JP5303083B2 - 防雷ヘリポート - Google Patents

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Description

本発明は、駐機中のヘリコプターへの落雷による被害を防止することのできる防雷ヘリポートに関するものである。
近年、人員や貨物の輸送に関して、多様なニーズが生じている。その中で、ヘリコプターについても、高速運行が可能な空中移動媒体でありながら、飛行機と比べ、小規模な施設であるヘリポートにより運行ができることから、広く用いられている。さらに、救難用あるいは救急用として極めて有効な手段である、医師を乗せて患者のもとへ向かう救急医療用ヘリコプター、いわゆるドクターヘリについては、その需要が急速に高まっている。
これらのドクターヘリに対応するヘリポートとしては、特許文献1に示すように、アスファルト製やコンクリート製のヘリポートに代わって、アルミ製のプレハブ式ヘリポートが普及しつつある。このヘリポートは、アスファルト製等のヘリポートと比較して、プレハブ式なので建築物の屋上や地面等に簡易に設置でき、また、軽量なので建築物の構造強度を低減できる等の種々の利点を有する。
ところで、ヘリポートは、屋外に設置され、かつ、航空法などの規制から周囲に飛行を妨害する建造物がないことから、落雷の危険があり、それに対する配慮が必要となる。通常の建物は建築基準法により避雷針を立てることが義務付けられており、建物自体は雷被害を受けないようになっている。また、ヘリポート設置などによって突出物の設置ができない場合には棟上げ導体を最上部に回すことによって建物を守っている。更に、ヘリポート自身には、例えば、外周部に導体を張りめぐらせて、その部分から地下の接地極に落とすなどの方法で、落雷による被害を最小化するように考えられている。
しかしながら、これらの方法では建物及びヘリポートは守られていても、ヘリポートに駐機しているヘリコプター自身については、ヘリポート上に突出した状態となるため、落雷の危険が大きい。そのため、離着陸時以外は、避雷対策を施した格納庫などに格納し、落雷被害を防止するのが通例である。
しかし、ドクターヘリの場合、患者の迅速な移送などの目的から、ヘリポートは、救急病院に近接して設置することが望ましく、例えば、病院の屋上などの場合には、隣接して格納庫を設けられないことが多い。この場合、次回の出動の際に迅速に対応できるために、遠隔の格納場所へ移動させず、ヘリポート上に駐機させておくような事態も想定される。
もちろん、雷の発生が予測される場合には格納場所に事前に移送するが、近年、気象状況が激しく変化し、局地的な豪雨や落雷の現象も多発しており、そのような場合に移送ができないことも考えられる。このように、気象状況が急に悪化した際にヘリポートに駐機中のヘリコプターには、落雷被害防止策が取られていないという問題があった。
特開2004−162341号公報
解決しようとする問題点は、ヘリポートにおいて、駐機中のヘリコプターの落雷被害の防止策が取られていない点である。
本発明は、ヘリポートの外周部に防雷針(一般的には避雷針と呼ばれるが、落雷被害を防止する観点から、防雷針と称する)を直立して設置し、かつ、この防雷針をヘリポート水平面より下方に収納可能なようにして、駐機中のヘリコプターへの落雷を防止することを最も主要な特徴とする。
本発明のヘリポートでは、防雷針を立てた場合には、ヘリコプターへの落雷を防止するとともに、防雷針を収納した場合には、ヘリコプターの離着陸の支障にならないという利点がある。
本発明の第1の実施形態の防雷ヘリポートの説明図である。 本発明の第1の実施形態の防雷ヘリポートの説明図である。 本発明の第1の実施形態のヘリポート用防雷針の説明図である。 本発明の第1の実施形態のヘリポート用防雷針の説明図である。 本発明の第1の実施形態の防雷針本体の断面図である。 本発明の第1の実施形態の防雷ヘリポートの防雷範囲を示す説明図である。 本発明の第2の実施形態の防雷ヘリポートの説明図である。 本発明の別の実施形態の防雷ヘリポートの説明図である。 本発明の防雷針の設置状態の説明図である。
本発明の第1の実施の形態を図面を用いて説明する。図1及び図2は、本発明の第1の実施の形態の防雷ヘリポートであり、防雷針10、ヘリポート本体20から構成される。
