JP5322483B2 - 膜厚測定方法、膜厚測定用プログラム、及び膜厚測定装置 - Google Patents
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Description
より具体的には、該位相差フィルムは、厚み方向位相差というパラメータを有しており、用途に応じて所望の厚み方向位相差となるように調整されたフィルムが用いられるものである。この厚み方向位相差は、該フィルムの面内方向における屈折率の最大値と、該フィルムの厚み方向における屈折率との差に、該フィルムの厚みを掛け合わせた数値であるため、該フィルムの厚みを正確に把握することが極めて重要となる。
1)前記基板の屈折率と、前記薄膜の屈折率の推定値を用いて、前記実測分光反射率が極大・極小となる波長から干渉次数を決定するステップと、
2)決定された前記干渉次数を用いて、前記極大・極小波長に対応する膜厚値を求めるステップと、
3)前記干渉次数を用い、膜厚値を変化させて各膜厚値に対する前記実測分光反射率の極大・極小波長から前記薄膜の屈折率を求め直すステップと、
4)各膜厚値に対して定まる前記極大・極小波長に対応する屈折率から、前記薄膜の屈折率の波長分散式モデルを作成するステップと、
5)各膜厚値と各膜厚値に対して定まる前記波長分散式モデルに基づいて、前記薄膜に由来する反射と前記基板の裏面反射の線形結合である反射率の第1段階の理論曲線を作成するステップと、
6)前記第1段階の理論曲線の極小波長における反射率に基づく値と、前記実測分光反射率の極小波長における反射率に基づく値を比較し、その比較演算によりオフセット量を算出するステップと、
7)前記第1段階の理論曲線を前記オフセット量の分だけオフセットした第2段階の理論曲線を作成するステップとを含み、
前記第2段階の理論曲線と、前記実測分光反射率データの平均二乗誤差が最小となるときの膜厚値を、求める膜厚の測定結果とする、というものである。
さらに、前記6)7)のステップに記載の如く、実測された分光反射率データと理論曲線とのオフセット量を算出して第1段階の理論曲線を前記オフセット量の分だけオフセットして第2段階の理論曲線を作成する必要があり、計算量が膨大となって演算に長時間を要するという問題がある。
1)取得した前記分光スペクトルから仮の膜厚値を求めるステップと、
2)前記仮の膜厚値の近傍から選択された複数の膜厚値毎に、前記薄膜に係る屈折率の波長分散式モデルを作成するステップと、
3)前記薄膜について別途得た所定波長に対する屈折率と、前記複数の膜厚値毎に作成された前記屈折率の波長分散式モデルから求められる該所定波長に対する各屈折率とをそれぞれ比較するステップと、
4)前記3)のステップで比較した屈折率の差を評価して最終的な膜厚値を求めるステップと、
を有することを特徴とする膜厚測定方法を提供する。
つまり、本発明に係る膜厚測定方法によれば、反射光の分光スペクトルを測定する際に、反射率が極大(ピーク)及び/又は極小(バレイ)となる波長の値が正確に把握できれば、膜厚値が正確に算出されることとなる。
1a)前記分光スペクトルから、分光反射率が極大及び/又は極小となる波長を求め、該波長から干渉次数を仮定するステップと、
1b)仮定された干渉次数を用いて、前記分光反射率が極大及び/又は極小となる波長に対応した膜厚値をそれぞれ求めるステップと、
1c)前記仮定した干渉次数を変えて前記1b)のステップを繰り返し行うとともに、該干渉次数のうち、膜厚値のバラツキが最小となった干渉次数に対して前記膜厚値の平均値を求めてこれを仮の膜厚値とするステップと、
を含むことを特徴とする前記膜厚測定方法を提供する。
2a)前記仮の膜厚値の近傍から選択された複数の膜厚値を用いて、前記分光反射スペクトルの極大及び/又は極小となる波長に対するそれぞれの屈折率を求めるステップと、
2b)前記2a)のステップにより求めた波長と屈折率の分布データを、既知の分散式モデルに適用して、前記屈折率の波長分散式モデルを作成するステップと、
を含むことを特徴とする前記膜厚測定方法を提供する。
3a)前記薄膜について別途得た所定波長に対する屈折率と、前記複数の膜厚値毎に作成された前記屈折率の波長分散式モデルから求められる該所定波長に対する各屈折率との差を求めるステップと、
3b)前記複数の膜厚値のうち、前記3a)のステップで求めた差が0近傍値となる膜厚値を2乃至4個選択するステップと、
3c)前記3b)のステップにより選択された膜厚値から、前記差が0となる膜厚値を線形補間して求め、得られた膜厚値を最終的な膜厚値とするステップと、
を含むことを特徴とする前記膜厚測定方法を提供する。
