JP5356636B2 - Gタンパク質共役型受容体(gpcr)のアゴニストおよびアンタゴニスト、および、それらを用いてgpcrを活性化および阻害する方法 - Google Patents

Gタンパク質共役型受容体(gpcr)のアゴニストおよびアンタゴニスト、および、それらを用いてgpcrを活性化および阻害する方法 Download PDF

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Description

合衆国により資金を提供された研究に関する記述
本発明は、国立医療研究所補助金第R01HL64701号および同第R01HL57905号の下に、米国政府の支援によって行われた。本発明において、政府は一定の権利を有する。
発明の分野
本発明は、Gタンパク質共役型受容体に広く関連し、特にGタンパク質受容体のアゴニストおよびアンタゴニスト、ならびにそれらを使用する方法に関連する。
発明の背景
様々なホルモン、神経伝達物質および生物学的に活性な物質は、細胞膜に位置する特異的な受容体を介して、生体の機能を調節、制御または調整する。これらの受容体の多くは、受容体が結合されるグアニンヌクレオチド結合タンパク質(以下、Gタンパク質とも呼ばれる)を活性化することにより、細胞内シグナルの伝達を仲介する。そのような受容体は一般に、Gタンパク質共役型受容体と呼ばれる。
Gタンパク質共役型受容体(以下、「GPCR」とも呼ばれる)は、7つの膜貫通ヘリックスドメインである共通の構造モチーフを典型的に共有する、大きな受容体スーパーファミリーを成す。幾つかのGPCRは、7つの膜貫通ヘリックスドメインをもたず、代わりに、エリスロポエチン、EGF、インスリン、インスリン様増殖因子IおよびII、TGFのようなサイトカインの1回膜貫通受容体でありうる、または、潜在的に、Gタンパク質を介した反転シグナル伝達を示すGPIb-V-IXまたはコラーゲン受容体のような、マルチポリペプチド受容体でありうる。GPCRは、細胞の代謝、細胞の増殖および運動性、炎症、神経シグナル伝達、および血液の凝固を調節する、シグナル伝達過程において極めて重要な役割を果たす。Gタンパク質共役型受容体タンパク質はまた、生体の機能を調節、制御または調整する、ホルモン、神経伝達物質および生理活性物質のような分子のための標的として非常に重要な役割を有する。例えば、GPCRは、例えばドパミン、エピネフリン、ヒスタミン、グルタミン(代謝性効果)、アセチルコリン(ムスカリン性効果)、セロトニンのような、生体アミンのための受容体;プロスタグランジン、血小板活性化因子、ロイコトリエンのような、炎症の脂質メディエーターのための受容体;カルシトニン、C5aアナフィラトキシン、ろ胞刺激ホルモン、性腺刺激ホルモン放出ホルモン、ニューロキニン、オキシトシンのような、ペプチドホルモンのための受容体、およびトロンビン、トリプシン、因子VIIa/Xaのような、プロテアーゼのための受容体;ならびに例えば、レチナール光色素、嗅覚刺激分子のような、感覚シグナルメディエーターのための受容体を含む。各分子はそれに特異的な特有の受容体タンパク質をもち、それにより、特異的な標的細胞および標的器官、特異的な薬理学的作用、特異的な作用の強さ、作用時間等を含む個々の生理活性物質の特異性が決定される。ゆえに、GPCRは、薬物の作用および開発のための主要な標的である。
数百個のGタンパク質共役型受容体遺伝子またはcDNAがクローン化されたが、未だに、GPCRと認識されていない、特徴付けされていないGタンパク質共役型受容体がなおも数多く存在すると考えられる。既知のアゴニストを欠くGPCRは、オーファン受容体として知られている。さらに、現在のところ、インビボの条件において調節された仕方で受容体-Gタンパク質結合のメカニズムを直接研究するための有効な戦略がない。受容体とGタンパク質との間の選択的な接触に関する理解、または受容体によるGタンパク質の活性化メカニズムの解明もなされていない。
したがって、当技術分野においては、細胞膜の細胞内表面上の受容体とGタンパク質との間の特定の接触部位を解明し、さらに定義付けるために使用できる戦略、および、受容体-エフェクター境界面を標的とする、新規の治療薬を容易に開発およびスクリーニングするために使用できる一般的な分子的戦略を定義する上で有用な組成物がなおも必要とされている。
発明の概要
本発明は、プロテアーゼ活性化受容体-1(PAR1)、PAR2、およびPAR4の第三の細胞内ループに由来するペプチドへの疎水性部分の接着によって、受容体Gタンパク質シグナル伝達の完全なアゴニストおよび/またはアンタゴニストが与えられるという発見に基づく。これらの修飾ペプチド(ペプデューシンと呼ばれる)は、それらの同族受容体について優れた選択性を示す。さらに、CCKB、CCKA、SSTR2およびMC4についてのペプデューシンは、それら自身の受容体についての部分的なアゴニストおよび/またはアンタゴニストである。脂質化細胞外ループペプチドはPAR1に対する細胞外リガンドの完全なアンタゴニストであることが見出された。そのため、これらの新規の分子試薬は、広範囲の、既知および無知のいずれのGPCRに対しても適用できると思われる。
本発明のある局面は、キメラポリペプチドを目指すものである。これらのポリペプチドは、Gタンパク質共役型受容体(GPCR)の細胞外部分または細胞内部分のいずれかである1つの第一のドメイン、および、第一のドメインに接着した少なくとも1つの第二のドメインを有する。第二のドメインは、天然または非天然のいずれかにて生じる疎水性部分である。さらに、第一のドメインは、GPCRの天然の細胞外リガンドを含まない。
ある態様において、第二のドメインは、第一のドメインの1つの末端、または内部位置において接着しうる。第二のドメインおよび第三のドメインの両方が存在する場合、それらは両末端において、または第一のドメイン内の内部位置において、交換可能に接着しうる。
好ましい態様において、疎水性部分は脂質部分またはアミノ酸部分のいずれかである。同様に好ましくは、疎水性部分が、リン脂質、ステロイド、スフィンゴシン、セラミド、オクチルグリシン、2-シクロヘキシルアラニン、ベンゾリルフェニルアラニン、プロピオノイル(C3);ブタノイル(C4);ペンタノイル(C5);カプロイル(C6);ヘプタノイル(C7);カプリロイル(C8);ノナノイル(C9);カプリル(C10);ウンデカノイル(C11);ラウロイル(C12);トリデカノイル(C13);ミリストイル(C14);ペンタデカノイル(C15);パルミトイル(C16);フタノイル((CH3)4);ヘプタデカノイル(C17);ステアロイル(C18);ノナデカノイル(C19);アラキドイル(C20);ヘニコサノイル(C21);ベヘノイル(C22);トルシサノイル(C23);およびリグノセロイル(C24)からなる群より選択され、疎水性部分は、アミド結合、スルフヒドリル、アミン、アルコール、フェノール基、または炭素-炭素結合によって、キメラポリペプチドに接着している。同様に、疎水性部分は、GPCRの膜貫通ドメイン5もしくはその断片、またはパルミチン酸部分のいずれかである。
別の態様においては、細胞外部分が、Gタンパク質共役型受容体の第一の細胞外ドメインまたはその断片、第二の細胞外ループまたはその断片、第三の細胞外ループまたはその断片、および第四細胞外ループまたはその断片からなる群より選択される。
なおもその他の態様においては、細胞内部分が、Gタンパク質共役型受容体の第一の細胞内ループまたはその断片、第二の細胞内ループまたはその断片、第三の細胞内ループまたはその断片、および第四細胞内ドメインまたはその断片からなる群より選択される。好ましくは、細胞内部分は、サイトカインGPCRの1回膜貫通ドメインGタンパク質共役型受容体の細胞内ドメインもしくはその断片、またはGPIb/V/IX受容体もしくはコラーゲン受容体のようなマルチポリペプチドGPCRの細胞内ドメインからなる群より選択される。
ある局面において、GPCRの細胞外部分または細胞内部分は、少なくとも3つの連続したアミノ酸残基であり、より好ましくは、少なくとも5つの連続したアミノ酸残基である。
好ましい態様において、細胞内部分は、GPCRの第三の細胞内ループを含む。より好ましい態様において、細胞内部分は、第三の細胞内ループの少なくとも7つの連続したアミノ酸残基である。とりわけ、細胞内部分が、TM5またはその断片のようなGPCR 膜貫通ドメインの少なくとも7つ、好ましくは14個のアミノ酸残基であることが好ましい。
Gタンパク質共役型受容体またその断片は、限定はしないが、黄体形成ホルモン受容体、ろ胞刺激ホルモン受容体、甲状腺刺激ホルモン受容体、カルシトニン受容体、グルカゴン受容体、グルカゴン様ペプチド1受容体(GLP-1)、代謝性グルタミン酸受容体、副甲状腺ホルモン受容体、血管作用性腸管ペプチド受容体、セクレチン受容体、成長ホルモン放出因子(GRF)受容体、プロテアーゼ活性化受容体(PAR)、コレシストキニン受容体、ソマトスタチン受容体、メラノコルチン受容体、ADP受容体、アデノシン受容体、トロンボキサン受容体、血小板活性化因子受容体、アドレナリン受容体、5-HT受容体、CXCR4、CCR5、ケモカイン受容体、神経ペプチド受容体、オピオイド受容体、エリスロポエチン受容体、フォン・ヴィレブランド受容体、副甲状腺ホルモン(PTH)受容体、血管作用性腸管ペプチド(VIP)受容体、およびコラーゲン受容体を含む、既知のまたは未知の、任意のGPCRから選択できる。
その他の局面において、本発明は、請求項1記載のポリペプチドをコードする核酸を目指すものである。これらの核酸は、その後組換えベクターに導入でき、その後いかなる種類の宿主細胞を形質転換するために使用できる。
本発明はまた、受容体を発現するのに十分な条件下において、説明されるように宿主細胞を培養することにより、本発明に従ったペプチドの任意のものを生産する方法を具体化する。
さらに別の局面において、本発明は、GPCRの異常な発現または異常な生理学的相互作用に関連する病状の治療に使用するための、可能性のある治療剤を同定するための方法を含む。本方法は、GPCR、またはGPCRに起因する特性もしくは機能を有する細胞を提供する段階、候補物質を含む組成物と細胞とを接触させる段階、請求項1記載のキメラポリペプチドを含む組成物と細胞とを接触させる段階、および候補物質を含む組成物がGPCRに起因する特性もしくは機能を変化させるかどうかを決定する段階を含む。したがって、その物質の存在下において認められる変化が、その物質を含まない組成物に細胞を接触させた場合に認められない場合、その物質は可能性のある治療剤として同定される。
本発明はまた、本発明のポリペプチドが、対象における病状を治療または予防するのに十分な量を、そのような治療または予防が望ましい対象に投与する、GPCRに関連する病状を治療または予防する方法を含む。好ましくは、対象はヒトである。本発明にはまた、本発明の任意のポリペプチドおよび/または核酸と、薬学的に許容される担体とを含む薬学的組成物も含まれる。本発明はまた、薬学的組成物を含むキットをも含む。
したがって、本発明は、GPCRの活性の調節物質をスクリーニングするための方法をも含む。本方法は、望ましいGPCRを発現する第一の試験動物個体に試験化合物を投与する段階、第二の試験動物個体に請求項1記載のポリペプチドを投与する段階、第一の試験動物個体における試験化合物の活性と、第二の試験動物個体におけるポリペプチドの活性とを測定する段階、および第二の試験動物個体におけるポリペプチドの活性と、第一の試験動物個体における試験化合物の活性と、ポリペプチドを投与されていない対照動物個体における望ましいGPCRの活性とを比較する段階を含む。ゆえに、第二の試験動物個体および対照動物個体の双方と比較した、第一の試験動物個体におけるポリペプチドの活性が変化することによって、試験化合物が、GPCRの調節物質、アゴニストまたはアンタゴニストであると示される。
本発明は、本発明の任意のポリペプチドまたは核酸の投与によって、哺乳動物における病理学的状態を治療する方法をさらに含む。
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明および特許請求の範囲から明らかとなる。
発明の詳細な説明
本発明は、細胞を貫通する膜繋留ペプチドを用いて細胞内受容体-Gタンパク質境界面を選択的に標的指向する考え方に部分的に基づく。これらのペプチドは、Gタンパク質受容体またはその断片への疎水性部分の接着を通して、膜に繋留される。これらの修飾ペプチド(ペプデューシンと呼ばれる)は、活性のためにそれらの同族受容体の存在を必要とし、受容体タイプについて高度に選択的である。これは、Gタンパク質シグナル伝達に対して受容体特異的かつ受容体依存的な効果を示す細胞内試薬についての最初の報告である。
Gタンパク質共役型受容体
Gタンパク質共役型受容体(GPCR)のファミリーは、少なくとも250個の構成要因を有する(Straderら, FASEB J., 9:745〜754, 1995;Straderら, Annu. Rev. Biochem., 63:101〜32, 1994)。ヒトの遺伝子の1パーセントがGPCRをコードしうることが評価された。GPCRは、光子、小さな生体アミン(即ち、エピネフリンおよびヒスタミン)、ペプチド(即ち、IL-8)から、大きな糖タンパク質ホルモン(即ち、副甲状腺ホルモン)まで、広範囲に渡る多様なリガンドに結合する。リガンドとの結合後、GPCRは、グアニンヌクレオチド結合タンパク質(Gタンパク質)を活性化することにより、細胞内シグナル伝達経路を制御する。興味深いことに、GPCRは、ヒトサイトメガロウイルスおよびヘルペスウイルスにおいて機能的相同体を有し、このことにより、ウイルス病原論における進化の間に、GPCRが獲得された可能性が示唆される(Straderら, FASEB J., 9:745〜754, 1995;Arvanitakisら, Nature, 385:347〜350, 1997;Murphy, Annu. Rev. Immunol. 12:593〜633, 1994)。
これまでに知られているほとんどのGPCRの特徴は、疎水性アミノ酸残基の7つのクラスターが一次構造に位置し、細胞膜をその各領域において通過する(またがる)ことである(図1A)。ドメインは、3つの細胞内ループ、3つの細胞外ループ、およびアミノ末端ドメインおよびカルボキシル末端ドメインによって連結された膜貫通α-ヘリックスを表すものと考えられる(K. Palczewskiら, Science289, 739〜45(2000))。ほとんどのGPCRは、機能的なタンパク質構造を安定化すると考えられるジスルフィド結合を形成する、最初の2つの細胞外ループの各々に、1つの保存されたシステイン残基を有する。7つの膜貫通領域は、TM1、TM2、TM3、TM4、TM5、TM6、およびTM7と呼ばれる。上記に詳細を述べられたこれらの構造がGタンパク質共役型受容体タンパク質の間に共通であること、および、タンパク質が膜を通過する領域に相当するアミノ酸配列(膜にまたがる領域または膜貫通領域)および膜にまたがる領域近くのアミノ酸配列が受容体間においてしばしば高度に保存されていることはよく知られている。ゆえに、GPCRにおける高度の相同性により、新規のGPCRを同定すること、および、そのような新規のメンバーの、細胞内部分および細胞外部分の両方を同定することは、当業者によって容易に成し遂げられる。例として、参照として本明細書に組み入れられる、ワトソン(Watson)およびアーキンストール(Arkinstall)(1994)の著書では、50個を超えるGPCRの配列が提供される。本書ではさらに、各配列について、膜貫通ドメインの各々を含む正確な残基が説明される。
