JP5356926B2 - 電気化学キャパシタ - Google Patents
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Description
このうち、カーボンナノチューブを電極材料に用いた電気二重層キャパシタは、従来の活性炭と異なる特性を備えており、様々な電極の配置構造の検討がされている(例えば、特許文献1、2、3を参照。)。
このような電気化学キャパシタは、従来の電気二重層キャパシタとほぼ同じ構造を用い、電気二重層による電荷の蓄積に加えて、電極表面の酸化還元反応による蓄電を利用できるため、蓄電容量が従来の電気二重層キャパシタよりも大きくなることが期待されている。このような、電気化学キャパシタは、電極にルテニウムを用いたものが知られている(例えば、特許文献4を参照。)。
本発明は、上記の状況に鑑みてなされたものであり大容量であり、且つ充放電による劣化が少ない電気化学キャパシタに適したカーボンナノチューブを用いた電気化学キャパシタを提供することを目的とする。
1.第1基板と、第1集電電極と、第1電極と、セパレータと、第2電極と、第2集電電極と、第2基板と、をこの順に備え、該第1電極と該第2電極との間に充填された、貴金属、鉄及びクロムのイオンを少なくとも含有する電解液を具備し、該第1電極及び該第2電極は、炭化ケイ素膜を熱分解して得られたカーボンナノチューブが複数立設したカーボンナノチューブ層を具備する電気化学キャパシタであって、
上記電解液は、クロム、ニッケル及び鉄のイオンの総量が100質量%のとき、クロムイオンが9〜50%、ニッケルイオンが0〜40%、鉄イオンが30〜90%であり、及び全体の質量比で250〜2000ppm含有し、且つ上記貴金属のイオンを質量比で10〜100ppm含有しており、
少なくとも上記第2電極の上記カーボンナノチューブの表面には貴金属粒子が付着しており、
上記カーボンナノチューブ層は、電解液中で上記第1電極から上記第2電極に向けて所定時間電流を流す電気正印加加工、及び該電解液中で上記第2電極から上記第1電極に向けて所定時間電流を流す電気逆印加加工がされており、
上記電気正印加加工及び/又は上記電気逆印加加工により上記カーボンナノチューブの表面に上記貴金属粒子が付着することを特徴とする電気化学キャパシタ。
2.第1基板と、第1集電電極と、第1電極と、セパレータと、第2電極と、第2集電電極と、第2基板と、をこの順に備え、
該第1電極と該第2電極との間に充填された、貴金属、鉄及びクロムのイオンを少なくとも含有する電解液を具備し、
該第1電極及び該第2電極は、炭化ケイ素膜を熱分解して得られたカーボンナノチューブが複数立設したカーボンナノチューブ層を具備する電気化学キャパシタであって、
上記電解液は、クロム、ニッケル及び鉄のイオンの総量が100質量%のとき、クロムイオンが9〜50%、ニッケルイオンが0〜40%、鉄イオンが30〜90%であり、及び全体の質量比で250〜2000ppm含有し、且つ上記貴金属のイオンを質量比で10〜100ppm含有しており、
少なくとも上記第2電極の上記カーボンナノチューブの表面には貴金属粒子が付着しており、
上記カーボンナノチューブ層は、電解液中で上記第1電極から上記第2電極に向けて所定時間電流を流す電気正印加加工、又は該電解液中で上記第2電極から上記第1電極に向けて所定時間電流を流す電気逆印加加工がされており、上記電気正印加加工又は上記電気逆印加加工により上記カーボンナノチューブの表面に上記貴金属粒子が付着することを特徴とする電気化学キャパシタ。
3.上記電気正印加加工及び上記電気逆印加加工は、各加工時の電解液に上記貴金属のイオンを含有し、又は/並びに、各加工時に上記第1電極及び上記第2電極に接触させて用いる各仮集電電極の少なくとも一方に上記貴金属を含有する上記1.又は上記2.記載の電気化学キャパシタ。
4.上記貴金属粒子の付着量は、5.1×10−8〜5.1×10−6mol/cm2である上記1.乃至上記3.のいずれかに記載の電気化学キャパシタ。
5.上記貴金属粒子は、上記カーボンナノチューブの先端側に付着している上記1.乃至4のいずれか1項に記載の電気化学キャパシタ。
6.上記カーボンナノチューブは、その先端が開口している上記5.記載の電気化学キャパシタ。
第2電極のカーボンナノチューブの表面に貴金属粒子が付着しており、カーボンナノチューブ層に付着している貴金属粒子の酸化還元反応による蓄電もされるため、従来の電気二重層キャパシタよりもより多くの電荷を蓄積することができる。
