JP5318656B2 - コーティング層の遮熱性能評価方法、装置及びプログラム - Google Patents

コーティング層の遮熱性能評価方法、装置及びプログラム Download PDF

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本発明は、基材に施されたコーティング層の遮熱性能評価方法、装置及びプログラムに関する。さらに詳述すると、本発明は、例えばガスタービンの燃焼器や動翼・静翼などの高温部品基材に施された遮熱のためのコーティング層の劣化に伴う性能変化を評価するための技術に関する。
ガスタービンの燃焼器や動翼・静翼などの高温部品には耐熱合金が用いられているが、特に高温の燃焼ガスに曝される部分には金属の基材を守るために遮熱コーティングが施されている。ここで、ガスタービンの燃焼器等の遮熱コーティングとしてはセラミック製の遮熱コーティング(TBCとも呼ばれる)が用いられる場合が多いが、本発明が対象とする遮熱コーティングの種類はTBCに限られないので、以下、本発明の適用対象になり得る遮熱コーティング層をTBCも含めて単にコーティング層と表記する。
コーティング層は、通常は数百ミクロンの厚さでありながら、内部に細かな気孔を多数含んだ構造によって優れた遮熱性能を発揮する。しかしながら、コーティングを施した部品を高温で長時間使用するとコーティングが徐々に劣化してその遮熱性能が低下してしまう。高温部品を健全な状態で使用するためには劣化に伴うコーティング層の遮熱性能の低下の状況を適確に把握することが重要である。
基材に施された遮熱のためのコーティング層の劣化に伴う性能変化を評価する従来の技術としては、例えば、ガスタービンの起動停止回数や運転時間などの運転履歴による劣化度一次診断、コーティング中間層と基材との境界面である界面近傍の化学分析による劣化度二次診断、超音波減衰率に基づく劣化度三次診断及び微小パンチ試験法を用いた破壊強度試験による劣化度四次診断の四段階の手順に従ってコーティングの劣化の程度に応じて必要な段階までの劣化診断を行う方法がある(特許文献1)。
特開平7−310501号
コーティングを施した部品を高温で長時間使用すると焼結によってコーティング層の緻密化が進行して初期状態よりも熱を伝え易い構造になって、すなわちコーティング層の熱伝導率が大きくなって、遮熱性能が低下する。また、コーティング層表面に高温高流速の燃焼ガスが流れているような場合には、長時間の使用によってコーティング層表面で減肉が発生し、コーティング層の厚さが減少して遮熱性能が低下する。
しかしながら、特許文献1のコーティングの劣化診断を行う方法では、コーティング層の緻密化に伴う遮熱性能の低下を捉えることができないので、基材温度の上昇を引き起こす熱的な劣化状況を定量的に評価することができない。このため、劣化に伴うコーティング層の遮熱性能の低下の状況を適確に把握することが可能であるとは言えず、性能評価の精度が高いとは言い難いという問題がある。
そこで、本発明は、コーティング層の緻密化及び減肉の影響も含めた劣化に伴う性能変化の評価を高い精度で行うことができるコーティング層の遮熱性能評価方法、装置及びプログラムを提供することを目的とする。
かかる目的を達成するため、請求項1記載のコーティング層の遮熱性能評価方法は、部位別の基材の厚みが連続的に変化する評価対象部品について基材の構造及び当該基材に施されているコーティング層の構造を含む数値解析用三次元モデルのデータを作成するステップと、評価対象部品の部位別に基材とコーティング層とのそれぞれの熱物性値を設定するステップと、評価対象部品の部位別の加熱条件を設定するステップと、加熱条件に従って評価対象部品をレーザ照射点を移動させながら実際に加熱して評価対象部品の部位別の検出温度を検出するステップと、数値解析用三次元モデルと熱物性値と加熱条件と検出温度とを用いて評価対象部品の温度変化の数値解析を行って評価対象部品の部位別の熱抵抗値を算出するステップと、算出された熱抵抗値に基づいて評価対象部品の部位別のコーティング層の遮熱性能を評価するステップとを有するようにしている。
また、請求項2記載のコーティング層の遮熱性能評価装置は、部位別の基材の厚みが連続的に変化する評価対象部品について基材の構造及び当該基材に施されているコーティング層の構造を含む数値解析用三次元モデルのデータを読み込む手段と、評価対象部品の部位別に基材とコーティング層とのそれぞれの熱物性値を設定する手段と、評価対象部品の部位別の加熱条件を設定する手段と、加熱条件に従って評価対象部品をレーザ照射点を移動させながら実際に加熱して検出される評価対象部品の部位別の検出温度のデータを読み込む手段と、数値解析用三次元モデルと熱物性値と加熱条件と検出温度とを用いて評価対象部品の温度変化の数値解析を行って評価対象部品の部位別の熱抵抗値を算出する手段と、算出された熱抵抗値に基づいて評価対象部品の部位別のコーティング層の遮熱性能を評価する手段とを有するようにしている。
さらに、請求項3記載のコーティング層の遮熱性能評価プログラムは、部位別の基材の厚みが連続的に変化する評価対象部品について基材の構造及び当該基材に施されているコーティング層の構造を含む数値解析用三次元モデルのデータを記憶手段から読み込む処理と、記憶手段に記憶された若しくは入力手段によって入力された評価対象部品の部位別の基材とコーティング層とのそれぞれの熱物性値と評価対象部品の部位別の加熱条件とを読み込む処理と、加熱条件に従って評価対象部品をレーザ照射点を移動させながら実際に加熱して検出され記憶手段に記憶された若しくは入力手段によって入力された評価対象部品の部位別の検出温度のデータを読み込む処理と、数値解析用三次元モデルと熱物性値と加熱条件と検出温度とを用いて評価対象部品の温度変化の数値解析を行って評価対象部品の部位別の熱抵抗値を算出する処理と、算出された熱抵抗値に基づいて評価対象部品の部位別のコーティング層の遮熱性能を評価する処理とをコンピュータに行わせるようにしている。
