JP5417639B2 - レーザ溶接方法及びレーザ溶接装置 - Google Patents
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また、上記特許文献2と3では、ワークの外周にレーザ光発生装置を複数配置したことが記載されているが、単に2個配置しただけでは、レーザ光照射位置直下の溶融は局部的になり、溶融と凝固がワーク周囲において繰り返され、溶接歪は残留する。さらに、溶接は均一に行われることを前提として、高速化も要求されるが、特許文献2や3の装置では、高速化が十分に実現できているとは言えず(ワークとレーザ光発生装置との相対的な回転速度も遅く)、まして円周上のどの箇所も同時に溶接することはできず、しかもワークとレーザ光発生装置との同期的な制御も行われているものではなかった。
ここで、溶接する対象は特に問われない。円筒状やドーナツ型等のワークに限らず、球形状、楕円球状、円錐形状、多角形状(三角錐状、四角錐形状を含む)等の様々なワークも対象可能とする。「回転するワークの同一溶接ライン上に複数のレーザ光発生装置の各々のレーザ光の集光点が位置するように制御して」とは、ワークが円筒状やドーナツ状であれば、複数のレーザ光発生装置の各々に移動テーブルが備えられ、すべてのレーザ光発生装置を同じ距離同じ向きに移動させることや、ワークが球状、楕円球状、円錐形状、多角形状(三角錐状、四角錐形状を含む)等のワークでも、移動テーブルを介して、複数のレーザ光発生装置の各々が個別に制御されて、これらのワークとレーザ光発生装置の距離を等しくすること等を言う。
本発明によれば、ワークの回転速度とレーザ光の出力とを同期させているので、ワークの回転速度に合わせてレーザ光の出力が調整され、過不足のない最適な入熱によって高品質な溶接が行われる。
本発明によれば、前記ワークを昇降動させるか、レーザ光発生装置を昇降動させるか、又は、レーザ光発生装置の傾斜角度を変えることにより、ワークの凹状の中央の内側内周(左右のL状の角部の周方向の溶接ライン)や凸状の中央の外側外周(左右のL状の周方向の角部の溶接ライン)を、ワークの外周又は内周の水平ラインからでなくとも上記溶接方法により溶接することができる。
本発明によれば、ワークの外周の複数のレーザ光発生装置が対称位置に同じ高さ位置で配置されていると、複数の各レーザ光が干渉するおそれがあるが、前記複数のレーザ光発生装置を昇降動させる高さ位置や傾斜角度を異ならせることで、複数の各レーザ光が干渉しないようにして前記ワークの内周を溶接することができる。
本発明によれば、中心のワークを回転テーブルにより回転させると、このワークの外周にはワークからの距離が等しく等間隔で配置される複数のレーザ光発生装置の各々のレーザ光がワークの同一箇所を繰り返し照射して溶接するので、ワークの全周に溶接歪のない均一な溶接が行われる。すなわち、円筒状やドーナツ型等のワークに限らず、球形状、楕円球状、多角形状等の様々なワークであっても、複数のレーザ光発生装置の各々と回転するワークとの距離が等しくなるように制御するので、これにより、ワークの溶接ライン上に複数のレーザ光発生装置の各レーザ光の集光点が位置し、同一ライン上を各レーザ光が同一箇所を複数回照射して溶接することで、ワークの外周又は内周の同一ライン上を溶接歪のない均一な溶接を行うこととなる。
ここで、レーザ光発生装置は、ワークの外周に複数個が等間隔で配置されるが、レーザ光発生装置の個数が多く配置できれば多く配置できるほど、ワークの外周の各位置を同時かつ均一的に溶接することが可能になる。なお、レーザ光発生装置を溶接する方向に移動させるものではないので、ワークに対する溶接姿勢がずれるような心配はなく、レーザ溶接装置としての構造の簡略化が図られる。
本発明によれば、すべてのレーザ光発生装置が半径方向にすべて同時に又は個別に移動するので、例えば、円筒状又はドーナツ状のワークだけでなく、楕円形状や多角形状のワークであってもその外周や内周の直径や大きさに合わせて同じ距離だけ離れて溶接する場合の設定が可能になる。
