JP5356653B2 - 骨適合性チタン材料の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、例えば人工股関節や歯科用インプラント等の材料として利用される骨適合性チタン材料の製造方法に関するものである。
チタンは、その優れた生体適合性と機械的特性のため、人工股関節のステムや歯科用インプラント等の材料として利用されている。しかし、生体内へのチタン製生体材料の埋入後、チタン製生体材料が骨に対して十分な強度で接着するためには、数ヶ月の時間を要する。チタン製生体材料の機械的特性はバルク的性質に依るものであるが、生体組織に対する反応は材料の表面特性によって支配される。したがって、骨に対して活性な材料表面を得るために、各種のチタンの表面改質法が研究されてきた。数多くの研究成果の中で、プラズマ溶射法によるハイドロキシアパタイト(HAP)被覆は、生体内における迅速な骨形成を可能とすることから、現時点では最も評価をされている表面改質法である。しかしながら、長期にわたる生体内埋入後、HAP被覆層とチタン材料間での界面破壊およびHAP被覆自体の層内破壊が観察される。したがって、プラズマ溶射HAP被覆は生体内における長期安定性が不十分であると言える。
この様なHAP被覆法の欠点を克服した新しい表面改質方法が何人かの研究者により報告されている。この欠点克服のために最も重要なことは、改質層とチタン材料の間で界面破壊を起こさない不明瞭な界面を形成することである。例えば、チタンの表面に18kVに加速したカルシウムイオンを照射すると、チタンの骨形成性能が向上することが報告されている。イオン照射により形成したチタンの表面改質層には、水酸化/酸化カルシウムとチタン酸カルシウムが含まれており、その中のチタン酸カルシウムがチタン表面を生体活性にする要因であると結論づけられている。また、チタンを水酸化ナトリウム水溶液に浸漬し、その後に熱処理を施すと、チタンが生体骨と直接結合することも他の研究者によって報告されている。水酸化ナトリウムにより処理されたチタン表面にはゲル状のチタン酸ナトリウムが形成される。しかし、処理されたチタンを擬似体液内に浸漬するとナトリウムは迅速に溶解し、擬似体液中に溶存するカルシウムがナトリウムに代わって材料表面に取り込まれ、チタン酸カルシウムが形成する。上述の二つの表面改質方法において、チタン酸カルシウムは骨形成の鍵となる材料であると言える。
近年、RFマグネトロン・スパッタ法によるチタン酸カルシウム蒸着で、チタンの表面改質を行うことが試みられている。蒸着されたチタン酸カルシウムはアモルファス薄膜であるので、擬似体液中で迅速に溶解してしまい、骨形成促進に有効ではなかった。しかし、蒸着後に熱処理を施すと、チタン酸カルシウム層はペロブスカイト構造に結晶化するため、擬似体液に溶けにくくなり、チタンの骨形成を促進した。これらの結果より、ペロブスカイト構造に結晶化したチタン酸カルシウムを被覆すると、チタン表面を生体活性なものに改質させることがわかった。しかし、スパッタリング蒸着は、超高真空装置を備える複雑な装置を必要とする。また、複雑な形状を持つ生体材料への蒸着は容易ではない。ゆえに、実用化を視野に入れると、スパッタリング蒸着法に代わる、簡便且つ低コストのチタン酸カルシウム被覆法の開発が必要であると言える。
そこで、水酸化カルシウム水溶液へのチタンの浸漬によりチタン表面にチタン酸カルシウム層を形成することが試みられている。特許文献1,2にも、これと似たようなチタンの表面改質法が記載されている。特許文献1に記載の方法は、チタン、チタン合金を、カルシウムイオンを含む溶液に浸漬したり、溶液の沸点で煮沸して浸漬するというものである。特許文献2に記載の方法は、チタン、チタン合金を、カリウム、ナトリウムおよびカルシウムを含むアルカリ水溶液中に浸漬した後、基材をチタンの転移温度以下の温度で加熱するというものである。
特開平9−94260号公報 特許第2775523号
