JP5393152B2 - 金属マトリックス複合体本体、及びこれを作製するための方法 - Google Patents

金属マトリックス複合体本体、及びこれを作製するための方法 Download PDF

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Description

発明の詳細な説明
[技術分野]
[0001]本発明は、金属マトリックス複合体(MMC)本体に関し、詳細には、修正が加えられた鋳造技法によって作製されたMMCに関する。本発明はさらに、そのような鋳造MMCから作製されたいくつかの例示的な成形品を示す。
[背景技術]
[0002]金属マトリックス複合体は、一般に、モノリシック材料では得ることのできない、1つ又は複数の物理的性質或いはこれらの性質の特定の組合せを有する、比較的新しい種類の材料である。複合体材料は、典型的には、本体全体を通して連続しており又は相互接続している少なくとも1種のマトリックス材料と、このマトリックス材料の全体に分散し又は分布している1種又は複数の強化材料とからなる。複合体材料の強化成分は、不連続体の形をとることができ、又は互いにわずかに隣接していてもよい。名前が示唆する通り、金属マトリックス複合体(時々、略称として「MMC」と呼ばれる)は、マトリックス成分として1種又は複数の金属を特徴とする。MMC用の強化材料構成要素は、しばしばセラミック材料であり、特に炭化ケイ素、SiCなどの硬質セラミック材料であるが、これに限定するものではなく、一般には、強化材料の定義に適うものでありまた金属マトリックスに適合する任意の物質にすることができる。したがって、MMC本体の強化構成要素は、別の金属にすることもできる。そのようなMMCの例は、銅マトリックスに分散されたタングステン微粒子である。
[0003]近年商業的用途で見られるようになったMMCの1つの種類又は群は、アルミニウム又はアルミニウム合金マトリックスに分散された炭化ケイ素微粒子のものであり、これは略称として「Al/SiC」で知られている。この種類のMMCは、様々な経路によって生成することができる。そのような1つの手法は、事実上の粉末冶金であり、Al及びSiCの粉末を混合し、加圧し、焼結する。別の手法では、しばしば「プリフォーム」と呼ばれるSiC微粒子の自己支持性多孔体を形成し、溶融状態にあるアルミニウム又は合金をプリフォームに浸透させる。溶融金属は、真空中でプリフォームに引き入れることができ、これを、時々「高圧鋳造法」と呼ばれる加圧下での押込みを行うことができ、又は溶融金属とプリフォーム材料との間に湿潤状態が生成された場合には、プリフォームに吸収させてもよい。後者の技法に関し、その湿潤状態は、ナトリウムのような金属、又は氷晶石や金属フッ化物のような塩、又は窒化マグネシウムのようなあるセラミックスなどの湿潤剤でプリフォーム材料を被覆することにより、しばしば生成される。例えば、米国特許第4056874号及び4828008号を参照されたい。
[0004]Al/SiC MMCは、これを数多くの用途に魅力的な材料にする、いくつかの性質の組合せを示す。特にこの材料は、精密部品を作製するのに重要な、低密度(軽量)及び高熱伝導率を有するがより高い剛性及びより低い熱膨張係数を有するような、非強化アルミニウムの望ましい性質の多くを提供する。さらに、これらの材料は、セラミックス又はほとんどのセラミック組成物よりかなり高い機械的靭性を提供する。
[0005]しかし、精密部品の多くには、大きいサイズであること、即ち20kgよりも重い質量であること、及び/又は長さが数分の1メートル、場合によっては1メートルよりも長い1つ又は複数の寸法を有することが求められている。そのようないくつかの構成部品が、半導体製作装置産業にはあり、例えば、そのサイズをかなりのものにする必要があるガントリービーム及び機械ベースがある。残念ながら、市販のAl/SiC MMCの製作技法のほとんどは、そのような大きな構造を少なくとも単一の一体部品へと、いずれも作製することができず、又はそのように作製する必要に迫られている。
[0006]この問題に対する1つの可能性ある解決策によって、鋳造アルミナなどの、最近の鋳造セラミックスの開発がもたらされてきた。しかし、アルミナはAl/SiC MMCほど軽くはなく、さらに破壊靭性が不足している。
[0007]この問題に対する別の可能性ある解決策は、鋳造可能な形をとるMMCの開発であった。おそらく、最も周知の鋳造可能なMMCは、Alcan Aluminum Companyの子会社であるDuralcanによって開発され商品化された。この鋳造可能なアルミニウムベースのMMCは、強化材としての炭化ケイ素又は酸化アルミニウムの品種に製造された。これらの鋳造可能なMMCは「撹拌鋳造」法によって作製され、通常なら湿潤し難いセラミックに溶融金属を密接させるインペラを用いて、真空中又は不活性雰囲気中で溶融アルミニウム金属浴に、セラミック微粒子を撹拌しながら入れた。セラミック微粒子を約30体積パーセントまで含有する鋳造可能なMMCは、市販されている。
[0008]その他のMMC製作技法も、鋳造可能なMMCを作製するのに修正の余地がある。しかし一般に、粉末冶金又はプリフォーム溶浸技法によって作製されたMMCは、そのマトリックス金属が完全に溶融する状態にまで加熱した場合であっても、容易に流動せず、したがって容易に鋳造することができない。典型的には、強化材の負荷(loading)は鋳造性に高すぎるものであり、追加のマトリックス金属を添加しなければならない。さらに、また特に溶浸プリフォームによって作製されたMMCに関しては、しばしば、強化材本体を一緒に保持する少なくとも非常に薄い被膜、スケルトン、又はスキン層があり、これを破壊した後に、MMCを鋳造可能にすることができる。これは、通常の要件の他に、強化材の負荷を希薄にするためにより多くのマトリックス金属を添加することである。この粉砕は、高剪断インペラを用いて実現することができる。例えば、その内容の全体が参照により本明細書に特に組み込まれている米国特許第6223805号を参照されたい。