本発明では、周方向の溶接ライン全体を同時かつ均一に溶融することを目的としており、そのためには、ワークWの大きさや形状にもよるが、ワーク外周のレーザ光発生装置3の数は多いほうが好ましい。しかし、一定の大きさを有するレーザ光発生装置をそのように多数配することは物理的に無理である。また、できたとしても多数のレーザ光発生装置を必要となるのでコスト高になることは免れない。本実施の形態では、後述する温度分布解析結果からは、直径50mmのワークについては出力50Wレーザを使用するとしてレーザ光発生装置3が8基必要とすることが好ましいと考えられる。これを基にレーザ光発生装置3の数を検討すると、直径25mmのワークでは最低4基必要であり、直径17mmのワークでは最低3基必要であると考えられ、逆に、直径100mmのワークでは最低16基必要であると考えられる。
本実施の形態では、溶接ベローズの外周エッジ溶接(図5に示すベローズWbの外周エッジ溶接y2)と内周エッジ溶接(図5に示すベローズWbの内周エッジ溶接y1)について説明する。まず、図3に示す上下一対の治具T1によりワークWを挟み、上方向より押さえて回転テーブル9に固定する。そして、移動テーブル7により、レーザ光発生装置3の一つ(例えば3A)を移動させることで、その他のレーザ光発生装置3(B〜H)も同じ距離同じ方向に移動させ、8個のレーザ光発生装置3(A〜H)のワークWに対する各レーザ光の照射距離を等しくする。また、昇降動可能な中央の中央台10Cと左右の側方台10Aにより、8個のレーザ光発生装置3(3A〜3H)のレーザ光が各々水平にワークWの溶接ラインを照射するようにする。
ここで、本実施の形態では、ワークとワークとの接触箇所である溶接ラインと複数の各レーザ光発生装置3のレーザ光Laとは、同じ水平ラインになるように、中央台10Cと側方台10Aにより調節されている。
ワークWの内周溶接の場合は、ワークに対して各レーザ光発生装置3が干渉することが考えられる。しかし、本実施の形態では、複数の各半導体レーザ3のレーザ光発生装置3は、半径方向への位置決めと傾斜角度の調整が可能な載置台5上に設置される。半径方向の位置決めによってワークWの内径に合わせて溶接を行う。また、昇降動可能な中央の中央台10Cと左右の側方台10Aにより高さ位置を調整できる。すべてのレーザ光発生装置3(3A〜3H)の半径位置や角度を調整することや高さ位置を変えることで、ワークWの内周の溶接を行う場合に、各レーザ光発生装置3が干渉しないようにできる。
したがって、図4に示すように、複数の各レーザ光発生装置3のレーザ光Laを斜め上方からワークWの内周に斜め照射(集光)させることができ、これにより一台のレーザ溶接装置1により、図5のワークWbの内周と外周の溶接が可能になる。なお、複数の各レーザ光発生装置3のレーザ光Laを斜め下方からワークWbの内周に斜め照射(集光)させることも可能である。
例えば、ニッケル基の超合金であるインコネル(INCO社の登録商標)の溶接ベローズの高品質化を目的とするレーザ溶接は以下のように行われる。
溶接ベローズWbは、図5(a)(b)に示すように、外径50mm、内径25mm、厚さ0.1mmのドーナツ状であり、その内外周のエッジ溶接が行われる。符号y1、y2は溶接箇所を示す。酸化を防止するために、レーザ溶接装置1全体をケースで囲むと共に、このケース内に不活性ガスを充填して気密性を確保して溶接が行われる。
レーザ溶接装置1の移動テーブル7は、半径方向移動速度が10mm/sec以上であり、半径方向ストロークが50mm以上である。チルトテーブル8は、傾き速度は10度/sec以上であり、傾き範囲は90度以上である。Z軸移動テーブル10Aは、移動速度が1mm/secであり、移動ストロークが100mmである。回転テーブル9は、回転速度が10rpsである。
このように、円形または円筒形の薄板ワークの外周または内周がレーザ溶接され、その際の歪みを防止することができる。また、レーザ出力の増減を緩やかに行うことで、従来のレーザに見られる急峻な加熱冷却を避け、割れなどの溶接欠陥発生を防止する。図2の温度計測部12と制御部11により、溶接部の温度計測によって各レーザ光の出力が精密に制御されるため、過剰な昇温を防ぐことができ、スパッタやプラズマを生じず、成分蒸発もない溶接が可能となる。
