示すフローチャートである。
まず、太陽光発電装置1及び燃料電池装置2の各発電出力制御部は、電圧制御開始電圧Vth(例えば106[V])、太陽光発電装置1のインバータ容量SPV(例えば3.0[kVA])、並びに、燃料電池装置2のインバータ容量SFC(例えば1.2[kVA])及び定格出力(例えば1.0[kW])を記憶する(ステップS71)。これにより、太陽光発電装置1及び燃料電池装置2の各発電出力制御部に、電圧制御開始電圧Vth、太陽光発電装置1のインバータ容量SPV、並びに、燃料電池装置2のインバータ容量SFC及び定格出力が設定される。
次いで、太陽光発電装置1及び燃料電池装置2の各発電出力制御部は、連系点105における時刻tの電圧V(t)及び電流I(t)を計測する(ステップS72)。
また、ステップS72において、太陽光発電装置1の発電出力制御部13は、計測した連系点105における電圧V(t)及び電流I(t)から、時刻tにおける太陽光発電装置1の発電出力PPV(t)及び無効電力QPV(t)を算出する。また、この際、太陽光発電装置1の発電出力制御部13は、計測した直流電圧Vdc(t)及び直流電流Idc(t)から時刻tにおける太陽光発電装置1の理想出力PiPV(t)を算出する。そして、太陽光発電装置1の発電出力制御部13は、算出した発電出力PPV(t)、無効電力QPV(t)及び理想出力PiPV(t)を記憶するとともに、通信線31を介して、燃料電池装置2の発電出力制御部25に送信する。
なお、時刻tにおける太陽光発電装置1の発電出力PPV(t)及び無効電力QPV(t)の算出手法は、上述した例に限定されない。例えば、太陽光発電装置1の発電出力制御部13が、その内部の有効電力調整器132及び無効電力調整器133の出力をそれぞれ常時モニターしておき、それらの出力値から時刻tにおける発電出力PPV(t)及び無効電力QPV(t)を得るようにしてもよい。
さらに、ステップS72において、燃料電池装置2の発電出力制御部25は、計測した連系点105における電圧V(t)及び電流I(t)から、時刻tにおける燃料電池装置2の発電出力PFC(t)、無効電力QFC(t)及び理想出力PiFC(t)を算出する。なお、この際、発電出力制御部25は、インバータ23の定格出力と、電圧V(t)及び電流I(t)から算出される電力負荷PL(t)とのうち小さい方の値を、時刻tにおける理想出力PiFC(t)として選択する。そして、燃料電池装置2の発電出力制御部25は、算出した発電出力PFC(t)、無効電力QFC(t)及び理想出力PiFC(t)を記憶するとともに、通信線31を介して、太陽光発電装置1の発電出力制御部13に送信する。
なお、時刻tにおける燃料電池装置2の発電出力PFC(t)及び無効電力QFC(t)の算出手法は、上述した例に限定されない。例えば、燃料電池装置2の発電出力制御部25が、その内部の有効電力調整器252及び無効電力調整器253の出力をそれぞれ常時モニターしておき、それらの出力値から時刻tにおける発電出力PFC(t)及び無効電力QFC(t)を得るようにしてもよい。
上記ステップ72の動作により、太陽光発電装置1及び燃料電池装置2間で、時刻tにおける連系点105の電圧V(t)、太陽光発電装置1の発電出力PPV(t)及び無効電力QPV(t)、太陽光発電装置1の理想出力PiPV(t)、燃料電池装置2の発電出力PFC(t)及び無効電力QFC(t)、並びに、燃料電池装置2の理想出力PiFC(t)の情報が共有される。なお、電圧制御前であれば、太陽光発電装置1の発電出力PPV(t)と理想出力PiPV(t)とは同じ値になり(QPV(t)=0)、燃料電池装置2の発電出力PFC(t)と理想出力PiFC(t)とは同じ値になる(QFC(t)=0)。
次いで、太陽光発電装置1及び燃料電池装置2の各発電出力制御部は、時刻tにおける連系点105の電圧V(t)が、電圧制御開始電圧Vthより高いか否かを判定する(ステップS73)。
ここで、電圧V(t)が電圧制御開始電圧Vthより高い場合、ステップS73はYES判定となる。この場合、太陽光発電装置1及び燃料電池装置2の各発電出力制御部は、太陽光発電装置1のインバータ12の容量に空きがあるか否か判定する(ステップS74)。具体的には、各発電出力制御部は、インバータ容量SPVと発電出力PPV(t)とから時刻tにおける無効電力の出力可能量QpPV(t)(=[SPV 2−PPV(t)2]1/2)を算出する。そして、各発電出力制御部は、算出した太陽光発電装置1の無効電力の出力可能量QpPV(t)が、時刻tにおける無効電力QPV(t)より大きいか否かを判定する。