Gタンパク質共役型受容体の小さなリガンドのための結合部位は、細胞外表面近くに位置し、幾つかのGタンパク質共役型受容体膜貫通ドメインによって形成される親水性ソケットを含み、ソケットはGタンパク質共役型受容体の疎水性残基に囲まれていると考えられる。各々のGタンパク質共役型受容体膜貫通ヘリックスの親水性側は、内側を向き、極性リガンド結合部位を形成すると仮定される。TM3は、幾つかのGタンパク質共役型受容体において、例えばTM3 アスパラギン酸残基を含むように、リガンド結合部位を有することが暗示された。さらに、TM5のセリン、TM6のアスパラギンおよび、TM6またはTM7のフェニルアラニンまたはチロシンも、リガンド結合に関与している。ペプチドホルモン受容体、および糖タンパク質(LH、FSH、hCG、TSH)のような他のより大きなリガンドをもつ受容体、およびCa2+/グルタミン酸/GABAクラスの受容体のためのリガンド結合部位は、細胞外ドメインおよびループにある可能性が高い。
不活性型受容体から活性型受容体への転換についての重要な事象は、7つの膜貫通ヘリックスをもつGPCRの、膜貫通ヘリックス3(TM3)および6(TM6)の、リガンド誘導の立体構造変化である(U. Gether, B. K. Kolbilka, J. Biol. Chem. 273, 17979〜17982(1998))。これらのヘリックスの行動は次に、受容体の細胞内ループの立体構造を変化させ、関連ヘテロ三量体Gタンパク質の活性化を促進する。突然変異誘発研究(S. Cotecchia, J. Ostrowski, M. A. Kjelsberg, M. G. Caron, R. J. Lefkowitz, J. Biol. Chem. 267, 1633〜1639(1992);E. Kostenis, B. R. Conklin, J,Wess, Biochemistry 36, 1487〜1495(1997);M. A. Kjelsberg, S. Cotecchia, J. Ostrowski, M. G. Caron, R. J. Lefkowitz, J. Biol. Chem. 267, 1430〜1433(1992))により、第三の細胞内ループ(i3)が、受容体とGタンパク質との間の結合の大部分を仲介することが示された。ミニジーンとして発現したi3ループも、Gq結合についてアドレナリン受容体と直接競合すること(L. M. Luttrell, J. Ostrowski, S. Cotecchia, H. Kendal, R. J. Lefkowitz, Science 259, 1453〜1457(1993))、または、細胞不含の条件下において、Gタンパク質を可溶性ペプチドとして活性化できること(T. Okamotoら, Cell 67, 723〜730(1991))が示されている。
発明の利点
本発明に従ったペプデューシンに関するアプローチにより、新たな治療剤の作製、およびインビボの条件下における受容体-Gタンパク質結合のメカニズムの説明の双方のために、多様性に富む細胞内受容体構造が開発される。本戦略はまた、ペプデューシンがGタンパク質よりも主に受容体を標的とする限り、より選択的であることが分かる。さらに、ゲノム的アプローチおよび遺伝学的アプローチによって、多くの受容体が様々な疾患の過程において重要であることが確認されたが、これらは既知のリガンドをもたない(いわゆるオーファン受容体)。これらの受容体に合わせて作製されるペプデューシンのアゴニストおよびアンタゴニストを潜在的に開発でき、その天然の環境の状況において、どのシグナル伝達経路がオーファン受容体によって活性化されるのかを決定できる。ゆえに、このポストゲノム時代においては、膜タンパク質を標的指向するのに、ペプデューシンアプローチが広く適用でき、これまでは従来的な分子技術に従っていなかった系において、新たな実験の道が切り開かれる可能性がある。
発明の概要
本発明は、完全な細胞の脂質二重層に入りこみ、および脂質二重層を横断してペプチドを分割する、N末端の疎水性膜貫通残基をもつi3ループペプチド(図1A)の作製に基づく。疎水性残基はまた、ペプチドを脂質二重層に固定し、受容体-Gタンパク質境界面のような可能性のある標的についての有効モル濃度を増加する役割を果たす。適切に結合した場合、外来性i3ペプチドはその後、受容体-Gタンパク質相互作用を混乱させ、シグナル伝達の活性化および/または阻害を引き起こす。ゆえに、本明細書において詳細を述べられる方法および組成物、および実験により、細胞を貫通する膜繋留ペプチドを用いて細胞内受容体-Gタンパク質境界面を選択的に標的指向することによって、Gタンパク質受容体シグナル伝達のアゴニストまたはアンタゴニストがもたらされることが示される。とりわけ、パルミチン酸基のような疎水性部分の、プロテアーゼ活性化受容体-1(PAR1)、PAR2およびPAR4の第三の細胞内ループに由来するペプチドへの接着により、Gタンパク質受容体シグナル伝達の完全なアゴニストおよび/またはアンタゴニストが与えられる。
さらに、ペプデューシンの、受容体-Gタンパク質シグナル伝達の活性化能および阻害能の両方を説明するために、二相性の、アゴニストの活性化および阻害、およびアンタゴニストの阻害を解決する、二部位メカニズムが提案された(図4E)。ペプデューシンは、その脂質繋留によって、原形質膜を迅速に変換し、膜周辺の境界面において有効な高モル濃度に到達する。ペプデューシンアゴニストは最初に、GPCRの細胞内表面における高親和性部位を占める。結合したアゴニストは、受容体の活性化された状態を安定化または誘導し、関連Gタンパク質をオンにする。この第一の部位が飽和した後、より高い濃度のペプデューシンは、親和性のより低い第二のの阻害性部位を占有し始め、おそらくGタンパク質と受容体i3-ループの基底状態の相互作用を模倣することにより、Gタンパク質へのシグナル運搬を優先的な仕方でブロックする。ペプデューシンアンタゴニストによる阻害は、アゴニストの阻害相と同時に起こるため、アンタゴニストも、この親和性のより低い部位に結合する可能性がある。ペプデューシンによる受容体の外因的な活性化または阻害は、それにより、ある受容体がその細胞内ループを近傍受容体に与えるような、可能性のある二量体形成様式を反映しうる。EPO受容体のようなサイトカイン/GPCR(Guillardら, J. Biol. Chem. (2001) 276, 2007〜2013)を含む、別個のシグナル伝達特性を生じさせる受容体二量体には幾つかの例がある(G. Milligan, Science 288, 65〜67(2000))が、交差受容体の調整のメカニズムは不明である。
本発明のペプデューシン
7つのGPCR(PAR1、PAR2、PAR4、CCKA、CCKB、SSTR2、MC4)を、それらの同族ペプデューシンによって活性化または阻害される、その能力について試験した。本研究者らは、表1において要約されるように、1〜3マイクロモルのIC50値をもつそれらの同族受容体を用いて、PAR1、PAR2(図4D)、PAR4(図4C〜D)、およびSSTR2「野生型」ペプデューシンについて、完全なアンタゴニスト能を示すことができた。これらのGPCRのうち、本研究者らは、より長いCa2+の一過的な上昇および不可逆的な血小板凝集(Covicら, (2000) Biochemistry 39, 5458)を引き起こす、PAR4の独特の能力を探究するのに適した試薬を開発することへの研究者ら自身の興味により、新たに発見されたPAR4(Kahnら, (1998) Nature 394, 690;Xuら, (1998) PNAS 95, 6642)に最初に焦点を当てた。これまでのところ、PAR4に対する最適な細胞外リガンドは、ミリモルまたは高マイクロモルの親和性で結合し、PAR4阻害剤は報告されていない。図4において、本研究者らは、抗PAR4 ペプデューシン、P4pa1-l5が、PAR4を阻害し、PAR1は阻害しない一方、抗PAR1 ペプデューシン、p1pal-12についてはその逆が正しいことを示す。ゆえに、P4pal-15は、最初に説明された高力価の抗PAR4化合物(血小板においてIC50 = 0.6 マイクロモル)であり、現在、マウスの血管生物学におけるPAR4の役割を説明する支援のために使用されつつある(Covic、Misra、およびKuliopulos、未発表データ)。
非常に興味深いことに、P2pal-21ペプデューシン(図2D)を含む、新たに試験された野生型ペプデューシンのうち6つが、最高でも、最大有効性が12〜35%までの(表1、図7)、それら自身のGPCRに対する部分的なアゴニストにすぎなかった。しかし、本研究者らは、PAR1 ペプデューシン、P1pal-19がPAR2を強固に活性化できる(図2F)ことを以前に示し、このことから、P2pal-21への突然変異の選択的な導入により、PAR2に対する完全なアゴニストが作製されうることが示唆される。PAR1およびPAR2のi3ループの配列比較(図2A)により、幾つかの配列の差異が明らかになった。C末端のリシンのフェニルアラニンへの点突然変異が、PAR2ペプデューシンP2pal-21Fに完全なアゴニスト活性を与える(図2D)という発見は、本発明者らにとって非常に興味深い。このペプデューシンはまた、PAR1をも活性化したが、PAR4やSSTR2は活性化しなかった(図2G)。Lys/ArgのPheへの同様のC末端の点突然変異は、SSTR2およびCCKAのペプデューシンに部分的なアゴニスト活性を与え、CCKBペプデューシンの力価を15倍改善した(表1)。要約すると、この7つの種々のGPCRのスクリーニングにより、本研究者らは、PAR1およびPAR2に対する完全なアゴニスト、MC4、SSTR2、CCKA、およびCCKBに対する部分的なアゴニスト、およびPAR1、PAR2、PAR4およびSSTR2に対する完全なアンタゴニストを示した(表1、図7)。ゆえに、ペプデューシン阻害剤およびアゴニストは、Gq、Gi、GsおよびG12/13に結合できる広範なGPCRに適用できることが予期される。
本発明のGPCRは、ヒトおよび生物体(例えば、モルモット、ラット、マウス、ニワトリ、ウサギ、ブタ、ヒツジ、ウシ、サル、ウイルス、菌類、昆虫、植物、細菌等)の任意の細胞、例えば、脾臓細胞、神経細胞、神経膠細胞、膵ベータ細胞、骨髄細胞、メサンギウム細胞、ランゲルハンス細胞、表皮細胞、上皮細胞、内皮細胞、線維芽細胞、線維細胞、筋細胞、脂肪細胞、免疫細胞(例えばマクロファージ、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞、マスト細胞、好中球、好塩基球、好酸球、白血球、単球等)、巨核球、滑膜細胞、軟骨細胞、骨細胞、骨芽細胞、破骨細胞、乳腺細胞、肝細胞、または間細胞または前駆体細胞、幹細胞またはその癌細胞および同種のもの;ならびにそのような細胞を含む任意の組織、例えば脳、脳の様々な部分(例えば、嗅球、扁桃、大脳の脳幹神経節、海馬、視床、視床下部、視床下核、大脳皮質、髄質、小脳、後頭極、前頭葉、被殻、尾状核、脳梁、黒質等)、脊髄、下垂体、胃、膵臓、腎臓、肝臓、生殖器、甲状腺、胆嚢、骨髄、副腎、皮膚、筋肉、肺、消化管、血管、心臓、胸腺、脾臓、顎下腺、末梢血、末梢血白血球、腸管、前立腺、精巣、睾丸、卵巣、胎盤、子宮、骨、関節、小腸、大腸、骨格筋および同種のもの、特に脳および脳の様々な部分に由来する、任意のポリペプチドが可能である。かつ、ペプチドは、合成ペプチドが可能である、または、実質的にGPCRと同じ活性もしくは構造をもつことが可能である。実質的に同じ活性の例には、リガンド結合活性、シグナル情報伝達活性および同種のものが含まれる。「実質的に同じ」という用語は、それらの活性の性質が互いに等しいことを意味する。したがって、リガンド結合活性およびシグナル情報伝達活性の程度のような量的な要素は、互いに異なりうる。
本発明のポリペプチド
本発明のGPCRペプチドには、近傍の膜貫通アミノ酸を含むGPCR細胞外ループ/ドメインからなる、任意の既知のまたは未知のGPCR様ペプチドが含まれ、天然の細胞外リガンド、および近傍の膜貫通アミノ酸を含む細胞内ループ/ドメインは含まれない。GPCRペプチドの膜貫通アミノ酸は、ある場合においては他の疎水性アミノ酸残基に置換できる。本発明はまた、そのGPCR様活性および生理学的機能を維持する突然変異体または変異GPCRペプチド、あるいはそれらの機能的断片を含む。ある態様においては、突然変異体または変異ペプチドにおいて、25%までの、またはそれ以上の残基をそのように変化させることができる。ある態様においては、本発明に従ったGPCRペプチドは、成熟ポリペプチドである。
一般に、GPCR様機能を保存するGPCR様変異体には、配列の特定の位置における残基が他のアミノ酸に置換された任意の変異体が含まれ、親タンパク質の2つの残基間に付加的な残基を挿入する可能性、および親配列から1つまたはそれ以上の残基を欠失する可能性がさらに含まれる。任意のアミノ酸の置換、挿入、または欠失は本発明に包含される。好都合な状況においては、置換は上記に定義付けされるような保存的置換である。
本発明のある局面は、単離されたGPCRペプチド、および生物学的に活性なその部分、またはその誘導体、断片、類似体もしくは相同体に関係する。抗GPCR抗体を生じさせるための免疫原としての使用に適したポリペプチド断片もまた提供される。ある態様においては、天然のGPCRペプチドは、標準的なタンパク質精製技術を用いた適切な精製法によって細胞または組織源から単離できる。その他の態様においては、GPCRペプチドは、組換えDNA技術によって生産される。組換え発現の代わりに、GPCRペプチドまたはポリペプチドは、標準的なペプチド合成技術を用いて化学的に合成できる。
「単離された」もしくは「精製された」ペプチド、または生物学的に活性なその部分は、そのGPCRペプチドが由来する細胞もしくは組織源からの細胞材料または他の混入タンパク質を実質的に含まない、あるいは化学合成された場合には、化学前駆物質または他の化学物質を実質的に含まない。「細胞材料を実質的に含まない」という用語には、ペプチドが、それ自身が単離された、または組換え技術により作製された細胞の成分から分離される、GPCRペプチドの調製物が含まれる。ある態様においては、「細胞材料を実質的に含まない」という用語には、約30%(乾燥重量)未満の非GPCRタンパク質(本明細書においては「混入タンパク質」とも呼ばれる)、より好ましくは約20%未満の非GPCRタンパク質、なおもより好ましくは約10%未満の非GPCRタンパク質、および最も好ましくは約5%未満の非GPCRタンパク質を有する、GPCRペプチドの調製物が含まれる。GPCRペプチドまたは生物学的に活性なその部分が組換え技術によって作製される場合、それは同様に、培養培地を実施的に含まないことが好ましく、即ち、培養培地が、ペプチド調製物の容量の約20%未満、より好ましくは約10%未満、および最も好ましくは約5%未満であることが好ましい。
