JP5353086B2 - 床版コンクリートの構築方法 - Google Patents

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Description

本発明は、橋脚間の鋼桁上などに設置される床版コンクリートの構築方法に関するものである。
橋梁用の床版コンクリートは、橋脚間に鋼桁を架設した後、鋼桁上に型枠を設け、その型枠内に鉄筋を配筋してその型枠内にコンクリートを打設した後、一定期間養生マットやブルーシートなどの養生シートを被せて養生し、その後型枠を取り外して、完全硬化させて構築される。
この床版コンクリートの上には防水シートが施工され、その防水シートの上にはアスファルトが舗装されて、橋梁が構築される。
床版コンクリートなどのコンクリート構造物では、その表面にひび割れが発生すると、ひび割れから雨水などの水が入り鉄筋が錆びてしまうため、設計段階で表面ひび割れを防止する対策が検討される。この表面ひび割れは、主に養生後のコンクリート表面と外気温との温度差に伴う温度応力により発生する。
従来、このような表面ひび割れを防止するために、コンクリート温度応力解析プログラムのASTEA MACS((株)計算力学研究センター社製)を用い、外気温をコンクリート表面に与えて事前に温度応力解析を実施し、表面ひび割れを推定していた。
温度応力解析により表面ひび割れが発生すると予測された場合、適切な養生期間や方法、鉄筋の本数や径の増加などの対策をとることにより、表面ひび割れを防止している。
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、次のものがある。
特開平7−119299号公報 特開2002−48690号公報 倉田、外3名、「有限要素法解析による長支間場所打ちPC床版の施工時における応力評価に関する研究」、構造工学論文集、社団法人土木学会、2003年3月、vol.49A、pp.825−832
しかしながら、上記解析方法では、コンクリートが完全硬化するまでの間の外気温のデータを用いてコンクリートのひび割れを推定しているが、打設したコンクリートの完全硬化までの外部環境が変わった場合には、コンクリートに発生するひび割れを精度良く推定できない問題がある。
橋梁を構築する際には、工期短縮のため、コンクリート打設後一週間程度養生を行った後、コンクリート表面の養生シートを取り外して、打設したコンクリートの表面で他の作業を行うことが多い。そのため、養生後はコンクリートの硬化時の外部環境が変わってしまい、養生後のコンクリート表面は雨水や天日にさらされることになる。よって、上記解析方法ではコンクリートのひび割れを精度よく推定できず、コンクリート表面にひび割れが発生して、そのひび割れに雨水が入り込んで鉄筋が錆びてしまう。
つまり、上記解析方法は、コンクリートを一定の環境で養生して完全硬化させる場合には有効であるが、橋梁用の床版コンクリートを構築する場合、すなわち、養生後のコンクリート表面が雨水や天日にさらされるような場合には、精度良く表面ひび割れを推定することができないという問題がある。よって、表面ひび割れに対する十分な防止策をとることができず、床版コンクリートの耐荷力を含めた耐久性を向上させることが困難であった。
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、養生後のコンクリート表面が雨水や天日にさらされる場合であっても、表面ひび割れを精度よく推定して十分なひび割れ防止策をとることができ、床版コンクリートの耐荷力を含めた耐久性を向上させることが可能な床版コンクリートの構築方法を提供することにある。