ヘリポート本体20は、ヘリポートフロア21とそれを支える複数のヘリポート脚部22から構成される。ヘリポートフロア21は、アルミニウムなどの金属製で、ヘリコプターが離着陸及び駐機をするための、略水平で、長方形の上面(着陸帯)を有する。また、ヘリポートフロア21の側面外周部分には、避雷導体23が一周にわたって設けられており、この避雷導体23は、銅などの避雷設備用に適する材質のもので、避雷導体23の1ヶ所から、図示しない専用の導線または建物に既設の導線を経由して、接地極に接続されるようになっている。
防雷針10は、防雷針本体11、防雷針取付部12、及び支柱スタンド13から構成される。図1が防雷針10を略鉛直方向に直立させた状態で、図2が防雷針10を倒してヘリポートフロア21の上面より下方に収納した状態である。なお、いずれの状態でも、防雷針本体11と避雷導体23とは、接続導線14により、電気的に接続されている。更に詳細に、図3及び図4により、防雷針10の構成を説明する。
防雷針取付部12は、支柱ベース121、ヒンジ122、可倒ブラケット123から構成され、支柱ベース121の一端が、ヘリポートフロア21の上面長方形の各辺の中点付近で、ヘリポートフロア21の外縁部下側に周知の方法(溶接・ねじ止めなど)によって取り付けられる。支柱ベース121は、取り付けられた状態で鉛直方向に延伸し、その上面は延伸方向に垂直であり、上面のみが開口している中空の円筒部分を有する。また、支柱ベース121の中空円筒の外周部には、ヒンジ122の一方の部材が周知の方法(溶接・ねじ止めなど)で固定される。
更に可倒ブラケット123には、支柱ベース121に対して回動可能なように、ヒンジ122の他の部材が、周知の方法(溶接・ねじ止めなど)で固定される。可倒ブラケット123は、両端が開口する円筒状の部分を有し、その端部の面は、円筒の延伸方向に垂直に形成されている。また、可倒ブラケット123には、中空円筒の軸方向に延伸し、上端で円周方向(上方から見て反時計回り)に曲がる、円筒内部へ開口した脱落防止スリット124が中空円筒の対称位置に2ヶ所形成されている。
ここで、図4に示すような可倒ブラケット123の円筒部分が水平状態をやや超える横倒しの位置(第1の位置)から、図3に示すような円筒部分が鉛直方向を向く位置(第2の位置)まで、90度以上回動が可能であるように、ヒンジ122が設定されている。
なお、第1の位置において、防雷針本体11、防雷針取付部12の全ての部分が、ヘリポートフロア21の上面よりも下方になるように、支柱ベース121をヘリポート本体20に固定する。また、第2の位置では、支柱ベース121の上面と可倒ブラケット123の一端がほぼ密着するようになっており、かつ、可倒ブラケット123の中空円筒部分の内径は、支柱ベース121の中空円筒部分の内径とほぼ等しく、第2の位置においてほぼ段差なく連続するようになっている。
防雷針本体11は、支柱111、ガイドレール112,突針固定部113、突針114、取っ手115、導体接続端子116、脱落防止スライダ117からなる。
支柱111は、アルミニウムなどの良導体からなる細長い円筒状で、表面には美観や強度の目的で塗装などの処理を施してあり、また、第2の位置で下端になるところから上方へ、円筒外周部に、軸方向に延伸する四角形の断面を有する金属製のガイドレール112が4本固着されている。なお、可倒ブラケット123及び支柱ベース121の円筒部分の内径は、支柱111にガイドレール112を固着したものが円筒内部を滑動できるような寸法に形成される。このガイドレール112は、塗装された支柱111が、可倒ブラケット123及び支柱ベース121の円筒内面と直接接触することによる、塗装の損傷を防止するためである。
更に、図5に示すように、支柱111の円筒断面の中心を通り貫通する状態で、かつ、円筒断面の両方の外側にカラーの形状をした、脱落防止スライダ117を保持した状態で、ボルト118が設けられ、ボルト118のねじを有する端部には、ナット119が締結できるようになっている。ここで、現地施工の段階で、脱落防止スライダ117が、可倒ブラケット123に設けられた脱落防止スリット124にはめ合い、脱落防止スリット124内を滑動できるように組み立てることで、支柱111は、軸方向及び円周方向に、所定の範囲のみ、滑動できることとなる。
