JP5380859B2 - アクチュエータ - Google Patents
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Description
以下、アクチュエータの駆動方法について図9、図10を用いて説明する。なお、便宜上駆動説明の図において左方向の駆動を(+)方向、右方向の移動を(−)方向と呼ぶことにする。また、圧電・電歪素子自体の構成及び駆動回路に関しては説明を省略する。
図9(a)に示すように、長さlの圧電・電歪素子6に急激に電界を印加すると圧電・電歪素子6に歪みが生じる。この時、圧電・電歪素子6に歪みがない時の充電電圧によって定まる圧電・電歪素子6の伸びをΔlとすると、電圧・圧電素子6はあるばね定数kを持ったばねが、Δlだけ縮められた状態になっていると考えられる。つまり、Δlだけ縮められたばねの両端に質量Mの移動体2と質量mの慣性体3がついていることになる。
そこで、図9(b)に示すようにそのばねが伸びだす。この場合、ばねが伸びようとする力はkΔlである。これが移動体2とベース7の間の摩擦力μ(M+m)g(μ:摩擦係数、g:重力加速度)に比べて大きい場合には、移動体2は慣性体3と反対の方向へ移動を始める。この時、μ(M+m)g≪kΔlとなるように、前記したM、m、kを設計すれば、摩擦力の影響は無視できることになり、移動体と慣性体をあわせた系の重心位置が運動量保存則により変わらないことから、移動体2が[m/(M+m)]Δl、慣性体が[M/(M+m)]Δlだけ反対方向に動く。
そこで、図9(c)に示すように、伸びた圧電・電歪素子6をゆっくりと元の長さに戻すと、1サイクルの移動が完了し、(+)方向へ移動する。この時、慣性体2の加速度をaとすると、μ(M+m)g>maとなるように設計される。なお、引用文献1において圧電・電歪素子に急激に150Vを印加すると(+)方向へ数μm移動する例が示されている。
以上のサイクルを逆にして(−)方向へ移動する。
まず、図10(a)に示すように、圧電・電歪素子6がl+Δlの伸びた初期状態をとる。
次に、図10(b)に示すように、急激に圧電・電歪素子6を長さlへと縮める。
次いで、図10(c)に示すように、ゆっくりと元の伸びた状態に伸ばすと移動体は前記した駆動方法とは逆の(−)方向に移動する。
なお、この場合も(+)方向と同様に、引用文献1において圧電・電歪素子にあらかじめ印加されておいた150Vを急激に除去すると(−)方向へ数μm移動する例が示されている。
本発明は、移動体と移動体に取り付けられる正の熱膨張係数を持つ金属体と、負の熱膨張係数を持つ金属体と、これらの金属体を発熱可能な発熱体と、それぞれの金属体の加熱による膨張により前記移動体に衝撃力を与える慣性体を備え、正の熱膨張係数を持つ金属体を加熱した際に移動する方向と負の熱膨張係数の金属体とを並列に配置したアクチュエータで構成されるものである。
また、本発明は、前記アクチュエータにおいて、前記移動体に取り付けられる正の熱膨張係数を持つ金属体と負の熱膨張係数を持つ金属体とが、各々あるいは一方だけ複数組配置され、前記金属体を発熱可能な発熱体と、金属体の加熱による膨張により前記移動体に衝撃力を与える慣性体とを配置することを特徴とするアクチュエータで構成されるものである。
また、本発明は、前記アクチュエータにおいて、移動体に取り付けられた正の熱膨張係数を持つ金属体あるいは負の熱膨張係数を持つ金属体に対して、移動体を介して進行方向逆側に正あるいは負の熱膨張係数を持つ金属体と、前記金属体を発熱可能な発熱体と、金属体の加熱による膨張により前記移動体に衝撃力を与える慣性体とを配置することを特徴とするアクチュエータで構成されるものである。
また、本発明は、上記負の熱膨張係数の金属体がマンガン窒化物で形成されるものである。
また、本発明によると、微小移動の進行時においてよりよい直進性が実現できる。
また、本発明によると、微小移動の進行時においてより転倒しにくくなり、より安定な移動が実現できる。
