JP5369181B2 - 効果的な化学分析用のサンプルキャリア - Google Patents

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Description

本発明は、効果的な化学分析用のサンプルキャリア、より好適な実施形態としては、電気化学的標識として金属ナノ粒子を用いた電気化学的分析に使用するサンプルキャリアに関する。
多くの労力が、ポイントオブケア(「point−of−care」)医療検査用の携帯型機器の対策に払われてきた。この労力の大半は、いわゆるラボオンチップ(「laboratory−on−a−chip」)の開発に向けられた。そのような装置の目的は、生体サンプルを採取し、種々の抗原の有無を検査することである。
US2006/026381は、抗原、サンプルと標識されたポリクローナル抗体を連続的にグリッド内に流し、抗原と抗体は一方向に流れ、サンプルはこれと直交する方向に流れるシステムを開示している。サンプルと抗原/抗体の各交点で、表示される標識抗体の個数が集計される。これら抗体上の標識は、光信号を発生する蛍光色素分子とすることもできる。そして、従来の蛍光透視検出技術により、それから抗原の量を測定できる。5×10パスのグリッドを設けていることにより、装置は同時に10個のサンプルについて5つの検査を行うことができる。
ラボオンチップを提供する先行技術の装置は、特定の化学的または生化学的分析を行い、自己完結型で実質的に誰にでもできる方法で分析の解析結果の実施と表示を行う統合器を目的にする。従って、これらの装置に関しては、他のいかなる機器も、使用者による少しの制御も要しない。
しかし、この種類の装置は製造費用が高く、その性能は、しばしばそのサイズ、機能、コスト圧力によって左右される。加えて、このような装置をより一般的に役立つようにするために、それらは多様な条件の検査ができるようにされている。例えば、ある装置は、1つのサンプルに5つの検査を実施するが、そのうち1つ以上の検査が不要な場合がある。さらに、これらの装置は、異なる検査に容易に適用することができない。例えば、新しい抗原が発見された場合、この検査用に特別に設計、準備された新たな装置を設ける必要がある。
US6,319,469は、微量分析と微量合成分析を行う方法と装置、並びに手順を開示している。それは、求心力により流体がディスク表面上を移動するように回転する放射状の部品を有するディスクが設けられている。
WO2004/113919は、分析対象粒子の存在を検出する方法と装置を開示している。実施形態の一つにおいては、導入されたサンプルは、フィルターを通り収集チャンバーに圧送され、そこから試薬の導入により反対方向へフィルターを通り押し戻される。未反応粒子は小さく(標識抗体と結合していない)、通過できるので、フィルターは反応した抗原だけを分析用に保持する。他の実施形態では、さらに試薬が加えられる混合管へのサンプルの導入について開示している。試薬は混合管内でサンプルと混合し、混合体はフィルターに隣接する検出チャンバーに移行する。さらに、より小さな未反応粒子はフィルターを通過し、検出される反応抗原から分離される。
US7,226,562は、解析領域への移行中に試薬をサンプルと混合する装置を開示している。
しかし、これらの装置では、未反応試薬は検出領域に移行し、未反応試薬を検出領域から取除く手段がないので、それはそこに残存する。分析中に検出領域内の未反応試薬は分析結果を無効化する誤読を引起す可能性がある。
本発明は、効果的な化学的および生化学的分析のための改良された装置と方法の提供を目的とする。
本発明の実施形態によれば、サンプル中の物質の存在の検査に用いられるサンプルキャリアが提案されている。そして、サンプルキャリアは、サンプル支持部と、サンプル支持部の内部または表面の混合領域と検出領域と、検査されるサンプルを混合領域に移動させ、混合領域と検出領域の間で試薬を移動させることができる混合領域と検出領域の間の結合路とが設けられている。また、混合領域と検出領域の間の結合路に接続された、サンプル支持部の内部または表面で検査されるサンプル用の注入口とが設けられている。
サンプルキャリアは、1つのサンプルについて1つ以上の分析が行える簡易で効果的な構造を有する。好適な実施形態では、サンプルキャリアは、サンプル中の1項目あるいは最大で2,3項目の迅速な検査を行え、迅速な検査と解析を行うことができる。
混合領域に挿入された物質は検出領域から取除かれ、未反応試薬を検出領域に押しやることはない。未反応サンプルは読取られないので、検出領域内の未反応サンプルは、未反応試薬ほどには問題にならない。
好適には、装置内のサンプル液の流れにより混合領域と検出領域の要素が分離されるように、注入口は混合領域と検出領域の間の結合路に接続されている。これは、特に未反応試薬を検出領域から押しやることにより、誤読の発生が起こらないようにしている。
好適には、結合路は、毛細管現象によりそこを通るように液体を移動させることができる。この機能によりサンプルキャリアは自己でサンプルを採取し、保持する機能を有することができる。
キャリアは、実質的に平坦な構造に形成されることが有利である。
本実施形態では、サンプル支持部はケーシングの壁を形成している。これは、サンプルを検査と処理用のケーシング内に装填できるので好適な実施形態であり、特に伝染性物質の検査時に有用である。
好適には、ケーシングは、第1及び第2被覆層、及びチャンバーと結合路とを形成する凹部または開口を有する少なくとも1層の中間層を有するサンドイッチ構造に形成され、そして、第1及び第2被覆層の1層に結合路への注入口を設ける。
これは容易にかつ安価で製造できる簡易な構造である。中間層は、フィルム、プラスチックあるいは他の適切な素材、または、外層の一方の表面への印刷、例えばインクジェット印刷とすることが想定できる。
他の実施形態においては、チャンバーと結合路を形成する凹部は外層の1方にエッチングされている。
他の実施形態は、混合領域、検出領域、結合路及び注入口を構成する複数の親水性領域を有するサンプル支持部を含むサンプルキャリアを提供する。
また、他の実施形態は、混合領域、検出領域、結合路及び注入口となる凹部を有するサンプル支持部が設けられている。
好適には、サンプルキャリアは、検出領域に接続された少なくとも1つ以上の検出端子を有する。
少なくとも1つの検出端末は電気端子を有する、または、光学端子、共鳴端子、プラズモン端子(a plasmodic terminal)、振動端子若しくは音波端子を有する。
好適な実施形態においては、サンプルキャリアは、好適に担体の種類を識別でき、符号化部を有する識別子部が設けられている。
識別子部は、サンプルキャリアと関連する検査に関するデータを供給可能な記憶部を含む。また、それは、サンプルキャリアと関連する検査部に移送可能なデータを有する。
好適な実施形態においては、混合チャンバーには担体要素と標識要素とを有する液体が装填され、及び/または、検出チャンバーには標識検出要素が装填される。
本実施形態においては、標識検出要素は、標識要素をイオン化し、電気的検出により計測可能なイオンを生成するように制御可能である。
