JP5327978B2 - フォンビルブラント因子切断酵素遺伝子解析による血栓性疾患関連の遺伝子変異検出方法 - Google Patents

フォンビルブラント因子切断酵素遺伝子解析による血栓性疾患関連の遺伝子変異検出方法 Download PDF

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Description

本発明は、ヒトのフォンビルブラント因子切断酵素遺伝子の1塩基変異の解析による、血栓性疾患、例えば血栓性血小板減少性紫斑病、溶血性尿毒症症候群、冠動脈疾患または脳卒中を引き起こす可能性を有する遺伝子変異の検出方法、該検出方法を利用する血栓性疾患罹患危険率の検査方法、該変異を有する遺伝子、並びに前記方法に用いるポリヌクレオチドおよび試薬キットに関する。
フォンビルブラント因子切断酵素(以下、vWF切断酵素と略称することもある。)は、高重合体として形成されるフォンビルブラント因子を切断して低重合体にする作用を有する酵素である。vWF切断酵素遺伝子は、第9染色体q34遺伝子座に存在する遺伝子であり(非特許文献1)、ADAMTS13〔a disintegrin−like and metalloprotease(reprolysin type)with thrombospondin type 1 motif,13〕とも称される。当該遺伝子は、29のエキソンを含み、その全長は約37kbであり、その塩基配列から推定される1427アミノ酸からなる蛋白質をコードしている(特許文献1)。当該遺伝子の変異や多型についても報告されている(非特許文献2)。
フォンビルブラント因子(以下、vWFと略称することもある。)は、血管内皮細胞および骨髄巨核球で産生される蛋白質であり、血小板膜蛋白質GPIbと血管内皮下組織の間に介在してこれらを結合させる接着因子として、止血初期の血小板粘着に係わる。また、循環血液中では、血液凝固第VIII因子と複合体を形成し、第VIII因子の安定化に寄与する。
vWF切断酵素により、血管内皮細胞から血中に放出された血小板凝集惹起能が強い高重合vWFは徐々に切断されて、血小板凝集惹起能が弱い低重合体になる。vWF切断酵素活性が低い場合には、相対的に高重合vWFが多くなることが知られている。つまり、vWF切断酵素活性が低下して血漿中vWF重合度が高くなった状態で、微小循環などの血管内皮細胞が傷害を受けると血小板血栓が形成され易くなる。形成された血小板血栓の周辺において、さらに血液凝固過程が進行してフィブリンクロットが形成され、強固な止血血栓ができる。血栓は通常、線溶活性により除去される。
生体内では血管が損傷した場合、血管の機能、血小板機能、凝固・線溶系などの密接な相互作用のもとに生理的な止血機構が働く。止血機構の異常は各種の出血性疾患や血栓性疾患などの原因になる。例えば、活性酸素による血管内皮細胞の障害と剥離、血流の変化(低下)および血液凝固能の亢進などにより血栓性疾患が引き起こされる。
血栓性疾患は、血栓による血管の狭窄あるいは閉塞に起因する疾患であり、血栓症と塞栓症とに分類できる。血栓症は、血栓がその形成箇所で血流を部分的にあるいは完全に閉塞することにより起こる症状であり、塞栓症は血栓がその形成箇所から剥がれて血流により移動し、他の箇所で血流を部分的にあるいは完全に閉塞することにより起こる症状をいう。
冠状動脈の閉塞による疾患として冠動脈疾患(coronary artery disease、以下CADと略称する。)が知られている。CADは虚血性心疾患(ischemic heart disease)とも呼ばれ、心筋への血液供給が著しく減少するため、心筋梗塞、狭心症あるいは不整脈などの症状が引き起こされる。
脳動脈の閉塞による疾患としては脳卒中(Stroke)が挙げられる。脳卒中は、虚血性脳血管障害と出血性脳血管障害の総称である。出血性脳血管障害には脳内出血やくも膜下出血などが、虚血性脳血管障害には脳梗塞や一過性脳虚血発作などが含まれる。脳梗塞は、脳卒中のなかに占める割合が高い。脳梗塞はその原因により2つ、すなわち脳血栓によるものと脳塞栓によるものとに大別される。脳血栓は脳の血管が動脈硬化などの変化により狭窄し、血流が悪くなって血栓を形成することに起因する。脳塞栓は心臓内や頚動脈において形成された血栓が血流により脳血管に運ばれた結果、脳血管の閉塞を起こすことに起因する。
近年、vWF切断酵素の活性低下が、血栓性血小板減少性紫斑病(以下、TTPと略称することもある。)に関与していることが報告された(非特許文献3−5)。また、TTP患者の血液中において、vWF切断酵素に対する阻害物質や抗体の存在が報告されている(非特許文献6)。さらに、TTPを伴う7家系において、vWF切断酵素の変異が同定されている(非特許文献1)。vWF切断酵素活性の低下により高重合vWFが増加した状態で、微小循環などの血管内皮細胞が傷害されるとTTPが発症すると考えられる。血管内皮細胞の傷害の成因は様々であるが、例えば、感染症においては細菌が産生する毒素が成因の1つとして知られている。また、抗癌剤や免疫抑制剤などの薬剤によっても血管内皮細胞が傷害されることが知られている。
TTPは、広範囲の微小血管障害に伴う血栓形成が本態であり、特に、脳、腎臓および冠状動脈などの細小動脈における血栓形成が原因となって発症する。TTPは全身性重篤疾患であり、血小板減少性紫斑、微小血管傷害性溶血、変動する精神神経症状、発熱、および腎機能障害の5兆候を特徴とする。病型は、特発性と二次性に分類され、特発性はさらに経過により急性、慢性、再発性に分類される。二次性のものとして、妊娠、自己免疫疾患(例えば、全身性エリテマトーデス(SLE)、リウマチ性関節炎、多発性筋炎、および多発性動脈炎など)、悪性腫瘍疾患(例えば、悪性リンパ腫、白血病、胃癌など)、感染症(例えば、ウイルスおよび細菌など)、あるいはワクチン接種に続発する例、各種薬剤(ペニシリン、サルファ剤、および各種抗癌剤など)の使用による例などが報告されている。TTPの治療法としては、vWF切断酵素の補充療法またはvWF切断酵素活性の阻害物質除去療法、および正常vWF切断酵素遺伝子の血管内皮細胞への導入療法が考えられている。
TTPと同様、血小板減少症、溶血性貧血および腎機能障害を3徴候とする疾患として、溶血性尿毒症症候群(hemolytic uremic syndrome、以下、HUSと略称する。)が知られている。TTPとHUSはその類似症状のため、TTP/HUSあるいは血栓性細小血管障害症(TMA)と総称されることがある。HUSは細小動脈の内壁が何らかの原因で障害され、血管内皮細胞の抗血小板機能が低減して、同所での血小板凝集および血小板消費により発症すると考えられている。好発原因となる因子は知られておらず、種々の疾患と感染に伴って引き起こされることが報告されている。
その他、vWFの異常に起因する疾患としては、遺伝的なvWFの欠乏に起因する出血を主徴とするフォンビルブラント病が知られている。フォンビルブラント病の臨床的所見としては、出血時間延長、血漿vWF抗原の低下、vWFの質的異常、リストセチン惹起血小板凝集の低下が挙げられる。フォンビルブラント病は、vWFの定量的欠乏症を1型、その質的異常症を2型、その完全欠損症を3型として、3つの病型に分類される。さらに、2型にはvWFの欠損による機能低下を示す2A型、血小板膜蛋白質GPIbとの親和性の異常亢進を示す2B型がある。また、第VIII因子との親和性が低下している質的異常症をN型という。治療には、血漿中vWF濃度を高める方法、例えば、vWF含有量の高い血漿由来第VIII因子/vWF複合体製剤や、合成抗利尿剤ホルモンである酢酸デスモプレシンの投与が行なわれる。
以下に、本明細書において引用した文献を列記する。
国際公開第WO02/42441号パンフレット。 レビー(Levy,G.G.)ら、「ネイチャー(Nature)」、2001年、第413巻、p.488−494。 コカメ(Kokame,K)ら、「プロシーディング オブ ザ ナショナル アカデミー オブ サイエンス オブ ザ ユナイテッド ステーツ オブ アメリカ(PROCEEDINGS OF THE NATIONAL ACADEMY OF SCIENCES OF THE UNITED STATES OF AMERICA)」、2002年、第99巻、p.11902−11907。 ファーラン(Furlan,M.)ら、「ブラッド(Blood)」、1997年、第89巻、p.3097−3103。 ファーラン(Furlan,M.)ら、「ニューイングランドジャーナル オブ メディシン(New England Journal of Medicine)」、1998年、第339巻、p.1578−1584。 ビアンキ(Bianchi,V.)ら、「ブラッド」、2002年、第100巻、p.710−713。 ツァイ(Tsai,H.−M.)ら、「ニューイングランドジャーナル オブ メディシン」、1998年、第339巻、p.1585−1594。
血栓形成に起因する血栓性疾患、例えば冠動脈疾患や脳卒中はヒトの死因において多くの割合を占める疾患である。冠動脈疾患や脳卒中は、これら疾患のリスクを高める因子、例えば喫煙、高血圧、高脂肪/高コレステロール食習慣、肥満およびストレスなどの是正により、その発症の危険率を低下させることができる。また、血栓性血小板減少性紫斑病は、その発症原因が多様であり、その原因に適した治療の選択が必要であり、種々の治療法の開発により発症後の予後が非常に改善しているが、治療抵抗例あるいは再発例が多い。したがって、これら疾患の発症リスクの回避、早期治療および各種病因に応じた治療法の選択を可能にするため、当該疾患の早期診断が望まれる。
本発明の課題は、血栓性疾患、例えば血栓性血小板減少性紫斑病、冠動脈疾患および脳卒中などの早期診断および罹患危険率判定を可能にする手段を提供することである。