上記のような水酸化カルシウム水溶液へのチタンの浸漬によりチタン表面にカルシウムが取り込まれるが、チタンに対するカルシウムの原子比(Ca/Ti)は約0.1であり、この比は、チタン酸カルシウムのものよりも非常に低い。また、他の改質法として、水酸化カルシウム水溶液を用いた水熱合成法によってチタン酸カルシウムを形成することも試みられている。水熱合成法を用いることで、単純な浸漬法に比べてチタン酸カルシウムの形成が促進される。しかし、チタンに対するカルシウムの原子比は、チタン酸カルシウムのものよりも依然低く、形成層は結晶化していない。表面改質層のカルシウム比を高くする方法として、高濃度のカルシウムを含むアルカリ水溶液での処理が考えられるが、水酸化カルシウムの水に対する溶解度は極めて低いため、当該アルカリ水溶液の作製は困難である。
本発明の目的は、チタンまたはチタン合金の表面に生体活性なカルシウム含有酸化物層を簡便且つ安価に形成することができる骨適合性チタン材料の製造方法を提供することである。
本発明は、チタンまたはチタン合金の表面にチタン酸カルシウム層を形成してなる骨適合性チタン材料の製造方法であって、水酸化カルシウムと蒸留水とを混合して、スラリー状態のアルカリ処理剤を作製する工程と、前記スラリー状態のアルカリ処理剤内に前記チタンまたはチタン合金を埋入する工程と、前記チタンまたはチタン合金が埋入されたスラリー状態のアルカリ処理剤を大気中で熱処理することにより、前記チタンまたはチタン合金の表面に前記チタン酸カルシウム層を形成する工程とを含むことを特徴とするものである。
このような本発明においては、水酸化カルシウムと蒸留水とを混合して、カルシウムを含むスラリー状態のアルカリ処理剤を作製した後、スラリー状態のアルカリ処理剤内にチタン材料(チタンまたはチタン合金)を埋入し、そのアルカリ処理剤を大気中で熱処理する。これにより、化学的表面処理によって、チタン材料の表面に結晶化した構造のチタン酸カルシウム層が形成されるようになる。また、スラリー状態のアルカリ処理剤中で熱処理してチタン酸カルシウム層を形成することにより、チタン酸カルシウム層とチタン材料との間の界面が不明瞭となるため、当該界面の破壊等を防止することができる。以上により、チタン材料の表面に生体活性なチタン酸カルシウム層を簡便且つ安価に形成することができる。
また、好ましくは、スラリー状態の処理剤内にチタンまたはチタン合金を埋入する前に、酸性水溶液で前処理を行う工程を更に含む。これにより、スラリー状態の処理剤による処理効果を促進させることができる。
本発明によれば、チタンまたはチタン合金の表面に生体活性なカルシウム含有酸化物層を簡便且つ安価に形成することができる。
以下、本発明に係わる骨適合性チタン材料の製造方法な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明に係わる骨適合性チタン材料の製造方法の一実施形態を示す概略工程図である。
同図において、本実施形態では、カルシウム含有酸化物層の一例として、チタンまたはチタン合金の表面にチタン酸カルシウムを形成してなる骨適合性チタン材料を製造する。ここで、チタンとしては、工業用純チタンが使用され、チタン合金としては、工業用純チタンを主成分としてCa,P,O,Fe,Al,V,Sn,Pd,Cr,Ta,Nb,Zr等の合金元素を含有したものが使用される。
まず、図1(a)に示すように、容器1内において粉状の水酸化カルシウム試薬(カルシウム系化合物粉末)2と蒸留水3とを混合し、これらの混合物を攪拌させることにより、カルシウムを含むスラリー状のアルカリ処理剤(水酸化カルシウムスラリー)4を作製する。
次いで、図1(b)に示すように、スラリー状のアルカリ処理剤4中にチタンまたはチタン合金の試料5を埋入させる。そして、図1(c)に示すように、試料5が埋入されたスラリー状のアルカリ処理剤4が入っている容器1を電気炉6内に入れ、そのスラリー状のアルカリ処理剤4を大気雰囲気中で600℃近傍の温度で熱処理(酸化処理)する。
これにより、試料5の表面には、ペロブスカイト構造に結晶化されたチタン酸カルシウム層が表面改質層として形成される。また、チタン酸カルシウム層の直下には、二酸化チタン層が形成される。
続いて、表面にチタン酸カルシウム層が形成された試料5を容器1内から取り出した後、蒸留水で試料5を洗浄することにより、骨適合性チタン材料が得られる。
比較例として、従来における骨適合性チタン材料の製造方法の一例を図2に示す。まず図2(a)に示すように、ナトリウム、カリウム及びカルシウムを含むアルカリ水溶液10に、チタンまたはチタン合金を試料11として所定時間(例えば24時間)浸漬させる。その後、アルカリ水溶液10から試料11を取り出して乾燥させた後、図2(b)に示すように、その試料11を大気雰囲気中で600℃程度の温度で熱処理する。
