JP5417648B2 - 高純度βTCP微粉末の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、新規な高純度βTCP(β相リン酸三カルシウム)微粉末の製造方法に関する。
リン酸カルシウムは、骨、歯等の成分又はその類似成分であることから、親和性が高く、また生体拒絶反応が少ないことから、生体材料用途、特に整形外科、歯科分野では欠かせない材料となっている。リン酸カルシウムの中でも、特にヒドロキシアパタイト、βTCP、αTCP、第二リン酸カルシウム、リン酸四カルシウム(TTCP)等が汎用化され、それぞれの物質ごとの特性を利用して各種の用途に使い分けられている。とりわけ、βTCPは、整形外科、歯科分野等において、その高い生体親和性から骨又は歯の補填剤をはじめ、各種のインプラント等として重用されている。この場合、用途に応じてβTCP単独で使用されることもあれば、他のリン酸カルシウム(例えばヒドロキシアパタイト、αTCP、無水リン酸カルシウム(DCP))が配合されたもの等がある。
βTCPを配合した補填剤には、顆粒等の塊状又はペースト状に加工されたものが市販されている。顆粒状補填剤のものは顆粒に気孔が形成されており、細胞が入りやすくなっていて体内の再生機構を補助する設計になっているものがあり、ペースト状補填剤は注射器等に入れ、これを欠損部に注入させて直接埋める方法で使用される。
βTCPを原料とする補填剤の製造方法としては、例えば1)βTCPの粉末原料を他原料と配合し、混練した後、α転移が起きない境界線の温度まで再焼成して焼結硬化させ顆粒等の塊状に成型する方法、2)βTCPの粉末原料を他原料と配合し、混練した後、焼結させずにペースト化する方法、3)湿式で反応合成されたリン酸カルシウムの沈殿をβ転移させる前に、成型し、焼成焼結によってβ転移させる方法等がある。
このような補填剤のβTCP原料に要求される品質としては、高純度であることに加え、加工しやすいことが要求される。βTCPが高純度であることは生体内に長期間埋め込まれる用途において、安全性の視点から特に重要である。また、βTCPはペースト状又は顆粒等の塊状で提供されることがほとんどであるため、原料の加工のしやすさ(加工性)という点も重要であり、実際に加工メーカー側からのニーズも高い。ちなみに、最も汎用されている原料の形態は微粒子粉末である。特に平均粒子径1〜3μm程度の微粉末のニーズが一般的に高い。平均粒子径が大きすぎると配合の分散性及び均一性が悪くなり、逆に小さくなりすぎると粉末の吸油量が増大し、配合後の加工性に影響する。例えば、ペースト商品の場合は粘度が上昇しすぎて使いづらくなったり、有機バインダーと混練して顆粒製品を調製する過程においても溶媒又は添加剤を必要量以上に加えなければ加工ができなくなる。従って、市販されているβTCPの粉末品は平均粒子径1〜3μmのものが最も多くなっているのが現状である。また、βTCP粉末の比表面積も、加工性に影響を与える重要な指標であると考えられており、一般に1〜5m/gの低比表面積品のニーズが高い。比表面積は焼成温度により調整が可能であり、焼成温度を上昇させるほど比表面積は低下するが、ユーザーの用途に応じて適度な調整が行われる。比表面積が大きすぎると溶媒や添加剤の吸油性が大きくなり、混練造粒のハンドリング性が悪くなったり、ペースト製品の粘度が高すぎて注射器の排出圧力が高くなりすぎ、商品価値を落としかねない。これに対し、比表面積が小さすぎると焼結時の収縮率が低下するので、製品の硬度不足を招く。なお、1〜5m/gの低比表面積品を得るためには焼成温度は約800〜950℃の温度範囲とされているが、焼成条件、原料不純物レベルによって影響されるので必ずしもこの範囲に入るとは限らない。
βTCPは、Ca/Pのモル比が1.50(又は3/2)であるリン酸カルシウムであり、条件によって差異はあるが、通常は700℃以上の温度でβ相に転移させて生成させる。さらに温度を上げていくと、条件によって転移点に差はあるが、1100℃付近からα相への転移が始まり、α、β2相の混晶を経て、最終的にはαTCPの単相の化合物ができる。すなわち、βTCPの製造には、ある程度の高温で焼成する工程が必要になる。また、焼成前にCa/Pのモル比を1.50に正確に調整しておくことは重要であり、Ca/P<1.50になると焼成後、副産物であるピロリン酸カルシウム(Ca/P=1.0)が不純物として混入し、逆にCa/P>1.50になると焼成後、副産物であるヒドロキシアパタイト(Ca/P=1.67)が不純物として必ず混入する結果になる。
βTCPの粉末を製造する方法としては、種々の手法が提案されている。例えば、水酸化カルシウム粉体と、リン酸水素カルシウム粉体とを、リンに対するカルシウムのモル比(Ca/P)が1.45〜1.72となるように配合して原料体を調製する工程と、得られた原料体を混合粉砕処理してソフトメカノケミカル複合化反応を生起せしめてリン酸カルシウム前駆体を調製する工程と、得られた前駆体を600℃以上の温度で熱処理することによりリン酸カルシウム粉体を調製する工程とを有することを特徴とするリン酸カルシウム粉体の製造方法が知られている(特許文献1)
その他にも、リン酸水素カルシウムと炭酸カルシウムを含む混合スラリーをポットミルで24時間粉砕・反応させた後、スラリーを乾燥後、750℃で1時間焼成することによりβTCP粉末を得る方法が提案されている(非特許文献1)。
国際公開WO00/58210
窯業協会誌94[9],pp78−82,1986