ステップS74で、太陽光発電装置1のインバータの容量に空きがある場合(QpPV(t)>QPV(t))、ステップS74はYES判定となる。この場合、太陽光発電装置1の発電出力制御部13は、無効電力QPV(t)を所定量、発生(増加)させて電圧V(t)を下げる(ステップS75)。その後、上述したステップS72の処理に戻る。
一方、ステップS74で、太陽光発電装置1のインバータの容量に空きがない場合(QpPV(t)=QPV(t))、ステップS74はNO判定となる。この場合、各発電出力制御部は、燃料電池装置2のインバータ23の容量に空きがあるか否か判定する(ステップS76)。具体的には、各発電出力制御部は、インバータ容量SFCと発電出力PFC(t)とから時刻tにおける無効電力の出力可能量QpFC(t)(=[SFC 2−PFC(t)2]1/2)を算出する。そして、各発電出力制御部は、算出した燃料電池装置2の無効電力の出力可能量QpFC(t)が、時刻tにおける無効電力QFC(t)より大きいか否かを判定する。
ステップS76で、燃料電池装置2のインバータ23の容量に空きがある場合(QpFC(t)>QFC(t))、ステップS76はYES判定となる。この場合、燃料電池装置2の発電出力制御部25は、無効電力QFC(t)を所定量、発生(増加)させて電圧V(t)を下げる(ステップS77)。その後、上述したステップS72の処理に戻る。
なお、上記ステップS75及びS77における各分散型電源の無効電力の増加量はそれぞれ、予め設定された一定量としてよいし、電圧V(t)の電圧制御開始電圧Vthに対する超過量(V(t)−Vth)に比例して大きくなるようにしてもよい。また、上記ステップS75及びS77は、各分散型電源のインバータ容量の限界まで繰り返し行われる。
一方、ステップS76で、燃料電池装置2のインバータ23の容量に空きがない場合(QFC(t)=QFC(t))、ステップS76はNO判定となる。この場合、各発電出力制御部は、時刻tにおける太陽光発電装置1の無効電力出力感度ΔQPV/ΔPPVが、燃料電池装置2の無効電力出力感度ΔQFC/ΔPFC以上であるか否かを判定する(ステップS78)。
ここで、ステップ78の判定処理を、上記第2の実施形態で説明した表1及び2を参照しながら、より具体的に説明する。いま、電圧制御時に、太陽光発電装置1の発電出力PPV(t)が2.7[kW](QPV(t)=約1.31[kvar])であり、燃料電池装置2の発電出力PFC(t)が0.8[kW](QFC(t)=約0.6[kvar])である状態を考える。
この状態から、さらに太陽光発電装置1の発電出力PPV(t)を0.1[kW]だけ低減して電圧制御を行う場合(PPV(t+1)=2.6[kW])、出力可能な無効電力QPV(t+1)は約1.50[kvar]となる。この場合、太陽光発電装置1の無効電力出力感度ΔQPV/ΔPPVは、約0.19/0.1=1.9となる。一方、上記状態から、さらに燃料電池装置2の発電出力PFC(t)を0.1[kW]だけ低減する場合(PFC(t+1)=0.7[kW])、出力可能な無効電力QFC(t+1)は約0.71[kvar]となる。この場合、燃料電池装置2の無効電力出力感度ΔQFC/ΔPFCは、約0.11/0.1=1.1となる。それゆえ、上記状況では、ΔQPV/ΔPPV>ΔQFC/ΔPFCとなり、ステップS78はYES判定となり、後述のステップS79の処理に移行する。
なお、ステップ78の判定処理では、太陽光発電装置1及び燃料電池装置2の各発電出力制御部が、上述のようにして、時刻tにおける太陽光発電装置1の無効電力出力感度ΔQPV/ΔPPV及び燃料電池装置2の無効電力出力感度ΔQFC/ΔPFCを随時算出して両者を比較する。
ただし、ステップ78の判定処理は、この例に限定されない。例えば、各分散型電源における発電出力Pと無効電力出力感度ΔQ/ΔPとの対応関係を示すデータを、予め各発電出力制御部に記憶しておき、そのデータを参照して、ステップ78の判定処理を行うような構成にしてもよい。