本発明は、上記目的を達成するために創案されたものであり、請求項1の発明は、型枠内に鉄筋を配筋し、前記型枠内にコンクリートを打設し、養生シートを被せて一定期間養生した後、前記養生シートを取り外し、前記コンクリートを外気にさらしたまま完全硬化させる床版コンクリートの構築方法において、前記コンクリートの打設から完全硬化までの期間を設定すると共に、その期間の日射量、外気温の気象データを過去のデータより類推し、その気象データを基に、前記養生シートを取り外さない部位には前記外気温のみを与え、前記養生シートを取り外す部位には前記養生シートの取り外し以降は前記外気温に前記日射量の影響を加味した仮想外気温を与えて、温度応力解析を行い、前記温度応力解析により前記コンクリートに発生する応力を求め、その応力から前記期間に前記コンクリートにひび割れが発生するか否かを推定し、ひび割れが発生すると予測されるとき、前記温度応力解析により求めた前記コンクリートに発生する応力と、前記コンクリートの自荷重および前記コンクリートに積載する荷重による応力とから、前記コンクリートに発生するひび割れ幅を算出し、前記ひび割れ幅が規定値以下となるように前記鉄筋の本数および径を選定し、選定した本数および径の前記鉄筋を前記型枠内に予め配置した後、前記コンクリートを打設する床版コンクリートの構築方法である。
請求項の発明は、前記コンクリートの打設から完全硬化までの期間の月ごとの平均最低気温、平均最高気温、および平均日射量を前記過去のデータから求めておき、前記日射量を、1日の日射量の合計値が前記平均日射量と等しく、最大日射量が12時であり、かつ日照時間が8時間である正弦波の半波で近似すると共に、前記外気温を、前記平均最低気温が0時、かつ前記平均最高気温が12時となるように正弦波で近似して、前記気象データを求める請求項記載の床版コンクリートの構築方法である。
請求項の発明は、前記過去のデータとして、気象庁が提供する月ごとの平均最低気温、平均最高気温、および平均日射量を用いる請求項1または2記載の床版コンクリートの構築方法である。
請求項の発明は、前記ひび割れ幅が0.2mm以下となるように前記鉄筋の本数および径を選定する請求項1〜3いずれかに記載の床版コンクリートの構築方法である。
本発明によれば、養生後のコンクリート表面が雨水や天日にさらされる場合にも、表面ひび割れを精度よく推定して十分なひび割れ防止策をとることが可能となり、床版コンクリートの耐荷力を含めた耐久性を向上させることができる。
以下、本発明の好適な実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
まず、本実施形態に係る床版コンクリートの構築方法で構築する床版コンクリートを説明する。
図1は、本実施形態で構築する床版コンクリートの斜視図である。
図1に示すように、床版コンクリート1は、複数(図1では2つ)の鋼桁2上に設けられる。本実施形態では、一例として、幅1000mm×長さ3000mm×高さ300mmの床版コンクリート1を構築する場合を説明する。
床版コンクリート1に使用する鉄筋としては主筋、配力筋ともD16(径15.9mm)を用い、かぶりは50mm(一部30mm)とした。鉄筋間隔は、例えば、250mmである。また、床版コンクリート1と合成するための鋼桁2上のスタッドとしては、φ19mm×150mmのものを用いた。
表1に、本実施形態で用いたコンクリートの配合を示す。セメントの種類としては、ポルトランドセメントを用いた。コンクリートの配合やセメントの種類はこれらに限定されない。
Figure 0005353086
図2(a)に示すように、床版コンクリート1および鋼桁2は、所定間隔で配置された橋脚3上に配置される。
床版コンクリート1では、表面ひび割れを推定する際、後述する温度応力に加え、自荷重による応力や、車など床版コンクリート1上に積載する荷重による応力を考慮する必要がある。
ここで、自荷重および床版コンクリート1上に積載する荷重による応力について簡単に説明する。
床版コンクリート1を橋脚3上に配置すると、床版コンクリート1の自荷重、あるいは床版コンクリート1上に積載する荷重により、床版コンクリート1の橋脚3上方の位置Cには引張応力が発生し、床版コンクリート1の橋脚3間の位置Bには圧縮応力が発生する。コンクリートは、一般に、圧縮応力に対する強度は大きい(本実施形態では、30N/mm)ものの、引張応力に対しては圧縮応力に対する強度の10分の1程度の強度(約3N/mm)しかないという特徴がある。