このコーティング層の遮熱性能評価方法、装置及びプログラムによると、コーティング層の劣化に伴う性能変化の評価を実施する部品(以下、評価対象部品と呼ぶ)を実現可能な範囲で任意に設定した加熱条件で加熱することによって検出される部品の温度に基づいてコーティング層の遮熱性能の評価を行うことができる。
また、本発明によると、コーティング層や基材を損傷しない範囲で任意に設定した加熱条件で評価対象部品を加熱することによって検出される部品の温度に基づいてコーティング層の遮熱性能の評価を行うことができる。
さらに、本発明によると、評価対象部品の部位毎に条件を設定して遮熱性能の評価を行うことができるので、評価対象部品の形状が複雑な場合や部品の部位によってコーティングの施工条件や熱物性値が異なっている場合でもそれらを踏まえた評価を行うことができる。
また、請求項4記載の発明は、請求項2記載のコーティング層の遮熱性能評価装置において、数値解析用三次元モデルのデータを作成するために評価対象部品のスキャン画像データを取得するX線CTスキャン装置と、評価対象部品を実際に加熱するレーザを発振する装置と、加熱条件に従うと共に数値解析用三次元モデルのデータに基づいて評価対象部品の表面形状に合わせてレーザを照射するためのロボットと、評価対象部品の温度を計測して部位別の検出温度のデータを出力する非接触温度計とを更に備えるようにしている。この場合には、種々の計測の正確性を担保しながら遮熱性能の評価が行われる。
本発明のコーティング層の遮熱性能評価方法、装置及びプログラムによれば、評価対象部品を実現可能な範囲で任意に設定した加熱条件で加熱することによってコーティング層の遮熱性能の評価を行うことができるので、遮熱性能評価の制約条件を大幅に緩和して汎用性の向上を図ることが可能になる。
また、本発明のコーティング層の遮熱性能評価方法、装置及びプログラムによれば、コーティング層や基材を損傷しない範囲で任意に設定した加熱条件で評価対象部品を加熱することによってコーティング層の遮熱性能の評価を行うことができるので、コーティング層や基材への影響を排除した点検を行うことが可能であり、遮熱性能評価の制約条件を大幅に緩和して汎用性の向上を図ることが可能になる。
さらに、本発明のコーティング層の遮熱性能評価方法、装置及びプログラムによれば、評価対象部品の形状が複雑な場合や部品の部位によってコーティングの施工条件や熱物性値が異なっている場合でもそれらを踏まえた評価を行うことができるので、遮熱性能評価の精度を高めて信頼性を高めることが可能になる。
また、本発明のコーティング層の遮熱性能評価装置によれば、種々の計測の正確性を担保しながら遮熱性能の評価を行うことができるので、遮熱性能評価の精度を高めて信頼性を高めることが可能になる。
本発明のコーティング層の遮熱性能評価方法の実施形態の一例を説明するフローチャートである。 実施形態のコーティング層の遮熱性能評価方法をプログラムを用いて実施する場合のコーティング層の遮熱性能評価装置の機能ブロック図である。 実施形態の評価対象部品であるガスタービンの動翼を示す図である。 実施形態の評価対象部品であるガスタービンの動翼の数値解析用三次元メッシュモデルを示す図である。 本発明のコーティング層の遮熱性能評価装置の種々の計測にまつわる構成を説明する図である。 実施例1の試験体の構成を説明する断面図である。 実施例1の遮熱コーティング層の厚さを変化させた場合のレーザ照射経過時間と遮熱コーティング層の表面温度との間の関係の解析結果を示す図である。 実施例1の検定線を示す図である。 実施例1の基材の厚さを変化させた場合のレーザ照射経過時間と遮熱コーティング層の表面温度との間の関係の解析結果を示す図である。
以下、本発明の構成を図面に示す実施の形態の一例に基づいて詳細に説明する。
図1から図4に、本発明のコーティング層の遮熱性能評価方法、装置及びプログラムの実施形態の一例を示す。このコーティング層の遮熱性能評価方法は、評価対象部品の数値解析用三次元モデルのデータを作成するステップと、評価対象部品の部位別の熱物性値を設定するステップと、評価対象部品の部位別の加熱条件を設定するステップと、加熱条件に従って評価対象部品を実際に加熱して評価対象部品の部位別の検出温度を検出するステップと、数値解析用三次元モデルと熱物性値と加熱条件と検出温度とを用いて評価対象部品の温度変化の数値解析を行って評価対象部品の部位別の熱抵抗値を算出するステップと、算出された熱抵抗値に基づいて評価対象部品の部位別のコーティング層の遮熱性能を評価するステップとを有するようにしている。
上記コーティング層の遮熱性能評価方法は、本発明のコーティング層の遮熱性能評価装置として実現される。このコーティング層の遮熱性能評価装置は、評価対象部品の数値解析用三次元モデルのデータを読み込む手段と、評価対象部品の部位別の熱物性値を設定する手段と、評価対象部品の部位別の加熱条件を設定する手段と、加熱条件に従って評価対象部品を実際に加熱して検出される評価対象部品の部位別の検出温度のデータを読み込む手段と、数値解析用三次元モデルと熱物性値と加熱条件と検出温度とを用いて評価対象部品の温度変化の数値解析を行って評価対象部品の部位別の熱抵抗値を算出する手段と、算出された熱抵抗値に基づいて評価対象部品の部位別のコーティング層の遮熱性能を評価する手段とを備える。
上述のコーティング層の遮熱性能評価方法並びにコーティング層の遮熱性能評価装置は、本発明のコーティング層の遮熱性能評価プログラムをコンピュータ上で実行することによっても実現される。本実施形態では、コーティング層の遮熱性能評価プログラムをコンピュータ上で実行する場合を例に挙げて説明する。
コーティング層の遮熱性能評価プログラム17を実行するための本実施形態のコーティング層の遮熱性能評価装置10の全体構成を図2に示す。このコーティング層の遮熱性能評価装置10は、制御部11、記憶部12、入力部13、表示部14及びメモリ15を備え相互にバス等の信号回線により接続されている。また、コーティング層の遮熱性能評価装置10にはデータサーバ16がバス等の信号回線等により接続されており、その信号回線等を介して相互にデータや制御指令等の信号の送受信(出入力)が行われる。
制御部11は記憶部12に記憶されているコーティング層の遮熱性能評価プログラム17によってコーティング層の遮熱性能評価装置10全体の制御並びにコーティング層の遮熱性能の評価に係る演算を行うものであり、例えばCPU(中央演算処理装置)である。記憶部12は少なくともデータやプログラムを記憶可能な記憶手段であり、例えばハードディスクである。メモリ15は制御部11が各種制御や演算を実行する際の作業領域であるメモリ空間となる。
入力部13は少なくとも作業者の命令を制御部11に与えるためのインターフェイスであり、例えばキーボードである。
表示部14は制御部11の制御により文字や図形等の描画・表示を行うものであり、例えばディスプレイである。
また、データサーバ16は少なくともデータを記憶可能な記憶手段であり、例えばサーバである。
そして、コーティング層の遮熱性能評価装置10の制御部11には、コーティング層の遮熱性能評価プログラム17を実行することにより、評価対象部品の数値解析用三次元モデルのデータを読み込む手段としての三次元モデルデータ読込部11a、評価対象部品の部位別の熱物性値を設定する手段としての熱物性値設定部11b、評価対象部品の部位別の加熱条件を設定する手段としての加熱条件設定部11c、加熱条件に従って評価対象部品を実際に加熱して検出される評価対象部品の部位別の検出温度のデータを読み込む手段としての検出温度読込部11d、数値解析用三次元モデルと熱物性値と加熱条件と検出温度とを用いて評価対象部品の温度変化の数値解析を行って評価対象部品の部位別の熱抵抗値を算出する手段としての熱抵抗算出部11e、算出された熱抵抗値に基づいて評価対象部品の部位別のコーティング層の遮熱性能を評価する手段としての遮熱性能評価部11fが構成される。
このコーティング層の遮熱性能評価プログラム17は、図1に示すように、評価対象部品の数値解析用三次元モデルのデータを記憶手段から読み込むステップ(S1−1)と、記憶手段に記憶された若しくは入力手段によって入力された評価対象部品の部位別の熱物性値を設定するステップ(S1−2)と、評価対象部品の部位別の加熱条件を設定するステップ(S1−3)と、加熱条件に従って評価対象部品を実際に加熱して検出され記憶手段に記憶された若しくは入力手段によって入力された評価対象部品の部位別の検出温度のデータを読み込むステップ(S2−1)と、数値解析用三次元モデルと熱物性値と加熱条件と検出温度とを用いて評価対象部品の温度変化の数値解析を行って評価対象部品の部位別の熱抵抗値を算出するステップ(S2−2)と、算出された熱抵抗値に基づいて評価対象部品の部位別のコーティング層の遮熱性能を評価するステップ(S2−3)とを有する。
本発明のコーティング層の遮熱性能評価方法は、図1に示すように、大きくは、数値解析用三次元モデルデータ並びに各種の解析条件を設定する解析条件設定ステップ(S1)と、評価対象部品(実機に搭載されている部品であって点検を実施する部品)を加熱することによって検出される温度と数値解析用三次元モデルと解析条件とを用いて数値解析を行って評価対象部品の熱抵抗値を算出してコーティング層の劣化に伴う遮熱性能の変化を評価する評価ステップ(S2)とからなる。
ここで、本実施形態では、図3に示すガスタービンの動翼1を対象として遮熱性能変化の評価を実施する場合を例に挙げて説明する。また、本実施形態では、評価の対象とする部品の種類(型式)が複数ある場合を前提にして説明する。本実施形態の場合には、具体的には、ガスタービンの燃焼器内で動翼1が取り付けられる段(例えば、初段動翼,2段動翼,3段動翼など)によって形状が異なるので、動翼1の形状タイプを考慮して遮熱性能変化の評価を行う。
さらに、本発明のコーティング層の遮熱性能評価方法は基本的には評価対象部品の部位を単位として遮熱性能変化の評価を行うものであり、本実施形態では、動翼1の複数の部位毎に遮熱性能変化の評価を行う。
まず、解析条件設定ステップ(S1)について説明する。
本発明のコーティング層の遮熱性能評価方法の実行にあたっては、まず、制御部11の三次元モデルデータ読込部11aが、評価対象部品である動翼1の数値解析用三次元モデルデータの読み込みを行う(S1−1)。
本実施形態では、数値解析用三次元モデルデータは三次元モデルデータベース18として記憶手段であるデータサーバ16に蓄積される。三次元モデルデータ読込部11aは、数値解析用三次元モデルデータをデータサーバ16に保存されている三次元モデルデータベース18から読み込む。なお、三次元モデルデータベース18は記憶手段である記憶部12に保存されるようにしても良い。
S1−1の処理において読み込まれる数値解析用三次元モデルデータは、S2−2の処理において、動翼1を実際に加熱した場合の温度変化に基づいて数値解析を行って熱抵抗値を算出する際に用いられるものである。本発明における数値解析用三次元モデルデータとしては、実際の部品に基づいて解析用メッシュモデルが作成される。
具体的には、まず、例えばX線CTスキャン装置(具体的には例えばBIR社製・ACTIS800−450CT/DRシステム)などを用いて動翼1についての計測を行い、内部構造も含めた基材の構造並びに基材に施されているコーティング層の構造のスキャン画像データを得る。
X線CTスキャン装置を用いた計測によって得られた画像データに基づく数値解析用の三次元メッシュデータの作成は、例えば、まず、X線CTスキャンによる画像からポリゴンによるモデルを作成し(具体的には例えば日本ヴィジュアルサイエンス株式会社製・VGstudio MAXを用いる)、続いて、ポリゴンによるモデルから汎用三次元CADモデルを作成し(具体的には例えばINUS Technology社製・Rapidform XOを用いる)、さらに、汎用三次元CADモデルから数値解析用メッシュモデルを作成する(具体的には例えばPointwise社製・Gridgenを用いる)ことによって行う。本実施形態の評価対象部品である動翼1の数値解析用の三次元メッシュモデル2の例を図4に示す。
ここで、S1−1の処理は評価対象部品の種類(本実施形態では形状のタイプ)毎に行われる。本実施形態の場合には、具体的には、ガスタービンの燃焼器内で動翼1が取り付けられる段(例えば、初段,2段,3段など)によって動翼1の形状が異なるので、動翼1の形状タイプ毎に数値解析用の三次元モデルデータが作成される。
なお、X線CTスキャンではコーティング層の厚さを正確に計測することができない場合には、動翼1の設計値をコーティング層の厚さとして与えたり、X線CTスキャン以外の方法によって計測した値を与えたり、動翼1のコーティング層の厚さとして通常想定される値を与えたりしても良い。
そして、三次元モデルデータ読込部11aは、三次元モデルデータベース18から読み込んだ数値解析用三次元モデルデータをメモリ15に記憶させる。
次に、制御部11の熱物性値設定部11bは、評価対象部品である動翼1の熱物性値を設定する(S1−2)。
S1−2の処理において設定される熱物性値は、S2−2の処理において、動翼1を実際に加熱した場合の温度変化に基づいて数値解析を行って熱抵抗値を算出する際に用いられるものである。具体的には、熱物性値として、動翼1の基材と大気(雰囲気)とについて熱伝導率,比熱容量,密度の値を設定すると共に、動翼1の遮熱コーティング層について比熱容量,密度の値を設定する。
なお、S1−2の処理において設定する熱物性値は例えば文献値でも良いし、あるいは、動翼1について別途に計測を行って得られた値でも良い。
ここで、S1−2の処理は評価対象部品の種類毎且つ部位毎に行われる。本実施形態の場合には、動翼1の形状タイプ毎且つ動翼1の部位毎に熱物性値が設定される。このため、熱物性値には当該熱物性値に対応する部品の種類及び部品の部位を表す符号が付される。
熱物性値の設定は、熱物性値を熱物性値データファイルとして記憶手段であるデータサーバ16若しくは記憶部12に予め保存しておいて当該ファイルから熱物性値を熱物性値設定部11bが読み込むようにしても良いし、熱物性値を遮熱性能評価プログラム17上に予め規定しておいてこの値を熱物性値設定部11bが読み込むようにしても良いし、熱物性値として作業者が指定する値を熱物性値設定部11bが読み込むようにしても良い。
作業者が熱物性値を指定する場合には、熱物性値設定部11bが、S1−2の処理を開始する段階で熱物性値の指定を要求する内容のメッセージを表示部18に表示し、入力部13を介して入力された作業者の指定の値を読み込むようにする。
そして、熱物性値設定部11bは、評価対象部品の種類を表す符号及び部位を表す符号と共に動翼1の熱物性値をメモリ15に記憶させる。
次に、制御部11の加熱条件設定部11cは、評価対象部品である動翼1の加熱条件を設定する(S1−3)。
S1−3の処理において設定される加熱条件は、S2−2の処理において動翼1を実際に加熱した場合の温度変化に基づいて数値解析を行って熱抵抗値を算出する際、及び、S2−1の処理において用いる検出温度を計測するために動翼1を実際に加熱する際に用いられるものである。具体的には、加熱条件として、動翼1の加熱位置、加熱径、加熱強度、加熱時間を設定する。
ここで、S1−3の処理は評価対象部品の種類毎且つ部位毎に行われる。本実施形態の場合には、動翼1の形状タイプ毎且つ動翼1の部位毎に加熱条件が設定される。このため、加熱条件には当該加熱条件に対応する部品の種類及び部品の部位を表す符号が付される。なお、本実施形態では一つの動翼1の複数の部位について遮熱性能変化の評価を行うので加熱条件のうち少なくとも加熱位置は部位毎に異なることになる。
加熱条件の設定は、加熱条件を加熱条件データファイルとして記憶手段であるデータサーバ16若しくは記憶部12に予め保存しておいて当該ファイルから加熱条件を加熱条件設定部11cが読み込むようにしても良いし、加熱条件を遮熱性能評価プログラム17上に予め規定しておいてこの値を加熱条件設定部11cが読み込むようにしても良いし、入力部13を介して入力された作業者の指定の条件を加熱条件設定部11cが読み込むようにしても良い。
そして、加熱条件設定部11cは、評価対象部品の種類を表す符号及び部位を表す符号と共に動翼1の加熱条件をメモリ15に記憶させる。
以上の解析条件設定ステップ(S1)は、評価対象部品の特定の種類の特定の部位に対して一回だけ行う。そして、この解析条件設定ステップ(S1)によって設定された数値解析用三次元モデル及び解析条件を用いて以下の評価ステップ(S2)の処理を行う。なお、解析条件設定ステップ(S1)の処理によって設定された数値解析用三次元モデル及び解析条件を評価対象部品の継続的な点検作業において用いる場合には、当該数値解析用三次元モデルデータ及び解析条件を記憶手段である記憶部12やデータサーバ16に保存するようにしても良い。
続いて、評価ステップ(S2)について説明する。この評価ステップ(S2)の処理は、実機に搭載されている部品の補修や交換の必要性を判断するための点検作業において用いられる処理であって、実機に搭載されている部品を加熱して温度を計測すると共に解析条件設定ステップ(S1)において設定された数値解析用三次元モデル及び解析条件を用いて部品の状態を評価するものである。
評価ステップ(S2)として、まず、制御部11の検出温度読込部11dは、評価対象部品(即ち実機に搭載されている部品)を実際に加熱したときの温度を計測することによって検出される温度のデータ(以下、検出温度データと呼ぶ)を読み込む(S2−1)。
評価対象部品の検出温度データを得るための動翼1の加熱はS1−3の処理において設定された加熱条件に従って行われる。なお、動翼1の加熱は具体的には例えばレーザを用いて行われる。また、温度の計測は例えば赤外線センサーを用いて行われる。
動翼1の加熱及び温度の計測は、実際に点検を行う部品であって評価対象の部品毎に、加熱条件として設定されている加熱位置毎即ち評価対象の部位毎に行われる。そして、個々の検出温度データには検出温度が計測された評価対象部品の識別符号(いわゆるID番号)が付される。さらに、検出温度データとS1−2の処理において設定された熱物性値及びS1−3の処理において設定された加熱条件とを対応付けるために個々の検出温度データには検出温度が計測された評価対象部品の種類及び部品の部位を表す符号が付される。
検出温度データは、計測して得られた検出温度を検出温度データファイルとして記憶手段であるデータサーバ16若しくは記憶部12に予め保存しておいて当該ファイルから検出温度の値を検出温度読込部11dが読み込むようにしても良いし、入力部13を介して入力された作業者の指定の値を検出温度読込部11dが読み込むようにしても良い。
そして、検出温度読込部11dは、評価対象部品の識別符号と種類を表す符号と部位を表す符号と共に動翼1の検出温度の値をメモリ15に記憶させる。
次に、制御部11の熱抵抗算出部11eは、S1の処理において設定された数値解析用三次元モデルと熱物性値と加熱条件並びにS2−1の処理において読み込まれた検出温度を用いて評価対象部品の温度変化の数値解析を行って熱抵抗値を算出する(S2−2)。
本発明における熱抵抗値は、動翼1のコーティング層の厚さδとコーティング層の熱伝導率λとを用いて数式1によって表される。
(数1) R=δ/λ
ここに、R:熱抵抗値〔mK/W〕、δ:コーティング層の厚さ〔m〕、λ:コーティング層の熱伝導率〔W/mK〕。
S2−2の処理は、実機に搭載されている部品であって点検を実施する部品別に、部品の部位毎に行われる。本実施形態の場合には、実機に搭載されている動翼1別に、動翼1の部位毎に熱抵抗値が算出される。
具体的には、熱抵抗算出部11eは、まず、S2−1の処理においてメモリ15に記憶された検出温度データの中から特定の一つの部品(以下、算出対象部品と呼ぶ)について当該算出対象部品の種類をメモリ15から読み込む。以下、この段階で読み込んだ算出対象部品の種類を算出対象種類と呼ぶ。
続いて、熱抵抗算出部11eは、S2−1の処理においてメモリ15に記憶された検出温度データのうち算出対象部品についての部位別の検出温度データの中から一つの部位(以下、算出対象部位と呼ぶ)についての値を読み込む。
次に、熱抵抗算出部11eは、S1−1の処理においてメモリ15に記憶された数値解析用三次元モデルデータの中から算出対象種類についてのデータをメモリ15から読み込む。
さらに、熱抵抗算出部11eは、S1−2の処理においてメモリ15に記憶された熱物性値とS1−3の処理においてメモリ15に記憶された加熱条件とのそれぞれの中から算出対象種類に関する算出対象部位についての熱物性値と加熱条件とをメモリ15から読み込む。
そして、熱抵抗算出部11eは、読み込んだ数値解析用三次元モデルと熱物性値と加熱条件とを前提条件とすると共に検出温度を既知として動翼1の温度変化の数値解析(具体的には非定常熱伝導解析による探索)を行って算出対象部位の熱抵抗値を算出し(具体的には例えばANSYS社製・FLUENTを用いる)、算出された熱抵抗値Rcalをメモリ15に記憶させる。
熱抵抗値の算出は、具体的には、数値解析用三次元モデル,加熱条件,検出温度,動翼1の基材及び大気の熱物性値(熱伝導率,比熱容量,密度),並びに、動翼1の遮熱コーティング層の熱物性値(比熱容量,密度)を与え、遮熱コーティング層の熱抵抗値をパラメータとして最適な熱抵抗値を探索する。なお、本発明において熱抵抗値を算出するための解析手法は特定の手法に限定されるものではなく、上記条件の下に熱抵抗値を決定することができる手法であればいずれの手法であっても良い。
熱抵抗算出部11eは、特定の一つの部品(算出対象部品)に係る部位別の熱抵抗値の算出を全ての部位について行い、他の部品(算出対象部品)についても部位別の熱抵抗値の算出を行う。
次に、制御部11の遮熱性能評価部11fは、S2−2の処理において算出された熱抵抗値をもとに評価対象部品の遮熱性能の評価を行って部品の補修や交換の必要性を判断する(S2−3)。
遮熱性能の評価は、S2−2で算出された熱抵抗値Rcalと限界熱抵抗値Rcriとを比較することにより行う。限界熱抵抗値Rcriは、評価対象部品のコーティング層が最低限備えるべき熱抵抗の値であり、基材の材質並びに評価対象部品の設置箇所や雰囲気温度などの環境等を考慮して作業者によって予め設定される。
限界熱抵抗値Rcriは、遮熱性能評価プログラム17上に予め規定しておいてこの値を遮熱性能評価部11fが読み込むようにしても良いし、入力部13を介して入力された作業者の指定の値を遮熱性能評価部11fが読み込むようにしても良い。なお、限界熱抵抗値Rcriは、評価対象部品の種類に拘わらず一律の値であっても良いし、評価対象部品の種類別に設定するようにしても良いし、評価対象部品の部位別に設定するようにしても良い。
遮熱性能評価部11fは、まず、S2−2の処理においてメモリ15に記憶された評価対象部品の部位別の熱抵抗値Rcalをメモリ15から読み込む。
続いて、遮熱性能評価部11fは、評価対象部品の部位別の熱抵抗値Rcalと限界熱抵抗値Rcriとを比較する。そして、Rcal>Rcriの場合には、評価対象部品の当該部位のコーティング層は必要とされる熱抵抗を備えていると判断する。一方、Rcal≦Rcriの場合には、当該部位のコーティング層は必要とされる熱抵抗を備えていない、すなわち当該部位は所要の熱抵抗が維持されていないので当該部位に対する補修作業や部品自体の交換が必要であると判断する。
そして、遮熱性能評価部11fは、上記処理を全ての部品についての全ての部位について行う。そして、Rcal≦Rcriの場合には、例えば表示部14に当該部品のID番号,部品の種類,部品の部位,熱抵抗値Rcalを表示して作業者に対して当該部品の補修や交換の必要性を通知し、処理を終了する(END)。
以上のように構成されたコーティング層の遮熱性能評価方法、装置及びプログラムによれば、評価対象部品を実現可能な範囲で任意に設定した加熱条件で加熱することによってコーティング層の遮熱性能の評価を行うことができる。また、コーティング層や基材を損傷しない範囲で任意に設定した加熱条件で評価対象部品を加熱することによってコーティング層の遮熱性能の評価を行うことができる。さらに、評価対象部品の形状が複雑な場合や部品の部位によってコーティングの施工条件や熱物性値が異なっている場合でもそれらを踏まえた評価を行うことができる。
なお、上述の形態は本発明の好適な形態の一例ではあるがこれに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば、本実施形態では、ガスタービンの動翼1を対象として遮熱性能変化の評価を実施する場合を例に挙げているが、遮熱性能変化の評価対象はこれに限られず、基材と遮熱のためのコーティング層とを有する部品であれば本発明を適用することができる。
また、本実施形態では、動翼1について複数の種類(すなわち形状のタイプ)がある場合を前提とした例について説明したが、これに限られるものではなく、評価対象部品の種類が一種類であっても利用が可能である。さらに、本実施形態では、動翼1の複数の部位毎に評価を実施する場合を前提とした例について説明したが、これに限られるものではなく、評価対象の部位が一つであっても利用が可能である。
ここで、本発明のコーティング層の遮熱性能評価装置は、図5に示すように、X線CTスキャン装置21,レーザ発振装置22,ロボット23,非接触温度計24を更に備えるものとして構成されるようにしても良い。
X線CTスキャン装置21は、上述のS1−1の処理に関連して動翼1についての計測を行って内部構造を含む形状の三次元デジタルデータ化を行うためのものであり、具体的には動翼1のスキャン画像データを取得するためのものである。
そして、X線CTスキャン装置21によって取得される動翼1の形状の三次元デジタルデータ25(即ちスキャン画像データ)はS1−1の処理において説明した過程を経て三次元モデル(本実施形態の場合には具体的には数値解析用の三次元メッシュモデル2)のデータとして加工されて用いられる。なお、本実施形態では、三次元デジタルデータ25はデータサーバ16に一旦蓄積されS1−1の処理において説明した過程を経て数値解析用の三次元メッシュモデル2として加工され三次元モデルデータベース18としてデータサーバ16にあらためて蓄積される。
レーザ発振装置22は、上述のS2−1の処理に関連して動翼1のコーティング層の表面の加熱を行うための装置である。レーザ22aとしては、動翼1の表面を安定して加熱することを考えて具体的にはCO2レーザ若しくは半導体レーザが用いられる。
ここで、レーザ発振装置22による動翼1の表面の加熱においては、S1−3の処理において設定された加熱条件に正確に従うことが必要であると共に、三次元モデルに対する数値解析の正確性の担保と容易さとを考慮すると動翼1の表面に対して常に垂直方向から等距離でレーザ22aが照射されることが望ましい。
しかしながら、加熱位置,加熱径,加熱強度,加熱時間が設定されている加熱条件に正確に従うように、並びに、曲面を有する動翼1の表面全体に亘って常に垂直方向且つ等距離になるように、手動操作によってレーザ22aの照射位置や方向や時間などを制御することは非常に困難であり、そして、正確性の担保の観点から望ましくない。
そこで、レーザ22aの照射位置や方向や時間などを制御するためにロボット23が用いられる。ロボット23としては、具体的には、コンピュータ制御の下で作動する機械的ハンドリング装置が用いられる。さらに、必要な場合には、評価対象部品である動翼1を載置するステージ26を備えるようにすると共に当該ステージ26をロボット23の動作に連動させるようにしても良い。
そして、ロボット23(及び必要な場合にはステージ26)の動作制御に、S1−3の処理において設定された加熱条件、並びに、X線CTスキャン装置21によって得られた動翼1の形状の三次元デジタルデータ25に基づく三次元メッシュモデル2を用いることにより、加熱条件並びに動翼1の表面形状に合わせてレーザ22aの照射位置や方向や時間などを正確に制御することが可能になる。
なお、ロボット23を介してレーザ22aが照射されるようにするために、ロボット23のアームの先端部23aにレーザ発振装置を組み込んでレーザ発振装置とロボットとを一体化させるようにしても良いし、図5に示す例のようにレーザ発信装置22とロボット23とが別体として構成されるようにしても良い。なお、図5に示す例の場合には、レーザ発振装置22によるレーザが例えば光ファイバ22bによってロボットアームの先端部23aまで伝送される。
非接触温度計24は、上述のS2−1の処理に関連して動翼1をレーザ発振装置22によるレーザ22aによって加熱したときの温度即ちコーティング層の表面温度を計測すると共に計測によって検出された温度のデータ(即ち検出温度データ)を出力するためのものである。非接触温度計24としては、具体的には放射温度計若しくはサーモグラフィが用いられる。
なお、非接触温度計24として放射温度計を用いる場合には、放射温度計は一点計測を行う機器であるので、ロボット23によるレーザ22aの照射に合わせて放射温度計24による温度計測点を移動させるようにする。
一方、非接触温度計24としてサーモグラフィを用いる場合には、一定の領域に対する熱画像を取得することが可能であり、ロボット23によるレーザ22aの照射に合わせて一定の領域を細かく制御して移動させる必要はない。また、レーザ照射点と最高温度が検出される点とは必ずしも一致しない傾向があることが発明者の検討によって確認されており、サーモグラフィを用いて一定の領域を単位として温度計測を行って最高温度点を検出するようにした方が正確性の担保の観点からも好ましい。
なお、コーティング層表面でのレーザ22aの反射を考慮すると、非接触温度計24として、CO2レーザの波長(10.6〔μm〕程度)や半導体レーザの波長(800〔nm〕程度)を含まない波長を検出することができる機器が用いられることが望ましい。
非接触温度計24によって計測されて出力された動翼1に関する検出温度データは、例えば、検出温度データファイルとしてデータサーバ16若しくは記憶部12に保存される。
上述の、X線CTスキャン装置21,レーザ発振装置22,ロボット23,非接触温度計24を更に備える装置によれば、種々の計測の正確性を担保しながら遮熱性能の評価を行うことが可能になる。
本発明のコーティング層の遮熱性能評価方法、装置及びプログラムの有効性の検証の実施例を図6から図9を用いて説明する。
具体的には、本実施例では、図6に示すように、ガスタービンの翼1の背側の一部(図中破線で囲まれる部分)を模擬した試験体30を用いて本発明の遮熱性能評価の有効性の検証を行った。
本実施例の試験体30は、基材31が外径D=30〔mm〕の薄肉円筒形状であり、外周面に遮熱コーティング層32が施工されているものを用いた。
そして、本実施例では、基材31の厚さは1,2,3〔mm〕の三種類とした(なお、基材31の内径dがそれぞれ28,26,24〔mm〕になる)。また、遮熱コーティング層32の厚さは0.1,0.2,0.3〔mm〕の三種類とした。
また、本実施例では、レーザを用いて試験体30を加熱した。具体的には、試験体30の外周面のうちの4分の1の範囲(即ち中心角θ=90度に対応する外周部分;以下、レーザ照射範囲33と呼ぶ)にレーザを照射するようにした。
そして、レーザによる加熱については、遮熱コーティングの焼結が発生しない程度の条件に設定する必要があることを考慮し、遮熱コーティング層32の表面温度が最大で400〔℃〕程度になる条件として、加熱強度0.6〔W〕,加熱領域直径1〔mm〕,試験体30外周面周方向へのレーザ移動速度5〔mm/秒〕とした。
また、基材31及び遮熱コーティングの熱物性値は文献値を使用した(藤井ら:ガスタービン用コーティング層の熱特性−第1報 コーティング層と耐熱超合金の熱物性測定および新旧材の比較−,電力中央研究所報告(W97017),1998年)。また、遮熱コーティング層32表面の放射率は1.0とした。なお、試験体30内外の雰囲気は大気とした。
レーザが加熱開始点34aから加熱終点34bに到達するまでの間の、温度計測点35における温度変化を非定常熱伝導解析によって計算した。なお、温度計測点35はレーザ照射範囲33の中央地点(即ち加熱開始点34aから中心角θm=45度に対応する地点)とした。
まず、基材31の厚さを2〔mm〕に固定すると共に遮熱コーティング層32の厚さを変化させた場合についての解析を行って図7に示す計算結果が得られた。この結果から、温度計測点35における温度はレーザの中心が通過(図中「レーザ通過点」と表記)後0.05〔秒〕程度で最高温度に達し、遮熱コーティング層32(図中「TBC」と表記)の厚さの違いによって最高温度の値が大きく異なることが確認された。
そして、図7に示す最高温度と遮熱性能との間の関係から図8に示す検定線が得られた。ここで言う検定線とは、図8に示すように、遮熱性能としての熱抵抗値Rと部品の温度Tとの間の関係を表す曲線である。なお、検定線3は、評価対象部品の種類別且つ部位別に作成されるものであり、具体的には例えば動翼1の形状タイプ別且つ動翼1の部位別に作成されるものである。
一方、試験体30を用いた実際の計測においては上記の解析における加熱条件と同様の条件で遮熱コーティング層32表面のレーザ加熱を行い、温度計測点35において計測された遮熱コーティング層32の表面温度と図8に示す検定線とを用いて遮熱コーティングの遮熱性能を求めた。
ここで、計測対象物の表面温度の計測装置として一般的に用いられる放射温度計やサーモグラフィなどの非接触温度計の計測精度は計測温度に対して±2〔%〕程度の範囲内であることが一般的である。このため、図7に示すように遮熱コーティング層32の表面温度が400〔℃〕程度の場合には計測誤差が±8〔℃〕程度の範囲内になると考えられた。
そして、図7において、遮熱コーティング層32の厚さが0.2〔mm〕と0.3〔mm〕との場合を比較すると最高温度の差は約80〔℃〕であった。このため、本実施例の試験体30を用いて同様の計測を非接触温度計で行った場合には遮熱コーティング層の厚さに換算すると±0.01〔mm〕に相当する誤差を含むことになると考えられた。
ここで、文献(森永ら:TBC遮熱性能非破壊評価法の開発−第1報 TBC遮熱性能評価手法の提案−,電力中央研究所報告(W97021),1998年)によると、実機条件を模擬した簡易伝熱計算の結果から、遮熱コーティング層の厚さが0.0023〔mm〕変化した場合に基材の表面温度が1〔℃〕変化するとされており、0.01〔mm〕の遮熱コーティング層の厚さの変化は5〔℃〕以内の基材温度変化をもたらすことになると考えられた。
既存の検討結果(渡辺ら:1300℃級ガスタービン初段動翼内部冷却の熱流動解析−第1報 直交リブ付き直管流路における高レイノルズ数場の解析−,電力中央研究所報告(W00006),2000年)によると、ガスタービン高温部品の寿命評価を行う際に許容できる温度の誤差は±20〔℃〕以内とされており、基材温度にして5〔℃〕以内の誤差はこの範囲内に十分に収まることが確認された。
以上の結果から、本発明のコーティング層の遮熱性能評価方法は、本実施例で行った通りの計測が可能である装置を導入することで、ガスタービン高温部品の寿命評価を行う際に許容できる温度誤差に収まる評価を行うことが可能であることが確認された。
次に、遮熱コーティング層32の厚さを0.2〔mm〕に固定すると共に基材31の厚さを変化させた場合についての解析を行って図9に示す計算結果が得られた。この結果から、基材31の厚さが2〔mm〕と3〔mm〕との場合では最高温度に大きな差はみられない一方で、1〔mm〕の場合には最高温度が8〔℃〕程度高くなっていることが確認された。
この結果から、基材31の厚さの影響を考慮しない場合には、基材の厚さの差によって最高温度に差が現れているにも拘わらず、遮熱コーティング層の遮熱性能の違いに起因して最高温度に差が現れていると判断してしまい計測誤差の要因になり得ると考えられた。
本発明においては、計測対象である動翼1の三次元モデル(即ち数値解析用の三次元メッシュモデル)を作成して数値解析に用いるようにしており、そして、数値解析を動翼1の部位毎に行うようにして動翼1の部位毎の基材の厚さを数値解析において考慮するようにしているので、上述の計測誤差を排除して高い精度を有する遮熱性能の評価を行うことが可能であることが確認された。
1 動翼
2 数値解析用三次元メッシュモデル

Claims (4)

  1. 部位別の基材の厚みが連続的に変化する評価対象部品について前記基材の構造及び当該基材に施されているコーティング層の構造を含む数値解析用三次元モデルのデータを作成するステップと、前記評価対象部品の部位別に前記基材と前記コーティング層とのそれぞれの熱物性値を設定するステップと、前記評価対象部品の部位別の加熱条件を設定するステップと、前記加熱条件に従って前記評価対象部品をレーザ照射点を移動させながら実際に加熱して前記評価対象部品の部位別の検出温度を検出するステップと、前記数値解析用三次元モデルと前記熱物性値と前記加熱条件と前記検出温度とを用いて前記評価対象部品の温度変化の数値解析を行って前記評価対象部品の部位別の熱抵抗値を算出するステップと、前記算出された熱抵抗値に基づいて前記評価対象部品の部位別の前記コーティング層の遮熱性能を評価するステップとを有することを特徴とするコーティング層の遮熱性能評価方法。
  2. 部位別の基材の厚みが連続的に変化する評価対象部品について前記基材の構造及び当該基材に施されているコーティング層の構造を含む数値解析用三次元モデルのデータを読み込む手段と、前記評価対象部品の部位別に前記基材と前記コーティング層とのそれぞれの熱物性値を設定する手段と、前記評価対象部品の部位別の加熱条件を設定する手段と、前記加熱条件に従って前記評価対象部品をレーザ照射点を移動させながら実際に加熱して検出される前記評価対象部品の部位別の検出温度のデータを読み込む手段と、前記数値解析用三次元モデルと前記熱物性値と前記加熱条件と前記検出温度とを用いて前記評価対象部品の温度変化の数値解析を行って前記評価対象部品の部位別の熱抵抗値を算出する手段と、前記算出された熱抵抗値に基づいて前記評価対象部品の部位別の前記コーティング層の遮熱性能を評価する手段とを有することを特徴とするコーティング層の遮熱性能評価装置。
  3. 部位別の基材の厚みが連続的に変化する評価対象部品について前記基材の構造及び当該基材に施されているコーティング層の構造を含む数値解析用三次元モデルのデータを記憶手段から読み込む処理と、前記記憶手段に記憶された若しくは入力手段によって入力された前記評価対象部品の部位別の前記基材と前記コーティング層とのそれぞれの熱物性値と前記評価対象部品の部位別の加熱条件とを読み込む処理と、前記加熱条件に従って前記評価対象部品をレーザ照射点を移動させながら実際に加熱して検出され前記記憶手段に記憶された若しくは前記入力手段によって入力された前記評価対象部品の部位別の検出温度のデータを読み込む処理と、前記数値解析用三次元モデルと前記熱物性値と前記加熱条件と前記検出温度とを用いて前記評価対象部品の温度変化の数値解析を行って前記評価対象部品の部位別の熱抵抗値を算出する処理と、前記算出された熱抵抗値に基づいて前記評価対象部品の部位別の前記コーティング層の遮熱性能を評価する処理とをコンピュータに行わせることを特徴とするコーティング層の遮熱性能評価プログラム。
  4. 前記数値解析用三次元モデルのデータを作成するために前記評価対象部品のスキャン画像データを取得するX線CTスキャン装置と、前記評価対象部品を実際に加熱するレーザを発振する装置と、前記加熱条件に従うと共に前記数値解析用三次元モデルのデータに基づいて前記評価対象部品の表面形状に合わせて前記レーザを照射するためのロボットと、前記評価対象部品の温度を計測して前記部位別の検出温度のデータを出力する非接触温度計とを更に備えることを特徴とする請求項2記載のコーティング層の遮熱性能評価装置。
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