JP5424237B2 - 環状多座配位子、環状多核金属錯体及びその会合体、並びにそれらの製造方法 - Google Patents

環状多座配位子、環状多核金属錯体及びその会合体、並びにそれらの製造方法 Download PDF

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本発明は、新規なイミン型環状多座配位子、アミン型環状多座配位子、環状多核金属錯体、及び環状多核金属錯体の会合体、並びにそれらの製造方法に関するものである。
多核金属錯体は、分子内に同種又は異種の複数金属イオンを内包する複合体であり、金属イオンのもつ様々な性質が分子内で協同的に作用するため、機能性材料としての応用展開が期待されている。環状多座配位子は、多核金属錯体の良好な鋳型となりうるため、着目されている。しかしながら、一般に、複数の配位部位を有する大環状分子の有機合成は容易ではなく、多段階の工程を要する合成法や、高度希釈条件による非効率的な環化法を用いる必要があり、多大な労力が要求される。
一方、複数の単位成分を一度に環化させることにより、効率よく大環状分子を得る合成法も知られており、そのような方法で得られる環状多座配位子としてはサレン型配位部位が環状骨格に組み込まれた環状多座配位子(非特許文献1及び非特許文献2)が挙げられる。しかしながら、それらは多核金属錯体としての性質を引き出すことはできるものの、サレン型部位の剛直性から、柔軟な環状構造の機能特性を生かせないことが多い。
一方、サレン骨格を持たない環状多座配位子の簡便な合成法はあまり知られておらず、シクロへキサン環を骨格中に有する環状多座配位子(非特許文献3)等が報告されるに留まる。しかるに、これについても、化学修飾の可能性、環状構造の機能特性等は検討されていない。
Inorg. Chem. 2008, 47, 101−112 Tetrahedron 2007, 63, 3328−3333 J.Org.Chem.2000, 65, 5768−5773
本発明は、環状構造の機能特性を発揮しうる多核金属錯体の鋳型となる、新規な環状多座配位子を提供することを目的とする。また、本発明は、そのような新規な環状多座配位子を簡便に製造する方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記課題を解決するために種々検討を重ねた結果、安価な二種の試薬(o−フェニレンジアミン化合物及びp−フェニレンジケトン化合物)を出発原料とした簡便な方法で、新規な環状多座配位子の合成が可能であること、さらに、この新規な環状多座配位子を鋳型とした多核金属錯体が、環状構造の機能特性を発揮しうることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、一般式(1):

〔式中、
は、互いに独立して、水素、アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロシクリル、モノもしくはジアルキルアミノ、ハロゲン、アシル、アルコキシカルボニル、アルデヒド、アミノカルボニル、アルキルカルボニルアミノ又はニトロであるか、あるいは同一のベンゼン環上に存在するRは一緒になってベンゼン環を形成し、
は、互いに独立して、水素、アルキル、アリール、ヘテロシクリル、アラルキル又はハロゲンであるか、あるいは同一のベンゼン環上に存在するとなり合う2つのRは、一緒になってベンゼン環を形成し、
は、互いに独立して、水素、アルキル、アリール、ヘテロシクリル又はアラルキルである〕
で示される、イミン型環状多座配位子に関する。
また、本発明は、一般式(2):

〔式中、
、R及びRは、前記で定義されたとおりであり、
は、互いに独立して、水素、アルキル、アラルキル又はアシルである〕
で示される、アミン型環状多座配位子に関する。
本発明は、一般式(3):

〔式中、
、R、R及びRは、前記で定義されたとおりであり、
Mは、アルカリ金属、アルカリ土類金属及び遷移金属からなる群から選択される金属であり、Mは、単座配位子、二座配位子、三座配位子及び四座配位子からなる群より選択される1以上の配位子を有していてもよい〕
で示される、アミン型環状多核金属錯体に関する。
本発明は、一般式(3a):

〔式中、
、R、R及びRは、前記で定義されたとおりであり、
は、互いに独立して、アルカリ金属、アルカリ土類金属及び遷移金属からなる群より選択される配位数が4〜9の金属であり、
mは、2〜7の整数であり、
Lは、互いに独立して、単座配位子であるか、又はn個のLは一緒になってn座配位子(ここで、nは、2〜4の整数である)を形成する〕
で示される、前記に記載のアミン型環状多核金属錯体に関する。
本発明は、一般式(3b):

〔式中、
、R、R及びRは、前記で定義されたとおりであり、
は、アルカリ金属、アルカリ土類金属及び遷移金属からなる群より選択される配位数が4の金属であり、
及びLは、同一又は異なっていてもよい単座配位子であるか、あるいはL及びLは、一緒になって二座配位子を形成する〕
で示される、前記に記載のアミン型環状多核金属錯体に関する。
本発明は、一般式(4):

〔式中、
、R、R及びMは、前記で定義されたとおりである〕
で示される、イミン型環状多核金属錯体に関する。
また、本発明は、前記に記載の式(1)で示されるイミン型環状多座配位子を製造する方法であって、一般式(5):

〔式中、Rは、前記で定義されたとおりである〕
で示される、o−フェニレンジアミン化合物と、一般式(6):

〔式中、R及びRは、前記で定義されたとおりである〕
で示される、p−フェニレンジケトン化合物とを反応させて、一般式(1):

〔式中、
、R及びRは、前記で定義されたとおりである〕
で示されるイミン型環状多座配位子を得る、方法に関する。
本発明は、前記に定義の一般式(2)で示されるアミン型環状多座配位子を製造するための方法であって、
(i)前記に記載の一般式(1):

〔式中、
、R及びRは、前記で定義されたとおりである。〕
で示されるイミン型環状多座配位子と、還元剤とを反応させて、一般式(2a):

〔式中、
、R及びRは、前記で定義されたとおりである〕
で示される、アミン型環状多座配位子を得て、
(ii)さらに、一般式(7):
4a−X (7)
〔式中、
4aは、アルキル、アラルキル又はアシルであり、
Xは、脱離性基である〕
で示される化合物を反応させて、一般式(2b):