また、前記従来技術のような場合の如く、反射光の絶対値や振幅の大きさを正確に把握する必要がある場合には、反射光を集光(フォーカス)させる必然性があり、複雑なオートフォーカス機構等を用い、しかも集光させるための時間を要していたが、本発明の方法では反射光を集光させる必要がなく、装置の簡略化と測定時間の短縮化を図ることが可能となる。
さらに、本発明に係る膜厚測定方法によれば、前記従来技術のように理論的な反射率曲線(分光スペクトル曲線)を算出するための複雑な計算を行う必要がないため、分光スペクトルを取得した後の演算処理が簡略となり、演算時間の短縮化を図ることも可能となる。
1)取得した前記分光スペクトルから、前記薄膜の仮の膜厚値d_tempを求めるステップと(S2〜S8)、
2)前記仮の膜厚値d_tempを含む任意の範囲d_temp-d_r乃至d_temp+d_rから選択された複数の膜厚値d毎に、前記薄膜に係る屈折率の波長分散式モデルn(λ)を作成するステップと(S9〜S11、S13、S14)、
3)前記薄膜について別途得た所定波長λAに対する屈折率n_λAと、前記複数の膜厚値d毎に作成された前記屈折率の波長分散式モデルn(λ)から求められる該所定波長λAに対する各屈折率n(λA)とをそれぞれ比較するステップと(S9、S12〜S14)、
4)前記3)のステップで比較した屈折率の差を評価して最終的な膜厚値を求め、これを最終的な膜厚値として出力するステップ(S15)とを含む。
該ステップS2は、例えば、得られた分光スペクトル(波長-反射率曲線)において、該波長-反射率曲線の傾きが0となる点の波長λを求めることによって行われる。求める波長の範囲は、通常、500〜900[nm]程度のいわゆる可視光の範囲とすることができる。また、波長λを検出する極値は、極大及び極小の両方であってもよく、何れか一方のみであってもよい。
該ステップS3は、例えば、分光スペクトルより検出された複数の波長λのうち、任意の2つの波長(λ1、λ2)を選択し、これら2つの波長(λ1、λ2)における膜厚に関する方程式、即ち、2nd=m1λ1、2nd=m2λ2、並びに、干渉次数m1、m2についての関係式を連立させ、m1又はm2の何れかについて解くことにより、その解(m1又はm2)を、その波長(λ1又はλ2)における仮の干渉次数m_tempとして定めることができる。
また、該ステップS3では、薄膜の屈折率nの波長依存性は考慮せず、所定波長λAに対する既知の屈折率n_λAを用いることができる。該所定波長λAとしては、前記分光スペクトルの範囲内の波長であることが好ましく、中央付近の波長であることがより好ましい。例えば、可視光の範囲で得られた場合、500〜900[nm]の範囲内の波長とすることが好ましく、550〜700[nm]の範囲内の波長とすることがより好ましい。
さらに、この測定対象物がnf<nsであるとすれば、極小値の次数m1は「整数+0.5」となるため、この場合の仮の干渉次数m_tempは、
m1=λ2/2(λ2−λ1)として求められる解に、最も近い「整数+0.5」として得ることができる。
また、前記ステップS5において、各極値(ピーク及び/又はバレイ)での膜厚値dは、膜厚値dに関する方程式より、d=mλ/2nとして計算することができる。該方程式中、mは各干渉次数、λは各極値における各波長、nは薄膜の屈折率を示す。なお、薄膜の屈折率nとしては、該薄膜についての所定波長λAに対する既知の屈折率n_λAを用いることができる。
また、前記ステップS8では、各干渉次数mについて算出された波長λと膜厚値dとの一次関数、即ち、膜厚値d[nm]=a×波長λ[nm]+b(a、b:定数)における傾きaの値をそれぞれ計算し、得られた傾きaの絶対値を膜厚値のバラツキとして評価し、該傾きaの絶対値が最小となる際の干渉次数mを選択することができる。
膜厚値dの計算範囲及び刻み幅Δdは、所望の測定精度等に応じて任意に設定することができ、例えば前記d_rを100〜300[nm]程度、Δdを1〜10[nm]とすることができる。
ここで、所定波長λAに対する屈折率n_λAとしては、測定対象となる薄膜について公知の値を使用することができ、また、別途測定により求めた値を使用することもできる。
よって、反射光の極値や振幅の大きさを正確に把握する必要がないため、反射光を集光(フォーカス)させなくとも正確に膜厚を測定することが可能となり、集光機構のない簡易な構成の装置を用いて膜厚を正確に測定できるという効果がある。