しかしながら、前記のような従来技術では、より不純物の少ないβTCPの微粉末を得る上でさらなる改良が必要である。すなわち、前記の非特許文献1又は特許文献1に示す方法は、メカノケミカル法とも呼ばれ、Ca/P比を1.50に調整することが容易であるというメリットがある。ところが、これらの方法では、カルシウム原料とリン酸原料とを反応させるために、焼成前に長時間にわたりボールミル等の粉砕機で滞留させることから、たとえ高純度の原料を用いたとしても、粉砕機材質の摩耗粉が比較的多量に混入するという欠点がある。
一般に、βTCP中に混在する不純物としては、不純物の由来源で分類すると、1)原料由来;Mg、Fe、Al、Si等の原料中に含まれる不純物、2)反応由来;ヒドロキシアパタイト、ピロリン酸カルシウム(反応のCa/P比がずれたら発生する)、3)設備由来;酸不溶解物(セラミック)、Cr、Ni、Fe、又は製品への着色がある。
この3つの分類の中で、前記1)の原料由来の不純物については、高価ではあるが高純度原料を購入することで確実に回避できる。また、前記2)の反応由来の不純物は、焼成工程前に中間チェックを行い、Ca/Pが1.50になるまで丹念に調整を繰り返す手間さえ惜しまなければ決して回避が難しいことではない。これに対し、前記3)の設備由来の不純物だけは、βTCPの強い研磨性も相まって、より微細な粉末を得るために機械的に粉砕しようとするとそれだけ混入リスクが高くなり、その混入を回避することはきわめて困難となる。すなわち、加工性に優れるβTCP粉末を得ようとすれば純度が低下するリスクを背負わなければならない。
ここに、βTCPの微粒子を得るためには、機械的に二次粉砕を行う手段と、水中で反応沈殿の基本粒子を小さくする条件を工夫し、その粒子サイズを原料加工の時まで維持する手段の二通りが考えられる。
前者の手段としては粉砕機を用いる方法がセオリーであるが、市販の粉砕機も千差万別でそれぞれ一長一短あるため、βTCPにどの粉砕機が適しているという明確な知見は見当たらない。粉砕したい材料を直接ハンマー等で叩いたり(例えばパルベライザー)カッターで削ったりする原理のもの(例えばグローミル)は、設備コストに対応する処理能力の比較的高い粉砕機であるものの、βTCP粉末自体の粘性あるいは設備への付着性が邪魔をして、対象物へのハンマーの接触が全体的に及ばないため、粉砕ムラが起こり、粗粒子が残存することから、結局は粒子径の揃った微粉末を得ることは困難である。このため、例えばペースト等の調製に適した平均粒子径1〜3μm、最大粒子径10μm以下の均一粒度分布を得ることは難しい。
また、磨砕式(例えばボールミル)は、βTCP粉末自体の粘性あるいは設備への付着性が問題となるが、滞留時間を長くすれば前記のような平均粒子径1〜3μmの均一粒度を得ることは可能である反面、粉砕装置接粉部材質の磨耗粉が混入する確率が高くなる。
超微粉砕機として知られているカウンター式ジェットミルは粒子同士を衝突させる方式であることから粉砕装置接粉部への衝撃比率は小さく、磨耗粉が混入する確率の比較的小さい粉砕機である。しかし、これもβTCP粉末自体の弾力性から効率が悪く、平均粒子径1〜3μmの均一粒度を得るためには処理量を抑える必要があるうえ、粉砕装置接粉部への衝撃比率は小さいながらも多少の磨耗粉の混入リスクを背負わなければならない。また、この粉砕設備自体も処理能力に対する設備費用が大変高価になるという欠点がある。
次に、後者の手段は、粉砕機が必要ないので、コンタミのリスクは大幅に低減できる。しかし、反応後の脱水時の二次凝縮を避けるため、一単位の反応粒子サイズを均一に揃えることが必要になる。その結果、粒子間の空域容積が大きくなるため、得られた粉末の嵩容積が高く、それにより吸油量、吸溶媒量が多くなって、加工性が悪くなるという結果を招く。
以上のような観点より、結論としては、加工性等を考慮した場合の微粒子化には粉砕という手段は避けられず、従って不純物の混入を阻止するにしても限界があるとされている。このため、これまで以上に高純度のβTCP微粉末を製造するための新たな技術の開発が切望されている。
従って、本発明の主な目的は、従来品よりも高純度のβTCP微粉末を提供することにある。
本発明者は、従来技術の問題点に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、特定の工程からなる方法を採用することにより上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、下記の高純度βTCP微粉末の製造方法に係る。
1. 高純度βTCP微粉末を製造する方法であって、
1)水中でリン酸イオンとカルシウム塩とを反応させることによりリン酸三カルシウムを含むスラリーを生成させる第1工程、
2)前記スラリー又はそれより得られる湿潤固形分を平均粒子径2.1〜3μm及び最大粒子径10μm以下となるように湿式粉砕することによって、固形分として微粉末を含む湿式粉砕処理物を調製する第2工程、
3)前記湿式粉砕処理物を焼成することによりβTCP微粉末を得る第3工程
を含む、高純度βTCP微粉末の製造方法。
2. 前記スラリー又はそれより得られる湿潤固形分の水分含有量が60重量%以上である、前記項1に記載の製造方法。
3. 湿式粉砕の溶媒が水及びアルコールの少なくとも1種である、前記項1に記載の製造方法。
4. 湿式粉砕の溶媒が水である、前記項1に記載の製造方法。
5. 第3工程に先立って、前記湿式粉砕処理物に対して乾燥処理を施す、前記項1に記載の製造方法。