また、本願発明は、サンプルキャリアによって移動させられるサンプルの1つ以上の特性を検出する検査装置を開示する。そして検査装置は、制御部と、サンプルキャリア内で検査されるサンプルを移動させる移動部と、サンプルの内容物あるいは特性に関連する1つ以上のパラメータを感知するセンサ部と、感知したパラメータあるいは複数のパラメータに基づき診断条件を決定する診断手段と、診断に関連する情報を提供する情報部を有する。
また、本願発明は、サンプルキャリアによって移動されるサンプルの1つ以上の特性を検出する検査装置を開示し、当該検査装置は、携帯型電子処理装置に接続可能な付属装置の形状とされている。そして、付属装置はサンプルキャリア内で検査されるサンプルを移動させる移動部と、サンプルの内容物あるいは特性に関連する1つ以上のパラメータを感知するセンサ部と、感知したパラメータあるいは複数のパラメータに基づき診断条件の決定用及び診断に関連する情報を提供用の電子処理装置の制御部に対応するインターフェース部を有する。
抗体が結合する磁性粒子、1つ以上の抗体が結合する銀ゾル粒子及び抗原を有する検査方法の実施形態で使用される種々の要素の概略図である。 解析手順の第1段階で相互に結合した図1の要素の概略図である。 インキュベーション段階と称される解析手順の第1段階の概略図である。 解析手順の分離段階の概略図である。 銀ゾル粒子の分離後の解析手順の段階を示している。 検査ストリップまたは検査チップに形成されたサンプルキャリアの実施形態の斜視図である。 図6の検査チップの実用品の分解図である。 図6及び7の検査ストリップまたは検査チップ用の検査チャンバーの好適な実施形態の概略図である。 携帯型検査装置の好適な実施形態の斜視図である。 図9の検査装置の分解図である。 図6または7の検査チップ上に配列される検出装置の複数の部品の概略図である。 図11の部品の正面概略図である。 図6〜12の装置の実施例の代表図である。 図6〜12の装置の実施例の代表図である。 図6〜12の装置の実施例の代表図である。 図6〜12の装置の実施例の代表図である。 図6〜12の装置の実施例の代表図である。 図6〜12の装置の実施例の代表図である。 図6〜12の装置の実施例の代表図である。 図6〜12の装置の実施例の代表図である。 図6〜12の装置の実施例の代表図である。 図6〜12の装置の実施例の代表図である。 検出装置の他の実施形態の分解図である。 携帯型演算装置または他の携帯端末に好適に接続されるクレードル検出装置の実施形態の斜視図である。 携帯端末からクレードルが分離された図24の検出装置の斜視図である。 主要部品を示す図24及び25のクレードルの分解図である。 図24〜26の装置の使用例を示している。 図24〜26の装置の使用例を示している。 図24〜26の装置の使用例を示している。 図24〜26の装置の使用例を示している。 図24〜26の装置の使用例を示している。 図24〜26の装置の使用例を示している。 図24〜26の装置の使用例を示している。 図24〜26の装置の使用例を示している。 図24〜26の装置の使用例を示している。 図24〜26の装置の使用例を示している。 他の部品が設けられた検査チップ30のチャンバーと管路の概略図である。 検査チップまたは検査ストリップ用のチャンバー構成の別の実施形態の概略図である。 検査チップまたは検査ストリップ用のチャンバー構成の別の実施形態の概略図である。 管路に柱を設けた検査チップまたは検査ストリップ用の検査チャンバーの実施形態の概略図である。 図40の管路の側断面図である。 管路に柱を設けた検査チップまたは検査ストリップ用の検査チャンバーの実施形態の別の概略図である。 図42の管路の側断面図である。 管路に隆起を設けた検査チップまたは検査ストリップ用の検査チャンバーの実施形態の概略図である。 図44の管路の側断面図である。 管路に隆起を設けた検査チップまたは検査ストリップ用の検査チャンバーの別の実施形態の側断面図である。 管路に蛇行を備えた検査チャンバーの実施形態の概略図である。
本発明の複数の実施形態は、添付された図1〜47の図面を参照しながら以下に説明されている。
図面は説明のために提供され、原寸と異なることはいうまでもない。多くの場合、当業者が容易に理解できるように、図面は各要素を実際よりも拡大して示している。
図1〜5及び以下に添付された説明は、ここに開示された装置で実施される好適な化学分析方法の実施例を提供する。さらなる化学分析の詳しい説明は、出願人の同時係属英国特許出願番号0723137.6に開示されている。
図解された化学分析手順は、ここで開示された装置を分析に適合させる多くの使用例の一例にすぎない。
図1及び2に示すように、分析方法では磁性粒子10、好適にはヒ素固相のような超磁性粒子、及び、金属標識、特に好適には銀ゾルの粒状標識12を利用する。銀は容易に酸化して銀イオンを形成できるため、安定したゾルを形成するため好適である。磁性粒子10は対象の検体に結合する最初の結合部位、好適には1つ以上の抗体14に付着する。対象の検体は、好適には抗原16であるが、抗体、ミモトープ(mimotype)または核酸の鎖であってもよい。抗体14が付着した磁性粒子10は磁気サポート18を形成する。
銀ゾル粒子12は、金属標識20を形成する第2の結合部位に付着する。第2の結合部位、好適には1つ以上の抗体22は、抗原16の異なる領域に結合する。
特に、複数の磁性粒子10と標識12は、検査されるサンプルの複数の抗原16と反応する為、溶液または懸濁液で提供される。
次に図2を参照すると、図1の各要素が互いに結合したところが示されている、通常は、適切な反応チャンバーでのインキュベーション期間後であり、その実施例は以下に説明されている。磁性粒子10の抗体14と粒状標識12の抗体22は抗原16に結合し、実質的にそれらの間に抗体16を挟み込む。複数の抗原16は各磁性粒子10と結合する。組成は正しい抗原16、検出及び測定できる抗原、磁性粒子10及び標識12の抗体14及び22と結合することができる抗原に限られる。混合中のその他の抗原または他の物質は、磁性粒子10及び標識12と結合することはない。
抗原16は担体要素、磁性粒子に付着するのと同様に標識、銀ゾル粒子12に付着し連結する。従って、以下に説明されている様に、抗原は特に標識12の銀を使用することにより移動させられ検出される。
ここで図3〜5を参照すると、これらは、種々の要素の全体的な結合、溶液または懸濁液に残存する磁性粒子の分離及び抗原によって運ばれる標識の検出を図示している。説明を簡略にするため、3つの段階はインキュベーション段階、分離段階及び検出段階として図示されている。インキュベーション期は、担体と標識粒子とを結合するサンプルを分離する特別なプロセスでなく、これらを結合させ検査対象たる要素を生成する。
図3はインキュベーション段階を示しており、適した混合チャンバー内、適した不活性担体液内に保持される複数の磁性粒子10、複数の標識12及び検査される検体を図示している。本実施例においては、検体は複数の抗原粒子16を含んでいる。抗原粒子16は図面に特定の形状として示されるように、特定の種類として図示されている。粒子10,12の抗体14,22は、抗原16だけに適合し、相補的形状を有するものとして図示されている。本図面においては、磁性粒子10は1つの抗体粒子14を有しているが実際には複数の抗体粒子を有することもある。
