JP5319341B2 - 凝集物除去フィルター材 - Google Patents

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本発明は、凝集物除去フィルター材に関する。
近年、輸血分野においては、血液製剤中に含まれる混入白血球を除去して輸血する、いわゆる白血球除去輸血が普及してきている。これは輸血に伴う頭痛、吐き気、悪寒、及び非溶血性発熱反応などの比較的軽微な副作用や、受血者によっては深刻な影響を受けうるアロ抗原感作、ウィルス感染、及び輸血後GVHD(Graft Versus Host Disease)などの重篤な副作用が、主として輸血に用いられた血液製剤中に混入している白血球が原因で引き起こされることが明らかになったためである。
血液製剤から白血球を除去する方法は、大別して血球成分の比重差を利用して遠心分離機を用いて白血球を分離除去する遠心分離法と、不織布等の繊維集合体や連続気孔を有する多孔構造体などからなるフィルター材を用いて白血球を粘着又は吸着により除去するフィルター法との2種類がある。このうち、白血球を粘着又は吸着により除去するフィルター法は、操作が簡便であり、及びコストが安い等の利点を有するため、広く普及している。
現在市販されている白血球を除去するための多くのフィルター装置は、複数種類のフィルター材から構成されており、血液の導入口に近い上流部には、血液製剤の凝集物を除去するための目の粗い凝集物除去フィルター材が配置されている。また、導出口側の下流部には、白血球を除去するための目の細かい白血球除去フィルター材が配置されている。凝集物は、赤血球、白血球、血小板、フィブリン、フィブリノゲン、その他の変性タンパク質、脂肪球等が凝集してできたものである。凝集物は、小さいものでは白血球と同等程度の大きさのものから、大きいものでは1mmを超えるようなものまであり、粘着性に富んでいる。また凝集物は、血液製剤の保存時間が長いほど、および/または保存温度が低いほどその数が増し、大きさも増していく傾向にある。このため、凝集物除去フィルター材を用いずに、白血球除去フィルター材だけで血液製剤を処理すると、凝集物によって白血球除去フィルター材が目詰まりしてしまい、期待する流量を維持することが困難となる場合がある。
このような問題に対応するため、特許文献1は、白血球を除去するためのフィルター材の上流に、不織布、織布および編布からなる群から選ばれた、0.1〜1.0g/cm3の範囲にある嵩密度の異なる2種以上の凝集物除去用のフィルター材を配置し、下流側になるにつれて凝集物除去フィルター材の嵩密度を高くした構造のフィルター装置を開示している。
特許文献2は、複数種の繊維状物からなり、繊維の平均繊維直径Xと平均繊維間隔Yの積XYで規定したフィルター装置を開示している。ここでは、フィルター装置の上流にXY>50のフィルター材を配置して大きめの凝集物を捕捉し、その下流に50≧XY>7のフィルター材を配置して比較的小さめの凝集物を捕捉し、更にその下流に7≧XYのフィルター材を配置して白血球を除去する構造としている。
特許文献3は、個々の孔径が500μm以上の孔群Aと個々の孔径が150〜500μmの孔群Bとの少なくとも2種類の孔群を有し、孔群Aの平均孔径が600〜1500μm、孔群Bの平均孔径が200〜450μm、開孔率が40%以上の凝集物除去用フィルター材を開示している。
また、特許文献4は、第1〜第3素子を含み、第1素子はゲル(これは比較的大きな凝集物と同意語)を除去するフィルター材とし、第2素子は微小凝集物を除去するフィルター材とし、第3素子は白血球を除去するフィルター材としたフィルター装置を開示している。
特開平3−173824号公報 特開平1−236064号公報 特開平7−67958号公報 特表平3−502094号公報
上述した特許文献1〜3で開示されている凝集物除去フィルター材は、比較的少量の凝集物を含む血液製剤をろ過する際には問題なく使用することができる。しかし、保存日数が長期に渡った血液製剤、4℃を下回るような低温で保存された血液製剤、あるいは抗凝固剤と血液との採血後の混和が不充分なまま調整された血液製剤等、大きな凝集物を比較的多く含むと推定される血液製剤を処理した場合には、目詰まりによる著しいろ過流量の低下が生じる。また、ろ過が終了せずに停止してしまうことも、多々生じるという問題があった。