本発明者らは、血栓形成の初期段階である血小板凝集に係るvWF切断酵素の遺伝子において見出した1塩基変異を、血栓性疾患、例えばTTP、HUS、CADあるいはStrokeなどを引き起こす可能性を有する遺伝子変異の検出方法に利用すること、並びにこれら疾患の早期診断および罹患危険率判定のための検査方法に利用することにより本発明を完成した。
すなわち、本発明は、
1.ヒトvWF−CP遺伝子内の第1786位の塩基がグアニンである1塩基変異を検出することを特徴とする、冠動脈疾患または脳卒中を引き起こす可能性を有する遺伝子変異の検出方法(ここで、第1786位の塩基の位置はGenBankアクセッション番号NM_139025に記載された該遺伝子のcDNA塩基配列(配列番号1)における位置として定義する。)、
2.ヒトvWF−CP遺伝子内の第1786位の塩基がグアニンである1塩基変異の検出を以下の工程を含む方法で行なうことを特徴とする、前記1.に記載の検出方法;
(i)配列番号11および配列番号12に記載のポリヌクレオチドをプライマーとして用いてポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を行う工程、
(ii)前記(i)の工程で得られたPCR産物について、配列番号13および配列番号14に記載のポリヌクレオチドをプライマーとして用いてPCRを行なう工程、
および
(iii)前記(ii)の工程で得られたPCR産物の配列を、配列番号13および配列番号14に記載のポリヌクレオチドをプライマーとして用いてシーケンス法により決定する工程、
3.前記1.または2.に記載の検出方法を用いる冠動脈疾患または脳卒中の罹患可能性の検査方法、
4.冠動脈疾患または脳卒中を引き起こす可能性を有する遺伝子変異の検出用の対立遺伝子特異的な核酸プローブであって、ヒトvWF−CP遺伝子のゲノム塩基配列における第1786位の塩基がグアニンである1塩基変異を検出可能な17個ないし30個の塩基からなる対立遺伝子特異的な核酸プローブ:
(ここで、第1786位の塩基の位置はGenBankアクセッション番号NM_139025に記載された該遺伝子のcDNA塩基配列(配列番号1)における位置として定義する。)、
5.冠動脈疾患または脳卒中を引き起こす可能性を有するヒトvWF−CP遺伝子内の第1786位の塩基がグアニンである1塩基変異の検出用ポリヌクレオチドであって、配列表の配列番号11、配列番号12、配列番号13、および配列番号14のいずれか1に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド(ここで、第1786位の塩基の位置はGenBankアクセッション番号NM_139025に記載された該遺伝子のcDNA塩基配列(配列番号1)における位置として定義する。)、
6.前記4.に記載の対立遺伝子特異的核酸プローブおよび前記5.に記載のポリヌクレオチドのうち少なくとも1つを含む試薬キット、
からなる。
本発明によれば、vWF切断酵素の活性低下によるvWFの異常に起因する疾患、例えば血栓性疾患、具体的にはTTP、HUS、CADあるいはStrokeなどの罹患危険率の判定および早期診断の実施が可能になる。そのため、CADあるいはStrokeなどの罹患危険率が高いと判定された場合、発症する前にそれらの危険因子、例えば喫煙、高血圧、高脂肪/高コレステロール食習慣、肥満およびストレスなどの是正を行なうことができる。また、TTPの罹患危険率が高いと判定された場合、当該疾患の誘発を回避できる治療法を選択することが可能になる。例えば、TTP罹患危険率が高いと判定された場合、TTPの発症を誘発する可能性のあるワクチン接種あるいは各種薬剤(ペニシリン、サルファ剤および各種抗癌剤など)の使用を避けて他の治療方法を選択することができる。または、TTPが発症した場合に、その病因を決定し、適切な治療方法を選択することができる。例えば、vWF切断酵素遺伝子の1塩基変異が検出された場合、1塩基変異による当該遺伝子の発現異常および/または当該酵素の量的異常若しくは質的異常が病因として考えられるので、vWF切断酵素の補充療法の選択が可能になる。1塩基変異が検出されなければ、TTPの発症は他の異常に起因すると考えて、それに適した療法を選択することが可能になる。例えば、病因がvWF切断酵素活性の阻害物質によるものと判断されれば、該阻害物質の除去療法を選択することができる。
このように本発明は、血栓性疾患、具体的にはTTP、HUS、CADあるいはStrokeなどの診断並びに当該疾患の防止および治療のための検査に有用である。
vWF切断酵素遺伝子のゲノム由来の野生型エキソン3−エキソン4断片を発現させた細胞において予想されるサイズのmRNA(エキソン3+エキソン4)が検出されたが、イントロン3 G/A変異型エキソン3−エキソン4断片を発現させた細胞では野生型よりも大きいサイズのmRNAが検出されたことを説明する図である。レーン3および4は、野生型エキソン3−エキソン4断片およびイントロン3 G/A変異型エキソン3−エキソン4断片をそれぞれ発現させた細胞から抽出したRNAを鋳型として、mRNA内のエキソン3由来部分を検出し得るプライマーセット1を用いて得たPCR産物を示す。レーン6および7は、上記各細胞から抽出したRNAを鋳型として、mRNA内のエキソン3−エキソン4由来部分を検出し得るプライマーセット2を用いて得たPCR産物を示す。レーン2および5は、上記断片をいずれも導入しない細胞から抽出したRNAを鋳型として、それぞれプライマーセット1およびプライマーセット2を用いてPCRにより得た増幅産物を示す。レーン1は100bpマーカーである。(実施例3) vWF切断酵素遺伝子の野生型エキソン3−エキソン4断片を発現させた細胞において正常なスプライシングが行なわれたことを説明する図である。(実施例3) vWF切断酵素遺伝子のゲノム由来において、エキソン3に続くイントロン3の5´末端(ゲノムDNA配列中第3066539位)の塩基がGからAに変異することにより、イントロン3の5´−スプライス部位が27塩基下流に変化し、それによりmRNAのスプライシングバリアントが生じたことを説明する図である。検討は、イントロン3 G/A変異型エキソン3−エキソン4断片を用いたミニジーン発現系で行なった。(実施例3) vWF切断酵素遺伝子において、エキソン3に続くイントロン3の5´末端(ゲノムDNA配列中第3066539位)の塩基がGからAに変異することにより、イントロン3の5´−スプライス部位が105塩基下流に変化し、それによりmRNAのスプライシングバリアントが生じたことを説明する図である。検討は、イントロン3 G/A変異型エキソン3−エキソン4断片を用いたミニジーン発現系で行なった。(実施例3)
本発明は、血栓性血小板減少性紫斑病において見出したvWF切断酵素遺伝子における1塩基変異を、血栓性疾患を引き起こす可能性を有する遺伝子変異の検出方法として利用することにより達成したものである。さらに、本発明においては、該検出方法を用いることを特徴とする、血栓性疾患の罹患危険率の検査方法を提供することができる。血栓性疾患としては、例えばvWF切断酵素遺伝子の発現異常および/または当該酵素の量的異常若しくは質的異常に起因する血栓性疾患を挙げることができる。具体的にはTTP、HUS、CADおよびStrokeなどが例示できる。
本発明においては、エキソンにおける1塩基変異を判断する基準の配列として、NM_139025に記載されたヒトvWF切断酵素遺伝子のcDNA塩基配列(配列番号1)を用いた。イントロンにおける1塩基変異を判断する基準の配列としては、GenBankアクセッション番号NT_035014.3の第9染色体コンティグ配列に記載されたヒトvWF切断酵素遺伝子のゲノム塩基配列を用いた。これら基準の配列を参照配列と呼称することもある。1塩基変異が存在する塩基の位置は、これら参照配列における塩基の位置として定義する。
vWF切断酵素遺伝子における1塩基変異は、上記ゲノム塩基配列または上記cDNA塩基配列(配列番号1)における1塩基変異の位置を示す数字と、1塩基変異を有する遺伝子における該位置の塩基を表わす記号の組合わせで示すことがある。例えば1193Tは、vWF切断酵素遺伝子のcDNA塩基配列(配列番号1)の第1193位に1塩基変異が存在し、該位置の塩基がチミン(T)であることを意味する。
1塩基変異を含むコドンがコードするアミノ酸は、GenBankアクセッション番号NM_139025に記載のvWF切断酵素遺伝子のcDNA(配列番号1)がコードするアミノ酸配列(配列番号2)における該アミノ酸の位置を示す数字とアミノ酸を表わす記号との組合わせで示すことがある。この場合、アミノ酸表記は1文字表記する。例えばQ448Eは、第448番目のアミノ酸が、1塩基変異の無いvWF切断酵素ではグルタミン(Q)であるが、1塩基変異によりグルタミン酸(E)に変異していることを示す。
TTP患者由来のvWF切断酵素遺伝子において見出した1塩基変異は、アミノ酸変異を伴う1塩基変異4種〔1193T(A250V)、1786G(Q448E)、3050A(G869S)および3152T(S903L)〕、スプライシングバリアントを生じる1種(イントロン3 G/A)、およびアミノ酸変異のみられない1塩基変異3種〔1992A(T506T)、2160A(T572T)および2724C(G760G)〕である(表1および2参照。)。イントロン3 G/Aは、イントロン3の5´末端の塩基(上記ゲノム塩基配列中第3066539位)のグアニン(G)からアデニン(A)への変異を意味する。
参照配列である上記ゲノム塩基配列において、第3066539位に相当する塩基はGである。また、参照配列である上記cDNA塩基配列(配列番号1)において、第1193位、第1786位、第1992位、第2160位、第2724位、第3050位および第3152位に相当する塩基はそれぞれ、C、C、C、A、C、GおよびCである(表1および2参照。)。
但し、本発明者らの知見では、日本人は、第2160位の塩基はGがドミナントであり、Aに変異することがTTPの発症に強く関連すると考えられる。また、第2724位の塩基は、日本人においてこの位置の塩基がTであるアレルが多く、Cに変異することがTTPの発症に強く関連すると考えられる。
