以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施の形態に係る集光装置の構成を示すブロック図である。
図1に示す集光装置100は、平面構造を有するシート型の集光装置であって、例えば、太陽光などの自然光(散乱光など周囲に存在する周辺光を含む)をシート形状の平面上に集光し、特定の方向に配光する機能を有する。このシート型集光装置100は、各種の光応用システム(例えば、集光型PVや太陽光照明、バックライトなど)に対する太陽光利用の利便性を向上させ、安価な光応用システムを提供することを目的としている。
このシート型集光装置(以下「本装置」ともいう)100は、大別して、法線集光部110、法線配光部120、線状導光部130、および光圧縮制御部140で構成されている。
法線集光部110は、外部から照射される光(太陽光その他周辺光)を入射させて本装置100の法線方向に導く機能を有する。具体的には、法線集光部110は、本装置100の法線方向から任意の角度で斜めから入射した光をその法線方向に取り込み(集光し)、法線配光部120の内部に、全反射可能な角度で入光させる機能を有する。このように、斜めから入射した光を可能な限り法線方向にそろえることにより、法線配光部120の構成(形状)を容易にすることができる。後で詳述するように、法線集光部110は、例えば、マイクロレンズをアレイ状に配列した構成を有する。なお、入射光が法線方向からずれるほど反射光が多くなり、例えば、空気中からの入射の場合、入射角が80°で透過率が50%程度になるため、斜めから入射する際に限界となる角度として、80°程度を想定することができる(ただし、上記のように完全になくなるわけではない)。
法線配光部120は、法線集光部110からの光を入射させて内部で反射、屈折させつつ所定の方向に配光する機能を有する。具体的には、法線配光部120は、法線集光部110からの光を入射させて内部で反射、屈折させつつ、線状導光部130の内部に、全反射可能な角度で入光させる機能を有する。後で詳述するように、法線配光部120は、複数の法線配光路によって構成されている。各法線配光路は、例えば、上記アレイ状の各マイクロレンズの位置に配置されている。なお、エネルギー効率の観点からは、入射光を法線配光部120の内部で全反射のみを利用して線状導光部130に配光することが好ましいが、実際問題として、全反射のみでは広範囲の入射光を線上導光部130に配光することは困難である。そこで、本実施の形態では、法線配光部120の形状をなるべく全反射になるような形状にしつつも、全反射だけではなく反射と屈折も利用するようにしている。
線状導光部130は、法線配光部120からの光を入射させて内部で全反射させつつ所定の一方向に導く機能を有する。具体的には、線状導光部130は、法線配光部120からの光を入射させて内部で全反射させつつ、所定の一方向に線状に圧縮集光し、光圧縮制御部140の内部に入光(転送)させる機能を有する。後で詳述するように、線状導光部130は、互いに光学的に分離された複数の線状構造の導光路(以下「線状導光路」という)を有する。線状導光路は、例えば、透明のシート基板上に印刷して形成されている。また、線状導光路には、複数の法線配光路が接続されている。なお、本明細書において、光の「圧縮」とは、光を集めるなどして光のエネルギー密度を高めることをいう。
光圧縮制御部140は、線状導光部130の内部を進む光を入射させて圧縮して所定の目的の方向に配光する機能を有する。具体的には、光圧縮制御部140は、全反射を繰り返しながら線状導光部130(複数の線状導光路)の内部を進んで入射した光をまとめて高圧縮光(高圧縮された光)に変換し、光応用システム部200に入光(転送)させる機能を有する。後で詳述するように、光圧縮制御部140は、例えば、平面レンズの作用により圧縮光を細線化して更にエネルギー密度を高めるようにしている。
なお、光応用システム部200は、用途に応じて各種のシステムが考えられる。例えば、光応用システム部200として、上記のように、集光型PVや太陽光照明、バックライトなどが考えられる。いずれにしろ、光応用システム部200は、シート型集光装置100(特に光圧縮制御部140)から入射した光を当該光応用システムに合わせて変換する機能を有する。具体的には、例えば、集光型PVの場合は、シート型集光装置100からの入射光(高圧縮光)を光発電素子(太陽電池)に照射する。また、太陽光照明に直接使用する場合は、例えば、シート型集光装置100からの入射光(高圧縮光)を光拡散シートに直接転送する。また、バックライトの光源として使用する場合は、例えば、2次元分光プリズムを平面シートに形成しておき、この2次元分光プリズムを用いてシート型集光装置100からの入射光(高圧縮光)を所定の色(RGB)に分光して出力する。
上記各構成要素のうち、少なくとも法線集光部110、法線配光部120、および線状導光部130の一部は、同一基板上に形成されている。具体的には、例えば、平面状のシート基板上に線状導光部130(複数の線状導光路)の一部が形成され、この一部の線状導光部130(各線状導光路)上に法線配光部120(複数の法線配光路)が配置され、この法線配光部120(各法線配光路)上に法線集光部110(各マイクロレンズ)が配置されている。後で詳述するように、少なくとも法線配光部120および線状導光部130は、透明のシート基板上に、好ましくは、スクリーン印刷により形成される。
また、好ましくは、シート基板上の法線集光部110、法線配光部120、および線状導光部130の一部は、所定の単位でユニット化されている。以下、このユニット化された単位構造の部分を「平面集光シート部」と呼ぶことにする。この平面集光シート部150は、外部の光を線状の特定方向に集光する機能を有する。また、法線集光部110および法線配光部120を持たず、専ら線状導光部130のみからなる単位構造の部分を「線状導光シート部」と呼ぶことにする。この線状導光シート部160は、線状の特定方向に集光された光をさらに線状に圧縮集光しながら所定の一方向に導く(転送する)機能を有する。この場合、シート型集光装置100は、少なくとも平面集光シート部150と光圧縮制御部140で構成され、必要に応じて線状導光シート部160をさらに有する。もちろん、好ましくは、光圧縮制御部140も、平面状の基板上に形成されてユニット化されている。以下、特にこのユニット化された光圧縮制御部を「光圧縮シート部」と呼ぶことにする。したがって、このようにそれぞれユニット化された平面集光シート部150、線状導光シート部160、および光圧縮シート部170を適宜組み合わせることにより、高い自由度で、用途や環境に応じて、適当なサイズと形状のシート型集光装置100を容易に設置することができる。特に平面集光シート部150は、水平方向のみならず垂直方向にも組み合わせることができる。すなわち、平面集光シート部150は、同一平面上水平方向に複数配置したり、上下垂直方向に複数積層したりすることができる。
