JP5373826B2 - 海洋的および工業的応用のためにポリマーによる抗力低減の効率を高める方法 - Google Patents

海洋的および工業的応用のためにポリマーによる抗力低減の効率を高める方法 Download PDF

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Description

(政府権益の声明)
本明細書に記載の発明は、該発明に対していかなる特許権使用料も支払うことなしに、米国政府によって、または米国政府のために、政府の目的に関して使用できる。
(技術分野)
抗力を低減する粘弾性被覆の潜在能力は、米国、フランス、日本、ウクライナおよびロシアにおける過去40年にわたる研究および一連の特許の主題であった。該被覆は、単独で、または他の抗力低減技術と連結して使用することができる。このような被覆の性能は一定していなかった。すなわち、それらの被覆は、壊れやすく、重く、設置するのが高価であり、それらが欠乏すると抗力を増大させることがある。それらの被覆の費用および複雑さのため、その応用は、高価値の軍用船のためだけに考慮されてきた。さらに、該被覆は、海洋付着物にさらされ、該付着物は、それらの被覆の性能および船舶の性能を低下させる場合がある。いくつかの被覆は、海洋的または工業的応用の動力学に適合するために、電気、熱、または空気エネルギーを必要とする。海洋的および工業的環境の要求を受け入れやすい、効果的で、維持が容易で、かつ低コストの粘弾性被覆が必要とされている。
(発明の目的)
本発明の目的は、
(1)自発的に補修すること、および海洋/工業的環境のストレスに耐えることのできる、効果的に抗力を低減する粘弾性被覆システムを提供すること、
(2)周知の「Toms効果」[Toms,B.A.の論文「Some Observations on the Flow of Linear Polymer Solutions through Straight Tubes at Large Reynolds Numbers」,Proc.1st Intern.Congr.Rheol.,Amsterdam,11,135〜141,1948]などの摩擦抗力低減技術の抗力を高めるための方法を提供すること、
(3)船舶推進システムからの有害な排出物質および二酸化炭素排出をさらに低減することによって、ポリマーによる抗力低減の環境上有利な影響力を高めること、
(4)それ自体、摩擦抗力を10%程度低減する、再生力のある異方性粘弾性被覆を提供すること、
(5)生物付着、および海洋環境中での稼動に付随する付随性「インサービス(in−service)」抗力を抑制するための手段を提供すること、
(6)高価な設備、ならびに維持および修理のためのドック入りを必要としない抗力低減被覆を提供すること、
(7)「エッジ効果」の低下を生じさせない被覆を提供すること、
(8)粘性下部層上に拡がり、それによって抗力を高める「動的」粗さ要素として作用する表面変形を生じさせない被覆を提供すること、
(9)その本質として、流れの方向に異方性である被覆を提供すること、
(10)海を航行しながらまたは工業環境中で稼動しながら、容易に補充することのできる消耗性ポリマー被覆を提供すること、
(11)流れ中へ噴射された繊維を用いて、およびリブレットと称される微細溝化表面を用いて立証されているような、乱流レベルを低下させる繊維またはブラシ様表面を形成する粘弾性表面を提供すること
である。
(背景技術)
海洋輸送機関のための非抵抗性(compliant)被覆に対する関心は、Max O.Kramerが、境界層中に層流領域を拡げることによって抗力を低減するための手段として非抵抗性被覆を研究した1960年代中頃にさかのぼる[1964年12月15日発行のKramer,M.O.による米国特許第3161385号「Means and Method for Stabilizing Laminar Boundary Layer Flow」;および1971年6月22日発行のKramer,Max,Ottoによる米国特許第3585953号「Means and Method for Stabilizing Laminar Boundary Layer Flow」]。Kramerは、イルカの皮膚をうまく模擬した表面被覆が、海洋船舶に関わる抗力の摩擦成分を低減する潜在能力を有することを示唆した。ロングビーチ港で、米国海軍海事技術本部(U.S.Navy Office of Naval Research)の後援のもとに実演が成功裡に実施された[Kramer,M.O.の論文「Boundary Layer Control by ‘Artificial Dolphin Coating’」,Naval Engineers Journal89(5):41〜45,1977]。そのとき以来、米国の研究者によるその研究を再現するような成功はほとんどなかった。しかし、1970年代および1980年代を通して、被覆に基づく抗力低減の研究は、ソビエト海軍によって後援されて、主としてキエフ(ウクライナ)およびノヴォシビルスク(ロシア)で実施された。この研究は、キエフ(ウクライナ)の流体力学研究所(the Institute of Hydromechanics)のL.F.KozlovおよびVictor V.Babenkoによって先導され、一連のソビエト発明者証をもたらした[ソビエト発明者証1413286、1483538、1597866、1802672]。これらのソビエトの努力は、彼らが、層流領域を単に拡張するよりもむしろ境界層中の乱流レベルを低減することをも意図した点で、Kramerの研究と異なる。いくつかの被覆は、ポリマー添加剤と統合されて、どちらか単独の技術に比べてより効果的である系を作り出した。初期の研究者の中でも、Babenkoらは、これらの粘弾性被覆の単独または他の技術との組合せの双方での潜在能力を認識していたはずである。キエフのチームは、Kramerが彼のより初期の活動の詳細中で特定していなかった、成功した被覆の具体的特質を突きとめることができた。重要な特徴が流れ方向での異方性であることが、これらの被覆の設計から明らかになった。
