JP5269516B2 - 耐アーク性絶縁物および遮断器 - Google Patents

耐アーク性絶縁物および遮断器 Download PDF

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Description

本発明は、耐アーク性に優れた絶縁物に関し、特に、電極と電極の間にアークが発生する遮断器等に使用することが好適な耐アーク性絶縁物およびこの耐アーク性絶縁物からなるノズルを備えた遮断器に関する。
例えば、遮断器やアークシュートブレーカのように、装置中の電極間でアークが発生する装置がある。発生したアークを、遮断器では、例えば、電極間に六フッ化硫黄ガス(SFガス)を吹き付けて消したり、アークシュートブレーカでは、例えば、電極両側に設置したコイルによって磁界を与え、アークシュートという領域に六フッ化硫黄ガスを吹き込んで消したりしている。また、これらの装置では、発生したアーク近傍に絶縁物を設置し、アークの熱や紫外線を多量に含む光から、装置の構成部分を保護している。
従来、このような遮へい用の絶縁物として、他の物質からなる充填材を含有しない、無充填のフッ素系樹脂が使用されている。しかし、無充填のフッ素系樹脂を用いた場合、遮断時のアークで発生する多量の紫外線により、フッ素樹脂の内部で樹脂が分解し、導電性を有する炭化物が生成する。そのため、電気的な絶縁性能が著しく低下するという問題があった。
また、樹脂の内部炭化により発生したガスが、樹脂の内部から樹脂表面に向かって噴出し、フッ素系樹脂が吹き飛ばされるという現象が起き、樹脂の表面に著しい凸凹が形成され、遮へい用に設置した絶縁物の機械的強度が大幅に低下するといった問題があった。
このような問題に対して、フッ素樹脂に窒化ホウ素(BN)を充填することにより、アークからの光を反射して樹脂内部への光の進入を防ぎ、内部劣化を防ぐ技術が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。このフッ素樹脂には、窒化ホウ素(BN)が1重量%〜10重量%充填されている。
また、高分子絶縁物に、粒径が1μm以下の無機顔料および/または粒径が0.5μm以下の有機顔料を0.2〜5重量%添加する技術が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。特許文献2では、例えば、300℃前後での焼成を必要とするポリ四フッ化エチレン樹脂に、百数十度の耐熱性を有する有機顔料や300℃以上の温度で徐々に変色する群青等を充填することが示されている。
特許第2581606号公報 特公昭62−60783号公報
しかしながら、上記した従来の窒化ホウ素が充填されたフッ素樹脂では、窒化ホウ素が高い熱伝導率を有することから、窒化ホウ素を充填したフッ素系樹脂の熱伝導率が高くなり、アーク熱の熱伝導範囲が拡大し、フッ素系樹脂の損耗が増加するという問題があった。
また、上記した従来の無機顔料を含有した高分子絶縁物では、無機顔料が、紫外光だけではく、本来遮へいする必要性が低い可視光を吸収するため、その分温度が上昇して材料の損耗が増加するといった問題があった。
このように、遮断器等に用いられている従来の絶縁物では、絶縁性能や耐アーク性能の低下を防止しつつ、遮断後の損耗量を低減することは困難であった。
そこで、本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、アークによる内部劣化を防止することができるとともに、損耗を防止することができる耐アーク性絶縁物およびこの耐アーク性絶縁物からなるノズルを備える遮断器を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明の一態様によれば、電極と電極の間に発生するアークの近傍に配置する耐アーク性絶縁物であって、所定のフッ素系樹脂に、前記フッ素系樹脂の焼成で変色しない耐熱性を有する、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、窒化ホウ素および酸化チタンのうちのいずれか1つの白色系無機物で被覆された、前記フッ素系樹脂の焼成で変色しない耐熱性を有する、酸化チタン、酸化亜鉛および酸化セリウムのうちの少なくとも1つで構成され、かつ平均粒径が0.2μm以下である無機紫外線遮へい材を前記フッ素系樹脂の重量の0.1〜1%含有してなることを特徴とする耐アーク性絶縁物が提供される。