このような従来の表面改質法では、チタンまたはチタン合金の表面にカルシウムが取り込まれるが、チタンに対するカルシウムの原子比(Ca/Ti)は0.1程度と十分低い。つまり、図2に示す方法では、チタンまたはチタン合金の表面に生体活性なチタン酸カルシウム層を形成することは困難である。
これに対し本実施形態では、高濃度のカルシウムを含むスラリー状のアルカリ処理剤(水酸化カルシウムスラリー)4を用いることにより、所望のCa/Ti比(例えば1:1)を有するチタン酸カルシウム層をチタンまたはチタン合金の表面に容易に形成することができる。
また、水酸化カルシウムスラリー処理を施すことにより、チタンまたはチタン合金の表面には、ペロブスカイト構造に結晶化されたチタン酸カルシウム層が形成され、このチタン酸カルシウム層の直下には二酸化チタン層が形成される。このように表面改質されたチタンまたはチタン合金の表面の特性は、生体内における骨形成を促進出来るRFマグネトロン・スパッタリング蒸着―加熱処理法により作製されるチタン酸カルシウム薄膜と類似している。また、スラリー処理による表面改質層とチタンまたはチタン合金との間の界面は不明瞭であり、非破壊な界面を持つこととなる。
さらに、水酸化カルシウムスラリー処理を施すことにより、チタンまたはチタン合金のハンクス緩衝塩類溶液(HBSS)中において骨の主成分であるハイドロキシアパタイト(HAP)の形成速度が向上するようになる。
以上により、チタンまたはチタン合金の表面に生体活性なチタン酸カルシウム層を簡便且つ安価で形成することができる。従って、本実施形態によれば、チタンまたはチタン合金の表面が骨に対して活性なものに改質された骨適合性チタン材料を効果的に得ることが可能となる。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、スラリー状のアルカリ処理剤中にチタンまたはチタン合金を埋入する前に、アルカリ処理剤による処理効果を促進させるために、酸性水溶液で前処理を行っても良い。
以下、本発明の処理法を施して得られた骨適合性チタン材料の表面特性を明らかにすると共に、擬似体液中でのリン酸カルシウム形成性能を評価する。
具体的には、表面改質されたチタン材料の表面特性は、微小角入射X線回折(GI−XRD)、X線光電子分光(XPS)およびオージェ電子分光(AES)による深さ方向分析により評価した。その評価の後、表面改質されたチタン材料をハンクス緩衝塩類溶液(HBSS)に浸漬した。そして、ハンクス緩衝塩類溶液から試料を取出した後、浸漬により形成したリン酸カルシウムを走査電子顕微鏡(SEM)により観察し、その結晶相をGI−XRDで同定した。
[実験方法]
(1)水酸化カルシウムスラリー処理による表面処理
被処理材料として、エメリ紙#1500で研磨された円盤状(φ8mm×t1mm)の市販一種チタン板を準備した。最初に、このチタン板の表面酸化物を除去するため、353Kに保持された6molL−1のHCl溶液にチタン板を60秒間浸漬した後、チタン板を蒸留水ですすぎ、空気中・333Kで乾燥した。表面処理に用いた水酸化カルシウムスラリーは、水酸化カルシウム試薬1gに対してイオン交換水1mLを混合して作製した。そのスラリー作製後直ちに、酸化物除去処理を行ったチタン板をスラリー内に埋め込み、チタン板を内包しているスラリーを大気中・873Kの電気炉内で7.2ks保持した。熱処理後のスラリーは乾燥した固体であり、水が蒸発したため多くのひびが観察された。その後、固体化したスラリーからチタン板を取り出し、チタン板を超音波洗浄機で洗浄後、空気中・333Kで乾燥し、実験用試料とした。
(2)HBSSによるリン酸カルシウム形成性能の評価
リン酸カルシウム形成性能を評価する擬似体液として、血液の無機成分と類似したイオン組成を持つHBSSを用いた。HBSSは、適量のNaCl、KCl、MgSO・7HO、NaHPO、KHPOおよびNaHCO試薬をイオン交換水に溶解して作製した。作製直後のHBSSのpH値は、約7.4であった。スラリー処理により表面改質されたチタン試料4個を、310Kに保持された12.6mLのHBSS溶液にそれぞれ浸漬した。さらに、研磨されたチタン板4個を比較材料として準備し、これらもHBSSにそれぞれ浸漬した。容器から溶出するSiの汚染を避けるため、浸漬溶液としてテフロン(登録商標)PFA製容器を用いた。また、浸漬中に生じる溶液のpH上昇の影響を低減するため、HBSSは3日に一度交換した。4個のうち2個の試料は、9日後にHBSSから取り出し、残りの2個の試料は、18日後に取り出した。試料の取り出し後、試料を蒸留水ですすぎ、大気中・313Kで乾燥した。