なお、上記のように、線状導光部130では、入射した光は内部を全反射しながら伝播する。全反射により伝播する光は外部に漏れないため、外部から見ると線状導光部130は透明に見える。これは、法線配光部120が全反射のみの形状を有する場合には、このような法線配光部120についても同様である。光の伝達において、外部から見えるということは、光エネルギーの損失を意味する。
次いで、シート型集光装置100の具体的な構成例について、図面を用いて詳細に説明する。
図2は、シート型集光装置100の構成の一例を示す概略要部斜視図である。特に、図2は、平面集光シート部150の要部の構成の一例を示している。
図2に示すシート型集光装置100aは、平面集光シート部150aを有する。この平面集光シート部150aは、図2に示すように、シート基板151上に法線集光部110a、法線配光部120a、および線状導光部130aを形成して構成されている。
法線集光部110aは、例えば、透明のシート層111上にマイクロレンズ112をアレイ状に配列して構成されている。
この構成では、各マイクロレンズ112は、上から見ると円形であるため、隣接するマイクロレンズ112間に隙間が生じる。そこで、好ましくは、法線集光部110aは多層化されている。
図3は、多層化された法線集光部110aの構成を示す概略断面図である。図3に示す例では、法線集光部110aは、2層構造を有し、第1の法線集光部層113−1と第2の法線集光部層113−2を積層して構成されている。法線集光部110aの上下2層(法線集光部層113−1、13−2)の位置関係は、図3に示す通りである。ただし、図3では、便宜上、同一の法線集光部層113におけるマイクロレンズ112間の隙間を無視して示している。
法線集光部層113は、例えば、上記のように、透明のシート層111上にマイクロレンズ112をアレイ状に配列して構成されている。このとき、法線集光部層113のマイクロレンズ112は、後述するように(例えば、特に図11(B)参照)、対応する各線状導光路の伸長方向と平行でかつその線状導光路から離れた(オフセットされた)直線上に一列に配列されている。ところが、各マイクロレンズ112は、上記のように、上から見ると円形であるため、同一の法線集光部層113では、隣接するマイクロレンズ112間に隙間が生じる。そこで、この例では、同じ構造の法線集光部層113を上下に配置して2層構造にしている。ただし、このとき、図3に示すように、上下の法線集光部層113−1、13−2は、互いに、同じ線状導光路に対応するマイクロレンズ列について、隣接するマイクロレンズ112間の隙間の中心位置に他の法線集光部層113のマイクロレンズ112の中心がくるように、マイクロレンズ112の配列が調整されている。
法線集光部110aは、上記のように、斜めから入射した光を可能な限り法線方向にそろえて、法線配光部120の構成を容易にするという機能を有する。したがって、この例のように、法線集光部110aを2層化(多層化)することにより、外部からの光がマイクロレンズ112に入射する割合が増大し、この機能の実現をより一層確実にすることができる。
さらには、図示しないが、平面集光シート部150a自体も2層構造(多層構造)にすることにより、更に集光率(外部からの光が線状導光部130に集光される割合)を向上することができる。
法線集光部110a(多層構造を有する場合は各法線集光部層113)は、紫外線硬化樹脂をインクとして使用したインクジェット印刷技術を用いて、例えば、透明のシート層111上にマイクロレンズ112を印刷して形成されている。なお、マイクロレンズ112の製造方法は、インクジェット印刷技術に限定されるわけではなく、任意の適当な製造方法を適用することができる。例えば、インクジェット印刷技術に代えて、スクリーン印刷技術やプラスチック成形技術、光成形技術なども適用可能である。
法線集光部110aは、上記のように、入射光の中で法線方向から大きく外れた光をなるべく法線方向に近く屈折させて法線配光部120aに入光させる機能を有する。この機能を実現するためには、表面に角度をつけて反射光を少なくしつつ法線方向に配光する必要がある。このため、法線集光部110aの表面は、単なる平面でなく、図2および図3に示すように、円形のレンズの構造を持ち、このレンズの作用により、斜めからの光を有効に取り込む必要がある。しかも、このレンズは、法線配光部120aに入射光を導く機能を併せ持つことになる。しかし、レンズは円形であるため、すべての表面を覆うことはできない。そこで、図3に示す例では、法線集光部110aを2層構造にしている。図3において、破線は、入射した光を法線配光部120aの1点に集光するイメージを示し、上側の実線の矢印は、入射光の角度を示している。この場合、入射光は、平坦な面に入射する場合と比べて、局所的な面(レンズの表面)の法線方向に近い角度で入射するようになるため、透過率を高めた状態で集光することが可能になる。
法線集光部110は、広範囲の角度で入射する光を効率良く本装置100a内に取り込むことを目的としており、この目的を達成するため、法線集光部110(多層構造を有する場合は各法線集光部層、以下同様)は、種々の適当な表面形状をとることができる。例えば、図2および図3に示すマイクロレンズアレイ状に代えて、三角錐や四角錐などの角錐の形状であってもよい。
図4は、法線集光部110の他の構成(表面形状)を示す概略図であり、特に、図4(A)は、概略要部斜視図、図4(B)は、概略要部断面図である。
図4に示す例では、法線集光部110bは、長手方向(線状導光路131の伸長方向)の断面が略三角形である三角柱114をアレイ状に配列して構成されている。法線集光部110bは、表面のこの三角形状によって、三角プリズムの機能により、入射光を法線方向に導く機能を有する。この場合も、法線方向から入射する光(図4(A)の実線の矢印)はもちろん、法線方向から外れた角度で入射する光(図4(A)の破線の矢印)も、法線集光部110bによって法線方向に集光される。例えば、法線方向から外れた角度で入射する光については、図4(B)に示す経路をたどって、法線方向に集光される。具体的には、例えば、入射角が80°の入射光は、境界面を通過する度に曲がり、80°→76.35°→53°→47°と角度が変化する。