このように大型の凝集物の除去に課題が残っているのは、特許文献1〜3で使われている繊維状の凝集物除去フィルター材が、繊維軸が平面方向に配向した構造で、通気抵抗が高いためと推察される。このようなフィルター材は、数十μm以上の大型の凝集物よりも孔径が小さい。そのため、大型の凝集物を含む血液をろ過すると、凝集物がフィルター材の表面近傍に留まり、目詰まりを起こすと考えられる。
また、特許文献4に開示された第1素子は、ニードル繊維ウェブと呼ばれ、針を突き刺して機械的に繊維を交絡させたニードル繊維であり、目付は70g/m2を超え、比較的厚い(約3〜5mmを超える)不織布である。特許文献4の実施例から、この不織布の繊維径は20〜26μm(繊度に換算すると、4.3〜7.3dtexに相当)と太く、繊維同士の交絡は強固ではないと推察される。したがって、このままでは伸び変形、あるいは破断等が生じうる。そのため、特許文献4の第1素子には、フィルター装置に充填する際に、熱間圧縮という前処理が行われている。この熱間圧縮によって、第1素子の形状が保持されるようになる。しかし、熱間圧縮によって、フィルター材の通気抵抗が高くなり、凝集物による目詰まりに対する耐性は低下するといった問題があった。
以上、説明したように、大型の凝集物による目詰まりに対する耐性が高い、凝集物除去用のフィルター材は見出されていない。そこで、本発明の目的は、比較的大型の凝集物を多く含むような血液製剤であっても、その中に含まれる凝集物を効率良く除去しながらも目詰まりを起こしにくい、いわゆる目詰まり耐性に優れる凝集物除去フィルター材を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、繊度が0.7〜4.0dtex、繊維長が20〜80mmの合成高分子短繊維からなるスパンレース不織布であって、目付が15〜60g/m2、嵩密度が0.05〜0.10g/cm3のスパンレース不織布を凝集物除去用のフィルター材として用いることで、本発明の目的を達成することができることを見出し、完成するに至った。
即ち、本発明の態様は、血液製剤中の凝集物を除去するための凝集物除去フィルター材であって、該フィルター材が、繊度が0.7〜4.0dtex、繊維長が20〜80mmの合成高分子短繊維からなるスパンレース不織布であり、目付が15〜60g/m2、嵩密度が0.05〜0.10g/cm3である凝集物除去フィルター材であることを要旨とする。本発明の態様に係る凝集物除去フィルター材の通気抵抗は、例えば4〜11Pa・s・m/g以下である。
本発明の凝集物除去フィルター材を用いることにより、比較的大きな凝集物を多く含む血液製剤であっても、凝集物による目詰まりを防止しつつ、効率良く凝集物を除去することが可能となる。
以下に、本発明の実施の形態(以下において、「本実施形態」という。)をさらに詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施されうる。
本実施形態に係る凝集物除去フィルター材は、血液製剤中の大型の凝集物を除去するための凝集物除去フィルター材であって、繊度が0.7〜4.0dtex、繊維長が20〜80mmの合成高分子短繊維からなるスパンレース不織布を備え、目付が15〜60g/m2、嵩密度が0.05〜0.10g/cm3である。なお、ここで、「血液製剤」とは、全血製剤、濃厚赤血球製剤、濃厚血小板製剤等の輸血に用いられる各種血液製剤を言う。
本実施形態に係る凝集物除去フィルター材は、合成高分子の短繊維同士を高圧水流で交絡させるスパンレース法で製造した不織布からなるフィルター材である。スパンレース法は、その他のサーマルボンド法、ケミカルボンド法、ニードルパンチ法等の繊維同士を結合させる、あるいは交絡させる製法に比べてコスト、均質性、安全性、交絡制御の容易性の各観点から医療用材料の製造方法として好ましい。
スパンレース法によって本実施形態に係るフィルター材を製造する場合、水の圧力は40〜200kgf/cm2とし、水を噴出するノズル径を80〜150μmにすると、所望のフィルター材を得ることができる。
スパンレース法で短繊維同士を繊維間結合させて交絡した場合、短繊維の繊維軸は、平面方向のみならず、縦方向及び斜め方向にも配向する。さらに、繊維そのものがクリンプした形状に変化し、もはや明確な繊維軸の配向を示さなくなり、繊維が立体構造化する。このような立体的な構造は、大型の凝集物をフィルター材の内部まで引き込んで捕捉可能であり、フィルター材の表面近傍での閉塞が少なくなる。その結果、フィルター材の有効利用率が向上し、目詰まり耐性の向上と凝集物の効率的な捕捉が実現可能となる。