「化学前駆物質または他の化学物質を実質的に含まない」という用語には、ペプチド合成に関与する化学前駆物質または他の化学物質からペプチドが分離される、GPCRペプチド調製物が含まれる。ある態様においては、「化学前駆物質または他の化学物質を実質的に含まない」という用語には、約30%未満(乾燥重量)の化学前駆物質または非GPCR化学物質、より好ましくは約20%未満の化学前駆物質または非GPCR化学物質、なおもより好ましくは約10%未満の化学前駆物質または非GPCR化学物質、および最も好ましくは約5%未満の化学前駆物質または非GPCR化学物質を有する、GPCRペプチド調製物が含まれる。
本発明のキメラペプチドおよび融合ペプチド
本発明は、GPCRに基づくキメラペプチドまたは融合ペプチド(即ちペプデューシン)を提供する。本明細書において使用されるように、GPCR「キメラペプチド」または「融合ペプチドまたはペプデューシン」は、非GPCR疎水性部分に操作的に連結された、GPCRに由来するペプチド断片を含む。「GPCR由来のペプチド断片」は、天然の細胞外リガンドを含まずに、いかなる既知のまたは未知のGPCRに相当するアミノ酸配列をもつポリペプチドを指す一方、「非GPCR部分」とは、いかなるGPCRタンパク質にも実質的に相同ではない任意の疎水性繋留部分、脂質、ポリペプチドまたは小分子を指す。疎水性繋留部分は、限定はしないが、リン脂質、ステロイド、スフィンゴシン、セラミド、オクチルグリシン、2-シクロヘキシルアラニン、ベンゾリルフェニルアラニン、プロピオノイル(C3);ブタノイル(C4);ペンタノイル(C5);カプロイル(C6);ヘプタノイル(C7);カプリロイル(C8);ノナノイル(C9);カプリル(C10);ウンデカノイル(C11);ラウロイル(C12);トリデカノイル(C13);ミリストイル(C14);ペンタデカノイル(C15);パルミトイル(C16);フタノイル((CH3)4);ヘプタデカノイル(C17);ステアロイル(C18);ノナデカノイル(C19);アラキドイル(C20);ヘニコサノイル(C21);ベヘノイル(C22);トルシサノイル(C23);およびリグノセロイル(C24);のような、任意の脂質またはアシル部分を含んでいてもよく、疎水性部分は、アミド結合、スルフヒドリル、アミン、アルコール、フェノール基、または炭素-炭素結合によってキメラポリペプチドに接着する。同様に、疎水性部分は、GPCRの膜貫通ドメイン5もしくはその断片、またはパルミチン酸部分のいずれかである。
GPCR融合ペプチド内における、GPCR由来のペプチド断片は、天然の細胞外リガンドを含まず、GPCRタンパク質の全部または一部分に一致しうる。ある態様においては、GPCR融合ペプチドは、GPCRタンパク質の生物学的に活性な部分を少なくとも1つ含む。その他の態様においては、GPCR融合ペプチドは、GPCRタンパク質の生物学的に活性な部分を少なくとも2つ含む。非GPCRポリペプチドは、GPCRポリペプチドのN末端および/またはC末端に融合することができる。そのような融合ペプチドは、GPCR活性を調節する化合物についてのスクリーニングアッセイ法(そのようなアッセイ法は下記で詳細に説明する)において、さらに利用できる。
その他の態様において、融合ペプチドは、GST(即ち、グルタチオンS-トランスフェラーゼ)またはHis6-12配列(配列番号:30、31)のC末端にGPCR配列が融合される、GST-GPCR融合ペプチドである。そのような融合ペプチドは、組換えGPCRの安定した生産および精製を容易にすることが可能である。または、融合ペプチドは、縦列に反復した(n = 1〜30)ポリペプチドとして発現し、メチオニンのような、化学的に切断できるアミノ酸リンカーによって分離され、担体タンパク質KSI、およびHis6タグ(配列番号:31)に接着する。これらは、例えば、その全体が本明細書に組み入れられる、米国特許第5,648,244号:「融合ペプチドの生産、精製、切断、および使用(Production, Purification, Cleavage, and Use of Fusion Peptides)」;クリオプロス(Kuliopulos, A)およびウォルシュ(Walsh, C. T.)(1997)にて説明されるように、当業者に既知の方法に従って調製できる。
本発明のGPCRキメラペプチドまたはGPCR融合ペプチドは、標準的な組換え技術によって生産できる。例えば、異なるポリペプチド配列をコードするDNA断片を、例えば連結(ligation)のために平滑末端または付着末端を使用すること、適切な末端を与えるために制限酵素による分解を行うこと、適切に付着末端を補うこと、望ましくない結合を避けるため、適切にアルカリ性ホスファターゼ処理をすること、および酵素による連結を行うことのような、従来技術に従って、共にインフレームで連結される。その他の態様においては、自動合成機を含む従来技術によって融合遺伝子を合成できる。または、キメラ遺伝子配列を生み出すために後にアニールおよび再増幅できる、2つの連続した遺伝子断片間の相補的な突出部を生じさせるアンカープライマーを用いて、遺伝子断片のPCR増幅を実施することができる(例えば、Ausubelら(編)「分子生物学における最新プロトコーノレ(CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY)」,John Wiley & Sons, 1992を参照のこと)。さらに、融合部分を既にコードしている多くの発現ベクターが商品として得られる(例えば、GSTポリペプチド、またはKSI-X-His6)。GPCRをコードする核酸は、融合部分がインフレームでGPCRペプチドに連結されるように、そのような発現ベクターにクローン化できる。
GPCRのアゴニストおよびアンタゴニスト
本発明はまた、GPCRのアゴニスト(模倣物)またはGPCRのアンタゴニストのいずれかとして機能する、GPCRペプチドの変異体に関係する。GPCRペプチドの変異体は、例えばGPCRペプチドの個別の点突然変異または切断(truncation)または挿入のような突然変異誘発によって生み出すことができる。GPCRのアゴニストは、真の細胞外リガンドに刺激されたGPCRの生物活性と実質的に同種のもの、またはそのサブセットを引き出すことができる。GPCRのアンタゴニストは、例えば、GPCR自体、GPCRのリガンド、および関連Gタンパク質を含む細胞シグナル伝達系の下流または上流のメンバーに競合的にまたは非競合的に結合することによって、天然に生じる形態のGPCRの1つまたはそれ以上の活性を阻害できる。ゆえに、限られた機能をもつ変異体を用いた治療によって、特異的な生物学的効果が引き出されうる。ある態様においては、GPCRペプチドの天然に生じる部分の生物活性のサブセットをもつ変異体を用いた対象の治療においては、GPCRペプチドの天然に生じる部分を用いた治療と比較して、対象における副作用がより少ない。
GPCRのアゴニスト(模倣物)またはGPCRのアンタゴニストのいずれかとして機能するGPCRタンパク質の変異体は、GPCRペプチドの突然変異体、切断突然変異体、挿入突然変異体のコンビナトリアル・ライブラリをGPCRのアゴニスト活性またはアンタゴニスト活性についてスクリーニングすることによって同定できる。ある態様においては、GPCRペプチド変異体の多様なライブラリは、核酸レベルにおけるコンビナトリアル配列突然変異誘発によって生み出され、多様な遺伝子ライブラリによってコードされる。GPCRペプチド変異体の多様なライブラリは、例えば、可能性のあるGPCRペプチド配列の縮重(degenerate)セットが、個々のポリペプチドとして、または、(例えばファージディスプレイのために)GPCRペプチド配列のセットをそこに含むより大きな融合タンパク質のセットとして発現可能なように、合成オリゴヌクレオチドの混合物を、遺伝子配列に酵素反応によって連結させることによって作製できる。縮重オリゴヌクレオチド配列から、可能性のあるGPCRペプチド変異体のライブラリを作製するために使用できる様々な方法がある。縮重遺伝子配列の化学的合成は、自動DNA合成機において実施でき、合成遺伝子はその後、適切な発現ベクターに連結できる。遺伝子の縮重セットの使用により、1つの混合物において、可能性のあるGPCRペプチド配列の望ましいセットをコードする全ての配列が与えられる。縮重オリゴヌクレオチドを合成するための方法は、当技術分野において知られている(例えば、Narang(1983) Tetrahedron 39:3;Itakuraら(1984) Annu Rev Biochem 53;323;Itakuraら(1984) Science 198:1056;Ikeら(1983) Nucl Acid Res 11:477 を参照のこと)。
発現ベクター、宿主細胞およびペプデューシン/GPCRペプチドの単離
任意のペプデューシンおよび/またはGPCRペプチドのための発現ベクターは、例えば、(a)本発明のGタンパク質共役型受容体タンパク質をコードするDNAから標的DNA断片を切り出す段階、および(b) 標的DNA断片を適した発現ベクターにおけるプロモーターの下流部位と連結する段階によって作製できる。ベクターは大腸菌(Escherichia coli)に由来するプラスミド(例えば、pBR322、pBR325、pUC12、pUC13等)、枯草菌(Bacillus subtilis)に由来するプラスミド(例えば、pUB110、pTP5、pC194等)、酵母(yast)に由来するプラスミド(例えば、pSH19、pSH15等)、ラムダファージのようなバクテリオファージ、ならびにレトロウイルス、ワクシニアウイルスおよびバキュロウイルスのような動物ウイルスを含みうる。
本発明に従い、遺伝子を発現させるために使用される宿主と適合性がある限り、任意のプロモーターが使用できる。形質転換のための宿主が大腸菌(E. coli)の場合、プロモーターは、好ましくはtrpプロモーター、lacプロモーター、recAプロモーター等である。形質転換のための宿主がバチルス(Bacillus)の場合、プロモーターは、好ましくはSP01プロモーター、SP02プロモーター、penPプロモーター等である。宿主が酵母の場合、プロモーターは、好ましくはPH05プロモーター、PGKプロモーター、GAPプロモーター、ADHプロモーター等である。宿主が動物細胞の場合、プロモーターは、SV40由来のプロモーター、レトロウイルスプロモーター、メタロチオネインプロモーター、熱ショックプロモーター、サイトメガロウイルスプロモーター、SRaプロモーター等が含まれる。エンハンサーは、発現のために有効に利用できる。
さらに、必要とされれば、宿主適合性シグナル配列が、Gタンパク質共役型受容体タンパク質のN末端側に加えられる。宿主が大腸菌の場合、利用可能なシグナル配列は、アルカリホスファターゼシグナル配列、0mpAシグナル配列等を含みうる。宿主がバチルスの場合、シグナル配列は、α-アミラーゼシグナル配列、スブチリシンシグナル配列等を含みうる。宿主が酵母の場合、シグナル配列は、接合因子a シグナル配列、インベルターゼシグナル配列等を含みうる。宿主が動物細胞の場合、シグナル配列は、インスリンシグナル配列、α-インターフェロンシグナル配列、抗体分子シグナル配列等を含みうる。
このように構築された、本発明のGタンパク質共役型受容体タンパク質をコードするDNAを運搬するベクターを用いることによって、形質転換体または形質移入体が作製される。宿主は、例えば、エシェリキア微生物、バチルス微生物、酵母、昆虫細胞、動物細胞等が可能である。エシェリキア微生物およびバチルス微生物の例には、大腸菌K12-DH1(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 第60巻, 160(1968)),JM103(Nucleic Acids Research, 第9巻, 309(1981)), JA221(Journal of Molecular Biology, 第120巻, 517(1978)), HB101(Journal of Molecular Biology, 第41巻, 459(1969)), C600(Genetics, 第39巻, 440(1954))等が含まれる。バチルス微生物の例は、例えば、枯草菌MI114(Gene, 第24巻, 255(1983)), 207〜21(Journal of Biochemistry, 第95巻, 87(1984))等である。酵母は、例えば、サッカロミセス・セレヴィシエ(Saccharomyces serevisiae)AH22、AH22R-、NA87-11A、DKD-5D、20B-12等が可能である。昆虫は、カイコ(Bombyx mori larva)、(Maedaら, Nature, 第315巻, 592(1985))等を含みうる。宿主動物細胞は、例えば、サル由来の細胞系、COS-7、Vero、チャイニーズハムスター卵巣細胞系(CHO細胞)、DHFR遺伝子欠損チャイニーズハムスター細胞系(dhfrCHO細胞)、マウスL細胞、マウス骨髄腫細胞、ヒトFL細胞等が可能である。
使用する宿主細胞によって、そのような細胞に適した標準技術を用いて形質転換が行われる。エシェリキア微生物の形質転換は、例えば、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 第69巻, 2110(1970)、Gene, 第17巻, 107(1982)等において開示されるような方法に従って実施できる。バチルス微生物の形質転換は、例えば、Molecular & General Genetics, 第168巻, 111(1979)等において開示されるような方法に従って実施できる。酵母の形質転換は、例えば、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 第75巻, 1929(1978)等において開示されるような方法に従って実施できる。昆虫細胞は、例えば、Bio/Technology, 6, 47〜55, 1988において開示されるような方法に従って形質転換できる。動物細胞は、例えば、Virology, 第52巻, 456, 1973等において開示されるような方法によって形質転換できる。タンパク質共役型受容体タンパク質をコードするDNAを含む発現ベクターを用いて形質転換される形質転換体または形質移入体は、前述の技術に従って作製される。
宿主がエシェリキア微生物またはバチルス微生物である形質転換体(形質移入体)の培養は、液体培養培地において適切に実施できる。培養培地は、形質転換体の増殖に必要な炭素源、窒素源、ミネラル等を含みうる。炭素源は、グルコース、デキストリン、可溶性デンプン、スクロース等を含みうる。窒素源は、アンモニウム塩、硝酸塩、コーンスティープリカー、ペプトン、カゼイン、肉抽出物、大豆かす、ジャガイモ抽出物等のような、有機または無機の物質を含みうる。ミネラルの例には、塩化カルシウム、リン酸二水素ナトリウム、塩化マグネシウム等を含みうる。酵母、ビタミン、増殖促進因子等を加えることもさらに許容される。培養培地は約5〜約8のpHであることが望ましい。