例えば、圧力センサーの高感度化を目的とするレーザ溶接は以下のように行われる。この圧力センサーであるワークWaは、図6(a)(b)に示すように、台座WkとダイヤフラムWd等から構成され、外径25mm、厚さ数十μmのインコネル製のダイヤフラムWdと台座(肉厚0.5mmで電極が配されている。)Wkのエッジ溶接が行われる。ダイヤフラムは、金属製の薄膜で、圧力の検知や流体の圧力差を駆動力に変える機能部品である。符号y3は溶接箇所を示す。酸化を防止するために、レーザ溶接装置1全体をケースで囲むと共に、このケース内に不活性ガスを充填して気密性を確保して溶接する必要がある。本実施の形態の方法によれば、ダイヤフラムWdの溶接歪みの低減が図られる。
例えば、リチウム一次電池の封口のレーザ溶接は以下のように行われる。このリチウム一次電池であるワークWrは、図7(a)(b)に示すように、薄板状(直方体形状)の上下の一方(上方の負極端子)側において外周部材G1とその蓋体G2とをレーザで溶接している。封口の密閉性を高めるためである。符号y4は溶接箇所を示す。酸化を防止するために、レーザ溶接装置1全体をケースで囲む。本実施の形態の方法によるとき、レーザ光Laの傾きを調整して、斜め上方からレーザ光Laを照射する。このリチウム一次電池Wは直方体形状であるので、外周のレーザ光発生装置3と移動テーブル7は、各々個別の内外周への移動を行うが、制御部11により、複数のレーザ光発生装置3の各々のレーザ光Laの集光点が常に回転するワークWrの溶接ライン上に位置するように制御することで、溶接歪みの低減が図られる。
次に、上記実施の形態における温度分布解析を行った結果を説明する。
解析方法は、解析ソフトとして、Quick Welder((株)計算力学研究センター製のソフト名)を使用した有限要素法に基づく熱伝導解析により行った。解析モデルは、ワーク周囲に配置するレーザ光発生装置3を8個と仮定し、ワークWiとして板厚0.1mmのインコネル製円板(外径50mmで、内径25mm)Wiを想定し、それを2枚重ね、その外周エッジを溶接するとした。想定ワークWiの1/8を図8に示すように抜き出し、さらに解析の都合上、同サイズの長方形に近似させて解析を行った。解析条件は、レーザ出力を100Wとし、インコネル製円板Wiへの吸収率を30%と仮定した。ワークWiの回転速度から外径における周速度を計算し、それと等しくなるように長方形解析モデルにおいてレーザ光を上から下へ同一方向に繰り返し移動させた。その解析結果を図9に示す。
2 基台、
3,3A〜3H レーザ光発生装置
5 載置台、
6 集光レンズ、
7 移動テーブル、
8 チルトテーブル、
9 回転テーブル、
10C 中央台、10A 左右の側方台、
La レーザ光、
W,Wb,Wa,Wd,Wi,Wr ワーク、
y1,y2,y3,y4,1Y 溶接ライン
Claims (3)
- 中心に回転するワークを配置し、このワークの外周に等間隔に複数のレーザ光発生装置を配置し、ワークの外周又はワークの内周を溶接ラインとして周方向に溶接するレーザ溶接装置において、
ワークを回転自在に支持する回転テーブルと、ワークの外周の複数のレーザ光発生装置の各々をワークを中心位置とする放射状の内外に移動させる移動テーブルとを備え、回転するワークの溶接ライン上に複数のレーザ光発生装置の各々のレーザ光の集光点が位置するように制御するものであり、
前記回転テーブルは、昇降動自在な構成であるか、又は、傾斜角度が調整可能に構成されていることを特徴とするレーザ溶接装置。 - 中心に回転するワークを配置し、このワークの外周に等間隔に複数のレーザ光発生装置を配置し、ワークの外周又はワークの内周を溶接ラインとして周方向に溶接するレーザ溶接装置において、
ワークを回転自在に支持する回転テーブルと、ワークの外周の複数のレーザ光発生装置の各々をワークを中心位置とする放射状の内外に移動させる移動テーブルとを備え、回転するワークの溶接ライン上に複数のレーザ光発生装置の各々のレーザ光の集光点が位置するように制御するものであり、
前記レーザ光発生装置は、昇降動自在な構成であるか、又は、傾斜角度が調整可能に構成されていることを特徴とするレーザ溶接装置。 - スポットが楕円となる複数のレーザ光を、その長径方向を溶接方向に揃えて照射し、各レーザ光による溶接ライン上の加熱さらには溶融部が他のレーザ光による溶接ライン上の加熱さらには溶融部に連続させ、周方向の溶接ライン全体を同時かつ均一に溶融して溶接することを特徴とする請求項1又は2記載のレーザ溶接装置。
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