6. 乾燥処理を施した後にさらに乾式解砕処理を行う、前記項5に記載の製造方法。
7. 高純度βTCP微粉末が平均粒子径2.1〜3μm及び最大粒子径10μm以下であり、かつ、塩酸不溶解分が100重量ppm以下である、前記項1に記載の製造方法。
8. 前記スラリー又はそれより得られる湿潤固形分の固形分の結晶化度が75%以下である、前記項1に記載の製造方法。
9. 高純度βTCP微粉末の前駆体を製造する方法であって、
1)水中でリン酸イオンとカルシウム塩とを反応させることによりリン酸三カルシウムを含むスラリーを生成させる第1工程、
2)前記スラリー又はそれより得られる湿潤固形分を平均粒子径2.1〜3μm及び最大粒子径10μm以下となるように湿式粉砕することによって、固形分として微粉末を含む湿式粉砕処理物を調製する第2工程、
を含む、高純度βTCP微粉末の前駆体の製造方法。
10. 前記スラリー又はそれより得られる湿潤固形分の水分含有量が60重量%以上である、前記項9に記載の製造方法。
11. 湿式粉砕の溶媒が水及びアルコールの少なくとも1種である、前記項9に記載の製造方法。
12. 前駆体が、スラリー、湿潤固形分又は乾燥粉末の形態である、前記項9に記載の製造方法。
13. 前記スラリー又はそれより得られる湿潤固形分の固形分の結晶化度が75%以下である、前記項9に記載の製造方法。
14. 平均粒子径2.1〜3μm及び最大粒子径10μm以下であり、かつ、塩酸不溶解分が100重量ppm以下であることを特徴とする高純度βTCP微粉末。
15. Fe含有量が4重量ppm以下、Cr含有量が2重量ppm以下である、前記項14に記載の高純度βTCP微粉末。
16. 比表面積が5m/g以下である、前記項14に記載の高純度βTCP微粉末。
本発明の製造方法は、特に、βTCPの前駆体として生成したリン酸三カルシウムを含むスラリー又はそれより得られる湿潤固形分を湿式粉砕することにより、設備由来(特に粉砕機由来)の不純物の混入を大幅に低減ないしは防止することができるため、微粉末であるにもかかわらず、より高純度なβTCP微粉末を提供することができる。また、同時に、粉砕機への負荷も低減できるので、設備的・経済的にも有利な方法である。
本発明の製造方法によれば、高純度なβTCP微粉末を得ることができるが、例えば平均粒子径1〜3μm、最大粒子径10μm以下という粒度を有する微粉末を調製することもできる。すなわち、加工性に優れた微粉末を製造することもできる。このような微粉末は、例えばペースト用微粉末等として好適に用いることができる。
本発明の製造方法による高純度βTCP微粉末又はそれを含むペーストは、特に生体材料として好適に用いることができる。例えば、人工骨、人工関節、人工歯根等のインプラント材料のほか、骨充填剤、骨補填剤等にも使用することができる。その他にも、歯科用途(歯磨き粉等)、研磨用材料等にも有用である。
1.高純度βTCP微粉末の製造方法
本発明の高純度βTCP微粉末の製造方法(本発明製造方法)は、
1)水中でリン酸イオンとカルシウムイオンとを反応させることによりリン酸三カルシウムを含むスラリーを生成させる第1工程、
2)前記スラリー又はそれより得られる湿潤固形分を湿式粉砕することによって、固形分として微粉末を含む湿式粉砕処理物を調製する第2工程、
3)前記湿式粉砕処理物を焼成することによりβTCP微粉末を得る第3工程
を含むことを特徴とする。
第1工程
第1工程では、水中でリン酸イオンとカルシウム塩とを反応させることによりリン酸三カルシウムを含むスラリーを生成させる。
リン酸イオン供給源としては、例えばリン酸、水溶性のリン酸塩等を用いることができる。より具体的には、リン酸、リン酸アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム及びリン酸二水素アンモニウムの少なくとも1種を好適に用いることができる。
また、カルシウム塩源としては、カルシウム化合物であれば特に限定されず、無機酸又は有機酸のカルシウム塩を好適に用いることができる。より具体的には、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、グルコン酸カルシウム及び酢酸カルシウムの少なくとも1種を好適に用いることができる。
これらのリン酸イオン供給源となる化合物とカルシウム塩供給源となる化合物を水に溶解又は懸濁させることによって、リン酸イオンとカルシウム塩とを反応させることができる。この場合、1つの水中に両者を同時又は順次に配合する方法のほか、予めそれぞれの水溶液又は懸濁液を調製した後にこれら水溶液又は懸濁液を混合する方法等を採用することができる。混合する際は、攪拌しながら反応させることが好ましい。攪拌は、公知の攪拌装置等を使用することができる。
リン酸イオン供給源となる化合物とカルシウム塩供給源となる化合物の配合割合は、用いる化合物の種類に応じて化学量論比となるような割合で反応させれば良い。また、その濃度も特に限定されず、通常0.1〜40重量%の範囲内で適宜調整すれば良い。
リン酸イオンとカルシウム塩との反応に際しては、pHを2〜10の範囲内に調整することにより沈殿物を生成させれば良い。pH調整剤としては、例えばアンモニア、硝酸、塩酸等の少なくとも1種を好適に用いることができる。反応温度は特に制限されないが、通常0〜80℃程度とすれば良い。
第2工程