[0009]所望の大きな構成要素及び構造は、鋳造技法によって作製することができる。しかし、補強材の負荷が約30又は35体積パーセントよりも高い場合、鋳造可能な形でMMCを生成することは難しい。精密部品市場で求められる所望の性質、即ち高剛性及び低CTEは、補強材の体積負荷によって大幅に制御されるので、鋳造性の理由に関する負荷に対するこの制約が、実現することのできる性質の改善を制限する。
[0010]求められているものは、このように限定されない鋳造可能なMMCであり、特に、強化材構成要素のより高い負荷を有する鋳造可能なMMCである。本発明は、ある解決策を提供する。
[発明の目的]
[0011]したがって、材料開発の現況から考えると、本発明の目的は、大きな一体型構造の製造に繋がる材料及び/又は方法を開発することである。
[0012]本発明の目的は、形状製作のための鋳造又は鋳造様技法を利用することである。
[0013]本発明の目的は、成形MMC体を作製するために、成形多孔体(例えば「プリフォーム(preform)」)を溶浸させる必要を回避することである。
[0014]本発明の目的は、強化構成要素の荷重(loading)が比較的高いMMC体を製造することである。
[0015]本発明の目的は、軽く、剛性及び靭性を有する材料を生成することである。
[0016]本発明の目的は、少なくともセラミックスと比較して、機械加工するのが比較的容易な金属複合体材料を生成することである。
[0017]本発明の目的は、孔を開け易くネジを切り易い金属複合体材料を生成することである。
[発明の開示]
[0018]本発明の、これら及びその他の目的は、金属マトリックス複合体材料(MMC)によって、特に鋳造又は鋳造可能なMMCによって達成される。具体的には、また本発明によれば、鋳造可能なMMCを、この材料が鋳造可能になるように少なくとも融点まで加熱する。次いで「溶融」MMCを、型に、好ましくは所望の形状の型に鋳込む。強化材本体がブラウン運動によっていつまでも懸濁するようにそれほど小さくないならば(例えばコロイドサイズ)、事実上全ての知られている鋳造可能なMMC材料は、この時点で層状化し始める。即ち、マトリックス金属とは異なる密度の強化構成要素が、懸濁液から沈降し始めて沈殿物を形成し、即ち、均質状態に対して高い体積負荷であるゾーンが形成される。典型的には、強化構成要素は、マトリックス金属の場合よりも高い理論密度を有し、したがって強化材の沈降は、型の底部で生じ、型の上部では生じない(「上方(above)」、「底部(bottom)」、「下方(down)」、「上部(top)」、及び「上(up)」という用語は、本明細書では、重力の方向に対する方向を指すと解釈される)。同時に強化材構成要素の、マトリックス金属内で高い負荷がかかっており、また低密度で負荷がかかっており、又は除去されてさえいるゾーンが、沈降ゾーンに隣接して(通常は上方に)形成される。低密度で負荷がかかっているMMCのゾーンを、この時点でデカントしてもよく、それによって強化材に富むゾーンを残し、次いでこれを凝固し、型から取り外す。或いは、層状化したMMC鋳造を凝固させ、次いで低密度で負荷がかかったゾーン(sparsely loaded zone)を、例えば鋸で切り、機械加工し、侵食させ、腐食させるなどして、強化材に富むゾーンから除去してもよい。
[0019]任意の特定の理論又は説明に拘泥するものではないが、MMCのマトリックス金属が、調和して溶融しない2種以上の金属を含有する場合、強化材本体は、おそらくは主要相の成長クリスタライトによって、凝固中に押し分けられる(shoved)こともある。このように、凝固によって、強化材本体は均一に分布せず、そのまま効率的に充填されない。したがって、本発明の好ましい実施形態では、沈降及び/又は凝固プロセス中に、力学的エネルギー、好ましくは振動の形をとるエネルギーを、MMC溶融体に加える。加えられたエネルギーによって、強化材本体を落ち着かせ、より効率的に充填することが可能になり、それによって鋳造複合体の体積負荷が増大する。
[発明を実施するための形態]
[0038]鋳造可能なMMCは、複合体材料の大きく複雑な構造を容易に製作することができる、プラットフォーム又は経路である。全体的な形状を鋳造したら、そのMMC材料の鋳造物をさらに加工して、MMCの強化構成要素の体積負荷を増大させ、それによって、高剛性及び/又は低CTEなどの強化構成要素の所望の性質を強化する。
[0039]具体的には、本発明の好ましい実施形態の本発明の技法を実施するために、鋳造可能なMMC組成物を提供し、MMCのマトリックス金属を溶融する。代替例では、通常なら鋳造できないMMCを提供し、その後、例えば追加のマトリックス金属を溶融マトリックスに供給することによって、鋳造できるようにする。強化材を多量に投入する場合、及び/又は強化材粒子を網状構造にし又はその他の方法で互いに結合させる場合には、粉砕が必要になることもある。例えば、前述の米国特許第6223805号を参照されたい。強化材構成要素は、典型的には依然として固体であるが、便宜上この状態でのMMCを、本明細書では「MMC溶融体」又は「溶融MMC」と呼ぶ。次いで溶融MMCを、好ましくは所望の形状の1つである型に鋳込む。次いで、通常なら強化材本体の分散を助けることができる任意の撹拌又は掻き混ぜを、停止させる。