第1段階において、抗原16は抗体14,22と結合し、図面の右手側に示される複合体を形成する。検体中の他の抗原は、磁性粒子10あるいは標識12に結合せず懸濁液中に分離した状態で残存する。これらの抗原は、図3の図示に従えば、抗体14,22と相補性をもたない異なる形状を有するものである。
図4は、手順の第2段階、分離段階を示している。粒子10の磁気特性は、検体を混合チャンバーの外に出し、第2の検出チャンバーに移動させるのに用いられる。通常、これは、目的の方向に磁性粒子10を引き離す、または、引きよせるのに用いられる、磁力または電磁力の発生により行われる。これを達成するための装置及び方法は、以下に詳述する。
分離段階中、全てあるいは実質的に全ての磁性粒子10は、抗原16と結合しないものも含め、混合チャンバーから移動する。混合チャンバーに残存するものは、分析対象にならない抗体14,22と相補性のない抗原24及び好適な抵原16を介して磁性粒子16と結合しない標識12である。
ここで図5を参照すると、手順の最終段階、検出段階が図示されている。一度、磁性粒子10が検出チャンバーに到達すると銀ゾルは酸化する。実質的にこれにより標識の銀は溶解し、キャリア液に溶け込む銀イオンが生成される。真正な抗原16は磁性粒子10により移動させられ、また、これらは標識12と移動するので、酸化により生成される銀イオンの量は、当初のサンプル中で検出される抗原の数/量と直接関係する。検出チャンバーに移動し、抵原16を移動させない磁性粒子10は、標識12も移動させることもなく、酸化により生成される銀イオンの量に影響を与えない。
本実施形態においては、検出チャンバーには、チオシアン酸アンモニウムが供給され、生物学的複合体から銀ゾルを除去し、銀ゾルの周囲に単層の化学結合を形成して、負帯電の微粒子とする。帯電した微細粒子は、電位を受け正帯電する電極に移動させられる。電極に引き寄せられた銀ゾルは、次に、酸化条件化で分解されて銀イオンAg+を形成し、さらに、それは蓄積ストリッピングボルタンメトリー(ASV)により測定可能である。ASVは、電極表面の金属相の予備濃縮及び陽極電位走査中の各金属相の選択的酸化を伴う分析技術である。
低比率の銀イオンは、銀イオンをキレート可能な剥離剤を使用して、キレートとの複合体として測定される。
40nmの銀ゾル粒子は約106の銀イオンを含むため、標識12としての銀ゾルの使用は電気化学的信号の分子増幅を与える。このように、分析感度は高められ、小量のサンプルで十分である。さらに、銀は生体標識として使用するために安定したゾルを形成する。また、銀イオンを形成するために容易に酸化される。
図1〜5と上述の説明は、特定の抗体/抗原のメカニズム、移動と標識の組み合わせ、及び酸化方法を用いた、適切な回収と検出方法の1つの実施例に関連する。しかし、以下に開示された装置及び方法はこの方法に限定されるものではなく、別の標識検出方法や、異なる検体捕捉・検出メカニズムを採用した、他の検出メカニズムを用いることができる。
次に図6を参照すると、検査ストリップまたは検査チップ30の例として、好適なサンプルキャリアの実施態様が図示されている。これは、一回使いきりの小型(ハンドサイズ)の部材として形成されている。それは本実施形態では磁性担体粒子及び標識(特定の抗原の検出用の抗体に結合する好適な化学元素)があらかじめ組み込まれている。本目的のため、チップ30は、その内部に複数のチャンバーが設けられている。そのいくつかの例が以下に説明されている。
本実施形態においては、チップ30は、以下に説明される医療従事者による処理を簡略化するための取手部32、及び前端部の検査する検体の挿入用及び検出器への結合用に好適な部分に処理部34を有する。通常、注入口には、液状サンプル、例えば血液が適用され、毛細管現象により装置チャンバーに引き込まれる。
チップ30の処理部は、管路により区切られた、インキュベーションチャンバー及び検出チャンバーが設けられている。つまり、以下に示される図7及び8で示されるのと同等の構造である。
また、図6には、データコネクタ36が設けられたチップ30も示されている。データコネクタは、チップのクラス及び/または性質、例えば、試験用の抗原チップ、抗原自体に関するデータ、検査パラメータ等に関する検出部(以下に、詳述に記載)にデータを提供する1つ以上の装置を含む。データコネクタのさらなる詳細は、以下に記載されている。
図6は、チップ30とは別体の部材としてのデータコネクタ36を示している。その場合、それはチップが検出器に取り付けられた位置から離れた適切な位置で検出器に取付けることができる。データキャリア36は、おそらくチップ30のケーシングに不可欠な部分であり、チップ30と一体的に形成できることが他の実施形態から理解できる。
チップ30はシンプル及び安価な部材として形成されることが好適である。図7に図示された実施形態においては、チップは、複数の層、上層及び下層のカバー層40,42を有するサンドイッチ構造として形成されている。少なくとも1つの中間層44、例えばフィルムには、インキュベーション及び検出チャンバー48,50と、それを介する分離管52を有する切欠部46が形成されている。これらのチャンバーは、装置の上層部及び下層部40,42の内面により密閉されている。以下に詳述されるように、上層40には、インキュベーション及び検出チャンバー48,50の間の管52上に、検査用サンプルを導入するための開口部54が設けられている。
図7には、チップ30の有利かつ便利な構造が示されており、それは容易且つ安価に製造でき、また低価で一回使いきりの装置として手軽に提供できる。特に、適切な材料の3層、つまり、成形あるいは打抜きされた適切な開口部を有する上層カバー層40、チャンバーと管路を形成する中間層、及び下層が設けられていればよい。これらの層は、装置30に流体密閉チャンバー及び管路を形成するため、例えば接着剤、熱接着、またはその他適切な方法により相互に組合わされ、結合される。しかし、他の実施形態では、例えば、外層40,42の一方または両側の内面にチャンバー48,50と管路53形成されている。この場合、装置は、2層、ケーシングになる上層と下層40,42のみが必要である。もちろん、これには、図7に示される実施形態のように、平坦フィルムから製造されるものよりも特別な金型設計が必要になる。
装置にサンプルを挿入する間、空気を排気するために、インキュベーションまたは混合チャンバー48に1つ以上の通気口を設けることが好適である。そのような通気口は、チップの上層カバー40の小さな開孔として、または、層44やその他の適切な部材に小さな溝として設けることができる。
特に複数の構成部品で形成する場合には、好適には平坦な平面形状であるが、チップ30を他の形状にすることができる。図示する平面形状は、操作の簡易化、検出装置の正しい方向付け及びラベリングには好適である。
好適な実施形態においては、チップ30は不活性物質、プラスチック材料、ガラス、ケイ酸、ポリケイ酸塩、ポリカーボネート、ポリスチレン、ナイロン等から形成されている。
