JP5383521B2 - 直流電源装置 - Google Patents

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Description

本発明は、直流電源装置に係り、さらに詳しくは、PWM信号に基づくスイッチング動作によって直流電圧を変換する直流電源装置の改良に関する。
直流電源から供給された直流電圧を降圧又は昇圧して負荷へ出力するDC−DCコンバータとして、チョッパ回路、フィルタ回路及びPWM(Pulse Width Modulation:パルス幅変調)制御部からなるものが知られている。チョッパ回路は、トランジスタなどのスイッチング素子と、スイッチング素子をオン又はオフさせるドライブ回路により構成され、PWM信号に基づいてスイッチング素子がスイッチングすることによって、直流電圧を変換する。フィルタ回路は、チョッパ回路の出力を平滑化するためのローパスフィルタであり、コイルやコンデンサにより構成される。
PWM制御部は、PWM信号のデューティ比、すなわち、矩形波(パルス)の繰返し間隔とオン時間(パルス幅)との割合を調整し、チョッパ回路のスイッチング動作を制御することにより、所望の電圧出力を得るスイッチング制御手段である。PWM信号のデューティ比は、チョッパ回路に対する入力電圧Vinと目標電圧Vrefとの比に基づいて決定される。通常、PWM制御部では、出力を安定させるために、出力電圧や出力電流を検出し、これらの検出値が目標値に一致するようにフィードバック制御が行われる。例えば、定電圧制御の場合、フィルタ回路の出力電圧Voutと目標電圧Vrefとの差分に応じたデューティ比のPWM信号が生成される(例えば、特許文献1〜3)。
特開2005−218157号公報 特開平10−225105号公報 特開2006−136146号公報
一般に、チョッパ回路の出力電流Iと目標電流Irefとの差分に基づく定電流制御では、安定状態であれば、出力電流Iは一定値に維持され、出力電流Iとフィルタ回路の出力電流Iとがほぼ一致する。しかし、負荷抵抗の変動時などに出力電流Iが急変しても、フィルタ回路の影響で出力電圧Voutや出力電流Iは遅れて変化する。このため、上述した様な従来の直流電源装置では、入力電圧や負荷の変動に対する応答性が良くないという問題があった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、入力電圧や負荷の変動に対する応答性を向上させた直流電源装置を提供することを目的としている。特に、チョッパ回路の出力電流に基づいてフィードバック制御を行う直流電源装置の応答性を向上させ、出力電流の変動幅を低減させることを目的としている。
第1の本発明による直流電源装置は、PWM信号に基づいて動作するスイッチング素子を有するチョッパ回路と、上記チョッパ回路の出力を平滑化するフィルタ回路と、上記チョッパ回路の出力電流と第1目標電流との差分に基づいて、第1参照電流を求める第1参照電流算出手段と、上記フィルタ回路の出力電圧を当該フィルタ回路のインピーダンスで割った商と第1参照電流とから第2参照電流を求める第2参照電流算出手段と、上記チョッパ回路の出力電流に基づいて、上記PWM信号を生成するPWM制御手段とを備え、上記PWM制御手段が、第2参照電流を第2目標電流として、上記チョッパ回路の出力電流に基づくフィードバック制御を行うように構成される。
この様な構成により、チョッパ回路の出力電流に基づくフィードバック制御の第2目標電流に対し、フィルタ回路に流れ込む電流を反映させることができるので、フィルタ回路の出力電流の変動に対する応答特性を向上させることができる。従って、チョッパ回路の出力電流が第1目標電流に近づくように制御しつつ、応答特性が良好なチョッパ回路のフィードバック制御を実現することができる。