米国で試験された粘弾性被覆のほとんどは成功せず、実際には、抗力を増したものもあった。Kramerの後、米国の研究者の取組みは、ある範囲の入手可能な被覆材料を試みることであった。MayおよびVoropayevになって始めて、隣接乱流境界層のパラメーターを考慮して粘弾性被覆の特性を注意深く選択する努力がなされた[2003年2月11日発行のMay,C.L.らによる米国特許第6516652号「Design of Viscoelastic Coatings to Reduce Turbulent Friction Drag」]。この取組みにより、「静的ダイバージェンス」、動力学的粗さ、および流れと反対方向に移動する被覆上でのうねりなどの、米国の研究者を困らせた好ましくない状態を回避できた[Hansen,R.J.およびHunston,D.L.の論文「Fluid−property Effects on Flow−generated Waves on a Compliant Surface」,J.Fluid Mechanics,v.133,161〜177,1983]。MayおよびVoropayevは、被覆の材料特性を、表面に対して垂直な乱流境界層の脈動を吸着するように調和させるべきであること、および生じる応答は、流れ方向に90°位相がずれるべきであることを教示した。その取組みに続いて、彼らは、粘弾性被覆が成功するのに必要ないくつかの特性を突きとめた。第1に、彼らは、被覆は流れ方向に異方性でなければならないというBabenkoの教示を繰り返した。第2に、MayおよびVoropayevは、また、被覆表面上で乱流を生じさせる何らかの変形は、粘性下部層の高さを超えてはならないと教示した。第3に、彼らは、不適切に形成された横方向被覆端は、被覆の有効性を低下させる、乱流で作り出される被覆中のうねりの反射(すなわち、エッジ効果)をもたらす可能性があることを教示した。第4に、彼らは、被覆密度は、被覆上を流れている流体の密度に近似しているべきであることを教示した。
適切に配置された場合でさえ、被覆は、壊れやすく、破裂し、それによってそれらの有効性を低下させることがある。一般に、被覆は、十分に複雑であり、高コストなのでそれらの応用は明らかに軍用潜水艦に限定される。被覆は、通常、1〜10cm程度の厚さであり、それらの被覆を重くかつ設置するのを困難なものにする。これらの理由のため、商業的応用は、まだ実用可能になっていない。
商業的に利用可能であり、かつ抗力低減を[2007年8月9日公開のGilman,Thomas H.による米国特許出願公開第2007/0184275号「Methods of Applying a Hydrophilic Coating to a Substrate,and Substrates Having a Hydrophilic Coating」;および2004年7型1日公開のDietz,Timothy M.らによる米国特許出願公開第2004/0126541号「Drag Reduction Article and Method of Use」]、または海洋付着物を抑制する能力を[2007年11月8日公開のHamilton,Willard Chalsonらによる米国特許出願公開第2007/0258940号「Hydrophilic Fouling−release Coating and Uses Thereof」]特許請求している他の範疇の被覆が存在するが、これらは粘弾性ではない。その他の被覆には、SEA−SLIDE(商標)などのボート用親水性底部被覆、および境界層中にポリマーを放出する水削磨性塗装被覆が含まれる[1996年1月30日発行のSupcoeらによる米国特許第5488076号]。また、接着剤で裏打ちされたビニルの微細溝化表面(リブレットと称される)は、なんの付着物もない場合、抗力を低減することが知られている。このような微細溝は、表面近傍の縦の流れ構造を規制し、安定化する。しかし、これらの被覆は、それぞれ、単一機能(例えば、生物付着の抑制、ポリマー放出、または表面構造の提供)のみを実行し、船殻が乾燥(すなわち、水の外)している時の特殊な表面塗布を必要とする。したがって、再塗布のために、船舶を運行から除外しなければならない(すなわち、乾ドック)。より最近では、摩擦抗力を低減するために、新たなナノテクノロジーを使用して乱流と相互作用する表面を作り出すいくつかの努力が存在するが[2003年2月18日発行のKarniadakis,George Emらによる米国特許第6520455号「Method and Apparatus for Reducing Turbulent Drag」;1994年6月14日発行のNosenchuck,Daniel M.らによる米国特許第5320309号「Electromagnetic Device and Method for Boundary Layer Control」;および1995年8月1日発行のNosenchuck,Daniel M.らによる米国特許第5437421号「Multiple Electromagnetic Tiles for Boundary Layer Control」]、これらのシステムは、複雑であり、高度な制御システムを必要とし、かなりのレベルのエネルギーを消費することがある。
それゆえ、水中を移動する船舶(およびパイプまたはダクトを通って移動する液体)の性能および稼動効率を増大させるように活用され得る、かつ大きな維持費用および/または乾ドックの必要性なしに塗布することのできる、単純で、環境対応型の、対費用効果の高い抗力低減用被覆が必要とされている。