支柱111の他端には、突針固定部113の一端が固定される。突針固定部113は、アルミニウムなど良導体製の円筒形で、支柱111に固定された状態で、支柱111と同一方向に延伸している。もう一方の端部には、突針114を固定する雌ねじ部が形成されている。突針114は、金属製良導体の棒状で、防蝕のためにクロムメッキなどを施されており、一端には、突針固定部113に固定するための雄ねじ部が形成されており、他端は、円錐形に形成されている。突針114も、突針固定部113に固定された状態では、支柱111と同一方向に延伸している。なお、突針114、突針固定部113、支柱111、及び、導体接続端子116は、周知の方法で、電気的に十分導通が取られているものとする。
従って、前記第2の位置では、可倒ブラケット123にはめ合っている支柱111、突針固定部113、突針114は、鉛直方向に延伸している状態となる。また、前記第1の位置では、可倒ブラケット123にはめ合っている支柱111、突針固定部113、突針114は、ほぼ水平方向(やや突針114側が下方になっている状態)で延伸している。
取っ手115は、略コの字形状で、支柱111の中ほどで、ヒンジ部分の回動運動を支援する位置に固定される。導体接続端子116は、支柱111の中ほどに、支柱111との導通を確保した状態で固定されている。この導体接続端子116からは、接続導線14が、ヘリポート本体20の避雷導体23に接続されており、この接続は、前記第1の状態でも、前記第2の状態でも、また、その状態を変化させる間にも、接続が確保され、かつ、回動動作にも支障がないように、その接続位置、配線経路、配線長さ、材質などが決められている。
支柱スタンド13は、前記第1の位置において、防雷針本体11の支柱111の部分を支えるものであり、支柱111の円周に対応して、略円弧上の座面を有するのものである。なお、支柱スタンド13は、取っ手115まで含めて防雷針本体11の全体がヘリポートフロア21より下方になるような位置に設けられる。
ここで、防雷針のヘリポート上面からの高さは、ヘリポートの広さ、駐機するヘリコプター自身の外形寸法、防雷効果などを勘案して決定される。例えば、ヘリコプターの最大高さhがヘリポート上で3.5m、ヘリポート本体が1辺L=24mの正方形の場合、その外縁部で各辺の中点に、突針の先端がヘリポート上面からの高さH=4.72m以上となるような防雷針を設置すれば、図6に示すように、防護範囲を規定する回転球体法(R=60)(JISA4201)を適用すると、ヘリコプターは全て保護領域Sに入り、落雷被害の発生を防止することができる。
一般的に、ヘリポート本体が1辺Lの正方形、ヘリコプターの最大高さがh、回転球体法の半径をRとすると、各辺の中点外縁部での突針高さHが、
H>h+R−(R−(L/2)(1/2)
であれば、このヘリコプターは全て保護領域に入ることになる。なお、防雷針の高さがこれに満たなくとも、例えば、3.5m程度であってもその高さに応じた落雷被害防止効果は発揮できる。
このような構成の、防雷ヘリポートの作用について説明する。落雷の恐れがなく、ヘリポートとしての機能を発揮している状態では、図4のように、前記第1の位置に、防雷針本体11が置かれる。この状態では、防雷針本体11及びそれと連結している可倒ブラケット123は、ヘリポートフロア21の上面よりも低い位置にあって、支持スタンド13に支持されている。従って、ヘリコプターの離着陸には支障がない。また、支柱111に設けられた脱落防止スライダ117を、可倒ブラケット123に設けられた脱落防止スリット124の円周方向の部分に位置させておくことで、防雷針本体11が、可倒ブラケット123内を滑動できないようにしている。
次に、天候の悪化などで、落雷の危険が予測される際には、作業員が、防雷針本体11の取っ手115を持って、鉛直方向の立位(前記第2の位置)になるまで、防雷針本体11をヒンジ122の回動方向に従って回動する。鉛直方向になると、可倒ブラケット123と支柱ベース121の円筒状の部分が連続した状態となる。この状態で、可倒ブラケット123内に、脱落防止スライダ117と脱落防止スリット124の作用によって滑動しないように保持されていた防雷針本体11を、取っ手115を支柱111の円周方向で上方から見て時計回りに回動する。すると、脱落防止スライダ117が脱落防止スリット124の軸方向に延伸する部分に到達し、その後、支柱111は、自重により下方の支柱ベース121に滑入する。最終的に、支柱111の端部が、支柱ベース121の円筒部の底付近まで到達すると、防雷針本体11は、図3に示すように、安定して立位の状態を保つことができる。