[0040]混合しないまま放置し、この時点で、事実上全ての既知の鋳造可能なMMC材料は層状化し始めることになり、即ち、マトリックス金属とは異なる密度(ほとんどの場合大きい)の強化材構成要素は、懸濁液から沈降し始めて沈降物を形成し、即ち、均質状態に比べて高い体積負荷のゾーンを形成する。同時に、強化材構成要素のマトリックス金属内で高度に負荷がかかり、低密度で負荷がかかり、又はさらに除去されたゾーンが、沈降したゾーンに隣接して(通常は上方に)形成される。低密度で負荷がかかったMMCのゾーンを、この時点でデカントし、強化材に富む沈降ゾーンをそのままにし、次いで凝固させ、型から外してもよい。或いは、層状化MMC鋳造部物を凝固させ、次いで鋸引き、機械加工、侵食、腐食などによって、低密度負荷ゾーン(sparsley loaded zone)を強化材に富むゾーンから除去してもよい。
[0041]そのような材料の典型的な微細構造(microstructure)を、図1A及び1Bに示す。この材料は、炭化ケイ素セラミック微粒子が、主にアルミニウム金属を含有するマトリックス全体に分布した状態の、鋳造Al/SiC MMCである。分布は、少なくとも巨視的スケールでは多かれ少なかれ均質である。Al/SiC MMC、特に鋳造可能なMMCは、一般に、MMCの金属成分の補助的又は合金成分として、いくらかのケイ素金属も含有する。この場合ケイ素は、顕微鏡写真のグレー相11として見ることができる。顕微鏡写真に見られる最も明るい相13は、アルミニウム又はアルミニウムに富む金属溶液である。最も暗い相15は、炭化ケイ素微粒子である。この明るい相の最大領域を「一次」アルミニウムと呼び、これは、溶融状態からの冷却中に凝固する最初の相であることを意味する。アルミニウム−ケイ素系などの単純な2成分合金相の図では、凝固する2つの相:アルミニウム含有ケイ素相及びケイ素含有アルミニウム相しか存在しない。したがってこの顕微鏡写真では、多数のストライプ又は短い平行線を含有するように見える領域によって示される、凝固する溶融体の最後の部分を、「共晶組成物」と呼ぶ。これは、最も低い融点を有す組成物であり、調和して凍結し、即ち単一の温度及びある範囲の温度を超えないで凍結することを意味する。しかし凝固すると、この共晶組成物はケイ素とアルミニウムに富む相とにそれぞれ分離する。
[0042]しかし鋳造MMCの供給元は、図1Bの鋳造MMCのミクロ構造の略式検査によって、少なくともある量のSiC粒子の「凝集」又は「クラスター化」があることが明らかにされても、その生成物が均一であり均質であると言うこと、及びそのマトリックス金属全体の分布が、示されているよりも改善されたままになっていると言うことを好む。いかなる特定の理論又は説明にも拘泥するものではないが、出願人は、SiC粒子から凝集塊又はクラスターへの組織化が、マトリックス金属の凝固中に生じ、具体的には主要相(primary phase)金属結晶の核形成及び成長が、発生するマトリックス金属粒子からSiC粒子を押し出すと考えている。これは、共晶組成物金属を含有する領域の大部分になぜSiC粒子が位置しているかの説明を、助けることになる。
[0043]同時に出願人は、粒子を「定着させる(nest)」ための振動などの力学的動作(mechanical action)が存在しない状態では粒子ができるだけ効率的に充填されないことを示唆している、水ベースの流体中のセラミック微粒子の沈降動作などのその他の類似した証拠に気付いている。したがって、金属の凝固が一致しており一次マトリックス金属相の凝固による「粒子の押出し」がない場合であっても、MMC溶融体から沈降する粒子が、振動のない状態で非効率的に充填される可能性があるのは事実と考えられる。
[0044]図2は、本発明の鋳造Al/SiC MMC材料(Duralcan F3S.30S)の、断面の写真を示す。この場合、全体の組成は、鋳造範囲の端から端まで均質ではなく、むしろ鋳造物は溶融状態のままにされ、それによってSiC強化材を、アルミニウム合金マトリックス金属中で懸濁液から沈降させる。したがって、沈降して堆積し又はSiCに富むゾーン21は、SiC強化材が大幅に除去されている合金に富むゾーン23の下に存在する。
[0045]図3A及び3Bは、それぞれ図2の鋳造成分の、除去されたゾーン及びSiCに富むゾーンの顕微鏡写真である。沈降は完全であり、清浄である。合金相は、SiC粒子を含有しない(図3A)。沈降層(図3B)は、SiC負荷がやや高いこと以外、図1Bの非沈降MMCとほぼ同程度の均一性を有するように見える。定量的画像解析(QIA)では、この沈降ゾーンでのSiC負荷が約45体積パーセントであることを報告している。それにも関わらず、依然としてSiC粒子の凝集又はクラスター形成がある。したがって、粒子の充填は依然としてより高くなる。
[0046]図4は、本発明の好ましい実施形態の、鋳造Al/SiC MMC材料のミクロ構造を示す。SiCの体積負荷は、図1B又は3Bの場合よりも、これら3つの顕微鏡写真全てにおいてSiC粒子が実質的に同じサイズでありまた実質的に同じ粒度分布を有するとしても、明らかに大きい。さらに、SiC粒子の明らかな凝集又はクラスター形成を、少なくとも通常の目視検査では見ることはできない。それにも関わらず、このミクロ構造によって表されるMMC材料は、鋳造プロセスによって作製された。