〔式中、
、R、R及びR4aは、互いに独立して、前記で定義されたとおりである〕
で示されるアミン型環状多座配位子を得る、方法に関する。
また、本発明は、前記に記載の一般式(3)で示されるアミン型環状多核金属錯体を製造するための方法であって、前記に記載の一般式(2):

〔式中、
、R、R及びRは、前記で定義されたとおりである〕
で示される、アミン型環状多座配位子と、一般式(8):
MY (8)
〔式中、
Mは、前記で定義されたとおりであり
Yは、Mの電荷と平衡するための任意のアニオンである〕
で示される、金属化合物とを反応させて、一般式(3):

〔式中、
、R、R、R及びMは、前記で定義されたとおりである〕
で示されるアミン型環状多核金属錯体を得る、方法に関する。
本発明は、一般式(3)で示されるアミン型環状多核金属錯体を極性溶媒に溶解させることにより得られる、環状多核金属錯体の会合体に関する。
本発明により、新規なイミン型環状多座配位子及びアミン型環状多座配位子が提供される。また、化学修飾された原料を用いることで、複数個所が化学修飾された環状多座配位子が提供される。本発明のイミン型環状多座配位子は、安価なo−フェニレンジアミン化合物とp−フェニレンジケトン化合物とを用いる反応により、6つのイミン結合からなるイミン型環状多座配位子を沈殿物として簡便に単離することができるため、煩雑な精製操作を必要とせず、反応溶液から沈殿物をろ過及び洗浄することにより、高純度の環状多座配位子が得られる。さらに、本発明のアミン型環状多座配位子は、本発明のイミン型環状多座配位子の合成工程及び還元剤の処理工程からなる二工程で、簡便に合成することができる。また、本発明の環状多核金属錯体は、本発明の環状多座配位子及び様々な金属イオンから、錯体を形成することにより、新規な環状多核金属錯体を提供する。本発明の環状多核金属錯体は、環状骨格の柔軟性に基づき、特異な立体配座を有する。本発明の環状多核金属錯体は、非常に柔軟な環状骨格を有し、分子内に親水性部分である金属部分と、疎水性である配位子部分とを有する、両親媒性の金属錯体であるため、溶液内で会合体を形成する。本発明の環状多核金属錯体は、分子内に同種又は異種の複数金属イオンを内包する複合体であり、金属イオンのもつ様々な性質が分子内で協同的に作用するため、金属錯体の触媒反応性を活かした触媒、機能性材料としての応用展開が期待される。
本実施例により得られる、三核錯体A及び三核錯体BのH−NMRチャートである。 本実施例により得られる、三核錯体Aの分子構造図である。 本実施例により得られる、三核錯体BのH−NMRチャートである。 本発明により得られる、環状多核金属錯体の会合体の動的光散乱法により求められた粒子径分布を示す図である。
(1−1)イミン型環状多座配位子
本発明のイミン型環状多座配位子は、一般式(1):

〔式中、
は、互いに独立して、水素、アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロシクリル、モノもしくはジアルキルアミノ、ハロゲン、アシル、アルコキシカルボニル、アルデヒド、アミノカルボニル、アルキルカルボニルアミノ又はニトロであるか、あるいは同一のベンゼン環上に存在するRは一緒になってベンゼン環を形成し、
は、互いに独立して、水素、アルキル、アリール、ヘテロシクリル、アラルキル又はハロゲンであるか、あるいは同一のベンゼン環上に存在するとなり合う2つのRは、一緒になってベンゼン環を形成し、
は、互いに独立して、水素、アルキル、アリール、ヘテロシクリル又はアラルキルである〕
で示される。
本明細書において、アルキルとは、直鎖状又は分岐状のC〜C20アルキル基が挙げられる。好ましくは、直鎖状又は分岐鎖状のC〜Cアルキルであり、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、t−ブチル及びペンチルなどが挙げられる。
本明細書において、アルコキシとは、直鎖状又は分岐鎖状のC〜C20アルコキシ基が挙げられる。好ましくは、直鎖状又は分岐鎖状のC〜Cアルコキシであり、メトキシ、エトキシ、プロポキシ及びブトキシなどが挙げられる。
本明細書において、シクロアルキルとは、直鎖状又は分岐鎖状のC〜Cのシクロアルキル基が挙げられ、シクロプロピル及びシクロヘキシルなどが挙げられる。
本明細書において、アリールとは、C〜C20のアリール基(これは、場合により本明細書において規定されたアルキル、アルコキシ又はシクロアルキルにより置換されていることができる)が挙げられ、フェニル、ナフチル、アントラセニル、メチルフェニル、エチルフェニル及びプロピルナフチルなどが挙げられる。
本明細書において、アラルキルとは、C〜C20のアラルキル基が挙げられ、例えばベンジル及び2−フェニルエチルなどが挙げられる。
本明細書において、ヘテロシクリルとは、N、O又はSから選択される1〜3個のヘテロ原子を含む、5〜12個の環原子からなる一価の単環式又は二環式の基が挙げられ、フリル、チエニル、ピロリル、ピリジル、チアゾリル、イソチアゾリル、モルホリニルなどが挙げられる。
本明細書において、モノ又はジアルキルアミノとは、直鎖状又は分岐状のC〜C20アルキル基で一置換又は二置換されたアミノ基が挙げられ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、エチルアミノ、ジエチルアミノなどが挙げられる。
本明細書において、ハロゲンとは、F、Cl、Br又はIが挙げられる。
本明細書において、アシルとは、基−C(=O)−R(ここで、Rは、本明細書において規定されるアルキルである)を意味し、アセチルが挙げられる。
本明細書において、アルコキシカルボニルとは、基−C(=O)−OR(ここで、Rは、本明細書において規定されるアルキルである)を意味する。
本明細書において、アミノカルボニルとは、基−C(=O)NR(ここで、Rは、互いに独立して、本明細書に規定されたアルキルである)を意味する。
本明細書において、アルキルカルボニルアミノとは、基−NR'−C(=O)−R(ここで、R’は、水素又は本明細書において規定されるアルキルであり、Rは、本明細書において規定されるアルキルである)を意味する。
一般式(1)で示されるイミン型環状多座配位子において、Rは、同一であって、水素、C1〜6アルキル(特にメチル)、ハロゲン(特にCl)又は一緒になってベンゼン環を形成するのが好ましい。一般式(1)で示されるイミン型環状多座配位子において、Rは、同一であって、水素であるのが好ましい。一般式(1)で示されるイミン型環状多座配位子において、Rは、同一であって、水素、C1〜6アルキル(特にメチル)、C6〜20アリール(特にフェニル)であるのが好ましい。好ましくは、Rは、同一であって、水素、Cl又はメチルであり、Rは、同一であって、水素であり、そしてRは、同一であって、水素であり、Rは、同一であって、水素であり、Rは、同一であって、水素であり、そしてRは、同一であって、水素であるのが特に好ましい。
(1−2)アミン型環状多座配位子
本発明のアミン型環状多座配位子は、一般式(2):

〔式中、
、R及びRは、一般式(1)で定義されたとおりであり、
は、互いに独立して、水素、アルキル、アラルキル又はアシルである〕
で示される。
一般式(2)で示されるアミン型環状多座配位子において、Rは、同一であって、水素、C1〜6アルキル(特にメチル)、ハロゲン(特にCl)又は一緒になってベンゼン環を形成するのが好ましい。一般式(2)で示されるアミン型環状多座配位子において、Rは、同一であって、水素であるのが好ましい。一般式(2)で示されるアミン型環状多座配位子において、Rは、同一であって、水素、C1〜6アルキル(特にメチル)、C6〜20アリール(特にフェニル)であるのが好ましい。一般式(2)で示されるアミン型環状多座配位子において、Rは、同一であって、水素であるのが好ましい。
好ましくは、Rは、同一であって、水素、Cl又はメチルであり、Rは、同一であって、水素であり、Rは、同一であって、水素であり、及びRは、同一であって、水素であり、Rは、同一であって、水素であり、Rは、同一であって、水素であり、Rは、同一であって、水素であり、及びRは、同一であって、水素であるのが特に好ましい。
(1−3)アミン型環状多核金属錯体
本発明のアミン型環状多核金属錯体は、一般式(3):

〔式中、
、R及びRは、一般式(1)で定義されたとおりであり、
は、一般式(2)において定義されたとおりであり、
Mは、互いに独立して、アルカリ金属、アルカリ土類金属及び遷移金属からなる群より選択される金属であり、Mは、単座配位子、二座配位子、三座配位子及び四座配位子からなる群より選択される1以上の配位子を有していてもよい〕
で示される。
Mは、一般式(2)の配位子に結合(配位)する金属であり、同一であっても、異なっていてもよいが、好ましくは、Mは同一である。
本明細書において、アルカリ金属としては、Li、Na、Kなどが挙げられ、アルカリ土類金属としては、Mg、Ca、Srなどが挙げられ、遷移金属としては、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cuなどの第4周期の金属原子、Pd、Ag、Rhなどの第5周期の金属原子、Pt、Auなどの第6周期の金属原子、La、Ce、Erなどのランタノイドが挙げられる。好ましくは、Pd、Pt、Ag、Ni,Au、Rh、Ir、Co、Cuである。
また、Mの配位数は、Ni(II)、Pd(II)、Pt(II)、Au(III)、Rh(I)、Ir(I)、Cu(I)、Ag(I)、Cu(II)などの配位数が4である金属、Mn(II)、Fe(II)、Co(III)、Co(II)などの配位数が6である金属であり、より好ましくは、Pd(II)、Ag(I)、Pt(II)などの配位数が4である遷移金属である。
Mは、単座配位子、二座配位子、三座配位子及び四座配位子からなる群より選択される1以上の配位子を有していてもよい。単座配位子としては、HO、CHCN、NH、ピリジンなどの溶媒分子、F、Cl、Brなどのハロゲン原子などが挙げられる。二座配位子としては、エチレンジアミン(en)、ビピリジル(bipy)、フェナントロリン、フェニレンジアミン、プロパンジアミン、シクロヘキサンジアミン、テトラメチルエチレンジアミン、アセチルアセトナト、カテコールなどが挙げられる。三座配位子としては、ジエチレントリアミン、ニトリロ三酢酸、テルピリジル、1,4,7−トリアザシクロノナン(TACN)などが挙げられる。四座配位子としては、エチレンジアミン四酢酸(edta)、トリス(2−アミノエチル)アミン(tren)、サイクレン、トリス(2−ピリジルメチル)アミン(TPA)などが挙げられる。
Mとして、好ましくは、PdCl、Pd(en)、Pd(CHCN)、Pd(HO)、Pd(bipy)である。
本発明の一般式(3)で示されるアミン型環状多核金属錯体の好ましい例は、一般式(3a):

〔式中、
、R及びRは、一般式(1)で定義されたとおりであり、
は、一般式(2)で定義されたとおりであり、
は、互いに独立して、アルカリ金属、アルカリ土類金属及び遷移金属からなる群から選択される配位数が4〜9の金属であり、
mは、2〜7の整数であり、
Lは、互いに独立して、単座配位子であるか、又はn個のLは一緒になってn座配位子(ここで、nは、2〜4の整数である)を形成する〕
で示される。
一般式(3a)において、Mは、互いに独立して、アルカリ金属、アルカリ土類金属及び遷移金属からなる群から選択される配位数が4〜9の金属であり、好ましくは、Mは同一である。Mとしては、一般式(3)において、Mとして定義された金属原子が挙げられる。Mの配位数は、好ましくは、4〜6であり、より好ましくは4である。
一般式(3a)において、mは、2〜7である。一般式(3a)で示される環状多核金属錯体において、同一のベンゼン環に結合する2つの窒素原子が、1つのMに配位することにより核が形成される。そのためLは、Mに対して、(Mの配位数−2)の数まで配位することができる。例えば、Mが、配位数4である金属である場合は、2の単座配位子又は1の二座配位子が配位する。
一般式(3a)において、Lは単座配位子、二座配位子、三座配位子及び四座配位子からなる群より選ばれる。Lにおける各配位子の例は、一般式(3)において各配位子について定義されたものと同様である。
さらに、Mが、配位数が4の金属原子である一般式(3)で示されるアミン型環状多核金属錯体は、一般式(3b):

〔式中、
、R及びRは、一般式(1)で定義されたとおりであり、
は、一般式(2)で定義されたとおりであり、
は、配位数が4の金属であり、
及びLは、互いに独立して、単座配位子であるか、あるいは、L及びLは、一緒になって二座配位子を形成する〕
で示される。
の例示及び好ましいものは、Mにおいて配位数が4である金属の例示及び好ましいものと同様である。一般式(3b)のL及びLにおける、単座配位子及び二座配位子の例は、一般式(3)において、単座配位子及び二座配位子として定義されたものと同様である。一般式(3b)における、好ましいMは、PdCl、Pd(en)である。
一般式(3)で示されるアミン型環状多核金属錯体において、アミン(−NR−)の窒素原子は、非イオン性配位結合によって金属に配位している。一方、本発明のアミン型環状多核金属錯体は、窒素アニオンがイオン性の配位結合によって金属イオンに配位する構造も考えられる。そのようなアミン型環状多核金属錯体は、一般式(3’):

〔式中、
、R及びRは、一般式(1)で定義されたとおりであり、
Mは、一般式(3)で定義されたとおりである〕
で示される。
一般式(3’)で示されるアミン型環状金属錯体における、R、R、R及びMの好ましい基は、一般式(3)における各基における好ましい基と同様である。また、一般式(3a)及び(3b)で示される構造においても、窒素アニオンと金属イオンとの結合が、イオン性配位結合によって形成される構造が考えられる。
(1−4)イミン型環状多核金属錯体
本発明において、イミン型環状多核金属錯体は、一般式(4):

〔式中、
、R及びRは、一般式(1)で定義されたとおりであり、
Mは、一般式(3)で定義されたとおりである〕
で示される。
(1−5)環状多核金属錯体の会合体
本発明の一般式(3)及び(4)で示される環状多核金属錯体は、非常に柔軟な環状骨格を有し、分子内に親水性部分である金属部分と、疎水性である配位子部分を有する、両親媒性の金属錯体となる。よって、一般式(3)及び(4)で示される環状多核金属錯体は、水などの極性溶媒に溶解させることで、分子内に疎水性部分の面と親水性部分の面とを有する構造に変形し、分子が集合した集合構造を形成する。本発明の環状多核金属錯体は、両親媒性を有する分子構造であることから、その集合構造は、ベシクル、ミセル、筒状、平面状のいずれであることもできる。本発明の環状多核金属錯体の会合体は、動的光散乱法から求めた平均粒子径が30nm〜100nmの会合体であることができる。
(2−1)イミン型環状多座配位子の製造方法
本発明の一般式(1)で示されるイミン型環状多座配位子は、反応式[1]で示される反応により、一般式(5)で示されるo−フェニレンジアミン化合物及び一般式(6)で示されるp−フェニレンジケトン化合物から得られる。ここで、一般式(5)で示されるo−フェニレンジアミン化合物のアミノ基と一般式(6)で示されるp−フェニレンジケトン化合物のケトン基とが反応して、イミン結合(−N=C−)を形成し、環状構造が得られる。

〔式中、
、R及びRは、一般式(1)で定義されたとおりである〕
一般式(5)で示されるo−フェニレンジアミン化合物としては、o−フェニレンジアミン、4,5−ジメチル−1,2−フェニレンジアミン、4,5−ジクロロ−1,2−フェニレンジアミン、2,3−ジアミノナフタレンなどが挙げられる。好ましくは、o−フェニレンジアミン、4,5−ジクロロ−1,2−フェニレンジアミンである。本発明の一般式(5)で示されるo−フェニレンジアミン化合物は、公知の方法により製造することができ、また市販されている。例えば、o−フェニレンジアミン、4,5−ジクロロ−1,2−フェニレンジアミン、2,3−ジアミノナフタレンは、和光純薬工業株式会社、4,5−ジメチル−1,2−フェニレンジアミンはSIGMA−ALDRICH社より入手することができる。
一般式(6)で示されるp−フェニレンジケトン化合物としては、テレフタルアルデヒド、1,4−ジアセチルベンゼン、1,4−ジベンゾイルベンゼンが挙げられ、好ましくは、テレフタルアルデヒドである。本発明の一般式(6)で示されるp−フェニレンジケトン化合物は、公知の方法により製造することができ、また市販されている。例えば、テレフタルアルデヒドは和光純薬工業株式会社、1,4−ジアセチルベンゼン、1,4−ジベンゾイルベンゼンはSIGMA−ALDRICH社より入手することができる。
本発明において、一般式(5)で示されるo−フェニレンジアミン化合物は、一般式(6)で示されるp−フェニレンジケトン化合物1モルに対して、0.7〜1.2モルで使用され、好ましくは、0.95〜1.05モルであり、特に好ましくは1モルである。
一般式(5)で示されるo−フェニレンジアミン化合物と、一般式(6)で示されるp−フェニレンジケトン化合物との反応は、溶媒の存在下において行うことができる。溶媒は、反応を阻害するものでなければ、特に限定されず、メタノール、エタノール等のアルコール;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル;n−ヘキサン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;水;あるいはそれらの混合溶媒などが挙げられる。好ましくは、テトラヒドロフランである。
前記溶媒の使用量は、分子内での反応が進行し環状構造が得られる濃度であれば特に制限されず、出発物質(一般式(5)及び一般式(6))の総重量に対して、3倍〜10倍の重量とすることができ、好ましくは5倍〜6倍の重量である。また、反応温度は、室温〜溶媒の沸点未満の温度とすることができ、例えば50〜70℃である。
(2−2)アミン型環状多座配位子の製造方法
本発明において、一般式(2)で示されるアミン型環状多座配位子は、以下の反応式[2]に示されるように、(i)一般式(1)で示されるイミン型環状多座配位子と、還元剤とを反応させて、RがHである、一般式(2)で示されるアミン型環状多座配位子に相当する、一般式(2a):

〔式中、R、R及びRは、一般式(1)で定義されたとおりである〕
で示される、アミン型環状多座配位子を得て、
(ii)さらに、(i)により得られる一般式(2a)で示されるアミン型環状多座配位子を、一般式(7):
4a−X
〔式中、
4aは、互いに独立して、アルキル、アラルキル又はアシルであり、
Xは、脱離性基である〕
で示される化合物を反応させて、Rが水素以外である一般式(2)で示されるアミン型環状多座配位子に相当する、一般式(2b):

〔式中、
、R及びRは、前記で定義されたとおりであり、
4aは、互いに独立して、アルキル、アラルキル又はアシルである〕
で示されるアミン型環状多座配位子が得られる。

〔式中、
、R及びRは、一般式(1)で定義されたとおりであり、
4a及びXは、一般式(7)で定義されたとおりである〕
反応式[2]工程(i) イミン型環状多座配位子の還元反応
反応式[2]の工程(i)において、一般式(2a)で示されるアミン型環状多座配位子(Rが水素である一般式(2)で示されるアミン型環状多座配位子)は、一般式(1)で示されるイミン型環状多座配位子と還元剤を反応させることにより得られる。
還元剤としては、一般に使用される還元剤であれば特に制限されず、NaBH、NaBHCN、KBH、LiAlHなどが挙げられる。取扱いの容易さからNaBHが好ましい。
また、還元剤としてキラルな還元剤を用いることにより、以下の反応式[2a](i)で示される反応により、一般式(2a’)で示される光学活性なアミン型環状多座配位子を得ることができる。

〔式中、
、R及びRは、前記で定義されたとおりであり、
*は、キラル中心を表す〕
前記反応式[2a](i)のための還元剤としては、光学活性な配位子をもつルテニウム触媒と、水素供給源としてギ酸などを組み合わせた系が挙げられる。
反応式[2a]及び[2a](i)において、還元剤は、一般式(1)で示される化合物1モルに対して、200〜280モル、好ましくは260〜280モル使用される。本反応に用いられる溶媒は、反応式[1]における溶媒として、例示された溶媒が挙げられる。また、反応温度は、15℃〜30℃とすることができる。
反応式[2]工程(ii) アミン型環状多座配位子のアミン部位の化学修飾
反応式[2]の工程(ii)において、一般式(2)で示されるアミン型環状多座配位子は、一般式(2a)で示されるアミン型環状多座配位子と一般式(7):
4a―X (7)
で示される化合物を反応させることにより得られる。
Xは、脱離性基であり、ハロゲン、トシル、メシル、トリフルオロメタンスルホニルなどが挙げられる。よって、R4a−Xとしては、ヨウ化メチル及びヨウ化エチルなどのハロゲン化C〜Cアルキル;臭化ベンジル及び塩化ベンジルなどのハロゲン化アラルキル;塩化アセチルなどのハロゲン化アシル、トルエンスルホン酸メチル、トリフルオロメタンスルホン酸メチルなどが挙げられる。
本反応では、一般式(7)で示される化合物は、一般式(2a)で示されるアミン型環状多座配位子1モルに対して、4〜8モルで使用することができ、好ましくは5〜7モルであり、より好ましくは6モルである。本反応に用いられる溶媒は、反応式[1]における溶媒と同様の溶媒が挙げられる。また、反応は有機塩又は無機塩などの適切な塩の存在下で反応を行うことができる。塩として、アルカリ金属炭酸塩、例えば炭酸カリウム;アルカリ金属炭酸水素塩、例えば炭酸水素ナトリウム又は炭酸水素カリウム;アルカリ金属水酸化物、例えば水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム;水素化アルカリ金属、例えば水素化ナトリウム;アルカリ土類金属水酸化物、例えば水酸化マグネシウム等の無機塩基;アルカリ金属アルコキシド、例えばナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド;有機金属化合物、例えばブチルリチウム、メチルマグネシウムブロミド等の有機塩基が挙げられる。反応温度は、室温〜溶媒の沸点未満の温度で行うことができる。
また、J.Org.Chem.1995 60, 2677−2682に記載の方法にしたがって、前記工程(i)及び(ii)の両工程を一工程で行うこともできる。
(2−3)アミン型環状多核金属錯体の製造方法
本発明において、一般式(3)で示されるアミン型環状多核金属錯体は、反応式[3]で示すように、一般式(2)で示されるアミン型環状多座配位子と、一般式(8):
MY (8)
〔式中、
Mは、一般式(3)で定義されたとおりであり、
Yは、Mの電荷と平衡するための任意のアニオンである〕
で示される金属化合物と反応させることにより得られる。

〔式中、
、R及びRは、一般式(1)で定義されたとおりであり、
は、一般式(2)において定義されたとおりであり、
Mは、一般式(3)で定義されたとおりであり、
Yは、一般式(8)で定義されたとおりである〕
一般式(8)で示される金属化合物;MYは、一般式(1)で示される多座配位子に金属原子を供給し、一般式(3)で示されるアミン型環状多核金属錯体を形成しうる化合物であればよい。一般式(8)におけるMの具体例及び好ましい例示は、一般式(3)のMにおいて定義された具体例及び好ましい例示と同様である。Yは、Mの電荷と平衡するための任意のアニオンであり、Cl、NO 、SO 2−、ClO 、CHCOO、BF 、PF 、CFSO など通常の金属化合物の対アニオンである。
本発明に使用する金属化合物;MYの例としては、金属の無機酸塩、有機酸塩又は錯塩として一般に使用される化合物が挙げられる。具体的には、AgNO、AgClO、Ag(CHCO)、Ag(CFCO)、AgSO、PdCl、[Ag(NH]Cl、[PdCl(CHCN)]、[Pd(en)(NO]、[Pd(en)(BF]、[Pd(bipy)(NO]が挙げられる。
一般式(8)で示される金属化合物は、単独で反応させても、複数の金属化合物を反応させてもよい。一般式(2)で示されるアミン型環状多座配位子は3つの金属配位サイトを有するため、複数の種類の金属化合物を核とした環状多核金属錯体を得ることもできる。好ましくは、一般式(8)で示される金属化合物は、同一であり一般式(2)で示されるアミン型環状多座配位子と反応させる。
本発明おいて、一般式(8)で示される金属化合物は、一般式(2)で示されるアミン型環状多座配位子1モルに対して、2〜5モルで使用することができ、好ましくは2.8〜3.2モルであり、より好ましくは3.0モルである。
本発明において、一般式(2)で示されるアミン型環状多座配位子及び一般式(8)で示される金属化合物との反応に用いられる溶媒は、特に限定されない。溶媒は、反応式[1]における溶媒が挙げられる。また、反応温度は特に限定されないが、室温から溶媒の沸点未満の温度とすることができる。
(2−4)イミン型環状多核金属錯体の製造方法
本発明において、一般式(4)で示されるイミン型環状多核金属錯体は、反応式[4]で示すように、一般式(1)で示されるイミン型環状多座配位子と、一般式(8)で示される金属化合物とを反応させることにより得られる。

〔式中、
、R及びRは、一般式(1)で定義されたとおりであり、
Mは、一般式(3)で定義されたとおりであり、
Yは、一般式(8)で定義されたとおりである〕
本発明において、一般式(1)で示されるイミン型環状多座配位子及び一般式(8)で示される金属化合物との反応に用いられる溶媒は、反応式[1]における溶媒が挙げられるが、一般式(1)で示されるイミン型環状多座配位子のイミン結合を加水分解しない溶媒である。反応温度及び使用する出発物質の含有比などは、反応式[3]におけるアミン型環状多核金属錯体の合成における条件と同様にすることができる。
(2−5)環状多核金属錯体の会合体の合成
本発明において、アミン型環状多核金属錯体の会合体は、一般式(3)で示されるアミン型環状多核金属錯体を極性溶媒に溶解させることにより得られる。本発明の環状多核金属錯体は、親水性部分である金属原子部分と、疎水性部分である環状配位子部分を有する両親媒性構造を有する。本発明のアミン型環状多核金属錯体は、例えば水中で親水性の外殻と疎水性の内核を有する集合構造を形成する。
本発明において、環状多核金属錯体の会合体を形成させる溶媒は特に限定されず、極性溶媒、例えば水、メタノール、エタノールなどのアルコール、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ニトロメタン、アセトン、及びそれらの混合溶媒が挙げられる。また、n−ヘキサン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素;ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、及びこれらと極性溶媒との混合溶媒も、本発明の環状多核金属錯体は、親水性の内核と疎水性の外殻を持つ構造を形成することができるため、用いることもできる。
本発明において、用いられる溶媒は、一般式(3)で示されるアミン型環状多核金属錯体1gに対して、700ml〜14,000mlとすることができ、好ましくは、700ml〜7,000mlである。また、本発明において、溶媒の温度は−30℃〜100℃とすることができ、好ましくは10℃〜70℃であり、より好ましくは20℃〜30℃である。
本発明において、環状多核金属錯体を水に溶解させる時間は、1時間〜120時間とすることができる。本発明において、環状多核金属錯体の溶解時間を長くすることで、得られる環状多核金属錯体の平均粒子径を小さくすることができる。本発明により得られる環状多核金属錯体の会合体の平均粒子径は、10nm〜500nmとすることができ、好ましくは25nm〜150nmであり、より好ましくは30nm〜100nmである。ここで、平均粒子径は、動的散乱法により求められる散乱光強度のピーク位置から求められる。
また、一般式(4)で示されるイミン型環状多核金属錯体を用い、一般式(3)で示されるアミン型環状多核金属錯体の会合体の製造方法と同様にして、イミン型環状多核金属錯体の会合体を得ることも可能である。
本発明の環状多核金属錯体の会合体は、用いる溶媒、溶媒の温度、環状多核金属錯体の濃度及び溶解時間を変化させることで、ベシクル、ミセル又は逆ミセルのような球状構造、チューブ又はナノファイバーのような筒状構造、及びシート又は膜構造のような平面状などの集合構造を形成することが期待できる。
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
実施例で得られた、環状多座配位子及び環状多核金属錯体の各データは、以下のように測定した。
・NMRスペクトル
測定機器:Bruker社製DRX−500 及び JEOL社製AL−400
測定条件:DO、DMSO−dなどの重水素化された溶媒中、室温下で測定した。多核錯体の濃度は5mM〜0.1mM程度であった。
・X線分析
測定機器:Rigaku社製イメージングプレート単結晶自動X線構造解析装置 R−AXIS RAPID II
測定条件:−180℃にて、MoのKα線を用いて測定した。
・動的光散乱法
測定機器:Malvern社製ゼータサイザーナノシリーズ Nano-ZS
測定条件:HO中、室温下にて測定した。結果はCONTIN法により解析した。多核錯体の濃度は0.1〜1mM程度であった。多核錯体をHOに溶解させた後、時間変化を追跡した。
(1)イミン型環状多座配位子の合成(R=H、R=H、R=Hである一般式(1)のイミン型環状多座配位子)

o−フェニレンジアミン 1.04g(9.64mmol、1.00eq)を、50ml三口フラスコに入れ、窒素置換した。窒素バブリングにより脱気したTHF 5mlを加え、o−フェニレンジアミンを溶解させた。テレフタルアルデヒド 1.30g(9.67mmol、1.00eq)を、別の20ml二口フラスコに入れ、窒素置換した。窒素バブリングにより脱気したTHF 9mlを加えて、テレフタルアルデヒドを溶解させた。テレフタルアルデヒドのTHF溶液を、o−フェニレンジアミンのTHF溶液に加え、50℃で攪拌した。攪拌していると反応溶液は黄色から赤色へと変化し、7時間ほど攪拌すると橙色沈殿が生じた。26時間後、反応溶液を放冷し、沈殿をろ別し、THFで洗浄(1ml×3)し、真空乾燥させることにより、イミン型環状多座配位子130mg(0.210mmol、7%)を黄色固体として得た。
(2)アミン型環状多座配位子の合成(R=H、R=H、R=H、R=Hである、一般式(2)のアミン型環状多座配位子)

実施例1で得られたイミン型環状多座配位子28.0mg(45.3μmol、1eq)を、50ml三口フラスコに入れ、ドライアップして、窒素置換した。乾燥THF 4ml及び乾燥MeOH 3mlを加えて、室温で攪拌した。窒素フロー下で、NaBH 470mg(12.4mmol、274eq)を加え、50時間室温にて攪拌した。溶媒を減圧留去し、真空乾燥させた。HO 100mlを加え、CHCl(75ml×3)で抽出した。有機層をMgSOで乾燥させ、ろ別、減圧留去、真空乾燥させ、黄色固体11.0mgを得た。この黄色固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(径1.0cm×8.0cm、CHCl、Rf=0.3)により精製することで、アミン型環状多座配位子4.3mg(6.8μmol、15%)を黄色固体として得た。
(3)アミン型環状多核金属錯体の合成(三核錯体A、R=H、R=H、R=H、R=H、M=PdClである一般式(3)のアミン型環状多核金属錯体)

NMRチューブに、実施例2で得られたアミン型環状多座配位子のクロロホルム溶液0.11ml(27mM、2.9μmol)を加え、減圧留去し、真空乾燥させ、完全にクロロホルムを除いた。このNMRチューブに、DMSO−d 0.55mlを加え、60℃で5分間加熱することでアミン型環状多座配位子を溶解させた(5.3mM)。また、マイクロチューブにPdCl(CHCN) 4.1mg(16μmol)を量りとり、DMSO−d 350μlを加えて溶解させた(45mM)。アミン型環状多座配位子のDMSO−d溶液に対して、PdCl(CHCN)のDMSO−d溶液195μl(8.8μmol、3.0eq)を滴下し、室温にて30分放置した後、H NMRを測定したところ、三核錯体Aを形成していると示唆されるスペクトルが得られた。また、H−H COSY、NOESYスペクトルから、シグナルを同定した(図1上)。同様の反応をアセトニトリル中で行うことで([配位子]=0.5mM)、三核錯体Aを溶液から黄色結晶として単離した。得られた単結晶のX線構造解析から、パラジウムイオンが同方向に配向し、図2に示すようにねじれた立体配座を有する三核錯体Aが形成していた。この構造は、DMSO溶液中でのNMRシグナルの特徴と合致することから、DMSO溶液中でも同じねじれた立体配座を有する三核錯体Aが形成していた。
三核錯体AのX線結晶構造
(4−1)環状多核金属錯体の合成(三核錯体B、R=H、R=H、R=H、R=H、M=Pd(en)である、一般式(3)のアミン型環状多核金属錯体)

NMRチューブに、実施例2で得られたアミン型環状多座配位子のクロロホルム溶液0.90ml(0.67mM、0.60μmol)を加え、減圧留去、真空乾燥させ、完全にクロロホルムを除いた。このNMRチューブにDMSO−d 0.6mlを加え、アミン型環状多座配位子を溶解させた。また、マイクロチューブにPd(en)(NO 2.0mg(6.9μmol)を量りとり、DMSO−d 115μlを加え溶解させた(60mM)。アミン型環状多座配位子のDMSO−d溶液に対して、Pd(en)(NOのDMSO−d溶液30μl(1.8μmol、3.0eq)を滴下し、室温にて1時間放置した。H NMRを測定したところ、三核錯体Bを形成していると示唆されるスペクトルが得られた(図1下)。
(4−2)環状多核金属錯体の単離(三核錯体B)
NMRチューブに、実施例2で得られたアミン型環状多座配位子のクロロホルム溶液40μl(16.5mM、0.66μmol)を加え、減圧留去、真空乾燥させ、完全にクロロホルムを除いた。このNMRチューブにCDCN及びCDODを0.3mlずつ加え、アミン型環状多座配位子を懸濁させた。また、マイクロチューブにPd(en)(NO 2.2mg(7.4μmol)を量りとり、CDCN及びCDODを50μlずつ加え溶解させた(74mM)。アミン型環状多座配位子が懸濁しているCDCN−CDOD混合溶液に対して、Pd(en)(NOのCDCN−CDOD混合溶液27μl(2.0μmol、3.0eq)を滴下し、超音波を1.5時間かけ錯体形成させることにより薄黄色溶液を得た。溶媒を減圧留去、真空乾燥させることにより薄黄色固体を得た。
環状多核金属錯体の会合体の合成
実施例4により得られたアミン型環状多核金属錯体1.8mgを、20℃で水1.23ml中に溶解させ、1時間〜120時間放置した。図3に示すように、水中では、本発明の環状多核金属錯体は会合体を形成していることが示された。放置時間が1時間のときは、図4に示すように、動的光散乱法から平均粒子径が100nm程度の会合体を形成していることが示された。また、120時間のときは、会合体の平均粒子径は30nmであった。さらに、水以外のメタノールやアセトニトリルなどの極性有機溶媒中でも、NMR測定などから本発明のアミン型環状多核金属錯体は、会合体を形成していた。
本発明の環状多座配位子は、簡便な工程による反応により得られる新規な配位子である。また、本発明の環状多核金属錯体は、分子内に同種もしくは異種の複数金属イオンを含有する複合体であり、環状多座配位子は環状多核金属錯体のための鋳型配位子として使用することができる。本発明の環状多核金属錯体は、単核錯体として活用できるだけではなく、多核錯体として協同的な作用が働くことにより、より効果的な触媒として、各分子間認識素子、分子変換触媒、機能性材料などの適用が期待できる。さらに、本発明の環状多核金属錯体の会合体は、会合体を形成する環状多核金属錯体が両親媒性を備えることが可能な分子であることから、例えば本来有機溶媒中で行わなくてはならない種々の化学反応を、水中で行うことができる触媒としての応用が期待できる。