第2工程では、前記スラリー又はそれより得られる湿潤固形分を湿式粉砕することによって、固形分として微粉末を含む湿式粉砕処理物を調製する。すなわち、βTCPへの結晶化に先立って、その前駆体(反応生成物)であるリン酸三カルシウムを含むスラリー又はそれにより得られる湿潤固形分に対して湿式粉砕処理を施すことが本発明の特徴の一つである。本発明では、第2工程の湿式粉砕が高純度βTCP微粉末を製造するのに必須である。また、このタイミングにおける湿式粉砕が最も生産効率(粉砕効率)が高く、粉砕設備への衝撃が最も小さくできるという利点も兼ね備えている。
かかる見地より、前記スラリー又はそれより得られる湿潤固形分の固形分は、その結晶化度が低い方が好ましい。従って、結晶化度は、通常75%以下とし、特に70%以下であるスラリーことが好ましい。すなわち、固形分の結晶化度が75%以下である前記スラリー又は湿潤固形分を第2工程の湿式粉砕処理を施すことが好ましい。このような結晶化度のスラリー又は湿潤固形物は、例えば、第1工程で得られたスラリーそのもの又は前記スラリーについてその固形分の結晶化度を75%以下に維持しつつ水分量が調整された湿潤固形分を好適に用いることができる。
第2工程におけるスラリー又はそれより得られる湿潤固形分(含水固形分)の水分含有量は、特に限定されないが、通常は5重量%以上、好ましくは30重量%以上、より好ましくは60重量%以上とすれば良い。なお、前記水分含有量の上限値は95重量%程度とすれば良い。
第2工程において、第1工程で生成したスラリーを湿式粉砕する場合は、スラリーをそのまま粉砕処理すれば良い。また、本発明では、前記スラリーのほか、前記スラリーから得られる湿潤固形分を使用しても良い。湿潤固形分として、前記の通り、例えば前記スラリーの固形分の結晶化度を75%以下に維持しつつ水分量が調整されたものを好適に用いることができる。湿潤固形分を湿式粉砕する場合としては、まず前記反応スラリーから固液分離により湿潤沈殿物を得た後、1)前記湿潤沈殿物をそのまま粉砕処理する方法、2)前記湿潤沈殿物を水に懸濁させて得られる懸濁液を粉砕処理する方法、3)前記湿潤沈殿物を水洗した後に粉砕処理する方法、4)前記湿潤沈殿物を水洗した後に水に懸濁させて得られる懸濁液を粉砕処理する方法等のいずれも採用することができる。これらの方法において、前記の固液分離方法、水洗方法、懸濁方法等は公知の方法に従って実施することができる。
湿式粉砕の方法は特に制限されず、例えば衝撃、せん断式、磨砕式、圧縮、振動等のいずれの方式によるものであっても良い。また、装置上の分類としても、例えば高圧流体衝突ミル、高速回転スリットミル、アトライター、ボールミル、ビーズミル、ロールミル、リング状粉砕媒体ミル、高速旋回薄膜ミル等のいずれの装置であっても良い。これらの装置自体は公知又は市販のものを使用することができる。
これらの湿式粉砕装置の中でも、本発明では、例えばビーズミルを好適に用いることができる。ビーズミルによる場合は、溶媒として水及び有機系溶媒の少なくとも1種を用いることが好ましく、特に水及びアルコールの少なくとも一種を用いることがより好ましい。メディアとしては、限定的ではないが、例えばジルコニア系材料からなるビーズを好適に用いることができる。ビーズの大きさは直径0.5〜2mm程度とすれば良い。ビーズの充填量は、用いる装置の種類等に応じて40〜80%程度の範囲内で適宜調整すれば良い。
湿式粉砕の程度は、所望の微粉末の平均粒子径、粒度分布等に応じて適宜調節することができるが、通常は平均粒子径5μm以下、特に3μm以下となるように調整することが好ましい。より好ましくは、平均粒子径1〜3μm及び最大粒子径10μm以下となるように調整する。このタイミングにおける粉砕が最も生産効率が高く、粉砕設備への衝撃が最も小さい。
本発明の製造方法では、第3工程に先立って、前記湿式粉砕処理物に対して乾燥処理を施しても良い。乾燥方法としては、通常の乾燥(自然乾燥又は加熱乾燥)のほか、凍結乾燥、噴霧乾燥等も採用することができる。乾燥温度はβTCPに変化しない温度以下であれば特に制限されないが、通常は200℃以下、特に150℃以下の範囲内で行うことが好ましい。本発明では、噴霧乾燥を好適に採用することができる。噴霧乾燥の方法としては、前記湿式粉砕処理物の懸濁液を調製し、得られた懸濁液を噴霧することにより実施することができる。この場合も、公知又は市販の噴霧乾燥装置を用いることができる。
また、乾燥処理を行うことによって、微粒子の一部が軽く凝集して凝集物を成形している場合もある。この場合は、凝集物を解して再分散させることを目的として、乾式解砕処理を施すことが望ましい。乾式解砕処理としては、例えば前記湿式粉砕処理物を乾燥(凍結乾燥を含む。)して得られた乾燥微粉末を乾式で解砕すれば良い。解砕する方法としては、いわゆる粗・中砕のために用いられる公知又は市販の粉砕装置を用いて実施すれば良い。例えば、フェザーミル(スクリーン式中砕機)等を好適に用いることができる。特に、凍結乾燥する場合は、乾燥物を凍結乾燥により脆弱化させ、粉砕時のエネルギーを低減させ、粉砕機への負荷を抑えることができる。また、乾式解砕処理の1つとして、凍結粉砕を採用することもできる。凍結粉砕は、基本的には凍結乾燥をする場合は粉砕原理は同じであるが、凍結粉砕は低温の状態のまま粉砕することから、粉砕エネルギーをより節約することができる。
第3工程
第3工程では、前記湿式粉砕処理物を焼成することによりβTCP微粉末を得る。すなわち、焼成することにより、リン酸三カルシウムをβTCPに結晶化させる。