[0047]具体的には、本発明の好ましい実施形態の本発明の技法を実施するために、鋳造可能なMMC組成物を提供し、このMMCのマトリックス金属を溶融し、MMCを鋳込み、その溶融体を、具体的には強化材本体の沈降によって層状化させる。マトリックス金属が固体状態にまで凝固するように冷却する前に、波の形をとる力学的エネルギーを、鋳込まれたMMC溶融体に与える。このエネルギーは、沈降プロセスの一部又は全てが実質的に完了した後に加えることができ、又は沈降プロセスの実質的に全てが行われる間に加えることができる。このエネルギーは、マトリックス金属が凝固するときに加えてもよい。
[0048]力学的(mechanical)な波エネルギーは、事実上振動性である。さらに、精密な波形は重要ではなく、サイン、鋸歯、及び方形波などの波形が、満足に作用すべきである。さらにこの波は、圧力波、剪断波、又はいくつかの組合せでもよい。出願人は、液体中は剪断波がどのような遠距離も伝播することができないが、溶融体を固体粒子にかなり投入することができるので、本発明のMMC溶融体にいくらかの効果を発揮できることに、気付いている。約5ヘルツから5000ヘルツの間の周波数が、満足のいくべきものであり、約20Hzから200Hzの間の周波数が好ましい。このように、エネルギーの少なくとも一部は音響周波数範囲内にすることができる。力学的エネルギー波は連続的に加えてもよく、又はパルス若しくはバーストとして加えてもよい。一連の、力の低い衝突、衝撃、揺動も、所望の結果を実現することができる。
[0049]力学的エネルギー波の振幅は、単に、強化材本体が隣接する本体に対してわずかに動くように、十分である必要があると思われる。次いで重力によって、本体を落ち着かせ、一緒に緊密に充填することになる。力学的エネルギー波の振幅は大きすぎてはならず、さもないと、凝固したMMC本体の孔の存在によって示されるキャビテーションが生ずる可能性がある。或いは、過度に高い振動度によって、緊密に充填された配置構成を形成する強化材本体がもたらされず、代わりに、溶融体の全体にわたってより均一な分散が生ずることになる。振動は、米国特許第5222542号において、この目的に適切であると記述されている。
[0050]任意の特定の理論又は説明に拘泥するものではないが、同様に又は代替例として、凝固中に与えられる力学的エネルギーは、主要相(primary phase)結晶を発生させてそこから強化材本体を押し出すための、表面エネルギーで促進される傾向を克服するのに十分であると思われる。又は力学的エネルギーは、一次クリスタライトの核形成及び成長のためのより多くの部位を生成し、したがって、より多くのより小さい一次結晶を、共晶凝固前にもたらすと考えられる。これが生じていれば、強化材本体は、共晶層の凝固が発生する前にそれだけ押し出されないであろう。
[0051]MMC又は鋳造可能なMMCを作製するためのほとんどの任意の技法は、本発明と協同して作用すべきである。例えば、米国特許第5511603号に記載されているような高圧鋳造又は圧力鋳造法、米国特許第3948650号に記載されているようなCOMPOCASTING(商標)技法、米国特許第4786467号に記載されているような撹拌鋳造法、米国特許第4828008号及び第5222542号に記載されているような常圧金属溶浸法、及び米国特許第4354964号に記載されているような粉末冶金法は、それぞれ、本発明の沈降プロセスと協同して機能すべきである。これらの特許のそれぞれの開示全体を、参照により本明細書に特に組み込む。
[0052]アルミニウム−ケイ素マトリックス金属系、Al/SiC MMCの作製において非常に一般的に使用されるアルミニウム合金系に関し、本発明は、この系が亜共晶か過共晶であるかに関わらず、機能すべきである。しかし出願人は、過共晶系において、主要相(primary phase)がケイ素金属でありアルミニウム金属ではないことを理解している(物理学者は時々、ケイ素元素を半金属又は「メタロイド」として分類するが、本発明においては金属と見なすことにする)。
[0053]本発明は、特に粒子の押出しが生ずる場合、マトリックス金属用にその他の合金系を有する鋳造可能なMMCにおいても機能すべきである。本発明は、マトリックス金属が複数の成分からなり、またこれらの成分が同時に凝固しない、鋳造可能なMMC系で機能すべきである。また本発明は、1成分マトリックス金属系、即ち凝固が一致しているマトリックス金属系においても、より高い強化粒子充填効率及びより精錬されたミクロ構造に関して利益を提供できることも事実と思われる。本発明に関連して機能すべきその他のマトリックス金属系には、マグネシウムやチタン、銅、スズ、亜鉛、鉄、ニッケル、その他の合金などの、周知の鋳造可能な金属が含まれる。ケイ素合金は一般的な鋳造合金ではないが、本発明により機能することもできる。
[0054]出願人は、強化材本体のサイズが1ミリメートル程度よりも大きい工業的に生産されている鋳造可能なMMCを、承知していない。これは、鋳造可能な状態では、ストークスの法則が効力を発揮し、本体がより大きくなるほどより早く懸濁液から沈降するからと考えられる。ほとんどの鋳造可能なMMCでは、これが問題である。本発明は沈降現象を利用するので、これは問題とは程遠く、さらに大きい強化材本体を本発明の鋳造可能なMMCで用いることが可能と考えられる。先に提示したように強化材サイズの下限は、流体分子のブラウン運動がこれらを懸濁させるのに十分激しい場合、密度がどの程度かに関係なく、十分小さい本体が決して懸濁液から流体中に沈降しないという事実によって制御されるようになる。Al/SiC MMC系では、これは、強化材本体のサイズがサブミクロンサイズの範囲に低減するまで生ずるべきではない。しかし、Duralcan Grade F3S.30Sの鋳造可能なAl/SiC(Alcan Inc.、Jonquiere、ケベック、カナダ)に関する製品概要は、サイズが3ミクロン程度のSiC粒子は沈降しないことを示すことに留意されたい。