電気正印加加工及び/又は電気逆印加加工がされているため、カーボンナノチューブの先端側に貴金属粒子を容易に付着させることができ、より大容量の電気化学キャパシタを得ることができる。特に電気正印加加工及び電気逆印加加工がされている場合は、更に大容量の電気化学キャパシタを得ることができる。また、電気印加加工時に隣り合うカーボンナノチューブの間隙にイオンが進入し、ミクロ孔がミソ孔に拡大するため、使用時の電解液に接触可能な表面積が増大する。更に電気印加加工時の酸化還元作用によりカーボンナノチューブ層に電解液の吸脱着が容易なエッヂ部が拡大されるため、より大容量の静電容量を備えることができる。
上記電気正印加加工及び上記電気逆印加加工を行うとき電解液に貴金属のイオンを含有し、又は/並びに、第1電極及び第2電極に接触させて用いる各集電電極若しくは仮集電電極の少なくとも一方に貴金属を含有する場合は、各加工時にカーボンナノチューブに貴金属粒子として付着させる貴金属イオンを供給することができる。
貴金属粒子の付着量を所定の範囲とする場合は、カーボンナノチューブ層に付着する貴金属粒子の多くが酸化還元反応に寄与する適切な範囲にすることができ、安価であってより大容量の電気化学キャパシタを得ることができる。
貴金属粒子が上記カーボンナノチューブの先端側に付着している場合は、カーボンナノチューブ層に付着する貴金属粒子の多くが酸化還元反応に寄与することができ、より大容量の電気化学キャパシタを得ることができる。
カーボンナノチューブの先端が開口している場合は、カーボンナノチューブ層に付着する貴金属粒子の多くが酸化還元反応に寄与することができ、より大容量の電気化学キャパシタを得ることができる。
本電気化学キャパシタは図1に例示するように、第1基板11と、第1集電電極12と、第1電極13と、多孔質のセパレータ14と、第2電極15と、第2集電電極16と、第2基板17とをこの順に備えることを特徴とする。また、第1電極13、セパレータ14及び第2電極15に電解液18が含有されている。
また、炭化ケイ素膜を減圧下で又は炭化ケイ素膜を分解可能な雰囲気下で加熱して炭化ケイ素を分解させて形成されるカーボンナノチューブ層を有する第1電極、及び第2電極を得る電極作製工程と、第1基板材、第1集電電極、上記第1電極、セパレータ、上記第2電極、第2集電電極、及び第2基板材をこの順に積層し、また電解液を該各カーボンナノチューブ層及びセパレータに含有させる積層工程と、をこの順で行い、その後、上記第1電極から上記第2電極に向けて所定時間電流を流す電気正印加加工工程及び/又は該第2電極から該第1電極に向けて所定時間電流を流す電気逆印加加工工程を行うことにより製造することもできる。
上記有機材料としては、例えば、樹脂、ゴム等を用いることができる。
樹脂としては、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリアセタール、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンサルファイド、フッ素樹脂等の熱可塑性樹脂が挙げられる。また、ゴムとしては、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン・ブタジエンゴム、アクリロニトリル・ブタジエンゴム、ブチルゴム、エチレン・プロピレンゴム、アクリルゴム、塩素化ポリエチレン、シリコーンゴム、エピクロルヒドリンゴム等が挙げられる。
更に、ポリオレフィン系エラストマ、ポリエステル系エラストマ、ポリウレタン系エラストマ、ポリアミド系エラストマ、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体等の熱可塑性エラストマを用いることもできる。
また、上記無機材料としては、鉄及びアルミニウム等の金属、ステンレス等の合金、アスファルト、セメント、粘土等を用いることができる。
上記「貴金属粒子」は、Au、Ag、Ru、Rh、Pd、Os、Ir及びPtから選択される貴金属の粒子である。これらのうち、Ptを好適とすることができる。また、貴金属粒子は、カーボンナノチューブの全体に付着させてもよいし、一部分に付着させてもよい。更に、一部分に付着させる場合は、カーボンナノチューブの先端側(セパレータと対向する側)を好適とすることができる。カーボンナノチューブの先端側がより酸化還元反応を起こしやすい部位であるためである。尚、カーボンナノチューブの表面に貴金属粒子が付着していてもよい。
貴金属粒子の粒径は、任意に選択することができ、例えば、100nm以下とすることができる。また、貴金属粒子の付着量も任意に選択することができるが、例えば5.1×10−8〜5.1×10−6mol/cm2(特に好ましくは、1.0×10−7〜2.3×10−6mol/cm2、更に好ましくは2.6×10−7〜2.3×10−6mol/cm2)とすることができる。