各試料のリン酸カルシウム形成性能の評価は、走査電子顕微鏡による表面観察により行った。SEM観察における電子線加速電圧は10kVであった。また、形成したリン酸カルシウムの結晶相は、GI−XRDで同定した。
[実験結果及び評価]
(1)表面改質されたチタンの表面特性
表面改質されたチタン表面のXPS−サーベイ・スペクトルには、カルシウム、チタン、酸素および炭素のピークが確認された。C1sピークの結合エネルギーは284.8eVであるので、炭素は大気中で表面に吸着した汚染であると考えられる。図3(a)及び図3(b)は、Ti2pおよびCa2p2領域のXPSスペクトルである。Ti2p3/2およびCa2p3/2ピークの半価幅は、それぞれ1.4および1.8eVであり、ピークの形状はほぼ対称である。この結果は、表面改質層に含まれるTiおよびCaの化学状態はそれぞれ1状態のみであるということを示している。図3(c)は、O1s領域のXPSスペクトルを示している。O1sピークは、高エネルギー側に小さい裾を持ち、これは、最表面近傍に存在する水酸基または空気中で吸着した水に依るものであると考えられる。この裾の主要因がどちらであるかを確定することは難しいと考えられる。表面改質層の各元素の結合エネルギーは、単結晶のチタン酸カルシウムの値とほぼ一致する。さらに、定量分析の結果は、チタンとカルシウムの原子比が1:1であることを示した。これらの結果より、XPSの測定深さ領域における表面改質層の化学状態はチタン酸カルシウムであると結論付けられる。
表面改質したチタンの各元素の深さ方向プロファイルを図4に示す。カルシウムのプロファイルは、水酸化カルシウムスラリー処理により、カルシウムがチタンの表面酸化物層の10nm程度の領域まで取り込まれており、その濃度は内側に向かって序々に減少していることを示している。酸素のプロファイルは、表面改質されたチタン内に拡散した酸素の濃度が120nm程度の領域までほぼ一定であることを示している。また、酸素が取り込まれた深さ領域は、カルシウムのものよりも大きい。これらの結果は、表面改質されたチタン表面は、カルシウム、酸素およびチタンを含む外側層と、酸素およびチタンを含む内側層とを持つ二層構造であることが示唆される。更に、内側層とチタン基板の間の界面領域では、基板に向かって酸素が除々に減少していることがわかる。この結果は、表面改質層は界面破壊を起こさない不明瞭な界面を持っていることを示唆している。
図5は、表面改質されたチタン表面に対するGI−XRDパターンである。チタン基板に由来するもの以外に検出されたピークは、ペロブスカイト構造のチタン酸カルシウムとルチル構造の二酸化チタンである。チタン酸カルシウムは二層構造の改質層の中の外側層に存在し、二酸化チタンは二層構造の改質層の中の内側層に存在する。
ところで、RFマグネトロン・スパッタリング法で作製されたチタン酸カルシウム薄膜の特性においては、骨形成を促進することが出来るチタン酸カルシウム薄膜は、(1)カルシウムの化学状態がチタン酸カルシウムであること、(2)ペロブスカイト構造のチタン酸カルシウムに結晶化していること、の二つの性質を持っているが明らかにされている。本実施例の結果は、水酸化カルシウムスラリー処理によってチタンに形成される表面改質層は、骨形成を促進できるチタン酸カルシウム薄膜と類似していることを示唆している。
(2)HBSS中におけるリン酸カルシウム形成性能
HBSS中に9日間浸漬した後の未処理チタン表面および表面処理済チタン表面のSEM像を図6(a)及び図6(b)にそれぞれ示す。表面改質されたチタン上には、直径約1μmの球状の析出物が多数観察された。この析出物は積層し、改質済みチタンの表面を完全に覆いつくしている。一方、未処理チタン上には、この様な析出物は一切観察されない。