ステップS78で、太陽光発電装置1の無効電力出力感度ΔQPV/ΔPPVが、燃料電池装置2の無効電力出力感度ΔQFC/ΔPFC以上である場合、ステップS78はYES判定となる。この場合、太陽光発電装置1の発電出力制御部13は、発電電力PPV(t)を所定量、減少させて電圧V(t)を下げる(ステップS79)。その後、上述したステップS72の処理に戻る。
一方、ステップS78で、太陽光発電装置1の無効電力出力感度ΔQPV/ΔPPVが、燃料電池装置2の無効電力出力感度ΔQFC/ΔPFC未満である場合、ステップS78はNO判定となる。この場合、燃料電池装置2の発電出力制御部25は、発電電力PFC(t)を所定量、減少させて電圧V(t)を下げる(ステップS80)。その後、上述したステップS72の処理に戻る。
なお、ステップS79及びS80における発電出力の減少量はそれぞれ、予め設定された一定量としてもよいし、電圧V(t)の電圧制御開始電圧Vthに対する超過量(V(t)−Vth)に比例して大きくなるようにしてもよい。また、ステップS79及びS80は、各分散型電源の最低発電出力(燃料電池装置2では、ターンダウン電力PdFC)まで繰り返し行われる。
ここで、再度、ステップS73に戻って、時刻tにおける連系点105の電圧V(t)が電圧制御開始電圧Vth以下である場合(ステップS73がNO判定である場合)、すなわち、電圧V(t)の上昇抑制制御を行う必要のない場合の動作を以下に説明する。
まず、上述したステップS74〜S80の電圧制御処理を行う前のステップS81以降の処理を説明する。ステップS73でNO判定となった場合、太陽光発電装置1及び燃料電池装置2の各発電出力制御部は、太陽光発電装置1から出力される無効電力QPV(t)が0であるか否か判定する(ステップS81)。
電圧制御処理を行う前、太陽光発電装置1から出力される無効電力QPV(t)は0であるので、ステップS81はYES判定となる。この場合、太陽光発電装置1及び燃料電池装置2の各発電出力制御部は、燃料電池装置2から出力される無効電力QFC(t)が0であるか否か判定する(ステップS83)。
電圧制御処理を行う前、燃料電池装置2から出力される無効電力QFC(t)は0であるので、ステップS83はYES判定となる。この場合、太陽光発電装置1及び燃料電池装置2の各発電出力制御部は、太陽光発電装置1の発電出力PPV(t)が理想出力PiPV(t)より小さいか否かを判定する(ステップS85)。
上述のように、電圧制御処理を行う前、太陽光発電装置1の発電出力PPV(t)は理想出力PiPV(t)と同じ値になるので、ステップS85はNO判定となる。この場合、太陽光発電装置1及び燃料電池装置2の各発電出力制御部は、燃料電池装置2の発電出力PFC(t)が理想出力PiFC(t)より小さいか否かを判定する(ステップS87)。
上述のように、電圧制御処理を行う前、燃料電池装置2の発電出力PFC(t)は理想出力PiFC(t)と同じ値になるので、ステップS87はNO判定となる。その後は、ステップS72の処理に戻る。
次に、上述したステップS74〜S80の電圧制御処理を行った後のステップS81以降の処理を説明する。この場合、ステップS81以降の処理では、各分散型電源での電圧制御処理で発生した無効電力QFC(t)の増大及び/又は発電出力PFC(t)の減少を解消する処理、すなわち、電圧制御量を減少させる処理を行う。
まず、太陽光発電装置1及び燃料電池装置2の各発電出力制御部は、太陽光発電装置1から出力される無効電力QPV(t)が0であるか否か判定する(ステップS81)。ここで、無効電力QPV(t)が0でない場合(上記ステップS75の処理を行った場合)、ステップS81はNO判定となる。この場合、太陽光発電装置1の発電出力制御部13は、無効電力QPV(t)を所定量、減少させる(ステップS82)。その後は、ステップS83の処理に移行する。
一方、ステップS81で、無効電力QPV(t)が0である場合(上記ステップS75の処理を行わなかった場合)、ステップS81はYES判定となり、ステップS83の処理に移行する。
次いで、太陽光発電装置1及び燃料電池装置2の各発電出力制御部は、燃料電池装置2から出力される無効電力QFC(t)が0であるか否か判定する(ステップS83)。ここで、無効電力QFC(t)が0でないと場合(上記ステップS77の処理を行った場合)、ステップS83はNO判定となる。この場合、燃料電池装置2の発電出力制御部25は、無効電力QFC(t)を所定量、減少させる(ステップS85)。その後は、ステップS85の処理に移行する。