図7に図示されている実施例は、検出装置と、イオンまたは他の標識を検出するための1つ以上の端子と、検出装置とを結合するコネクタ部を有する。好適な実施形態においては、図面に図示されるように、検出端子60は検出チャンバー内に形成されたサンプルの電気的特性を検出するための電気端子である。しかし、検出端子またはプローブのその他の種類としては、他のパラメータを検出する、例えば、光学端子、共鳴端子、プラズモン端子、振動(例えばラマン)端子または音波端子が考えられる。
チップ30の簡素化は、いかに形成されていても、それを抗原検査用の使い捨て品として有用且つ実用可能なものにする。一つのチップ内で複数の抗原を検査するための他の実施形態が以下に説明されている。
いくつかの具体的実施形態において、チップ30は、長さ数センチ、好適には10cm以下、幅数センチ、好適には4cm以下と予想される。そして、より好適には、それは約4×2cmである。チャンバー48と50は、必要に応じて設けられる管路52とポート54と同様に、高さ1mm以下、好適には5μm〜500μmである。これにより装置30中の液の毛細管現象を促進することができる。インキュベーションチャンバー48は、好適には容量約0.5μl〜約100μlであり、より好適には1〜10μlである。検出チャンバー50は、好適には容量20μl以下、より好適には0.5μl〜5μlである。管路52は、好適には容量0.1μl〜10μlであり、より好適には0.5μl〜3μlである。管路52は、好適には長さ1mm〜5cmであり、より好適には0.5〜2cmであり、好適には幅約1〜5mmであり、より好適には約1〜3mmであり、好適な実施形態においては約2mmである。
ここで図8を参照すると、担体と標識を有するチップ30の内部の配列の概略図が示されている。つまり、それは、一般的な医師、救急車または病院スタッフのような最終使用者に提供される形態である。
各チップは一回使いきり用であり、特定の抗原と関連する要素が事前に付与されている。要素には、装置のチャンバーから管路にわたって、好適な形の不活性キャリア液を有し、前記キャリア液中には磁性粒子10と標識12とが懸濁されている。そして、各粒子10,12は、インキュベーションチャンバー48内で検査される抗原粒子用の好適な抗体14,22を有し、本実施例においては、検出チャンバー50内でイオン化する物質を有する。
ポート54はインキュベーションチャンバー48と検出チャンバー50の間の管路52に連結され、毛細管現象によって、例えば、医療用途の血液、唾液またはその他の検体を採取できるようなサイズとされている。ポート54の位置は、装置30への液体の流れがチャンバー48,50内の要素を自然に押し離し、必要に応じて検出チャンバー50に標識12が運ばれるまでは、検出チャンバー50に標識12が入り込まないように標識12の分離を助長するような位置とされている。これにより、非結合の標識12が、検出チャンバーへ進入し、読込みエラーの起因となるのを抑制する。従って、読込み時における標識12の測定値は、当初の検体で検出される抗原の数/量と相関する。
同様に、管路52は、外部磁力による結合された担体/抗原/標識粒子の通過は可能なサイズだが、自然通過には不十分なサイズであることが好適である。好適な実施形態においては、チップ30は担体10、標識12及びチャンバー50内の標識検出粒子が事前に装填されており、これらは保存と搬送のために、好適には乾燥あるいは乾燥状態で提供される。従って、これらの粒子は実質的に動かない状態でチップ30内に存在する。注入口54から注入された液体サンプルにより、装填された粒子が水和され、あるいは懸濁されることで、装置30がその機能を実行することができるようになる。
他の実施形態において、チップ30に装填された粒子は、液体の状態でチャンバー48,50のそれぞれに装填され、また、通常では、ポート54とチャンバー50の間の管路52の部分に設置される溶解可能な、または脆弱な障壁によって隔離される。脆弱な障壁は、例えば、検出室50に移動される磁性粒子により破壊される。さらに他の実施形態において、管路52は、例えば、層40,42を同時に押したり、または他の適切な閉鎖機構により簡単に閉鎖することができる。
このように、検査されるサンプルがポート54に供給された場合、これはポートを通り管路52に引込まれ、さらにそこからインキュベーションチャンバー48に引込まれる。チャンバー48において、抗体14,22に対応する抗原16はこれらに結合し、担体10、抗原16と標識12からなる複合体を形成する。サンプル中の他の抗原や物質は、チャンバー48内のキャリア液に溶解または懸濁されて存在するが、担体10、標識12とは結合することはない。
必要に応じて、磁性担体10を移動させ、混合物を攪拌するために、動的磁場をインキュベーションチャンバー48に作用させることもできる。そのような磁場は電磁気装置と安定動力源、例えばチャンバー48上に一連の電気コイルを配列することにより容易に生成させることができる。
注入されたサンプルは、サンプル中の対応する抗原が担体、標識粒子12に結合するのに十分と考えられる時間、チャンバー48内で攪拌される、ここで、インキュベーションと称される手順は、結合、合成または他に適切な用語と同義である。
このインキュベーション期間の後、動的磁場は、チャンバー48、管路52に順に検出チャンバー50に向かって作用する。これは、例えば以下に説明される検出器内に設けられたチップ上に位置する電気コイルの適切な配列により達成することができる。そして、チャンバー48からチャンバー50に向かってパルス電磁場を発生させる動力を与える。これらのコイル、またはこれらのコイル一部を、例えば、担体粒子10に異なる動作を与えるためコイルに相当する電流を供給することにより、チャンバー48内の攪拌にも用いることができることは当業者に理解され得る。
発生した動的磁場は、磁性担体10を、図8の左側に向かって、つまり、チャンバー48から管路52に向かって、次いで、検出チャンバー50に向かって導く。実質的に全ての磁性粒子10(抗原が結合していない粒子を含む)は、本手順でチャンバー50に導かれる。しかし、サンプル中の磁性粒子10、その他の抗原、その他の要素に結合されていない標識粒子12はインキュベーションチャンバー48に残存する、そして、それらはチップに作用する磁力により影響を受けることはない。
図40〜47に図示されている実施形態においては、管路52は、磁性粒子によって起因する流れに引込まれる可能性がある非結合標識の障害となり、検出チャンバー50に到達する非結合標識を防止する洗浄域として好適には利用される。本目的の為、管路には、柱522、蛇行526、隆起 524及び持上り部材のような障害物を設けることができる。これらの部材は流れに乱流を発生させ、磁性粒子から非結合標識を分離することができる。
図40に図示するように、柱522は三角形の断面とすることができ、あるいは円形のような異なる断面(図42)にすることもできる。柱522は注入口54の両側(図41)、いずれかストリップ側、あるいは管路52の全域(図42)に設けることができる)。近傍の支柱522は管路に沿った流れにするため管路52に対向して設けるのが好適である。
隆起524は流れに乱流を発生させるため管路の側壁に設けることにより、磁性粒子から非結合標識を分離させることもできる。隆起524は円形(図45)、三角形(図46)、流れに障害となる他の形状にすることができる。
蛇行526は管路52の側壁に歪みを与えることによって設けることができる(図47)。
検出チャンバー50には複数の電気端子60が設けられている、通常、複数の金属、金属性材料または導電性材料のストリップであり、それらは電荷または導電性を測定できるようにチャンバー50の内部まで伸びており、また複数の実施形態においては、チャンバー50の内部に電気エネルギーを付与する。
上述された実施例においては、チャンバー50には、電極表面に引寄せられ、電気化学的に酸化される銀ナノ粒子の荷電表面を形成するチオシアン酸アンモニウムが充填されている。変更例としては、チャンバー50には、銀ゾル標識12の銀粒子を溶解、電離する酸化剤または電離化合物が充填される。これにより、図5に示すように、チャンバー50内のキャリア液中に大量の銀イオンが生成される。正荷電された銀イオンは負電位を加えられた電気端子60に引き寄せられる、それにより検出チャンバーに移動した銀の存在と量に関係する測定可能なパラメータ、当初のサンプル内の結合した抗原の存在と量が提供される。抗原に結合しない磁性粒子10は、それらと共に標識粒子12を移動させず、チャンバー50内の標識の量に寄与しない。それ故に、検出目的ににおいて、それらは無視できる。
電気端子60は標識12が測定可能な電気的パラメータを生成するのに関連することは当業者によって理解される。色、照明、半透明性または不透明度な他の測定可能なパラメータのような、他の測定パラメータを提供する他の実施形態も想定される。この場合、電気端子の代替えとして、光検出器あるいはそのような検出器のためのウィンドウの一種など、他の検出手段が提供されることが想定される。
ここで、図9には、検出器70の実施形態が図示されている。本検出器は化学分析し、その結果を解明し、これを表示スクリーン72に表示できる優れた携帯器である。本装置70には検出器のスイッチのオンオフの切り替え、新たな検査等のための検出器のリセットのような種々の共通基本操作を行う一つ以上の操作ボタン74が設けられている。装置の他端には上述された検査チップ30を挿入する挿入口76が設けられている。
図10は主構成部品を示すため検出器70の分解図が図示している。本実施形態においては、装置70は2つの樹脂ケース78,80で形成され、その内部には、表示スクリーン72(LCDスクリーン等)、コネクタ76、マイクロプロセッサーあるいは論理演算器84及びメモリ(一つの電機部品が示されているが当業者であれば通常の種々の部品を理解することができる)等の部品を取付ける回路基板82が設けられている。さらに、回路基板は電池86と成形されたボタン74と協働するPCBスチッチ88が設けられている。カバーガラス90が上部カバー78のアクセス窓92に取付けられている。好適には、本実施形態の電気部品は標準PCB基板上に印刷することができる。
電気基板は、好適には、検査パラメータのデータベース及び必要とされる実施された検査の内容と検査結果のデータの適したメモリを有する。そのようなデータは測定されたパラメータと検査対象である病気との相関に依存している。当業者は、当業者の常識としてデータ性質を理解できる。
検出器70は、警告信号を発生するためのブザーあるいは拡声器、コンピュータに接続するコネクタ等の他の部品を有することができる。
コネクタ76は、チップ内の磁性担体粒子10を移動するために検査チップ30に磁場を与える電気部品と、検査中に発生する電気信号を測定するためにチップ30の端子60に接続する電気的接合部を有する。これらの部品に加えて、検出器70には、コネクタ76あるいは他の別部品(図示されていない)を介して、データ記憶媒体36のデータを受信し読み取ることができる部品を設けることができる。
コネクタの好適な形状の例が図11に図示されている。
検査チップ30は、検査チップ30に協働する検出器70の部品の下側に配置されている。具体的には、コネクタ76のスロット90内には、電気コイル92が一列に設けられており、それは検査チップ30のチャンバー48,50と管路52の上側に配置されている。これらは、当業者に理解できる方法により、検出器70の回路84とコネクタバス94を介し接続されている。コネクタ76は、検査チップ30の電気端子60と接続される複数の電気端子96を有し、これらの端子96は回路84に同様に接続されている。
図12は図11の部材の実装状態を図示している。図12は、コネクタ76の正面図の概略図で部分断面を示している。チップ30は、図12に図示される紙面方向に、コネクタ76にスライドされる。好適には、コネクタ76の樹脂構造内に電気コイル92が埋め込まれ、電気バス94となっている。このように、チップ30がコネクタに挿入された場合、チャンバー48,50は、そこに位置するコイル92を自動的に整列させ、同様に後端部がスロット90内に延在するコネクタ76の端子96を有する電気端子60を整列させる。
使用時において、電気回路は、選択されたコイル92に電流を発生させることができ、その際、チップ30内を通る電磁場と電磁力が発生する。ある実施形態では、コイル92は、チップ30にサンプルを注入した後、インキュベーションチャンバー48内で要素の混合を行うため、1つのモードで電圧が印加される。同様に、コイル92は、磁気粒子10を検出チャンバー50に好適に移動させる場合、インキュベーションチャンバー48から検出チャンバー50に向かって移動する電磁場を発生させるため電圧が印加される。かかる電磁場を発生させるための正確な電気メカニズムは当業者の能力の範囲内である。
他の実施形態において、検出器70には複数の固体磁石またはソレノイド磁石が設けられている。これらは、磁性粒子10を検出チャンバーに移動させ、抗原と標識をそれに結合させるために、インキュベーションチャンバー48から検出チャンバー50に向かって、チップ30を横切って移動させられる。具体的な実施形態においては、磁石がそれを横切って移動するように一連の固体磁石をチャンバー48と管路52上を回転する回転円盤部の周辺に設けている。そのような磁石は、チャンバー48内に混合力を発生させるために用いることができる。
また、図12はコネクタ76の下壁への識別検出器98の配置を図示している。これは、チップ30自体が、機械読取り可能なコード(例えば、バーコード、字体あるいはナンバリング)のような識別子あるいはチップ30のケース中に形成されるキーコードのような機械コードを有する場合に設けられる。検出器98は、チップがいくつかの形式の電子的データ、つまり、電子的形式で実行されるように意図されている検査に関連するデータ、検査パラメータに関連するデータ等を担持する場合に、回路84にデータ転送するために設けられている。
いくつかの実施形態においては、チップ30あるいはダミーチップが検出器70のソフトウェアを更新させることが望まれている。そのソフトウェアは、コネクタ76の検出器98あるいはユニット70のケーシング上に設けられた同様な部品を介してダウンロードすることができる。これは、一般的なソフトウェアを更新するのに伴って新たな抗原の検出や他の健康状態の検査など、新しい検査の実施に関連するデータを有するように、装置70を更新する便利で効率的な方法を提供する。その為、ユニット70は、他所からの装置の提供を受けることなく、更新して使用を継続することができる。
