JP5366896B2 - 下注ぎ造塊方法 - Google Patents
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特許文献1では、下注ぎ法または上注法によってキルド鋼を製造するに当って、鋳込前溶鋼の温度をTL(液相開始温度)+20℃以上にするとともに、その溶鋼の注入中ないしはその直後に、溶鋼トン当り総発熱量が1800Kcal以上になる量の早期燃焼型高カロリー保温剤、ただし発熱して最高温度に達するピーク時間が3分以内のものをもって、鋳型内湯面上を被覆し、鋼塊底部の沈澱晶帯における介在物集積を、軽減抑制している。
特許文献2では、アルミニウム、チタン、ジルコニウム等を単独又は複合して含有する溶鋼を0.5〜30ton/分の注入速度で鋳造するに際して金属カルシウム若しくはカルシウムを含む合金粒を0.5〜2.0kg/分の供給速度で注入溶鋼流に添加している。
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたもので、粗大介在物の発生を抑制し、清浄度の優れた鋳塊を製造することができる下注ぎ造塊方法を提供することを目的とする。
即ち、本発明における課題解決のための技術的手段は、溶鋼を注入管を介して下方から鋳型に装入することにより鋳塊を製造する下注ぎ造塊方法を行うに際し、前記鋳型内の溶鋼に浴面を被覆するための被覆材を添加した後、保温材を添加する前又は同時にCaを添加することとし、前記浴面の表面積に対するCaの添加量が0.35kg/m2〜10kg/m2を満たすように前記Caを添加すると共に、保温材中の含有量と添加したCaとの関係を示す[%Ca]/([%Al]+3[%Fe2O3]+[%FeO]+2[%SiO2]+2[%MnO2]+[%S])が0.08〜0.25を満たすようにしている点にある。
図1は、下注ぎ造塊を行う下注ぎ造塊装置を示したものである。
まず、下注ぎ造塊装置1について説明する。
下注ぎ造塊装置1は、下注ぎ造塊法により溶鋼2を鋳造するものであって、取鍋3内の溶鋼2を注入する注入管4と、この注入管4に注入された溶鋼2が装入される鋳型5と、注入管4と鋳型5とを連通する定盤6とを備えている。
このような下注ぎ造塊装置1にて、下注ぎ造塊を行うにあたっては、まず、取鍋3を注入管4上に配置して、当該取鍋3内の溶鋼2を注入管4に注入する。溶鋼2は、注入管4及び定盤6に形成された湯道7を通り鋳型5へ到達し、鋳型5内にて冷却されてインゴット等の鋳塊となる。この下注ぎ造塊方法においては、船用品や発電部品などに用いられる大型鍛造品の素材となる鋳塊を製造することができるが、これらに限定されるものではない。
[被覆材の添加について]
下注ぎ造塊方法において、溶鋼2が鋳型5に装入されたときに当該溶鋼2の浴面が大気に触れてしまうと溶鋼2が酸化して清浄度が低下する。そのため、本発明では、溶鋼2の酸化を防止するために、図2(a)に示すように、溶鋼2が鋳型5の下方に形成した下注入口9から鋳型5内に入る初期段階において、溶鋼2の浴面を被覆するための被覆材10(C−SiO2−CaO−Al2O3系の被覆材)を添加している。
また、図2(b)に示すように、溶鋼2が鋳型5内に装入された後は、溶鋼2の浴面は徐々に上昇していき、被覆材10は溶鋼2と鋳型5の内面との間に流入しながら消費されていく。この過程では、必要に応じて鋳型5の上方から被覆材10を追加添加することによって、溶鋼2の浴面が露出して大気に極力触れないようにしている。被覆材10の添加は、鋳型5内に溶鋼2が装入されてから当該溶鋼2の浴面が押湯枠8に到達するまで実施し、その間、溶鋼表面積の70%以上が被覆されている状態を保つようにした。なお、被覆材10の添加方法は、上述した方法に限らず、初期段階において袋を用いずに初めから直接溶鋼2の浴面に鋳型5の上方から添加してもよいし、その他の方法により添加してもよい。
下注ぎ造塊方法においては、溶鋼2の浴面が鋳型5の上部付近に到達したときに溶鋼2の温度を保つために保温材11を添加することが通常行われている。ここで、保温材11として酸化鉄(FetO)、MnO2、SiO2、Alとを含むものを添加するが、この保温材11の添加によって粗大な高アルミナ系介在物が生成して清浄度が低下することがある。この保温材11は、パウダー形状であっても、ボード等の成形形状であってもよい。
2Al+3/2MnO2=Al2O3+3/2Mn ・・・(2)
2Al+3/2SiO2=Al2O3+3/2Si ・・・(3)
以下、Caの添加方法や添加量について詳しく説明する。
本発明では、図2(c)に示すように、溶鋼2が押湯枠8に達して鋳造が終了するまでの間(末期段階)に、Ca12を添加する。図2(d)に示すように、Ca12の添加後に保温材11を添加することとしている。