イントロン3 G/A、1193T(A250V)、1992A(T506T)、3050A(G869S)および3152T(S903L)は、GenBankなどの遺伝子データベース検索を行ったところ、いずれも今までに報告されていない新規1塩基変異であった。一方、1786G(Q448E)、2160A(T572T)および2724C(G760G)は既に報告されている〔コカメ(Kokame,K)ら、「プロシーディング オブ ザ ナショナル アカデミー オブ サイエンス オブ ザ ユナイテッド ステーツ オブ アメリカ(PROCEEDINGS OF THE NATIONAL ACADEMY OF SCIENCES OF THE UNITED STATES OF AMERICA)」、2002年、第99巻、p.11902−11907〕。しかし、報告されている1塩基変異とTTPとの関連性は知られていない。
上記塩基の変異以外に、TTP/HUS患者由来のWF切断酵素遺伝子において、第1460位および第第2296位の1塩基変異を見出した。具体的には、TTP/HUS患者1例由来のvWF切断酵素遺伝子において、第1460位、第1786位、第2160位および第2296位にあたる全ての塩基の変異を見出した。さらに、TTP/HUS患者2例の各vWF切断酵素遺伝子において、第1460位、第1786位、第2160位、第2296位および第2724位にあたる全ての塩基の変異を見出した。これら変異のうち、第1460位の塩基の変異は、アミノ酸変異を伴う1塩基変異〔1460G(T339R)〕である。第1786位、第2160位および第2724位の各塩基の変異は、上記同様、それぞれグアニン(G)、アデニン(A)およびシトシン(C)への変異であった。第2296位の塩基の変異は、アミノ酸変異を伴う1塩基変異〔2296G(P618A)〕であった。参照配列であるcDNA塩基配列(配列番号1)において、第1460位および第2296位に相当する塩基は、それぞれCおよびCである(表5参照)。
1460G(T339R)は、GenBankなどの遺伝子データベース検索を行ったところ、今までに報告されていない新規1塩基変異であった。一方、2296G(P618A)およびこの変異とTTPとの関連の可能性は既に報告されている〔アントニー(Antonie G.)ら、「ブリティッシュ ジャーナル オブ ヘマトロジー(British Journal of Haematology」、2003年、第120巻、p.821−824〕。
イントロン3 G/Aは、イントロン3の5´末端の塩基における変異である。そのため該変異によりイントロン3の5´−スプライス部位が、変異の無い遺伝子におけるスプライス部位より下流に変化し、スプライシングバリアントが生じることが判明した。すなわち、イントロン3 G/Aを有するvWF切断酵素遺伝子からは、該遺伝子のエキソン3由来の塩基配列の3´末端とエキソン4由来の塩基配列の5´末端との間に、該遺伝子のイントロン3由来の塩基配列が挿入されてなるスプライシングバリアントが生じる。イントロン3由来の塩基配列として、具体的には例えば、配列番号40に記載の27塩基からなる塩基配列または配列番号41に記載の105塩基からなる塩基配列を挙げることができる。このようなスプライシングバリアントは、vWF切断酵素のアミノ酸配列に変異を生じさせる。
アミノ酸変異を伴う蛋白質は、構造変化に伴い、正常なvWF切断酵素の機能を減弱ないし消失させることが予想される。例えば、エキソン3を含む領域にはメタロプロテアーゼドメインが存在するため、イントロン3 G/Aが当該ドメイン機能を変え、ひいては正常なvWF切断酵素の機能を減弱ないし消失させると考えられる。また、スプライシングバリアントのRNA安定性についても低いと考えられ、遺伝子から遺伝子産物発現およびその機能に至るまで正常と比べ生体制御的観点では不利益が生じる。
1193T(A250V)は、vWF切断酵素が属するADAMTSファミリー酵素の活性部位のアミノ酸配列において高度に保存されているメチオニン残基の隣に位置している〔キャル(Cal,S.)ら、「ジーン(Gene)」、2002年、第283巻、p.49−62〕。当該メチオニン残基が含まれるメチオニンターン(Met−turn)構造はメタロプロテアーゼなどの亜鉛ペプチダーゼに特徴的な配列で、3つのヒスチジン残基と共に、Zn2+の結合に必須である〔ボウド(Boud,W.)ら、「フェブス レターズ(FEBS LETTERS)」、1993年、第331巻、p.134−140〕。vWF切断酵素における1193T(A250V)は、このメチオニンターン構造に影響を及ぼすことによってZn2+の結合の変化または不結合状態を与え、プロテアーゼ活性を低下させる可能性が高いと考えられる。
3152T(S903L)は、トロンボスポンジン1(TSP1)ドメインに存在する。TSP1は、他の蛋白質、例えばヘパリン、フィブリノーゲン、フィブロネクチン、プラスミノーゲン、V型コラーゲンおよびスルファチドなどと結合することが知られている。このことから、この1塩基変異はvWF切断酵素の基質との特異的結合性や結合能に影響すると考えている。
一方、アミノ酸変異を伴わない1塩基変異であっても、例えば遺伝子転写産物の安定性が低下するなどの異常が起きることが考えられる。vWF切断酵素遺伝子は1塩基変異が高頻度に存在する遺伝子であり、既に幾つかの1塩基変異が報告されている。しかし、今までに報告されている1塩基変異は、遺伝子発現や遺伝子産物の性質に影響しないサイレントミューテーションか、遺伝子産物のアミノ酸変異を伴うとしても、性質の類似したアミノ酸間の変異である。このことから、本発明に係る1塩基変異は、従来報告されている1塩基変異と比較して、vWF切断酵素遺伝子の転写・翻訳やその遺伝子産物の活性の変化に重要な影響を与えるものであり、当該遺伝子産物の異常に起因する疾患と深く関連すると考えている。
本発明に係る遺伝子変異の検出方法は、これら知見に基づいて達成したものであり、ヒトのvWF切断酵素遺伝子内の1塩基変異が存在する位置における塩基を決定し、その塩基の種類を正常遺伝子のものと比較することにより、血栓性疾患を引き起こす可能性を有する遺伝子変異を検出することを特徴とする。
塩基の決定は、ヒトvWF切断酵素遺伝子の塩基配列の次の位置に相当する塩基について行なう:好ましくは上記ゲノム塩基配列における第3066539位、並びに上記cDNA塩基配列(配列番号1)における第1193位、第1460位、第1786位、第1992位、第2160位、第2724位、第3050位および第3152位であり、より好ましくは、第3066539位、第1193位、第1786位、第1992位、第3050位および第3152位である。塩基の決定はこれら位置の1つまたは2つ以上について行なう。
塩基の決定方法は、自体公知の方法を使用して実施可能である。例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(以下、PCRと略称する。)により、所望の位置の塩基を含むvWF切断酵素遺伝子の部分配列を増幅し、得られた増幅産物の塩基配列をシーケンス法、例えばダイレクトシーケンシング法により配列決定する方法を用いることができる。配列決定法としてはシーケンス法以外に、ハイブリダイゼーション法および制限酵素断片長多型解析法などが利用できる。本発明に係る1塩基変異の解析はこれら方法に限らず、自体公知の方法を適用して実施可能である。1塩基変異の解析方法として、蛍光を用いる方法、例えばインベーダーアッセイ〔リアミチェフ(Lyamichev,V.)ら、「ネイチャー バイオテクノロジー(Nature Biotechnology)」、1999年、第17巻、p.292−296〕やルミネックス法〔チェン(Chen,J.)ら、「ゲノム リサーチ(Genome Research)」、2000年、第10巻、p.549−557〕が知られている。また、マススペクトルを用いる方法、例えばプライマー伸張法を応用した方法を用いることもできる。かかる方法としては、ピンポイントアッセイ〔ロス(Ross,P.)ら、「ネイチャー バイオテクノロジー」、1998年、第16巻、p.1347−1351〕やプローブ法〔ブラウン(Braun,A.)ら、「クリニカル ケミストリー(Clinical Chemistry)」、1997年、第43巻、p.1151−1158〕などが例示できる。さらに、ドールアッセイ〔DOL assay、チェン(Chen,X.)ら、「プロシーディング オブ ザ ナショナル アカデミー オブ サイエンス オブ ザ ユナイテッド ステーツ オブ アメリカ」、1997年、第94巻、p.10756−10761〕、スナイパーアッセイ〔ピアテク(Piatek,A.S.)ら、「ネイチャー バイオテクノロジー」、1998年、第16巻、p.359−363〕およびタグアレイ法〔ファン(Fan,J−B.)ら、「ゲノム リサーチ(Genome Research)」、2000年、第10巻、p.853−860〕なども使用可能である。これら方法は、これらが報告されている引用文献を参照することにより容易に実施することができる。
被検試料は、ヒト由来の血液、髄液、気管支肺胞洗浄液、痰、または他の体液、あるいは組織などから調製した核酸試料を用いる。核酸試料の調製は、自体公知の核酸調製法により実施できる。本発明に係る1塩基変異のうちエキソンに存在する1塩基変異の検出には、核酸試料として、ゲノムDNA、cDNAまたはRNAのいずれも使用可能である。また、イントロン3 G/Aはスプライシングバリアントを生じる変異であるため、その検出に用いる核酸試料として、ゲノムDNA、cDNAまたはRNAのいずれも使用可能である。調製した核酸は直接検出に使用してもよく、あるいは分析前に所望の領域をポリメラーゼ連鎖反応(以下、PCRと略称する。)またはその他の増幅法を用いることにより酵素的に増幅してもよい。cDNAまたはRNAを用いて1塩基変異を検出する場合は、ゲノム塩基配列において1塩基変異が存在する位置に対応する、cDNAまたはRNAにおける位置の塩基の決定を行なう。
本発明に係る遺伝子変異の検出方法の1例として、第3066539位の1塩基変異の検出は、例えば、vWF切断酵素遺伝子のゲノムDNAについて、配列番号3および配列番号4に記載のポリヌクレオチドをプライマーとして用いてPCRを行い、得られた増幅産物の配列を配列番号5および配列番号6に記載のポリヌクレオチドをプライマーとして用いて再度PCRを行い、ついで2回目のPCRに用いたプライマーを使用してシーケンス法で塩基を決定することにより実施できる。同様に、第1193位の1塩基変異の検出は、第1PCR用プライマーとして配列番号7および配列番号8に記載のポリヌクレオチドを用い、第2PCR用プライマーおよびシーケンス用プライマーとして配列番号9および配列番号10に記載のポリヌクレオチドを用いて実施できる。第1786位の1塩基変異の検出は、第1PCR用プライマーとして配列番号11および配列番号12に記載のポリヌクレオチドを用い、第2PCR用プライマーおよびシーケンス用プライマーとして配列番号13および配列番号14に記載のポリヌクレオチドを用いて実施できる。第1992位の1塩基変異の検出は、第1PCR用プライマーとして配列番号15および配列番号16に記載のポリヌクレオチドを用い、第2PCR用プライマーおよびシーケンス用プライマーとして配列番号17および配列番号18に記載のポリヌクレオチドを用いて実施できる。第2160位の1塩基変異の検出は、第1PCR用プライマーとして配列番号19および配列番号20に記載のポリヌクレオチドを用い、第2PCR用プライマーおよびシーケンス用プライマーとして配列番号21および配列番号22に記載のポリヌクレオチドを用いて実施できる。第2724位の1塩基変異の検出は、第1PCR用プライマーとして配列番号23および配列番号24に記載のポリヌクレオチドを用い、第2PCR用プライマーおよびシーケンス用プライマーとして配列番号25および配列番号26に記載のポリヌクレオチドを用いて実施できる。第3050位の1塩基変異の検出は、第1PCR用プライマーとして配列番号27および配列番号28に記載のポリヌクレオチドを用い、第2PCR用プライマーおよびシーケンス用プライマーとして配列番号29および配列番号30に記載のポリヌクレオチドを用いて実施できる。第3152位の1塩基変異の検出は、第1PCR用プライマーとして配列番号31および配列番号32に記載のポリヌクレオチドを用い、第2PCR用プライマーおよびシーケンス用プライマーとして配列番号33および配列番号34に記載のポリヌクレオチドを用いて実施できる。あるいは、これら1塩基変異の検出は、それぞれ上記各第1PCR用プライマーを用いてPCRを行い、該プライマーをシーケンス用プライマーとして用いてシーケンス法により塩基を決定することにより実施できる。第1460位の1塩基変異の検出は、例えば、vWF切断酵素遺伝子のゲノムDNAについて、配列番号42および配列番号43に記載のポリヌクレオチドをプライマーとして用いてPCRを行い、得られた増幅産物の配列を、該プライマーを用いてシーケンス法で塩基を決定することにより実施できる。
第3066539位の1塩基変異の検出はまた、該変異によりスプライシングバリアントが生じることを利用して、該スプライシングバリアントを検出することにより実施できる。すなわち、被検試料からRNAを抽出し、該RNA試料について配列番号37および配列番号39に記載の各ポリヌクレオチドをプライマーとして用いて逆転写ポリメラーゼ反応(RT−PCR)を行い、得られた増幅産物の塩基配列の決定あるいは大きさの測定により、当該変異の検出が可能である。増幅産物が、当該1塩基変異をもたない遺伝子を鋳型として同様にRT−PCRを行なった増幅産物と比較して、そのサイズが大きい場合、被検試料にはスプライシングバリアントが存在する、すなわち第3066539位の1塩基変異が存在すると判定できる。増幅産物のサイズは、アガロースゲル電気泳動法などの公知方法により決定できる。
第3066539位、第1193位、第1460位、第1786位、第1992位、第2160位、第2724位、第3050位または第3152位における1塩基変異はまた、対立遺伝子特異的核酸プローブを用いて、ハイブリダイゼーション法により検出することも可能である。対立遺伝子(allele)とは、同一遺伝子座に起こったDNA塩基配列の差に基づく差異を有する2個以上の遺伝子をいう。
核酸プローブとしては、vWF切断酵素遺伝子の塩基配列において3066539A、1193G、1460G、1786G、1992A、2160A、2724C、3050Aまたは3152Tで表わされる1塩基変異を含む塩基配列またはその相補的塩基配列からなるポリヌクレオチドの、当該1塩基変異を示す位置の塩基を含む塩基配列に実質的に相補的な塩基配列を有するポリヌクレオチドが例示できる。「実質的に相補的な塩基配列を有する」とは、プローブとして使用したときに、被検試料中において1塩基変異を含む塩基配列またはその相補的塩基配列を例えばストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で検出することができることを意味する。ハイブリダイゼーションの条件は、例えば成書に記載の方法〔サムブルック(Sambrook)ら編、「モレキュラークローニング,ア ラボラトリーマニュアル 第2版」、1989年、コールドスプリングハーバーラボラトリー〕などに従うことができる。
第3066539位における変異は、エキソン3とエキソン4との間にイントロン3由来の塩基配列が挿入されたスプライシングバリアントを生じるため、該スプライシングバリアントを検出することにより変異の検出が可能である。したがって、該挿入された塩基配列を特異的に検出可能な核酸プローブを用いてハイブリダイゼーション法により変異の検出が可能である。かかるプローブとしては、イントロン3由来の塩基配列、例えば配列番号40または配列番号41に記載の塩基配列に実質的に相補的な塩基配列を有するポリヌクレオチドが例示できる。
プローブとして用いるポリヌクレオチドは、好ましくは8個ないし50個のヌクレオチド、より好ましくは17個ないし35個のヌクレオチド、さらに好ましくは17個ないし30個のヌクレオチドからなる。プローブは、3066539A、1193G、1460G、1786G、1992A、2160A、2724C、3050Aまたは3152Tで表わされる1塩基変異を有するvWF切断酵素遺伝子の塩基配列またはその相補的塩基配列に基づいて設計し、慣用の方法、例えば化学合成などにより作製可能である。得られたポリヌクレオチドから、上記1塩基変異を有する塩基配列または該塩基配列の相補的塩基配列からなるポリヌクレオチドの、当該1塩基変異を示す位置の塩基を含む塩基配列で表わされる遺伝子断片にストリンジェントな条件下でハイブリダイゼーションするものを選択することにより、目的とするプローブが得られる。また、イントロン3 G/Aを検出するためのプローブを、イントロン3の塩基配列、例えば配列番号40または配列番号41に記載の塩基配列に基づいて設計し、同様に取得可能である。これらプローブは、検出のためのマーカー、例えば蛍光物質や放射性同位体などで標識されたものであってもよい。標識体はこれらに限らず、プローブと対応するポリヌクレオチドとのハイブリダイゼーションが阻害されないものであれば用いることができる。上記1塩基変異の検出方法は例示に過ぎず、本発明において用いることのできる検出方法はこれらに限定されない。
本発明に係る1塩基変異は、TTPにおいて見出した変異であり、ゆえに上記1塩基変異の1つまたは2つ以上を検出することにより、TTPを引き起こす可能性を有する遺伝子変異の検出が可能である。
本発明に係る1塩基変異のうち第3066539位の塩基のアデニンへの変異および第1193位のチミンへの変異がHUS患者由来のゲノムDNA試料で見出された。このことから、第3066539位および/または第1193位における1塩基変異を検出することにより、HUSを引き起こす可能性を有する遺伝子変異を検出することができる。これら1塩基変異が認められた患者におけるvWF切断酵素活性は3%以下(健常人の酵素活性を100%とする。)であった。該患者の両親のvWF切断酵素活性は父親46%、母親46%であるものの、TTP/HUS様症状は認められなかった。遺伝子解析の結果、患者のvWF切断酵素遺伝子はこれら変異をヘテロ(heterozygous)に有し、その母親は第3066539位の変異をヘテロに有するが第1193位の変異はもたないことが明らかになった。この患者はこれら両方の変異を有することにより、病態が発症したと考えられる。
本発明に係る1塩基変異のうち第1786位の塩基のグアニンへの変異がCADまたはStrokeの発症と関連することを統計的手法により明らかにした。すなわち、該1塩基変異が、CADまたはStrokeの危険因子の1つであると考えられる。したがって、第1786位における1塩基変異を検出することにより、CADまたはStrokeを引き起こす可能性を有する遺伝子変異を検出することができる。
本発明に係る遺伝子変異の検出方法は、血栓性疾患の罹患危険率を判定するための検査方法に利用することができる。疾患罹患危険率は、試料中のvWF切断酵素遺伝子の塩基配列を、対照と比較することにより判定できる。対照として、好ましくはGenBankアクセッション番号NT_035014.3に記載されたヒトvWF切断酵素遺伝子のゲノム塩基配列またはGenBankアクセッション番号NM_139025に記載されたヒトvWF切断酵素遺伝子のcDNA塩基配列(配列番号1)を用いることができる。あるいは、健常人またはvWF切断酵素遺伝子の異常が無い疾患の患者由来の核酸試料に含まれるvWF切断酵素遺伝子の塩基配列を用いることがより好ましい。すなわち、被検試料中のvWF切断酵素遺伝子のゲノム塩基配列第3066539位、並びに該遺伝子のcDNA塩基配列(配列番号1)第1193位、第1786位、第1992位、第2160位、第2724位、第3050位および第3152位に相当する位置の塩基から選択される1つまたは2つ以上の塩基を決定し、当該各位置における塩基の種類を対照と比較した結果、対照とは異なる塩基、例えばそれぞれA、T、G、A、A、C、AおよびTであることが認められたときには、疾患罹患率が高いと判定することができる。これらの変異は対立遺伝子の双方で検出されてもよく、一方のみで検出されてもよい。
本検査方法により罹患危険率を判定できる疾患は、vWF切断酵素遺伝子の1塩基変異による、当該遺伝子の発現の異常および/または当該酵素の量的異常若しくは質的異常に起因する疾患である。例えば、好ましくはこれらの異常が関連する血栓性疾患、具体的にはTTP、HUS、CADまたはStrokeの罹患危険率の検出に用いる。あるいは、vWFの量的および/または質的異常に起因するフォンビルブラント病、中でもvWF重合体の質的異常による2型フォンビルブラント病の罹患危険率を検出することも可能である。
TTP/HUS患者由来のゲノムDNA試料においてvWF切断酵素遺伝子の第1460位、第1786位、第2160位および第2296位の塩基全ての変異が見出されたことから、これらを検出することにより、HUSを引き起こす可能性を有する遺伝子変異を検出することができる。さらに、TTP/HUS患者2例の各ゲノムDNA試料において、第1460位、第1786位、第2160位、第2296位および第2724位の塩基全ての変異が見出されたことから、これら変異を検出することにより、血栓性疾患、例えばHUSを引き起こす可能性を有する遺伝子変異を検出することができる。例えば、第1460位、第1786位、第2160位、第2296位および第2724位の塩基のうちの少なくとも1つ塩基の変異を検出することにより、血栓性疾患を惹き起こす可能性を有する遺伝子変異を検出することができる。好ましくは、第1460位、第1786位、第2160位および第2296位の塩基全ての変異を検出することによりHUSを引き起こす可能性を有する遺伝子変異を検出することができる。また、第1460位、第1786位、第2160位、第2296位および第2724位の塩基全ての変異を検出することによりHUSを引き起こす可能性を有する遺伝子変異を検出することができる。
第2296位の1塩基変異の検出は、例えば、vWF切断酵素遺伝子のゲノムDNAについて、配列番号44および配列番号45に記載のポリヌクレオチドをプライマーとして用いてPCRを行い、得られた増幅産物の配列を配列番号44および配列番号45に記載のポリヌクレオチドを使用してシーケンス法で決定することにより実施できる。
TTP/HUS患者由来のゲノムDNA試料においてこれら変異が見出されたことから、該変異の検出方法はHUS罹患危険率を判定するための検査方法に利用することができる。具体的には、被検試料中のvWF切断酵素遺伝子のcDNA塩基配列(配列番号1)の第1460位、第1786位、第2160位および第2296位に相当する位置の塩基を決定し、当該各位置における塩基の種類を対照と比較した結果、これら全ての位置の塩基が対照とは異なる塩基、例えばそれぞれG、G、AおよびGであることが認められたときには、HUS罹患率が高いと判定することができる。また、被検試料中のvWF切断酵素遺伝子のcDNA塩基配列(配列番号1)第1460位、第1786位、第2160位、2296位および第2724位に相当する位置の塩基を決定し、これら全ての位置の塩基が対照とは異なる塩基、例えばそれぞれG、G、A、GおよびCであることが認められたとき、HUS罹患率が高いと判定することができる。
本発明はまた、本発明に係る1塩基変異の少なくとも1つを有するvWF切断酵素遺伝子の塩基配列または該塩基配列に相補的塩基配列を有するポリヌクレオチドを提供する。また、本発明に係る1塩基変異によるスプライシング異常により生じたポリヌクレオチドを提供することも可能である。また、上記対立遺伝子特異的なプローブやプライマーも提供可能である。本発明において、ポリヌクレオチドには、デオキシリボヌクレオチドからなるポリデオキシリボヌクレオチド(DNA)およびリボヌクレオチドからなるポリリボヌクレオチド(RNA)が含まれる。リボヌクレオチドは修飾されたリボヌクレオチドであってもよい。
本発明に係るポリヌクレオチドは、本発明により開示されたその具体的な塩基配列に関わる情報に基づいて、公知の遺伝子工学的手法〔サムブルック(Sambrook)ら編、「モレキュラークローニング,ア ラボラトリーマニュアル 第2版」、1989年、コールドスプリングハーバーラボラトリー;および村松正實編、「ラボマニュアル遺伝子工学」、1988年、丸善株式会社等を参照〕により容易に取得することができる。具体的には、本発明に係るポリヌクレオチドの発現が確認されている適当な起源から、常法に従ってcDNAライブラリーを調製し、該cDNAライブラリーから所望のクローンを選択することにより本ポリヌクレオチドを取得可能である。cDNAの起源として、本ポリヌクレオチドの発現が確認されている各種の細胞や組織、またはこれらに由来する培養細胞等が例示できる。これら起源からの全RNAの分離、mRNAの分離や精製、cDNAの取得とそのクローニング等はいずれも常法に従って実施可能である。cDNAライブラリーから所望のクローンを選択する方法も特に制限されず、慣用の方法を利用できる。例えば、プラークハイブリダイゼーション法、コロニーハイブリダイゼーション法等やこれらを組合せた方法等を例示できる。その他、ポリメラーゼ連鎖反応〔以下、PCRと略称する、ウルマー(Ulmer,K.M.)、「サイエンス(Science)」、1983年、第219巻、p.666−671;エールリッヒ(Ehrlich,H.A.)編、「PCRテクノロジー,DNA増幅の原理と応用」、1989年、ストックトンプレス;およびサイキ(Saiki,R.K.)ら、「サイエンス(Science)」、1985年、第230巻、p.1350−1354〕によるDNA/RNA増幅法が好適に利用できる。また、RACE法(「実験医学」、1994年、第12巻、第6号、p.35−)や5´−RACE法〔フローマン(Frohman,M.A.)ら、「プロシーディングス オブ ザ ナショナル アカデミー オブ サイエンシズ オブ ザ ユナイテッド ステーツ オブ アメリカ(Proceedings of The National Academy of Sciences of The United States of America)」、1988年、第85巻、第23号、p.8998−9002〕等を利用することも可能である。このような方法で得られるポリヌクレオチドの塩基配列の決定は、常法、例えばジデオキシ法〔「プロシーディングス オブ ザ ナショナル アカデミー オブ サイエンシズ オブ ザ ユナイテッド ステーツ オブ アメリカ(Proceedings of The National Academy of Sciences of The United States of America)」、1977年、第74巻、p.5463−5467〕やマキサム−ギルバート法〔「メソッズ イン エンザイモロジー(Methods in Enzymology)」、1980年、第65巻、p.499−560〕等により、また簡便には市販のシーケンスキット等を用いて実施できる。
上記ポリヌクレオチド、上記プロ−ブおよび上記プライマーは、いずれも試薬として使用できる。また、これらの1種またはそれ以上を充填した、1個またはそれ以上の容器を含んでなる試薬キットも本発明の範囲に包含される。本試薬キットは、1塩基変異検出用の標識物質、緩衝液、並びに塩など、測定の実施に必要とされる物質を含むことができる。さらに、安定化剤および/または防腐剤などの物質を含んでいてもよい。製剤化にあたっては、使用する各物質、例えばポリヌクレオチドに応じた自体公知の製剤化手段を導入すればよい。かかる試薬および試薬キットは、本発明に係る検出方法および検査方法に、検査剤並びに検査用キットとして使用可能である。
以下、本発明を実施例に基づき具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されない。
また、実施例に記載した実験は、試料提供者である患者のインフォームドコンセントを得て行なったものである。
(vWF切断酵素遺伝子の各エキソン塩基配列の解析)
vWF切断酵素遺伝子の29エキソンについて、各エキソンの塩基配列における変異の検出をゲノムDNA試料を用いて行なった。ゲノムDNA試料は7例のTTP患者から供与を受けた。検出は、試料中のvWF切断酵素遺伝子のゲノムDNAから標的領域を増幅し、得られた増幅産物の塩基配列をダイレクトシーケンシング法を用いて決定することにより実施した。
標的領域の増幅はPCRにより行なった。PCR用プライマーは、vWF切断酵素遺伝子のゲノム塩基配列(GenBankアクセッション番号NT_035014.3)の各エキソンの上流および下流の塩基配列に基づいて設計し作製した(下記参照。)。
PCR反応液48μl、第1PCRプライマー(10μM)1μlおよびDNA試料1μl(合計50μl)を混合し、第1PCRを以下の条件で行なった。
PCR条件
1) 95℃ 1分間
2) 95℃ 30秒間
3) 48℃ 30秒間
4) 72℃ 2.5分間
2)から4)の工程は30サイクル行なった。
5) 72℃ 10分間
次いで、PCR反応液48μl、第2PCRプライマー(10μM)1μlおよび第1PCRの増幅産物1μl(合計50μl)を混合し、第1PCRの条件と同じ条件で第2PCRを行なった。
第2PCRの増幅産物の塩基配列の決定を、ABI3100シーケンサーを用い、ABI測定マニュアルにしたがってシーケンス反応を行うことにより実施した。シーケンシング用プライマーは第2PCRに用いたプライマーと同一のものを用いた。その結果を表1に示す。
:塩基の位置は、GenBankアクセッション番号NT_035014.3に記載されたヒトvWF切断酵素遺伝子のゲノム塩基配列における位置として示す。
**:塩基の位置は、GenBankアクセッション番号NM_139025に記載されたヒトvWF切断酵素遺伝子のcDNA塩基配列(配列番号1)における位置として示す。
:配列番号1に記載のcDNA塩基配列第2160位に相当する塩基はAである。但し、日本人ではこの位置の塩基はGがドミナントである。
##:配列番号1に記載のcDNA塩基配列第2724位に相当する塩基はCである。但し、日本人においてはこの位置の塩基がTであるアレルが多い。
表1に示したように、アミノ酸変異を伴う1塩基変異3種(Q448E、G869SおよびS903L)、スプライシングバリアントを生じると予想される1種(イントロン3 G/A)、およびアミノ酸変異を伴わない1塩基変異3種(T506T、T572TおよびG760G)を見出した。エキソン3については、エキソン3自体の塩基配列には変異が検出されず、エキソン3の3´末端に続くイントロンの5´末端に当るヌクレオチドの変異が1例において検出された。この変異によりスプライス部位が変化し、スプライシングバリアントが生じると予想された。検出された上記変異のうち、イントロン3 G/A、1992A(T506T)、3050A(G869S)および3152T(S903L)は今までに報告されていない新規1塩基変異であった。一方、1786G(Q448E)、2160A(T572T)および2724C(G760G)は既に報告されているが、これら1塩基変異と血栓性疾患との関連性については知られていない。
表1に示した1塩基変異を検出するために用いたプライマーを、以下に示す。
エキソン3の第1PCRプライマー
フォワードプライマー;配列番号3
リバースプライマー; 配列番号4
エキソン3の第2PCRプライマー
フォワードプライマー;配列番号5
リバースプライマー; 配列番号6
エキソン12の第1PCRプライマー
フォワードプライマー;配列番号11
リバースプライマー; 配列番号12
エキソン12の第2PCRプライマー
フォワードプライマー;配列番号13
リバースプライマー; 配列番号14
エキソン13の第1PCRプライマー
フォワードプライマー;配列番号15
リバースプライマー; 配列番号16
エキソン13の第2PCRプライマー
フォワードプライマー;配列番号17
リバースプライマー; 配列番号18
エキソン15の第1PCRプライマー
フォワードプライマー;配列番号19
リバースプライマー; 配列番号20
エキソン15の第2PCRプライマー
フォワードプライマー;配列番号21
リバースプライマー; 配列番号22
エキソン19の第1PCRプライマー
フォワードプライマー;配列番号23
リバースプライマー; 配列番号24
エキソン19の第2PCRプライマー
フォワードプライマー;配列番号25
リバースプライマー; 配列番号26
エキソン20の第1PCRプライマー
フォワードプライマー;配列番号27
リバースプライマー; 配列番号28
エキソン20の第2PCRプライマー
フォワードプライマー;配列番号29
リバースプライマー; 配列番号30
エキソン21の第1PCRプライマー
フォワードプライマー;配列番号31
リバースプライマー; 配列番号32
エキソン21の第2PCRプライマー
フォワードプライマー;配列番号33
リバースプライマー; 配列番号34
vWF切断酵素遺伝子エキソン7についての変異の検出を、実施例1と同じDNA試料を各2μl用いて、試料中のvWF切断酵素遺伝子のゲノムDNAから標的領域を増幅し、得られた増幅産物の塩基配列をダイレクトシーケンシング法を用いて決定することにより実施した。
標的領域の増幅はPCRにより行なった。PCR用プライマーは、vWF切断酵素遺伝子のゲノム塩基配列(GenBankアクセッション番号NT_035014.3)のエキソン7の上流および下流の塩基配列に基づいて設計した。PCR反応は、PCR用酵素としてKOD−plusを用い、DMSOを最終濃度5%となるように添加して、以下の条件で行なった。
PCR条件
1) 94℃ 4分間
2) 94℃ 30秒間
3) 64℃ 30秒間
4) 72℃ 1分間
2)から4)の工程は40サイクル行なった。
5) 72℃ 3分間
反応液の一部をアガロースゲル電気泳動し、推定産物長のバンドを確認した後、PCR増幅産物をExo SAP(Amersham Biosciences社製)を用いて精製した。
精製した増幅産物を鋳型とし、ダイターミネータ法による塩基配列解析を行った。シーケンス反応は、下記シーケンスプライマー、MegaBACE ET Terminator(DYEnamic ET dye terminator kit,Amersham Biosciences社製)を用いて行い、CleanSEQ(Agencourt社製)またはSephadexG−50によるゲルろ過精製法により反応産物を精製した。シーケンサーはMegaBACE1000(Amersham Biosciences社製)を使用した。結果を表2に示す。
:塩基の位置は、GenBankアクセッション番号NM_139025に記載されたヒトvWF切断酵素遺伝子のcDNA塩基配列(配列番号1)における位置として示す。
表2に示したように、エキソン7においてアミノ酸変異を伴う1塩基変異(A250V)を見出した。この変異は今までに報告されていない新規1塩基変異であった。
エキソン7における1塩基変異を検出するために用いたプライマーを、以下に示す。
エキソン7のPCRプライマー
フォワードプライマー;配列番号7
リバースプライマー; 配列番号8
エキソン7のシーケンス用プライマー
フォワードプライマー;配列番号9
リバースプライマー; 配列番号10
イントロン3 G/AがvWF切断酵素表現型に及ぼす影響を、ミニジーン(mini−gene)発現系を構築して検討した。
ミニジーン発現系の構築は以下のように行なった。vWF切断酵素遺伝子のエキソン3からエキソン4までの領域(以下、エキソン3−エキソン4断片と呼称する。)を、PCRにてヒトゲノムDNAからクローニングした。PCRは、PCR反応液98μl、第1PCRプライマー各0.5μl(最終濃度0.5μM)、およびDNA試料1μl(合計100μl)を混合し、第1PCRを以下の条件で行った。酵素はKODを使用した。
第1PCRプライマー
フォワードプライマー;配列番号3
リバースプライマー ;配列番号35
PCR条件
1) 98℃ 5分間
2) 98℃ 1分間
3) 50℃ 1分間
4) 72℃ 1分間
2)から4)の工程は30サイクル行なった。
5) 72℃ 5分間
次いで、PCR反応液98μl、第2PCRプライマー各0.5μl(最終濃度0.5μM)、および第1PCRの増幅産物1μl(合計100μl)を混合し、第1PCRの反応条件と同じ条件で第2PCRを行った。ただし、酵素はEx−Taqを使用した。
第2PCRプライマー
フォワードプライマー;配列番号5
リバースプライマー ;配列番号36
得られたエキソン3−エキソン4断片に、QuikChange Site−Directed Mutagenesis Kit(STRATAGENE社製)を用いてイントロン 3 G/A変異を導入した。野生型エキソン3−エキソン4断片およびイントロン3 G/A変異型エキソン3−エキソン4断片をそれぞれpcDNA3.1(+)に導入して各発現ベクターを作成した。これらベクターをそれぞれ導入したHEK293細胞からRNeasy mini kit(QIAGEN社製)を用いてRNAを抽出し、ImProm−II Reverse Transcription System(Promega社製)を用いてRT−PCRを行った。RT反応はオリゴdTプライマーを用いて行なった。PCRは、エキソン3に由来するmRNAを検出するためにプライマーセット1を、またエキソン3からエキソン4に由来するmRNAを検出するためにプライマーセット2を用いて実施した。
プライマーセット1
フォワードプライマー;配列番号37
リバースプライマー ;配列番号38
プライマーセット2
フォワードプライマー;配列番号37
リバースプライマー ;配列番号39
野生型エキソン3−エキソン4断片を導入した細胞では予想されるサイズのmRNAの発現が確認できたが、イントロン3 G/A変異型エキソン3−エキソン4断片を導入した細胞では野生型よりも大きいサイズのmRNAが発現していた(図1)。
上記ベクターをそれぞれ導入したHEK293細胞から抽出したRNAを鋳型としてプライマーセット2を用いてRT−PCRを行なった増幅産物について、QIAGEN PCR Cloning Kitを用いてTAクローニングした後、塩基配列の解析を行った。
その結果、野生型エキソン3−エキソン4断片を導入した細胞から得たmRNAは予想通りのスプライシングが起こっていた(図2-A参照。)。イントロン3 G/A変異型エキソン3−エキソン4断片を導入した細胞から得たmRNAから得られたクローン(56個)においては、野生型のcDNAに27塩基挿入されたもの(11個)と、105塩基挿入されたもの(38個)が認められた(図2-Bおよび図2-C参照。)。他の7クローンはTAクローニングベクターのセルフライゲーション(self ligation)産物であった。変異型エキソン3−エキソン4断片を導入した細胞から得たcDNAに挿入された27塩基および105塩基の配列はそれぞれ配列番号40および41に記載した。
これらから、イントロン3 G/A変異はスプライシングバリアントを生じさせることが明らかとなり、vWF切断酵素遺伝子の異常に起因する病態発症の原因となる可能性が示唆された。
実施例1および2において検出されたvWF切断酵素遺伝子の変異のうち、アミノ酸変異を伴う1塩基変異4種〔1193T(A250V)、1786G(Q448E)、3050A(G869S)および3152T(S903L)〕およびスプライシングバリアントを生じる1種(イントロン3 G/A)について疾患との関連を検討した。変異の検出は実施例1および2と同様の方法で実施した。
その結果、1例の患者においてイントロン3 G/Aおよび1193T(A250V)の両方の変異が検出された(表1および2において、試料番号3に相当する。)。該患者は、HUS症状を頻繁に示す51歳男性であり、そのvWF切断酵素活性は3%以下(健常人の酵素活性を100%とする。)であった。該患者の両親のvWF切断酵素活性は父親46%、母親46%であり、TTP/HUS様症状は認められなかった。遺伝子解析の結果、患者はイントロン3 G/Aおよび1193T(A250V)をヘテロ(heterozygous)に有することが明らかになった。その母親のvWF切断酵素遺伝子はイントロン3 G/Aをヘテロに有するが、1193T(A250V)はもたないことが明らかになっている。父親は遺伝子試料が得られておらず、未解析である。このことから、該患者のイントロン3 G/Aは母親由来(maternal)の変異であり、1193T(A250V)は父親由来(paternal)の変異であると考えられる。
今回解析対象となったHUS患者はイントロン3 G/Aと1193T(A250V)の両方の変異を有することにより、病態が発症したと考えられる。
実施例1および2において検出されたvWF切断酵素遺伝子の変異のうち、アミノ酸変異を伴う1塩基変異3種〔1786G(Q448E)、3050A(G869S)および3152T(S903L)〕およびスプライシングバリアントを生じる1種(イントロン3 G/A)について、CADおよび脳血管障害(cerebrovascular disease、以下CVDと略称する。)との関連を検討した。変異の検出は実施例1および2と同様の方法で実施した。
健常人342例、CAD患者191例、CVD患者233例のゲノムDNAを用いてタイピング研究を行った。その結果、各1塩基変異の発現頻度は下記のとおりであった。3050A(G869S)およびイントロン3 G/Aの発現は今回検討した試料では認められなかった。
実施例1および2において検出されたvWF切断酵素遺伝子の変異のうち、アミノ酸変異を伴う1塩基変異3種〔1786G(Q448E)、3050A(G869S)および3152T(S903L)〕およびスプライシングバリアントを生じる1種(イントロン3 G/A)について、CADとの関連を検討した。変異の検出は実施例1および2と同様の方法で実施した。
健常人およびCAD患者それぞれ140例のゲノムDNAを用いてタイピング研究を行なった。健常人および患者は性別比および年齢(±2歳)が同一になるように調製した。すなわち、健常人および患者における性別比はいずれも男性93.6%および女性6.4%であった。年齢の平均は、健常人で55.8±6.3歳、患者では55.4±6.5歳であった。
その結果、エキソン12における変異〔1786G(Q448E)〕がCADと関連することが統計的に明らかになった。野生型CC、ヘテロ接合体CGおよびホモ接合体GGの発現は、CADにおいてそれぞれ88例(62.9%)、45例(32.1%)および7例(5.0%)で認められた。一方、健常人においてはそれぞれ98例(70.0%)、36例(25.7%)および6例(4.3%)で認められた。統計手法としてマックネーマー法(McNemer’s Test)を用い、健常人および患者における変異の発現頻度を解析した。その結果、CADにおいて野生型CCとヘテロ接合体CGの間でオッズ比(Odds ratio)1.667、90%信頼区間(1.026−1.748)で関連を認めた。
このことから、1786G(Q448E)変異はCAD発症の危険因子の1つである可能性が考えられる。
実施例1および2において検出されたvWF切断酵素遺伝子の変異のうち、アミノ酸変異を伴う1塩基変異3種〔1786G(Q448E)、3050A(G869S)および3152T(S903L)〕およびスプライシングバリアントを生じる1種(イントロン3 G/A)について、Strokeとの関連について検討を行なった。
健常人およびStroke患者それぞれ195例のゲノムDNAを用いてタイピング研究を行なった。健常人および患者は性別比および年齢(±2歳)が同一になるように調製した。すなわち、健常人および患者における性別比はいずれも男性81.0%および女性19.0%であった。年齢の平均は、健常人で57.7±5.7歳、患者では57.8±6.1歳であった。
その結果、エキソン12における変異〔1786G(Q448E)〕がStrokeと関連することを示唆するデータが得られた。野生型CC、ヘテロ接合体CGおよびホモ接合体GGの発現は、Strokeにおいてそれぞれ130例(66.7%)、53例(27.2%)および12例(6.2%)で認められた。一方、健常人においてはそれぞれ145例(74.4%)、42例(21.5%)および8例(4.1%)で認められた。統計手法としてマックネーマー法を用い、健常人および患者における変異の発現頻度を解析した。その結果、Strokeにおいてヘテロ接合体CGでオッズ比1.034、ホモ接合体GGでオッズ比4.000が得られ、遺伝子型相対危険度が高くなった。
このことから、1786G(Q448E)変異はStroke発症の危険因子の1つである可能性が考えられる。
TTP/HUS患者由来のゲノムDNA試料について、vWF切断酵素遺伝子の変異の検出を行なった。検出は、試料中のvWF切断酵素遺伝子のゲノムDNAから標的領域を増幅し、得られた増幅産物の塩基配列をダイターミネーター法にて決定することにより実施した。
標的領域の増幅はPCRにより行なった。PCR用プライマーは、vWF切断酵素遺伝子のゲノム塩基配列(GenBankアクセッション番号NT_035014.3)の各エキソンの上流および下流の塩基配列に基づいて設計し作製した(下記参照。)。
DNA試料2μlに、PCR反応液およびPCRプライマーを添加し、PCRを以下の条件で行なった。PCR用のポリメラーゼは、Ex−taq(タカラバイオ社製)を用いた。PCRにより得られた溶液は4℃で保存した。PCRにより得られた溶液の一部をアガロースゲルで展開し、増幅産物が推定長であることを確認した。その後、PCRにより得られた溶液から増幅産物をExoSAP(Amersham Biosciences社製)を用いて精製した。
PCR条件
1) 94℃ 4分間
2) 94℃ 30秒間
3) 60℃ 30秒間
4) 72℃ 1分間
2)から4)の工程は40サイクル行なった。
5) 72℃ 3分間
PCR増幅産物の塩基配列の決定を、PCR産物を鋳型にしてダイターミネータ法にて実施した。シーケエンスは、シーケンシング用プライマーおよびMegaBACE ET Terminator(Amersham Biosciences社製)を用いて実施し、得られた反応産物をCleanSEQ(Agencourt社製)またはセファデックスG50にて精製した。シーケンシング用プライマーはPCRに用いたプライマーと同一のものを用いた。シーケンサーにはMegaBACE1000(Amersham Biosciences社製)を使用した。その結果を表5に示す。
**:塩基の位置は、GenBankアクセッション番号NM_139025に記載されたヒトvWF切断酵素遺伝子のcDNA塩基配列(配列番号1)における位置として示す。
:配列番号1に記載のcDNA塩基配列第2160位に相当する塩基はAである。但し、日本人ではこの位置の塩基はGがドミナントである。
##:配列番号1に記載のcDNA塩基配列第2724位に相当する塩基はCである。但し、日本人においてはこの位置の塩基がTであるアレルが多い。
表5に示したように、TTP/HUS患者のvWF切断酵素遺伝子において、アミノ酸変異を伴う1塩基変異4種(T339R、Q448EおよびP618A)およびアミノ酸変異を伴わない1塩基変異1種(T572TおよびG760G)が検出された。検出された上記変異のうち、1460G(T339R)は今までに報告されていない新規1塩基変異であった。一方、2296G(P618A)およびこの変異とTTPとの関連の可能性については既に報告されている。1786G(Q448E)、2160A(T572T)および2724C(G760G)は、実施例1でTTP患者のvWF切断酵素遺伝子において検出された変異である。
表1に示した1塩基変異を検出するために用いたプライマーを以下に示す。
エキソン9のプライマー
フォワードプライマー;配列番号42
リバースプライマー; 配列番号43
エキソン12のプライマー
フォワードプライマー;配列番号11
リバースプライマー; 配列番号12
エキソン15のPCRプライマー
フォワードプライマー;配列番号19
リバースプライマー; 配列番号20
エキソン16のプライマー
フォワードプライマー;配列番号44
リバースプライマー; 配列番号45
エキソン19のプライマー
フォワードプライマー;配列番号23
リバースプライマー; 配列番号24
本発明によれば、vWF切断酵素の活性低下によるvWFの異常に起因する疾患、例えば血栓性疾患、具体的にはTTP、HUS、CADあるいはStrokeなどの罹患危険率の判定および早期診断の実施が可能になる。本発明は、血栓性疾患の診断並びに当該疾患の防止および治療のための検査に有用であり、医薬分野において多大に寄与するものである。
配列番号3:vWF切断酵素遺伝子のゲノムDNA(GenBankアクセッション番号NT_035014.3に記載)のエキソン3の上流の塩基配列に基づいて設計したポリヌクレオチド。
配列番号4:vWF切断酵素遺伝子のゲノムDNA(GenBankアクセッション番号NT_035014.3に記載)のエキソン3の下流の塩基配列に基づいて設計したポリヌクレオチド。
配列番号5:vWF切断酵素遺伝子のゲノムDNA(GenBankアクセッション番号NT_035014.3に記載)のエキソン3の上流の塩基配列に基づいて設計したポリヌクレオチド。