実験的には、摩擦低減は、境界層の流れ中に添加剤を導入することによってより信頼性を持って達成されている。最も一般的な添加剤は、長鎖ポリマーの水性溶液である[Hoyt,J.W.およびFabula,A.G.らの論文「Frictional Resistance in Towing Tanks」,Proc.10th Intern.Towing Tank Conf.,Teddington,1963;Hoyt,J.W.の論文「Fluid−Flow Friction Reduction」,NURDC,May 5,1969;およびD.M.BushnellおよびJ.N.Hefner編「Viscous Drag Reduction in Boundary Layers」,Vol.123,413〜429,1990中のHoyt,J.W.の論文「Drag Reduction by Polymers and Surfactants」]。抗力低減用ポリマー溶液を選択、調製、および安定化するために、いくつかの技術が開発されている[1986年4月29日発行のBock,Janらによる米国特許第4585810号「Drag Reduction Agent」;2003年10月2日公開のLabude,Katrina M.らによる米国特許出願公開第2003/0187123号「Drag−reducing Polymer Suspensions」;2003年4月3日公開のJohnston,Ray L.らによる米国特許出願公開第2003/0065055号「Method for Manufacturing Drag−reducing Polymer Suspensions」;2007年8月14日発行のMartin,Thomas J.らによる米国特許第7256224号「Stabilized Polymer Drag Reducing Agent Slurries」;2007年9月6日公開のMartin,Thomas J.による米国特許出願公開第2007/0205392号「Stabilized and Freeze−protected Polymer Drag Reducing Agent Suspensions」;および2002年4月18日公開のBassett,David Robinsonらによる米国特許出願公開第2002/0045703号「Processes for Preparing Aqueous Polymer Emulsions」]。抗力低減を高めるのとは反対に繊維を強化しかつ表面を密封することを目的にして、ポリマーの被覆特性を高めるためのその他の技術が開発されている[2002年8月8日公開のTrippe,J.C.らによる米国特許出願公開第2002/0106454号「High Molecular Weight Polymer Additive for Coating and Protective Products」]。
その他の抗力低減用添加剤には、界面活性剤をベースにしたミセルを形成する溶液[Gyr,A.およびBewersdorff,H.W.の著作「Drag Reduction of Turbulent Flows by Additives」,Kluwer Academic Publ.,(ISBN 0−7923−3485−X),1995];アスベストまたはナイロンなどの繊維状材料[Lee,W.K.らの論文「Turbulent Drag Reduction in Polymeric Solutions Containing Suspended Fibers」,AI Ch E J.,20(1),128〜133,January 1974;およびSharma,R.S.らの論文「Drag Reduction by Center−line Injection of Fibers in a Polymeric Solution」,Chem.Eng.J.,18、73〜79、1979]、および「マイクロバブル」と称される小さな気泡[D.M.BushnellおよびJ.N.Hefner編「Viscous Drag Reduction in Boundary Layers」Vol.123,351〜410,1990中のMerkle,C.L.およびDeutsch,S.の論文、「Drag Reduction in Liquid Boundary Layers by Gas Injection」]が含まれる。これらの技術のそれぞれは、実験室で成功裡に実証されたが、それらの実用性はいくつかの要因によって制約された。マイクロバブルの場合、その制約は、マイクロバブルが有効である境界層の壁近傍領域からマイクロバブルが離散すること、およびマイクロバブルが合着してより大きな泡になることに関連しており、それらは、抗力を低減する上で有効性が少ない。限られた設定のエジェクターの幾何学的形状を除いて、ポリマーおよびその他の添加剤は、それらが有効である領域から速やかに拡散することができ、その結果、壁近傍に有効なレベルの添加剤濃度を維持するために極めて大きな消費速度を必要とする。[Vdovin,A.V.およびSmol’yakov A.V.の論文「Turbulent Diffusion of Polymers in a Boundary Layer」,Journal of Applied Mechanics and Technical Physics,22(4),526〜531,1981]。また、ポリマーは、それらが適切に混合され、水和されることを確実にするために、予備混合され、スラリーとして運ばれる必要がある。伝統的な噴射技術で要求される極めて高い消費速度のため[例えば、Winkel,E.S.らの論文「Friction Drag Reduction at High Reynolds Numbers with Wall Injected Polymer Solutions」,26th Symposium of Naval Hydrodynamics,Rome,Italy,2006]、大容積のスラリーが、数時間で消費されると予想され、ポリマーの応用は、急速な爆発的速度が有用である可能性のある軍用船舶に限定されると思われる。