[0055]これまで本発明は、単一サイズの強化材本体について検討してきた。注意しながら、あるサイズの範囲又は分布を有する鋳造可能なMMCも、本発明で機能すべきである。この場合、ストークスの法則の作用によって、潜在的な問題は、サイズに応じた強化材本体の偏析になる(一定の密度と仮定して)。勾配構造が望まれる場合、これは問題にならないが、この検討では、最終商品をできる限り均一な組成物として求められると想定することにする。上述のように、より大きい本体は、より小さいものよりも速く沈降し易くなる。しかしサイズの範囲がそれほど広くない場合、沈降プロセス中のサイズによる偏析の量を、最小限に保つことができる。
[0056]市販の鋳造可能なMMCのほとんどは、補強材本体に合わせた粒子を特徴とする。しかしMMCは、繊維やプレートレット(platelet)などの異なる形態を有する強化材本体で生成されている。したがって本発明は、粒子又は球体だけでなく、強化材本体用のいくつかの異なる形状で機能すべきである。具体的には、薄片、プレートレット(platelet)、及びウィスカなどの強化材の形態、又は短繊維などのその他の短い繊維も、本発明において効率的に機能すべきである。長繊維を有するMMCも、強化材繊維を丸薬の形に丸め又は巻き上げることができる場合には鋳造可能にすることができる。例えば、その内容が参照により本明細書に特に組み込まれる、日本国特許第63192830号を参照されたい。
[0057]下記の実施例の考察に見られるように、沈降及び振動技法は、鋳造MMCにおける強化材の体積負荷を上昇させる際に、実に効果的である。具体的には、かなり狭い粒度分布を有する約30体積%のSiC微粒子を含有する鋳造可能なAl/SiC MMCは、このSiC粒子を溶融アルミニウム合金内で懸濁液から沈降させることによって、約37〜45体積%に増加させることができる。沈降及び/又は凍結ステップ中に振動を加えることにより、沈殿物の負荷がさらに約50〜60体積%まで上昇する。粒度分布をいくらか広げることにより、60〜70体積%という強化材の負荷を可能にすべきである。これは、例えば240及び500メッシュ微粒子(平均粒度がそれぞれ約66及び17ミクロン)を約70:30の体積比で混合することによって、実現することができる。
[0058]下記の概略的な記述は図5を参照し、本発明の方法を実施するための手順について述べている。
[0059]2つの空気雰囲気炉(キルン(kilns))を準備する。キルンは、上部投入型でよく、少なくとも約800℃の温度に加熱することが可能である。第1のキルン51は、酸化を低減させるため、任意選択で窒化ホウ素微粒子などの塗型剤で被覆された黒鉛坩堝53を含有する。この黒鉛坩堝には、Al/SiCなどの大量の金属マトリックス複合体材料55を充填する。キルンを、少なくともMMC材料の融解温度に、即ち少なくとも金属マトリックスの融点に加熱する。MMCを鋳造可能にするために、必要に応じて追加のマトリックス金属を添加する。鋳造直前に、鋳造可能なAl/SiC MMCを混合棒57で撹拌して、この材料をできる限り均質化する。
[0060]第2のキルン59は、鋳造するのに望ましい形状の型又はチャンバ50を含有する。やはりこの型も、適切な塗型剤で被覆された黒鉛でよい。型は、鋳型の底面から所定の高さに位置付けられた、ドレンプラグ52も特徴とする。MMCは、伝統的な金属鋳造フィルタ54を使用して濾過することができる。しかしフィルタの開口は、鋳造可能なMMCの強化材本体がこのフィルタを通過するように、十分なサイズである必要がある。図5では、フィルタが、キルンの蓋の一部として、又はキルンの蓋と一体化したものとして示されている。漏斗56も、蓋58と一体化されている。鋳型は、台座又は基部61上に支持されている。振動の実施形態では、キルン全体を振動ユニット(図示せず)上に支持してもよい。第2のキルンは、鋳造操作に適切な温度まで加熱される。Al/SiCの場合、この温度は約675℃〜800℃の範囲内でよい。
[0061]2つのキルンの温度が所望の温度で平衡になったら、第1のキルン51の蓋63を外し、MMC溶融体55が入っている坩堝53を、例えば坩堝鋳造トング65で坩堝を取り扱う2名によってこの第1のキルンから引き上げ、Al/SiC MMC溶融体を、第2のキルン59の蓋58の金属鋳造フィルタ54に慎重に注ぎ、この第2のキルンに入れられた鋳型50に注ぐ。次いで鋳込まれたAl/SiC MMCをそのままにし、その間に、SiC微粒子を懸濁液から沈降させる。沈降は、約1時間で実質的に終了する。振動を用いる場合、振動ユニットを、鋳込まれたMMCが注がれたらすぐに又はMMCが注がれる前でさえ、作動させることができる。振動を用いる場合、沈降は、約4時間の振動を経る前には終了することができない。
[0062]この時点で、この鋳造は、2つの明確なゾーンを特徴とする。底部又は下部ゾーンは、均質な鋳造MMC材料の出発濃度よりも高いSiC微粒子濃度を有するAl/SiC MMC材料を特徴とする。頂部又は上部ゾーンは、出発時の鋳造MMC材料よりも低いSiC微粒子濃度であること、おそらくはSiC微粒子が本質的にゼロでさえあることを特徴とする。
[0063]沈降が終了した後、マトリックス金属が凝固するように鋳造物を冷却させてもよい。しかし好ましい実施形態では、鋳型は、その上部ゾーンが、ドレイニング又はデカンティングによって下部ゾーンから分離されており又は切り離されている。具体的には、第2のキルン59の側面67及び蓋58を、例えばキルンリフトハンドル69を使用することによって取り外し、型50及びその内容物である溶融MMC材料を、慎重に黒鉛冷却板71に移して凝固させるが、この凝固は、改善された鋳造物の品質及び精錬されたミクロ構造に向けたものである。しかしマトリックス金属が凝固する前に、ドレンプラグ52を取り外し、上部ゾーンの溶融体を坩堝73に流出させる。