エシェリキア微生物培養培地は、好ましくは、例えばグルコースおよびカザミノ酸を含むM9培地(Miller, Journal of Experiments in Molecular Genetics, 431〜433, Cold Spring Harbor Laboratory, New York, 1972)である。必要に応じて、培地には、プロモーターの効率を改善するために、3β-インドリルアクリル酸のような薬物を補給できる。宿主がエシェリキアの場合には、培養は通常約15〜43℃にて約3〜24時間行われる。必要とされれば、通気培養および撹拌培養を適用できる。宿主がバチルスの場合には、培養は通常約30〜40℃にて約6〜24時間行われる。必要とされれば、通気培養および撹拌培養の適用もできる。宿主が酵母である形質転換体の場合には、使用される培養培地は、例えば、バークホールダー(Burkholder)最少培地(Bostian, K. L. ら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 第77巻, 4505(1980))、0.5%カザミノ酸を含むSD培地(Bitter, G. A.ら,Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 第81巻, 5330(1984))等を含みうる。培養培地のpHは、約5〜約8に調整されることが好ましい。培養は通常約20〜35℃にて約24〜72時間行われる。必要とされれば、通気培養および撹拌培養を適用できる。宿主が昆虫である形質転換体の場合には、使用される培養培地は、不動態化した(または不動化した)10%のウシ血清および同種の添加物をグレースの昆虫培地(Grace, T. C. C., Nature, 195, 788(1962))に適切に加えることにより得られたものを含みうる。培養培地のpHは、約6.2〜6.4に調整されることが好ましい。培養は通常約27℃にて約3〜5日間行われる。望まれれば、通気培養および撹拌培養を適用できる。宿主が動物細胞である形質転換体の場合には、使用される培養培地は、例えば約5〜23%のウシ胎児血清を含む、MEM培地(Science, 第122巻, 501(1952))、DMEM培地(Virology, 第8巻, 396(1959))、RPMI 1640培地(Journal of the American Medical Association, 第199巻, 519(1967))、199培地(Proceedings of the Society of the Biological Medicine, 第73巻, 1(1950))等を含みうる。pHは約6〜約8であることが好ましい。培養は通常約30〜40℃にて約15〜60時間行われる。必要とされれば、通気培養および撹拌培養を適用できる。
前述の培養からのペプデューシンまたはGPCRペプチドの分離および精製は、本明細書の下記にて説明される方法に従って実施できる。培養した微生物または細胞からペプデューシンまたはGPCRペプチドを抽出するために、微生物または細胞を培養後、既知の方法によって収集し、適切な緩衝溶液中に懸濁し、超音波、リゾチームおよび/または凍結・解凍によって破壊し、その後、遠心法またはろ過によってGタンパク質共役型受容体タンパク質の粗製抽出物が得られる。他の従来的な抽出法または単離法が適用できる。緩衝溶液は、尿素または塩酸グアニジンのようなタンパク質変性物質、またはTriton X-100(登録商標、以下しばしば「TM」と呼ばれる)のような界面活性剤を含みうる。
ペプデューシンまたはGPCRペプチドが培養培地に分泌される場合、培養が完了した後に微生物または細胞から上清液を分離し、その結果得られる上清液を、広く知られた方法によって収集する。ペプデューシンまたはペプチドを含む培養上清液および抽出物は、分離、単離および精製の広く知られた方法を適切に組み合わて精製できる。分離、単離および精製の広く知られた方法は、溶剤を用いた塩析または沈降のような、可溶性を利用する方法、透析、限外ろ過、ゲルろ過およびSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動のような、分子サイズまたは分子量の違いを主に利用する方法、イオン交換クロマトグラフィーのような、荷電における差異を利用する方法、親和性クロマトグラフィーのような特異的親和性を利用する方法、逆相高性能液体クロマトグラフィーのような、疎水性特性の違いを利用する方法、および、等電点電気泳動のような、等電点における差異を利用する方法等を含みうる。
このように得られたペプデューシンまたはGPCRペプチドが遊離(free)形態にある場合、既知の方法またはそれに類似した方法によって、遊離タンパク質をその塩に転換できる。反対に、このように得られたペプデューシンまたはGPCRペプチドが塩形態にある場合、既知の方法またはそれに類似した方法によって、タンパク質塩を遊離形態、またはその任意の他の塩に転換できる。
形質転換体によって作製されたペプデューシンまたはGPCRペプチドは、精製前または精製後に適切なタンパク質修飾酵素の作用によって任意に修飾できる、または、ポリペプチドを部分的にそこから除去できる。タンパク質修飾酵素は、トリプシン、キモトリプシン、アルギニルエンドペプチダーゼ、プロテインキナーゼ、グリコシダーゼ等を含みうる。このように形成されたペプデューシンまたはGPCRペプチドの活性は、リガンドとの結合を実験することによって、または特異的抗体を用いた酵素免疫測定法(enzyme linked immunoassay)によって測定できる。
ポリペプチドライブラリー
さらに、配列をコードするGPCRタンパク質の断片のライブラリーは、GPCRタンパク質の変異体をスクリーニングし、引き続いて選択するために、GPCR断片の様々な群の作成に使用することができる。一つの態様において、およそ分子あたり1度のみニッキングが起こる条件下でGPCRコード配列の二本鎖PCR断片をヌクレアーゼで処理し、その二本鎖DNAを変性し、異なるニックの生成物からのセンス/アンチセンス対を含むことができる二本鎖DNAを形成するようにそのDNAを再生し、S1ヌクレアーゼでの処理により再形成された二重鎖から一本鎖部分を除去し、およびその結果生じた断片ライブラリーを発現ベクターへライゲーションすることにより、コード配列断片のライブラリーを作成することができる。この方法により、GPCRペプチドの様々な大きさのN末端および内部の断片をコードする発現ライブラリーを得ることができる。
点突然変異または切断により形成されるコンビナトリアルライブラリーの遺伝子産物をスクリーニングするため、および選択された性質を有する遺伝子産物を求めてcDNAライブラリーをスクリーニングするためのいくつかの技術は、当技術分野において公知である。そのような技術は、GPCRペプチドのコンビナトリアル突然変異誘発により生成された遺伝子ライブラリーの迅速スクリーニングについて適合させることができる。大きい遺伝子ライブラリーをスクリーニングするための、ハイスループット分析に対応できる最も広く使用されている技術には、典型的には、複製可能な発現ベクターへの遺伝子ライブラリーのクローニング、その結果生じたベクターのライブラリーによる適当な細胞への形質転換、および所望の活性の検出により検出された生成物の遺伝子をコードするベクターが容易に単離される条件下での、コンビナトリアル遺伝子の発現が含まれる。ライブラリーにおいて機能的突然変異の頻度を増加させる新しい技術である、リクルーシブアンサンブル突然変異誘発(Recrusive ensemble mutagenesis、REM)をGPCRペプチド変異体を同定するスクリーニングアッセイ法と組み合わせて使用することができる(ArkinおよびYourvan(1992) PNAS 89:7811-7815; Delgraveら、(1993)Protein Engineering 6:327-331)。
薬学的組成物
本発明のペプデューシンおよびGPCRペプチド(本明細書で「活性化合物」とも呼ばれる)、およびそれらの誘導体、断片、類縁体および相同体を投与に適した薬学的組成物へ組み入れることができる。そのような組成物は典型的には、核酸分子、タンパク質、または抗体および薬学的に許容される担体を含む。本明細書で使用される、「薬学的に許容される担体」とは、薬学的投与に適合性のある、任意のあらゆる溶媒、分散媒、コーティング剤、抗細菌剤および抗真菌剤、等浸透圧の吸収遅滞剤などを含むことを意味する。適する担体は、分野における標準的参考書の、「レミントンの薬学(Remington's Pharmaceutical administration)」の最新版に記載されており、参照として本明細書に組み入れられている。そのような担体または希釈剤の好ましい例は、限定されないが、水、生理食塩水、リンガー溶液、ブドウ糖溶液、および5%ヒト血清アルブミンを含む。リポソーム、乳液、および固定油のような非水性媒質もまた使用することができる。薬学的活性物質のためのそのような媒体および薬剤の使用は当技術分野においてよく知られている。なにか通常の媒体または薬剤が活性化合物と非適合性であるかぎりにおいて以外は、組成物でのそれらの使用も企図される。補足的活性化合物もまた組成物中へ組み入れることができる。
特に、ホスファチジルコリン、コレステロール、およびPEG誘導型ホスファチジルエタノールアミン(PEG-PE)を含む脂質組成物での逆相蒸発法により、有用なリポソームを生成することができる。リポソームを定められた細孔サイズのフィルターを通して押し出し、所望の直径をもつリポソームを得る。化学療法剤(ドキソルビシン等)は選択的にリポソームの中に含まれる。ガビゾン(Gabison)ら、J. National Cancer Inst., 81(19):1484(1989)を参照。
本発明の薬学的組成物は、その予定される投与の経路と適合性があるように調剤される。投与経路の例としては、例えば静脈内、皮内、皮下などの非経口、経口(例えば、吸入法)、経皮的(すなわち、局所の)、経粘膜、および直腸の投与が含まれる。非経口、皮内、または皮下の適用に使用される溶液または懸濁液は、次の成分を含むことができる:注射用水、生理食塩水、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の合成的溶媒のような無菌希釈剤;ベンジルアルコールまたはメチルパラベンのような抗細菌剤;アルコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウムのような抗酸化剤;エチレンジアミン四酢酸(EDTA)のようなキレート剤;酢酸塩、クエン酸塩またはリン酸塩のような緩衝液、および塩化ナトリウムまたはブドウ糖のような張性を調整するための薬剤。非経口用調製物はガラスまたはプラスチック製のアンプル、使い捨ての注射器または複数回投与量用バイアルに封入することができる。
注射可能な使用に適した薬学的組成物は、無菌水性溶液(水溶性)または分散液および無菌粉末を含み、無菌注射可能溶液または分散液が即座に調製される。静脈内投与に関して、適する担体は、生理食塩水、細菌発育阻止水クレモフォールEL(Cremophor EL)(BASF、パージパニー、N.J.)またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を含む。すべての場合において、組成物は無菌でなければならず、かつ容易に注射針を通過できる程度にまで流動性であるべきである。製造および保存の条件下において安定的でなければならず、かつ細菌および菌類のような微生物の汚染活動に対して保護されていなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体性ポリエチレングリコールなど)、およびそれらの適する混合物を含む、溶媒または分散媒が可能である。例えば、レシチンのようなコーティング剤の使用、分散の場合要求される粒子サイズの維持および界面活性剤の使用により、適当な流動性が維持されうる。微生物の活動の予防は、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどの様々な抗細菌剤および抗真菌剤により達成できる。多くの場合、組成物に、例えば、糖、マンニトールやソルビトールのようなポリアルコール、塩化ナトリウムの等浸透圧剤を含むことが好ましい。注射可能な組成物の吸収を遅くするには、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンのような吸収を遅らせる薬剤を組成物に含めることにより達成できる。
無菌の注射可能な溶液は、適切な溶媒に、上記に列挙した成分の1つまたは組み合わせと共に、必要量の活性化合物(例えば、GPCRペプチドまたは抗GPCRペプチド抗体)を混合し、必要な場合には、続いてろ過滅菌を行うことにより調製できる。一般的に、分散液は、基本的な分散媒および上記列挙したものから必要とされる他の成分を含む無菌媒質へ活性化合物を混合することにより調製される。無菌注射可能溶液の調製のための無菌粉末の場合、調製方法は、あらかじめろ過滅菌された溶液から、活性成分と任意の付加的所望成分の粉末とを得る、真空乾燥および凍結乾燥である。
経口的組成物は、一般的に、不活性の希釈剤または食用に適する担体を含む。それらはゼラチンカプセルに封入させるまたは錠剤へ圧縮させることができる。経口の治療的投与の目的のために、活性化合物は、賦形剤と混合され、錠剤、トローチ、またはカプセルの形で使用することができる。経口的組成物はまた、うがい薬としての使用のために流動性担体を使って調製することができ、流動性担体中の化合物を経口で適用し、容器から出して(swish)、そして吐くまたは飲み込む。薬学的適合性結合剤、および/またはアジュバント材を組成物の一部として含むことができる。錠剤、丸薬、カプセル、トローチなどには、下記の成分、または類似した性質の化合物の任意のものが含まれうる:微晶質のセルロース、トラガカントゴムまたはゼラチンのような結合剤;デンプンまたは乳糖のような賦形剤、アルギン酸、プリモーゲル(Primogel)、またはコーンスターチのような分解剤;ステアリン酸マグネシウムまたはステローテス(Sterotes)のような潤滑剤;コロイド状二酸化珪素のような流動促進剤(glidant);ショ糖またはサッカリンのような甘味剤;またはペパーミント、サリチル酸メチル、またはオレンジ香料のような着香剤。
吸入による投与に関して、化合物は、例えば、二酸化炭素のようなガスの適した高圧ガスを含む圧縮された容器もしくはディスペンサー、またはネブライザーからエアゾール噴霧の形で送達される。
全身性投与はまた、経粘膜的または経皮的方法によっても可能である。経粘膜的または経皮的投与に関して、浸透するバリアに対して適切な浸透剤を調剤に使用する。そのような浸透剤は、一般的に当技術分野において公知であり、例えば、経粘膜的投与については、界面活性剤、胆汁酸塩、およびフシジン酸を含む。経粘膜的投与はまた、鼻スプレーまたは坐剤の使用によっても達成することができる。経皮的投与に関して、活性化合物は、一般的に当技術分野において公知であるような軟膏、膏薬、ゲル、またはクリームに調剤される。
化合物はまた、坐剤(例えば、ココアバターおよび他のグリセリドのような通常の坐剤基剤ととも)または直腸送達のための滞留浣腸剤の形にも調製することができる。
一つの態様において、活性化合物は、インプラントおよびマイクロカプセル化送達システムを含めて、徐放性製剤のように、体からの急速な排出に対してその化合物を保護する担体とともに調製される。エチレンビニル酢酸、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸のような、生分解性の、生体適合性のポリマーを使用することができる。そのような調剤の調製の方法は、当業者にとって明らかであると思われる。材料はまた、商業的にアルザ社(Alza Corporation)およびノバファーマシューティカルズ社(Nova Pharmaceuticals, Inc.)から入手できる。リポソームの懸濁液(ウイルス性抗原に対するモノクローナル抗体で感染細胞へ標的されるリポソームを含む)はまた、薬学的に許容される担体としても使用することができる。これらは、例えば、米国特許第4,522,811号に記載されているように、当業者に公知の方法にしたがって調製することができる。
経口または非経口の組成物を投与の簡便性および投与量の均一性のために投与量単位形態で調剤することが特に都合がよい。本明細書で使用される投与量単位形態とは、治療される対象に対して単位量を投与するのに適している物理的に別々の単位群を指す;各単位は、必要とされる薬学的担体と共同して、所望の治療的効果を生じるように計算された活性化合物の予定量を含む。本発明の投与量単位形態について特定化するには、活性化合物固有の性質および達成されるべき特定の治療効果、およびそのような個体の治療のための活性化合物を合成する分野における本来の制限により、かつ直接的に依存して決定される。
本発明の核酸分子は、ベクターへ挿入されて、遺伝子治療ベクターとして使用することができる。遺伝子治療ベクターは、例えば、静脈内注射、局所投与(例えば、米国特許第5,328,470号を参照)、または定位の注入(Chenら、1994 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:3054-3057を参照)により、対象へ送達することができる。遺伝子治療ベクターの薬学的調製物は、許容できる希釈剤中の遺伝子治療ベクターを含む、または遺伝子送達媒質が包埋されている緩徐放出性の基剤を含むことができる。または、例えば、レトロウイルスベクターなどの完全な遺伝子送達ベクターを組換え細胞から無傷で製造することができる、遺伝子送達系を産生する1つまたはそれ以上の細胞を薬学的調製物に含めることができる。
本明細書で開示されているスクリーニングアッセイ法により同定されたペプデューシンおよびGPCRペプチドは、薬学的組成物の形態で、様々な疾患の治療のために投与することができる。そのような組成物を調製することに関連する原理および考察は、成分の選択における手引きと同様に、例えば、レミントン(Remington)、「調剤の科学と実践(The Science And Practice Of Pharmacy)」19版(アルフォンソ R. ゲナロ(Alfonso R. Gennaro)ら編)、マック出版社(Mack Pub. Co.)、イーストン、Pa.、1995;「薬剤吸収促進:概念、可能性、制限と傾向(Drug Absorption Enhancement: Concepts, Possibilities, Limitations, And Trends)」、ハルウッドアカデミックパブリッシャーズ(Harwood Academic Publishers)、ラングホーン、Pa.、1994;および「ペプチドとタンパク質薬剤送達(Peptide And Protein Drug Delivery)」(Advances In Parenteral Sciences、4巻)、1991、M. デッカー(M. Dekker)、ニューヨーク、に提供されている。本明細書での調剤はまた、特別な徴候を治療するために必要な場合に、1つより多い活性化合物を含むことができ、好ましくは、それらはお互い反対に作用しない補完的活性を有するものである。または、あるいは追加として、組成物は、例えば、細胞障害性薬剤、サイトカイン、化学療法剤、または成長抑制剤のような、その作用を増強する薬剤を含むことができる。そのような分子は、その意図される目的に有効な量で適切に組合わされて存在する。活性成分はまた、例えば、コアセルベーション技術または界面重合化により調製されるマイクロカプセル、例えば、ヒドロキシメチルセルロースマイクロカプセルまたはゼラチンマイクロカプセル、およびポリ-(メチルメタアクリル酸)マイクロカプセル中に包み込むことができ、コロイド状薬剤送達システム(例えば、リポソーム、アルブミン微粒子、マイクロ乳性基い液、ナノ粒子、およびナノカプセル)中、またはマクロ乳濁液中に包み込むことができる。
インビボの投与に使用されうる調剤は、無菌でなければならない。これは、無菌ろ過膜を通すろ過によって容易に達成できる。
徐放性製剤を調製することができる。徐放性製剤の適当な例には、抗体を含む固体疎水性重合体の半透性基剤を含み、その基剤は例えば、フィルムまたはマイクロカプセルなどの成形物の形である。徐放性基剤の例には、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2-ヒドロキシエチル-メタアクリル酸)、またはポリ(ビニルアルコール))、ポリ乳酸(米国特許第3,773,919号)、L-グルタミン酸とエチル-L-グルタミン酸との共重合体、非分解性エチレン-ビニル酢酸、LUPRON DEPOT(登録商標)(乳酸-グリコール酸共重合体および酢酸ロイプロリドから構成される注射可能な微粒子)のような分解性乳酸-グリコール酸共重合体、およびポリ-D-(−)-3-ヒドロキシ酪酸を含む。エチレン-ビニル酢酸および乳酸-グリコール酸のような重合体では100日間を越える分子の放出が可能であるが、あるヒドロゲルではより短い期間においてタンパク質が放出される。
薬学的組成物は、投与のための使用説明書と共に、容器、パック、またはディスペンサーに含有させることができる。
スクリーニングおよび検出方法
本発明の単離された核酸分子は、下にさらに記載されているように、GPCRペプチドを発現する(例えば、遺伝子治療への適用において、宿主細胞の組換え発現ベクターにより)、GPCR mRNA(例えば、生体試料中の)またはGPCR遺伝子における遺伝子損傷を検出する、およびGPCR活性を調節するために使用することができる。さらに、GPCRペプチドは、GPCRタンパク質の不足もしくは過剰な生成、またはGPCR野生型タンパク質と比較して減少もしくは異常型の活性を有するGPCRタンパク質型の生成により特徴づけられる疾患を治療することはもちろんのこと、GPCR活性または発現を調節する薬剤または化合物をスクリーニングするために使用することができる。さらに、本発明の抗GPCRペプチド抗体は、GPCRペプチドを検出および単離する、ならびにGPCR活性を調節するために使用することができる。例えば、GPCR活性は、成長と分化、代謝調節、走化性、血液凝固、抗体産生、腫瘍増殖と浸潤を含む。
本発明は、さらに、本明細書で記載されているスクリーニングアッセイ法により同定された新規薬剤および記載されているように(上記参照)治療のためのそれらの使用に関係している。
スクリーニングアッセイ法
本発明は、GPCRに結合する、または調節物、すなわち、例えばGPCRタンパク質発現またはGPCR活性に刺激的または抑制的効果をもつ、候補または試験の化合物または薬剤(例えば、ペプチド、ペプチド様物質、低分子または他の薬剤)を同定するための方法(本明細書では「スクリーニングアッセイ法」とも呼ばれる)を提供する。本発明はまた、本明細書で記載されているスクリーニングアッセイ法において同定される化合物も含む。
一つの態様において、本発明は、ペプデューシン-GPCR複合体またはそれらの生物学的活性部分の膜結合型に結合するまたはその活性を調節する候補または試験化合物をスクリーニングするためのアッセイ法を提供する。本発明の試験化合物は、生物学的ライブラリー;空間的にアドレスで呼び出し可能な平行固体相または溶液相ライブラリー;逆重畳積分を必要とする合成的ライブラリー法;「1ビーズ1化合物」ライブラリー法;およびアフィニティクロマトグラフィー選択を使用する合成的ライブラリー法を含む当技術分野で公知のコンビナトリアルライブラリー法における多くの方法のうちのいずれかを使って得ることができる。生物学的ライブラリーの方法はペプチドライブラリーに限定されるが、その他の4つの方法はペプチド、非ペプチドオリゴマーまたは低分子の化合物ライブラリーに適用可能である。例えば、ラム(Lam)、1997. Anticancer Drug Design 12:145を参照。
本明細書で使用される「低分子」とは、約5 kDより小さい、かつ最も好ましくは約4 kDより小さい分子量をもつ組成物を指すことを意味する。低分子は、例えば、核酸、ペプチド、ポリペプチド、ペプチド様物質、炭水化物、脂質または他の有機もしくは無機分子でありえる。真菌類、細菌、または藻類の抽出物のような化学的および/または生物学的混合物のライブラリーは当技術分野において公知であり、本発明の任意のアッセイ法でスクリーニングすることができる。
分子ライブラリーの合成のための方法の例は当技術分野において見出すことができ、例えば、DeWittら、1993. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 90:6909; Erbら、1994. Proc. Natl. Acad. Sci U.S.A. 91:11422; Zuckermannら、1994. J. Med. Chem. 37:2678; Choら、1993. Science 261:1303; Carrellら、1994. Angew. Chem Int. Ed. Engl. 33:2059; Carellら、1994. Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 33:2061;およびGallopら、1994. J. Med. Chem. 37:l233において見出される。
化合物のライブラリーは、溶液中(例えば、Houghten, 1992, Biotechniques 13:412-421)、またはビーズ上(Lam, 1991. Nature 354:82-84)、チップ上(Fodor, 1993. Nature 364:555-556)、細菌(Ladner, 米国特許第5,223,409号)、胞子(Ladner, 米国特許第5,233,409号)、プラスミド(Cullら、1992. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 89:1865-1869)もしくはファージ上(ScottおよびSmith, 1990. Science 249:386-390; Devlin, 1990. Science 249:404-406; Cwirlaら、1990. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 87:6378-6382; Felici, 1991. J. Mol. Biol. 222:301-310; Ladner, 米国特許第5,223,409号)で与えられてもよい。
一つの態様において、アッセイ法は、細胞表面にGPCRまたはそれらの生物学的活性部分の膜結合型を発現する細胞にペプデューシンを加えたものを試験化合物に接触させて、GPCRに結合しかつペプデューシンに転置する試験化合物の能力を測定する、細胞に基づいたアッセイ法である。試験化合物は、GPCR標的の、細胞外表面、膜貫通ドメイン、または細胞内表面で結合し、かつペプデューシンのGPCR活性化を抑制または促進できた。細胞は、例えば、哺乳動物起源からのもの、または酵母細胞であることができる。GPCRタンパク質からペプデューシンに転置する試験化合物の能力の測定は、例えば、試験化合物の結合がGPCRまたはそれらの生物学的活性部分からペプデューシンに転置するため、ペプデューシンを放射線同位元素または酵素の標識に結合することにより達成することができる。または、試験化合物を直接的か間接的のいずれかで125I、35S、14Cまたは3Hで標識することができ、そしてペプデューシンがGPCRから放射性標識試験化合物に転置し、遊離の放射性標識試験化合物を放射線の直接的計数またはシンチレーション計数により検出できた。または、試験化合物は、例えば、セイヨウワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、またはルシフェラーゼで酵素標識することができ、そして酵素標識は、ペプデューシンの付加で生じる適切な基質の転化が増加または減少することにより検出することができる。
もう一つの態様において、アッセイ法は、細胞表面にGPCRタンパク質またはそれらの生物学的活性部分の膜結合型を発現する細胞を試験化合物と接触させることと、ペプデューシンのGPCRに対する結合、活性を調節する(例えば、刺激するまたは抑制する)その試験化合物の能力を測定することとを含む細胞に基づいたアッセイ法である。本明細書に使用される時、「標的分子」とは、それと共に現存してGPCRタンパク質が結合するまたは相互に作用する分子であり、例えば、GPCR相互作用タンパク質を発現する細胞表面の分子、第二の細胞表面の分子、細胞外環境における分子、細胞膜の内部表面に関連する分子または細胞質分子である。GPCR標的分子は、非GPCR分子または本発明のGPCRペプチドであってもよい。一つの態様において、GPCR標的分子は、細胞外シグナル(例えば、化合物の膜結合型GPCRへの結合により生じるシグナル)の細胞膜を通って細胞の中への形質導入を容易にする、シグナル形質導入経路の構成要素である。標的は、例えば、触媒活性をもつ第二の細胞内タンパク質または下流シグナル分子のGPCRとの結合を促進するタンパク質であってもよい。
GPCR標的分子と相互作用する試験化合物の能力を測定することは、直接的結合を測定することについての上記の方法の一つにより達成することができる。一つの態様において、試験化合物の、GPCRペプチドとGPCR標的分子との相互作用を抑制する能力を測定することは、標的GPCR-ペプデューシン複合体の活性を測定することにより達成することができる。例えば、GPCR-ペプチドのGPCR標的の細胞性二次メッセンジャー(すなわち、細胞内Ca2+、ジアシルグリセロール、IP3など)の誘導を阻害すること、GPCRの活性化または抑制に依存する触媒/酵素活性を検出すること、リポーター遺伝子(例えばルシフェラーゼなどの検出可能なマーカーをコードする核酸に利用可能に連結されているGPCR反応性調節エレメントを含む)の誘導または抑制を検出すること、細胞の反応、例えば、細胞生存、細胞性分化、または細胞増殖を検出することにより、標的分子の活性を測定することができる。
さらにもう一つの態様において、本発明のアッセイ法は、GPCRペプチドまたはそれらの生物学的活性部分を試験化合物と接触させることと、GPCRまたはそれらの生物学的活性部分に結合する試験化合物の能力を測定することとを含む細胞不含アッセイ法である。試験化合物のGPCRへの結合は、上記のように、直接的または間接的のいずれかで測定することができる。一つのそのような態様において、アッセイ法には、ペプデューシン+GPCRまたはそれらの生物学的活性部分を、GPCRに結合してアッセイ混合物を形成する公知の化合物に接触させることと、そのアッセイ混合物を試験化合物に接触させることと、GPCRタンパク質と相互作用する試験化合物の能力を測定することとが含まれ、GPCRタンパク質と相互作用する試験化合物の能力を測定することによって、その試験化合物の、GPCRまたはそれらの生物学的活性部分に、その公知の化合物と比較して優先的に結合する能力を測定することが含まれる。
なおもう一つの態様において、アッセイ法は、GPCRペプチドまたはそれらの生物学的活性部分を試験化合物に接触させることと、GPCRタンパク質またはそれらの生物学的活性部分の活性を調節する(例えば、刺激するまたは抑制する)試験化合物の能力を測定することとを含む細胞不含アッセイ法である。GPCRの活性を調節する試験化合物の能力を測定することは、直接的結合を測定する上記の方法の1つにより、例えばGPCRペプチドの、GPCR標的分子への結合する能力を測定することにより達成することができる。他の態様において、GPCRペプチドの活性を調節する試験化合物の能力を測定することは、さらにGPCR標的分子を調節するGPCRペプチドの能力を測定することにより、達成することができる。例えば、標的分子の適切な基質における触媒/酵素の活性を上記のように測定することができる。
さらにもう一つの態様において、細胞不含アッセイ法は、GPCRペプチドまたはそれらの生物学的活性部分を、GPCRに結合してアッセイ混合物を形成する公知の化合物に接触させること、そのアッセイ混合物を試験化合物に接触させること、およびGPCRと相互作用する試験化合物の能力を測定することを含み、GPCRと相互作用する試験化合物の能力を測定することによって、GPCRペプチドの、優先的に結合するまたはGPCR標的分子の活性を調節する能力を測定することを含む。
本発明の細胞不含アッセイ法は、GPCRタンパク質の溶解性型または膜結合型のどちらの使用にも対応できる。GPCRタンパク質の膜結合型を含む細胞不含アッセイ法の場合、GPCRタンパク質の膜結合型が溶液中に保持されるように可溶化剤を使用することが望まし場合がある。そのような可溶化剤の例には、n-オクチルグルコシド、n-ドデシルグルコシド、n-ドデシルマルトシド、オクタノイル-N-メチルグルカミド、デカノイル-N-メチルグルカミド、Triton(商標)X-100、Triton(商標)X-114、Thesit(商標)、イソトリデシポリ(エチレングリコールエーテル)n、N-ドデシル-N,N-ジメチル-3-アンモニオ-1-プロパンスルホン酸、3-(3-コラミドプロピル)ジメチルアンミニオール-1-プロパンスルホン酸(CHAPS)、または3-(3-コラミドプロピル)ジメチルアンミニオール-2-ヒドロキシ-1-プロパンスルホン酸(CHAPSO)のような非イオン性界面活性剤を含む。
本発明の上記アッセイ法の一つ以上の態様において、GPCRペプチドまたは標的分子のどちらかを固定化して、タンパク質の1つまたは両方の非複合型から複合型の分離を容易にし、ならびにアッセイ法の自動化に適応させることが望ましい場合がある。試験化合物のGPCRタンパク質への結合、または候補化合物の存在および非存在におけるGPCRタンパク質のペプデューシンとの相互作用は、反応物を入れるために適した任意の容器中で達成することができる。そのような容器の例には、マイクロタイタープレート、試験管、およびマイクロ遠心管を含む。一つの態様において、タンパク質の一つまたは両方を基材に結合させるようなドメインを付加するようにして、融合タンパク質が供給されうる。例えば、GST-GPCR融合ペプチドまたはGST-標的融合タンパク質は、グルタチオンセファロースビーズ(シグマケミカル(Sigma Chemical)、セントルイス、MO)またはグルタチオン誘導マイクロタイタープレート上への吸着が可能になり、その後、試験化合物に、または試験化合物と非吸着性の標的タンパク質もしくはGPCRペプチドのいずれかとに結合され、そしてその混合物は複合体形成の助けとなる条件下(例えば、塩およびpHについての生理学的条件)で、インキュベートされる。インキュベーションに引き続いて、ビーズまたはマイクロタイタープレートウェルを洗浄して、いかなる結合していない成分を除去し、ビーズの場合には基材を固定化し、複合体を、例えば、記載されているように、直接的または間接的のいずれかで測定する(上記参照)。または、複合体を基材から解離させ、GPCRペプチドの結合または活性のレベルを標準的技術を使って測定することができる。
タンパク質を基材上に固定化させる他の技術はまた、本発明のスクリーニングアッセイ法において使用することもできる。例えば、GPCRペプチドまたはその標的分子は、ビオチンおよびストレプトアビジンの結合を利用して固定化させることができる。ビオチン化GPCRペプチドまたは標的分子は、当技術分野内でよく知られている技術を使って、ビオチン-NHS(N-ヒドロキシ-スクシンイミド)から調製することができ(例えば、ビオチン化キット、ピアスケミカルズ(Pierce Chemicals)、ロックフォード、Ill.)、そしてストレプトアビジンでコートされた96ウェルプレート(ピアスケミカルズ)のウェルに固定化される。または、GPCRペプチドまたは標的分子に反応する抗体、ただしGPCRペプチドのその同種のGPCRへの結合を妨げないものを、プレートのウェルへ誘導化することができ、結合されていない標的またはGPCRペプチドを抗体結合によりウェル内へ閉じこめる。そのような複合体を検出する方法は、上記のGST固定化複合体についての方法に加えて、GPCRペプチドまたは標的分子に結合されている酵素の活性を検出することによる酵素結合アッセイ法はもちろんのこと、GPCRペプチドまたは標的分子に反応する抗体を使う複合体の免疫検出法を含む。
もう一つの態様において、GPCRタンパク質発現の調節物質は、細胞を候補化合物に接触させ、かつ細胞におけるGPCRのmRNAまたはタンパク質の発現を測定する方法において同定される。候補化合物の存在下でのGPCRのmRNAまたはタンパク質の発現レベルは、候補化合物の非存在下でのGPCRのmRNAまたはタンパク質の発現レベルと比較される。その後、その候補化合物は、この比較に基づき、GPCRのmRNAまたはタンパク質発現の調節物質として同定することができる。例えば、GPCRのmRNAまたはタンパク質発現が、候補化合物の存在下において、その非存在下においてより多い(換言すれば、統計的に有意に多い)場合、その候補化合物はGPCRのmRNAまたはタンパク質発現の刺激剤として同定される。または、GPCRのmRNAまたはタンパク質発現が、候補化合物の存在下において、その非存在下においてより少ない(統計的に有意に少ない)場合、その候補化合物はGPCRのmRNAまたはタンパク質発現の抑制剤として同定される。細胞におけるGPCRのmRNAまたはタンパク質発現のレベルは、GPCRのmRNAまたはタンパク質を検出することについて本明細書に記載されている方法により測定することができる。
別の意味に定義されているのではないかぎり、本明細書に使用されるすべての技術的および科学的用語は、本発明の当業者により通常に理解されるのと同じ意味をもつ。本明細書に記載されているのと類似または同等の方法および材料は、本発明の実施または試験において使用することができるが、適した方法および材料は以下に記載されている。本発明で挙げられているすべての発行物、特許出願、特許および他の参照文献は、参照として完全に組み入れられている。矛盾する場合には、本明細書は、定義も含めて、調整すると思われる。さらに、材料、方法、および実施例は、ただ例示しているだけであり、限定するものではない。
本発明は、次の非限定的実施例において、さらに明らかにされるであろう。
実施例
実施例1:ペプデューシンの構築
P1-i3-40と呼ばれるi3ペプチドは、PAR1のTM5からの隣接した膜貫通αヘリックスのアミノ酸を含むように構築された。生物学的活性についての最初のスクリーニングとして、P1-i3-40の能力を、細胞内のCa2+をモニターすることにより、血小板の活性化を刺激するその能力について試験した。図1において、本研究に使用されるペプチドの組成物は右側に示され、血小板Ca2+におけるそれらの対応する効果はすぐ下に示されている。健康なボランティア提供者からの血小板は、ゲルろ過クロマトグラフィーにより単離され、Ca2+測定は記載(A. Kuliopulosら、Biochemistry 38, 4572-4585(1999))のように行われた。細胞内Ca2+濃度は、340/380 nmでの蛍光励起強度の比としてモニターされた。血小板に添加される場合、P1-i3-40ペプチドは、トロンビンにより生じるCa2+i応答によく似た、急速な細胞内Ca2+過渡的状態(Ca2+i)を引き起こす(図1B)。Ca2+i過渡的状態は測定不可能な遅滞期(<5 s)をもち、最大Ca2+iは飽和できている。その後、P1-i3-40の段々に切断されている種類の一連はN末端疎水性領域が活性に必要とされるかどうかを決定するために作成された。疎水性N末端領域を完全に欠失しているP1-i3-19ペプチドは、Ca2+流量にほとんど刺激を起こさない(図1B)。7つのN末端疎水性残基をもつP1-i3-26ペプチドは、脂質二層構造体の外側リーフレットのみに分配することを予想されていたものだが、少しの無秩序なCa2+i応答を生じる。対照的に、P1-i3-33ペプチドはP1-i3-40ペプチドと似た力をもち、14個の疎水性アミノ酸残基がi3細胞内ループに完全なインビボでの活性を与えていることを証明している。短い膜転位化配列での研究で、タンパク質(15 kDa〜120 kDa)を無傷の細胞へ(M. Rojas, J. P. Donahue, Z. Tan, Y. -Z. Lin, Nat. Biotech. 16, 370-375(1998))およびマウスの組織へ(S. R. Schwarze, A. Ho, A. Vocero-Akbani, S.F. Dowdy, Science 285, 156-159(1999))転移するためには、11〜12個の疎水性アミノ酸残基で十分であることが示されている。
TM5ヘリックスからのN末端疎水性残基は、その後、パルミチン酸脂質(C16H31O)で置き換えられて、i3ペプチドのサイズを大幅に縮小した。パルミトイル化ペプチドは、C末端アミドで標準的fmoc固相合成方法により合成された。パルミチン酸を50% N-メチルピロリドン/50%塩化メチルに溶解し、ペプチドの脱保護されたN末端アミンへ一晩結合させた。樹脂からの切断後、パルミトイル化ペプチドは、C18またはC4逆相クロマトグラフィーにより、>95%純度まで精製された。図1Bに示されるように、パルミトイル化i3ループペプチド、P1pal-19は、細胞外PAR1リガンド、SFLLRN(配列番号:24)により引き起こされるものと特性において一致する急速なCa2+i過渡的状態を引き起こす。さらに、P1pal-19は8±3マイクロモルのEC50で、完全に血小板凝集を活性化する(図1D)。個々の血小板の凝集痕跡は、指示されたペプチドまたはパルミチン酸の10マイクロモルで刺激され、血小板凝集は、記載のように(L. Covic, A. L. Gresser, A. Kuliopulos, Biochemistry 39, 5458-5467(2000))、37℃で、撹拌された血小板の光透過率(%)としてモニターされた。P1pal-19では、30マイクロモルSFLLRN(配列番号:24)(図1C)に対して続いて起こるCa2+i応答が、PAR1の脱感作のために完全に阻害される。同様に、SFLLRN(配列番号:24)での予備刺激は、血小板のP1pal-19に対して完全に脱感作する。パルミチン酸単独では、Ca2+iおよび血小板凝集に影響は及ぼさない(図1B、図1D)。
パルミトイル化が細胞貫通能力を与えるかどうかを直接的に測定するために、P1-i3-19およびP1pal-19をフルオレセイン(Fluor)で標識し、血小板およびPAR1-Rat1繊維芽細胞とともにインキュベートした。その後、細胞をプロナーゼで処理し細胞外に結合されたペプチドを消化し、そしてフローサイトメトリーで分析した。フローサイトメトリーは、指示されているように、フルオレセイン標識ペプチド、Fluor-Pal-i3(Fluor-P1pal-19)またはFluor-i3(Fluor-P1-i3-19)で処理された血小板またはPAR1を安定的に形質移入されたRat1繊維芽細胞(K. Ishiiら、J. Biol. Chem. 269, 1125-1130(1994))にて行われた。等モル濃度のペプチドおよびフルオレセイン-5-EX-スクシンイミジルエステル(モレキュラープローブズ(Molecular Probes))を2時間、25℃で、DMF/5%トリエチルアミン中で、インキュベートすることにより、i3ペプチドにフルオレセインを結合させた。結合されたペプチド生成物は、逆相クロマトグラフィーを使って反応物から精製された。結合されたペプチドの構成は、質量分析法により確認された。細胞を10マイクロモルのFluor-Pal-i3またはFluor-i3とともに、2分間、PBS/0.1%牛胎児血清中でインキュベートし、その後、2 Uのプロナーゼで15分間、37℃で処理し、そしてフローサイトメトリーの前に洗浄した。図1Eに示されているように、血小板および繊維芽細胞の両方とも、非パルミトイル化のFluor-i3と比較して、Fluor-Pal-i3で処理された場合、強く蛍光性が残っていた。他の研究から、細胞膜の崩壊は、Fluor-i3ではなく、Fluor-Pal-i3でのみで、プロナーゼ消化に対しての保護を排除することを示されており、このように、パルミトイル化のi3ペプチドが膜透過性であることが確認された。
実施例2:組換え系における、PAR1を活性化するペプデューシンの能力の評価
本発明によるペプデューシンの能力をその後、それらの細胞貫通能力について評価した。PAR1は、GqおよびGi(β/γ)の両方に結合して、ヒトPAR1を発現するRat1繊維芽細胞において、ホスホリパーゼC-β(PLC-β)(D. T. Hung, T.-K. H. Vu, V. I. Wheaton, K. Ishii, S. R. Coughlin, J. Clin. Invest. 89, 1350-1353(1992))、イノシトールリン酸(InsP)の生成を刺激する。[3H]-イノシトールリン酸の蓄積は、20 mM LiClの存在において測定された。細胞は、200,000細胞/ウェルで12ウェルプレートへ分配した。[3H]-標識ミオイノシトール(2μCi/mL)を実験24時間前に細胞へ添加した。ウェルを10 mM HEPES緩衝液、pH 7.3を含む2 mL DMEで2回、それから20 mM LiClを含む2 mL PBSで2回すすいだ。細胞は、アゴニストまたは規定濃度のi3ループペプデューシンで30分間刺激され、その後、冷たいメタノールおよびクロロホルムで抽出された。抽出物は、1 mL 陰イオン交換樹脂AG1X8、ギ酸型、100メッシュ〜200メッシュサイズを含むカラム(バイオラッドラボラトリーズ(Bio-Rad Laboratories)、ケンブリッジ、MA)へ注入された。注入後、カラムを10 mL H2Oで2回、および10 mL 60 mM ギ酸アンモニウム/5 mM ボラックス(Borax)で2回洗浄した。カラム画分を4 mL 2 Mギ酸アンモニウム/0.1 M ギ酸で希釈して、7.5 mLシンチレーション反応混液を含むバイアルへ入れ、計数した。二回または三回の測定手段が、刺激されていない細胞の上への折り返し刺激として現されていた。二相のペプデューシンデータは、カレイダグラフ3.05(Kaleidagraph 3.05)を使用する非線形回帰分析により、1つの活性化部位(EC50)および1つの抑制部位(IC50)での2部位の方程式 y=(100/(1+(([ペプチド]/EC50)−n1)))+(100/(1+(([ペプチド]/IC50)−n2)))−n3(n1およびn2は、それぞれ活性化相および抑制相に関するヒル係数であり、n3はΔ最大振幅である)に適合させた。
PAR-1細胞またはPAR2-COS7細胞を1 nMから10〜100?Mまでのi3ペプチドまたはマストパラン
Figure 0005356636
(配列番号:25)で刺激した。PLC-β活性は、全[3H]-イノシトールリン酸(InsP)形成を測定することにより決定された。図2Bおよび図2Cにおいて示されているように、P1pal-19、およびP1pal-19のN末端の6残基を欠失しているP1pal-13は、それぞれ、180±20 nMおよび700±50 nMのEC50値でInsP生成を刺激し、天然アゴニストのトロンビンとよく似た効力をもつ。図Bおよび図Cにおいて、PLC-β活性は、0.1 nMトロンビン(100%)と比較しての完全反応のパーセントに換算し、二相の活性化特性および抑制特性に適合する2部位の方程式を使って、ペプチド濃度の機能としてプロットした。個々の実験に関する完全なPAR1トロンビン反応は、P1pal-13の7.6倍、P1pal-12およびP1pal-7の9.4倍、P1pal-19およびP1pal-19/Rat1単独の12.4倍、P1pal-19Qの18倍、P1pal-19Eの12.4倍、およびマストパラン実験の9.5倍であった。図Cにおいて、P1pal-19を形質移入されていないRat1細胞(Rat1単独)のわずかな刺激は、SFLLRN(配列番号:24)の添加によりこれらの形質移入されていない細胞(図2Fの「RAT1」)に同様の刺激を引き起こすことから、これらの繊維芽細胞において存在する内因性のラットPAR1に帰することができる。
PAR1の活性化カーブは、急勾配の活性化相の後、急勾配の抑制相が続く二相になっている。P1pal-19アゴニストをC末端のP1pal-7および対応するN末端のP1pal-12ペプチドに分割することにより、別々に(図1B、図1D、図2B)またはいっしょに(図1B)に添加する場合、血小板またはPAR1-Rat1細胞において刺激活性の減少を生じる。それゆえ、アゴニスト活性をもつためには、C末端のPAR1ペプデューシン残基301〜313位が隣接していなければならない。COS7細胞はヒト受容体PAR1、PAR2、PAR4、コレシストキニンA(CCKA)、コレシストキニンB(CCKB)、サブスタンスP(Sub-P)、またはラットソマトスタチン受容体(SSTR2)を一過的に形質移入された。形質移入された細胞をP1pal-19、P1pal-13、またはP2pal-21の濃度範囲(0.1マイクロモル〜10マイクロモル)で刺激したが、個々の受容体の最高刺激を黒いカラムで報告している。各受容体に関する最高限度の刺激(白抜きのカラム)を定義するために使用される細胞外アゴニストは、PAR1については10 nMのトロンビン、PAR2については100マイクロモルのSLIGKV(配列番号:17)、PAR4については100 nMのトロンビン、CCKAとCCKBについては300 nMのCCK-8、SSTR2については1マイクロモルの
Figure 0005356636
(配列番号:18)、およびSub-Pについては1.5マイクロモルの
Figure 0005356636
(配列番号:26)である。これらの受容体に対するP1pal-19およびP1pal-13についての完全な活性特性は、補足的材料として含む(補足的情報はサイエンスオンラインのwww.sciencemag.orgで入手可能である)。
重要なことに、P1pal-13もP1pal-19のどちらも、PAR1受容体の非存在では、COS7細胞(図2E、図2F)またはRat1繊維芽細胞(図2C、図2F)において、InsP(約11%)を刺激しない。これらの結果より、細胞貫通ペプチドによるGタンパク質のシグナル伝達の活性化は受容体の存在が要求されることを示している。本発明者らは、Gタンパク質の活性化には必須のものであると以前に示したi3ループペプチドのC末端領域に正荷電した残基(T. Okamotoら、Cell 67, 723-730(1991))が、これらの膜につながれたアゴニストの活性には必要ではないこともまた示した。正電荷の置換は、P1pal-19Qペプチドの効力(図2A)、血小板凝集(図1D)またはPAR-1-Rat1細胞におけるInsPの刺激(図2C)において、たった2倍の損失を生じるのみである。さらに、Gi/oの受容体非依存性の活性化物質である、両親媒性のスズメバチ毒ペプチドマストパラン(T. Higashijima, J. Burnier, E. M. Ross, J. Biol, Chem. 265, 14176-14186(1990))は、PAR1-Rat1細胞においてInsP生成を刺激しなかった(図2C)。このように、ペプチドは、ただ単に、無制御形式でGタンパク質のシグナル伝達を活性化する正荷電の両親媒性ヘリックスとして作用しているだけではない。対照的に、P1pal-19Eペプチドにおいて保存されたより疎水性残基の突然変異体(図2A)は、アゴニスト活性の〜90%損失を生じる(図1D、図2C)。
実施例3:他のGPCRに対するペプデューシンの特異性
インビボでの試薬として有用であるこれらのPAR1由来のi3ペプチドに関して、そのペプチドの他のGPCRに対する特異性を測定することが重要であった。P1pal-19およびP1pal-13を6つの他のGPCR:PAR2、PAR4、コレシストキニンAとコレシストキニンB(CCKAとCCKB)、ソマトスタチン(SSTR2)、およびサブスタンスP(Sub-P)の配列に対してアゴニスト活性について試験した。これらのうち、PAR2 (S. Nystedt, K. Emilsson, C. Wahlestedt, J. Sundelin, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91, 9208-9212(1994))は、炎症および痛みにおいて重要であるトリプシン/トリプターゼ活性型受容体であり、PAR4(W. -F. Xuら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95, 6642-6646(1998);M. L. Kahnら、Nature 394, 690-694(1998))は、血小板凝集において独特な役割を演じる第二のトロンビン受容体である(L. Covic, A. L. Gresser, A. Kuliopulos, Biochemistry 39, 5458-5467(2000))。
COS7細胞を各受容体で一過的に形質移入を行い、InsPの生成を測定した。P1pal-13は、PAR1について選択的であるが、PAR2を含む他の6つのGPCRを活性化しなかった(図2E)。P1pal-19は、高度に相同性のあるPAR2受容体を完全に活性することができ、かつCCKBをその最高活性の約30%まで刺激するが、PAR4、CCKA、SSTR2、およびSub-Pのどれも活性化しない(図2F)。これらのデータは、P1pal-13がPAR1への結合の相補性を現し、かつ高度に選択的であることを示している。P1pal-19においてi3ループの6個のN末端アミノ酸が含有され、選択性がより低くなるという結果を生じる。
実施例4:PAR1以外のGPCRに対するアゴニストの構築
いくつかの場合において、対応する野生型i3配列に基づく脂質化ペプチドは、MC4について35%(図7)、PAR2について13%(P2pal-21、図2D)、およびCCKBについて12%の効力を有する部分的アゴニストであり、かつPAR4、SSTR2およびCCKAのi3ペプチドについてはアゴニスト活性は観察されなかったこと(表1)を見出した。しかしながら、前に明らかにしたように、P1pal-19 PAR1ペプチドは、PAR2を強く活性化することができ(図2F)、P2pal-21の選択的突然変異でPAR2についての完全アゴニストを創造できうることを示していた。PAR1およびPAR2のi3ループのアラインメント(図2A:PAR1およびPAR2についてパルミトイル化ペプチドを有する、PAR1、PAR2およびPAR4受容体についての第三の細胞内(i3)ループおよび隣接した膜貫通領域(TM5およびTM6)のアラインメントを示す)は、いくつかの配列の違いを明らかにした。全く目をひくことには、C末端のLysからPheへの突然変異がPAR2ペプチド、P2pal-21Fを二相の性質をもち、作用強度が高い(EC50 = 25 nM)PAR2の完全アゴニストへと転化している(図2D)。P2pal-21Fはまた、PAR1を活性化したが、PAR4もSSTR2のどちらも活性化しなかった(図2G)。同様のSSTR2およびCCKAペプチドのC末端のLys/ArgからPheへの点突然変異によって、それらの同族の受容体に部分的アゴニスト活性が与えられ、CCKBペプチドの作用強度を15倍に向上させた。補足的情報は、サイエンスオンラインのwww.sciencemag.orgで入手可能である。
これらのデータは、高アゴニスト活性を現すには、ペプチドを両末端で脂肪親和性の環境につなぐまたは埋め込まなればならないことを示唆している。
次に、ペプデューシンによるGタンパク質の間接的対直接的活性化間の区別を助けるために、i3ループのC末端/PAR1のTM6のN末端に位置するS309位に点突然変異を導入した。膜周囲の領域は、Gタンパク質の多くの受容体に対する結合の忠実性にとって重要であることが示されており(S. Cotecchia, J. Ostrowski, M. A. Kjelsberg, M. G. Caron, R. J. Lefkowitz, J. Biol. Chem. 267, 1633-1639(1992); E. Kostenis, B. R. Conklin, J. Wess, Biocehmistry 36, 1487-1495(1997); M. A. Kjelsberg, S. Cotecchia, J. Ostrowski, M. G. Caron, R. J. Lefkowitz, J. Biol. Chem. 267, 1430-1433(1992))、そしてTM3の重要なDRY残基に直接的接触に至る(K. Palczewskiら、Science 289, 739-745(2000))。S309P突然変異体を構築し、野生型PAR1と同じレベルまでCOS7細胞へ一過的に発現させた。COS7細胞を野生型(WT)、S309PまたはΔ377PAR1(A. Kuliopulosら、Biochemistry 38, 4572-4585(1999))受容体で、一過的に形質移入した。細胞をP1pal-19、SFLLRN(配列番号:24)、またはトロンビンで刺激し、PLC-β活性を0.1 nMトロンビンでのWT PAR1の100%刺激(9.6倍)に比較しての全[3H]-イノシトールリン酸生成を測定することにより決定した。図Bにおけるトロンビンの非常に高い濃度によるPAR1の明らかな抑制は、PAR1のe1外部ドメインに位置するヒルジン様配列(K51YEPF55、配列番号:32)へのトロンビンの持続性相互作用により引き起こされる(D. T. Hung, T. -K. H. Vu, V. I. Wheaton, K. Ishii, S. R. Coughlin, J. Clin. Invest. 89, 1350-1353(1992))。トロンビンのかなりの量がトロンビン付着性PAR1外ドメインへ結合したままでいることができ(S. L. Jacques, M. LeMasurier, P. J. Sheridan, S. K. Seeley, A. Kuliopulos, J. Biol. Chem. 275, 40671-40678(2000))、つながれたSFLLRN(配列番号:24)による分子内連結を阻害する。
S309P突然変異体は、トロンビン依存性InsPおよびSFLLRN(配列番号:24)依存性InsPの刺激において、それぞれ、17倍と28倍の作用強度の損失、および1.6倍と3.3倍の効力の損失で、不足している(図3B、図3C)。興味深いことに、P1pal-19もまた、S309P突然変異体を刺激するのが、野生型PAR1への影響と比較して作用強度(13倍)および効力(4.3倍)において平行して損失している。P1pal-19はS309P突然変異体のシグナル伝達の欠陥を補正しなかったことから、これは、無傷の受容体におけるi3領域の非常に重要なC末端部分が、Gタンパク質への結合において、外因性ペプデューシンの効果を上回る優勢な効果を発揮することを示している。
実施例5:ペプデューシンと相互作用するGPCR領域の決定
i3ペプデューシンと直接的に接触するであろう受容体の領域を限定するために、PAR1の全C末端i4ドメインを削除した(Δ377)。ロドプシンのX線構造(K. Palczewskiら、Science 289, 739-745(2000))により、i3ループが、αヘリックス8のN末端領域およびi4カルボキシル末端内のCys-パルミチン酸部分のC末端側への残基に接触しうることを示している。図3Bおよび図3Cに示されているように、Δ377突然変異体はトロンビンおよびSFLLRN(配列番号:24)への応答においてPLC-βを刺激することに欠けている。効力はその2つのPAR1アゴニストについて2倍〜3倍低下し、かつ作用強度はトロンビンについて22倍およびSFLLRN(配列番号:24)について〜30倍変化する。対照的に、P1pal-19ペプデューシンは、Δ377PAR1突然変異体の存在において、有効的にはPLC-βを刺激しない(図3A)。これらのデータは、PAR1のカルボキシル末端がGタンパク質を活性化するためにP1pal-19を必要とすること、かつカルボキシル末端がペプデューシンアゴニストについて結合表面を提供しうることを示している。
実施例6:アゴニスト活性を欠損するペプデューシンはまだなお、GPCRタンパク質のシグナル伝達を阻害する
血小板は独特なCa2+シグナル伝達特性をもつPAR1およびPAR4の両方のトロンビン受容体を有するため、ヒト血小板は、抗PAR1および抗PAR4ペプデューシンの作用強度および選択性を試験するためには、便利な、生物学的に意味のある系であった(20)。PAR1ペプチド、P1pal12は、PAR1のシグナル伝達を完全に阻害することが見出された。血小板Ca2+測定は、実施例1のように行われた。血小板は3?MのP1pal-12(白抜きの矢印)またはP4pal-15
Figure 0005356636
(配列番号:9)、黒の矢印)で前処理され、その後、指示されているように、3マイクロモルのSFLLRN(配列番号:24)または200マイクロモルのAYPGKF(配列番号:27)で刺激された。図4A〜図4Cに示されているように、3マイクロモルのP1pal-12は、SFLLRN(配列番号:24)によるヒト血小板のPAR1活性化を効率的に阻害するが、AYPGKF(配列番号:27)によるPAR4活性化を阻害しない(図4A)。さらに、PAR4の完全長i3ループに対応するペプデューシン、P4pal-15は、アゴニスト活性をもっていなかったが、PAR4のシグナル伝達に完全に拮抗することができた。