単独で使用された場合に摩擦抗力を低減することに加え、アスベストまたはナイロンなどの繊維の噴射は、また、ポリマー噴射による低減の性能を高める[Lee,W.K.らの論文「Turbulent Drag Reduction in Polymeric Solutions Containing Suspended Fibers」,AI Ch E J.,20(1),128〜133,Jan.1974;およびSharma,R.S.らの論文「Drag Reduction by Center−line Injection of Fibers in Polymeric Solution」,Chem.Eng.J.,18,73〜79,1979]。Leeらは、単独で摩擦抗力の約15%の低減をもたらす量の繊維を、単独で約36%だけの皮膜摩擦の低減をもたらす量のポリマーと組み合わせると、60%を超える摩擦低減をもたらしたことを報告した。Sharmaらは、後に、ポリマーと繊維との組合せ系の高められた抗力低減性能の普遍性を確認した。その相乗作用を活用する機会は、繊維の海洋的および工業的応用に対する制約のために、捉えにくかった。このような繊維は、取り扱うことが有害であることが知られており、ほとんどは、長期汚染物であると考えられる。一方、マイクロバブルおよびポリマーは、破壊されて、前者については空気に、後者については二酸化炭素および水などの天然化合物になる。
各種の抗力低減技術の間の相乗作用には、その他にも例が存在する。例えば、ポリマー噴射とマイクロバブル噴射との適切な組合せは、繊維とポリマーとを用いる場合のように、個々の性能レベルの和に比べてより高いレベルの抗力低減を生じさせることができる[Semenov,B.N.らの論文「Combined Effect of Small Amounts of Polymers Added to a Flow and of Surface Pliability on Turbulent Friction」,Seriya Tekhnichesikh Nauk:89〜94、1984;Amirov,A.I.らの論文「Experiments on Turbulent Drag Reduction by Joint Use of Compliant Coatings,Gas Microbubbles and Polymer Additives」,Abstr.9th European Drag Reduction Meeting,Ravello−Napoli,1995;およびDeutsch,S.らの論文「Combined Polymer and Microbubble Drag Reduction on a Large Flat Plate」,Journal of Fluid Mechanics 556:309〜327,2006]。また、Kozlov、BabenkoおよびSemenovは、個別的には機能が十分でない粘弾性被覆を用いた場合でさえ、ポリマー噴射の効率を、相当に高めることができることを報告した。同様に、リブレットとポリマー添加剤との組み合わされた作用は、個々の効果に比べてより大きいレベルの抗力低減をもたらすことが示されている[Koury,E.およびVirk,P.S.の論文「Drag Reduction by Polymer Solutions in Riblet−Lined Pipes」,Abstracts 8th European Drag Reduction Working Meeting,Lausanne,Switzerland 1993]。したがって、繊維の否定的環境効果、および抗力低減用粘弾性被覆の成長および維持に付随する困難を克服できるなら、これらの技術は、程々に摩擦抗力を低減する実際的方法を提供するばかりでなく、Toms効果(希薄ポリマー水溶液の噴射)と組み合わせて使用すると、統合させたシステムは、ポリマー噴射の独力と比べてより効果的かつより効率的であろう。
抗力低減に使用されるポリエチレンオキシド(PEO)などのポリマーは、表面と接触、または表面上を流れている間に、吸着絡み合い層を形成することが知られている[Barham,P.らの論文「Adsorption−entanglement Layers in Flowing High Molecular Weight Polymer Solutions III.Solution Concentration and Solvent Power」,Colloid & Polymer Science,264(6):515〜521,1986;Hand,J.H.およびWilliams,M.C.の論文「The Adsorbed−entangled Layer in Drag Reduction」,Chemical Engineering Science,28:63〜68,1973;およびKowalski,T.の論文「Turbulence Suppression and Viscous Drag Reduction by Non−Newtonian Additives」,Transactions of the Royal Institution of Naval Architects,207〜219,1968]。吸着−絡み合い層の形成および成長を制御する因子には、層が形成される表面の化学的性質、ポリマー溶液濃度、ポリマーの分子量、溶媒力、温度、および表面上の流れの速度が含まれる。