[0064]下記の実施例は、本発明のいくつかの好ましい実施形態について、さらにより具体的に例示する。これらの実施例は、事実上の例示とされ、本発明の範囲を限定するものと解釈するべきではない。
[実施例I]
[0065]この実施例は、補強材成分の体積負荷が高いMMC本体を製造するために、市販の鋳造可能なMMC材料に適用される、修正を加えた鋳造技法について示す。
[0066]図6を参照すると、塗型剤で被覆された大きな黒鉛坩堝を、周囲温度の抵抗加熱空気雰囲気キルン(L&L Kilns、Boothwyn、PA)内に置いた。それぞれ直径約2インチ(約5cm)×高さ約8インチ(約20cm)と測定される、7個のより小さな型を、大きな坩堝に隣接させて配置した。約30体積%がSiC微粒子に投入され、またその量がこれら7個の型を充填するのに十分である、かなりの量の鋳造可能なAl/SiC MMC材料(Duralcan Grade F3S.30S)を、大きな坩堝内に入れた。次いで炉に通電し、次いで鋳造可能なMMCを、製造業者の指示に従って溶融させた。
[0067]鋳込まれた材料が完全に溶融したら、SiC微粒子強化材を撹拌し、又はその他の方法によりマトリックス金属全体に完全に均質化させた。次いでMMC溶融体を、7個のより小さな型に、実質的に等量で注入した(図7参照)。型を炉から引き出し、その内容物を、キルン内で、下記のおよその滞留時間にわたり周囲条件下で凝固させた:それぞれ0、0.5、1、3、4、5、及び6時間。
[0068]各型及びその内容物が、実質的に周囲温度にまで冷却された後、鋳造物を型から取り出し、長手方向に切断した(図8参照)。切断面を、図9に示すように、各沈下鋳造物の2つの異なるゾーンを明らかにするために、必要に応じて研削し研磨した。下部ゾーンは、アルミニウム−ケイ素マトリックス金属、及びこのマトリックス金属に分散された沈降SiC微粒子を含有する、沈降ゾーンである。上部ゾーンは、SiC微粒子を実質的に含有せず、マトリックス金属のみであり、したがってこれを「除去ゾーン」と呼ぶ。次いで鋳造物の全高並びに沈降部分の高さを測定し、それによって、沈下又は沈降速度、及び沈降ゾーン内のSiC負荷を計算することができた。
[0069]図10は、沈降時間の関数として、沈降ゾーン内のSiC微粒子の負荷を示す。このように、この実施例は、初期に30体積%のSiCである鋳造可能なAl/SiC MMCは、鋳込み及び沈降後の沈降ゾーン内で約48.5体積%のSiC負荷をもたらすこと、及びこの沈降度に到達するのに約6時間を要することを示す。
[実施例II]
[0070]この実施例は、修正を加えたMMC鋳造技法を示す。具体的には、鋳造可能なMMCを鋳込み、強化材成分を懸濁液から沈降させる。振動を、少なくとも沈降時間の一部において、鋳型及びその内容物に加える。したがってこの実施例は、振動の態様であること以外、実施例Iと実質的に同じように実施した。
[0071]図11を参照すると、振動は、抵抗加熱空気雰囲気キルン51の下にSYNTRON(商標)振動ユニット111(FMC Corporation、Philadelphia、PA)を事前に配置することによって、沈降時間中に実施した。振動は、振動ユニットを「低」設定に設定した状態で、沈降時間の全体を通して連続的に発生させた。この場合も、その目的は、隣接する物質に対してわずかに移動するように十分なだけの力学的エネルギーを、溶融体のSiC粒子に与え、それによって、材料を「落ち着かせる」こと及び/又はセラミック粒子とマトリックス金属との間の表面張力を克服することである。正確な材料及び成分が入手されない場合、当業者はそれにも関わらず、これらの結果を過度な実験なしに再現できなければならない。具体的には、同様の強化材本体を高度な負荷量で沈降させるよう、ほぼ適正な強度設定の感触を得るために、異なる強度設定の振動ユニットを使用していくつかの簡単な試験操作を周囲温度で水性セラミックスラリーに関して実施することは、ためになると思われる。
<機械的及び物理的性質の特徴>
[0072]製作ステップの後、本発明の反応結合セラミック複合体材料の、様々な機械的及び物理的性質を測定した。密度は、機械加工された試験片のバルク体積を測定し、これでその質量を割ることによって決定した。弾性は、ASTM Standard D2845に従い、超音波パルスエコー技法によって測定した。硬さは、ロックウェルBスケール上で測定した。4点曲げでの曲げ強度は、MIL−STD−1942Aに従って決定した。破壊靭性は、4点曲げシェブロンノッチ技法、及びスクリュー駆動式SintechモデルCTTS−2000万能試験機を使用し、クロスヘッド速度1mm/分での押しのけ制御下で測定した。6×4.8×50mmと測定される試験片を、6mm寸法に平行な負荷方向と、それぞれ20及び40mmの内部及び外部負荷スパンで試験した。0.3mm幅のダイヤモンド刃で切断されたシェブロンノッチは、開先角度60°を有し、各試験片の長さの中間に位置付けられた。試験片の寸法は、Munz他の分析による2つの計算方法の間での、分析上の差を最小限に抑えるように選択された(D.G.Munz、J.L.Shannon、及びR.T.Bubsey、「Fracture Toughness Calculation from Maximum Load in Four Point Bend Tests of Chevron Notch Specimens」、Int.J.Fracture、16 R137〜41(1980))。