更に、貴金属粒子をカーボンナノチューブに付着させる方法としては、後述する電気正印加加工及び/又は電気逆印加加工を挙げることができる。
更に、カーボンナノチューブの内径は、好ましくは1.5〜8nm、より好ましくは1.7〜6nm、更に好ましくは2〜5nmである。また、カーボンナノチューブの長さは、好ましくは1〜50μm、より好ましくは1〜30μm、更に好ましくは1〜15μmである。このような範囲とすることでイオンがカーボンナノチューブの内側まで浸透しやすい内径とすることができる。更に、このような範囲の内径のカーボンナノチューブは、炭化ケイ素膜を熱分解することによって得ることができる。
また、カーボンナノチューブは同心円状に複数の筒が積層するが、その「筒層数」は、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜8、更に好ましくは1〜5である。このような範囲の筒層数にすることによって、単位面積内により多くのカーボンナノチューブを設けることができ、全体の表面積をより広くすることができるからである。
カーボンナノチューブ層の平面配列密度は、80〜350億本/mm2、より好ましくは90〜320億本/mm2、更に好ましくは100〜300億本/mm2である。尚、上記平面配列密度は、次のようにして求めた密度である。始めに透過型電子顕微鏡によってカーボンナノチューブ層の平面像を複数異なる場所で得る。次いで、各平面像の視野内のカーボンナノチューブの個数を画像処理によって算出した後、視野の面積で割ることで各平面像における配列密度を求める。その後、各平面像における配列密度の平均値を平面配列密度とする。このような範囲とすることによってカーボンナノチューブの管の全面にわたり電解液が浸透しやすくなり、有効表面積を大きくすることができる。
一方、α−SiC多結晶膜を形成する場合の成膜温度は、通常、1400℃〜2000℃、好ましくは1550℃〜1850℃である。この温度範囲であれば、形成される炭化ケイ素多結晶膜が結晶学的に表記される(0001)面に配向しやすくなる。
従来から知られている、予め作製したカーボンナノチューブをスクリーン印刷法や沈降法等を用いて形成する方法は、電極の面に対して水平に寝てしまうため、カーボンナノチューブ内に電解質が浸透しにくく、表面積の増加に寄与しない。
しかし、炭化ケイ素膜を分解してカーボンナノチューブにする本電極作製工程は、カーボンナノチューブを電極の面状に立設した状態で形成することができ、電気及び電解液の移動がスムーズに行えるため好ましい。また、炭化ケイ素膜を分解して得られたカーボンナノチューブ層は、分解前の炭化ケイ素膜の大きさを保持しているため、カーボンナノチューブを高密度に配置することができる。更に、得られたカーボンナノチューブの内径は、電解液のイオンがカーボンナノチューブ内部に浸透可能な大きさであるため好ましい。
また、カーボンナノチューブは、炭化ケイ素の分解によりケイ素原子を可能な限り除去するにおいて、真空度及び加熱温度、あるいは、上記炭化ケイ素を分解可能な雰囲気とするためのガスの種類及び加熱温度を特に限定することなく得ることができる。
減圧下で加熱する場合の好ましい真空度は5Torr〜10−10Torrであり、より好ましくは2Torr〜10−9Torrである。真空度が高すぎると形成されたカーボンナノチューブ同士が接触し、一部のチューブが他を吸収して大きく成長する場合があり、カーボンナノチューブのサイズを制御することが困難になる。尚、この真空度を維持できる範囲で、3%以下、更には1%以下の酸素、あるいは、ヘリウム、ネオン、アルゴン及び窒素等の不活性ガスを含む雰囲気であってもよい。
また、好ましい加熱温度は800℃〜2000℃であり、より好ましくは1200℃〜1900℃、更に好ましくは1400℃〜1900℃である。加熱は、上記範囲内において、一定温度で続けて行ってもよいし、異なる温度を組み合わせて行ってもよい。
尚、上記加熱温度における加熱時間は、炭化ケイ素の膜の厚さにより、通常、0.5時間〜50時間、好ましくは0.5時間〜30時間である。また、常温から上記加熱温度までの昇温速度等は特に限定されず、通常、平均速度は0.5℃/分〜40℃/分、好ましくは1℃/分〜30℃/分である。常温から上記加熱温度まで等速で昇温してもよいし、多段階で昇温してもよい。