具体的には、分子量の増大、濃度の増大、より優れた溶媒、および流速の増大(例えば、より大きな船舶速度)に伴って、層は、より急速に形成され、かつより厚くなる傾向がある[Barham,P.J.の論文「A Quantitative Model for the Formation of Adsorption−entanglement Layers」,Colloid & Polymer Science,265(7):584〜591,1987;およびDijt,J.C.らの論文「Kinetics of Adsorption and Desorption of Polystyrene on Silica from Decalin」,Macromolecules 27:3207〜3218,1994]。塩の水溶液は、PEOに対する良好な溶媒であるので、塩水環境では、むしろ層の拡大を期待することができる[JonesおよびRichardsの著作「Polymers at Surfaces and Interfaces」,Cambridge University Press,1999]。この現象は、コロイドおよびポリマー科学の分野で、特に、表面および界面でのポリマーの挙動が重要である研究および工業の領域で十分理解されている。Kowalski(外側流に関する)およびHandおよびWilliams(内側流に関する)による初期の報告は、抗力低減に関わる団体の鍵となる指導者によって、ほとんど直ぐに、少なくとも部分的に吟味された[Kowalski,T.の論文「Turbulence Suppression and Viscous Drag Reduction by Non−Newtonian Additives」,Transactions of the Royal Institution of Naval Architects,207〜219,1968(G.E.Gadd,A.G.Fabula,B.LattoおよびC.H.Shenによる216〜219頁に添付の書面により考察を参照のこと);およびGyr,A.およびMueller A.の論文「The Effect of Wall Absorption on the Toms Effect」,Chemical Engineering Science 29:1057〜1060,1974]。外側流の場合に表面へのポリマー吸着を受容しないことは、いくつかの要因に帰すことができる。水流洞中でのスケールモデルまたは平板を用いた実験室試験の際に、試験実行は、短い持続時間、しばしば1分未満である。短い試験時間は、ポリマーのバックグラウンドレベルが、蓄積せず、かつ試験結果を偏向させないことを保証するためである。また、何らかのバックグラウンドの蓄積を抑制するため、洞は、短い試験時間の後に、しばしば溶液中のポリマーを「劣化させる」のに十分な濃度の塩素を用いて高速で実行される。したがって、吸着のための機会を制約することに加えて、添加される塩素および洞の高速フラッシュ洗浄の効果は、吸着過程を抑制する。Kowalskiの研究の論評は、彼が再循環式というよりも開放式の試験設備を有したという事実を見落とした。したがって、流れは、入って来る流れを汚染する以前に噴射されたポリマーに関係なく連続的であることができた。Kowalskiは、彼の試験を、彼の試験装置を「フラッシュ洗浄」することを意図的に試みないで長時間実施した。彼は、また、試験を開放水中の小さな船舶について実施した。第2に、決定的に重要なことであるが、Kowalskiは、明らかに、極めて浅い角度(表面に対して5°)のエジェクタースロットを使用した最初の人であった。彼は、このような浅い噴射角が、噴射されたポリマーの表面からの拡散速度を著しく低減することを立証した。拡散速度を低減する上でのこのエジェクター形状の重要性は、後に、VdovinおよびSmol’yakovによって量化された(1978年および1981年)。後の洋上試験は、また、わずか2分〜5分の持続時間に制約された。2〜5分のこの時間制約は、極めて大容積のポリマースラリーを必要とする非効率的なエジェクターによって要求される大きな消費速度のためであった。スラリーのための通常濃度は、99重量部の水に対してわずか1部のポリマーに相当する、10,000wppm(重量100万分率)である。したがって、少なからぬ条件を評価すべき場合には、わずか数分の試験のために必要とされるスラリーの容積が、個々の試験が短い持続時間でなければならないことを規定した。Mooreらによって行われた一連の洋上試験[2006年9月17〜22日、イタリア、ローマでの第26回海事流体力学シンポジウムで発表されたMoore,K.J.らの論文「Design and Test of a Polymer Drag Reduction System on Sea Flyer」]は、海水を使用するオンデマンド式のポリマー調製(混合、および活性化すなわちポリマー分子の巻き解き)システムを採用した。このオンデマンド式システムは、Cortana流体工学エジェクターと連結され、貯蔵容積および消費必要量を低減し、かくして、連続に近い試験を可能にする。それぞれの日の進路上で、個々の試験実行は、10〜45分間に延長され、ある日の進路上で複数の個別試験を行うことを可能にした。それゆえ、水流洞および以前の洋上試験と異なって、低い消費速度、接線噴射、および十分な時間が、吸着絡み合い層の確立に必要な条件を提供した。変化する接線剪断応力下でのポリマー溶液の流れは、吸着されたPEO層の変形を引き起こすことも知られている。Churaevらは、吸着された層の流体力学的厚さが、30ノットの船舶について予想される剪断応力値に対して2倍またはそれ以上にまで変化する場合があることを報告している。厚さの変化は、長時間を必要とする脱離(関連文献中で使用される用語)によるものではない。