第2の本発明による直流電源装置は、上記構成に加え、上記PWM制御手段が、第2参照電流の更新間隔よりも短い周期で上記PWM信号のデューティ比を更新するように構成される。
この様な構成によれば、フィルタ回路の出力電圧やチョッパ回路の出力電流をサンプリングして第2参照電流を更新するよりも短い時間間隔でPWM信号のデューティ比が更新されるので、第2参照電流の更新及びデューティ比の更新の両方を高速化しなくても、応答特性を向上させることができる。
本発明による直流電源装置によれば、チョッパ回路の出力電流に基づくフィードバック制御の第2目標電流に対し、フィルタ回路に流れ込む電流を反映させることができるので、フィルタ回路の出力電流の変動に対する応答特性を向上させることができる。従って、チョッパ回路の出力電流に基づいてフィードバック制御を行う直流電源装置の応答性を向上させ、出力電流の変動幅を低減させることができる。
本発明の実施の形態1による直流電源装置の一構成例を示した図であり、直流電源1からの直流電圧を降圧又は昇圧するDC−DCコンバータ2が示されている。 図1のDC−DCコンバータ2におけるチョッパ回路10の構成例を示した図である。 図1のDC−DCコンバータ2におけるフィルタ回路20の構成例を示した図である。 図1のDC−DCコンバータ2における定電圧制御時の動作の一例を示したフローチャートである。 本発明の実施の形態2による直流電源装置の概略構成の一例を示した図であり、DC−DCコンバータ2の他の構成例が示されている。 図5のDC−DCコンバータ2の要部における構成例を示したブロック図であり、参照電流演算部30内の機能構成の一例が示されている。 本発明の実施の形態3による直流電源装置の構成例を示したブロック図であり、参照電流演算部30の他の構成例が示されている。 本発明の実施の形態4による直流電源装置の構成例を示したブロック図であり、参照電流演算部30の他の構成例が示されている。 本発明の実施の形態5による直流電源装置の構成例を示した図であり、目標デューティを定める演算回路が付加されたDC−DCコンバータ2が示されている。
実施の形態1.
<DC−DCコンバータ>
図1は、本発明の実施の形態1による直流電源装置の一構成例を示した図であり、直流電源1から供給された直流電圧を降圧又は昇圧して負荷3へ出力するDC−DCコンバータ2が示されている。
このDC−DCコンバータ2は、直流電圧を変換する直流電源装置であり、チョッパ回路10、フィルタ回路20、電圧センサー31,32、電流センサー33,34、減算器35,38、PWM制御部36、目標電圧生成部37、参照電流算出部39、履歴情報記憶部40、加算器41及びリミッタ42により構成される。負荷3としては、二次電池や交流モーター用のインバータなどが想定される。
チョッパ回路10は、PWM制御部36から入力されるPWM信号に基づくスイッチング動作により、直流電源1から供給される直流電圧を変換してフィルタ回路20へ出力する直流電圧変換手段である。フィルタ回路20は、チョッパ回路10の出力を平滑化するためのローパスフィルタである。
電圧センサー31は、チョッパ回路10に対する入力電圧Vinを検出し、その検出値をPWM制御部36へ出力する入力電圧検出手段である。電圧センサー32は、フィルタ回路20の出力電圧Voutを検出し、その検出値を減算器38へ出力する出力電圧検出手段である。
電流センサー33は、チョッパ回路10の出力電流Iを検出し、その検出値を減算器35へ出力する第1の電流検出手段である。電流センサー34は、フィルタ回路20の出力電流Iを検出し、その検出値を参照電流算出部39及び加算器41へ出力する第2の電流検出手段である。この例では、出力電流Iが、フィルタ回路20に対する入力電流となっている。