また、本発明の一態様によれば、固定電極とその固定電極に接離する可動電極とそれらの電極間に設けられた絶縁物からなるノズルとを備え、電流遮断時に前記電極間に発生するアークに前記ノズルからガスを吹き付けて消孤する遮断器であって、前記絶縁物が、上記した耐アーク性絶縁物であることを特徴とする遮断器が提供される。
本発明に係る耐アーク性絶縁物およびこの耐アーク性絶縁物からなるノズルを備える遮断器によれば、アークによる内部劣化を防止することができるとともに、損耗を防止することができる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明に係る一実施の形態の耐アーク性絶縁物10の断面を模式的に示した図である。
本発明に係る一実施の形態の耐アーク性絶縁物10は、図1に示すように、フッ素系樹脂20に、フッ素系樹脂の焼成で変色しない耐熱性、耐薬品性を有する無機紫外線遮へい材30を含有して構成されている。
フッ素系樹脂20としては、特に、ポリ四フッ化エチレン樹脂または四フッ化エチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重体を用いることが好ましい。ポリ四フッ化エチレン樹脂の融点は約327℃であり、また、四フッ化エチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重体の融点は約302〜310℃であり、これらはフッ素系樹脂の中でも高い耐熱性を有しているからである。
また、ポリ四フッ化エチレン樹脂は溶融時の粘度が高いため、高温で溶融しても元の形状を維持することができるという特徴がある。このような特性を生かすことにより、本実施の形態の耐アーク性絶縁物10を、アークに対して適切な距離を確保して配置することで、アークによって加熱されたとしても、熱による変形を防止することができる。
さらに、ポリ四フッ化エチレン樹脂および四フッ化エチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重体は、加熱分解時に、高分子を構成する単位構造分子となってガス化するため、炭化物が残らず、導電性物質の生成による絶縁性能の低下が起き難いという利点がある。さらに、分解してガス化する際に多量のエネルギを消費することによって冷却効果が発揮され、ポリ四フッ化エチレン樹脂自体および四フッ化エチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重体自体を保護する効果も得られる。
無機紫外線遮へい材30は、上記したように、フッ素系樹脂20の焼成で変色しない耐熱性、耐薬品性を有する。また、無機紫外線遮へい材30が、図1に示すように、アーク40から発生した光41のうち、主に内部劣化に関与する波長領域の光を吸収することにより、樹脂の内部での炭化物の形成を抑制し、内部に発生したガスによってフッ素系樹脂20が吹き飛ばされるという現象を防ぎ、絶縁性能の低下を抑えることができる。
すなわち、カーボンのような導電性物質を含有した場合には、含有量が少量であっても、フッ素系樹脂20の絶縁抵抗が低下して、近接されたアークが導電性物質を含有したフッ素系樹脂20の表面を流れやすくなり、耐アーク性が低下していた。これに対して、本実施の形態で用いられる無機紫外線遮へい材30を含有した場合には、フッ素系樹脂20の絶縁抵抗は低下せず、結果として耐アーク性の高い絶縁材料を得ることができる。