剪断応力下で、吸着層は、急速ではあるが可逆的に変形し、PEO吸着層は、粘弾性体として挙動する[Churaev,N.V.らの論文「Hydrodynamics Thickness and Deformation of Adsorbed Layers of Polyethylene Oxides」,Journal of Colloid and Interface Science 169:300〜305,1995]。変形過程は、吸着された層を圧縮および強化する効果を有する。それゆえ、我々は、層の粘弾性特性が剪断応力の調節機能として変化すことを期待することができる。すなわち、粘弾性特性は、船舶速度の調節により、変化の大きさおよび頻度の双方に関して変化する。また、気体のマイクロバブルを、ポリマー噴射および吸着絡み合い層の確立と組み合わせて使用する予定なら、マイクロバブルの存在は、層中への空気同伴をもたらす可能性がある。被覆が、まさに確立され、かつ被覆が形成されるにつれて気体のマイクロバブルが同伴されると、被覆の密度およびその粘弾性特性が修正される。同伴空気でもたらされる修正は、気体噴射開始の数分後に始まり、気体噴射停止後の10分まで継続して、総合的な抗力低減性能を低下させることが観察された。しかし、より確立された被覆の場合、気体噴射の最中またはその後でのシステムの劣化は観察されなかった。したがって、船舶をある程度まで減速または停止することによって形成されている被覆に対する剪断応力を緩めると、同伴気体を放出することができ、速度に復帰すると、被覆は、低減された同伴物質を含まずに再び圧縮、強化される。
さらに、フーリエ変換赤外分光法を使用して、流れ場の存在下で、ポリマー鎖の骨格は、低剪断速度でさえも、流れの方向に配向するようになることが示された[Frantz,P.らの論文「Orientation of Adsorbed Polymer in Response to Shear Flow」,Colloids and Surfaces A:Physicochemical and Engineering Aspects 86:295〜298,1994]。したがって、吸着された粘弾性層の特性は、流れ場中で作り出されると、流れの方向に異方性である。一般に、多数の長い分子を、表面に拘束することができる。それらの分子は、溶液中に伸張し、物理的に吸着された「すそ(train)」および溶液中になびく長い「尻尾(tail)」によって分離される大きな「ループ」を形成することができる。これらの尻尾は、時には、「ブラシ」と呼ばれ、それらが流れ場中になびくにつれて密になることができる。したがって流れが継続するにつれ、被覆は、自由流動分子の、ループおよび尻尾を有する以前に確立された分子との絡み合いによって成長することができる。
また、ポリエチレンオキシド(PEO)の表面が、タンパク質およびその他の生体分子の吸着に対して強力に抵抗性であることが知られている[Harris,J.M.およびZalipsky,S.(編者)の「Poly(ethylene glycol)Chemistry and Biological Applications」,ACS Symp.Ser.680,American Chemical Society,Washington,D.C.,1997]。PEOのフィルムは、医療用インプラント、バイオセンサー、および診断デバイス中でタンパク質吸着および細胞接着を低減するための表面保護材として使用される[Biederman,Hynek(編者)の「Plasma Polymer Films,Imperial College Press,London,pp.237〜239,338〜340,and 357〜361,2004]。細胞接着を抑制して、抗力を生じさせ、かつ甲殻動物および棲管虫の大規模付着を発生させる微生スライムの形成を防止するPEOフィルムの能力が、本発明者らによって観察された。
異方性粘弾性被覆を効率的かつ効果的に生じさせるためには、壁に沿ったおよび自由流(速度Uを有する)中の高分子量ポリマー溶液の濃度は、壁上での吸着絡み合いの高い確率を確実にするために十分に高くなければならない。噴射されるポリマーを壁に対して接線またはほとんど接線方向よりもむしろ流れ中に向ける噴射技術は、壁近傍領域からのポリマーの拡散を高める[Vdovin,A.V.およびSmol’yakov,A.V.の論文「Diffusion of Polymer Solutions in a Turbulent Boundary Layer」,Journal of Applied Mechanics and Technical Physics 19(2),196〜201,1978:およびVdovin,A.V.およびSmol’yakov,A.V.の論文「Turbulent Diffusion of Polymers in a Boundary Layer」,Journal of Applied Mechanics and Technical Physics 22(4),526〜531,1981]。一方、噴射されるポリマーを、不安定性を導入しないで船舶壁(すなわち、船舶外殻)に沿って向けるエジェクターは、乱流拡散の抑制に寄与し、高濃度の噴射材料が壁の近傍に留まり、それによって、吸着−絡み合い層を確立するための潜在能力を高めることを確実にする。過去の直線スロット技術を使用して接線型エジェクターを製造する能力は、構造、空間、および構成上の難題を呈示した。しかし、このような浅い角度のエジェクター(流れ表面に対して約5°)は、極めて短寿命の(すなわち、分程度の)吸着された層を作り出すことが立証された[Kowalski,T.の論文「Turbulence Suppression and Viscous Drag Reduction by Non−Newtonian Additives」,Transactions of the Royal Institution of Naval Architects 207〜219,1968]。