焼成温度は、通常700℃以上とすれば良く、特に880〜930℃とすることが好ましい。かかる温度範囲に設定することによって、良好な加工性が得られるとともに、凝集を効果的に抑制することができる。焼成雰囲気は、大気中、酸化性雰囲気中等が好ましい。焼成時間は、焼成する微粉末の量、焼成温度等に応じて適宜設定することができる。このようにして、本発明の高純度βTCP微粉末を得ることができる。
本発明の製造方法により得られる高純度βTCP微粉末
本発明の高純度βTCP微粉末(本発明微粉末)は、微細化されているにもかかわらず、従来品よりも高純度であるという特徴を有する。
本発明微粉末の平均粒子径は、通常5μm以下、特に3μm以下であることが好ましい。より好ましくは、平均粒子径1〜3μmであり、最大粒子径が10μm以下である。このような粒度をもつ本発明微粉末は加工性等に優れており、これを用いてペースト組成物を好適に調製することができる。
また、高純度特性として、本発明微粉末の塩酸不溶解分は100重量ppm以下、特に80重量ppm以下であることが好ましい。塩酸不溶解分として、例えばジルコニア、アルミナ、チタン等の成分が例示される。さらに、Fe含有量は、4重量ppm以下、特に2重量ppm以下であることが好ましい。Cr含有量は、2重量ppm以下、特に0.8重量ppm以下であることが好ましい。
さらに、本発明微粉末の比表面積は限定的ではないが、通常5m/g以下、特に1〜4m/g、さらには1〜3m/gであることが好ましい。このように比表面積が比較的低い場合は、加工性等に優れると考えられる。
2.高純度βTCP微粉末の前駆体の製造方法
本発明は、高純度βTCP微粉末の前駆体の製造方法も包含する。すなわち、高純度βTCP微粉末の前駆体を製造する方法であって、
1)水中でリン酸イオンとカルシウム塩とを反応させることによりリン酸三カルシウムを含むスラリーを生成させる第1工程、
2)前記スラリー又はそれより得られる湿潤固形分を湿式粉砕することによって、固形分として微粉末を含む湿式粉砕処理物を調製する第2工程、
を含む、高純度βTCP微粉末の前駆体の製造方法も包含する。
第1工程及び第2工程は、前記1.の高純度βTCP微粉末の製造方法における第1工程及び第2工程とそれぞれ同様にして実施することができる。
このようにして得られた前駆体は、特に第2工程の湿式粉砕により微粉末化されているので、それを加工することにより種々の用途に用いることができる。
また、この前駆体は、通常はスラリー、湿潤固形分又は乾燥粉末の形態で提供することが望ましい。このような形態は、例えば焼結加工時に最終成形品の硬度をより高めることができる等の利点を有する。
前駆体の形態は、湿式粉砕処理物の状態が既に所望の形態となっている場合はそのまま提供することができる。例えば、前駆体としてスラリー形態で提供する場合、湿式粉砕処理物がスラリー状であればそのまま提供することが可能である。他方、前記状態が所望の形態になっていな場合は、例えば乾燥、固液分離、懸濁、希釈等の公知の処理方法を施すことによって所望の形態になるように調整すれば良い。
以下に実施例及び比較例を示し、本発明の特徴をより具体的に説明する。ただし、本発明の範囲は、実施例に限定されない。
合成例1
JIS試薬硝酸カルシウム4水塩(和光純薬社製)50kgを精製水に溶解し全液量を120Lとした。液温を30℃に調整した後、充分な撹拌を確保しながらJIS試薬アンモニア水(和光純薬社製)を9.0kgを加え、さらにこの液の中にリン酸水素二アンモニウム(米山化学工業社製)19.5kgを精製水65Lに溶かした液を1分間に1Lの割合で供給し、液の白濁化を進行させた。さらに充分な撹拌を続けながら45℃に加温し、60分間この状態を維持した後、硝酸希釈水溶液でpHを5.8に調整した。液温を30℃に冷却した後、フィルタープレスに投入し、固液分離した後、圧縮ケーキに500Lの精製水を通水してケーキ洗浄を行った。得られたケーキはウェットで75kg(水分含有量72重量%)であった。
合成例2
超高純度炭酸カルシウム(宇部マテリアル社製、CSグレード)を900℃で12時間焼成後、ハンマーミルで粗砕し、11.2kgを精製水30Lに懸濁し、発熱が終わるまで撹拌した。発熱が終了した後、精製水30Lを加えて粘性を下げた後、85%オルトリン酸(トーソー社製)14.84kgの精製水で希釈した液20Lを1分間に70mLの割合で供給し、約80Lの反応スラリー(水分含有量81重量%)を得た。
実施例1
合成例1で得られた圧縮ケーキ8.8kgを採取し、精製水3.2Lを加え、撹拌分散して固形分約20重量%の均一スラリー(水分含有量80重量%)を調製した。スラリーは20L容器内で撹拌しながら、DYNOミル(スイス ウィリー・エ・バッコーフェン社(WAB)製)マルチラボ型で(メディア材質:ジルコニア、ジルコニア強化アルミナ、ビーズ直径1.0mm、ギャップ幅0.3mm、コンテナサイズ1.4L)給液速度25L/H、回転速度10m/s(周速)の条件でコンテナ内を精製水で置換した後、連続湿式粉砕を行った。粉砕処理液の初流1.5Lは回収せず、全スラリー処理終了後2.0Lの精製水で追い粉砕を行って湿式粉砕スラリー12.6kgを得た。粉砕スラリーのうち6.0kgを25cm×50cm×深さ10cm角型ステンレス容器2枚にポリプロピレンシートを敷いた上に移しこみ、棚段式乾燥器(エスペック社製PH201)にて105℃で20時間乾燥を行った(水分量:0.8重量%)。乾燥した塊は乳棒で軽く叩いて小片にした後、バンタムミル(ホソカワミクロン社製APB)で粉砕し、乾燥粉末1150gを得た。粉末は緻密性の高いアルミナ製の20cm×20cm×10cm角型容器2枚に粉末を取り分け、電気炉(北村電気炉社製 KSO―35型)にて昇温速度70℃/H、温度900℃において3時間保持のプログラムにて焼成を行った。放冷後、電気炉から取り出した粉末の収量は1070gであった。
実施例2
合成例2で得られた反応スラリー13L(水分含有量81%)を採取し、撹拌しながら実施例1と同条件で湿式粉砕し、棚段乾燥を行った(水分量:0.9重量%)。乾燥した塊は乳棒で軽く叩いて小片にした後、バンタムミル(ホソカワミクロン社製APB)で粉砕し、乾燥粉末3180gを得た。その後、さらに実施例1と同条件で焼成を行って粉末を得た。得られた粉末の収量は3000gであった。
実施例3
合成例1で得られた圧縮ケーキ10.6kgを採取し、精製水1.3Lを加え、撹拌分散して固形分25重量%の均一スラリー(水分含有量75重量%)を調製した。実施例1と同様に粉砕を行い、湿式粉砕スラリー12.5kgを得た。粉砕スラリーの全量を25cm×50cm×深さ10cm角型ステンレス容器3枚にポリプロピレンシートを敷いた上に移しこみ、棚段式乾燥器(エスペック社製PH201)にて105℃で20時間乾燥を行った(水分量:1.1重量%)。乾燥した塊は乳棒で軽く叩いて小片にした後、バンタムミル(ホソカワミクロン社製APB)で粉砕し、乾燥粉末2900gを得た。粉末は緻密性の高いアルミナ製の20cm×20cm×10cm角型容器3枚に粉末を取り分け、電気炉(北村電気炉社製 KSO―35型)にて昇温速度70℃/H、最高温度900℃において3時間保持のプログラムにて焼成を行った。放冷後、電気炉から取り出した粉末の収量は2790gであった。
実施例4
合成例1で得られた圧縮ケーキ4.4kgを採取し、精製水7.9Lを加え、撹拌分散して固形分約10重量%の均一スラリー(水分含有量90重量%)を調製した。実施例1と同様に粉砕を行い、湿式粉砕スラリー13.0kgを得た。粉砕スラリーの全量を25cm×50cm×深さ10cm角型ステンレス容器3枚にポリプロピレンシートを敷いた上に移しこみ、棚段式乾燥器(エスペック社製PH201)にて105℃で20時間乾燥を行った(水分量:0.9重量%)。乾燥した塊は乳棒で軽く叩いて小片にした後、バンタムミル(ホソカワミクロン社製APB)で粉砕し、乾燥粉末1220gを得た。粉末は緻密性の高いアルミナ製の20cm×20cm×10cm角型容器2枚に粉末を取り分け、電気炉(北村電気炉社製 KSO―35型)にて昇温速度70℃/H、最高温度900℃において3時間保持のプログラムにて焼成を行った。放冷後、電気炉から取り出した粉末の収量は1140gであった。
実施例5
合成例1の圧縮ケーキ8.8kgを採取し、エチルアルコール20Lを加え、撹拌分散後、フィルタープレスに投入し、0.2MPaで加圧充填を行った。この充填状態のケーキに対して試薬99.5度エチルアルコール60Lを通液し、溶媒置換を行った。さらに1.2MPaで10分間圧搾を行い、充分脱液を行い、ウェット固形として4.2kg(固形分量59重量%、溶媒含有量41重量%)を回収した。これを99.5度エチルアルコール2Lを加えて懸濁し、約5.8kgのアルコールスラリーとした(固形分量42重量%、溶媒含有量58重量%)。スラリーは撹拌しながら99.5度エチルアルコールに溶媒置換済みDYNOミル(スイス ウィリー・エ・バッコーフェン社(WAB)製)マルチラボ型で(メディア材質:ジルコニア、ジルコニア強化アルミナ、ビーズ直径1.0mm、ギャップ幅0.3mm、コンテナサイズ1.4L)給液速度25L/H、回転速度10m/s(周速)の条件で湿式粉砕を行い、粉砕スラリーは25cm×50cm×深さ10cm角型ステンレス容器2枚にポリプロピレンシートを敷いた上に移しこみ、充分換気を行いながら棚段式乾燥器(エスペック社製PH201)にて105℃で2時間乾燥を行った。乾燥した塊はフェザーミル(ホソカワミクロン社製)で解砕し、乾燥粉末2230g(水分量:0.3重量%)を得た。粉末は緻密性の高いアルミナ製の20cm×20cm×10cm角型容器2枚に粉末を取り分け、電気炉(北村電気炉社製 KSO―35型)にて昇温速度70℃/H、最高温度900℃において3時間保持のプログラムにて焼成を行った。放冷後、電気炉から取り出した粉末の収量は2190gであった。
比較例1
合成例1の残りの圧縮ケーキを25cm×50cm×深さ10cm角型ステンレス容器5枚にポリプロピレンシートを敷いた均等に盛り、棚段式乾燥器(エスペック社製PH201)で105℃で20時間乾燥を行った(水分量:1.1重量%)。乾燥物をフェザーミル(ホソカワミクロン社製)で粗砕し、10.1kgの粗粉末試料を得た。このうちの4.0kgを、粗粉末は実施例1と同条件にて焼成を行い、放冷した後、電気炉から取り出した粗粉末の収量は3750gであった。この粗粉末をカウンター式ジェットミル(ホソカワミクロン社製;200FG型)で1時間あたり10kgの供給速度にて粉砕を行い、微粉末3350gを得た。
比較例2
合成例2のスラリー40Lを25cm×50cm×深さ10cm角型ステンレス容器5枚にポリプロピレンシートを敷いた均等に盛り棚段式乾燥器(エスペック社製PH201)にて105℃で20時間乾燥を行った(水分量:1.7重量%)。乾燥物をフェザーミル(ホソカワミクロン社製)で粗砕し、9.9kgの粗粉末試料を得た。粗粉末のうちの4.0kgは実施例1と同条件にて焼成を行い、放冷した後、電気炉から取り出した粗粉末の収量は3860gであった。この粗粉末をカウンター式ジェットミル(ホソカワミクロン社製;200FG型)で1時間あたり10kgの供給速度にて粉砕を行い、微粉末3590gを得た。