[0073]図12は、沈降時間中の、振動に曝されていない7個の鋳型及び振動に曝された5個の鋳型のそれぞれの鋳型底面からの距離の関数として、ロックウェルB硬さを示す。チャートの凡例で、「NV」は振動していないサンプルを指し、それに対してこれらの指定表示の「V」を有するサンプルは、振動させたものである。導き出すことができる結論の中には、下記の内容がある。
・約50体積パーセントのSiCの負荷は、沈降及び振動の約150分後に実現された。
・振動させた材料は明らかに、35分で又は65分後であっても沈降が終了していない。
・振動させたサンプルは、振動していないサンプルよりも高い硬さを有する。
・より低いレベルの充填が最初に行われ、次いでより高いレベルで行われる。
・硬さは、鋳型の最高レベル(底面から最も離れた距離)で降下する。
[0074]図13は、それぞれ振動していないサンプル及び振動させたサンプルに関する沈降時間の関数として、沈降Al/SiC MMC鋳造物のロックウェルB硬さを示す。この場合も図の凡例は、鋳造手順において述べたように、時間ごとではなく分ごとの沈降時間を報告する。このチャートは、振動していないサンプルが約1時間で沈降を終了するのに対し、振動させたサンプルは沈降を終了せず、沈降し続けて4時間マークで充填することを示唆している。
[0075]図14は、3つの鋳造物に関する硬さとヤング率のデータの両方を示し、そのうちの2つは振動させていない状態のものであり、もう1つは振動させたものである。白抜きのデータポイントは硬さの測定値を指し、ベタ塗り又は黒塗りのデータポイントは、ヤング率を示す。ヤング率のデータは、硬さのデータが示唆するよりも高いサンプルの均一性を示す。30%SiCでの出発材料のヤング率は、約129GPaであり、「振動させていない」材料は約141GPa(約37%の負荷(loading))、及び「振動させた」サンプルは約178GPaである(約50%の負荷(loading))。
[0076]次いで、沈降させ、約245分間(約6時間)振動させたサンプル、サンプルV−5について、さらに特徴付けを行った。
Al−50%SiC(サンプルV−5)
密度(g/cc) 2.94〜2.96
ヤング率(GPa) 178
ポアソン比 0.26
曲げ強度(MPa) 287(6本のフレックス棒)
平均: 286.9
最小 268.8
最大 324.5
標準偏差 25.5
破壊靭性(KIC、MPa.m1/2) 13.4(6本の棒)
平均: 13.43
最小 12.98
最大 14.10
標準偏差 0.39
CTE(×10−6−1) 10〜12
熱伝導率(W/m−K) 160〜200
[0077]このように、「振動を伴った沈降」条件によって、高弾性率であり良好な強度及び靭性の材料が提供される。
[実施例III]
[0078]出発時の鋳造可能なAl/SiC MMC材料が二峰性分布のSiC微粒子であり、この微粒子の約30パーセントがより小さいサイズであり残りがより大きいサイズであることを除き、実施例IIの鋳造MMC製作技法を実質的に繰り返した。具体的には、粒度分布のピークは、約240メッシュ及び500メッシュの微粒子、それぞれ約66ミクロン及び17ミクロンを中心とした。
[0079]振動、沈降、及び凝固に従って得られた鋳造物の、研磨された断面の光学顕微鏡写真を、倍率約400×で図15に示す。
[実施例IV]
[0080]この実施例は、上述の本発明の技法を使用して製作された、いくつかの商業的に有用な物品を示す。これらの構成要素のそれぞれは、出発材料として約30体積パーセントのSiC微粒子を含有する、Duralcan F3S.30Sの鋳造可能なAl/SiC MMCを使用して製造した。
[0081]そのような1つの実証用構成要素は、図16及び17に示すような、330mm×330mmの高剛性のリブ付きプレートであった。
[0082]Al/SiC MMCが鋳込まれる型は、リブ間の鋳造物の一部を画定するために、圧縮性のコアを特徴とする。沈降は、非振動状態での、700℃で4時間の等温保持を特徴とする。最初に、鋳造可能なMMC材料を、1インチ当たり20開口(1センチメートル当たり約8開口)の鋳造フィルタを介して注ぎ込むことを試みたが、MMCは、このフィルタを適正に通過しなかった。したがって、鋳込み操作をフィルタなしで繰り返した。濾過しないことにより、試験サンプルの鋳込んだままの表面に、非常に数多くの「襞」が目に見えるようになった。
[0083]第2の実証構成要素は、振動の実施形態を使用して鋳造された、620mm×460mmの高剛性の機械ベースを特徴とした(図18参照)。特にこの実験操作は、高負荷を実現するために、振動を伴う700℃での4時間の等温保持を特徴とした。さらに、部品における酸化物スキンの閉じ込めを少なくするために、「合金ボックス」を利用した。沈降後、鋳型を高温の炉及び振動ユニットから取り出し、冷却板上で凝固させた。
[産業上の利用可能性]
[0084]本発明の方法及び組成物には、複雑な形状、場合によっては大きな単一の複雑な構造を必要とし、開発の中間段階で機械加工し、高い寸法精度、及び精密で高い比剛性、低熱膨張係数、高硬度、高靭性、高熱伝導率、及び/又は高耐磨耗性を必要とする適用例で、有用性がある。したがって本発明の金属マトリックス複合体材料は、とりわけ精密機器、ロボット工学、工作器具、外装、自動車、電子パッケージ及び熱管理、並びに半導体製作工業において興味あるものである。任意選択で強化リブを含有し、1メートル以上の側面が測定され、おそらくは1メートルトン以上が計量される、プレートなどの開放構造は、本発明の技法を使用して製造可能であるべきである。本発明により企図される特定の製造物品には、ウェハーテーブル、真空チャック、静電チャック、空気保持ハウジング、又は支持フレームなどの半導体ウェハー取扱い構成部品、電子パッケージ及び基板、工作機械のブリッジ及びベース、ガントリービームなどのビーム、ミラー基板、ミラーステージ、及びフラットパネルディスプレーセッターなどが含まれるが、これらに限定するものではない。本発明の材料は、例えば外装などの耐衝撃物品、又は例えばブレーキやクラッチ部品などの摩擦材料にも有用と考えられる。