したがって、図2(b)に示すように、位置Bではコンクリート(床版コンクリート1)と鋼桁2と鉄筋4が圧縮応力を受け持つが、位置Cではコンクリート(床版コンクリート1)に引張応力を受け持たせることができないため、図2(c)に示すように、鋼桁2と鉄筋4のみが引張応力を受け持つことになる。
このとき、位置Cにおいて上側の鉄筋4の位置に発生する応力σseは、[数1]に示す式(1)で表される。
Figure 0005353086
鉄筋4の種類により鉄筋1本あたりの許容応力が決まっているので、上側の鉄筋4の許容応力が発生応力σseよりも大きくなるように、鉄筋4の本数や径を決定する。
鋼桁2と鉄筋4で十分に引張応力を受け持つことができない場合、位置Cのコンクリート(床版コンクリート1)には引張応力が働くので、その引張応力が約3N/mm以上になるとコンクリートに表面ひび割れが発生することになる。よって、位置Cでコンクリートに作用する引張応力が3N/mm以下となるように鉄筋4の本数や径を決定する必要がある。
以下、本実施形態に係る床版コンクリートの構築方法を説明する。
本実施形態に係る床版コンクリートの構築方法では、まず、構築する床版コンクリート1に表面ひび割れを推定し、鉄筋4の本数や径をひび割れ発生度に応じて選定した後、選定した本数、径の鉄筋4を用いて実際に床版コンクリート1を構築する。
まず、構築する床版コンクリート1に表面ひび割れを推定し、その結果に基づいて鉄筋4の本数や径を選定する工程について説明する。
橋梁用の床版コンクリート1を構築する場合、コンクリート打設後一週間程度養生を行った後、コンクリート表面の養生シートを取り外して、打設したコンクリートの表面で他の作業を行いつつ、コンクリートを完全硬化させる。よって、養生後のコンクリートは天日にさらされることになる。
そのため、養生後にコンクリートに与えられる熱エネルギーとして、従来から考慮されていた対流による熱エネルギー(風による熱と水蒸気の輸送)に加え、放射による熱エネルギー(全天日射、大気放射)を考慮する必要がある。ここで、放射のうち全天日射は、コンクリートに入射する直達日射と天空散乱光の総称であり、放射による熱エネルギーの大半を占める。
そこで、本発明では、外気温に加えて、さらに全天日射(以下、単に日射量という)を考慮してコンクリートの温度応力解析を行うため、コンクリート表面に与える温度として、外気温に日射量の影響を加味した仮想外気温Teqを[数2]に示す式(2)で定義する。
Figure 0005353086
本実施形態では、熱伝達率μを40W/(m・℃)とした。これは、コンクリート表面の風速条件を変化させた場合の熱伝達率の測定結果に基づいたものであり、μ=40W/(m・℃)は風速2m/sに相当する。
この仮想外気温Teqをコンクリート表面に与えて温度応力解析を実施することで、コンクリートに発生する表面ひび割れを精度良く推定することが可能となる。
ここで、式(2)における日射量qおよび外気温Tを推定する方法について説明する。
日射量qおよび外気温Tを推定するため、まず、コンクリートの打設から完全硬化までの期間を設定すると共に、その期間の平均日射量、平均最低気温、および平均最高気温を過去のデータから求める。
本実施形態では、過去のデータとして、気象庁が提供する月ごとの平均最低気温、平均最高気温、および平均日射量を用いた。これら過去のデータは、例えば、気象庁のホームページから得ることができる。気象庁が提供するデータの一例を図3に示す。
気象庁が提供するデータには、気圧、降水量、蒸気圧、相対湿度など様々な項目が含まれるが、図3では、気温(外気温)と全天日射(日射量)の項目のみを示す。全天日射とは、1日の日射量の合計値(積算値)である。
気象庁が提供するデータに床版コンクリート1を構築する場所のデータがない場合には、床版コンクリート1を構築する場所から最も近い場所のデータを過去のデータとして採用するとよい。
本実施形態では、一例として、10月16日に東京で床版コンクリート1を打設する場合を説明する。図3より、10月の平均最低気温は15.0℃、平均最高気温は21.6℃、平均日射量(全天日射)は9.3MJ/mmである。
