JP5373421B2 - バイオエタノールの製造方法 - Google Patents

バイオエタノールの製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP5373421B2
JP5373421B2 JP2009026639A JP2009026639A JP5373421B2 JP 5373421 B2 JP5373421 B2 JP 5373421B2 JP 2009026639 A JP2009026639 A JP 2009026639A JP 2009026639 A JP2009026639 A JP 2009026639A JP 5373421 B2 JP5373421 B2 JP 5373421B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
ethanol
fermentation
distillation
butyric acid
fermentation broth
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2009026639A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2010178703A (ja
Inventor
寛則 瀧
祐二 斎藤
敬道 副島
哲史 山本
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Taisei Corp
Original Assignee
Taisei Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Taisei Corp filed Critical Taisei Corp
Priority to JP2009026639A priority Critical patent/JP5373421B2/ja
Publication of JP2010178703A publication Critical patent/JP2010178703A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5373421B2 publication Critical patent/JP5373421B2/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Classifications

    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02EREDUCTION OF GREENHOUSE GAS [GHG] EMISSIONS, RELATED TO ENERGY GENERATION, TRANSMISSION OR DISTRIBUTION
    • Y02E50/00Technologies for the production of fuel of non-fossil origin
    • Y02E50/10Biofuels, e.g. bio-diesel

Landscapes

  • Preparation Of Compounds By Using Micro-Organisms (AREA)