減算器35は、出力電流Iとリミッタ42の出力との差分を求め、電流誤差ΔIaとしてPWM制御部36へ出力する演算回路である。PWM制御部36は、PWM信号のデューティ比を調整することにより、チョッパ回路10のスイッチングタイミングを制御するスイッチング制御手段であり、指令値生成部36a及びPWM発生回路36bからなる。
指令値生成部36aは、入力電圧Vinや目標電圧Vrefに基づいて、PWM信号のデューティ比を決める指令値を生成し、PWM発生回路36bへ出力する。この指令値生成部36aでは、所定の周期T1で電流誤差ΔIaをサンプリングし、当該電流誤差ΔIaに基づいて指令値を更新することにより、PWM信号のデューティ比を一定周期で更新するフィードバック制御が行われる。
上記指令値は、例えば、PI制御又はPID制御の方法を利用して、現在の電流誤差ΔIaと過去の電流誤差ΔIaとから求められる。具体的には、PI制御の場合、現在の電流誤差ΔIaに比例する比例項と、過去の電流誤差ΔIaを積分した積分項との和に基づいて、指令値が決定される。また、PID制御の場合、現在の電流誤差ΔIaに比例する比例項と、過去の電流誤差ΔIaを積分した積分項と、電流誤差ΔIaを微分した微分項との和に基づいて、指令値が決定される。
PWM発生回路36bは、指令値生成部36aからの指令値に基づいてPWM信号を生成し、チョッパ回路10へ出力する。PWM制御部36では、出力電流Iがリミッタ42の出力と一致するように、一定周期で電流誤差ΔIaをサンプリングしてPWM信号のデューティ比を更新する動作が行われる。
目標電圧生成部37は、出力電圧Voutと比較するための所定の目標電圧Vrefを生成し、減算器38へ出力する。減算器38は、出力電圧Voutと目標電圧Vrefとの差分を求め、電圧誤差ΔVとして参照電流算出部39へ出力する演算回路である。電圧誤差ΔVは、例えば、ΔV=Vout−Vrefによって表される。定電圧制御では、この電圧誤差ΔVを所定の周期T2でサンプリングしてフィードバックさせることにより、当該電圧誤差ΔVが0に近づくように、PWM信号のデューティ比が調整される。
参照電流算出部39は、減算器38からの電圧誤差ΔVに基づいて第1参照電流Iref1を求め、加算器41へ出力する第1参照電流生成手段である。第1参照電流Iref1は、例えば、電圧誤差ΔVと履歴情報記憶部40に保持されている履歴情報とから、PI制御又はPID制御の方法を利用して求められる。上記履歴情報は、電圧誤差ΔVの履歴情報であり、過去に抽出された電圧誤差ΔVや、過去に求めた第1参照電流Iref−1が履歴情報として一定期間保持されている。具体的には、電圧誤差ΔVから当該電圧誤差ΔVに比例する比例項を求め、この比例項と過去に求めた第1参照電流Iref1とから現在の第1参照電流Iref1が求められる。
加算器41は、参照電流算出部39からの第1参照電流Iref1と出力電流Iとの和を求め、第2参照電流Iref2としてリミッタ42へ出力する第2参照電流算出手段である。第2参照電流Iref2は、Iref2=Iref1+Iによって表される。
リミッタ42は、加算器41からの第2参照電流Iref2を所定の上限電流Imaxと比較し、その比較結果に基づいて、第2参照電流Iref2又は上限電流Imaxのいずれかを目標電流として減算器35へ出力する目標電流制限手段である。
第2参照電流Iref2が上限電流Imax以下であれば、リミッタ42から第2参照電流Iref2が出力される。従って、PWM制御部36では、第2参照電流Iref2が上限電流Imax以下である場合、第2参照電流Iref2を目標電流として、チョッパ回路10の出力電流Iに基づくフィードバック制御が行われる。
一方、第2参照電流Iref2が上限電流Imaxを越えている場合には、リミッタ42から上限電流Imaxが出力される。従って、PWM制御部36では、第2参照電流Iref2が上限電流Imaxを越えている場合、上限電流Imaxを目標電流として、チョッパ回路10の出力電流Iに基づくフィードバック制御が行われることになる。このフィードバック制御は、リミッタ42の出力を目標値とする定電流制御に相当し、電流誤差ΔIaをフィードバックさせることにより、当該電流誤差ΔIaが0に近づくように、PWM信号のデューティ比が調整される。