血小板をその後、3マイクロモルのP1pal-12または3マイクロモルのP4pal-15のいずれかで1分間、プレインキュベートし、それから、3マイクロモルのSFLLRN(配列番号:24)または200マイクロモルのAYPGKF(配列番号:27)で刺激し、そして図1Dのように血小板凝集をモニターした。完全な血小板凝集トレースは、阻害剤の不在(−)における同量のSFLLRN(配列番号:24)またはAYPGKF(配列番号:27)について示されている。血小板は0.01マイクロモル〜5マイクロモルのP1pal-12またはP4pal-15で1分間前処理され、そして、それぞれ、3マイクロモルのSFLLRN(配列番号:24)または200マイクロモルのAYPGKF(配列番号:27)で刺激された。図4Aに示されているように、3マイクロモルのP4pal-15は、SFLLRN(配列番号:24)によるPAR1の活性化に影響を与えることなく、AYPGKF(配列番号:27)によるPAR4の活性化を阻害し、血小板凝集の効果的な阻害剤である(図4B、図4C)。このように、P4pal-15は、最初に記載されている高作用強度の抗PAR4化合物(血小板中IC50 = 0.6マイクロモル)であり、マウスの管生物学において、PAR4の役割を描写するのを助けるために最近使用されている(Covic, Misra, Kuliopulos, (未発表データ))。
次に、PAR1、PAR4、およびPAR2発現繊維芽細胞を0.03マイクロモル〜100マイクロモルのP1pal-12、P4pal-15、またはP2pal-21で5分間、前処理し、その後、細胞外アゴニストの0.1 nMのトロンビン、10 nMのトロンビン、または100マイクロモルのSLIGKV(配列番号:17)で、それぞれ刺激した。InsP阻害のパーセントは、完全な細胞外アゴニスト刺激応答と比較して計算される:P1pal-12については5.2倍、P4pal-15については3.1倍およびP2pal-21については3.1倍。抗PAR1および抗PAR4ペプデューシンの両方ともにまた、PAR1またはPAR4を発現する繊維芽細胞において、それぞれ、PLC-βへのシグナル伝達を阻害することができる(図4D)。最後に、PAR2の部分的アゴニストである、PAR2ペプデューシン、P2pal-21(図2D)もまた、繊維芽細胞においてPAR2のシグナル伝達を完全に阻害することができる(図4D)。
実施例7:C末端脂質鎖をもつリガンド結合部位ペプチドは受容体結合を阻害する。
ここで、本発明者らは、PAR1へ結合するリガンドの細胞外の、膜結合の、アンタゴニストの生成のためのC末端システイン-脂質を有する第一の細胞外ドメイン(e1)PAR1からのペプチドを記載する。いくつかの場合、受容体ペプチド断片への脂質または疎水性鎖のN末端付着は、活性損失を引き起こすかもしれないし、または受容体、Gタンパク質を標的すること、または細胞外の結合を阻害することのためには最適に位置されていないかもしれない。このように、この技術のもう一つの態様は、戦略上、膜接触するようになる可能性が高い箇所に位置させるように、受容体断片におけるシステイン残基または他の誘導化可能な基(すなわち、-SH, -NH2, -OH)へ脂質鎖を接着させることである。擬似の誘導化を避ける必要がある場合には、内部のシステインをセリンへ変異させることが考えられる。分子設計に基づけば、ペプチドのいくつかは、内部、N末端および/またはC末端の位置に脂質化されるだろう。より効率的な膜への固着またはターゲッティングのために必要ならば、グリシン(n = 1〜5)(配列番号:33)または類似の分子のスペーサーを脂質化部位とペプチドの間に置くことも可能であろう。二重の脂質化は、効果的なモル濃度を増加させて、受容体-作動体または受容体-リガンド界面でのエントロピーの寄与を低下させる可能性がある。
例として、NMR構造解析を使って、本発明者らは、PAR1についてのリガンド結合部位の部分を形成するPAR1の細胞外表面上の領域を同定した。この領域は、受容体残基P85AFIS89(配列番号:34)から成り立ち、リガンド結合部位-1(LBS-1)と名付けられた。PAR1上のこの領域の突然変異は、分子内リガンド(すなわち、SFLLRN(配列番号:24))またはトロンビンによる受容体活性化において重大な欠陥を引き起こす。受容体のリガンド結合部位のまねをする脂質連結ペプチドの添加は、トロンビン活性型受容体(分子内リガンド)または外因的に添加された分子間リガンドを妨害することが予想されるであろう(図8)。受容体の他の細胞外ループもまた、リガンドと接触する可能性が高く、リガンド結合部位-2(LBS-2)、LBS-3などと名付けられる領域に寄与するものとなりうる。
PAR1のP85AFIS89配列(配列番号:34)、および完全な受容体において脂質の二層構造体をもって極めて接近するようになることが予想されている、隣接したC末端残基D90ASGTL95-C(配列番号:35)を含む、受容体ペプチド
Figure 0005356636
(配列番号:28)が合成された(図9B)。非脂質化LBS1ペプチドは、PAR1依存性血小板Ca++流量のトロンビンおよびSFLLRN(配列番号:24)による活性化に対して、相対的に弱いアンタゴニストであった(それぞれ、図9Cおよび図9D)。同様に、非脂質化LBS1ペプチドは、3 nMのトロンビンの血小板凝集を阻害しなかった(図9E)。目立って対照的なことには、C末端脂質化ペプチド、LBS1-PE(図9A)は、血小板凝集の効果的な阻害剤であった。図9Eに示されているように、25マイクロモルのLBS1-PEは3 nMのトロンビン誘発性血小板凝集を完全に阻害した。
LBS1ペプチドは、C末端システイン残基を含み、固相fmoc化学により合成された。LBS1のC末端システインチオールの脂質化は、N-MPB-PE(1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[4-(p-マレイミドフェニル)-ブチルアミド])を使って、6%トリエチルアミン/94%ジメチルホルムアミド中で2.5mMペプチドおよび5 mM N-MPB-PE(アバンティポーラリピッド(Avanti Polar Lipids))を混合し、そして周囲温度(23℃)で2時間インキュベートすることにより行われた。LBS1ペプチド-Cys-PE複合体は、Sep-Pak(ウォーターズ(Waters))C18逆相クロマトグラフィーにより精製され、そして同定は質量分析法により確認された。
実施例8:ペプデューシンのG結合性MC4肥満受容体活性化
メラニン細胞刺激ホルモン(α-MSH)のようなメラノコルチンアゴニストによるMC4受容体(MC4R)の活性化は、マウスにおいて摂食障害(食欲の喪失)および体重減少を引き起こす。MC4Rの突然変異体は極度に肥満したヒトにおいて見出された。ここで、本発明者らは、ヒトMC4Rの第三の分子内ループに対応するペプデューシン、MC4pal-14
Figure 0005356636
(配列番号:29)を合成し、その同族の受容体とともに、アゴニスト活性についてそのペプデューシンを試験した。MCR4で一過的に形質移入したCOS7繊維芽細胞へMC4pal-14を添加することにより、アゴニストと認められているα-MSHと比較して35%、アデニル酸シクラーゼ活性を刺激した。MC4pal-14の活性特性は、活性化相(EC50、〜150 nM)および抑制相(IC50、〜10マイクロモル)をもつ二相である。これらのデータは、ペプデューシンがG結合性受容体経路を活性化でき、かつMC4pal-14およびその誘導体がヒトにおける抗肥満剤として使用されうることを示している。さらに、α-MSHのような全身に注入されるペプチドアゴニストとは違って、これらの細胞貫通型ペプデューシンは血液脳関門を渡って中枢神経系に位置しているMC4のような受容体を活性化することが予想されるであろうことは注目すべきである(図7)。
他の態様
本発明を詳細な説明に関連して記載してきたが、前述の説明は例示するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではなく、本発明の範囲は添付された特許請求の範囲によって定められる。他の局面、利点、および改変は特許請求の範囲内である。
Figure 0005356636
図1A〜図1Eは、PAR1受容体の概略構造を示し、本発明の膜繋留PAR1 i3-ループペプチド、およびそれらがCa2+シグナル伝達および血小板の凝集の活性化および/または制御に与える影響を示す。図1Aにおいては、PAR1の膜貫通セグメント(TM1〜7)のトポロジー配置、細胞外ループ(e1〜e4)、および細胞内ループ(i1〜i4)が、ロドプシンのX線構造に基づき(K. Palczewskiら, Science 289, 739〜45(2000))、左側に図示される。トロンビンは細胞外ドメイン(e1)をR41-S42結合において切断し、繋留PAR1アゴニストとして機能する新たなN末端、S42FLLRNを作製する。 図2A〜図2Gは、i3ループおよび近接する膜貫通領域の配列比較、および本発明のペプチドの細胞貫通能の概略図を示す。 図3A〜図3Cは、ペプデューシンP1pal-19がC-尾部を欠失したPAR1を活性化できないこと、およびPAR1 i3-突然変異体を活性化できることを示す。 図4A〜図4Eは、本発明のペプデューシンが、それらの同族受容体の完全なアンタゴニストであることを示す。 図5は、本発明のペプチドが無傷の細胞を貫通することを示す。 図6A〜図6Dは、6つの他のGPCRを用いて試験されたPAR1ペプデューシンの完全な特異性プロフィールを示す。 図7は、Gs共役MC4肥満受容体のペプデューシンによる活性化を示す。 図8は、LBS1の概要を図示する。 図9は、LBS1-ペプデューシンがPAR1の活性化を阻害することを示す。

Claims (14)

  1. a)(i)Gタンパク質共役型受容体(GPCR)の三の細胞内ループもしくはその断片であって、該断片が第三のループ少なくとも5つの連続したアミノ酸残基を含み、該GPCRがプロテアーゼ活性化受容体(PAR)である、第三の細胞内ループもしくはその断片、または
    (ii)配列番号:3
    を含む一のドメイン、ならびに
    b)該第一のドメインに接着した第二のドメインであって、ミリストイル(C14)、パルミトイル(C16)、ステアロイル(C18)またはステロイド基を含む、細胞貫通型膜繋留疎水性部分を含む、二のドメイン
    を含む、キメラポリペプチドであって、その同族のGPCRのアゴニストまたはアンタゴニストである、メラポリペプチド。
  2. PARがPAR1、PAR2、またはPAR4である、請求項1記載のキメラポリペプチド。
  3. 第一のドメインが、配列番号:1〜10および23からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1記載のキメラポリペプチド。
  4. プロテアーゼ活性化受容体(PAR)の活性を調節する試験化合物をスクリーニングする方法であって、
    (a)第一の非ヒト試験動物に化合物を投与する段階、および
    (b)第二の非ヒト試験動物に請求項1記載のキメラポリペプチドを投与する段階であって、該キメラポリペプチドがPARのアゴニストまたはアンタゴニストである、段階
    を含み、該第二の試験動物および対照動物の双方と比較した、該第一の試験動物におけるPAR活性の変化が、化合物がPARの調節物質であることを示す、方法。
  5. インビトロでの細胞に基づいたアッセイ法において、プロテアーゼ活性化受容体(PAR)の活性を調節する試験化合物をスクリーニングする方法であって、
    (a)PARを発現する細胞を提供する段階、
    (b)該細胞を請求項1記載のキメラポリペプチドと接触させる段階であって、該キメラポリペプチドがPARのアゴニストまたはアンタゴニストである、段階、
    (c)該細胞を候補化合物と接触させる段階、および
    (d)該候補化合物がPARの活性を変更するかどうかを決定する段階
    を含み、該候補化合物の非存在下でのPAR活性と比較した、該候補化合物の存在下でのPAR活性の変化が、化合物がPARの調節物質であることを示す、方法。
  6. a)Gタンパク質共役型受容体(GPCR)の第三の細胞内ループもしくはその断片であって、該断片が該GPCRの少なくとも5つの連続したアミノ酸を含み、該GPCRが、SSTR2、CCKA、CCKBおよびMC4肥満受容体からなる群より選択される、第三の細胞内ループもしくはその断片を含む、第一のドメイン;ならびに
    b)該第一のドメインに接着した第二のドメインであって、ミリストイル(C 14 )、パルミトイル(C 16 )、ステアロイル(C 18 )またはステロイド基を含む、細胞貫通型膜繋留疎水性部分を含む、第二のドメイン
    を含む、キメラポリペプチドであって、その同族のGPCRのアゴニストまたはアンタゴニストである、キメラポリペプチド。
  7. 第一のドメインが、配列番号:11〜16、19〜22および29からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項6記載のキメラポリペプチド。
  8. 請求項6記載のGPCRの活性を調節する試験化合物をスクリーニングする方法であって、
    (a)第一の非ヒト試験動物に化合物を投与する段階、および
    (b)第二の非ヒト試験動物に請求項6記載のキメラポリペプチドを投与する段階であって、該キメラポリペプチドがGPCRのアゴニストまたはアンタゴニストである、段階
    を含み、該第二の試験動物および対照動物の双方と比較した、該第一の試験動物におけるGPCR活性の変化が、化合物がGPCRの調節物質であることを示す、方法。
  9. インビトロでの細胞に基づいたアッセイ法において、請求項6記載のGPCRの活性を調節する試験化合物をスクリーニングする方法であって、
    (a)GPCRを発現する細胞を提供する段階、
    (b)該細胞を請求項6記載のキメラポリペプチドと接触させる段階であって、該キメラポリペプチドがGPCRのアゴニストまたはアンタゴニストである、段階、
    (c)該細胞を候補化合物と接触させる段階、および
    (d)該候補化合物がGPCRの活性を変更するかどうかを決定する段階
    を含み、該候補化合物の非存在下でのGPCR活性と比較した、該候補化合物の存在下でのGPCR活性の変化が、化合物がGPCRの調節物質であることを示す、方法。
  10. 第二のドメインが、第一のドメインの1つの末端において、両末端において、または内部位置において接着している、請求項1〜3および6〜7のいずれか一項記載のキメラポリペプチド。
  11. 第一のドメインが、GPCRの第三の細胞内ループの少なくとも7つの連続したアミノ酸残基を含む、請求項1〜3、6〜7および10のいずれか一項記載のキメラポリペプチド。
  12. 第二のドメインが、GPCRの膜貫通ドメインに由来する1つまたは複数の残基をさらに含む、請求項1〜3、6〜7および10〜11のいずれか一項記載のキメラポリペプチド。
  13. 第二のドメインがパルミトイル部分を含む、請求項1〜3、6〜7および10〜12のいずれか一項記載のキメラポリペプチド。
  14. 第二のドメインがミリストイル部分を含む、請求項1〜3、6〜7および10〜12のいずれか一項記載のキメラポリペプチド。
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