Description

本発明は、バイオエタノールを製造する方法、より具体的には、植物系バイオマスを用いたバイオエタノールを製造する方法に関する。
植物系バイオマスからエタノールを製造する方法は、これまでにも多数の検討が行われている。例えば、特許文献1では、海洋で成長した藻類や海洋性植物からのエタノール製造方法に関する報告がなされている。特許文献2では、木質系バイオマスからのエタノール製造方法に関する報告がなされている。特許文献3では、効率的にエタノール発酵を行う微生物に関する報告がなされている。特許文献4では、ジオバシラス属の細菌を用いたエタノール発酵に関する報告がなされている。特許文献5では、特殊な微生物を用いてキシロースから効率的にエタノール発酵を行う方法に関する報告がなされている。
以上のように、従来のバイオエタノールの製造方法においては、様々な材料からのエタノールの製造や、効率的にエタノール発酵を行う微生物に焦点が当てられてきた。
一方、植物系バイオマスから製造されたエタノールは、その使用目的に合致した品質が要求される。例えば日本で自動車の燃料などにエタノールを使用する場合は、社団法人自動車技術会が出している表1に示した品質基準を満たす必要があるが、このようなエタノールの品質に着目した検討は、これまでなされてこなかった。
Figure 0005373421
特願2002-127690号 特願2003-139008号 特願2003-146716号 特願2004-75590号 特願2007-31312号
植物系バイオマスからのエタノール(以下、バイオエタノールともいう)の製造は、微生物による発酵とその後の蒸留・精製処理によって行われている。
しかしながら、このような製造工程によりエタノールを製造した場合、蒸留後のエタノールの品質低下が起こる場合がある。例えば、蒸留後のエタノールのpH低下や高い硫黄含有率などである。
そこで本発明は、pH低下及び/又は硫黄含有率が抑制されたバイオエタノールの製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、蒸留後のエタノールのpH低下及び高い硫黄含有率が、エタノール発酵後から発酵液を蒸留・精製工程に付すまでの間に発酵液中で生じる嫌気発酵が原因であることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は以下の特徴を包含する。
(1) 植物系バイオマスからエタノールを発酵生産する方法において、エタノール発酵後から発酵液を蒸留・精製工程に付すまでの間に発酵液中で生じる嫌気発酵を阻害することを特徴とする、バイオエタノールの製造方法。
(2) 前記嫌気発酵の阻害を、発酵液を好気状態に維持するか又は発酵液中の微生物活動を阻害することによって行うことを特徴とする(1)記載の方法。
(3) 発酵液の好気状態を通気及び/又は攪拌により維持することを特徴とする(2)記載の方法。
(4) 微生物活動の阻害を、発酵液の温度を低下することによって及び/又は発酵液への抗微生物剤の添加によって行うことを特徴とする(2)記載の方法。
本発明の方法によれば、pH低下及び/又は硫黄含有率が抑制されたバイオエタノールを製造することができる。
図1は、バイオエタノールの製造工程のフローを示す。 図2は、製造後のバイオエタノールがpH低下を示す場合の模式図を示す。 図3は、製造後のバイオエタノールが高い硫黄含有率となる場合の模式図を示す。 図4は、実施例2で検出された硫黄含有フラン類の構造を示す。 図5は、嫌気条件下で経時的にエタノール発酵液中の酪酸濃度が増加することを示す。 図6は、嫌気条件下では、硫化水素の発生に伴い、エタノール発酵液中の硫酸イオンが減少することを示す。
本明細書で使用する用語「植物系バイオマスからエタノールを発酵生産する方法」とは、微生物の発酵を利用した植物系バイオマスからのエタノールの製造方法をいい、バイオマス原料の糖化工程、微生物によるエタノール発酵工程、及び発酵液の蒸留・精製工程を含んでいる(図1参照)。具体的に上記方法は、バイオマス原料をセルラーゼなどの酵素や酸による処理により加水分解し、酵母などの微生物を利用してエタノール発酵を行った後、蒸留・精製を行い、エタノール純度を高めたバイオエタノールを得ることを含む。上記方法は当業者に自明であり、その詳細は例えば機械工学便覧 エンジニアリング編C6 バイオテクノロジー・メディカルエンジニアリング、日本機械学会(1988)、湯川英明監修、バイオリファイナリー技術の工業最前線-自動車用バイオ燃料の技術開発-、株式会社シーエムシー出版(東京)、2008などに記載されている。
