以下、本発明を具体化した実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、参照する図面は、本発明が採用しうる技術的特徴を説明するために用いられるものであり、記載されている装置の構成などは、それのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例である。
本実施形態に係るテープ印字装置1およびテープカセット30について、図1〜図23を参照して以下に詳述する。本実施形態の説明では、図1の左下側をテープ印字装置1の前側とし、図1の右上側をテープ印字装置1の後側とし、図1の右下側をテープ印字装置1の右側とし、図1の左上側をテープ印字装置1の左側とする。また、図2の右下側をテープカセット30の前側とし、図2の左上側をテープカセット30の後側とし、図2の右上側をテープカセット30の右側とし、図2の左下側をテープカセット30の左側とする。
なお、実際には、図2に図示されているギヤ91、93、94、97、98、101を含むギヤ群は、キャビティ8Aの底面により覆い隠されているが、これらのギヤ群を説明する必要上、図2にはキャビティ8Aの底面は図示されていない。また、図2〜図6では、カセット装着部8の周囲を形成する側壁を模式的に図示しているが、これはあくまでも模式図であって例えば図2中に示す側壁は実際よりも厚く描かれている。また、図3〜図6では、理解を容易にするために、カセット装着部8に各種テープカセット30が装着された状態を、上ケース31Aを取り除いて示している。
はじめに、本実施形態に係るテープ印字装置1の概略構成について説明する。以下では、感熱紙テープのみが収納されたサーマルタイプのテープカセット30、印字テープとインクリボンとが収納されたレセプタータイプのテープカセット30、両面粘着テープとフィルムテープとインクリボンとが収納されたラミネートタイプのテープカセット30等、テープ種類が異なる複数のテープカセット30を共通して使用可能な汎用機として構成されたテープ印字装置1を例示する。
図1に示すように、テープ印字装置1は、平面視長方形状の本体カバー2を備えている。本体カバー2の前側には、文字、記号及び数字等の文字キーや、種々の機能キー等を含むキーボード3が配設されている。キーボード3の後側には、入力した文字や記号を表示可能なディスプレイ5が設けられている。ディスプレイ5の後側には、テープカセット30の交換時に開閉されるカセットカバー6が設けられている。また、図示は省略するが、本体カバー2の左側面後方には、印字済みのテープを外部に排出するための排出スリットが設けられており、カセットカバー6の左側面には、カセットカバー6を閉じた状態で排出スリットを外部に露出させる排出窓が形成されている。
次に、図2〜図8を参照して、カセットカバー6に対応する本体カバー2の内部構造について説明する。図2に示すように、カセットカバー6に対応する本体カバー2の内部には、テープカセット30が着脱自在な領域であるカセット装着部8が設けられている。カセット装着部8は、テープカセット30が装着された場合に後述するカセットケース31の底面30Bの形状と略対応するように凹設され、平面である底面を有するキャビティ8Aと、キャビティ8Aの外縁から水平に延びる平面部であるカセット支持部8Bとを有する。
カセット支持部8Bの平面視形状は、テープカセット30の平面視形状に略対応して、左右方向に長い長方形である。キャビティ8Aの後縁部は、平面視で2つの弧が左右に並んだような形状を有している。これら2つの弧の間に位置するカセット支持部8Bの一部を、後方支持部8Cという。後方支持部8Cは、カセット装着部8に装着されたテープカセット30の後方凹部68C(図11参照)に対向する部位であり、後方支持部8C以外のカセット支持部8Bは、カセット装着部8に装着されたテープカセット30の共通部32(詳細には、後述の角部32A)の下面に対向する部位である。
後方支持部8Cには、後方支持ピン301および後方検出部300が設けられている。後方支持ピン301は、キャビティ8Aの後縁部の2つの円弧の連結部分近傍において、後方支持部8Cから上方に突出する円柱状の部材である。後方支持ピン301は、テープカセット30がカセット装着部8に装着された場合に、後述するテープカセット30の後方凹部68Cを下方から支持する。
後方検出部300は、複数の検出スイッチ310を含み、各検出スイッチ310のスイッチ端子322が、後方支持部8Cに設けられた貫通孔8Dから上方に突出している。本実施形態では、後方検出部300は、5つの検出スイッチ310A〜310Eを含み、そのうち4つ(検出スイッチ310A〜310D)が左側(図7では右側)から順に後方支持部8Cの後端部に沿って1列に並んでおり、右から2番目の検出スイッチ310Cの前側に、残る1つの検出スイッチ310Eが並んでいる。以下では、後方検出部300に設けられた検出スイッチ310を、後方検出スイッチ310という。
ここで、図7を参照して、後方検出スイッチ310の詳細な構造について説明する。図7に示すように、各後方検出スイッチ310(後方検出スイッチ310A〜310E)は、後方支持部8Cの下方、つまり本体カバー2内部に設置された略円筒状の本体部321と、本体部321の一端側から軸線方向に進退可能な棒状のスイッチ端子322とを備えている。各後方検出スイッチ310の本体部321は、その他端側がスイッチ支持板320に取り付けられて本体カバー2の内部に設置されている。また、各本体部321の一端側では、後方支持部8Cに形成された複数の貫通孔8Dを通して、スイッチ端子322が進退可能である。各スイッチ端子322は、常には本体部321の内部に設けられたバネ部材(図示せず)によって、本体部321から伸出した状態に保持される。つまり、スイッチ端子322は、押圧されていないときは本体部321から伸出した状態(オフ状態)とされ、押圧されているときに本体部321内に向けて退入した状態(オン状態)となる。
図2に示すように、カセット装着部8にテープカセット30が装着されていない場合、後方検出スイッチ310は、テープカセット30から離間した状態にあるため、全ての後方検出スイッチ310がオフ状態となる。一方、カセット装着部8にテープカセット30が装着されると、後方検出スイッチ310は、後述するテープカセット30の後方識別部900と対向し、後方識別部900によって後方検出スイッチ310が選択的に押圧される。このときの後方検出スイッチ310のオン・オフの組合せに基づいて、テープカセット30に収納されたテープの種類等(以下、テープ種類)が検出される。なお、後方検出部300によるテープ種類の検出については、別途後述する。
また、図2に示すように、カセット支持部8Bの2箇所に、2つの位置決めピン102、103が設けられている。より具体的には、キャビティ8Aの左側に位置決めピン102が、キャビティ8Aの右側に位置決めピン103が、それぞれ設けられている。位置決めピン102、103は、テープカセット30がカセット装着部8に装着された場合に、テープカセット30の共通部32の下面に形成された2つの凹部であるピン孔62、63(図11参照)がそれぞれ対応する位置に設けられている。各位置決めピン102、103は、テープカセット30がカセット装着部8に装着された場合にピン孔62、63に挿入され、テープカセット30の周縁部の左右位置でテープカセット30を下方から支持する。
カセット装着部8には、テープカセット30からテープを引き出して搬送する搬送機構や、テープの表面に文字等を印字する印字機構等が設けられている。図2に示すように、カセット装着部8の前側には、発熱体(図示せず)を備えるサーマルヘッド10を搭載したヘッドホルダ74が固設されている。
カセット装着部8の外側(図2では右上側)には、ステッピングモータであるテープ送りモータ23が配設されている。テープ送りモータ23の駆動軸の下端には駆動ギヤ91が固着されており、駆動ギヤ91は開口を介してギヤ93に噛合され、ギヤ93はギヤ94に噛合されている。ギヤ94の上面には、後述するリボン巻取スプール44の回転駆動を行うリボン巻取軸95が立設されている。さらに、ギヤ94にはギヤ97が噛合され、ギヤ97にはギヤ98が噛合され、ギヤ98にはギヤ101が噛合されている。ギヤ101の上面には、後述するテープ駆動ローラ46の回転駆動を行うテープ駆動軸100が立設されている。
テープカセット30がカセット装着部8に装着された状態でテープ送りモータ23が反時計回り方向に回転駆動されると、駆動ギヤ91、ギヤ93、ギヤ94を介して、リボン巻取軸95が反時計回り方向に回転駆動される。リボン巻取軸95は、リボン巻取軸95が嵌挿されたリボン巻取スプール44を回転駆動させる。さらに、ギヤ94の回転は、ギヤ97、ギヤ98、ギヤ101を介してテープ駆動軸100に伝達されて、テープ駆動軸100が時計回り方向に回転駆動される。テープ駆動軸100は、テープ駆動軸100が嵌挿されたテープ駆動ローラ46を回転駆動させる。
図3〜図6に示すように、ヘッドホルダ74の前側には、アーム状のプラテンホルダ12が軸支部12Aを中心に揺動可能に軸支されている。プラテンホルダ12の先端側には、サーマルヘッド10に相対して接離可能に設けられたプラテンローラ15と、テープ駆動軸100が嵌挿されるテープ駆動ローラ46に相対して接離可能に設けられた可動搬送ローラ14とが共に回転可能に軸支されている。
プラテンホルダ12には、カセットカバー6の開閉に連動して左右方向に移動する図示しないリリースレバーが連結されている。カセットカバー6が開放されると、リリースレバーが右方向に移動して、プラテンホルダ12が図3に示す待機位置に向けて移動する。図3に示す待機位置では、プラテンホルダ12がカセット装着部8から離間する方向に移動しているので、テープカセット30をカセット装着部8に着脱することができる。なお、プラテンホルダ12は、図示しない巻きバネにより常に待機位置に弾性付勢されている。
一方、カセットカバー6が閉鎖されると、リリースレバーが左方向に移動して、プラテンホルダ12が図4〜図6に示す印字位置に向けて移動する。図4〜図6に示す印字位置では、プラテンホルダ12がカセット装着部8に近接する方向に移動している。そして、図3および図4に示すように、カセット装着部8にラミネートタイプのテープカセット30が装着されている場合には、プラテンローラ15がフィルムテープ59とインクリボン60とを介してサーマルヘッド10を押圧するとともに、可動搬送ローラ14が両面粘着テープ58とフィルムテープ59とを介してテープ駆動ローラ46を押圧する。
同様にして、図5に示すように、レセプタータイプのテープカセット30が装着されている場合には、プラテンローラ15が印字テープ57とインクリボン60とを介してサーマルヘッド10を押圧するとともに、可動搬送ローラ14が印字テープ57を介してテープ駆動ローラ46を押圧する。また、図6に示すように、サーマルタイプのテープカセット30が装着されている場合には、プラテンローラ15が感熱紙テープ55を介してサーマルヘッド10を押圧するとともに、可動搬送ローラ14が感熱紙テープ55を介してテープ駆動ローラ46を押圧する。これにより、図4〜図6に示す印字位置では、カセット装着部8に装着されたテープカセット30を使用して印字を行うことが可能となる。なお、感熱紙テープ55、印字テープ57、両面粘着テープ58、フィルムテープ59およびインクリボン60の詳細は、後述する。
また、図3に示すように、テープカセット30のテープ排出口49からテープ印字装置1の排出スリット(図示せず)までの間には、印字済テープ50が搬送される搬送経路が設けられている。この搬送経路には、印字済テープ50を所定位置で切断するカット機構17が設けられている。カット機構17は、固定刃18と、固定刃18に対向して前後方向(図3〜図6に示す上下方向)に移動可能に支持された移動刃19とを備えている。なお、移動刃19は、カッターモータ24(図9参照)によって前後方向に移動される。
また、図3〜図6、図8に示すように、プラテンホルダ12の後側面、つまり、サーマルヘッド10と対向する側の面(以下、カセット対向面)12Bには、その長手方向の中間位置からやや右側に、アーム検出部200が設けられている。アーム検出部200は、複数の検出スイッチ210を含み、各検出スイッチ210のスイッチ端子222(図17参照)が、カセット装着部8内に存在するテープカセット30の前面(より詳細には、後述するアーム前面35)と対向するように後方へ突出している。各検出スイッチ210のスイッチ端子222は、先述のスイッチ端子322と同様に、押圧されていないときは伸出した状態(オフ状態)とされ、押圧されているときに退入した状態(オン状態)となる。なお、以下では、アーム検出部200に設けられた検出スイッチ210を、アーム検出スイッチ210というものとする。
本実施形態では、プラテンホルダ12のカセット対向面12Bには、5つの貫通孔12Cが上下方向に3列に並べて設けられている。より具体的には、上列に2つ、中列に2つ、下列に1つの配置である。そして、各貫通孔12Cの左右方向の位置は、それぞれ異なっている。詳細には、カセット対向面12Bの左側(図8では右側)から、中列の左側、上列の左側、中列の右側、上列の右側、そして下列の順に、5つの貫通孔12Cがジグザグに配置されている。これら5つの貫通孔12Cに対応してカセット対向面12Bの左側から順に、5つのアーム検出スイッチ210A、210B、210C、210D、210Eがそれぞれ設けられている。各アーム検出スイッチ210A〜210Eは、テープカセット30がカセット装着部8の適正位置に装着された状態で、後述するアーム識別部800と相対する高さ位置に設けられている。
カセット装着部8にテープカセット30が装着されている場合、プラテンホルダ12が待機位置に向けて移動すると(図3参照)、各アーム検出スイッチ210はテープカセット30から離間するため、全てのアーム検出スイッチ210がオフ状態となる。一方、プラテンホルダ12が印字位置に向けて移動すると(図4〜図6参照)、アーム検出スイッチ210は、テープカセット30の前面(より詳細には、後述するアーム前面35)と対向し、後述するアーム識別部800によってアーム検出スイッチ210が選択的に押圧される。このときのアーム検出スイッチ210のオン・オフの組合せに基づいてテープ種類が検出されるが、詳細は後述する。
また、図3〜図6に示すように、プラテンホルダ12のカセット対向面12Bには、左右方向に伸びる板状の突起部である係止片225が設けられている。係止片225は、アーム検出スイッチ210のスイッチ端子222と同様、カセット対向面12Bからカセット装着部8に向けて略水平に突出している。つまり、カセット装着部8内に存在するテープカセット30の前面(より詳細には、後述するアーム前面35)と対向するように突出している。係止片225は、テープカセット30がカセット装着部8の適正位置に装着された状態で、後述するテープカセット30のアーム前面35に設けられた係止孔820(図2参照)と相対する高さ位置に設けられている。
次に、図9を参照して、テープ印字装置1の電気的構成について説明する。図9に示すように、テープ印字装置1は、制御基板上に形成される制御回路部400を備えている。制御回路部400は、各機器を制御するCPU401、CPU401にデータバス410を介して接続されたROM402、CGROM403、RAM404、および入出力インターフェース411等から構成されている。
ROM402には、キーボード3から入力された文字や数字等のキャラクタのコードデータに対応させて液晶駆動回路(LCDC)405を制御する表示駆動制御プログラム、サーマルヘッド10やテープ送りモータ23を駆動する印字駆動制御プログラム、各印字ドットの形成エネルギー量に対応する印加パルス数を決定するパルス数決定プログラム、カッターモータ24を駆動して印字済テープ50を所定の切断位置で切断する切断駆動制御プログラム、その他のテープ印字装置1の制御上必要な各種のプログラム等が各々記憶されている。つまり、CPU401は、これら各種プログラムに基づいて各種演算を行う。なお、ROM402には、テープ印字装置1に装着されたテープカセット30のテープ種類を特定するための各種テーブルも記憶されているが、詳細は後述する。
CGROM403には、アルファベット文字や記号等のキャラクタを印字するための多数のキャラクタの各々に関して、印字用ドットパターンデータが、書体(ゴシック系書体、明朝体書体等)毎に分類され、各書体毎に6種類(例えば、16、24、32、48、64、96のドットサイズ)の印字文字サイズ分、コードデータに対応させて記憶されている。
RAM404には、テキストメモリ、印字バッファ等、複数の記憶エリアが設けられている。テキストメモリには、キーボード3から入力された文書データが格納される。印字バッファには、複数の文字や記号等の印字用ドットパターンや各ドットの形成エネルギー量である印加パルス数等がドットパターンデータとして格納される。つまり、サーマルヘッド10はこの印字バッファに記憶されているドットパターンデータに従ってドット印字を行う。その他記憶エリアには、各種演算データ等が記憶される。
入出力インターフェース411には、アーム検出スイッチ210A〜210E、後方検出スイッチ310A〜310E、キーボード3、ディスプレイ(LCD)5に表示データを出力するためのビデオRAM(図示外)を有する液晶駆動回路(LCDC)405、サーマルヘッド10を駆動するための駆動回路406、テープ送りモータ23を駆動するための駆動回路407、カッターモータ24を駆動するための駆動回路408等が各々接続されている。
次に、図2〜図6、図10〜図18を参照して、本実施形態に係るテープカセット30の構成について説明する。以下では、その内部に収納されるテープの種類、および、インクリボンの有無などを適宜変更することによって、先述のサーマルタイプ、レセプタータイプ、ラミネートタイプ等、各種のテープ種類を実装可能な汎用カセットとして構成されたテープカセット30を例示する。ただし、図2〜図4、図10〜図14に示すテープカセットは、テープ幅が所定幅(例えば、18mm)以上となる36mm幅のテープカセット30に、基材色「White」の両面粘着テープ58およびインク色「Black」のインクリボン60が収納されたラミネートタイプとして実装したものを示す。
図2および図10に示すように、テープカセット30は、全体としては平面視で丸みを帯びた角部を有する略直方体状(箱型)の筐体であるカセットケース31を有している。カセットケース31は、カセットケース31の底面30Bを含む下ケース31Bと、カセットケース31の上面30Aを含み、下ケース31Bの上部に固定される上ケース31Aとで構成される。上ケース31Aおよび下ケース31Bが互いに固定されると、上面30Aおよび底面30Bの外縁に亘って所定高さの側面30Cが形成される。つまり、カセットケース31は、その上下方向で対向配置された矩形状の平面をなす一対の上面30Aおよび底面30Bと、上面30Aおよび底面30Bの外縁に亘って所定高さで形成された側面30C(ここでは、前面、背面、左側面、右側面からなる四側面)とを有する箱状のケース体である。
なお、カセットケース31は、上面30Aおよび底面30Bの周縁部全体が側面30Cによって囲われている必要はなく、側面30Cの一部(例えば背面)にカセットケース31内を露出させるような開口部が設けられていたり、その開口部を臨む位置に上面30Aおよび底面30Bを接続するボスが設けられたりしてもよい。以下では、底面30Bから上面30Aまでの距離(上下方向の長さ)を、テープカセット30またはカセットケース31の高さ寸法という。なお、本実施形態では、カセットケース31の上下方向(つまり、上面30Aおよび底面30Bが対向する方向)は、テープカセット30の着脱方向と略一致している。
カセットケース31は、テープカセット30の種類にかかわらず、同一の幅(上下方向の長さが同一)に形成された角部32Aを有する。角部32Aは、平面視で直角をなすように外側方向に突出している。ただし、平面視で左下の角部32Aは、テープ排出口49が角に設けられているために、直角はなしていない。角部32Aの下面は、テープカセット30がカセット装着部8に装着されたときに、カセット装着部8内において前述したカセット支持部8Bに対向する部位である。カセットケース31の上下(高さ)方向において角部32Aと同一の位置、且つ、同一の幅でカセットケース31の側面を全周に亘って取り巻く部位(角部32Aを含む)を、共通部32という。より詳細には、共通部32は、カセットケース31の上下(高さ)方向における中心線に関して、上下方向に対称に形成された部位である。
なお、テープカセット30の高さ寸法は、カセットケース31内に収納されるテープ(ここでは、感熱紙テープ55、印字テープ57、両面粘着テープ58、フィルムテープ59など)のテープ幅に応じて異なる。しかし、共通部32の高さ寸法は、テープカセット30のテープ幅にかかわらず、同一寸法に設定されている。例えば、共通部32の高さ寸法が12mmである場合、テープカセット30のテープ幅が大きくなると(例えば、18mm、24mm、36mm)、それに応じてカセットケース31の高さ寸法も大きくなるが、共通部32の高さ寸法は一定である。
図2、図10および図11に示すように、上ケース31Aおよび下ケース31Bには、それぞれ、後述する第1テープスプール40、第2テープスプール41およびリボン巻取スプール44を回転可能に支持する支持孔65A、66A、67A、および支持孔65B、66B、67Bが設けられている。支持孔65A、65Bは、カセットケース31の内部における左側の領域に設けられた第1テープ収納部33A(図3〜図6参照)の平面視で略中央位置に連通している。支持孔66A、66Bは、カセットケース31の内部における右側の領域に設けられた第2テープ収納部33B(図3〜図6参照)の平面視で略中央位置に連通している。
第1テープ収納部33Aは、第1テープスプール40に巻回されたテープ(図3および図4では両面粘着テープ58)に対応する略円形の平面視形状を有する。第2テープ収納部33Bは、第2テープスプール41に巻回されたテープ(図3および図4ではフィルムテープ59)に対応する略円形の平面視形状を有する。各テープ収納部33A、33Bは、左右方向を長手方向とするカセットケース31の内部にて、平面視でそれぞれの外縁が隣接するように左右に並んで設けられている。また、カセットケース31内における右側前部には、各テープ収納部33A、33Bよりも前方に位置するインクリボン収納部33Cが設けられている。
図3および図4に示すラミネートタイプのテープカセット30では、第1テープスプール40に巻回された両面粘着テープ58、第2テープスプール41に巻回されたフィルムテープ59、およびリボンスプール42に巻回されたインクリボン60の3種類のテープロールが、カセットケース31内に収納されている。そして、両面粘着テープ58の剥離紙を外側に向けて巻回した第1テープスプール40は、第1テープ収納部33Aにおいて支持孔65A、65Bを介して回転可能に収納される。フィルムテープ59が巻回された第2テープスプール41は、第2テープ収納部33Bにおいて支持孔66A、66Bを介して回転可能に収納される。リボンスプール42に巻回されたインクリボン60は、インクリボン収納部33C内に回転可能に配置されている。
カセットケース31内における第1テープスプール40とリボンスプール42との間には、リボンスプール42からインクリボン60を引き出すとともに、文字等の印字にて使用されたインクリボン60を巻き取るリボン巻取スプール44が、支持孔67A、67Bを介して回転可能に配置されている。なお、リボン巻取スプール44の下部には、リボン巻取スプール44が逆転することで巻き取ったインクリボン60が緩んでしまうのを防止するためのクラッチバネ(図示せず)が取り付けられている。
図5に示すレセプタータイプのテープカセット30では、第1テープスプール40に巻回された印字テープ57およびリボンスプール42に巻回されたインクリボン60の2種類のテープロールが、カセットケース31内に収納されている。なお、このレセプタータイプのテープカセット30は、第2テープスプール41を備えていない。
図6に示すサーマルタイプのテープカセット30では、第1テープスプール40に巻回された感熱紙テープ55の1種類のテープロールが、カセットケース31内に収納されている。なお、このサーマルタイプのテープカセット30は、第2テープスプール41およびリボンスプール42を備えていない。
図2に示すように、カセットケース31の前面には、平面視で略半円状をなす溝部である半円溝34Kが、カセットケース31の高さ方向(つまり、上面30Aから底面30B)に亘って設けられている。カセットケース31の前面のうち、半円溝34Kから左に延びる部分を、アーム前面35という。アーム前面35と、アーム前面35から後方へ離間した位置に高さ方向に亘って設けられたアーム背面37とで規定される、テープカセット30の右前部から左側に延びる部位をアーム部34という。
図12に示すように、アーム部34内には、フィルムテープ59の走行をガイドするテープ走行経路と、インクリボン60の走行をガイドするリボン走行経路とが、分離壁34Dによって分離形成されている。フィルムテープ59およびインクリボン60は、各走行経路を走行案内されたのちに開口34Aで重合されて、開口34Aからヘッド挿入部39に排出される。なお、図12ではラミネートタイプのテープカセット30(図3および図4参照)を例示しているが、他種のテープカセット30のアーム部34も同様である。ただし、レセプタータイプのテープカセット30(図5参照)では、印字テープ57がテープ走行経路にて走行案内され、インクリボン60がリボン走行経路にて走行案内される。サーマルタイプのテープカセット30(図6参照)では、感熱紙テープ55がテープ走行経路にて走行案内され、リボン走行経路は使用されない。
ところで、テープカセット30がカセット装着部8に装着された状態でプラテンホルダ12が印字位置に向けて移動すると(図4〜図6参照)、カセット対向面12Bに設けられたアーム検出部200および係止片225がアーム前面35に対向する。そこで、図2および図12に示すように、アーム前面35には、アーム検出スイッチ210を選択的に押圧することにより、テープ印字装置1にテープ種類を検出させる部位であるアーム識別部800と、係止片225が挿入される係止孔820とが設けられている。
アーム識別部800は、複数のアーム検出スイッチ210のそれぞれに対応する位置に、非押圧部801および押圧部802のいずれかで構成される複数の識別部を有する。複数の識別部は、テープカセット30のテープ種類のうちで、テープ印字装置1にて適正な印字を実行するのに必須となる情報(印字用情報)に応じたパターンで、非押圧部801および押圧部802の組み合わせを構成する。本実施形態では、テープカセット30がカセット装着部8に装着された場合に5つのアーム検出スイッチ210A〜210Eがそれぞれ対向する位置に、非押圧部801および押圧部802のいずれかで構成された5つの識別部800A〜800Eを有する。
非押圧部801は、各アーム検出スイッチ210のスイッチ端子222(図17参照)を挿脱可能な正面視で縦長長方形状のスイッチ孔である。非押圧部801に対向するアーム検出スイッチ210は、スイッチ端子222が非押圧部801に挿入されてオフ状態となる。押圧部802は、アーム検出スイッチ210のスイッチ端子222を挿入不可能な面部である。押圧部802に対向するアーム検出スイッチ210は、スイッチ端子222が押圧部802に接触してオン状態となる。なお、係止孔820は、アーム識別部800の右側上方において左右方向に延びるスリット状の貫通孔である。係止孔820は、テープカセット30がカセット装着部8に装着された場合に、係止片225(図8参照)を挿脱自在に対向配置される。
図2〜図6に示すように、ヘッド挿入部39は、アーム背面37と、アーム背面37から連続して設けられた周壁面とにより囲まれた、テープカセット30を上下方向に貫通する平面視略長方形状の空間である。ヘッド挿入部39には、テープ印字装置1のサーマルヘッド10を支持するヘッドホルダ74が挿入され、アーム部34の開口34Aから排出されたテープ(感熱紙テープ55、印字テープ57、フィルムテープ59のいずれか)に対してサーマルヘッド10による印字が行われる。
また、アーム部34の開口34Aからテープ排出口49までのテープの搬送方向において、ヘッド挿入部39の下流側には支持孔64(図11参照)が設けられ、この支持孔64の内側にテープ駆動ローラ46が回動可能に軸支されている。図3および図4に示すラミネートタイプのテープカセット30がカセット装着部8に装着されている場合は、テープ駆動ローラ46が、対向する可動搬送ローラ14との協働により、第2テープスプール41からフィルムテープ59を引き出すとともに、第1テープスプール40から両面粘着テープ58を引き出し、フィルムテープ59の印字面にガイドして接着させる。
テープ駆動ローラ46の上流側には、上下一対の規制部材36が設けられている。規制部材36の基部は、サーマルヘッド10の下流側にて、印字後のフィルムテープ59を上下方向(テープ幅方向)に規制してテープ排出口49に向かって案内するとともに、フィルムテープ59と両面粘着テープ58との間に位置ズレを生じることなく適正に接着させる。規制部材36の近傍には、ヘッド挿入部39を経由して搬送された使用済みのインクリボン60をフィルムテープ59から離間させ、リボン巻取スプール44に向かって案内するための案内壁47が立設されている。案内壁47とリボン巻取スプール44との間には、案内壁47に沿って案内される使用済みのインクリボン60と、第1テープスプール40に巻回して支持された両面粘着テープ58とが互いに接触するのを防止するための分離壁48が立設されている。
図5に示すレセプタータイプのテープカセット30がカセット装着部8に装着されている場合は、テープ駆動ローラ46と可動搬送ローラ14との協働により、第1テープスプール40から印字テープ57が引き出される。サーマルヘッド10の下流側では、印字後の印字テープ57が規制部材36の基部にて上下方向(テープ幅方向)に規制されつつ、テープ排出口49に向かって案内される。また、ヘッド挿入部39を経由して搬送された使用済みのインクリボン60が、案内壁47にて印字テープ57から離間されてリボン巻取スプール44に向かって案内される。
図6に示すサーマルタイプのテープカセット30が装着されている場合は、テープ駆動ローラ46と可動搬送ローラ14との協働により、第1テープスプール40から感熱紙テープ55が引き出される。サーマルヘッド10の下流側では、印字後の感熱紙テープ55が規制部材36の基部にて上下方向(テープ幅方向)に規制されつつ、テープ排出口49に向かって案内される。
図11に示すように、角部32Aの下面の2箇所に、前述したテープ印字装置1の位置決めピン102、103に対応するピン孔62、63が設けられている。具体的には、カセットケース31の左前部(図11では右下側)に設けられた後述する支持孔64の後方(図11では上方)において、角部32Aの下面に設けられた凹部が、位置決めピン102が挿入されるピン孔62である。また、カセットケース31の右端部(図11では左側)の中央部近傍において、角部32Aの下面に設けられた凹部が、位置決めピン103が挿入されるピン孔63である。なお、図11では、テープ駆動ローラ46等を省略して図示している。
テープカセット30の上下方向(高さ方向)におけるピン孔62、63の位置と、カセットケース31に収納される印字媒体であるフィルムテープ59の上下方向中心位置との距離は、テープカセット30のテープ種類(例えば、テープ幅)にかかわらず、つまりテープカセット30の高さ寸法が異なっていても一定である。
図2および図10に示すように、カセットケース31の後部表面68には、上面30Aの後部に設けられる平面視で長方形状の上面貼着部68Aと、側面30Cの上下方向に亘って設けられる背面視で長方形状の背面貼着部68Bと、底面30Bの後部に設けられる底面視で略三角形状の後方凹部68Cとが設けられている。上面貼着部68A、背面貼着部68B、後方凹部68Cは、カセットケース31の後部において左右方向の略中央位置に同一幅で設けられ、上面30A、側面30C、底面30Bの三面に亘って連続した領域を形成している。
上面貼着部68Aおよび背面貼着部68Bは、テープカセット30のテープ種類等を表すラベルシート(図示外)が上面30Aおよび側面30C(詳細には、背面)の二面に亘って貼り付けられる部位である。後方凹部68Cは、カセットケース31の後部において、第1テープ収納部33Aと第2テープ収納部33B(図3〜図6、図14参照)との間に形成されている段差部である。言い換えると、後方凹部68Cは、テープカセット30の側面30Cのうちで背面を構成する壁部である後壁31C(図13および図14参照)とテープ収納部33A、33Bとの間に設けられる。
具体的には、図11に示すように後方凹部68Cは、図2に示す後方支持部8Cの形状と略対応する形状に底面30Bに凹設された面部であり、角部32Aの下面と同一の高さ位置にある。前述したように、共通部32は、カセットケース31の上下(高さ)方向における中心線に関して、上下方向に対称に形成されており、その高さ寸法Tは、テープカセット30のテープ幅にかかわらず、同一寸法に設定されている。よって、カセットケース31の上下(高さ)方向における中心線から後方凹部68Cまでの距離は、共通部32と同じく、テープカセット30のテープ幅にかかわらず一定である。
ところで、テープカセット30がカセット装着部8の適正位置に装着されると、後方支持部8Cに設けられた後方支持ピン301が後方凹部68Cに接触するとともに、後方検出部300が後方凹部68Cに対向する。そこで、後方凹部68Cには、人間がテープ種類を特定可能とする部位であるとともに、後方検出スイッチ310(図2および図7参照)を選択的に押圧することにより、テープ印字装置1にテープ種類を検出させる部位である後方識別部900が設けられている。
以下に、図13〜図16を参照して、後方識別部900を含む後方凹部68Cの詳細な構成および機能について説明する。
先述したように、本実施形態のテープカセット30は、人間がテープ印字装置1に装着されていない状態のテープカセット30を単体で見た場合に、後方識別部900を目視することでテープ種類を特定できるように構成されている。加えて、テープカセット30がテープ印字装置1のカセット装着部8に装着された場合には、後方検出部300によって後方識別部900が示す情報を検出することで、テープ印字装置1がテープ種類を特定できるように構成されている。なお、本実施形態では、後方識別部900が特定するテープ種類は、テープカセット30に実装されるテープに関する色情報とする。まず、後方凹部68Cが有する領域と、その領域内の構成を説明する。
図13に示すように、後方凹部68Cは、テープカセット30の側面30Cのうちで背面を構成する壁部である後壁31Cから前方に延びる領域である特定領域R0を含む。つまり、特定領域R0は、後方凹部68Cにおいて後壁31Cに隣接した領域であり、本実施形態では後方凹部68Cの全体が特定領域R0をなす。特定領域R0は、カセットケース31の短手方向をなす前後方向(図13では上下方向)に沿って延びる複数の帯状区域である縦情報区域Xと、カセットケース31の長手方向をなす左右方向(図13では左右方向)に沿って延びる複数の帯状区域である横情報区域Yとを含む。
図13に例示する本実施形態の縦情報区域Xは、4つの縦情報区域X1〜X4を含む。縦情報区域X1〜X4は、カセットケース31の左右方向に等間隔で並んで配置される。縦情報区域X1は、縦情報区域X1〜X4のうちで最も左側(図13では右側)に位置している。縦情報区域X1から右側(図13では左側)に向けて、縦情報区域X2、X3、X4が順に設けられる。縦情報区域X1〜X4の幅長(つまり、左右方向長さ)は略等しく、縦情報区域X1〜X4のうちで隣り合う縦情報区域同士は等間隔で隣接している。
ただし、縦情報区域X3は、平面視で各テープ収納部33A、33Bの外縁が隣接する部位(図3〜図6に示す接点P)を含んでいる。言い換えると、縦情報区域X3は、接点P上を通る前後方向に沿った仮想線(以下、基準線Zとよぶ。)を含んでいる。本実施形態の縦情報区域X3では、縦情報区域X3の左右方向の略中心位置から若干左寄り(図13では右寄り)に、基準線Zが位置している。
図13に例示する本実施形態の横情報区域Yは、2つの横情報区域Y1、Y2を含む。横情報区域Y1、Y2は、カセットケース31の前後方向(図13では上下方向)に並んで配置される。横情報区域Y1は、特定領域R0において後壁31Cに隣接して設けられる。横情報区域Y2は、特定領域R0において横情報区域Y1よりも前方(図13では下方)に設けられる。横情報区域Y1、Y2の幅長(つまり、前後方向長さ)はそれぞれ略等しい。
特定領域R0は、テープカセット30がカセット装着部8に装着された場合に、テープ印字装置1の後方検出スイッチ310に対向する領域であって、テープカセット30のテープ種類(本実施形態では、色情報)を特定する後方識別部900を含む。横情報区域Y1、Y2のうち少なくとも1つの区域内には孔部が形成されるが、横情報区域Y1、Y2に孔部が形成されるパターンは、色情報に応じて予め定められている。後方識別部900は、横情報区域Y1、Y2を含み、横情報区域Y1、Y2の各々に孔部が形成されているか否かの組合せによって色情報を特定する部位である。そして、人間は、後方識別部900の横情報区域Y1、Y2に形成された孔部の組合せを目視することで、色情報を認識することができる。
横情報区域Y1、Y2の左右方向において孔部が形成される位置は、横情報区域Y1、Y2の各々について定められていてもよい。例えば、横情報区域Y1、Y2と縦情報区域X1〜X4とが交差して重なり合う複数の領域(以下、重なり領域という)のうち、横情報区域Y1、Y2の各々に少なくとも1つの重なり領域を識別部として定め、識別部に孔部が形成されているか否かの組合せによって色情報を特定する構成としてもよい。この場合、テープ印字装置1の後方検出スイッチ310(図2および図7参照)に対応する位置を識別部として定めれば、人間の目視だけでなく、テープ印字装置1による色情報の特定が可能となる。
そこで、本実施形態では、テープカセット30がカセット装着部8に装着された場合に、図2および図7に示す5つの後方検出スイッチ310A〜310Eのそれぞれに対向する5つの重なり領域が、後方識別部900が有する複数の識別部900A〜900Eとされる。詳細には、図13に示すように、横情報区域Y1と縦情報区域X1とが交差して重なり合う領域が、後方検出スイッチ310Aに対向する識別部900Aとして機能する。横情報区域Y1と縦情報区域X2とが交差して重なり合う領域が、後方検出スイッチ310Bに対向する識別部900Bとして機能する。横情報区域Y1と縦情報区域X3とが交差して重なり合う領域が、後方検出スイッチ310Cに対向する識別部900Cとして機能する。横情報区域Y1と縦情報区域X4とが交差して重なり合う領域が、後方検出スイッチ310Dに対向する識別部900Dとして機能する。横情報区域Y2と縦情報区域X3とが交差して重なり合う領域が、後方検出スイッチ310Eに対向する識別部900Eとして機能する。
図13に示す例では、識別部900A、900Eには、孔部が形成されている。一方、識別部900B、900C、900Dは、孔部が形成されていない、後方凹部68Cと同一面をなす面部である。このように、識別部900A〜900Eは、各々が、孔部または面部で構成される。この孔部または面部は、人間の目視による識別が可能であるとともに、後方検出スイッチ310と対向した場合に、後方検出スイッチ310を押圧しない非押圧部901、または押圧する押圧部902として機能し、テープ印字装置1に色情報を特定させる。識別部900A〜900Eと後方検出スイッチ310との関係については、後で詳述する。
ところで、本実施形態では、縦情報区域X1、X2、X4にそれぞれ1つの識別部を設ける一方、縦情報区域X3に複数の識別部を設けた配置態様となっている。これは、特定領域R0が、平面視でテープ収納部33A、33Bと後壁31Cとに規定される略三角形状の後方凹部68Cであるところ、後方凹部68Cでは先述の基準線Zにおいて前後方向長さが最も大きくなっている。つまり、基準線Zを含む縦情報区域X3が、縦情報区域X1〜X4のうちで最も前後方向長さが大きい。よって、後方凹部68Cにおいて前後方向に複数の識別部を並べる場合には、上記のように縦情報区域X3に配置するのが最も好適である。
以上のような構成のもと、本実施形態のテープカセット30では、人間が目視によって、横情報区域Y1、Y2や各識別部900A〜900Eのいずれに識別要素(孔部または面部)が形成されているかを容易に認識することが可能となる。以下、図13〜図16を参照して、その理由を説明する。なお、図13および図14は、本実施形態のテープカセット30における後方凹部68C(特定領域R0)を示すのに対し、図15および図16は、後方凹部68C(特定領域R0)における孔部の形成パターンを変えた比較例を示している。
人間は、後方凹部68Cを目視することによって各横情報区域Y1、Y2のいずれに孔部が形成されているかを把握できれば、各横情報区域Y1、Y2における孔部の組合せを確認するだけで、テープカセット30の色情報を特定することができる。ここで、人間が後方凹部68Cを目視する態様としては、次の2パターンが想定される。第1に、人間が上ケース31Aの取り除かれた状態でテープカセット30を平面視して、後方凹部68Cを上方から目視する態様である。第2に、人間がテープカセット30を底面視して、後方凹部68Cを目視する態様である。そして、横情報区域Y1、Y2の位置を把握していない場合には、人間が後方凹部68Cを目視する態様に応じて、以下のような方法で横情報区域Y1、Y2の要素特定を行うことができる。
まず、横情報区域Y1の要素特定について説明する。図14に示すように、上ケース31Aが取り除かれた状態で、後方凹部68Cを上方から(つまり、下ケース31Bの内側から)目視する場合、人間は平面視で後壁31Cに隣接して左右方向に延びる領域を横情報区域Y1に特定することができる。これにより、後壁31Cに隣接して形成されている孔部を、横情報区域Y1に設けられた孔部として特定できる。また、後壁31Cに隣接した領域のうちで孔部が形成されていない部位を、横情報区域Y1に設けられた面部として特定できる。
一方、図13に示すように、後方凹部68Cを下方から(つまり、下ケース31Bの外側から)目視する場合、人間は後壁31Cを直接目視することはできない。しかしながら、後壁31Cは薄板状をなして厚み(前後方向長さ)が小さいため、後壁31Cの前後方向位置は、テープカセット30を底面視したときに背面がなす輪郭線の前後方向位置とほぼ一致する。そのため、人間は底面視で背面がなす輪郭線に隣接して左右方向に延びる領域を横情報区域Y1に特定することができる。これにより、上記と同様に、横情報区域Y1に設けられた孔部および面部を特定できる。
次に、横情報区域Y2の要素特定について説明する。図14に示すように、後方凹部68Cを上方から目視する場合、人間は平面視で各テープ収納部33A、33Bの外縁が隣接する接点P(図3〜図6参照)を認識でき、さらに接点Pを通る基準線Zを認識することができる。そして、基準線Zを基準として、以下のように横情報区域Y2の要素特定を行うことができる。
まず、後壁31Cに隣接して形成されている孔部(つまり、横情報区域Y1に設けられた孔部)のうちで、基準線Zから最も近接した位置にある孔部を基準孔部とする。ただし、平面視で基準線Zと重なる孔部(つまり、縦情報区域X3内に設けられた孔部)が存在する場合は、その基準線Z上の孔部を除いて、基準線Zから最も近接した位置にある孔部を基準孔部とする。そして、基準孔部において基準線Zから最も離間した端部を基準端部とし、基準線Zと基準端部との間の左右方向長さを距離D1とする。図14に示す例では、横情報区域Y1の識別部のうちで最も左端に位置する識別部900Aに形成されている孔部が、基準孔部に相当する。この孔部(識別部900A)の左端部を基準端部として、基準線Zまでの左右方向長さが距離D1として求められる。
そして、後壁31Cと横情報区域Y2との間の前後方向長さを距離D0(図13参照)とした場合、距離D0が距離D1の2倍未満となるように、横情報区域Y2の位置が規定されている(図14参照)。つまり、後方凹部68Cにおいて、後壁31Cから距離D1の2倍まで前方に至る範囲内(図14では距離D2の範囲内。D2=D1*2)に、横情報区域Y2の少なくとも一部が含まれる。
以上のことから、後方凹部68Cにおいて後壁31Cから距離D1の2倍まで前方に至る範囲内(距離D2の範囲内)に、横情報区域Y1の前方に横情報区域Y2の少なくとも一部があることを特定できる。これにより、後方凹部68Cにおける距離D2の範囲内に、後壁31Cから離間した孔部(つまり、横情報区域Y1に設けられた孔部ではない孔部)が形成されている場合には、その孔部を横情報区域Y2に設けられた孔部として特定できる。特に、横情報区域Y2に識別部が1つしか設けられない場合は、その識別部の位置を明確に把握していなくても、横情報区域Y2に孔部が設けられているか否かを特定することができる。
ところで、上記の手法によれば、基準孔部の形成位置によって距離D1、ひいては距離D2が異なることになる。例えば、図14に示す例では、基準線Zから最も離間した識別部(図14では識別部900A)に設けられた孔部が基準孔部となっているため、距離D1および距離D2が最も大きくなる。一方、図15に示す例では、横情報区域Y1の識別部のうちで基準線Zに最も近接した識別部900Bに形成されている孔部が、基準孔部に相当する。この場合、距離D1および距離D2が最も小さくなる。
また、図16に示す例のように、横情報区域Y1に複数の孔部が形成されている場合は、基準線Zに近接しているほうの孔部(図16では識別部900Dの孔部)が基準孔部に相当する。そして、基準線Zに近接しているほうの孔部(図16では識別部900Dの孔部)が基準孔部に相当するため、基準線Zから離間しているほうの孔部(図16では識別部900Aの孔部)を基準孔部とした場合よりも、距離D1および距離D2が小さくなる。
本実施形態では、横情報区域Y1での孔部の形成パターンに拘らず、横情報区域Y2の少なくとも一部が最小の距離D2の範囲内(図15の例に相当)に含まれるように、横情報区域Y2の上下方向位置があらかじめ規定されている。そのため、横情報区域Y1に少なくとも1つの孔部が存在すれば、各孔部の形成位置に拘らず、基準線Zから最も離間した孔部である基準孔部を基準として、横情報区域Y2における孔部の有無を特定することができる。
ところで、後方凹部68Cを下方から目視する場合(図13参照)、人間は平面視で各テープ収納部33A、33Bを直接目視できないため、接点P(図3〜図6参照)や基準線Zを認識するのが難しい場合がある。よって、後方凹部68Cを下方から目視する場合には、上記の方法で横情報区域Y2の要素特定を行うのが難しい場合がある。この場合、次の方法で横情報区域Y2の要素特定が可能である。
本実施形態の後方識別部900では、あらかじめ色情報に対応付けた孔部および面部のパターンが設けられている。そして、テープカセット30に実装される割合が大きい主要なテープに関する色情報(例えば、テープ色:Clear,文字色:Blackなど)に対応している場合には、横情報区域Y1、Y2にそれぞれ設けられて前後方向に並ぶ2つの識別部のうち、前方の識別部に孔部が設けられ、後方の識別部に面部が設けられる。例えば、図13〜図16に示す例では、基準線Zが通る2つの識別部900C、900Eがそれぞれ面部および孔部の組合せで構成されている。
これにより、後方凹部68Cを下方から目視すると、多くのテープカセット30では、前後方向に並ぶ2つの識別部において、面部で構成された識別部の前方には必ず後壁31Cから離間した孔部で構成された識別部が設けられるため、横情報区域Y2に設けられた孔部が後壁31Cに隣接することがない。つまり、この後壁31Cから離間した孔部は、横情報区域Y2に設けられた孔部として特定可能となる。よって、人間は目視によって、識別部900Cの面部に基づいて横情報区域Y1を位置特定でき、さらに識別部900Eの孔部に基づいて横情報区域Y2を位置特定できる。
また、横情報区域Y1、Y2にそれぞれ設けられて前後方向に並ぶ2つの識別部のうち、後方の識別部を孔部とし、前方の識別部を面部としてもよい。例えば、図示しないが、基準線Zが通る2つの識別部900C、900Eをそれぞれ孔部および面部の組合せで構成する等である。これによれば、後方凹部68Cを下方から目視すると、前後方向に並ぶ2つの識別部において、面部で構成された識別部の後方には必ず後壁31Cに隣接した孔部で構成された識別部が設けられるため、後壁31Cに隣接する孔部は横情報区域Y2に亘って設けられることがない。つまり、この後壁31Cに隣接する孔部よりも前方に位置する面部は、横情報区域Y2に設けられた面部として特定可能となる。よって、人間は目視によって、識別部900Cの孔部に基づいて横情報区域Y1を位置特定でき、さらに識別部900Eの面部に基づいて横情報区域Y2を位置特定できる。
なお、本実施形態の後方凹部68Cは、孔部および面部の形成パターンが上方からも認識可能であるため、後方凹部68Cを上方から目視する場合でも(図13〜図16参照)、上記と同様にして横情報区域Y2の孔部または面部を特定可能である。
さらに、図13の例のように、横情報区域Y1、Y2と縦情報区域X1〜X4とで形成される複数の重なり領域のうち、横情報区域Y1と縦情報区域X1〜X4との重なり領域がそれぞれ識別部900A〜900Dとして機能し、横情報区域Y2と縦情報区域X3との重なり領域が識別部900Eとして機能し、識別部900A〜900Eに孔部が形成されているか否かで色情報が特定される場合には、各識別部900A〜900Eのいずれに孔部が形成されているかも特定する必要がある。後方凹部68Cにおいて縦情報区域X1〜X4が配置される左右方向位置をすべて把握していれば、横情報区域Y1、Y2内に設けられた孔部が識別部900A〜900Eのいずれに相当するかを、縦情報区域X1〜X4を基準として特定することができる。つまり、特定領域R0に設けられた孔部が、各横情報区域Y1、Y2と縦情報区域X1〜X4との重なり領域に設けられる識別部900A〜900Eのいずれに設けられているかを、人間が目視で特定することができる。
縦情報区域X1〜X4の左右方向位置は、人間が後方凹部68Cを目視することで、次のように特定することができる。先述したように、基準線Zは縦情報区域X3に含まれているため、後方凹部68Cを上方から目視することによって(図14参照)、基準線Zを基準として縦情報区域X3の左右方向位置を特定することができる。さらに、縦情報区域X1〜X4は、特定領域R0において左右方向にほぼ等間隔で並んでいる。よって、縦情報区域X3を基準として、左方向に等間隔で順に並ぶ縦情報区域X2、X1と、右方向に等間隔で並ぶ縦情報区域X4を特定することができる。このように、縦情報区域X1〜X4の左右方向位置を把握していない場合でも、目視で容易に把握できる基準線Zを基準として、縦情報区域X1〜X4の位置を特定することができる。
また、後方凹部68Cを下方から目視する場合には(図13参照)、前後方向に並ぶ孔部および面部の組合せで構成された識別部900C、900Eに基づいて、識別部900C、900Eを含む縦情報区域X3の左右方向位置を特定することができる。そのため、上記と同様に、特定領域R0において左右方向にほぼ等間隔で並ぶ縦情報区域X1〜X4を特定することができる。このように、縦情報区域X1〜X4の左右方向位置を把握していない場合でも、前後方向に並ぶ識別部(孔部および面部の組合せ)を基準として、縦情報区域X1〜X4の位置を特定することができる。
そのため、横情報区域Y1に設けられている孔部が、縦情報区域X1〜X4のいずれに設けられているかで、識別部900A〜900Dのいずれが孔部であるかを特定することができる。また、横情報区域Y2に設けられている孔部が、縦情報区域X3に設けられているか否かで、識別部900Eが孔部であるかを特定することができる。このように、本実施形態のテープカセット30は、人間が後方凹部68Cを目視することによって、各識別部900A〜900Eにおける孔部および面部の組合せを特定することができる。
次に、横情報区域Y1、Y2の各々、または識別部900A〜900Eの各々に孔部が形成されているか否かの組合せによる色情報の特定について説明する。本実施形態では、テープカセット30の色情報として、テープカセット30のテープ色および文字色を特定する例を挙げて説明する。なお、色情報に含まれるテープ色は、テープ(感熱紙テープ55、印字テープ57、両面粘着テープ58)の基材色を示す。色情報に含まれる文字色は、インクリボン60を用いた熱転写方式であればインクリボン60のインク色を示し、感熱紙テープ55を発色させる感熱方式であれば感熱紙テープ55が発色する色を示す。
横情報区域Y1、Y2がそれぞれに特定する色情報の要素は、予め定められている。本実施形態では、横情報区域Y1は、色情報のうちでテープ色を特定する情報を示す区域として定められ、横情報区域Y2は、色情報のうちで文字色を示す区域として定められている。このように、テープカセット30は、他の横情報区域の構成にかかわらず、各横情報区域のみで対応する色情報の要素を特定可能に構成されている。
さらに、横情報区域Y1、Y2内において特定の重なり領域が識別部900A〜900Eとして機能する場合には、横情報区域Y1、Y2のいずれに対応するかに応じて、識別部900A〜900Eが特定する色情報の要素が決まる。つまり、識別部900A〜900Dは、色情報のうちでテープ色を特定する識別部であり、識別部900Eは、色情報のうちで文字色を特定する識別部である。つまり、横情報区域Y1および識別部900A〜900Dはそれぞれテープ色特定部として機能し、横情報区域Y2および識別部900Dはそれぞれ文字色特定部として機能するが、以下では識別部900A〜900Eによる色情報の特定方法を例にして説明する。
表1〜表3を参照して、各特定部によって特定されるテープ色および文字色について説明する。便宜上、表中では、識別部900A〜900Eに孔部が形成されている場合が「0」、識別部900A〜900Eに孔部は形成されておらず面部である場合が「1」で示されている。なお、横情報区域Y1、Y2に形成される孔部および面部の組合せによって色情報が特定される場合には、表1の識別部900B〜900Dを横情報区域Y1に設けられる3箇所の孔部および面部の組合せに置き換えて、以下と同様にして主要なテープ色を特定可能である。表2の識別部900A〜900Dを横情報区域Y1に設けられる4箇所の孔部および面部の組合せに置き換えて、以下と同様にして特殊なテープ色を特定可能である。表3の識別部900Eを横情報区域Y2に設けられる1箇所の孔部または面部に置き換えて、以下と同様にして文字色を特定可能である。
まず、テープカセット30に実装されるテープ色を、人間が目視によって特定する方法について説明する。本実施形態では、識別部900A〜900D(横情報区域Y1上の識別部)が、孔部および面部の組合せによってテープ色を示すように構成されている。特に、テープカセット30に実装される割合が大きい主要なテープのテープ色は、3つの識別部900B〜900Dのみを目視して特定可能に構成されている。また、テープカセット30に実装される割合が小さい特殊なテープのテープ色のうちの一部は、4つの識別部900A〜900Dを目視して特定可能に構成されている。
表1に示すように、テープ色特定部を構成する識別部900B〜900Dがそれぞれ孔部で形成されているか、または孔部でない面部であるかの組合せに対応して、その組合せが示す主要なテープ色として「Clear」、「Blue」、「Black」の3色が定められている。そのため、人間は、後方識別部900のうちで、横情報区域Y1内に存在する識別部900B〜900Dを目視するだけで、テープカセット30に実装される主要なテープのテープ色を認識することができる。
詳細には、識別部900B〜900Dがそれぞれ面部、面部、孔部(表1では「1、1、0」の組合せ)の場合は、テープ色が「Clear」であることを示す。識別部900B〜900Dがそれぞれ孔部、面部、面部(表1では「0、1、1」の組合せ)の場合は、テープ色が「Blue」であることを示す。識別部900B〜900Dがそれぞれ孔部、孔部、面部(表1では「0、0、1」の組合せ)の場合は、テープ色が「Black」であることを示す。例えば、図15に示すテープカセット30では、識別部900B〜900Dがそれぞれ孔部、面部、面部であるから、テープ色は「Blue」であると特定できる。図16に示すテープカセット30では、識別部900B〜900Dがそれぞれ面部、面部、孔部であるから、テープ色は「Clear」であると特定できる。
ここで、識別部900Cは基準線Zを基準として特定可能な縦情報区域X3に設けられているため、横情報区域Y1上の識別部900A〜900Dのうちで、人間の目視によって最も容易に特定可能である。また、縦情報区域X3の左右隣りに位置する縦情報区域X2、X4に設けられる識別部900B、900Dも、人間の目視によって容易に特定可能である。つまり、主要なテープ色については、横情報区域Y1上の識別部900A〜900Dのうちで、人間が目視によって特定可能な識別部900B〜900Dを確認するだけで容易に特定可能となっている。
表2に示すように、テープ色特定部を構成する識別部900A〜900Dがそれぞれ孔部で形成されているか、または孔部でない面部であるかの組合せに対応して、その組合せが示す特殊なテープ色として「White」、「Yellow」、「Red」の3色が定められている。そのため、人間は、後方識別部900のうちで、横情報区域Y1内に存在する識別部900A〜900Dを目視するだけで、テープカセット30に実装される特殊なテープのテープ色を認識することができる。
詳細には、識別部900A〜900Dがそれぞれ孔部、面部、面部、面部(表2では「0、1、1、1」の組合せ)の場合は、テープ色が「White」であることを示す。識別部900A〜900Dがそれぞれ面部、孔部、面部、孔部(表2では「1、0、1、0」の組合せ)の場合は、テープ色が「Yellow」であることを示す。識別部900A〜900Dがそれぞれ孔部、面部、孔部、面部(表2では「0、1、0、1」の組合せ)の場合は、テープ色が「Red」であることを示す。例えば、図13および図14に示すテープカセット30では、識別部900A〜900Dがそれぞれ孔部、面部、面部、面部であるから、テープ色は「White」であると特定できる。
表3に示すように、文字色特定部を構成する識別部900Eが孔部で形成されているか、または孔部でない面部であるかに対応して、文字色として「Black」または「Black以外」が定められている。そのため、人間は、後方識別部900のうちで、横情報区域Y2内に存在する識別部900Eを目視するだけで、テープカセット30に実装されるテープの文字色を認識することができる。詳細には、識別部900Eが孔部(表3では「0」)の場合は、文字色が「Black」であることを示す。識別部900Eが面部(表3では「1」)の場合は、文字色が「Black以外」であることを示す。例えば、図13〜図16に示すテープカセット30では、いずれも識別部900Eが孔部であるから、文字色は「Black」であると特定できる。
このように、本実施形態のテープカセット30では、特定領域R0に設けられる他の識別部900Eが孔部および面部のいずれであるかに拘らず、表1に示す主要なテープ色については人間が識別部900B〜900Dを目視するだけで特定でき、表2に示す特殊なテープ色については人間が識別部900A〜900Dを目視するだけで特定できる。表3に示す文字色については、特定領域R0に設けられる他の識別部900A〜900Dが孔部および面部のいずれであるかに拘らず、人間が識別部900Eを目視するだけで特定できる。
特に、カセットケース31内では、各テープ収納部33A、33Bが後側に偏って設けられる一方、インクリボン収納部33Cが前側に偏って設けられる。そのため、インクリボン60を使用するテープカセット30では、横情報区域Y1、Y2の前後方向の並び順序に対応して、カセットケース31内においてテープ(図3および図4では両面粘着テープ58、図5では印字テープ59)およびインクリボン60が前後方向に並ぶ。よって、横情報区域Y2よりも後側でテープ色を示す横情報区域Y1を目視して、インクリボンよりも後側に位置するテープの基材色を特定できる。また、横情報区域Y1よりも前側で文字色を示す横情報区域Y2を目視して、テープよりも前側に位置するインクリボンのインク色を特定できる。つまり、カセットケース31内でのテープおよびインクリボンの並びに基づいて、人間が各横情報区域Y1、Y2に示される色情報を正確に特定することができる。
なお、各特定部によって特定される色情報(テープ色および文字色)の内容は、表1〜表3に限定されるものではなく、適宜変更が可能である。また、表1〜表3に規定される色情報の総組合せ数は28個になるが、すべてが使用される必要はない。ただし、色情報が対応する孔部および面部の組合せは、少なくとも以下の規則性に従って定義されることが好適である。
第1に、基準線Zを指標として特定しやすい識別部900Cを除いた識別部900A、900B、900Dは、少なくとも1つが孔部で構成され、且つ、少なくとも1つが面部で構成される組合せであることが望ましい。これにより、人間が識別部900A〜900Dを目視したときに、各識別部における孔部および面部の組合せの視認性を高めて、その組合せの特定を容易にすることができる。
第2に、横情報区域Y1内に存在する識別部900A〜900Dの全てが面部となる組合せや、特定領域R0内に存在する識別部900A〜900Eの全てが面部となる組合せを採用しないことが望ましい。このような組合せでは、後方凹部68Cの全体が、孔部の1つも存在しない面部または後壁31Cから離間した位置に1つのみ孔部が形成される面部となり、そもそも後方凹部68Cに後方識別部900が設けられていることを人間が把握し難くなる。よって、後壁31Cに隣接した位置に少なくとも1つは孔部を設けることで、後方凹部68Cに後方識別部900が設けられていることを明確にすることができる。
第3に、テープカセット30に実装される頻度が高いテープの色情報には、後方凹部68Cにおいて前後に並ぶ識別部900C、900Eのうち、一方を孔部とし、他方を面部とする組合せを採用することが望ましい。これは、先述したように、人間が後方凹部68Cを目視することによって、横情報区域Y2の要素特定を可能とするためである。
第4に、人間の目視によってテープカセット30のテープ色が特定される場合、そのテープ色が主要なものか特殊なものかに拘らず、識別部900B〜900Dがそれぞれ孔部および面部のいずれであるかは、テープ色の特定に必要な情報である。よって、表2に示す特殊なテープ色に対応する色情報は、表1に示す主要なテープ色に対応する色情報を含まないように定義されることが好ましい。具体的には、特殊なテープ色の色情報(表2参照)に、識別部900B〜900Dが「面部、面部、孔部」、「孔部、面部、面部」、「孔部、孔部、面部」となる組合せを含まないことが望ましい。これにより、人間が後方凹部68Cを目視した場合に、主要なテープ色を他のテープ色と明確に区別して、テープ色の特定を容易にすることができる。
ここまで、後方識別部900が色情報を特定するための構成と、人間が後方識別部900を目視して色情報を特定する方法について説明した。以下では、テープ印字装置1の後方検出スイッチ310との関係で見た後方識別部900の構成と、後方検出スイッチ310による色情報の特定態様とについて説明する。
まず、テープ印字装置1の後方検出スイッチ310との関係で見た後方識別部900の構成について説明する。先述したように、本実施形態のテープ印字装置1では、後方支持部8Cに設けられた後方検出部300が、5つの後方検出スイッチ310A〜310Eを備えている(図2および図7参照)。テープカセット30では、テープカセット30がカセット装着部8に装着された場合に、後方検出スイッチ310A〜310Eのそれぞれに対向する重なり領域が、識別部900A〜900Eとされている(図13および図14参照)。
孔部は、後方検出スイッチ310と対向した場合に、後方検出スイッチ310のスイッチ端子322が挿脱可能な、スイッチ端子322を押圧しない非押圧部901として機能する。非押圧部901は、識別部(重なり領域)の形状に対応する平面視で円形状の貫通孔として形成される。非押圧部901に対向する後方検出スイッチ310は、スイッチ端子322が非押圧部901に挿入されてオフ状態となる。
面部は、後方検出スイッチ310と対向した場合に、スイッチ端子322を押圧する押圧部902として機能する。押圧部902に対向する後方検出スイッチ310は、スイッチ端子322が押圧部902に接触してオン状態となる。なお、図13および図14の例では、識別部900A、900Eは孔部(つまり、非押圧部901)であり、識別部900B〜900Dは面部(つまり、押圧部902)である。
表1〜3を参照して先述したように、後方識別部900の識別部900A〜900Eには、色情報に応じた規定のパターンで孔部(非押圧部901)および面部(押圧部902)のいずれかが形成される。したがって、テープ印字装置1は、後方識別部900によって選択的に押圧される後方検出スイッチ310のオン・オフ状態の組合せに基づいて、色情報を特定することができる。より詳細には、先述のように識別部900A〜900Eについて予め定められた規定のパターン(孔部および面部の組合せ)を、対応する後方検出スイッチ310A〜310Eの検出パターン(オン状態およびオフ状態の組合せ)に置き換え、それぞれを色情報と対応付けたテーブルを参照して、色情報を特定することができる。
図20に示す色情報テーブル520は、テープ印字装置1による色情報の特定に用いられるテーブルの一例であり、テープ印字装置1のROM402に記憶されている。色情報テーブル520には、5つの後方検出スイッチ310A〜310Eのオン・オフの組合せに応じて、テープカセット30の色情報が定義されている。なお、図20に示す色情報テーブル520では、後方検出スイッチ310A〜310Eがそれぞれスイッチ「ST1」〜「ST5」に対応しており、各後方検出スイッチ310のオフ状態(OFF)およびオン状態(ON)がそれぞれ「0」および「1」に対応している。
また、本実施形態の色情報テーブル520は、後方検出スイッチ310A〜310Eの検出パターン毎にそれぞれ異なる色情報が定義された複数の色テーブルを含む。図20に示す例では、後方検出スイッチ310A〜310Eの検出パターンに応じて、第1の色情報が定義された第1色テーブル521と、第2の色情報が定義された第2色テーブル522とを含んでいる。本実施形態では、第1色テーブル521は使用頻度が大きい色情報を示す標準的な色テーブルであり、第2色テーブル522は使用頻度が小さい色情報を示す特殊な色テーブルである。テープ印字装置1では、第1色テーブル521および第2色テーブル522を選択的に使用して、後方検出スイッチ310A〜310Eの検出パターンに応じた色情報(第1の色情報または第2の色情報)を特定するが、詳細は後述する。
なお、テープ印字装置1で使用されるテーブルは、図20に示す色情報テーブル520に限らない。例えば、色情報テーブル520において「予備」に対応する検出パターンに、他の任意の色情報を追加したテーブルを使用することができる。また、色情報テーブル520に登録済みの色情報を削除したり、各検出パターンと色情報との対応を変更したり、各検出パターンに対応する色情報の内容を変更したテーブルを使用してもよい。この場合、先述した目視による色情報特定のために定められる孔部の形成パターンも適宜変更されることになる。
次に、図3〜図6、図17および図18を参照して、テープ印字装置1がテープカセット30のテープ種類を検出する態様について説明する。
先ず、図3〜図6、図17を参照して、アーム検出部200によるアーム識別部800の検出態様について説明する。ユーザによってテープカセット30がカセット装着部8の適正な位置に装着され、カセットカバー6が閉じられると、プラテンホルダ12が待機位置(図3)から印字位置(図4〜図6)に向けて移動する。すると、プラテンホルダ12のカセット対向面12Bに設けられたアーム検出部200および係止片225が、テープカセット30のアーム前面35に設けられたアーム識別部800および係止孔820にそれぞれ対向する位置に移動する。
テープカセット30がカセット装着部8の適正な位置に装着されていれば、係止片225は係止孔820に挿入される。そのため、カセット対向面12Bから突出するアーム検出スイッチ210のスイッチ端子222は、係止片225によって干渉されることなく、アーム識別部800の対応する位置に設けられた識別部800A〜800E(非押圧部801または押圧部802)に対向して選択的に押圧される。つまり、非押圧部801に対向するアーム検出スイッチ210は、非押圧部801であるスイッチ孔に挿入されてオフ状態とされる。押圧部802に対向するアーム検出スイッチ210は、押圧部802であるアーム前面35の面部によって押圧されてオン状態とされる。
例えば、図2、図10〜図14に示すテープカセット30がカセット装着部8の適正位置に装着されている場合、図17に示すように、アーム検出スイッチ210A、210C、210Dは、非押圧部801である識別部800A、800C、800Dにそれぞれ対向するので、オフ状態「0」となる。一方、アーム検出スイッチ210B、210Eは、押圧部802である識別部800B、800Eにそれぞれ対向するのでオン状態「1」となる。つまり、アーム検出スイッチ210A〜210Eのオン・オフ状態は、それぞれ「0」、「1」、「0」、「0」、「1」として特定される。
テープ印字装置1では、アーム検出部200の検出パターン(ここでは、5つのアーム検出スイッチ210A〜210Eのオン・オフの組合せ)に基づいて、テープカセット30のテープ種類として印字用情報が特定される。本実施形態では、テープカセット30の印字用情報として、テープ幅および印字態様を含む。印字用情報に含まれる「テープ幅」は、3.5mm〜36mmまでの7種類のテープ幅のいずれかを示す。印字用情報に含まれる「印字態様」は、鏡像印字(ラミネート)であるか正像印字(レセプター)であるかを示す。
テープ印字装置1のROM402には、5つのアーム検出スイッチ210A〜210Eのオン・オフの組合せに応じて、テープカセット30の印字用情報が定義された印字用情報テーブル(図示外)が記憶されている。上記の例では、この印字用情報テーブル(図示外)を参照して、アーム検出スイッチ210A〜210Eのオン・オフ状態「0」、「1」、「0」、「0」、「1」に対応する印字用情報として、例えば「テープ幅:36mm、印字態様:ラミネート」が特定される。
次に、図18を参照して、後方検出部300による後方識別部900の検出態様について説明する。ユーザによってテープカセット30がカセット装着部8の適正な位置に装着されると、テープ印字装置1の後方支持部8Cに設けられた後方検出部300が、テープカセット30の後方凹部68Cに設けられた後方識別部900に対向する。より詳細には、後方支持部8Cから突出する後方検出スイッチ310のスイッチ端子322(図2および図7参照)が、後方識別部900の対応する位置に設けられた識別部(非押圧部901または押圧部902)に対向して選択的に押圧される。つまり、非押圧部901に対向する後方検出スイッチ310は、非押圧部901に挿入されてオフ状態とされる。押圧部902に対応する後方検出スイッチ310は、押圧部902によって押圧されてオン状態とされる。
例えば、図2、図10〜図14に示すテープカセット30がカセット装着部8の適正位置に装着されている場合、図18に示すように、後方検出スイッチ310A、310Eは、非押圧部901である識別部900A、900Eにそれぞれ対向するので、オフ状態となる。一方、後方検出スイッチ310B〜310Dは、押圧部902である識別部900B〜900Dに対向するのでオン状態となる。つまり、後方検出スイッチ310A〜310Eにそれぞれ対応するスイッチ「ST1」〜「ST5」のオン・オフ状態は、それぞれ「0」、「1」、「1」、「1」、「0」として特定される。
テープ印字装置1では、後方検出部300の検出パターン(ここでは、5つの後方検出スイッチ310A〜310Eのオン・オフの組合せ)に基づいて、テープカセット30のテープ種類として色情報が特定される。上記の例では、先述の色情報テーブル520(図20参照)を参照して、後方検出スイッチ310A〜310Eのオン・オフ状態「0」、「1」、「1」、「1」、「0」に対応する色情報が特定される。ただし、色情報テーブル520に含まれる複数の色テーブル521、522のいずれを使用するかによって、特定される色情報が異なる。ここでは、後述するアーム検出スイッチ210Dのオフ状態に応じて標準的な第1色テーブル521が使用されて、先述した目視での特定結果と同様に「テープ色:White、文字色:Black」が特定される。
次に、本実施形態に係るテープ印字装置1の印字に係る処理について、図19を参照して説明する。なお、図19に示す印字に係る処理は、テープ印字装置1が電源オンされると、CPU401がROM402に記憶されているプログラムに基づいて実行する。より詳細には、テープ印字装置1では、キーボード3等から印字実行が指示される毎に、CPU401が印字に係る処理を実行する。つまり、以下の印字に係る処理は、テープ印字装置1で実行される1回の印字に係る処理の流れを示している。
図19に示すように、印字に係る処理では、最初にテープ印字装置1のシステム初期化が実行される(ステップS1)。例えば、ステップS1のシステム初期化では、RAM404のテキストメモリをクリアしたり、カウンタを初期化して既定値に戻したりする。
次に、アーム検出部200の検出パターン(つまり、複数のアーム検出スイッチ210のオン・オフの組合せ)に基づいて、テープカセット30の印字用情報が特定される(ステップS3)。ステップS3では、先述したように、ROM402に記憶されている印字用情報テーブル(図示外)を参照して、アーム検出スイッチ210A〜210Eのオン・オフの組合せに対応する印字用情報が特定される。
続いて、複数のアーム検出スイッチ210のうちで、アーム検出スイッチ210D(以下、スイッチSW4)がオン状態であるか否かが判断される(ステップS5)。スイッチSW4がオフ状態である場合(ステップS5:NO)、ROM402に記憶されている色情報テーブル520に含まれる色テーブルのうちで第1色テーブル521が選択される(ステップS7)。スイッチSW4がオン状態である場合(ステップS5:YES)、ROM402に記憶されている色情報テーブル520に含まれる色テーブルのうちで第2色テーブル522が選択される(ステップS9)。
そして、後方検出部300の検出パターン(つまり、複数の後方検出スイッチ310のオン・オフの組合せ)に基づいて、テープカセット30の色情報が特定される(ステップS11)。ステップS11では、ステップS7またはステップS9で選択された色テーブルを参照して、複数の後方検出スイッチ310のオン・オフの組合せに対応する色情報が特定される。ただし、本実施形態では、生産量の多いテープ種類のテープカセット30では、アーム検出スイッチ210Dに対応する識別部800Dが非押圧部801として構成されている。そのため、ステップS11では、多くの場合、標準的な第1色テーブル521を参照して色情報が特定される。
これにより、本実施形態では、特定のアーム検出スイッチ210の検出状態(ここでは、アーム検出スイッチ210Dのオン・オフ)に応じて、テープカセット30の色情報の特定に使用される色テーブルが選択される。そのため、後方検出スイッチ310の数量を増加させることなく(つまり、後方検出部300が占める面積を大きくすることなく)、テープ印字装置1にて特定可能な色情報のパターン数を増加させることができる。
印字に係る処理(図19)に戻り、ステップS3にて特定された印字用情報およびステップS11で特定された色情報が、ディスプレイ5にテキスト情報として表示される(ステップS13)。例えば、先述のテープカセット30(図2、図10〜図14参照)が適正に装着された場合には、ディスプレイ5に「36mmラミネートタイプのテープカセットが装着されました。テープ色はWhite、文字色はBlackです。」という表示が行われる。
次に、キーボード3からの入力があったか否かが判断される(ステップS15)。キーボード3からの入力がある場合(ステップS15:YES)、CPU401は、キーボード3から入力された文字等を印字データとして受け付けて、その印字データ(文書データ)をRAM404のテキストメモリに記憶させる(ステップS17)。なお、キーボード3からの入力がない場合(ステップS15:NO)、処理はステップS15に戻り、CPU401はキーボード3からの入力を待ち受ける。
その後、例えばキーボード3から印字開始が指示されると、ステップS3で特定された印字用情報に応じて、テキストメモリに記憶された印字データが加工される(ステップS19)。例えば、ステップS19では、ステップS3で特定されたテープ幅に対応した印字範囲および印字サイズや、ステップS3で特定された印字態様(鏡像印字または正像印字)に対応した印字位置などが反映されるように、印字データが加工される。ステップS19で加工された印字データに基づいて、印字媒体であるテープへの印字処理が実行される(ステップS21)。印字処理が実行されたのち、印字に係る処理(図19)が終了する。
上記の印字処理(ステップS21)を具体的に説明すると、図3および図4に示すラミネートタイプのテープカセット30が装着されている場合、テープ駆動軸100を介して回転駆動されるテープ駆動ローラ46が、可動搬送ローラ14との協働によって、第2テープスプール41からフィルムテープ59を引き出す。また、リボン巻取軸95を介して回転駆動されるリボン巻取スプール44が、印字スピードと同期してリボンスプール42から未使用のインクリボン60を引き出す。第2テープスプール41から引き出されたフィルムテープ59は、リボンスプール42の外側を通過しながらアーム部34内の搬送経路に沿って搬送される。
さらに、フィルムテープ59はその表面にインクリボン60が重合された状態で開口34Aからヘッド挿入部39に供給され、テープ印字装置1のサーマルヘッド10とプラテンローラ15との間に搬送される。そして、サーマルヘッド10によってフィルムテープ59の印字面に対して文字、図形、記号等が印字される。その後、使用済みのインクリボン60は案内壁47にて印字済みのフィルムテープ59から剥がされ、リボン巻取スプール44に巻き取られる。
一方、テープ駆動ローラ46と可動搬送ローラ14との協働によって、第1テープスプール40から両面粘着テープ58が引き出される。この両面粘着テープ58は、テープ駆動ローラ46と可動搬送ローラ14との間にガイドされて巻き込まれながら、印字済みのフィルムテープ59の印字面に重ねられて貼着される。両面粘着テープ58が貼着された印字済みのフィルムテープ59(つまり、印字済テープ50)は、さらにテープ排出口49に向かって搬送され、カット機構17によって切断される。
図5に示すレセプタータイプのテープカセット30が装着されている場合、テープ駆動軸100を介して回転駆動されるテープ駆動ローラ46が、可動搬送ローラ14との協働によって第1テープスプール40から印字テープ57を引き出す。また、リボン巻取軸95を介して回転駆動されるリボン巻取スプール44が、印字スピードと同期してリボンスプール42から未使用のインクリボン60を引き出す。第1テープスプール40から引き出された印字テープ57は、平面視でカセットケース31の右下部で左方へ折り返され、アーム部34内の搬送経路に沿って搬送される。
さらに、印字テープ57はその表面にインクリボン60が重合された状態で開口34Aからヘッド挿入部39に供給され、テープ印字装置1のサーマルヘッド10とプラテンローラ15との間に搬送される。そして、サーマルヘッド10によって印字テープ57の印字面に対して文字、図形、記号等が印字される。その後、使用済みのインクリボン60は案内壁47にて印字済みの印字テープ57から剥がされ、リボン巻取スプール44に巻き取られる。一方、印字済みの印字テープ57(つまり、印字済テープ50)はさらにテープ排出口49に向かって搬送され、カット機構17によって切断される。
図6に示すサーマルタイプのテープカセット30が装着されている場合、印字が行われる場合には、テープ駆動軸100を介して回転駆動されるテープ駆動ローラ46が、可動搬送ローラ14との協働によって第1テープスプール40から感熱紙テープ55を引き出す。第1テープスプール40から引き出された感熱紙テープ55は、平面視でカセットケース31の右下部で左方へ折り返され、アーム部34内の搬送経路に沿って搬送される。
さらに、感熱紙テープ55はアーム部34の開口34Aから排出されて、サーマルヘッド10とプラテンローラ15との間に搬送される。そして、サーマルヘッド10によって感熱紙テープ55の印字面に対して文字、図形、記号等が印字される。その後、テープ駆動ローラ46と可動搬送ローラ14との協働によって、印字済みの感熱紙テープ55(つまり、印字済テープ50)はさらにテープ排出口49に向かって搬送され、カット機構17によって切断される。
ところで、上記の印字処理(ステップS21)では、ラミネートタイプのテープカセット30が装着されている場合、フィルムテープ59にインクリボン60のインクが、文字等を鏡像で表示させるように転写される鏡像印字が行われる。一方、レセプタータイプのテープカセット30が装着されている場合、印字テープ57にインクリボン60のインクが、文字等を正像で表示させるように転写される正像印字が行われる。また、サーマルタイプのテープカセット30が装着されている場合も、感熱紙テープ55に文字等を正像で発色させるように感熱方式の正像印刷が行われる。
本実施形態では、印字態様としての「ラミネート」は鏡像印字が行われるテープカセット30を意味し、印字態様としての「レセプター」は正像印字が行われるテープカセット30を意味する。そのため、印字態様としての「レセプター」は、図5に示すレセプタータイプのテープカセット30のみならず、図6に示すサーマルタイプのテープカセット30なども含む。
上記の印字に係る処理(図19)によって、テープ印字装置1では、アーム検出部200の検出パターンと、後方検出部300の検出パターンとによって、カセット装着部8に装着されるテープカセット30のテープ種類が認識される。すなわち、テープカセット30の側面(詳細には、アーム前面35)に設けられたアーム識別部800によって、アーム検出部200のアーム検出スイッチ210A〜210Eが選択的に押圧されて、テープカセット30の印字用情報が特定される。また、テープカセット30の底面30B(詳細には、後方凹部68C)に設けられた後方識別部900によって、後方検出部300の後方検出スイッチ310A〜310Eが選択的に押圧されて、テープカセット30の色情報が特定される。
以上に説明したように、本実施形態のテープカセット30は、人間がテープカセット30を単体で見た場合に、後方凹部68Cを目視することでテープ種類(ここでは、色情報)を特定できるように構成されている。加えて、テープカセット30がテープ印字装置1のカセット装着部8に装着された場合には、後方検出部300によって後方識別部900が示す情報を検出することで、テープ印字装置1がテープ種類を特定できるように構成されている。このうち、人間が後方識別部900の目視によって色情報を認識できるように構成したことで、特に次のような効果を奏する。
従来のテープカセットの製造方法では、テープカセットに実装させるテープの種類に応じて、カセットケースにテープ等を収納させるのが一般的である。例えば、テープカセットに実装されるテープの色情報(テープ色と文字色との組合せ)に応じて、そのテープ色に一致する基材色のテープと、その文字色に一致するインク色のインクリボンとを、作業者がカセットケースに収納させるなどである。ところが、テープ色と文字色との組合せは多種にわたるため、テープカセットの製造時において、作業者が誤ってテープカセットに実装させる色情報とは異なるテープやインクリボンを収納するおそれがあった。
本実施形態のテープカセット30によれば、例えばテープカセット30の製造過程で上ケース31Aが組み付けられる前の状態で、人間が後方凹部68Cを上方から目視したり、あるいは、テープ等を収納させる前の下ケース31Bを裏返して、カセットケース31の裏面側から後方凹部68Cを目視したりすることによって、後方識別部900を確認することができる。そして、テープカセット30に実装される色情報を特定することができ、カセットケース31に収納すべきテープ色や文字色を把握することができる。従って、テープカセット30の製造工程において、作業者はカセットケース31に実装すべき内容を確認しながら作業できるため、テープカセット30の製造ミスを低減することができる。
さらに、テープカセット30の出荷後には、テープ種類等を記したラベルが何らかの理由で読めない場合でも、ユーザがテープカセット30を底面視することによって色情報を認識することができる。よって、ユーザは、複数のテープカセット30のなかから所望の色情報を有するテープカセット30を容易に選び出すことも可能となる。
また、後方識別部900は横情報区域Y1、Y2(識別部900A〜900E)の各々における孔部の有無の組み合わせ(つまり、非押圧部901と押圧部902との組み合わせ)という簡易な構成で色情報を特定するため、カセットケース31に予め形成しておくことが容易である。そのため、カセットケース31の製造時などに、各カセットケース31に実装される内容を示す印刷を施したり、その実装内容を示すラベルを貼着したりする必要がなく、テープカセット30の製造ミスを低コストで抑制することができる。
さらに、上記実施形態では、汎用カセットをラミネートタイプに構成したテープカセット30を、汎用機であるテープ印字装置1にて使用している。それにより、テープ印字装置1は1台でサーマルタイプ、レセプタータイプ、ラミネートタイプ等、各種のテープカセット30に対応させることが可能であり、1台毎に異なるテープ印字装置1を用いる必要がない。また、テープカセット30はその製造に際して通常複数の金型を組み合わせたうえで樹脂を流し込んで形成するが、同じテープ幅に対応したテープカセット30であれば、後方識別部900を形成する部分を含む金型を除いて共通の金型を使用可能なため、大変なコスト削減になる。
ところで、後方凹部68Cの特定領域R0では、識別部900A〜900Eとして機能する重なり領域に、色情報に対応した孔部(つまり、非押圧部901)および面部(つまり、押圧部902)のいずれかが設けられる例について先述した。この場合、特定領域R0には、識別部900A〜900Eとしての機能が確保される範囲内で、孔部および面部を自由に形成することができる。
具体的には、先述のテープカセット30(図2、図10〜図14参照)では、特定領域R0のうちで識別部900A〜900Eとして機能しない領域の全てを、押圧部902と同一面をなす面部としている。そのため、特定領域R0に設けられた孔部(非押圧部901)が全て独立しているが、これに限定されない。例えば、特定領域R0において、複数の非押圧部901の少なくとも2つを含むような大きさおよび形状を有する1つの孔部(溝部)を形成してもよい。ただし、一の溝部を形成する場合は、押圧部902として機能する部位を含まないように形成することを要する。
図21〜図23に示すテープカセット30は、識別部900A、900Bに設けられた各非押圧部901を連続させて一の溝部903としたものを例示している。なお、図21〜図23に示すテープカセット30では、識別部900A〜900Eがそれぞれ孔部、孔部、面部、面部、孔部であるから、後方検出スイッチ310の検出および人間の目視のいずれによっても、テープ色「Blue」、文字色「Black」であると特定される。
なお、図21〜図23に示す例のように、横情報区域Y1に設けられた複数の非押圧部901を連続させた溝部903が設けられたテープカセット30では、後方凹部68Cを上方または下方から目視することで横情報区域Y2の要素特定を行う場合、溝部903は1つの孔部として取り扱われる。よって、基準線Zから最も近い孔部が溝部903であれば、この溝部903が基準孔部となり、溝部903において基準線Zから最も離間した端部(図23では左端部)が基準端部となる。そのため、横情報区域Y1に溝部903が設けられている場合でも、先述と同様に後方凹部68Cを目視して横情報区域Y2の要素特定を行うことができる。
上記実施形態において、テープカセット30のカセットケース31内に収納された感熱紙テープ55、印字テープ57、両面粘着テープ58、フィルムテープ59が、本発明の「テープ」にそれぞれ相当する。第1テープ収納部33Aおよび第2テープ収納部33Bが本発明の「テープ収納領域」に相当し、第1テープ収納部33Aが本発明の「第1テープ収納領域」に相当し、第2テープ収納部33Bが本発明の「第2テープ収納領域」に相当する。インクリボン収納部33Cが、本発明の「インクリボン収納領域」に相当する。後方識別部900が、本発明の「色特定部」に相当する。非押圧部901および後述の凹部910が、本発明の「孔部」にそれぞれ相当する。横情報区域Y1、Y2が本発明の「複数の横情報区域」に相当し、横情報区域Y1が本発明の「第1横情報区域」に相当し、横情報区域Y2が本発明の「第2横情報区域」に相当する。縦情報区域X3が本発明の「基準縦情報区域」に相当し、縦情報区域X1、X2、X4が本発明の「従属縦情報区域」に相当し、縦情報区域X1〜X4が本発明の「複数の縦情報区域」に相当する。
なお、本発明のテープカセット30およびテープ印字装置1は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
後方識別部900における非押圧部901および押圧部902の形状、サイズ、数、および配置パターンは、上記実施形態で例示されたものに限らず、適宜変更が可能である。例えば、上記実施形態では、後方識別部900の非押圧部901(孔部)は、識別部900A〜900Eとして機能する重なり領域のほぼ全域を占めるように設けられた平面視円形状の貫通孔であるが、識別部900A〜900Eとして機能する重なり領域をほぼ完全に含む大きさおよび形状の範囲で変形が可能である。例えば、重なり領域と略一致する形状をなす平面視正方形状の貫通孔にしてもよいし、他の異なる形状としてもよい。
また、図24に示すように、後方識別部900に設けられる非押圧部を、貫通孔ではなく後方凹部68Cに形成された凹部910としてもよい。図24に示す例では、人間が後方凹部68Cを下方から目視すると、後方凹部68Cにおいて上方に向けて凹陥する非押圧部901(凹部910)は、貫通孔で形成された場合と同様に孔部として認識される。一方、人間が後方凹部68Cを上方から目視すると、後方凹部68Cにおいて略筒状に上方に突出する非押圧部901(凹部910)は、孔部とは逆に凸部として認識される。したがって、後方凹部68Cを上方から目視する場合は、人間は非押圧部901(凹部910)がなす凸部を孔部に置き換えて認識することで、上記と同様に後方識別部900が示す色情報を特定することができる。
また、色情報テーブル520は、第1色テーブル521と第2色テーブル522とからなり、アーム検出スイッチ210Dの検出結果により第1色テーブル521と第2色テーブル522の何れかを選択しているが、色情報テーブル520は1つの色テーブルのみからなっていてもよい。