過去のデータより平均日射量、平均最低気温、および平均最高気温を求めた後、これらの値から日射量qおよび外気温Tを推定する。
この日射量qを平均日射量から推定する方法について説明する。
本発明者は、日射量qを推定するため、まず、全天日射計を用いて、10/24〜10/26の日射量を実測した。その結果を図4(a)〜(c)に破線で示す。
本発明者は、これら実測した日射量のデータを基に、これを近似する方法について検討を行った結果、1日の日射量の合計値が実測した日射量の合計値と等しく、かつ最大日射量が12時となるように、日照時間が8時間の正弦波(SIN波)の半波で近似すると、よい近似が得られることを見出した。正弦波の半波で近似した日射量の近似値を図4(a)〜(c)に実線で示す。
図4(a)〜(c)に示すように、日射量の実測値と近似値とを比較すると、正弦波の半波で近似した近似値は実測値とよく一致しており、よい近似が得られていることが分かる。
同様に、10/24から11/5までの12日間の日射量の実測値(図示破線)と、正弦波の半波で近似した近似値(図示実線)とを図5に示す。
図5に示すように、3日以上でも、1日の日射量の合計値が実測した日射量の合計値と等しく、かつ最大日射量が12時となるように、日照時間が8時間の正弦波の半波で近似することにより、実測値に対してよい近似が得られていることが分かる。
以上の実験結果に基づき、本発明では、日射量qを、1日の日射量の合計値が気象庁のデータより得た平均日射量と等しく、最大日射量(ピーク)が12時であり、日照時間が8時間である正弦波の半波で近似するようにした。正弦波の半波が存在する8時間以外(0時〜8時、16時〜0時)の日射量qは0とする。
具体的には、図6に示すように、正弦波の半波が囲む面積が気象庁のデータより得た平均日射量(本実施形態では9.3MJ/mm)と等しい半周期8時間の正弦波を求め、その正弦波のピークが12時となるように日射量qを推定する。
外気温Tについては、図7に示すように、気象庁のデータより得た平均最低気温(本実施形態では15.0℃)が0時、平均最高気温(本実施形態では21.6℃)が12時となるように正弦波で近似する。
外気温Tとしては、1日の平均気温を用いるのが最も簡単ではあるが、仮想外気温Teqの最高値と外気温Tの最高値とが一致するため、平均気温を用いると過小評価となってしまう。そこで、本実施形態では、外気温Tを、平均最低気温(0時)と平均最高気温(12時)を24時間間隔で繰り返すものとした。
以上により、日射量qと外気温Tが推定される。これら日射量qおよび外気温Tを用いて、式(2)より仮想外気温Teqを求める。
推定した日射量qおよび外気温Tより求めた仮想外気温Teqを図8に実線で示す。図8において、破線は日射量および気温を実測して式(2)より計算した仮想外気温(以下、実測仮想外気温という)である。
図8では、コンクリート打設後の10/16から10/23までの1週間は、コンクリートに養生シートを被せて養生するため、仮想外気温として外気温のみを与えるようにしている。
図8に示すように、推定した日射量および外気温の気象データより求めた仮想外気温Teq(図示実線)と実測仮想外気温(図示破線)とはよく一致している。特に、養生後の10/25以後は、仮想外気温Teqと実測仮想外気温とがよく一致しており、その差は1℃程度である。
図8において、10/23、10/24では、仮想外気温Teqが実測仮想外気温よりも高くなっているが、これは、10/23、10/24の天候が雨、曇りであったためである。
気象庁より得られるデータは平均値であり、天候の影響を考慮していない。よって、天候が雨、曇りのときは仮想外気温Teqの値が実際の値よりも高くなる。しかし、設計的に考えると、温度(仮想外気温Teq)の値が高いほどひずみ、応力に与える影響が大きくなるので、安全側の配慮となり問題はない。
日射量q、外気温Tから仮想外気温Teqを求めた後、その仮想外気温Teqをコンクリート表面に与えて温度応力解析を実施する。