本明細書で使用する用語「植物系バイオマス」とは、主成分としてセルロース、ヘミセルロース及び/又はリグニンにより構成される、植物や藻類由来の植物性原料を指し、例えばこれに限定されるものではないが小麦ワラ、サトウキビの絞り粕、稲ワラ、籾殻、トウモロコシの茎葉、野菜など農業の過程にて発生するもの(農業性植物バイオマス)や、樹木、潅木、雑草やそれらが伐採されたものなど非農業性植物バイオマス、また、お茶の原料である茶葉など工業的に利用された後の植物性バイオマスの残渣、さらに河川や湖沼に生息するウキクサや、アオサをはじめとした海藻などが含まれる。
本発明に係るバイオエタノールの製造方法(以下、単に「本発明の方法」ともいう)は、下記で特に規定されない限り、当業者に自明の上記方法に従って行うことができる。すなわち、本発明に使用する植物系バイオマス及び微生物(遺伝子組換え微生物を含む)の種類、発酵条件(発酵温度、発酵時間、pHなどを含む)、並びに蒸留・精製方法等は、当業者が適宜選択することができる。
本発明者らは今回、上記のようにして製造されるエタノールのpH低下及び/又は高い硫黄含有率が、エタノール発酵後から発酵液を蒸留・精製工程に付すまでの間に発酵液中で生じる嫌気発酵が原因であることを見出した。エタノール発酵工程と蒸留・精製工程の間には、リザーバータンクが設置されることが多く、リザーバータンク内に貯留されたエタノール発酵液は微生物の酸素消費により嫌気状態になり、嫌気発酵により酪酸等の低級脂肪酸と硫化水素とが生成する。さらにこれらは、後述のように蒸留・精製工程を通して他の物質と反応することで蒸留・精製工程後もエタノール中に残留し、最終的に製品として利用される蒸留後のエタノールのpH低下及び/又は高い硫黄含有率を引き起こしている。
本発明者らが見出した低級脂肪酸及び硫化水素生成に起因するエタノールのpH低下及び高い硫黄含有率の詳細なメカニズムは以下の通りである。
pH低下のメカニズムを図2に示す。エタノール発酵液が嫌気状態になると、発酵液中に残存している糖などの有機物を利用した嫌気発酵により酪酸等の低級脂肪酸が生成する。例えばここで酪酸が生成した場合、次の蒸留・精製工程において酪酸とアルコール(例えばエタノール)の脱水縮合により酪酸エステル(例えば酪酸エチルエステル)が生成する。酪酸は蒸気圧が低いため蒸留・精製工程で除去されるが、酪酸エステルは蒸気圧が高く、除去されにくいため、蒸留後のエタノール中に残存しやすい。ただし、酪酸エステルが存在するだけではpHに大きな影響は与えないため、蒸留後のエタノールの初期のpHは中性付近となる。しかし、蒸留後のエタノールの保存中、酪酸エステルが少量存在する水と加水分解を起こし、酪酸が生成、pHの低下が起こる。ここでは、嫌気条件で生成する低級脂肪酸として酪酸を例にとって説明したが、酪酸以外の低級脂肪酸でも同様のことが起こると考えられる。
次にエタノールが高い硫黄含有率となるメカニズムを図3に示す。エタノール発酵液が嫌気状態になると、発酵液中に残存している糖などの有機物と硫酸イオンとを利用した嫌気発酵により硫化水素が生成する。次に蒸留・精製工程において、糖の熱分解により生成するフラン類と硫化水素とが反応して硫黄含有フラン類が生成する。硫化水素や硫酸イオンは蒸留・精製工程で除去されるが、硫黄含有フラン類は蒸気圧が高く、除去が難しいため、蒸留後のエタノール中に残留し、高い硫黄含有率となる。
したがって、本発明の方法は、植物系バイオマスからエタノールを発酵生産する方法において、エタノール発酵後から発酵液を蒸留・精製工程に付すまでの間に発酵液中で生じる嫌気発酵を阻害することを特徴とする。すなわち、本発明の方法は、エタノール発酵後に発酵液中で生じる嫌気発酵を阻害することによって、低級脂肪酸及び/又は硫化水素の生成、並びにその後の低級脂肪酸エステル及び/又は硫黄含有フラン類の生成を抑制することを含む、pH低下及び/又は硫黄含有率が抑制されたバイオエタノールを製造する方法である。
エタノール発酵後の発酵液を保存する場合、嫌気性細菌がほとんど存在しないように制御された環境下で保存する場合を除き、リザーバータンクなどの貯蔵槽や配管、送液ポンプ等に付着した嫌気性細菌に起因して、保存後数時間で嫌気発酵が開始する。したがって本発明の方法は、エタノール発酵後に発酵液をリザーバータンクなどの貯蔵槽に少なくとも数時間以上、例えば1時間以上、好ましくは1日以上、より好ましくは1ヶ月以上保存した後に、蒸留・精製工程に付すような場合に特に好ましい方法である。
本発明の方法において、前記嫌気発酵の阻害は、発酵液を好気状態に維持するか又は発酵液中の微生物活動を阻害することによって行うことができる。ここで、微生物活動の阻害は、微生物による酸素消費を抑制することによる発酵液の嫌気状態の回避及び/又は嫌気発酵の直接的阻害を目的とするものである。
