JP5352118B2 - 有機トランジスタ素子と電子・電気機器 - Google Patents

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Description

本発明は有機トランジスタ素子とこれを用いた電子・電気機器に関するものである。
有機トランジスタに関する研究は、現在そのほとんどが電界効果型トランジスタ(Field Effect Transistor,FET)であり、電流は有機膜方向に流れる「横型構造」を採っている。FETの性能はソース・ドレイン電極間のチャネル長に大きく依存し、これが短いほど大電流動作・低電圧駆動、そして高速応答が可能になるが、塗布や印刷による大量生産をターゲットとする有機トランジスタにとって面内の微細パターニングは避けたい作製プロセスである。
一方、有機トランジスタの抜本的な性能向上のために、膜厚方向に電流を流す「縦型構造」の有機トランジスタが研究されている。一般に膜厚は、数A(オングストローム)オーダーの高い精度で制御が可能であり、チャネルを膜厚方向にすることによって1μm以下の短いチャネル長を容易に実現できる。このような縦型の有機トランジスタとして、これまでに、ポリアニリン膜の自己組織化ネットワーク構造をグリッド電極として用いたポリマーグリッドトライオード構造(非特許文献1)や、微細なストライブ状の中間電極で空乏層幅を変調することにより、ソース・ドレイン間の電流をコントロールする静電誘導型トランジスタ(Static Induction Transistor SIT )(非特許文献2)、さらには電解効果型トランジスタ(非特許文献3)、電荷注入型トランジスタ(非特許文献4)などが提案されている。しかし、これらのデバイスは中間電極の作製の難しさから高性能化が難しいという問題がある。
一方、最近になって、高度な作製技術を用いなくても、単純な半導体/金属/半導体の積層構造で、極めて高性能なトランジスタ特性が発現することが見出され、本発明者による提案がなされている(非特許文献5−6、特許文献1)。このトランジスタは、電流増幅型のバイボーラトランジスタに似た特性を持ち、中間金属電極がベースのように働くことから、メタルベース有機トランジスタ(Metal-Base Organic Transistor MBOT)と呼ばれる。
Y.Yang,et.al.Nature 372,344(1994) K.Kudo,et.al.Thin Salid Films,393,362(2001) L.Ma,et.al.Appl.Phys.Lett.,85,5084(2004) K.Nakayama,et.al.Appl.Phys.Lett., 82,4584(2003) S.Fujimoto,et.al.Appl.Phys.Lett., 87,133503(2005) K.Nakayama,et.al.Appl.Phys.Lett., 88,153512(2006) 特開2007−258308号公報
しかしながら、従来のMBOT素子の作製過程においては、たとえば気相蒸着による真空一貫プロセスで作製されて場合、ベース・コレクタ間のリーク電流が大きくオフ状態でも電流が流れてしまうため、十分な電流増幅率、あるいはON/OFF比を得ることができないという問題があった。これを解決する手段として、大気下に素子を一定時間放置する方法、あるいは大気下において加熱する方法が提案されている(たとえば特許文献1)。しかしながらこれらの方法は、素子を大気に暴露させることから、他の大気に弱いデバイス(例えば有機EL等)と組み合わせた複合デバイスを作製する上で、大きな問題となる。そこで、本発明は、このような大気下加熱処理などを行わずに、MBOT素子構造の改良により良好な電流増幅特性およびON/OFF比を得ることを課題としている。
本発明の有機トランジスタ素子は、上記の課題を解決するものとして以下のことを特徴としている。
第1:エミッタ電極とコレクタ電極との間に有機半導体層とシート状のベース電極が設けられ、前記有機半導体層がエミッタ電極とベース電極との間、並びにベース電極とコレクタ電極との間に設けられている有機トランジスタ素子であって、前記ベース電極とコレクタ電極の間に、電荷透過促進層を有し、前記ベース電極とコレクタ電極との間に、前記有機半導体層の前記ベース電極側に隣接して電流増加層が配置されている
:前記電荷透過促進層は、ベース電極に隣接して配置されている。
:前記電荷透過促進層は、Li、Na、K、Rb、Ca、Sr、およびBaのアルカリ金属またはアルカリ土類金属の化合物もしくは錯体のうちの少なくとも1種により構成されている。