本実施形態では、コンクリート打設から一週間(10/16から10/23)養生シートを被せて養生を行い、養生後、図9に示すように、コンクリート(床版コンクリート1)表面の養生シート5のみを取り除いて、コンクリート表面を外気にさらした状態とする。コンクリート表面以外の養生シート5は取り外さないので、コンクリート裏面には日照の影響がない。よって、コンクリート裏面には外気温Tのみを与えるようにした。
温度応力解析は、コンクリート温度応力解析プログラムのASTEA MACS((株)計算力学研究センター社製)を用いて行った。
温度応力解析によって得られたコンクリート上側(上側の鉄筋の位置:コンクリート表面から50mm)の温度を図10(a)、コンクリート下側(下側の鉄筋の位置:コンクリート裏面から50mm)の温度を図10(b)に示す。
図10(a)および図10(b)に示すように、特に養生後の10/25の晴天以後は、コンクリートの上側、下側共に、仮想外気温Teqを用いて解析を行った温度(図示実線太線)と、実測値(図示破線)とがよく一致している。
また、温度応力解析によって得られたコンクリート上側のひずみを図11(a)、コンクリート下側のひずみを図11(b)に示す。
図11(a)および図11(b)に示すように、ひずみについても、温度と同様に、特に、10/25の晴天以後は、仮想外気温Teqを用いて解析を行ったひずみ(図示実線太線)と実測値(図示破線)とがよく一致している。
図11(a)および図11(b)において、養生中の両者に差があるのは、打設直後の粘性体から硬化後の固体までコンクリートの線膨張係数として同じ値を用いているためだと考えられる。
さらに、コンクリート上側および下側での発生応力を図12(a)に示す。また、図12(a)より求めたコンクリートの中央部での温度応力σを図12(b)に示す。
図12(b)に示すように、特に、養生後の10/25の晴天以後は、仮想外気温Teqを用いて解析を行った温度応力(図示実線太線)は、実測値(図示破線)とよく一致しており、養生後の実現象をよく再現できている。
また、仮想外気温Teqを用いて解析を行った温度応力(図示実線太線)と、実測仮想外気温を用いた温度応力(図示実線細線)とは、10/25以降では最大約0.2N/mmの差が生じているが、平均すると両者に差はないといえる。
以上により、コンクリートに作用する温度応力σが得られる。この温度応力σ上述した自荷重および床版コンクリート1上に積載する荷重による応力σseとを足し合わせ、その合計応力(引張応力)が3N/mm以上になると、コンクリートに表面ひび割れが発生することになる。
例えば、自荷重および床版コンクリート1上に積載する荷重によってコンクリートに作用する応力σseが2.8N/mmであり、さらに上述した方法により求めた温度応力σが0.4N/mmである場合、これらを足し合わせるとコンクリートに作用する引張応力が3.2N/mmとなり3N/mmを超えるため、表面ひび割れが発生すると推定される。
表面ひび割れが発生すると推定された場合には、ひび割れ幅wが0.2mm以下となることをコンクリート標準示方書設計編で規定された[数3]に示す式(3)で確認する。
Figure 0005353086
式(3)で対象とするのは、位置Cの上側の鉄筋4(図2(a)〜(c)参照)である。式(3)は、自荷重および床版コンクリート1上に積載する荷重による応力σseに加えて、温度応力σを考慮して、ひび割れ幅wを推定するものである。
この式(3)に、予め設定した鉄筋4の本数(鉄筋の中心間隔C)と鉄筋4の径(鋼材径)φの値を代入して、ひび割れ幅wを求める。
求めたひび割れ幅wが0.2mmを超える場合には、鉄筋4の中心間隔Cを狭くする(鉄筋4の本数を増やす)か、鉄筋4の径φを増やして、ひび割れ幅wが0.2mm以下となるように鉄筋4の本数や径を決定する。
また、鉄筋4の本数や径を決定する際には、道路橋示方書の鉄筋の種類と配置に関する以下の規定(1)、(2)を満足させるように選定する。
(1)鉄筋は異形鉄筋を使用し、直径を13、16、19mmとする。