発酵液の好気状態の維持は、例えば発酵液の通気及び/又は攪拌により行うことができる。発酵液の通気及び/又は攪拌は、微生物の酸素消費量以上の酸素を発酵液に供給することで、発酵液を好気状態に維持する手段である。この場合の通気量及び攪拌速度は、発酵液が好気状態を維持する程度であれば特に制限されず、リザーバータンクなどの発酵液の貯蔵槽のサイズや形状、発酵液中の微生物の種類と濃度、発酵液中の各種成分と濃度などに応じて当業者が適宜選択することができる。本発明において、通気と攪拌とを併用することが好ましい。その際、通気量を例えば、0.001〜0.5vvm、好ましくは0.01〜0.1vvmとし、攪拌速度を10〜200rpm、好ましくは30〜100rpmとすることができる。
本発明に使用することができる攪拌装置として、これに限定されるものではないが、パッチ式ミキサー、インペラー式攪拌機、ブレードミキサー、ローター/ステーター式ミキサー、ロータリーシェーカー等が挙げられる。
微生物活動の阻害は、例えば、発酵液の温度を低下することによって及び/又は発酵液への抗微生物剤の添加によって行うことができる。
微生物活動の阻害を発酵液の温度を低下させることによって行う場合には、発酵液の温度を、微生物が生育できないか又は正常な微生物活動(例えば増殖、好気発酵、嫌気発酵など)がほとんど又は全くできない程度の温度まで低下させる。そのような温度は、例えば15℃以下、好ましくは4℃以下、より好ましくは0℃以下の温度である。
本明細書で使用する用語「抗微生物剤」とは、微生物を死滅させたり、正常な微生物活動(例えば、増殖、好気発酵、嫌気発酵など)を阻害することができる任意の化合物をいう。そのような化合物として、これに限定されるものではないが、例えば抗生物質、防菌剤、防黴剤などを挙げることができる。本発明の方法で使用することができる抗生物質、防菌剤及び防黴剤を以下に例示する:銀、銅、亜鉛化合物、次亜塩素酸ソーダ、クロラムフェニコール、ストレプトマイシン、ナイスタチン。これら抗微生物剤の添加濃度は、発酵液中の微生物の種類と濃度、発酵液中の各種成分と濃度、製造場所の状況などに応じて当業者が適宜選択することができる。また1種の抗微生物剤を使用してもよいし、複数種の抗微生物剤を組合せて使用してもよい。
こうして製造されるバイオエタノールは、pH低下及び/又は硫黄含有率が抑制されたものである。本発明で使用する「pH低下及び/又は硫黄含有率が抑制された」とは、嫌気発酵の阻害を含まない一般的な方法によって製造されるエタノールに比較して、経時的なpH低下及び/又は硫黄含有率が抑制されることをいう。好ましくは、本発明の方法で製造されるバイオエタノールは、1年間保存した後であっても、pH及び/又は硫黄含量が上記表1に示す品質基準値の範囲内である。
(実施例)
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
低級脂肪酸の混入による蒸留後のエタノールのpH低下に及ぼす影響
リザーバータンクにおいて低級脂肪酸が発生したエタノール発酵液から蒸留・精製したエタノールは、9ヶ月間保存した後、pH6.5の中性からpH4.9の酸性へと変化が見られた。一方、リザーバータンクで低級脂肪酸が発生しなかったエタノール発酵液から蒸留・精製したエタノールにおいては、このようなpHの低下は見られなかった。そこで本発明者らは、エタノール発酵液中で発生した低級脂肪酸が、蒸留後のエタノールのpH低下に影響しているかを以下のようにして検証した。
pH4.9の蒸留後のエタノールを遮光状態で保存した。このとき、保存温度は4℃あるいは30℃とした。5ヶ月後にpHおよび酪酸/酪酸メチル比、酪酸/酪酸エチル比を測定した。
pHは(株)堀場製作所製のpHメーターを用いて測定した。また、酪酸と酪酸メチル及び酪酸エチルとの比はGC-MSにより測定した。GC-MSはAgilent Technologies(CA, USA)の5973GC/MSDを用い、カラムはAgilent TechnologiesのキャピラリーカラムHP-1(長さ=60m、内径=320μm、膜厚=1μm)を用いた。測定はSCANモードおよびSIMモードで行った。試料の導入はAgilent TechnologiesのヘッドスペースサンプラーG1888を用いた。注入口温度は250℃、カラム温度は初期温度を80℃で5分間保持した後、15℃・min-1で昇温し、180℃で5分間保持した。キャリアーガスはヘリウムを用い、スプリット比は1:10とした。サンプル測定後、酪酸および酪酸メチル、酪酸エチルの面積値を計算し、それぞれの面積比を求めた。測定結果を表2に示す。
Figure 0005373421
4℃で保存した場合、pHは4.7であったが、30℃では4.4であった。さらに、このときの酪酸/酪酸メチル比及び酪酸/酪酸エチル比は30℃の方がそれぞれ高かった。この結果から、保存温度の高い30℃の方が酪酸メチル又は酪酸エチルの加水分解が早く進行して、4℃で保存した場合に比べてpHが低くなり、その結果、酪酸/酪酸メチル比及び酪酸/酪酸エチル比が大きくなったものと考えられた。なお、このときのサンプルはGC-MSのSCANモードでも測定したが、酪酸以外にpHに大きな影響を与えると考えられる物質は計測されなかった。