いくつかの実施形態において、チップそれ自体を“インテリジェント”チップとすることができる。すなわち、テストを識別するために必要なデータを実行させ、ユニット70で取得された測定結果のデータ解析を実行及び提供するチップが想定されている。この場合、検出器98と回路84は、専らチップ30からデータを読み取るために設計され、必要に応じ、必要なデータを取得するためにこれに接続する。
図13〜22には、医療用途におけるチップ30と検出器70の使用例が示されている。例えば、図13には、患者の診断のための医療看護師による使用例が図示され、図14には、患者自身による使用例が図示されている。
チップ30は、本実施形態においては、チップ30を視認するための透明な窓が設けられた密閉袋100に内包されて提供されている。この場合、チップ30のタイプをチップのその上に記入することができるので有用である。
図16と17に示す様に、袋100から取出されたチップは、事前に検査用の正確なチップであることを確認するために、検出器70でチェックするのが好適である。この目的のために、検出器70はチップ30の識別子を読取り、チップ30で実施する検査の適応対象を表示するように製作されている。本実施例では、チップ30は患者の心臓機能検査を実施するために設計されている。この場合、検査は以下の心臓の異常の指標の一つに変化がないか検査する、担体粒子10と標識12との結合要素14,22が、抗体、ミモトープまたはDNAもしくはRNAの好適な部分を有するためのミオグロビン、トロポニン−IまたはT、NT−pro−BNP(Brain Nutreated protein)あるいはstraightBNPである。
使用者がチップ30は正しいものであることを確認すると、検査手順は一つまたは複数のボタン74を押すことによって開始される。好適には、検出器70は、手順の様々な段階を通じて、表示画面72上に適した指示を表示して使用者を補助する。
図18に図示されるように、本実施例では手順の第1段階において患者あるいは介護者が通常の穿刺によって患者から血液サンプルを採取する。
本実施形態では、チップ30は端部に注入口54が設けられている。本実施例では、注入口は装置のチャンバー48,50の間の管路52に対応する細長い管路102を介して接続されている。好適には、本実施例では、図17と19に具体的に図示されているように、チャンバー48,50はチップ30の端部34の横方向で、装置70のコネクタ76内に設けられている。
使用者がチップ30に血液サンプルを投入した後、検出器70は、1つまたは複数のボタン74を再び適切に押すことにより、あるいは所定の時間が経過した後に、混合を開始し、チャンバー48,50内にそれを移動させ、そして電極60,96を介し読取り動作を行う。装置70は、次に、患者が、検査対象たる抗原を有するか否か、及びそれに関連する患者の健康状態を判断する。図20の例では、装置70は、患者が特定の病気を有するか否かの検査の、単に陽性あるいは陰性の結果を表示するように設計されている。他の実施形態あるいは医学的検査では、検出器70は、検査項目の量、例えば抗原のレベル、病気の深刻さを表示できる。
検出チャンバー50内のイオンの検出は、種々の方法で実施することができ、検知器70はこれらの検査の1つに限定されるものではない。ある実施例では、検出器70は、1つの電極60にイオンを引きつける正電圧を印加し、イオンを電極に移動あるいは集中させ、実質的にイオンで電極を覆う。適切な時間の経過後、作用電極の極性は逆になり、そして、イオンがイオン雲から取り除かれる。イオンの濃縮は、この走査電圧を超える他の2つの電極を通る電流を測定することによって検出される。本実施形態では、他の2つの電極、一つの対電極と一つの基準電極が設けられている。しかし、非常に小さいチップ30の場合には、対電極を有しない単に2つの電極が設けられている。
検査後、チップ30は他の医療廃棄物とともに廃棄することができる。検査サンプルは検査中に検出器70と接触することはないので、検出器70は早急に他の検査のために準備される。
単一成分の検査、分析用の少量のサンプルが要求される場合、装置及びチップは、複雑な検査システム、方法よりも遙かに速く結果を提供することができる。その為、一般開業医のような医師は、診療中に検査を実施でき、そして、即時検査の結果を得ることができため、患者に即時、好適な医療を提供することができる。これは、特に多くの事例に有用であり、医学的検査の結果を受けるために費やす日数を短くすることができる。実施例では、患者が新種のインフルエンザ、麻疹、髄膜炎またはその他のような特定のウイルスに感染したかどうかの検出に使用されている。そのような状況では、一般開業医は、異なるチップ30を選択することができ、そして1回の診察中に、患者が保有するウイルスが同定できるまで、患者を検査することができる。次いで、患者はすぐに適切な医療を受けることができる。
プロトタイプの試験において、検査は、従来の試験装置では数時間以上の時間かかっていたのに比較し、数分、いくつかの例では数十秒で実施できることが判った。
さらに、サンプルチップ30は1つの病態あるいは感染だけを試験するので安価に製造でき、そして、一回使いきり用としては、経済的かつ好適である。加えて、5つ以上の状態を検査可能な「ラボチップ」を使用する場合と異なり、1つの項目のみを検査する場合であっても分析が無駄にならない。1つの病態を検査するサンプルチップ30の有するさらなる利点は、病態あるいは感染の複雑な分析を実施する必要がないことである。
ここで図23には、図9〜20と上述した検出器と類似する検出器70'の他の実施形態が図示されているが、通信ボタン110と無線通信装置(図示されていない)を有する点において相違する。これらの2つの機能の目的は、分析が完了した時、使用者が装置70'を駆動させる通信ボタン110を作動させ、無線通信装置を使用し、分析結果を無線で別体端末に送信することである。データはコンピュータ処理可能形式で安全に送信することができる。例えば、医師が定期検査のため検出器70'を患者に提供した場合、端末を医師の病院に設置してもよい。もう一つの方法として、患者の記録を最新データに保つため、端末を病院の中央データベースにしてもよい。データは複数の許可された使用者によってアクセスすることができる。
本実施形態は、救急医療隊員に非常に有益である。病院のデータベースに患者の以前の分析結果と以前の状態の詳細が保存されているので、病院との通信により患者が到着時にいかなる処置を必要としているかをあらかじめ警告することができるだけでなく、より多くの徹底的で信頼できる診断を行うことができる。病院に事前通信することは、患者が緊急治療を必要とする場合に非常に有益であり、また、病院への搬送中に診断を行え、患者の到着直後の適切な治療を準備することができる。事前診断が重要な1つ例は、心筋梗塞の場合である。その場合、患者を早く治療できればできるほど長期的な損傷を避けることができる。加えて、そのような装置で可能となる現場診断は、救急医療隊員が現場あるいは病院への搬送中における医療処置を可能にし、さらに、患者が早期治療からの利益を享受する場合に非常に有用である。現在は、救急車と他の救急車内にこの種の診断設備が設けられていないため、かかる事前の治療を施すことはできない。