図5は、法線配光部120aおよび線状導光部130aの構成の一例を示す概略斜視図である。図6は、図5を上から見た平面図、図7は、図6のVII−VII線に沿う断面図、図8は、図6のVIII−VIII線に沿う断面図である。さらに、図9は、図5の詳細を示す図であり、特に、図9(A)は、図6と同様の平面図、図9(B)は、図9(A)の要部を示す平面図、図9(C)は、図9(B)の要部拡大図である。なお、図5〜図8には、本装置100aを集光型PVに適用する場合を想定して、東西南北の方位を付している。
法線配光部120aは、上記のように、法線集光部110aからの光を入射させて内部で反射、屈折させつつ、線状導光部130a(線状導光路131)の内部に、全反射可能な角度で入光させる機能を有する。図5〜図9に示す例では、法線配光部120aは、法線集光部110aの各マイクロレンズ112に対応して複数の法線配光路121を有する。法線配光路121の入口122(光の入射口)は法線集光部110aのシート基板111に接続され、出口(光の出射口)は接続部123を介して線状導光部130aの対応する左右一対の線状導光路131に接続されている。すなわち、法線配光路121は、対応する左右一対の線状導光路131の中間位置上に配置されている。また、この例では、法線配光路121の入口122は楕円形状を有し、法線配光路121の本体部(接続部123を除く部分)は楕円錐台の形状をしている。すなわち、本体部の出口124も楕円形状を有する。
特に、好ましくは、入射光(太陽光)を有効に利用するため、図5〜図9に示すように、隣接する法線配光路121の入口(光の入射口)122は、法線配光路121の高さ、上面(入口)の形、および面積を考慮して、互いに重なるように構成されている。また、この例では、東西方向からの入射光を入射角の変化にかかわらず、効率的に集光するため(東西方向の集光性向上)、法線配光路121の入口122の形状を東西方向に長い楕円形状とし(特に図9参照)、かつ、入射した光を接続部123により左右一対の線状導光路131に導く構成としている。すなわち、この例では、接続部123を設けて、法線配光部120aの東西方向の入射光を方向によって左右一対の線状導光路131に振り分けるようにしている。
また、この例では、線状導光路131から法線配光路121への光の逆流を最小にするため、法線配光路121の接続部123の線状導光路131との接触点を、小さく、かつ、できるだけ線状導光路131に平行に接触させるようにしている。これにより、線状導光路131から法線配光路121に逆行する光の量を少なくすることができる。
また、太陽光の場合、その入射角度は場所の緯度で変化する。そのため、法線配光路121の側面の傾斜角θ、γ(図8参照)は、法線配光部120aの高さならびに設置場所の緯度および傾きを考慮して、例えば、実測により、最適値に決定される。ここで、傾斜角θは、例えば、太陽の高さが最も低いとき(北半球の場合は冬至)でも太陽光を有効に利用できる角度に設定される。また、傾斜角γは、例えば、太陽の高さが最も高いとき(北半球の場合は夏至)でも太陽光を有効に利用できる角度に設定される。例えば、図8の例では、破線の円内に示すように、太陽の夏場の高度として80°を、冬場の高度として30°をそれぞれ暫定的に設定している。本装置100aを水平面上に配置すると仮定した場合でも、太陽光の高さは夏と冬で異なり、また、緯度によっても変化したりと、想定できる変数は多い。そのため、実際の設置に当たっては、多数の変数を考慮して、例えば、上記のように、実測により、傾斜角θ、γを最適値に設定することが好ましい。
線状導光部130aは、上記のように、法線配光部120aからの光を入射させて内部で全反射させつつ所定の一方向に導く機能を有する。線状導光部130aは、互いに光学的に分離された複数の線状構造の導光路(線状導光路131)を有する。線状導光路131は、全反射を用いて、法線配光部120aの法線配光路121から入射した光を一方向に導く機能を有する。線状導光路131は、例えば、透明のシート基板151上に印刷して形成されている。
法線配光路121および線状導光路131は、いずれも、全反射により内部を光が伝播することが好ましいため、可視光での屈折率が同一であることが理想的である。このため、基本的には、法線配光路121および線状導光路131は、例えば、同一成分の樹脂、好ましくは、紫外線硬化樹脂を用いて形成されている。紫外線硬化樹脂は、一般に、プレポリマー、モノマー、光開始剤、増感剤、着色剤、および各種添加剤をブレンドして構成されている。紫外線硬化樹脂は、紫外線(UV光)の照射を受けると、光開始剤が紫外線を吸入して光重合反応を開始し、モノマーやプレポリマーをポリマーに転換して網目状の架橋構造を生成する。紫外線硬化樹脂を用いる場合、法線配光路121および線状導光路131と接する周囲の物質(媒質)は、例えば、空気、または窒素などの不活性気体であることが好ましい。ただし、気体の種類はこれに限定されるわけではない。基本的には、気体であれば屈折率は1.0付近であるため、任意の気体を用いることができる。
また、好ましくは、線状導光路131は、例えば、透明のシート基板151上に印刷により形成され、法線配光路121は、線状導光路131上に印刷により形成されている。線状導光路131および法線配光路121は、例えば、周知のスクリーン印刷法を用いて形成される。具体的な製造方法の一例は、後で詳述する。
本装置100aにおいて、太陽光180は、法線集光部110aによって法線方向に取り込まれ(集光され)、法線配光路121に導かれる。法線集光部110aから法線配光路121に入射した光181は、法線配光路121の内部を全反射により伝播する。ここで、全反射とは、屈折率界面におけるエネルギー損失のない完璧な反射のことである(反射率=100%)。例えば、法線配光路121を紫外線硬化樹脂で形成し、周囲の媒質が空気である場合には、後で説明するように、入射光に対して屈折光がなくなる(反射光のみなる)臨界角は、約42°になる。したがって、法線配光路121の内部を全反射により伝播する光181は、境界面(接平面)に対して約±48°(=90°−42°)以内の傾斜角で伝播する。そして、法線配光路121の内部を伝播した光181は、接続部123を介して左右一対の線状導光路131のいずれか一方に入光する(振り分けられる)。法線配光路121から線状導光路131に入光した光182は、線状導光路131の内部を全反射により所定の一方向に伝播する。
なお、上記のように、全反射により伝播する光は外部に漏れないため、外部から見ると少なくとも線状導光路131は透明に見える。