このように、加熱の条件をうまく組み合わせることによって、カーボンナノチューブの長さ、即ち、図5に例示するカーボンナノチューブ層21の厚さと、グラファイト層22を所望の値とすることができる。また、得られたグラファイト層は、集電電極の一部又は全てとして用いることもできる。
また、上記ガス(G2)としては、一酸化炭素、二酸化炭素、テトラフルオロメタン、水蒸気等が挙げられる。これらのガスは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
尚、これらのガス(G1)及び(G2)は、それぞれ単独で用いてもよいし、任意の割合で混合し用いてもよい。この場合の混合割合は特に限定されない。
電極作製工程が終了した後、室温まで降温されるが、その速度も特に限定されない。一定速度でもよいし、多段階で降温してもよい。更に、冷却方法は特に限定されない。降温手段の例としては、一定速度で常温まで冷却する方法、上記目的の加熱温度より低い温度で一定時間保持した後冷却する方法等が挙げられる。冷却する手段は特に限定されない。
炭化ケイ素層を更に備える場合は、カーボンナノチューブ層の強度が高まるとともに、カーボンナノチューブ層の緊密性を保持することができる。
また、加熱時間をより短くしたり、非形成面を黒鉛板等で覆ったりする等、加熱条件を選択することによって、例えば図5、6に示すように、カーボンナノチューブ層21の下層にグラファイト層22を生成することができるが、これを集電電極12、16として用いることもできる。例えば、炭化ケイ素膜を、α−SiCである場合には結晶学的に表記される(0001)面、又はβ−SiCの場合には、結晶学的に表記される(111)面に配向させることで炭化ケイ素表面にグラファイトが生成しやすくなり、集電電極12、16として用いることができる。
炭化ケイ素の膜の表面を化学処理する方法は特に限定されない。通常は、炭化ケイ素を侵すおそれのない処理液を用いて行われる。上記処理液は炭化ケイ素の表面の酸化膜を腐食あるいは溶解させることができるものであれば特に限定されないが、酸又はアルカリの処理液が好ましく、ガラスの腐食に適した処理液が特に好ましい。
例えば、処理液としてフッ化水素酸水溶液、フッ化アンモニウム水溶液、フッ化カリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、[フッ化水素酸+硝酸]水溶液等が挙げられる。これらのうち、フッ化水素酸水溶液、フッ化アンモニウム水溶液、フッ化カリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液及び[フッ化水素酸+硝酸]水溶液が好ましい。但し、溶融酸化ナトリウム溶液、炭酸ナトリウム・硝酸カリウム混合液等は炭化ケイ素にダメージを与えるため好ましくない。
上記処理液は、炭化ケイ素の形状や目的等に応じて処理条件(例えば、処理方法、処理液の濃度、温度、処理時間等を挙げることができる。)を選択すればよい。処理方法としては浸漬法、吹きつけ法等があるが、浸漬法が好ましい。浸漬法による化学処理は、上記処理液の1種のみを用いて行ってもよいし、複数種類の処理液を混合せずに別々の工程で用いて行ってもよい。尚、炭化ケイ素を化学処理した後は、超純水等で洗浄し、速やかに次の工程へ進めることが好ましい。
また、第1基板及び第2基板が、導電性且つ電解液によって侵されない材質である場合、第1基板及び第2基板と、第1集電電極及び第2集電電極とを一体とすることができる。また、第1電極及び第2電極が十分な導電性を備える層を備える場合、各電極と各集電電極を一体とすることができる。
貴金属イオンは、第1仮集電電極及び第2仮集電電極、若しくは第1集電電極及び第2集電電極に該貴金属を含有させ、電気正印加加工工程及び/又は電気逆印加加工工程によって電解液中に溶出させてもよい。尚、第1仮集電電極及び第2仮集電電極、若しくは第1集電電極及び第2集電電極に貴金属を含有させる場合は、電気正印加加工工程及び/又は電気逆印加加工工程によって該貴金属が溶出可能な各電極のみに含有させてもよいし、全てに含有させてもよい。
電解液に含まれる貴金属イオンは、質量比で10〜100ppmである。貴金属イオンを含有することにより、酸化還元反応に寄与できる貴金属イオンが増大し、より大容量の電気化学キャパシタを得ることができる。
クロム、ニッケル及び鉄のイオンの比率は、クロム、ニッケル及び鉄のイオンの総量が100質量%のとき、クロムイオンが9〜50%、ニッケルイオンが0〜40%、鉄イオンが30〜90%(より好ましくは、クロムイオンが18〜25%、ニッケルイオンが0〜20%、鉄イオンが55〜82%)である。且つ、電解液におけるクロム、ニッケル及び鉄のイオン全体の含有量は質量比で250〜2000ppmであり、より好ましくは500〜1000ppmとすることができる。尚、クロム、ニッケル及び鉄のイオンは、それぞれの金属及びその化合物のイオンであってもよいし、クロム、ニッケル及び鉄(若しくはクロム及び鉄)の合金を溶解させて得られるイオンであってもよい。