:前記いずれかの有機トランジスタ素子において、電荷透過促進層に隣接して漏れ電流抑制層が配置されている。
:前記漏れ電流抑制層は、電子輸送性有機半導体材により構成されている。
:前記電流増加層は、電子輸送性材により構成されている。そして本発明は、以上のいずれかの有機トランジスタ素子をその構成の少なくとも一部としていることを特徴とする電子・電気機器をも提供する。
(1)電荷透過促進層の挿入
本発明の有機トランジスタは、前記のとおり、エミッタ電極とコレクタ電極との間に、有機半導体層とシート上ベース電極が設けられた有機トランジスタ素子であって、ベース・コレクタ電極の間に、ベース電極に隣接して電荷透過促進層、およびオフ電流抑制層を含むことを特徴とする。
従来のMBOT素子では、大気下加熱処理を行わない場合には著しくオフ電流が大きく、トランジスタとしての変調が隠されてしまう。そこで、オフ電流抑制層をベース電極に隣接して挿入することにより、大気下加熱なしでも変調が観測可能となる。しかしながらこのようなオフ電流抑制層は、一般的にエミッタから供給された電子のベース電極透過過程を阻害してしまう傾向にあるため、全体的な変調電流料(オン電流量)が減少してしまう。これに対して、電荷透過促進層を、ベース電極とオフ電流抑制層の間に挿入することにより、エミッタ電極より供給された電子がベース電極を高確率で透過できるようになり、オン電流が著しく増加する。これらの効果により、大気下加熱処理を行うことなく、オフ電流を抑制し、オン電流を増加させることが可能となる。
(2)電流増加層の挿入
さらに、本発明の効果を増強する素子形態として、ベース・コレクタ電極間の有機半導体層に隣接して、有機半導体より成る電流増加層を挿入することにより、上記電荷透過促進層の効果を著しく増強できることを特徴とする有機トランジスタが挙げられる。
この電流増加層を、上記電荷透過促進層と組み合わせることにより、さらなるオン電流の増加が可能となり、低電圧・大電流動作が可能なMBOT素子を、大気下加熱プロセスを用いることなく実現することができる。
本発明の有機トランジスタ素子においては、エミッタ電極とコレクタ電極との間に有機半導体層とシート状のベース電極が設けられている構成を前提とし、基本としている。
エミッタ電極とコレクタ電極との間に半導体層が設けられ、且つその半導体層中にシート状ベース電極が設けられているので、エミッタ電極とコレクタ電極との間にコレクタ電圧を印加し、さらにエミッタ電極とベース電極との間にベース電圧を印加すれば、そのベース電圧の作用により、エミッタ電極から注入された電荷(電子または正孔)が加速されてベース電極を透過し、コレクタ電極に到達する。すなわち、ベース電圧の印加によってエミッタ電極−コレクタ電極間に流れる電流を増幅させることができる。そして、シート状のベース電極は、エミッタ電極から供給された電荷をベース電圧で加速して弾道電子または弾道正孔とし、その弾道電子または弾道正孔をコレクタ電極側の半導体層内に容易に透過することができる範囲の厚さで全面に形成される。形成された全面で電荷が加速され、しかも加速された電荷がベース電極を容易に透過することができる。
有機半導体層は、エミッタ電極とベース電極との間、ベース電極とコレクタ電極との間の双方、もしくはいずれか一方に配置されてよい。
電極材料としては、金属、導電性酸化物、導電性高分子等の薄膜が用いられる。なお、コレクタ電極を基板上に配設する場合には、基板とコレクタ電極との間にはバリア層や平滑層等が設けられていてもよい。
有機半導体層が電子輸送層である場合、コレクタ電極の形成材料としては、たとえば、ITO(インジウム錫オキサイド)、酸化インジウム、IZO(インジウム亜鉛オキサイド)、SnO2、ZnO等の透明導電膜、金、クロムのような仕事関数の大きな金属、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリアルキルチオフェン誘導体、ポリシラン誘導体のような導電性高分子等を挙げることができる。一方、エミッタ電極の形成材料としては、アルミニウム、銀等の単体金属、MgAg等のマグネシウム合金、AlLi、AlCa、AlMg等のアルミニウム合金、Liをはじめとするアルカリ金属類、それらアルカリ金属類の合金のような仕事関数の小さな金属等を挙げることができる。
一方、有機半導体層が正孔輸送層である場合には、上記のコレクタ電極の形成材料と上記のエミッタ電極の形成材料とは逆になるのが望ましい。