図10(A)は、全反射の原理を説明するための図である。また、図10(B)は、具体的数値の一例を示す図である。
スネルの法則(屈折の法則)によれば、媒質Aから媒質Bへの入射角をθ1、媒質Aから媒質Bへの屈折角をθ3、媒質Aの絶対屈折率をnA、媒質Bの絶対屈折率をnBとすると、以下の関係が成り立つ。
sinθ1/sinθ3=nB/nA
ここで、絶対屈折率とは、光波における真空に対する物質固有の相対屈折率のことである。屈折が起こる最大の入射角である臨界角(θ3=90°となる)では、屈折光がなくなり、反射光のみとなる。上記の公式から、臨界角の大きさは、媒質の屈折率によって定まることがわかる。nA>nBで、光が媒質Aから媒質Bに入射するとき、臨界角θm(媒質Aから媒質Bへの入射角)は、次のようになる。
sinθm=sinθm/sin90°=nB/nA
したがって、媒質Aから媒質Bへの入射角θ1について、
θ1>θm
という関係を満たすことが、全反射の起こる条件となる。なお、反射の法則によれば、境界面(反射面)で反射する光の入射角θ1と反射角θ2は等しい(θ1=θ2)。
例えば、媒質Aを紫外線硬化樹脂、媒質Bを空気とすると、紫外線硬化樹脂の絶対屈折率は約1.5、空気の絶対屈折率は約1.0であるため、臨界角θmは、sinθm=1.0/1.5から、θm=41.8103°となり、約42°となる。したがって、この臨界角(約42°)以上で入射する光、つまり、境界面に対して約48°以下の角度で入射する光は、すべて反射光となる(全反射)。
本実施の形態は、このような全反射の原理、具体的には、例えば、紫外線硬化樹脂から空気へ光が入射する場合に、境界面(接平面)に対して約±48°以内で入射する光はすべて境界面で全反射され進行方向に伝播するという原理を、平面上に印刷した導光路での光の伝播に利用したものである。
なお、法線配光部120は、法線集光部110からの光を効率良く線状導光部130内に入光させることを目的としており、この目的を達成するため、法線集光部120は、種々の適当な構成をとることができる。
図11は、法線配光部120の他の構成を示す概略図であり、特に、図11(A)は、要部概略図、図11(B)は、概略平面図である。
図11に示す例では、法線配光部120bの法線配光路121aは、1つの線状導光路131にのみ接続されている。法線配光路121aの入口122および出口125はそれぞれ楕円形状を有し、法線配光路121aは楕円錐台の形状をしている。法線配光路121aの出口125の面積は、入口122の面積と異なり、できるだけ小さく設定されている。これにより、線状導光路131から法線配光路121aに逆行する光の量を少なくすることができる。また、特に図11(B)によく示すように、平面上、法線配光路121aの入口122の中心点を線状導光路131の中心線からオフセットさせる(好ましくは、線状導光路131の外にオフセットさせる)こと、および、法線配光路121aと線状導光路131内の光伝播方向とのなす角度を鈍角にすることによって、線状導光路131から法線配光路121aに逆行する光の量を更に少なくすることができる。
図12は、法線配光部120のさらに他の構成を示す概略図であり、特に、図12(A)は、法線配光路の概略斜視図、図12(B)は、法線配光路の概略側面図、図12(C)は、法線配光路の第1の形態例を示す概略背面図、図12(D)は、法線配光路の第2の形態例を示す概略背面図である。また、図13は、図12の法線配光路を有する法線配光部の構成を示す概略斜視図である。
図12および図13に示す例では、法線配光部120cの法線配光路121bは、1つの線状導光路131にのみ接続されている。法線配光路121bの入口および出口はそれぞれ四角形(この例では、長方形または正方形)の形状を有し、法線配光路121bは四角錐台の形状をしている。法線配光路121bについても、出口の面積は、入口の面積と異なり、できるだけ小さく設定されている。図12(C)は、法線配光路121bの入口と出口の中心線が一致している場合であり(第1の形態例)、図12(D)は、法線配光路121bの入口と出口の中心線がずれている場合である(第2の形態例)。線状導光路131から法線配光路121bに逆行する光の量を少なくするためには、図12(C)に示す第1の形態例よりも図12(D)に示す第2の形態例のほうが好ましい。なお、図12において、「111」は、法線配光路121bの入口が存在する、法線集光部110aのシート基板の一部を示し、「131」は、法線配光路121bの出口が存在する、線状導光路の一部を示している。
図14は、線状導光シート部160aおよび光圧縮シート部170aの構成の一例を示す概略図であり、図15は、図14に示す光高圧縮機能部の拡大図である。
図14に示す線状導光シート部160aは、上記のように、線状の特定方向に集光された光をさらに線状に圧縮集光しながら所定の一方向に導く(転送する)機能を有する。この線状導光シート部160aは、図14に示すように、複数(ここでは3つ)の組の線状導光路群161を有する。図14に示す例では、線状導光路群161は、5つの線状導光路131で構成されている。各線状導光路群161において、5つの線状導光路131の出口はすべて、対応する1つの1次光圧縮レンズ部162に接続されている。1次光圧縮レンズ部162は、線状導光路131内を伝播した光(1次光)を、レンズ作用により圧縮集光する機能を有する。したがって、各線状導光路群161において、5つの線状導光路131内をそれぞれ伝播した光(1次光)は、1次光圧縮レンズ部162で圧縮集光され、1本のビーム(1次圧縮光)163として出力される。一方、5つの線状導光路131の入口は、例えば、線状導光シート部160aの光入力接合部164および平面集光シート部150aの光出力接合部(図示せず)によって、平面集光シート部150aの対応する線状導光路131にそれぞれ接続可能となっている。
図14に示す光圧縮シート部170aは、上記のように、複数の線状導光路131内を進んで入射した光をまとめて高圧縮光(高圧縮された光)に変換し、出力する機能を有する。この光圧縮シート部170aは、図14に示すように、1次圧縮光集光レンズ部171および光高圧縮機能部172を有する。1次圧縮光集光レンズ部171は、線状導光シート部160aから出力された複数本(ここでは3本)のビーム(1次圧縮光)163を、レンズ作用により圧縮集光する機能を有する。1次圧縮光集光レンズ部171で圧縮集光された光は、1本のビーム(2次圧縮光)173として光高圧縮機能部172に入射される。光高圧縮機能部172は、1次圧縮光集光レンズ部171で圧縮集光された光(2次圧縮光)173をさらに圧縮する機能を有する。光高圧縮機能部172は、例えば、複数組の平面レンズ(凹凸レンズ)を内蔵し、平面レンズの作用により2次圧縮光173を段階的に細線化して順次更にエネルギー密度を高めるように構成されている。
より具体的には、光高圧縮機能部172は、図15に示すように、導光路174の中に凹凸レンズ175a、175bを組み合わせた構成を有し、この構成により、2次圧縮光173を更に細線化して2次圧縮光のエネルギー密度を高めて、圧縮光出力部176から外部に出力する機能を有する。図15において、例えば、白抜きの部分は、樹脂が充填されていないため、屈折率は1.0になる。一方、白抜きの部分以外の部分は、樹脂が充填されているため、屈折率は1.5程度である。そのため、白抜きの部分の形状が凹レンズの形状であれば、その部分は通常の凸レンズの機能を有する(凸レンズ175a)。逆に、白抜きの部分の形状が凸レンズの形状であれば、その部分は通常の凹レンズの機能を有する(凹レンズ175b)。したがって、この2種類のレンズ175a、175bの組合せにより、順次光を収束光とすることができる。
線状導光シート部160aと光圧縮シート部170aの接続は、例えば、線状導光シート部160aの光出力接合部165と光圧縮シート部170aの光入力接合部177を所定の位置で接合することによって行われる。ここで、「所定の位置で」とは、線状導光シート部160aの光出力接合部165に取り付けられた導光路(1次圧縮光出力部)166の位置と光圧縮シート部170aの光入力接合部177に取り付けられた導光路(1次圧縮光入力部)178の位置とが合うことを意味する。
したがって、線状導光シート部160aと光圧縮シート部170aが接続された状態において、線状導光シート部160a内を伝播した光は、1次圧縮光出力部166および1次圧縮光入力部178により光圧縮シート部170a内に導かれる。具体的には、例えば、図14に示す例では、線状導光シート部160aの15(=5×3)個の線状導光路131に入射した光は、対応する線状導光路131内を全反射により伝播し、3個の1次光圧縮レンズ部162により3本のビーム(1次圧縮光)163にまとめられ、対応する一対の1次圧縮光出力部166および1次圧縮光入力部178により光圧縮シート部170a内にそれぞれ入光する。そして、光圧縮シート部170a内に入光した3本の1次圧縮光163は、1個の1次圧縮光集光レンズ部171により1本のビーム(2次圧縮光)173にまとめられ、光高圧縮機能部172に導かれる。そして、光高圧縮機能部172内に入光した1本の2次圧縮光は、平面レンズ(凹凸レンズ175a、175b)の作用により段階的に細線化して順次更にエネルギー密度が高められ、高圧縮光として圧縮光出力部176から出力される。
図16は、図14の構成を組み合わせた全体構成の一例を示す概略図である。
図16に示す例では、6個の線状導光シート部160aと4個の光圧縮シート部170aが組み合わされている。具体的には、図16のシステムは、6個の線状導光シート部160aをそれぞれ3個ずつ前段と後段の2つに分けて、前段の線状導光シート部160aと後段の線状導光シート部160aを3列並列にそれぞれ接続し、後段の3列の線状導光シート部160aを3個の光圧縮シート部170にそれぞれ1対1で接続し、この3列の光圧縮シート部170を1個の光圧縮シート部170に接続して構成されている。また、この例では、前段の線状導光シート部160aの各線状導光路群161で圧縮集光した光を、後段の線状導光シート部160aの各線状導光路群161のうち1つの線状導光路131に入光させるようにしている。このとき、後段の線状導光シート部160aの各線状導光路群161に対応する1次光圧縮レンズ部162から出力される光(1次圧縮光)163は、新たに入光した光と前段からの1次圧縮光との和になる。この接続を複数回繰り返すことにより、更に大量の光を得ることができる。
次に、平面集光シート部150aにおける法線配光路121および線状導光路131の製造方法について、図面を用いて説明する。なお、ここでは、一例として、例えば、スクリーン印刷を利用して、法線配光路121および線状導光路131を製造する場合について説明する。
まず、図17〜図19を用いて、スクリーン印刷により透明のシート基板151上に線状導光路131を形成(印刷)する場合について説明する。ここで、図17は、線状導光路131の製造方法の一例を示す工程別断面図である。図18は、図17に示すスクリーン印刷原版と当該スクリーン印刷の結果物との対応関係を示す概略斜視図である。図19は、紫外線照射工程を説明するための概略図である。
まず、図17(A)に示すように、線状導光路131のパターンを形成するためのスクリーン印刷原版300を用意する。この線状導光路パターン用のスクリーン印刷原版300は、例えば、ステンレスシートやアルミニウム箔シートなどのシート材301に、紫外線(UV光)を透過させるパターン部(切り抜き部)302を形成してなる。具体的には、例えば、YAGレーザ機などにより、線状導光路131のパターン形状に合わせてシート材301を切り抜く。このスクリーン印刷原版300は、好ましくは、その厚さを無視できる程度の厚さ、例えば、数十ミクロン(μm)程度の厚さを有する。一例として、スクリーン印刷原版300は、例えば、10μm厚のステンレスシートである。
そして、図17(B)に示すように、透明のシート基板151上に図17(A)のスクリーン印刷原版300を設置した後、スクリーン印刷原版300の切り抜き部302に液状の紫外線硬化樹脂303を充填塗布する。スクリーン印刷原版300の切り抜き部302に充填塗布された液状の紫外線硬化樹脂303は、紫外線の照射を受けない限り、硬化することはなく、非硬化の状態である。液状の紫外線硬化樹脂303は、ある程度粘性を持った樹脂を使用するため、液状ではあるものの、充填塗布された形を維持することができる。図18も参照。
そして、図17(C)に示すように、シート面に対し法線方向から紫外線(UV光)を照射する。これにより、切り抜き部302内の紫外線硬化樹脂303は硬化して線状導光路131のパターンが形成される。
具体的には、この紫外線照射工程は、例えば、従来のスクリーン印刷における紫外線照射法によって実施することができる。すなわち、従来のスクリーン印刷では、シート面の法線方向から角度をずらして紫外線を照射することは考えられていなかった。むしろ、従来のスクリーン印刷では、完全に法線方向から照射することが重要であった。そのため、従来の紫外線照射法では、紫外線光源からの紫外線(UV光)をフレネルレンズなどの光学系を用いて平行光にしてシート面の法線方向から照射していた。例えば、図17(C)の紫外線照射工程では、図19(A)に示すように、紫外線光源400をシート面からから離れた位置に配置し、この紫外線光源400からの紫外線を、例えば、フレネルレンズ401を用いてシート面の法線方向からの平行光にして非硬化状態の紫外線硬化樹脂303に照射する。なお、紫外線光源400からの紫外線の有効利用を図るため、紫外線光源400の背面側(照射方向の後ろ側)に反射板402を設置して、紫外線光源400からの紫外線を反射して照射方向に向けるようにしている。
そして、図17(D)に示すように、シート基板151上のスクリーン印刷原版300を除去する。これにより、シート基板151上に線状導光路131のパターンが印刷される(図19(B)参照)。
なお、上記の例では、スクリーン印刷原版300を設置したまま紫外線を照射しているが、これに限定されない。例えば、スクリーン印刷原版300の切り抜き部302に充填塗布された液状の紫外線硬化樹脂303は、上記のように、樹脂の粘性により、充填塗布された形を保持することができ、スクリーン印刷原版300を除去しても形が崩れるおそれがないため、スクリーン印刷原版300を除去した後に紫外線を照射することも可能である。
次に、図20〜図30を用いて、スクリーン印刷により線状導光路131上に法線配光路121を形成(印刷)する場合について説明する。なお、ここでは、法線配光路121の形状としていくつかの形状を例にとって、それぞれに応じた製造方法を説明する。
まず、図20および図21を用いて、法線配光路121が直方体の形状を有する場合の製造方法について説明する。ここで、図20は、法線配光路121が直方体の形状を有する場合のスクリーン印刷原版と当該スクリーン印刷の結果物との対応関係を示す概略斜視図である。図21(A)は、法線配光路121が直方体の形状を有する場合のスクリーン印刷原版を示す概略斜視図、図21(B)は、図21(A)のスクリーン印刷原版を用いたスクリーン印刷の結果物を示す概略斜視図である。
この場合、法線配光路121cが直方体の形状を有するため、線状導光路131と同様の製造方法を用いて線状導光路131上に法線配光路121cを形成(印刷)することができる。すなわち、直方体の法線配光路121cのパターンを形成するためのスクリーン印刷原版310を用意する。このスクリーン印刷原版310は、例えば、ステンレスシートやアルミニウム箔シートなどのシート材311に、紫外線(UV光)を透過させるパターン部(切り抜き部)312を形成してなる。具体的には、例えば、YAGレーザ機などにより、法線配光路121cのパターン形状に合わせてシート材311を切り抜く。このスクリーン印刷原版310は、好ましくは、その厚さを無視できる程度の厚さ、例えば、数十ミクロン(μm)程度の厚さを有する。一例として、スクリーン印刷原版310は、例えば、10μm厚のステンレスシートである。なお、その後の工程は、図17(B)〜図17(D)と同様であるため、その説明を省略する。
次に、図22および図23を用いて、法線配光路121が四角錐台の形状を有する場合の製造方法について説明する。ここで、図22は、四角錐台の形状を有する法線配光路121の製造方法の一例を示す工程別断面図である。図23(A)は、図22に示すスクリーン印刷原版を示す概略斜視図、図23(B)は、図23(A)のスクリーン印刷原版を用いたスクリーン印刷の結果物を示す概略斜視図である。
まず、図22(A)に示すように、四角錐台の法線配光路121bのパターンを形成するためのスクリーン印刷原版320を用意する。このスクリーン印刷原版320は、例えば、ステンレスシートやアルミニウム箔シートなどのシート材321に、紫外線(UV光)を透過させるパターン部(切り抜き部)322を形成してなる。具体的には、例えば、YAGレーザ機などにより、法線配光路121bのパターン形状に合わせてシート材321を切り抜く。このスクリーン印刷原版320は、好ましくは、その厚さを無視できる程度の厚さ、例えば、数十ミクロン(μm)程度の厚さを有する。一例として、スクリーン印刷原版320は、例えば、10μm厚のステンレスシートである。
そして、図22(B)に示すように、線状導光路131のパターンが印刷されたシート基板151上に、液状の紫外線硬化樹脂323を所定の厚さで充填塗布する。このとき、液状の紫外線硬化樹脂323上には、図22(A)のスクリーン印刷原版320が設置されている。その後、この状態において、例えば、法線方向から60°傾斜した方向から、スクリーン印刷原版320の裏面の製造用透明基板シート325に向けて、紫外線(UV光)を照射する。この紫外線は、スクリーン印刷原版320の切り抜き部322を通過して液状の紫外線硬化樹脂323に到達する。これにより、液状の紫外線硬化樹脂323は、紫外線が照射された部分324のみが硬化する。
そして、図22(C)に示すように、今度は、紫外線の照射角度を変えて、例えば、法線方向から45°傾斜した方向から、同じくスクリーン印刷原版320の裏面の製造用透明基板シート325に向けて、紫外線(UV光)を照射する。この紫外線は、切り抜き部322を通過して別の領域の液状の紫外線硬化樹脂323に到達する。これにより、最終的に、法線配光路121bのパターンに相当する部分の紫外線硬化樹脂323が硬化して、法線配光路121bのパターンが形成される。
そして、図22(D)に示すように、スクリーン印刷原版320を除去し、さらに、非硬化樹脂、つまり、残存する液状の紫外線硬化樹脂323を洗浄して除去する。これにより、線状導光路131のパターン上に四角錐台の法線配光路121bのパターンが印刷される(図23(B)参照)。
なお、スクリーン印刷では、何度も上塗りして厚さを高くすることにより立体的な構造を形成することができる。そのため、立体的な構造の場合、通常、スクリーン印刷の原版の厚さと実際に印刷された厚さとは異なる。また、スクリーン印刷原版を通して紫外線を法線方向からずれた角度で照射する場合、原版の厚さが薄いほど、照射角度を大きくとることができる、つまり、法線方向から大きくずれた角度で照射することができる。
次に、図24を用いて、法線配光路121が楕円錐台の形状を有する場合の製造方法について説明する。ここで、図24(A)は、法線配光路121が楕円錐台の形状を有する場合のスクリーン印刷原版を示す概略斜視図、図24(B)は、図24(A)のスクリーン印刷原版を用いたスクリーン印刷の結果物を示す概略斜視図である。