上記「開口工程」は、上記電極作製工程で作製したカーボンナノチューブの先端を開口するための工程である。これは、炭化ケイ素膜20を熱分解して得られるカーボンナノチューブは、図3に例示するように、先頭がキャップ状に閉口しており、電解液がカーボンナノチューブの内側に浸透するのが困難であり、このキャップ211を除去して図4に例示するように開口させるためである。
このキャップ211を取り除く方法は、図2に例示するカーボンナノチューブ層21を例えば、酸化雰囲気において、好ましくは約400℃〜650℃、より好ましくは450℃〜600℃であり、特に約580℃程度で、例えば、約3〜30分程度、特に好ましくは約15分間加熱する。このような処理を行うことによって、図4に例示するようにキャップ211が除去され、カーボンナノチューブ内部に電解液が浸透することができるようになる。また、カーボンナノチューブ内部側にも電荷を蓄えることが可能になる。
また、電極作製工程によって形成されたカーボンナノチューブの先端にキャップがあってもそれを除去することができる。これによって、炭化ケイ素膜を分解させて形成したカーボンナノチューブは、内径が電解液のイオン径より大きいために電解液がカーボンナノチューブの内側まで浸透して、電極が電解液と接触する有効表面積が大きく、より大容量の静電容量を備える電気化学キャパシタを作製することができる。
電気印加加工を行うために用いる上記電解液は、電気化学キャパシタ内に充填される上記電解液又は上記仮電解液等を任意に選択することができる。この例として、希硫酸溶液、塩酸等の酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリを挙げることができる。上記「溶液の分解電圧相当」とは、例えば希硫酸溶液の場合、分解電圧から0.3V以内、つまり1.5V以下を表す。また、印加する時間は、60秒〜600秒間、特に180秒〜300秒間が好ましい。
電気正印加加工工程及び電気逆印加加工工程によってカーボンナノチューブの表面に付着させる貴金属粒子は、予め電解液又は仮電解液に存在する貴金属イオン、若しくは、各集電電極又は各仮集電電極に含有する貴金属が溶出した貴金属イオンから供給することができる。また、各集電電極又は各仮集電電極から貴金属が溶出させることは、電気正印加加工工程及び電気逆印加加工工程で各集電電極又は各仮集電電極に印加することにより行うことができる。
電気正印加加工工程及び電気逆印加加工工程は、炭化ケイ素膜20を熱分解して得られたカーボンナノチューブが複数立設したカーボンナノチューブ層21を備える電極13、15に対して特に有効である。
第1基板材、第1集電電極、上記第1電極、セパレータ、上記第2電極、第2集電電極、及び第2基板材をこの順に積層し、また電解液を該各カーボンナノチューブ層及びセパレータに含有させる積層工程と、をこの順で行い、
次いで、上記第1電極から上記第2電極に向けて所定時間電流を流す電気正印加加工工程、及び/又は、該第2電極から該第1電極に向けて所定時間電流を流す電気逆印加加工工程と、から構成されていてもよい。
この付着工程は、貴金属イオンを含む溶液から任意の手段を用いて析出させたり、スパッタリング等により直接付着させたりする等、任意の付着方法を選択することができる。
1.電気化学キャパシタの作製
本実施例の電気化学キャパシタは、以下の手順に従って作製した。
(1)電極作製工程
直径50mm、厚さ5mmの黒鉛円板上に、幅及び長さが20mm及び厚さ40μmの単結晶炭化ケイ素矩形板を積載した積層体を得た。
その後、この積層体を真空炉内にセットし、減圧下(1×10−4Torr)で1000℃/時間で2000℃まで昇温後、2000℃、3時間の条件で加熱し、炭化ケイ素を完全に分解した。炭化ケイ素矩形板の分解物は、元の炭化ケイ素矩形板の形状を保っていた。
その後、黒鉛円板を除去し第1電極13及び第2電極15となる電極体を得た。この電極体の表面部の断面を透過型電子顕微鏡で観察したところ、基材に対して垂直に配向したカーボンナノチューブからなり且つ厚さが5μmである層、及びその下部に、厚さが45μmであるグラファイト層が形成されているのを確認した。また、カーボンナノチューブの先端部は全てキャップが形成されており、閉じていた。