また、本実施の形態で用いられる無機紫外線遮へい材30としては、フッ素系樹脂20の焼成温度である300℃前後の温度で変化、変色しない耐熱性を有し、かつ焼成前のフッ素系樹脂20から発生するフッ素系ガスに侵されない耐薬品性を有するものを使用することが好ましい。耐熱性や耐薬品性を持たない無機紫外線遮へい材を使用した場合、フッ素系樹脂の焼成時に変色が発生したり、炭化物が生成するなど、導電性物質を含有した場合と同様に、絶縁性能の低下を招くからである。
上述したように、アーク40からの光41による劣化を抑えつつ、絶縁物の損耗を低減するためには、後述するように無機紫外線遮へい材30の含有率を適正化するとともに、適切な波長の光を吸収する無機紫外線遮へい材30を選択することが有効である。つまり、内部炭化に関与する波長領域の光を主に吸収し、それ以外の光を吸収しないようにすれば、内部炭化による絶縁性能の低下の抑制と、光と熱によるフッ素系樹脂20の損耗の低減という両方の効果が得られる耐アーク性に優れた絶縁物を得ることができると考えられる。
このような見地から本発明者等が鋭意検討を重ねた結果、白色系の無機紫外線遮へい材30をそれぞれ単独あるいは組み合わせて使用することにより、内部炭化による絶縁性能の低下の抑制と、光と熱によるフッ素系樹脂20の損耗の低減の両方の効果が得られることを見出したものである。
次に無機紫外線遮へい材30の具体的な構成について説明する。
無機紫外線遮へい材30は、酸化チタン、酸化亜鉛(ZnO)、酸化セリウム(CeO)のうちのいずれかで構成される。また、これらのうちのいずれかで構成された無機紫外線遮へい材30をそれぞれ単独で使用してもよいし、あるいは組み合わせて使用してもよい。例えば、酸化チタンで構成された無機紫外線遮へい材30と、酸化亜鉛で構成された無機紫外線遮へい材30とを所定の割合で混合して使用してもよい。
これらの無機紫外線遮へい材30は、耐熱性、耐薬品性に優れた無機物であり、フッ素系樹脂20に含有されても、焼成時の加熱で変化や変色を生じないものである。なお、酸化チタンには、その結晶状態の違いにより、ルチル型、アナターゼ型、ブルッカイト型があるが、フッ素系樹脂20に与えるダメージを抑えるため、活性度が低く、光触媒作用の小さなルチル型を選択することが好ましい。
無機紫外線遮へい材30を含有したときに下地を覆い隠す能力として「隠蔽力」という評価パラメータがある。この「隠蔽力」は、無機紫外線遮へい材30の表面で反射される光と無機紫外線遮へい材30に吸収される光で決まるものであり、反射光と吸収光の量が多いほど隠蔽力は高くなる。また、隠蔽力は、無機紫外線遮へい材30の粒子径とも関係があり、粒子径が小さくなる、例えば、粒子径が光の波長の1/2以下になると、一般的な反射、屈折と異なる光の散乱や回折現象が起きるため、隠蔽力が著しく低下することが知られている(例えば、色材工学ハンドブック (社)色材協会編 朝倉書店)。本発明では、紫外光を吸収し、可視領域の光をできる限り吸収しない構成を目指している。可視領域の最短波長の400nmを吸収し難くするためには、無機紫外線遮へい材30の平均粒径を200nm(0.2μm)以下にする必要がある。そのため、無機紫外線遮へい材30は、平均粒径が0.2μm以下であることが好ましい。なお、ここでの平均粒径は、空気透過法によって求められた値である。
また、無機紫外線遮へい材30は、フッ素系樹脂の焼成で変色しない耐熱性、耐薬品性を有する白色系無機物で被覆されてもよい。無機紫外線遮へい材30が酸化チタンで構成される場合には、被覆する白色系無機物として、二酸化ケイ素(SiO)、酸化アルミニウム(Al)、窒化ホウ素(BN)などが挙げられる。また、無機紫外線遮へい材30が酸化亜鉛または酸化セリウムで構成される場合には、被覆する白色系無機物として、二酸化ケイ素(SiO)、酸化アルミニウム(Al)、窒化ホウ素(BN)、酸化チタンなどが挙げられる。無機紫外線遮へい材30を被覆する被覆層は、無機紫外線遮へい材30の表面に複数の白色系無機物からなる微粒子が付着して形成される。そのため、被覆層を形成する白色系無機物の粒径は、無機紫外線遮へい材30よりも小さく、平均粒径で、例えば20nm以下のものが好ましい。この平均粒径の範囲の白色系無機物を使用することで、無機紫外線遮へい材30の表面を密に被覆することができる。また、被覆層は、白色度を高めたり、耐薬品性を向上させたり、無機紫外線遮へい材30どうしが凝集するのを防止するなどの機能があり、上記した平均粒径の範囲の白色系無機物を使用することで、これらの機能を十分に発揮することができる。