電流センサー33による出力電流Iの検出値を帰還させて電流誤差ΔIaを求め、この電流誤差ΔIaに基づいてPWM信号のデューティ比を更新する制御ループA1は、第2参照電流Iref2の更新間隔よりも短い周期T1(T1<T2)でデューティ比の更新を行う高速帰還ループである。この様に出力電流Iのフィードバックのみ高速化することにより、コスト増大を抑制しつつ、応答特性を向上させることができる。
参照電流算出部39では、出力電圧Voutを安定させるために、第2参照電流Iref2が上限電流Imaxを越えている状態から上限電流Imax以下の状態へ遷移した時点で、履歴情報記憶部40に保持されている履歴情報をリセットし、上限電流Imaxとフィルタ回路20の出力電流Iとの差分を現在の第1参照電流Iref1として出力する動作が行われる。
このとき、上限電流Imaxが第2参照電流Iref2として加算器41から出力されることになる。つまり、第2参照電流Iref2が上限電流Imaxを越えているときに蓄積された電圧誤差ΔVの履歴情報は、上限電流Imax以下の状態への遷移時にリセットされるので、その様な履歴情報がフィードバック制御に反映されるのを抑制することができる。また、上限電流Imaxと出力電流Iとの差分を第1参照電流Iref1とすることにより、第2参照電流Iref2が上限電流Imax以下の状態へ遷移する前後において、フィードバック制御の目標電流が大きく変化するのを抑制することができる。
<チョッパ回路>
図2は、図1のDC−DCコンバータ2におけるチョッパ回路10の構成例を示した図である。このチョッパ回路10は、ドライブ回路11、スイッチング素子12,14、ダイオード13及び15からなる降圧型のスイッチ回路であり、2つのスイッチング素子12,14を交互にオン又はオフさせることにより、入力電圧Vinを所定の出力電圧に変換する。
スイッチング素子12,14は、ドライブ回路11からの制御信号に基づいて、導通状態と遮断状態とを遷移可能な半導体素子であり、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor:絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)やFET(電界効果型トランジスタ)などのトランジスタ又はサイリスタが用いられる。
ダイオード13,15は、出力電流Iが供給されるフィルタ回路20のコイル21に生じる起電力を放出させるための還流ダイオード(フリーホイールダイオード)であり、スイッチング素子12,14とそれぞれ並列に接続されている。
例えば、スイッチング素子12がIGBTの場合、IGBTのコレクタ端子と、ダイオード13のカソード端子とがプラス側の入力端子に接続され、エミッタ端子とアノード端子とがプラス側の出力端子に接続されている。また、スイッチング素子14のコレクタ端子と、ダイオード15のカソード端子とがプラス側の出力端子に接続され、エミッタ端子とアノード端子とがマイナス側の入力端子及び出力端子に接続されている。
ドライブ回路11は、PWM制御部36からのPWM信号に基づいて、スイッチング素子12,14をオン又はオフさせる駆動回路であり、スイッチング素子12,14のゲート端子に接続されている。
<フィルタ回路>
図3は、図1のDC−DCコンバータ2におけるフィルタ回路20の構成例を示した図である。このフィルタ回路20は、インダクタンスLのコイル21と、インピーダンスZの回路素子22とにより構成されるローパスフィルタであり、回路素子22は、静電容量Cのコンデンサや電気抵抗Rの抵抗素子からなる。