(1)電極作製工程で得た電極体を大気中、650℃で20分間加熱して開口工程を行った。その後、電極体の表面部の断面を透過型電子顕微鏡で観察したところ、カーボンナノチューブの先端部が全て開いているのを確認することができた。また、先端部の開口径の平均は、3nmであった。更に、各カーボンナノチューブの平均内径、平均長さ、平均筒層数はそれぞれ、4nm、5μm、5層であった。また、カーボンナノチューブ層の厚さは5μmであり、平面配列密度は、300億本/mm2であった。
第1基板11となるPTFE製で嵌合可能な突起を設けた円板上に、第1仮集電電極となる白金板(Pt)、第1電極13となる電極体、ポリエチレン製で厚さ0.1mmの不織布からなるセパレータ14、第2電極15となる電極体、及び第2仮集電電極となる白金板を積層した。尚、各電極体はカーボンナノチューブ層が対向側面に向けられ、グラファイト層が反対側に向けられている。また、電極体及びセパレータ14は仮電解液を含浸させてある。
その後、PTFE製の壁部を電極体、白金板及びセパレータ14の周囲に設けた後、仮電解液18で満たした。次いで、第2基板17となるPTFE製で嵌合可能な突起を設けた円板を被せて固定した。尚、集合体の一部は第1基板11と第2基板17との隙間から延出し、接続端子とした。
尚、仮電解液は、35質量%の希硫酸水溶液を用いた。
その後、電気正印加加工工程として、第1電極13を正、且つ第2電極15を負とし、0.5Vの直流に5Hz、1.1Vの交流を重畳させた電流を1時間印加した。
(5)電気逆印加加工工程
次いで、電気逆印加加工工程として、第1電極13を負、且つ第2電極15を正とし0.5Vの直流に5Hz、1.1Vの交流を重畳させた電流を1時間印加した。
尚、電気正印加加工工程及び電気逆印加加工工程中に集電電極12、16の白金が溶解し、電解液が黄色に着色する様子が見られた。これは溶解した各集電電極の白金のイオンによると思われる。このように、電気正印加加工工程及び電気逆印加加工工程により各集電電極の白金を溶解させ、電解液中の白金イオン濃度を増加させることによって、酸化還元反応による蓄電容量が増加したと考えられる。
電気印加加工工程の後、第1仮集電電極及び第2仮集電電極を第1集電電極及び第2集電電極に取り替えた、つまり、第1基板11となるPTFE製で嵌合可能な突起を設けた円板上に、第1集電電極12となる黒鉛板、第1電極13となる電極体、ポリエチレン製で厚さ0.1mmの不織布からなるセパレータ14、第2電極15となる電極体、及び第2集電電極16となる黒鉛板を積層し、電極体及びセパレータ14は電解液18を含浸させた、図1に示す本電気化学キャパシタ1を作製した。尚、電解液18は、表1に示す白金、クロム、ニッケル及び鉄を含有する35質量%の希硫酸水溶液を用いた。また、電解液注のクロム、ニッケル及び鉄のイオンは、表1に示す比率のステンレス鋼を溶解させることによって得た。
このように作成した電気化学キャパシタ1は、図1に示すように、第1基板11と、第1集電電極12と、カーボンナノチューブ層からなる第1電極13と、セパレータ14と、カーボンナノチューブ層からなる第2電極15と、第2集電電極16と、第2基板17と、をこの順に積層して形成されている。また、電解液18が第1電極13、セパレータ14及び第2電極15に含有されている。更に、第1集電電極12及び第2集電電極16は、黒鉛板と炭化ケイ素膜を分解して得られたグラファイト層からなる。更に、電解液18は、表1に示す白金、クロム、ニッケル及び鉄のイオンを含有している。
更に、第1集電電極12、第1電極13、セパレータ14、第2電極15及び第2集電電極16は、周囲に形成された壁部19によって電気化学キャパシタ内に保持される。
更に、電気化学キャパシタ1は、第1集電電極12及び第2集電電極16の一部を第1基板11と第2基板17との隙間から延出して形成された接続端子を介して外部回路に接続することができる。
更に、第2電極のカーボンナノチューブ層の断面をSEM及びEDMで確認したところ、特にカーボンナノチューブの先端側である右側に白金粒子が多く付着していることが分かった。
試験例1〜3において、電気正印加加工工程及び電気逆印加加工工程を行わず、白金イオンを含有する電解液を含浸する電気化学キャパシタA、電気化学キャパシタAに電気正印加加工工程及び電気逆印加加工工程を行った電気化学キャパシタB、並びに電気化学キャパシタBにクロム、ニッケル及び鉄の混合金属イオンを表1に示す割合で添加した電解液を用いた実施例である電気化学キャパシタCの充放電特性を調べ、電気化学キャパシタの容量の変化を比較した。