以上の結果から、酪酸エステル等の混入は蒸留後のエタノールのpH低下させる可能性が高いことが分かった。これはエタノール発酵液の保存時の酪酸生成を阻害してその後の酪酸エステルの生成を阻害することにより、蒸留後のエタノールのpH低下を抑制できることを示唆している。そのため、エタノール発酵液の保存時における嫌気発酵を阻害して、酪酸等の低級脂肪酸を発生させずに蒸留・精製工程へと導入する方法は、蒸留後のエタノールのpHを大きく低下させないために重要であることがわかった。
硫化水素混入による蒸留後のエタノールの高い硫黄含有率に及ぼす影響
エタノール発酵液への硫化水素混入の影響を調べるため、植物バイオマスの過分解で生成するフラン類の一つであるフルフラールと硫化ナトリウム及び硫酸ナトリウムを混合、加熱する実験を行った。エタノール中にフルフラール又は硫黄化合物を表3のような条件で混合し、120℃で20分間、反応させた。次に、GC-FPDおよびGC-MSで成分分析を行った。
Figure 0005373421
サンプルの成分分析は、GC-FPDおよびGC-MSを用いて行った。GC-FPD(G-6000:日立製作所)測定では、Varian(CA, USA)のChrompack Capillary Column CP-Sil 5CB for Sulfur(長さ=30m、内径=320μm、膜厚=4μm)を用い、検出器はFPDとした。試料はガスタイトシリンジにより1μlをGCに導入した。分析条件は、注入口温度=150℃、検出器温度=200℃とし、カラム温度は初期温度を40℃で5分間保持した後、5℃・min-1で昇温し、100℃で3分間保持、さらに、10℃・min-1で昇温し、250℃とした。キャリアーガスはヘリウムを用いた。GC-MS(5973GC/MSD:Agilent Technologies)測定では、Agilent TechnologiesのキャピラリーカラムHP-1(長さ=60m、内径=320μm、膜厚=1μm)を用い、測定はSCANモードで行った。試料の導入はAgilent TechnologiesのヘッドスペースサンプラーG1888を用いた。注入口温度は250℃、カラム温度は初期温度を80℃で5分間保持した後、15℃・min-1で昇温し、180℃で5分間保持した。キャリアーガスはヘリウムを用い、スプリット比は1:10とした。
その結果、条件1および条件3、4、5では外観上、変化が見られず、新たに生成した物質も検出されなかった。一方、条件2では、透明だったエタノールが黒色に変化し、さらに図4に示したような硫黄含有フラン類(2-Furanmethanethiol Furfuryl mercaptan)が検出された。蒸留・精製工程では加熱部位があり、ここで同様の反応が起きると考えられた。
以上の結果から、エタノール発酵液中に硫化水素が存在した場合、蒸留・精製工程において含硫黄フラン類が生成することが分かった。硫酸イオンや硫化水素は蒸留・精製工程で除去されるが、含硫黄フラン類は蒸留・精製工程での除去が難しい。そのため、エタノール発酵液の保存時における嫌気発酵を阻害して、硫化水素を発生させずに蒸留・精製工程へと導入する方法は、蒸留後のエタノール中の硫黄含有率の低減に有効であることが分かった。
エタノール発酵液の保存条件に基づく低級脂肪酸及び硫化水素発生の比較
エタノール発酵液から低級脂肪酸及び硫化水素の生成を防止するために、曝気を行った例を以下に示す。まず、酵母を用いて作製したエタノール発酵液100mLを2本の100mLバイアル瓶に添加し、一方はそのまま(嫌気条件)、もう一方には空気を20mL/minとなるように曝気した(好気条件)。温度は30℃とした。
次に、これら発酵液の一部を適宜サンプリングし、酪酸濃度と硫酸イオン濃度とを測定した。それぞれの経時変化を図5、図6に示す。酪酸は嫌気条件では保存日数を経るに従って濃度が上昇したのに対して、好気条件では検出されなかった。一方、硫酸イオンは嫌気条件では濃度が減少したのに対して、好気条件では減少しなかった。硫化水素濃度の正確な測定は難しいため、今回は硫酸イオン濃度の測定を行ったが、嫌気条件では硫酸イオン濃度の減少に伴って硫化水素が発生したのに対して、好気条件では硫酸イオン濃度は減少せず、硫化水素の発生はなかったと考えられる。
以上のように、エタノール発酵液を常温で静置した場合、嫌気発酵により酪酸等の低級脂肪酸と硫化水素が生成し、これらが原因となって蒸留後のエタノールの品質低下が起こる。一方、エタノール発酵液を曝気することで蒸留後のエタノールの品質低下の原因となる、酪酸等の低級脂肪酸および硫化水素の生成を防ぐことができることが分かった。