その試験の配置は、自由流の流体の再循環を含まないが、その連続補充を含んでいたので、観察される吸着は、噴射されたポリマーだけの結果であり、流れ場中での外界または「バックグラウンド」ポリマー濃度の長期蓄積の結果ではない。より最近、Cortana社の流体工学エジェクターを用いた洋上試験は、運行中の船舶に、より長期的かつ運行上実際的な吸着絡み合い層を確立することの実現可能性を立証した[200年3月19日発行のMoore,K.J.らのよる米国特許第6357374号「Method and Apparatus for Increasing the Effectiveness and Efficiency of Multiple Boundary Layer Control Techniques」]。接線方向に噴射すること、および添加剤の噴射に伝統的に付随する局所的な乱流増加を回避することによって、この噴射技術は、境界層を横切る添加剤の急速拡散を遅延させる。
本発明者らは、わずか1,000〜1,500wppmの濃度CiのPEO WSR−310の接線方向噴射が、粘性下部層を通る流れの5〜10倍の流速(すなわち、Qi=5QS〜10QS)で、吸着された層を数10分程度で確立するのに十分であると判定した。いったん吸着された被覆が確立されると、消費速度(すなわち、濃度Ci×流速Qiの積)を、非被覆船殻での初期速度に比較して実質的(すなわち、1/2を超えて)に低減し、さらに同レベルの抗力低減を達成することができた。それゆえ、さらにより控えめな量の添加剤が、いまや、長期間の抗力低減を支援する。さらに、ポリマーなどの添加物をオンデマンド式で海水と混合する能力は、淡水中で混合されたスラリー形態の添加剤を運搬する必要性を排除し、ポリマーを塩水溶液中で混合、噴射することを可能にする[2006年9月17〜22日、イタリア、ローマでの第26回海事流体力学シンポジウムで発表されたMoore,K.J.らの論文「Design and Test of a Polymer Drag Reduction System on Sea Flyer」]。
環境への影響に関して、所定の船舶について燃料節減重量に対するポリマー消費重量は、抗力低減量、船舶速度、および全抗力に対する摩擦抗力の割合に依存する。ポリマー消費速度は、適切なエジェクターを使用すると、速度に関して一次であり、燃料消費速度は、速度に関してほぼ三次であり、ポリマーによる抗力低減の利益は、船舶速度とともに増大する。大型複数船殻フェリーなどの30〜35ノットの間で運行する適切に設計された高速船舶の場合、節減燃料の消費ポリマーに対する比率は、10:1程度にある。オクタンC818などの単純な燃料を燃やす場合、その燃料は、いくつかの有毒ガス、水、および当然ながら二酸化炭素(CO2)を発生する。1kgのオクタンを酸化すると、3kgをわずかに超える二酸化炭素が発生する。ポリマーは、自然に分解して、水および二酸化炭素になる。海水中では、塩類が存在するため、分解過程は、わずか数10分後に急速に進行することが観察されている。しかし、その過程は、酸化される各1kgのポリマーと引き換えにわずか約2kgの二酸化炭素が発生する。結果として、1kgのオクタンの酸化は、1kgのPEOの酸化に比べて50%を超えるより多くの二酸化炭素を発生すると予想することができる。削減される燃料重量の消費されるポリマー重量に対する比率は、10程度にあるので、削減される燃料によってもたらされたであろうCO2排出は、約1/15まで削減される(すなわち、CO2排出は、そうでなければもたらされたであろう量の約93%であろう)。したがって、船舶の全体的抗力は、30%程度まで低減され、このことは、燃やされる燃料のざっと30%の削減に相当し、かくして、CO2排出の約28%の削減が実現されるであろう。
(本発明の簡単な要約)
本発明は、極めて少ない、またはさらには間欠的なポリマー消費でもって低レベルの摩擦抗力低減を提供するか、あるいは伝統的なポリマー噴射システムに比較して相当に低減されたポリマー消費速度でもって高レベルの摩擦抗力低減を提供するかのどちらかを提供する目的のために、海洋または工業に関わる表面上に抗力を低減する粘弾性被覆を確立する方法である。該方法を、まず、一般的条件で説明する。最初に、水溶性かつ非イオン性である抗力低減用ポリマーは、淡水または海水などの良好な溶媒として特徴付けられる流体と混合されて、濃厚な(例えば、1,000wppm程度)ポリマー溶液を形成する(本明細書中で、濃厚溶液は、「第1流体」と称される)。適切に濃厚な第1流体は、次いで、第2流体として表面上を流れる第2流体の境界層中に、第2流体の境界層を横切るポリマーの急速拡散を回避するような方式で、接線方向に噴射される。第2流体の速度を制御して(例えば、船舶速度を変化させることによって)、噴射された多数のポリマー分子が、まず表面と次いで表面上の吸着された層と接触して所望の時間内に抗力低減用粘弾性被覆を確立することを確実にすることができる。第1流体の流れが表面を越えかつ表面に接触するにつれ、長鎖ポリマーは、表面上にフィルム様の被覆を確立する。ポリマーは、表面上を流れている間に表面上に堆積され、ポリマー分子は、それらの極端なアスペクト比のため、縦の配向を好み、その結果、生じるフィルムは、構造化され、流れ方向に異方性である。それは、また、望ましくない横の縁端が回避されるように表面に沿って連続的である。異方性であること、およびほぼ連続的な表面を有することに加え、生じる被覆の厚さ、その横方向の構造、およびその密度は、適切に配置された抗力低減用被覆に対する要件を満足する。さらに、PEOなどのポリマーが、ブラシ様構造を形成する場合、被覆は、ポリマー、繊維、およびリブレットからなる系として挙動する傾向がある。