比較例3
比較例1の残りのフェザーミル粗砕品のうち2.0kgを、緻密性の高いアルミナ製の20cm×20cm×10cm角型容器2枚に粉末を取り分け、電気炉(北村電気炉社製 KSO―35型)にて昇温速度70℃/H、最高温度900℃において3時間保持のプログラムにて焼成を行った。放冷後、電気炉から取り出した粉末の収量は1920gであった。焼成粉末は、エチルアルコールに3.5Lに懸濁し、スラリーとした後、スラリーは撹拌しながらDYNOミル(スイス ウィリー・エ・バッコーフェン社(WAB)製)マルチラボ型で(メディア材質:ジルコニア、ジルコニア強化アルミナ、ビーズ直径1.0mm、ギャップ幅0.3mm、コンテナサイズ1.4L)給液速度12L/H、回転速度10m/s(周速)の条件で湿式粉砕を行い、粉砕スラリーは25cm×50cm×深さ10cm角型ステンレス容器2枚にポリプロピレンシートを敷いた上に移しこみ、棚段式乾燥器(エスペック社製PH201)にて60℃で20時間乾燥を行った。乾燥した塊はフェザーミル(ホソカワミクロン社製)で解砕し、粉末品1850gを得た。
比較例4
比較例2の残りのフェザーミル粗砕品のうち2.0kgを、比較例3と同条件で焼成し、焼成粉末の1950gを得た。焼成粉末は、エチルアルコールに3.5Lに懸濁し、スラリーとした後、比較例3と同条件で湿式粉砕を行い、粉砕スラリーは25cm×50cm×深さ10cm角型ステンレス容器2枚にポリプロピレンシートを敷いた上に移しこみ棚段式乾燥器(エスペック社製PH201)で60℃、20H乾燥を行った。乾燥した塊はフェザーミル(ホソカワミクロン社製)で解砕し、粉末1800gを得た。
比較例5
比較例3のフェザーミル粗砕品4.0kgをACMパルベライザー(ホソカワミクロン社製)で、分級60Hz、バグフィルター捕集、ハンマー;バー使用微粉砕後、電気炉(北村電気炉社製 KSO―35型)にて昇温速度70℃/H、最高温度900℃において3時間保持のプログラムにて焼成を行った。放冷後、電気炉から取り出した粉末の収量は3470gであった。
比較例6
比較例4のフェザーミル粗砕品3.9kgをACMパルベライザー(ホソカワミクロン社製)で、分級60Hz、バグフィルター捕集、ハンマー;バー使用微粉砕後、電気炉(北村電気炉社製 KSO―35型)にて昇温速度70℃/H、最高温度900℃において3時間保持のプログラムにて焼成を行った。放冷後、電気炉から取り出した粉末の収量は3320gであった。
比較例7
ヒドロキシアパタイト(富田製薬社製)190g及び無水リン酸水素カルシウム(富田製薬社製)60gを混合後、7L容量のボウルミル(アルミナ製)に入れ、12時間運転させて平均粒子径2.3μmの粉末品217gを得た(水分量:1.5重量)。粉末は緻密性の高いアルミナ製の1.6L容量のルツボに粉末を入れ、電気炉(北村電気炉社製 KSO―35型)にて昇温速度70℃/H、最高温度900℃において3時間保持のプログラムにて焼成を行った。放冷後、電気炉から取り出した粉末の収量は194gであった。粉末品は再度7Lボウルミル(アルミナ製)に入れ12時間運転させて平均粒子径2.3μmのβTCP粉末品160gを得た。
試験例1
実施例及び比較例で得られた粉末について、下記の物性をそれぞれ調べた。その結果を表1及び表2に示す。なお、比較のため、市販品(他社品)についても同様に物性を調べた。その結果も併せて表2に示す。
(1)X線回折分析
試料を粉末X線回折装置「RINT 2100V」 Rigaku社製を用いて、X線回折分析を行った。得られたピークについてJCPDS No.9-169 Whitlockiteと一致することを確認した。
また、ヒドロキシアパタイト含有量(HA(%))は、X線回折で得られた測定結果から、βTCPのメインピーク及びHAのメインピークの面積比率を求め、その積分強度比率からHA(%)を求めた。国際規格参照ISO 13779-3:2008(E)「Implants for surgery−Hydroxyapatite」
(2)ピロリン酸カルシウム(CPP)
試料をFTIR「AVATAR 360」サーモフィッシャー社製にてピロリン酸カルシウム由来のシグナルの確認を行った。
(3)平均粒子径及び最大粒子径
試料を超音波攪拌(周波数400Hz)した後に水中に分散させてレーザー回折法により水溶媒中にて測定を行った。測定装置として「MICROTRAC HRA Model
No.9320-X100」Honeywell社製を用いた。累積頻度が50%の値を平均粒子径、累積頻度が100%になった粒子径を最大粒子径とした。
(4)比表面積
試料0.5gを前処理し(減圧下、105℃、1時間)、窒素ガス吸着法にて比表面積を測定した。測定装置として「高速比表面積・細孔分布測定装置 NOVA 4000e」ユアサアイオニクス社製を用いた。
(5)塩酸不溶解分
試料10.0gを30mLの塩酸と水に溶解し、予め少数点以下4桁まで秤量した口径4.7mm 目開き0.45μmのメンブランフィルターにろ過し、精製水100mL以上で充分洗浄した後、ろ紙を40℃にて乾燥させた後の重量を測定する。塩酸不溶分は下記式により計算する。
塩酸不溶解分(重量ppm)=(ろ過使用後のフィルター重量(g)―使用前のフィルター重量(g))÷10.0×1000000
(6)クロム及び鉄の含有量