この充放電特性の試験は、1mAの定電流で正極及び負極間の電圧が0Vから1.0Vになるまで充電し、その後0.4A/gで0Vになるまで放電した。この結果を図7〜9に示す。
その結果、試験例1において、電気正印加加工工程及び電気逆印加加工工程を行った試験例1Bは比較例1Aよりも約2倍充放電時間が長くなっていた。更に、電解液にクロム、ニッケル及び鉄の混合金属イオンを添加した実施例である試験例1Cは、試験例1Aの約25倍、試験例1Bの約13倍充放電時間が長くなっていた。
これにより、電解液にクロム、ニッケル及び鉄の混合金属イオンを添加することによって電気化学キャパシタの蓄電容量が増加し、且つIRドロップが小さくなることが分かる。これはクロム、ニッケル及び鉄の混合金属イオンの酸化還元反応や、吸蔵・脱離によるインターカレーション擬似容量のスイング効果が蓄電容量増加に効果的に加わったものと考えられる。
また、クロム、ニッケル及び鉄の比率を変更した試験例2及び3における実施例である試験例2C、3Cは、いずれも試験例1Cよりも放電時間が短かった。しかし、試験例2Cは、試験例1CよりもIRドロップが小さく、終盤の約130秒までの放電電圧が高く維持された。
図10に示すように、クロム、ニッケル及び鉄をそれぞれのみを添加した時の放電曲線は、試験例1C〜3Cと比べて放電時間が短く、電圧も低いことが分かる。
しかし、比較例1C(Fe)では放電時間が比較例1Aよりも長くなり、比較例1C(Cr)では放電電圧が比較例1Aよりも高くなっており、これらから、試験例1C〜3Cのクロム、ニッケル及び鉄の比率が比較例と同様の影響を受けていることが考えられる。
第1電極13及び第2電極15に活性炭を用いた他は、各試験例1〜3と同じ製造方法を用いて作成した比較例1である電気化学キャパシタの充放電特性を求めた。
比較例2の第1電極及び第2電極は、活性炭(クラレケミカル社 RP−20)、導電材(ライオン社 ケッチンブラック)、粘結剤(三井・デュポンフォロロケミカル社 PTFE)を重量比0.8対0.1対0.1で混練して得た。
このような比較例2の充放電特性を図11に示す。図11に示すように、電気正印加加工工程及び電気逆印加加工工程を行っても、放電時間が約1.1倍(電気正印加加工工程のみ行った比較例2B)、約1.2倍(電気正印加加工工程及び電気逆印加加工工程を行った比較例2C)と、充放電特性の大きな変化が見られなかった。このため、電気正印加加工工程及び電気逆印加加工工程は、カーボンナノチューブ層を備える電気化学キャパシタに対して特に有効であることが分かった。
試験例1Bにおける電気正印加加工工程の加工処理時間を変化させることによって白金粒子の付着量を変化させ、それに伴う電気化学キャパシタの容量変化を調べ、その結果を図12に示す。尚、電気化学キャパシタの容量は、1Vに充電した電気化学キャパシタを1mAの定電流で0Vになるまでの放電時間で調べた。また、白金粒子の付着量は、ICP発光分光分析器を用いて調べた。
図12に示すように、20mm角の第2電極において、白金粒子の付着量が0mol/cm2のときは、35秒以下であった。一方、白金粒子の付着量が2.3×10−6mol/cm2においては放電時間が53秒と向上した。また、1.2×10−6mol/cm2においては放電時間が85秒、91秒、97秒、更に付着量が少ない2.6×10−7mol/cm2においては放電時間が290秒、320秒、365秒と、それぞれ非常に好ましい結果が得られた。このことから、付着量が5.1×10−8〜5.1×10−6mol/cm2(特に好ましくは、1.0×10−7〜2.3×10−6mol/cm2、更に好ましくは2.6×10−7〜2.3×10−6mol/cm2)の範囲が好ましいことが分かった。
充放電に伴う金属イオンの濃度変化を調べ、電気化学キャパシタの安定性を調べた。比較例1Bの電解液(16.2ml、d:1.23)を、試験前(0回目)、19回目の充放電終了後、及び充放電を20回繰り返し後、電極の極性を変えて9回の充放電を行った後の3つにおいてそれぞれ1ml採取し、ICPを用いて電解液中の金属イオン濃度を分析した。
この分析は、原液0.5ml採取して100倍に純水で希釈した後、ICPを用いて金属イオン濃度を分析した。この分析結果を、表2、表3及び図13に示す。
本実施例は、図14に示すように、集電電極12、16、電極13、15、セパレータ14を積層し、中間集電電極121によって区画された各層の電極13、15及びセパレータ14に電解液18を含浸させた、複数の電気化学キャパシタを直列接続した電気化学キャパシタ素子1Aである。この電気化学キャパシタ素子1Aの両端以外の中間集電電極121は、その両面に炭化ケイ素膜を成膜した後、上記(1)電極作製工程と同じ条件でカーボンナノチューブ層を形成することで、電極13、15を一体形成して得られたものである。