チョッパ回路10の出力電流Iがコイル21を通過し、回路素子22を流れる電流とIとの和が出力電流Iとして負荷3へ出力される。回路素子22は、コンデンサのみからなる場合もあれば、直列接続されたコンデンサ及び抵抗素子からなる場合もある。或いは、直列接続された第1コンデンサ及び抵抗素子と、第2コンデンサとが並列に接続されたものであっても良い。
<定電圧制御>
図4のステップS101〜S112は、図1のDC−DCコンバータ2における定電圧制御時の動作の一例を示したフローチャートである。まず、減算器38は、出力電圧Voutの検出値と目標電圧Vrefとから電圧誤差ΔVを算出する(ステップS101,S102)。参照電流算出部39は、この電圧誤差ΔVに基づいて第1参照電流Iref1を算出する(ステップS103)。
加算器41は、第1参照電流Iref1に出力電流Iを加算し、第2参照電流Iref2として出力する(ステップS104)。リミッタ42は、第2参照電流Iref2が上限電流Imaxを越えていなければ、第2参照電流Iref2をそのまま出力し、この第2参照電流Iref2が出力電流Iに基づくフィードバック制御の目標値に設定される(ステップS105,S109)。そして、出力電流Iと当該目標値との差分(電流誤差ΔIa)に基づいてフィードバック制御が行われる(ステップS110)。
一方、第2参照電流Iref2が上限電流Imaxを越えている場合には、上限電流Imaxがリミッタ42から出力され、この上限電流Imaxが目標値に設定され(ステップS105,S112)、出力電流Iと当該目標値との差分に基づくフィードバック制御が行われる(ステップS110)。
参照電流算出部39では、第1参照電流Iref1を算出する際、第2参照電流Iref2が上限電流Imaxを越えていない場合に、前回の第2参照電流Iref2が上限電流Imaxを越えていれば、履歴情報記憶部40に保持されている履歴情報をリセットし、上限電流Imaxと出力電流Iとの差分が現在の第1参照電流Iref1として出力される(ステップS106〜S108)。このとき、上限電流Imaxが第2参照電流Iref2として出力され、目標値に設定される(ステップS109)。
前回の第2参照電流Iref2が上限電流Imaxを越えていない場合には、電圧誤差ΔVと過去に求めた第1参照電流Iref1とから現在の第1参照電流Iref1が求められる。そして、この第1参照電流Iref1と出力電流Iとの加算値が第2参照電流Iref2として出力され、目標値に設定される(ステップS106,S109)。出力電流Iに基づくフィードバック制御は、第2参照電流Iref2が更新されるまで繰り返される(ステップS111)。
本実施の形態によれば、チョッパ回路10の出力電流Iに基づくフィードバック制御の目標電流に対し、フィルタ回路20の出力電圧Voutと出力電流Iとを反映させることができるので、出力電圧Voutが目標電圧Vrefに近づくように制御しつつ、応答特性が良好なチョッパ回路10のフィードバック制御を実現することができる。また、フィルタ回路20の出力電圧Voutに対する電圧誤差ΔVから第1参照電流Iref1を求め、さらにフィルタ回路20の出力電流Iを加算して第2参照電流Iref2を求め、第2参照電流Iref2を上記目標電流とすることにより、制御パラメータの調整を容易化することができる。さらに、出力電圧Voutの変動幅が低減することにより、フィードバック制御の補償量が小さくても良くなるので、目標電圧Vrefに基づく定電圧制御の分解能を向上させることができる。
また、出力電圧Voutや出力電流Iをサンプリングして第2参照電流Iref2を更新する間隔が、出力電流IをサンプリングしてPWM信号のデューティ比を更新する間隔より長くても、負荷変動に対する応答性が向上するので、第2参照電流Iref2の更新間隔とデューティ比の更新間隔との両方を短縮させる場合に比べて、製造コストの増大を抑制することができる。
実施の形態2.