試料1.0gに6M塩酸5mLを加えて溶解させ、正確に50mLとした。プラズマ誘導発光装置「Vista Pro」エスアイアイ・ナノテクノロジーズ社製を用い、標準添加法にて、クロムと鉄の濃度を算出した。
(7)ハンター白度
試料を色差計「Z−300A」日本電色工業社製を用いて完全な白を100%とし、波長457μmにおける反射率を測定し、次式により計算した。
W=100−〔(100−L)+(a+b)〕1/2
(8)水分量
試料2.0gを赤外性水分計にて105℃、30分にて測定した。
Figure 0005417648
Figure 0005417648
これらの結果からも明らかなように、本発明の製造方法により得られるβTCP微粉末は、微粉末でありながら不純物量が大幅に抑制されていることがわかる。
試験例2
実施例1で得られたスラリー(湿式粉砕前のスラリー)をろ別し、スラリーに含まれる固形分の結晶化度について調べた。その結果、その結晶化度は66%であった。比較のため、前記スラリーをオートクレーブ(150℃、3時間)にて処理して得られたスラリーについても同様にして調べたところ、その結晶化度は77%であった(参考品1)。参考品1のスラリーを実施例1と同条件にしてβTCP粉末を得た。得られた粉末を試験例1(5)と同様にして塩酸不溶解分を測定したところ、参考品1は140ppmであり、100ppmを超えていた。これに対し、結晶化度が66%の実施例1で塩酸不溶解分は50ppmであり、結晶化度の低いスラリー又は湿潤固形分を湿式粉砕することによって所定のβTCP粉末が得られることがわかる。
なお、結晶化度の測定方法は、X線回折測定を以下の測定条件で実施し、付属の応用ソフトウエアを用いて2θ=30〜35°付近のピークを切り出した後にバックグラウンド、非晶質成分によるハロー、結晶成分による回折線を分離し、非晶成分及び結晶成分積分強度を用いて結晶化度を算出する方法によって実施した。測定サンプルについては、スラリー又は湿潤固形分の固形分の結晶化度が変化しないような雰囲気下(50℃以下・大気圧中)に測定サンプルを保持しつつ、X線回折測定に供した。

装置 : 株式会社リガク製X線回折装置(RINT2000)
X線 : Cu−Kα
フィルター : 使用しない
カウンター : シンチレーションカウンター
電圧 : 40kV
電流 : 20mA
走査モード : 連続
スキャンスピード : 4.00°/分
スキャンステップ: 0.020°
発散スリット : 1deg
散乱スリット : 1deg
受光スリット : 0.15mm

Claims (16)

  1. 高純度βTCP微粉末を製造する方法であって、
    1)水中でリン酸イオンとカルシウム塩とを反応させることによりリン酸三カルシウムを含むスラリーを生成させる第1工程、
    2)前記スラリー又はそれより得られる湿潤固形分を平均粒子径2.1〜3μm及び最大粒子径10μm以下となるように湿式粉砕することによって、固形分として微粉末を含む湿式粉砕処理物を調製する第2工程、
    3)前記湿式粉砕処理物を焼成することによりβTCP微粉末を得る第3工程
    を含む、高純度βTCP微粉末の製造方法。
  2. 前記スラリー又はそれより得られる湿潤固形分の水分含有量が60重量%以上である、請求項1に記載の製造方法。
  3. 湿式粉砕の溶媒が水及びアルコールの少なくとも1種である、請求項1に記載の製造方法。
  4. 湿式粉砕の溶媒が水である、請求項1に記載の製造方法。
  5. 第3工程に先立って、前記湿式粉砕処理物に対して乾燥処理を施す、請求項1に記載の製造方法。
  6. 乾燥処理を施した後にさらに乾式解砕処理を行う、請求項5に記載の製造方法。
  7. 高純度βTCP微粉末が平均粒子径2.1〜3μm及び最大粒子径10μm以下であり、かつ、塩酸不溶解分が100重量ppm以下である、請求項1に記載の製造方法。
  8. 前記スラリー又はそれより得られる湿潤固形分の固形分の結晶化度が75%以下である、請求項1に記載の製造方法。
  9. 高純度βTCP微粉末の前駆体を製造する方法であって、
    1)水中でリン酸イオンとカルシウム塩とを反応させることによりリン酸三カルシウムを含むスラリーを生成させる第1工程、
    2)前記スラリー又はそれより得られる湿潤固形分を平均粒子径2.1〜3μm及び最大粒子径10μm以下となるように湿式粉砕することによって、固形分として微粉末を含む湿式粉砕処理物を調製する第2工程、
    を含む、高純度βTCP微粉末の前駆体の製造方法。
  10. 前記スラリー又はそれより得られる湿潤固形分の水分含有量が60重量%以上である、請求項9に記載の製造方法。
  11. 湿式粉砕の溶媒が水及びアルコールの少なくとも1種である、請求項9に記載の製造方法。
  12. 前駆体が、スラリー、湿潤固形分又は乾燥粉末の形態である、請求項9に記載の製造方法。
  13. 前記スラリー又はそれより得られる湿潤固形分の固形分の結晶化度が75%以下である、請求項9に記載の製造方法。
  14. 平均粒子径2.1〜3μm及び最大粒子径10μm以下であり、かつ、塩酸不溶解分が100重量ppm以下であることを特徴とする高純度βTCP微粉末。
  15. Fe含有量が4重量ppm以下、Cr含有量が2重量ppm以下である、請求項14に記載の高純度βTCP微粉末。
  16. 比表面積が5m/g以下である、請求項14に記載の高純度βTCP微粉末。
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