また、ベース電極は有機半導体層の構成材料とショットキー接触を形成するので、ベース電極の形成材料としては、上記コレクタ電極やエミッタ電極に用いられる電極と同様の電極を挙げることができる。ベース電極は、エミッタ電極から供給された電荷をコレクタ電極側の有機半導体層有機内に強制的に供給するように作用するので、ベース電極の形成材料としては、必ずしも有機半導体層に電荷を注入し易い材料である必要はない。しかし、コレクタ電極側の有機半導体層が正孔注入層又は正孔注入材料を有する層である場合には、仕事関数が小さい材料でベース電極を形成することが好ましく、一方、その半導体層が電子注入層または電子注入材料を有する層である場合には、仕事関数が大きい材料でベース電極を形成することが好ましい。こうしたベース電極の形成材料としては、例えば、アルミニウム、銀等の単体金属、MgAg等のマグネシウム合金、AlLi、AlCa、AlMg等のアルミニウム合金、Liをはじめとするアルカリ金属類、アルカリ金属類の合金のような仕事関数の小さな金属等を好ましく使用することができるが、電荷(正孔、電子)注入層とショットキー接触を形成することが可能であれば、ITO(インジウム錫オキサイド)、酸化インジウム、IZO(インジウム亜鉛オキサイド)、SnO2、ZnO等の透明導電膜、金、クロムのような仕事関数の大きな金属、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリアルキルチオフェン誘導体、ポリシラン誘導体のような導電性高分子等も使用することができる。
ベース電極がシート状に設けられていない場合(すなわちベース電極が穴やクラック等の欠陥部を含む場合)、その欠陥部では、エミッタ電極から注入された電荷はあまり加速されないので、その部分の電荷はベース電極を透過し難くなり、その結果、エミッタ電極−コレクタ電極間に流れる電流は全体としてあまり増幅させることができないとともに、各部位での電流量の増加にムラが生じてしまう。したがって、ベース電極をシート状とする本発明のトランジスタ素子によれば、ハイポーラトランジスタと同じような電流増幅作用を安定して得ることができる。
ベース電極の厚さについては、80nm以下であることが好ましい。80nm以下とすることで、ベース電圧Vbで加速された弾道電子又は弾道正孔を容易に透過することができる。その結果、シート状のベース電極の全面で電荷が著しく加速され、しかも加速された電荷がベース電極を容易に透過することができる。なお、ベース電極は半導体層中に切れ目なく(穴やクラック等の欠陥部なく)設けられていればよいので、その厚さの下限は特に限定されないが、通常1nm程度であればよい。
上記の各電極については、真空蒸着、スパッタリング、CVD等の真空プロセスあるいは塗布により形成される。コンタクト電極やエミッタ電極の膜厚は使用する材料等によっても異なるが、通常は、10nm〜1000nm程度であることが好ましい。これらの膜厚は、厚さ方向の試料断面を透過型電子顕微鏡(TEM)により5箇所の平均値を測定したものとして考慮することができる。
半導体層の形成材料としては、後述の実施例でも用いているMe−PTC、C60、BP−PTC、TPP、HAT、Alq3、や、NTCDA、PTCDA、Me−PTC、Ph−Et−PTCを挙げることができ、また、アントラキノジメタン、フルオレニリデンメタン、テトラシアノエチレン、フルオレノン、ジフェノキノンオキサジアゾール、アントロン、チオピランジオキシド、ジフェノキノン、ベンゾキノン、マロノニトリル、ニジトロベンゼン、ニトロアントラキノン、無水マレイン酸若しくはペリレンテトラカルボン酸、又はこれらの誘導体等、電荷輸送材料として通常使用されるものを用いることができる。
半導体層の電荷移動度は、なるべく高いことが望ましく、少なくとも、0.001cm2/Vs以上であることが望ましい。また、コレクタ電極側の第1半導体層の厚さは、通常、300nm〜1000nm程度を挙げることができるが、好ましくは400nm〜700nm程度である。一方、エミッタ電極側の第2半導体層の厚さは、第1半導体層に比べて基本的に薄いことが望ましく、通常、500nm程度以下を挙げることができるが、好ましくは50nm〜150nm程度である。なお、以上のとおりのエミッタ電極、コレクタ電極、ベース電極、そして有機半導体層を有する本発明の有機トランジスタ素子においては、ベース電極とコレクタ電極との間に電荷透過促進層を設けることを必須としている。
従来のMBOT素子では、大気下加熱処理を行わない場合には著しくオフ電流が大きく、トランジスタとしての変調が隠されてしまう。そこで、オフ電流抑制層をベース電極に隣接した挿入することにより、大気下加熱なしでも変調が観測可能となる。しかしながらこのようなオフ電流抑制層は、一般的にエミッタから供給された電子のベース電極透過過程を阻害してしまう傾向にあるため、全体的な変調電流量(オン電流量)が減少してしまう。これに対して、電荷透過促進層を、ベース電極とオフ電流抑制層の間に挿入することにより、エミッタ電極より供給された電子がベース電極を高確率で透過できるようになり、オン電流が著しく増加する。これらの効果により、大気下加熱処理を行うことなく、オフ電流を抑制し、オン電流を増加させることが可能となる。