なお、この被覆層を備える場合においても、無機紫外線遮へい材30(被覆層を含む)の平均粒径は、上記した理由から、平均粒径が0.2μm以下であることが好ましい。
ここで、無機紫外線遮へい材30の表面に被覆層を形成する方法について説明する。
被覆層は、例えば、複合粒子製造装置を用いて形成することができる。この複合粒子製造装置は、乾式で微粉体どうしの接合を可能にするものである。具体的には、まず、母粒子である無機紫外線遮へい材30に、子粒子である白色系無機物からなる微粒子を所定の割合で混合する。続いて、この混合された粒子を被覆層形成工程を行う容器に投入する。この被覆層形成工程を行う容器では、粒子を気相中に分散させながら、衝撃力を主体とする機械的熱的エネルギを粒子に与え、母粒子の表面に子粒子を固定化する。そして、固定化された処理粉体は、捕集器で捕集される。このようにして、無機紫外線遮へい材30の表面に、白色系無機物の微粒子からなる被覆層が形成される。
上記した複合粒子製造装置として、例えば、ハイブリダイゼーションシステム(奈良機械製作所製)、循環型メカノフュージョンシステム(ホソカワミクロン社製)などが挙げられる。
次に、フッ素系樹脂20に含まれる無機紫外線遮へい材30の含有率について説明する。
本実施の形態の耐アーク性絶縁物10において、内部炭化を抑制する効果を得るためには、十分な光の吸収が必要であり、それに相当する無機紫外線遮へい材30の含有率が存在する。一方、無機紫外線遮へい材30を多量に充填すると、フッ素系樹脂20中のアーク40に起因する熱の伝導が高まり、その結果、フッ素系樹脂20からなる絶縁物の損耗量が増加する。したがって、添加する無機紫外線遮へい材30の量は、十分な光の吸収が得られるならば、できる限り少量に設定することが好ましい。
ここで、図2は、無機紫外線遮へい材30を含有したフッ素系樹脂20における、波長300nmでの光の反射率と無機紫外線遮へい材30の含有率の典型的な関係を示した図である。
図2に示すように、無機紫外線遮へい材30の含有率が、0.1重量%以上で、大半の光が吸収される反射率が40%以下となる。一方、無機紫外線遮へい材30の含有率が、1重量%を超えると反射率の急激な減少はなく、単調に減少する。上記したように、不必要に無機紫外線遮へい材30を含有することは、フッ素系樹脂20中のアーク40に起因する熱の伝導を高め、フッ素系樹脂20からなる絶縁物の損耗量を増加させることなる。したがって、フッ素系樹脂20に含まれる無機紫外線遮へい材30の含有率は、0.1重量%以上1重量%以下が好ましい範囲となる。また、この範囲において、安定した配合物の得やすさや、充填率誤差の影響の少なさ、製造のしやすさという観点から、フッ素系樹脂20に含まれる無機紫外線遮へい材30の含有率は、0.2重量%以上0.6重量%以下とすることが好ましい。
次に、耐アーク性絶縁物10の製造方法について説明する。
前述したフッ素系樹脂20の粉末に、前述した方法で形成された、白色系無機物で被覆された無機紫外線遮へい材30を、フッ素系樹脂20の重量の0.1〜1%添加し、均一に混合する。均一に混合された混合物を所定の型に充填して圧縮形成し、圧縮形成体を作製する。ここで、遮断器のノズルを作製する場合には、遮断器のノズルを作製できるサイズの、例えば、円柱状の圧縮形成体を作製する。