実施の形態1では、電圧誤差ΔVから求めた第1参照電流Iref1に出力電流Iを加算した第2参照電流Iref2を目標電流としてフィードバック制御を行うことにより、定電圧制御時における出力電圧Voutの変動幅を低減させる場合の例について説明した。これに対し、本実施の形態では、目標電圧Vrefに基づく定電圧制御と、目標電流Irefに基づく定電流制御と、目標電力Prefに基づく定電力制御とが切替可能な場合について説明する。
図5は、本発明の実施の形態2による直流電源装置の概略構成の一例を示した図であり、DC−DCコンバータ2の他の構成例が示されている。このDC−DCコンバータ2は、図1のDC−DCコンバータ2と比較すれば、出力電圧Vout、出力電流I及びIに基づいて参照電流Iref0を算出する参照電流演算部30を備えている点で異なる。
参照電流演算部30は、所定の周期で出力電圧Vout、出力電流I及びIをサンプリングし、これらの検出値から参照電流Iref0を求めてリミッタ42へ出力する参照電流生成手段である。PWM制御部36では、参照電流Iref0を目標電流としてフィードバック制御が行われる。
<参照電流演算部>
図6は、図5のDC−DCコンバータ2の要部における構成例を示したブロック図であり、参照電流演算部30内の機能構成の一例が示されている。この参照電流演算部30は、定電圧モード、定電流モード又は定電力モードのいずれかに制御モードを切り替えることができ、選択した制御モードに応じて参照電流Iref0がリミッタ42へ出力される。
具体的には、定電圧制御ブロックとして、目標電圧生成部37、減算器38、参照電流算出部39、履歴情報記憶部40及び加算器41を備え、定電流制御ブロックとして、目標電流生成部51、減算器52、参照電流算出部53及び履歴情報記憶部54を備える。
そして、定電力制御ブロックとして、乗算器61、目標電力生成部62、減算器63、参照電流算出部64及び履歴情報記憶部65を備え、定電圧モード、定電流モード又は定電力モードのいずれかを選択する制御モード切替部70を備えて構成される。定電圧制御ブロックは、図1中のものと同じである。
目標電流生成部51は、出力電流Iと比較するための目標電流Irefを生成し、減算器52へ出力する。減算器52は、出力電流Iと目標電流Irefとの差分を求め、電流誤差ΔIbとして参照電流算出部53へ出力する演算回路である。電流誤差ΔIbは、例えば、ΔIb=I−Irefによって表される。
参照電流算出部53は、電流誤差ΔIbに基づいて第3参照電流Iref3を求め、制御モード切替部70へ出力する第3参照電流生成手段である。第3参照電流Iref3は、電流誤差ΔIbと履歴情報記憶部54に保持されているその履歴情報とから、PI制御又はPID制御の方法を利用して求められる。
乗算器61は、出力電圧Voutと出力電流Iとを乗算して出力電力Pを求め、減算器63へ出力する演算回路である。目標電力生成部62は、出力電力Pと比較するための目標電力Prefを生成し、減算器63へ出力する。減算器63は、出力電力Pと目標電力Prefとの差分を求め、電力誤差ΔPとして参照電流算出部64へ出力する演算回路である。電力誤差ΔPは、例えば、ΔP=P−Pref=Vout×I−Prefによって表される。
参照電流算出部64は、電力誤差ΔPに基づいて第4参照電流Iref4を求め、制御モード切替部70へ出力する第4参照電流生成手段である。第4参照電流Iref4は、電力誤差ΔPと履歴情報記憶部65に保持されているその履歴情報とから、PI制御又はPID制御の方法を利用して求められる。
制御モード切替部70は、定電圧モード、定電流モード及び定電力モードのいずれかを選択し、選択した制御モードに応じて、第2参照電流Iref2、第3参照電流Iref3及び第4参照電流Iref4のいずれかを参照電流Iref0として出力する。制御モードの切り替えは、例えば、他の機器からのモード切替要求に基づいて行われる。
本実施の形態によれば、定電圧、定電流又は定電力モードのいずれの制御モードであっても、参照電流Iref0を共通のパラメータとしてフィードバック制御の目標値に設定するので、リミッタ42を共通化することができ、直流電源装置の構成を簡素化することができる。
実施の形態3.