図7(a)及び図7(b)は、HBSS中に18日間浸漬した後の未改質チタン表面および改質済みチタン表面のSEM像である。各図の右上方に挿入されている図は縮小像である。未改質チタンおよび改質済みチタン共に、表面は析出物の層に覆われている。この析出層に観察されるひびは、真空中で水が蒸発したため生じたものであると推察される。改質されたチタン表面上に形成している析出層の一部は剥離している。一方、未改質チタン表面上の析出層厚は、改質されたチタン表面上の析出物より薄いため、剥離は観察されない。
図8は、HBSS中への浸漬前と9日および18日間浸漬後の未改質チタンおよび改質されたチタンに対するGI−XRDパターンである。浸漬後試料のGI−XRDパターン中に現れる新しいピークは、HAPのピークである。この結果は、浸漬後の試料表面に形成する析出物はHAPであるということを示している。浸漬9日後の試料のパターンでは、HAPを示すピークは改質されたチタンでのみ観察される。この結果は、SEMによる観察結果とよく一致する。浸漬18日後の試料のパターンでは、HAPを示すピークは未改質チタンおよび改質されたチタンの両方で観察される。しかるに、改質されたチタンのパターンでは、析出物層が十分に厚く成長し、GI−XRDの測定可能深さを超えたため、チタンを示すピークが観察されなかった。この結果は、改質されたチタン表面上に形成されたHAP層は、未改質チタン表面上に形成されたHAP層よりも厚いことを示唆し、SEM観察の結果と一致する。
SEMおよびGI−XRDによる結果は、改質されたチタン表面上に対する擬似体液中のHAP形成速度は、未改質チタン表面上に対する擬似体液中のHAP形成速度よりも迅速であることを示している。ゆえに、HBSS中におけるリン酸カルシウム形成性能は、水酸化カルシウムスラリー処理を施すことにより向上するという結論に達した。一般的に、擬似体液中でリン酸カルシウムを迅速に形成できる材料は、生体内において骨に対して活性である。従って、水酸化カルシウムスラリー処理は、チタン表面を骨に対して活性なものに改質できる有望な処理方法であると言える。
[結論]
以上の結果より、水酸化カルシウムスラリー処理を施すことによって、チタン表面に生体活性なチタン酸カルシウム層を簡便且つ安価で形成することができるという、本発明の効果を実証することができた。
本発明に係わる骨適合性チタン材料の製造方法の一実施形態を示す概略工程図である。 比較例として、骨適合性チタン材料の製造方法の一例を示す概略工程図である。 表面改質されたチタン表面に対するXPS−サーベイ・スペクトルを示す図である。 表面改質されたチタン表面におけるチタン、カルシウム、酸素の深さ方向プロファイルを示す図である。 表面改質されたチタン表面に対するGI−XRDパターンを示す図である。 HBSS中に9日間浸漬した後の未処理チタン表面および表面処理済チタン表面のSEM像をそれぞれ示す写真である。 HBSS中に18日間浸漬した後の未改質チタン表面および改質処理済みチタン表面のSEM像をそれぞれ示す写真である。 HBSS中への浸漬前と9日および18日間浸漬後の未改質チタンおよび改質されたチタンに対するGI−XRDパターンを示す図である。
符号の説明
2…粉状の水酸化カルシウム試薬(カルシウム系化合物粉末)
3…蒸留水
4…スラリー状のアルカリ処理剤
5…チタンまたはチタン合金の試料。

Claims (2)

  1. チタンまたはチタン合金の表面にチタン酸カルシウム層を形成してなる骨適合性チタン材料の製造方法であって、
    水酸化カルシウムと蒸留水とを混合して、スラリー状態のアルカリ処理剤を作製する工程と、
    前記スラリー状態のアルカリ処理剤内に前記チタンまたはチタン合金を埋入する工程と、
    前記チタンまたはチタン合金が埋入されたスラリー状態のアルカリ処理剤を大気中で熱処理することにより、前記チタンまたはチタン合金の表面に前記チタン酸カルシウム層を形成する工程と、
    を含むことを特徴とする骨適合性チタン材料の製造方法。
  2. 請求項1記載の骨適合性チタン材料の製造方法において、
    前記スラリー状態のアルカリ処理剤内に前記チタンまたはチタン合金を埋入する前に、酸性水溶液で前処理を行う工程を更に含むことを特徴とする骨適合性チタン材料の製造方法
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