一方、ステップS83で、無効電力QFC(t)が0である場合(上記ステップS77の処理を行わなかった場合)、ステップS83はYES判定となり、ステップS85の処理に移行する。
次いで、太陽光発電装置1及び燃料電池装置2の各発電出力制御部は、太陽光発電装置1の発電出力PPV(t)が理想出力PiPV(t)より小さいか否かを判定する(ステップS85)。ステップS85で、発電出力PPV(t)が理想出力PiPV(t)より小さい場合(上記ステップS79の処理を行った場合)、ステップS85はYES判定となる。この場合、太陽光発電装置1の発電出力制御部13は、発電出力PPV(t)を所定量、増加させる(ステップS86)。その後は、ステップS87の処理に移行する。
一方、ステップS85で、発電出力PPV(t)が理想出力PiPV(t)と同じである場合(上記ステップS79の処理を行わなかった場合)、ステップS85はNO判定となり、ステップS87の処理に移行する。
次いで、太陽光発電装置1及び燃料電池装置2の各発電出力制御部は、燃料電池装置2の発電出力PFC(t)が理想出力PiFC(t)より小さいか否かを判定する(ステップS87)。ステップS87で、発電出力PFC(t)が理想出力PiFC(t)より小さい場合(上記ステップS80の処理を行った場合)、ステップS87はYES判定となる。この場合、燃料電池装置2の発電出力制御部25は、発電出力PFC(t)を所定量、増加させる(ステップS88)。その後は、ステップS72の処理に戻る。
一方、ステップS87で、発電出力PFC(t)が理想出力PiFC(t)と同じである場合(上記ステップS80の処理を行わなかった場合)、ステップS87はNO判定となり、ステップS72の処理に戻る。
上述したステップS72及びS73からステップS81以降の処理に繋がる電圧制御量を減少させる処理は、各分散型電源の無効電力Qが0になり、且つ、発電出力Pが理想出力Piとなるまで繰り返し行う。なお、ステップS82及びS84における無効電力Qの低減量、並びに、ステップS86及びS88における発電出力Pの増加量はそれぞれ、予め設定された一定値としてもよいし、電圧V(t)と電圧制御開始電圧Vthとの差に応じて適宜変化するようにしてもよい。本実施形態では、上述のようにして、連系点における電圧V(t)を調整する。
上述したように、本実施形態の分散型電源システム30においても、第1及び第2の実施形態と同様に、連系点における電圧V(t)の上昇抑制制御を行う際、インバータ容量のより大きな分散型電源から優先して電圧制御を行う。また、本実施形態では、発電出力Pを低減して電圧調整する際、無効電力出力感度ΔQ/ΔPの高い方の分散型電源を選択して電圧制御を行う。
それゆえ、本実施形態の分散型電源システム30では、発電出力をより一層抑制せずに電圧制御を行うことができる。したがって、本実施形態の分散型電源システムにおいても、各住宅の余剰電力販売量が増大し(余剰電力販売機会損失が抑制され)、需要家の経済的価値を高めることができる。
なお、図11に示す本実施形態の電圧制御処理では、判定処理(図11中のステップS73、S74、S76、S78、S81、S83、S85及びS87)を太陽光発電装置1及び燃料電池装置2の各発電出力制御部が同時に行う例を説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、太陽光発電装置1に関するパラメータの判定処理(ステップS74、S81及びS85)は、太陽光発電装置1の発電出力制御部13で行い、燃料電池装置2に関するパラメータの判定処理(ステップS76、S83及びS87)を燃料電池装置2の発電出力制御部25で行い、そして、それ以外の判定処理(ステップS73及びS78)は、各発電出力制御部で同時に行ってもよい。
また、本実施形態では、太陽光発電装置1及び燃料電池装置2にそれぞれ発電出力制御部を設け、両者を、通信線31を介して接続し連動させる構成例を説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、太陽光発電装置1及び燃料電池装置2の発電出力制御部を一体化してもよいし、また、両者を通信線等で接続し、一方の分散型電源(例えば処理能力の高い方の分散型電源)の発電出力制御部でシステム全体の電圧制御を行ってもよい。