実施の形態1では、電圧誤差ΔVから求めた第1参照電流Iref1に出力電流Iを加算した第2参照電流Iref2を目標電流としてフィードバック制御を行うことにより、定電圧制御時における出力電圧Voutの変動幅を低減させる場合の例について説明した。これに対し、本実施の形態では、フィルタ回路20に流れ込む電流の影響を考慮して参照電流を定めることによって、定電流制御時における出力電流Iの変動幅を低減させる場合について説明する。
図7は、本発明の実施の形態3による直流電源装置の構成例を示したブロック図であり、参照電流演算部30の他の構成例が示されている。この参照電流演算部30は、図6の参照電流演算部30と比較すれば、定電流制御ブロックとして、目標電流生成部51、減算器52、履歴情報記憶部54、第1参照電流算出部81及び第2参照電流算出部82を備えている点で異なる。
第1参照電流算出部81は、電流誤差ΔIbに基づいて第1参照電流Iref1を求め、第2参照電流算出部82へ出力する演算回路からなる。第1参照電流Iref1は、電流誤差ΔIbと履歴情報記憶部54に保持されているその履歴情報とから、PI制御又はPID制御の方法を利用して求められる。
第2参照電流算出部82は、第1参照電流Iref1とフィルタ回路20の出力電圧Voutとに基づいて第2参照電流Iref2を求め、制御モード切替部70へ出力する演算回路からなる。具体的には、出力電圧Voutをフィルタ回路20のインピーダンスZで割った商Vout/Zを算出するための除算器と、商Vout/Zと第1参照電流Iref1との差分を算出するための減算器とからなる。第2参照電流Iref2は、例えば、Iref2=Iref1−Vout/Zによって表される。
制御モード切替部70では、定電圧モード、定電流モード及び定電力モードのいずれかを選択し、選択した制御モードに応じて、参照電流Iref2又はIref4のいずれかを参照電流Iref0として出力される。
本実施の形態によれば、フィルタ回路20の出力電圧Voutをフィルタ回路20のインピーダンスZで割った商Vout/Zと第1参照電流Iref1とから求めた第2参照電流Iref2を目標電流とすることにより、フィルタ回路20に流れ込むフィルタ電流Vout/Zの影響がフィードバック制御に素早く反映されるので、負荷変動に対する応答性を向上させることができ、出力電流Iの変動幅を低減させることができる。
実施の形態4.
実施の形態1では、電圧誤差ΔVから求めた第1参照電流Iref1に出力電流Iを加算した第2参照電流Iref2を目標電流としてフィードバック制御を行うことにより、定電圧制御時における出力電圧Voutの変動幅を低減させる場合の例について説明した。これに対し、本実施の形態では、定電圧制御時、出力電圧Voutを次にサンプリングするまでの間に目標電圧Vrefが大きく変化した際の追従性を向上させる場合について説明する。
図8は、本発明の実施の形態4による直流電源装置の構成例を示したブロック図であり、参照電流演算部30の他の構成例が示されている。この参照電流演算部30は、図6の参照電流演算部30と比較すれば、定電圧制御ブロックとして、目標電圧生成部37、減算器38、参照電流算出部39、履歴情報記憶部40、加算器41、変化量抽出部91及び加算器92を備えている点で異なる。
変化量抽出部91は、目標電圧生成部37の出力に基づいて、目標電圧Vrefの単位時間当たりの変化量ΔVrefを求め、当該変化量ΔVrefとフィルタ回路20内のコンデンサの静電容量Cとの積C×ΔVrefを加算器92へ出力する演算回路である。変化量ΔVrefは、例えば、参照電流算出部39が電圧誤差ΔVを繰返しサンプリングして、第1参照電流Iref1を一定周期で更新する時間間隔を単位時間として、目標電圧Vrefの変化量ΔVrefが抽出される。具体的には、前回のサンプリング時における目標電圧Vrefと、現在の目標電圧Vrefとの差分から変化量ΔVrefが求められる。
加算器92は、加算器41が算出した参照電流と、変化量抽出部91が抽出した積C×ΔVrefとの和を求め、第2参照電流Iref2として制御モード切替部70へ出力する演算回路である。第2参照電流Iref2は、Iref2=Iref1+I+C×ΔVrefによって表される。
本実施の形態によれば、フィルタ回路20内のコンデンサの静電容量Cと目標電圧Vrefの単位時間当たりの変化量ΔVrefとの積が第1参照電流Iref1に加算された第2参照電流Iref2を目標電流とすることにより、フィルタ回路20内のコンデンサをさらに充電するのに必要な電流の影響がフィードバック制御に素早く反映されるので、定電圧制御時における目標電圧Vrefの変動に対する応答性を向上させることができる。
実施の形態5.