診断器の他の実施形態が図24〜26に図示されている。図24には、端末携帯(PDA)172に接続する診断器170が図示されており、それは典型的には病院と他の医療従事者により使用される。 診断器170は、上側部174及び互換性のあるPDA172を保持するクレードルチャンバー176を設けるように形成された下側部176とからなるケースを有する。診断器は、回路184が設けられた回路基板182とコネクタ176を有し、それらは、上述された検出器70の実施形態の各部品と同様である。本実施形態では、装置170は、これに限定されることはないが、PDA172の電源から電力が供給され、それ自身には電池が設けられていない。回路基板182はPDA172のコネクタに接続可能なコネクタ186が設けられている。
図24〜26のクレードル装置170は、ダム端末としてのPDA172を使用するインテリジェント装置として、また、PDA172のインターフェースとすることができる。また、本例のPDA172にはクレードル170を駆動する、あるいは、そこから得られた測定値を分析する好適なソフトウェアが設けられている。その選択は、これらの装置の供給業者、ある場合には、使用者の個人的選択に委ねられる。
検出器170は、好適には、成形された1つあるいは複数のボタン74と表示72(図23の実施形態の通信ボタン110と同様に)によって事前に実行される役割がPDA装置172により実行されるように構成されている。
図24〜26のクレードル-タイプの装置170の使用例は、図27〜36に図示されている。
図27から理解できるように、デバイスは、道に倒れた人を手当するために、救急医療隊員によって使用されている。現場では、1つ以上の考えられる患者の病気を検査するために1つ以上のチップ30を選択する前に、救急医療隊員はクレードル170にPDAを挿入することができる。図28では、クレードル-タイプの装置170は顧問医師によって病院環境で使用されている。
図29〜34に図示されているように、装置170の操作モードは、上述した実施形態70と同様である。図35には、病院へ患者の搬送中に使用されているシステムが図示されており、本例では、救急医療隊員が診断を行い、患者の状態を病院へ知らせ、好適には、到着前の患者に行う予備的な医療処置の指示を受け取るため、病院に連絡している段階である。これは、患者を治療する重要な時間を節約でき、心筋梗塞を含む多くの症例に有効である。
同様に、場合よっては、救急医療隊員が患者は入院治療が必要な病状ではないことを確認でき、そのような場合には、回復させるために患者をまっすぐ家に連れて行き、貴重な病院の資源を節約することができる。
もちろん、検出器170をPDA172に接続できることは、医療員がそれらの機器と、彼らが従来使用していた従来の機能を持つPDAからのデータを所有し、そのデータをある装置から他の装置に転送する必要がないことを意味する。むしろ、彼らは、PDA装置172上の全てのデータを所有し、容易に検査を実施するためにそれを診断器170につなげることができる。これによって医師が患者の医療データにすばやくアクセスすることができる。
図37を参照すると、図8と同様の検査チップ30が図示されている。相違点は、チップの内容物、特に、導入チャンバー48にある。本実施形態では、チャンバー48の内容物は二つの異なる標識粒子12、12 " 、例えば、銀、金、銅、亜鉛、鉛等の異なる金属、または、芳香族化合物、色素のような酸化還元種を有する粒子が設けられている。いかなる標識粒子12、12 "も異なる方法によって検出され、あるいは異なるメカニズムにより移動される担体粒子10、10"に結合する限り使用することができる。本実施例の異なる測定特性を有する標識においては、これらは、例えば、公知の方法によって検出できる銀、金であってよい。他の方法では、一方の標識粒子を測定可能な電気的要素を有する粒子とし、一方、他の粒子を測定可能な光学的要素を有する粒子とすることができる。いかなる標識粒子の組合せも使用できる。
図37の実施形態では、異なる標識粒子12、12 "には、特定の抗原に対する抗体がそれぞれ用いられている。磁性担体粒子10は、磁気的な部分においては同じであるが、それぞれの抗原に結合するように異なる抗体を持っている。
それ故に、インキュベーションチャンバーでは、第1タイプの抗原は第1標識12と第1磁性支持要素に結合し、第2タイプの抗原は第2標識12 "と第2磁性支持要素10"に結合する。インキュベーション後、磁性粒子10,10"は、検出チャンバー50に引き寄せられ、そして、それらに付着した標識を好適な分析方法によって分析される。
本目的のために、検出器70,170には、使用されたそれぞれの標識に対応する複数のセンサが設けられている。
標識12,12"は、インキュベーションチャンバー48と検出チャンバー50の間の注入口48が接続されたインキュベーションチャンバー48内に最初に供給されるため、装置30への液体の流れは、目的としたとおりに標識がチャンバーに運ばれるまで、チャンバー48,50内の要素を押し離し、検出チャンバー50から両標識12,12"を隔離する。
図37の実施形態は、好適には、異なる標識粒子と結合要素(抗原中の抗体)を好適に供給することにより、2つ以上の抗原あるいはサンプル中の他の要素の検出に使用することができることは明らかである。
次に図38を参照すると、例えば、1つのサンプルから3つの異なる抗原を別々に検査するのに好適なチップ300の実施形態が図示されている。この実施形態は、磁気担体粒子10,10',10"と標識12,12',12"がそれぞれ設けられた、異なる一連のチャンバーと接続結合路48−50,48'−50'、48"−50"が積層して設けられている。共通の注入口54がインキュベーションチャンバー48,48',48"と検出チャンバー50,50',50"との各ケース内の各結合路に接続されている、そして、インキュベーションチャンバー48,48',48"と検出チャンバー50,50',50"内の要素を押し離す様に、各検査領域に得られたサンプルの一部を供給する。この方法により、磁気と標識粒子上の好適な抗体を用い各検査領域で粒子抗原の検査が行え、そして相互にこれらを分離するので、同一標識、例えば銀ゾルを使用することができる。
図38の実施形態は、図7に図示されたそれと類似な平面層を積層体にすることで容易に製造することができる。本実施例では、一連の穿孔層44は、各結合路52に接続された注入口54の開口から離れた一連の無孔質層(図示されていない)の間に設けられている。そのような層44の枚数は、検査される要素の数に合わせ設けることができる。
図39には他のチャンバーの実施形態が図示されている、本実施例では平面の構成が単層になっている。3つの一連のインキュベーションチャンバーと検出チャンバー48−50,48'−50'、48"−50"が設けられ、それらは、インキュベーションチャンバー48,48',48"と検出チャンバー50,50',50"内の要素を押し離す様にインキュベーションチャンバー48,48',48"と検出チャンバー50,50',50"との間の各ケース内の3つの結合路52,52',52"に接続された共通の注入口に接続されている。この配列は、図7の実施形態と類似な積層された中間層を対応する形状に切断することで容易に製造することができる。
本実施例は3つの異なる抗原のような、3つの異なる成分の検査を行うことができる。