該基材フィルムは用途に応じて適宜選択されうるが、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース等のセルロース系ポリマー、ポリカーボネート系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー、ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体等のスチレン系ポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ないしノルボルネン構造を有するポリオレフィン、エチレン−プロピレン共重合体等のオレフィン系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、ナイロンや芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー等の透明ポリマーからなるフィルムを挙げることができる。
次に、得られた分光スペクトルにおいて、波長500〜850[nm]の範囲で反射率が極大(ピーク)及び極小(バレイ)となる波長を検出した。結果を下記表1に示す。
そして、上記のようにして求めた干渉次数mの場合の、膜厚値dの平均値を仮の膜厚値t_tempとする。本実施例では、上記計算により求められた干渉次数はm=14.5であり、その際の膜厚値dの平均値は、前記表3より2308.83[nm]と算出され、仮の膜厚値はt_temp=2308.83[nm]と求められる。
上述のように、No.1の極値における干渉次数mが14.5と求められているため、該干渉次数、及び前記計算範囲内での各膜厚値dを用いて各極値での屈折率nをn=mλ/2dより計算する。計算結果の一例として、d=2308.83[nm]の場合の結果を下記表6に示す。
本実施例では、上記式(1)に示したコーシーの式を用い、各膜厚値dについて係数C1、C2及びC3をそれぞれ求めた。
本実施例では、波長λA=589[nm]におけるポリイミド樹脂層の屈折率nf=1.561925を既知とし、上記各モデル式に波長λA=589[nm]を代入した値と、既知の屈折率nf=1.561925とを比較し、その差を求めた。結果を図4に示す。
従って、本実施例により最終的に算出される膜厚値dは、2313.21[nm]となる。
Claims (6)
- 薄膜表面に光を照射し、該薄膜からの反射光を分光して分光スペクトルを取得し、該分光スペクトルから前記薄膜の膜厚値を算出する膜厚測定方法であって、
1)取得した前記分光スペクトルから仮の膜厚値を求めるステップと、
2)前記仮の膜厚値の近傍から選択された複数の膜厚値毎に、前記薄膜に係る屈折率の波長分散式モデルを作成するステップと、
3)前記薄膜について別途得た所定波長に対する屈折率と、前記複数の膜厚値毎に作成された前記屈折率の波長分散式モデルから求められる該所定波長に対する各屈折率とをそれぞれ比較するステップと、
4)前記3)のステップで比較した屈折率の差を評価して最終的な膜厚値を求めるステップと、
を有することを特徴とする膜厚測定方法。 - 前記1)のステップが、
1a)前記分光スペクトルから、反射率が極大及び/又は極小となる波長を検出し、該波長から仮の干渉次数を求めるステップと、
1b)仮定された干渉次数を用いて、前記反射率が極大及び/又は極小となる波長での膜厚値をそれぞれ求めるステップと、
1c)前記仮定した干渉次数を変えて前記1b)のステップを繰り返し行うとともに、該干渉次数のうち、膜厚値のバラツキが最小となった干渉次数に対して前記膜厚値の平均値を求めてこれを仮の膜厚値とするステップと、
を含むことを特徴とする請求項1記載の膜厚測定方法。 - 前記2)のステップが、
2a)前記仮の膜厚値の近傍から選択された複数の膜厚値を用いて、前記分光反射スペクトルの極大及び/又は極小となる波長に対するそれぞれの屈折率を求めるステップと、
2b)前記2a)のステップにより求めた波長と屈折率との関係から屈折率の波長分散式モデルを作成するステップと、
を含むことを特徴とする請求項1又は2記載の膜厚測定方法。 - 前記3)のステップが、
3a)前記薄膜について別途得た所定波長に対する屈折率と、前記複数の膜厚値毎に作成された前記屈折率の波長分散式モデルから求められる該所定波長に対する各屈折率との差を求めるステップと、
3b)前記複数の膜厚値のうち、前記3a)のステップで求めた差が0近傍値となる膜厚値を2乃至4個選択するステップと、
3c)前記3b)のステップにより選択された膜厚値から、前記差が0となる膜厚値を線形補間して求め、得られた膜厚値を最終的な膜厚値とするステップと、
を含むことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の膜厚測定方法。 - 演算手段を備えた膜厚測定装置に、請求項1〜4の何れかに記載の膜厚測定方法を行わせることを特徴とする膜厚測定用プログラム。
- 請求項1〜4の何れかに記載の膜厚測定方法を行いうるように構成された演算手段を備えたことを特徴とする膜厚測定装置。
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