(2)鉄筋の中心間隔は100mm以上でかつ300mmを超えてはならない。
本実施形態では、鉄筋4としてD16(径15.9mm)を用いるので、鉄筋4の中心間隔Cが100mm以上でかつ300mmを超えないように、鉄筋4の本数を増やして、ひび割れ幅wが0.2mm以下となるようにする。ひび割れ幅wを0.2mm以下とするために、鉄筋4の中心間隔Cが100mm〜300mmの範囲から外れてしまう場合は、鉄筋4の径を増加させて、φ19mmのものを用いるようにする。
また、養生後に発生する温度応力が大きい場合(真夏など)には、コンクリートが十分な強度となり、発生する温度応力に耐えられるよう養生期間を長く設定してもよい。
鉄筋4の本数や径を選定した後、選定した本数、径の鉄筋4を用いて、実際に床版コンクリート1を構築する。
橋脚3間に架設された鋼桁2上に型枠(移動型枠)を設けると共に、その型枠に選定した本数、径の鉄筋4を配筋し、型枠内にコンクリートを打設し、養生マットやブルーシートなどの養生シートを被せて一定期間(一週間程度)養生する。養生中は、常に散水してコンクリートを湿潤状態に保つ。
養生後、コンクリート表面の養生シートを取り外してコンクリートを外気にさらした状態とし、コンクリートの表面で他の作業を行いつつ、コンクリートを完全硬化させると、床版コンクリート1が得られる。
床版コンクリート1を構築した後、床版コンクリート1上には防水シートが施工され、さらに防水シート上にアスファルトが舗装されて、橋梁が構築される。
以上説明したように、本実施形態に係る床版コンクリートの構築方法では、コンクリートの打設から完全硬化までの期間の日射量q、外気温Tを過去のデータより類推し、その日射量q、外気温Tを基に養生後から完全硬化までの間に発生するコンクリートのひび割れを推定し、ひび割れが発生すると予測されるとき、鉄筋4の本数やその径をひび割れ発生度に応じて選定して型枠内に予め配置した後、コンクリートを打設している。
これにより、外気温Tに加えて日射量qも考慮するため、養生後のコンクリート表面が天日にさらされる場合にも、表面ひび割れを精度よく推定することが可能となる。よって、十分なひび割れ防止策をとることができ、床版コンクリート1の耐荷力を含めた耐久性を向上させることができる。
また、本実施形態では、過去のデータとして、気象庁が提供する月ごとの平均最低気温、平均最高気温、および平均日射量を用い、日射量qの気象データを、1日の日射量の合計値が平均日射量と等しく、最大日射量が12時であり、かつ日照時間が8時間である正弦波の半波で近似すると共に、外気温Tの気象データを、平均最低気温が0時、かつ平均最高気温が12時となるように正弦波で近似して気象データを求めている。
これにより、日射量qおよび外気温Tを精度よく予測することができ、コンクリートに発生する表面ひび割れを精度よく推定することが可能となる。
過去のデータとして10日、1日ごとの平均値のデータを用いてもよいが、その場合でも、実測仮想外気温を用いた解析結果と比較して埋めることのできる差はわずかである。本発明では、過去のデータとして1ヶ月の平均値のデータを用いているので、仮想外気温Teqを求めるのも簡単であり、かつ設計上十分な精度で表面ひび割れの対策ができる。
上記実施形態では、1日中日陰とならない場所で床版コンクリート1を構築する場合を説明したが、例えば、日照時間のうち特定の時間のみしか日照が当たらない場所で床版コンクリート1を構築する場合などは、日照時間の影響を考慮するようにしてもよい。
その場合、1日の合計日射量のうち、コンクリートが受ける日射量の割合を示す環境定数αを用いて、[数4]に示す式(4)
Figure 0005353086
により仮想外気温Teqを求めるようにすればよい。
これにより、床版コンクリート1を構築する場所の日照時間も考慮して、表面ひび割れを推定することが可能となる。