図38と39の両実施形態では、好適には各端子セット60,60',60"に接続される3つの接続部を有する検出器が個別に制御可能とされる。
上述の実施形態は医療用途として示されているが、ここに示された装置と検査方法は、医療用途に限定されるものではない。それらは、例えば、水汚染の環境試験、空気の組成を含む他の種々の用途の検査に同様に利用することができる。リストは限定されない。
さらに、帯電部位を有するチオールの様な他の剥離剤をチオシアン酸アンモニウムの代替えとして用いることもできる。
上述した様に、検出部には分析を行うためのソフトウェアを設ける必要がない。代わりに、検査チップ自体を、情報と例えば検出部の制御が設けられた他の装置に使用されているスマートカードにすることができる。
上述の実施形態には密閉ケース内のサンプル担体10が図示されている。また、開口装置を設けることも想定される。1つの実施例では、サンプルキャリアは、一連の領域が設けられた実質的に平坦部内に存在する。そして、一連の領域は、チャンバー48,50と結合路52(注入口54がチャンバー48,50の間の結合路52の領域に配置された)を有し疎水性物質で製作あるい疎水性物質が被覆され、疎水性物質で製作あるい疎水性物質が被覆された周辺領域が設けられている。他の実施例では、チャンバー48,50と結合路52、随意の注入口54は、実質的に平面基板内に凹部として形成されている。
上述の実施形態と変形例の特徴は必要に応じて組合せ、置換することができる。

Claims (29)

  1. サンプル支持部と、
    前記サンプル支持部の内部または表面の混合領域及び検出領域と、前記混合領域には担体要素と標識要素が事前に充填され、前記担体要素と標識要素は注入された検査されるサンプル内の検体に結合し、前記担体要素は前記混合領域から検出領域に移動し、
    前記検査されるサンプルの前記混合領域内への移動と、外部の移動部の作用によって前記混合領域から前記検出領域に前記担体要素の移動をもたらす前記混合領域と前記検出領域の間の結合路と、
    前記混合領域及び検出領域の間の前記結合路に結合された、前記サンプル支持部の内部または表面で検査される前記サンプル用の注入口と、
    前記注入口と結合路は、検査される前記サンプルを混合領域に引き込む構成と、
    を有することを特徴とするサンプル中の物質の有無の検査に使用されるサンプルキャリア。
  2. 前記注入口は、前記混合領域と検出領域との間の前記結合路に結合され、サンプルキャリア内へのサンプル液の流れにより前記混合領域及び検出領域内の要素を押し離す、請求項1記載のサンプルキャリア。
  3. 前記結合路は実質的に混合領域から検出領域に直線状である、請求項1または2記載のサンプルキャリア。
  4. 前記結合路は毛細管現象によりその内部で液を移動させる、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のサンプルキャリア。
  5. 前記サンプルキャリアは実質的に平面構造に形成されている、請求項1乃至4のいずれか1項に記載のサンプルキャリア。
  6. 前記サンプルキャリアは実質的に平坦である、請求項1乃至5のいずれか1項に記載のサンプルキャリア。
  7. 前記サンプル支持部はケーシングの壁を形成している、請求項1乃至6のいずれか1項に記載のサンプルキャリア。
  8. 前記ケーシングは、第1及び第2の被覆層と、内部に前記混合領域及び検出領域と、前記結合路を形成するための凹部または開口を有する少なくとも1つの中間層とを有するサンドイッチ構造として形成され、前記第1及び第2の被覆層の一方に前記結合路に対する前記注入口が設けられている、請求項7記載のサンプルキャリア。
  9. 前記第1及び第2の被覆層は、前記混合領域及び検出領域と、前記結合路に対向する壁となる、請求項8記載のサンプルキャリア。
  10. 前記サンプル支持部は、前記混合領域及び検出領域と、前記結合路と、注入口とを形成する複数の親水性部分を有する、請求項1乃至6のいずれか1項に記載のサンプルキャリア。
  11. 前記サンプル支持部は、前記混合領域及び検出領域と、前記結合路と、注入口とを形成する凹所を有する、請求項1乃至6のいずれか1項記載のサンプルキャリア。
  12. 前記検出領域に接続される少なくとも1つの検出端子が設けられている、請求項1乃至11のいずれか1項に記載のサンプルキャリア。
  13. 前記少なくとも1つの検出端子は電気端子である、請求項12に記載のサンプルキャリア。
  14. 前記少なくとも1つの検出端子は光学端子、共鳴端子、プラズモン端子(a plasmodic terminal)、振動端子または音波端子である、請求項12記載のサンプルキャリア。
  15. 識別部を有する、請求項1乃至14のいずれか1項に記載のサンプルキャリア。
  16. 前記識別部は前記担体の種類を識別できる、請求項15記載のサンプルキャリア。
  17. 前記識別部は符号化部を有する、請求項15または16記載のサンプルキャリア。
  18. 前記識別部は前記サンプルキャリアと関連する検査に関するデータを提供する記憶部を有する、請求項15乃至17のいずれか1項に記載のサンプルキャリア。
  19. 前記記憶部は前記サンプルキャリアと関連するテスター部に移送可能なデータを有する、請求項18記載のサンプルキャリア。
  20. 前記混合領域には、前記担体要素及び標識要素を含む液体が装填されている、請求項1乃至19のいずれか1項に記載のサンプルキャリア。
  21. 前記担体要素及び標識要素が溶解可能または脆弱な障壁によって前記混合領域内で分離されている請求項20記載のサンプルキャリア。
  22. 前記混合領域には、乾燥状態の担体要素と標識要素が事前に充填される、請求項1乃至19のいずれか1項に記載のサンプルキャリア。
  23. 前記検出領域には標識検出要素が装填されている、請求項1乃至22のいずれか1項に記載のサンプルキャリア。
  24. 前記標識検出要素は前記標識要素をイオン化し、電気的検出により計測可能なイオンを生成する、請求項23記載のサンプルキャリア。
  25. 前記サンプルキャリアは使い捨てである、請求項1乃至24のいずれか1項に記載のサンプルキャリア。
  26. 検査装置とサンプルキャリアを備える装置であって、前記サンプルキャリアは請求項1乃至25のいずれか1項に記載のサンプルキャリアであり、前記検査装置は検査されるサンプルを移動させる移動部を有する。
  27. 前記移動部は検査されるサンプルを移動させる磁場を与えることができる、請求項26記載の装置。
  28. 請求項1乃至25のいずれか1項に記載のサンプルキャリアを検査装置に接続し、
    サンプルを採取し、そのサンプルを前記注入口に置き、
    前記サンプルの含有物または特性に関連する1つ以上のパラメータを検知する検査装置を操作することを特徴とする、
    サンプルキャリアを使用しサンプル中の物質の存在を検査する方法。
  29. 検知された前記パラメータまたはパラメータ群に基づき診断条件を決定することをさらに含む、請求項28記載の方法。
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