この場合、法線配光路121aが楕円錐台の形状を有するため、四角錐台の形状を有する法線配光路121bと同様の製造方法を用いて線状導光路131上に法線配光路121aを形成(印刷)することができる。すなわち、楕円錐台の法線配光路121aのパターンを形成するためのスクリーン印刷原版330を用意する。このスクリーン印刷原版330は、例えば、ステンレスシートやアルミニウム箔シートなどのシート材331に、紫外線(UV光)を透過させるパターン部(切り抜き部)332を形成してなる。具体的には、例えば、YAGレーザ機などにより、法線配光路121aのパターン形状に合わせてシート材331を切り抜く。このスクリーン印刷原版330は、好ましくは、その厚さを無視できる程度の厚さ、例えば、数十ミクロン(μm)程度の厚さを有する。一例として、スクリーン印刷原版330は、例えば、10μm厚のステンレスシートである。なお、その後の工程は、図22(B)〜図22(D)と同様であるため、その説明を省略する。
なお、法線配光路121が円錐台の形状を有する場合も、楕円錐台の形状を有する法線配光路121aと同様の製造方法を用いることができる。そこで、以下の説明では、便宜上、「楕円錐台」は円錐台を含むものとする。
上記のように、法線配光路121の形状が楕円錐台(法線配光路121a)または四角錐台(法線配光路121b)の場合には、照射角度を変えて紫外線(UV光)の照射を行う必要がある(特に図22(B)および図22(C)参照)。上記した従来のスクリーン印刷では、法線方向からずれた角度で照射を行う方法として、例えば、光源全体を回転させるか、あるいは、フレネルレンズを傾けることが考えられる。しかし、この方法では、光源からシート面までの距離に差が発生し、シート面上の全領域に均一に照射できないという問題がある。そこで、照射角度を可変することができ、かつ、シート面上に一様に照射することができる方法が必要である。本発明者は、鋭意努力の結果、この2つの要件を満たす照射方法(以下「可変角ライン照射法」という)を見出した。
図25は、可変角ライン照射法の概念を説明するための概略図、図26は、図25の可変角ライン照射法を実現する具体的手段の一例を示す概略図である。なお、ここでは、楕円錐台の形状を有する法線配光路121aを製造する場合を例にとって説明する。
可変角ライン照射法では、図25に示すように、スクリーン印刷原版330を通して、印刷する法線配光路121aの反対側から、可変照射角近接光340を照射する。ここで、可変照射角近接光とは、紫外線の照射角度を可変にできる照射装置から、近接の照射対象に照射される光(近接の照射光)のことである。具体的には、紫外線の照射角度を可変にできる照射装置において、後述する内蔵のマイクロレンズが照射対象に近接(1mm程度以下)しており、このマイクロレンズの焦点距離を500ミクロン(μm)程度とした場合、このマイクロレンズと照射対象との距離を調整することで、照射光の広がりを調整することができる。さらに、例えば、2層のマイクロレンズの配置のパターンを照射対象に合わせて細かく調整することもできる。このような特徴を有する照射光が、可変照射角近接光である。そして、この可変照射角近接光340が照射された部分が硬化した後、非硬化部分を洗浄して除去する。
可変照射角近接光340は、図26に示すように、可動照射ライン部500から出射される。可動照射ライン部500は、例えば、線状導光路131の伸長方向(長手方向)と直角の方向に伸長するライン状の照射ユニットであって、線状導光路131の伸長方向に可動自在に構成されている。可動照射ライン部500は、スクリーン印刷原版330を挟んで、印刷する法線配光路121aの反対側に設置される。
図27は、可動照射ライン部500の構成の一例を示す概略図であり、特に図27(A)は断面図、図27(B)は平面図である。
図27に示す可動照射ライン部500は、線状の紫外線光源501と、紫外線光源501からの紫外線(UV光)の一部を反射させる線状の第1反射板502と、紫外線光源501からの紫外線および第1反射板502で反射された紫外線を出口方向に反射させる線状の第2反射板503と、第2反射板503で反射された紫外線を照射光として出射する線状の照射光出口部504とを有する。線状の紫外線光源501としては、例えば、高圧水銀ランプなどの線状光源や、複数の紫外線LED(Light Emitting Diode)を線状に並べた光源などを用いることができる。
第1反射板502は、好ましくは、伸長方向(長手方向)に垂直な断面が放物線の形状をしている。この場合、紫外線光源501は、放物線(第1反射板502)の焦点に配置される。これにより、特に図27(A)によく示すように、放物線の焦点(紫外線光源501)から出た同一の垂直断面上の光は、放物線の曲面で反射されると、すべての光が放物線の中心軸の方向に反射される。すなわち、紫外線光源501から出て第1反射板502で反射された紫外線は、第2反射板503の方向に向かう平行光となる。
第2反射板503は、角度を可変することができる板状の反射板であり、回転軸503aの回りに回転自在に構成されている。第2反射板503の角度を変化させることにより、被照射シート350への紫外線の照射角度を変えることができる。ここで、被照射シート350とは、紫外線を照射する対象となるシートを広く意味し、例えば、硬化させるべき紫外線硬化樹脂を含む任意の段階のシートを含んでいる。なお、被照射シート350への照射パターンは、照射パターン形成シートとして機能するスクリーン印刷原版330によって形成される。照射パターン形成シート(スクリーン印刷原版330)と被照射シート350とは、被照射シート350の上部の紫外線硬化部の平坦度を確保するため、微小な距離だけ離れており、密着していない。照射パターン形成シート(スクリーン印刷原版330)と被照射シート350とは、数十ミクロン(μm)程度の距離をとることが望ましい。
照射光出口部504は、例えば、図27(A)に示すように、2層のマイクロレンズアレイ505、506を有する。このうち、照射対象に近いほうが近焦点マイクロレンズアレイである。ここで、近焦点マイクロレンズアレイとは、上記の可変照射角近接光340を形成するためのマイクロレンズアレイのことである。具体的には、上記のように、紫外線の照射角度を可変にできる照射装置において、内蔵のマイクロレンズアレイ506が照射対象(照射パターン形成シート(スクリーン印刷原版330)および被照射シート350)に近接(1mm程度以下)しており、このマイクロレンズアレイ506の焦点距離を500ミクロン(μm)程度とした場合、このマイクロレンズアレイ506と照射対象との距離を調整することで、照射光の広がりを調整することができる。さらに、2層のマイクロレンズアレイ505、506の配置のパターンを照射対象に合わせて細かく調整することもできる。このような特徴を有するマイクロレンズアレイが、近焦点マイクロレンズアレイである。また、2層のマイクロレンズアレイ505、506において、第1層のマイクロレンズアレイ505のマイクロレンズの大きさは、第2層のマイクロレンズアレイ506のマイクロレンズの大きさよりも大きい。なぜなら、第1層のマイクロレンズアレイ505は、放物面を有する第1反射板502の作用と相俟って、第2層のマイクロレンズアレイ506に対し法線方向から一様に紫外線(UV光)を入射させるため、紫外線光源501の平面方向の広がりを法線方向に修正する機能を有し、このためには、照射強度を一様にするため、第1層のマイクロレンズアレイ505のマイクロレンズを、第2層のマイクロレンズアレイの506のマイクロレンズよりも大きくする必要があるためである。