また、本発明によると、簡易な設計にて正方向と負方向の移動量を同様に実現できる。
図1において、41は衝撃力を発生する正熱膨張係数を持つ金属体、42は衝撃力を発生する負熱膨張係数を持つ金属体、51は正熱膨張係数金属体41を加熱させる金属加熱線、52は負熱膨張係数金属体42を加熱させる金属加熱線、2は正熱膨張係数金属体41および負熱膨張係数金属体42の一端に固定される移動体、31は正熱膨張係数金属体41の他端に固定される慣性体、32は正熱膨張係数金属体42の他端に固定される慣性体、7はベース、71はベース7の摩擦面である。
なお、41の材質は通常の正熱膨張係数を持つ金属であればよく、鉄およびその合金、銅およびその合金、チタンおよびその合金、マグネシウムおよびその合金、金属ガラス全般が望ましい。また、形状記憶合金により構成し、加熱により慣性体を重力方向に移動させてもよい。この形状記憶合金は磁性を含むいわゆる磁性形状記憶合金でもよい。ただし本発明例においては、簡単のためアルミニウムあるいはアルミニウム合金で構成した場合で説明する。
また、正熱膨張係数金属体41および負熱膨張係数金属体42を加熱する手段を巻回した金属加熱線51および52の場合で説明し、この加熱線はニクロム線で構成する場合を述べるが、その材質はニクロム線に限定されない。また、正熱膨張係数金属体41および負熱膨張係数金属体42を効率的に加熱できれば巻回する必要はない。また、簡便な構成が必要であれば、正熱膨張係数金属体41および負熱膨張係数金属体42に直接電流を流し加熱することも可能である。さらに、アクチュエータを非接触で構成したいのであれば誘導加熱も効果的である。なお、誘導過熱を採用する場合には、正熱膨張係数金属体41および負熱膨張係数金属体42において表皮を電気的に絶縁した粉体をバルクにしたものが望ましく、バルク化には圧縮成形およびこれに焼結を併用してもよい。また、表皮の絶縁を樹脂により構成してもよい。
以上の説明のとおりに構成されたアクチュエータ1に関して駆動方法を図3、図4にて説明する。なお、従来例と同様に、便宜上駆動説明の図において左方向の駆動を(+)方向、右方向の移動を(−)方向と呼ぶことにする。また、加熱による駆動回路に関しては本発明の本質ではないため説明を省略する。
そこで、図3(b)に示すようにそのばねが伸びだす。この場合、ばねが伸びようとする力はkΔlである。これが移動体2とベース7の間の摩擦力μ(M´+m1)g(μ:摩擦係数、g:重力加速度、M´:Mとm1と負熱膨張係数金属体42との質量の和)に比べて大きい場合には、移動体2は正熱膨張係数移動用慣性体31と反対の方向へ移動を始める。この時、μ(M´+m1)g≪kΔlとなるように、前記したM´、m1、kを設計すれば、摩擦力の影響は無視できることになり、移動体と慣性体をあわせた系の重心位置が運動量保存則により変わらないことから、移動体2が[m1/(M´+m1)]Δl、慣性体が[M´/(M´+m1)]Δlだけ反対方向に動く。
そこで、図3(c)に示すように、伸びた正熱膨張係数金属体41への加熱をやめゆっくりと元の長さに戻すと、1サイクルの移動が完了し、(+)方向へ移動する。この時、慣性体2の加速度をaとすると、μ(M´+m1)g>m1aとなるように設計される。
そこで、図4(b)に示すようにそのばねが縮みだす。この場合、ばねが縮もうとする力はk"Δlである。これが移動体2とベース7の間の摩擦力μ(M"+m2)g(μ:摩擦係数、g:重力加速度、M´:Mとm2と正熱膨張係数金属体41との質量の和)に比べて大きい場合には、移動体2は負方向へ移動を始める。この時、μ(M"+m2)g≪k"Δlとなるように、前記したM"、m2、k"を設計すれば、摩擦力の影響は無視できることになり、移動体と慣性体をあわせた系の重心位置が運動量保存則により変わらないことから、移動体2が[m2/(M"+m2)]Δl、慣性体が[M"/(M"+m2)]Δlだけ負方向に動く。
そこで、図4(c)に示すように、伸びた負熱膨張係数金属体42への加熱をやめゆっくりと元の長さに戻すと、1サイクルの移動が完了し、(−)方向へ移動する。この時、慣性体2の加速度をaとすると、μ(M"+m2)g>m2aとなるように設計される。