続いて、圧縮形成体を炉に設置し、温度を370℃程度まで徐々に上昇させ、フッ素系樹脂20の粉末を溶融して焼成する。その後、自然冷却により室温まで冷却し、成形品である耐アーク性絶縁物10が得られる。上記した全製造工程には40〜50時間程度費やされる。
ここで、遮断器のノズルを作製する場合には、円柱状の成形品をノズルの形状に機械加工することで、遮断器のノズルが得られる。
上記したように、本発明に係る一実施の形態の耐アーク性絶縁物10によれば、フッ素系樹脂20に、無機紫外線遮へい材30を所定の割合で含有することで、無機紫外線遮へい材30が、内部劣化に関与する紫外領域の光を吸収することができる。これによって、樹脂の内部での炭化物の形成を抑制し、内部に発生したガスによってフッ素系樹脂20が吹き飛ばされるという現象を防ぐことができ、絶縁性能の低下を抑えることができる。また、無機紫外線遮へい材30の表面を被覆層で覆うことで、白色度を高めたり、耐薬品性を向上させたり、無機紫外線遮へい材30どうしが凝集するのを防止することができる。
また、無機紫外線遮へい材30は、内部劣化の原因となる波長領域以外の光をほとんど吸収しないため、光や熱を吸収することによって生じる絶縁物表面からの樹脂の分解、気化、散逸を抑制することができる。そのため、内部劣化を抑えつつ、全体としての絶縁物の減少(損耗)を抑制することができる。
さらに、耐アーク性絶縁物10における無機紫外線遮へい材30の含有量は微量であるため、フッ素系樹脂の熱伝導率が上昇することがない。そのため、熱伝導領域が拡大することで生じるフッ素系樹脂の損耗量の増加を抑えることができる。また、耐アーク性絶縁物10における無機紫外線遮へい材30の含有量は微量であるため、フッ素系樹脂20とほぼ同程度の機械的強度を維持することができる。
次に、本発明に係る耐アーク性絶縁物10が、アークによる内部劣化を防止する効果が優れていることについて説明する。
(耐アーク性、機械的強度および体積抵抗率の評価)
耐アーク性、機械的強度および体積抵抗率の評価を行うため、試料1〜試料7を以下に示すように作製した。
(試料1)
平均粒径が25μmのポリ四フッ化エチレン樹脂の粉末に、平均粒径が0.01μmのルチル型の酸化チタンをこの樹脂の重量の0.6%添加し、均一に混合した。なお、ここでの平均粒径は、空気透過法によって求められた値である。
続いて、均一に混合された混合物を、内径が100mm、内壁の高さが100mmの型に充填して、温度25℃(室温)、圧力50MPaで圧縮形成し、圧縮形成体を作製した。
続いて、圧縮形成体を炉に設置し、温度を370℃程度まで徐々に上昇させ、フッ素系樹脂20の粉末を溶融して焼成した。その後、自然冷却により室温まで冷却し、機械加工により、直径が100mm、厚さが3mm(耐アーク性試験用および体積抵抗率の測定用)と、直径が100mm、厚さが1mm(引張り強度試験用)の円柱状の試料1を得た。
(試料2)
平均粒径が25μmのポリ四フッ化エチレン樹脂の粉末に、平均粒径が0.02μmの酸化亜鉛をこの樹脂の重量の0.6%添加し、均一に混合した。
以後の作製工程は、上記した試料1の場合と同じとし、試料1と同サイズの試料2を得た。
(試料3)
平均粒径が25μmのポリ四フッ化エチレン樹脂の粉末に、平均粒径が0.01μmの酸化セリウムをこの樹脂の重量の0.6%添加し、均一に混合した。
以後の作製工程は、上記した試料1の場合と同じとし、試料1と同サイズの試料3を得た。
(試料4)
平均粒径が25μmのポリ四フッ化エチレン樹脂の粉末に、平均粒径が0.02μmの酸化アルミニウムで被覆された、平均粒径が0.02μmの酸化亜鉛をこの樹脂の重量の0.6%添加し、均一に混合した。
以後の作製工程は、上記した試料1の場合と同じとし、試料1と同サイズの試料4を得た。
(試料5)
平均粒径が25μmのポリ四フッ化エチレン樹脂の粉末に、平均粒径が0.2μmの炭素をこの樹脂の重量の0.4%添加し、均一に混合した。
以後の作製工程は、上記した試料1の場合と同じとし、試料1と同サイズの試料5を得た。
(試料6)