図28は、照射光出口部504の周辺の概略要部拡大図である。ここでは、図28に示す距離d(近焦点マイクロレンズアレイと照射対象との距離)を変化させて紫外線の放射パターンを調整する。ここで、紫外線の放射パターンの調整とは、照射光の広がり具合を焦点距離からのずれで調整することを意味する。すなわち、照射ポイントの大きさに合わせて、近焦点マイクロレンズアレイ506と被照射シート350上の照射パターン形成シート(スクリーン印刷原版330)との距離dを変化させる。また、照射光出口部504に装着するアレイユニット(マイクロレンズアレイの構成と組合せ)は、被照射シート350への照射パターンに応じて交換可能である。例えば、線状導光部130aのシートを作成する場合、本来UV光を照射する必要のある部分と照射する必要のない部分とがあり、照射する必要のある部分にのみUV光を照射できるようにマイクロレンズアレイのパターを最適化することができる。この最適化したマイクロレンズアレイの部分をユニット化して被照射シートごとに交換することにより、UV光のエネルギーを有効に利用することができる。なお、図28において、「351」は、被照射シート350のうち、紫外線が照射されずに非硬化状態の部分(紫外線非硬化部)を示し、「352」は、紫外線が照射されて硬化状態の部分(紫外線硬化部)を示している。
図29は、図27(B)に実線矢印で示す左右の斜め方向に向かう光線を可動方向に水平にする作用を説明するための概略図である。第1層のマイクロレンズアレイ505は、上記のように、放物面を有する第1反射板502の作用と相俟って、第2層のマイクロレンズアレイ506に対し法線方向から一様に紫外線(UV光)を入射させるため、紫外線光源501の平面方向の広がりを法線方向に修正する機能を有する。これにより、左右方向に進行する光を進行方向にそろえることができる。
図30は、可動照射ライン部500の更なる利用法を説明するための概略図である。ここでは、可動照射ライン部500を可動方向に対して回転させることにより、更に柔軟な可変角照射が可能になる。具体的には、可動照射ライン部500の上記の利用法では、可動方向に対して照射光の角度を変化させることはできるものの、このままでは可動方向に垂直な方向には照射角度を変化させることができない。そこで、可動照射ライン部500を可動方向にある角度だけ傾けることにより、可動方向に垂直な方向からも照射することが可能になる。その際、被照射シートそのものを回転させて照射角度を調整することも考えられるが、可動照射ライン部500を回転させて照射角度を調整するほうが、形成精度が良好となる。なぜなら、被照射シートそのものを回転させて照射角度を調整する方法では、被照射シートを可動方向に対して目的の角度に回転して配置し直す必要があるが、可動照射ライン部500を回転させて照射角度を調整する方法では、可動照射ライン部500を、例えば、1ミクロン(μm)のピッチでその位置を確認しながら高精度に進めることができ、可動照射ライン部500の両端の位置を検出し制御することで、高精度にその角度を調整することができるからである。
このように、可変角ライン照射法では、光源501から照射ポイントまでの距離が短く、かつ、ライン上の照射パターンであるため、効率良く強力な紫外線(UV光)を被照射シート350内の特定の場所に照射することができる。また、光源501の熱の発生を大きく減少することができる。すなわち、従来の照射法において平面上に1度に照射していた紫外線を、この可変角ライン照射法では、ライン上に順次照射し、しかも、必要な場所にのみ照射するため、紫外線のロスを大幅に低減することができ、その分、消費電力を抑え、熱の発生を減少することができる。
なお、線状の紫外線光源501としては、上記のように、例えば、高圧水銀ランプなどの線状光源や、紫外線LEDを線状に配列した光源などを用いることができる。LEDを用いる場合は、LEDの輝度をマイクロ秒(μs)オーダで動的に制御できるため、柔軟な照射システムを構成することができる。また、紫外線LEDを線状に配列する場合には、LEDの発光期間をLED素子ごとに細かく調整することにより、被照射シート350内の特定の場所の放射輝度を変えることができる。したがって、シート面内の紫外線の放射輝度を自由に制御することができる。
なお、紫外線硬化樹脂を用いた印刷方法として、上記したスクリーン印刷技術のほかに、インクジェット印刷技術やオフセット印刷技術などを利用することもできる。すなわち、紫外線の照射角度を複数回変えて硬化させることによりシート上に微細な立体構造を形成することができる印刷技術であれば、どのような印刷技術を利用してもよい。印刷技術を用いた場合には、安価に大量に製造できるという利点があるが、それ以外にも、例えば、LSIなどの製造に用いられるフォトリソグラフィやスパッタリング、エッチングなどの技術を用いて、線状導光部130aを製造できるという利点がある。また、特に線状導光路131の形成方法については、上記の印刷技術のほかに、一般的なプラスチック成型技術を利用することも可能である。
このように、本実施の形態によれば、法線集光部110、法線配光部120、および線状導光部130を設けて、外部から照射される光を集光して所望の方向に配光できるようにしたため、広範囲の角度で入射する光を効率的に集光することができる。
また、特に法線配光部120および線状導光部130は、複数層の紫外線硬化樹脂を用いた印刷技術により製造できるため、光応用システム部200のLSI素子(例えば、PV装置の太陽電池など)とは物理的に独立して製造することができる。したがって、軽量でフレキシブル(折り曲げ可能)な機械特性を持つことができる。さらに、一般的な紫外線印刷技術により製造が可能であるため、大量に安価に製造することができる。
また、所定の機能単位でユニット化できるため、高い利便性・汎用性を実現することができる。