実施の形態1では、電圧誤差ΔVから求めた第1参照電流Iref1に出力電流Iを加算した第2参照電流Iref2を目標電流としてフィードバック制御を行うことにより、定電圧制御時における出力電圧Voutの変動幅を低減させる場合の例について説明した。これに対し、本実施の形態では、チョッパ回路10に対する入力電圧Vinと目標電圧Vrefとの比から参照デューティを求め、この参照デューティを目標デューティとしてフィードバック制御を行う場合について説明する。
図9は、本発明の実施の形態5による直流電源装置の構成例を示した図であり、目標デューティを定める演算回路が付加されたDC−DCコンバータ2が示されている。このDC−DCコンバータ2は、図5のDC−DCコンバータ2と比較すれば、除算器101,102及び加算器103を備えている点で異なる。
除算器101は、チョッパ回路10に対する入力電圧Vinと目標電圧Vrefとの比から第1参照デューティDref1を求め、加算器103へ出力する第1参照デューティ算出手段である。第1参照デューティDref1は、例えば、Dref1=Vref/Vinによって表される。
除算器102は、チョッパ回路10に対する入力電圧Vinとフィルタ回路20の出力電圧Voutとの比からデューティDを求め、加算器103へ出力する演算回路である。デューティDは、例えば、D=Vout/Vinによって表される。
加算器103は、デューティDと第1参照デューティDref1との和を求め、第2参照デューティDref2として指令値生成部36aへ出力する第2参照デューティ算出手段である。第2参照デューティDref2は、Dref2=D+Dref1によって表される。PWM制御部36では、この第2参照デューティDref2を目標デューティとして、PWM信号のデューティ比を所定の周期T3で更新する動作が行われる。
本実施の形態によれば、チョッパ回路10に対する入力電圧Vinと目標電圧Vrefとの比から求めた第1参照デューティDref1に入力電圧Vinとフィルタ回路20の出力電圧Voutとの比が加算された第2参照デューティDref2を目標デューティとしてフィードバック制御が行われることから、入力電圧Vinの変動がフィードバック制御に素早く反映されるので、入力変動に対する応答性を向上させることができる。
1 直流電源
2 DC−DCコンバータ
3 負荷
10 チョッパ回路
11 ドライブ回路
12,14 スイッチング素子
13,15 ダイオード
20 フィルタ回路
21 コイル
22 回路素子
30 参照電流演算部
31,32 電圧センサー
33,34 電流センサー
35,38 減算器
36 PWM制御部
36a 指令値生成部
36b PWM発生回路
37 目標電圧生成部
39 参照電流算出部
40 履歴情報記憶部
41 加算器
42 リミッタ
51 目標電流生成部
52 減算器
53 参照電流算出部
54 履歴情報記憶部
61 乗算器
62 目標電力生成部
63 減算器
64 参照電流算出部
65 履歴情報記憶部
70 制御モード切替部
81 第1参照電流算出部
82 第2参照電流算出部
91 変化量抽出部
92 加算器
101,102 除算器
103 加算器
A1 制御ループ

Claims (2)

  1. PWM信号に基づいて動作するスイッチング素子を有するチョッパ回路と、
    上記チョッパ回路の出力を平滑化するフィルタ回路と、
    上記チョッパ回路の出力電流と第1目標電流との差分に基づいて、第1参照電流を求める第1参照電流算出手段と、
    上記フィルタ回路の出力電圧を当該フィルタ回路のインピーダンスで割った商と第1参照電流とから第2参照電流を求める第2参照電流算出手段と、
    上記チョッパ回路の出力電流に基づいて、上記PWM信号を生成するPWM制御手段とを備え、
    上記PWM制御手段が、第2参照電流を第2目標電流として、上記チョッパ回路の出力電流に基づくフィードバック制御を行うことを特徴とする直流電源装置。
  2. 上記PWM制御手段は、第2参照電流の更新間隔よりも短い周期で上記PWM信号のデューティ比を更新することを特徴とする請求項1に記載の直流電源装置。
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