このような電荷透過促進層としては、その機能を有しているものであれば任意であってもよいが、代表的には、アルカリ金属、特にCsよりもイオン化傾向の小さいLi、Na、K、Rb、あるいはアルカリ土類金属としてのCa、Ba、Srのハロゲン化物等の化合物や錯体の1種以上のものにより構成することが好ましい。そしてその膜厚については、通常は50nm以下、さらに好ましくは10nm以下であることが考慮される。
電気透過促進層については、ベース電極に隣接して設けることも好ましい。
また、本発明の有機トランジスタ素子においては、上記の電荷透過促進層に隣接して漏れ電流抑制層を設けることも有効である。この漏れ電流抑制層は、好適には、電子輸送性の有機半導体材で構成することができる。たとえば、後述の実施例にも例示しているC60、BP−PTC、TPP等である。これらは、コレクタ電極とベース電極との間に配設する有機半導体とは別種のものとすることが好適に考慮される。さらにまた、漏れ電流抑制層の構成材としては、有機系絶縁層や無機系絶縁層を挙げることができるが、上記厚さで成膜できることと漏小電流抑制層としての作用効果を奏することを条件に以下の具体例を挙げることができる。例えば、SiO2、SiN2、Al23等の無機材料や、ポリクロロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリオキシメチレン、ポリビニルクロライド、ポリフッ化ビニリデン、シアノエチルプルラン、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルフェノール、ポリサルホン、ポリカーボネート、ポリイミド等の有機材料等を挙げることができる。なお、これらの形成材料は、単独で用いてもよいし、2種以上の材料を用いてもよい。
また、有機系半導体材料や無機系半導体材料を用いてもよい。これらの材料から、好ましくは200nm以下の厚さで成膜できることと暗電流抑制層としての作用効果を奏することを条件に最適なものが選定される。これらの形成材料も上記同様、単独で用いてもよいし、2種以上の材料を用いてもよい。
さらに、本発明の効果を増強する素子形態として、ベース・コレクタ電極間の有機半導体層に隣接して、有機半導体より成る電流増加層を挿入することにより、上記電荷透過促進層の効果を著しく増強できることを特徴とする有機トランジスタが挙げられる。
この電流増加層を、上記電荷透過促進層と組み合わせることにより、さらなるオン電流の増加が可能となり、低電圧・大電流動作が可能なMBOT素子を、大気下加熱プロセスを用いることなく実現することができる。
この場合の有機半導体としては、たとえば後述の実施例にも示したように、有機半導体層Me−PTCに隣接してのBCP層やAlq3層等を考慮することができる。
本発明の有機トランジスタ素子については、従来より知られている真空蒸着等の気相成膜や塗布等の手段を用いて簡便に製造することができる。そして各種の電子・電気機器の一部を構成するものとして、たとえばスイッチングデバイス、発光デバイス等々として有用なものとなる。
そこで以下に実施例を示し、さらに詳しく説明する。もちろん以下の例によって発明が限定されることはない。
以下の例において有機半導体等としての略記号表示は次式のものを示している。
Figure 0005352118
<実施例1:電荷透過促進層挿入によるオン電流の増加>
図1は、実施例1における典型的な素子構造である。素子は、ITOガラス基板上に、真空蒸着によって成膜した。
下部コレクタ電極としてはITO、コレクタ半導体層としてMe−PTC、漏れ電流抑制としてC60、電荷透過促進層としてLiF、中間ベース電極としてAl、エミッタ半導体層としてC60、エミッタ電極としてAgを用いている。
測定はエミッタ接地で行い、一定の出力コレクタ電圧(Vc)をエミッタ・コレクタ間に印加しながら、入力ベース電圧(Vb)をエミッタ・ベース間に印加したときの、出力コレクタ電流(Ic)および入力ベース電流(Ib)の変化量を測定した。また、測定は窒素雰囲気のグローブボックス中で行った。
図2は、Me−PTC層のみでコレクタ層が形成された従来型素子と、漏れ電流抑制層C60、および、それに加えて電荷透過促進層LiFを備えた素子における、コレクタ電流−ベース電圧変調特性の比較である。