剪断応力を増すことによって、吸着された層を、圧縮または強化することができる。したがって、堆積過程の間中、剪断応力を変えるべきであり、例えば、船舶を減速して同伴気体を放出し、それによって、絡み合い吸着された層の密度および粘弾性特性を制御する。被覆および乱流場の性質のため、フィルム表面は、堆積(吸着)と除去(脱離)との周期的過程にある。噴射速度に応じて、ポリマーは、堆積状態に、堆積速度が除去速度にほぼ等しい平衡状態に、または除去状態にあることができる。ポリマー添加剤が、被覆、リブレット、または繊維と共に使用される場合のように、特定レベルの抗力低減を達成するために必要なポリマーの消費速度は、堅い表面上への短時間の噴射に要求される速度に比較して著しく低減される。フルスケールの洋上試験は、除去状態、すなわち、連続噴射のない、または低減された噴射の状態において、フィルムは、摩擦抗力を10%程度低減することができる。
(詳細な説明)
本発明は、海洋または工業に関わる表面上に抗力を低減する粘弾性被覆を確立する方法に関する。該方法は、示した順序ではあるが、必ずしも連続した順序ではなく実施される次のステップ:すなわち、
(a)ポリマーを溶媒と混合して濃厚溶液とし、表面上を流れる第2流体とほぼ同一の密度を有する第1流体を作るステップ(表面上を流れている第2流体の摩擦抗力を低減することが望ましい)、
(b)ステップ(a)で形成された第1流体を、表面上を流れている第2流体中に、第2流体が表面上を流れるにつれて第2流体の境界層の流体流れを横切る噴射された第1流体の拡散を高めないような方式で噴射するステップ(第1流体の噴射は、ポリマー被覆が表面に吸着され、かつポリマー被覆が、当初、時間と共より厚くなるような濃度および噴射速度でなされる)、および
(c)ステップ(a)で形成された第1流体の第2流体中への噴射を中断すること、またはステップ(a)で形成された第1流体を第2流体中へポリマー被覆が時間と共により薄くなるような速度で噴射することの少なくとも1つを実施するステップ
を含む。
ステップ(b)の間中、第1流体の濃度、第1流体の噴射速度、および第二流体の速度の中の1つまたは複数を、表面へのポリマーの吸着速度を制御して所望の時間でポリマー吸着絡み合い層を確立するように制御することができる。さらに、ステップ(b)の間中、ポリマー吸着絡み合い層に対する剪断応力を、任意選択で、1または複数回緩めて、気体またはその他の材料の潜在的同伴を制御し、かつ生じるポリマー吸着絡み合い層を強化することができる。さらに、ポリマー吸着絡み合い層(複数可)に対する剪断応力を緩めた後に、第1流体を、表面からのポリマーの除去速度が、表面へのポリマーの堆積速度と釣り合う被覆の平衡状態を達成する速度で噴射することができる。しかし、被覆の平衡状態は、任意に短くすることができる(すなわち、それは、ほんの瞬間的でよい)。
上記(a)〜(c)のステップを、所望の最小ポリマー被覆厚さが長時間にわたって維持されるように繰り返すことができる。

Claims (6)

  1. 海洋または工業に関わる表面上に抗力低減粘弾性の抗力低減性ポリマーの被覆を確立することによって抗力低減性ポリマーの消費速度を低減するための方法であって、指示された順序ではあるが、必ずしも連続した順序ではない次のステップ:
    (a)表面上を流れている第2流体の摩擦抗力を低減するように、抗力低減性ポリマーを溶媒と混合して濃厚溶液とし、表面上を流れる第2流体と同一の密度を有する第1流体を作るステップ、
    (b)ステップ(a)で形成された第1流体を、表面上を流れている第2流体中に、第2流体が表面上を流れる際に、第2流体の流体流れの境界層を横切る噴射された第1流体の拡散を高めないような方式で、第1流体の噴射は、前記抗力低減性ポリマー被覆が表面に吸着され、かつ前記抗力低減性ポリマー被覆が、当初、時間と共により厚くなるような濃度および噴射速度でなされるように接線方向に噴射するステップであって、
    この場合、
    第1流体の濃度Ci
    第1流体の噴射速度Qi、および
    第2流体の自由流速度U
    の1つまたは複数を制御して前記抗力低減性ポリマー被覆の前記表面上への吸着速度を制御するようになっているステップ、および
    (c)第1流体の噴射速度を、前記抗力低減性ポリマーの吸着絡み合い層が時間と共により薄くなるように低減するステップ
    と、を含む方法。
  2. ステップ(b)の間中、気体またはその他の物質の潜在的同伴を制御し、かつ生じる前記抗力低減性ポリマー吸着絡み合い層を強化するために、吸着された前記抗力低減性ポリマー被覆に対する剪断応力を、第2流体の自由流速度Uを低減することによって1または複数回一時的に緩めることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
  3. 剪断応力を緩めた後に、第1流体が、表面からの前記抗力低減性ポリマーの除去速度が表面上への前記抗力低減性ポリマーの堆積速度と釣り合う、前記抗力低減性ポリマーの被覆の平衡状態を達成する濃度および速度で噴射される、請求項2に記載の方法。
  4. 前記抗力低減性ポリマーの被覆の平衡状態が瞬間的に存在するのみである、請求項3に記載の方法。
  5. その(a)〜(c)の前記ステップが、所望の最小の前記抗力低減性ポリマーの被覆厚さが、長時間にわたって維持されるように1または複数回繰り返される、請求項1に記載の方法。
  6. 前記抗力低減性ポリマーと混合された前記溶媒と前記表面上を流れる前記第2流体がいずれも海水である、請求項1ないし5のいずれか1つの請求項に記載の方法。
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