さらに、本実施形態では、インバータ容量が互いに異なる2つの分散型電源からなる分散型電源システムが、各住宅に設けられている例を説明したが本発明はこれに限定されず、インバータ容量が互いに異なる3つ以上の分散型電源からなる分散型電源システムにも同様に適用可能である。
<4.分散型電源システムの評価例>
次に、上述した第1及び第3の実施形態の分散型電源システムにおける発電総和量をシミュレーション解析でそれぞれ算出し、それらの算出結果を比較した例を説明する。
このシミュレーション解析では、図1に示す配電網システム100を系統モデルとして使用する。すなわち、シミュレーション解析では、低圧配電線102に10個のノード103を設け、各ノード103に2戸の住宅(分散型電源システム10)が設置されている例を考える。なお、各住宅では、太陽光発電及び燃料電池発電のダブル発電を行うものとする。
このシミュレーション解析では、全20戸分の1日当たりの太陽光発電装置1の発電量、燃料電池装置2の発電量、及び、システム全体の総和発電量を算出する。このシミュレーション解析で用いる各種計算パラメータは、次の通りである。
配電網システム100の低圧配電線102への供給電圧は、100[V]系の電圧とする。また、配電網システム100の低圧配電線102の全長を90mとする。また、ノード103間の配電線L1のインピーダンスz1をz1=0.00626+j0.00736[Ω/branch]とし、ノード103と各住宅との間の配電線L2のインピーダンスz2をz2=0.023+j0.00113[Ω/branch]とする。
各分散型電源システム10の太陽光発電装置1のインバータ容量SPVを3.0[kVA]とし、定格出力を3.0[kW]とする。また、燃料電池装置2のインバータ容量SFCを1.2[kVA]とし、定格出力を1.0[kW]とする。
さらに、図12に、シミュレーション解析で用いる各住宅の負荷特性及び分散型電源の発電出力パターンを示す。なお、図12に示す特性の横軸は時刻[h]であり、縦軸は有効電力負荷(発電出力)[kW]及び無効電力負荷[kvar]である。また、図12中の破線特性81が太陽光発電装置1の発電出力パターンであり、斜線でハッチングされた領域のパターン82が燃料電池装置2の発電出力パターンである。さらに、図12中の実線で示された特性83が有効電力負荷の特性であり、一点鎖線で示された特性84が無効電力負荷の特性である。このシミュレーション解析の負荷特性は、例えば春や秋のような電力のオフピークシーズンの特性を仮定している。また、太陽光発電装置1の発電出力パターン81は、晴れた日を仮定している。
そして、第1の実施形態の分散型電源システム10に対するシミュレーション解析では、太陽光発電装置1の電圧制御開始電圧VPV=106.5[V]とし、燃料電池装置2の電圧制御開始電圧VFC=106.8[V]とする。また、第3の実施形態の分散型電源システム30に対するシミュレーション解析では、電圧制御開始電圧Vth=106.0[V]とする。
また、このシミュレーション解析では、比較のため、第1の実施形態の分散型電源システムにおいて、電圧制御の優先順を逆、すなわち、インバータ容量の小さい燃料電池装置2から電圧制御を行う場合(比較例1)についても、同様の評価を行った。なお、比較例1では、太陽光発電装置1の電圧制御開始電圧VPV=106.8[V]とし、燃料電池装置2の電圧制御開始電圧VFC=106.5[V]とする。
さらに、ここでは、比較のため、太陽光発電装置1のみからなる分散型電源システム(比較例2)についても同様の評価を行った。なお、比較例2の太陽光発電装置1の構成は、第1の実施形態(図2及び3)と同様である。
図13に、シミュレーション解析により得られた第1及び第3の実施形態、並びに、比較例1及び2の太陽光発電装置での発電出力を示す。なお、図13に示す棒グラフでは、縦軸に1日あたりの発電出力または出力率を示す。ただし、各棒グラフの発電出力は、配電網システム100内の全20戸の住宅分の総発電出力である。
図13の結果から明らかなように、太陽光発電装置1の発電出力では、第1の実施形態が最も低い。これは、第1の実施形態では、太陽光発電装置1の電圧制御(無効電力制御及び出力抑制制御)を優先して行うためである。それに対して、図13の結果では、第3の実施形態における太陽光発電装置1の発電出力が最も高くなり、比較例2の発電出力よりも高くなる。これは、第3の実施形態では、図11で説明したように、太陽光発電装置1の無効電力制御を行った後、太陽光発電装置1の発電出力抑制制御を行う前に、燃料電池装置2の無効電力制御を行って電圧制御することに起因するものである。
次に、図14に、シミュレーション解析により得られた第1及び第3の実施形態、並びに、比較例1の燃料電池装置での発電出力を示す。なお、図14に示す棒グラフでは、縦軸に1日あたりの発電出力または出力率を示す。ただし、各棒グラフの発電出力は、配電網システム100内の全20戸の住宅分の総発電出力である。
図14の結果から明らかなように、燃料電池装置2の発電出力では、第1の実施形態が最も高い。これは、第1の実施形態では、太陽光発電装置1の電圧制御(無効電力制御及び出力抑制制御)を、燃料電池装置2より優先して行うためである。また、図14の結果では、第3の実施形態における燃料電池装置2の発電出力も、比較例1より約50[kWh/day]程度高くなる。これは、第3の実施形態では、燃料電池装置2の出力抑制制御の優先順位が最も低く、燃料電池装置2の発電出力をできる限り抑制せずに電圧制御できるためである。
そして、図15に、シミュレーション解析により得られた第1及び第3の実施形態、並びに、比較例1の分散型電源システム全体での総発電出力を示す。なお、図15に示す各棒グラフの発電出力は、図13及び14の対応する各棒グラフの発電出力を総和した値である。
図15の結果から明らかなように、分散型電源システムの総発電出力は、第3の実施形態、第1の実施形態及び比較例1の順で大きくなる。この結果から、本発明の分散型電源システムのように、インバータ容量の大きな方の分散型電源から順に(優先的に)電圧制御を行うことにより、システム全体の総発電出力が大きくなることが分かる。
特に、第3の実施形態のように、複数の分散型電源が連係して電圧制御した場合には、システム全体の総発電出力をより増大させることができることが分かる。これは、第3の実施形態の分散型電源システムでは、上述のように、太陽光発電装置1の無効電力制御を行っても連系点における電圧が所定値より小さくならない場合、太陽光発電装置1の発電出力を抑制するのではなく、燃料電池装置2の無効電力制御を行う。すなわち、第3の実施形態では、第1の実施形態よりさらに、発電出力の抑制制御を行わずに電圧制御を行うことができる。その結果、図15に示すように、第3の実施形態の総発電出力が第1の実施形態のそれより大きくなったものと考えられる。
なお、上記シミュレーション解析では、第2の実施形態の分散型電源システムの評価を行っていないが、第2の実施形態においても、第1の実施形態と同様に、インバータ容量の大きな方の分散型電源による電圧制御を優先して行う。また、第2の実施形態では、第3の実施形態と同様に、無効電力出力感度の高い分散型電源を適宜選択しながら電圧制御を行う。それゆえ、第2の実施形態の分散型電源システムにおいても、上記第1及び第3の実施形態と同様の結果が得られ、同様の効果が得られることは明らかである。
上記シミュレーション結果からも、本発明の分散型電源システムでは、総発電出力をより大きくすることができ、各住宅の余剰電力販売量を増大させ(余剰電力販売機会損失を抑制し)、需要家の経済的価値を高めることができることが分かる。
なお、上記第1〜第3の実施形態では、各住宅の分散型電源システム内に設けられる複数の分散型電源間において、電圧制御の優先順位を設定する例を説明したが、本発明はこれに限定されない。
柱上変圧器から受電点までのインピーダンスが同じである住宅(需要家)間、例えば、図1に示す例では、各住宅群104内に配置される2戸の住宅間の電気的位置は等価である。このような関係の住宅間では、住宅間を越えて、各分散型電源の優先順位を設定し、電圧制御を行ってもよい。また、電気的位置が同じでない住宅間においても、住宅間を越えて、各分散型電源の優先順位を設定して電圧制御することが可能な構成の配電網システムであれば、本発明を適用することができる。