本実施形態に係る凝集物除去フィルター材の繊度は、0.7〜4.0dtexである。0.7dtex未満の場合には、目が細かくなりすぎ、大型の凝集物の除去が困難となる傾向にある。4.0dtexを超える場合は、繊維同士の絡まりが低下し、強度不足となる傾向にある。好ましくは1.0〜2.4dtexであり、より好ましくは1.2〜1.8dtexである。
本実施形態において、「繊度」とは、日本工業規格(JIS) L 0104及びJIS L 1013で規定されている、繊維の長さと重さとから求められる値である。あるいは、繊維が略円柱状形状である場合には、以下の手順によって繊維径を求め、これに繊維密度(g/cm3)を用いて繊度に換算してもよい。繊維径の測定は、まず、フィルター材から任意に5ヶ所以上をサンプリングし、走査電子顕微鏡などを用い、繊維径が測定できる適度な拡大倍率で写真を撮る。次に写真の上に格子状シートを載せ、格子点にある繊維の直径を100本以上測定する。ここで直径とは、繊維軸に対して直角方向の繊維の幅をいう。測定した繊維の直径の和を、繊維の数で割った値(平均値)を繊維径とし、この値と繊維密度を用いて「繊度」を求めてもよい。但し、複数の繊維が重なり合っており、他の繊維の陰になってその幅が測定できない場合、また、複数の繊維が溶融するなどして、太い繊維になっている場合、更に著しく直径の異なる繊維が混在している場合、等々の場合には、これらのデータは削除する。なお、あきらかに繊維径の異なる複数種の繊維が混繊している場合、それぞれの繊維径の平均値からそれぞれの繊度を求め、求めた繊度が0.7〜4.0dtexに入る場合は、本実施形態の短繊維に含まれるものとする。但し、測定本数が10%以下と少ない場合は、繊度計算の対象から外すこととする。
本実施形態に係るフィルター材に使用できる短繊維断面の形状としては、円形に限らず、如何なるものでも使用できる。例えば、特開平8−170221号公報、特開平8−291424号公報、特開2002−61023号公報、特開2004−225184号公報、特開2005−82939号公報等に記載されているような異形断面構造でもよい。ただし、高圧水流で加工する際の繊維分散性の容易さ、繊維そのものの生産効率の高さの観点から、円形の断面構造である方が好ましい。
本実施形態に係る凝集物除去フィルター材の繊維長は、20〜80mmである。20mm未満であると、繊維同士の交絡が不足して強度が低下する傾向にある。80mmを超えると、縦方向に配向する繊維成分が不足し、凝集物による目詰まり耐性が低下する傾向にある。好ましくは、30〜60mmであり、より好ましくは、35〜55mmである。なお、ここで「繊維長」とは、任意にサンプリングした短繊維を写真に取り、起点と終点が明確な30本以上の短繊維の長さを画像解析装置等を利用して測定した平均値を言う。
また、短繊維は予めクリンプ処理しておく方が好ましい。直線状の繊維よりも波形状のクリンプ糸はスパンレース法によって繊維同士が絡まりやすく、結果的に強度向上に寄与するため好ましい。
本実施形態に係る凝集物除去フィルター材の目付は、15〜60g/m2である。目付が15g/m2未満であると、凝集物の除去効率の低下や強度不足が生じる傾向にある。60g/m2を超えると、フィルター装置への充填が困難となる場合がある。また、白血球除去用のフィルター材等と一緒にフィルター装置内に充填する場合に、白血球除去フィルター材を圧縮し、血液製剤のろ過流量を低下させうる。好ましくは30〜50g/m2である。なお、「フィルター材の目付」は、5cm×5cmのような任意の大きさで均質と思われる箇所から3箇所以上をサンプリングし、各フィルター材の重さを測定して平均値を求め、これを単位平方メートル当たりの重量に換算することで求められる。
本実施形態に係る凝集物除去フィルター材の嵩密度は、0.05〜0.10g/cm3である。嵩密度が0.05g/cm3未満であると、凝集物除去効率の低下や強度不足が生じる傾向にある。0.10g/cm3以上であると、繊維同士の距離が近く、大型の凝集物が表面で捕捉されやすくなり、結果的に凝集物の捕捉効率が低下する傾向にある。なお、「フィルター材の嵩密度」は、均質と思われる箇所から5cm×5cmのような任意の大きさでフィルター材を切り出し、前述した方法で目付を、中央部の厚み定圧厚み計で測定し、目付を厚みで除して求められる。ただし、切り出す部位を変えて測定を3回以上行い、その平均値を嵩密度とする。なお、定圧厚み計での測定とは、直径1.5cmの円盤状治具をフィルター材に載せ、0.4Nの一定圧で押さえたときの厚みの測定のことである。