従来型素子においては、大気下加熱処理を全く行わない場合、オフ電流が著しく大きく、そのために高いベース電圧領域(2.5V以上)でわずかにコレクタ電流が増加する程度であり、トランジスタとしての変調がほとんど観測されない。
これに対して、電荷透過層LiFを挿入した素子(Me−PTC/C60/LiF)においては、オン電流の大幅な増加が観測された。その結果、ベース電圧に対してコレクタ電流は大幅に増加しており、また、55.7という電流増幅率を観測された。
表1に、Vc=5V、Vb=3Vでの変調特性(オン電流、オフ電流、電流増幅率hFE、オン/オフ比)を、コレクタ層の構造と合わせて示す。表1では上記の例に加えて、C60以外の材料を漏れ電流抑制層として用いた場合の結果を示す。電荷透過促進層としてLiFを用いることによって、漏れ電流抑制層として他の材料を用いても、従来型素子に比べて良好なトランジスタ特性が観測された。
ここで漏れ電流抑制層として有効であった材料、C60、BP−PTC、TPP、HATはいずれも深いLUMO単位を持ち、特にLUMOが3.5eV以上の材料が好ましい。
Figure 0005352118
<実施例2:電荷透過促進層に適した材料>
表2は、実施例1と同様の素子において、電荷透過促進層としてLiF以外の材料(Li2O、Liq、CsF、Cs2CO3)を用いた場合の変調特性である。素子は、大気圧下加熱処理なしで作製され、Vc=5V、Vb=3Vにおける変調電流量を標記してある。
実験の結果、Li2O、Liqを電荷透過促進層として用いた場合に、良好な結果が得られた。オン電流の大きさ、およびオン/オフ比の観点からは、LiFが最も優れるが、Li2Oを用いた場合には、高い電流増幅率が観測された。
Figure 0005352118
<実施例3:電流増加層によるオン電流増加および低電圧動作>
図3は、電流増加層を備えた素子の構造である。
電流増加層としてはBCPを用いた。他にも、Alq3やB4PYMPMなどの、有機ELに用いられる電子輸送性材料を用いることができる。
表3は、電流増加層を備えた素子の、Vc=3Vまたは2V、Vb=1Vにおける変調特性を示す。
BCPをMe−PTCとLiFの間に挿入することにより、著しいオン電流の増加が観測された。参照素子(Me−PTC/C60/LiF)がVc=3Vであるのに対して、電流増強層を備えた素子ではVcは2Vしか印加していないにもかかわらず、大幅な電流増加が観測された。
また、BCPを、オフ電流抑制層の下に挿入した素子構造(Me−PTC/BCP/C60/LiF)においても同じく大幅な電流増加が観測された。この場合も、オフ電流抑制層の効果により、オフ電流の減少と、オン/オフ比の改善が見られた。
Figure 0005352118
実施例1における素子構造の概要断面図である。 従来型素子構造と図1の素子構造とのコレクタ電流−ベース電圧変調特性の比較図である。 実施例3における素子構造の概要断面図である。

Claims (7)

  1. エミッタ電極とコレクタ電極との間に有機半導体層とシート状のベース電極が設けられ、前記有機半導体層がエミッタ電極とベース電極との間、並びにベース電極とコレクタ電極との間に設けられている有機トランジスタ素子であって、前記ベース電極とコレクタ電極の間に、電荷透過促進層を有し、前記ベース電極とコレクタ電極との間に、前記有機半導体層の前記ベース電極側に隣接して電流増加層が配置されていることを特徴とする有機トランジスタ素子。
  2. 前記電荷透過促進層は、ベース電極に隣接して配置されていることを特徴とする請求項1に記載の有機トランジスタ素子。
  3. 前記電荷透過促進層は、Li、Na、K、Rb、Ca、Sr、およびBaのアルカリ金属またはアルカリ土類金属の化合物もしくは錯体のうちの少なくとも1種により構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の有機トランジスタ素子。
  4. 請求項1から3のいずれか一項に記載の有機トランジスタ素子において、前記電荷透過促進層に隣接して漏れ電流抑制層が配置されていることを特徴とする有機トランジスタ素子。
  5. 前記漏れ電流抑制層は、電子輸送性有機半導体材により構成されていることを特徴とする請求項4に記載の有機トランジスタ素子。
  6. 前記電流増加層は、電子輸送性材により構成されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の有機トランジスタ素子。
  7. 請求項1から6のうちのいずれか一項に記載の有機トランジスタ素子をその構成の少なくとも一部としていることを特徴とする電子・電気機器
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