この状態で、ヘリポートの上空で雷が発生し、落雷という事態となった場合には、駐機中のヘリコプターではなく、防雷針本体11の突針114に落雷し、落雷による電流は、そこから突針固定部113、支柱111、導体接続端子116を経由して、接続導線14から、ヘリポート本体20の避雷導体23に伝わり、更に接地極へと流される。
この場合にヘリポート上に駐機していたヘリコプターは、アルミニウム製のヘリポート上に駐機しているが、ヘリポートと同電位のため、ヘリコプターへは雷電流を流すことなく、雷電流は接地極へと流れていく。また、ヘリポート中央部に駐機している場合は、防雷針本体11の突針114と、ヘリコプターの距離も十分取れていることから、火花放電なども発生しにくいと考えられ、落雷による被害の発生を抑えることができる。
次に、落雷の危険が去り、ヘリポートを使用する場合には、作業員が、取っ手115を持って、鉛直方向立位の状態にある支柱111を、上方に引き上げる。支柱111に設けられた脱落防止スライダ117が、支柱ベース121の脱落防止スリット124の上端まで到達したら、支柱111をその円周方向で上方から見て反時計回りに回動する。それによって、支柱111の端部は、支柱ベース121からほぼ離脱し、かつ、脱落防止スライダ117が、脱落防止スリット124の円周部分に入り込み、支柱111の軸方向の滑動を規制する。この状態で、取っ手115を持って、防雷針本体11を、ヒンジ122の回動可能方向に、ほぼ水平方向になるまで回動させ、支柱111が支柱スタンド13に当接するようにする。これで、前記第1の状態に戻り、ヘリポートの使用が可能となる。
このように、本発明の第1の実施の形態の防雷ヘリポートによれば、防雷針を立てた場合には、ヘリコプターへの落雷を防止するとともに、防雷針を収納した場合には、ヘリコプターの離着陸の支障にならないという利点がある。更に、本発明の第1の実施の形態の防雷針では、支柱111を支柱ベース121に滑り込ませて立位の状態を維持する機構としたので、何ら工具を必要とせずに、人手によって簡単に直立状態と水平状態の移行ができる効果がある。
次に、本発明の第2の実施の形態を図面を用いて説明する。図7は、本発明の第2の実施の形態の防雷ヘリポートであり、第1の実施の形態と異なり、ヘリポートが地面の上に設けられる場合などのように、脚部を有せず、ヘリポートの水平面が周囲とほぼ同一高さに構成される。なお、第1の実施の形態と同一の構成・作用のものは同一の番号を付してある。
この実施の形態では、防雷ヘリポートは、防雷針10、ヘリポート本体30から構成され、ヘリポート本体30は、ヘリコプターの離着陸の用に供するための長方形のヘリポートフロア31を有する。
また、ヘリポートフロア31の長方形の各辺の外周近傍に略直方体に地面を掘り下げた、4ヶ所の掘り下げ部35を有する。
防雷針10は、この掘り下げ部35に設置される。すなわち、掘り下げ部35の底部には、防雷針取付部12が設置され、それに、防雷針本体11が接続される。更に、掘り下げ部35の底部には、支柱スタンド13も設置される。これらを強固に固定するために、掘り下げ部35の底部は、コンクリートなどで構成される。防雷針取付部12は、第1の実施の形態と同様の要素で構成されるが、支柱ベース121が掘り下げ部35の底部に固着される点が異なっている。防雷針本体11は、第1の実施の形態と同様の要素で構成されるが、後述するように接続導体14の接続先が異なっている。
従って、防雷針本体11と防雷針取付部12は、ヒンジなどを用いた構造で、第1の実施の形態と同様に、防雷針本体11が、略鉛直方向に直立した位置(第2の位置)と、略水平方向に横倒しにした位置(第1の位置)とを取ることができる。なお、掘り下げ部35の深さは、前記第1の位置において、防雷針本体11及び防雷針取付部12が、ヘリポートフロア31よりも下方になるように設定される。
更に、掘り下げ部35の近傍の地中には、銅などの電気良導体からなる、無端の水平環状導体32を、ヘリポートフロア31の外周をめぐるように設置する。その水平環状導体32の任意の位置に、水平環状導体32と同様の材質からなる引き下げ線33の一端を接続する。引き下げ線33はその他端が二又状に分岐し、各々の分岐の終端には、電気良導体からなる接地極34が設けられる。ここで、防雷針取付部12から延伸する接続導体14は、その近傍の水平環状導体32に、電気的に接続される。なお、引き下げ線33及び接地極34を省略して水平環状導体32を接地極として用いる方法や、水平環状導体32を省略して各々の防雷針からの接続導体14をそれぞれ接地極34に接続する方法など、状況に応じた種々の変形が可能である。
このような構成の、防雷ヘリポートの作用について説明する。天候の悪化などで、落雷の危険が予測される際には、図7に示すように、防雷針本体11は、鉛直方向の立位(前記第2の位置)の状態となっている。次に、落雷の恐れがなくなった場合には、ヘリコプターの離着陸に支障のないように、ヘリポートとしての機能を発揮するため、作業員によって、防雷針本体11が略水平方向に横倒しにした位置(前記第1の位置)に置かれる。図面及び具体的な操作の説明は、第1の実施の形態と同様であるので省略する。
前記第2の位置において、ヘリポートの上空で雷が発生し、落雷という事態となった場合には、駐機中のヘリコプターではなく、防雷針本体11に落雷し、落雷による電流は、第1の実施の形態とは異なり、接続導線14から、ヘリポートフロア31の外周地中に設けられた水平環状導体32へと伝わり、更に引き下げ線33を経由して、接地極34へと流される。このようにして、駐機中のヘリコプターへは雷電流を流すことなく、落雷による被害の発生は抑えることができる。
このように、本発明の第2の実施の形態の防雷ヘリポートによれば、防雷針を立てた場合には、ヘリコプターへの落雷を防止するとともに、防雷針を収納した場合には、ヘリコプターの離着陸の支障にならないという利点がある。更に、本発明の第2の実施の形態の防雷針では、支柱111を支柱ベース121に滑り込ませて立位の状態を維持する機構としたので、何ら工具を必要とせずに、人手によって簡単に直立状態と水平状態の移行ができる効果がある。
なお、本発明のヘリポートは、第1の実施の形態(かさ上げ設置)及び第2の実施の形態(地上面設置)に限定されるものではなく、建物の屋上に直接ヘリポートを形成する場合や地上面に土盛りをしてヘリポートを形成する場合などにも適用が可能である。
また、防雷針からの落雷電流の経路については、第1の実施の形態の、ヘリポート本体に予め設備されている避雷導体を経由して、既設の接地極へと流す方式と、第2の実施の形態の、接地極とつながる導体を別に設けて、防雷針からの接続導線をそれに接続する方法の、いずれの方法(組合せも含め)であってもよい。
更に、防雷針本体部分の構造は、この構造に限定されるものでなく、避雷針としての機能を果たせるものであればよい。特に、誘雷機能に優れた「受雷針」(特許第3265500号)を用いれば、更に、落雷被害防止機能が高められる。
防雷針取付部についても、この構造に限定されず、防雷針本体を、ヘリポート上面よりも下方に収納した状態から、直立状態へと、状態を変化させ、確実にその状態を保持できるものであれば、その構造・方法はどのようなものであってもよい。例えば、支柱を上下に滑動させる方法を取らなくても、直立状態で防雷針本体をねじ止めの方法で固定してもよい。この場合、作業の手間はかかるが、固定状態はより確実になる効果がある。
また、図8(a)、(b)に示すように、防雷針本体41を、回動して倒す方法ではなく、無線機用のロッドアンテナなどに用いられる、伸縮式の多段ロッドによって構成してもよい。ヘリポート20のヘリポートフロア21の外縁下方に、防雷針取付部42を固着し、その防雷針取付部42に、多段ロッドからなる防雷針本体41を、略鉛直方向に固着する。
多段ロッドからなる防雷針本体41は、例えば、図8(a)に示すように5段の多段ロッドとし、その最先段には突針114を取り付けた構造とする。なお、防雷針取付部42の設置位置は、多段ロッドを収納した状態で、突針114が、ヘリポートフロア21の上面より下方にあるように決定される。
また、多段ロッドの各段は電気的に導通しており、最下段に設けられた導体接続端子116から接続導線14をヘリポート本体の避雷導体23に接続する。なお、多段ロッドの最下段ではなく、突針114の直下の段に導体接続端子116を設けて、そこから接続導線14をヘリポート本体の避雷導体23に接続するようにしてもよい。接続導線14が長くなるが、電気的導通はより確実になる。
このようにして、ヘリポートが離着陸の用に要されている場合には、図8(b)に示すように、多段ロッドからなる防雷針本体41は、収納した状態として、離着陸に支障なきようにすることができ、また、落雷の危険のある場合には、図8(a)に示すように、人手により、多段ロッドからなる防雷針本体41を延伸させて、落雷被害を防止することができる。この方法によれば、防雷針の収納状態でのスペースが少なくてよいという効果がある。
なお、これまでの説明で、防雷針の直立状態を、略鉛直としたが、これは、図9(a)から(c)に示すごとく、直線状の防雷針をやや傾斜させたもの、防雷針を途中で斜めに屈曲させたもの、防雷針の上部を水平に屈曲させたもの、更には、それらを組み合わせたものなど、種々の状態が想定され、それぞれに、設置上のあるいは防雷上の効果が考えうるからである。そのため、防雷針の根元部分と先端部分を結ぶ線の鉛直方向からの角度Kが、45度以内であれば、防雷針の直立状態が、略鉛直とみなすものとする。
防雷針の設置位置についても、ヘリポート水平面の外縁部としたが、駐機しているヘリコプターを避ける位置で、かつ、ヘリポート水平面の内部に設置してもよい。この場合、防雷針をヘリポート水平面より下方に収納する機構が複雑にはなるが、落雷被害防止の効果を高めることができる。
防雷針の本数についても、4本に限定されず、ヘリポート設置場所の状況に応じて、1本以上であればよい。
更に、防雷針の収納または直立動作を人手によって行うとしたが、モーターなど電動力によって行わしめてもよい。構造は複雑になるが、人手作業を軽減できる効果がある。
支柱スタンドについては、防雷針取付部自体に回動範囲を規制する機構を設けたり、ヘリポート側に同様の機能を果たす台座などを設けるなどすれば、省略することもできる。その場合、部品点数が減る効果がある。
また、防雷針の設置に際して、収納状態での防雷針(本体及び取付部を含めて全体)がヘリポートフロア上面より下方となるように設置することとしてきたが、航空法などの規定に従い、かつ、離着陸に支障のない範囲で、ヘリポートフロア上面よりわずかに突出させることも可能である。その場合、防雷針の設置位置をヘリポート外縁部から離すことが必要となり、防雷効果が低減する欠点はあるが、防雷針本体及び防雷針取付部の構造が簡便になる効果はある。
なお、本発明は、収納可能な防雷針を、ヘリポートに設けることとして説明したが、ヘリポート以外の、例えば、屋外に設置される重要な建造物あるいは美術品など(対象物と呼ぶ)であって、避雷針を恒久的に設置することが、技術的あるいは美的景観を損ねるなどの理由で、不可能である場合にも適用でき、落雷被害防止と、景観の保護を両立できるなどの効果がある。
10 防雷針
11 防雷針本体
12 防雷針取付部
13 支柱スタンド
14 接続導線
20 ヘリポート本体
21 ヘリポートフロア
22 ヘリポート脚部
23 避雷導体
30 ヘリポート本体
31 ヘリポートフロア
32 水平環状導体
33 引き下げ線
34 接地極
35 掘り下げ部
41 防雷針本体
42 防雷針取付部

Claims (5)

  1. へリコプターの離着陸及び駐機の用に供し水平面を有するヘリポート本体と、前記ヘリポート本体の水平面またはその外側近傍から略鉛直上方方向に立位で設置する、雷を誘導する防雷針とを有し、前記防雷針を、前記水平面以下、又はヘリコプターの離着陸の支障にならない高さ以下に収納するための機構を有することを特徴とする防雷ヘリポート。
  2. 前記防雷針の、前記ヘリポート本体水平面からの立位状態での高さを、前記ヘリポート本体上に駐機するヘリコプターが落雷危険の保護範囲内に含まれるように定めたことを特徴とする、請求項1に記載の防雷ヘリポート。
  3. 前記防雷針の誘雷効率を高めたことを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の防雷ヘリポート。
  4. ペリコプターの離着陸及び駐機の用に供し水平面を有するヘリポート本体の、前記水平面またはその外側近傍から略鉛直上方方向に立位で設置される、雷を誘導する防雷針であって、更に、前記防雷針を、前記水平面以下、又はヘリコプターの離着陸の支障にならない高さ以下に収納するための機構を有することを特徴とする、ヘリポート用防雷針。
  5. 落雷被害を防止したい対象物の設置面、またはその外側近傍から、略鉛直上方方向に立位で設置される、雷を誘導する防雷針であって、更に、前記対象物の景観などの支障にならない高さ以下に収納するための機構を有することを特徴とする、収納可能防雷針。

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