本実施形態に係る凝集物除去フィルター材の通気抵抗は、好ましくは4〜11Pa・s・m/gである。通気抵抗とは、そのフィルター材に一定流量の空気を通した時に生じる差圧として測定された値である。より詳しくは、直径2.8cmの通気穴の上にフィルター材を載せ、単位面積あたり4mL/s・cm2の空気を10秒以上通気させたときに生じる圧力損失(Pa・s/m)を測定し、この値をフィルター材の目付(g/m2)で除し、さらに10倍を乗じた値である。この値が大きいものは、空気が通過しにくく、繊維が密な状態で絡まっていること、あるいは開孔率が低い構造であることを意味し、血液製剤が流れにくい性質であることを示す。一方、この値が小さいものは、繊維数が少なくスカスカの構造であることを示す。即ち、この値が11Pa・s・m/gより大きいと、血液製剤のろ過時間の延長や、含まれている凝集物による目詰まりが発生しやすくなる。、一方、4Pa・s・m/gよりも小さいと、凝集物を効率よく捕捉できず、その下流にあるフィルター材の表面が目詰まりを起こしたり、強度が不足したりする等のリスクが高くなる。より好ましくは、6〜9Pa・s・m/gである。
本実施形態に係る凝集物除去フィルター材に用いられる短繊維は、合成高分子を素材としており、血液に対して影響がなければ特に限定なく如何なるものでも使用できる。例を挙げるならば、ポリアミド、ポリエステル、ポリアクリロニトリル、ポリウレタン、ポリビニルホルマール、ポリビニルアセタール、ポリトリフルオロクロルエチレン、ポリ(メタ)アクリレート、ポリスルホン、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、セルロース、セルロールアセテート等が挙げられる。この中でも特に汎用性が高く、スパンレース法による繊維同士の交絡も行いやすいポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステルが好ましい。
以上説明した維度、繊維長、目付、及び嵩密度が組み合わされた本実施形態に係る凝集物除去フィルター材を用いることにより、比較的大きな凝集物を多く含む血液製剤であっても、凝集物による目詰まりを防止しつつ、効率良く凝集物を除去することが可能となる。また、本実施形態に係る凝集物除去フィルター材は、実質的に問題となるような形状変形を起こしえない強度を有する。これは、本用途に適した繊度と繊維長の短繊維同士をスパンレース法(水流交絡法)によって交絡させることで、充分な強度を付与するためである。この結果、本実施形態に係るフィルター材を、水洗処理や熱処理等の様々な製造工程で処理しても、物性変化を起こさずに、安定した生産を実現することが可能となる。また、物性変化が小さいため、凝集物の捕捉性能を安定化することも可能となる。
なお、本実施形態に係る「凝集物による目詰まり耐性に優れる」フィルター材とは、例えば、凝集物を含む血液製剤をフィルターでろ過したときに、ろ過開始時の流量(mL/分)と、血液製剤のほぼ全量のろ過終了時のろ過流量(mL/分)に大幅な差がないこと、より具体的にはろ過終了時のろ過流量がろ過開始時のろ過流量の1/2以上を確保できている場合を言う。あるいは一定流量でろ過することを想定した場合には、ろ過終了時の血液製剤による圧力損失が、ろ過開始時の圧力損失(Pa)の2倍以下である場合を言う。但し、血液製剤は非常に個体差が大きく、かつ自然落差でろ過する際のその高さや一定流量とする場合の流量、さらには血液製剤の温度によってろ過流量やろ過圧力が左右されるため、目詰まり耐性を示す目安としてここに例示するものである。
本実施形態に係る凝集物除去フィルター材を白血球除去フィルター等の血液ろ過装置の最上流側に配置すると、大型の凝集物による目詰まりが防止され、良好な流量を維持しつつ血液製剤をろ過することが可能となる。一般に、ろ過が終了しない血液製剤は廃棄せざるを得ないが、本実施形態に係る凝集物除去フィルター材は、目詰まり耐性に優れるため、これまでは廃棄対象となった凝集物の多い血液製剤をも救済できるようになる。その結果、貴重な血液製剤の有効利用に大きく貢献でき、社会的にも極めて有用となる。
以下、実施例により本実施形態をより詳細に説明するが、本実施形態はこれらによってその範囲を限定されるものではない。
(実施例1〜11、比較例1〜6)