Claims (1)

  1. 植物系バイオマスからエタノールを発酵生産する方法において、エタノール発酵後から発酵液を蒸留・精製工程に付すまでの間に発酵液を好気状態に維持することを特徴とする、バイオエタノールの製造方法。
JP2009026639A 2009-02-06 2009-02-06 バイオエタノールの製造方法 Expired - Fee Related JP5373421B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2009026639A JP5373421B2 (ja) 2009-02-06 2009-02-06 バイオエタノールの製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2009026639A JP5373421B2 (ja) 2009-02-06 2009-02-06 バイオエタノールの製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2010178703A JP2010178703A (ja) 2010-08-19
JP5373421B2 true JP5373421B2 (ja) 2013-12-18

Family

ID=42760758

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2009026639A Expired - Fee Related JP5373421B2 (ja) 2009-02-06 2009-02-06 バイオエタノールの製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5373421B2 (ja)

Family Cites Families (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP4571055B2 (ja) * 2005-09-30 2010-10-27 学校法人東京農業大学 発酵蒸留乾燥システム
BRPI0716009A2 (pt) * 2006-10-16 2014-11-18 Nat Inst Of Advanced Ind Scien Aparelho e processo para produção de etanol

Also Published As

Publication number Publication date
JP2010178703A (ja) 2010-08-19

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Velásquez-Riaño et al. Production of bacterial cellulose from alternative low-cost substrates
Khandaker et al. Bio-ethanol production from fruit and vegetable waste by using saccharomyces cerevisiae
Lee et al. Converting carbohydrates extracted from marine algae into ethanol using various ethanolic Escherichia coli strains
Xu et al. Fermentation of swine wastewater-derived duckweed for biohydrogen production
US20220170053A1 (en) High gravity, fed-batch ionic liquid based process for deconstructing biomass
Pham et al. Pretreatment of macroalgae for volatile fatty acid production
Guo et al. Enhancing enzymatic hydrolysis and fermentation efficiency of rice straw by pretreatment of sodium perborate
Lueangwattanapong et al. Anaerobic digestion of Crassulacean Acid Metabolism plants: Exploring alternative feedstocks for semi-arid lands
KR101547287B1 (ko) 해조류를 이용한 바이오연료의 생산방법
Yu et al. Integrated biorefinery process for production of sophorolipids from corn straw
Tahir et al. Bioethanol production from Quercus aegilops using Pichia stipitis and Kluyveromyces marxianus
US10087471B2 (en) Hydrolysate of mixture of seaweed biomass and lignocellulosic biomass to improve biochemical and biofuel production, and preparation using the same
KR102053330B1 (ko) 글리세롤을 포함하는 미생물 발효용 조성물 및 이를 이용한 부티르산의 생산방법
JP5373421B2 (ja) バイオエタノールの製造方法
Gauna et al. Fungal pretreatments improve the efficiency of saccharification of Panicum prionitis Ness biomass
JP2015186476A (ja) 微生物の増殖方法
Ramirez Biogas production from seaweed biomass: a biorefinery approach
Al Ameri Deep eutectic solvent pretreatment for enhancing biochemical conversion of switchgrass
JP5713876B2 (ja) 蒸留残液の保存方法
JP2012157300A (ja) 土壌改良材の施用方法
KR102096445B1 (ko) 미세조류를 이용한 바이오당 제조방법
Bhuyar et al. Enhancement of Fermentable Sugars Obtained from Amorphophallus Spp. Tuber for Bioethanol Production by Optimizing Temperature and Pretreatment Concentration
JP2016077293A (ja) 菌類を用いた植物バイオマスからのバイオガスの製造装置および方法
Pratiwi et al. Article Reviews: Bioethanol Production from Biomass Waste using Fermentation with the Assistance of Yeast
Marisutti et al. Characterization and treatments in soybean hull for 2, 3-Butanediol production using Klebsiella pneumoniae BLh-1 and Pantoea agglomerans BL1

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20111018

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20130528

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20130726

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20130910

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20130919

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 5373421

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees