JP5317056B2 - アスパラギン酸の化学伝達を司るトランスポーターの同定とその利用 - Google Patents

アスパラギン酸の化学伝達を司るトランスポーターの同定とその利用 Download PDF

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Description

本発明は、新規のアスパラギン酸トランスポーターの分野に関する。さらに、本発明は、アスパラギン酸トランスポーターの輸送活性を調節する薬剤のスクリーニング、ならびに、アスパラギン酸の代謝異常が関連する疾患を予防・治療するための薬剤のスクリーニングに関する。
アスパラギン酸は元々細菌の化学走性因子として同定され、化学伝達物質として長い歴史を持っている。ヒトを含む哺乳動物の脳においては、脳スライスに刺激を与えるとグルタミン酸、γアミノ酪酸(GABA)とともに遊離してくることが30年以上前に判明している。いずれのアミノ酸も神経に興奮(ないし抑制)作用を示すことから神経伝達物質であると考えられてきた。これらのアミノ酸が化学伝達として機能するためには、(1)神経末端に存在するシナプス小胞にまず濃縮された後シナプス間隙にエキソサイトーシスされること、(2)放出されたアミノ酸が受容体に結合すること、(3)その後、神経ないしグリア細胞に吸収されシナプス間隙中からなくなることが必要である。最後の過程は原形質膜に存在するNa駆動型トランスポーターが司っている。この30年の間に、グルタミン酸とγアミノ酪酸における上述の(1〜3)を司るタンパク質因子は解明された。すなわち、グルタミン酸については、3種類のvesicularglutamate transporter VGLUT1, VGLUT2, VGLUT3)(トランスポーターとしての分類ではSLC17A6〜8と称される)がシナプス小胞に存在し、グルタミン酸の小胞内濃縮を司る。放出されたグルタミン酸は各種のグルタミン酸受容体に結合し、シグナルを伝達し、原形質膜型グルタミン酸トランスポーターにより回収される。γアミノ酪酸の化学伝達にいてもvesicularGABAtransporterとGABA受容体ならびに原形質膜型GABAトランスポーターが既に知られている。一方、アスパラギン酸の化学伝達機構は不明であった。アスパラギン酸はグルタミン酸と同じ酸性アミノ酸(生体内でアニオンとなる)であるが、炭素が一つ少ない。アスパラギン酸は特に海馬に多く含まれている。海馬のCA3神経末端においては、アスパラギン酸はシナプス小胞に含まれており。刺激により放出される(非特許文献1:Zhouetal, 1995, Journal of Neurochemistry 64, 1556-1566)。そして、放出されたアスパラギン酸はNMDA受容体に結合しシグナルを伝達すると考えられる。また、細胞外のアスパラギン酸は原形質型グルタミン酸トランスポーターのよい基質であり効率的に細胞内に再吸収される。さらに本発明者らは松果体もアスパラギン酸を濃縮しエキソサイトーシスしていることを報告した(非特許文献2:Yatsushiroetal, 1997 J Neurochem. 69, 340-347)。
上記に示される神経伝達物質としてのアスパラギン酸の特徴から、アスパラギン酸トランスポーターの機能を調節する薬剤は、神経細胞の疾患、例えば、海馬のCA3神経に関連する疾患の予防・治療に有用であることが予想される。従って、本発明は、神経細胞の疾患、例えば、海馬のCA3神経に関連する疾患の予防薬・治療薬の候補物質を提供するスクリーニング法を提供することを可能とすると考えられる。
そこで、アスパラギン酸の輸送を担うタンパク質をコードする遺伝子の同定が望まれていた。
アスパラギン酸の化学伝達機構を実証するためには、シナプス小胞に蓄積するためのトランスポーター(仮想的に小胞型アスパラギン酸トランスポーター、vesicularaspartate transporter, VaspTと呼ぶ)の存在を示す必要があった。しかしながら、VGLUTがアスパラギン酸を基質とはしない(非特許文献3:MoriyamaYand Yamamoto A, J Biochem (Tokyo).135, 155-163)ことから、シナプス小胞におけるアスパラギン酸を濃縮する機構は、少なくともグルタミン酸輸送機構とは異なる機構によって輸送されると考えられており、その機構に関与する具体的なタンパク質は不明であった。
この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、次のものがある。
Zhou et al, 1995, Journal of Neurochemistry 64, 1556-1566 Yatsushiro et al, 1997, J Neurochem. 69, 340-347 Moriyama Y and Yamamoto A, J Biochem (Tokyo).135, 155-163
アスパラギン酸輸送を担うトランスポーターおよびそれをコードする遺伝子を同定し、さらに、そのようなトランスポーターを含む人工膜を用いる、トランスポーターの活性調節剤のスクリーニング法を提供することを、本発明の課題とする。さらに、そのようなスクリーニング法によって、アスパラギン酸代謝が関与する疾患の予防剤・治療剤の候補物質を提供することもまた、本発明の課題である。
本発明者らは、以下の実施例に記載される独創的方法により、アスパラギン酸トランスポーターの同定およびその機能解析を行うことによって、本発明を完成した。
本発明によって以下が提供される。
(項目1) 配列番号1に記載の核酸配列を含む核酸の相補鎖とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸であって、アスパラギン酸輸送活性を有するポリペプチドをコードする核酸、
配列番号1に記載の核酸配列と少なくとも80%相同な配列を含む核酸であって、アスパラギン酸輸送活性を有するポリペプチドをコードする核酸、
配列番号2に記載されるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする核酸、および
配列番号2に記載されるアミノ酸配列において1または数個の変異、置換、挿入または欠失を含むアミノ酸配列を有し、かつアスパラギン酸輸送活性を有するポリペプチドをコードする核酸
からなる群から選択される、核酸によってコードされるポリペプチドを含む、人工膜。
(項目2) 膜小胞である、項目1に記載の人工膜。
(項目3) リポソームである、項目1に記載の人工膜。
(項目4) さらに、プロトンポンプを含む、項目1に記載の人工膜。
(項目5) 前記プロトンポンプがF−ATPaseである、項目4に記載の人工膜。
(項目6) さらに、膜電位形成剤を含む、項目1に記載の人工膜。
(項目7) 前記膜電位形成剤がバリノマイシンである、項目6に記載の人工膜。
(項目8) アスパラギン酸輸送タンパク質の活性調節剤のスクリーニング法であって、
(a)項目1に記載の人工膜を提供する工程;
(b)該人工膜に候補薬物を接触させる工程;
(c)該人工膜のアスパラギン酸輸送活性を測定する工程;および、
(d)工程(c)で測定されたアスパラギン酸輸送活性から、該候補薬物がアスパラギン酸輸送タンパク質の活性調節剤であるか否かを決定する工程;
を包含する、方法。
(項目9) 前記活性調節剤が阻害剤である、項目8に記載の方法。
(項目10) 前記活性調節剤が活性促進剤である、項目8に記載の方法。
(項目11) 項目8に記載の方法によって得られた、アスパラギン酸輸送タンパク質の活性調節剤。
(項目12) 前記(a)の人工膜が、さらに、プロトンポンプを含む、項目8に記載の方法。
(項目13) 前記プロトンポンプがF−ATPaseである、項目12に記載の方法。
(項目14) 前記(a)の人工膜が、さらに、膜電位形成剤を含む、項目8に記載の方法。
(項目15) 前記膜電位形成剤がバリノマイシンである、項目14に記載の方法。
(項目16) 項目1に記載の人工膜を含む、アスパラギン酸輸送タンパク質の活性調節剤をスクリーニングするための、組成物。
(項目17) さらにプロトンポンプを含む、項目16に記載の組成物。
(項目18) 前記プロトンポンプがF−ATPaseである、項目17に記載の組成物。
(項目19) さらに、膜電位形成剤を含む、項目16に記載の組成物。
(項目20) 前記膜電位形成剤がバリノマイシンである、項目19に記載の組成物。
(項目21)a)ポリペプチドであって、以下:
配列番号1に記載の核酸配列を含む核酸の相補鎖とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸であって、アスパラギン酸輸送活性を有するポリペプチドをコードする核酸;
配列番号1に記載の核酸配列と少なくとも80%相同な配列を含む核酸であって、アスパラギン酸輸送活性を有するポリペプチドをコードする核酸;
配列番号2に記載されるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする核酸;および
配列番号2に記載されるアミノ酸配列において1または数個の変異、置換、挿入または欠失を含むアミノ酸配列を有し、かつアスパラギン酸輸送活性を有するポリペプチドをコードする核酸、
からなる群から選択される、核酸によってコードされるポリペプチド、ならびに
b)脂質
を含む、アスパラギン酸輸送タンパク質の活性調節剤をスクリーニングするための、キット。
(項目22) さらに(c)プロトンポンプを含む、項目21に記載のキット。
(項目23) 前記(c)プロトンポンプがF−ATPaseである、項目22に記載のキット。
(項目24) さらに、(d)膜電位形成剤を含む、項目21に記載のキット。
(項目25) 前記(d)膜電位形成剤がバリノマイシンである、項目24に記載のキット。
本発明に従って、アスパラギン酸輸送を担うトランスポーターおよびそれをコードする遺伝子が同定された。さらに、そのようなトランスポーターを含む人工膜を用いる、トランスポーターの活性調節剤のスクリーニング法が提供された。さらに、そのようなスクリーニング法によって、アスパラギン酸代謝が関与する疾患の予防剤・治療剤の候補物質をスクリーニングする方法およびそのような候補物質もまた、提供される。
図1Aは、野生型シアリンおよび変異型シアリンを用いた再構成プロテオリポソームの調製を桃式的に示す図である。図1Bは、野生型シアリンおよび変異型シアリンを再構成しH/シアル酸共輸送活性を測定した結果である。 図2は、(1)F−ATPaseのみを再構成したリポソーム(F−ATPアーゼ リポソーム)、(2)F−ATPaseとシアリンを再構成したリポソーム(ATP未添加)(−ATP)、(3)F−ATPaseとシアリンを再構成したリポソーム(ATP添加)(+ATP)それぞれのL−アスパラギン酸取り込みのタイムコースを示す結果である。 図3は、バリノマイシン(2μM)、ナイジェリシン(2μM)、(NHSO(2mM)、CCCP(1μM)、NaN(1mM)、エバンスブルー(1μM)の添加によるアスパラギン酸輸送活性への影響を測定した結果である。 図4は、種々のアミノ酸等の物質の添加によるアスパラギン酸輸送活性およびシアル酸輸送活性への影響を測定した結果である。 図5Aは、松果体細胞のprocess terminal領域にシアリンとアスパラギン酸が共存していることを示す写真である。図5Bは、シアリン遺伝子の発現をRNAiにより抑制した場合、アスパラギン酸の取り込みが減少したことを示す結果である。 図6Aは、海馬P2膜小胞分画に対する、抗シアリン抗体によるウェスタンブロットの結果である。矢印は、シアリンに相当する分子量のバンドである。図6Bは、海馬スライスについて、免疫組織化学解析を行った結果である。図6Bの左図(「Sialin+Syn」)では、抗シナプトフィジン抗体によるシグナルを矢印で示し、抗シアリン抗体によるシグナルを矢じりで示した。図6Bの中央図(「VGLUT1+Syn」)では、抗シナプトフィジン抗体によるシグナルを矢印で示し、抗VGLUT1抗体によるシグナルを矢じりで示した。図6Bの右図(「Control+Syn」)は、抗シナプトフィジン抗体(5nm 粒子)およびコントロール血清(10 nm 金粒子)を用いた結果である。図6Cの「海馬」の「グルタミン酸」および「アスパラギン酸」のグラフは、海馬P2画分のグルタミン酸取り込み活性およびアスパラギン酸取り込み活性を測定した結果である。「Control」は、海馬P2膜画分を用いた結果であり、「+CCCP」は、「Control」で使用した反応液にCCCPを添加して得られた結果であり、「tHA」は、「Control」で使用した反応液にtHAを添加して得られた結果である。図6Cの「全脳」の「グルタミン酸」および「アスパラギン酸」のグラフは、全脳P2画分のグルタミン酸取り込み活性およびアスパラギン酸取り込み活性を測定した結果である。「Control」は、全脳P2膜画分を用いた結果であり、「+CCCP」は、「Control」で使用した反応液にCCCPを添加して得られた結果であり、「tHA」は、「Control」で使用した反応液にtHAを添加して得られた結果である。 図7Aは、松果体培養細胞に対する抗シアリン抗体でのウェスタンブロットの結果である。図7Bは、培養した松果体細胞を、抗アスパラギン酸抗体(L−Asp)、抗シアリン抗体(Sialin)、および、抗シナプトフィジン抗体(Syn)で二重染色した結果である。バーは10μmである。図7B上段の二重染色の結果(Merge)は、抗アスパラギン酸抗体(L−Asp)と抗シナプトフィジン抗体(Syn)とを用いた二重染色の結果を、図7B下段の二重染色の結果(Merge)は、抗シアリン抗体(Sialin)と抗シナプトフィジン抗体(Syn)とを用いて二重染色の結果を示す。図7Cは、培養した松果体細胞について、免疫組織化学解析を行った結果である。図7Cの左図(「Sialin+Syn」)では、抗シナプトフィジン抗体によるシグナルを矢印で示し、抗シアリン抗体によるシグナルを矢じりで示した。図7Cの中央図(「VGLUT2+Syn」)では、抗シナプトフィジン抗体によるシグナルを矢印で示し、抗VGLUT2抗体によるシグナルを矢じりで示した。図7Cの右図(「Control+Syn」)は、抗シナプトフィジン抗体(5nm 粒子)およびコントロール血清(10 nm 金粒子)を用いた結果である。バーは100nmを示す。図7Dは、シアリンに対するsiRNAを用いて、シアリンの発現を特異的に抑制した結果である。「−」はsiRNAを添加しなかった結果、「+」はsiRNAを添加した結果である。左のグラフは、シアリンの発現量をG3PDHの発現量で割り算した値を、「−」(siRNAを添加しなかった結果)を100%とした相対値として示した結果である。右のグラフは、VGLUT2の発現量をG3PDHの発現量で割り算した値を、「−」(siRNAを添加しなかった結果)を100%とした相対値として示した結果である。図7Dは、siRNAを添加しなかった場合(「−」)およびsiRNAを添加した場合(「+」)の各々について、アスパラギン酸の放出およびグルタミン酸の放出の結果を示したグラフである。 図8は、(1)シアリンを添加することなく、F−ATPaseのみを再構成したリポソームにATPを添加した場合(−シアリン+ATP)、(2)F−ATPaseとシアリンを再構成したリポソーム(ATP未添加)(−ATP)、(3)F−ATPaseとシアリンを再構成したリポソーム(ATP添加)(+ATP)それぞれのグルタミン酸取り込みのタイムコースを示す結果である。 図9は、シアリンとFoF1−ATPaseを含む再構成リポソームに対して、1μMエバンスブルー、1μMシカゴスカイブルーおよび10μM DIDSをそれぞれ添加し、予めインキュベーションした後に、2mM ATPを添加した、アスパラギン酸取り込み活性の結果である。結果を、コントロールに対する相対値として示した。 図10は、FoF1−ATPaseを用いることなく、シアリンのみを再構成したリポソームを用いて、アスパラギン酸の輸送活性を測定した結果である。「+Val」はバリノマイシンを用いた場合、「−Val」はバリノマイシンを用いない場合の結果である。 図11は、R39CシアリンとH183Rシアリンの、アスパラギン酸、グルタミン酸、およびシアル酸の取り込み活性を示すグラフである。
配列番号1は、ヒトシアリンの核酸配列である
配列番号2は、ヒトシアリンのアミノ酸配列である。
配列番号3は、ヒトシアリン遺伝子クローニングに使用した正方向プライマーの配列である。
配列番号4は、ヒトシアリン遺伝子クローニングに使用した逆方向プライマーの配列である。
配列番号5は、ヒトシアリン遺伝子クローニングに使用した正方向プライマーの配列である。
配列番号6は、ヒトシアリン遺伝子クローニングに使用した逆方向プライマーの配列である。
配列番号7は、マウスH183R 1st PCRセンスプライマーの配列である。
配列番号8は、マウスH183R 1st PCRアンチセンスプライマーの配列である。
配列番号9は、マウスH183R 2nd PCRセンスプライマーの配列である。
配列番号10は、シアリン遺伝子のノックダウンに使用したRNAiの配列である。
以下、本発明を説明する。本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての専門用語および科学技術用語は、本発明の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。
(用語の定義)
以下に本明細書において特に使用される用語の定義を列挙する。
本明細書において使用される用語「トランスポーター」とは、脂質二重膜を透過できない物質(例えば、アスパラギン酸)を、脂質二重膜を越えて輸送する物質をいう。典型的には、トランスポーターは、脂質二重膜中に存在する膜タンパク質である。タンパク質であるトランスポーターは、本明細書において「輸送タンパク質」と互換可能に使用される。
本明細書において使用される用語「輸送活性」とは、脂質二重膜を透過できない物質(例えば、アスパラギン酸のようなアニオン)を、脂質二重膜を越えて輸送する活性をいう。アスパラギン酸の輸送活性を本明細書において「アスパラギン酸輸送活性」という。シアリンを再構成したリポソームを用いる場合、再構成リポソームへの取り込み量を指標として、輸送活性を測定することが可能である。また、神経細胞におけるシアリンの輸送活性は、神経細胞からの対象物(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸、または、シアル酸など)の放出量を、輸送活性の指標とすることができる。
本明細書において使用される用語「プロトンポンプ」とは、ATPをエネルギー源としてH+を輸送する輸送活性を有するタンパク質をいう。代表的なプロトンポンプとしては、大腸菌、ミトコンドリアおよびクロロプラストに存在するF−ATPase、液胞およびクロマフィン顆粒に存在するV−ATPase、細胞膜に存在するNa/K−ATPaseおよびH/K−ATPaseが挙げられるが、これに限定されない。
本明細書において使用される用語「人工膜」とは、脂質を原料として人工的に調製された膜であり、好ましくは、脂質二重膜であるがこれに限定されない。「人工膜」としては、例えば、リポソームが挙げられるが、これに限定されない。
本明細書において使用される用語「アスパラギン酸輸送タンパク質の活性調節剤」とは、アスパラギン酸輸送タンパク質の輸送活性に影響を与える物質をいう。「アスパラギン酸輸送タンパク質の活性調節剤」は、輸送活性を促進する物質であっても、阻害する物質であってもよい。
本明細書において使用される用語「膜電位形成剤」とは、リポソームに添加した場合に、膜電位を形成する薬剤をいう。好ましくは、本発明の膜電位形成剤は、リポソーム内部の電位を正にする化合物である。膜電位形成剤としては、バリノマイシン、ビス[(ベンゾ−15−クラウン−5)−4−メチル]ピメレートが挙げられるが、これに限定されない。バリノマイシンを使用する場合には、リポソームの内外にカリウムの濃度勾配を形成する必要がある。リポソーム外のカリウム濃度が高く、リポソーム内のカリウム濃度が低い条件下でバリノマイシンを添加すると、リポソーム内に正の電位が形成される。
本明細書において使用される場合、「キット」とは、複数の容器、および製造業者の指示書を含み、そして各々の容器が、本発明の核酸および/またはタンパク質を含む製品をいう。必要に応じて、本発明のキットは、リポソームのような人工膜、あるいは、人工膜を調製するための脂質を含む。また、必要に応じて、本発明のキットは、人工膜にプロトンの電気化学的ポテンシャルを形成するためのプロトンポンプ(ATPase(例えば、F−ATPaseまたは液胞型ATPase)を含む。
「ポリヌクレオチド」、「核酸」または「核酸分子」は、一本鎖形態、二本鎖形態、または他の形態である、リン酸エステルポリマー形態のリボヌクレオチド(アデノシン、グアノシン、ウリジン、もしくはシチジン;「RNA分子」)またはデオキシリボヌクレオチド(デオキシアデノシン、デオキシグアノシン、デオキシチミジン、もしくはデオキシシチジン(DNA分子」)、またはそれらの任意のホスホエステルアナログ(例えば、ホスホロチオエートおよびチオエステル)を指し得る。
「ポリヌクレオチド配列」、「核酸配列」または「ヌクレオチド配列」は、核酸(例えば、DNAまたはRNA)中の一連のヌクレオチド塩基(「ヌクレオシド」とも呼ばれる)であり、2つの以上のヌクレオチドの任意の鎖またはその相補鎖を意味する。本発明の好ましい核酸は、配列番号1に示される核酸、ならびにその相補鎖、改変体およびフラグメントを包含する。
「相補鎖」とは、ある核酸配列に対して塩基対を形成し得るようなヌクレオチドの鎖を意味する。例えば、二本鎖DNAの各々の鎖は互いに相補的な塩基配列を有し、一方の鎖から見て他方の鎖は相補鎖である。
「コード配列」または発現生成物(例えば、RNA、ポリペプチド、タンパク質、もしくは酵素)を「コードする」配列は、発現された場合にその生成物の生成をもたらすヌクレオチド配列である。
「タンパク質」、「ペプチド」または「ポリペプチド」は、2つ以上のアミノ酸の連続列を含む。本発明の好ましいペプチドは、配列番号2に示されるペプチド、ならびにその改変体およびフラグメントを包含する。
「タンパク質配列」、「ペプチド配列」、または「ポリペプチド配列」または「アミノ酸配列」は、タンパク質、ペプチド、またはポリペプチド中にある一連の2つ以上のアミノ酸を指す。
本明細書において遺伝子(例えば、核酸配列、アミノ酸配列など)の「相同性」とは、2以上の遺伝子配列の、互いに対する同一性の程度をいう。また、本明細書において配列(核酸配列、アミノ酸配列など)の同一性とは、2以上の対比可能な配列の、互いに対する同一の配列(個々の核酸、アミノ酸など)の程度をいう。従って、ある2つの遺伝子の相同性が高いほど、それらの配列の同一性または類似性は高い。2種類の遺伝子が相同性を有するか否かは、配列の直接の比較、または核酸の場合ストリンジェントな条件下でのハイブリダイゼーション法によって調べられ得る。2つの遺伝子配列を直接比較する場合、その遺伝子配列間でDNA配列が、代表的には少なくとも50%同一である場合、好ましくは少なくとも70%同一である場合、より好ましくは少なくとも80%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一である場合、それらの遺伝子は相同性を有する。本明細書において、遺伝子(例えば、核酸配列、アミノ酸配列など)の「類似性」とは、上記相同性において、保存的置換をポジティブ(同一)とみなした場合の、2以上の遺伝子配列の、互いに対する同一性の程度をいう。従って、保存的置換がある場合は、その保存的置換の存在に応じて相同性と類似性とは異なる。また、保存的置換がない場合は、相同性と類似性とは同じ数値を示す。
本明細書では、アミノ酸配列および塩基配列の類似性、同一性および相同性の比較は、配列分析用ツールであるFASTAを用い、デフォルトパラメータを用いて算出される。
本明細書において「フラグメント」とは、全長のポリペプチドまたはポリヌクレオチド(長さがn)に対して、1〜n−1までの配列長さを有するポリペプチドまたはポリヌクレオチドをいう。フラグメントの長さは、その目的に応じて、適宜変更することができ、例えば、その長さの下限としては、ポリペプチドの場合、3、4、5、6、7、8、9、10、15,20、25、30、40、50およびそれ以上のアミノ酸が挙げられ、ここの具体的に列挙していない整数で表される長さ(例えば、11など)もまた、下限として適切であり得る。また、ポリヌクレオチドの場合、5、6、7、8、9、10、15,20、25、30、40、50、75、100およびそれ以上のヌクレオチドが挙げられ、ここの具体的に列挙していない整数で表される長さ(例えば、11など)もまた、下限として適切であり得る。本明細書において、ポリペプチドおよびポリヌクレオチドの長さは、上述のようにそれぞれアミノ酸または核酸の個数で表すことができるが、上述の個数は絶対的なものではなく、同じ機能を有する限り、上限または下限としての上述の個数は、その個数の上下数個(または例えば上下10%)のものも含むことが意図される。そのような意図を表現するために、本明細書では、個数の前に「約」を付けて表現することがある。しかし、本明細書では、「約」のあるなしはその数値の解釈に影響を与えないことが理解されるべきである。本明細書において有用なフラグメントの長さは、そのフラグメントの基準となる全長タンパク質の機能のうち少なくとも1つの機能が保持されているかどうかによって決定され得る。
本明細書において「単離された」生物学的因子(例えば、核酸またはタンパク質など)とは、その生物学的因子が天然に存在する生物体の細胞内の他の生物学的因子(例えば、核酸である場合、核酸以外の因子および目的とする核酸以外の核酸配列を含む核酸;タンパク質である場合、タンパク質以外の因子および目的とするタンパク質以外のアミノ酸配列を含むタンパク質など)から実質的に分離または精製されたものをいう。「単離された」核酸およびタンパク質には、標準的な精製方法によって精製された核酸およびタンパク質が含まれる。したがって、単離された核酸およびタンパク質は、化学的に合成した核酸およびタンパク質を包含する。
本明細書において「精製された」生物学的因子(例えば、核酸またはタンパク質など)とは、その生物学的因子に天然に随伴する因子の少なくとも一部が除去されたものをいう。したがって、通常、精製された生物学的因子におけるその生物学的因子の純度は、その生物学的因子が通常存在する状態よりも高い(すなわち濃縮されている)。
本明細書中で使用される用語「精製された」および「単離された」は、好ましくは少なくとも75重量%、より好ましくは少なくとも85重量%、よりさらに好ましくは少なくとも95重量%、そして最も好ましくは少なくとも98重量%の、同型の生物学的因子が存在することを意味する。
本明細書において、「ストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド」とは、当該分野で慣用される周知の条件をいう。本発明のポリヌクレオチド中から選択されたポリヌクレオチドをプローブとして、コロニー・ハイブリダイゼーション法、プラーク・ハイブリダイゼーション法あるいはサザンブロットハイブリダイゼーション法等を用いることにより、そのようなポリヌクレオチドを得ることができる。具体的には、コロニーあるいはプラーク由来のDNAを固定化したフィルターを用いて、0.7〜1.0MのNaCl存在下、65℃でハイブリダイゼーションを行った後、0.1〜2倍濃度のSSC(saline−sodium citrate)溶液(1倍濃度のSSC溶液の組成は、150mM 塩化ナトリウム、15mM クエン酸ナトリウムである)を用い、65℃条件下でフィルターを洗浄することにより同定できるポリヌクレオチドを意味する。ハイブリダイゼーションは、Molecular Cloning 2nd ed.,Current Protocols in Molecular Biology,Supplement 1〜38、DNA Cloning 1:Core Techniques,A Practical Approach,Second Edition,Oxford University Press(1995)等の実験書に記載されている方法に準じて行うことができる。ここで、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする配列からは、好ましくは、A配列のみまたはT配列のみを含む配列が除外される。「ハイブリダイズ可能なポリヌクレオチド」とは、上記ハイブリダイズ条件下で別のポリヌクレオチドにハイブリダイズすることができるポリヌクレオチドをいう。ハイブリダイズ可能なポリヌクレオチドとして具体的には、本発明で具体的に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするDNAの塩基配列と少なくとも60%以上の相同性を有するポリヌクレオチド、好ましくは80%以上の相同性を有するポリヌクレオチド、さらに好ましくは95%以上の相同性を有するポリヌクレオチドを挙げることができる。
本明細書において「高度にストリンジェントな条件」は、核酸配列において高度の相補性を有するDNA鎖のハイブリダイゼーションを可能にし、そしてミスマッチを有意に有するDNAのハイブリダイゼーションを除外するように設計された条件をいう。ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーは、主に、温度、イオン強度、およびホルムアミドのような変性剤の条件によって決定される。このようなハイブリダイゼーションおよび洗浄に関する「高度にストリンジェントな条件」の例は、0.0015M塩化ナトリウム、0.0015M クエン酸ナトリウム、65〜68℃、または0.015M 塩化ナトリウム、0.0015Mクエン酸ナトリウム、および50% ホルムアミド、42℃である。このような高度にストリンジェントな条件については、Sambrooket al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory(ColdSpring Harbor,N,Y.1989);およびAnderson et al.、Nucleic Acid Hybridization:a Practical approach、IV、IRL Press Limited(Oxford,England).Limited,Oxford,Englandを参照のこと。必要により、よりストリンジェントな条件(例えば、より高い温度、より低いイオン強度、より高いホルムアミド、または他の変性剤)を、使用してもよい。他の薬剤が、非特異的なハイブリダイゼーションおよび/またはバックグラウンドのハイブリダイゼーションを減少する目的で、ハイブリダイゼーション緩衝液および洗浄緩衝液に含まれ得る。そのような他の薬剤の例としては、0.1%ウシ血清アルブミン、0.1%ポリビニルピロリドン、0.1%ピロリン酸ナトリウム、0.1%ドデシル硫酸ナトリウム(NaDodSOまたはSDS)、Ficoll、Denhardt溶液、超音波処理されたサケ精子DNA(または別の非相補的DNA)および硫酸デキストランであるが、他の適切な薬剤もまた、使用され得る。これらの添加物の濃度および型は、ハイブリダイゼーション条件のストリンジェンシーに実質的に影響を与えることなく変更され得る。ハイブリダイゼーション実験は、通常、pH6.8〜7.4で実施されるが;代表的なイオン強度条件において、ハイブリダイゼーションの速度は、ほとんどpH独立である。Anderson et al.、NucleicAcid Hybridization:a Practical Approach、第4章、IRL Press Limited(Oxford,England)を参照のこと。
DNA二重鎖の安定性に影響を与える因子としては、塩基の組成、長さおよび塩基対不一致の程度が挙げられる。ハイブリダイゼーション条件は、当業者によって調整され得、これらの変数を適用させ、そして異なる配列関連性のDNAがハイブリッドを形成するのを可能にする。完全に一致したDNA二重鎖の融解温度は、以下の式によって概算され得る。
(℃)=81.5+16.6(log[Na])+0.41(%G+C)−600/N−0.72(%ホルムアミド)
ここで、Nは、形成される二重鎖の長さであり、[Na]は、ハイブリダイゼーション溶液または洗浄溶液中のナトリウムイオンのモル濃度であり、%G+Cは、ハイブリッド中の(グアニン+シトシン)塩基のパーセンテージである。不完全に一致したハイブリッドに関して、融解温度は、各1%不一致(ミスマッチ)に対して約1℃ずつ減少する。
本明細書において「中程度にストリンジェントな条件」とは、「高度にストリンジェントな条件」下で生じ得るよりも高い程度の塩基対不一致を有するDNA二重鎖が、形成し得る条件をいう。代表的な「中程度にストリンジェントな条件」の例は、0.015M塩化ナトリウム、0.0015M クエン酸ナトリウム、50〜65℃、または0.015M 塩化ナトリウム、0.0015M クエン酸ナトリウム、および20%ホルムアミド、37〜50℃である。例として、0.015Mナトリウムイオン中、50℃の「中程度にストリンジェントな」条件は、約21%の不一致を許容する。
本明細書において「高度」にストリンジェントな条件と「中程度」にストリンジェントな条件との間に完全な区別は存在しないことがあり得ることが、当業者によって理解される。例えば、0.015Mナトリウムイオン(ホルムアミドなし)において、完全に一致した長いDNAの融解温度は、約71℃である。65℃(同じイオン強度)での洗浄において、これは、約6%不一致を許容にする。より離れた関連する配列を捕獲するために、当業者は、単に温度を低下させ得るか、またはイオン強度を上昇し得る。
約20ヌクレオチドまでのオリゴヌクレオチドプローブについて、1MNaClにおける融解温度の適切な概算は、Tm=(1つのA−T塩基につき2℃)+(1つのG−C塩基対につき4℃)によって提供される。なお、6×クエン酸ナトリウム塩(SSC)におけるナトリウムイオン濃度は、1Mである(Suggsら、Developmental Biology Using Purified Genes、683頁、BrownおよびFox(編)(1981)を参照のこと)。
配列番号2のアミノ酸配列を有するポリペプチドまたはその改変体もしくはフラグメントなどのタンパク質をコードする天然の核酸は、例えば、配列番号1の核酸配列の一部またはその改変体を含むPCRプライマーおよびハイブリダイゼーションプローブを有するcDNAライブラリーから容易に分離される。配列番号2のアミノ酸配列を有するポリペプチドまたはその改変体もしくはフラグメントなどをコードする核酸は、本質的に1%ウシ血清アルブミン(BSA);500mM リン酸ナトリウム(NaPO);1mM EDTA;42℃の温度で 7% SDS を含むハイブリダイゼーション緩衝液、および本質的に2×SSC(600mM NaCl;60mM クエン酸ナトリウム);50℃の0.1% SDSを含む洗浄緩衝液によって定義される低ストリンジェント条件下、さらに好ましくは本質的に50℃の温度での1%ウシ血清アルブミン(BSA);500mM リン酸ナトリウム(NaPO);15%ホルムアミド;1mM EDTA; 7% SDS を含むハイブリダイゼーション緩衝液、および本質的に50℃の1×SSC(300mM NaCl;30mM クエン酸ナトリウム);1% SDSを含む洗浄緩衝液によって定義される低ストリンジェント条件下、最も好ましくは本質的に50℃の温度での1%ウシ血清アルブミン(BSA);200mM リン酸ナトリウム(NaPO);15%ホルムアミド;1mM EDTA;7%SDSを含むハイブリダイゼーション緩衝液、および本質的に65℃の0.5×SSC(150mM NaCl;15mM クエン酸ナトリウム);0.1% SDSを含む洗浄緩衝液によって定義される低ストリンジェント条件下に配列番号1に示す配列またはその一部とハイブリダイズし得る。
本明細書において配列(アミノ酸または核酸など)の「同一性」、「相同性」および「類似性」のパーセンテージは、比較ウィンドウで最適な状態に整列された配列2つを比較することによって求められる。ここで、ポリヌクレオチド配列またはポリペプチド配列の比較ウィンドウ内の部分には、2つの配列の最適なアライメントについての基準配列(他の配列に付加が含まれていればギャップが生じることもあるが、ここでの基準配列は付加も欠失もないものとする)と比較したときに、付加または欠失(すなわちギャップ)が含まれる場合がある。同一の核酸塩基またはアミノ酸残基がどちらの配列にも認められる位置の数を求めることによって、マッチ位置の数を求め、マッチ位置の数を比較ウィンドウ内の総位置数で割り、得られた結果に100を掛けて同一性のパーセンテージを算出する。検索において使用される場合、相同性については、従来技術において周知のさまざまな配列比較アルゴリズムおよびプログラムの中から、適当なものを用いて評価する。このようなアルゴリズムおよびプログラムとしては、TBLASTN、BLASTP、FASTA、TFASTAおよびCLUSTALW(Pearson and Lipman,1988,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85(8):2444−2448、 Altschul et al.,1990,J.Mol.Biol.215(3):403−410、Thompson et al.,1994,Nucleic Acids Res.22(2):4673−4680、Higgins et al.,1996,Methods Enzymol.266:383−402、Altschul et al.,1990,J.Mol.Biol.215(3):403−410、Altschul et al.,1993,Nature Genetics 3:266−272)があげられるが、何らこれに限定されるものではない。特に好ましい実施形態では、従来技術において周知のBasic Local Alignment Search Tool(BLAST)(たとえば、Karlin and Altschul,1990,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:2267−2268、Altschul et al.,1990,J.Mol.Biol.215:403−410、Altschul et al.,1993,Nature Genetics 3:266−272、Altschul et al.,1997,Nuc.Acids Res.25:3389−3402を参照のこと)を用いてタンパク質および核酸配列の相同性を評価する。特に、5つの専用BLASTプログラムを用いて以下の作業を実施することによって比較または検索が達成され得る。
(1) BLASTPおよびBLAST3でアミノ酸のクエリー配列をタンパク質配列データベースと比較;
(2) BLASTNでヌクレオチドのクエリー配列をヌクレオチド配列データベースと比較;
(3) BLASTXでヌクレオチドのクエリー配列(両方の鎖)を6つの読み枠で変換した概念的翻訳産物をタンパク質配列データベースと比較;
(4) TBLASTNでタンパク質のクエリー配列を6つの読み枠(両方の鎖)すべてで変換したヌクレオチド配列データベースと比較;
(5) TBLASTXでヌクレオチドのクエリ配列を6つの読み枠で変換したものを、6つの読み枠で変換したヌクレオチド配列データベースと比較。
BLASTプログラムは、アミノ酸のクエリ配列または核酸のクエリ配列と、好ましくはタンパク質配列データベースまたは核酸配列データベースから得られた被検配列との間で、「ハイスコアセグメント対」と呼ばれる類似のセグメントを特定することによって相同配列を同定するものである。ハイスコアセグメント対は、多くのものが従来技術において周知のスコアリングマトリックスによって同定(すなわち整列化)されると好ましい。好ましくは、スコアリングマトリックスとしてBLOSUM62マトリックス(Gonnet et al.,1992,Science 256:1443−1445、Henikoff and Henikoff,1993,Proteins 17:49−61)を使用する。このマトリックスほど好ましいものではないが、PAMまたはPAM250マトリックスも使用できる(たとえば、Schwartz and Dayhoff,eds.,1978,Matrices for Detecting Distance Relationships: Atlas of Protein Sequence and Structure,Washington: National Biomedical Research Foundationを参照のこと)。BLASTプログラムは、同定されたすべてのハイスコアセグメント対の統計的な有意性を評価し、好ましくはユーザー固有の相同率などのユーザーが独自に定める有意性の閾値レベルを満たすセグメントを選択する。統計的な有意性を求めるKarlinの式を用いてハイスコアセグメント対の統計的な有意性を評価すると好ましい(Karlin and Altschul,1990,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:2267−2268参照のこと)。
本明細書における「プライマー」とは、高分子合成酵素反応において、合成される高分子化合物の反応の開始に必要な物質をいう。核酸分子の合成反応では、合成されるべき高分子化合物の一部の配列に相補的な核酸分子(例えば、DNAまたはRNAなど)が用いられ得る。
通常プライマーとして用いられる核酸分子としては、目的とする遺伝子の核酸配列と相補的な、少なくとも8の連続するヌクレオチド長の核酸配列を有するものが挙げられる。そのような核酸配列は、好ましくは、少なくとも9の連続するヌクレオチド長の、より好ましく10の連続するヌクレオチド長の、さらに好ましくは11の連続するヌクレオチド長の、12の連続するヌクレオチド長の、13の連続するヌクレオチド長の、14の連続するヌクレオチド長の、15の連続するヌクレオチド長の、16の連続するヌクレオチド長の、17の連続するヌクレオチド長の、18の連続するヌクレオチド長の、19の連続するヌクレオチド長の、20の連続するヌクレオチド長の、25の連続するヌクレオチド長の、30の連続するヌクレオチド長の、40の連続するヌクレオチド長の、50の連続するヌクレオチド長の、核酸配列であり得る。プライマーとして使用される核酸配列には、上述の配列に対して、少なくとも70%相同な、より好ましくは、少なくとも80%相同な、さらに好ましくは、90%相同な、最も好ましくは95%相同な核酸配列が含まれる。プライマーとして適切な配列は、合成(増幅)が意図される配列の性質によって変動し得るが、当業者は、意図される配列に応じて適宜プライマーを設計することができる。そのようなプライマーの設計は当該分野において周知であり、手動でおこなってもよくコンピュータプログラム(例えば、LASERGENE,PrimerSelect,DNAStar)を用いて行ってもよい。
本明細書において、ポリペプチドまたはポリヌクレオチドの「置換、付加または欠失」とは、もとのポリペプチドまたはポリヌクレオチドに対して、それぞれアミノ酸もしくはその代替物、またはヌクレオチドもしくはその代替物が、置き換わること、付け加わることまたは取り除かれることをいう。このような置換、付加または欠失の技術は、当該分野において周知であり、そのような技術の例としては、部位特異的変異誘発技術などが挙げられる。置換、付加または欠失は、1つ以上であれば任意の数でよく、そのような数は、その置換、付加または欠失を有する改変体において目的とする機能(例えば、ホルモン、サイトカインの情報伝達機能など)が保持される限り、多くすることができる。例えば、そのような数は、1または数個であり得、そして好ましくは、全体の長さの20%以内、10%以内、または100個以下、50個以下、25個以下などであり得る。
本明細書において用いられる分子生物学的手法、生化学的手法、微生物学的手法は、当該分野において周知であり慣用されるものであり、例えば、Sambrook J.et al.(1989).Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harborおよびその3rd Ed.(2001);Ausubel,F.M.(1987).Current Protocols in Molecular Biology,Greene Pub.Associates and Wiley−Interscience;Ausubel,F.M.(1989).Short Protocols in Molecular Biology:A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology,Greene Pub.Associat ES and Wiley−Interscience;Innis,M.A.(1990).PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications,Academic Press;Ausubel,F.M.(1992).Short Protocols in Molecular Biology:A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology,Greene Pub.Associates;Ausubel,F.M.(1995).Short Protocols in Molecular Biology:A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology,Greene Pub.Associates;Innis,M.A.et al.(1995).PCR Strategies,Academic Press;Ausubel,F.M.(1999).Short Protocols in Molecular Biology:A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology,Wiley,and annual updates;Sninsky,J.J.et al.(1999).PCR Applications:Protocols for Functional Genomics,Academic Press、別冊実験医学「遺伝子導入&発現解析実験法」羊土社、1997などに記載されており、これらは本明細書において関連する部分(全部であり得る)が参考として援用される。
人工的に合成した遺伝子を作製するためのDNA合成技術および核酸化学については、例えば、Gait,M.J.(1985).Oligonucleotide Synthesis:A Practical Approach,IRLPress;Gait,M.J.(1990).Oligonucleotide Synthesis:A Practical Approach,IRL Press;Eckstein,F.(1991).Oligonucleotides and Analogues:A Practical Approac,IRL Press;Adams,R.L.et al.(1992).The Biochemistry of the Nucleic Acids,Chapman&Hall;Shabarova,Z.et al.(1994).Advanced Organic Chemistry of Nucleic Acids,Weinheim;Blackburn,G.M.et al.(1996).Nucleic Acids in Chemistry and Biology,Oxford University Press;Hermanson,G.T.(1996).Bioconjugate Techniques,Academic Pressなどに記載されており、これらは本明細書において関連する部分が参考として援用される。
本明細書において核酸の存在を確認するには、放射能法、蛍光法、ノーザンブロット法、ドットブロット法、PCR法などの分子生物学的測定方法を含む任意の適切な方法により評価され得る。
「抗体」は、抗体およびそのフラグメント(好ましくは、抗原結合フラグメント)を包含するが、これらに限定されない。この用語は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、二重特異性抗体、Fab抗体フラグメント、F(ab)抗体フラグメント、Fv抗体フラグメント(例えば、VまたはV)、単鎖Fv抗体フラグメント、およびdsFv抗体フラグメントを包含する。さらに、本発明の抗体分子は、完全ヒト抗体、マウス抗体、ラット抗体、ウサギ抗体、ヤギ抗体、ニワトリ抗体、ヒト化抗体、またはキメラ抗体であり得る。本発明の抗体は、配列番号2のアミノ酸配列からなるポリペプチドに、特異的に反応する。
本発明の遺伝子は、siRNAを用いてその発現をノックダウン(抑制)することが可能である。所定の遺伝子からsiRNAを調製する方法は周知であり、例えば、当該分野で公知のsiRNA提供業者(例えば、株式会社 ニッポンイージーティー、富山、日本)により、アニーリングしている2本鎖の合成siRNAを入手することができる。その合成siRNAをRNAseフリーの溶液に溶解し、最終濃度が20μMになるように調整し、その後細胞へ導入する。siRNAを調製する場合には、例えば、(1)GまたはCが連続して4つ以上存在しない、(2)AまたはTが連続して4つ以上存在しない、(3)GあるいはCが9塩基以上存在しない、などの条件を加えてもよい。本発明のsiRNAは、19塩基長、20塩基長、21塩基長、22塩基長、23塩基長、24塩基長、25塩基長、26塩基長、27塩基長、28塩基長、29塩基長、または30塩基長である。本発明のsiRNAは、好ましくは、19塩基長である。本発明のsiRNAはまた、好ましくは20塩基長である。本発明のsiRNAはまた、好ましくは21塩基長である。本発明のsiRNAはまた、好ましくは22塩基長である。本発明のsiRNAはまた、好ましくは23塩基長である。本発明のsiRNAはまた、好ましくは24塩基長である。
用語「発現する」および「発現」は、遺伝子、RNA配列もしくはDNA配列中の情報が明らかになるのを可能にすることまたはそれを引き起こすこと(例えば、対応する遺伝子の転写および翻訳に関与する細胞機能を活性化することによって、タンパク質を生成すること)を意味する。DNA配列は、細胞中でかまたは細胞によって、「発現生成物」(例えば、RNA(例えば、mRNA)またはタンパク質)を形成するように発現される。その発現生成物自体はまた、その細胞によって「発現される」と言われ得る。
用語「形質転換」とは、核酸を細胞中に導入することを意味する。導入される遺伝子または配列は、「クローン」と呼ばれ得る。その導入されるDNAまたはRNAを受ける宿主細胞は、「形質転換」されており、これは、「形質転換体」または「クローン」である。宿主細胞に導入されるDNAまたはRNAは、任意の供給源由来であり得、宿主細胞と同じ属または種の細胞由来であっても、異なる属または種の細胞由来であってもよい。
用語「ベクター」は、宿主を形質転換し、必要に応じて導入された配列の発現および/または複製を促進するように、DNA配列またはRNA配列が宿主細胞中に導入され得る媒体(例えば、プラスミド)を包含する。
本発明において使用され得るベクターとしては、プラスミド、ウイルス、バクテリオファージ、組込み可能なDNAフラグメント、および宿主ゲノム中への核酸の導入を促進し得る他の媒体が挙げられる。プラスミドは、最も一般的に使用される形態のベクターであるが、同様の機能を提供しかつ当該分野で公知であるかまたは公知となる他のすべての形態のベクターが、本明細書中で野使用のために適切である。例えば、Pouwelsら、Cloning Vectors:A Laboratory Manual,1985 and Supplements,Elsevier,N.Y.およびRodriguezら、(編),Vectors:A Survey of Molecular Cloning Vectors and Their Uses 1988,Buttersworth,Boston,MAを参照のこと。
用語「発現系」とは、適切な条件下で、そのベクターにより保有されて宿主細胞中に導入されるタンパク質または核酸を発現し得る、宿主細胞および適合性ベクターを意味する。一般的な発現系としては、E.coli宿主細胞およびプラスミドベクター、昆虫宿主細胞およびバキュロウイルスベクター、ならびに哺乳動物宿主細胞およびベクターが挙げられる。
本発明の配列番号2に記載のポリペプチドをコードする核酸の発現は、好ましくは真核生物細胞において従来の方法によって実行され得る。核酸を発現するために適切な宿主細胞としては、高等真核生物が挙げられ、動物細胞(非哺乳動物起源(例えば、昆虫細胞)および哺乳動物起源(例えば、ヒト、霊長類、および齧歯類)の両方の動物細胞)由来の樹立された組織培養細胞株を包含する。
高等真核生物組織培養細胞もまた、本発明の配列番号2に記載のポリペプチドの組換え生成のために使用され得る。任意の高等真核生物組織培養細胞株(昆虫バキュロウイルス発現系が挙げられる)が使用され得るが、哺乳動物細胞が、好ましい。このような細胞の形質転換、トランスフェクションおよび増殖は、慣用的手順となっている。有用な細胞株の例としては、HeLa細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株、J774細胞、Caco2細胞、ラット乳児腎臓(BRK)細胞株、昆虫細胞株、鳥類細胞株、およびサル(COS)細胞株が挙げられる。そのような細胞株のための発現ベクターは、通常は、複製起点、プロモーター、翻訳開始部位、RNAスプライス部位(ゲノムDNAが使用される場合)、ポリアデニル化部位、および転写終結部位を含む。これらのベクターはまた、通常は、選択遺伝子または増幅遺伝子を含む。適切な発現ベクターは、例えば、アデノウイルス、SV40、パルボウイルス、ワクシニアウイルス、またはサイトメガロウイルスのような供給源に由来するプロモーターを保有する、プラスミド、ウイルス、またはレトロウイルスであり得る。発現ベクターの例としては、pCR(登録商標)3.1、pCDNA1、pCD(Okayamaら、(1985)Mol.Cell Biol.5:1136)、pMC1neo Poly−A(Thomasら、(1987)Cell 51:503)、pREP8、pSVSPORTおよびそれらの誘導体、ならびにバキュロウイルスベクター(例えば、pAC373またはpAC610)が挙げられる。
本発明はまた、本発明の配列番号2に記載のポリペプチドおよび配列番号1に記載のポリヌクレオチドと、第2ポリペプチド部分もしくは第2ポリヌクレオチド部分(「タグ」と呼ばれ得る)とを含む、融合物を包含する。本発明の融合ポリペプチドは、例えば、本発明のポリヌクレオチドまたはそのフラグメントを、発現ベクター中に挿入することによって、簡便に構築され得る。本発明の融合物は、精製または検出を容易するタグを含み得る。そのようなタグとしては、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)、ヘキサヒスチジン(His6)タグ、マルトース結合タンパク質(MBP)タグ、赤血球凝集素(HA)タグ、セルロース結合タンパク質(CBP)タグ、およびmycタグが挙げられる。検出可能なタグ(例えば、32P、35S、H、99mTc、123I、111In、68Ga、18F、125I、131I、113mIn、76Br、67Ga、99mTc、123I、111Inおよび68Ga)もまた、本発明のポリペプチドおよびポリヌクレオチドを標識するために使用され得る。このような融合物を構築および使用するための方法は、当該分野で周知である。
本明細書において「作動可能に連結された(る)」とは、所望の配列の発現(作動)がある転写翻訳調節配列(例えば、プロモーター、エンハンサーなど)または翻訳調節配列の制御下に配置されることをいう。プロモーターが遺伝子に作動可能に連結されるためには、通常、その遺伝子のすぐ上流にプロモーターが配置されるが、必ずしも隣接して配置される必要はない。
本明細書において、核酸分子を細胞に導入する技術は、どのような技術でもよく、例えば、形質転換、形質導入、トランスフェクションなどが挙げられる。そのような核酸分子の導入技術は、当該分野において周知であり、かつ、慣用されるものであり、例えば、Ausubel F.A.ら編(1988)、Current Protocols in Molecular Biology、Wiley、New York、NY;Sambrook Jら(1987)Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd Ed.およびその第三版,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY、別冊実験医学「遺伝子導入&発現解析実験法」羊土社、1997などに記載される。遺伝子の導入は、ノーザンブロット、ウェスタンブロット分析のような本明細書に記載される方法または他の周知慣用技術を用いて確認することができる。
また、ベクターの導入方法としては、細胞にDNAを導入する上述のような方法であればいずれも用いることができ、例えば、トランスフェクション、形質導入、形質転換など(例えば、リン酸カルシウム法、リポソーム法、DEAEデキストラン法、エレクトロポレーション法、パーティクルガン(遺伝子銃)を用いる方法など)が挙げられる。
(アスパラギン酸輸送タンパク質の活性調節剤のスクリーニング法)
本発明のタンパク質を使用する種々の方法によって、アスパラギン酸輸送タンパク質の活性調節剤をスクリーニングすることが可能である。例えば、
(a)リポソームにATPase(例えば、液胞型ATPase)と本発明の膜タンパク質を再構成し、
(b)そのリポソームに(1)放射性標識したアスパラギン酸のみ、(2)放射性標識したアスパラギン酸と候補薬剤をそれぞれ添加してインキュベートし、
(c)リポソームを遠心して沈澱させ、(1)の場合と(2)の場合とで、そのリポソームに取り込まれた放射性標識アスパラギン酸の量を比較し、
(d)その候補薬剤がアスパラギン酸輸送活性に影響を与えたか否かを決定する
ことによって、アスパラギン酸輸送タンパク質の活性調節剤をスクリーニングすることが可能である。
あるいは、
(a)本発明の膜タンパク質を発現する細胞を調製し(例えば、本発明の遺伝子を用いて形質転換する)、
(b)その細胞に、(1)放射性標識したアスパラギン酸のみ、(2)放射性標識したアスパラギン酸と候補薬剤をそれぞれ添加してインキュベートし、
(c)細胞を破壊し、膜画分を調製し、(1)の場合と(2)の場合とで、膜画分に存在する放射性標識アスパラギン酸の量を比較し、
(d)その候補薬剤がアスパラギン酸輸送活性に影響を与えたか否かを決定する
ことによって、アスパラギン酸輸送タンパク質の活性調節剤をスクリーニングすることが可能である。
以下に、実施例に基づいて本発明を説明するが、以下の実施例は、例示の目的のみに提供される。従って、本発明の範囲は、上記発明の詳細な説明にも下記実施例にも限定されるものではなく、請求の範囲によってのみ限定される。
これまでの知見によると、シナプス小胞において、アスパラギン酸単独で蓄積されている例はない。全てアスパラギン酸とグルタミン酸の両方が共存していることをみいだすことができる。従って、本発明者らは、シナプス小胞におけるアスパラギン酸を濃縮する機構は、少なくともグルタミン酸輸送機構とは異なる機構によって輸送されるという従来の知見(非特許文献3)に反する仮説として、仮想的な小胞型アスパラギン酸トランスポーターVaspTがアスパラギン酸の他グルタミン酸も輸送基質とすると考えることができるという仮説を立て、アスパラギン酸トランスポーターの同定を試みた。
本発明者らはVGLUTのグルタミン酸輸送の試験管内測定法を確立し、その輸送の分子機構を世界に先駆け明らかにした(J.Biol. Chem., Vol.281, Issue 51, 39499-39506, December 22, 2006)。この方法は基本的に全てのトランスポーターの試験管内での機能測定法として応用可能である。具体的には昆虫細胞において任意のトランスポーターを大量発現させ精製する。精製したトランスポーターを大腸菌より精製したプロトンポンプとともにリポソームに組み込み輸送を測定する方法である。この方法によりVGLUTが電位依存性のグルタミン酸トランスポーターである以外にNa依存性のリン酸トランスポーターでもあることを証明した(J.Biol.Chem., Vol. 281, Issue 51, 39499-39506, December22, 2006)。この結果は一つのトランスポーターに少なくとも2つの独立した輸送機構が存在することを初めて示した点で画期的である。この性質を多芸性versatilityと呼ぶ。我々はこの発見に基づき仮想的なVaspTの性質を次のように推理した。(1)これまでに見つかっていないということは、既知のトランスポーターにその候補がふくまれている。(2)アスパラギン酸はアニオンなのでVaspTはアニオントランスポーターの一種である。(3)グルタミン酸も輸送するはずなのでそれはVGLUTに近い性質を持っているに違いない。(4)多芸性という概念を導入すればVGLUT以外の他のSLC17AファミリーのメンバーがVaspTである可能性がでてくる。
今回、この可能性を試験し、我々の予想が的中していることを発見した。すなわち、SLC17AのメンバーのうちSLC17A5であるシアリンがVaspTそのものであることを発見した。シアリンはリソゾームのシアル酸トランスポーターとして知られている。シアリンの機能低下によりリソゾーム病の一種であるシアル酸蓄積症(sialidosis,infantilesialic acid storage disease, Salla disease)が発症する。シアリンはリソゾーム以外にもひろく脳を中心に多くの組織とオルガネラに発現している(Yarovayaeta1, 2005、J. Neurobiol Dis. 19, 351-365)。従って、シアリンはシアル酸トランスポーター以外の生理機能を持つことが予想される。その機能の少なくとも一つが本発明のアスパラギン酸輸送であることが本発明において判明した。具体的には、以下の実施例1以降の実験を行った。
(実施例1:シアリンの再構成)
(PCR)
(マウスおよびヒトのシアリンcDNAのクローン化)
以下のプライマーを用いたPCRによりマウスおよびヒトシアリンcDNAを得た。
5’-caccatgaggcccctgcttcggg-3’(配列番号3)マウスシアリンセンスプライマー
5’-ccacggacacagaaactga-3’(配列番号4)マウスシアリンセンスプライマー
5’-caccatgaggtctccggttcgag-3’(配列番号5)ヒトシアリンセンスプライマー
5’-tcagtgtctgtgtccatggt-3’(配列番号6)ヒトシアリンアンチセンスプライマー
PCR反応は、94℃ 2分の後、94℃ 45秒、56℃ 45秒、および、72℃ 2分を35サイクル行い、次に、72℃ 5分インキュベートし、ExTaqBuffer (Takara)、0.25 mM dNTP mix、1.6 pmol/μl Primer、0.5 U Ex Taq (Takara)を加えてtotalvolume16 μlにした。
pENTR/D-TOPO クローニングキット (No.K2400-20, Invitrogen)を用いてエントリーベクターにPCR産物を組み込んだ。方法は付属のプロトコールに準拠して行った。
(部位特異的変異体の作成)
プライマーとして、以下の配列のプライマーを用いた:
5’-agctatgcgggccatgtgg-3’、(配列番号7)マウスH183R1st PCRセンスプライマー
5’-accacagaggatcatgcataacc-3’(配列番号8)マウスH183R1st PCR アンチセンスプライマー
5’-gtaaaacgacggccagtc-3’(配列番号9)マウスH183R2nd PCRセンスプライマー。
1st PCR反応は、94℃ 2分の後、94℃ 45秒、55℃ 45秒、72℃ 1分を35サイクル
繰り返し、そして、72℃ 3分保温した。反応溶液は、ExTaq Buffer (Takara)、0.15 mM dNTP mix、1.6 pmol/μlPrimer、0.5 U Ex Taq (Takara)を加えてtotalvolume 16 μlにした。
2nd PCR反応は、94℃ 2分の加熱後、94℃ 45秒、50℃ 1分30秒、72℃ 3分を35サイクル繰り返し、そして、72℃ 5分保温した。反応溶液は、1stPCR産物、ExTaq Buffer(Takara)、0.38 mM dNTP mix、1.3 pmol/μl Primer、0.5 U Ex Taq(Takara)を加えて総容量16μlにした。
(エントリーベクターへの連結)
PCRフラグメントをTOPOクローニングキット(Invitrogen)を用いて、エントリーベクター(pENTR、Invitrogen)に組み込んだ。反応溶液(6μl)は、塩溶液 1μl(Invitrogen)、ベクター 10fmol(Invitrogen)、およびPCR産物 20fmolを含む溶液である。室温で10分間反応させ、シアリンをエントリーベクターに組み込んだ。これをTOPO反応液とした。
(形質転換)
大腸菌Mach−1コンピテントセル(Invitrogen)50μlに上記TOPO反応液2μlを加えた。氷上で30分間放置後、SOC培地(Invitrogen)250μlを添加し、37℃で1時間反応させ、50μg/mlカナマイシンを含むLBプレートに全量を播種した。プレートを37℃で一晩培養し、シングルコロニーをピックアップし、50μg/mlカナマイシンを含むLB培地3mlで一晩培養した。培養した大腸菌からQIAprepSpinMiniprep Kit(Qiagen)を用いて、シアリンを含むベクターを得た。
(実施例2:シアリンの発現および精製)
(pDEST10への組換え)
実施例1で調製したベクターから、LRクロナーゼを用いてシアリンのcDNAをpDEST10ベクターへクローニングした。上記実施例1で調製したプラスミド150mgにpDEST10プラスミド300ngとLRクロナーゼ4μlを加え、25℃で1時間インキュベートし、その後、プロテイナーゼKを2μl加え、37℃で30分間インキュベートした。反応液を用いて、DH5αコンピテント大腸菌を形質転換した。形質転換したDH5α細胞から、QIAprepSpin Miniprep Kit(Qiagen)を用いてプラスミドを回収し
、pDEST10/SLC17A5とした。
(組換えバックミドの作製)
BaculovirusExpression System with Gateway Technology(Invitrogen)を用いて、pDEST10/SLC17A5からシアリンのcDNAをバキュロウイルスゲノム(バックミド)に組み込んだ。
具体的には、DH10Bacコンピテント細胞(Invitrogen)25μlにpDEST10/SLC17A5 20pgを加え、氷上で30分間放置後、42℃、30秒、SOC培地225μl加えた。37℃で4時間インキュベートし、50μg/mlカナマイシン、7μg/mlゲンタマイシン、10μg/mlテトラサイクリンを含むLBプレートの播種し、37℃で一晩インキュベートした。そしれ、ミニプレップ法にてバックミドを回収した。
(ミニプレップ法;バックミド用)
組換えバックミドの作製に用いたミニプレップ法は、以下の手順で行った。まず、50μg/mlカナマイシン、7μg/mlゲンタマイシン、10μg/mlテトラサイクリンを添加したLB培地3mlに組換えバックミドを有するDH10Bacを植菌し、37℃で培養した。培養した大腸菌を溶液1(50mM グルコース、25mM Tris/HCl pH8.0,10mM EDTA pH8.0)200μl中に懸濁し、次に、溶液2(0.2M NaOH、1% SDS)200μlを加え、転倒混和した。室温で5分間放置後、溶液3(3M KOAc、11.5%(v/v)酢酸)を200μl加え、店頭混和した。そして、4℃で10分間放置した後、遠心(13,000rpm、15分、4℃)し、上清を除いた。沈澱を、さらに、70%エタノールで2回洗浄した。これにTE緩衝液(10mM Tris/HCl pH8.0、1mM EDTA)を無菌的に添加し、4℃に保存した。
(ウイルスの調製)
本実施例に用いたウイルスは、以下の手順によって調製した。まず、35mmのペトリ皿に9×10個のSf9細胞を播種した。培地を、0.35mg/mlの炭酸水素ナトリウムを添加したGrace'sInsect Medium(GIBCO)に交換した後、シアリンを含むバックミド1μgと、cellfectin(Invitrogen)6μlを用い、リポフェクション法にて、Sf9に感染させた。27℃で5時間インキュベートした後、2mlのcompleteTMN-FHに交換し、感染兆候が見られるまで培養し、培地を回収した。これをP1ウイルスとした。そして、100mmペトリ皿に6×10個のSf9細胞を播種し(50%コンフルエント)、10倍段階希釈したウイルス液1mlを添加し、室温で1時間振とうした。completeTMN-FH:4%Sea Plaque Agarose=3:1となるように、混合したペトリ皿の培地を取り除いた後、これを10mlの重層アガロースを用いて27℃で7〜10日密閉して培養し、形成したプラークをピックアップして、再度感染させ、72時間後、この培地をP1ウイルスの場合と同様に回収し、P2ウイルスとした。
(細胞の回収と膜画分の可溶化)
HighFive細胞にP2ウイルスをM.O.I.=1で感染させ、27℃で培養した。感染60時間後の細胞をセルスクレーパーにより回収し、700×g 10分間遠心して上清を取り除いた。これを破壊緩衝液(20mM Tris−HCl pH8.0、100mM 酢酸カリウム、10% グリセロール、5mM DTT、1μg/ml ペプスタチンA(ペプチド研究所)、1μg/ml ロイペプチン(ペプチド研究所))中に懸濁し、再度700×g 10分間遠心して上清を取り除いた。これを破壊緩衝液で懸濁し、超音波処理(TOMYultrasonicdisruptorにて、Output 4、30秒×8回)後、700×g 10分間遠心して上清を回収し、100,000×g 1時間、4℃で超遠心して、得られた沈澱を膜画分とした。この分画を、可溶化緩衝液(20mM MOPS−Tris pH7.0、2%オクチルグルコシド(同仁化学)、10% グリセロール、1μg/ml ペプスタチンA、1μg/ml ロイペプチン)を添加し、ホモジナイザーを用いて懸濁し、100,000×g 30分の遠心操作を行い、その上清を可溶化画分とした。
(アフィニティーカラムを用いたシアリンの精製)
QIAGENNi-NTA super flowレジンをエコノカラムに充填し(1mL;50% スラリー)、蒸留水にて洗浄した後、pH8.0の可溶化緩衝液で平衡化した。ここに上記の可溶化画分を入れ、4℃、4時間攪拌しながら、吸着させた。これを15mlの洗浄緩衝液(20mM MOPS−Tris pH7.0、1%オクチルグルコシド、20% グリセロール、5mM イミダゾール、1μg/ml ペプスタチンA、1μg/ml ロイペプチン)で洗浄し、溶出緩衝液(20mM MOPS−Tris pH7.0、1%オクチルグルコシド、20% グリセロール、60mM イミダゾール、1μg/ml ペプスタチンA、1μg/ml ロイペプチン)を用いて、精製シアリンを溶出した。
(実施例3:F−ATPaseの精製)
Moriyama Yら、J.Biol.Chem.266,22141−22146(1991)に記載の手順に従って、プロトンポンプであるFタンパク質を調製した。
の大量発現プラスミドpBWU13を含有している大腸菌DK8を、0.5%グリセロールを含むTanaka培地(34mM一カリウムリン酸、64mM二カリウムリン酸、20mM硫酸アンモニウム、0.3mM塩化マグネシウム、1μM硫酸鉄、1μM塩化カルシウム、1μM塩化亜鉛、100μg/mlイソロイシン、100μg/mlバリン、2μg/mlチアミン)で培養した後、菌体を回収した。以降の調製を全て4℃で行った。
菌体(DK8/pBWU13)約10gを、40mlの膜調製緩衝液(4℃の50mM
Tris−HCl(pH8.0)、2mM塩化マグネシウム、0,5mM EDTA、1mM PMSF、1μg/mlロイペプチン、1μg/mlペプスタチンA、10%(v/v)グリセロール、1mM DTT)に懸濁し、フレンチプレス(1,500kg/cm)で細胞を破砕した。破砕液を17,000×gにて10分間遠心分離し、得られた上清をさらに210,000×gで1時間20分間遠心分離した。得られた膜小胞の沈澱を、F調製用緩衝液(20mM MOPS/NaOH(pH7.0)、1mM硫酸マグネシウム、1mM DTT、1mM PMSF、0.8%オクチルグルコシド)中に懸濁し、再度遠心分離した。沈澱物として調製した膜小胞60mgを、2%のオクチルグルコシドを含む3mlのF調製用緩衝液中に懸濁し、Fを可溶化した。可溶化溶液を、260,000×gで30分間遠心分離し、上清画分からFを回収した。回収したFを、10%(w/v)〜30%(w/v)のグリセロール密度勾配遠心分離(330,000×gで5時間)によって精製した。グリセロール密度勾配を、1%オクチルグルコシドを含むF調製用緩衝液で作製した。密度勾配遠心後、遠心管の底から10分画に分けて分離し、最初の4画分をFとして回収し、−80℃で保存した。
(実施例4:F−ATPaseと精製シアリンのリポソームへの再構成)
20mgの大豆レシチン(SigmatypeIIS)を緩衝液(20 mM MOPS/NaOH pH 7.0, 0.5 mM DTT)に懸濁し、バスタイプ超音波装置で透明になるまで超音波調製した。調製したリポソームは分注し、-80℃で保存した。
上記実施例3の手法で精製したF−ATPase 90μgと実施例2で精製したシアリン 20μgをリポソーム600μgに混合し、−80℃で15分間静置し、凍結した。ただちにこれを取り出し、迅速に解凍しF緩衝液(20mM MOPS−Tris pH7.0、100mM 酢酸カリウム、5mM 酢酸マグネシウム)にて20倍に希釈し、160,000×gで60分間遠心した。沈澱にF緩衝液 400μlを添加し、ホモジナイズし、再構成プロテオリポソームを得た(図1A)。
(実施例5:再構成プロテオリポソームにおけるシアル酸輸送活性)
(昆虫細胞でのシアリンの発現と精製)
Sf9細胞にウイルスをM.O.I.=1で1時間感染させ、complete TMN-FH培地[Grace’s Insect Medium(GIBCO),10% FBS, 0.35 mg/mL 炭酸水素ナトリウム, 4 mg/mL Yeastlate (GIBCO), 3.3mg/mLlactalbumiin hydrolysate (GIBCO), 100 U/mL penicillin, 100μg/mLstreptomycin,0.25 mg/mL fungizon, pH 6.1]に交換後、27℃で培養した。72時間後、細胞をセルスクレーパーで回収し、700×g,10分,4℃で遠心して上清を除いた。これをDisruption buffer [20 mM Tris-HCl pH 8.0, 100 mM 酢酸ナトリウム,10 %グリセロール,0.5 mM DTT, 10 μg/mL pepstatin A(ペプチド研究所), 10 μg/mL leupeptin (ペプチド
研究所)]で懸濁し、700×g,10分, 4℃で遠心して上清を除いた。これを再びDisruption bufferで懸濁し、TOMY ultrasonicdisruptor によりソニケーション(Output4, 30sec×8回)した後、480×g, 10分, 4℃で遠心して上清を回収し、160,000×g,1 時間, 4℃で超遠心して、得られた沈澱を膜画分とした。この膜画分にSolubilizationbuffer [20 mM MOPS-Tris pH7.0, 2% オクチルグルコシド(同仁化学), 10% グリセロール, 10 μg/mLpepstatin A, 10 μg/mL leupeptin ]を入れ、ホモジナイザーを用いて懸濁し、260,000×g,30分, 4℃の遠心操作を行い、その上清を可溶化画分とした。この可溶化画分をNi-NTAsuper flow レジン (QIAGEN) に撹拌しながら4℃で4時間吸着させた。これを10 mLのWash buffer [20 mMMOPS-Tris pH 7.0, 1% オクチルグルコシド, 20% グリセロール, 5 mM イミダゾール,10 μg/mL pepstatin A,10μg/mL leupeptin]で洗浄し、次いで、2.5 mLのWash buffer+500 mM NaClで洗浄した。再度、5mLのWashbufferで洗浄し、イミダゾールを60mMにした同液(Elution buffer) 3 mLにてシアリンを溶出した。
(シアリンの再構成と輸送活性測定)
精製したシアリン40 μgをリポソーム550 μgに混合し、-80℃にて 15分静置し、凍結した。迅速に解凍し、buffer F [20 mMMOPS-Tris pH 7.0, 100 mM 酢酸カリウム, 5 mM 酢酸マグネシウム ] にて20倍希釈し、200,000×gで遠心した。沈澱にbufferF200 μLを加え、ホモジナイズし、再構成プロテオリポソームを得た。
酸性Reaction Mixture [40 mM MES, 100 mM酢酸カリウム, 5 mM 酢酸マグネシウム, 4 mM 塩化カリウム]あるいは中性ReactionMixture[20 mM MOPS/Tris pH7.0, 100 mM酢酸カリウム, 5 mM 酢酸マグネシウム, 4 mM 塩化カリウム]を27℃でインキュベーションし、終濃度100μMとなるように[3H]-シアル酸(2μCi)を加える。これに再構成プロテオリポソームを1/20倍量加え、反応開始とした。120 μLずつサンプル液を取り、SephadexG-50 fineスピンカラムにアプライし、700x g, 2分, 4℃で遠心した。その溶出液をクリアゾル3 mLに混ぜ、中に含まれる放射能(リポソーム内に取り込まれたシアル酸に相当する)を液体シンチレーションカウンター(Aloka)により計測した。
上記の条件で人工的にpH勾配をかけHと放射性シアル酸のリポソーム内への輸送を測定したところ、シアル酸輸送活性が示された(図1B)。輸送はpHに依存しており変異体(H183R)では輸送活性はなかった。すなわち、当該のトランスポーターはシアリンに他ならないことが確認された。
(実施例6:再構成プロテオリポソームにおけるアスパラギン酸輸送活性)
(シアリンがVaspTであることの実証)
精製したシアリン40μgと精製したFoF1-ATPase 90μgを混合し、これにリポソーム550μgを混合し、-80 ℃にて 15分静置し、凍結した。迅速に解凍し、bufferFにて20倍希釈し、200,000×g,1時間, 4℃で遠心した。沈澱にbuffer F 400μLを加え、ホモジナイズし、再構成プロテオリポソームを得た。
Reaction Mixture [20 mM MOPS/Tris pH7.0, 100 mM酢酸カリウム, 5 mM 酢酸マグネシウム,4 mM 塩化カリウム]を27℃でインキュベーションし、1/10倍量の再構成プロテオリポソームを加え、2分,27℃でインキュベーションした。終濃度2 mMとなるようにATPを加えて1分後、終濃度100μMとなるように[3H]-アスパラギン酸(5μCi)を加え、反応開始とした。120μLずつサンプル液を取り、SephadexG-50 fineスピンカラムにアプライし、700 x g, 2分, 4℃で遠心した。その溶出液をクリアゾル3mLに混ぜ、中に含まれる放射能(リポソーム内に取り込まれたアスパラギン酸に相当する)を液体シンチレーションカウンター(Aloka)により計測した。
(シアリン発現抑制によるアスパラギン酸分泌抑制法)
Sialin siRNAのTargetSequence : caccagaaactcacaagacaa(配列番号10)Negative controlのTargetSequence : AllStars Neg.siRNA (QIAGEN) 3-4週令のWistar系ラットから松果体を単離し、DMEM培地[DMEM(GIBCO), 6% FBS, 55μg/L sodium pyruvate, 1.8mg/mL NaHCO3, 6 mg/mLGlucose, 25 mM HEPES/NaOH (pH 7.4), 100 U/mL penicillin, 100μg/mL streptomycin,0.25 mg/mL fungizon]に入れた。120×g, 5分, 室温で遠心し、上清を除いた。コラゲナーゼ(GIBCO)処理(825units/mL)を37℃,30分行った。120×g, 5分, 室温で遠心し、上清を除き、PBS(-)を加え、同様に遠心した。上清を除き、トリプシン(GIBCO)処理(0.025%)を37℃,20分行った。120×g,5分, 室温で遠心し、上清を除き、培地を加えた。この遠心操作を計3回繰り返した。松果体細胞が2.5×105 cells/3.5cmdishになるようにまき、37℃,10% CO2で培養した。24時間後、培地交換した。48時間後は培地+10μM Ara-Cに培地交換した。96時間後にRNAi処理をした。すなわち、終濃度25nM siRNAとHiPerfectReagent (QIAGEN)を混ぜ、室温で10分静置する。培地交換し、siRNA複合体を加え、ここから72時間培養し、以下の分泌実験を行った。
クレブス反応液 [128 mM NaCl, 1.9 mM KCl, 1.2 mM KH2PO4, 2.4mMCaCl2, 1.3 mM MgSO4, 26 mM NaHCO3, 10mMGlucose, 10mM HEPES/Tris pH7.4, 0.2% BSA]で30分間、プレインキュベーションした。クレブス反応液あるいは高カリウムクレブス反応液[75mMNaCl, 55 mM KCl, 1.2 mM KH2PO4, 2.4 mM CaCl2,1.3mM MgSO4, 26 mM NaHCO3, 10 mM Glucose, 10mMHEPES/TrispH7.4, 0.2% BSA]で一回洗い、1.5 mLの同液を加え、反応開始とした。随時、100μLずつサンプリングし、遠心(フラッシュ)した上清をサンプルとした。
アスパラギン酸およびグルタミン酸はHPLC法にて測定した。アスパラギン酸の測定は、COSMOSIL 5C18-AR II, 4.6×150mm+COSMOSIL5C18-MS II, 4.6×150 mm (nacalai tesque)の逆相カラムと蛍光検出器L-7480(HITACHI)を備えたHPLCで行った。インジェクションは、サンプルと内部標準のHomocysteicacidを29.8 mMo-Phalaldehyde (OPA)、98mM N-Acetyl-L-Cysteine (NAC)、280mMホウ酸ナトリウム(pH9.4)、30%メタノールを含む誘導体化試薬(OPA-NAC)と混ぜ、2分間反応させた後、行った。移動相は、A液[50mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH 5.9)]、B液[80%メタノール(20% A液)]を用いた。
グルタミン酸の測定はCOSMOSIL 5C18-AR II, 4.6mm×150mm (nacalai tesque)の逆相カラムと蛍光検出器L-7480(HITACHI)を備えたHPLCで行った。インジェクションは、サンプルと内部標準のo-phospho-L-serineを3.73mMOPA、18mM MSH、106mMホウ酸ナトリウム(pH9.4)、73.4%メタノールを含む誘導体化試薬(OPA-MSH)と混ぜ、2分間反応させた後、行った。移動相は、A液[2%テトラヒドロフラン, 25 mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH 7.5)]、B液 [65%メタノール]を用いた。
上記の条件でシアリンをプロトンポンプとともにリポソームに組み込み、ATPを添加して、電位依存のアスパラギン酸輸送が起こるかどうか調べた。予想通り、強いアスパラギン酸輸送活性が観察された(図2)。
次に、上記反応条件において、ATPを添加する際に、バリノマイシン(2μM)、ナイジェリシン(2μM)、(NHSO(2mM)、CCCP(1μM)、NaN(1mM)、エバンスブルー(1μM)を添加した。その結果、このアスパラギン酸輸送は電位に依存しており、Hとの共輸送ではないことが判明した。また、低濃度の塩素イオンにより著明に活性化された(図3)。
アスパラギン酸を添加する際に、種々のアミノ酸等の物質を添加して、アスパラギン酸輸送活性およびシアル酸輸送活性を測定した。このシス阻害実験により、シアリンはアスパラギン酸以外にグルタミン酸も輸送すること、アスパラギン酸輸送の基質特異性はHシアル酸共輸送とは全く異なることが判明した。さらに、実際、放射性グルタミン酸が実際に輸送されることも見いだした(図4)。
上記実験を繰り返した結果を以下に示す:
上記の実験では、アスパラギン酸輸送については2.9nmol/分/mgタンパク質、グルタミン酸輸送については2.3nmol/分/mgタンパク質、そして、シアル酸輸送については67nmol/分/mgタンパク質を100%(コントロール)とした。
(実施例7:ノックダウンによるアスパラギン酸トランスポーターによるアスパラギン酸輸送活性の確認) アスパラギン酸分泌の解析が進んでいる松果体を用い、実際に細胞内でシアリンがVaspTとして機能しているかどうか調べた。松果体細胞を培養しRNAi法によリシアリンの発現を抑制、アスパラギン酸の分泌を測定した。松果体細胞のprocessterminal領域にシアリンとアスパラギン酸が共存していることを示した(図5A)
具体的には、3週齢のWisterratオスから松果体を採取し、氷冷した6%FBS(Gibco)を含むD-MEM培地(Gibco)に浸して血管を取り除いた後、細断した。180xg, 2分間遠心を行い、上清を取り除き、0.1%コラゲナーゼ(Gibco)PBS(+)溶液を加えて30分間インキュベートした。180xg2分間遠心を行った後、PBSで1回洗浄し、0.025%トリプシン(Gibco)PBS溶液をペレットに加え、37℃で20分間インキュベートした。さらに180xg、5分間遠心を行い、D-MEM培地で洗浄を3回行った後、0.5-1x106cells/mlになるように同培地を加えた。5μg/mlのポリリジン(SIGMA)水溶液でコートした18x18mmのカバーグラス(岩城ガラス)上に細胞を撒き、37℃の10%CO2インキュベーター中で培養した。
カバーグラス上で1週間培養した松果体細胞をPBSで3回リンスし、培地を取り除いた後、4%パラホルムアルデヒド(ナカライ)を含むPBS(+)溶液(pH7.4)を加え20分間室温で固定した。PBS(+)で1回洗浄し、0.1%TritonX100を含むPBS(+)溶液で30分間インキュベートし可溶化した。PBS(+)で2回洗浄し、2%goat血清(Gibco)と0.5%BSA(SIGMA)を含むPBS溶液を加え、30分間室温でブロッキングした。0.5%BSA (SIGMA)を含むPBSで希釈した抗L-Asp、抗シナプトフィジン(SY38)抗体又は抗シアリン抗体100μlをカバーグラスにのせ室温で1時間反応させた。反応後、PBSで5分、4回洗浄し、0.5%BSA(SIGMA)-PBSで希釈した二次抗体(抗ウサギまたはマウスIgG-FITC、アマシャム)を100μlカバーグラスにのせ室温で1時間反応させた。PBSで5分、4回洗浄し、スライドグラスにマウント剤(IMMUNON)をのせ、カバーグラスを封入した。標本は共焦点レーザー蛍光顕微鏡(OLYMPUSFLUOVIEW又はOLYMPUSLSM-GB200)で観察した。なお、RNAiに使用した配列は、センス側r(CCAGAAACUCACAAGACAA)dTdTであり、アンチセンス側r(UUGUCUUGUGAGUUUCUGG)dTdGであった。
そしてRNAi法によりアスパラギン酸とグルタミン酸の分泌が低下することを見いだした。このことから確かにシアリンは細胞内でVaspTとして機能していると結論できた(図5B)。この方法でグルタミン酸の分泌も若干抑制されている。松果体におけるグルタミン酸濃縮・分泌はVGLUT1とVGLUT2により行われているが、これにさらにVaspTも関与していること、言い換えれば、VaspTはVGLUTとしても機能することを示している。この結果は、シアリンによるアスパラギン酸輸送が実際に生体内で起こっていることを示す。
(実施例8:アスパラギン酸輸送活性の活性調節剤のスクリーニング)
実施例4で調製したプロテオリポソーム16μlとF緩衝液を加え、27℃の水浴において2分間インキュベートした。次に、候補薬物を添加する(約1μM〜10mMの薬物を、ボリュームで1/100程度添加する)。その後に、終濃度2mMとなるようにATPを加え、さらに、終濃度100μMとなるようにアスパラギン酸(5μCi)を加え、反応を開始する。125μlずつサンプル液を分取し、セファデックスG−50ファインスピンカラムにアプライした。180×gで2分間遠心して反応を停止した。溶出液をクリアゾル3mlに溶かし、中に含まれる放射能(リポソームに取り込まれたアスパラギン酸に相当する)を液体シンチレーションカウンターにより計測する。結果を、候補薬物を添加しない場合の結果(例えば、実施例6の結果)と比較することによって、この候補薬剤がアスパラギン酸輸送活性を促進するのか、または阻害/抑制するのかについて決定することができる。
(実施例9:海馬でのシアリンの局在)
抗シアリン抗体を用いたウェスタンブロットによって、シアリンが存在する脳中の領域を検討したところ、海馬P2膜小胞分画にシアリンが存在することが明らかとなった(図6A)。ここで使用した海馬P2膜分画の単離は下記の方法で行った。単離した海馬を20mLのSME緩衝液(0.3Mショ糖、10mMMOPS/Tris pH 7.0.5mM EDTA)でホモジナイズし、これを943×gで8分間遠心した。この上清を17321×gで再度15分間遠心し、沈澱を得た。この沈澱を2mLの同じ緩衝液でホモジナイズした。これを、8mM MOPS/Tris(pH 7.0)緩衝液40mLで希釈し、30分間撹拌した。この溶液を17321×g、15分間遠心し、上清をさらに200,000×gで1時間遠心した。この沈澱を同じ緩衝液で懸濁してP2分画を得た。
海馬について、電子顕微鏡による免疫組織化学解析を行った。図6Bの左図(「Sialin+Syn」)は、抗シナプトフィジン抗体(5 nm 粒子)および抗シアリン抗体(10 nm 金粒子)を用いた結果である。抗シナプトフィジン抗体によるシグナルを矢印で示し、抗シアリン抗体によるシグナルを矢じりで示した。図6Bの中央図(「VGLUT1+Syn」)は、抗シナプトフィジン抗体(5nm 粒子)および抗VGLUT1抗体 (10 nm 金粒子)を用いた結果である。抗シナプトフィジン抗体によるシグナルを矢印で示し、抗VGLUT1抗体によるシグナルを矢じりで示した。図6Bの右図(「Control+Syn」)は、抗シナプトフィジン抗体(5nm 粒子)およびコントロール血清(10 nm 金粒子)を用いた結果である。バーは100nmを示す。これらの結果から、シナプトフィジンを含む小胞上にシアリンが存在している事が判明した(図6B)。
海馬および全脳のP2膜小胞分画では、ATP依存性のグルタミン酸輸送が報告されている。上記図6Aおよび図6Bの結果から、アスパラギン酸輸送活性を有するシアリンが海馬P2膜画分に存在することが示されたので、海馬P2膜画分でのATP依存性のアスパラギン酸輸送活性を試験した。「Control」は、海馬P2膜画分(1.5mg/mLタンパク質)を用い、実施例6に記載の方法によりアスパラギン酸取り込み活性を測定した結果である。「+CCCP」は、「Control」で使用した海馬P2画分に対して、1μMのCCCPを添加して、実施例6に記載の方法によりアスパラギン酸取り込み活性を測定した結果である。「tHA」は、「Control」で使用した海馬P2画分に対して、5mMのtHA(D,L−スレオ β−ヒドロキシアスパルテート)を添加して、実施例6に記載の方法によりアスパラギン酸取り込み活性を測定した結果である。
その結果、海馬P2膜画分でのATP依存性のアスパラギン酸輸送活性が確認された(図6C「海馬」の「アスパラギン酸」)。また、従前報告されているように、海馬P2画分のATP依存性のグルタミン酸輸送活性も確認された(図6C「海馬」の「グルタミン酸」)。
海馬P2画分の代わりに全脳P2画分を用いた場合、ATP依存性のグルタミン酸輸送は同程度であったが、ATP依存性のアスパラギン酸は海馬P2画分と比較して低かった(図6C「全脳」)。
このことは、シアリンによるアスパラギン酸輸送活性は、脳の他の領域と比較して、海馬P2に高いことを示す。
(実施例10:松果体でのシアリンの局在)
抗シアリン抗体を用いたウェスタンブロットによって、シアリンが存在する脳中の領域を検討したところ、松果体画分にシアリンが存在することが明らかとなった(図7A)。
初代培養した松果体細胞を抗アスパラギン酸抗体(L−Asp)、抗シアリン抗体(Sialin)、および、抗シナプトフィジン抗体(Syn)で二重染色した。バーは10μmである。図7B上段の二重染色の結果(Merge)は、抗アスパラギン酸抗体(L−Asp)と抗シナプトフィジン抗体(Syn)とを用いた二重染色の結果を、図7B下段の二重染色の結果(Merge)は、抗シアリン抗体(Sialin)と抗シナプトフィジン抗体(Syn)とを用いて二重染色の結果を示す。二重染色の結果(Merge)中、矢印で示した部分は、各々使用した二種類の抗体によって強く染色された部分である。この結果から、シアリンがアスパラギン酸およびシナプトフィジンと共局在していることが明らかとなった。
松果体におけるシアリンとシナプトフィジンの局在位置について、二重標識免疫電子顕微鏡を用いて、より詳細に解析を行った。図7Cの左図(「Sialin+Syn」)は、抗シナプトフィジン抗体(5 nm 粒子)および抗シアリン抗体(10 nm 金粒子)を用いた結果である。抗シナプトフィジン抗体によるシグナルを矢印で示し、抗シアリン抗体によるシグナルを矢じりで示した。図7Cの中央図(「VGLUT2+Syn」)は、抗シナプトフィジン抗体(5nm 粒子)および抗VGLUT2抗体 (10 nm 金粒子)を用いた結果である。抗シナプトフィジン抗体によるシグナルを矢印で示し、抗VGLUT2抗体によるシグナルを矢じりで示した。図7Cの右図(「Control+Syn」)は、抗シナプトフィジン抗体(5nm 粒子)およびコントロール血清(10 nm 金粒子)を用いた結果である。バーは100nmを示す。これらの結果から、シナプトフィジンを含む小胞上にシアリンが存在している事が判明した(図7C)。シナプトフィジンは、シナプス様微小胞(SLMV)のマーカーであることから、シアリンは、シナプス様微小胞に局在していることが明らかとなった。
培養した松果体細胞でのシアリンの発現がアスパラギン酸輸送活性の原因であることを、siRNAを用いて確認した。培養した松果体細胞に対して、実施例6と同様に、配列番号10のsiRNAを用いてシアリンの発現を特異的に抑制したことを確認した(図7D)。一方、シアリンに対するsiRNAはグルタミン酸トランスポーターであるVGLUT2の発現を抑制しなかった。培養した松果体細胞からのアスパラギン酸放出活性を測定したところ、シアリンsiRNA処理した細胞からのアスパラギン酸放出活性が減少していた(図7E左)。さらに、シアリンsiRNA処理した細胞からのグルタミン酸放出活性もまた、減少していた(図7D「エキソサイトーシス」右)。この結果から、シアリンがアスパラギン酸輸送活性を有することが確認された。さらに、シアリンは、グルタミン酸輸送活性も有することが確認された。
(実施例10:シアリンによるグルタミン酸輸送活性)
実施例6に記載される方法でシアリンをプロトンポンプとともにリポソームに組み込み、ATPを添加して、電位依存のグルタミン酸輸送が起こるかどうか調べた。予想通り、強いグルタミン酸輸送活性が観察された(図8)。
(実施例11:アスパラギン酸輸送における阻害剤の効果)
実施例6と同様の実験条件を用いて、シアリンによるアスパラギン酸輸送活性に対する種々の阻害剤の阻害効果を決定した。シアリンとFoF1−ATPaseを含む再構成リポソームを予め阻害剤とインキュベーションし、次に、2mM ATPを加え、膜電位差を形成させた後、アスパラギン酸輸送活性を測定した。その結果、VGLUTの特異的阻害剤であるエバンスブルー(1μM)によって、アスパラギン酸輸送は阻害された。同じジアゾ系色素であるシカゴスカイブルー(1μM)でも阻害された。また、シアル酸輸送に影響を与えないと報告されているDIDS(10μM)が、アスパラギン酸輸送を著しく阻害した(図9)。
(実施例13:アスパラギン酸輸送における阻害剤の効果)
実施例6では、シアリンとFoF1−ATPaseを再構成することによって、アスパラギン酸の輸送活性を測定した。この再構成系は、従来測定ができなかったアスパラギン酸の輸送活性を測定できる再構成系という点で画期的なものである。しかしながら、上記再構成系は、シアリン以外の成分としてFoF1−ATPaseを含むため、シアリンそのものの活性を測定する際にノイズを生じる可能性は完全には否定できない。そこで、FoF1−ATPaseを用いることなく、シアリンのみを再構成したリポソームでのアスパラギン酸輸送活性測定系を構築した。
精製したシアリン40μgにリポソーム500μgを混合し、-80℃にて 15分静置し、凍結した。迅速に解凍し、シアリン再構成緩衝液(20 mM MOPS/Tris, pH 7.0, 100 mM 酢酸ナトリウム, 5 mM酢酸マグネシウム)にて20倍希釈し、200,000×g, 1時間, 4℃で遠心した。沈澱にシアリン再構成緩衝液 400μLを加え、ホモジナイズし、再構成プロテオリポソームを得た。
この再構成シアリンに対して、2mM バリノマイシンと[H]−アスパラギン酸を含む反応液(20 mM MOPS/Tris, pH 7.0, 150 mM 酢酸カリウム, 5 mM 酢酸マグネシウム, 4 mM KCl)を添加して、アスパラギン酸取り込み活性を測定した(図10の「+Val」)。コントロールとして、バリノマイシンを添加しない場合のアスパラギン酸取り込み活性を測定した(図10の「−Val」)。その結果、図10に示されるように、FoF1−ATPaseのようなプロトンポンプを用いずとも、シアリンタンパク質のみを再構成することによって、アスパラギン酸輸送活性を測定することができた。理論に拘束されることは望まないが、リポソーム内のカリウム濃度が低く、リポソーム外のカリウム濃度が低い場合に、バリノマイシンの添加によってリポソーム外のバリノマイシンがリポソーム内に輸送され、その結果、膜電位が生じ、その膜電位を駆動力として、シアリンがアスパラギン酸を輸送したものと考えられる。この方法は、シアリンそのものの輸送活性を測定できる点で、画期的な方法である。
(実施例14:サラ病(R39C)またはISSD(H183R)変異を持つシアリンの輸送活性)
サラ病患者では、シアリンのArg39がCysに変異している(以下、「R39Cシアリン」という)。また、ISSD(乳児型シアル酸蓄積症)では、シアリンのHis183がArgに変異している(以下、「H183Rシアリン」という)。これら変異シアリンの輸送活性を試験した。
実施例6における野生型シアリンの実験と同様の方法で、R39CシアリンおよびH183Rシアリンの発現およびリポソームへの再構成を行ない、アスパラギン酸、グルタミン酸、およびシアル酸の取り込み活性(輸送活性)を試験した。膜電位依存性のアスパラギン酸、グルタミン酸輸送活性とpH勾配依存性のシアル酸輸送活性を、野生型シアリンの活性に対する相対値で示した。R39Cシアリン(サラ病)ではアスパラギン酸、グルタミンン酸輸送活性が無くなり、H183Rシアリン(ISSD)ではシアル酸輸送活性が失われていた(図11)。
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、この実施形態に限定して解釈されるべきものではない。本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。当業者は、本発明の具体的な好ましい実施形態の記載から、本発明の記載および技術常識に基づいて等価な範囲を実施することができることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。
本発明に従って、アスパラギン酸輸送を担うトランスポーターおよびそれをコードする遺伝子が同定された。本発明に従って、そのようなトランスポーターを含む人工膜を用いる、トランスポーターの活性調節剤のスクリーニング法が提供される。さらに、そのようなスクリーニング法によって、アスパラギン酸代謝が関与する疾患の予防剤・治療剤の候補物質をスクリーニングする方法およびそのような候補物質もまた、提供される。

Claims (12)

  1. アスパラギン酸輸送タンパク質の活性調節剤のスクリーニング法であって、
    (a)人工膜であって、
    配列番号1に記載の核酸配列を含む核酸の相補鎖と高度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸であって、アスパラギン酸輸送活性を有するポリペプチドをコードする核酸、
    配列番号1に記載の核酸配列と少なくとも0%同一な配列を含む核酸であって、アスパラギン酸輸送活性を有するポリペプチドをコードする核酸、
    配列番号2に記載されるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする核酸、および
    配列番号2に記載されるアミノ酸配列において1または数個の変異、置換、挿入または欠失を含むアミノ酸配列を有し、かつアスパラギン酸輸送活性を有するポリペプチドをコードする核酸
    からなる群から選択される、核酸によってコードされるポリペプチドを含む、人工膜を提供する工程;
    (b)該人工膜に候補薬物を接触させる工程;
    (c)該人工膜のアスパラギン酸輸送活性を測定する工程;および、
    (d)工程(c)で測定されたアスパラギン酸輸送活性から、該候補薬物がアスパラギン酸輸送タンパク質の活性調節剤であるか否かを決定する工程;
    を包含する、方法。
  2. 前記活性調節剤が阻害剤である、請求項に記載の方法。
  3. 前記活性調節剤が活性促進剤である、請求項に記載の方法。
  4. 前記(a)の人工膜が、さらに、プロトンポンプを含む、請求項に記載の方法。
  5. 前記プロトンポンプがF−ATPaseである、請求項に記載の方法。
  6. 前記(a)の人工膜が、さらに、膜電位形成剤を含む、請求項に記載の方法。
  7. 前記膜電位形成剤がバリノマイシンである、請求項に記載の方法。
  8. a)ポリペプチドであって、以下:
    配列番号1に記載の核酸配列を含む核酸の相補鎖と高度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸であって、アスパラギン酸輸送活性を有するポリペプチドをコードする核酸;
    配列番号1に記載の核酸配列と少なくとも0%同一な配列を含む核酸であって、アスパラギン酸輸送活性を有するポリペプチドをコードする核酸;
    配列番号2に記載されるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする核酸;および
    配列番号2に記載されるアミノ酸配列において1または数個の変異、置換、挿入または欠失を含むアミノ酸配列を有し、かつアスパラギン酸輸送活性を有するポリペプチドをコードする核酸、
    からなる群から選択される、核酸によってコードされるポリペプチド、ならびに
    b)脂質
    を含む、アスパラギン酸輸送タンパク質の活性調節剤をスクリーニングするための、キット。
  9. さらに(c)プロトンポンプを含む、請求項に記載のキット。
  10. 前記(c)プロトンポンプがFoF1−ATPaseである、請求項に記載のキット。
  11. さらに、(d)膜電位形成剤を含む、請求項に記載のキット。
  12. 前記(d)膜電位形成剤がバリノマイシンである、請求項11に記載のキット。
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