ポリエチレンテレフタレート(PET)からなり、繊度、繊維長の異なる短繊維の集合体を水流交絡機の支持ネットに載せた。次に、その上下から90μmのノズル径から圧力100kgf/cm2の水を噴射することで繊維同士を交絡させ、目付、通気抵抗、地合の異なる様々なスパンレース不織布を作成した。
作成したスパンレース不織布を凝集物除去フィルター材として1枚、その下に繊度が1.4dtexで目付が30g/m2のポリエチレンテレフタレート製スパンボンド不織布を3枚積層し、さらにその下に繊度が0.03dtexで目付が60g/m2のメルトブロー不織布を2枚と繊度が0.016dtexで目付が40g/m2のメルトブロー不織布とを30枚積層した。これを血液製剤の導入口と導出口を有し、有効ろ過断面積が45cm2(6.7cm×6.7cm)のポリカーボネート製容器に充填し、超音波溶着を行うことでフィルター装置を作成した。なお、血液の導入口側に凝集物除去用のフィルター材を配置し、導出口側に白血球除去用のフィルター材を配置した。
ヒト全血(400mL)を、抗凝固剤としてCPD(56mL)が入った血液バッグに採血することで全血製剤を得、この製剤を2℃の冷蔵庫内で、目視で凝集物が確認できるまで保存した。このようにして調製した凝集物を含む全血製剤に、クランプを有する血液回路を介してフィルターと接続し、さらにその下流にろ過した血液製剤を回収する回収バッグを取り付けた。回収バッグを天秤の上に置き、22±2℃の室温下で落差140cmでろ過を行った。
凝集物除去フィルター材の効果を検証するために、ろ過後の回収バック中の凝集物の数を計測(凝集物除去性能)し、さらに凝集物による目詰まり耐性として、ろ過開始段階の流量とろ過終了段階の流量の比率(流量変化率)を計算した。さらに、ろ過後の白血球数を計測(白血球除去性能)することで白血球除去フィルターとして機能していることを確認した。それぞれの計測方法は以下の通りである。
凝集物除去性能:ろ過後の回収バッグの血液製剤をよく混和し、この中から50mLを採取した。これを40μmメッシュフィルターでろ過し、生理食塩水で余分な血球成分等を洗い流し、その後ろ過に使用したメッシュフィルターを光学顕微鏡(×100倍)で観察した。全視野を観察し、メッシュの開口径に微小凝集物が捕捉されている場合にはろ過後血液製剤に凝集物有りと判断した。
流量変化率:採血した血液バッグの血液をフィルターに通し、回収バッグに血液製剤が到達して後、天秤が50gを示すまでに要した時間を計測し、これをろ過初速流量(g/分)とした。さらにろ過を続け、回収バッグの血液製剤が350gから400gまで増える時に要した時間を計測し、これをろ過終速流量(g/分)とした。ろ過初速流量で、ろ過終速流量を除した値を流量変化率として算出した。
白血球除去性能:ろ過後の血液をポリエチレン製のスピッツ管にサンプリングし、アクリジンオレンジ液で漏れてきた白血球を染色した後、蛍光顕微鏡を用いて測定した。測定した白血球濃度に回収した血液製剤の液量を乗じることで回収バッグ含まれる残存白血球数を測定し、これを白血球除去性能とした。
実施例1〜11及び比較例1〜6で用いた凝集物除去フィルター材の特性値、凝集物目詰まり耐性(流量変化率)の結果を表−1に示す。また、全ての実験でろ過後の血液製剤に凝集物は認められなかった。残存白血球数も全てにおいて検出限界以下(105個/回収バッグ以下)であり、高い白血球除去性能であった。
Figure 0005319341
(実施例12)
ポリプロピレンテレフタレートからなり、繊度が1.7dtex、目付が50g/m2、嵩密度が0.081g/cm3、通気抵抗が7.8kPa・s・m/gのスパンレース不織布を凝集物除去フィルター材として用いた。これ以外は実施例1と同じ構成の白血球除去フィルター装置を作成し、血液製剤のろ過を行った。その結果、流量変化率は0.79であった。また、ろ過後の回収バック中に凝集物は観察されず、かつ残存白血球数は検出限界以下であった。
本実施形態に係る凝集物除去用フィルター材は、医療産業、製薬産業、及び美容産業等で利用可能である。

Claims (2)

  1. 血液製剤中の凝集物を除去するための凝集物除去フィルター材であって、該フィルター材は、繊度が0.7〜4.0dtex、繊維長が20〜80mmの合成高分子短繊維からなるスパンレース不織布であり、目付が15〜60g/m2、嵩密度が0.05〜0.10g/cm3である凝集物除去フィルター材。
  2. 通気抵抗が4〜11Pa・s・m/g以下である、請求項1に記載の凝集物除去フィルター材。
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