平均粒径が25μmのポリ四フッ化エチレン樹脂の粉末を、内径が100mm、内壁の高さが100mmの型に充填して、温度25℃(室温)、圧力50kPaで圧縮形成し、圧縮形成体を作製した。
以後の作製工程は、上記した試料1の場合と同じとし、試料1と同サイズの試料6を得た。
(試料7)
平均粒径が25μmのポリ四フッ化エチレン樹脂の粉末に、平均粒径が10μmの窒化ホウ素をこの樹脂の重量の10%添加し、均一に混合した。
以後の作製工程は、上記した試料1の場合と同じとし、試料1と同サイズの試料7を得た。
上記した方法で作製された試料1〜試料7を用いて、耐アーク性試験、体積抵抗率の測定、引張り強度試験を行った。ここで、耐アーク性試験は、日本工業規格JIS K6911に準じて行った。なお、耐アーク性とは、絶縁材料がアークによる劣化に耐える能力であり、導通や発火に至るまでの時間を測定した秒数である。体積抵抗率の測定は、JIS K6911に準じて行った。引張り強度試験は、JIS K6891に準じて行った。表1に、試料1〜試料7における上記した試験結果を示す。なお、試料1〜試料4は、本発明に係る耐アーク性絶縁物であり、試料5〜試料7は、比較例である。
Figure 0005269516
表1に示すように、試料5のように、導電性物質である炭素を含有した場合には、体積抵抗率や耐アーク性が大幅に低下することがわかった。これに対し、試料1〜試料4のように、無機紫外線遮へい材を所定量含有した場合には、体積抵抗率が高く、耐アーク性は、従来の絶縁物として広く使用されている試料6における耐アーク性と同じレベルを維持できることがわかった。
また、添加物の含有量が多い試料7は、引張り強度が小さくなることがわかった。また、試料1〜試料4における引張り強度は、従来の絶縁物として広く使用されている試料6よりも若干低下するものの、試料6における引張り強度と大きな差はなく、同程度であった。
(内部劣化の有無および重量損耗量の評価)
内部劣化の有無および重量損耗量の評価を行うため、試料8〜試料10を以下に示すように作製した。
(試料8)
平均粒径が25μmのポリ四フッ化エチレン樹脂の粉末に、平均粒径が0.01μmのルチル型の酸化チタンをこの樹脂の重量の0.5%添加し、均一に混合した。
以後の作製工程は、上記した試料1の場合と同じとし、型を代えて、直径が200mm、高さが250mmの試料8を得た。
(試料9)
平均粒径が25μmのポリ四フッ化エチレン樹脂の粉末に、平均粒径が0.02μmの酸化亜鉛をこの樹脂の重量の0.5%添加し、均一に混合した。
以後の作製工程は、上記した試料1の場合と同じとし、型を代えて、直径が200mm、高さが250mmの試料9を得た。
(試料10)
平均粒径が25μmのポリ四フッ化エチレン樹脂の粉末に、平均粒径が0.01μmの酸化セリウムをこの樹脂の重量の0.5%添加し、均一に混合した。
以後の作製工程は、上記した試料1の場合と同じとし、型を代えて、直径が200mm、高さが250mmの試料10を得た。
なお、試料8〜試料10は、本発明に係る耐アーク性絶縁物であり、比較のため上記した試料6〜試料7に対しても、型を代えて、直径が200mm、高さが250mmの試料を作製し、内部劣化の有無および重量損耗量の評価を行った。
内部劣化の有無は、各試料を機械加工して、同形状のガス遮断器用ノズルを作製し、これらノズルを遮断器に取付け、同様の条件で遮断試験を実施した後のノズル断面を観察し、劣化の有無を観察した。具体的には、試料の断面を観察し、内部炭化跡の有無を調べた。
重量損耗量は、内部劣化試験で使用したノズルの試験前と試験後の試料の重量を測定し、それぞれの差を求めることで評価を行った。なお、この評価においては、より正確に比較するため、試験前後の重量差を遮断試験で注入したエネルギ量で除して求めた、単位エネルギ当りの重量変化を用いた。