以上図5で説明した実施例では移動体2に正熱膨張係数金属体41およびその要素が1つと負熱膨張係数金属体42およびその要素が2つで構成された例を述べたが、移動体2に正熱膨張係数金属体41およびその要素が2つと負熱膨張係数金属体42およびその要素が1つで構成されてもよい。また、さらに複数の正熱膨張係数金属体41およびその要素あるいは負熱膨張係数金属体42およびその要素が配置されると進行の直進性が安定するだけでなく、正ないし負熱膨張係数金属体への加熱方法を工夫することにより、なめらかな曲線方向へ進行することも明らかである。
(−)方向へ進行させる場合には、(+)方向側に配置されている正熱膨張係数を持つ金属体41を加熱させる金属加熱線51と(−)方向側に配置されている負熱膨張係数を持つ金属体42を加熱させる金属加熱線52とを同時に加熱する。特に図6のとおり正熱膨張係数金属体41と負熱膨張係数金属体42とが移動体2をはさんで入れ違いに配置することにより、実施例1の場合に比べ移動時の転倒が避けられ、より大きな衝撃力を移動体に与えてより長いストロークの移動も可能となった。図6では移動体2をはさんで配置される正熱膨張係数金属体41と負熱膨張係数金属体42が入れ違いになっていたが、同じ側に配置しても移動時に転倒しにくくなるという効果は同様である。また、(+)側、(−)側に配置する正ないし負熱膨張金属係数金属体は各1個である必要はなく、実施例2のように複数配置することにより、その動作がより安定する。すなわち、移動時に転倒が防止されると共に、進行方向への直進進行性がよくなる。
本実施例によると、ばね定数k"よりも大きく、kに近く、かつ正熱膨張係数金属体41と負熱膨張係数金属体42の熱膨張係数の絶対値が同程度となるため、1サイクルあたりの(+)方向と(−)方向の移動距離を上記正熱膨張係数金属体41と負熱膨張係数金属体42の長さサイズを同程度にするだけで実現でき、設計が容易になる。なお、処理時間の短縮化については、実施例1と同様である。
本実施例では負熱膨張係数金属体42の熱膨張係数が負となる温度領域が50度となるマンガン窒化物で形成したが、この材料では負となる熱膨張係数の絶対値の大きさとその温度領域が組成により設計できるため、本発明例の設計値に限定されるものではない。
2 移動体
3 慣性体
31 正熱膨張係数移動用慣性体
32 負熱膨張係数移動用慣性体
41 正熱膨張係数金属体
42 負熱膨張係数金属体
51 正熱膨張係数金属加熱線
52 負熱膨張係数金属加熱線
6 圧電・電歪素子
7 ベース
71 ベース摩擦面
Claims (4)
- 移動体と移動体に取り付けられる正の熱膨張係数を持つ金属体と、負の熱膨張係数を持つ金属体と、これらの金属体を発熱可能な発熱体と、それぞれの金属体の加熱による膨張により前記移動体に衝撃力を与える慣性体を備え、前記熱膨張係数の正負が同じ前記金属体を一対並列に配置し、一対の前記金属体の間に、当該金属体とは前記熱膨張係数の正負が逆の前記金属体を並列に配置したことを特徴とするアクチュエータ。
- 請求項1記載のアクチュエータにおいて、前記移動体に取り付けられる正の熱膨張係数を持つ金属体と負の熱膨張係数を持つ金属体とが、各々あるいは一方だけ複数組配置され、前記金属体を発熱可能な発熱体と、金属体の加熱による膨張により前記移動体に衝撃力を与える慣性体とを配置することを特徴とするアクチュエータ。
- 請求項1ないし請求項2記載のアクチュエータにおいて、前記移動体における進行方向の前部に、前記負の熱膨張係数を持つ金属体を配置し、前記移動体における進行方向の後部に、前記正の熱膨張係数を持つ金属体を配置することを特徴とするアクチュエータ。
- 請求項1乃至3記載のアクチュエータにおいて、上記負の熱膨張係数の金属体がマンガン窒化物で形成されることを特徴とするアクチュエータ。
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