配列番号6:vWF切断酵素遺伝子のゲノムDNA(GenBankアクセッション番号NT_035014.3に記載)のエキソン3の下流の塩基配列に基づいて設計したポリヌクレオチド。
配列番号7:vWF切断酵素遺伝子のゲノムDNA(GenBankアクセッション番号NT_035014.3に記載)のエキソン7の上流の塩基配列に基づいて設計したポリヌクレオチド。
配列番号8:vWF切断酵素遺伝子のゲノムDNA(GenBankアクセッション番号NT_035014.3に記載)のエキソン7の下流の塩基配列に基づいて設計したポリヌクレオチド。
配列番号9:vWF切断酵素遺伝子のゲノムDNA(GenBankアクセッション番号NT_035014.3に記載)のエキソン7の上流の塩基配列に基づいて設計したポリヌクレオチド。
配列番号10:vWF切断酵素遺伝子のゲノムDNA(GenBankアクセッション番号NT_035014.3に記載)のエキソン7の下流の塩基配列に基づいて設計したポリヌクレオチド。
配列番号11:vWF切断酵素遺伝子のゲノムDNA(GenBankアクセッション番号NT_035014.3に記載)のエキソン12の上流の塩基配列に基づいて設計したポリヌクレオチド。
配列番号12:vWF切断酵素遺伝子のゲノムDNA(GenBankアクセッション番号NT_035014.3に記載)のエキソン12の下流の塩基配列に基づいて設計したポリヌクレオチド。
配列番号13:vWF切断酵素遺伝子のゲノムDNA(GenBankアクセッション番号NT_035014.3に記載)のエキソン12の上流の塩基配列に基づいて設計したポリヌクレオチド。
配列番号14:vWF切断酵素遺伝子のゲノムDNA(GenBankアクセッション番号NT_035014.3に記載)のエキソン12の下流の塩基配列に基づいて設計したポリヌクレオチド。
配列番号15:vWF切断酵素遺伝子のゲノムDNA(GenBankアクセッション番号NT_035014.3に記載)のエキソン13の上流の塩基配列に基づいて設計したポリヌクレオチド。
配列番号16:vWF切断酵素遺伝子のゲノムDNA(GenBankアクセッション番号NT_035014.3に記載)のエキソン13の下流の塩基配列に基づいて設計したポリヌクレオチド。
配列番号17:vWF切断酵素遺伝子のゲノムDNA(GenBankアクセッション番号NT_035014.3に記載)のエキソン13の上流の塩基配列に基づいて設計したポリヌクレオチド。
配列番号18:vWF切断酵素遺伝子のゲノムDNA(GenBankアクセッション番号NT_035014.3に記載)のエキソン13の下流の塩基配列に基づいて設計したポリヌクレオチド。
配列番号19:vWF切断酵素遺伝子のゲノムDNA(GenBankアクセッション番号NT_035014.3に記載)のエキソン15の上流の塩基配列に基づいて設計したポリヌクレオチド。
配列番号20:vWF切断酵素遺伝子のゲノムDNA(GenBankアクセッション番号NT_035014.3に記載)のエキソン15の下流の塩基配列に基づいて設計したポリヌクレオチド。
配列番号21:vWF切断酵素遺伝子のゲノムDNA(GenBankアクセッション番号NT_035014.3に記載)のエキソン15の上流の塩基配列に基づいて設計したポリヌクレオチド。
配列番号22:vWF切断酵素遺伝子のゲノムDNA(GenBankアクセッション番号NT_035014.3に記載)のエキソン15の下流の塩基配列に基づいて設計したポリヌクレオチド。
配列番号23:vWF切断酵素遺伝子のゲノムDNA(GenBankアクセッション番号NT_035014.3に記載)のエキソン19の上流の塩基配列に基づいて設計したポリヌクレオチド。
配列番号24:vWF切断酵素遺伝子のゲノムDNA(GenBankアクセッション番号NT_035014.3に記載)のエキソン19の下流の塩基配列に基づいて設計したポリヌクレオチド。
配列番号25:vWF切断酵素遺伝子のゲノムDNA(GenBankアクセッション番号NT_035014.3に記載)のエキソン19の上流の塩基配列に基づいて設計したポリヌクレオチド。
配列番号26:vWF切断酵素遺伝子のゲノムDNA(GenBankアクセッション番号NT_035014.3に記載)のエキソン19の下流の塩基配列に基づいて設計したポリヌクレオチド。
配列番号27:vWF切断酵素遺伝子のゲノムDNA(GenBankアクセッション番号NT_035014.3に記載)のエキソン20の上流の塩基配列に基づいて設計したポリヌクレオチド。
配列番号28:vWF切断酵素遺伝子のゲノムDNA(GenBankアクセッション番号NT_035014.3に記載)のエキソン20の下流の塩基配列に基づいて設計したポリヌクレオチド。
配列番号29:vWF切断酵素遺伝子のゲノムDNA(GenBankアクセッション番号NT_035014.3に記載)のエキソン20の上流の塩基配列に基づいて設計したポリヌクレオチド。
配列番号30:vWF切断酵素遺伝子のゲノムDNA(GenBankアクセッション番号NT_035014.3に記載)のエキソン20の下流の塩基配列に基づいて設計したポリヌクレオチド。
配列番号31:vWF切断酵素遺伝子のゲノムDNA(GenBankアクセッション番号NT_035014.3に記載)のエキソン21の上流の塩基配列に基づいて設計したポリヌクレオチド。
配列番号32:vWF切断酵素遺伝子のゲノムDNA(GenBankアクセッション番号NT_035014.3に記載)のエキソン21の下流の塩基配列に基づいて設計したポリヌクレオチド。
配列番号33:vWF切断酵素遺伝子のゲノムDNA(GenBankアクセッション番号NT_035014.3に記載)のエキソン21の上流の塩基配列に基づいて設計したポリヌクレオチド。
配列番号34:vWF切断酵素遺伝子のゲノムDNA(GenBankアクセッション番号NT_035014.3に記載)のエキソン21の下流の塩基配列に基づいて設計したポリヌクレオチド。
配列番号35:vWF切断酵素遺伝子のゲノムDNA(GenBankアクセッション番号NT_035014.3に記載)のエキソン4の下流の塩基配列に基づいて設計したポリヌクレオチド。
配列番号36:vWF切断酵素遺伝子のゲノムDNA(GenBankアクセッション番号NT_035014.3に記載)のエキソン4の下流の塩基配列に基づいて設計したポリヌクレオチド。
配列番号37:vWF切断酵素遺伝子のゲノムDNA(GenBankアクセッション番号NT_035014.3に記載)のエキソン3の塩基配列に基づいて設計したポリヌクレオチド。
配列番号38:vWF切断酵素遺伝子のゲノムDNA(GenBankアクセッション番号NT_035014.3に記載)のエキソン3の塩基配列に基づいて設計したポリヌクレオチド。
配列番号39:vWF切断酵素遺伝子のゲノムDNA(GenBankアクセッション番号NT_035014.3に記載)のエキソン4の塩基配列に基づいて設計したポリヌクレオチド。
配列番号40:vWF切断酵素遺伝子のゲノムDNA(GenBankアクセッション番号NT_035014.3に記載)のイントロン3由来の塩基配列。
配列番号41:vWF切断酵素遺伝子のゲノムDNA(GenBankアクセッション番号NT_035014.3に記載)のイントロン3由来の塩基配列。
配列番号42:vWF切断酵素遺伝子のゲノムDNA(GenBankアクセッション番号NT_035014.3に記載)のエキソン9の上流の塩基配列に基づいて設計したポリヌクレオチド。
配列番号43:vWF切断酵素遺伝子のゲノムDNA(GenBankアクセッション番号NT_035014.3に記載)のエキソン9の下流の塩基配列に基づいて設計したポリヌクレオチド。
配列番号44:vWF切断酵素遺伝子のゲノムDNA(GenBankアクセッション番号NT_035014.3に記載)のエキソン16の上流の塩基配列に基づいて設計したポリヌクレオチド。
配列番号45:vWF切断酵素遺伝子のゲノムDNA(GenBankアクセッション番号NT_035014.3に記載)のエキソン16の下流の塩基配列に基づいて設計したポリヌクレオチド。

Claims (3)

  1. ヒトのフォンビルブラント因子切断酵素遺伝子(以下、vWF−CP遺伝子と略称する)内の塩基であって、配列表の配列番号1に記載のcDNAにおける位置として第1786位の塩基であると定義される塩基がグアニンである1塩基変異を検出することを特徴とする、冠動脈疾患または脳卒中を引き起こす可能性を有する遺伝子変異の検出方法。
  2. ヒトvWF−CP遺伝子内の塩基であって、配列表の配列番号1に記載のcDNAにおける位置として第1786位の塩基であると定義される塩基がグアニンである1塩基変異の検出を以下の工程を含む方法で行なうことを特徴とする、請求項1に記載の検出方法;
    (i)配列番号11および配列番号12に記載のポリヌクレオチドをプライマーとして用いてポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を行う工程、
    (ii)前記(i)の工程で得られたPCR産物について、配列番号13および配列番号14に記載のポリヌクレオチドをプライマーとして用いてPCRを行なう工程、
    および
    (iii)前記(ii)の工程で得られたPCR産物の配列を、配列番号13および配列番号14に記載のポリヌクレオチドをプライマーとして用いてシーケンス法により決定する工程。
  3. 請求項1または2に記載の検出方法を用いて、被検試料中のヒトvWF−CP遺伝子内の塩基であって、配列表の配列番号1に記載のcDNAにおける位置として第1786位の塩基であると定義される塩基を決定し、当該位置における塩基がグアニンであるときに、冠動脈疾患または脳卒中を罹患する可能性があると判定する、冠動脈疾患または脳卒中の罹患可能性の検査方法。
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