[0085]当業者なら、添付の特許請求の範囲で定義される本発明の範囲又は精神から逸脱することなく、本明細書に記述された本発明に様々な修正を加えることができることを理解されよう。
約30パーセントのSiC体積負荷を有する、典型的な鋳造Al/SiC MMCの研磨された断面の、低及び高倍率の光学顕微鏡写真である。 約30パーセントのSiC体積負荷を有する、典型的な鋳造Al/SiC MMCの研磨された断面の、低及び高倍率の光学顕微鏡写真である。 Duralcan F3S.30S Al/SiCインゴットを有する、高温の型に鋳込まれた構成要素の断面を示す図である。 図2の鋳造構成要素の、除去されたゾーン及びSiCに富むゾーンをそれぞれ示す顕微鏡写真である。 図2の鋳造構成要素の、除去されたゾーン及びSiCに富むゾーンをそれぞれ示す顕微鏡写真である。 本発明の好ましい振動による実施形態の、鋳造Al/SiC MMC材料のミクロ構造を示す図である。 本発明の「沈降MMC」を実施する主なステップを示す、概略図である。 坩堝及び7個の型を有する炉の写真である。 沈降試験中の温度での、炉の写真である。 左から右に、鋳込み時、0.5時間、1、3、4、5、及び6時間の沈降時間での、機械加工された沈降サンプルの写真である。 「除去された(de−nuded)」ゾーンと沈降層との界面を示す写真である。 平均沈降負荷対時間を示すグラフである。 本発明の沈降試験の振動による実施形態に関する、炉の設備の写真である。 本発明の「振動させた」実施形態及び「沈降のみ」の実施形態の両方に関する、鋳造物内の位置の関数としての硬さのグラフである。 本発明の非振動実施形態及び振動実施形態の両方に関する、沈降時間の関数としての硬さのチャートである。 鋳造物内の位置の関数としての、硬さ及び弾性率のグラフである。 実施例IIIにより作製されたAl/SiC MMC鋳造物の、研磨された断面の約400×の光学顕微鏡写真である。 「沈降のみ」の実施形態(振動なし)を使用した、Al/SiCからの、330mm×330mmの高剛性リブ付きプレート鋳造物()の写真である。 図16のリブ付きプレートの一部分のクローズアップ写真である。 機械加工の最終段階での、鋳造物620mm×460mm高剛性機械ベースの写真である。

Claims (13)

  1. (a)金属マトリックスと共に含有された複数の個別の強化材本体を含み、金属が溶融状態にあるときに鋳込むことが可能な金属マトリックス複合体材料を提供するステップと、
    (b)前記金属を溶融させるステップと、
    (c)前記強化材本体の少なくとも一部を沈降させるステップと、
    (d)少なくとも前記金属マトリックスを固体状態に凝固させるステップと、
    (e)前記凝固中に、前記鋳造可能な金属マトリックス複合体本体を、波又は衝撃の形の力学的エネルギーにさらすステップと、を含む、金属マトリックス複合体物品を作製する方法。
  2. 前記沈降によって、別のゾーンよりも前記強化材本体の負荷が低減された前記金属マトリックス複合体のゾーンが得られ、前記低負荷ゾーンを前記別のゾーンから分離するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
  3. 前記分離するステップが、前記凝固させるステップの前に、型から前記低負荷ゾーンを排出させるステップを含み、それによって前記別のゾーンが前記型に残される、請求項2に記載の方法。
  4. 金属マトリックス、及び前記金属マトリックス内に含有される複数の別個の強化材本体を含み、前記金属マトリックス複合体本体は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法により生成される、金属マトリックス複合体本体。
  5. 前記金属マトリックスが、アルミニウム、銅、鉄、マグネシウム、ケイ素、スズ、及び亜鉛からなる群から選択された少なくとも1種の金属を含む、請求項4に記載の金属マトリックス複合体本体。
  6. 前記強化材本体が、粒子、薄片、プレートレット、球、及び繊維からなる群から選択された形態を有する、請求項4に記載の金属マトリックス複合体本体。
  7. 前記強化材本体が少なくとも1種のセラミック材料を含む、請求項4に記載の金属マトリックス複合体本体。
  8. 前記強化材本体が、SiC、Si、AlN、Al、及びBCからなる群から選択された少なくとも1種の材料を含む、請求項4に記載の金属マトリックス複合体本体。
  9. 前記金属マトリックスが過共晶合金である、請求項4に記載の金属マトリックス複合体本体。
  10. 前記金属マトリックスが亜共晶合金である、請求項4に記載の金属マトリックス複合体本体。
  11. 前記金属マトリックスがアルミニウム及びケイ素を含み、前記強化材本体が炭化ケイ素微粒子を含む、請求項4に記載の金属マトリックス複合体本体。
  12. 前記別のゾーンが、37パーセントから65パーセントの範囲内で強化材本体の体積負荷を有する、請求項2に記載の方法により生成された金属マトリックス複合体本体。
  13. 前記波が連続的であり又はパルスである、請求項1に記載の方法。
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