JP5398508B2 - 軸流送風機のブレード - Google Patents
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Description
かかる観点から、近年はFRP複合材(繊維強化プラスチック複合材で、以下の説明ではFRP複合材という)で製造されるブレードが採用されるようになった。
図6は、かかる従来の軸流送風機のブレードの1例を示し、(A)はブレードの側面図、(B)は(A)におけるE−E線に沿う断面図である。
翼部1は、FRP複合材で構成された硬質で強靭な強化層4で周囲を囲んだ形態となって、内部をウレタンフォームなどの樹脂発砲体からなる内部充填層5によって構成している。また前記フランジ部2はFRP複合材で構成されており、該フランジ部2には、機械加工によってボルト穴を明けて、ネジ止と接着により固定したロータ軸への取り付け用の金属ボルト3が設けられ、該金属ボルト3によってロータ軸に固定される。
即ち、前記軸流送風機のブレード100の翼部1は、FRP複合材で構成された硬質で強靭な外皮の強化層4で翼長全体の外郭を形成し、この外郭を形成した強化層4により、ウレタンフォームなどの樹脂発砲体からなる内部充填層5全体を、包んだ構成となっている。
つまり、翼部1の軸方向に外郭である強化層4を形成し、この強化層4内に軸方向に、ウレタンフォームなどの樹脂発砲体からなる内部充填層5を装填する構造であり、さらにFRP複合材で構成されたフランジ部2は、前記翼部1の強化層4と一体に形成されている。
前記翼部とフランジ部とを、該翼部の軸方向に腹側部と背側部とに2分割して接着材にて結合して接着層を形成し、前記腹側部と背側部と接着層との3層構造のブレードに構成し、
更に前記翼部は、翼プロフィルの外周部を強化繊維材で構成して腹側強化層と背側強化層の2つに分割し、該2つの強化層の内側のそれぞれに前記強化繊維材よりも軟質で軽量の材料からなる充填材を充填して腹側充填層と背側充填層の2つの充填層を形成し、さらに前記フランジ部を前記2つの強化層に合わせて2分割し、前記2つの強化層及び2つの充填層と2つのフランジ部を前記接着材にて同時に接着して接着層を形成したことを特徴とする。
そして、かかる軸流送風機のブレードの製作方法は、翼プロフィルの外周部を強化繊維材で構成した強化層と、該強化層の内側に前記強化繊維材よりも軟質で軽量の材料からなる充填材で構成した充填層と、前記強化層と同一材料にて成形した前記フランジ部とを、前記翼部の軸方向に腹側部と背側部とに2分割にしてそれぞれ形成した後、前記2分割にした強化層と充填層とフランジ部とを、前記2分割部にて接着材にて同時に接着して腹側部と背側部との間に接着層を形成して、腹側部と背側部と接着層との3層構造からなるブレードを形成することを特徴とする。
即ち、前記特許文献1のような、翼長全体の外郭を形成した強化層と、かかる強化層に包まれた内部充填材を翼長方向に一体に形成するとともに、フランジ部も前記翼部の強化層と一体に形成する構成に比べて、ブレードの製作工数を大幅に低減でき、かかるブレードの製作工数の低減によりブレード製造コストも低減できる。
また、耐摩耗保護層を繊維強化層と耐摩耗塗料とを積層した層とすることにより、保護層の厚さを厚くすることができ、耐摩耗性に関する寿命を延長することができる。
また、一定高さよりも翼根本寄りの部分では、前記部分よりも周速が小さく送風効率に大きな影響が無いので、流体出口部の先端部の曲率半径を前記一定量よりも大きく構成することにより、遠心力による大きな応力を受け持つことができる。
図1は本発明の第1実施形態における軸流送風機のブレードの正面図、図2は前記第1実施形態における図1のA−A断面図、図3(A)は前記第1実施形態における図2のB−B断面図の接着前の図であり、図3(B)は図3(A)のG部拡大図であり、強化繊維の配列状態を示す図である。
図1〜2において、軸流送風機のブレード100は、FRP複合材(繊維強化プラスチック複合材で、以下の説明ではFRP複合材という)で製造され、翼部1とフランジ部2とが一体で形成されている。
翼部1は、FRP複合材で構成された、硬質で強靭な外皮である強化層4を、腹側1aから背側1bの全周に亘って配置している。該強化層4には、強化繊維としてカーボン樹脂やガラス繊維、高分子繊維を用いる。マトリックス樹脂としては、ビニルエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂を用いる。
前記強化層4の内部には、軽量で耐熱性のある材料つまりクロス材(織物)、短繊維のチョップ材やマット材、無機物フィラーあるいはそれらの混合材等を用いた充填材が充填されて充填層5を構成している。
そして、前記翼部1の強化層4、該強化層4の内部に配置された充填層5、及びフランジ部2が、腹側1aと背側1bとに2分割されて、さらに腹側1aの分割部と背側1bの分割部とを高分子接着材にて同時に接着して接着層6を形成する。
そして、前記フランジ部2(2a、2b)には、機械加工によってボルト穴を明けて、金属ボルト3によってロータ軸(図示せず)に固定している。
かかるブレード100の製作方法は後述する。
前記のように、本発明の実施形態にかかるブレード100は、FRP複合材からなり、前記強化層4、該強化層4の内部に配置された充填層5、該強化層4と充填層5とを、腹側1aと背側1bの分割部にて接着材により同時に接着した接着層6と、前記フランジ部2a、2bとにより構成される。
従って、前記強化層4は、外皮などの応力の高い部分に使用し、高い応力を受け持つ。
また、前記充填層5は、軽量性を保ちながら、前記強化層4を保持し、外皮の強化層4が破損した場合にもブレード100自体が破壊しないように保持する。また、翼の内部への異物の侵入も防止する。
さらに、前記接着層6は、前記のように、強化層4と充填層5とを、腹側1aと背側1bの分割部にて接着材により同時に接着するものであり、接着力があり延性、靭性に優れた材料が適する。なお、接着材として充填材によって構成してもよい。
従って、かかるブレード100の軽量化により次の効果が得られる。
(1)回転体(翼及びロータ軸)の軽量化及び回転体構造の簡素化
ブレード100可変式軸流送風機の回転体(翼及びロータ軸)の構造、体格はブレード100の遠心力及びブレード100の開閉に要する力によって決まるため、ブレードの軽量化は回転体の軽量化、簡素化に繋がり設備全体のコスト低減を可能とする。
(2)メンテナンスの簡素化
軸流送風機の点検周期は、ブレード可変機構摺動部の寿命によって決まるが、軽量化により摺動部面圧が半分程度となり、摺動部材の交換時期を摺動部面圧が従来のものに比べて2倍にできる。また、点検作業時にクレーンではなく、人の手で作業可能となり、作業の手間が大幅に低減される。
(3)信頼性の向上
軸流送風機のトラブルは、制御油圧系に起因するものが多いが、ブレードの軽量化により制御油圧を下げることができ、かかるトラブル回避が可能である。
図3(A)は、かかる第1実施形態における図2のB−B断面図の接着前の図である。
図3(A)に示すように、翼部1の翼プロフィル及びフランジ部2a、2bは、翼部1の軸方向(図1のX方向)に腹側1aと背側1bとに2分割される。
このフランジ部2aを前記強化層4と一体に形成する際の強化繊維FRPの配列状態を図3(B)に示す。この図3(B)のように翼部1の腹側1aからフランジ部2aにかけて連続的に伸びるように縦方向に配置されるため、フランジ部2aと翼部1の腹側1aとの一体化が保持されるとともにフランジ部2aの強度が十分に確保される。そしてこのフランジ部2aにボルトが装着される。
また背側1bの分割部も前記と同様に、強化層4と充填層5とフランジ部2bを一体にして設けられる。
さらに、フランジ部2a、2bの充填層5の部分も、腹側1aの分割部および背側1bの分割部のそれぞれの充填層5と一体に形成される。
図4の(A)は本発明の第2実施形態における軸流送風機のブレードにおける図2相当図(図1のA−A断面図)、(B)はU部の拡大図の第1例、(C)はU部の拡大図の第2例である。
この第2実施形態においては、前記のような3層構造の翼部1の流体入口部1zを、耐摩耗保護層7で被覆している。
前記耐摩耗保護層7は、図4(B)、(C)に示すように、耐摩耗塗料7aと繊維強化層7bとを積層している。
前記耐摩耗塗料7aは、金属あるいは無機物の粉末、フィラーを樹脂に混合したものを使用する。さらに、前記繊維強化層7bの繊維には、ガラス、高分子の繊維を使用する。
また、前記耐摩耗保護層7は、図4(B)に示す第1例では、耐摩耗塗料7aと繊維強化層7bとを交互に積層している。各層の厚さは、例えば0.3〜0.5mmである。
また前記耐摩耗保護層7は、図4(C)に示す第2例では、耐摩耗塗料7a1層と繊維強化層7b2層を交互に積層している。各層の厚さは、例えば0.3〜0.5mmである。
前記以外の要素は、前記第1実施形態と同一であり、これと同一の部材は同一の符号で示す。
さらに、繊維強化層7bと耐摩耗塗料7aとの交互の積層における、繊維強化層7bと耐摩耗塗料7aの層数を、保護強度に応じて設定することが可能になり、軽量化を図りつつ耐摩耗性を向上できる。
図5は本発明の第3実施形態における軸流送風機のブレードで、(A)は正面図(図1相当図)、(B)は(A)のF−F断面図、(C)は(B)におけるD部詳細の第1例、(D)は(B)におけるD部詳細の第2例を示す。
この第3実施形態においては、前記のような3層構造のブレード100の翼根部1yから一定高さSよりも大きい、翼先端部1gの形状を図5(C)のように構成する。即ち翼先端部1gの流体出口部の先端部半径(曲率半径)4cを、例えばR=1mm程度に一定量よりも小さく構成する。
また、前記3層構造のブレード100の翼根部1yから一定高さSよりも小さい、翼根本部1hの形状を図5(D)のように構成する。即ち翼根本部1hの流体出口部の先端部半径(曲率半径)4dを、例えばR=5mm程度に一定量よりも大きく構成する。
前記以外の要素は、前記第1実施形態と同一であり、これと同一の部材は同一の符号で示す。
このように構成すれば、翼先端部1gは高周速であることから、送風効率や騒音に大きな影響のある翼先端部1gは、先端部の曲率半径4cを一定量よりも小さく構成して(例えばR=1mm程度)、送風効率を高めるとともに騒音を低減することができる。
また、前記一定高さSよりも小さい翼根本部1hでは、前記翼先端部1gよりも周速が小さく送風効率に大きな影響が無いので、流体出口部の先端部の曲率半径4cを前記一定量よりも大きく構成して(例えばR=5mm程度)、遠心力による大きな応力を受け持つことができる。
1a 腹側
1b 背側
1g 翼先端部
1y 翼根部
1h 翼根本部
1s 繊維補強層
2、2a、2b、2c フランジ部
2c0 一体構成フランジ
3 金属ボルト
4 強化層
4c 先端部半径(曲率半径)
4d 先端部半径(曲率半径)
5 充填層
6 接着層
7 耐摩耗保護層
7a 耐摩耗塗料
7b 繊維強化層
100 ブレード
S 一定高さ
Claims (5)
- 繊維強化プラスチック複合材からなる翼部と、該翼部の翼根部をロータ軸へ取付けるフランジ部とを結合してなる軸流送風機のブレードにおいて、
前記翼部とフランジ部とを、該翼部の軸方向に腹側部と背側部とに2分割して接着材にて結合して接着層を形成し、前記腹側部と背側部と接着層との3層構造のブレードに構成し、
更に前記翼部は、翼プロフィルの外周部を強化繊維材で構成して腹側強化層と背側強化層の2つに分割し、該2つの強化層の内側のそれぞれに前記強化繊維材よりも軟質で軽量の材料からなる充填材を充填して腹側充填層と背側充填層の2つの充填層を形成し、さらに前記フランジ部を前記2つの強化層に合わせて2分割し、前記2つの強化層及び2つの充填層と2つのフランジ部を前記接着材にて同時に接着して接着層を形成したことを特徴とする軸流送風機のブレード。 - 前記3層構造のブレードの流体入口部を、繊維強化層と耐摩耗塗料を積層した耐摩耗保護層で被覆したことを特徴とする請求項1記載の軸流送風機のブレード。
- 前記3層構造のブレードの翼根部から一定高さよりも、翼先端部側の流体出口部の先端部の曲率半径を一定量よりも小さく構成し、前記一定高さよりも翼根本寄りの流体出口部の先端部の曲率半径を前記一定量よりも大きく構成したことを特徴とする請求項1記載の軸流送風機のブレード。
- 前記一定高さよりも翼根本寄りの流体出口部の先端部の曲率半径を前記一定量よりも大きく構成し、且つかかる部分を繊維補強層で被覆したことを特徴とする請求項3記載の軸流送風機のブレード。
- 繊維強化プラスチック複合材からなる翼部と、該翼部の翼根部をロータ軸へ取付けるフランジ部とを結合してなる請求項1記載の軸流送風機のブレードの製造方法において、
翼プロフィルの外周部を強化繊維材で構成した強化層と、該強化層の内側に前記強化繊維材よりも軟質で軽量の材料からなる充填材で構成した充填層と、前記強化層と同一材料にて成形した前記フランジ部とを、前記翼部の軸方向に腹側部と背側部とに2分割にしてそれぞれ形成した後、前記2分割にした強化層と充填層とフランジ部とを、前記2分割部にて接着材にて同時に接着して腹側部と背側部との間に接着層を形成して、腹側部と背側部と接着層との3層構造からなるブレードを形成することを特徴とする軸流送風機のブレードの製造方法。
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