Claims (9)

  1. 一般式(1):

    〔式中、
    は、互いに独立して、水素、アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロシクリル、モノもしくはジアルキルアミノ、ハロゲン、アシル、アルコキシカルボニル、アルデヒド、アミノカルボニル、アルキルカルボニルアミノ又はニトロであるか、あるいは同一のベンゼン環上に存在するRは一緒になってベンゼン環を形成し、
    は、互いに独立して、水素、アルキル、アリール、ヘテロシクリル、アラルキル又はハロゲンであるか、あるいは同一のベンゼン環上に存在するとなり合う2つのRは、一緒になってベンゼン環を形成し、
    は、互いに独立して、水素、アルキル、アリール、ヘテロシクリル又はアラルキルである〕
    で示される、イミン型環状多座配位子。
  2. 一般式(2):

    〔式中、
    、R及びRは、互いに独立して、請求項1で定義されたとおりであり、
    は、互いに独立して、水素、アルキル、アラルキル又はアシルである〕
    で示される、アミン型環状多座配位子。
  3. 一般式(3):

    〔式中、
    、R及びRは、請求項1で定義されたとおりであり、
    は、請求項2で定義されたとおりであり、
    Mは、アルカリ金属、アルカリ土類金属及び遷移金属からなる群から選択される金属であり、Mは、単座配位子、二座配位子、三座配位子及び四座配位子からなる群より選択される1以上の配位子を有していてもよい〕
    で示される、アミン型環状多核金属錯体。
  4. 一般式(3a):

    〔式中、
    、R及びRは、請求項1で定義されたとおりであり、
    は、請求項2で定義されたとおりであり、
    は、互いに独立して、アルカリ金属、アルカリ土類金属及び遷移金属からなる群より選択される配位数が4〜9の金属であり、
    mは、2〜7の整数であり、
    Lは、互いに独立して、単座配位子であるか、または、n個のLは一緒になってn座配位子(ここで、nは、2〜4の整数である)を形成する〕
    で示される、請求項3記載のアミン型環状多核金属錯体。
  5. 一般式(3b):

    〔式中、
    、R及びRは、請求項1で定義されたとおりであり、
    は、請求項2で定義されたとおりであり、
    は、アルカリ金属、アルカリ土類金属及び遷移金属からなる群より選択される配位数が4の金属であり、
    及びLは、同一又は異なっていてもよい単座配位子であるか、あるいはL及びLは、一緒になって二座配位子を形成する〕
    で示される、請求項3又は4記載のアミン型環状多核金属錯体。
  6. 請求項1記載の式(1)で示されるイミン型環状多座配位子を製造する方法であって、一般式(5):

    〔式中、Rは、請求項1で定義されたとおりである〕
    で示される、o−フェニレンジアミン化合物と、一般式(6):

    〔式中、R及びRは、請求項1で定義されたとおりである〕
    で示される、p−フェニレンジケトン化合物とを反応させて、一般式(1):

    〔式中、
    、R及びRは、請求項1で定義されたとおりである〕
    で示されるイミン型環状多座配位子を得る、方法。
  7. 請求項2記載の一般式(2)で示されるアミン型環状多座配位子を製造するための方法であって、
    (i)請求項1記載の一般式(1):

    〔式中、
    、R及びRは、請求項1で定義されたとおりである。〕
    で示されるイミン型環状多座配位子と、還元剤とを反応させて、一般式(2a):

    〔式中、
    、R及びRは、請求項1で定義されたとおりである〕
    で示される、アミン型環状多座配位子を得て、
    (ii)さらに、一般式(7):
    4a−X (7)
    〔式中、
    4aは、アルキル、アラルキル又はアシルであり、
    Xは、脱離性基である〕
    で示される化合物を反応させて、一般式(2b):

    〔式中、
    、R及びRは、請求項1で定義されたとおりであり、
    4aは、互いに独立して、アルキル、アラルキル又はアシルである〕
    で示されるアミン型環状多座配位子を得る、方法。
  8. 請求項3記載の一般式(3)で示されるアミン型環状多核金属錯体を製造するための方法であって、請求項2記載の一般式(2):

    〔式中、
    、R及びRは、請求項1で定義されたとおりであり、
    は、請求項2で定義されたとおりである〕
    で示される、アミン型環状多座配位子と、一般式(8):
    MY (8)
    〔式中、
    Mは、請求項3で定義されたとおりであり
    Yは、Mの電荷と平衡するための任意のアニオンである〕
    で示される、金属化合物とを反応させて、一般式(3):

    〔式中、
    、R及びRは、請求項1で定義されたとおりであり、
    は、請求項2で定義されたとおりであり、
    Mは、請求項3で定義されたとおりである〕
    で示されるアミン型環状多核金属錯体を得る、方法。
  9. 一般式(3)

    〔式中、
    、R 及びR は、請求項1で定義されたとおりであり、
    は、請求項2で定義されたとおりであり、
    Mは、請求項3で定義されたとおりである〕
    で示されるアミン型環状多核金属錯体を極性溶媒に溶解させることにより得られる、環状多核金属錯体の会合体。
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