このような電気化学キャパシタの中間集電電極121は、その両面の電極13、15と一体形成されているため緊密であり、積層構造が崩れにくく、耐久性が高い。また、耐電圧が高い電気化学キャパシタを得ることができる。
また、第1基板11と、第1集電電極12と、カーボンナノチューブ層からなる第1電極13と、セパレータ14と、カーボンナノチューブ層からなる第2電極15と、第2集電電極16と、第2基板17と、をこの順に積層したものを渦巻き状に丸めて、円筒形にした電気化学キャパシタとしてもよい。
更に、仮積層工程を行わず、貴金属のイオンを含有する電解液18、又は/並びに、貴金属を含有する第1集電電極12及び第2集電電極16を用いて実施例と同様に積層工程を行い、その後電気正印加加工工程及び/又は電気逆印加加工工程を行って電気化学キャパシタを作製してもよい。即ち、電解液18、第1集電電極12及び第2集電電極16の少なくとも1つにカーボンナノチューブに付着させる貴金属を含有させ、電気正印加加工工程及び/又は電気逆印加加工工程によってカーボンナノチューブに貴金属粒子を付着させることができる。
Claims (6)
- 第1基板と、第1集電電極と、第1電極と、セパレータと、第2電極と、第2集電電極と、第2基板と、をこの順に備え、
該第1電極と該第2電極との間に充填された、貴金属、鉄及びクロムのイオンを少なくとも含有する電解液を具備し、
該第1電極及び該第2電極は、炭化ケイ素膜を熱分解して得られたカーボンナノチューブが複数立設したカーボンナノチューブ層を具備する電気化学キャパシタであって、
上記電解液は、クロム、ニッケル及び鉄のイオンの総量が100質量%のとき、クロムイオンが9〜50%、ニッケルイオンが0〜40%、鉄イオンが30〜90%であり、及び全体の質量比で250〜2000ppm含有し、且つ上記貴金属のイオンを質量比で10〜100ppm含有しており、
少なくとも上記第2電極の上記カーボンナノチューブの表面には貴金属粒子が付着しており、
上記カーボンナノチューブ層は、電解液中で上記第1電極から上記第2電極に向けて所定時間電流を流す電気正印加加工、及び該電解液中で上記第2電極から上記第1電極に向けて所定時間電流を流す電気逆印加加工がされており、
上記電気正印加加工及び/又は上記電気逆印加加工により上記カーボンナノチューブの表面に上記貴金属粒子が付着することを特徴とする電気化学キャパシタ。 - 第1基板と、第1集電電極と、第1電極と、セパレータと、第2電極と、第2集電電極と、第2基板と、をこの順に備え、
該第1電極と該第2電極との間に充填された、貴金属、鉄及びクロムのイオンを少なくとも含有する電解液を具備し、
該第1電極及び該第2電極は、炭化ケイ素膜を熱分解して得られたカーボンナノチューブが複数立設したカーボンナノチューブ層を具備する電気化学キャパシタであって、
上記電解液は、クロム、ニッケル及び鉄のイオンの総量が100質量%のとき、クロムイオンが9〜50%、ニッケルイオンが0〜40%、鉄イオンが30〜90%であり、及び全体の質量比で250〜2000ppm含有し、且つ上記貴金属のイオンを質量比で10〜100ppm含有しており、
少なくとも上記第2電極の上記カーボンナノチューブの表面には貴金属粒子が付着しており、
上記カーボンナノチューブ層は、電解液中で上記第1電極から上記第2電極に向けて所定時間電流を流す電気正印加加工、又は該電解液中で上記第2電極から上記第1電極に向けて所定時間電流を流す電気逆印加加工がされており、
上記電気正印加加工又は上記電気逆印加加工により上記カーボンナノチューブの表面に上記貴金属粒子が付着することを特徴とする電気化学キャパシタ。 - 上記電気正印加加工及び上記電気逆印加加工は、各加工時の電解液に上記貴金属のイオンを含有し、又は/並びに、各加工時に上記第1電極及び上記第2電極に接触させて用いる各仮集電電極の少なくとも一方に上記貴金属を含有する請求項1又は2記載の電気化学キャパシタ。
- 上記貴金属粒子の付着量は、5.1×10−8〜5.1×10−6mol/cm2である請求項1乃至3のいずれか1項に記載の電気化学キャパシタ。
- 上記貴金属粒子は、上記カーボンナノチューブの先端側に付着している請求項1乃至4のいずれか1項に記載の電気化学キャパシタ。
- 上記カーボンナノチューブは、その先端が開口している請求項5記載の電気化学キャパシタ。
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