なお、添加するCa12は、純金属Ca(金属Ca)であってもCa合金であってもよい。Ca合金としては、Ca−Si合金、Ca−Ni合金などがあるが、鋼成分の規格に応じて自由に選択してもよい。また、Ca12を添加してから保温材11を添加するまでの時間は、0秒(同時)〜600秒(10分)とするのが好ましい。
保温材11は、Al、Si、FetO、MnO、SiO2、MnO2、C、Sを含有している。例えば、保温材11の組成は、FeO:10〜20質量%、Fe2O3:10〜20質量%、Al:20〜25質量%、Al2O3:25〜40質量%、SiO2:5〜10質量%である。また、保温材11中には、Sが含有されているが、Sの含有量は200ppm程度(不可避不純物程度の量)であり、実質的に零(≒0)と考えてもよい。言い換えれば、Sの含有量は他の成分に比べて微量であるため、後述する式(4)にSの含有量を代入したとしても、式(4)の値が大きく変化することはなく実質的に影響が出ない。
[%Ca]/([%Al]+3[%Fe2O3]+[%FeO]+2[%SiO2]+2[%MnO2]+[%S]) ・・・(4)
ただし、式(4)で示される「%」は、「モル%」である。
なお、保温材11とCa12とを別々に添加する場合においては、保温材11中に微量のCaが含有されていてもよい。保温材11に微量のCaが含有している場合であっても、保温材11中の各成分の含有量と、Ca12の添加量との関係を上述した式(4)に代入したとき、その値が0.08〜0.25を満たす関係であればよい。
また、実施例及び比較例では、誘導溶解炉を鋳型5に模した小型実験も一部実施した。小型実験では、溶鋼量3〜30kgの溶鋼2を誘導溶解炉で溶解し、成分調整後、鋳型5と同様に、速やかに被覆材10を添加した。その後、溶鋼2の浴面の表面積に対するCaの添加量が0.35kg/m2〜10kg/m2を満たすように、パウダー状のCa12とCaが無添加である保温材11を同時に添加、またはCa12を含有する保温材11を添加した。なお、Caを含有する保温材11又はCa12を添加するにあたっては、[%Ca]/([%Al]+3[%Fe2O3]+[%FeO]+2[%SiO2]+2[%MnO2]+[%S])が0.08〜0.25を満たすように保温材11又はCa12を添加している。そして、保温材11を添加した後は、誘導溶解炉の電力を停止して炉内で溶鋼2を凝固させた。
実施例1〜11に示すように、鋳型5内の溶鋼2に浴面を被覆するための被覆材10を添加した後、Caを含有する保温材11を添加したり、保温材11とCa12とを別々に添加することとし、浴面の表面積に対するCaの添加量は0.35kg/m2〜10kg/m2を満たすようにし、さらに、[%Ca]/([%Al]+3[%Fe2O3]+[%FeO]+2[%SiO2]+2[%MnO2]+[%S])の関係(式(4))が0.08〜0.25を満たすようにしていることから、最大介在物のサイズを200μm以下とすることができた。
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。上記の実施形態では、保温材11の添加は、鋳込み途中で行っているが、鋳込み終了時(浴面が停止したタイミング)でもあっても構わない。
2 溶鋼
3 取鍋
4 注入管
5 鋳型
6 定盤
7 湯道
8 押湯枠
9 下注入口
10 被覆材
11 保温材
Claims (2)
- 溶鋼を注入管を介して下方から鋳型に装入することにより鋳塊を製造する下注ぎ造塊方法を行うに際し、
前記鋳型内の溶鋼に浴面を被覆するための被覆材を添加した後、保温材を添加する前又は同時にCaを添加することとし、
前記浴面の表面積に対するCaの添加量が0.35kg/m2〜10kg/m2を満たすように前記Caを添加すると共に、保温材中の含有量と添加したCaとの関係を示す[%Ca]/([%Al]+3[%Fe2O3]+[%FeO]+2[%SiO2]+2[%MnO2]+[%S])が0.08〜0.25を満たすようにしていることを特徴とする下注ぎ造塊方法。
ただし、[%X]:保温材中X含有量(モル%)とする。 - 溶鋼を注入管を介して下方から鋳型に装入することにより鋳塊を製造する下注ぎ造塊方法を行うに際し、
前記鋳型内の溶鋼に浴面を被覆するための被覆材を添加した後、Caを含有する保温材を添加することとし、
前記浴面の表面積に対するCaの添加量が0.35kg/m2〜10kg/m2を満たすように前記保温材を添加すると共に、保温材中の含有量の関係を示す[%Ca]/([%Al]+3[%Fe2O3]+[%FeO]+2[%SiO2]+2[%MnO2]+[%S])が0.08〜0.25を満たすようにしていることを特徴とする下注ぎ造塊方法。
ただし、[%X]:保温材中X含有量(モル%)とする。
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