表2に、試料6〜試料10における上記した試験結果を示す。表2には、内部劣化がある場合を「有」、内部劣化がない場合を「無」と示している。ここで、内部劣化がない場合とは、内部炭化跡がなく、内部炭化に伴うエロージョンもない場合である。また、重量損耗量は、試料6における単位エネルギ当たりの重量損耗量を100としたときの相対値で示されている。例えば、試料6における単位エネルギ当たりの重量損耗量を超える場合には、相対値は100を超え、試料6における単位エネルギ当たりの重量損耗量を下回る場合には、相対値は100を下回る。
Figure 0005269516
表2に示すように、試料8〜試料10においては、内部炭化跡がなく、内部炭化に伴うエロージョンもなく、内部劣化は確認されなかった。また、試料8〜試料10における重量損耗量は、従来の絶縁物として広く使用されている試料6における重量損耗量と大きな差はなく、同程度であった。一方、無機紫外線遮へい材を有さない試料6においては、内部劣化が多数観察された。また、添加物の含有量が多い試料7は、重量損耗量が大きかった。
上記結果から、本発明に係る耐アーク性絶縁物である試料8〜試料10は、フッ素系樹脂に適切な紫外線遮へい剤を適量含有することで、アーク光が原因となる内部炭化を抑制しつつ、アークからの余分な光や熱を吸収しないことにより、絶縁物の重量損耗量が抑制されると考えられる。
本発明に係る一実施の形態の耐アーク性絶縁物の断面を模式的に示した図。 無機紫外線遮へい材を含有したフッ素系樹脂における、波長300nmでの光の反射率と無機紫外線遮へい材の含有率の典型的な関係を示した図。
符号の説明
10…耐アーク性絶縁物、20…フッ素系樹脂、30…無機紫外線遮へい材、40…アーク、41…光。

Claims (6)

  1. 電極と電極の間に発生するアークの近傍に配置する耐アーク性絶縁物であって、
    所定のフッ素系樹脂に、
    前記フッ素系樹脂の焼成で変色しない耐熱性を有する、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、窒化ホウ素および酸化チタンのうちのいずれか1つの白色系無機物で被覆された、前記フッ素系樹脂の焼成で変色しない耐熱性を有する、酸化チタン、酸化亜鉛および酸化セリウムのうちの少なくとも1つで構成され、かつ平均粒径が0.2μm以下である無機紫外線遮へい材を、前記フッ素系樹脂の重量の0.1〜1%含有してなることを特徴とする耐アーク性絶縁物。
  2. 前記フッ素系樹脂が、ポリ四フッ化エチレン樹脂または四フッ化エチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重体であることを特徴とする請求項1記載の耐アーク性絶縁物。
  3. 前記無機紫外線遮へい材を構成する酸化チタンの結晶構造がルチル型であることを特徴とする請求項1または2記載の耐アーク性絶縁物。
  4. 前記機紫外線遮へい材が酸化チタンで構成された場合、前記白色系無機物が、二酸化ケイ素、酸化アルミニウムおよび窒化ホウ素のうちのいずれかであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の耐アーク性絶縁物。
  5. 前記機紫外線遮へい材が酸化亜鉛または酸化セリウムで構成された場合、前記白色系無機物が、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、窒化ホウ素および酸化チタンのうちのいずれかであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の耐アーク性絶縁物。
  6. 固定電極とその固定電極に接離する可動電極とそれらの電極間に設けられた絶縁物からなるノズルとを備え、電流遮断時に前記電極間に発生するアークに前記ノズルからガスを吹き付けて消孤する遮断器であって、
    前記絶縁物が、請求項1乃至5のいずれか1項記載の耐アーク性絶縁物であることを特徴とする遮断器。
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