本発明の床版コンクリートの構築方法で構築する床版コンクリートの斜視図である。 図2(a)は図1の床版コンクリートの側面図であり、図2(b)はその位置Bでの抵抗断面を示す図、図2(c)は位置Cでの抵抗断面を示す図である。 本発明の床版コンクリートの構築方法で用いる気象庁の月ごとの平均データの一例を示す図である。 図4(a)〜(c)は、日射量の実測値と、その日射量を正弦波の半波で近似した近似値を示す図である。 日射量の実測値と、その日射量を正弦波の半波で近似した近似値を示す図である。 本発明の床版コンクリートの構築方法において、日射量を近似する方法を説明する図である。 本発明の床版コンクリートの構築方法において、外気温を近似する方法を説明する図である。 本発明で求めた仮想外気温と、実測値より求めた実測仮想外気温とを示す図である。 本発明の床版コンクリートの構築方法において、養生後にコンクリート表面の養生シートを取り外した状態を示す斜視図である。 図10(a)は、本発明で求めた仮想外気温と実測仮想外気温とからそれぞれ求めたコンクリート上側の温度と、その実測値を示す図であり、図10(b)は、本発明で求めた仮想外気温と実測仮想外気温とからそれぞれ求めたコンクリート下側の温度と、その実測値を示す図である。 図11(a)は、本発明で求めた仮想外気温と実測仮想外気温とからそれぞれ求めたコンクリート上側のひずみと、その実測値を示す図であり、図11(b)は、本発明で求めた仮想外気温と実測仮想外気温とからそれぞれ求めたコンクリート下側のひずみと、その実測値を示す図である。 図12(a)は、本発明で求めた仮想外気温と実測仮想外気温とからそれぞれ求めたコンクリート上側、下側での発生応力を示す図であり、図12(b)は、図12(a)より求めたコンクリート中央部での有効応力(有効温度応力)とその実測値を示す図である。
符号の説明
1 床版コンクリート
2 鋼桁
3 橋脚
4 鉄筋
5 養生シート

Claims (4)

  1. 型枠内に鉄筋を配筋し、前記型枠内にコンクリートを打設し、養生シートを被せて一定期間養生した後、前記養生シートを取り外し、前記コンクリートを外気にさらしたまま完全硬化させる床版コンクリートの構築方法において、
    前記コンクリートの打設から完全硬化までの期間を設定すると共に、その期間の日射量、外気温の気象データを過去のデータより類推し、
    その気象データを基に、前記養生シートを取り外さない部位には前記外気温のみを与え、前記養生シートを取り外す部位には前記養生シートの取り外し以降は前記外気温に前記日射量の影響を加味した仮想外気温を与えて、温度応力解析を行い、
    前記温度応力解析により前記コンクリートに発生する応力を求め、その応力から前記期間に前記コンクリートにひび割れが発生するか否かを推定し、
    ひび割れが発生すると予測されるとき、前記温度応力解析により求めた前記コンクリートに発生する応力と、前記コンクリートの自荷重および前記コンクリートに積載する荷重による応力とから、前記コンクリートに発生するひび割れ幅を算出し、前記ひび割れ幅が規定値以下となるように前記鉄筋の本数および径を選定し、
    選定した本数および径の前記鉄筋を前記型枠内に予め配置した後、前記コンクリートを打設することを特徴とする床版コンクリートの構築方法。
  2. 前記コンクリートの打設から完全硬化までの期間の月ごとの平均最低気温、平均最高気温、および平均日射量を前記過去のデータから求めておき、前記日射量を、1日の日射量の合計値が前記平均日射量と等しく、最大日射量が12時であり、かつ日照時間が8時間である正弦波の半波で近似すると共に、前記外気温を、前記平均最低気温が0時、かつ前記平均最高気温が12時となるように正弦波で近似して、前記気象データを求める請求項1記載の床版コンクリートの構築方法。
  3. 前記過去のデータとして、気象庁が提供する月ごとの平均最低気温、平均最高気温、および平均日射量を用いる請求項1または2記載の床版コンクリートの構築方法。
  4. 前記ひび割れ幅が0.2mm以下となるように前記鉄筋の本数および径を選定する請求項1〜3いずれかに記載の床版コンクリートの構築方法。
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